JP2022056561A - 裂け性評価方法、裂け性評価装置及び粘着フィルムの製造方法 - Google Patents

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【課題】従来測定法では相関が取りづらかった、粘着フィルムの実用現場における強度物性を反映した裂け性の裂け性評価方法、裂け性評価装置及び裂け性評価方法を用いた粘着フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係る裂け性評価方法は、長尺状の粘着フィルム1の一部を固定する固定工程と、前記粘着フィルムの固定されていない非固定部12の端部121を、固定端を中心軸として30°以上180°以下の角度で折り曲げた方向に5m/min以上100m/min以下の速度で引張る引張工程と、前記粘着フィルムに破断が生じるまでの破壊エネルギー(N/mm)を、前記引張工程で得られる応力-ひずみ曲線から算出する第一算出工程とを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、裂け性評価方法、裂け性評価装置及び粘着フィルムの製造方法に関する。
一般に、粘着フィルムを設計・評価する際には、粘着力や引張強伸度、弾性率、引裂強度といった強度物性の測定を行う(例えば、特許文献1参照)。
しかし、これらの測定手法は一般的な物性を評価、比較するための方法であり、実用現場における機能性には反映できないことが多い。
粘着フィルム等のプラスチックフィルムの引張強伸度測定法としては、JIS K 7127に規定された方法が一般的である。しかしながら、この測定によって得られたデータが粘着フィルム使用時の巻開・貼合・剥離といった工程での強度物性と相関があるとは限らない。また、上記方法における試験速度は一般的には最大500mm/minまでの等速度試験であり、実用状態とはかけ離れた速度である。
特開2015-80855号公報
粘着フィルムの剥離工程において、フィルムの裂け性は作業性を大きく左右し、粘着力とフィルム強度のバランスが重要となる。そのため、既存の引張試験・引裂き強度測定法に加えて、実用現場での使用を想定した新たなフィルム性能の評価方法が必要とされている。
そこで、本発明では、従来測定法では相関が取りづらかった、粘着フィルムの実用現場における強度物性を反映した裂け性の裂け性評価方法、裂け性評価装置及び裂け性評価方法を用いた粘着フィルムの製造方法を提供することを目的とする
本発明に係る裂け性評価方法は、長尺状の粘着フィルムの一部を固定する固定工程と、
前記粘着フィルムの固定されていない非固定部の端部を、固定端を中心軸として30°以上180°以下の角度で折り曲げた方向に5m/min以上100m/min以下の速度で引張る引張工程と、
前記粘着フィルムに破断が生じるまでの破壊エネルギー(N/mm)を、前記引張工程で得られる応力-ひずみ曲線から算出する第一算出工程とを有する。
また、本発明に係る裂け性評価装置は、本発明の裂け性評価方法に用いる裂け性評価装置であって、
板状の第一固定部材と、
板状の第二固定部材と、
引張試験機と、を有し、
前記第一固定部材を前記引張試験機に固定し、前記第一固定部材と前記第二固定部材との間に、前記粘着フィルムの一部を挟持して固定し、前記固定端を中心軸として30°以上180°以下の角度で折り曲げた方向に前記非固定部の前記端部を引張るよう構成されている。
また、本発明に係る粘着フィルムの製造方法は、本発明の裂け性評価方法を用いた粘着フィルムの製造方法である。
本発明によれば、従来測定法では相関が取りづらかった、粘着フィルムの実用現場における強度物性を反映した裂け性の裂け性評価方法、裂け性評価装置及び裂け性評価方法を用いた粘着フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の裂け性評価方法及び装置の一実施形態を示す断面図である。 図1の裂け性評価装置の一実施形態を示す正面図である。 引張試験で得られる応力-ひずみ曲線を示す図である。
以下、本発明の裂け性の裂け性評価方法、裂け性評価装置及び裂け性評価方法を用いた粘着フィルムの製造方法の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の裂け性評価方法及び装置の一実施形態を示す断面図、図2は、図1の裂け性評価装置の一実施形態を示す正面図、図3は、引張試験で得られる応力-ひずみ曲線を示す図である。
本発明の裂け性評価方法に用いられる裂け性評価装置10は、図1及び2に示すように、第一固定部材Aと、第一固定部材Aと対向するように配置された第二固定部材Bと、引張試験機(図示せず)とを有している。
第一固定部材A及び第二固定部材Bは、板状の部材で構成されている。
第二固定部材Bは、第一固定部材Aよりも主面の面積が小さい構成となっている。
第一固定部材Aと第二固定部材Bとは、固定手段Cによって、これらの間に粘着フィルム1の一部を挟持した状態を維持することが可能となっている。
さらに、第一固定部材Aは、引張試験機に固定できるよう構成されている。
本実施形態の裂け性評価方法は、このような裂け性評価装置10を用いて、粘着フィルム1の裂け性評価を行う。
具体的には、第一固定部材Aを引張試験機に固定する。
次に、図1に示すように、長尺状の粘着フィルム1の一部(固定部11)を第一固定部材Aと第二固定部材Bとの間に挟持する。そして、固定手段Cで挟持状態を維持することで、粘着フィルム1の一部(固定部11)を固定する(固定工程)。
次に、引張試験機によって、粘着フィルム1の固定されていない非固定部12の端部121を、固定されている端部(固定端13)を中心軸として30°以上180°以下の角度で折り曲げた方向(例えば、図1中の矢印の180°方向)に5m/min以上100m/min以下の速度で引張る(引張工程)。
なお、折り曲げ角度は、30°以上180°以下であるが、30°、60°、90°、180°のいずれかであることが好ましい。30°又は60°であると、粘着フィルム1を手で剥離する場合に対応した評価を行うことができる。また、90°又は180°であると、JIS Z 0237で規定される、粘着力測定と対応した評価を行うことができる。
また、本発明において、引張速度は、5m/min以上100m/min以下であるが、5m/min以上80m/min以下であることが好ましく、10m/min以上60m/min以下であることがより好ましい。これにより、より実使用現場に近い状態で評価することができる。
次に、粘着フィルム1に破断が生じるまでの破壊エネルギー(N/mm)を、引張試験(引張工程)で得られる図3に示すような応力-ひずみ(粘着フィルムの伸び)曲線から算出する(第一算出工程)。具体的には、図3に示すような応力-ひずみ曲線の塗りつぶし部分の面積を求めることで、破壊エネルギー(N/mm)を算出する。
さらに、上記のようにして得られた破壊エネルギーから下記式(1)により破壊強度(N/mm)を算出することもできる(第二算出工程)。
破壊強度=破壊エネルギー/非固定部の長さ(mm)…(1)
また、さらに、粘着フィルム1の幅を25mmとし、前記破壊強度から下記式(2)により破壊荷重(N/25mm)を算出することもできる(第三算出工程)。
破壊荷重=破壊強度×[前記粘着フィルムの厚み(mm)×25(mm)]…(2)
また、さらに、粘着フィルム1の粘着力(N/25mm)を測定し、下記式(3)により見かけ界面強度(N/25mm)を算出することもできる(第四算出工程)。
見かけ界面強度=粘着力-破壊荷重 …(3)
ここで、破壊荷重と見かけ界面強度とを比較し、見かけ界面強度>破壊荷重となった場合には、粘着フィルム1の剥離の際に、粘着フィルム1に裂けが生じると判断することができる。
なお、粘着フィルム1としては、基材フィルム及び粘着層を備える公知の粘着フィルムを用いることができ、その層構成は特に限定されない。
粘着フィルムの粘着層を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤等を用いることができる。
また、基材フィルムを構成する材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)等を用いることができる。
基材フィルムの厚みは、特に限定されず、10μm~500μm、より好ましくは10μm~300μmである。
このような裂け性評価方法を用いて粘着フィルムを製造した場合、信頼性の高い粘着フィルムを得ることができる。
また、粘着フィルの製造方法は、本発明の評価方法を用いていればよく、インフレーション成形、Tダイ押出成形、カレンダー成形等、既存の粘着フィルムの製造方法を用いることができる。
以上、本発明の裂け性評価方法、裂け性評価装置及び裂け性評価方法を用いた粘着フィルムの製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
以下、具体的な実験例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
1.粘着フィルムの作成
・基材層
各実験例において、表1に示すように、各ポリプロピレン、ポリプロピレン・ポリエチレン(ブレンド)、ポリエチレンのいずれかを基材としたフィルムを使用した。フィルムの厚みは40μmで統一した。
・粘着剤
各実験例において、表1に示すように、天然ゴム系粘着剤(粘着剤1~3)を使用した。粘着剤層の厚みは、各実験例で同じとした。
各粘着剤における粘着力の関係は、粘着剤1<粘着剤2<粘着剤3である。すなわち、粘着剤3が最も粘着力が高く、粘着剤1が最も粘着力が低い。
2.裂け性評価
・破壊荷重
各実験例の粘着フィルムを25mm幅×100mmにカットし、図1及び図2に示す装置にセットした。引張試験機として高速剥離試験機TE-70(テスター産業社製)を用い、粘着フィルムを20m/minにて180°方向へ引張試験実施した。測定された破壊エネルギーから破壊荷重を算出した。
・粘着力
JIS Z 0237の方法に準拠し、各実験例の粘着フィルムを25mm幅×200mmへカットし、2kgローラーを用いてSUS304鋼板(表面仕上げBA)へ貼り合わせた。室温23℃、相対湿度50%の室内で1日静置した後、高速剥離試験機TE-70(テスター産業社製)を用い、20m/minにて180°方向での粘着力を測定した。
・見かけ界面強度
粘着力と破壊荷重から上記式(3)を用いて算出した。
・裂け発生予測
剥離時に裂けの発生が予測されるか否かを下記基準に従い判断した。
〇:破壊荷重>見かけ界面強度の時(裂けの発生は予測されない)
×:見かけ界面強度 ≧ 破壊荷重の時(裂けの発生が予測される)
・剥離時裂け発生の有無
210mm×297mmのSUS304鋼板(表面仕上げBA)へ各実験例の粘着フィルムを貼り合わせ、手で剥離する際に粘着フィルムの裂けが発生するかを調査した。
〇:裂けの発生無し
×:裂けの発生
・予測と結果の相関性
裂け発生予想と剥離時裂け発生の有無に相関が取れたか、本試験法の有効性が示されているかの総合評価。
〇:予測と結果が一致
×:予測と結果が不一致
これらの結果を、粘着フィルムの構成とともに、表1に示した。
Figure 2022056561000002
※1:粘着力に対して破壊荷重が十分大きい場合、見かけ界面強度がマイナスとなる。
表1から明らかなように、本発明の裂け性評価方法を用いた場合、予測と結果が一致し、実用現場における粘着フィルムの強度物性を容易に評価することができた。
1 粘着フィルム
11 固定部
12 非固定部
13 固定端
121 端部
A 第一固定部材
B 第二固定部材
C 固定手段

Claims (6)

  1. 長尺状の粘着フィルムの一部を固定する固定工程と、
    前記粘着フィルムの固定されていない非固定部の端部を、固定端を中心軸として30°以上180°以下の角度で折り曲げた方向に5m/min以上100m/min以下の速度で引張る引張工程と、
    前記粘着フィルムに破断が生じるまでの破壊エネルギー(N/mm)を、前記引張工程で得られる応力-ひずみ曲線から算出する第一算出工程とを有する裂け性評価方法。
  2. さらに、前記破壊エネルギーから下記式(1)により破壊強度(N/mm)を算出する第二算出工程を有する請求項1に記載の裂け性評価方法。
    破壊強度=前記破壊エネルギー/前記非固定部の長さ(mm)…(1)
  3. さらに、前記粘着フィルムの幅を25mmとし、前記破壊強度から下記式(2)により破壊荷重(N/25mm)を算出する第三算出工程を有する請求項2に記載の裂け性評価方法。
    破壊荷重=前記破壊強度×[前記粘着フィルムの厚み(mm)×25(mm)]…(2)
  4. さらに、前記粘着フィルムの粘着力(N/25mm)を測定し、下記式(3)により見かけ界面強度(N/25mm)を算出する第四算出工程を有する請求項5に記載の裂け性評価方法。
    見かけ界面強度=前記粘着力-破壊荷重…(3)
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の裂け性評価方法に用いる裂け性評価装置であって、
    板状の第一固定部材と、
    板状の第二固定部材と、
    引張試験機と、を有し、
    前記第一固定部材を前記引張試験機に固定し、前記第一固定部材と前記第二固定部材との間に、前記粘着フィルムの一部を挟持して固定し、前記固定端を中心軸として30°以上180°以下の角度で折り曲げた方向に前記非固定部の前記端部を引張るよう構成されている裂け性評価装置。
  6. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の裂け性評価方法を用いた粘着フィルムの製造方法。

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