JP2022056100A - マグクロれんがの製造方法 - Google Patents

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雅之 江上
Masayuki Egami
剛 岡田
Takeshi Okada
健之 玉木
Takeyuki Tamaki
輝 野村
Akira Nomura
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Abstract

【課題】耐酸化鉄性及び耐熱スポーリング性に優れるマグクロれんがの製造方法を提供する。
【解決手段】耐火原料配合物にバインダーを添加して混練し成形後、焼成する、マグクロれんがの製造方法である。耐火原料配合物は、Crを25~76質量%含有する電融マグクロを85質量%以上含有し、ジルコニアの含有量は1質量%以下(0を含む。)である。前記電融マグクロの粒度構成は、耐火原料配合物100質量%に占める割合で、粒径3mm以上5mm未満が5~25質量%、粒径1mm以上3mm未満が20~40質量%、粒径1mm未満が30~60質量%である。
【選択図】なし

Description

本発明は、RH炉、DH炉、VOD炉等の溶鋼の真空脱ガス炉などに使用されるマグクロれんが(マグネシアクロムれんが)の製造方法に関する。
RH炉、DH炉、VOD炉等の溶鋼の真空脱ガス炉の内張りライニングに用いる耐火物としては、真空高温下においてスラグや溶鋼流に長時間接触し、過酷な使用条件に晒されるため高耐用性を有し、かつ、鋼品質に悪影響を与えないように、真空高温下でも化学的に安定な性質を持つマグクロれんがが使用されている。
例えば、RH炉の下部槽側壁部の内張りライニングには、一般的にマグクロれんがが使用されるが、特に溶鋼の温度上昇を目的としてトップランスからの酸素吹きによりアルミニウムを投入し昇熱させる処理比率の高い操業条件下では、この側壁部のマグクロれんがの損傷速度は非常に大きいことが知られている。
その要因としては、アルミニウムを投入し昇熱させる処理工程においては、炉内のれんがの稼動面温度はこの昇熱反応(テルミット反応)により非常に高温となり、この熱と吹き込まれた酸素で発生する酸化鉄による侵食が進みやすいこと、さらに処理終了後には、れんがの稼動面近傍は温度低下による温度差が非常に大きいため、れんがへの熱衝撃の増大により剥離損傷も進行しやすくなることが挙げられる。
このような厳しい条件では、ダイレクトボンド、リボンド及びセミリボンドの3種のマグクロれんがのうち、リボンドマグクロれんがで耐用性の優位性が確認されている。このリボンドマグクロれんがは、電融マグクロを主要原料として製造され、緻密なれんが組織となるため耐酸化鉄性に優れるとされている。
例えば特許文献1では、MgOを40~89.5質量%、Crを10~45質量%、及びAlを0.5~17質量%含有し、しかもFeの含有量が2質量%以下(0を含む。)であるリボンドマグクロれんがが開示されている。そして、Feの含有量を低減すると共にCrの含有量を抑制し、しかもAlを特定量含有することでマグクロれんがの耐還元性が大幅に改善され、これにより真空処理容器(真空脱ガス炉)の内張りライニングに使用するマグクロれんがの耐還元性が向上する効果が得られることが開示されている。
ところが、この特許文献1のマグクロれんがを本発明者らが実炉で使用してみたところ、従来よりも損傷速度は小さくなったが、まだ炉の寿命のネックは側壁部のマグクロれんがの損傷であることがわかった。
また特許文献2では、ZrOの含有量が0.1質量%以上5質量%以下で見掛気孔率が11.5%以下のリボンドマグクロれんがが開示されている。この特許文献2のマグクロれんがについては、本発明者らがRH炉で試験を行い耐酸化鉄性が向上することを確認したが、操業条件やライニングされた位置によってはれんがの稼動面からの剥離が発生することがあり、さらに耐用性を向上するためには耐熱スポーリング性の改善が必要であることがわかった。
特開2019-73428号公報 特開2017-110280号公報
本発明が解決しようとする課題は、耐酸化鉄性及び耐熱スポーリング性に優れるマグクロれんがの製造方法を提供することにある。
上述の2つの特許文献においては、酸素吹きによりアルミニウムを投入し昇熱させる処理工程を有するRH炉では、マグクロれんがの還元あるいは酸化鉄によるマグクロれんがの溶損がマグクロれんがの損耗の支配的な要因と考えられていた。
これに対して本発明者らは、マグクロれんがの稼動面温度が酸素吹き及びアルミニウムの投入による昇熱処理時に急激に上昇し、処理終了後には急激に下降することによる温度差が耐用性低下の主要因と考えた。
すなわち、図1のMgO-MgCr系相状態図から、例えばCrの含有率が16質量%のマグクロは、約1800℃より温度の高い領域ではMgOの固相にピクロクロマイト(MgCr)が固溶した状態で安定となるが、約1800℃以下の領域ではMgO固相に固溶したピクロクロマイトがピクロクロマイト固相として析出し、各々の固相が存在する領域が安定となる。
ここで、RH炉において、トップランスからの酸素吹きによりアルミニウムを投入し昇熱させる処理ではれんがの稼動面は2000℃前後まで上昇し、処理終了後には700℃付近まで冷却され、この温度変化を何度も繰り返す。このときに、マグクロ内では、MgO固相へのピクロクロマイトの固溶と析出を繰り返す状態が発生し、これに伴いマグクロれんが内では電融マグクロ自体の組織崩壊が進行し、れんが組織に亀裂が発生し、損傷の進行を助長すると考えられる。
一方、図1の状態図からCrの含有率が25質量%の場合には、れんがの稼動面の予想温度である2000℃以下ではMgO固相へのピクロクロマイトの固溶が生じないことがわかる。そこで本発明者らは、Crの含有率が25質量%以上の電融マグクロを原料として使用することで、マグクロれんがの熱スポーリングによる組織崩壊を抑制できると考えた。さらに本発明者らは、この電融マグクロを使用する際に、その粒度構成を調整することで、耐熱スポーリング性がさらに向上することを知見した。
すなわち、本発明によれば次の1及び2のマグクロれんがの製造方法が提供される。
1.
耐火原料配合物にバインダーを添加して混練し成形後、焼成する、マグクロれんがの製造方法であって、
耐火原料配合物は、Crを25~76質量%含有する電融マグクロを85質量%以上含有し、
前記電融マグクロの粒度構成は、耐火原料配合物100質量%に占める割合で、粒径3mm以上5mm未満が5~25質量%、粒径1mm以上3mm未満が20~40質量%、粒径1mm未満が30~60質量%であり、
耐火原料配合物中のジルコニアの含有量が1質量%以下(0を含む。)である、マグクロれんがの製造方法。
2.
トップランスからの酸素吹きにより昇熱処理を行うRH炉の下部槽側壁部に使用されるマグクロれんがを製造する、前記1に記載のマグクロれんがの製造方法。
本発明によれば、耐酸化鉄性及び耐熱スポーリング性に優れるマグクロれんがの製造方法を提供することができる。
すなわち、本発明の製造方法で得られるマグクロれんがは、耐酸化鉄性と耐熱スポーリング性に優れているため、このマグクロれんがをライニングした真空脱ガス炉の寿命が向上する。特にRH炉では、溶鋼の温度上昇を目的としてトップランスからの酸素吹きによりアルミニウムを投入し昇熱させる処理比率の高い操業条件下において、下部層側壁部の内張りライニングの損傷を大幅に低減することができる。
MgO-MgCr系相状態図。
本発明の耐火原料配合物に使用する電融マグクロは、上述の理由からCrを25質量%以上含有している必要がある。Crの上限値についてはピクロクロマイトの理論組成から76質量%以下とすることができる。Crの含有量が76質量%を超えても悪影響はないが、原料コストが高くなる割には耐酸化鉄性及び耐熱スポーリング性の向上効果が小さくなる。
この電融マグクロ(Crを25~76質量%含有する電融マグクロ)は、耐火原料配合物中に85質量%以上含有すれば、耐酸化鉄性に優れしかも上述のようにピクロクロマイトの結晶形態の変化によるマグクロれんがの組織劣化を防止することができる。この電融マグクロの含有量が85質量%未満では耐酸化鉄性及び耐熱スポーリング性が不十分となる。
この電融マグクロ(Crを25~76質量%含有する電融マグクロ)の粒度構成は、耐火原料配合物100質量%に占める割合で、粒径3mm以上5mm未満が5~25質量%、粒径1mm以上3mm未満が20~40質量%、粒径1mm未満が30~60質量%とする。
粒径3mm以上5mm未満が5質量%未満では耐熱スポーリング性が低下し、25質量%を超えると強度が不足する。
粒径1mm以上3mm未満が20質量%未満では耐熱スポーリング性と強度が不十分となり、40質量%を超える耐熱スポーリング性が低下する。
粒径1mm未満が30質量%未満では強度と耐酸化鉄性が不十分となり、60質量%を超えると耐熱スポーリング性と耐酸化鉄性が低下する。
ここで、本発明でいう粒径とは、耐火原料を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒径1mm以上の電融マグクロとは篩い目が1mmの篩い目を通過しない電融マグクロのことであり、粒径1mm未満の電融マグクロとは篩い目が1mmの篩い目を通過する電融マグクロのことである。
本発明の耐火原料配合物は、Crを25~76質量%含有する電融マグクロを85質量%以上含有するが、その残部には、Crが25質量%未満の電融マグクロ、マグネシア、酸化クロム、及びクロム鉄鉱のうち1種以上を合量で15質量%以下含有することができる。
本発明では、耐熱スポーリング性をさらに向上するために、耐火原料配合物中のジルコニアの含有量を1質量%以下(0を含む。)とする。ジルコニアの含有量が1質量%を超えると、れんが組織が緻密となり過ぎて耐熱スポーリング性が低下するためである。
本発明で使用する電融マグクロは、マグネシア、クロム鉄鉱、酸化クロム等をアーク炉で溶融して得られる合成原料であり、これらの混合比を調整することでCrを25~76質量%含有するものを得ることができる。電融マグクロは、電融マグネシアクロムクリンカー、電融マグクロクリンカー、溶融マグクロなどとも称されており、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用できる。
なお、電融マグクロは、耐火物のコストを抑える必要がある場合には、Cr源としてクロム鉄鉱を主体として使用したものを使用することもできる。ただし、このとき、電融マグクロのCr含有率を調整するためにCr源として補助的に精製された酸化クロムを使用してもよい。クロム鉄鉱を主体として使用した電融マグクロとしては、MgOを40~60質量%、Crを25~50質量%、Alを3~10質量%、及びFeを4~13質量%含有するものを使用することもできる。
耐火原料配合物の残部には上述のとおり、Crが25質量%未満の電融マグクロ、マグネシア、酸化クロム、及びクロム鉄鉱のうち1種以上を使用することができる。
マグネシアとしては、電融マグネシアや焼結マグネシアなど、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用することができる。
酸化クロムとしては、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用することができる。
クロム鉄鉱としては、天然に産出するクロム鉄鉱を使用することができる。
本発明のマグクロれんがの製造方法は、上記組成の耐火原料配合物を使用すること以外は、通常のマグクロれんがの製造方法と同じとすることができる。すなわち、耐火原料配合物に適量のバインダーを添加して混練し、加圧成形後に焼成する。焼成温度は1700~1900℃とすることができる。
本発明の製造方法で得られるマグクロれんがは、特に溶鋼の温度上昇を目的としてトップランスからの酸素吹きによりアルミニウムを投入し昇熱させる処理比率の高い操業条件となるRH炉の下部槽側壁部の内張りライニングに好適に使用することができ、これによりRH炉の耐用回数を向上することができる。
表1~3は、本発明の実施例によるマグクロれんがの耐火原料配合物と得られたマグクロれんがの物性を比較例と共に示したものである。表1~3の耐火原料配合物にバインダーを添加して混練後、オイルプレスで並型形状のれんがを成形し、1750℃以上で焼成することでそれぞれマグクロれんがを得た。
電融マグクロは、表4に示す電融マグクロA~Fの6種を使用した。また、ジルコニアはZrOが98質量%のものを、焼結マグネシアはMgOが98質量%のものを、酸化クロムはCrが98質量%のものを、クロム鉄鉱はCrが55質量%でMgOが16質量%のものをそれぞれ使用した。
得られたマグクロれんがからサンプルを切り出し、見掛気孔率及び熱間曲げ強さを測定すると共に、急冷スポーリング試験及び回転侵食試験を実施した。
見掛気孔率はJIS-R2205に準拠して測定した。熱間曲げ強さはJIS-R2656に準拠し窒素雰囲気下1480℃で測定した。
急冷スポーリング試験は、一辺の長さが50mmの立方体のサンプルを1200℃に加熱した電気炉に入れて、15分後に取り出して水冷する操作を2回繰り返し、3回目以降は1400℃に加熱した電気炉に入れて15分後に取り出して空冷する操作を最大13回繰り返した。15回目までにサンプルの一部が剥落したものは×(不可)とし、15回目後に目視により大きな亀裂が発生したものを△(可)、小さな亀裂が観察されたものを○(良)と評価し、○(良)と△(可)を合格とした。
回転侵食試験では、実炉における酸素吹き込み時の昇熱による耐熱スポーリング性とこれによって発生する酸化鉄に対する耐酸化鉄性とを評価した。この回転侵食試験では、水平の回転軸を有する鉄製のドラム内側にサンプルを内張りし、1750℃で30分保持した後、ドラムを回転しながらドラム内部に鉄パイプから酸素を15分間吹き込むことで溶解した高温の酸化鉄をサンプルの表面に吹き付けた。自然冷却後にサンプルを回収し、切断面の損耗量を測定した。その結果は実施例2の損耗量を100とする指数で表示した。この指数が小さいほど耐熱スポーリング性及び耐酸化鉄性に優れるということである。損耗量の指数が100以下の場合を合格、100を超える場合を不合格とした。
総合評価は、見掛気孔率、熱間曲げ強さ、急冷スポーリング試験結果及び回転侵食試験結果を総合的に評価して、○:非常に優れている、△:優れている、×:劣っている、の3段階で評価し、○と△を合格とした。
Figure 2022056100000001
Figure 2022056100000002
Figure 2022056100000003
Figure 2022056100000004
実施例1はCr含有率が25質量%の電融マグクロAを使用したものであり、回転侵食試験後の損耗量(指数)が小さく耐熱スポーリング性及び耐酸化鉄性に優れていることがわかる。
これに対して、比較例1はCr含有率が本発明の下限値を下回る電融マグクロFを使用したものであり、見掛気孔率は実施例1に近く組織が緻密化しており、急冷スポーリング試験結果も実施例1と同等であった。しかし、回転侵食試験後の損耗が非常に大きくなった。これは酸化鉄の吹き付けによってれんが温度が2000℃付近になったため、MgO固相へのピクロクロマイトの固溶と析出という変化によって組織が劣化し損耗したためと推定される。
実施例2及び実施例3は、電融マグクロAの粒度構成において粒径3mm以上5mm未満が異なるものであるが、いずれも良好な結果となった。
これに対して比較例2は、電融マグクロAの粒度構成において粒径3mm以上5mm未満が本発明の下限値を下回っており、耐熱スポーリング性が不十分となった。
また比較例3は、電融マグクロAの粒度構成において粒径3mm以上5mm未満が本発明の上限値を上回っており、強度が不十分で実用には適さない。
実施例4から実施例6は、電融マグクロAの粒度構成において粒径1mm以上3mm未満が異なるものであるが、いずれも良好な結果となった。
これに対して比較例4は、電融マグクロAの粒度構成において粒径1mm以上3mm未満が本発明の下限値を下回っており、耐熱スポーリング性と強度が不十分となった。
また比較例5は、電融マグクロAの粒度構成において粒径1mm以上3mm未満が本発明の上限値を上回っており、耐熱スポーリング性が不十分となった。
実施例7から実施例9は電融マグクロAの粒度構成において粒径1mm未満が異なるものであるが、いずれも良好な結果となった。
これに対して比較例6は、電融マグクロAの粒度構成において粒径1mm未満が本発明の下限値を下回っており、見掛気孔率が高く組織がポーラスとなり強度と回転侵食試験結果(耐酸化鉄性)が不十分となった。
また比較例7は、電融マグクロAの粒度構成において粒径1mm未満が本発明の上限値を上回っており、耐熱スポーリング性が不十分となった。
実施例10はジルコニアを1質量%使用したものであり、急冷スポーリング試験結果は実施例1と比較するとやや劣っているが良好な結果となった。一方、比較例8は、ジルコニアを3質量%使用したものであり、組織が緻密となり過ぎて耐熱スポーリング性が不十分となった。
実施例11から実施例17は、化学成分の異なる電融マグクロを使用したものであるが、いずれも本発明の範囲内であり良好な結果となった。
比較例9は、Cr含有率が25質量%以上の電融マグクロの使用量が75質量%と本発明の下限値を下回っており、耐熱スポーリング性及び耐酸化鉄性が不十分となった。
実機試験として、実施例1及び比較例1のマグクロれんがを溶鋼の温度上昇を目的としてトップランスからの酸素吹きによりアルミニウムを投入し昇熱させる処理比率の高い操業条件下で使用されるRH炉の下部層側壁部に使用した結果、実施例1の損耗は比較例1の81%であった。

Claims (2)

  1. 耐火原料配合物にバインダーを添加して混練し成形後、焼成する、マグクロれんがの製造方法であって、
    耐火原料配合物は、Crを25~76質量%含有する電融マグクロを85質量%以上含有し、
    前記電融マグクロの粒度構成は、耐火原料配合物100質量%に占める割合で、粒径3mm以上5mm未満が5~25質量%、粒径1mm以上3mm未満が20~40質量%、粒径1mm未満が30~60質量%であり、
    耐火原料配合物中のジルコニアの含有量が1質量%以下(0を含む。)である、マグクロれんがの製造方法。
  2. トップランスからの酸素吹きにより昇熱処理を行うRH炉の下部槽側壁部に使用されるマグクロれんがを製造する、請求項1に記載のマグクロれんがの製造方法。
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