以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
以下、第1実施形態に係る空圧工具を説明する。図1は、第1実施形態に係る釘打工具(「空圧工具」の一例)の断面図である。便宜的に、図1における紙面上方向及び紙面下方向を、単に、上方向及び下方向と呼び、同図における紙面左方向及び右方向を、それぞれ、第1方向D1及び第2方向D2(第1方向D1の反対方向)と呼ぶ場合がある。図1に示される釘打工具10の場合、第2方向D2側とは、グリップ32のグリップエンド側であり、第1方向D1側とは、本体側である。
[空圧工具の全体構成の一例]
釘打工具(「打込工具」の一例)は、圧縮空気を駆動源として釘(「ファスナ」の一例)を打ち込むための空圧工具である。釘打工具10は、圧縮空気で駆動する駆動機構20と、駆動機構に圧縮空気を供給するためのレギュレータ50(「調圧機構」の一例)を備える。
駆動機構20は、圧縮空気によって上下に往復運動する打込ピストン22と、打込ピストン22を収容する円筒状の打込シリンダ24と、打込ピストン22に取り付けられて打込ピストン22と一体的に移動し、釘に打撃を加えるためのドライバ26と、ドライバ26が侵入して釘に打撃を加えるために下方向に延伸するノーズ28と、ノーズ28に釘を供給する釘を収容するためのマガジン30とを備える。
さらに釘打工具10は、使用者が把持するグリップ32と、グリップ32内に設けられるエアチャンバ34と、エアチャンバ34に貯留される圧縮空気の打込シリンダ24内への流入を制御するためのメインバルブ(ヘッドバルブ)36とを備える。レギュレータ50は、外部のエアコンプレッサからエアホース(不図示)を介して供給される圧縮空気を減圧し、エアチャンバ34に供給する。
このような釘打工具10において、ユーザがトリガ38を押下すると、メインバルブ36が開いて、エアチャンバ34内の圧縮空気が打込シリンダ24内の上室に流入する。その結果、打込ピストン22が下方向に移動し、打込ピストン22に取り付けられているドライバ26が釘を打撃することにより、釘を下方向に打ち出す。
[調圧機構の基本構成]
以下、図面を用いてレギュレータ50(「調圧機構」の一例)の構成について説明する。図2は、釘打工具10に組み付ける前の、単体のレギュレータ50を第2方向D2から見た先端視である。なお、組み付け後は、図1における釘打工具10の内部から第2方向D2にレギュレータ50を見た図に相当する。図3A乃至Dは、それぞれ、図2におけるA-A断面図、B-B断面図、C-C断面図、D-D断面図である。図4は、弁室64の圧縮流体が二次圧領域AR2に流入するときのA-A断面図の一部拡大図であり、図5は、二次圧領域AR2の圧縮流体が排気されるときのA-A断面図の一部拡大図である。
レギュレータ50は、外部から圧縮空気の供給を受けるためのプラグ62(「空気取入口」の一例))と、プラグ62が接続される第1エンドキャップ58と、第1エンドキャップ58内に設けられるエアフィルタ60と、第1エンドキャップ58から第1流路CH1を通過して弁室64内に侵入した圧縮空気によって第2方向D2に押圧される弁体52と、弁体52を第2方向D2に押圧する弁バネ68と、弁体52に対して第2方向D2側に配設され、弁体52に第1方向D1に向かう力を作用させるメインバネ54(「弾性体」の一例)とを備える。
さらにレギュレータ50は、弁体52とメインバネ54との間に配設されるピストン56(「ピストン部品」の一例)と、メインバネ54に対して第2方向D2側に配設され、メインバネ54の端部を第1方向D1に押圧することによりメインバネ54を支持する調整ねじ66(「ねじ部品」の一例)を備える。
なお、レギュレータ50は、駆動機構20に供給する圧縮空気の圧力を変更し調圧する調圧機構及び調圧の際の操作荷重を低減するための荷重低減機構として、調整ねじ66のほか、ダイヤル80、スペーサ72、カムプレート82、荷重解放バルブ84(図3Cに示す)、荷重解放ピストン86を備える。これら構成については後に詳述する。
プラグ62は、外部から圧縮空気の供給を受けるための部品である。プラグ62の一方の端部は、エアホース(不図示)を接続可能に構成される。このため、エアコンプレッサによって生成された圧縮空気を、エアホースを介してプラグ62に供給することが可能である。プラグ62の他方の端部は、第1エンドキャップ58に接続される。このとき、プラグ62内に形成された流路は、第1エンドキャップ58内に形成された第1流路CH1に連通する。
プラグ62は、第2軸AX2上に(第2軸AX2と同軸となるように)取り付けられる。後述する第1軸AX1と、第2軸AX2は、離間する二つの略平行な軸である。また、第1軸AX1及び第2軸AX2は、第1方向D1及び第2方向D2と平行である。
プラグ62が取り付けられる第1エンドキャップ58内及び第1エンドキャップ58から弁体52が配設される弁室64に至るまでの部品内には、プラグ62から供給された圧縮空気を弁室64内に供給するための第1流路CH1が形成される。図3Aに示されるとおり、弁室64は、第1エンドキャップ58の第2方向D2端部よりも第1方向D1に進行した位置、かつ、第2軸AX2と垂直方向に離間した第1軸AX1上に配設されるため、第1流路CH1は、圧縮空気を第1方向D1に進行させる部分と、第2軸AX2から第1軸AX1に進行させる部分を有する。
本実施形態の第1流路CH1のうち第1方向D1に進行させる部分は、第2軸AX2上に形成される流路を含んでいる。ただし、第1流路CH1のうち第1方向D1に進行させる部分は、必ずしも、第1方向D1と平行な第2軸AX2上に形成される必要はなく、たとえば、第1方向D1に対して鋭角をなすように形成されてもよい。
弁体52は、ピストン56とともに、弁体52よりも下流側の二次圧を調整するための部品である。具体的には、弁体52は、下流側の二次圧が低下した際に第1方向D1に移動することによって一次圧を有する上流側の圧縮流体を下流側に流入させることにより、所定圧力になるまで二次圧を上昇させる。ここで、一次圧とは、弁体52よりも上流側の圧力である。また、二次圧とは、弁体52よりも下流側の圧力である。
本実施形態に係る弁体52は、図3A等に示されるように、第1方向D1側に位置し、円筒状に形成される円筒部52Bと、これと一体的に形成され、第2方向D2側に位置し、円筒部52Bよりも大きな径の底面を有する円錐台状に形成される円錐台部52Aを有する。更に、円錐台部52Aには、円錐台部52Aの頂面から円筒部52Bに向かって延在する穴部が形成される。
円形状に形成される円錐台部52Aの頂面のうち、外縁部分は、弁座に支持され、外縁部分よりも中心側の領域及び穴部の表面は、二次圧の圧縮流体に露出する。弁体52のその他の部分、すなわち、少なくとも円筒部52B及び円錐台部52Aの各底面及び各側面は、一次圧の圧縮流体に露出する。
弁体52は弁室64内に第1軸AX1上に(第1軸AX1と同軸となるように)配設されている。弁室64には第1流路CH1が連通しているため、弁室64内は一次圧を有する圧縮流体が存在する。弁体52の第1方向D1を向いた底面(「一次圧領域に露出する第1受圧面」の一例)は、弁室64内の空間に露出しているため、弁体52は、一次圧を有する圧縮流体によって第2方向D2に押圧される。
さらに、同図に示されるように、弁体52は、弁体52に対して第1方向D1側に配設される圧縮バネである弁バネ68によって支持されている。このため、弁体52は、弁バネ68の圧縮量に応じた付勢力と、弁体52の第1方向D1を向いた表面に露出する一次圧を有する圧縮流体の圧力によって、第2方向D2に押圧される。なお、弁バネ68は、レギュレータ50の第1方向D1端部に設けられる第2エンドキャップ70に取り付けられる部品に設けられる円筒状の空間内に、円筒部52Bを囲むように配設され、その端部は、円錐台部52Aの底面に係合する。
一方で、弁体52の第2方向D2を向いた頂面は、ピストン56及び弁体52を支持する弁座によって第1方向D1に押圧される。ピストン56は、メインバネ54によって第1方向D1に押圧されるから、メインバネ54は、ピストン56を介して弁体52を第1方向D1に押圧するといえる。さらに、弁体52の頂面の一部は、二次圧領域AR2に露出する。このため、弁体52は、メインバネ54の圧縮量に応じた付勢力と、弁体52の第2方向D2を向いた表面に露出する二次圧を有する圧縮流体による圧力によって、第1方向D1に押圧され、かつ、弁座によって第2方向D2への移動が規制されるように構成される。このような弁体52を含む調圧の作用については、後に詳述する。
二次圧が所定圧力となる平衡状態にあるとき、弁体52の頂面の一部は、弁座に密着しているため、弁室64(「一次圧領域」の一例)と、弁体52に対して第2方向D2側の領域である二次圧領域AR2は、連通しない。しかしながら、二次圧が低下すると弁体52は、後述するように第1方向D1に弁座から離れるように移動するため(図4参照)、弁室64と下流側の二次圧領域AR2とが連通し、一次圧を有する圧縮流体が下流側に流入するため、二次圧を高めることが可能になる。
ピストン56は、メインバネ54による付勢力を弁体52に伝えて弁体52を第1方向D1に押圧する。また、二次圧が所定圧力よりも上昇した場合、二次圧領域AR2内の圧縮流体を排気させ、二次圧を下げる。
ピストン56は第1軸AX1上に(第1軸AX1と同軸になるように)配設されている。二次圧領域AR2は、駆動機構20に圧縮流体を供給するための第2流路CH2(「二次圧流路」の一例)に連通しており、ピストン56の第1方向D1を向いた表面(「二次圧領域に露出する第2受圧面」の一例)は二次圧領域AR2に露出しているため、ピストン56は、二次圧を有する圧縮流体によって第2方向D2に押圧される。つまり、第2受圧面は、エアチャンバ34内の空気圧を受けて流路CH1,CH2を閉止する向きに押圧される。
また、ピストン56の第2方向D2端部には、第1軸AX1を中心軸とする円筒状の空間(バネ座)が設けられ、この円筒状の空間内には、メインバネ54が配設される。ピストン56は、圧縮バネであるメインバネ54によって第1方向D1に押圧される。なお、この円筒状の空間は、大気圧に維持される。
さらに、ピストン56の第1方向D1端部は、第1軸AX1を中心軸とする円筒状に延伸して弁体52の頂面に当接する。この円筒状に延伸している部分内には、大気圧に維持される円筒状の空間に連通する貫通孔Hが形成されている。
二次圧が所定圧力となる平衡状態にあるとき、ピストン56に対して第1方向D1に向かう力を作用させるメインバネ54からの付勢力と、第2方向D2に向かう力を作用させる二次圧の圧縮空気及び弁体52から受ける力が釣り合うため、ピストン56は移動しない。
しかしながら、二次圧が所定圧力より低下すると、二次圧を有する圧縮空気が第2受圧面においてピストン56を第2方向D2に押圧する力が低下するため、ピストン56及びこれに押圧される弁体52は、第1方向D1に移動する。このため、弁体52から構成される弁が吸気方向に開く(図4参照)。したがって、一次圧領域である弁室64と二次圧領域AR2が連通し、一次圧を有する圧縮空気が下流側に流入するため、二次圧を増圧させることが可能になる。二次圧が所定圧力まで上昇すると、弁体52が第2方向D2に戻り弁が閉じるため、平衡状態になる。
一方で、二次圧が所定圧力より上昇した場合、二次圧を有する圧縮空気がピストン56の第2受圧面を第2方向D2に押圧する力が増加するため、ピストン56は、第2方向D2に移動する。このため、弁座に拘束されるために第2方向D2に移動しない弁体52と、ピストン56との間にわずかな間隙が形成される(図5参照)。
ピストン56の円筒状に延伸している部分内には、貫通孔Hが形成されているため、このとき、弁体52から構成される弁が排気方向に開き、図5の矢印に示されるように貫通孔Hを介して二次圧領域AR2の圧縮空気が大気圧に維持される空間に排気される。したがって、二次圧を減圧させることが可能になる。二次圧が減圧され、所定圧力まで低下すると、ピストン56は、第1方向D1に戻るため平衡状態になる。以上のような動作により、レギュレータ50は、二次圧を所定圧力に維持することが可能に構成されている。たとえば、二次圧の所定圧力は、2.3MPaに設定される。ただし、本発明は、その他の構成を有する調圧機構に適用することが可能である。
メインバネ54は、ピストン56を介して弁体52を第1方向D1に押圧する。メインバネ54は、第1軸AX1上に(第1軸AX1と同軸になるように)配設されている。メインバネ54は、二次圧が低下したときに、弁バネ68によって第2方向D2に押圧されている弁体52を第1方向D1に移動させる必要があるため、弁バネ68よりも強い力で弁体52を押圧可能に構成されている。
メインバネ54の第1方向D1端部は、ピストン56に当接し、第2方向D2端部は、調整ねじ66に支持される。このため、調整ねじ66の位置を変更することにより、または、調整ねじ66とメインバネ54との間に座金などを挿入することにより、メインバネ54の初期荷重を調整することが可能である。
調整ねじ66は、メインバネ54を第1方向D1に押圧する。また、調整ねじ66は、第1軸AX1上に(第1軸AX1と同軸になるように)配設されている。すなわち、弁体52、ピストン56、メインバネ54、調整ねじ66は、第1軸AX1上に、釘打工具10の外方に向かう第2方向D2に、この順番で配設されている。また、プラグ62及び第1流路CH1の少なくとも一部は、第2軸AX2上に配設されている。
このため、ダイヤル80を外し、調整ねじ66の位置を変更するか、または、座金などを挿入することにより、メインバネ54の第2方向D2端部の位置を容易に調整することが可能となる。メインバネ54の初期荷重が低圧側に変動すれば空圧工具の作動不良が発生し、高圧側に変動すれば駆動機構による圧縮空気の消費量が増加しレギュレータを搭載するメリットが減殺されるところ、本実施形態に係る釘打工具10によれば、調整ねじ66が、弁体52、ピストン56及びメインバネ54よりも外方側に配設されるから、メインバネ54の初期荷重の調整が容易になる。したがって、釘打工具10の組付け性を向上させることが可能となる。
すなわち、バネは、1つ1つ荷重特性のばらつきが大きいという特性を有するため、同じようにレギュレータを組付けただけでは、空圧工具ごとに異なる荷重特性を有するレギュレータを搭載することになってしまう。そこで、レギュレータを組み付けた後に、座金を挿入したり、初期荷重の調整用ネジを調整したりすることにより、レギュレータの荷重特性のばらつきをなくすことが行われている。
荷重特性の調整の際、バネの一端とピストンとの接触状態は維持しなければならないため、バネの他端側に調圧機構を設ける必要がある。しかしながら、従来の空圧工具の場合、バネはピストンよりも空圧工具の内側に設けられていたため、調圧機構もピストンよりも空圧工具の内側に設けられる。このような状態で調圧機構を操作するために、調圧機構の操作部を空圧工具から露出させることも考え得るが、そのためにはエアチャンバとして使用させるグリップに穴を開けなければならず現実的でない。
本実施形態に係る釘打工具10は、弾性体であるメインバネ54が弁体52よりも外側、すなわち、空気取入口に近い位置に配置されるから、メインバネ54の荷重特性のばらつきを容易に調整することが可能となる。
さらに、弁体52、ピストン56及びメインバネ54は、第1軸AX1上に配設される一方、弁体52よりも上流のプラグ62は、第1軸AX1とは異なる第2軸AX2上に配設される。このような構成の結果、プラグ62を従来よりも第1方向側に移動させ、プラグ62の全体ではなく第2方向D2端部のみが釘打工具10の他の部分から突出するように配設することが可能となる(図1参照)。
このとき、第1方向D1において、メインバネ54が設けられる領域(メインバネ54の第1方向D1端部から第2方向D2端部までの領域)と、第1流路CH1が設けられる領域は、少なくとも一部が重複する。特に、本実施形態に示されるレギュレータ50の場合、第1方向D1において、メインバネ54が設けられる領域及びピストン56が設けられる領域は、第1流路CH1が設けられる領域(第1エンドキャップ58の第2方向D2端部から弁室64に至る流路の第1方向D1端部)に包含される。このような構成の結果、レギュレータ50の第1方向D1の全長W(図3Aに示す)を従来技術と比較して小さくすることが可能となる。すなわち、プラグ62の突出量を抑え、釘打工具10の全長を短くすることが可能となる。
さらに、第2軸AX2上の領域に余裕ができるため、図3Aに示されるように、第2軸AX2上に(第2軸AX2と同軸となるように)、大型のエアフィルタ60を設けることが可能になる。その結果、レギュレータ50の内部に粉塵が混入し、弁体52などと噛み合ってしまうことにより、レギュレータ50が正常に動作できなくなる可能性を低減することが可能となる。ただし、エアフィルタ60を設けずに、または、小型化し、プラグ62をさらに第1方向D1側に配設してもよい。
[荷重低減機構]
以下、図6Aから図9を参照してレギュレータ50が備える調圧機構及び荷重低減機構について説明する。調圧機構により、レギュレータ50は、二次圧を調整することが可能となる。したがって、ファスナや被加工材の種類に応じて、釘打工具10の衝撃力を変更することが可能となる。また、本実施形態に係る荷重低減機構により、調圧する際に、使用者にかかる負荷を一時的に低減することが可能となる。
まず、各機構の概要について説明し、次いで、各機構の具体的構成について説明する。調圧機構は、前述した弁体52、メインバネ54、受圧部材に加えて、ダイヤル80と、スペーサ72と、調整ねじ66と、をさらに備える。また、荷重低減機構は、カムプレート82、荷重解放バルブ84、荷重解放ピストン86を備える。
荷重解放ピストン86は、メインバネ54の第2方向D2の端部を支持する支持部の一例であり、ピストン56よりも第2方向D2側に位置しる。荷重解放ピストン86は、ピストン56に対して相対移動できる。荷重解放ピストン86は、ダイヤル80等の操作入力部に操作が入力されるとき、弁体52が位置する第1方向D1側とは逆側の第2方向D2側に移動する。
調圧機構は、ユーザがダイヤル80(「操作入力部」の一例)を回すことにより、メインバネ54の第2方向D2端部の位置を規定する部品である「支持部」の位置を変更させる。メインバネ54の第2方向D2端部の位置に応じて、メインバネ54の圧縮量が変動する。そのため、荷重解放ピストン86の位置を変更することで二次圧を調圧することが可能になる。本実施形態では、ダイヤル80とともに回転するスペーサ72と第1エンドキャップ58との接触部にスロープを設けることで、ダイヤル80(スペーサ72)の回転位置によって、第1エンドキャップ58に対するスペーサ72の位置が軸方向に変位するように構成されている。
メインバネ54の第2方向D2端部の位置を規定する部品はスペーサ72と一体に構成されているので、ダイヤル80の操作によって、メインバネ54の第2方向D2端部の位置を変位させ、メインバネ54のばね力を調整することができる。さらに、スペーサ72は荷重解放ピストン86と一体に構成されるので、荷重解放ピストン86のD1方向の軸力によって、メインバネ54の第2方向D2端部の位置を規定する部品を、ばねを圧縮する方向(D1方向)へ押圧する力が発生する。
荷重低減機構は、ダイヤル80を回したときにメインバネ54を伸長させる。メインバネ54が伸長すると、メインバネ54から調整ねじ66に作用する付勢力を弱めることが可能になるため、調圧時の操作荷重を低減することが可能になる。本実施形態では、荷重解放ピストン86の第2方向D2を向いた面を一次圧領域である荷重解放領域AR3に露出させることにより、通常時において、荷重解放ピストン86が第1方向に押圧されるように構成されている。荷重解放領域AR3は、荷重解放ピストン86に面し、この荷重解放ピストン86を挟んで弁体52とは逆側(第2方向D2側)に区画された閉鎖空間である。
ダイヤル80を回すと、ダイヤル80の操作に従動する荷重解放バルブ84により、荷重解放領域AR3が大気圧に開放され、または、減圧されるように構成されている。その結果、荷重解放ピストン86が第2方向D2に移動可能となるため、メインバネ54を自然長乃至自然長近くまで伸長させることが可能となる。したがって、メインバネ54から調整ねじ66に作用する付勢力を弱めることが可能となる。調整ねじ66は、ダイヤル80に係合しているため、ダイヤル80を回した際に使用者にかかる負荷を低減することが可能となる。以下、具体的な構成について概説する。
図6Aは、図3Cに示されたダイヤル80を第1方向D1から見た拡大図である。図6Bは、図6Aに示されたダイヤル80を回動させて操作を入力した状態を示す拡大図である。ダイヤル80は、図6A及び図6Bに示すように、第1軸AX1を中心に回動可能に構成されている。ダイヤル80は、略円盤状に形成された内側ダイヤル801と、内側ダイヤル801を径方向外側から囲繞する外側ダイヤル802と、内側ダイヤル801と外側ダイヤル802とを連結する弾性部材803と、を含んでいる。弾性部材803は、例えばゴム等から円柱状に形成されている。内側ダイヤル801の外周面と外側ダイヤル802の内周面とには、弾性部材803を収容する凹部が形成されている。
内側ダイヤル801は、前述した調整ねじ66に固定されており、該調整ねじ66を介して荷重解放ピストン86に固定されている。後述する荷重解放バルブ84が開放されていない状態では、内側ダイヤル801に作用するメインバネ54からの付勢力が大きい。そのため、外側ダイヤル802をつまんでダイヤル80を回動させようとすると、回転抵抗が大きい内側ダイヤル801が回動しない一方、外側ダイヤル802のみが弾性部材803を弾性変形させながら内側ダイヤル801に対して回動する。
図7は、図6Bに示されたダイヤル80を斜めから見た斜視図である。図7に示されるように、ダイヤル80は、カムプレート82と当接しており、ダイヤル80の外側ダイヤル802が回動するとカムプレート82が第1方向D1に変位するように構成されている。具体的には、外側ダイヤル802の、カムプレート82と当接する面には、複数の凸部81Aが第1軸AX1を中心に回転対称に周期的に設けられている。
一方でカムプレート82の、外側ダイヤル802と当接する面には、複数の凹部81Bが第1軸AX1を中心に回転対称に同一周期で設けられる。このような構成により、外側ダイヤル802の回動に伴い、凸部81Aと凹部81Bが対向するときと、そうでないときで、カムプレート82の第1方向D1の位置を変位させることが可能となる。
図7に示されるように、カムプレート82は、荷重解放バルブ84の第2方向D2端部に当接する。このため、カムプレート82の第1方向D1への変位に伴って、荷重解放バルブ84は、第1方向D1に変位する。荷重解放バルブ84は、第1方向D1に変位すると、閉弁状態から開弁状態に切り替わる。
移動前の閉弁状態において、荷重解放バルブ84のOリング84Aは、対向する円筒状の内壁面に押し付けられるため、荷重解放領域AR3及びこれに連通する減圧流路AR32を、大気圧に開放されている開放領域AR4に対してシールする。荷重解放領域AR3は加圧流路AR31(図3A参照)によって第1流路CH1に連通しているため、荷重解放領域AR3及び減圧流路AR32は、一次圧に維持される。荷重解放バルブ84がカムプレート82により第1方向D1へ変位すると、閉弁状態から開弁状態に切り替わり、荷重解放領域AR3は、大気圧に開放され、または、減圧される。
図8は、開弁状態においてメインバネ54が自然長に伸長したときのA-A断面図の一部拡大図である。図8に示されるように、荷重解放バルブ84に対向する円筒状の内壁面は、荷重解放バルブ84が第1方向D1に移動したときにOリング84Aと十分に当接しないようにわずかに径大に形成されている。このため、荷重解放バルブ84が第1方向D1に移動したとき、荷重解放領域AR3及びこれに連通する減圧流路AR32は、大気圧に開放される開放領域AR4に対して完全にシールされず、連通する開弁状態となる。
その結果、荷重解放ピストン86を第1方向D1に押圧していた荷重解放領域AR3内の圧縮空気は排気され、荷重解放ピストン86は、第2方向D2に移動可能な状態となる。そのため、メインバネ54は、荷重解放ピストン86を第2方向D2に移動させながら伸長する。したがってメインバネ54から調整ねじ66に作用する付勢力を弱めることが可能となる。
前述した内側ダイヤル801に作用するメインバネ54の付勢力が弱まると、内側ダイヤル801の回転抵抗が大きく下がる。図6Bに示されたように弾性変形した弾性部材803の復元力により、内側ダイヤル801が外側ダイヤル802と同じ位置まで回転して図6Aに示された状態に復帰する。これにより、再び、凸部と凹部が対向すると、カムプレート82は、第2方向D2に変位する。その結果、荷重解放バルブ84も、第2方向D2に変位し、初期位置に復帰する。なお、荷重解放バルブ84を第2方向D2に付勢するための圧縮バネを荷重解放バルブ84の第1方向D1端部に設けてもよい。
荷重解放バルブ84が第2方向D2に変位し元の位置に復帰すると、再び荷重解放領域AR3及びこれに連通する減圧流路AR32は、大気圧に開放される開放領域AR4に対してシールされる。荷重解放領域AR3は、図3Aに示された加圧流路AR31により第1流路CH1と連通しているため、一次圧に上昇する。その結果、荷重解放ピストン86が第1方向D1に変位する。
その結果、メインバネ54が圧縮され、第2方向D2端部において荷重解放ピストン86によって支持されるピストン56がメインバネ54により第1方向D1に押圧される。図示した例では、スペーサ72と荷重解放ピストン86とが一体構造物として構成されている。スペーサ72と荷重解放ピストン86とを別々に形成し、それらを互いに固定してもよい。荷重解放領域AR3が一次圧に上昇したとき、荷重解放ピストン86がスペーサ72とともに第1方向D1に移動する。
メインバネ54の第2方向D2端部の位置も第1方向D1に変位するが、このとき、ダイヤル80とともに回動するスペーサ72に設けられたスロープが第1エンドキャップ58に当接することで、荷重解放ピストン86の第1方向D1への変位量が決定する。つまり、ダイヤル80を回転させることでスペーサ72と、第1エンドキャップ58の距離を調整できる。したがって、メインバネ54の圧縮力を弱めて、調圧を行うことが可能となる。また、スロープによって変位量を無段階に調整可能にする構造に限らず、係合部を階段状に形成して、段階的に調整可能に形成してもよい。スロープの傾斜角度を大きくすることにより、ダイヤル80を所定角度回転させたときの変位量を大きくすることが可能になる。
図9は、図8に示された荷重低減機構の変形例を示す断面図である。変形例は、荷重解放ピストン86が、支持部として構成される外筒部862に加え、外筒部862に内嵌された内筒部861を更に備えている点が本実施形態と異なる。内筒部861は、メインバネ54が挿通された筒状に形成されている。内筒部861の形状は、円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。
外筒部862は、メインバネ54を囲む内筒部861に沿って摺動可能に構成されている。メインバネ54の第2方向D2側端部は、外筒部862に支持されている。メインバネ54の第1方向D1側端部は、内筒部861を貫通してピストン56に対向している。図9に示された変形例の構成であっても、図8に示された構成と同様に、調圧機構の操作荷重を低減させることができる。
[一次圧バランス機構]
以下、図10から図12を参照してレギュレータ50が備える一次圧バランス機構について説明する。一次圧が低くなると、弁体52が一次側に押し込まれて弁が開き、二次圧が高くなることが知られている。一次圧バランス機構は、一次圧をピストン56に作用させて、常にD1方向の荷重をピストン56に付加する構造であり、一次圧の変動の少なくとも一部を相殺することにより、二次圧が一次圧の変動から受ける影響を小さくする。
図10は、弁が閉じているときのA-A断面図の一部拡大図である。図10に示すように、一次圧バランス機構は、一次側(弁体52よりも上流側)の圧縮流体を二次側(弁体52よりも下流側)に導入する流路CH3及びAR51と、一次側から導入された圧縮流体からの圧力を受ける第3受圧面Fと、を含んでいる。
図示した例では、ピストン56が、円柱状の拡径部561と、拡径部561よりも直径が小さい円柱状の縮径部562とを含んでいる。ピストン56において、拡径部561は第1方向D1側に設けられ、縮径部562は第2方向D2側に設けられている。拡径部561と縮径部562との境界に円環状の第3受圧面Fが形成されている。第3受圧面Fの形状は、図示した例に限定されない。たとえば、円柱561,562が同径であるとき、第2方向D2側の円柱562の外周面を削り取って切欠き状の第3受圧面Fを形成すればよい。
荷重解放ピストン86は、略円筒形に形成された部分を含み、拡径部561の外周面の少なくとも一部に摺接する第1内周面86Aと、縮径部562の外周面の少なくとも一部に摺接する第2内周面86Bと、を有している。図7に示すように、第1内周面86Aと、縮径部562の外周面と、拡径部561の第3受圧面Fとで空間AR5が区画される。以下の説明において、当該空間を一次圧バランス領域AR5と呼ぶことがある。荷重解放ピストン86には、第1内周面86Aを貫通する流路CH3が形成されている。流路CH3は、一次側の流路CH1から分岐した図示しないバイパス流路に接続されている。バイパス流路は、第2軸AX2と第1軸AX1とに跨って形成されている。一次圧バランス領域AR5には、流路CH3を通じて一次側の圧縮空気が導入されている。第3受圧面Fは、弁体52よりも上流側の空気圧を受けて流路CH1,CH2を開放する向きに押圧される。
弁体52と第3受圧面Fとは、共通の一次圧を受圧して互いに逆向きに押圧される。互いに逆向きに押圧される弁体52及び第3受圧面Fにおいて、一次圧の変動分の力の少なくとも一部が相殺される。なお、第1方向D1から見た第3受圧面Fは、第2方向D2から見た弁体52の円筒部52Bの底面よりも面積が小さい。弁体52は、受圧面Fよりも一次圧から受ける力が大きいため、メインバネ54及び二次圧と釣り合うまでピストン56を押し返すことができる。図示した例では、第3受圧面Fが、前述した第2受圧面(ピストン56における第1方向D1を向いた表面)よりも小さく形成されている。
図11は、図10に示された一次圧バランス機構の第1の変形例を示す断面図である。第1の変形例は、ピストン56が荷重解放ピストン86ではなくレギュレータ50を構成する筐体に沿って摺動し、当該筐体には、一次側の流路CH1から分岐して一次圧バランス領域AR5に連通するバイパス流路CH3が形成されている点が本実施形態と異なる。図8に示すように、バイパス流路CH3は、第2軸AX2と第1軸AX1とに跨って形成されている。
図示した例では、荷重解放ピストン86が、ピストン56よりも第2方向D2側に配置されている。円筒形に形成された荷重解放ピストン86の内部にはメインバネ54が内嵌されている。メインバネ54は、ピストン56の第2方向D2側の端部を第1方向D1に向かって付勢している。このような変形例の一次圧バランス機構であっても、本実施形態の一次圧バランス機構と同様に、一次圧をピストン56に作用させて、常にD1方向の荷重をピストン56に付加して二次圧が一次圧の変動から受ける影響を小さくできる。
図12は、図10に示された一次圧バランス機構の第2の変形例を示す断面図である。第2の変形例は、弁体52と共通の一次圧を受けて弁体52とは逆向きに押圧される受圧面Fがピストン56ではなく、内筒部861と外筒部862とに分割された荷重解放ピストン86の内筒部861に形成されている点が本実施形態と異なる。
内筒部861は、受圧部材であるピストン56に当接可能に構成されている。一次圧バランス領域AR5は、インロー構造の内筒部861と外筒部862との隙間に区画されている。一次圧バランス領域AR5には、図示しないバイパス流路を通じて一次側の圧縮流体が導入される。このような変形例の一次圧バランス機構であっても、本実施形態の一次圧バランス機構と同様に、一次圧をピストン56に作用させて、常にD1方向の荷重をピストン56に付加して二次圧が一次圧の変動から受ける影響を小さくできる。
以上のような構成により、駆動機構20に供給する圧縮空気の二次圧を変更し調圧することが可能となる。また、調圧の際の操作荷重を低減することも可能となる。なお、ダイヤル80をさらに回動させて次の凸部と凹部が対向するときに、スペーサ72に設けられたスロープにより、さらに、荷重解放ピストン86を第1方向D1に変位させるように構成してもよい。このような構成により、二次圧を多段階に調圧することが可能となる。以上のとおりであるから、本発明によれば、調圧機構の操作荷重を低減可能な空圧工具を提供することができる。
さらに、本実施形態によれば、メインバネ54の荷重特性のばらつきを容易に調整することが可能となる。バネは、1つ1つ荷重特性のばらつきが大きいという特性を有するため、レギュレータを組み付けた後に、座金を挿入したり、初期荷重の調整用ネジを調整したりすることにより、レギュレータの荷重特性のばらつきをなくすことが行われている。本実施形態では、弾性体であるメインバネ54が弁体52よりも外側、すなわち、空気取入口に近い位置に配置されるから、ダイヤル80を外し、調整ねじ66の位置を変更する等により、メインバネ54の第2方向D2端部の位置を容易に調整することが可能となる。その結果、メインバネ54の荷重特性のばらつきを容易に調整することが可能となる。
また、本実施形態では、第1方向D1において、メインバネ54が設けられる領域(メインバネ54の第1方向D1端部から第2方向D2端部までの領域)と、第1流路CH1が設けられる領域は、少なくとも一部が重複している。これにより、レギュレータ50の第1方向D1の全長W(図3A)を従来技術と比較して小さくすることが可能となり、プラグ62の突出量を抑え、釘打工具10の全長を短くすることが可能となる。しかも、本実施形態では、第2軸AX2上の領域に余裕ができるため、図3Aに示されるように、第2軸AX2上に(第2軸AX2と同軸となるように)、大型のエアフィルタ60を設けることが可能になる。レギュレータ50が正常に動作できなくなる可能性を低減することが可能となる。
なお、本発明は、空圧工具一般に適用することが可能であり、たとえば、エアネイラ、エアドライバ及び空圧式ネジ打ち機に適用することが可能である。圧縮空気以外の圧縮流体に本発明を適用してもよい。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、実施形態における一部の構成要素を、同様の機能を奏する他の知られた構成に置換することができる。