JP2022075504A - 正極複合活物質、リチウムイオン二次電池、複合活物質、正極複合活物質の製造方法、及びリチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

正極複合活物質、リチウムイオン二次電池、複合活物質、正極複合活物質の製造方法、及びリチウムイオン二次電池の製造方法 Download PDF

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昌史 時實
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Abstract

【課題】本発明は、非水電解液の酸化分解によるガスの発生を従来よりも抑制できる正極複合活物質、リチウムイオン二次電池、正極複合活物質の製造方法、リチウムイオン二次電池の製造方法、及び複合活物質を提供する。【解決手段】正極活物質と、酸化物系固体電解質を有し、正極活物質は、酸化物系固体電解質によって被覆されており、酸化物系固体電解質は、Li1+p+q+rAlpGaq(Ti,Ge)2-p-qSirP3-rO12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)で表されるものであり、酸化物系固体電解質は、層状であって被覆厚さが5nm以上50nm以下であり、酸化物系固体電解質は、非晶質部分と、結晶質部分が混在し、かつ非晶質部分が正極活物質と接している構成とする。【選択図】図1

Description

本発明は、正極複合活物質、リチウムイオン二次電池、及び複合活物質に関する。より詳細には、本発明は高電位での作動時におけるガス発生が抑えられた正極複合活物質、リチウムイオン二次電池、及び複合活物質に関する。
リチウムイオン二次電池の研究開発は、携帯機器、ハイブリット自動車、電気自動車、家庭用蓄電などの幅広い用途において盛んに行われている。これらの分野に用いられるリチウムイオン二次電池には、安全性の高さ、長期サイクル安定性、高エネルギー密度などが求められている。
近年、安全性の高さ、長期サイクル安定性の観点から、負極活物質にチタン酸リチウム(LTO)を用いたリチウムイオン二次電池が提案されている。チタン酸リチウムの作動電位は、一般的な負極活物質である黒鉛よりも高いため、リチウム析出が起きにくく、安全性が向上するものの、エネルギー密度の観点からは不利である。
一方、正極活物質に関しては、Liの析出電位に対して4.5V以上の高電位で作動する材料が提案されている(例えば、特許文献1)。
チタン酸リチウムの作動電位の高さに起因するエネルギー密度の減少は、特許文献1に示されるような高電位で作動する正極活物質を組み合わせることで、改善することが期待される。
他方、負極活物質に黒鉛を用いた従来のリチウムイオン二次電池においても、正極活物質の表面で液体状の非水電解質の酸化分解によりガスが発生するが、従来の二次電池よりも正極活物質の作動電位が高い二次電池の場合には、ガスの発生の問題がより顕著となる。
また、従来のリチウムイオン二次電池では、非水電解質に添加剤を加えることによって正極表面に被膜を形成し、ガス発生を抑制する手段も採られている。
しかしながら、正極表面への被膜の形成は、高電位正極活物質でも同様の原理が適用できるものの、被膜に、より高い耐酸化性が必要となるため、その効果は十分ではないと考えられる。
その他、関連する文献として特許文献2がある。
特開2001-185148号公報 国際公開第2020/049843号
しかしながら、上記した従来技術は、高電位正極活物質を使った場合においてのガス発生の抑制にはまだ改善の余地があった。
そこで、本発明は、非水電解質の酸化分解によるガスの発生を従来よりも抑制できる正極複合活物質、リチウムイオン二次電池、複合活物質、正極複合活物質の製造方法、及びリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
上記した課題に鑑み、本発明者らは前記したガス発生を抑制する手段について検討した。すなわち、近年の研究では、固体状の固体電解質でも液体状の電解液に近い導電性を示すことが知られている。固体電解質は、構造上安定であるため、高電位であっても結晶構造が破壊されにくく、ガスも発生しにくい。
そこで、特許文献2のように、正極活物質の表面に固体電解質を覆い、正極活物質の表面を非水電解質に直接晒さないことで正極活物質による非水電解質の分解によるガスの発生を抑制できると考えられる。
特許文献2に倣って正極複合活物質を試作してみると、固体電解質の厚みが厚くなると、ガス発生量を抑制できるものの固体電解質の存在による正極複合活物質の抵抗の増加が大きくなる傾向があり、固体電解質の厚みを薄くすると、固体電解質の存在による正極複合活物質の抵抗の増加が小さくなるものの、ガス発生の抑制効果も小さくなる傾向があることが判明した。
そこで、固体電解質の厚みを変更して検討したところ、(1)固体電解質で正極活物質を層状に覆うこと、(2)ある一定の厚みの範囲内であること、(3)結晶構造が維持された結晶質部分と結晶構造が破壊された非晶質部分を混在し、非晶質部分が正極活物質に接することを満たすことで、固体電解質による導電率の低下を抑制しつつ、ガス発生も抑制できることを発見した。
上記の発見のもと導き出された本発明の一つの様相は、非水電解質を使用するリチウムイオン二次電池の正極の一部を構成する正極複合活物質であって、正極活物質と、酸化物系固体電解質を有し、前記正極活物質は、前記酸化物系固体電解質によって被覆されており、前記酸化物系固体電解質は、Li1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)で表されるものであり、前記酸化物系固体電解質は、層状であって被覆厚さが5nm以上50nm以下であり、前記酸化物系固体電解質は、非晶質部分と、結晶質部分が混在し、かつ前記非晶質部分が前記正極活物質と接している、正極複合活物質である。
ここでいう「非晶質部分」とは、結晶構造が維持されないアモルファス部分であり、例えば、透過型電子顕微鏡にて50万倍に拡大して観察したときに規則的に配列した格子縞が見えない部分をいう。
ここでいう「結晶質部分」とは、結晶構造が維持された部分であり、例えば、透過型電子顕微鏡にて50万倍に拡大して観察したときに規則的に配列した格子縞が見える部分をいう。
本様相によれば、正極活物質の表面に酸化物系固体電解質が層状に被覆されているため、非水電解質として非水電解液を使用するリチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した場合でも、非水電解液が正極活物質に晒されず、正極活物質による非水電解液の酸化分解に起因するガスの発生を抑制できる。
本様相によれば、酸化物系固体電解質としてLi1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)(以下、単にLATPともいう)を使用し、酸化物系固体電解質は被覆厚さが5nm以上50nm以下である。そのため、抵抗が小さく酸化物系固体電解質による抵抗損失を抑制できる。
本様相によれば、酸化物系固体電解質が層状であり、その層内において非晶質部分と結晶質部分が混在し、非晶質部分が正極活物質と接している。そのため、リチウムイオン伝導性とガス発生抑制効果の両方を発揮できる。
ここで、上記した発見のもと、高電位で作動する正極活物質の表面にLATPを種々の条件を変えて被覆しさらに検討した。
その結果、LATPを固体NMRで測定した際のAl(アルミニウム)に対応するピークにおいて、4配位のピーク強度比が5%以下である際に、非水電解質の酸化分解によるガス発生を飛躍的に抑制できることを発見した。
上記の発見のもとに導かれる好ましい様相は、前記酸化物系固体電解質は、固体NMRで測定した際のAlピークにおける全ピーク面積に対する4配位のピークの積分強度比が1%以上5%以下である。
また、LATPを固体NMRで測定した際のP(リン)に対応するピークにおいて、ピークトップが0~-20ppmに存在し、ピークの積分強度比が全ピーク面積に対して50%以上である際にガス発生を飛躍的に抑制できることを発見した。
上記の発見のもとに導かれる好ましい様相は、前記酸化物系固体電解質は、固体NMRで測定した際のPピークにおける全ピーク面積に対する0~-20ppmのピークの積分強度比が50%以上である。
好ましい様相は、前記酸化物系固体電解質は、平均粒径が10nm以下であり、前記正極活物質は、メジアン径が5μm以上である。
本様相によれば、正極活物質の粒径に比べて酸化物系固体電解質の粒径が極めて小さいので、酸化物系固体電解質が正極活物質の表面形状を緻密に覆った連続した層となっている。そのため、非水電解質が正極活物質に直接接しにくく、ガス発生抑制効果が高い。
好ましい様相は、前記正極活物質は、作動電位が4.5V(vs.Li/Li)以上のリチウムイオン伝導性活物質である。
本様相によれば、作動電位が4.5Vという高電位の正極活物質を使用した場合でも、非水電解質の分解に起因するガスの発生を抑制できる。
好ましい様相は、前記正極活物質が、下記式(1)で表される置換型リチウムマンガン化合物である。
Li1+xMn2-x-y ・・・(1)
前記式(1)中、x、yはそれぞれ0≦x≦0.2、0<y≦0.8を満たし、MはAl、Mg、Zn、Ni、Co、Fe、Ti、Cu及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本様相によれば、正極活物資として置換型リチウムマンガン化合物を使用しているため、コバルト酸リチウム等の従来の正極活物質に比べて安定的で電位窓も広い。
本発明の一つの様相は、上記した正極複合活物質の製造方法であって、酸化物系固体電解質を分散溶媒に分散させ、電解質分散体を形成する電解質分散体形成工程と、前記電解質分散体を前記正極活物質に摩砕させ、摩砕物を形成する摩砕物形成工程と、前記摩砕物から前記分散溶媒を除去する除去工程を含む、正極複合活物質の製造方法である。
本様相によれば、正極活物質の表面に酸化物系固体電解質を被覆しやすい。
好ましい様相は、前記除去工程では、300℃以上で熱処理して前記分散溶媒を除去することである。
好ましい様相は、前記電解質分散体形成工程よりも前に、前記酸化物系固体電解質を平均粒径が10nm以下になるように粉砕する粉砕工程を含むことである。
ところで、酸化物系固体電解質を正極活物質の表面へ被覆する場合、酸化物系固体電解質をBET比表面積換算径100nm以下に粉砕する必要がある。
酸化物系固体電解質の粉砕方法としては、湿式粉砕と乾式粉砕が挙げられ、湿式粉砕は、乾式粉砕よりも小粒子径まで粉砕できる利点がある。
その一方で、湿式粉砕の場合、酸化物系固体電解質を揮発性溶媒に分散させ、粉末状に粉砕した後、揮発性溶媒を揮発させて酸化物系固体電解質を粉末として取り出す必要がある。また、揮発性溶媒の揮発を促進するべく、揮発性溶媒に熱を加えて揮発させると、酸化物系固体電解質の粒子が凝集してしまい、後の工程において正極活物質の表面に酸化物系固体電解質を被覆させる際に、ばらつきが生じてしまう問題がある。
そこで、好ましい様相は、前記電解質分散体形成工程において、前記酸化物系固体電解質を平均粒径が10nm以下に粉砕しながら、酸化物系固体電解質を分散溶媒に分散させることである。
本様相によれば、電解質分散体形成工程において酸化物系固体電解質の粉砕と分散溶液への分散を同時に行うので、摩砕物形成工程において酸化物系固体電解質の凝集が起こりにくく、正極活物質の表面への酸化物系固体電解質の被覆にばらつきが生じにくい。
本発明の一つの様相は、上記した正極複合活物質を含む正極と、負極と、非水電解液を有する、リチウムイオン二次電池である。
本様相によれば、非水電解液を使用する場合であっても、非水電解液におけるガスの発生を抑制できる。
好ましい様相は、前記負極は、チタン酸リチウムを含む負極活物質を有する。
本発明の一つの様相は、正極、負極、及び非水電解質を備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、上記した正極複合活物質を含む正極合剤を正極集電体に塗布する正極塗布工程を含む、リチウムイオン二次電池の製造方法である。
本様相によれば、リチウムイオン二次電池を製造しやすい。
本発明の一つの様相は、リチウムイオン二次電池の正極の一部を構成する正極複合活物質であって、正極活物質と、酸化物系固体電解質を有し、前記正極活物質は、前記酸化物系固体電解質によって被覆されており、前記酸化物系固体電解質は、Li1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)で表されるものであり、前記酸化物系固体電解質は、固体NMRで測定した際のAlピークにおける4配位のピーク強度比が1%以上5%以下である、正極複合活物質である。
本様相によれば、非水電解質の酸化分解によるガスの発生を従来よりも抑制できる。
本発明の一つの様相は、非水電解質を使用するリチウムイオン二次電池の電極の一部を構成する複合活物質であって、活物質と、酸化物系固体電解質を有し、前記活物質は、前記酸化物系固体電解質によって被覆されており、前記酸化物系固体電解質は、Li1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)で表されるものであり、前記酸化物系固体電解質は、層状であって被覆厚さが5nm以上50nm以下であり、前記酸化物系固体電解質は、非晶質部分と、結晶質部分が混在し、かつ前記非晶質部分が前記活物質と接している、複合活物質である。
本様相によれば、非水電解質として非水電解液を使用するリチウムイオン二次電池の活物質として使用した場合でも、非水電解液が活物質に晒されず、正極活物質による非水電解液の酸化分解に起因するガスの発生を抑制できる。
本様相によれば、抵抗が小さく酸化物系固体電解質による抵抗損失を抑制できる。
本様相によれば、リチウムイオン伝導性とガス発生抑制効果の両方を発揮できる。
本発明によれば、高電位で作動する正極活物質を用いた場合であっても、非水電解質の酸化分解によるガスの発生を従来よりも抑制することが可能となる。
本発明の一実施形態のリチウムイオン二次電池を模式的に示した断面図である。 実験例8の固体NMRで測定したPピークを示す図である。 実験例9の固体NMRで測定したPピークを示す図である。 実験例10の固体NMRで測定したPピークを示す図である。 実験例12のLNMOとLATPの界面付近の透過型電子顕微鏡画像である。 図5のA領域を拡大した透過型電子顕微鏡画像である。
本発明の一実施形態のリチウムイオン二次電池1について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池1は、図1のように、正極2と、負極3と、非水電解質5と、セパレータ6を備えており、正極2と負極3に外部負荷7が接続されている。
正極2は、正極集電体10上に正極複合活物質20を含む正極複合活物質層11が積層されたものである。
負極3は、負極集電体12上に負極活物質21を含む負極活物質層13が積層されたものである。
正極複合活物質20は、正極活物質30の表面に酸化物系固体電解質31(以下、単に固体電解質31ともいう)が被覆された被覆正極活物質である。
一般的に、リチウムイオン二次電池には、非水電解質が用いられており、非水溶媒にリチウム塩を溶解させた、流動状態の非水電解質5(非水電解液)が使用されている。一方、非水溶媒とリチウム塩の両方の機能を併せ持つ、固体状態の固体電解質が存在する。固体電解質は、液体状態の非水電解質よりも酸化耐性が高いため、高電位での酸化分解は抑えられる。しかし、液体状態よりも固体状態の方が、リチウムイオン伝導度が低いため、電解質全てを固体電解質に置き換えてしまうと、電池としての性能は大きく低下してしまう。
そこで、本実施形態の正極複合活物質20は、高電位の正極活物質30の表面のみを固体電解質31で被覆することで、非水電解質は従来のままでもガス抑制できる。すなわち、リチウムイオン二次電池1は、非水電解質として液体状の非水電解質5を使用してもガス発生抑制効果を奏する。
固体電解質31の被覆方法は、特に限定されないが、スプレーコーティングやメカニカルコーティング等の均一被覆が可能な方法が好ましい。
スプレーコーティングは、固体電解質31を溶媒に分散させていることから溶媒により接着性、展延性が付与され、均一に被覆することが可能であることから好ましい。また、熱処理により溶媒を揮発させる際には、熱処理温度を調整し、好ましくは固体電解質31の粒径や正極活物質30との混合比を制御する。こうすることで、正極活物質30の抵抗を実質的に上げることなく、電池性能を低下させずに、固体電解質31を正極活物質30に被覆できる。
固体電解質31は、元素としてアルミニウムを含有し、化学的な安定性を考慮して酸化物系固体電解質を用いる。
固体電解質31に使用される酸化物系固体電解質としては、結晶構造別に逆蛍石型、NASICON型、ペロブスカイト型、ガーネット型などがあるが、特に限定されない。
固体電解質31に使用される酸化物系固体電解質としては、例えば固体電解質Li1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)(以下、LATPともいう)を用いることができ、特にLi1+pAlTi2-p12(0≦p≦1)が好ましい。
固体電解質31は、固体状態のため、固体の正極活物質30に被覆するためには、ある程度の多大なエネルギーを要する。
したがって、正極活物質30に固体電解質31を被覆する方法は、せん断力及び圧縮力を付与できるメカノケミカル法を使用したメカニカルコーティング法が好ましい。固体電解質31で正極活物質30を被覆することで、従来の非水電解質と同様、液体状の非水電解質5と正極活物質30との接触を低減し、ガス発生を抑制できる。
さらに、スプレーコーティング同様、熱処理温度を調整し、好ましくは固体電解質31の粒径や正極活物質30との混合比を制御する。こうすることで、正極活物質30の抵抗を実質的に上げることなく、電池性能も低下せずに、固体電解質31を正極活物質30に被覆できる。
正極複合活物質20は、コーティングの方法によらず、固体電解質31が正極活物質30に均一に被覆されていることにより電解液たる非水電解質5と接する面積が小さくなりガス発生が抑制される。また、電解液たる非水電解質5や添加剤が一部分解する場合でも、分解物が固体電解質31の被覆の隙間を埋め良好な被膜を形成するため、さらなる電解液の分解を抑制することが可能となる。
正極複合活物質20における固体電解質31の評価は、固体NMR測定によって評価できる。
正極複合活物質20における固体電解質31の評価は、例えば27Al-NMRのスペクトルや31P-NMRのスペクトルによって評価できる。
良好な電池特性を発現するためには、正極複合活物質20は、固体電解質31が分解せずに正極活物質30に被覆されている必要がある。
ここで、固体電解質Li1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)において、アルミニウムは、通常酸素に対して6配位であるが、分解しAlPOが生成した場合、4配位となる。
結晶構造破壊を促すような粉砕を行うと4配位のアルミニウムが増加する。粒径として30分の1程度まで微粒子化し、粒子表面が分解すると、もともとの20%以上の体積が分解し、Alの4配位は全体の20%以上になると考えられる。一方、結晶構造破壊を抑制するように粉砕することで、Alの4配位生成を抑制することが可能となる。
アルミニウムの配位数が変化すると固体27Al-NMRのスペクトルのピーク位置が変化することから、固体電解質31の分解の度合いを評価することが可能となる。
アルミニウムのスペクトルの全ピーク強度における4配位の割合が1%以上5%以下、より好ましくは2%以上5%以下である。このような場合に、ガス発生を抑制することができる。
すなわち、固体電解質31は、固体27Al-NMRのスペクトルにおいて、全ピーク面積に対する30ppmから50ppmの範囲における最大ピーク(4配位に帰属されるピーク)の面積が0.01以上0.05以下であることが好ましく、0.02以上0.05以下であることがより好ましい。
固体電解質31は、固体27Al-NMRのスペクトルにおいて30ppmから50ppmの範囲における最大ピークの面積(4配位に帰属されるピークの面積)に対する-30ppmから5ppmの範囲における最大ピークの面積(6配位に帰属されるピークの面積)の比率が85以上95以下であることが好ましい。
また、固体電解質Li1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)において、リンは通常単一の結合状態のみをとり、化学シフトが-20~-30ppmにピークトップが存在するピークのみが観察される。
一方、微粒子化すると、微粒子化することによる結合状態、特にリンに結合している酸素に結合している原子が変化し、-20~0ppmにピークトップが存在するピークが混在または当該ピークのみが観察されるようになる。
リンのスペクトルの全ピーク強度における-20~0ppmのピークの積分強度の割合が50%以上100%以下、より好ましくは70%以上100%以下の際に、ガス発生を効果的に抑制できる。
<スプレーコーティング法>
スプレーコーティングとは、スプレーノズルから噴霧される被覆剤を含むスプレー液のミストによって母材が湿潤を受けると同時に、スプレー液中に含まれる固形成分が母材の表面に付着し、乾燥固化されて、母材の表面に被覆層が形成される手段を表す。
本発明では、正極活物質30が母材に相当し、被覆剤が固体電解質31に相当する。用いる装置としては、特に限定されないが、例えば、流動層コーティング装置、遠心転動型コーティング装置、転動流動層コーティング装置を好適に用いることができる。
スプレーコーティング法による処理は、用いる溶媒は特に限定されず、水、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えばエタノール等のアルコールを使用できる。溶媒に高分子材料、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどを混合することで固体電解質31の微粒子の凝集を抑制し、例えば、正極活物質30の表面に均一にコーティングすることが可能となる。固体電解質31を溶媒に分散させてスラリーの状態でスプレーコーティングする際のスラリー中の固体電解質31の濃度は、例えば10~25質量%である。
スプレーコーティングの処理温度は、好ましくは5~100℃であり、より好ましくは8~80℃であり、さらに好ましくは10~50℃である。処理時間は、装置の大きさに依存するが、好ましくは5~90分、より好ましくは10~60分である。処理雰囲気は、特に限定されず、不活性ガス雰囲気下あるいは空気雰囲気下とすればよい。
<メカニカルコーティング法>
メカニカルコーティング法とは、せん断力、圧縮力、衝突力、及び遠心力の少なくとも1種のエネルギーを母材及び/又は被覆剤に付与(せん断力及び圧縮力を付与できることが好ましく、せん断力、圧縮力及び衝突力を付与できることがより好ましい)しつつ、母材及び被覆剤を機械的に接触させることにより、母材と被覆剤を混合して母材表面に被覆材を被覆する手段を表す。
正極複合活物質20においては、正極活物質30が母材に相当し、被覆剤が固体電解質31に相当する。用いる装置としては、特に限定されないが、例えば、ホソカワミクロン社製のノビルタに代表される摩砕式ミルや、遊星ボールミル(例えばフリッチュ社製)を好適に用いることができる。
この中では、操作が簡便であり、ボールミルのように処理後にボールを分離する必要もないこと、粒子凝集よりも被覆が優先的に進行すること、及び表面の平滑性を得やすいことの観点から、摩砕式ミルが好ましい。
本実施形態の正極複合活物質20の製造方法において、有底円筒容器と、先端翼を備えるローターとを備え、前記先端翼と前記容器内周との間に所定のクリアランスを設け、前記ローターを回転させる。こうすることで、正極活物質30及び固体電解質31を含む混合物に圧縮力とせん断力を与えて、メカニカルコーティングを実施することが好ましい。
メカニカルコーティング法による処理は、乾式であっても湿式であってもよく、湿式の場合、用いる溶媒は特に限定されず、水、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えばエタノール等のアルコールを使用できる。湿式の場合の溶媒の添加タイミングは特に限定されないが、固体電解質31を溶媒に分散させてスラリーの状態でメカニカルコーティング法に用いてもよく、スラリー中の固体電解質31の濃度は、例えば10~30重量%であり、15~30重量%が好ましく、15~25重量%がより好ましい。
メカニカルコーティングの処理温度は、好ましくは5~100℃であり、より好ましくは8~80℃であり、さらに好ましくは10~50℃である。
メカニカルコーティングの処理時間は、好ましくは5~90分、より好ましくは10~60分である。
メカニカルコーティングの処理雰囲気は、特に限定されず、不活性ガス雰囲気下あるいは空気雰囲気下とすればよい。
スプレーコーティング又はメカニカルコーティング後の試料をそのまま使用することも可能だが、熱処理を行うことが好ましい。
これにより、正極活物質30と固体電解質31の密着性が向上し、繰り返し充放電を行っても固体電解質31が正極活物質30から剥離することが抑えられ、電池の長期信頼性が向上する。
<正極活物質>
本実施形態の正極活物質30は、リチウムの脱離及び挿入の平均電位がLi/Liに対して、すなわち、Liの析出電位に対して(vs.Li/Liとも示す)4.5V以上5.0V以下であるリチウムイオン伝導性活物質であることが好ましい。
正極活物質30は、単体でのリチウム金属基準での作動電位が4.5V以上5.0V以下であることが好ましい。
リチウムイオン挿入・脱離反応の電位(以下、電圧ともいう)(vs.Li/Li)は、例えば、正極活物質30を用いた動作極、リチウム金属を対極とした半電池の充放電特性を測定し、プラトー開始時、及び終了時の電圧値を読み取ることによって求めることができる。プラトーが2箇所以上あった場合は、もっとも低い電圧値のプラトーが4.5V(vs.Li/Li)以上であればよく、もっとも高い電圧値のプラトーが5.0V(vs.Li/Li)以下であればよい。
正極活物質30は、リチウムイオンの挿入・脱離反応が、Liの析出電位に対して4.5V以上5.0V以下で進行するものであれば、特に限定されないが、下記式(1)で表される置換型リチウムマンガン化合物が好ましい。
Li1+xMn2-x-y・・・(1)
前記式(1)中、x、yはそれぞれ0≦x≦0.2、0<y≦0.8を満たし、MはAl、Mg、Zn、Ni、Co、Fe、Ti、Cu、及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記式(1)の中でも、MがNiであるNi置換リチウムマンガン化合物(LNMO)が好ましく、特にx=0、y=0.5、M=Niである、すなわちLiNi0.5Mn1.54が充放電サイクルの安定性効果が高いことから特に好ましい。
正極活物質30の粒径は、特に限定されないが、粒径が小さすぎると、後述する固体電解質31の粒径との差が小さくなって被覆が難しくなる。そのため、メジアン径d50は5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、更に好ましくは20μm以上である。
また正極活物質30のメジアン径d50は、100μm以下であることが好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。
電極に加工する際の厚み範囲も考慮すると、正極活物質30のメジアン径d50は10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。
<固体電解質31>
本実施形態の固体電解質31の粒径は、正極活物質30の表面を均一に被覆するために、BET比表面積換算径(dBET)を10nm以下まで微粒子化することが好ましく、8nm以下まで微粒子化することがより好ましく、6nm以下まで微粒子化することがさらに好ましい。
また、固体電解質31の粒径は、X線小角散乱法を用いて算出される平均粒径が10nm以下であることが好ましい。
微粒子化処理の方法としては、ボールミル、ビーズミル等の公知の手段が使用され得る。なお、BET比表面積換算径(dBET)は、JIS Z8830(2013)に規定された方法に従って、窒素吸着法一点法により、窒素吸着BET比表面積を求め、dBET=6/(密度×BET比表面積)の式により求められる粒径である。
正極活物質30のメジアン径d50と、固体電解質31のBET比表面積換算径dBETの比は、10000:1~50:1であることが好ましく、より好ましくは5000:1~100:1であり、更に好ましくは2000:1~500:1であり、特に1000:1~100:1が好ましい。
正極活物質30のメジアン径d50と、固体電解質31のBET比表面積換算径(dBET)の差は可能な限り大きいほうが良い。
差が小さい場合には、正極活物質30への固体電解質31の被覆よりも、固体電解質31同士の凝集や正極活物質30と固体電解質31の凝集体生成が支配的になり、目的の効果が発揮されない可能性がある。
また、100質量部の正極活物質30に対する固体電解質31(スラリーで用いる場合は固形分)の割合は、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、更に好ましくは2質量部以上であり、また10質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下であり、更に好ましくは4質量部以下である。
前記割合は、1質量部以上、5質量部以下が好ましく(すなわち、正極活物質30と固体電解質31の質量比が100:1~20:1)、2質量部以上、4質量部以下である(すなわち、正極活物質30と固体電解質31の質量比が、50:1~25:1)ことも好ましい。
後述する固体電解質31の微粒子化処理を行う粉砕工程(ナノ粒子化工程)の後にメカニカルコーティング法によって正極活物質30の表面に酸化物系固体電解質を被覆するにあたって、固体電解質31を分散溶媒(アルコール溶液)に分散した状態に調整しておく必要がある。アルコールとしては揮発性や安全性の点からエタノールが好ましいが、複数のアルコール溶液を混ぜたものであってもよい。
固体電解質31は、図1のように、非晶質部分40と、結晶質部分41を有している。
非晶質部分40は、実質的に結晶構造を有さないアモルファス部分であり、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したときに、結晶の格子縞が確認されない部分である。すなわち、非晶質部分40は、製造時に結晶破壊が生じており、結晶構造を有しない部分である。
結晶質部分41は、結晶構造を有する部分であり、TEMで観察したときに、規則的に配列した結晶の格子縞が明確に表れる部分である。すなわち、結晶質部分41は、製造時に結晶破壊が生じておらず、結晶構造を維持する部分である。
正極活物質30と固体電解質31を通る断面において、一つの粒子の正極活物質30を覆う固体電解質31は、非晶質部分40の面積が結晶質部分41よりも大きく、固体電解質31の結晶質部分41の面積が占める割合は、5%以上30%以下であることが好ましい。
<リチウムイオン二次電池1>
リチウムイオン二次電池1は、図1のように、正極2、負極3、非水電解質5で構成される。
正極2は、正極複合活物質20(被覆正極活物質)、導電助剤及びバインダー等を含む正極合剤を正極集電体10に塗布することで作製されたものである。
正極複合活物質20は、リチウムイオン二次電池1の正極2の活物質として好適に用いられるものである。
負極3は、負極活物質21、導電助剤及びバインダー等を含む負極合剤を負極集電体12に塗布することで作製されたものである。
正極2は、正極合剤を正極集電体10に塗布した後、100~200℃程度で乾燥させることで形成できる。
負極3は、負極合剤を負極集電体12に塗布した後に、100~200℃程度で乾燥させることで形成できる。
正極複合活物質20を用いたリチウムイオン二次電池1の構成、及び正極複合活物質20以外に使用する材料、リチウムイオン二次電池1の製造装置及び条件は、従来公知のものが適用でき、特に限定されない。
<負極活物質21>
負極活物質21としては、上述した通り、リチウム析出が起きにくく安全性が向上するという観点からチタン酸リチウムを使用することが好ましい。チタン酸リチウムの中でも、リチウムイオンの挿入・脱離の反応における活物質の膨張収縮が小さい点から、スピネル構造のチタン酸リチウムが特に好ましい。チタン酸リチウムには、たとえばNbなどのリチウム、チタン以外の元素が微量含まれていてもよい。
<導電助剤>
導電助剤としては、特に限定されないが、炭素材料が好ましい。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、及びファーネスブラックなどが挙げられる。
これら炭素材料は1種類でもよいし、2種類以上用いてもよい。
正極2に含まれる導電助剤の量は、正極複合活物質20を100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。
上記範囲であれば、正極2の導電性が確保できる。また、バインダーとの接着性が維持され、正極集電体10との接着性が十分に得ることができる。
また負極3に含まれる導電助剤の量は、負極活物質21を100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。
<バインダー>
バインダーは、特に限定されないが、正極2及び負極3のいずれについても、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイミド、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
バインダーは、正極2及び負極3の作製しやすさから、非水溶媒または水に溶解又は分散されていることが好ましい。
非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランなどを挙げることができる。これらに分散剤、増粘剤を加えてもよい。
正極2に含まれるバインダーの量は、正極複合活物質20を100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。
上記範囲であれば、正極複合活物質20と導電助材との接着性が維持され正極集電体10との接着性が十分に得ることができる。
また負極3に含まれるバインダーの量は、負極活物質21を100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。
<集電体10,12>
正極集電体10及び負極集電体12のいずれも、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金は、正極反応雰囲気下及び負極反応雰囲気下で安定であることから、特に限定されないが、JIS規格1030、1050、1085、1N90、1N99等に代表される高純度アルミニウムであることが好ましい。
集電体10,12の厚みは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。この範囲内であれば、電池作製時の取扱い性、コスト、得られる電池特性の点でバランスが取り易い。なお、集電体10,12は、アルミニウム以外の金属(銅、SUS、ニッケル、チタン、及びそれらの合金)の表面に正極2及び負極3の電位で反応しない金属を被覆したものも用いることもできる。
<非水電解質5>
非水電解質5は、特に限定されないが、非水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液、非水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液を高分子に含浸させたゲル電解質などを用いることができる。
非水溶媒としては、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を含むことが好ましい。環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、環状スルホン及び環状エーテルなどが例示される。鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、及びアセトニトリルなどの一般的に非水電解質の溶媒として用いられる溶媒を用いても良い。より具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチルラクトン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、プロピオン酸メチルなどを用いることができる。これら溶媒は1種類で用いてもよいし、2種類以上混合しても用いてもよいが、後述の溶質の溶解させやすさ、リチウムイオンの伝導性の高さから、2種類以上混合した溶媒を用いることが好ましい。
2種類以上混合する場合、高温時の安定性が高く、且つ低温時のリチウム伝導性が高いことから、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、及びメチルプロピルカーボネートに例示される鎖状カーボネートのうち1種類以上、と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、及びγ-ブチルラクトンに例示される環状化合物のうち1種類以上との混合が好ましく、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジエチルカーボネートに例示される鎖状カーボネートのうち1種類以上と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートに例示される環状カーボネートのうち1種類以上との混合が特に好ましい。
非水電解質5に使用される溶質は、特に限定されないが、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiCFSO、LiBOB(Lithium Bis (Oxalato) Borate)、LiN(SOCFなどは溶媒に溶解しやすいことから好ましい。非水電解質5に含まれる溶質の濃度は、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましい。溶質の濃度が0.5mol/L未満では所望のリチウムイオン伝導性が発現しない場合があり、一方、溶質の濃度が2.0mol/Lより高いと、溶質がそれ以上溶解しない場合がある。
非水電解質5の量は、特に限定されないが、電池容量1Ahあたり、0.1mL以上10mL以下であることが好ましい。この量であれば、電極反応に伴うリチウムイオンの伝導を確保でき、所望の電池性能が発現する。
非水電解質5は、流動性を有する場合に、あらかじめ正極2、負極3、及びセパレータ6に含ませてもよいし、正極2側と負極3側との間にセパレータ6を配置したものを倦回、あるいは積層した後に添加してもよい。
リチウムイオン二次電池1は、上記した構成の他、通常、更にセパレータ6、外装材を含む。
(セパレータ6)
セパレータ6は、正極2と負極3との間に設置され、絶縁性かつ非水電解質5を含むことができる構造であればよく、例えば、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート、及びそれらを2種類以上複合したものの織布、不織布、微多孔膜などが挙げられる。
セパレータ6は、サイクル特性の安定性が優れることから、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート、及びそれらを2種類以上複合したものの不織布であることが好ましい。
セパレータ6には、各種可塑剤、酸化防止剤、難燃剤が含まれてもよいし、金属酸化物等が被覆されていてもよい。セパレータ6の厚みは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。この範囲内であれば、正極2と負極3が短絡することを防ぎつつ、電池の抵抗が高くなることを抑えることができる。経済性、取り扱いの観点から、15μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
セパレータ6の空隙率は、30%以上、90%以下であることが好ましい。30%以上であると、リチウムイオンの拡散性が低下しにくいためサイクル特性を維持しやすく、一方、90%以下であると、電極の凹凸がセパレータ6を貫通しショートする恐れを効果的に抑えることができる。
セパレータ6の空隙率は、リチウムイオンの拡散性の確保、及びショートの防止のバランスの観点から、35%以上、85%以下がより好ましく、バランスが特に優れていることから、40%以上、80%以下が特に好ましい。
(外装材)
外装材は、正極2、負極3、及びセパレータ6を交互に積層または捲回してなる積層体、ならびに積層体を電気的に接続する端子を封入する部材である。外装材としては、金属箔にヒートシール用の熱可塑性樹脂層を設けた複合フィルム、蒸着やスパッタリングによって形成された金属層のものが使用できる。また、角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形もしくはシート形の金属缶が好適に用いられる。
続いて、本実施形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法について説明する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、主に、正極2を形成する正極形成工程と、負極3を形成する負極形成工程と、正極2と負極3と非水電解質5を組み立てる二次電池組立工程によって構成されており、負極形成工程と二次電池組立工程については、従来の工程と同様であるため、説明を省略する。
正極形成工程では、まずボールミル等の粉砕装置によって、固体電解質31を平均粒径が10nm以下になるように粉砕する(粉砕工程,ナノ粒子化工程)。
続いて、粉砕工程で微粒子化した固体電解質31を分散溶媒に分散させ、電解質分散体を形成する(電解質分散体形成工程)。
このときに使用される分散溶媒は、上記したように一又は複数のアルコール溶液であることが好ましく、エタノールであることがより好ましい。
このとき形成される電解質分散体は、透明であってゾル状態の透明ゾルであり、流動性を有した電解質ゾルである。また、電解質分散体中の固体電解質31は、粉砕工程によって部分的に結晶構造が破壊され、部分的にアモルファスとなっている。
続いて、摩砕式ミル等の摩砕装置によって、電解質分散体を正極活物質30に摩砕させ、摩砕物を形成する(摩砕物形成工程)。
続いて、摩砕物に対して熱処理を行い、摩砕物から分散溶媒を除去し、正極複合活物質20を形成する(除去工程)。
このときの熱処理温度は、300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。
熱処理温度が300℃を下回ると、正極活物質30と固体電解質31の密着性が不十分であるため電池の充放電時に固体電解質31が剥離し、電池の長期信頼性の低下に繋がるおそれがある。
一方、熱処理温度が高くなりすぎると、固体電解質31の結晶構造が変化し、Liイオン伝導度が低下して電池の充放電が正常に行われなくなる場合があるため、熱処理温度は600℃以下であることが好ましく、より好ましくは500℃以下である。熱処理時間は、30分以上が好ましく、より好ましくは1時間以上であり、上限は特に限定されないが、例えば3時間以下である。
上記の工程によって得られた正極複合活物質20を導電助剤及びバインダーと混合し、正極合剤を作成し、正極集電体10に塗布する(正極塗布工程)。
続いて、正極合剤が塗布された正極集電体10を乾燥させて正極2が形成される(正極乾燥工程)。
上記した工程によって形成された正極2が、従来と同様、負極形成工程によって形成された負極3と非水電解質5とともに組み立てられて、リチウムイオン二次電池1が完成する。
本実施形態の正極複合活物質20によれば、正極活物質30の表面に固体電解質31が層状に被覆されているため、非水電解質5の酸化分解に起因するガスの発生を抑制できる。
本実施形態の正極複合活物質20によれば、固体電解質31としてLi1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)を使用し、固体電解質31は被覆厚さが5nm以上50nm以下である。そのため、抵抗が小さく固体電解質31による抵抗損失を抑制できる。
本実施形態の正極複合活物質20によれば、固体電解質31が層状であり、非晶質部分40と結晶質部分41が混在し、非晶質部分40が正極活物質30と接している。そのため、リチウムイオン伝導性とガス発生抑制効果の両方を発揮できる。
本実施形態の正極複合活物質20によれば、固体電解質31は、固体NMRで測定した際のAlピークにおける全ピーク面積に対する4配位のピークの積分強度比が1%以上5%以下である。そのため、非水電解質5の酸化分解に起因するガスの発生をより抑制できる。
上記した実施形態では、電解質分散体形成工程よりも前に、固体電解質31を平均粒径が10nm以下になるように粉砕する粉砕工程を実施したが、本発明はこれに限定されるものではない。電解質分散体形成工程において、固体電解質31を平均粒径が10nm以下に粉砕しながら、固体電解質31を分散溶媒に分散させてもよい。
こうすることで、電解質分散体形成工程において固体電解質31の粉砕と分散溶媒への分散を同時に行うので、正極形成工程を簡略化できるとともに、摩砕物形成工程において固体電解質31の凝集が起こりにくく、正極活物質30の表面への固体電解質31の被覆にばらつきが生じにくい。
なお、この場合、電解質分散体は、分散溶媒中の固体電解質31の固形分濃度が2%以上7%以下であることが好ましい。
上記した応用例としては、正極活物質30を固体電解質31で覆って正極複合活物質20を形成していたが、負極活物質21を固体電解質31で覆って負極複合活物質としてもよい。この場合、負極活物質21はチタン酸リチウム(例えば、LiTi12)等のチタン酸化物であることが好ましい。
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
本発明は以下の実験例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記実験例で得られた電池を以下の方法により評価した。
(ガス発生量)
各実験例おけるサイクル特性評価前後のリチウムイオン二次電池のガス発生量の評価は、アルキメデス法、すなわちリチウムイオン二次電池の浮力を用いて評価した。評価は下記の通りに行った。
最初に、リチウムイオン二次電池の重量を電子天秤で測定した。次に、比重計(アルファミラージュ株式会社製、品番:MDS-3000)を用いて水中での重量を測定し、これら重量の差をとることによって浮力を算出した。この浮力を水の密度(1.0g/cm)で除算することによって、リチウムイオン二次電池の体積を算出した。エージング後の体積と、下記のサイクル特性評価後の体積を比較することによって、発生したガス量を算出した。ガス発生量が20ml未満のものを良好と判断した。
(リチウムイオン二次電池のサイクル特性評価)
実験例で作製したリチウムイオン二次電池を、充放電装置(HJ1005SD8、北斗電工株式会社製)に接続し、サイクル運転を行った。60℃の環境下で、1.0C相当の電流値で電池電圧が終止電圧3.4Vに到達するまで定電流充電を行い、充電を停止した。続いて1.0C相当の電流値で定電流放電を行い、電池電圧が2.5Vに達した時点で放電を停止した。これを1サイクルとして充放電を繰り返した。サイクル特性の安定性は、1回目の放電容量を100としたときの500回目の放電容量を、放電容量維持率(%)として評価した。500回目の放電容量維持率が80%以上を良好、80%未満を不良とした。
合成例1
(固体電解質の作製)
固体電解質として、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO(以下、LATPともいう)を調製した。出発原料として、LiCO、AlPO、TiO、NHPO、溶剤となるエタノールを所定量混合し、直径3mmのジルコニア球を用いて150Gで1時間遊星ボールミル処理を行った。処理後の混合物からジルコニア球を篩で取り除いた後、120℃で乾燥してエタノールを除去した。その後、800℃で2時間処理を行い、LATP粉末を得た。
得られたLATP粉末に溶剤となるエタノールを所定量混合し、直径0.5mmのジルコニア球を用いて1~3時間遊星ボールミル処理を行った。処理後の混合物からジルコニア球を篩で取り除いた後、120℃で乾燥してエタノールを除去した。これにより、dBETが3~25nmのLATP微粉末を得た。次に、前記LATP微粉末とエタノールを混合し、前記LATP微粉末が16.4重量%のエタノールに固体電解質が分散したスラリー(電解質分散体)を得た。
(実験例1)
(i)正極の作製
正極の活物質として、メジアン径が20μmのスピネル型のニッケルマンガン酸リチウム(LiNi0.5Mn1.5、以下、LNMOともいう)を用いた。
LNMO40gを摩砕式ミル(ホソカワミクロン株式会社製、製品名:ノビルタ)に投入し、クリアランス0.6mm、ローター負荷動力1.5kW、2600rpmで回転させながら、合成例1において3時間粉砕を施したLATP微粉末のエタノール分散スラリー6.1gを二回に分けて投入した。その後、前記ローター回転数を2600rpm~3000rpmの範囲に保って空気雰囲気下、室温で10分間処理し、LATPで表面を被覆したLNMOを得た。得られた表面被覆LNMOを350℃で1時間熱処理し、正極複合活物質を得た。
得られた正極複合活物質(表面被覆LNMO)、導電助剤としてのアセチレンブラック、及びバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、それぞれ固形分濃度で90重量部、6重量部、及び4重量部含む混合物を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させたスラリーを作製した。なお、前記バインダーは固形分濃度5重量%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液に調整したものを使用し、後述の塗工をしやすいように、さらにNMPを加えて粘度調整した。
前記スラリーを20μmのアルミニウム箔に塗工した後に、120℃のオーブンで乾燥させた。この操作をアルミ箔の両面に対して実施した後、さらに170℃で真空乾燥することによって正極を作製した。
(ii)負極の作製
負極活物質として、スピネル型のチタン酸リチウム(LiTi12、以下、LTOともいう)を用いた。前記LTO、導電助材としてのアセチレンブラック、及びバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、それぞれ固形分濃度で100重量部、5重量部、及び5重量部を含む混合物を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させたスラリーを作製した。なお、前記バインダーは固形分濃度5重量%のNMP溶液に調製したものを使用し、後述の塗工をしやすいように、さらにNMPを加えて粘度調整した。
前記スラリーを20μmのアルミニウム箔に塗工した後に、120℃のオーブンで乾燥させた。この操作をアルミ箔の両面に対して実施した後、さらに170℃で真空乾燥することによって負極を作製した。
(iii)リチウムイオン二次電池の作製
上記(i)及び(ii)で作製した正極及び負極と、20μmのポリプロピレン製のセパレータを用いて、以下の手順で電池を作製した。
まず初めに、前記正極及び負極を80℃で12時間、減圧乾燥した。次に、負極/セパレータ/正極の順に正極を15枚、負極を16枚使用して積層した。最外層はどちらもセパレータとなるようにした。次に、両端の正極及び負極にアルミニウムタブを振動溶着させた。
外装材となる二枚のアルミラミネートフィルムを準備し、プレスにより電池部となる窪みとガス捕集部となる窪みを形成後、前記電極積層体を入れた。
非水電解質注液用のスペースを残した外周部を180℃×7秒でヒートシールし、未シール箇所から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、体積基準でエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=15/15/70の割合で混合した溶媒に、LiPFを1mol/Lとなる割合で溶解させた非水電解質を入れた後に、減圧しながら未シール箇所を180℃×7秒でヒートシールした。
得られた電池を0.2C相当の電流値で電池電圧が終止電圧3.4Vに到達するまで定電流充電を行い、充電を停止した。その後、60℃の環境で24時間静置した後、0.2C相当の電流値で定電流放電を行い、電池電圧が2.5Vに達した時点で放電を停止した。放電停止後、ガス捕集部に溜まったガスを抜き取り、再シールを行った。以上の操作により、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実験例2)
正極の作製において、転動流動装置を用いたスプレーコーティングにより表面被覆LNMOを作製した以外は、実験例1と同様の操作を実施して、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実験例3)
正極の作製において、LATPの粒径は同等であるが、27Al-NMRにおける4配位Alスペクトル比率が5%以上のものを使用する以外は、実験例1と同様の操作を実施して、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実験例4)
正極の作製において、LATPの粒子径が10nm程度で、27Al-NMRにおける4配位のAlスペクトル比率が5%以上のものを使用する以外は、実験例1と同様の操作を実施して、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実験例5)
正極の作製において、LATPの粒子径が20nm程度で、27Al-NMRにおける4配位のAlスペクトル比率が5%以上のものを使用する以外は、実験例1と同様の操作を実施して、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実験例6)
正極の作製において、LATPの粒子径が20nm程度で、27Al-NMRにおける4配位Alスペクトル比率が5%以上のものを使用する以外は、実験例2と同様の操作を実施して、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実験例7)
表面被覆を行わないLNMOを使用する以外は、実験例1と同様の操作を行い、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
実験例1~7の評価結果を表1に示す。
Figure 2022075504000002
実験例1~2のリチウムイオン二次電池は、サイクル特性評価によって発生したガス量が従来技術に比して格段に少なく、容量維持率も高い結果となった。すなわち、実験例1,2では、ガス発生量が10ml以下となり、容量維持率が90%以上となった。
一方、粒子径は実験例1,2と同等であるが4配位比率が5%よりも大きい実験例3では、固体電解質が被覆していない実験例7に比べると、発生ガス量が少なく、容量維持率を維持できるものの、実験例1,2に比べると、発生ガス量が多く、容量維持率も低い結果となった。
また、実験例1,2に比べて粒子径の大きい実験例4,5は、固体電解質が被覆していない実験例7に比べると、発生ガス量が少なく、容量維持率を維持できるものの、実験例1,2に比べると、発生ガス量が多く、容量維持率も低い結果となった。
更に、実験例6において被覆方法を変化させても、4配位の強度比が大きい場合には、固体電解質が被覆していない実験例7に比べると、発生ガス量が少なく、容量維持率を維持できるものの、実験例1,2に比べて発生ガス量が多く、サイクル特性も低い結果となった。すなわち、Alの4配位強度比がガス発生量及びサイクル特性に寄与していることが示唆された。
上記したように、LATPは、6配位のピークが支配的になるが、LATPが分解し、AlPOが形成されると、結晶構造が破壊され、4配位のピークが出現すると推察される。4配位の強度比は、AlPOの生成量に関連すると考えられ、上記の結果から、AlPOを形成しつつ、AlPOの生成量が一定量以下に抑えられることでガス発生量及びサイクル特性を向上することが示唆された。
(実験例8)
正極の作製において、正極の活物質として、メジアン径が12μmのスピネル型のニッケルマンガン酸リチウム(LiNi0.5Mn1.5、以下、LNMOともいう)を用いたこと以外は実験例1と同様とした。
すなわち、LNMO40gを摩砕式ミル(ホソカワミクロン株式会社製、製品名:ノビルタ)に投入し、クリアランス0.6mm、ローター負荷動力1.5kW、2600rpmで回転させながら、合成例1において1時間粉砕を施したLATP微粉末のエタノール分散スラリー6.1gを二回に分けて投入したこと以外は実験例1と同様にして正極を作製した。
なお、粉砕したLATPの粒径は6nmで、31P-NMR測定における0~-20ppmのピーク強度比率が80%であった。NMR測定はVARIAN社製VNMRS600を用いて測定した。NMR測定結果を図2に示す。
(実験例9)
正極の作製において、LATPの粉砕時間を3時間とし、LATPの粒径が3nm、31P-NMRにおける0~-20ppmに存在するピークの積分比率が100%であるものを接合することにより表面被覆LNMOを作製した以外は、実験例8と同様の操作を実施して、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。NMR測定結果を図3に示す。
(実験例10)
正極の作製において、粉砕時間を30分とし、LATPの粒径を9nm、31P-NMRにおける0~-20ppmに存在するピークの積分比率が47%であったものを使用する以外は、実験例8と同様の操作を実施して、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。NMR測定結果を図4に示す。
(実験例11)
表面被覆を行わないLNMOを使用する以外は、実験例8と同様の操作を行い、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
実験例8~11の評価結果を表2に示す。
Figure 2022075504000003
31Pピークにおける0~-20ppmのピークの積分強度比が全ピーク面積の50%以上である実験例8,9のリチウムイオン二次電池では、サイクル特性評価によって発生したガス量が固体電解質を被覆していない実験例11に比べて格段に少なく、容量維持率も高い結果となった。
これは、固体電解質を微粒子化することによりリンの結合状態が変化し、ガス発生抑止効果やサイクル特性向上につながったと考えられる。
一方、粒子径が12nmと実験例8,9よりも大きく、31P-NMRにおける-20~0ppmに存在するピーク比率が47%であった実験例10は、固体電解質が被覆していない実験例11に比べると、発生ガス量が少なく、容量維持率を維持できるものの、実験例8,9に比べてガス発生量が大きく、容量維持率も低い結果となった。これは、LATPの粒子粉砕が不十分で、リンの結合状態がガス発生を抑制する構造になっていないことが原因と考えられる。
(実験例12)
正極の作製において、表面被覆LNMOを400℃で1時間熱処理し、正極複合活物質を得た。
実験例12の正極複合活物質に対して透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。
正極複合活物質は、図5のように、正極活物質が固体電解質で層状に被覆されており、固体電解質の厚みは40nm程度であった。
実験例12の正極複合活物質は、図6のように、結晶配列が確認されない非晶質部分と、規則的な結晶配列が確認された結晶質部分が混在していた。実験例12の正極複合活物質は、非晶質部分が正極活物質たるLNMOに接していた。
これらの結果は、LATPの結晶構造を維持している部分と、LATPの結晶構造を維持できず非晶質化した部分又は局所的にリン酸アルミニウム(AlPO)に分解した部分が生じたためと考えられる。
(実験例13)
(iv)正極の作製
表面被覆を行わないLNMOを使用する以外は、実験例1の(i)と同様の操作を行い、正極を作成した。
(v)被覆負極活物質の作製
まず、合成例1の固体電解質の作製において、3~6時間遊星ボールミル処理を行い、その他は同様にして、得られたスラリー(電解質分散体)を得た。
そして、負極活物質として、メジアン径が10μmのスピネル型のチタン酸リチウム(LiTi12、以下、LTOともいう)を用い、LTO40gを摩砕式ミル(ホソカワミクロン社製、ノビルタ)に投入し、クリアランス0.6mm、ローター負荷動力1.5kW、2600rpmで回転させながら、3時間粉砕を施した透明ゾル状態のスラリーの6.1gを二回に分けて投入した。その後、上記ローター回転数を2600~3000rpmの範囲に保って空気雰囲気下、室温で10分間処理し、LATPで表面を被覆したLTOを得た。得られた表面被覆LTOを350℃で1時間熱処理して、被覆負極活物質を得た。
(vi)負極の作製
得られた表面被覆LTO、導電助剤としてのアセチレンブラック、及びバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、それぞれ固形分濃度で90重量部、5重量部、及び5重量部含む混合物を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させた負極合剤を作製した。なお、上記バインダーは固形分濃度5重量%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液に調整したものを使用し、後述の塗工をしやすいように、更にNMPを加えて粘度調整した。
上記負極合剤を20μmのアルミニウム箔に塗工した後に、120℃のオーブンで乾燥させた。この操作をアルミニウム箔の両面に対して実施した後、更に170℃で真空乾燥することによって負極を作製した。
(vii)リチウムイオン二次電池の作製
上記(iv)及び(vi)で作製した正極及び負極を用いて実験例1の(iii)と同様にして評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実験例14)
被覆負極活物質の作製において、透明ゾル状態のLATP被覆量を9.1gとした以外は、実験例13と同様の操作を実施して、被覆負極活物質を作製した。それ以外は同様にしてこれを実験例14とした。
(実験例15)
表面被覆を行わないLTOを使用する以外は、実施例1と同様の操作を行い、負極活物質を作製した。それ以外は同様にしてこれを実験例15とした。
実験例13~15の評価結果を表3に示す。
Figure 2022075504000004
実施例13,14のリチウムイオン二次電池は、LATPで被覆していない実験例15に比べて、サイクル特性評価によって発生したガス量が少なく、容量維持率も高い結果となった。
この結果から、負極活物質に対して固体電解質を被覆することでも、ガス発生を抑制しつつ、サイクル特性を向上できることがわかった。
以上の結果から、高電位で作動する正極活物質の表面に、少なくともアルミニウムを含む固体電解質を被覆した正極複合活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、高電位で充放電を行ってもガス発生量が少なく、サイクル特性も良好であることが明らかとなった。
また、正極複合活物質のAlの4配位のピーク強度比を5%以下に抑制することでガス発生量を低減でき、サイクル特性を向上できることが分かった。
さらに、高電位で作動する正極活物質の表面に、少なくともリンを含む固体電解質を被覆した正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、高電位で充放電を行ってもガス発生量が少なく、サイクル特性も良好であることが明らかとなった。
正極複合活物質は、酸化物系固体電解が層状であって被覆厚さが5nm以上50nm以下であり、非晶質部分と、結晶質部分が混在し、かつ非晶質部分が正極活物質と接することで、非晶質部分に対応するLATP又はAlPOによってガス発生を抑制でき、結晶質部分に対応するLATPによってリチウムの挿入脱離を速やかに行うことができることが示唆された。
負極活物質に対して固体電解質を被覆することでも、ガス発生を抑制しつつ、サイクル特性を向上できることが明らかになった。
本発明の複合活物質は、リチウムイオン二次電池の電極の活物質として好適に用いられる。
1 リチウムイオン二次電池
2 正極
3 負極
5 非水電解質
10 正極集電体
21 負極活物質
30 正極活物質
31 酸化物系固体電解質
40 非晶質部分
41 結晶質部分

Claims (15)

  1. 非水電解質を使用するリチウムイオン二次電池の正極の一部を構成する正極複合活物質であって、
    正極活物質と、酸化物系固体電解質を有し、
    前記正極活物質は、前記酸化物系固体電解質によって被覆されており、
    前記酸化物系固体電解質は、Li1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)で表されるものであり、
    前記酸化物系固体電解質は、層状であって被覆厚さが5nm以上50nm以下であり、
    前記酸化物系固体電解質は、非晶質部分と、結晶質部分が混在し、かつ前記非晶質部分が前記正極活物質と接している、正極複合活物質。
  2. 前記酸化物系固体電解質は、固体NMRで測定した際のAlピークにおける全ピーク面積に対する4配位のピークの積分強度比が1%以上5%以下である、請求項1に記載の正極複合活物質。
  3. 前記酸化物系固体電解質は、固体NMRで測定した際のPピークにおける全ピーク面積に対する-20~0ppmのピークの積分強度比が50%以上である、請求項1又は2に記載の正極複合活物質。
  4. 前記酸化物系固体電解質は、平均粒径が10nm以下であり、
    前記正極活物質は、メジアン径が5μm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の正極複合活物質。
  5. 前記正極活物質は、作動電位が4.5V(vs.Li/Li)以上のリチウムイオン伝導性活物質である、請求項1~4のいずれか1項に記載の正極複合活物質。
  6. 前記正極活物質が、下記式(1)で表される置換型リチウムマンガン化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の正極複合活物質。
    Li1+xMn2-x-y ・・・(1)
    前記式(1)中、x、yはそれぞれ0≦x≦0.2、0<y≦0.8を満たし、MはAl、Mg、Zn、Ni、Co、Fe、Ti、Cu及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の正極複合活物質の製造方法であって、
    酸化物系固体電解質を分散溶媒に分散させ、電解質分散体を形成する電解質分散体形成工程と、
    前記電解質分散体を前記正極活物質に摩砕させ、摩砕物を形成する摩砕物形成工程と、
    前記摩砕物から前記分散溶媒を除去する除去工程を含む、正極複合活物質の製造方法。
  8. 前記除去工程では、300℃以上で熱処理して前記分散溶媒を除去する、請求項7に記載の正極複合活物質の製造方法。
  9. 前記電解質分散体形成工程よりも前に、前記酸化物系固体電解質を平均粒径が10nm以下になるように粉砕する粉砕工程を含む、請求項7又は8に記載の正極複合活物質の製造方法。
  10. 前記電解質分散体形成工程において、前記酸化物系固体電解質を平均粒径が10nm以下に粉砕しながら、酸化物系固体電解質を分散溶媒に分散させる、請求項7又は8に記載の正極複合活物質の製造方法。
  11. 請求項1~6のいずれか1項に記載の正極複合活物質を含む正極と、負極と、非水電解液を有する、リチウムイオン二次電池。
  12. 前記負極は、チタン酸リチウムを含む負極活物質を有する、請求項11に記載のリチウムイオン二次電池。
  13. 正極、負極、及び非水電解質を備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    請求項1~6のいずれか1項に記載の正極複合活物質を含む正極合剤を正極集電体に塗布する正極塗布工程を含む、リチウムイオン二次電池の製造方法。
  14. リチウムイオン二次電池の正極の一部を構成する正極複合活物質であって、
    正極活物質と、酸化物系固体電解質を有し、
    前記正極活物質は、前記酸化物系固体電解質によって被覆されており、
    前記酸化物系固体電解質は、Li1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)で表されるものであり、
    前記酸化物系固体電解質は、固体NMRで測定した際のAlピークにおける4配位のピーク強度比が1%以上5%以下である、正極複合活物質。
  15. 非水電解質を使用するリチウムイオン二次電池の電極の一部を構成する複合活物質であって、
    活物質と、酸化物系固体電解質を有し、
    前記活物質は、前記酸化物系固体電解質によって被覆されており、
    前記酸化物系固体電解質は、Li1+p+q+rAlGa(Ti,Ge)2-p-qSi3-r12(0<p≦1、0≦q<1、0≦r≦1)で表されるものであり、
    前記酸化物系固体電解質は、層状であって被覆厚さが5nm以上50nm以下であり、
    前記酸化物系固体電解質は、非晶質部分と、結晶質部分が混在し、かつ前記非晶質部分が前記活物質と接している、複合活物質。
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