JP2022065480A - 成形品およびその製造方法 - Google Patents

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彰馬 西野
Shoma Nishino
友紀 三田
Tomonori Mita
理史 浜辺
Michifumi Hamabe
正義 今西
Masayoshi Imanishi
卓輝 石田
Takuki Ishida
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Abstract

【課題】板目及び柾目等の木目模様の再現が可能な成形品の製造方法を提供する。【解決手段】成形品の製造方法は、金型キャビティ及び/または金型コアの内表面に凹凸を施した金型キャビティ及び金型コアを型締めする工程と、金型キャビティ及び金型コアの内部のキャビティに、ベース樹脂にセルロース系フィラーを添加したセルロース系フィラー複合樹脂を射出成形して、金型キャビティ又は金型コアの内表面の凹凸に対応する凹凸形状が表面に付与され、表面の近傍に前記セルロース系フィラー由来のフルフラール類を含む層を設けた成形品を形成する工程と、冷却固化した後、金型キャビティ及び金型コアを型開きして成形品を金型キャビティ及び金型コアから取り出す工程と、取出した成形品の表面に付与された凹凸形状の一部を除去し、フルフラール類を含む層を部分的に残留させてフルフラール類を含む層の分布で表面に模様を形成する工程と、を含む。【選択図】図2A

Description

本発明は、成形品、特に木質感を有する木質成形品及びその製造方法に関する。
従来の樹脂製木質成形品の製造方法としては、例えばフィルム加飾・塗装により目標形状の最表面に木質感を形成する方法や着色剤を用いて色むらや色の濃淡(マーブル成形等)で木質感を得る方法が一般的である。
しかしながら、上記記載の方法では、表面の触感や風合い、質感の再現が困難でありプラスチック感が残ってしまうことや、形状制約を受けるため汎用性が低い等の課題がある。
上記木目を再現するための方法として、特許文献1及び特許文献2に示すような方法が開発されている。
特許文献1に記載の二頭式射出装置は、並設された2つの射出シリンダ及び同シリンダ内に収納された2つの射出スクリューより成っており、2つのシリンダ先端の熔融樹脂出口は合流して一つのノズルを形成している。木質材料としては、有害揮発分を十分乾燥除去した木粉を用い、プラスチック原料と混合して、木材比率が異なるA、B材の2種類の成形原料を用意し二頭式射出装置の射出シリンダにそれぞれ充填する。木材比率は80%程度まで可能であり、自然木の木質感を得るために極力80%に近付けるのが好ましい。また、必要に応じて前記2種類の成形原料に着色材、顔料、着色インキ等を混合して色を付ける。つぎに上記二頭式射出成形機を用いた成形方法について説明する。まず二頭式射出成形機の固定金型と移動金型とを型締めし、一方のシリンダによって金型内のキャビティにA材の所定量を部分充填し、引続いて他方のシリンダによってB材の所定量を部分充填する。ついで上述の射出を交互に繰返して行い、最終の射出で十分な圧力を加えて冷却する。このA材とB材の所定量の交互の射出の繰返しによって板目模様が形成される。この場合、図示しない加熱保温装置で固定金型、移動金型を適度に保温しておくことがより望ましい。
特許文献2に記載の木目調射出成形品の製造方法では、キャビティ内に補強部材をセットする一方、第1材料と該第1材料に対して色彩が異なる第2材料とが不完全混合状態で含まれる溶融樹脂を用意し、その溶融樹脂を複数の分流をもって補強部材がセットされたキャビティ内に供給し、補強部材を溶融樹脂で鋳ぐるんで凝固層を形成すると共に、その溶融樹脂の複数の分流の作用に基づき、成形品(製品部)段階において、凝固層に柾目模様として、分流跡毎に略一定間隔の第2材料凝固部形成する。
特開平8-276464号公報 特開平11-348075号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では二色成形機等の特殊な成形機が必要であり、射出成形する材料についても、木材成分添加濃度の異なる材料を2種用意する必要がある。また、木目模様の内、板目模様のみ再現可能で、高級とされる柾目模様については再現できない。さらに、着色剤を添加することで木材特有の色ムラや色の濃淡を再現することが困難である等の課題を有している。
また、特許文献2に記載の方法では、特許文献1の課題である柾目模様の再現や通常の射出成形機で再現可能である等、大幅な改善が見られるものの、製品に対してゲート点数が多くなってしまう点や柾目模様の1つ1つを制御することが難しく、柾目模様の幅や方向を任意に設定できない等の課題を有している。
一方、本願発明者は過去に特開2019-115989号公報に記載のように木材特有の色むらや濃淡、触感、木質感を再現する方法を開発した。この方法によれば、セルロース系フィラー特有の熱による茶褐色化成分であるフルフラールを生成させることで、天然の木材のような色むらや濃淡、触感を再現することができる。ただ、木目模様を再現することが困難であり、更なる木質感クオリティー向上のためには、依然克服すべき課題があり、そのための対策を取る必要性を見出した。
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、板目及び柾目等の木目模様の再現が可能な成形品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る成形品の製造方法は、金型キャビティ及び/または金型コアの内表面に凹凸を施した金型キャビティ及び金型コアを型締めする工程と、金型キャビティ及び金型コアの内部のキャビティに、ベース樹脂にセルロース系フィラーを添加したセルロース系フィラー複合樹脂を射出成形して、金型キャビティ又は金型コアの内表面の凹凸に対応する凹凸形状が表面に付与され、表面の近傍にセルロース系フィラー由来のフルフラール類を含む層を設けた成形品を形成する工程と、冷却固化した後、金型キャビティ及び金型コアを型開きして成形品を金型キャビティ及び金型コアから取り出す工程と、取出した成形品の表面に付与された凹凸形状の一部を除去し、フルフラール類を含む層を部分的に残留させてフルフラール類を含む層の分布で模様を形成する工程と、を含む。
以上のように、本発明に係る成形品の製造方法によれば、複数の材料や特殊な成形機や複雑な金型構造を用いる必要がなくなり、且つ、金型の凹凸のデザインにより板目・柾目等の自由な木目模様、または、任意の模様を再現することが可能となる。これにより、従来よりも更に外観性が優れた成形品を提供することができる。
実施の形態1に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 実施の形態1に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 実施の形態1に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 実施の形態1に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 実施の形態1に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 図1Dの成形品の製造方法の一工程において、表面の凹凸の一部を除去する加工直前の表面状態を示す詳細断面図である。 図1Eの成形品の製造方法の一工程において、表面の凹凸形状の一部を除去する加工直後の表面状態を示す詳細断面図である。 セルロース系フィラー複合樹脂の射出成形時の、成形品の板厚方向におけるスキン層とコア層とを示す概略断面図である。 セルロース系フィラー複合樹脂の射出成形後の、成形品の板厚方向におけるスキン層とコア層とを示す概略断面図である。 射出成形後の表面に凹凸形状が付与されている成形品のスキン層とコア層の状態を示す概略断面図である。 凹凸除去後の最終成形品のスキン層とコア層の状態を示す概略断面図である。 実施の形態1の具体例の成形品の製造方法で得られたセルロース系フィラーを55wt%添加した成形品の外観を示す概略図である。 図5Aの成形品の凹凸形状を除去した最終成形品の外観を示す概略図である。 図5Bの最終成形品における木目模様と白色部とその境界線とを示した概略図である。 凹凸除去深さが凸部の高さより小さい場合の最終成形品における残存茶褐色化層と白色化面とを示す概略断面図である。 図6Aの最終成形品の表面を簡易偏光顕微鏡で観察した結果を示す概略図である。 凹凸除去深さが凸部の高さとほぼ同じ場合の最終成形品における残存茶褐色化層を示す概略断面図である。 図6Cの最終成形品の表面を簡易偏光顕微鏡で観察した結果を示す概略図である。 凹凸除去深さが凸部の高さより大きい場合の最終成形品における白色化面を示す概略断面図である。 図6Eの最終成形品の表面を簡易偏光顕微鏡で観察した結果を示す概略図である。 実施の形態1の実施例1-1から1-14におけるセルロース系フィラー添加率と木目模様部-白色部の色差とを調査した結果を示す表1である。 実施の形態1の実施例2-1から2-8における各母材樹脂についてセルロース系フィラーを30wt%及び95wt%添加した際の木目模様形成可否を調査した結果を示す表2である。 実施の形態2に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 実施の形態2に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 実施の形態2に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 実施の形態2に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 実施の形態2に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。 実施の形態2における金型内ヒータ有無における成形品の特性を比較する表3である。
第1の態様に係る成形品の製造方法は、金型キャビティ及び/または金型コアの内表面に凹凸を施した金型キャビティ及び金型コアを型締めする工程と、金型キャビティ及び金型コアの内部のキャビティに、ベース樹脂にセルロース系フィラーを添加したセルロース系フィラー複合樹脂を射出成形して、金型キャビティ又は金型コアの内表面の凹凸に対応する凹凸形状が表面に付与され、表面の近傍にセルロース系フィラー由来のフルフラール類を含む層を設けた成形品を形成する工程と、冷却固化した後、金型キャビティ及び金型コアを型開きして成形品を金型キャビティ及び金型コアから取り出す工程と、取出した成形品の表面に付与された凹凸形状の一部を除去し、フルフラール類を含む層を部分的に残留させてフルフラール類を含む層の分布で表面に模様を形成する工程と、を含む。
第2の態様に係る成形品の製造方法は、上記第1の態様において、射出成形する工程における投入熱量を制御し、表面の近傍の前記セルロース系フィラー由来のフルフラール類を含む層の厚さを調整してもよい。
第3の態様に係る成形品の製造方法は、上記第2の態様において、金型キャビティ及び/または金型コアにヒータ等の熱源を配置して、射出成形する工程における投入熱量を制御してもよい。
第4の態様に係る成形品の製造方法は、上記第1から第3のいずれかの態様において、セルロース系フィラーは、漂白済みのパルプ状態であってもよい。
第5の態様に係る成形品の製造方法は、上記第1から第4のいずれかの態様において、セルロース系フィラー複合樹脂におけるセルロース系フィラーの添加率が30wt%から95wt%であってもよい。
第6の態様に係る成形品の製造方法は、上記第1から第5のいずれかの態様において、セルロース系フィラーを添加するベース樹脂の融点が220℃以下の熱可塑性樹脂であってもよい。
第7の態様に係る成形品の製造方法は、上記第1から第6のいずれかの態様において、金型キャビティ又は金型コアの内表面に互いに平行な複数の直線状に延在する凸部を含む凹凸を有し、成形品の表面に付与された凹凸形状の一部の除去により、柾目模様が形成されてもよい。
第8の態様に係る成形品の製造方法は、上記第1から第6のいずれかの態様において、金型キャビティ又は金型コアの内表面に同芯の複数の楕円状又は半楕円状に延在する凸部を含む凹凸を有し、成形品の表面に付与された前記凹凸形状の一部の除去により、板目模様が形成されてもよい。
第9の態様に係る成形品の製造方法は、上記第1から第6のいずれかの態様において、金型キャビティ又は金型コアの内表面に直線状、放射状、円状、角形状、又は点状の任意の形状の凸部を含む凹凸を有し、成形品の表面に付与された凹凸形状の一部の除去により、任意の模様が形成されてもよい。
第10の態様に係る成形品は、ベース樹脂と、ベース樹脂に分散したセルロース系フィラーと、を含むセルロース系フィラー複合樹脂からなる成形品であって、表面に、ベース樹脂の結晶化度及び密度が周囲より高くセルロース系フィラー由来のフルフラール類が周囲より多いスキン層と、スキン層よりベース樹脂の結晶化度及び密度が低く、スキン層よりフルフラール類が少ないコア層と、が分布して模様を形成している。
第11の態様に係る成形品は、上記第10の態様において、スキン層とコア層との境界は、ベース樹脂の結晶化度が変化する固液境界層であってもよい。
第12の態様に係る成形品は、上記第10又は第11の態様において、スキン層とスキン層から離れたコア層との境界にはLab色空間における色差ΔE>3の境界線を有してもよい。
第13の態様に係る成形品は、上記第10から第12のいずれかの態様において、スキン層とコア層との分布によって構成される模様が板目及び/または柾目模様を含む木目模様になっていてもよい。
第14の態様に係る成形品は、上記第10から第12のいずれかの態様において、スキン層とコア層との分布によって構成される模様が木目模様以外であってもよい。
第15の態様に係る成形品は、上記第10から第14のいずれかの態様において、スキン層とコア層とでは、段差があってもよい。
第16の態様に係る成形品は、上記第10から第14のいずれかの態様において、スキン層とコア層とでは、段差がなく面一であってもよい。
以下、実施の形態に係る成形品及び成形品の製造方法について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
(実施の形態1)
<成形品の製造方法>
図1A乃至図1Eは、実施の形態1に係る成形品の製造方法の各工程を示す概略断面図である。図2Aは、図1Dの成形品の製造方法の一工程において、成形品の表面の凹凸形状の一部を除去する加工直前の表面状態を示す詳細断面図である。図2Bは、図1Eの成形品の製造方法の一工程において、成形品の表面の凹凸形状の一部を除去する加工直後の表面状態を示す詳細断面図である。
実施の形態1に係る成形品の製造方法は、金型キャビティ101及び金型コア102を型締めする工程と、金型キャビティ101及び金型コア102の内部のキャビティに、セルロース系フィラー複合樹脂105を射出成形して、成形品を形成する工程と、冷却固化した後、金型キャビティ101及び金型コア102を型開きして成形品107を金型キャビティ101及び金型コア102から取り出す工程と、取り出した成形品の表面に付与された凹凸形状の一部を除去し、模様を形成する工程と、を含む。
具体的には、実施の形態1に係る成形品の製造方法は以下のようにして行われる。
(1)まず、内表面に凹凸を施した金型キャビティ101及び金型コア102を型締めする(図1A)。金型キャビティ101には、セルロース系フィラー複合樹脂を射出するスプルー103が設けられている。
(2)次に、金型キャビティ101及び金型コア102の内部のキャビティにスプルー103から、ベース樹脂にセルロース系フィラーを添加したセルロース系フィラー複合樹脂を射出する(図1B)。これによって、金型キャビティ又は金型コアの内表面の凹凸に対応する凹凸形状が表面に付与され、表面の近傍にセルロース系フィラー由来のフルフラール類を含む層を設けた成形品を形成できる。
(3)次いで、冷却固化した後、金型キャビティ101及び金型コア102を型開きして成形品107を取り出す(図1C)。
(4)さらに、取り出した成形品107の表面に付与された凹凸形状の一部を除去し、フルフラール類を含む層を部分的に残留させてフルフラール類を含む層の分布で模様を形成する(図1D、図1E、図2A、図2B)。
この成形品の製造方法によれば、複数の材料や特殊な成形機や複雑な金型構造を用いる必要がなくなり、且つ、金型の凹凸のデザインにより板目・柾目等の自由な木目模様、または、任意の模様を再現することが可能となる。
以下に、この成形品の製造方法の各工程及び用いられる部材について説明する。
本実施の形態1に係る成形品の製造方法では、母材となるベース樹脂に対して、セルロース系フィラーが含まれているセルロース系フィラー複合樹脂を射出成型用樹脂として用いる。
<セルロース系フィラー>
セルロース系フィラーの種類は、針葉樹、広葉樹、麻、竹等、セルロースフィラーが抽出できる素材であればよく、特に限定されない。
また、セルロース系フィラーの形状は、直径がμmオーダーからnmオーダー、長さがmmオーダーからnmオーダーの範囲で自由に選定できる。セルロース系フィラー添加による脆化を防止するため、セルロース系フィラーのアスペクト比(長さ/直径)が5以上の繊維形状が好ましい。
また、セルロース系フィラーの色は、成形品に再現可能な木質感の色味の幅を拡大するため、漂白処理を施しリグニン成分が除去された白色のものが望ましく、好ましくは紙などの原料となるパルプを用いるとよい。白色の目安としては、分光測定機によるLab色空間の測定値が、L値:50以上、a値:-5~5、b値:0~10程度のパルプを使用するのが好ましい。
<ベース樹脂>
母材に用いるベース樹脂は、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレン(AS)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル(PMMA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、等が挙げられる。更に好ましくは、樹脂複合化時のセルロース系フィラーの炭化・劣化を防止するため、融点が220℃以下である、PP、PE、AS、ABS、PVC、POM、PMMAが挙げられる。
<金型キャビティ及び金型コアの型締めの工程>
金型構造において、金型キャビティ101及び/または金型コア102の内表面に最終の木目模様に対して木目(茶色)で残したい部分を金型キャビティ101及び/または金型コア102の内表面側で凸部(つまり、形状が転写される成形品側で凹部)になるように凹凸104を施す。この金型キャビティ101及び金型コア102を型締めする(図1A)。
<金型キャビティ又は金型コアの内表面に設ける凹凸について>
金型キャビティ又は金型コアの内表面に設ける凸部は、転写されて成形品側では凹部となる。一方、金型キャビティ又は金型コアの内表面に設ける凹部は、転写されて成形品側では凸部となる。つまり、成形品の表面の凹凸形状は金型キャビティ又は金型コアの内表面の凹凸に対応する。成形品の表面の凹凸形状の一部を除去しても凹部の茶褐色化層は残存して模様を形成する。
例えば、金型キャビティ又は金型コアの内表面に互いに平行な複数の直線状に延在する凸部を含む凹凸を設けた場合には、成形品の表面に付与された凹凸形状の一部の除去により、柾目模様が形成される。また、金型キャビティ又は金型コアの内表面に同芯の複数の楕円状又は半楕円状に延在する凸部を含む凹凸を設けた場合には、成形品の表面に付与された凹凸形状の一部の除去により、板目模様が形成される。さらに、金型キャビティ又は金型コアの内表面に直線状、放射状、円状、角形状、又は点状の任意の形状の凸部を含む凹凸を設けた場合には、成形品の表面に付与された凹凸形状の一部の除去により、任意の模様が形成される。
また、凹凸の大きさや形状は任意に設定可能だが、金型側の凸形状の凸部先端の位置は最終成形品の板厚になるように面の高さを統一することが好ましい。
また、金型キャビティ及び/または金型コアに金型温度を制御するためのヒータや温調回路を設けることで、木目模様の色合いを細かく制御することが可能である。
また、本実施の形態では、最終成形品の外観が木目模様を再現するために凹凸をデザインするが、凹凸は木目模様の再現に限られず、金型キャビティ及び/金型コアにデザイン可能な範囲で任意の形状を設計することが可能である。
<金型キャビティ及び金型コアの内部のキャビティに、セルロース系フィラー複合樹脂を射出成形する工程>
内表面に凹凸を設けた金型キャビティ101及び金型コア102で構成される金型内部のキャビティにスプルー103から溶融した上述のセルロース系フィラー複合樹脂105を射出成形する(図1B)。このとき、セルロース系フィラーは投入される熱量に応じてフルフラール類に分類される茶褐色成分が生成され、色合いが茶褐色に変化することが知られており、成形品の表面から板厚中央に向かって徐々に茶褐色から樹脂本来の色味に変化し茶褐色化層を形成する。このとき、成形品の表面が最も茶褐色化が進み、色が濃くなる。そこで、成形品の表面に形成された茶褐色化層をスキン層と呼ぶ。一方、板厚中央の樹脂本来の色味の部分をコア層と呼ぶ。なお、成形品の表面が均一に茶褐色化するように成形条件をコントロールして、セルロース系フィラー複合樹脂を成形品の形状に充填させる。なお、色味の茶褐色との表現は便宜的なものであり、褐色等の色表現を含むものである。
また、射出成形時の成形条件において、茶褐色化層の色味をより濃く(つまり、暗い色に近づける)するためには、樹脂温度、金型温度、射出速度のいずれか、または、複数の因子を増加させることで実現可能である。一方、色味を薄くするためにはその逆の方法で実現可能である。
また、茶褐色成分であるフルフラール類に分類される成分の生成量は、例えば、ガスクロマトグラフィ/質量分析(GC/MS)成分分析にて分析試料単位重量あたりから、バイアル瓶気相部分に発生したガス量を、トルエンd8を標品として換算することで測定することが可能である。
<冷却固化後、金型キャビティ及び金型コアを型開きして成形品を取り出す工程>
射出成形の後、冷却固化後に、金型キャビティ101及び金型コア102を型開きして成形品107を取り出す(図1C)。このとき、スプルー103に対応する部分の硬化したセルロース系フィラー複合樹脂は、ランナー106と呼ばれる。このランナー106は、成形品107とは分離して取り出される。
<取り出した成形品の表面に付与された凹凸形状の一部を除去し、模様を形成する工程>
取り出した成形品107の表面に転写された凹凸形状110、112(図2A)を研削や切削等の除去手段、例えば、凹凸除去加工具108にて成形品の表面が面一になるよう除去する(図1D、図1E、図2A、図2B)。取り出した成形品107の表面は茶褐色化層113を有する状態になっており、凸部110と凹部112とを有している。図では、凹凸除去加工具108として、回転する研磨ローラを用いているが、これに限られない。成形品107の表面で凸部110であった部分は成形品107の表面で凹部112であった部分に比べ、除去される量が多くなることで茶褐色化層113が除去され、色味がセルロース系フィラー複合樹脂本来の白色の色に近づく。この部分は上述のコア層114である。一方、凹部112は、除去量が凸部110に比べて少ない、または、除去されないため成形時の表面が、成形時のままに近い状態で維持され茶褐色化層113が残存する。この茶褐色化層113が残存する部分は、上述のスキン層111である。この茶褐色化層113の残存量の差によって任意の模様を成形品表面に形成させることができる。つまり、スキン層111とコア層114との分布によって模様が構成される(図2B)。
以上の工程によって最終成形品109が得られる。
また、成形品107の表面に転写された凹凸形状110、112を除去した後の最終成形品109の表面は、大きく分けて2つの状態に分かれている(図2B)。まず、成形時に元々凸部110が形成され、凹部112に比べて除去量が多い部分については樹脂の流動・冷却の過程で形成されるスキン層111の残量が少ない、または、コア層114が露出している状態になっており、結晶化度の高い樹脂組織が最表面に現れている。一方、成形時に元々凹部112が形成され、凸部110に比べて除去量が少ない、または、除去されない部分については、結晶化度の低いスキン層111が最表面に現れた状態になっている。
<スキン層及びコア層について>
スキン層、コア層の定義について図3A及び図3Bを用いて説明する。図3Aは、セルロース系フィラー複合樹脂の射出成形時の、成形品の板厚方向におけるスキン層とコア層とを示す概略断面図である。図3Bは、セルロース系フィラー複合樹脂の射出成形後の、成形品の板厚方向におけるスキン層とコア層を示す概略断面図である。
図3Aにおいて、金型501のキャビティに射出されたセルロース系フィラー複合樹脂は、コア層502とスキン層503とを形成しながら金型501のキャビティ内を流動していき、流動末端にて充填して成形品を形成する。図3Bにおいて、セルロース系フィラー複合樹脂が末端まで充填されると末端にもスキン層503が形成される。射出成形後の成形品では、コア層502とスキン層503との間には、結晶化度及び密度等の組成が変化する固液境界層504が存在する。固液境界層504より金型表面に近い位置にスキン層503が形成され、固液境界層504の内側(成形品板厚内部)にコア層502が形成される。特徴としてコア層502は、金型表面からの距離が比較的遠いため、冷却速度が遅く徐冷されるのに対し、スキン層503は、金型の極近傍であり冷却速度が速く急冷される。この冷却速度の差により、結晶化の速度や圧力分布の状態が変わり、コア層502は結晶化度が高く密度が高い状態となり、スキン層503は結晶化度が低く密度が低い状態となる。つまり、固液境界層504は、射出成形時に金型に接触したセルロース系フィラー樹脂の冷却速度が変わる位置、具体的には、金型表面に近い箇所での急冷と板厚中央での徐冷との冷却温度の差によって生じる結晶化度の差に起因して形成される。固液境界層504の位置は射出成形条件や成形品形状により変化するが、おおよそ成形品の表面から板厚方向で内部に向かっておよそ1mm程度の範囲に形成されることが多い。
射出成形後の表面に凹凸形状が付与されている成形品及び凹凸除去後の最終成形品におけるスキン層・コア層の状態を図4A及び図4Bを用いて説明する。図4Aは、射出成形後の表面に凹凸形状が付与されている成形品のスキン層とコア層の状態を示す概略断面図である。図4Bは、凹凸除去後の最終成形品のスキン層とコア層の状態を示す概略断面図である。
図4Aにおいて、金型から取り出した成形品107は、金型の凹凸が転写された凹凸形状に沿った形でスキン層503とコア層502とが形成されている。また、スキン層503とコア層502との間には固液境界層504が存在する。図4Bにおいて、凹凸除去後の最終成形品109の凹凸除去後の表面は上述したようにスキン層503とコア層502とのそれぞれが除去量に応じて表面に露出している状態になっている。
最終成形品109において、スキン層503とコア層502とが併存することによって、柾目、板目等の木目模様を再現することができる。さらに、スキン層とコア層とが乱立すると、見た目にマット感を感じ、肌触りにも差が出るため、本物の木材のようなランダムな手触りになると共に、光の反射度の点においても木材のような見栄えになるメリットがある。
以下、実施の形態1に係る成形品の製造方法の具体例について、図面を参照しながら説明する。
(具体例)
実施の形態1の具体例では、ベース樹脂にPPを用い、セルロース系フィラーには針葉樹由来の漂白パルプを用いた。また、成形品表面の凹凸形状は最大で0.3mmとし、成形品の板厚は2.8mmとした。また、金型キャビティ及び金型コアには冷却回路を配置し、水による温調を行った。
図5Aは、実施の形態1の具体例の成形品の製造方法で得られたセルロース系フィラーを55wt%添加した成形品107の外観を示す概略図である。図5Bは、図5Aの成形品107の凹凸形状を除去した最終成形品109の外観を示す概略図である。図5Cは、図5Bの最終成形品109における木目模様302と白色部301とその境界線303とを示した概略図である。
図5Aにおいて、セルロース系フィラーを55wt%添加したセルロース系フィラー複合樹脂(以下、PP-CeF55%と記載)における、図2Aに記載の射出成形直後の凹凸形状を含む成形品107の成形品の実物外観を示している。図5Bにおいて、図2Bに記載の研削加工後の最終成形品109の成形品実物外観を示している。また、図5Cにおいて、除去量が多い凸部110が形成されていた部分は白色部301(コア層)を形成し、除去されていない、または、除去量が少ない凹部112は残存茶褐色化層111(スキン層)を有し、木目模様部302を形成している。木目模様部302と白色部301とは境界線303で色調が異なっている。
得られた最終成形品109の木目模様部302と白色部301との境界線303を境に分光測定器を用いてLab色空間における色差を測定した結果、色差ΔE=4.75であった。このことから、この成形品の製造方法によって、最終成形品109において、人間の目で目視した場合も十分に差が分かる程度の色差を有する木目模様を形成することができた。
また、得られた最終成形品の木目模様部302及び白色部301に生成されたフルフラール類の生成量をガスクロマトグラフィ/質量分析(GC/MS)成分分析にて分析した結果、N=3の平均値が、木目模様部302で0.21μg/gであるのに対し、白色部301では0.12μg/gであり、0.09μgの差異を確認できた。このことから、色差が生成されたフルフラール類によるものだと分かった。
<凹凸除去深さとスキン層との関係について>
i)凹凸除去深さが凸部の高さより小さい場合
図6Aは、凹凸除去深さが凸部の高さより小さい場合の最終成形品における残存茶褐色化層111と白色化面114とを示す概略断面図である。図6Bは、図6Aの最終成形品109の表面を簡易偏光顕微鏡で観察した結果を示す概略図である。
図6Aにおいて、図2Aに示す凹部112の表面に凹凸除去加工具108が接触しない(除去しない)ように凹凸形状の深さ0.3mmに対し、凸部110を0.29mm除去した場合の断面を示す。つまり、凹部112の表面に形成された茶褐色化層113がそのまま残存茶褐色化層111になる。また、この場合には、最終成形品109の表面に成形品の表面の凹凸形状の一部が段差として残る。図6Bに示す簡易偏光顕微鏡による実際の観察写真701では、凹凸除去加工具108による除去加工がないため、最表面は成形時に形成された茶褐色化層が残存する残存茶褐色化層としてスキン層がそのままの状態で保持されており、一方、白色で見える母材樹脂結晶704が最終成形品109の表面のわずか10%以下で露出していることが分かる。このことから、図6A及び図6Bの場合は最終成形品の表面の結晶化度が低いといえる。
ii)凹凸除去深さが凸部の高さとほぼ同じ場合
図6Cは、凹凸除去深さが凸部の高さとほぼ同じ場合の最終成形品における残存茶褐色化層111を示す概略断面図である。図6Dは、図6Cの最終成形品109の表面を簡易偏光顕微鏡で観察した結果を示す概略図である。
図6Cにおいて、残存茶褐色化層111が除去加工時に凹凸除去加工具108がわずかに接触するよう凹凸形状の深さ0.3mmに対し、ほぼ0.3mm除去した場合の断面を示している。この場合、最終成形品109の表面には成形品の表面の凹凸が段差として残らない。図6Dに示す簡易偏光顕微鏡による実際の観察写真702では、凹凸除去加工具108によるわずかな除去加工により、除去加工がない場合の表面701(図6B)に比べ、母材樹脂結晶704が最終成形品109の表面の20%から60%の範囲で露出していることが分かる。このことから、図6C及び図6Dの場合は、図6A及び図6Bに比べて最終成形品の表面の結晶化度が高いといえる。
iii)凹凸除去深さが凸部の高さより大きい場合
図6Eは、凹凸除去深さが凸部の高さより大きい場合の最終成形品における白色化面114を示す概略断面図である。図6Fは、図6Eの最終成形品109の表面を簡易偏光顕微鏡で観察した結果を示す概略図である。
図6Eにおいて、凹凸除去加工具108によって凹凸形状の深さ0.3mmに対し、0.31mm除去した場合の断面を示す。この場合、茶褐色化層が全部除去されて白色化面114が形成される。図6Fに示す簡易偏光顕微鏡による実際の観察写真703では、茶褐色化層を含むスキン層503が完全に除去され、コア層が最表面に露出しているため母材樹脂結晶704が、最終成形品109の表面に70%から99%の範囲で露出していることが分かる。このことから、図6E及び図6Fの場合は、図6C及び図6Dに比べて結晶化度が更に高く、スキン層の量が減少するにつれて結晶化度が高くなっているといえる。
図7の表1は、実施の形態1の実施例1-1から1-14におけるセルロース系フィラー添加率と木目模様部-白色部のLab色空間における色差とを調査した結果を示す表である。
(実施例1)
図7の表1において、実施例1-1は針葉樹パルプを30wt%添加し、樹脂温度200℃、金型温度60℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=3.11であった。
(実施例2)
図7の表1において、実施例1-2は針葉樹パルプを35wt%添加し、樹脂温度205℃、金型温度60℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=3.49であった。
(実施例3)
図7の表1において、実施例1-3は針葉樹パルプを40wt%添加し、樹脂温度210℃、金型温度60℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=3.69であった。
(実施例4)
図7の表1において、実施例1-4は針葉樹パルプを45wt%添加し、樹脂温度215℃、金型温度60℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=4.01であった。
(実施例5)
図7の表1において、実施例1-5は針葉樹パルプを50wt%添加し、樹脂温度220℃、金型温度75℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=4.30であった。
(実施例6)
図7の表1において、実施例1-6は針葉樹パルプを55wt%添加し、樹脂温度225℃、金型温度75℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=4.75であった。
(実施例1-7)
図7の表1において、実施例1-7は針葉樹パルプを60wt%添加し、樹脂温度230℃、金型温度75℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=5.06であった。
(実施例1-8)
図7の表1において、実施例1-8は針葉樹パルプを65wt%添加し、樹脂温度235℃、金型温度75℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=5.21であった。
(実施例1-9)
図7の表1において、実施例1-9は針葉樹パルプを70wt%添加し、樹脂温度240℃、金型温度75℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=5.40であった。
(実施例1-10)
図7の表1において、実施例1-10は針葉樹パルプを75wt%添加し、樹脂温度245℃、金型温度90℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=5.66であった。
(実施例1-11)
図7の表1において、実施例1-11は針葉樹パルプを80wt%添加し、樹脂温度250℃、金型温度90℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=5.93であった。
(実施例1-12)
図7の表1において、実施例1-12は針葉樹パルプを85wt%添加し、樹脂温度255℃、金型温度90℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=6.23であった。
(実施例1-13)
図7の表1において、実施例1-13は針葉樹パルプを90wt%添加し、樹脂温度260℃、金型温度90℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=6.65であった。
(実施例1-14)
図7の表1において、実施例1-14は針葉樹パルプを95wt%添加し、樹脂温度265℃、金型温度90℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能で色差ΔE=6.89であった。
図8の表2は実施の形態1の実施例2-1から2-8における各母材樹脂についてセルロース系フィラーを30wt%及び95wt%添加した際の木目模様の形成可否を調査した結果を示す表である。
(実施例2-1)
図8の表2において、実施例2-1は母材樹脂がポリエチレン(以下、PEと記載)の場合に、針葉樹パルプを30wt%添加した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能であった。
(実施例2-2)
図8の表2において、実施例2-2は母材樹脂がPEの場合に、針葉樹パルプを95wt%添加した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能であった。
(実施例2-3)
図8の表2において、実施例2-3は母材樹脂がアクリロニトリル-スチレン-ブタジエン(以下、ABSと記載)の場合に、針葉樹パルプを30wt%添加した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能であった。
(実施例2-4)
図8の表2において、実施例2-4は母材樹脂がABSの場合に、針葉樹パルプを95wt%添加した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能であった。
(実施例2-5)
図8の表2において、実施例2-5は母材樹脂がポリ乳酸(以下、PLAと記載)の場合に、針葉樹パルプを30wt%添加した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能であった。
(実施例2-6)
図8の表2において、実施例2-6は母材樹脂がPLAの場合に、針葉樹パルプを95wt%添加し、樹脂温度200℃、金型温度60℃にて射出成形した後、研削加工を施した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能であった。
(実施例3)
図8の表2において、実施例2-7は母材樹脂がナイロン(以下、PAと記載)の場合に、針葉樹パルプを30wt%添加した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能であった。
(実施例3)
図8の表2において、実施例2-8は母材樹脂がPAの場合に、針葉樹パルプを95wt%添加した実施例である。結果として、木目模様の形成は可能であった。
かかる構成によれば、凹凸を施した金型キャビティ、及び/または、金型コアで構成された金型及びセルロース系フィラー複合樹脂により本物の木材のような木目模様を有する成形品を通常の射出成形機で再現することができた。
なお、上記実施の形態及び実施例では、セルロース系フィラーは漂白済みの針葉樹由来パルプを用いたが、上述のように樹脂複合化段階で炭化・劣化が起こらない範囲で任意のセルロース系フィラーを選定することが可能であり、特に制限されない。
また、実施の形態1では先行文献との差を明確化するために、木目模様に見えるよう凹凸形状をデザインしたが、金型構造に問題がない範囲で木目模様以外のあらゆる模様を実現することができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、残存茶褐色化層111の色調をより濃くし、はっきりとした木目模様を形成することを目的とし、金型キャビティ及び/または金型コア内にヒータを配置した金型構造で射出成形を実施した。
なお、ベース樹脂はポリプロピレン(PP)とし、セルロースフィラー(CeF)が55wt%添加(以下、PP-CeF55%と記載)されたものを用い、成形品の表面の凹凸は最大で0.3mmとし、成形品の板厚は2.8mmとした。
また、実施の形態1では水による冷却回路にて金型温度75℃で実施したが、実施の形態2ではヒータによる制御及び最大加熱温度の上昇により140℃⇔60℃の高速加熱冷却を実施した(一般的にヒートアンドクール成形という)。これにより、成形サイクルタイムの増加なく、投入熱量のみを向上させることが可能である。
図9Aから図9Eは、実施の形態2に係る成形品の製造方法の各工程を示す概略断面図である。実施の形態2に係る成形品の製造方法は、実施の形態1と対比すると、金型内にヒータを配置し成形品の任意の位置・エリアを局所的に加熱できる金型構造を用いる点で相違する。
実施の形態2に係る成形品の製造方法は以下のようにして行われる。
(1)まず、内表面に凹凸104を施し、内部にヒータ401を設けた金型キャビティ101及び金型コア102を型締めする(図9A)。金型キャビティ101には、セルロース系フィラー複合樹脂を射出するスプルー103が設けられている。なお、スプルー103は金型キャビティ101に設ける場合に限られず、金型コア102に設けてもよい。
(2)次に、金型キャビティ101及び金型コア102の内部のキャビティに、スプルー103から溶融したセルロース系フィラー複合樹脂(PP-CeF30%)402を射出する(図9B)。このとき、ヒータ401により金型キャビティ表面は140℃に設定し、射出された樹脂の金型キャビティ側の任意のエリアにより多くの熱量を投入した。これによって、金型キャビティ101又は金型コア102の内表面の凹凸に対応する凹凸形状が表面に付与され、表面の近傍にセルロース系フィラー由来のフルフラール類をより多く含む層を設けた成形品を形成できる。
(3)次いで、ヒータ401の稼働を止め十分に冷却し、冷却固化した後、金型キャビティ101及び金型コア102を型開きして成形品403を取り出す(図9C)。このとき、スプルー103に対応する部分のランナー106は、成形品403とは分離して取り出される。
(4)さらに、取り出した成形品403の表面に付与された凹凸形状の一部を研削加工具108にて除去し、フルフラール類を含む層を部分的に残留させてフルフラール類を含む層の分布で模様を形成する(図9D、図9E)。
以上によって、最終成形品404を得る。
図10の表3は実施の形態2における金型内ヒータ有無における成形品の特性を比較する表である。
図10の表3において、得られた最終成形品404の木目模様と白色部とのLab色空間における色差を測定した結果、色差ΔE=5.82であり、実施の形態1のプロセスで得た実施例6の同PP-CeF55%の成形品と比較して色差が約1.23倍に向上した。
かかる構成によれば、ヒータを金型内に配置し投入熱量を増加させることで、よりはっきりとした木目模様を成形サイクルタイムの増加等の課題なく形成することができた。
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
本発明に係る成形品は、射出成形と同等のサイクルで本物の木材のような質感及び木目模様を再現できる。このため、長時間かけて木材の削出し加工で適用されていた商品の置換えや、耐久性の問題で採用が困難とされていた水周り等の本物の木材を採用できない部品にも適用できる。
101 金型キャビティ
102 金型コア
103 スプルー
104 表面凹凸
105 成形物
106 ランナー
107 成形品
108 凹凸除去加工具
109 最終成形品
110 凸部
111 残存茶褐色化層
112 凹部
113 茶褐色化層
114 白色化面
301 白色部
302 木目模様部
303 境界線

401 ヒータ
402 成形物
403 成形品
404 最終成形品

501 金型
502 コア層
503 スキン層
504 固液境界層

20 固定型盤
21 移動型盤
22 固定型盤20に固定された固定金型
23 移動型盤21に固定された移動金型
24 二頭式射出装置
25 射出シリンダ
25’ 射出シリンダ
26 射出スクリュー
26’ 射出スクリュー
27 ノズル
28 固定金型22内に設けられたスプルー
29 固定金型22と移動金型23のパーティング面
30 固定金型22と移動金型23の内部に形成されたキャビティ
31 成形品

1201 キャビティ
1202 補強部材
1203 第1材料
1204 第1材料に対して色彩が異なる第2材料
1205 溶融樹脂
1206 分流
1207 凝固層
1208 分流跡

Claims (16)

  1. 金型キャビティ及び/又は金型コアの内表面に凹凸を施した前記金型キャビティ及び前記金型コアを型締めする工程と、
    前記金型キャビティ及び前記金型コアの内部のキャビティに、ベース樹脂にセルロース系フィラーを添加したセルロース系フィラー複合樹脂を射出成形して、前記金型キャビティ又は金型コアの内表面の前記凹凸に対応する凹凸形状が表面に付与され、前記表面の近傍に前記セルロース系フィラー由来のフルフラール類を含む層を設けた成形品を形成する工程と、
    冷却固化した後、前記金型キャビティ及び金型コアを型開きして前記成形品を前記金型キャビティ及び金型コアから取り出す工程と、
    取出した前記成形品の表面に付与された前記凹凸形状の一部を除去し、前記フルフラール類を含む層を部分的に残留させて前記フルフラール類を含む層の分布で表面に模様を形成する工程と、
    を含む、成形品の製造方法。
  2. 前記射出成形する工程における投入熱量を制御し、前記表面の近傍の前記セルロース系フィラー由来のフルフラール類を含む層の厚さを調整する、請求項1に記載の成形品の製造方法。
  3. 金型キャビティ及び/または金型コアにヒータ等の熱源を配置して、前記射出成形する工程における投入熱量を制御する、請求項2に記載の成形品の製造方法。
  4. 前記セルロース系フィラーは、漂白済みのパルプ状態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
  5. 前記セルロース系フィラー複合樹脂における前記セルロース系フィラーの添加率が30wt%から95wt%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
  6. 前記セルロース系フィラーを添加する前記ベース樹脂の融点が220℃以下の熱可塑性樹脂である、請求項1から5のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
  7. 前記金型キャビティ又は前記金型コアの内表面に互いに平行な複数の直線状に延在する凸部を含む凹凸を有し、
    前記成形品の表面に付与された前記凹凸形状の一部の除去により、柾目模様が形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
  8. 前記金型キャビティ又は前記金型コアの内表面に同芯の複数の楕円状又は半楕円状に延在する凸部を含む凹凸を有し、
    前記成形品の表面に付与された前記凹凸形状の一部の除去により、板目模様が形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
  9. 前記金型キャビティ又は前記金型コアの内表面に直線状、放射状、円状、角形状、又は点状の任意の形状の凸部を含む凹凸を有し、
    前記成形品の表面に付与された前記凹凸形状の一部の除去により、任意の模様が形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
  10. ベース樹脂と、前記ベース樹脂に分散したセルロース系フィラーと、を含むセルロース系フィラー複合樹脂からなる成形品であって、
    表面に、前記ベース樹脂の結晶化度及び密度が周囲より高く前記セルロース系フィラー由来のフルフラール類が周囲より多いスキン層と、前記スキン層より前記ベース樹脂の結晶化度及び密度が低く、スキン層よりフルフラール類が少ないコア層と、が分布して模様を形成している、成形品。
  11. 前記スキン層と前記コア層との境界は、前記ベース樹脂の結晶化度が変化する固液境界層である、請求項10に記載の成形品。
  12. 前記スキン層と前記スキン層から離れた前記コア層との境界にはLab色空間における色差ΔE>3の境界線を有する、請求項10又は11に記載の成形品。
  13. 前記スキン層と前記コア層との分布によって構成される模様が板目及び/または柾目模様を含む木目模様になっている、請求項10から12のいずれか一項に記載の成形品。
  14. 前記スキン層と前記コア層との分布によって構成される模様が木目模様以外である、請求項10から12のいずれか一項に記載の成形品。
  15. 前記スキン層と前記コア層とでは、段差がある、請求項10から14のいずれか一項に記載の成形品。
  16. 前記スキン層と前記コア層とでは、段差がなく面一である、請求項10から14のいずれか一項に記載の成形品。
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