JP2022056497A - 金属積層体およびその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】タングステン部材と他の金属部材との好適な接合を実現する新規な技術を提供する。【解決手段】ここに開示される金属積層体は、W部材12と、Pt-W層14と、Pt-Cu層16とを少なくとも備えている。そして、ここに開示される金属積層体では、Pt-W層におけるPt元素とW元素との合計原子数を100at%としたときのPt元素の原子数が37at%~40at%であり、かつ、Pt-Cu層におけるPt元素とCu元素との合計原子数を100at%としたときのPt元素の原子数が18at%~20at%である。これによって、W部材12とPt-W層14とPt-Cu層16からなる三層構造の間で金属元素の組成が平衡になり、層間での金属元素の必要以上の移動が抑制されるため、ボイドの発生による信頼性の低下を防止できる。【選択図】図1

Description

本発明は、タングステン部材を備えた金属積層体、および当該金属積層体に他の金属部材を接合させた接合体に関する。
タングステン(W)を含むタングステン部材(以下「W部材」ともいう)は、融点が高く、かつ、熱膨張率が低いという特徴を有し、高温環境での信頼性に優れている。このため、W部材は、ダイバータ、加速器、プラズマ放電装置、高温炉、薄膜形成装置等の高温環境に晒される超高温部品に使用される。一方、タングステンは、希少かつ高価な金属であり、かつ、加工が困難である。このため、W部材を母材とし、当該W部材と他の金属部材とを接合させた接合体が広く使用されている。なお、この種の接合体が小型で精密である場合には、母材に大きな負荷を掛けないように無加圧や低加圧の接合手段を採用することが推奨されている。
かかる接合手段の一例として、銀(Ag)や銅などの金属成分を含む接合材料を介して、W部材と他の金属部材とを接合することが提案されている。かかる接合材料の一例が特許文献1、2に開示されている。具体的には、特許文献1には、コバルト(Co)を用いて炭化タングステン(WC)を焼結した超硬合金の接合において、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)及びコバルト(Co)を含むろう材(接合材料)を使用する技術が開示されている。これによって、超硬合金中のCoが接合材料へ拡散することを抑制し、超硬合金の強度低下による破損を防止できる。一方、特許文献2には、アルミナ分散強化銅と被接合金属(例えば、タングステン)とを接合する際に、リン(P)を含有する接合材料を使用している。そして、接合時の熱処理温度を、銅の融点よりも低く、リンと銅との共晶反応により低下した銅の融点よりも高い範囲に設定している。これによって、アルミナ分散強化銅と被接合金属とを接合している。
また、ろう付け以外の接合手段として、NDB法(Non Defective Bonding)が挙げられる。このNDB法は、W部材と他の金属部材とを直接接合する技術であり、その一例が非特許文献1、2に開示されている。例えば、非特許文献1では、タングステン部材と銅部材とを接触させた状態で銅部材の溶融・冷却を行う。非特許文献1では、かかる接合手段を実施することによって、W部材の微小な凹凸表面に、溶融した銅部材が入り込み、原子間相互の引力が増大することによって擬似的な金属結合が形成されると予測している。
特許第5385951号 特許第6528257号
J.Plasama Fusion Res. Vol.95, No.8(2019)374-376 スマートプロセス学会誌 第6巻 第5号(2017年9月)
しかしながら、特許文献1、2のように、接合材料を介してW部材の接合を行うと、W部材と接合材料との間での金属元素の相互移動が進み、カーケンダルボイドと呼ばれる空孔が生じて接合の信頼性が保てなくなる可能性がある。かかるカーケンダルボイドへの対策の一例として、接合材料の成分を、W部材との間で金属元素の移動(拡散)が生じないようなものに変更することが挙げられる。しかし、このような金属元素の移動が生じない接合材料を使用した場合には、W部材と接合材料との間で合金が形成されないため、強い圧力を加えずに強固な接合を実現することが難しい。
また、上述の通り、W部材は、熱膨張率が非常に低いため、接合対象である他の金属部材との間で熱膨張率に大きな差が生じることがある。このような場合に、接合体の加熱・冷却が繰り返されると、W部材と接合対象との接合部分に応力が集中して接合強度が大きく低下する可能性がある。すなわち、非特許文献1、2のようなW部材と他の金属部材とを直接接合する技術を採用すると、熱サイクルへの脆弱性が問題となる。
本発明は、上述の問題を解決するためにされたものであり、その主な目的は、タングステン部材と他の金属部材との好適な接合を実現する新規な技術を提供することである。
上述の目的を達成するため、ここに開示される技術によって、以下の構成の金属積層体が提供される。
ここに開示される金属積層体は、タングステン(W)を含有するタングステン部材と、タングステン部材の表面に形成され、Pt-W合金を主成分として含有するPt-W層と、Pt-W層の表面に形成され、Pt-Cu合金を主成分として含有するPt-Cu層と
を少なくとも備えている。さらに、ここに開示される金属積層体は、Pt-W層のEDX分析において、白金(Pt)とタングステン(W)との合計原子数を100at%としたときの白金(Pt)の原子数が37at%~40at%であり、かつ、Pt-Cu層のEDX分析において、白金(Pt)と銅(Cu)との合計原子数を100at%としたときの白金(Pt)の原子数が18at%~20at%である。
なお、本明細書における「原子数」は、SEM画像に対してエネルギー分散型X線分析(EDX分析:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を実施して得られた元素分析に基づいた数値である。
上述のように、Pt-Cu層とPt-W層とW部材とからなる三層構造において、Pt-W層でのPt元素の原子数を37at%~40at%とし、かつ、Pt-Cu層でのPt元素の原子数を18at%~20at%とした場合、各層の間で金属元素の組成が平衡になり、金属元素(例えばPt元素)の相互移動がこれ以上進行しなくなる。すなわち、ここに開示される金属積層体によると、金属元素の過剰な移動によるカーケンダルボイドの発生を防止することができる。また、この金属積層体のPt-W層は、W部材にPt元素が移動することで形成された合金であるため、W部材と強固に接続される。このため、ここに開示される金属積層体は、Pt-W層とPt-Cu層を介してW部材と他の金属部材とを強固かつ容易に接合できる。加えて、この金属積層体は、W部材からPt-Cu層に向かうにつれて熱膨張率が段階的に大きくなるように構成されているため、熱膨張(熱収縮)による応力が特定の部位に集中することを防止し、加熱・冷却に伴う接合強度の低下を抑制できる。
ここに開示される金属積層体の好適な一態様では、タングステン部材は、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、炭窒化タングステン、銅タングステン複合材料、銀タングステン複合材料からなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする。ここに開示される技術によると、上述したW系材料からなるW部材と、他の金属部材との接合に好適に使用できる。
また、ここに開示される技術の他の側面として、W部材を含む接合体が提供される。かかる接合体は、上記構成の金属積層体と、金属積層体のPt-Cu層の表面に接合された接合対象とを備えている。換言すると、ここに開示される金属積層体を用いることによって、Pt-Cu層とPt-W層を介してW部材と接合対象(他の金属部材)とが強固に接合された接合体を作製できる。そして、この接合体では、接合部分(Pt-Cu層とPt-W層)におけるカーケンダルボイドの発生が防止されているため、信頼性の高い接合が実現している。また、金属元素の移動(拡散)によって各層が接合された金属積層体を使用しているため、W部材と他の金属部材とを強固かつ容易に接合されている。さらに、この接合部材は、W部材からPt-Cu層に向かうにつれて熱膨張率が段階的に大きくなるように構成されているため、加熱・冷却に伴う接合強度の低下を十分に抑制できる。
ここに開示される接合体の好適な一態様では、接合対象が上記構成の金属積層体であり、2つの金属積層体がPt-Cu層同士が対向するように接合されている。ここに開示される技術を利用してW部材同士の接合を行う場合には、上記構成の金属積層体を2つ用意し、当該2つの金属積層体をPt-Cu層同士が対向するように接合することが好ましい。これによって、W部材、Pt-W層、Pt-Cu層、Pt-W層、W部材の順で金属層が積層した五層構造の接合体が作製され、Pt-W層、Pt-Cu層、Pt-W層という三層を介してW部材同士を強固に接合できる。そして、かかる構成の接合体では、上述した五層構造の間で金属元素の組成が平衡になるため、カーケンダルボイドの発生を特に好適に防止できる。
ここに開示される接合体の他の好適な一態様では、接合対象が、銅、白金、白金-銅合金、白金-タングステン合金からなる群から選択される少なくとも一種を含む金属部材である。ここに開示される技術は、W部材同士の接合だけでなく、W部材以外の金属部材(異種金属部材)とW部材との接合に用いることもできる。例えば、ここに開示される金属積層体のPt-Cu層は、Pt元素とCu元素を含んでいるため、上述したPt元素やCu元素を含む異種金属部材と容易に接合できる。すなわち、ここに開示される技術によると、直接接合することが難しいW部材と異種金属部材を容易に接合することができる。
また、ここに開示される技術の他の側面として、上記構成の金属積層体の製造に用いられる接合用ペーストが挙げられる。この接合用ペーストは、白金(Pt)と銅(Cu)を少なくとも含み、白金(Pt)と銅(Cu)との合計モル数を100mol%としたときの白金(Pt)のモル比が20mol%以上である。このようなPtとCuを含む接合用ペーストをW部材の表面に塗布し、接合用ペースト中のPt元素をW部材に移動させることによって、W部材とPt-W層とPt-Cu層を備えた三層構造の金属積層体を製造できる。なお、本発明者が行った実験によると、上記三層構造の間で金属元素の組成を平衡にするには、上記Pt元素のモル比(Pt/Pt+Cu)を20mol%以上に設定する必要があることが分かった。
一実施形態に係る金属積層体を模式的に示す断面図である。 一実施形態に係る金属積層体を用いて作製した接合体の一例を模式的に示す断面図である。 一実施形態に係る金属積層体を用いて作製した接合体の一例を模式的に示す断面図である。 サンプル1の断面SEM写真である。 サンプル2の断面SEM写真である。 (a)はサンプル2の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル2のPt-W層とPt-Cu層との境界を示す断面SEM像(20000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)はサンプル2のW部材とPt-W層との境界を示す断面SEM像(20000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 サンプル3の断面SEM写真である。 (a)はサンプル4の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたO,Cu,Wの元素マップである。 (a)はサンプル5の断面SEM像(5000倍)であり、(b)、(c)はそれぞれEDX分析に基づいたPt,Wの元素マップである。
以下、ここに開示される技術の一実施形態について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施できる。なお、本明細書において、「A~B(A、Bは数値)」と記載した場合、「A以上B以下」を意味するものとする。
1.金属積層体
以下、ここに開示される金属積層体の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る金属積層体を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る金属積層体10は、少なくとも、W部材12と、Pt-W層14と、Pt-Cu層16とを備えている。以下、金属積層体10を構成する各層について説明する。
(1)W部材
W部材12は、タングステン(W)を含有する金属部材である。W部材12は、W元素を含む固形の金属部材であればよく、その素材や形状は特に限定されない。W部材12の素材の一例として、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、炭窒化タングステンなどが挙げられる。詳しくは後述するが、本実施形態に係る金属積層体10によると、これらのW系材料からなるW部材12と、他の金属部材とを強固に接合できる。なお、金属積層体10を構成する各層の間での金属元素の必要以上の移動を抑制するという観点から、W部材12は、W元素を主成分として含む金属部材であると好ましい。ここで、「W元素を主成分として含む」とは、W元素以外の元素が意図的に含まれていないことを指す。したがって、原料や製造工程等に由来する不可避的不純物(W元素以外の金属元素)が含まれている場合は、本明細書における「W元素を主成分として含む」の概念に包含される。例えば、W部材12を構成する金属元素の総数を100at%としたときのW元素の原子数が75at%以上であれば、「W元素を主成分として含む」ということができる。なお、三層構造の間での金属元素の必要以上の移動を更に好適に抑制するという観点から、W部材12におけるW元素の原子数は、77.5at%以上が好ましく、80at%以上がより好ましく、82.5at%以上が特に好ましい。なお、W元素を主成分として含むW部材12におけるW元素の原子数の上限は、特に限定されず、99.5at%以下であってもよく、97.5at%以下であってもよく、95at%以下であってもよく、92.5at%以下であってもよく、90at%以下であってもよい。
なお、W部材12は、上述したような「W元素を主成分として含む金属部材」に限定されず、W系材料と他の材料とを複合した複合材料で構成されていてもよい。例えば、W部材12には、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、金(Au)、トリウム(Th)等が含まれていてもよい。この種の複合材料の一例として、銅タングステン複合材料、銀タングステン複合材料などが挙げられる。また、W部材12は、W系材料とセラミックとを混合した複合材料で構成されていてもよい。W部材12に含まれ得るセラミックの一例として、トリア(ThO)、イットリア(Y)等の高融点セラミックが挙げられる。なお、このような複合材料で構成されたW部材12を用いる場合には、Pt-W層14と接するW部材12の上面12aの少なくとも一部において、W元素を主成分として含む領域を形成すると好ましい。これによって、全体として複合材料で構成されたW部材12を用いた場合であっても、信頼性の高い強固な接合を実現できる。なお、W部材12の上面12aの総面積を100%としたときに、W元素を主成分として含む領域の面積が50%以上(より好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上)であれば、複合材料で構成されたW部材12を用いた場合でも、特に信頼性の高い強固な接合を実現できる。
また、上述した通り、W部材の形状も特に限定されず、金属積層体の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、W部材は、図1に示すような板状の他に、筒状、柱状などの様々な形状を特に制限なく採用できる。また、本実施形態に係る金属積層体10は、W部材12の上面12a側に、Pt-W層14とPt-Cu層16が形成されている。しかし、Pt-W層とPt-Cu層が形成される面も特に限定されず、W部材の形状や金属積層体の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、ここに開示される金属積層体は、W部材の両面の各々にPt-W層とPt-Cu層が形成されていてもよい。
(2)Pt-W層
図1に示すように、Pt-W層14は、W部材12の表面に形成されている。このPt-W層14は、Pt-W合金を主成分として含有する。ここで、「Pt-W合金を主成分とする」とは、Pt元素とW元素以外の元素が意図的に含まれていないことを指す。したがって、本明細書における「Pt-W層」は、Pt元素とW元素以外に、原料や製造工程等に由来する不可避的不純物を微量に含む金属層を包含する。例えば、ここに開示される金属積層体のPt-W層は、Pt-W層を構成する元素の総数を100at%としたときのPt元素とW元素の合計原子数が75at%以上となる金属層を包含される。なお、金属積層体10を構成する各層の間での金属元素の必要以上の移動を更に好適に抑制するという観点から、Pt-W層におけるPt元素とW元素の合計原子数は、80at%以上が好ましく、82.5at%以上がより好ましく、85at%以上が特に好ましい。なお、Pt-W層におけるPt原子とW原子の合計原子数の上限は、特に限定されず、100at%以下であってもよく、99.5at%以下であってもよく、99at%以下であってもよく、98at%以下であってもよく、97at%以下であってもよい。なお、Pt-W層14に含まれ得る元素(不可避的不純物)としては、O、Cu、Mo、Fe、Pd、Ir、Au、Co、Ni、Zn、Al、Sn、Pb、Mn、Ag、Thなどが挙げられる。
(3)Pt-Cu層
図1に示すように、Pt-Cu層16は、Pt-W層14の表面に形成された層である。このPt-Cu層16は、Pt-Cu合金を主成分として含有する。ここで、「Pt-Cu合金を主成分とする」とは、Pt元素とCu元素以外の元素が意図的に含まれていないことを指す。したがって、本明細書における「Pt-Cu層」は、Pt元素とCu元素以外に、原料や製造工程等に由来する不可避的不純物を微量に含む金属層を包含する。例えば、ここに開示される金属積層体のPt-Cu層は、当該Pt-Cu層を構成する元素の総数を100at%としたときのPt元素とCu元素の合計原子数が85at%以上となる金属層を包含する。なお、各層の間での金属元素の必要以上の移動を好適により抑制するという観点から、Pt-Cu層におけるPt元素とCu元素の合計原子数は、90at%以上が好ましく、92.5at%以上がより好ましく、95at%以上が特に好ましい。なお、Pt-Cu層におけるPt元素とCu元素の合計原子数の上限は、特に限定されず、100at%以下であってもよく、99.5at%以下であってもよく、99at%以下であってもよく、98at%以下であってもよく、97at%以下であってもよい。なお、Pt-Cu層16に含まれ得る金属元素(不可避的不純物)としては、O、W、Mo、Fe、Pd、Ir、Au、Co、Ni、Zn、Al、Sn、Pb、Mn、Ag、Thなどが挙げられる。
(4)各層の組成
そして、本実施形態に係る金属積層体10は、Pt-Cu層16とPt-W層14とW部材12とからなる三層構造の層間において金属元素の組成が平衡になっていることによって特徴付けられる。具体的には、本実施形態に係る金属積層体10では、Pt-W層12におけるPt元素とW元素との合計原子数を100at%としたときのPt元素の原子数が37at%~40at%であり、かつ、Pt-Cu層14におけるPt元素とCu元素との合計原子数を100at%としたときのPt元素の原子数が18at%~20at%である。このような組成のPt-Cu層16とPt-W層14がW部材12の表面に形成されると、Pt-Cu層16中のCu元素に向かうPt元素の移動と、W部材12中のW元素に向かうPt元素の移動とが平衡になり、各層の間で金属元素の移動(拡散)がこれ以上進まなくなる。従って、本実施形態に係る金属積層体10によると、各層の間での金属元素の相互移動が必要以上に進行してカーケンダルボイドが発生することを好適に防止できる。すなわち、本実施形態に係る金属積層体10によると、カーケンダルボイドの発生が抑制された信頼性の高い接合部(Pt-W層14およびPt-Cu層16)を形成できる。
なお、各層の間における金属元素の必要以上の移動をより好適に抑制するという観点から、Pt-W層12におけるPt元素の原子数の下限値は、37at%以上が好ましく、37.25at%以上がより好ましく、37.5at%以上がさらに好ましく、37.75at%以上が特に好ましい。一方、Pt-W層12におけるPt元素の原子数の上限値は、39.75at%以下が好ましく、39.5at%以下がより好ましく、39.36at%以下が特に好ましい。また、Pt-Cu層14におけるPt元素の原子数の下限値は、18.5at%以上が好ましく、18.75at%以上がより好ましく、19at%以上がさらに好ましく、19.06at%以上が特に好ましい。一方、Pt-Cu層14におけるPt元素の原子数の上限値は、19.75at%以下が好ましく、19.5at%以下がより好ましく、19.27at%以下が特に好ましい。
また、本実施形態に係る金属積層体10のPt-W層14は、W部材12にPt元素が移動することで形成されたものであるため、W部材12と強固に接続されている。そして、本実施形態に係る金属積層体10は、Pt-W層14と強固に接合されたPt-Cu層16を有している。このため、Pt-Cu層16に他の金属部材を接合することによって、Pt-W層14とPt-Cu層16を介してW部材12と他の金属部材とを強固かつ容易に接合できる。さらに、この金属積層体10は、W部材12からPt-Cu層16に向かうにつれて熱膨張率が段階的に大きくなるように構成されている。このため、熱膨張(熱収縮)による応力が特定の部位に集中することを防止できるため、加熱・冷却に伴う接合強度の低下を十分に抑制できる。以上のとおり、本実施形態に係る金属積層体10を用いることによって、W部材12と他の金属部材との好適な接合を実現できる。
2.接合体
次に、本実施形態に係る金属積層体10を用いて、W部材12と他の金属部材とを接合した接合体100について説明する。図2および図3は、本実施形態に係る金属積層体を用いて作製した接合体の一例を模式的に示す断面図である。図2および図3に示すように、この接合体100は、上記構成の金属積層体10と、金属積層体10のPt-Cu層16の表面と接合された接合対象20とを備えている。以下、各図における接合体100の構造について説明する。
先ず、図2に示す接合体100は、上記構成の金属積層体10同士を接合したものである。具体的には、図2に示す接合体100は、接合対象20として金属積層体10が用いられており、各々の金属積層体10のPt-Cu層16同士が対向するように2つの金属積層体10が接合されている。換言すると、かかる接合体100は、Pt-W層14とPt-Cu層16を介してW部12同士が接合されている。そして、この接合体100は、W部材12、Pt-W層14、Pt-Cu層16、Pt-W層14およびW部材12が積層した五層構造の間で金属元素の組成が平衡になる。このため、W部材12同士が接合された接合体100においてカーケンダルボイドが発生することを特に好適に防止できる。さらに、かかる構成の接合体100は、W部材12からPt-Cu層16に向かうにつれて熱膨張率が段階的に大きくなるように構成されている。このため、熱膨張(熱収縮)による応力が特定の部位に集中することを防止できるため、加熱・冷却に伴う接合強度の低下を十分に抑制できる。
一方、本実施形態に係る金属積層体10は、W部材12同士の接合以外の用途にも使用できる。すなわち、図3に示すように、本実施形態に係る金属積層体10の接合対象20は、W部材12とは異なる金属部材(異種金属部材22)であってもよい。具体的には、図3に示すように、本実施形態に係る金属積層体10のPt-Cu層16の表面に、異種金属部材22を接合することによって、W部材12と異種金属部材22とが接合された接合体100を作製できる。なお、異種金属部材22は、Pt-Cu層16と接合することができる金属部材であれば特に限定されない。このような異種金属部材22の一例として、銅、白金、白金-銅合金、白金-タングステン合金などを含む金属部材が挙げられる。このようなCu元素および/又はPt元素を含む異種金属部材22は、Pt-Cu層16の表面に容易に接合できる。
以上の通り、本実施形態に係る金属積層体10を用いることによって、W部材12を含む接合体100を構築できる。かかる接合体100では、カーケンダルボイドの発生が好適に抑制されているため、W部材12と接合対象20とを高い信頼性で強固に接合することができる。また、この接合体100は、各層の間で段階的に熱膨張率が変化するように構成されているため、加熱・冷却に伴う接合強度の低下を十分に抑制できる。従って、このような接合体100は、ダイバータ、加速器、プラズマ放電装置、高温炉、薄膜形成装置等の超高温部品への利用が特に期待される。
3.金属積層体の製造方法
次に、本実施形態に係る金属積層体10を製造する方法について説明する。なお、以下で説明する製造方法は、金属積層体10を製造する方法の一例であり、ここに開示される技術を限定することを意図したものではない。
先ず、図1に示す三層構造の金属積層体10を製造するには、Pt元素とCu元素を含む接合用ペーストをW部材12の表面に塗布するとよい。これによって、ペースト中のPt元素の一部がW部材12に移動し、W部材12の一部(表層)がPt-W層14となる。そして、ペースト中に残留したPt元素とCu元素によってPt-Cu層16が形成される。これによって、W部材12とPt-W層14とPt-Cu層16がこの順で積層した三層構造の金属積層体10が製造される。
なお、この製造方法を限定することを意図したものではないが、W部材12の表面に接合用ペーストを塗布した後に加熱処理を実施することが好ましい。これによって、接合用ペーストからW部材12へのPt元素の移動(拡散)が促進されるため、三層構造の金属積層体10を効率良く製造することができる。なお、このときの加熱温度は、750℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、850℃以上がさらに好ましく、900℃以上が特に好ましい。これによって、金属積層体10の製造効率を向上させることができる。一方、本工程における加熱温度の上限は、1250℃以下が好ましく、1200℃以下がより好ましく、1150℃以下がさらに好ましく、1100℃以下が特に好ましい。また、加熱時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。これによって、接合用ペーストからW部材12にPt元素を十分に移動させることができる。一方、製造効率の観点から、本工程における加熱時間の上限は、5時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下が特に好ましい。なお、本明細書における「加熱温度」は加熱処理における最高温度を指し、「加熱時間」は当該最高温度を維持する時間を指す。また、加熱処理中の雰囲気は、非酸化雰囲気(中性雰囲気、不活性雰囲気、還元雰囲気)に設定することが好ましい。還元ガスの一例として、水素(H)ガス、炭化水素(CH、Cなど)ガスなどが挙げられる。また、不活性ガスの一例として、アルゴン(Ar)ガスなどが挙げられ、中性ガスの一例として、窒素(N)ガス、アンモニアなどが挙げられる。また、還元ガスと不活性ガス(若しくは中性ガス)とを混合したものを使用することもできる。例えば、水素(H)ガスを1%~5%(例えば3%)の濃度で窒素(N)ガスと混合した混合ガスなどを用いることができる。
また、加熱処理中の急激な体積変化に伴う破損(クラック等)を防止するという観点から、加熱処理の前にペーストを乾燥させる乾燥処理を実施することが好ましい。かかる乾燥処理における加熱温度は、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。一方、上記クラックの防止という観点から、乾燥処理における加熱温度の上限は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。また、乾燥時間は10分以上60分以下(例えば30分程度)が好ましい。
さらに、この製造方法で使用する接合用ペーストは、W部材12の表面に塗布した際の定着性を確保するために、バインダ等の有機成分が添加されていると好ましい。このようなバインダを含む接合用ペーストを使用する場合には、上述の加熱処理の前に、有機成分の除去を目的とした予備加熱処理(脱バインダ処理)を実施してもよい。なお、有機成分を確実に除去するという観点から、脱バインダ処理における加熱温度は、145℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、155℃以上がさらに好ましく、160℃以上が特に好ましい。一方、脱バインダ処理中にPt-W層14の生成が進行することを防止するため、脱バインダ処理における加熱温度の上限は、500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、350℃以下が特に好ましい。また、脱バインダ処理における加熱時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。これによって、有機成分を確実に除去できる。一方、製造効率の観点から、脱バインダ処理における加熱時間の上限は、5時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましく、2時間以下が特に好ましい。
そして、上述したように、本実施形態に係る金属積層体10は、Pt-Cu層16とPt-W層14とW部材12とからなる三層構造の層間において金属元素の組成が平衡になっているため、各層の間で金属元素の相互移動が必要以上に進行することによるカーケンダルボイドの発生を防止できる。このような三層構造を構築する手段の一例として、Pt元素とCu元素との合計モル数を100mol%としたときのPt元素のモル比が20mol%以上に調節された接合用ペーストを使用することが挙げられる。このように、Pt-Cu層16の生成に必要な量を超えるPt元素を含む接合用ペーストを使用すると、Pt元素がW部材12に移動してPt-W層14が生成されるため、金属元素の組成が平衡になったPt-Cu層16とPt-W層14を生成できる。すなわち、Pt元素のモル比が20mol%以上の接合用ペーストを用いることによって、Pt元素の原子数が37at%~40at%のPt-W層14と、Pt元素の原子数が18at%~20at%のPt-Cu層16を備えた金属積層体10を製造できる。なお、本明細書における「接合用ペースト中のPt元素のモル比」は、Pt元素とCu元素との合計モル数を100mol%としたときのPt元素のモル比である。
なお、接合用ペースト中のPt元素のモル比の上限値は特に限定されず、目的とする金属積層体10の構造に応じて適宜調節することができる。接合用ペースト中のPt元素のモル比の上限値は、99mol%以下であってもよく、90mol%以下であってもよく、80mol%以下であってもよく、70mol%以下であってもよい。具体的には、接合用ペースト中のPt元素のモル比が増加するにつれて、W部材12に移動するPt元素が増加するため、Pt-W層14の膜厚が厚くなる傾向がある。換言すると、Pt元素のモル比が20mol%を超える接合用ペーストを用いると、各層の間で金属元素の組成が平衡になるような厚みのPt-W層14が形成される。
なお、Pt元素とCu元素を除く接合用ペーストの成分(溶剤、バインダ、分散剤など)は、ここに開示される技術の効果を阻害しない限りにおいて、従来公知の成分を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を特徴付けるものではないため詳細な説明を省略する。
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明するが、かかる試験例は本発明を限定することを意図したものではない。
本試験では、W部材を母材とした5種類の金属積層体(サンプル1~5)を作製し、各々の金属積層体に対して種々の解析を行った。
(1)サンプル1
まず、板状のW部材(厚さ0.3mm、長さ7.5mm、幅7.5mm)を準備した。そして、Pt粉とCu粉を含む接合用ペーストを準備し、当該接合用ペーストをW部材の片面全面に塗布した。なお、本サンプルで使用した接合用ペーストは、Pt元素とCu元素を30:70のモル比で含むものである。また、Pt粉とCu粉以外の材料は、ガラス粉と、バインダ(エチルセルロース系樹脂)と、分散材と、溶剤とである。なお、溶剤には、2,2,4-Trimethyl-1,3-pentanediol 1-Monoisobutyrateを使用した。そして、本試験では、120℃、30分間の乾燥処理を行ってペーストを乾燥させた後に、1回目の脱バインダ処理(加熱温度:160℃、加熱時間:30分間)を大気中で行った。次に、N-H(3%)の雰囲気下で2回目の脱バインダ処理(昇温速度:10℃/min、加熱温度:400℃、加熱時間:1時間)を実施した後に、そのまま焼成処理(昇温速度:5℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:30分間)を実施した。そして、焼成後のサンプルを室温まで冷却してサンプル1の金属積層体を得た。
そして、このサンプル1の金属積層体の断面をイオンミリングで研磨し、SEM観察とEDX分析を行った。具体的には、サンプル1の倍率4000倍のSEM写真(図4参照)を取得し、ポイント1~5の各ポイントにおいてEDX分析を行い、WとPtとCuとOの原子数の比率(at%)を測定した。測定結果を以下の表1に示す。
Figure 2022056497000002
図4および表1に示すように、サンプル1中のポイント1、2がPt-Cu層であり、ポイント3、4がPt-W層であり、ポイント5がW部材であることが分かる。このことから、Pt元素とCu元素を含むペーストをW部材に塗布して加熱することによって、ペースト中のPtがW部材に移動してW部材の表面にPt-W層が形成されると共に、ペーストが焼成してPt-Cu層が形成されることが分かった。そして、表1に示すように、Pt-Cu層(ポイント1、2)では、Pt元素とCu元素の合計原子数を100at%としたときのPt元素の原子数が18at%~20at%の範囲内であった。一方、Pt-W層(ポイント3、4)では、Pt元素とW元素の合計原子数を100at%としたときのPt元素の原子数が37at%~40at%の範囲内であった。また、ポイント3とポイント5では、酸素(O)元素が検出された。しかし、このO元素は、分析に使用した部材が酸化している可能性や、不純物やノイズが反映された可能性もあると推測される。なお、図4に示すように、サンプル1では、Pt-Cu層とPt-W層との間に、空隙が確認された。しかし、この空隙は、Pt元素の過剰な移動によってPt元素の供給源(ここではPt-Cu層)の内部に生じるカーケンダルボイド(後述の図11参照)ではなく、観察部位で偶然に検出された層間の剥離であると解される。
(2)サンプル2
サンプル2では、接合用ペーストにおけるPt元素とCu元素とのモル比を50:50に変更した点を除いて、サンプル1と同じ条件で金属積層体を作製した。かかるサンプル2に対して、サンプル1と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル2の倍率4000倍のSEM写真を図5に示す。さらに、サンプル2の倍率5000倍における解析結果を図6に示し、Pt-Cu層とPt-W層との境界における解析結果(倍率20000倍)を図7に示し、Pt-W層とW部材との境界における解析結果(倍率20000倍)を図8に示す。なお、図6~図8中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。また、サンプル1と同様に、サンプル2においても、図4中のポイント1~5の各ポイントにおいてEDX分析を行い、WとPtとCuとOの原子数の比率(at%)を測定した。測定結果を以下の表2に示す。
Figure 2022056497000003
図6~図8および表2に示すように、サンプル2においても、Pt-Cu層とPt-W層とW部材を備えた三層構造の金属積層体が製造されていた。このことから、接合用ペースト中のPt粉とCu粉とのモル比を50:50に変更しても、三層構造の金属積層体を製造できることが分かった。一方で、図4および図6に示すように、サンプル1とサンプル2を比較すると、接合用ペーストにおけるPt元素のモル比が多いサンプル2の方が膜厚の厚いPt-W層が形成されていた。しかし、表2に示すように、サンプル2においても、Pt-Cu層(ポイント1、2)におけるPt元素の原子数が18at%~20at%の範囲内となり、Pt-W層(ポイント3、4)におけるPt元素の原子数が37at%~40at%の範囲内となっていた。このことから、接合用ペースト中のPt元素とCu元素のモル比が違っても、Pt-W層の厚みが変わるだけであり、各層の間で金属元素の組成が平衡になった三層構造の金属積層体が作製されると考えられる。さらに、サンプル1とサンプル2の何れにおいても、各層の間で金属元素の組成が平衡になっている。このため、これ以上のPt元素の移動が生じず、高温環境で使用してもカーケンダルボイドが生じないと推測される。
(3)サンプル3
サンプル3では、接合用ペーストにおけるPt元素とCu元素とのモル比を10:90に変更した点を除いて、サンプル1と同じ条件で金属積層体を作製した。かかるサンプル3に対して、サンプル1と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル3の倍率4000倍のSEM写真を図9に示す。サンプル3においても、図9中のポイント1~4の各ポイントにおいてEDX分析を行い、WとPtとCuとOの原子数の比率(at%)を測定した。測定結果を以下の表3に示す。
Figure 2022056497000004
図9および表3に示すように、サンプル3では、サンプル1、2と同じように、Pt元素とCu元素を含むペーストをW板の表面に塗布して加熱したにも関わらず、Pt-W層が形成されなかった。これは、接合用ペーストに含まれるPt元素の全てがPt-Cu層の生成に使用され、W部材に拡散するPt元素が存在しなかったためと推測される。このことから、各層の間で金属元素の組成が平衡となった三層構造の金属積層体を製造するには、接合用ペースト中の初期Pt/Cu比が、各層の間で平衡となる組成よりも大きくなる必要があることが分かった。
(4)サンプル4
サンプル4では、接合用ペーストとして、Cu粉のみを含むペーストを使用した点を除いて、サンプル1と同じ条件で金属積層体を作製した。そして、本試験では、このサンプル4に対して、サンプル1と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル4の倍率5000倍における解析結果を図10に示す。なお、図10中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はOの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はWの元素マップである。
図10に示すように、サンプル4では、W部材の表面にCu層が形成された金属積層体が作製された。しかし、このサンプル4の金属積層体では、W部材とCu層との間で金属元素の相互移動が生じておらず、W部材の表面にCu層が付着しているだけであった。
(5)サンプル5
サンプル5では、接合用ペーストとして、Pt粉のみを含むペーストを使用した点を除いて、サンプル1と同じ条件で金属積層体を作製した。そして、本試験では、サンプル5の金属積層体に対して、サンプル1と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。サンプル5の倍率5000倍における解析結果を図11に示す。なお、図11中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はPtの元素マップであり、(c)はWの元素マップである。
図11に示すように、サンプル5では、W部材の表面にPt-W層が形成され、Pt-W層の表面にPt層が形成された三層構造の金属積層体が作製された。しかしながら、サンプル5では、Pt層からW部材にPt元素が必要以上に移動した結果、Pt元素の供給源であるPt層の内部にカーケンダルボイドと見られる大きな空孔が多量に形成されていた。さらに、このサンプル5は、高温環境で使用すると、Pt層からW部材へのPt元素の移動がさらに進行し、より多くのカーケンダルボイドが生じる可能性がある。このことから、W部材、Pt-W層、Pt層の三層構造の金属積層体では、接合の信頼性が低下すると解される。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 金属積層体
12 W部材
14 Pt-W層
16 Pt-Cu層
20 接合対象
22 異種金属部材
100 接合体

Claims (6)

  1. タングステン(W)を含有するタングステン部材と、
    前記タングステン部材の表面に形成され、Pt-W合金を主成分として含有するPt-W層と、
    前記Pt-W層の表面に形成され、Pt-Cu合金を主成分として含有するPt-Cu層と
    を少なくとも備え、
    前記Pt-W層のEDX分析において、白金(Pt)とタングステン(W)との合計原子数を100at%としたときの前記白金(Pt)の原子数が37at%~40at%であり、かつ、
    前記Pt-Cu層のEDX分析において、白金(Pt)と銅(Cu)との合計原子数を100at%としたときの前記白金(Pt)の原子数が18at%~20at%である、金属積層体。
  2. 前記タングステン部材は、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、炭窒化タングステン、銅タングステン複合材料、銀タングステン複合材料からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の金属積層体。
  3. 請求項1または2に記載の金属積層体と、
    前記金属積層体の前記Pt-Cu層の表面と接合された接合対象と
    を備えた、接合体。
  4. 前記接合対象が請求項1または2に記載の金属積層体であり、前記Pt-Cu層同士が対向するように2つの前記金属積層体が接合されている、請求項3に記載の接合体。
  5. 前記接合対象が、銅、白金、白金-銅合金、白金-タングステン合金からなる群から選択される少なくとも一種を含む金属部材である、請求項3に記載の接合体。
  6. 請求項1または2に記載の金属積層体の製造に用いられる接合用ペーストであって、
    白金(Pt)と銅(Cu)を少なくとも含み、前記白金(Pt)と前記銅(Cu)との合計モル数を100mol%としたときの前記白金(Pt)のモル比が20mol%以上である、接合用ペースト。

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