JP2022059855A - スルホン酸シリルエステルの製造方法および新規なケイ素化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】スルホン酸シリルエステルを効率的に製造する方法、および、新規なケイ素化合物の提供。【解決手段】酸性化合物の存在下で、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物にスルホン酸無水物を反応させる反応工程を含む、Si-O-SO2結合を有するスルホン酸シリルエステルの製造方法、および、新規なケイ素化合物。【選択図】なし

Description

本発明は、スルホン酸シリルエステルの効率的な製造方法および新規なケイ素化合物に関する。
スルホン酸シリルエステルは、医薬、農薬、電子材料等の精密合成用試薬、その合成中間体等として利用される機能性化学品である。
それらの製造方法としては、たとえば、クロロシランに、スルホン酸またはスルホン酸の銀塩を反応させる方法(方法A、非特許文献1)、メチルシラン(テトラメチルシラン)、アリルシラン(アリルトリメチルシラン)等にスルホン酸を反応させる方法(方法B、非特許文献2、3)、シラノール(トリメチルシラノール)にスルホン酸無水物を反応させる方法(方法C、特許文献1)、ジシロキサン(ヘキサメチルジシロキサン)にスルホン酸無水物を反応させる方(方法D、非特許文献4)等が検討されていた。
しかしながら、クロロシランを用いる方法(方法A)では、加水分解で腐食性が高い塩化水素を発生するクロロシランを使用するため、原料の取り扱いおよび装置の設計に注意が必要であり、メチルシラン、アリルシラン等を用いる方法(方法B)では、メチルシラン、アリルシラン等が高価である、メチルシランと反応するスルホン酸の種類がトリフルオロメタンスルホン酸のような酸性が強いスルホン酸に限られている、等の問題点があった。
また、シラノールを用いる方法(方法C)では、入手容易なシラノールの種類が限られている、シラノールの安定性が高くないため取扱いに注意が必要である、等の問題点があった。
さらに、クロロシラン、メチルシラン、アリルシラン、またはシラノールを用いる方法(方法A、B、C)では、反応の共生成物として、塩化水素、メタン、プロペン、またはスルホン酸が生成するため、原子利用効率が高くない等の問題点があった。
一方、ジシロキサンを用いる方法(方法D)では、反応の共生成物がないため原子利用効率が非常に高いという利点があるものの、反応性が低いスルホン酸無水物では反応が遅く生成物の収率が低い等の問題点があった。
これらのことから、工業的により有利な方法が求められていた。
中国特許出願公開第103665017号明細書
Chem. Ber., 103, 868-879 (1970) Synthesis, 827 (1982) Synthesis, 745-746 (1981) Synthesis, 206-207 (1985)
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、スルホン酸シリルエステルの効率的な製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(1)Si-O-Si結合を有するジシロキサン等のシロキサン化合物が、酸性化合物の存在下で、スルホン酸無水物とスムーズに反応して、スルホン酸シリルエステルを効率よく与えること、(2)生成したスルホン酸シリルエステルが、アルキンまたはアルケン等の修飾剤と反応して、スルホン酸シリルエステルのSi-O-SO結合がSi-C結合に変換されたケイ素化合物を与えること、(3)(1)、(2)の反応により新規なケイ素化合物が得られること、などを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
<1>
酸性化合物の存在下で、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物にスルホン酸無水物を反応させる反応工程を含む、Si-O-SO結合を有するスルホン酸シリルエステルの製造方法。
<2>
前記酸性化合物が、第3族~第15族の元素を含むルイス酸化合物、スルホン酸化合物、および固体酸から選ばれる化合物である、<1>に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
<3>
前記酸性化合物が、鉄、またはインジウムを含むルイス酸化合物、パーフルオロアルカンスルホン酸、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド、モンモリロナイト、およびゼオライトから選ばれる化合物である、<2>に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
<4>
前記Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物が、下記一般式(IA)、(IB)、または(IC)で表されるシロキサン化合物である、<1>~<3>の何れかに記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
Si-O-SiR (IA)
Figure 2022059855000001

O(SiRO) (IC)
(これら式中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;XおよびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子であり;mおよびnは、それぞれ独立に2以上10000以下の整数であり;R~Rの各々が同一分子内に複数個ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。)
<5>
前記スルホン酸無水物が、下記一般式(II)で表される化合物である、<1>~<4>の何れかに記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
(RSOO (II)
(式中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
<6>
前記反応工程が、マイクロ波の照射下で行われる、<1>~<5>の何れかに記載のス
ルホン酸シリルエステルの製造方法。
<7>
<1>~<6>の何れかに記載の製造方法によりスルホン酸シリルエステルを製造するスルホン酸シリルエステル製造工程、および
生成したスルホン酸シリルエステルに、アルキンまたはアルケンから選ばれる修飾剤を反応させる修飾工程
を含む、Si-C結合を有するケイ素化合物の製造方法。
<8>
前記修飾剤が、下記一般式(IVA)で表されるアルキン、および、下記一般式(IVB1)または(IVB2)で表されるアルケンから選ばれる化合物である、<7>に記載のケイ素化合物の製造方法。
C≡CH (IVA)
10CHCH=CHR11 (IVB1)
10C=CHCH11 (IVB2)
(これら式中、R~R11は、それぞれ独立に炭素数1~20の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;Zは、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アミド基、アリールスルホニル基、およびアルキルスルホニル基から選ばれる基である。)
<9>
前記修飾工程が、塩基性化合物の存在下で行われる、<7>または<8>に記載のケイ素化合物の製造方法。
<10>
前記塩基性化合物が、アミン化合物、アミジン化合物、グアニジン化合物、およびホスファゼン化合物から選ばれる化合物である、<9>に記載のケイ素化合物の製造方法。
<11>
前記修飾工程が、マイクロ波の照射下で行われる、<7>~<10>の何れかに記載のケイ素化合物の製造方法。
<12>
下記一般式(V)、(VI)、(VII)、または(VIII)で表されるケイ素化合物。
121314Si(OSO15) (V)
161718Si(C≡CR19) (VI)
202122Si[C(CN)=CHR23] (VII)
(SiR2425O)SiR2425 (VIII)
(これら式中、R12、R13、R14、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25は、それぞれ独立にメチル基、クロロメチル基、3-シアノプロピル基、フェニル基、およびビニル基より選ばれる基であり;R15は、トリフルオロメチル基、メチル基、およびp-トリル基から選ばれる基であり;R12~R14のうち少なくとも一つおよびR20~R22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立にクロロメチル基、3-シアノプロピル基、フェニル基、およびビニル基より選ばれる基であり;R16~R18のうち少なくとも一つは、それぞれ独立にクロロメチル基、3-シアノプロピル基、およびビニル基より選ばれる基であり;XおよびXは、それぞれ独立にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、エトキシ基、メトキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基であり;XおよびXのうちの少なくとも一つは、それぞれ独立にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基であり;aは、1以上5以下の整数である。)
本発明の製造方法を用いることにより、スルホン酸シリルエステルおよびその修飾化合物を効率的に製造できるという効果を有する。
詳細には、本発明の製造方法の好適な態様は、次のような特徴を有する。
(1)原料が比較的入手し易く、反応条件が温和で反応効率が高い。
(2)反応の共生成物がないため、原子利用効率が高いクリーンな反応系である。
(3)酸性化合物の存在下で反応が促進されるため、反応性が高くないスルホン酸無水物等の反応も容易に行うことができる。
(4)反応工程と修飾工程を連続的に行うことができるため、アルコキシシランを原料として、修飾化合物である、アルキニルシラン、アルケニルシラン等のSi-C結合を有するケイ素化合物を、簡便なワンポットの工程で製造することができる。
(5)新規な機能性ケイ素化合物を効率的に製造できる。
本発明の製造方法の好適な態様においては、スルホン酸シリルエステルおよびその修飾化合物であるアルキニルシラン、アルケニルシラン等のSi-C結合を有するケイ素化合物の効率的な製造方法を可能にするもので、従来技術に比べて、安全性、経済性等の面で、大きな利点を有する。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、特段の記載がない限り、本明細書中のある式中の記号が他の式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
本発明の一実施形態に係るスルホン酸シリルエステルの製造方法は、酸性化合物の存在下で、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物にスルホン酸無水物を反応させる反応工程を含むことを特徴とする。
本実施形態において、原料として使用するSi-O-Si結合を有するシロキサン化合物は、たとえば、下記一般式(IA)~(IC)で表される。
Si-O-SiR (IA)
Figure 2022059855000002
O(SiRO) (IC)
これら式中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。また、R~Rの各々が同一分子内に複数個ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。なお、本明細書において「反応に関与しない」とは、目的とする反応に反応物質として直接関与せず、また、当該反応を阻害または促進しないことを意味する。
およびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子である。
また、mおよびnは、それぞれ独立に2以上10000以下の整数である。
~Rが炭素数1~24の炭化水素基である場合、前記炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
炭化水素基がアルキル基の場合、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好
ましくは1~18、さらに好ましくは1~10であり、特に好ましくは1~4である。である。アルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基としては、炭素数が1~6のアルコキシ基、炭素数が1~6のアルコキシカルボニル基、炭素数が1~6のジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子をより具体的に示せば、メトキシ基、エトキシ基、ヘキソキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、クロロメチル基、2-メトキシエチル基、3-エトキシプロピル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-ジメチルアミノエチル基、3-シアノプロピル基、トリフルオロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル基等が挙げられる。
また、炭化水素基がアリール基の場合、炭化水素環系または複素環系の1価の芳香族有機基を使用できる。アリール基が炭化水素環系の1価の芳香族有機基の場合、その炭素数は、好ましくは6~22、より好ましくは6~14である。炭化水素環系の1価の芳香族有機基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。また、アリール基が複素環系の1価の芳香族有機基の場合、複素環中のヘテロ原子は硫黄、酸素原子等である。また、複素管系の1価の芳香族有機基の炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは4~8である。複素管系の1価の芳香族有機基の具体例としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が挙げられる。
アリール基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基としては、上記のアルキル基の場合に示したもの等を挙げることができる。また、その他の反応に関与しない基として、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基、オキシエチレンオキシ基等が挙げられる。それらの基等を有するアリール基の具体例としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、オクトキシフェニル基、メチル(メトキシ)フェニル基、フルオロ(メチル)フェニル基、クロロ(メトキシ)フェニル基、ブロモ(メトキシ)フェニル基、2,3-ジヒドロベンゾフラニル基、1,4-ベンゾジオキサニル基等が挙げられる。
さらに、炭化水素基がアラルキル基の場合には、アラルキル基の炭素数は、好ましくは7~23、より好ましくは7~16である。また、アラルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基としては、上記のアルキル基の場合について示したもの等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、2-ナフチルメチル基、9-アントリルメチル基、(4-クロロフェニル)メチル基、1-(4-メトキシフェニル)エチル基等が挙げられる。
また、炭化水素基がアルケニル基の場合には、アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~23、より好ましくは2~20、さらに好ましくは2~10、特に好ましくは2~4で
ある。また、アルケニル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基としては、上記のアルキル基の場合について示したもの等の他、上記に示したアリール基等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、5-ヘキセニル基、9-デセニル基、2-フェニルエテニル基、2-(メトキシフェニル)エテニル基、2-ナフチルエテニル基、2-アントリルエテニル基等が挙げられる。
およびXがシリル基である場合、シリル基としては、トリアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルケニルジアルキルシリル基、モノアルキルシリル基、トリアリールシリル基、ジアリールシリル基、モノアリールシリル基、トリアラルキルシリル基、ジアラルキルシリル基、モノアラルキルシリル基、トリアルケニルシリル基、ジアルケニルシリル基、モノアルケニルシリル基等を挙げることができる。これらのシリル基におけるアルキル基、アリール基、アラルキル基、およびアルケニル基としては、R~Rの説明において示したもの等を挙げることができる。また、シリル基の好適な具体例としては、トリメチルシリル基を挙げることができる。
mは、好ましくは3以上1000以下の整数、より好ましくは3以上200以下の整数、さらに好ましくは3以上50以下の整数、特に好ましくは3以上10以下の整数である。
また、nは、好ましくは3以上5000以下の整数、より好ましくは3以上3000以下の整数、さらに好ましくは3以上1000以下の整数、特に好ましくは3以上500以下の整数である。
したがって、それらの炭化水素基等を有する原料のSi-O-Si結合を有するシロキサン化合物の具体例としては、以下のものを挙げることができる。
まず、一般式(IA)で表されるシロキサン化合物としては、ヘキサメチルジシロキサン(MeSiOSiMe)、ヘキサエチルジシロキサン(EtSiOSiEt)、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン(MePhSiOSiMePh)、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ジメチルジシロキサン(MePhSiOSiMePh)、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン(MeViSiOSiMeVi)、1,3-ビス(クロロメチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン((ClCH)MeSiOSiMe(CHCl))、1,3-ビス(3-シアノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン([NC(CH]MeSiOSiMe[(CHCN])等が挙げられる。
また、一般式(IB)で表されるシロキサン化合物としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン((SiMeO))、オクタメチルシクロテトラシロキサン((SiMeO))、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン((SiMeViO))、デカメチルシクロペンタシロキサン((SiMeO))、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン((SiMeO))等が挙げられる。
さらに、一般式(IC)で表されるシロキサン化合物としては、末端が、それぞれ独立にトリメチルシロキシ基またはヒドロキシ基である、ポリ(ジメチルシロキサン)(X1aO(SiMeO)2a;X1a、X2a=SiMeまたはH)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)(X1bO(SiMePhO)2b;X1b、X2b=SiMeまたはH)、ポリ(ジメチルシロキサン-co-ジフェニルシロキサン)(X1c
(SiMeO)(SiPhO)2c;X1c、X2c=SiMeまたはH)等が挙げられる。
末端がトリメチルシリル基である、ポリ(ジメチルシロキサン)あるいはポリ(ジメチルシロキサン-co-ジフェニルシロキサン)としては、たとえば、KF-968あるいはKF-54(ともに信越化学社製)の名称で、シリコーンオイルとして市販されているもの等を使用できる。
一方、前記シロキサン化合物と反応させるスルホン酸無水物は、たとえば、下記一般式(II)で表される。
(RSOO (II)
一般式(II)において、Rは、炭素数1~24の炭化水素基であり、炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
炭化水素基であるRとしては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられ、反応に関与しない基としては、前記の一般式(IA)のR、R、またはRの説明において示したもの等を挙げることができる。
炭化水素基の炭素数に関しては、炭化水素基がアルキル基の場合には、好ましくは1~20、より好ましくは1~18であり;炭化水素基がアリール基の場合には、好ましくは4~20、より好ましくは4~18であり;炭化水素基がアラルキル基の場合には、好ましくは5~21、より好ましくは5~19であり;炭化水素基がアルケニル基の場合には、好ましくは2~20、より好ましくは2~18である。
炭素数1~24の炭化水素基の具体例としては、前記の一般式(IA)~(IC)のR~Rの説明において示したもの等を挙げることができる。
したがって、一般式(II)で表されるスルホン酸無水物の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO、Tf=SOCF)、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物([CF(CFSO]O)、p-トルエンスルホン酸無水物((p-TolSOO)、メタンスルホン酸無水物((MeSOO)等が挙げられる。
原料のシロキサン化合物に対する、スルホン酸無水物のモル比は任意に選ぶことができるが、シロキサン化合物に対するスルホン酸シリルエステルの収率を考慮すれば、シロキサン化合物中のSi-O-Si結合1個当たりのモル比として、通常0.5以上300以下であり、より好ましくは0.5以上200以下であり、さらに好ましくは0.5以上150以下であり、特に好ましくは0.5以上10以下である。
本実施形態によれば、前記一般式(IA)で表されるシロキサン化合物と前記一般式(II)で表されるスルホン酸無水物との反応、前記一般式(IB)で表されるシロキサン化合物と前記一般式(II)で表されるスルホン酸無水物との反応、および前記一般式(IC)で表されるシロキサン化合物と前記一般式(II)で表されるスルホン酸無水物との反応により、それぞれ、下記一般式(IIIA)、(IIIB)、および(IIIC)で表されるスルホン酸シリルエステルを製造できる。
Si(OSO) (IIIA)
SO(SiRO)SO (IIIB)
SO(SiRO)SO (IIIC)
これら式中、R~Rは、一般式(IA)~(IC)中のR~Rおよび一般式(II)中のRと同様に定義される。一般式(IA)~(IC)および(II)の説明において示したもの等を挙げることができる。
また、pおよびqは1~1000の整数であり、好ましくは1~500、より好ましくは1~200である。
一般式(IIIA)で表される化合物の具体例としては、p-トルエンスルホン酸トリメチルシリル(MeSiOSO-p-Tol)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(MeSiOTf)、(3-シアノプロピル)ジメチルシリルトリフラート(NC(CH]MeSiOTf)、ジメチルビニルシリルトシラート(Me(CH=CH)SiOSO-p-Tol)、(3-シアノプロピル)ジメチルシリルトシラート([NC(CH]MeSiOSO-p-Tol)、ジメチルフェニルシリルトシラート(MePhSiOSO-p-Tol)、(クロロメチル)ジメチルシリルトシラート((ClCH)MeSiOSO-p-Tol)等が挙げられる。
また、一般式(IIIB)および(IIIC)で表される化合物の具体例としては、ジメチルシランビストリフラート(TfO(SiMeO)Tf)、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン-1,3-ビストリフラート(TfO(SiMeO)Tf)、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ビストリフラート(TfO(SiMeO)Tf)、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン-1,7-ビストリフラート(TfO(SiMeO)Tf)、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン-1,9-ビストリフラート(TfO(SiMeO)Tf)、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11-ドデカメチルヘキサシロキサン-1,11-ビストリフラート(TfO(SiMeO)Tf)、ジメチルシランビスメシラート(MeSO(SiMeO)SOMe)、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン-1,3-ビスメシラート(MeSO(SiMeO)SOMe)、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ビスメシラート(MeSO(SiMeO)SOMe)等が挙げられる。
本実施形態における反応工程では、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物に対して、スルホン酸無水物が求核的に相互作用して、反応が進行していると考えられる。
したがって、本実施形態における反応は、シロキサン化合物のSi-O-Si結合と、スルホン酸無水物のSO-O-SO結合の間での結合の組み換えが起こる反応になる。その反応工程は、たとえば、前記一般式(IA)で表されるシロキサン化合物に1当量の前記一般式(II)で表されるスルホン酸無水物を反応させた場合、前記一般式(IIIA)で表されるスルホン酸シリルエステルが2当量生成する反応になる(スキーム1)。
Figure 2022059855000003

スキーム1
一方、前記一般式(IB)または(IC)で表される環状または直鎖状のシロキサン化合物に前記一般式(II)で表されるスルホン酸無水物を反応させる場合、両末端にアシロキシ基を有する、前記一般式(IIIB)または(IIIC)で表されるスルホン酸シリルエステルが生成する(スキーム2、3)。
Figure 2022059855000004

スキーム2
Figure 2022059855000005

スキーム3
スキーム2およびスキーム3におけるスルホン酸シリルエステルの分子量の分布は、原料のシロキサン化合物、スルホン酸無水物の反応性、および、それらの仕込み比等に依存して変化するが、一般的には、原料のシロキサン化合物に対するスルホン酸無水物の仕込み比が高いほど、低分子量側の割合が多い分布になる。
本実施形態における反応工程では、反応を促進するために、各種の均一系または不均一系の酸性化合物を触媒として使用する。
酸性化合物の存在下で反応を行う方法としては、反応系に酸性化合物を添加する方法だけでなく、反応系に少量の水を添加することによって、原料のスルホン酸無水物の一部を加水分解させて生成するスルホン酸を酸性化合物として使用する方法も可能である。
酸性化合物としては、第3族~第15族の元素を含むルイス酸化合物、および、スルホン酸化合物から選ばれる化合物が好ましい。
第3族~第15族の元素を含むルイス酸化合物としては、それらの元素のハロゲン化物、過塩素酸塩、スルホン酸塩、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、チオシアン酸塩等を使用できる。
第3族~第15族の元素に関しては、好ましくは第3族、第8族、第13族~第15族から選ばれ、より好ましくは第3族、第8族、第13族、または第15族から選ばれ、さらに好ましくは第8族または第13族から選ばれる元素である。
それらの元素をより具体的に示すと、好ましくは、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、イットリビウム、鉄、ルテニウム、銅、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、およびビスマスから選ばれ、より好ましくは、スカンジウム、鉄、ルテニウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、およびビスマスから選ばれ、さらに好ましくは、鉄、ルテニウム、アルミニウム、ガリウム、およびインジウムから選ばれる元素である。
したがって、それらの元素を含むルイス酸化合物をより具体的に示すと、塩化スカンジウム(III)、塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化ルテニウム(III)、塩化アルミニウム(III)、塩化ガリウム
(III)、塩化インジウム(III)、塩化スズ(IV)、過塩素酸鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸インジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸スズ(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン(III)、トリフルオロメタンスルホン酸プラセオジム(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ネオジム(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(IV)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスカンジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド亜鉛(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドインジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスズ(IV)、ヘキサフルオロアンチモン酸鉄(III)、ヘキサフルオロアンチモン酸インジウム(III)、チオシアン酸鉄(III)、チオシアン酸インジウム(III)等が挙げられる。それらの中では、鉄、インジウム等を含むルイス酸化合物が好ましく、より具体的には、過塩素酸鉄(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドインジウム(III)等が好ましい。なお、これらの化合物においては、結晶水を含むもの(水和物)も好ましく使用される。
触媒である酸性化合物としては、スルホン酸化合物も好ましく使用される。
それらの具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸等のパーフルオロアルカンスルホン酸;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド等のビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド;等が好ましく使用され、より具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が好ましく使用される。
また、触媒としては、触媒の分離および回収等が容易な、従来公知の各種の固体酸触媒を使用することもできる。固体酸触媒としては、無機系および有機系のものを使用できる。
無機系の固体酸触媒としては、金属塩、金属酸化物等の固体無機物等が挙げられ、より具体的に示せば、プロトン性水素原子あるいは金属陽イオン(アルミニウム、ガリウム、インジウム、鉄、チタン、スカンジウム、セリウム、スズ等)を有する、ゼオライト、メソポーラスシリカ、モンモリロナイトなどのほか、シリカゲル、ヘテロポリ酸、カーボン系素材等を担体とする無機系固体酸が挙げられる。
ゼオライトの種類としては、USY系、Y系、ベータ系、モルデナイト系、ZSM-5系等が挙げられ、シリカ/アルミナ比については3~2000等のものが挙げられる。
また、有機系の固体酸触媒としては、スルホ基、カルボキシル基等の酸性官能基を有する、ポスチレンゲル、ポリテトラフルオロエチレン等、各種のポリマー、オリゴマー等が挙げられる。
これらの固体酸の中では、モンモリロナイト、ゼオライトが好ましく使用され、より具体的には、スズ(IV)、インジウム(III)、アルミニウム(III)等の陽イオンを有するモンモリロナイト、モンモリロナイトK10(メルク社製)、CBV780(ゼオリスト社製)等のUSY系ゼオライト等が好ましく使用される。
原料であるシロキサン化合物に対する酸性化合物の量は任意に決めることができるが、モル比または重量比では、通常0.0001~20程度、好ましくは0.0001~10程度、より好ましくは0.001~8程度、さらに好ましくは0.001~6程度である。
また、水を添加して触媒であるスルホン酸を発生させる場合、反応系内に添加する水の量は、スルホン酸無水物に対するモル比として、通常0.0001~0.4程度、好まし
くは0.001~0.3程度、より好ましくは0.001~0.2程度、特に好ましくは0.01~0.2程度である。
本実施形態において、反応工程での反応は、反応温度または反応圧力に応じて、液相または気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。
反応温度は、通常-20℃以上、好ましくは-10~300℃、より好ましくは、-10~200℃、さらに好ましくは0~150℃である。また、室温で反応を行う場合には、室温の温度範囲としては、通常0~40℃、好ましくは5~40℃、より好ましくは10~35℃である。
さらに、反応圧力は、通常0.1~100気圧、好ましくは0.1~50気圧、より好ましくは0.1~10気圧である。
反応時間は、原料の量、触媒の量、反応温度、反応装置の形態等に依存するが、生産性や効率を考慮すると、通常0.1~72時間、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.1~14時間、さらに好ましくは0.1~5時間である。
また、反応を液相系で行う場合、溶媒を用いてもよく、無溶媒系で行ってもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては、デカリン(デカヒドロナフタレン)、デカン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素;クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル等;tert-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル等;などの原料と反応しない各種の溶媒が使用可能で、2種以上混合して用いることもできる。
溶媒としては、反応生成物を核磁気共鳴装置で分析する上で有利な重水素化溶媒を用いることもでき、たとえば、重ベンゼン、重トルエン、重クロロホルム、重アセトニトリル等を使用できる。
さらに、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
本実施形態における反応工程は、マイクロ波照射下で行うこともできる。反応工程では、原料のスルホン酸無水物、生成物のスルホン酸シリルエステル等の誘電損失係数が比較的大きく、マイクロ波を効率よく吸収するため、マイクロ波照射下では、それらの化合物等が活性化され、反応をより効率的に行うことができる。
マイクロ波照射反応では、接触式または非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)等は、反応のスケール、反応の種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3~30GHzである。その中で好ましいのは、産業分野、科学分野、医療分野等で使用するために割り当てられたIMS周波数帯で、さらにその中でも、2.45GHz帯、5.8GHz帯等がより好ましい。
また、マイクロ波照射反応では、反応系をより効率よく加熱するために、マイクロ波を吸収して発熱する加熱材(サセプター)を反応系に添加することができる。加熱材の種類としては、活性炭、黒鉛、炭化ケイ素、炭化チタン等、従来公知の各種のものを使用できる。また、先に記載した触媒と加熱材の粉末を混合して、セピオライト、ホルマイト等の適当なバインダーを利用して焼成加工した成形触媒を用いることもできる。
本実施形態の製造方法により提供されるスルホン酸シリルエステルは、一般に高い反応性を有するため、合成中間体として利用する際の反応、表面処理剤、ゾル・ゲル材料等と
して利用する際の反応を、温和な条件で効率的に行うことができる。
また、生成したスルホン酸シリルエステルのSi-O-SO結合は、適当な修飾剤を反応させることにより、容易に他の結合に変換できる。
たとえば、炭素系修飾剤を反応させた場合は、スルホン酸シリルエステルのSi-O-SO結合をSi-C結合に変換することができる。
そのような炭素系修飾剤としては、たとえば、下記一般式(IVA)で表されるアルキン、または、下記一般式(IVB1)もしくは(IVB2)で表されるアルケンを使用できる。
C≡CH (IVA)
(ZCH)R10C=CHR11 (IVB1)
HC=CR10(CH11) (IVB2)
式中、R~R11は、それぞれ独立に炭素数1~20の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。Zは、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アミド基、アリールスルホニル基、およびアルキルスルホニル基から選ばれる基であり、アシル基、アミド基、アリールスルホニル基、およびアルキルスルホニル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。
~R11の炭化水素基および反応に関与しない基としては、前記のR~Rの説明において示したもの等を挙げることができる。
また、アシル基の具体例としては、アセチル基、トリフルオロアセチル基等が挙げられ;アミド基の具体例としては、アセトアミド基、トリフルオロアセトアミド基等が挙げられ;アリールスルホニル基の具体例としては、フェニルスルホニル基が挙げられ;アルキルスルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基等が挙げられる。
したがって、一般式(IVA)で表されるアルキンとしては、アセチレン、1-プロピン、1-ブチン、1-オクチン、エチニルベンゼン、1-エチニルナフタレン、2-エチニルナフタレン、4-エチニルビフェニル、9-エチニルアントラセン等が挙げられる。
また、一般式(IVB1)で示されるアルケンとしては、アリルシアニド、3-メチル-3-ブテンニトリル、3-ペンテンニトリル、4-フェニル-3-ブテンニトリル、3-ニトロ-1-プロペン、メチル(2-プロペニル)ケトン、N,N-ジメチル-3-ブテンアミド、3-フェニルスルホニル-1-プロペン、3-メチルスルホニル-1-プロペン等が挙げられる。
一般式(IVB2)で示されるアルケンとしては、2-ブテンニトリル、2-ペンテンニトリル、4-フェニル-2-ブテンニトリル等が挙げられる。
前記反応工程において得られたスルホン酸シリルエステルに、一般式(IVA)で表わされるアルキンを反応させる場合、スルホン酸シリルエステルのアルキルまたはアリールスルホニル基を、アルキニル基(RC≡C-)に変換したケイ素化合物等が得られる。
また、一般式(IVB1)または(IVB2)で表わされるアルケンを反応させる場合には、スルホン酸シリルエステルのアルキルまたはアリールスルホニル基を、アルケニル基((R11CH)R10C=CX-)に変換したケイ素化合物等が得られる。
このようなSi-C結合を有するケイ素化合物(「修飾化合物」と称することがある。)の具体例を示すと、トリメチル(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMe)、(3-シアノプロピル)ジメチル(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMe[(CHCN])、ジメチル(フェニルエチニル)(ビニル)シラン(PhC≡C
SiMe(CH=CH))、ジメチル(フェニル)(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMePh)、2-トリメチルシリル-2-ブテンニトリル(MeCH=C(CN)(SiMe))、2,4-ビス(トリメチルシリル)-2-ブテンニトリル(MeSiCHCH=C(CN)(SiMe))等が挙げられる。
この修飾反応は、次のスキーム4、またはスキーム5に示すように進行していると考えられる。
Figure 2022059855000006

スキーム4
Figure 2022059855000007

スキーム5
これらの反応では、スルホン酸シリルエステルに、アルキンまたはアルケンが反応する際に、スルホン酸が脱離して、アルキニルシランまたはアルケニルシランがそれぞれ生成する。
アルケンとの反応では、電子吸引性基であるZとの共役が有利になるように、二重結合の移動による異性化反応が起きる場合もあるが、塩基が存在する場合には、その異性化反応が特に進行しやすいと考えられる。
また、アルケンを反応させる場合、一般式(IVB1)または一般式(IVB2)で表されるアルケンは、スキーム6に示すように、二重結合の移動による異性化反応により、相互変換が可能であるため、どちらの構造のアルケンを反応させても、同様の構造の生成物が得られる場合がある。特に、塩基が存在する場合は、その異性化反応が起きやすくなるため、同様の構造の生成物が得られやすい。
Figure 2022059855000008

スキーム6
前記修飾工程においては、スルホン酸を捕捉する特性がある塩基性化合物を添加することにより、反応を促進することができる。
そのような塩基性化合物としては、たとえば、アミン化合物、アミジン化合物、グアニジン化合物、ホスファゼン化合物等を使用でき、それらの化合物に由来する基を有する有機系または無機系の固体化合物を使用することもできる。
アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン等が挙げられる。アミジン化合物の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)等が挙げられる。グアニジン化合物の具体例としては、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]-5-デセン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]-5-デセン(MTBD)等が挙げられる。また、ホスファゼン化合物の具体例としては、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、tert-ブチルイミノトリス(ジ
メチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Bu)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエ
チルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)、tert-オクチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Oct)、1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P2-Et)、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P2-t-Bu)、1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P4-t-Bu)等が挙げられる。
塩基性化合物の種類に関しては、反応性が高いスルホン酸シリルエステル(トリフラート等)の修飾反応の場合は、トリエチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン等のアミン化合物が好ましく使用され、反応性が高くないスルホン酸シリルエステル(トシラート、メシラート等)の場合は、塩基性が高い、DBU、DBN、MTBD、BTPP、BEMP、P2-t-Bu等のアミジン化合物、グアニジン化合物、またはホスファゼン化合物が好ましく使用される。特に、ホスファゼン化合物は、アミジン化合物に比べて、反応温度の低温化、反応時間の短縮等に有利な化合物である。
スルホン酸シリルエステルに対する、炭素系修飾剤、塩基性化合物のモル比は、それぞれ、任意に選ぶことができるが、スルホン酸シリルエステルに対する収率を考慮すれば、スルホン酸シリルエステル中のスルホニルオキシ基に対して、通常0.4モル当量以上100モル当量以下であり、より好ましくは0.5モル当量以上50モル当量以下であり、さらに好ましくは0.5モル当量以上20モル当量以下、特に好ましくは0.5モル当量以上10モル当量以下である。
また、修飾工程の反応は、反応温度または反応圧力に応じて、液相または気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。
反応温度は、通常-20℃以上、好ましくは-10~300℃、より好ましくは、-10~250℃、さらに好ましくは0~200℃である。また、室温で反応を行う場合には、室温の温度範囲としては、通常0~40℃、好ましくは5~40℃、より好ましくは10~35℃である。
さらに、反応圧力は、通常0.1~100気圧で、好ましくは0.1~50気圧、より好ましくは0.1~10気圧である。
反応時間は、原料の量、反応温度、反応装置の形態等に依存するが、生産性および効率を考慮すると、通常0.1~100時間、好ましくは0.1~72時間、より好ましくは0.1~24時間、さらに好ましくは0.1~14時間、特に好ましくは0.1~5時間である。
反応を液相系で行う場合、溶媒を用いてもよく、無溶媒系で行ってもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては、反応工程において用いることができる溶媒等が挙げられる。溶媒は、2種以上混合して用いることもできる。
さらに、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
本実施形態における修飾工程は、マイクロ波照射下で行うこともできる。修飾工程では、原料のスルホン酸シリルエステル等の誘電損失係数が比較的大きく、マイクロ波を効率よく吸収するため、マイクロ波照射下では、それらの化合物等が活性化され、反応をより効率的に行うことができる。
マイクロ波照射反応では、接触式または非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)等は、反応のスケール、反応の種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3~30GHzである。その中で好ましいのは、産業分野、科学分野、医療分野等で使用するために割り当てられたIMS周波数帯で、さらにその中でも、2.45GHz帯、5.8GHz帯等がより好ましい。
また、マイクロ波照射反応では、反応系をより効率よく加熱するために、マイクロ波を吸収して発熱する加熱材(サセプター)を反応系に添加することができる。加熱材の種類としては、活性炭、黒鉛、炭化ケイ素、炭化チタン等、従来公知の各種のものを使用できる。また、先に記載した触媒と加熱材の粉末を混合して、セピオライト、ホルマイト等の適当なバインダーを利用して焼成加工した成形触媒を用いることもできる。
本実施形態における修飾工程は、反応工程で生成したスルホン酸シリルエステルを精製して行うだけでなく、反応工程で得られた未精製のスルホン酸シリルエステルを用いて行うこともできる。
未精製のスルホン酸シリルエステルを用いて行う方法は、原料のシロキサン化合物から、ワンポットの簡便な操作で修飾化合物を得ることができる方法であり、本発明の特長を示す有利な態様である。
また、反応工程で生成したスルホン酸シリルエステルおよび修飾工程で生成した修飾化合物の精製は、蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の有機化学上通常用いられる手段により容易に達せられる。
なお、前記修飾工程において、未反応のスルホニルオキシ基が残存している場合、別の種類のアルキン、アルケン、あるいは、他の修飾剤をさらに添加して、残存しているスルホニルオキシ基を他の置換基に変換した別の修飾化合物を得ることもできる。
たとえば、他の修飾剤として、エタノール、メタノール等のアルコールを用いた場合は、残存しているスルホニルオキシ基を、エトキシ基、メトキシ基等のアルコキシ基に変換した修飾化合物が得られる。
未反応のスルホニルオキシ基が残存している場合は、スルホニルオキシシラン同士が反応して、Si-O-Si結合の生成を伴う修飾化合物が生成する場合もある。
それらの修飾化合物の具体例を示すと、トリメチル(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMe)、(3-シアノプロピル)ジメチル(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMe[(CHCN])、ジメチル(フェニルエチニル)(ビニル)シラン(PhC≡CSiMe(CH=CH))、ジメチル(フェニル)(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMePh)、2-トリメチルシリル-2-ブテンニトリル(MeCH=C(CN)(SiMe))、2,4-ビス(トリメチルシリル)-2-ブテンニトリル(MeSiCHCH=C(CN)(SiMe))、2-[(シアノプロピル)ジメチルシリル]-2-ブテンニトリル(MeCH=C(CN){SiMe[(CHCN]})、2,4-ビス[(シアノプロピル)ジメチルシリル]-2-ブテンニトリル({[NC(CH]MeSi}CHCH=C(CN){SiMe[(CHCN]})等が挙げられる。
さらに、前述の反応工程、または反応工程および修飾工程により、次の一般式(V)、(VI)、(VII)、または(VIII)で表される新規なケイ素化合物を提供できる。
121314Si(OSO15) (V)
161718Si(C≡CR19) (VI)
202122Si[C(CN)=CHR23] (VII)
(SiR2425O)SiR2425 (VIII)
これら式中、R12、R13、R14、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25は、それぞれ独立にメチル基、クロロメチル基、3-シアノプロピル基、フェニル基、およびビニル基より選ばれる基であり;R15は、トリフルオロメチル基、メチル基、およびp-トリル基から選ばれる基である。なお、R12~R14のうち少なくとも一つおよびR20~R22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立にクロロメチル基、3-シアノプロピル基、フェニル基、およびビニル基より選ばれる基である。また、R16~R18のうち少なくとも一つは、それぞれ独立にクロロメチル基、3-シアノプロピル基、およびビニル基より選ばれる基である。
また、XおよびXは、それぞれ独立にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、エトキシ基、メトキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基であり、XおよびXのうちの少なくとも一つは、それぞれ独立にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基である。
さらに、aは、1以上5以下の整数である。
一般式(V)では、(R12、R13、R14、R15)の組み合わせの好ましい例として、(メチル基、メチル基、3-シアノプロピル基、トリフルオロメチル基)、(メチル基、メチル基、3-シアノプロピル基、p-トリル基)、(メチル基、メチル基、クロロメチル基、p-トリル基)、(メチル基、メチル基、フェニル基、p-トリル基)、(メチル基、メチル基、ビニル基、p-トリル基)、一般式(VI)では、(R16、R17、R18、R19)の組み合わせの好ましい例として、(メチル基、メチル基、3-シアノプロピル基、フェニル基)等が挙げられ、一般式(VII)では、(R20、R21、R22、R23)の組み合わせの好ましい例として、(メチル基、メチル基、3-シアノプロピル基、メチル基)等が挙げられ、一般式(VIII)では、(R24、R25、X、X、a)の組み合わせの好ましい例として、(メチル基、メチル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、2)、(メチル基、メチル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、3)、(メチル基、メチル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、4)、(メチル基、メチル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、5)、(メチル基、メチ
ル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、6)、(メチル基、メチル基、メタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、2)、(メチル基、メチル基、メタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、3)等が挙げられる。
それらのケイ素化合物は、反応性基であるトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、エトキシ基等;機能性基であるアルキニル基、アルケニル基等;を有することから、合成中間体、表面処理剤等として有用な機能性ケイ素化合物として利用できる。
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例で使用した主な分析装置等は、以下の通りである。
・核磁気共鳴スペクトル分析(以下、NMRと称する場合がある。):ブルカー製 AVANCE III HD 600MHz(クライオプローブ装着)
・ガスクロマトグラフ分析(以下、GCと称する場合がある。):島津製作所製 GC-2014
・ガスクロマトグラフ質量分析(以下、GC-MSと称する場合がある。):島津製作所製 GCMS-QP2010Plus
(実施例1)
ヘキサメチルジシロキサン(MeSiOSiMe) 0.45mmol、p-トルエンスルホン酸無水物((p-TolSOO) 0.47mmol、Fe(ClO・6HO 0.0045mmol、および、o-ジクロロベンゼン 0.12mLを、反応容器に入れ、100℃で、0.5時間撹拌した。生成物をNMRで分析し、生成物の収率をNMRで測定した結果、p-トルエンスルホン酸トリメチルシリル(MeSiOTf)が90%の収率で生成したことがわかった(表1-1参照)。
(実施例2~57)
反応条件(原料、触媒、温度、時間等)を変えて、実施例1と同様に反応および分析を行い、生成物の収率をNMRで測定した結果を表1-1~表1-5(単に「表1」と称することがある。)に示す。
Figure 2022059855000009
Figure 2022059855000010
Figure 2022059855000011
Figure 2022059855000012
Figure 2022059855000013
表1中の注釈を以下に示す。
1) (Me3Si)2O:ヘキサメチルジシロキサン
{[NC(CH2)3]Me2Si}2O:1,3-ビス(3-シアノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキ
サン
[Me2(CH2=CH)Si]2O:1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン
(Me2PhSi)2O:1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン
[(ClCH2)Me2Si]2O:1,3-ビス(クロロメチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
(SiMe2O)3:ヘキサメチルシクロトリシロキサン
(SiMe2O)4:オクタメチルシクロテトラシロキサン
(SiMe2O)5:デカメチルシクロペンタシロキサン
KF-968:ポリ(ジメチルシロキサン)(信越化学社製、Me3SiO(SiMe2O)nSiMe3、置換基
として、メチル基を有し、両末端がトリメチルシリル基のポリシロキサン)。なお、シロキサン化合物がポリマーの場合の使用モル数は、繰り返し構造単位当たりのモル数を示す。繰り返し構造単位の分子量は、KF-968は74.2とした。
2) (p-TolSO2)2O:p-トルエンスルホン酸無水物
Tf2O:トリフルオロメタンスルホン酸無水物
(MeSO2)2O:メタンスルホン酸無水物
3) Fe(ClO4)3・6H2O:過塩素酸鉄(III)6水和物
TfOH:トリフルオロメタンスルホン酸
In(NTf2)3:トリス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド]インジウム(III)
Sn4+-mont:Sn4+含有モンモリロナイト
K10 mont:モンモリロナイトK10(メルク社製)
CBV780:H+型USY系ゼオライト(ゼオリスト社製)
H2O:水
なお、丸括弧の数値の単位はmmol、角括弧の数値の単位はmgを示す。また、触媒欄にH2Oが記載された実施例では、実際には、反応系内で原料のスルホン酸無水物の一部が加水分解して生じたスルホン酸が、触媒として作用する。
4) DCB:1,2-ジクロロベンゼン
PhMe:トルエン
MeCN:アセトニトリル
CHCl3:クロロホルム
C6D6:重ベンゼン
5) 25℃は、室温での反応を示す。室温より高い温度の反応では、オイルバス(理工科学
社製MH-5D)を使用した。また、反応はすべて密閉状態で行った。
6) Me3SiOSO2-p-Tol:p-トルエンスルホン酸トリメチルシリル
Me3SiOTf:トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル
[NC(CH2)3]Me2SiOTf:(3-シアノプロピル)ジメチルシリルトリフラート
(ClCH2)Me2SiOTf:(クロロメチル)ジメチルシリルトリフラート
Me2(CH2=CH)SiOSO2-p-Tol:ジメチルビニルシリルトシラート
[NC(CH2)3]Me2SiOSO2-p-Tol:(3-シアノプロピル)ジメチルシリルトシラート
Me2PhSiOSO2-p-Tol:ジメチルフェニルシリルトシラート
(ClCH2)Me2SiOSO2-p-Tol:(クロロメチル)ジメチルシリルトシラート
TfO(SiMe2O)Tf:ジメチルシランビストリフラート
TfO(SiMe2O)2Tf:1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン-1,3-ビストリフラート
TfO(SiMe2O)3Tf:1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ビストリフラート
TfO(SiMe2O)4Tf:1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン-1,7-ビストリフラート
TfO(SiMe2O)5Tf:1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン-1,9-ビストリフラート
TfO(SiMe2O)6Tf:1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11-ドデカメチルヘキサシロキサン-1,11-
ビストリフラート
MeSO3(SiMe2O)SO2Me:ジメチルシランビスメシラート
MeSO3(SiMe2O)2SO2Me:1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン-1,3-ビスメシラート
MeSO3(SiMe2O)3SO2Me:1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ビスメシラー

7) NMRによる収率(シロキサンに対するスルホン酸シリルエステルの収率)。
8) 2個のスルホニルオキシ基を有する化合物TfO(SiMe2O)pTf(p = 1, 2, 3, 4, ≧5)の
混合物。角括弧内は、それらの化合物の比を示す。また、収率はそれらの合計収率を示す。
9) 2個のスルホニルオキシ基を有する化合物MeSO3(SiMe2O)pSO2Me(p = 1, 2, 3, 4, ≧5)の混合物。角括弧内は、それらの化合物の比を示す。また、収率はそれらの合計収率を示す。
10) Me3SiOTfと、2個のスルホニルオキシ基を有する化合物TfO(SiMe2O)qTf(q = 1, 2, 3, 4, ≧5)の混合物。角括弧内は、それらの化合物の比を示す。また、収率はそれらの合計収率を示す。
本発明の製造方法では、触媒を用いることにより、効率よく反応が進行する。
たとえば、ヘキサメチルジシロキサンとp-トルエンスルホン酸無水物の反応では、触媒を使用しない場合、表1の比較例1に示すように、100℃で0.5時間の反応条件では、スルホン酸シリルエステルの収率はわずか5%であった。一方、実施例1、および2に示すように、Fe(ClO・6HOまたはトリフルオロメタンスルホン酸を触媒として用いると、スルホン酸シリルエステルが、それぞれ、90%または94%の高い収率で得られた。
また、スルホン酸無水物としてトリフルオロメタンスルホン酸無水物を用いた場合も、比較例2と実施例10に示すように、触媒を使用しない場合とトリフルオロメタンスルホン酸を触媒として使用した場合の収率は、約25℃で60時間の反応条件で、それぞれ、41%、80%であり、触媒を使用した場合の方が高い収率でスルホン酸シリルエステルが得られた。
これらの結果は、本発明の反応工程では、触媒として酸性化合物を用いることにより、スルホン酸シリルエステルを、効率的に高い収率で製造できることを示している。
また、反応工程で得られたスルホン酸シリルエステルは、適当な炭素系修飾剤を用いることにより、以下の実施例に示すように、Si-C結合を有するケイ素化合物に容易に変換することができる。
(実施例58)
表1の実施例30で得られたトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル 0.24mmolを含むアセトニトリル反応溶液(約0.3mL)に、フェニルアセチレン 0.43mmol、DBU 0.43mmolを添加して、180℃で0.25時間加熱した。生成物を、GC、GC-MS、およびNMRで分析し、生成物の収率をNMRで測定した結果、トリメチル(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMe)が70%の収率で生成したことがわかった(表2参照)。
(実施例59~68)
反応条件(原料、温度、時間等)を変えて、実施例58と同様に反応および分析を行い、生成物の収率をNMRで測定した結果を表2に示す。
Figure 2022059855000014
表2中の注釈を以下に示す。
1) 表1の実施例と同様の反応条件で得られたスルホン酸シリルエステルを含む反応液を
使用して、修飾剤との反応を行った。角括弧内の実施例番号は、スルホン酸シリルエステルを調製した反応条件の実施例番号を示す。
2) PhC≡CH:フェニルアセチレン
CH2=CHCH2CN:アリルシアニド
3) DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン
BTPP:tert-ブチルイミノトリ(ピロリジノ)ホスホラン
Et3N:トリエチルアミン
4) MeCN:アセトニトリ
DCB:1,2-ジクロロベンゼン
C6D6:重ベンゼン
5) 25℃は、室温での反応を示す。室温より高い温度の反応では、オイルバス(理工科学
社製MH-5D)またはマイクロ波加熱装置(バイタージ社製Initiator)を使用した。MWは、マイクロ波による加熱を示す。また、反応はすべて密閉状態で行った。
6) PhC≡CSiMe3:トリメチル(フェニルエチニル)シラン
PhC≡CSiMe2[(CH2)3CN]:(3-シアノプロピル)ジメチル(フェニルエチニル)シラン
PhC≡CSiMe2(CH=CH2):ジメチル(フェニルエチニル)(ビニル)シラン
PhC≡CSiMe2Ph:ジメチル(フェニル)(フェニルエチニル)シラン
MeCH=C(CN)(SiMe3):2-トリメチルシリル-2-ブテンニトリル
Me3SiCH2CH=C(CN)(SiMe3):2,4-ビス(トリメチルシリル)-2-ブテンニトリル
MeCH=C(CN){SiMe2[(CH2)3CN]}:2-[(シアノプロピル)ジメチルシリル]-2-ブテンニト
リル
{[NC(CH2)3]Me2Si}CH2CH=C(CN){SiMe2[(CH2)3CN]}:2,4-ビス[(シアノプロピル)ジメ
チルシリル]-2-ブテンニトリル
なお、括弧内は、生成した修飾化合物の比を示す。また、収率はそれらの合計収率を
示す。
7) NMRによる収率(スルホン酸シリルエステルに対する収率)
上記実施例で得られた、スルホン酸シリルエステルおよびそれらの修飾化合物の29Si核磁気共鳴スペクトル(29Si NMR)およびGC-MSのデータを表3-1および表3-2に示す。
Figure 2022059855000015
Figure 2022059855000016
1) 各化合物の名称は、表1脚注6、および、表2脚注6に記載。
2) 29Si NMRの化学シフト値。NMR溶媒として、C6D6を使用。緩和試薬Cr(acac)3(クロム(III)アセチルアセトナート)を添加して測定。括弧内はピーク面積の積分比に基づくケイ素原子の個数の比を示す。
3) GC-MS:ガスクロマトグラフ質量分析、EI法:電子衝撃イオン化法(70eV)。
4) (SiMe2O)m(m=4, 5)とTf2Oまたは(MeSO2)2Oの反応生成物の化学シフト値(CD3CN溶媒)。
5) 角括弧内は、KF-968とTf2Oの反応生成物の化学シフト値(C6D6溶媒)。
本発明の製造方法により、機能性化学品として有用なスルホン酸シリルエステル、および、それらから得られるSi-C結合を有する修飾化合物を、より効率的かつ安全に製造できるため、本発明の利用価値は高く、その工業的意義は多大である。

Claims (12)

  1. 酸性化合物の存在下で、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物にスルホン酸無水物を反応させる反応工程を含む、Si-O-SO結合を有するスルホン酸シリルエステルの製造方法。
  2. 前記酸性化合物が、第3族~第15族の元素を含むルイス酸化合物、スルホン酸化合物、および固体酸から選ばれる化合物である、請求項1に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
  3. 前記酸性化合物が、鉄、またはインジウムを含むルイス酸化合物、パーフルオロアルカンスルホン酸、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド、モンモリロナイト、およびゼオライトから選ばれる化合物である、請求項2に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
  4. 前記Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物が、下記一般式(IA)、(IB)、または(IC)で表されるシロキサン化合物である、請求項1~3の何れか1項に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
    Si-O-SiR (IA)
    Figure 2022059855000017

    O(SiRO) (IC)
    (これら式中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;XおよびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子であり;mおよびnは、それぞれ独立に2以上10000以下の整数であり;R~Rの各々が同一分子内に複数個ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。)
  5. 前記スルホン酸無水物が、下記一般式(II)で表される化合物である、請求項1~4の何れか1項に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
    (RSOO (II)
    (式中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
  6. 前記反応工程が、マイクロ波の照射下で行われる、請求項1~5の何れか1項に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
  7. 請求項1~6の何れか1項に記載の製造方法によりスルホン酸シリルエステルを製造するスルホン酸シリルエステル製造工程、および
    生成したスルホン酸シリルエステルに、アルキンまたはアルケンから選ばれる修飾剤を反応させる修飾工程
    を含む、Si-C結合を有するケイ素化合物の製造方法。
  8. 前記修飾剤が、下記一般式(IVA)で表されるアルキン、および、下記一般式(IVB1)または(IVB2)で表されるアルケンから選ばれる化合物である、請求項7に記載のケイ素化合物の製造方法。
    C≡CH (IVA)
    10CHCH=CHR11 (IVB1)
    10C=CHCH11 (IVB2)
    (これら式中、R~R11は、それぞれ独立に炭素数1~20の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;Zは、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アミド基、アリールスルホニル基、およびアルキルスルホニル基から選ばれる基である。)
  9. 前記修飾工程が、塩基性化合物の存在下で行われる、請求項7または8に記載のケイ素化合物の製造方法。
  10. 前記塩基性化合物が、アミン化合物、アミジン化合物、グアニジン化合物、およびホスファゼン化合物から選ばれる化合物である、請求項9に記載のケイ素化合物の製造方法。
  11. 前記修飾工程が、マイクロ波の照射下で行われる、請求項7~10の何れか1項に記載のケイ素化合物の製造方法。
  12. 下記一般式(V)、(VI)、(VII)、または(VIII)で表されるケイ素化合物。
    121314Si(OSO15) (V)
    161718Si(C≡CR19) (VI)
    202122Si[C(CN)=CHR23] (VII)
    (SiR2425O)SiR2425 (VIII)
    (これら式中、R12、R13、R14、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25は、それぞれ独立にメチル基、クロロメチル基、3-シアノプロピル基、フェニル基、およびビニル基より選ばれる基であり;R15は、トリフルオロメチル基、メチル基、およびp-トリル基から選ばれる基であり;R12~R14のうち少なくとも一つおよびR20~R22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立にクロロメチル基、3-シアノプロピル基、フェニル基、およびビニル基より選ばれる基であり;R16~R18のうち少なくとも一つは、それぞれ独立にクロロメチル基、3-シアノプロピル基、およびビニル基より選ばれる基であり;XおよびXは、それぞれ独立にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、エトキシ基、メトキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基であり;XおよびXのうちの少なくとも一つは、それぞれ独立にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基であり;aは、1以上5以下の整数である。)
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