JP2022055085A - 移植片移送用の伸張機構を具備する医療機器および移植片の移送方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】損傷や皺を発生させることなく、移植片を効率よく迅速に機器から剥離させることができる手段を提供する。【解決手段】移植片Sを目的部位Aに移送するための医療機器1であって、移植片を載置することができる伸張可能な支持体2を含み、移植片を載置した支持体を両側から引張して移植片を剥離させることで、移植片を目的部位に移送できる。【選択図】図2
Description
本発明は、移植片を目的部位に移送するための伸張機構を具備する医療機器および当該医療機器を用いた移植片を移送するための方法に関する。
近年、損傷した組織等の修復のために、種々の細胞を移植する試みが行われている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患により損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、ES細胞、iPS細胞等の利用が試みられている(非特許文献1)。
このような試みの一環として、スキャフォールドを利用して形成した細胞構造物や、細胞をシート状に形成したシート状細胞培養物が開発されてきた(非特許文献2)。
シート状細胞培養物の治療への応用については、火傷などによる皮膚損傷に対する培養表皮シートの利用、角膜損傷に対する角膜上皮シート状細胞培養物の利用、食道がん内視鏡的切除に対する口腔粘膜シート状細胞培養物の利用などの検討が進められており、その一部は臨床応用の段階に入っている。
非特許文献3には、膵臓瘻や胃穿孔のモデル動物において、それらの治癒に骨格筋芽細胞シートを用い得ることが記載されている。早期の腫瘍を低侵襲的に切除する方法として、近年では内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が注目されている。これは、病変部の粘膜下層に局注液を注入し、人工的に浮腫を起こした後、隆起した粘膜病変部を粘膜下層ごと切除するというものである。しかしながら、特に十二指腸のESDは、内視鏡の操作性や腸壁の薄さなどから、30%前後の確率で穿孔などの合併症を引き起こしてしまうことが報告されている。
シート状細胞培養物の治療への応用については、火傷などによる皮膚損傷に対する培養表皮シートの利用、角膜損傷に対する角膜上皮シート状細胞培養物の利用、食道がん内視鏡的切除に対する口腔粘膜シート状細胞培養物の利用などの検討が進められており、その一部は臨床応用の段階に入っている。
非特許文献3には、膵臓瘻や胃穿孔のモデル動物において、それらの治癒に骨格筋芽細胞シートを用い得ることが記載されている。早期の腫瘍を低侵襲的に切除する方法として、近年では内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が注目されている。これは、病変部の粘膜下層に局注液を注入し、人工的に浮腫を起こした後、隆起した粘膜病変部を粘膜下層ごと切除するというものである。しかしながら、特に十二指腸のESDは、内視鏡の操作性や腸壁の薄さなどから、30%前後の確率で穿孔などの合併症を引き起こしてしまうことが報告されている。
シート状細胞培養物を目的部位に投与する手術方法に関して、人体に対する低侵襲な手術方法として内視鏡下手術が広く用いられており、シート状細胞培養物を目的部位に送達して投与するための様々な器具が提案されている。
例えば、特許文献1に記載された運搬投与器具は、シート支持部材を筒状にして外筒内に格納することにより、人体に対する侵襲の度合いを低くして、移植部位までシート状の治療用物質を運搬することができる。
例えば、特許文献1に記載された運搬投与器具は、シート支持部材を筒状にして外筒内に格納することにより、人体に対する侵襲の度合いを低くして、移植部位までシート状の治療用物質を運搬することができる。
特許文献2に記載されたシート貼付装置は、シート支持部の表面に沿って配置された棒状部材を、シート支持部の表面に沿って移動させることにより剥離させて、シート状の物質を目的部位に貼付することができる。
特許文献3に記載された運搬投与具は、シート支持部に、シート状治療用物質を吸着保持させる陰圧と、シート支持部からシート状治療用物質を離脱させる陽圧を付与可能なシート脱着手段で、シートを投与することができる。
特許文献4に記載された搬送器具は、シート状治療用物質を保持したヘッドの表面に設けられた複数の通気孔から流体を噴出させることで、シート状治療用物質を貼付することができる。
特許文献3に記載された運搬投与具は、シート支持部に、シート状治療用物質を吸着保持させる陰圧と、シート支持部からシート状治療用物質を離脱させる陽圧を付与可能なシート脱着手段で、シートを投与することができる。
特許文献4に記載された搬送器具は、シート状治療用物質を保持したヘッドの表面に設けられた複数の通気孔から流体を噴出させることで、シート状治療用物質を貼付することができる。
Haraguchi et al., Stem Cells Transl Med. 2012 Feb;1(2):136-41
Sawa et al., Surg Today. 2012 Jan;42(2):181-4
Tanaka et al., Surg Today. 2017 Jan;47(1):114-121
このような中、本発明者らは、移植片を効率よく目的部位に移送するための手段を開発するにあたり、損傷や皺を発生させることなく、移植片を機器から剥離させることは困難であるなど問題に直面した。したがって、本発明の目的は、そのような問題を解決し、単純な構成でかつ合理的な医療機器を実現することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、移植片を載置した支持体を伸張可能とすることで移植片を適切に剥離できることに着目した。そして、移植片を載置することができる伸張可能な支持体を含む医療機器を用いることで、移植片を効率よく目的部位に移送することができることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]移植片を目的部位に移送するための医療機器であって、移植片を載置することができる伸張可能な支持体を含み、移植片を載置した支持体を両側から引張して移植片を剥離させることで、移植片を目的部位に移送できるように構成されている、前記機器。
[2]支持体が、複数の区画に分割されている、[1]に記載の機器。
[3]支持体が、支持面に凹凸部を有する、[1]または[2]に記載の機器。
[4]移植片を載置した支持体が、引張することで移植片との接触面積が小さくなるように構成されている、[1]~[3]のいずれか一項に記載の機器。
[5]支持体が、複数の孔を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の機器。
[1]移植片を目的部位に移送するための医療機器であって、移植片を載置することができる伸張可能な支持体を含み、移植片を載置した支持体を両側から引張して移植片を剥離させることで、移植片を目的部位に移送できるように構成されている、前記機器。
[2]支持体が、複数の区画に分割されている、[1]に記載の機器。
[3]支持体が、支持面に凹凸部を有する、[1]または[2]に記載の機器。
[4]移植片を載置した支持体が、引張することで移植片との接触面積が小さくなるように構成されている、[1]~[3]のいずれか一項に記載の機器。
[5]支持体が、複数の孔を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の機器。
[6]移植片を目的部位に移送するための方法であって、移植片を載置することができる伸張可能な支持体を含む、医療機器を提供するステップ、支持体に移植片を載置するステップ、移植片を載置した支持体を両側から引張するステップ、および移植片を支持体から剥離させて目的部位に移送するステップを含む、前記方法。
[7]目的部位への支持体の送達が、体腔内に経腹腔的に挿入された筒状体に移植片を載置した支持体を挿通することにより行われる、[6]に記載の方法。
[8]移植片を体腔内に経腹腔的に挿入して目的部位に貼付するための[6]または[7]に記載の方法。
[7]目的部位への支持体の送達が、体腔内に経腹腔的に挿入された筒状体に移植片を載置した支持体を挿通することにより行われる、[6]に記載の方法。
[8]移植片を体腔内に経腹腔的に挿入して目的部位に貼付するための[6]または[7]に記載の方法。
本発明によれば、移植片を容易に支持体より剥離させて、目的部位に移送することができる。また、損傷や皺を発生させることなく、移植片の形状を維持した状態で目的部位に固定することができる。
本発明において、「移植片」とは、生体内へ移植するための構造物を意味し、特に生細胞を構成成分として含む移植用構造物を意味する。好ましくは、移植片は、生細胞および生細胞由来の物質以外の構造物(例えばスキャフォールド等)を含まない移植用構造物である。本発明の移植片としては、これに限定するものではないが、例えばシート状細胞培養物、スフェロイド、細胞凝集塊等が挙げられ、好ましくはシート状細胞培養物またはスフェロイド、より好ましくはシート状細胞培養物である。
本発明において「シート状細胞培養物」とは、細胞が互いに連結してシート状になったものをいう。細胞同士は、直接(接着分子などの細胞要素を介するものを含む)および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。介在物質としては、細胞同士を少なくとも物理的(機械的)に連結し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスなどが挙げられる。介在物質は、好ましくは細胞由来のもの、特に、細胞培養物を構成する細胞に由来するものである。細胞は少なくとも物理的(機械的)に連結されるが、さらに機能的、例えば、化学的、電気的に連結されてもよい。シート状細胞培養物は、1の細胞層から構成されるもの(単層)であっても、2以上の細胞層から構成されるもの(積層(多層)体、例えば、2層、3層、4層、5層、6層など)であってもよい。また、シート状細胞培養物は、細胞が明確な層構造を示すことなく、細胞1個分の厚みを超える厚みを有する3次元構造を有してもよい。例えば、シート状細胞培養物の垂直断面において、細胞が水平方向に均一に整列することなく、不均一に(例えば、モザイク状に)配置された状態で存在していてもよい。
シート状細胞培養物は、好ましくはスキャフォールド(支持体)を含まない。スキャフォールドは、その表面上および/またはその内部に細胞を付着させ、シート状細胞培養物の物理的一体性を維持するために当該技術分野において用いられることがあり、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)製の膜等が知られているが、本発明のシート状細胞培養物は、かかるスキャフォールドがなくともその物理的一体性を維持することができる。また、本発明のシート状細胞培養物は、好ましくは、シート状細胞培養物を構成する細胞由来の物質のみからなり、それら以外の物質を含まない。
シート状細胞培養物を構成する細胞は、シート状細胞培養物を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、接着細胞(付着性細胞)を含む。接着細胞は、例えば、接着性の体細胞(例えば、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞など)および幹細胞(例えば、筋芽細胞、心臓幹細胞などの組織幹細胞、胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞などの多能性幹細胞、間葉系幹細胞等)などを含む。体細胞は、幹細胞、特にiPS細胞から分化させたもの(iPS細胞由来接着細胞)であってもよい。シート状細胞培養物を構成する細胞の非限定例としては、例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞など)、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のものなど)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞など)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞など)、肝細胞(例えば、肝実質細胞など)、膵細胞(例えば、膵島細胞など)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞等が挙げられる。iPS細胞由来接着細胞の非限定例としては、iPS細胞由来の心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞などが挙げられる。
本発明において、「支持体」とは、移植片をその形状を維持した状態で支持することができる面を有する構造体をいう。支持体は伸張可能な材料で作成されており、両側から引張すると細長く伸びるように構成されている。両側から引張するとは、支持体の一端を把持(固定)し、対向する他端を対向する方向に引張することを含む。支持体は、複数の区画に分割することもできる。支持体は、支持表面に凹凸部を有することができる。支持体は、引張することで、移植片と支持体との接触面積が小さくなるように構成されており、これは、支持体が細長く伸びること、支持表面に凹凸部を有することなどで実現可能である。接触面積は、引張前と引張後で、例えば、5~10%、10~25%、25~45%、45~90%減少するように構成することができる。
一態様において、支持体は可撓性と適度な柔軟性を有し、移植片を支持した状態で湾曲させて、筒状体の内側などに沿って格納することができ、筒状体から露出させるとその復元性で平面状に展開させることができる。支持体の材料としては、特に限定されず、各種公知の材料を単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。このような材料としては、例えば、金属、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、スチレンーエチレンーブチレンースチレン共重合体(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン共重合体(SEPS)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ナイロンなどのポリアミド樹脂及びポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂及びポリエステルエラストマー、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
一態様において、支持体は可撓性と適度な柔軟性を有し、移植片を支持した状態で湾曲させて、筒状体の内側などに沿って格納することができ、筒状体から露出させるとその復元性で平面状に展開させることができる。支持体の材料としては、特に限定されず、各種公知の材料を単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。このような材料としては、例えば、金属、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、スチレンーエチレンーブチレンースチレン共重合体(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン共重合体(SEPS)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ナイロンなどのポリアミド樹脂及びポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂及びポリエステルエラストマー、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、「複数の孔」とは、支持体に設けられた2以上の貫通孔をいい、支持体の移植片を支持している面と反対の面から流体を送り込み、孔を通して流体を吐出することで、移植片を支持面から剥離させて貼付することができる。孔は、流体を吐出できればよく、支持体に少なくとも1つ設けられていればよい。
複数の孔は、移植片の剥離位置や保持位置を調節できるように、支持体の移植片を支持する面に離散的に配置されることが好ましい。例えば、複数の孔の少なくとも1つを支持体の縁部付近に設けることで、移植片の剥離をその縁部付近から行えるように構成することもできる。複数の孔の配置は、例えば、2×2~40×40、5×5~20×20など、行×列のマトリックス配置とすることができ、孔同士の間隔は、例えば、0.05mm~10mm、0.5mm~2mmとすることができ、孔の径は、例えば、0.05mm~10mm、0.3~0.6mmとすることができるが、これらに限定されず、当業者であれば移植片のサイズ、移植片と支持体との接着度合いなどに合わせて自由に選択することができる。支持体の構造を網目構造とすることで、複数の孔のマトリックス配置を達成することもできる。
本発明において、「流体」とは、移植片を傷つけることなく押し出して剥離することができる、気体と液体の総称をいう。液体は、少なくとも1種の成分から構成され、その成分としてはとくに限定されないが、例えば、水、水溶液、非水溶液、懸濁液、乳液などの液体から構成される。液体を構成する成分は、移植片に与える影響が少ないものであればとくに限定されない。移植片が生体由来材料からなる膜である場合、液体を構成する成分は、生体適合性のもの、すなわち、生体組織や細胞に対して炎症反応、免疫反応、中毒反応などの望まない作用を起こさないか、少なくともかかる作用が小さいものが好ましい。
本発明において、「目的部位」とは、移植片を適用(貼付)する部分をいう。目的部位としては、例えば、管腔臓器における、損傷(創傷)が存在する部位や、損傷が存在する部位に対応する管腔壁の反対側などが挙げられる。「管腔臓器」は、体腔に収納されている内腔を有する臓器、すなわち管状または袋状の構造を有する臓器を意味し、例えば消化管系、循環器系、尿路系、呼吸器系、女性生殖器系の臓器などが挙げられる。典型的には消化管系の臓器である。また、「管腔壁」とは、管腔臓器の管または袋を構成する臓器壁を意味する。管腔壁には内腔に面した内側部と臓器の外表面を形成する外側部とがあり、「管腔壁の片側」という場合、管腔壁の内側または外側のいずれかを意味し、内側に対する外側または外側に対する内側を「反対側」という。また、片側のある領域に対して、管腔壁のちょうど反対側に位置する領域を「対応する反対側」という。
ある態様においては、管腔壁の少なくとも片側に損傷を有する管腔組織において、損傷が存在する部位に対応する反対側にシート状細胞培養物を移植することにより、組織の治癒を促進することができる。特にESDなどの施術によって形成された損傷であっても効果があるため、これらの施術後の合併症を予防し、予後を向上させることが可能となる。
ある態様においては、管腔壁の少なくとも片側に損傷を有する管腔組織において、損傷が存在する部位に対応する反対側にシート状細胞培養物を移植することにより、組織の治癒を促進することができる。特にESDなどの施術によって形成された損傷であっても効果があるため、これらの施術後の合併症を予防し、予後を向上させることが可能となる。
以下、本発明の好適な実施態様に係る機器ついて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1および図2に示すように、本発明の第1実施態様に係る機器1は、移植片Sを載置することができる伸張可能な支持体2を含む。支持体2は、移植片Sをその形状を維持した状態で支持することができる板状体である(図1A上)。支持体2は、その両端を把持して引張すると、細長く伸びるように構成されている(図1A下)。支持体2は、複数の区画に分割することもできる(図1B上)。この場合でも、支持体2は、その両端を把持して引張すると、細長く伸びるように構成されている(図1B下)。
図1および図2に示すように、本発明の第1実施態様に係る機器1は、移植片Sを載置することができる伸張可能な支持体2を含む。支持体2は、移植片Sをその形状を維持した状態で支持することができる板状体である(図1A上)。支持体2は、その両端を把持して引張すると、細長く伸びるように構成されている(図1A下)。支持体2は、複数の区画に分割することもできる(図1B上)。この場合でも、支持体2は、その両端を把持して引張すると、細長く伸びるように構成されている(図1B下)。
一態様において、支持体2は、移植片Sを支持する側の面(支持面)に凹凸部4を有するように構成することもできる(図1C上)。この場合、移植片Sは、引張前は支持体2の11個の凸部によって支持された状態になり(図1C上)、引張後は支持体2の7個の凸部によって支持された状態になる(図1C下)。すなわち、図1A~図1Cから明らかなように、支持体2は、その両端を把持して引張すると、その上に支持された移植片Sとの接触面積が小さくなるように構成されており、これにより、移植片Sを支持体2から容易に剥離できる。
一態様において、支持体2は可撓性と適度な柔軟性を有する板状体であり、移植片Sを支持した状態で湾曲させて、筒状体5などに挿通(格納)することができる。支持体2の輪郭の一部(例えば、先端部)が凸形状を有するように(例えば、円形に)成型し、かかる凸形状部分の頂部を筒状体5の開口部に当接させて押し付けることで湾曲させて(丸めて)、支持体2を筒状体5などに押し込みやすいように構成することもできる。筒状体5の基端側から挿通した支持体2は、筒状体5の先端側から挿通した鉗子(図示せず)などで把持して、筒状体5の先端側に引き出すこともできる。
一態様において、支持体2は、筒状体5から押し出す(または引き出す)と、その復元性で平面状に展開できるように構成することもできる。例えば、筒状体5として、内視鏡外科手術などで使用する体腔内に経腹腔的に挿入されたポートを使用することで、支持体2をポートから押し出して目的部位Aに近接させる際に、自動的に平面状に展開されるように構成することもできる。移植片Sを支持した支持体2は、移植片Sが内側になるように丸め、その周縁部を鉗子6などで把持した状態で、体外から筒状体5の開口部に挿通させることで、移植片Sを損傷させることなく、適切に目的部位Aに移送することもできる。
図2に示すように、本発明の機器1を使用する際は、移植片Sを支持体2上に載置する。次に、移植片Sを支持した支持体2の支持面側を目的部位Aに近接させて位置決めを行う。そして、支持体2の両側を鉗子6(右側)および別の鉗子(左側)で把持して対向する方向に引張し、移植片Sとの接触面積を小さくすることで支持体2から剥離させる。支持体2を対向する方向に引張すると、支持体2は、中心部を軸にして対向する方向に横スライドする形になる。また、この際に生じる、移植片Sと支持体2との摩擦力によって、移植片Sを展張させた状態で剥離させることができるため、移植片Sに皺などが生じ難い。
また、移植片Sの支持体2からの剥離をより確実に行うため、支持体2に複数の孔3を設けることもできる。すなわち、移植片Sが剥離しない部分に対応する支持体2の部分に複数の孔3があれば、そこから流体を放出させることで確実に剥離させることもできる。複数の孔3は、図1A~図1Cの支持体2の表面に設けることができ、例えば、図1Bの支持体2は、伸張させた際に複数の区画間に生じる間隙を複数の孔3として使用することもできる。支持体2の伸張は、移植片Sを支持した側の支持面を目的部位Aに接触(貼付)させた後に行うことで、損傷や皺を発生させることなく移植片Sを目的部位Aに固定できる。
本発明の機器1を使用して、移植片Sを臓器などの目的部位Aに移植する場合は、移植片Sを支持した支持体2を腹腔内(体腔内)へ直接的に送達する、または、内視鏡外科手術などで使用する腹壁に貫入させた中空のポート(筒状体5)などを介して、移植片Sを体腔内に経腹腔的に送達した上で行うことができる。移植片Sを経腹腔的に送達する場合は、移植片Sおよび支持体2を中空のポート(筒状体5)に挿通して、体腔内へ送達する。この際に、上記のように支持体2を丸めた状態にすることで、移植片Sが損傷する可能性をより防止した上で送達することもできる。
支持体2のポート内の移動は、支持体2を鉗子6などで把持し、鉗子6を進退させることにより行うことができる。そして、支持体2を中空のポートの先端から延出させることで、目的部位Aに対する支持体2の位置決めを行うことができる。支持体2の目的部位Aへの位置決めは、腹腔内へ挿入されている別の鉗子(左側)を使用して行ってもよい。支持体2を位置決めした後は、支持体2を両側から引張して移植片Sを剥離させて、目的部位Aに貼付(移植)する。支持体2の引張は、上記のように、支持体2を目的部位Aに近接させてから、または、支持体2を目的部位Aに接触させてから行うことができる。
機器1は、移植片Sを載置することができる伸張可能な支持体2を少なくとも含んでいればよい。さらに、上記のように、機器1は、鉗子6、別の鉗子(左側)、筒状体5などをさらに含んでもよい。支持体2は複数の孔3を有していてもよい。支持体2の複数の区画は、剛性を有する材料で構成することもできる。この場合は、複数の区画を糸(例えば、ゴム糸)などで繋ぎ、図1Bの複数の区画の配置を90°回転させた配置とする。そして、支持体2の糸を両側から引張することで、離間した(接触面積の小さい)複数の区画を実現することもできる。目的部位Aに移植片Sを固定した後は、支持体2は、腹腔鏡手術用摘出物バッグ(INZII(登録商標)など)を使用して回収することもできる。
支持体2は、その一端を把持(固定)し、対向する他端を対向する方向に引張する引張機構を含んでもよい。例えば、筒状体5の先端に支持体2の基端を固定し、筒状体5から延出させた鉗子6で支持体2の先端を把持し、さらに鉗子6を延出させることで支持体2を引張することもできる。この場合、引張方向が筒状体5の軸方向になるので、2つの鉗子で支持体2を対向する方向に引張するのと比較して、方向がブレることなく安定して一方向に支持体2を引張することができる。かかる引張機構は、さらに径の大きな中空のポート(筒状体5)に挿通させて、目的部位Aに送達することもできる。そして、1本の鉗子6だけで移植片Sを剥離させることができるため、腹壁に一本のポートを貫入させればよく、低侵襲で移植手術を行うことができる。
本発明の機器1の使用は、例えば以下の工程によって順次行うことができる。
(1)移植片Sが載置された支持体2を目的部位Aに近接させる。
(2)支持体2を両側から引張して移植片Sを剥離させる。
(3)剥離された移植片Sを目的部位Aに貼付する。
支持体2の引張、すなわち、移植片Sの支持体2からの剥離は、移植片Sを目的部位Aに固定してから行うこともできる。
(1)移植片Sが載置された支持体2を目的部位Aに近接させる。
(2)支持体2を両側から引張して移植片Sを剥離させる。
(3)剥離された移植片Sを目的部位Aに貼付する。
支持体2の引張、すなわち、移植片Sの支持体2からの剥離は、移植片Sを目的部位Aに固定してから行うこともできる。
移植片Sを載置した支持体2は、目的部位Aに対して空間的に離間した状態で近接させればよい。このとき支持体2は目的部位Aと接触しないように中空に浮かせることができる。これにより、移植片Sを支持体2から剥離した後も移植片Sを目的部位Aに貼付するまで移植片Sが目的部位Aと接触しない状態を保持することができる。移植片Sの剥離と目的部位Aへの貼付とは別々でも、同時に起こってもよい。
また、移植片Sの貼付を行った後に、貼付した移植片Sの上から流体を噴射する工程を加えてもよい。これにより、移植片Sをより確実に目的部位Aに接着させることができる。このときも支持体2は目的部位Aと接触しない状態で移植片Sを目的部位Aに接着させることができる。また、流体として、ゲルおよび/またはポリマーを噴射することで、シート状物を補強する補強層を形成するようにしてもよい。
以上、本願発明の第1実施態様に係る機器1によれば、移植片を容易に支持体より剥離させて、目的部位に移送することができる。また、損傷や皺を発生させることなく、移植片の形状を維持した状態で目的部位に固定することができる。
本発明を図示の実施態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
本発明を図示の実施態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
1 機器
2 支持体
3 複数の孔
4 凹凸部
5 筒状体
6 鉗子
S 移植片
A 目的部位
2 支持体
3 複数の孔
4 凹凸部
5 筒状体
6 鉗子
S 移植片
A 目的部位
Claims (8)
- 移植片を目的部位に移送するための医療機器であって、移植片を載置することができる伸張可能な支持体を含み、移植片を載置した支持体を両側から引張して移植片を剥離させることで、移植片を目的部位に移送できるように構成されている、前記機器。
- 支持体が、複数の区画に分割されている、請求項1に記載の機器。
- 支持体が、支持面に凹凸部を有する、請求項1または2に記載の機器。
- 移植片を載置した支持体が、引張することで移植片との接触面積が小さくなるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の機器。
- 支持体が、複数の孔を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の機器。
- 移植片を目的部位に移送するための方法であって、
移植片を載置することができる伸張可能な支持体を含む、医療機器を提供するステップ、
支持体に移植片を載置するステップ、
移植片を載置した支持体を両側から引張するステップ、および
移植片を支持体から剥離させて目的部位に移送するステップ
を含む、前記方法。 - 目的部位への支持体の送達が、体腔内に経腹腔的に挿入された筒状体に移植片を載置した支持体を挿通することにより行われる、請求項6に記載の方法。
- 移植片を体腔内に経腹腔的に挿入して目的部位に貼付するための請求項6または7に記載の方法。
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JP2020162464A JP2022055085A (ja) | 2020-09-28 | 2020-09-28 | 移植片移送用の伸張機構を具備する医療機器および移植片の移送方法 |
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