《実施形態1》
実施形態1について説明する。図1に示すように、本実施形態の圧縮機は、全密閉型のロータリ圧縮機(1)である。このロータリ圧縮機(1)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路に設けられ、蒸発器で蒸発した冷媒を吸入して圧縮する。
-ロータリ圧縮機の全体構成-
ロータリ圧縮機(1)では、圧縮機構(15)と電動機(10)とがケーシング(2)に収容されている。ケーシング(2)は、起立した状態の円筒状の密閉容器である。ケーシング(2)は、円筒状の胴部(3)と、胴部(3)の端部を閉塞する一対の鏡板(4,5)とを備えている。胴部(3)の下部には、吸入管(7,8)が取り付けられる。上側の鏡板(4)には、吐出管(6)が取り付けられる。
電動機(10)は、ケーシング(2)の内部空間の上部に配置されている。電動機(10)は、固定子(11)と、回転子(12)とを備えている。固定子(11)は、ケーシング(2)の胴部(3)に固定されている。回転子(12)は、後述する圧縮機構(15)の駆動軸(70)に取り付けられている。
圧縮機構(15)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式流体機械である。ケーシング(2)の内部空間において、圧縮機構(15)は、電動機(10)の下方に配置されている。
-圧縮機構-
圧縮機構(15)は、二気筒のロータリ式流体機械である。圧縮機構(15)は、フロントヘッド(20)と、リアヘッド(25)と、中間プレート(50)と、駆動軸(70)とを、一つずつ備えている。圧縮機構(15)は、二つの機構部(K1,K2)を備えている。各機構部(K1,K2)は、シリンダ(30,35)と、ピストン(40,45)と、ブレード(41,46)とを一つずつ備えている。各シリンダ(30,35)には、対になった二つのブッシュ(42,47)が、一組ずつ設けられている。圧縮機構(15)は、ガス冷媒が通過する冷媒流路(P)を備えている。
圧縮機構(15)では、上方から下方へ向かって順に、フロントヘッド(20)と、第1シリンダ(30)と、中間プレート(50)と、第2シリンダ(35)と、リアヘッド(25)とが重なり合った状態で配置されている。フロントヘッド(20)と、第1シリンダ(30)と、中間プレート(50)と、第2シリンダ(35)と、リアヘッド(25)とは、図外の複数本のボルトによって互いに締結されている。圧縮機構(15)は、フロントヘッド(20)がケーシング(2)の胴部(3)に固定されている。
〈第1機構部、第2機構部〉
二つの上記機構部(K1,K2)は、一方が第1機構部(K1)であり、他方が第2機構部(K2)である。第1機構部(K1)は、第1シリンダ(30)と、第1ピストン(40)と、第1ブレード(41)と備えている。第2機構部(K2)は、第2シリンダ(35)と、第2ピストン(45)と、第2ブレード(46)と備えている。圧縮機構(15)において、第1機構部(K1)と、第2機構部(K2)とは、中間プレート(50)を挟んで上下方向に積層されている。
なお、本実施形態では、第1機構部(K1)及び第2機構部(K2)を構成する部材の形状、寸法は互いに同一である。そのため、図2に示す機構部の横断面は、第1機構部(K1)及び第2機構部(K2)の両方を示している。
〈第1シリンダ、第2シリンダ〉
第1シリンダ(30)と、第2シリンダ(35)とは、上下方向(二つの機構部(K1,K2)の積層方向)に隣り合っている。第1シリンダ(30)及び第2シリンダ(35)は、形状、寸法、及び材質が同一の部材である。
図1及び図2に示すように、各シリンダ(30,35)は、厚肉円板状の部材である。各シリンダ(30,35)には、シリンダボア(31,36)と、ブレード収容孔(32,37)と、吸入ポート(33,38)とが形成される。第1シリンダ(30)と第2シリンダ(35)は、それぞれの厚さが等しい。なお、図2では図示を省略するが、各シリンダ(30,35)には、圧縮機構(15)の組み立て用のボルトを挿し通すための貫通孔などの、各シリンダ(30,35)を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成される。
シリンダボア(31,36)は、シリンダ(30,35)を厚さ方向に貫通する円形孔である。シリンダボア(31,36)は、シリンダ(30,35)の中央部に形成される。第1シリンダ(30)のシリンダボア(31)には、第1ピストン(40)が収容される。第2シリンダ(35)のシリンダボア(36)には、第2ピストン(45)が収容される。第1シリンダ(30)のシリンダボア(31)の内径と、第2シリンダ(35)のシリンダボア(36)の内径とは、互いに等しい。
第1シリンダ(30)では、シリンダボア(31,36)の壁面と、後述する第1ピストン(40)との間に、第1の流体室(S)が形成される。言い換えると、第1シリンダ(30)は、第1ピストン(40)と共に第1の流体室(S)を形成する。また、第2シリンダ(35)では、シリンダボア(31,36)の壁面と、後述する第2ピストン(45)との間に、第2の流体室(S)が形成される。言い換えると、第2シリンダ(35)は、第2ピストン(45)と共に第2の流体室(S)を形成する。
ブレード収容孔(32,37)は、シリンダ(30,35)の内周面(即ち、シリンダボア(31,36)の外縁)からシリンダ(30,35)の径方向の外側へ向かって延びる孔である。このブレード収容孔(32,37)は、シリンダ(30,35)を厚さ方向に貫通する。第1シリンダ(30)のブレード収容孔(32)には、第1ブレード(41)が収容される。第2シリンダ(35)のブレード収容孔(37)には、第2ブレード(46)が収容される。
ブレード収容孔(32,37)は、そのブレード収容孔(32,37)を取り囲む壁面(シリンダ(30,35)の一部)が揺動するブレード(41,46)と干渉しないような形状となっている。二つのシリンダ(30,35)は、それぞれのブレード収容孔(32,37)が、二つのシリンダ(30,35)の積層方向において重なり合うように配置される。
吸入ポート(33,38)は、シリンダ(30,35)の内周面(即ち、シリンダボア(31,36)の外縁)からシリンダ(30,35)の径方向の外側へ向かって延びる断面が円形の孔である。吸入ポート(33,38)は、ブレード収容孔(32,37)の近傍(本実施形態では、図2におけるブレード収容孔(32,37)の右隣)に配置され、シリンダ(30,35)の外側面に開口している。第1シリンダ(30)の吸入ポート(33)には第1吸入管(7)が挿入され、第2シリンダ(35)の吸入ポート(38)には第2吸入管(8)が挿入される(図1を参照)。
図2及び図4に示すように、第1シリンダ(30)及び第2シリンダ(35)の内周面には、拡大通路部(E)が形成されている。
第1シリンダ(30)の拡大通路部(E)は、第1溝部(81)である。第1溝部(81)は、第1シリンダ(30)の径方向外側に凹んだ小さな溝状の窪みである。第1溝部(81)は、第1シリンダ(30)を軸方向から見て、円弧状に形成されている。第1溝部(81)は、第1シリンダ(30)の厚さ方向の一方の端面から他方の端面に亘って延びている。第1溝部(81)は、第1シリンダ(30)の内周面の一部を切り欠くことによって形成される。第1溝部(81)は、第1シリンダ(30)における吸入ポート(33)側(図2における右側)に形成されている。
第2シリンダ(35)の拡大通路部(E)は、第2溝部(82)である。第2溝部(82)は、第2シリンダ(35)の径方向外側に凹んだ小さな溝状の窪みである。第2溝部(82)は、第2シリンダ(35)を軸方向から見て、円弧状に形成されている。第2溝部(82)は、第2シリンダ(35)の厚さ方向の一方の端面から他方の端面に亘って延びている。第2溝部(82)は、第2シリンダ(35)の内周面の一部を切り欠くことによって形成される。第2溝部(82)は、第2シリンダ(35)における吸入ポート(38)側(図2における右側)に形成されている。
第2溝部(82)は、第1シリンダ(30)の第1溝部(81)と上下方向に重なる位置に形成されている。第1溝部(81)及び第2溝部(82)は、後述する中間プレート(50)の連通孔(52)に対応する位置に設けられている。具体的に、第1溝部(81)及び第2溝部(82)は、第1シリンダ(30)と中間プレート(50)と第2シリンダ(35)の積層方向から見て中間プレート(50)の連通孔(52)と重なり合う位置に設けられる。第1溝部(81)及び第2溝部(82)は、中間プレート(50)の連通孔(52)と共に冷媒流路(P)を構成する。
なお、拡大通路部(E)は、全てのシリンダ(30,35)に設けられている必要はない。また、拡大通路部(E)は、各シリンダ(30,35)の吸入ポート(33,38)から外れる位置に形成される。言い換えると、拡大通路部(E)は、各シリンダ(30,35)の吸入ポート(33,38)と上下方向に重なる位置に形成されない。具体的には、拡大通路部(E)は、各シリンダ(30,35)の吸入ポート(33,38)とは連通しない。
〈フロントヘッド〉
フロントヘッド(20)は、第1シリンダ(30)の電動機(10)側の端面(図1における上端面)を閉塞する部材である。フロントヘッド(20)は、本体部(21)と、主軸受部(22)と、外周壁部(23)とを備えている。本体部(21)と、主軸受部(22)と、外周壁部(23)とは一体に成形されている。
本体部(21)は、概ね円形の厚板状に形成されている。本体部(21)は、第1シリンダ(30)の端面を覆うように配置される。本体部(21)の下面は、第1シリンダ(30)に密着している。主軸受部(22)は、本体部(21)から電動機(10)側(図1における上側)へ延びる円筒状に形成されている。主軸受部(22)は、本体部(21)の中央部に配置される。主軸受部(22)は、圧縮機構(15)の駆動軸(70)を支持するジャーナル軸受を構成する。外周壁部(23)は、本体部(21)の外周縁部に連続して形成された肉厚の環状の部分である。
フロントヘッド(20)には、吐出ポート(24)が形成されている(図2を参照)。吐出ポート(24)は、フロントヘッド(20)の本体部(21)を、その厚さ方向に貫通する。図2に示すように、フロントヘッド(20)の本体部(21)の下面(第1シリンダ(30)と接する面)において、吐出ポート(24)は、第1シリンダ(30)のブレード収容孔(32)の吸入ポート(33)とは逆側の近傍(本実施形態では、図2におけるブレード収容孔(32)の左隣)に開口する。また、図示しないが、フロントヘッド(20)の本体部(21)には、吐出ポート(24)を開閉するための吐出弁が取り付けられる。
〈リアヘッド〉
リアヘッド(25)は、第2シリンダ(35)の電動機(10)とは逆側の端面(図1における下端面)を閉塞する部材である。リアヘッド(25)は、本体部(26)と、副軸受部(27)と、外周壁部(28)とを備えている。
本体部(26)は、概ね円形の厚板状に形成されている。本体部(26)は、第2シリンダ(35)の端面を覆うように配置される。本体部(26)の上面は、第2シリンダ(35)に密着している。副軸受部(27)は、本体部(26)から第2シリンダ(35)とは逆側(図1における下側)へ延びる円筒状に形成されている。副軸受部(27)は、本体部(26)の中央部に配置される。副軸受部(27)は、圧縮機構(15)の駆動軸(70)を支持するジャーナル軸受を構成する。外周壁部(28)は、本体部(26)の外周縁部から第2シリンダ(35)とは逆側へ延びる円筒状に形成されている。
リアヘッド(25)には、吐出ポート(29)が形成されている(図3を参照)。吐出ポート(29)は、リアヘッド(25)の本体部(26)を、その厚さ方向に貫通する。図3に示すように、リアヘッド(25)の本体部(26)の上面(第2シリンダ(35)と接する面)において、吐出ポート(29)は、第2シリンダ(35)のブレード収容孔(37)の吸入ポート(38)とは逆側の近傍(本実施形態では、図3におけるブレード収容孔(37)の左隣)に開口する。また、図示しないが、リアヘッド(25)の本体部(26)には、吐出ポート(29)を開閉するための吐出弁が取り付けられる。
〈中間プレート〉
図1に示すように、中間プレート(50)は、第1シリンダ(30)と第2シリンダ(35)との間に挟み込まれるように配置される。中間プレート(50)は、第1シリンダ(30)の端面(図1における下面)と第2シリンダ(35)の端面(図2における上面)とを覆っている。中間プレート(50)の上面は第1シリンダ(30)に密着し、中間プレート(50)の下面は第2シリンダ(35)に密着している。
図3に示すように、中間プレート(50)は、概ね円形の平板状の部材である。中間プレート(50)は、一部分が径方向の外側へ突出している。
中間プレート(50)の中央部には、中間プレート(50)を厚さ方向へ貫通する中央孔(51)が形成されている。中間プレート(50)の中央孔(51)には、後述する駆動軸(70)の中間連結部(78)が挿し通される。
中間プレート(50)には、円形状の連通孔(52)が形成されている。連通孔(52)は、中間プレート(50)の厚さ方向に貫通している。連通孔(52)は、断面が円形の真っ直ぐな孔である。連通孔(52)の中心軸は、中間プレート(50)の厚さ方向と実質的に平行である。また、連通孔(52)の中心軸は、中間プレート(50)の上面及び下面と実質的に直交する。
連通孔(52)の一端部(上端部)は、第1シリンダ(30)の第1溝部(81)に接続され、連通孔(52)の他端部(下端部)は、第2シリンダ(35)の第2溝部(82)に接続されている。言い換えると、連通孔(52)は、第1機構部(K1)の流体室(S)と第2機構部(K2)の流体室(S)とを連通させている。連通孔(52)は、本開示の貫通孔に対応する。なお、連通孔(52)の詳細については、後述する。
〈駆動軸〉
図1に示すように、駆動軸(70)は、主軸部(72)と、第1偏心部(75)と、中間連結部(78)と、第2偏心部(76)と、副軸部(74)とを備えている。駆動軸(70)は、その回転中心軸(70a)が各シリンダ(30,35)のシリンダボア(31,36)の中心軸と実質的に一致するように配置される(図2を参照)。
駆動軸(70)では、主軸部(72)と、第1偏心部(75)と、中間連結部(78)と、第2偏心部(76)と、副軸部(74)とが、上から下へ向かって順に配置されている。駆動軸(70)において、主軸部(72)と、第1偏心部(75)と、中間連結部(78)と、第2偏心部(76)と、副軸部(74)とは、互いに一体に形成されている。
主軸部(72)及び副軸部(74)は、円形断面の柱状あるいは棒状の部分である。主軸部(72)の上部には、電動機(10)の回転子(12)が取り付けられる。主軸部(72)の下部は、フロントヘッド(20)の主軸受部(22)によって支持されるジャーナルを構成する。副軸部(74)は、リアヘッド(25)の副軸受部(27)によって支持されるジャーナルを構成する。主軸部(72)の中心軸と副軸部(74)の中心軸は、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)と一致する。
各偏心部(75,76)は、主軸部(72)よりも大径の円柱状の部分である。各偏心部(75,76)は、それぞれの中心軸が駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対して偏心している。第1偏心部(75)は、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対して、第2偏心部(76)とは反対側へ偏心している。言い換えると、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第1偏心部(75)の偏心方向は、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第2偏心部(76)の偏心方向と180°異なっている。
第1偏心部(75)の偏心量e1と、第2偏心部(76)の偏心量e2は、互いに等しい。なお、第1偏心部(75)の偏心量e1は、第1偏心部(75)の中心軸(75a)と駆動軸(70)の回転中心軸(70a)との距離である。第2偏心部(76)の偏心量e2は、第2偏心部(76)の中心軸(76a)と駆動軸(70)の回転中心軸(70a)との距離である。
第1偏心部(75)の外径は、第2偏心部(76)の外径と等しい。第1偏心部(75)と第2偏心部(76)は、それぞれの高さ(上下方向の長さ)が互いに実質的に等しい。
中間連結部(78)は、第1偏心部(75)と第2偏心部(76)の間に配置され、第1偏心部(75)と第2偏心部(76)を連結する。
駆動軸(70)には、給油通路(71)が形成されている(図1を参照)。ケーシング(2)の底部に溜まった潤滑油は、給油通路(71)を通って駆動軸(70)と各軸受部(22,27)との摺動部分や圧縮機構(15)の摺動部分へ供給される。
〈第1ピストン、第2ピストン〉
第1ピストン(40)及び第2ピストン(45)は、形状、寸法、及び材質が同一の部材である。図2に示すように、各ピストン(40,45)は、やや厚肉の円筒状の部材である。
第1ピストン(40)は、第1シリンダ(30)に収容される。第1ピストン(40)には、駆動軸(70)の第1偏心部(75)が挿し通される。第1ピストン(40)は、駆動軸(70)の第1偏心部(75)が回転することで、偏心回転する。
第1ピストン(40)は、外周面が第1シリンダ(30)の内周面と摺動し、一方の端面(上面)がフロントヘッド(20)の本体部(21)の下面と摺動し、他方の端面(下面)が中間プレート(50)の上面と摺動する。圧縮機構(15)では、第1ピストン(40)の外周面と第1シリンダ(30)の内周面との間に第1の流体室(S)が形成される。
第2ピストン(45)は、第2シリンダ(35)に収容されて偏心回転する。第2ピストン(45)には、駆動軸(70)の第2偏心部(76)が挿し通される。第2ピストン(45)は、駆動軸(70)の第2偏心部(76)が回転することで、偏心回転する。
第2ピストン(45)は、外周面が第2シリンダ(35)の内周面と摺動し、一方の端面(下面)がリアヘッド(25)の本体部(21)の上面と摺動し、他方の端面(上面)が中間プレート(50)の下面と摺動する。圧縮機構(15)では、第2ピストン(45)の外周面と第2シリンダ(35)の内周面との間に第2の流体室(S)が形成される。
〈第1ブレード、第2ブレード〉
図2に示すように、各ブレード(41,46)は、やや厚肉の矩形平板状の部材である。第1ブレード(41)は、第1ピストン(40)と一体に形成される。第2ブレード(46)は、第2ピストン(45)と一体に形成される。各ブレード(41,46)は、対応するピストン(40,45)の外側面から、ピストン(40,45)の径方向の外側へ向かって突出している。各ブレード(41,46)の幅(ピストン(40,45)の軸方向の長さ)は、対応するピストン(40,45)の高さと等しい。
第1ブレード(41)は、第1シリンダ(30)のブレード収容孔(32)に嵌まる。第1ブレード(41)は、第1シリンダ(30)内に形成された第1の流体室(S)を、吸入側(吸入ポート(33)側)の第1室(S1)と、吐出側(吐出ポート(24)側)の第2室(S2)に仕切る。
第2ブレード(46)は、第2シリンダ(35)のブレード収容孔(37)に嵌まる。第2ブレード(46)は、第2シリンダ(35)内に形成された流体室(S)を、吸入側(吸入ポート(38))側の第1室(S1)と、吐出側(吐出ポート(29)側)の第2室(S2)に仕切る。
〈ブッシュ〉
第1シリンダ(30)と第2シリンダ(35)のそれぞれには、一対のブッシュ(42,47)が設けられる。各ブッシュ(42,47)は、互いに向かい合う前面が平坦面となり、背面が円弧面となった小さい板状の部材である。
第1シリンダ(30)に設けられた一対のブッシュ(42)は、第1シリンダ(30)のブレード収容孔(32)に嵌まった第1ブレード(41)を、両側から挟み込むように配置される。第1ピストン(40)と一体の第1ブレード(41)は、このブッシュ(42)を介して第1シリンダ(30)に揺動自在で且つ進退自在に支持される。
本実施形態では、このような一対のブッシュ(42)と第1ブレード(41)とにより、第1ピストン(40)は、駆動軸(70)の回転に伴って第1シリンダ(30)の内壁面に沿って公転しながら、第1偏心部(75)の中心軸(75a)に対して揺動する揺動型ピストンに構成されている。
第2シリンダ(35)に設けられた一対のブッシュ(47)は、第2シリンダ(35)のブレード収容孔(37)に嵌まった第2ブレード(46)を、両側から挟み込むように配置される。第2ピストン(45)と一体の第2ブレード(46)は、このブッシュ(47)を介して第2シリンダ(35)に揺動自在で且つ進退自在に支持される。
本実施形態では、このような一対のブッシュ(47)と第2ブレード(46)とにより、第2ピストン(45)は、駆動軸(70)の回転に伴って第2シリンダ(35)の内壁面に沿って公転しながら、第2偏心部(76)の中心軸(76a)に対して揺動する揺動型ピストンに構成されている。
-連通孔の詳細-
図3に示すように、連通孔(52)は、中間プレート(50)において、各シリンダ(30,35)の吸入ポート(33,38)寄りに形成されている。具体的には、連通孔(52)は、各機構部(K1,K2)の各ブレード(41,46)が各シリンダ(30,35)から最も退く位置を基準として、該基準位置に対応する中間プレート(50)の位置から吸入側(吸入ポート(33,38)側)の半周の範囲内に形成されている。
言い換えると、連通孔(52)は、中間プレート(50)において、第1機構部(K1)の第1ブレード(41)が第1シリンダ(30)から最も退く位置での駆動軸(70)の回転角度を0°としたときに(図5を参照)、該角度A(0°)と、該角度Aから駆動軸(70)の回転方向へ180°進んだ角度Bの範囲内に形成されている。
本実施形態では、連通孔(52)は、中間プレート(50)において、駆動軸(70)の回転角度が角度A(0°)から駆動軸(70)の回転方向へ90°進んだ位置に形成されている。
各機構部(K1,K2)において、ブレード(41,46)がシリンダの外側に最も退く位置からブレード(41,46)がシリンダ(30,35)の内側に最も進入する位置へピストン(40,45)が移動する工程を第1対象工程としたときに、中間プレート(50)では、連通孔(52)が、第1機構部(K1)の第1対象工程の一部または全部だけにおいて、第1機構部(K1)の第2室(S2)と第2機構部(K2)の第1室(S1)とが連通するとともに、第2機構部(K2)の第1対象工程の一部または全部だけにおいて、第2機構部(K2)の第2室(S2)と第1機構部(K1)の第1室(S1)とが連通するような位置に設けられている。
ここで、各機構部(K1,K2)において、ブレード(41,46)がシリンダ(30,35)の内側に最も進入する位置からブレード(41,46)がシリンダの外側に最も退く位置へピストン(40,45)が移動する工程を第2対象工程とする。
第1機構部(K1)の第2対象工程では、第1機構部(K1)の第2室(S2)と第2機構部(K2)の第1室(S1)とが連通しない。そのため、第1機構部(K1)において、少なくとも第2対象工程では、第1機構部(K1)の第2室(S2)は閉じられて、第1ピストン(40)の移動に伴って該第2室(S2)の冷媒が圧縮される。
また、第2機構部(K2)の第2対象工程では、第2機構部(K2)の第2室(S2)と第1機構部(K1)の第1室(S1)とが連通しない。そのため、第2機構部(K2)において、少なくとも第2対象工程では、第2機構部(K2)の第2室(S2)は閉じられて、第2ピストン(45)の移動に伴って該第2室の冷媒が圧縮される。
図2及び図3に示すように、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)上の一つの点を中心とし、第1偏心部(75)の偏心量e1と第1偏心部(75)の半径r1との和を半径R1とする円を第1仮想円(V1)としたときに、連通孔(52)は、中間プレート(50)において、第1仮想円(V1)よりも径方向外側となる位置に形成されている。
また、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)上の一つの点を中心とし、第2偏心部(76)の偏心量e2と第2偏心部(76)の半径r2との和を半径R2とする円を第2仮想円(V2)としたときに、連通孔(52)は、中間プレート(50)において、第2仮想円(V2)よりも径方向外側となる位置に形成されている。
本実施形態の連通孔(52)は、中間プレート(50)において、第1仮想円(V1)及び第2仮想円(V2)よりも径方向外側に位置する各シリンダ(30,35)の内周上に形成されている。また、本実施形態の連通孔(52)は、中間プレート(50)において、各シリンダ(30,35)を駆動軸(70)の軸方向からみたときの内周円における内側と外側に亘って形成されている。
-冷媒流路-
図2~5に示すように、圧縮機構(15)には、冷媒流路(P)が形成されている。冷媒流路(P)は、各機構部(K1,K2)の第2室(S2)と、他の機構部(K1,K2)の第1室(S1)とを連通させている。
図4に示すように、本実施形態の冷媒流路(P)は、中間プレート(50)の連通孔(52)と、第1シリンダ(30)の第1溝部(81)と、第2シリンダ(35)の第2溝部(82)とで構成される。第1溝部(81)、連通孔(52)、及び第2溝部(82)は、上から下へ向かって順に、上下方向(機構部(K1,K2)の積層方向)に連続して重なって形成される。第1溝部(81)、連通孔(52)、及び第2溝部(82)は、上下方向に概ね真っ直ぐな流路を形成している。
冷媒流路(P)は、第1仮想円(V1)及び第2仮想円(V2)よりも径方向外側となる位置で各流体室(S)に開口している。言い換えると、冷媒流路(P)は、各ピストン(40,45)の内周面よりも常に径方向外側となる位置で各流体室(S)に開口している。
冷媒流路(P)は、一の機構部(K1,K2)の第2室(S2)の容積が減少する際に、該第2室(S2)の冷媒を他の機構部(K1,K2)の第1室(S1)へ逃がすための流路である。
-圧縮機の運転動作-
ロータリ圧縮機(1)の運転動作について、図1を参照しながら説明する。
電動機(10)が駆動軸(70)を駆動すると、圧縮機構(15)の各ピストン(40,45)が駆動軸(70)によって駆動される。各ピストン(40,45)は、対応するシリンダ(30,35)内において、駆動軸(70)が一回転する毎に、図5に示すように、周期的に変位する。
ロータリ圧縮機(1)では、圧縮機構(15)の第1機構部(K1)と第2機構部(K2)のそれぞれにおいて、冷媒を吸入し、圧縮し、吐出する行程が行われる。圧縮機構(15)の運転動作については、後ほど詳しく説明する。
第1機構部(K1)において圧縮された冷媒は、フロントヘッド(20)の吐出ポート(24)を通ってフロントヘッド(20)の上方の空間へ吐出される。第2機構部(K2)において圧縮された冷媒は、リアヘッド(25)の吐出ポート(29)を通って第2の流体室(S)から吐出され、圧縮機構(15)に形成された通路(図示省略)を通ってフロントヘッド(20)の上方の空間へ流入する。圧縮機構(15)からケーシング(2)の内部空間へ吐出された冷媒は、吐出管(6)を通ってケーシング(2)の外部へ流出してゆく。
ケーシング(2)の底部には、潤滑油が貯留されている。この潤滑油は、駆動軸(70)の回転に伴い、該駆動軸(70)に形成された給油通路(71)を通って圧縮機構(15)へ供給され、圧縮機構(15)の摺動箇所へ供給される。具体的に、潤滑油は、主軸受部(22)及び副軸受部(27)と駆動軸(70)の間、偏心部(75,76)の外周面とピストン(40,45)の内周面の間等へ供給される。
-圧縮機構の運転動作-
上述したように、本実施形態の圧縮機構(15)では、各機構部(K1,K2)における各ピストン(40,45)の偏心方向が、互いに異なる。具体的には、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第1ピストン(40)の偏心方向は、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第2ピストン(45)の偏心方向と180°異なっている。そのため、第1ピストン(40)の変位の周期と、第2ピストン(45)の変位の周期は、180°(すなわち、半周期)ずれている。
図5に示すように、各シリンダ(30,35)では、ピストン(40,45)の変位に伴って、流体室(S,S)の第1室(S1)と第2室(S2)の容積が変化する。そして、各シリンダ(30,35)では、吸入ポート(33,38)から流体室(S,S)へ冷媒を吸入する吸入行程と、流体室(S,S)へ吸入した冷媒を圧縮する圧縮行程と、圧縮した冷媒を吐出ポート(24,29)から流体室(S,S)の外部へ吐出する吐出行程とが行われる。
ここで、図5に示す角度は、第1機構部(K1)の第1ブレード(41)が第1シリンダ(30)から最も退く位置での駆動軸(70)の回転角度を0°とし、第1機構部(K1)の第1ブレード(41)が第1シリンダ(30)の内側に最も進入する位置での駆動軸(70)の回転角度を180°とする。
〈第1機構部の動作〉
まず、第1機構部(K1)が行う行程について説明する。
駆動軸(70)が図5の時計方向に回転して駆動軸(70)の回転角度が0°から増えると、第1機構部(K1)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加し始めて第1室(S1)へ冷媒が吸入される行程(吸入行程)が行われる一方、第1機構部(K1)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が減少し始める。第2機構部(K2)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加して吸入行程が行われる一方、第2機構部(K2)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が次第に減少してゆく。
このとき、第1機構部(K1)の第2室(S2)内の冷媒の一部は、冷媒流路(P)を介して、第2機構部(K2)の第1室(S1)へ移動する。言い換えると、第1機構部(K1)の第2室(S2)は、まだ閉じきり状態になっていない。
また、駆動軸(70)の回転角度が0°から増える過程において、第2機構部(K2)では、第1室(S1)の容積が次第に増加する。そのため、容積が減少してゆく第1機構部(K1)の第2室(S2)から冷媒流路(P)へ流出した冷媒は、容積が増加してゆく第2機構部(K2)の第1室(S1)へ流入する。
駆動軸(70)の回転角度が90°を少し過ぎると、第1ピストン(40)が冷媒流路(P)の上端の一部を塞ぎ、第1機構部(K1)の第2室(S2)と冷媒流路(P)との接続を遮断する。これにより、第1機構部(K1)の第2室(S2)が閉じ切られ、該第2室(S2)の冷媒が第2機構部(K2)の第1室(S1)へ向かって流出しなくなる。
駆動軸(70)の回転角度が90°を少し過ぎたところから更に進むと、第1機構部(K1)では、閉じきり状態になった第2室(S2)の容積が減少して、第2室(S2)内の冷媒が圧縮される行程(圧縮行程)が行われる。
駆動軸(70)の回転角度が180°を超えると、第1機構部(K1)では、第2室(S2)の容積が更に減少して第2室(S2)内の冷媒が更に圧縮される。第2室(S2)内の冷媒の圧力がある程度以上に達すると、吐出ポート(24)に設けられた吐出弁が開き、第2室(S2)から吐出ポート(24)へ冷媒が吐き出される行程(吐出行程)が行われる。
第1機構部(K1)における圧縮行程は、駆動軸(70)の回転角度が270°を超えても引き続き行われる。そして、第1機構部(K1)における圧縮行程が終了し、駆動軸(70)の回転角度が360°に達する。駆動軸(70)の回転角度が360°達すると、各機構部(K1,K2)は、駆動軸(70)の回転角度が0°と同じ状態に戻る。
〈第2機構部の動作〉
次に、第2機構部(K2)が行う行程について説明する。
駆動軸(70)が図5の時計方向に回転して駆動軸(70)の回転角度が180°から増えると、第2機構部(K2)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加し始めて吸入行程が行われる一方、第2機構部(K2)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が減少し始める。第1機構部(K1)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加して吸入行程が行われる一方、第1機構部(K1)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が次第に減少してゆく。
このとき、第2機構部(K2)の第2室(S2)内の冷媒の一部は、冷媒流路(P)を介して、第1機構部(K1)の第1室(S1)へ移動する。言い換えると、第2機構部(K2)の第2室(S2)は、まだ閉じきり状態になっていない。
また、駆動軸(70)の回転角度が180°から増える過程において、第1機構部(K1)では、第1室(S1)の容積が次第に増加する。そのため、容積が減少してゆく第2機構部(K2)の第2室(S2)から冷媒流路(P)へ流出した冷媒は、容積が増加してゆく第1機構部(K1)の第1室(S1)へ流入する。
駆動軸(70)の回転角度が270°を少し過ぎると、第2ピストン(45)が冷媒流路(P)の下端の一部を塞ぎ、第2機構部(K2)の第2室(S2)と冷媒流路(P)との接続を遮断する。これにより、第2機構部(K2)の第2室(S2)が閉じ切られ、該第2室(S2)の冷媒が第1機構部(K1)の第1室(S1)へ向かって流出しなくなる。
駆動軸(70)の回転角度が270°を少し過ぎたところから更に進むと、第2機構部(K2)では、閉じきり状態になった第2室(S2)の容積が減少して圧縮行程が行われる。
駆動軸(70)の回転角度が360°達すると、各機構部(K1,K2)は、駆動軸(70)の回転角度が0°と同じ状態に戻る。駆動軸(70)の回転角度が360°(0°)を超えると、第2機構部(K2)では、第2室(S2)の容積が更に減少して第2室(S2)内の冷媒が更に圧縮される。第2室(S2)内の冷媒の圧力がある程度以上に達すると、吐出ポート(29)に設けられた吐出弁が開き、第2室(S2)から吐出ポート(29)へ冷媒が吐き出される吐出行程が行われる。
第2機構部(K2)における圧縮行程は、駆動軸(70)の回転角度が90°を超えても引き続き行われる。そして、第2機構部(K2)における圧縮行程が終了し、駆動軸(70)の回転角度が180°に達する。
-冷媒の流れの詳細-
次に、冷媒流路(P)における冷媒の流れの詳細について説明する。
例えば、第1機構部(K1)の第2室(S2)の容積が減少する過程において、第1機構部(K1)のピストン(40)が冷媒流路(P)を通過するまで(具体的には、第1ピストン(40)の外周面のうち第1シリンダ(30)の内周面と実質的に接する部分が冷媒流路(P)を通過するまで)は、第1機構部(K1)の第2室(S2)の冷媒が冷媒流路(P)を通って第2機構部(K2)の第1室(S1)へ流出し続ける。したがって、第1機構部(K1)の第1ピストン(40)が冷媒流路(P)を通過するまでは、第2室(S2)において冷媒は圧縮されない。
第1機構部(K1)の第1ピストン(40)が冷媒流路(P)を通過すると、第1機構部(K1)の第2室(S2)は、冷媒流路(P)と連通しない閉じきり状態となる。その後、第1機構部(K1)では、第1ピストン(40)が移動するにつれて、第2室(S2)の冷媒が圧縮される。
このように、圧縮機構(15)に冷媒流路(P)を形成することによって、容積が減少している第2室(S2)が閉じきり状態になるタイミングを遅らせることができる。その結果、閉じきり状態になった時点における第2室(S2)の容積を減少させることができ、駆動軸(70)が一回転する間に各機構部(K1,K2)へ吸入される冷媒の体積を減少させることができる。
また、冷媒流路(P)は、各機構部(K1,K2)の第2室(S2)と他の機構部(K1,K2)の第1室(S1)と直接に連通させているので、短い経路で冷媒を移動させることができる。これにより、圧縮機構(15)で冷媒を吸入する際の圧力損失の増加を抑制することができる。
-実施形態1の特徴(1)-
本実施形態のロータリ圧縮機(1)は、各機構部(K1,K2)の第2室(S2)と他の機構部(K1,K2)の第1室(S1)とを連通させる冷媒流路(P)を備える。
本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、冷媒流路(P)によって各機構部(K1,K2)の第2室(S2)と他の機構部(K1,K2)の第1室(S1)とが連通している。そのため、例えば、第1ピストン(40)が駆動されて、該ピストン(40)に対応する第1機構部(K1)の第2室(S2)の容積が減少する際に、該第2室(S2)の冷媒が、冷媒流路(P)を介して、他の第2機構部(K2)の第1室(S1)に流入する。具体的には、吸入ポート(33)から第1機構部(K1)の流体室(S)へ流入した冷媒の一部が再び吸入ポート(33)を通ることなく、冷媒流路(P)を介して、第2機構部(K2)の第1室(S1)へ流入する。
これにより、第1機構部(K1)の流体室(S)の冷媒を、冷媒流路(P)を通じて他の第2機構部(K2)の流体室(S)に直接に流入させることができる。その結果、複数のシリンダ(30,35)を有するロータリ圧縮機(1)において、冷媒を吸入する際の圧力損失の増加を抑制できる。
-実施形態1の特徴(2)-
本実施形態のロータリ圧縮機(1)の中間プレート(50)には、該中間プレート(50)の厚さ方向に貫通して冷媒流路(P)を構成する連通孔(52)が形成されている。
本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、中間プレート(50,56)に形成された連通孔(52,58)が冷媒流路(P)を構成するので、圧縮機に冷媒流路(P)を形成するための加工工程の増加を抑えることができる。
また、本実施形態の連通孔(52)は、断面が円形の真っ直ぐな孔である。これにより、一つの機構部(K1,K2)の流体室(S)と他の機構部(K1,K2)の流体室(S)とが最短の経路で繋がるので、各機構部(K1,K2)が冷媒を吸入する際の圧力損失の増加を更に抑制できる。
-実施形態1の特徴(3)-
本実施形態のロータリ圧縮機(1)におけるシリンダ(30,35)の面には、該シリンダ(30,35)に隣接する中間プレート(50)の連通孔(52)に対応する位置に設けられて該連通孔(52)と共に冷媒流路(P)を構成する拡大通路部(E)が形成される。
本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、第1及び第2シリンダ(30,35)の各内壁面に拡大通路部(E)が形成されるので、冷媒流路(P)の断面積を拡大できる。その結果、冷媒を吸入する際の圧力損失の増加を更に抑制できる。
-実施形態1の特徴(4)-
本実施形態のロータリ圧縮機(1)の中間プレート(50)では、冷媒流路(P)を構成する連通孔(52)が、第1機構部(K1)の第1対象工程の一部または全部だけにおいて、第1機構部(K1)の第2室(S2)と第2機構部(K2)の第1室(S1)とが連通するような位置に設けられる。
本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、中間プレート(50)の連通孔(52)が、第1対象工程だけにおいて第1機構部(K1)の第2室(S2)と第2機構部(K2)の第1室(S1)とが連通するような位置に設けられるので、第1機構部(K1)の第2室(S2)で圧縮される冷媒の量が少なくなる。
-実施形態1の特徴(5)-
本実施形態のロータリ圧縮機(1)の冷媒流路(P)は、各ピストン(40,45)の内周面よりも常に径方向外側となる位置で各流体室(S,S)に開口する。
本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、駆動軸(70)と各ピストン(40,45)との間を潤滑する潤滑油が冷媒流路(P)を通って各流体室(S)に流入することを抑制できる。
-実施形態1の変形例-
〈変形例1〉
図6に示すように、本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、各シリンダ(30,35)に形成された拡大通路部(E)は、切欠き部でもよい。
具体的には、第1シリンダ(30)の拡大通路部(E)は、第1切欠き部(84)である。第1切欠き部(84)は、第1シリンダ(30)の内周面の下側に形成されている。第1切欠き部(84)は、第1シリンダ(30)の厚さ方向に貫通していない。第1切欠き部(84)は、第1シリンダ(30)の内周面の一部を切り欠くことによって形成される。言い換えると、拡大通路部(E)は、第1シリンダ(30)の下側の角部を切り欠くことによって形成される。
また、拡大通路部(E)は、第1シリンダ(30)の下面に近づくほど径方向外側に拡大する形状である。第1切欠き部(84)は、第1機構部(K1)の流体室(S)と中間プレート(50)の連通孔(52)の上端部とを連通させている。
第2シリンダ(35)の拡大通路部(E)は、第2切欠き部(85)である。第2切欠き部(85)は、第2シリンダ(35)の内周面の上側に形成されている。第2切欠き部(85)は、第2シリンダ(35)の厚さ方向に貫通していない。第2切欠き部(85)は、第2シリンダ(35)の内周面の一部を切り欠くことによって形成される。言い換えると、拡大通路部(E)は、第2シリンダ(35)の上側の角部を切り欠くことによって形成される。
また、拡大通路部(E)は、第2シリンダ(35)の上面に近づくほど径方向外側に拡大する形状である。第2切欠き部(85)は、第2機構部(K2)の流体室(S)と中間プレート(50)の連通孔(52)の下端部とを連通させている。
〈変形例2〉
図7に示すように、本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、各シリンダ(30,35)に形成された拡大通路部(E)は、凹部でもよい。
図7に示すように、第1シリンダ(30)の拡大通路部(E)は、第1凹部(86)である。第1凹部(86)は、第1シリンダ(30)の内周面の下側に形成されている。第1凹部(86)は、第1シリンダ(30)の径方向外側に凹んでいる。第1凹部(86)は、第1シリンダ(30)の内周面の一部を切り欠くことによって形成される。言い換えると、拡大通路部(E)は、第1シリンダ(30)の下側の角部を切り欠くことによって形成される。
また、拡大通路部(E)は、径方向外側に一定の幅で第1シリンダ(30)の下面に向かって延びている。第1凹部(86)は、第1機構部(K1)の流体室(S)と中間プレート(50)の連通孔(52)の上端部とを連通させている。
第2シリンダ(35)の拡大通路部(E)は、第2凹部(87)である。第2凹部(87)は、第2シリンダ(35)の内周面の上側に形成されている。第2凹部(87)は、第2シリンダ(35)の径方向外側に凹んでいる。第2凹部(87)は、第2シリンダ(35)の内周面の一部を切り欠くことによって形成される。言い換えると、拡大通路部(E)は、第2シリンダ(35)の上側の角部を切り欠くことによって形成される。
また、拡大通路部(E)は、径方向外側に一定の幅で第2シリンダ(35)の上面に向かって延びている。第2凹部(87)は、第1機構部(K1)の流体室(S)と中間プレート(50)の連通孔(52)の上端部とを連通させている。
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態のロータリ圧縮機(1)は、実施形態1のロータリ圧縮機(1)において、冷媒流路(P)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の冷媒流路(P)について、実施形態1の冷媒流路(P)と異なる点を説明する。
本実施形態の冷媒流路(P)は、実施形態1の冷媒流路(P)とは異なり、中間プレート(50)に形成された連通孔(52)のみで構成される。言い換えると、第1シリンダ(30)及び第2シリンダ(35)には、拡大通路部(E)が形成されていない。
図8に示すように、連通孔(52)は、中間プレート(50)における、各仮想円(V1,V2)と各シリンダ(30,35)の内周円との間に形成されている。本実施形態の連通孔(52)は、拡大通路部(E)を介すことなく、直接第1シリンダ(30)の流体室(S)と第2シリンダ(35)の流体室(S)とを連通させている。
冷媒流路(P)が中間プレート(50)の連通孔(52)のみによって構成されるので、簡単な加工で冷媒流路(P)を形成できる。
《実施形態3》
実施形態3について説明する。本実施形態のロータリ圧縮機(1)は、実施形態1のロータリ圧縮機(1)において、圧縮機構(15)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の圧縮機構(15)について、実施形態1の圧縮機構(15)と異なる点を説明する。
本実施形態の圧縮機構(15)は、三気筒のロータリ式流体機械である。圧縮機構(15)は、フロントヘッド(20)と、リアヘッド(25)と、駆動軸(70)とを、一つずつ備えている。圧縮機構(15)は、二つの中間プレート(50,56)と、三つの機構部(K1,K2,K3)とを備えている。
圧縮機構(15)では、上方から下方へ向かって順に、フロントヘッド(20)と、第1シリンダ(30)と、第1中間プレート(50)と、第2シリンダ(35)と、第2中間プレート(56)と、第3シリンダ(60)と、リアヘッド(25)とが重なり合った状態で配置されている。本実施形態の各中間プレート(50,56)は、形状、寸法、材料が互いに同一である。
圧縮機構(15)は、第1機構部(K1)と、第2機構部(K2)と、第3機構部(K3)とを備えている。第1機構部(K1)と、第2機構部(K2)と、第3機構部(K3)とは、二つの中間プレート(50)がそれぞれの機構部(K1,K2,K3)の間に挟まって、上下方向に積層されている。
第1機構部(K1)及び第2機構部(K2)は、実施形態1と同様である。第3機構部(K3)は、第3シリンダ(60)と、第3ピストン(90)と、第3ブレード(91)と備えている。第3シリンダ(60)には、シリンダボア(61)と、ブレード収容孔(62)と、吸入ポート(63)とが形成される。第3シリンダ(60)には、一対のブッシュ(92)が設けられている。三つのシリンダ(30,35,60)は、それぞれのブレード収容孔(32,37,62)が三つのシリンダ(30,35,60)の積層方向において重なり合うように配置される。
なお、本実施形態では、第3機構部(K3)を構成する部品の形状、寸法、材料は、実施形態1の第1機構部(K1)及び第2機構部(K2)を構成する部材と同一である。
各シリンダ(30,35,60)には、拡大通路部(E)が形成されている。具体的には、第1シリンダ(30)には第1溝部(81)、第2シリンダ(35)には第2溝部(82)、第3シリンダ(60)には第3溝部(83)が形成されている。第3溝部(83)は、第1溝部(81)及び第2溝部(82)と同様の構造である。
駆動軸(70)は、主軸部(72)と、第1偏心部(75)と、第1中間連結部(78)と、第2偏心部(76)と、第2中間連結部(79)と、第3偏心部(77)と、副軸部(74)とを備えている。本実施形態の駆動軸(70)では、主軸部(72)と、第1偏心部(75)と、第1中間連結部(78)と、第2偏心部(76)と、第2中間連結部(79)と、第3偏心部(77)と、副軸部(74)とが、上から下へ向かって順に配置されている。
各偏心部(75,76,77)は、それぞれの中心軸が駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対して偏心している。駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第1偏心部(75)の偏心方向は、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第2偏心部(76)の偏心方向と120°異なっている。駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第1偏心部(75)の偏心方向は、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第3偏心部(77)の偏心方向と240°異なっている。第3ピストン(90)には、駆動軸(70)の第3偏心部(77)が挿し通される。
各中間プレート(50,56)の中央部には、中間プレート(50,56)を厚さ方向へ貫通する中央孔が形成されている。第1中間プレート(50)の中央孔には、駆動軸(70)の第1中間連結部(78)が挿し通され、第2中間プレート(56)の中央孔には、駆動軸(70)の第2中間連結部(79)が挿し通される。
第1中間プレート(50)には、円形状の第1連通孔(52)が形成され、第2中間プレート(56)には、円形状の第2連通孔(58)が形成されている。第1連通孔(52)及び第2連通孔(58)は、各中間プレート(50)の厚さ方向に貫通している。第1連通孔(52)及び第2連通孔(58)は、断面が円形の真っ直ぐな孔である。
第1機構部(K1)のブレード(41)が第1シリンダ(30)から最も退く位置での駆動軸(70)の回転角度を0°としたときに、各連通孔(52,58)は、中間プレート(50)において、駆動軸(70)の回転角度が角度A(0°)から駆動軸(70)の回転方向へ120°進んだ位置に形成されている。
冷媒流路(P)は、各中間プレート(50,56)の連通孔(52,58)と、各シリンダ(30,35,60)の溝部(81,82,83)とで構成される。第1溝部(81)、第1連通孔(52)、第2溝部(82)、第2連通孔(58)、及び第3溝部(83)は、上から下へ向かって順に、上下方向(機構部(K1,K2,K3)の積層方向)に連続して重なって形成される。また、各連通孔(52,58)及び各溝部(81,82,83)は、上下方向に概ね真っ直ぐな流路を形成している。
-圧縮機構の運転動作-
ロータリ圧縮機(1)の基本的な運転動作は、実施形態1と同様である。ここでは、本実施形態の圧縮機構(15)の運転動作について、図9を参照しながら説明する。
本実施形態の圧縮機構(15)では、各機構部(K1,K2,K3)における各ピストン(40,45,48)の偏心方向は、互いに異なる。具体的には、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第1ピストン(40)の偏心方向は、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第2ピストン(45)の偏心方向と120°異なり、駆動軸(70)の回転中心軸(70a)に対する第3ピストン(90)の偏心方向と240°異なっている。そのため、第1ピストン(40)の変位の周期と、第2ピストン(45)の変位の周期と、第3ピストン(90)の変位の周期とは、120°ずれている。
ここで、図9に示す角度は、第1機構部(K1)のブレード(41)が第1シリンダ(30)から最も退く位置での駆動軸(70)の回転角度を0°とする。
〈第1機構部の動作〉
まず、第1機構部(K1)が行う行程について説明する。
駆動軸(70)が図9の時計方向に回転して駆動軸(70)の回転角度が0°から増えると、第1機構部(K1)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加し始めて第1室(S1)へ冷媒が吸入される吸入行程が行われる一方、第1機構部(K1)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が減少し始める。第2機構部(K2)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加して吸入行程が行われる一方、第2機構部(K2)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が次第に減少してゆく。第3機構部(K3)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加して吸入行程が行われる一方、第3機構部(K3)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が減少してゆく。
このとき、第1機構部(K1)の第2室(S2)内の冷媒の一部は、冷媒流路(P)を介して、第2機構部(K2)及び第3機構部(K3)の各第1室(S1,S1)へ移動する。言い換えると、第1機構部(K1)の第2室(S2)は、まだ閉じきり状態になっていない。
また、駆動軸(70)の回転角度が0°から増える過程において、第2機構部(K2)及び第3機構部(K3)では、第1室(S1)の容積が次第に増加する。そのため、容積が減少してゆく第1機構部(K1)の第2室(S2)から冷媒流路(P)へ流出した冷媒は、容積が増加してゆく第2機構部(K2)及び第3機構部(K3)の各第1室(S1,S1)へ流入する。
駆動軸(70)の回転角度が120°を少し過ぎると、第1ピストン(40)が冷媒流路(P)の上端の一部を塞ぎ、第1機構部(K1)の第2室(S2)と冷媒流路(P)との接続を遮断する。これにより、第1機構部(K1)の第2室(S2)が閉じ切られ、該第2室(S2)の冷媒が第2機構部(K2)及び第3機構部(K3)の各第1室(S1,S1)へ向かって流出しなくなる。
駆動軸(70)の回転角度が120°を少し過ぎたところから更に進むと、第1機構部(K1)では、閉じきり状態になった第2室(S2)の容積が減少して、第2室(S2)内の冷媒が圧縮される行程(圧縮行程)が行われる。
駆動軸(70)の回転角度が240°を超えると、第1機構部(K1)では、第2室(S2)の容積が更に減少して第2室(S2)内の冷媒が更に圧縮される。第2室(S2)内の冷媒の圧力がある程度以上に達すると、吐出ポート(24)に設けられた吐出弁が開き、第2室(S2)から吐出ポート(24)へ冷媒が吐き出される吐出行程が行われる。
第1機構部(K1)における圧縮行程は、駆動軸(70)の回転角度が240°を超えても引き続き行われる。そして、第1機構部(K1)における圧縮行程が終了し、駆動軸(70)の回転角度が360°に達すると、各機構部(K1,K2,K3)は、駆動軸(70)の回転角度が0°と同じ状態に戻る。
〈第2機構部の動作〉
次に、第2機構部(K2)が行う行程について説明する。
駆動軸(70)が図9の時計方向に回転して駆動軸(70)の回転角度が240°から増えると、第2機構部(K2)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加し始めて第1室(S1)へ冷媒が吸入される吸入行程が行われる一方、第2機構部(K2)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が減少し始める。第3機構部(K3)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加して吸入行程が行われる一方、第3機構部(K3)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が次第に減少してゆく。第1機構部(K1)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加して吸入行程が行われる一方、第3機構部(K3)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が減少してゆく。
このとき、第2機構部(K2)の第2室(S2)内の冷媒の一部は、冷媒流路(P)を介して、第3機構部(K3)及び第1機構部(K1)の各第1室(S1,S1)へ移動する。言い換えると、第1機構部(K1)の第2室(S2)は、まだ閉じきり状態になっていない。
また、駆動軸(70)の回転角度が240°から増える過程において、第3機構部(K3)及び第1機構部(K1)では、第1室(S1)の容積が次第に増加する。そのため、容積が減少してゆく第2機構部(K2)の第2室(S2)から冷媒流路(P)へ流出した冷媒は、容積が増加してゆく第3機構部(K3)及び第1機構部(K1)の各第1室(S1,S1)へ流入する。
駆動軸(70)の回転角度が360°に達すると、各機構部(K1,K2,K3)は、駆動軸(70)の回転角度が0°と同じ状態に戻る。駆動軸(70)の回転角度が0°(360°)を少し過ぎると、第2ピストン(45)が冷媒流路(P)の中間部の一部を塞ぎ、第2機構部(K2)の第2室(S2)と冷媒流路(P)との接続を遮断する。これにより、第2機構部(K2)の第2室(S2)が閉じ切られ、該第2室(S2)の冷媒が第3機構部(K3)及び第1機構部(K1)の各第1室(S1,S1)へ向かって流出しなくなる。
駆動軸(70)の回転角度が0°を少し過ぎたところから更に進むと、第2機構部(K2)では、閉じきり状態になった第2室(S2)の容積が減少して、第2室(S2)内の冷媒が圧縮される圧縮行程が行われる。
駆動軸(70)の回転角度が120°を超えると、第2機構部(K2)では、第2室(S2)の容積が更に減少して第2室(S2)内の冷媒が更に圧縮される。第2室(S2)内の冷媒の圧力がある程度以上に達すると、吐出ポート(29)に設けられた吐出弁が開き、第2室(S2)から吐出ポート(29)へ冷媒が吐き出される吐出行程が行われる。
第2機構部(K2)における圧縮行程は、駆動軸(70)の回転角度が120°を超えても引き続き行われる。そして、第2機構部(K2)における圧縮行程が終了し、駆動軸(70)の回転角度が240°に達する。
〈第3機構部の動作〉
次に、第3機構部(K3)が行う行程について説明する。
駆動軸(70)が図9の時計方向に回転して駆動軸(70)の回転角度が120°から増えると、第3機構部(K3)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加し始めて第1室(S1)へ冷媒が吸入される吸入行程が行われる一方、第3機構部(K3)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が減少し始める。第1機構部(K1)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加して吸入行程が行われる一方、第1機構部(K1)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が次第に減少してゆく。第2機構部(K2)の第1室(S1)では、該第1室(S1)の容積が増加して吸入行程が行われる一方、第2機構部(K2)の第2室(S2)では、該第2室(S2)の容積が減少してゆく。
このとき、第3機構部(K3)の第2室(S2)内の冷媒の一部は、冷媒流路(P)を介して、第1機構部(K1)及び第2機構部(K2)の各第1室(S1,S1)へ移動する。言い換えると、第3機構部(K3)の第2室(S2)は、まだ閉じきり状態になっていない。
また、駆動軸(70)の回転角度が120°から増える過程において、第1機構部(K1)及び第2機構部(K2)では、第1室(S1)の容積が次第に増加する。そのため、容積が減少してゆく第3機構部(K3)の第2室(S2)から冷媒流路(P)へ流出した冷媒は、容積が増加してゆく第1機構部(K1)及び第2機構部(K2)の各第1室(S1,S1)へ流入する。
駆動軸(70)の回転角度が240°を少し過ぎると、第3ピストン(90)が冷媒流路(P)の下端の一部を塞ぎ、第3機構部(K3)の第2室(S2)と冷媒流路(P)との接続を遮断する。これにより、第3機構部(K3)の第2室(S2)が閉じ切られ、該第2室(S2)の冷媒が第1機構部(K1)及び第2機構部(K2)の各第1室(S1,S1)へ向かって流出しなくなる。
駆動軸(70)の回転角度が240°を少し過ぎたところから更に進むと、第3機構部(K3)では、閉じきり状態になった第2室(S2)の容積が減少して、第2室(S2)内の冷媒が圧縮される圧縮行程が行われる。
駆動軸(70)の回転角度が360°に達すると、各機構部(K1,K2,K3)は、駆動軸(70)の回転角度が0°と同じ状態に戻る。駆動軸(70)の回転角度が0°(360°)を超えると、第3機構部(K3)では、第2室(S2)の容積が更に減少して第2室(S2)内の冷媒が更に圧縮される。第2室(S2)内の冷媒の圧力がある程度以上に達すると、吐出ポート(64)に設けられた吐出弁が開き、第2室(S2)から吐出ポート(64)へ冷媒が吐き出される吐出行程が行われる。
第3機構部(K3)における圧縮行程は、駆動軸(70)の回転角度が0°を超えても引き続き行われる。そして、第2機構部(K2)における圧縮行程が終了し、駆動軸(70)の回転角度が120°に達する。
-第1変形例-
上記各実施形態のロータリ圧縮機(1)では、中間プレート(50)の連通孔(52)は、複数形成されてもよい。
例えば、本変形例を実施形態1に適用すると、図10に示すように、連通孔(52)は、中間プレート(50)に4つ形成されている。4つの連通孔(52)の各直径は、互いに異なっている。各連通孔(52)の直径は、互いに同一でもよい。なお、ここで示す連通孔(52)の数は単なる一例である。
各連通孔(52)は、中間プレート(50)において、第1機構部(K1)の第1ブレード(41)が第1シリンダ(30)から最も退く位置での駆動軸(70)の回転角度を0°としたときに、該角度A(0°)と、該角度Aから駆動軸(70)の回転方向へ180°進んだ角度Bの範囲内に形成されている。各連通孔(52)は、中間プレート(50)において、第1及び第2仮想円(V1,V2)よりも径方向外側となる位置に形成されている。
-第1変形例の特徴-
本変形例の中間プレート(50)には、冷媒流路(P)を構成する連通孔(52)が複数形成される。
中間プレートに複数の連通孔(52)が形成されるので、冷媒流路(P)の断面積を拡大できる。その結果、各機構部(K1,K2)において、冷媒を吸入する際の圧力損失の増大を更に抑制できる。
-第2変形例-
上記各実施形態のロータリ圧縮機(1)では、中間プレート(50)の連通孔(52)は、円形状でなくてもよい。
例えば、本変形例を実施形態1に適用すると、図11に示すように、本変形例の中間プレート(50)には、楕円形状の連通孔(52)が2つ形成されている。また、例えば、図12に示すように、別の変形例では三日月状に1つ形成されている。
各連通孔(52)は、中間プレート(50)において、第1機構部(K1)の第1ブレード(41)が第1シリンダ(30)から最も退く位置での駆動軸(70)の回転角度を0°としたときに、該角度A(0°)と、該角度Aから駆動軸(70)の回転方向へ180°進んだ角度Bの範囲内に形成されている。各連通孔(52)は、中間プレート(50)において、第1及び第2仮想円(V1,V2)よりも径方向外側となる位置に形成されている。
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、及びその他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。