JP2022070223A - 熱処理大麦粉の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】パンや麺の原料に用いた場合の成形作業に手間がかからず、しかも、焙煎して粉砕した熱処理大麦粉を小麦粉に混入したときにえぐみ、苦味がなく、食感のよいパンや麺を製造することが可能な熱処理大麦粉の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】非加熱の大麦を粉砕して得られる大麦粉の白度(L値)を100としたときに、加熱処理した大麦を粉砕して得られる大麦粉の白度が78~83となるように加熱処理する。その加熱処理は、前記熱処理大麦粉の澱粉のアルファ化度が50%以下となるように行う。【選択図】なし
Description
本発明は、熱処理大麦粉の製造方法に関するものであり、より詳細には、大麦の持つ成分を破壊することなく、えぐみや苦味を除去することができる、主に製パン・製麺に用いられる熱処理大麦粉の製造方法に関するものである。
大麦は、β-グルカンという水溶性食物繊維を多く含み、また、ビタミンB群、ビタミンE、カリウム、カルシウム、鉄分等の微量栄養素を豊富に含む健康食材である。
大麦はこれまで、焙煎して粉に粉砕し、「はったい粉(大麦や裸麦を焙煎し、石臼などで挽いた粉)」、「麦こがし」、「こうせん」等として和菓子(落雁、練り菓子)の原料として使用されてきたが、その用途はこれらに限定されていた。そして、その場合の焙煎は、焙煎の基準値であるL値(黒のL値を0、白のL値を100として、その間の色の差(明度)を0~100の数値に置き換えたもので、焙煎が強いほど数値が低くなる。)が、52~53、もしくは、58のように、60以下で、かなり焦げ目がつく色合いとされていた。また、その焙煎は、200~250℃の極めて高温下で短時間にて行われていた。
本発明者は、大麦を加工してパンや麺などの小麦粉の添加材料として使用することができないか、種々の試作を試みた。その結果、大麦粉のアルファ化度が高ければ高いほど(焙煎を強めにすればするほど)、ダマになりやすく、大量に商品を製造する上で大きな支障となり、そのことが、大麦粉が普及しない大きな要因となっていることが判明した。また、大麦を生のまま、あるいは、焙煎して粉砕した場合、その粉を小麦粉に混入したときにえぐみ、渋み、独特の香りが残ってしまうことが、粉にしたときの大きな問題であることも判明した。
従来、小麦粉原料の一部に代えて大麦粉を用いる提案がなされている(特許文献1:特許第6742742号公報)。その方法は、大麦粉を乾熱加熱処理した後に粉砕し、L値を85~100にし、澱粉のアルファ化度を25%以下とすることを特徴とするものである。
しかし、この方法の場合は、L値を85~100にするため、製パン性が非常に悪く、また、L値が85の場合には生に近いために常温保管が難しく、菌の発生増殖の可能性がある。このことは作業性の良否にも通じていて、これ以上白度を上げた場合には、通常の製パンの際に種々の制約が伴うことになる。即ち、アルファ化度を10~30%もしくは50%にしたものを使用した場合に、ミキシングの際にL値が85以上の大麦粉であると、生地がまとまりづらく、脆(もろ)い生地になってしまう。その場合、時間と共に生地が締まってくるが、L値が85以上の場合は、より過度なミキシングが必要となり、作業性が悪くなる。
また、上記方法の場合は、パンを発酵させるときに発酵が遅くなるという問題もある。
更に、上記方法の場合は、生地の吸水率が想定よりも高くなるが、生地がまとまりづらく、焼成時間を長めに設ける必要が出てくる。この問題は、ポーションを小さくすることで解決できるが、そのことは、従来のような大きなパン形状に仕上げることができないことを意味する。そして、L値85以上の処理をした大麦粉は、生地が脆くなって製品のボリュームが劣るため、別途グルテンを添加する必要があり、作業上、大きな制約となる。
上述したように、従来提案されている大麦粉の製造方法の場合は、作業上大きな制約が伴う等、多くの問題があり、大麦粉が普及しない大きな要因となっていた。そこで本発明は、そのような問題のない、即ち、パンや麺の原料に用いた場合の成形作業に手間がかからず、しかも、焙煎して粉砕した熱処理大麦粉を小麦粉に混入したときにえぐみ、苦味がなく、食感のよいパンや麺を製造することが可能な熱処理大麦粉の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、大麦が持つえぐみ、苦みをいかにしたら除去できるのか試作試験を繰り返し行った結果、原料である大麦の水分含量を低下させることが有効であり、そのためには、ある程度焙煎度合いを調整してアルファ化を進め、弱アルファ化に止めることが必要であり、また同時に、焙煎された大麦を粉砕する際に、粉の粒子を極力均一化することが重要であるとの知見を得て本発明を完成させるに至ったものである。
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、非加熱の大麦を粉砕して得られる大麦粉の白度(L値)を100としたときに、加熱処理した大麦を粉砕して得られる大麦粉の白度が78~83となるように加熱処理することを特徴とする熱処理大麦粉の製造方法である。
一実施形態においては、前記熱処理大麦粉の澱粉のアルファ化度が50%以下となるように加熱処理する。
一実施形態においては、原料となる大麦を焙煎して水分含量を低下させる焙煎工程と、焙煎した大麦をその物性を変化させないように粉砕する粉砕工程とを含み、前記焙煎工程は、大麦が過度にアルファ化せず、且つ、澱粉が炭化しない温度帯にて行う。
一実施形態においては、前記粉砕工程の前に、焙煎→冷却→焙煎→冷却の反復工程を置く。また、一実施形態においては、前記焙煎は、150~190℃の温度範囲内で行う。更に一実施形態においては、前記焙煎は、前記大麦の水分含量が25~35%の範囲内に低下するまで行う。
一実施形態においては、前記粉砕は、高速粉砕方式又は水冷式胴搗粉砕方式により行い、粉の粒度をできるだけ均一にする。
本発明に係る製造方法によれば、パンや麺の原料に用いた場合の成形作業に手間がかからず、しかも、焙煎して粉砕した熱処理大麦粉を小麦粉に混入したときにえぐみ、苦味がなく、食感のよいパンや麺を製造することが可能な熱処理大麦粉の製造方法を提供し得る効果がある。
本発明に係る熱処理大麦粉の製造方法は、非加熱の大麦を粉砕して得られる大麦粉の白度(L値)を100としたときに、加熱処理した大麦を粉砕して得られる大麦粉の白度が78~83となるように加熱処理することを特徴とするものであり、好ましい実施形態においては、前記熱処理大麦粉の澱粉のアルファ化度が50%以下となるように加熱処理する。
本発明に係る方法は、より詳細には、原料となる大麦を焙煎して水分含量を低下させる焙煎工程と、焙煎した大麦を、その物性を変化させないように粉砕する粉砕工程とを含み、前記焙煎工程は、大麦が過度にアルファ化せず、且つ、澱粉が炭化しない温度帯にて行うことを特徴とする。そして、前記粉砕工程の前に、焙煎→冷却→焙煎→冷却の、焙煎と冷却の反復工程を置くことで、大麦の中心温度がアルファ化直前の状態になるようにし、その後に粉砕工程に移行する。
従来の焙煎方式としては、例えば、180~300℃の高温焙煎を5~6分間行う方式が一般的であるが、本発明においてはこれを見直し、従来の方式と比較し、約90℃近く温度を下げた90~220℃、より好ましくは、150~190℃の低温焙煎を3~6分間行うこととする。このような条件で焙煎することにより、大麦の中心温度が100℃以上にならず、即ち、弱アルファ化状態に止まるように焙煎することができる。そして、その場合の焙煎のL値は、60以上、好ましくは78~83とする。この条件で焙煎することにより、澱粉の炭化を抑止することができる。
この焙煎工程では、焙煎後、冷風により急速冷却してアルファ化を抑える作業を、焙煎→冷却→焙煎→冷却の順に取り入れることが好ましい。このように焙煎→冷却の工程を反復し、大麦を弱アルファ化する処理を行ってその水分含量を低くすることにより、大麦が持つ、えぐみや苦味である、アクを抜くことができることが判明した。即ち、この処理により、大麦が持つ、渋みやえぐみである成分を化学変化させると同時に、その成分を蒸発させ、渋みやえぐみの大きな要因と考えられる煤を排出除去することにより、渋みやえぐみをなくすことができるのである。
また、それと同時に判明した点は、本発明の利点として、この製法で作られた熱処理大麦粉は、小麦粉に混入したときに、大麦の持つ成分(ビタミンを含む)を破壊しないという点である。
上述したように原料大麦の水分含量を低くするのは、そうすることによって製造される熱処理大麦粉の水分活性が下がり、酸化、劣化が抑えられて保存性が高まるからであり、また、水分含量低下に伴う軽量化により運搬が容易となるというメリットがあり、更に、製パン、製麺の際における吸水率が向上するという利点があるからである。
穀物、特に大麦に関して、焙煎する際のアルファ化度には基準があり、ある程度の基準までは、アルファ化度が高くなれば吸水率は向上する。しかし、過度のアルファ化は逆の現象となり、吸水率が低下する。また、焙煎に際し、メイラード反応(食品の褐変や香気の生成に関与する。)やカラメル化反応の生成が関わり、強く焙煎したものほど香りが生じ、食物繊維は損なわれる。そこで、本発明においては、90~220℃の低温焙煎とすることで、食物繊維の損傷を防止するようにしている。
粉砕は、粉の持つ物性を変化させないように、即ち、澱粉や食物繊維を損傷しないように行う必要がある。そのため、本発明における粉砕方式としては、大麦の粉砕に一般的に用いられている気流粉砕方式(特許文献1参照)やロール粉砕方式ではなく、高速粉砕方式又は水冷式胴搗粉砕方式を採用することが推奨される。粉砕した粉の粒度は、細かければ細かいほど食材に適し、また、β-グルカンの特性がより活かされる。
また、従来の大麦粉の場合は、粉の粒子がバラバラ(50~200メッシュで、粒度分布表は台形の形をしている)であったが、粉の粒度を均一にすることが非常に重要である。即ち、粉を、100、110、120、130、140、150メッシュの範囲で、ある程度の細かさを追求するが、一番重要なのは粉の粒度を均一にすることである。大麦粉の粒度を均一とする方法としては、例えば、大麦粉の粒度分布グラフにおける3σ値(σ:標準偏差)が所望の値以下となるように粉砕後の篩分けを行う方法がある。このような篩分けとしては、例えば、粉砕工程により得られた粉を、先ず、100メッシュの篩に通し、次いで100メッシュの篩を通過した粉を、150メッシュの篩に通し、篩に残った粉を熱処理大麦粉とすることが挙げられる。この場合、使用する2種の篩のメッシュ差が小さい程、粉の粒度は均一なものとなる。このように、粒度分布グラフが鋭角な高い山を描くようにすることで、小麦に混ぜやすくなり、製パン・製麺にする際に粉が均一に小麦に混ざってダマができず、パン生地、麺生地が成形しやすい粉にすることが可能となり、以て、工場のライン等での大量生産が可能となる。
本発明に係る製造方法で作られた大麦粉の場合、過度のアルファ化が抑えられているため、従来の大麦粉に比較して、吸水率が38%以上と格段に向上し、また、生の大麦粉に比較しても、吸水率が約20%向上し、小麦粉に比較しても、吸水率が約40%向上する。このため、本発明に係る製造方法で作られた大麦粉は、大麦の成分であるβ-グルカン(食物繊維)の作用も加わって保水性が抜群によくなり、これまでになかった、しっとり感、もっちり感を醸し出すことが可能となった。また、β-グルカンと成分の影響により、パンの日持ちを延ばすことに成功した。即ち、通常2日で硬くなるパン生地が、3~4日間、油脂を使用せずに日持ちを長引かせることができた。更に、吸水率の向上に伴って加水分量が増えることにより、従来のものに比べて粉の持つえぐみがなくなり、また、独特の強い渋みもなくなり、従来の焙煎した大麦粉とは全く異なる、製パンや製麺に適した粉にすることができた。
原料となる大麦としては、六条大麦、二条大麦のうるち種、並びに、六条はだか麦のうるち種が好適であるが、六条大麦、二条大麦の皮麦の外皮を剥取加工する精麦加工したものであっても差し支えない。また、多少味は落ちるが、六条大麦、二条大麦のもち麦であってもよい。要するに、品種は問わないということである。なお、上記皮麦を用いる場合は、焙煎温度をやや高めの150℃~250℃に設定し、3分焙煎、冷却、3分焙煎、冷却の工程で急速冷却した後、粉の粉砕をやや粗めに行う(100~130メッシュ)。その際、粉の粒子を均一にすることで、従来のはったい粉よりも製パン性、製麺性が格段に向上し、小麦粉へ30%以上混入することが可能な粉とすることができた。
本発明に係る大麦粉を、小麦を使用していた従来の商品につき、小麦の代わりに使用すると、健康的要素を併せ持ち、日本人が好む香り、保水性のある味わい、もちもちとした食感のパンや麺、あるいは、お菓子の生地を表現できるようになる。それは、低温焙煎することと、焙煎、冷却、焙煎、冷却の反復処理工程を経ることで、えぐみ、苦みを除去するという、新しい焙煎方式の導入により、粉の過度なアルファ化を抑え、粉の粒子を均一化させることによるものである。
また、本発明に係る方法によって焙煎と粉砕を行うことで、大麦の成分であるβ-グルカン(食物繊維)やたんぱく質が持つ甘みを醸し出すことが可能となり、本発明に係る方法により、あらゆる品種の大麦に、その大麦が持つ特性や味を生かした熱処理大麦粉を製造することが可能となった。
また、本発明に係る方法の採用により、日本で最も生産量の多い皮麦種を、製パン用の熱処理大麦粉とすることができ、その供給体制を作ることによって、低価格の商品を作り、より多くの消費者に美味しい、健康志向の商品の提供が可能となる。
本発明に係る方法の特徴、効果をまとめると、以下のとおりである。
1)本発明にかかる熱処理大麦粉を使用することにより手粉がいらなくなり、誰でもべとつかないパン生地の成形が可能となる。即ち、この熱処理大麦粉を製パン過程で僅か3%以上混入するだけで、大麦が持つ澱粉や食物繊維の影響でパン生地がまとまりやすくなるため、小麦粉100%使用する従来の製法における手粉が必要なくなり、ベタつかずに非常にまとまりやすいものとなるので、成形が容易となる。
2)吸水率が向上するため、超高加水のパンの製造が可能になる。即ち、この熱処理大麦粉の場合は、大麦の弱アルファ化により、粉の吸水性と吸水率が上がり、小麦粉に10%大麦粉を置き換えたときに13~16%近い高加水のパン製造が可能になり、20%置き換えたときは、26~32%増加水が可能になる。
3)この熱処理大麦粉の場合は、弱アルファ化の作用により、大麦が本来持つ食物繊維の栄養素が損なわれない。また、大麦が持つ本来の栄養素を損なうことなく微粉末化されるため、血糖値の上昇をより抑えることができる、という医学的見地からのメリットもある。
1)本発明にかかる熱処理大麦粉を使用することにより手粉がいらなくなり、誰でもべとつかないパン生地の成形が可能となる。即ち、この熱処理大麦粉を製パン過程で僅か3%以上混入するだけで、大麦が持つ澱粉や食物繊維の影響でパン生地がまとまりやすくなるため、小麦粉100%使用する従来の製法における手粉が必要なくなり、ベタつかずに非常にまとまりやすいものとなるので、成形が容易となる。
2)吸水率が向上するため、超高加水のパンの製造が可能になる。即ち、この熱処理大麦粉の場合は、大麦の弱アルファ化により、粉の吸水性と吸水率が上がり、小麦粉に10%大麦粉を置き換えたときに13~16%近い高加水のパン製造が可能になり、20%置き換えたときは、26~32%増加水が可能になる。
3)この熱処理大麦粉の場合は、弱アルファ化の作用により、大麦が本来持つ食物繊維の栄養素が損なわれない。また、大麦が持つ本来の栄養素を損なうことなく微粉末化されるため、血糖値の上昇をより抑えることができる、という医学的見地からのメリットもある。
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
<試料1の作製>
原料大麦粉として、六条大麦うるち種を準備した。この原料大麦粉に対して、焙煎釜を用いて熱処理(加熱温度:170℃、加熱時間:6分)を施した。次に、このように熱処理を施した大麦粉を水冷式胴搗粉砕方式により粉砕した。これにより熱処理大麦粉(試料1)を得た。
原料大麦粉として、六条大麦うるち種を準備した。この原料大麦粉に対して、焙煎釜を用いて熱処理(加熱温度:170℃、加熱時間:6分)を施した。次に、このように熱処理を施した大麦粉を水冷式胴搗粉砕方式により粉砕した。これにより熱処理大麦粉(試料1)を得た。
上記のように得られた熱処理大麦粉(試料1)の白度を、下記の測定方法により測定して、結果を下記の表1に示した。
(白度の測定方法)
熱処理を行わずに水冷式胴搗粉砕方式により粉砕した大麦粉と、熱処理大麦粉について、色差計(日本電色工業(株)製 ZE6000)を用いて白度を測定し、未熱処理の大麦粉の白度を100としたときの熱処理大麦粉の相対白度を求める。なお、粒状の大麦粉は、コーヒーミルで粉砕した後に測定し、粉状の大麦粉は、そのまま測定する。
(白度の測定方法)
熱処理を行わずに水冷式胴搗粉砕方式により粉砕した大麦粉と、熱処理大麦粉について、色差計(日本電色工業(株)製 ZE6000)を用いて白度を測定し、未熱処理の大麦粉の白度を100としたときの熱処理大麦粉の相対白度を求める。なお、粒状の大麦粉は、コーヒーミルで粉砕した後に測定し、粉状の大麦粉は、そのまま測定する。
また、得られた熱処理大麦粉(試料1)のアルファ化度を、下記の測定方法により測定して、結果を下記の表1に示した。
(アルファ化度の測定方法)
グルコアミラーゼ第二法により熱処理大麦粉のアルファ化度を求める。
(アルファ化度の測定方法)
グルコアミラーゼ第二法により熱処理大麦粉のアルファ化度を求める。
また、得られた熱処理大麦粉(試料1)の水分含量を、下記の測定方法により測定して、結果を下記の表1に示した。
(水分含量の測定方法)
熱処理を行わずに水冷式胴搗粉砕方式により粉砕した大麦粉と、熱処理大麦粉について、赤外線水分計((株)ケット科学研究所製 F-1B)を用いて水分含量を測定し、未熱処理の大麦粉の水分含量に対する熱処理大麦粉の水分含量の比率(%)を求める。なお、粒状の大麦粉は、コーヒーミルで粉砕した後に測定し、粉状の大麦粉は、そのまま測定する。
(水分含量の測定方法)
熱処理を行わずに水冷式胴搗粉砕方式により粉砕した大麦粉と、熱処理大麦粉について、赤外線水分計((株)ケット科学研究所製 F-1B)を用いて水分含量を測定し、未熱処理の大麦粉の水分含量に対する熱処理大麦粉の水分含量の比率(%)を求める。なお、粒状の大麦粉は、コーヒーミルで粉砕した後に測定し、粉状の大麦粉は、そのまま測定する。
<試料2の作製>
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:4分30秒とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料2)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:4分30秒とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料2)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
<試料3の作製>
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:3分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料3)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:3分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料3)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
<試料4の作製>
焙煎釜を用いた熱処理後、冷風により大麦粉を30℃まで急速冷却し、その後、同様の条件で熱処理、急速冷却を1回繰り返した他は、試料3の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料4)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
焙煎釜を用いた熱処理後、冷風により大麦粉を30℃まで急速冷却し、その後、同様の条件で熱処理、急速冷却を1回繰り返した他は、試料3の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料4)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
<試料5の作製>
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:10分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料5)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:10分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料5)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
<試料6の作製>
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:14分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料6)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:14分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料6)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
<試料7の作製>
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:2分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料7)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:2分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料7)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
<試料8の作製>
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:1分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料8)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
焙煎釜を用いた熱処理の条件を、加熱温度:170℃、加熱時間:1分とした他は、試料1の作製と同様にして、熱処理大麦粉(試料8)を作製した。
また、試料1と同様に、粒度分布グラフにおける白度、アルファ化度、水分含量を測定して、結果を下記の表1に示した。
<評 価>
得られた熱処理大麦粉(試料1~試料8)の吸水率を、下記の測定方法により測定して、結果を下記の表1に示した。
(吸水率の測定方法)
熱処理大麦粉を加えて練った際の粘度を、ブラベンダー社製ファリノグラフを用いて測定(測定方法:AACC法)し、吸水率を算出する。
得られた熱処理大麦粉(試料1~試料8)の吸水率を、下記の測定方法により測定して、結果を下記の表1に示した。
(吸水率の測定方法)
熱処理大麦粉を加えて練った際の粘度を、ブラベンダー社製ファリノグラフを用いて測定(測定方法:AACC法)し、吸水率を算出する。
得られた熱処理大麦粉(試料1~試料8)について、製パン工程で小麦粉に熱処理大麦粉を5%混入し、得られたパン生地のベタつきの程度を、下記の評価基準で評価し、結果を下記の表1に示した。
(ベタつきの評価基準)
○ : 手粉を使用しない場合でも、パン生地がまとまりやすい。
△ : 手粉を使用しない場合、ややベタついてパン生地をまとめる
のに要する時間が長くなる。
× : 手粉を使用しない場合、ベタついてパン生地がまとまらない。
(ベタつきの評価基準)
○ : 手粉を使用しない場合でも、パン生地がまとまりやすい。
△ : 手粉を使用しない場合、ややベタついてパン生地をまとめる
のに要する時間が長くなる。
× : 手粉を使用しない場合、ベタついてパン生地がまとまらない。
表1に示されるように、試料1~試料4の熱処理大麦粉は、製パン・製麺に使用する際に小麦に均一に混ざってダマが生じ難いものであり、また、吸水率が38%以上であり、保水性が抜群に向上し、これまでの熱処理大麦粉になかった、しっとり感、もっちり感を醸成することが可能であった。また、製パン工程にて使用した場合、手粉を使用しなくてもベタつきがなく、成形が容易であった。特に、試料4の熱処理大麦粉は、白度が試料3の熱処理大麦粉とほぼ同等であるが、吸水率がより向上したものであった。
これに対して、試料5~試料6の熱処理大麦粉は、白度が78未満であり、熱処理による過度のアルファ化が進み、吸水率が38%未満であり、保水性が劣り、しっとり感、もっちり感が得られないものであった。また、製パン工程にて使用した場合、手粉を使用しないと、ややベタつきが生じ、作業性が劣り、工場のライン等での大量生産に支障を来すおそれがあるものであった。
また、試料7~試料8の熱処理大麦粉は、白度が83を超えるものであり、熱処理によるアルファ化が抑制され、吸水率が38%未満であり、保水性が劣り、しっとり感、もっちり感が得られないものであった。また、製パン工程にて使用した場合、手粉を使用しないとベタつきが生じ、作業性が悪く、工場のライン等での大量生産が難しいものであった。
本発明に係る熱処理大麦粉の製造方法によれば、パンや麺の原料に用いた場合の成形作業に手間がかからず、しかも、小麦粉に混入したときにえぐみ、苦味がなく、食感のよいパンや麺を製造することが可能となるので、その産業上の利用可能性は大である。
Claims (8)
- 非加熱の大麦を粉砕して得られる大麦粉の白度(L値)を100としたときに、加熱処理した大麦を粉砕して得られる大麦粉の白度が78~83となるように加熱処理することを特徴とする熱処理大麦粉の製造方法。
- 前記熱処理大麦粉の澱粉のアルファ化度が50%以下となるように加熱処理することを特徴とする、請求項1に記載の熱処理大麦粉の製造方法。
- 原料となる大麦を焙煎して水分含量を低下させる焙煎工程と、焙煎した大麦をその物性を変化させないように粉砕する粉砕工程とを含み、
前記焙煎工程は、大麦が過度にアルファ化せず、且つ、澱粉が炭化しない温度帯にて行うことを特徴とする、請求項1に記載の熱処理大麦粉の製造方法。 - 前記粉砕工程の前に、焙煎→冷却→焙煎→冷却の工程を経る、請求項3に記載の熱処理大麦粉の製造方法。
- 前記焙煎は、150~190℃の温度範囲内において行う、請求項3又は4に記載の熱処理大麦粉の製造方法。
- 前記焙煎は、前記大麦の水分含量が25~35%の範囲内に低下するまで行う、請求項3乃至5のいずれかに記載の熱処理大麦粉の製造方法。
- 前記粉砕は、高速粉砕方式又は水冷式胴搗粉砕方式により行う、請求項3乃至6のいずれかに記載の熱処理大麦粉の製造方法。
- 前記粉砕は、粉の粒度が均一になるように行う、請求項3乃至7のいずれかに記載の熱処理大麦粉の製造方法。
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