JP2022053647A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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巧 関口
Takumi Sekiguchi
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【課題】インナーライナー層とシーラント層との間にバリア層を設けることにより、シーラント層の液状成分によるタイヤの耐久性の悪化を抑制することを可能にした空気入りタイヤを提供する。【解決手段】タイヤ内面Tsのトレッド部1に対応する領域にシーラント層10が配置された空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面Tsを形成するインナーライナー層9とシーラント層10との間にシーラント層10に配合された液状成分のインナーライナー層9への移行を抑制するバリア層20が設けられている。【選択図】図2

Description

本発明は、タイヤ内面にシーラント層が配置された空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、インナーライナー層とシーラント層との間にバリア層を設けることにより、シーラント層の液状成分によるタイヤの耐久性の悪化を抑制することを可能にした空気入りタイヤに関する。
パンクシール性を有する空気入りタイヤとして、タイヤ内面のトレッド部に対応する領域に粘着性シーラントからなるシーラント層を配置したものが提案されている(例えば、特許文献1)。このようなシーラント層を備えた空気入りタイヤにおいては、釘等の異物がトレッド部に突き刺さった際に、粘着性シーラントが異物に纏わり付き、その異物の脱落に伴って粘着性シーラントがパンク穴に導かれてシール効果を発揮する。
また、シーラント層は、適度な粘着性を有しつつ、過度に流動しないように適度な流動性も有することが要求される。このような性能を満足するために、シーラント層には液状成分(例えばオイル成分)が配合されている。しかしながら、この液状成分がタイヤに移行してタイヤの耐久性が悪化するという問題がある。
特開2003-080909号公報
本発明の目的は、インナーライナー層とシーラント層との間にバリア層を設けることにより、シーラント層の液状成分によるタイヤの耐久性の悪化を抑制することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤは、タイヤ内面のトレッド部に対応する領域にシーラント層が配置された空気入りタイヤにおいて、前記タイヤ内面を形成するインナーライナー層と前記シーラント層との間に該シーラント層に配合された液状成分の前記インナーライナー層への移行を抑制するバリア層が設けられていることを特徴とするものである。
本発明では、タイヤ内面を形成するインナーライナー層とシーラント層との間にシーラント層に配合された液状成分のインナーライナー層への移行を抑制するバリア層が設けられているので、シーラント層に配合された液状成分(例えばオイル成分)がインナーライナー層に移行しにくくなるため、シーラント層の液状成分によるタイヤの耐久性の悪化を抑制することができる。
本発明の空気入りタイヤにおいて、バリア層を70℃で1週間加熱した後のシーラント層に配合された液状成分のインナーライナー層への移行量はバリア層の5重量%以下であることが好ましい。これにより、シーラント層に配合された液状成分のタイヤへの移行量を減らすことができ、タイヤの耐久性の悪化を効果的に抑制することができる。
バリア層の幅はシーラント層の幅に対して100%~130%の範囲にあることが好ましい。これにより、バリア層による抑制効果を十分に得ることができるので、タイヤの耐久性の悪化を効果的に抑制することができる。
本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの一例を示す子午線断面図である。 図1の空気入りタイヤの要部を拡大して示す断面図である。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。 図1及び図2は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図1及び図2に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。更に、タイヤ内面Tsにはカーカス層4に沿ってインナーライナー層9が配置されている。
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面Tsのトレッド部1に対応する領域には、タイヤ周方向に沿ってシーラント層10が配置されている。このシーラント層10は粘着性のシーラント材からなる。シーラント材は、任意の粘着性組成物を使用することができる。この粘着性組成物は、粘着性組成物の全体量中、25重量%~75重量%のオイル成分を含んでいると良い。粘着性組成物に含まれるオイル成分として、アロマオイル、パラフィンオイル、ポリブテンオイルを例示することができる。このようなシーラント材を用いることで、シーラント材の有する粘着性によりタイヤ内面Tsに対して接着することが可能になる。
インナーライナー層9とシーラント層10との間には、シーラント層10に配合された液状成分(例えばオイル成分)のインナーライナー層9への移行を抑制するバリア層20が設けられている。即ち、インナーライナー層9からタイヤ径方向内側に向かってバリア層20、シーラント層10の順に積層されている。
バリア層20は、シーラント層10に配合された液状成分と親和性が低いゴム又は樹脂から構成することができる。シーラント層10の液状成分と親和性が低い材料として、例えば、ニトリルゴムやフッ素ゴム等のゴムや、ポリエチレンやポリプロピレン、塩化ビニル等の樹脂を用いることができる。特に、バリア層20は樹脂で構成されることが好ましく、この場合、バリア層20は優れたバリア性及び生産性を有する。また、バリア層20にはタルクやクレーを配合すると良く、これらを配合することによってシーラント層10の液状成分のインナーライナー層9への移行に対して抑制効果を高めることができる。
また、バリア層20は、グリーンタイヤに貼り付けてタイヤと共に加硫することや、加硫済みタイヤにゴム又は樹脂を塗布すること、加硫済みタイヤにスプレーによりゴム又は樹脂を噴霧すること、加硫済みタイヤに接着剤を介してシート状のゴム又は樹脂を貼り付けることにより、タイヤ内面Tsに形成することができる。加硫済みタイヤにゴム又は樹脂を塗布した場合、加硫時にブラダーにより形成されたタイヤ内面Tsの凹凸が平坦になるため、シーラント層10とバリア層20の接着面積が増え、接着性が高まるため好適である。
上述した空気入りタイヤでは、タイヤ内面Tsを形成するインナーライナー層9とシーラント層10との間にシーラント層10に配合された液状成分のインナーライナー層9への移行を抑制するバリア層20が設けられているので、シーラント層10に配合された液状成分(例えばオイル成分)がインナーライナー層9に移行しにくくなるため、シーラント層10の液状成分によるタイヤの耐久性の悪化を抑制することができる。また、バリア層20はシーラント層10の粘着性や流動性に対して影響を及ぼすことはないため、シーラント層10は本来のシール性能を十分に発揮することができる。
上記空気入りタイヤにおいて、バリア層20を70℃で1週間加熱した後のシーラント層10に配合された液状成分のインナーライナー層9への移行量はバリア層20の5重量%以下であることが好ましい。また、バリア層20の厚さd(図2参照)は、0.01mm~1.0mmであることが好ましい。なお、シーラント層10の液状成分のインナーライナー層9への移行量[重量%]は、以下の方法により測定する。80mm×80mmのシーラント層を100mm×100mmのバリア層に貼り付け、シーラント層が貼り付けられたバリア層をインナーライナー層に接着して70℃で1週間加熱する。加熱処理後に、インナーライナー層の重量を測定して、加熱処理前のインナーライナー層との重量差(加熱処理後のインナーライナー層の重量増加分)を算出し、加熱処理前のバリア層の重量に対するインナーライナー層の重量差の比率をシーラント層10の液状成分がインナーライナー層9に移行した移行量とする。
このようにシーラント層10の液状成分のインナーライナー層9への移行量を設定することで、シーラント層10に配合された液状成分のタイヤへの移行量を減らすことができ、タイヤの耐久性の悪化を効果的に抑制することができる。
ここで、シーラント層10の液状成分のインナーライナー層9への移行量がバリア層20の5重量%より大きいと、バリア層20がシーラント層10の液状成分に対して十分に抑制効果を発揮していないことになり、タイヤの耐久性の悪化を抑制しにくい。
バリア層20の幅W2は、シーラント層10の幅W1と同等以上になるように構成されている。特に、バリア層20の幅W2は、シーラント層10の幅W1に対して100%~130%の範囲にあることが好ましく、110%~120%の範囲にあることがより好ましい。なお、シーラント層10の幅W1(図1参照)は、タイヤ幅方向に沿ってシーラント層10のタイヤ幅方向の両端部間を測定し、更に、タイヤ周上の8箇所で測定した幅W1の平均値である。バリア層20の幅W2(図1参照)は、タイヤ幅方向に沿ってバリア層20のタイヤ幅方向の両端部間を測定した長さである。
このようにシーラント層10の幅W1に対するバリア層20の幅W2の比率W2/W1を適度に設定することで、バリア層20による抑制効果を十分に得ることができるので、タイヤの耐久性の悪化を効果的に抑制することができる。
ここで、比率W2/W1が100%より小さいと、シーラント層10の配置領域のうちバリア層20が存在しない部分が生じるので、その部分においてシーラント層10の液状成分がインナーライナー層9に移行し、タイヤの耐久性が悪化するので望ましくない。逆に、比率W2/W1が130%より大きいと、バリア層20がタイヤサイド部の撓み易い部位に配置される場合があり、バリア層20が剥離し易くなるので望ましくない。
更に、バリア層20は、インナーライナー層9とシーラント層10の間において、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に隙間なく配置すると良い。また、バリア層20をインナーライナー層9に接着する際、バリア層20の幅方向の両端部を含み、かつバリア層20の表面積の40%以上を接着することが好ましい。このようにバリア層20を設けることで、シーラント層10によるシール効果を十分に得ながら、シーラント層10の液状成分によるタイヤの耐久性の悪化を効果的に抑制することができる。
タイヤサイズ235/40R18で、タイヤ内面を形成するインナーライナー層のタイヤ径方向内側にシーラント層が配置された空気入りタイヤにおいて、バリア層の有無、移行量、シーラント層の幅W1、バリア層の幅W2、比率W2/W1を表1のように設定した従来例及び実施例1~5のタイヤを製作した。
なお、表1において、「移行量」はバリア層を70℃で1週間加熱した後のシーラント層に配合された液状成分のインナーライナー層への移行量を意味する。
これら試験タイヤについて、下記試験方法により耐久性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
耐久性:
各試験タイヤをそれぞれリムサイズ18×8.5Jのホイールに組み付け、空気圧250kPa、荷重6.03kN、走行速度80km/hの条件でドラム試験機にて走行試験を実施し、タイヤに故障が生じるまでの走行距離を測定した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、耐久性が優れていることを意味する。
Figure 2022053647000002
この表1から判るように、実施例1~5の空気入りタイヤは、従来例に比して、耐久性が改善した。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
9 インナーライナー層
10 シーラント層
20 バリア層
Ts タイヤ内面
CL タイヤ中心線

Claims (3)

  1. タイヤ内面のトレッド部に対応する領域にシーラント層が配置された空気入りタイヤにおいて、
    前記タイヤ内面を形成するインナーライナー層と前記シーラント層との間に該シーラント層に配合された液状成分の前記インナーライナー層への移行を抑制するバリア層が設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記バリア層を70℃で1週間加熱した後の前記シーラント層に配合された液状成分の前記インナーライナー層への移行量が前記バリア層の5重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記バリア層の幅が前記シーラント層の幅に対して100%~130%の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
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