JP2022054486A - 厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】引張強さ:400MPa以上、靭性値(vE0):27J以上を有し、レーザー切断性に優れた厚鋼板およびその製造方法を提供する。【解決手段】成分組成として、質量%で、C:0.03~0.20%、Sb:0.003~0.050%を含有し、厚さ15μm以上50μm以下の表面酸化層を有する厚鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、造船、土木、建築、橋梁、建産機械、海洋構造物、貯蔵タンク、圧力容器等などの鋼構造物に好適であり、レーザー切断時に優れた切断品質が得られる厚鋼板およびその製造方法に関する。
造船、土木、建築、橋梁、建産機械、海洋構造物、貯蔵タンク、圧力容器などの鋼構造物に板厚の厚い熱間圧延鋼板が用いられる際、熱間圧延鋼板を所望の形状に切断した後、組み立てるのが一般的である。鋼構造物の工作工程における切断作業の割合は高く、作業の高能率化や低コスト化への要求は高い。また、意匠性などの観点から鋼構造物の形状が複雑化するとともに、切断以降の工程省略のため、切断面形状が複雑化しており、切断面に対して高い精度が要求される。
従来、板厚の厚い熱間圧延鋼板(以下、単に厚鋼板と称する)の切断方法としてガス切断やプラズマ切断が広く用いられている。ガス切断は、設備が比較的簡単であり、非常に板厚が厚い鋼板まで切断可能であることから最も広く利用される。しかしながら、ガス炎の制御や監視など自動作業化が難しく、また切断速度が比較的遅いことから、作業性に劣る。プラズマ切断は、最大厚50mm程度までは高速切断が可能であるが、トーチ寿命が数時間しかなく、頻繁な交換作業のため作業性が低く、自動作業化は困難である。
一方、レーザー切断は、薄鋼板の切断から普及し、近年では、レーザー発振器の高出力化、低価格化に伴い、板厚の厚い鋼板の切断にも適用範囲が拡大している。その特徴としては、まずトーチ寿命が長く、レーザーの出力が容易であるため、切断作業の完全自動化が容易である。また、切断による熱変形が小さいとともに、切断面の品質が良好である。このため、レーザー切断は、作業性と切断品質の観点から理想的な厚鋼板の切断方法といえる。
しかしながら、現状のレーザー出力では、板厚が20mm以上に厚くなると、切断の安定性が急激に低下する。レーザー切断機の能力としては、更なる高出力化が進められているが、一方で、鋼板自体のレーザー切断性、すなわち切断不良が生じないことを向上させる検討がされてきた。
特許文献1では、特定の化学成分を有し、表面酸化層(スケールとも称する)の平均厚さが10μm以下であり、スケール層中にマグネタイトを60mass%以上含むことを特徴とするレーザー切断性に優れた鋼板が記載されている。
特許文献2では、AlおよびCu、Ni、Crなどの合金元素量を規制し、表面のスケール層が地鉄との界面にAl含有層を有することを特徴とするレーザー切断性に優れた鋼板が記載されている。
特許文献3では、圧延開始時にデスケーリングによりスケールを排除し、圧延終了温度を制御することにより、スケール中の空孔率とスケールと地鉄界面の剥離割合の合計が15%以下であることを特徴とするレーザー切断性が優れた厚鋼板の製造方法が記載されている。
特開2012-87339号公報 特開平11-323478号公報 特開2004-169093号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、マグネタイトを60%以上含む薄いスケールを得るためには、圧延中の厳密な温度管理が必要であり、安定製造が困難である。特許文献2に記載された技術では、レーザー切断性を改善するために合金元素量を調整する必要がある。このため、構造用鋼として重要な強度や溶接性などの調整するための制約が発生するという課題がある。特許文献3に記載された技術では、板厚が25mm以上となるような場合に、ドロスが付着するなどの切断面性状に課題がある。
一方で、このようなレーザー切断性に加えて、構造用鋼として必要な強度(引張強さ)や靭性も兼ね備えた厚鋼板が求められている。
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたもので、引張強さ:400MPa以上、靭性値(vE):27J以上を有し、レーザー切断性に優れた厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。ここで、レーザー切断性に優れるとは、レーザー切断に適することを指す。具体的には切断中での鋼板の変形が少なく作業性に優れ、切断後の鋼板断面にはノッチなどの切断不良がなく、鋼板裏面にはドロス付着もないといった、切断品質に優れていることをいう。
本発明者らは、上記課題を達成するため、厚鋼板を対象に優れたレーザー切断性を確保するため、鋼板の成分組成、製造方法、表面酸化層(以下、単にスケールと称することもある。)の厚さや密着性などがレーザー切断に及ぼす影響について鋭意検討を行い、以下の知見を得た。
(1)レーザー照射で厚鋼板に高密度エネルギーを与えた際に発生する熱応力は極めて大きく、該熱応力により表層のスケールが破壊され、切断不良が発生しやすくなる。これを防ぐためには、スケールの密着性を向上させる必要がある。
(2)スケールの密着性やスケールの均一性を向上させるためには、Sbを含有し、さらにSbをスケールと地鉄の界面に濃化させることが有効であることがわかった。スケールの密着性を向上させるためには、Si、Cu、Niの含有が有効とされているが、これらはスケールの均一性にとっては、むしろ好ましくない元素である。Si、Cu、Niは結晶粒界などの特定の位置に局所的に濃化し、濃化した場所と濃化していない場所とのスケールの成長速度に差が生じるため、スケールが不均一となる。本発明において、所定量のSbを含有させると、スケールと地鉄との界面にSbが濃化した濃化層が生成し、局所的なスケールの成長速度の違いが生じず、密着性、均一性に優れたスケールを安定して生成させることができる。また、該Sb添加効果に加えて、Si、Cu、Ni含有量を所定量以下となるように厳格に管理することにより、より一層の表面酸化層の厚さの均一化をはかることができる。
(3)スケールの厚さを15μm以上50μm以下とすることにより、レーザー切断時の切断不良を抑制して切断面を平滑にすることができ、さらにドロスの付着も抑制することができる。
本発明は、上記の知見にさらに検討を加えてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]成分組成として、質量%で、C:0.03~0.20%、Sb:0.003~0.050%を含有し、厚さ15μm以上50μm以下の表面酸化層を有する厚鋼板。
[2]成分組成として、質量%で、さらに、
Si:0.60%以下、
Mn:0.10~2.50%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Al:0.070%以下、
N:0.01%以下、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である[1]に記載の厚鋼板。
[3]成分組成として、質量%で、さらに、
Cu:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
Cr:0.01~1.00%、
Mo:0.01~1.00%、
W:0.01~1.00%、
V:0.003~0.100%、
Nb:0.003~0.030%、
Ti:0.003~0.050%、
B:0.0001~0.0030%、
REM:0.0001~0.0030%、
Ca:0.0001~0.0030%、
Mg:0.0001~0.0030%、
Sn:0.001~0.030%
の1種または2種以上を含有する[2]に記載の厚鋼板。
[4]Si:0.10%以下、Cu:0.03%以下、Ni:0.03%以下とし、前記表面酸化層の厚さの標準偏差が5.0μm以下である[3]に記載の厚鋼板。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を1000~1200℃に再加熱後、圧延終了温度:700~1000℃である熱間圧延を施すにあたり、(圧延終了温度+100℃)~圧延終了温度の温度領域の圧延パス中において、鋼板の少なくとも一方の面に水を噴射してデスケーリングを5回以上実施する厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、レーザー切断において、優れた作業性と切断品質とを有する厚鋼板が得られる。本発明の厚鋼板であれば、鋼構造物作製時の製造効率や安全性の向上に大きく寄与し、産業上格段の効果を奏する。
以下、本発明を実施する方法について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な実施形態の例を示すものであって、本発明はこれに限定されない。
[成分組成]
まず、本発明の一実施形態における厚鋼板の成分組成について、その限定理由を説明する。なお、成分組成に関する「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
本発明において、CおよびSbを含有することが重要である。その限定理由は以下のとおりである。
C:0.03~0.20%
Cは、鋼の強度を増加させ、厚鋼板として必要な強度を確保するために必要な元素である。この効果を得るためには、Cを0.03%以上含有させる必要がある。好ましくは、0.04%以上とする。より好ましくは、0.10%以上とする。一方、Cが0.20%を超えると、靭性を劣化させるとともに、溶接性が低下する。このため、Cを0.20%以下とする。好ましくは、0.18%以下とする。
Sb:0.003~0.050%
Sbは、スケール密着性を向上させるために必要な元素である。Sbは、鋼材加熱~熱間圧延中までに表面に拡散し、スケール(表面酸化層)と地鉄の界面に均一に濃化する。この濃化層によってスケールが剥離しにくくなる。また、均一に濃化することにより、スケール成長速度に局所的な違いが生じず、スケールの均一性も阻害しない。この効果を得るためには、Sbを0.003%以上含有させる必要がある。好ましくは、0.005%以上とする。一方、Sbが0.050%を超えると、厚鋼板表面に疵が発生しやすくなり、レーザー切断性を劣化させる。そのため、Sbを0.050%以下とする。好ましくは0.030%未満とする。さらに好ましくは、0.020%以下とする。
本発明において、上記成分組成を有することに加えて、次に述べる元素を含有していることが好ましい。
Si:0.60%以下
Siは、脱酸材として作用する元素である。しかしながら、0.60%を超えると、母材の靭性、溶接部の低温割れ性が著しく劣化することがある。このため、Siを0.60%以下とするのが好ましい。より好ましくは、0.40%以下とする。なお、Si含有量の下限は特に限定されないが、0.01%以上が好ましい。
Mn:0.10~2.50%
Mnは、鋼の焼入れ性を増加させる効果を有し、母材の強度を確保するために0.10%以上含有させることが好ましい。より好ましくは、0.20%以上とする。さらに好ましくは、1.30%以上とする。一方、Mnが2.50%を超えると、母材の靭性、延性および溶接性が著しく劣化することがある。このため、2.50%以下とすることが好ましい。より好ましくは、2.00%以下とする。
P:0.030%以下
Pは、不純物として鋼中に存在し、粒界に偏析することによって、母材の低温靭性や延性を劣化させるなど悪影響を及ぼすおそれがある。このため、できる限りP含有量を低くすることが望ましいが、0.030%以下であれば許容できる。なお、P含有量の下限は特に限定されないが、0.001%未満に低減することは工業的規模の製造では難しい。このため、生産性の観点からは、P含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.030%以下
Sは、MnS等の硫化物系介在物として鋼中に存在し、母材の低温靭性や延性を劣化させるなど、悪影響を及ぼすおそれがある。このため、できる限りS含有量を低くすることが望ましいが、0.030%以下であれば許容できる。なお、S含有量の下限は特に限定されないが、0.001%未満に低減することは工業的規模の製造では難しい。このため、生産性の観点からは、S含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Al:0.070%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中のNをAlNとして固定し、母材および溶接部の靭性向上に寄与する元素である。しかし、0.07%を超えて含有すると、母材の靭性が低下することがある。よって、Al含有量を0.070%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.050%以下とする。なお、Al含有量の下限は特に限定されないが、0.015%以上が好ましい。
N:0.01%以下
Nは、不純物として鋼中に存在する元素である。N含有量が0.01%を超えると、母材靭性が著しく低下するおそれがある。このため、N含有量を0.01%以下とすることが好ましい。
本発明では、上記成分組成に加えて、さらに、Cu、Ni、Cr、Mo、W、V、Nb、Ti、B、REM、Ca、MgおよびSnの1種または2種以上を含有させることができる。
Cu:1.00%以下
Cuは厚鋼板の強度向上に寄与する元素である。この効果を得るために、Cuを添加する場合は、0.01%以上とすることが好ましい。Cu含有量が1.00%を超えると、熱間脆性を生じて鋼板の表面性状が著しく劣化するおそれがある。このため、Cu含有量を1.00%以下とすることが好ましい。
Ni:1.00%以下
Niは厚鋼板の強度向上に寄与する元素である。この効果を得るために、Niを含有させる場合は、0.01%以上とすることが好ましい。Ni含有量が1.00%を超えるとスケール厚さが著しく不均一となり、レーザー切断性が劣化する。このため、Niを含有させる場合は、Ni含有量を1.00%以下とすることが好ましい。
Cr:0.01~1.00%
Crは厚鋼板の強度向上に寄与する元素である。この効果を得るために、Crを含有させる場合は、0.01%以上とすることが好ましい。1.00%を超えて含有すると、母材靭性、延性および溶接性が著しく劣化するおそれがある。このため、Crを含有させる場合は、Cr含有量を1.00%以下とすることが好ましい。
Mo:0.01~1.00%
Moは厚鋼板の強度向上に寄与する元素である。この効果を得るために、Moを含有させる場合は、0.01%以上とすることが好ましい。Mo含有量が1.00%を超えると、母材靭性、延性および耐溶接割れ性に悪影響を及ぼすことがある。このため、Moを含有させる場合は、Mo含有量を1.00%以下とすることが好ましい。
W:0.01~1.00%
Wは厚鋼板の強度向上に寄与する元素である。この効果を得るために、Wを含有させる場合は、0.01%以上とすることが好ましい。W含有量が1.00%を超えると、母材靭性、延性および耐溶接割れ性に悪影響を及ぼすことがある。このため、Wを含有させる場合は、W含有量を1.00%以下とすることが好ましい。
V:0.003~0.100%
Vは厚鋼板の強度向上に大きく寄与する元素である。この効果を得るために、Vを含有させる場合は、0.003%以上とすることが好ましい。V含有量が0.100%を超えると、母材靭性および延性を劣化させるおそれがある。このため、Vを含有させる場合は、V含有量を0.100%以下とすることが好ましい。
Nb:0.003~0.030%
Nbは厚鋼板の強度向上に大きく寄与する元素である。この効果を得るために、Nbを含有させる場合は、0.003%以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.005%以上である。Nb含有量が0.030%を超えると、母材靭性および延性を劣化させる。このため、Nbを含有させる場合は、Nb含有量を0.030%以下とすることが好ましい。
Ti:0.003~0.050%
Tiは、Nとの親和力が強く凝固時にTiNとして析出し、溶接熱影響部でのオーステナイト粒の粗大化を抑制して高靭化に寄与する元素である。この効果を得るために、Tiを含有させる場合は、0.003%以上とすることが好ましい。一方、T含有量が0.050%を超えると、TiN粒子が粗大化して、母材および溶接部靭性を劣化させるおそれがある。このため、Tiを含有させる場合は、Ti含有量を0.050%以下とすることが好ましい。
B:0.0001~0.0030%
Bは、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。この効果を得るために、Bを含有させる場合は、0.0001%以上とすることが好ましい。一方、B含有量が0.0030%を超えると、焼入れ性を著しく増加させ、母材の靭性、延性を劣化させるおそれがある。このため、Bを含有させる場合は、B含有量を0.0030%以下とすることが好ましい。
REM:0.0001~0.0030%、Ca:0.0001~0.0030%、Mg:0.0001~0.0030%
REM、CaおよびMgは、いずれもSと結合し硫化物の形態制御を行うことにより、鋼の靭性向上に寄与する。この効果を得るために、これらの元素を含有させる場合は、それぞれ0.0001%以上とすることが好ましい。一方、これらの元素をそれぞれ0.0030%以上含有させても効果が飽和する。このため、これらの元素を含有させる場合は、それぞれ0.0030%以上とすることが好ましい。
Sn:0.001~0.030%
Snは耐食性向上に寄与する。この効果を得るために、Snを含有させる場合は、0.001%以上とすることが好ましい。ただし、Sn含有量が0.030%を超えると、靭性を劣化させるおそれがあるので、Snを含有させる場合は0.030%以下とすることが好ましい。
なお、残部はFeおよび不可避的不純物とする。
本発明に係る厚鋼板は、Si:0.10%以下、Cu:0.03%以下、Ni:0.03%以下とすることが好ましい。Sb添加効果に加えて、Si、Cu、Ni含有量を所定量以下となるように厳格に管理することにより、Si、Cu、Niを適切に制御することで、後述するように、表面酸化層の厚さの標準偏差を5.0μm以下とすることができ、より一層の表面酸化層の厚さの均一化をはかることができる。その結果、レーザー切断性をさらに向上させることができる。以下、Si、Cu、Niの限定理由について説明する。なお、Si、Cu、Ni以外の成分の限定理由については、上述した各成分の限定理由と同様である。
Si:0.10%以下
Siは、易酸化元素でありスケールに取込まれやすいため、スケールの均一化にとってはできる限りSi含有量を低くすることが望ましいが、0.10%以下であれば許容できる。なお、脱酸の点から、0.01%以上が好ましい。
Cu:0.03%以下、Ni:0.03%以下
CuおよびNiは、Si同様、スケールの均一化にとっては、できる限りCuおよびNiの含有量を低くすることが望ましいが、それぞれ0.03%以下であれば許容できる。
[表面酸化層]
表面酸化層(スケール)は、厚鋼板の製造時に厚鋼板の表面が酸化されて形成された酸化物層である。表面酸化層は、素地のFeに比べてレーザー光の吸収率が高く、切断時に必要な酸素源ともなるため、レーザー切断に際し必要な層である。レーザー光の吸収エネルギーを増加させて切断効率を向上させるために、表面酸化層の厚さは15μm以上とする。表面酸化層の厚さが厚くなるほど、レーザー吸収エネルギーが高くなる。しかしながら、表面酸化層と地鉄の界面で剥離しやすくなり、表面酸化層の厚さも不均一になりやすい。このため、表面酸化層の厚さは50μm以下とする。
なお、安定してレーザー切断性を確保するためには、表面酸化層の厚さの均一化をはかるべく、表面酸化層の厚さの標準偏差を5.0μm以下とすることが好ましい。表面酸化層の厚さの標準偏差を5.0μm以下とするには、上述したように、Si、CuおよびNiを所定の含有量に制御する。
表面酸化層の厚さと標準偏差は、実施例に示した方法により測定することができる。
[板厚]
本発明の厚鋼板の板厚は、特に限定されず、任意の板厚とすることができる。本発明において、板厚が4.5~28mmの厚鋼板には、特にレーザー切断時に優れた切断品質が得られることから、厚鋼板の板厚を4.5~28mmとすることが好ましい。
[製造方法]
次に、本発明の厚鋼板の製造方法について説明する。本発明の厚鋼板は、上述した成分組成を有する鋼素材を再加熱し、熱間圧延中に生成する表面酸化層を所定の条件でデスケーリングを実施することによって製造することができる。なお、以下の説明における温度に関する「℃」表示は、厚鋼板表層の温度を意味するものとする。
鋼素材の再加熱温度:1000~1200℃
再加熱温度が1000℃未満では、熱間圧延での変形抵抗が高く、1パス当たりの圧下量が大きく取れなくなる。その結果、圧延パス数が増加し、圧延能率の低下を招くとともに、鋼素材(スラブ)中の鋳造欠陥を圧着することができない場合が生じる。一方、再加熱温度が1200℃を超えると、加熱時に生成する過度の高温スケールによって表面疵が生じやすく、圧延後の手入れ負荷が増大するとともに、結晶粒が粗大化して母材の脆性、延性を劣化させる。このため、再加熱温度は1000~1200℃の範囲とする。
圧延終了温度:700~1000℃
熱間圧延の圧延終了温度が1000℃を超えると、表面酸化層にブリスターが発生するだけでなく、圧延終了後の冷却過程で表面酸化層が過度に成長する。このため、所望の厚さの表面酸化層が得られない。また、組織が粗大化するため靭性が劣化する。一方、圧延終了温度が700℃より低いと、変形抵抗が高くなりすぎて、圧延荷重が増大し、圧延機への負担が大きくなる。また、圧延温度を低下させるためには、圧延途中で待機する必要があり、生産性を大きく阻害するだけでなく、鋼板温度が低いため表面酸化層が成長せずに薄くなり、所望の厚さの表面酸化層が得られない。さらには、厚鋼板中に蓄積される歪が大きくなるため、レーザー切断中に厚鋼板が変形し、切断精度の低下を招いたり、切断が途中で停止することが問題となる。このため、圧延終了温度を700~1000℃の範囲とする。
(圧延終了温度+100℃)~圧延終了温度の温度領域の圧延パス中におけるデスケーリング:5回以上
所望の厚さの表面酸化層を安定して生成させるためには、本発明では、圧延中のデスケーリングの回数を厳格に管理することが重要である。本発明では、(圧延終了温度+100℃)~圧延終了温度の温度領域の圧延パス中において、デスケーリングの回数を5回以上とする。デスケーリングの回数が5回より少ないと、圧延中に生成、成長する表面酸化層の剥離が不十分となり、表面酸化層が過度に成長する。さらに、局所的にはがれるため、表面酸化層の厚さのばらつきが大きくなる。
なお、デスケーリングは厚鋼板の少なくとも一方の面に水を噴射すればよい。また、デスケーリングの能力としては、噴射圧力が10MPa以上あれば、本発明の効果を発揮することができる。
転炉-取鍋精錬-連続鋳造法で、表1に示す種々の成分組成に調製した鋼スラブを、表2に示す種々の熱間圧延条件により板厚25mmの厚鋼板とした。デスケーリングは、厚鋼板の両面に対して行った。
得られた厚鋼板長手方向の先端部から500mm、中心、および尾端部から500mmの位置から、それぞれ板幅方向1/4位置、1/2位置から、20mm×20mm×板厚のサンプルを1鋼種あたり各1個ずつ合計6個採取した。各サンプルについて、圧延方向に平行な断面が観察面となるようにカーボン樹脂に埋め込み、鏡面になるまで研磨した。地鉄および表面酸化層を含む領域の倍率400倍の光学顕微鏡写真を5枚撮影し、各写真の任意の10ヶ所で画像解析装置を用いて表面酸化層の厚さ(スケール厚)を測定した。サンプル6個すべての測定値の平均値を表面酸化層の厚さとした。また、サンプル6個すべての測定値の標準偏差を表面酸化層の厚さの標準偏差とした。Sbの濃化層の有無については、上記の断面試料を、表面酸化層と地鉄との界面を含めた、20μm×30μmの領域を電子線マイクロアナライザー(加速電圧15kV)でSbのマッピング分析を行い、評価した。具体的には、界面にSbの存在が確認できることをSbの濃化層が有ると判断した。
引張特性については、JIS Z2241に準拠して、試験片JIS1A号をC方向(圧延方向と直角方向)より1本採取し、引張試験を実施した。降伏強さおよび引張強さを求め、引張強さ400MPa以上を合格とした。
靭性については、JIS Z 2242に準拠して、板厚(t)の1/4位置から、ノッチ方向がL方向(圧延方向と平行)となるように試験片を3本採取し(試験片:2mmVノッチ、サイズ:10mm×10mm)、シャルピー衝撃試験を実施した。試験温度:0℃における吸収エネルギーvE0℃を求め、衝撃特性を評価し、27J以上を合格とした。なお、吸収エネルギー値は、試験片3本の平均値とした。
レーザー切断性は、6kWの炭酸ガスレーザーを用いて切断し、切断後の厚鋼板断面におけるノッチの有無、および厚鋼板裏面でのドロスの付着有無を目視で評価した。切断試験の条件については、酸素圧力0.3kgf/cm、切断長500mmとした。切断速度は750mm/minと800mm/minの2通りとした。切断可否については、切断面の状態によらず分離できるかどうかで判断した。具体的には、切断が途中で停止するなどの理由から分離できなかったものを不可とした。レーザー切断性については、切断速度:750mm/minにおける評価結果が良好であるものを合格とした。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2022054486000001
Figure 2022054486000002
本発明例はいずれも引張強さおよび靭性を満足するとともに、レーザー切断性に優れている。一方、比較例については、ノッチ発生やドロス付着などレーザー切断性を満足していない。

Claims (5)

  1. 成分組成として、質量%で、C:0.03~0.20%、Sb:0.003~0.050%を含有し、厚さ15μm以上50μm以下の表面酸化層を有する厚鋼板。
  2. 成分組成として、質量%で、さらに、
    Si:0.60%以下、
    Mn:0.10~2.50%、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    Al:0.070%以下、
    N:0.01%以下、
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 成分組成として、質量%で、さらに、
    Cu:1.00%以下、
    Ni:1.00%以下、
    Cr:0.01~1.00%、
    Mo:0.01~1.00%、
    W:0.01~1.00%、
    V:0.003~0.100%、
    Nb:0.003~0.030%、
    Ti:0.003~0.050%、
    B:0.0001~0.0030%、
    REM:0.0001~0.0030%、
    Ca:0.0001~0.0030%、
    Mg:0.0001~0.0030%、
    Sn:0.001~0.030%
    の1種または2種以上を含有する請求項2に記載の厚鋼板。
  4. Si:0.10%以下、Cu:0.03%以下、Ni:0.03%以下とし、前記表面酸化層の厚さの標準偏差が5.0μm以下である請求項3に記載の厚鋼板。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を1000~1200℃に再加熱後、圧延終了温度:700~1000℃である熱間圧延を施すにあたり、(圧延終了温度+100℃)~圧延終了温度の温度領域の圧延パス中において、鋼板の少なくとも一方の面に水を噴射してデスケーリングを5回以上実施する厚鋼板の製造方法。
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