JP2022049700A - リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】構成材料として、アルミニウムと、カーボンと、銅箔とを含むリチウムイオン二次電池から、銅を少ない工程数で、高品位で、かつ低アルミニウム品位、低フッ素品位及び低カーボン品位で回収できる手段を提供すること。【解決手段】構成材料として、アルミニウムと、カーボンと、銅箔とを含むリチウムイオン二次電池を熱処理する熱処理工程と、前記熱処理工程で得られた熱処理物に対し0.6mm~2.4mmの分級点で分級する分級工程と、前記分級工程で粗側に得られた粗粒産物に対し、液体存在下で外力を印加して、重産物と銅を含む軽産物とに分別する湿式選別工程と、を含むリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。【選択図】図2

Description

本発明は、製造過程で発生した不良品や使用機器及び電池の寿命などに伴い廃棄されるリチウムイオン二次電池の正極集電体、負極集電体、正極活物質などから、有価物を回収する方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、従来の鉛蓄電池、ニッカド二次電池などに比較して軽量、高容量、高起電力の二次電池であり、パソコン、電気自動車、携帯機器などの二次電池として使用されている。例えば、リチウムイオン二次電池の正極には、コバルトやニッケルなどの有価物が、コバルト酸リチウム(LiCoO)、三元系正極材(LiNiCoMn(x+y+z=1))などとして使用されている。
前記リチウムイオン二次電池は、今後も使用の拡大が予想されていることから、製造過程で発生した不良品や使用機器及び電池の寿命などに伴い廃棄されるリチウムイオン二次電池から有価物を回収することが、資源リサイクルの観点から望まれている。リチウムイオン二次電池から有価物を回収する際には、使用されている種々の金属を分離して回収することが、回収物の価値を高める点から重要である。
リチウムイオン二次電池から有価物の回収する技術として、リチウムイオン二次電池熱処理物の破砕物からアルミニウム及び銅を回収する手法が提案されている。例えば、特許文献1には、リチウムイオン二次電池を600~1050℃の温度で加熱し、次に破砕した後、得られた破砕物を篩分けし、1.0~10.0mmの破砕物に対して気流を用いた形状選別を行い、アルミニウムを重産物として、銅を軽産物として回収する方法が開示されている。なお、銅を軽産物として回収できるのは、銅が銅箔としてリチウムイオン二次電池中に存在するためである。また、1.0~10.0mmの破砕物は、破砕して得られた破砕物全体から、1.0mm未満のものと、10.0mm超のものを排除する工程を実施することで得られる。
特許第6378502号公報
リチウムイオン二次電池を熱処理した後、破砕・分級すると、分級で得られる粗粒産物中に鉄、アルミニウムなどの外装容器・部材由来の金属および銅などの集電体由来の金属が回収される。また、細粒産物にはコバルトやニッケルが濃縮する。
一方、前記粗粒産物には正極集電体のアルミニウム箔由来のアルミニウムも含まれる。特許文献1の方法ではこのアルミニウム(主にアルミニウム酸化物として存在すると考えられる)は、1.0~10.0mmの破砕物を形状選別して得られる、主に銅を含む軽産物中にも一定量回収されており、軽産物の銅品位が低い。また、特許文献1の形状選別は乾式であり、可溶成分(フッ素(電解質に含まれる代表的な元素である)やリチウムなど)が有る場合には、これが軽産物中に回収され、これの分離のためには更に水を使用した抽出操作が必要であり、工程数が多くなる。
また、形状選別が気流を用いたものであり破砕物に対してほとんど物理的な力を与えないものであることから、カーボン(リチウムイオン二次電池の負極活物質などとして含まれている)と銅の分離成績が低かった。
これらの影響により、特許文献1の方法ではリサイクルに求められる品質を満たす(例えば、銅品位90%以上(含有割合が90質量%以上、という意味である。以下異なる元素の「品位」についても同様)、アルミニウム品位1%以下、カーボン品位5%以下、フッ素品位0.2%以下)銅を分離回収することは困難であった。
特許文献1に記載の技術の他にも、リチウムイオン二次電池を熱処理、破砕、分級して得られる粗粒産物に含まれる銅やアルミニウムを分離回収するために、渦電流選別などが用いられることが知られているが、いずれの方法においてもリサイクルに求められる品質を満たす(例えば、銅品位90%以上、アルミニウム品位1%以下、カーボン品位5%以下、フッ素品位0.2%以下)銅を分離回収することは困難であった。また、銅品位を低減させるという悪影響のほかに、フッ素とカーボンが銅回収物に及ぼす影響を本発明者らが調査したところ、カーボンは銅をリサイクルする際に発塵等の問題を生じさせ、フッ素は銅を製錬原料としてリサイクルする際に排ガス処理に負荷を与えることから、分離することが重要であるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、従来における上記の諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、構成材料として、アルミニウムと、カーボンと、銅箔とを含むリチウムイオン二次電池から、銅を少ない工程数で、高品位で、かつ低アルミニウム品位、低フッ素品位及び低カーボン品位で回収できる手段を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段としては、以下の通りである。すなわち、
<1> 構成材料として、アルミニウムと、カーボンと、銅箔とを含むリチウムイオン二次電池を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程で得られた熱処理物に対し、液体存在下で外力を印加して、重産物と銅を含む軽産物とに分別する湿式選別工程と、
を行うことを特徴とする、リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<2> 前記熱処理工程で得られた熱処理物に対し、0.6mm~2.4mmの分級点で分級する分級工程を行い、粗側に得られた粗粒産物に対し、前記湿式選別工程を行う、前記<1>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<3> 前記湿式選別工程で、前記熱処理物又は前記粗粒産物を網状体上に配置し、前記網状体又は前記液体に振動を与えることにより、前記熱処理物又は前記粗粒産物の構成物を重産物と銅を含む軽産物とに分別する、前記<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<4> 前記湿式選別工程で、前記網状体又は前記液体に与える振動が鉛直方向である、前記<3>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<5> 前記湿式選別工程で与える振動が、前記網状体又は前記液体に与える振動速度が1mm/s~1000mm/sで、1往復に要する時間が0.1秒~5秒の振動である、前記<3>又は<4>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<6> 前記網状体の目開きが、0.1mm~50mmである、前記<3>から<5>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<7> 前記リチウムイオン二次電池がフッ素を含む、前記<1>から<6>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<8> 前記湿式選別工程で分別される軽産物の銅品位が90%以上であり、カーボン品位が5%以下であり、フッ素品位が0.2%以下である、前記<1>から<7>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<9> 前記湿式選別工程で分別される軽産物のアルミニウム品位が1%以下である、前記<1>から<8>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<10> 前記熱処理工程で得られた前記熱処理物を破砕する破砕工程を行い、得られた破砕物に対して前記分級工程を行う、前記<2>から<9>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<11> 前記熱処理工程で得られた前記熱処理物、又は前記分級工程で粗側に得られた前記粗粒産物を磁力選別する磁力選別工程を行い、磁着物が除去された前記粗粒産物に対して前記湿式選別工程を行う、前記<2>から<10>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<12> 前記熱処理工程における熱処理温度が、660℃以上1100℃以下である、前記<1>から<11>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<13> 前記湿式選別工程がジグ選別機を用いて行われる、前記<1>から<12>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、リチウムイオン二次電池から有価物を回収するにあたり、銅を高い銅品位で、かつ低アルミニウム品位、低フッ素品位及び低カーボン品位で回収できるようになる。
図1Aは、湿式選別工程において選別手段を用いて液体中で粗粒産物を選別する際の様子の一例を示す概念図である。 図1Bは、湿式選別工程において選別手段を用いて液体中で非磁着物を選別した後の様子の一例を示す概念図である。 図2は、本発明の有価物の回収方法を説明するフローチャートである。 図3は、実施例1で用いた湿式ジグ選別機の外観を示す写真である。
(有価物の回収方法)
本発明の有価物の回収方法は、熱処理工程と湿式選別工程とを含み、分級工程、破砕工程及び磁力選別工程の少なくともいずれかを含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
また、本発明の有価物の回収方法は、従来技術では、リチウムイオン二次電池(Lithium ion battery;LIB)を熱処理して、銅などの有価物を回収する際に、有価物を、フッ素及び炭素(カーボン)と高い精度で分離できず、選別した有価物の品位が十分でない場合があるという、本発明者らの知見に基づくものである。
より具体的には、上述したように、従来技術では、気流を用いた形状選別(比重選別)により、軽産物と重産物を得て、リチウムイオン二次電池から銅やアルミニウムを回収するが、気流を用いた形状選別(比重選別)は、乾式の選別手法であるため、液体に可溶な成分(フッ素など)を軽産物から分離できず、更には、銅に付着した炭素(カーボン)を銅から分離することも困難であった。このように、上述した従来技術では、軽産物における銅の品位を低下してしまうという問題以外にも、炭素(カーボン)は、銅をリサイクルする際に発塵等を生じさせ、フッ素は、銅を製錬原料としてリサイクルする際に排ガス処理に負荷を与えるという問題があることを、本発明者らは知見した。
つまり、上述した従来技術では、リチウムイオン二次電池のリサイクルに求められる品質を満たす品位(有価物が銅の場合、例えば、銅品位90%以上、カーボン品位5%以下、フッ素品位0.2%以下)を回収することができないと共に、製錬原料などの原料としてリサイクルに好適に利用できる有価物を選別して回収することができないことを、本発明者らは知見した。
また、上述した気流を用いた形状選別(比重選別)を用いる従来技術の他にも、例えば、粗粒産物に含まれる銅やアルミニウムを分離回収するために渦電流選別を行う技術があるが、渦電流選別は乾式の選別手法であるため、銅と、アルミニウム、フッ素、炭素(カーボン)等とを、十分に分離して選別することができず、リチウムイオン二次電池のリサイクルに求められる品質を満たす銅(例えば、銅品位90%以上、カーボン品位5%以下、フッ素品位0.2%以下)を回収することができないことを、本発明者らは知見した。
そこで、本発明者は、リチウムイオン二次電池に含まれる有価物を、フッ素及び炭素(カーボン)と高い精度で分離し、高い品位で銅を選別できる有価物の回収方法について鋭意検討を重ね、本発明を想到した。
すなわち、本発明は、例えば、アルミニウムとカーボンと銅箔とを含むリチウムイオン二次電池を熱処理する熱処理工程と、熱処理工程により得たリチウムイオン二次電池の熱処理物に対し、液体存在下で外力を印加することにより、重産物と主に銅を含む軽産物とに分別する湿式選別工程と、を含むことにより、リチウムイオン二次電池に含まれる有価物から、銅を高い銅品位で、かつ低アルミニウム品位及び低フッ素品位及び低カーボン品位で回収するものである。
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法においては、まず、有価物を含むリチウムイオン二次電池を熱処理する(熱処理工程)。そして、熱処理工程により得たリチウムイオン二次電池の熱処理物に対し、液体存在下で外力を印加することにより、重産物と銅を含む軽産物とに分別する(湿式選別工程)。言い換えると、本発明においては、液体存在下において、粗粒産物に外力を印加する(加える)ことにより、当該粗粒産物を比重や形状に応じて選別して、重産物と銅を含む軽産物とを得る。なお、軽産物は、例えば、主に銅を含むものとなる。
このように、本発明では、湿式選別工程において、液体を用いて湿式で粗粒産物を選別する。このため、粗粒産物に含まれるフッ素、リチウムなどの液体に可溶な物質を、液体に分離する(例えば、液体に溶出させて、処理後液(振とう液)に分離する)ことができるので、分別される重産物と軽産物におけるフッ素の含有量(品位)を低くすることができる。より具体的には、例えば、軽産物として回収した銅におけるフッ素の含有量(品位)を低くすることができ、高品位の銅を選別して回収することができる。
さらに、本発明では、湿式選別工程において、液体存在下で、熱処理物に対し外力を印加して選別する。このため、熱処理物に外力が印加されて液体中で分散し、当該粗粒産物が比重や形状に応じて選別され、例えば、リチウムイオン二次電池における集電体由来の箔状の銅は軽産物として選別され、外装容器由来のアルミニウムや鉄は重産物として選別される。
また、本発明では、湿式選別工程において、熱処理物に外力が印加されて、熱処理物どうしに摩擦や衝撃が加わることにより、例えば、熱処理物に含まれる有価物に付着した炭素(カーボン)の細かい粉が、当該有価物から剥離して分離される。この有価物から剥離した炭素の粉は、例えば、液体と一緒に分離される(処理後液(振とう液)と一緒に分離される)。なお、湿式選別工程において、熱処理物に外力が印加されて、摩擦や衝撃が加わることにより、例えば、リチウムイオン二次電池における正極集電体由来の細かい酸化アルミニウムは更に細粒化するため、液体と一緒に分離することができる。
加えて、本発明では、液体を用いて湿式で熱処理物を選別するため、熱処理物に含まれる有価物に付着した炭素(カーボン)における、付着水分による吸着や静電気力に起因する吸着を低減できるため、気流を用いた形状選別(比重選別)や渦電流選別を用いる場合と比較して、有価物から炭素(カーボン)をより容易に分離することができ、有価物と炭素(カーボン)の選別の精度をより向上できる。
このように、本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法は、上述した熱処理工程と、湿式選別工程とを含むことにより、リチウムイオン二次電池に含まれる銅を、フッ素及び炭素(カーボン)と高い精度で分離し、高い品位で当該銅を回収できる。例えば、湿式選別工程において得た軽産物として、銅を、銅品位90%以上、カーボン品位5%以下、フッ素品位0.2%以下という、高い品位で選別して回収できる。
以下では、本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法における各工程等の詳細について説明する。
<熱処理工程>
図2に示すように、まず、構成材料としてアルミニウムとカーボンと銅箔とを含むリチウムイオン二次電池に対して、熱処理工程が行われ、熱処理物を得る。言い換えると、熱処理工程においては、リチウムイオン二次電池を熱処理して、リチウムイオン二次電池の熱処理物を得る。
<<有価物>>
ここで、リチウムイオン二次電池に含まれる有価物とは、廃棄せずに取引対象たりうるものを意味し、例えば、高品位の炭素(C)濃縮物、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などが挙げられる。なお、高品位(例えば、品位80%以上)の炭素(C)濃縮物は、例えば、金属の製錬における還元剤等に好適に用いることができる。
本発明においては、例えば、湿式選別工程において得た重産物としてアルミニウムを選別して回収することができ、軽産物として銅を選別して回収することができる。本発明では、上述したように、例えば、軽産物として回収した銅を、銅品位90%以上、カーボン品位5%以下、フッ素品位0.2%以下という、高い品位で選別して回収することができる。
-リチウムイオン二次電池-
リチウムイオン二次電池は、例えば、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池であり、例えば、正極と、負極と、セパレーターと、電解質及び有機溶剤を含有する電解液と、正極、負極、セパレーター及び電解液を収容する電池ケースである外装容器(アルミニウム製や鉄製のものが一般的である)とを備えたものが挙げられる。なお、本発明が対象とするリチウムイオン二次電池は、正極や負極などが脱落した状態であってもよい。
本発明で有価物の回収対象となるリチウムイオン二次電池の形状、構造、大きさなどは、特に制限はない。リチウムイオン二次電池の形状としては、例えば、ラミネート型、円筒型、ボタン型、コイン型、角型、平型などが挙げられる。
また、リチウムイオン二次電池の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バッテリーセル、バッテリーモジュール、バッテリーパックなどが挙げられる。ここで、バッテリーモジュールは、単位電池であるバッテリーセルを複数個接続して一つの筐体にまとめたものを意味し、バッテリーパックとは、複数のバッテリーモジュールを一つの筐体にまとめたものを意味する。また、バッテリーパックは、制御コントローラーや冷却装置を備えたものであってもよい。
リチウムイオン二次電池としては、例えば、正極と、負極と、セパレーターと、電解質および有機溶剤を含有する電解液と、正極、負極、セパレーター、および電解液を収容する電池ケースである外装容器と、を備えたものなどが挙げられる。なお、リチウムイオン二次電池は、正極や負極などが脱落した状態であってもよい。
--正極--
正極は、正極集電体上に正極材を有する構造であり、その形状としては、例えば、平板状などが挙げられる。
正極集電体としては、その形状、構造、大きさなどについて特に制限はない。正極集電体の構造としては、例えば、多層構造(積層体)などが挙げられる。正極集電体の形状としては、例えば、箔状などが挙げられる。正極集電体の材質としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好ましい。リチウムイオンがドープしないことや、コストや導電性などの点からアルミニウムが広く使用されている。また、所望の特性を付与するために、アルミニウムに他の金属(ケイ素やマンガンなど)を添加したアルミニウム合金も使用されている。本発明で有価物の回収対象となるリチウムイオン二次電池は、正極集電体としてこのようにアルミニウムを含むものである。
正極材は、例えば、希少有価物を含有する正極活物質を少なくとも含み、必要により導電剤と、結着樹脂とを含んでいる。希少有価物としては、特に制限はないが、本発明の有価物の回収方法の回収対象としては、高価であることからコバルト、ニッケルの少なくともいずれかであることが好ましい。
前記正極活物質としては、例えば、LMO系と称されるマンガン酸リチウム(LiMn)、LCO系と称されるコバルト酸リチウム(LiCoO)、3元系やNCM系と称されるLiNiCoMn(x+y+z=1)、NCA系と称されるLiNiCoAl(x+y+z=1)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、コバルトニッケル酸リチウム(LiCo1/2Ni1/2)、チタン酸リチウム(LiTiO)などが挙げられる。また、正極活物質としては、これらの材料を組合せて用いてもよい。
前記導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、金属炭化物などが挙げられる。
前記結着樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、アクリロニトリル、エチレンオキシド等の単独重合体または共重合体、スチレン-ブタジエンゴムなどが挙げられる。
--負極--
負極は、負極集電体上に負極材を有する構造である。負極の形状としては、例えば、平板状などが挙げられる。
負極集電体としては、その構造、大きさなどに特に制限はない。負極集電体の材質としては、リチウムイオンがドープしないことや、コストや導電性の点から銅が広く使用されている。また、所望の特性を付与するために、銅に他の金属を添加した銅合金も使用されている。また負極集電体の形状は、箔状のものが広く使用されている。本発明で有価物の回収対象となるリチウムイオン二次電池は、例えば、このように負極集電体として銅箔を含むものである。なお、銅箔が銅合金から成る場合は、後述する湿式選別工程で軽産物として銅合金が得られるが、この合金を銅と他の金属成分などに更に分離する必要がある場合もある。そのため、負極集電体として銅から成る銅箔を含むリチウムイオン二次電池が、本発明における有価物の回収対象として好適である。ここで、本明細書で用いる「銅箔」には、銅合金(Cu≧70%)の箔も含む。箔の厚さは1μm~100μmが好ましい。
負極材は、例えば、負極活物質を少なくとも含み、必要により導電剤と、結着樹脂とを含んでいる。前記負極活物質としては、容量やコストなどの点からグラファイト、ハードカーボン等の炭素材、チタネイト、シリコン、およびそれぞれの複合物などが広く用いられている。本発明が回収対象とするリチウムイオン二次電池は、この中でも負極活物質としてカーボンを含むものであることが好ましい。
なお、正極集電体と、負極集電体とは積層体の構造をとっていることが一般的である。
また、リチウムイオン二次電池の外装容器(筐体)の材質としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレススチール、樹脂(プラスチック)などが挙げられる。
<<熱処理の手法>>
熱処理工程における熱処理(加熱)を行う手法としては、リチウムイオン二次電池における各構成部品を、後述する分級工程及び湿式選別工程において、有価物を回収可能な状態とすることができる手法であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、本発明においては、後述する破砕工程において、リチウムイオン二次電池を適切に破砕できるように熱処理を行うことが好ましい。
熱処理工程は、例えば、熱処理炉(焙焼炉)を用いて好適に行うことができる。熱処理炉としては、例えば、ロータリーキルン、流動床炉、トンネル炉、マッフル炉等のバッチ式炉、キュポラ、ストーカー炉、固定床炉などが挙げられる。
熱処理の際の温度(熱処理温度)としては、例えば、リチウムイオン二次電池における正極集電体及び負極集電体のうち、構成金属として低い融点の集電体の融点(すなわち正極集電体を構成するアルミニウムの融点)以上、かつ高い融点の集電体(すなわち負極集電体を構成する銅又は銅合金)の融点未満の温度とすることが好ましく、より具体的には660℃以上1100℃以下がより好ましく、700℃以上900℃以下が特に好ましい。熱処理温度が、660℃未満であると低い融点の集電体(アルミニウム)を十分に熱処理して回収しやすい形態とすることが困難となり易く、1100℃を超えると、高い融点の集電体である銅(又は銅合金)の脆化を抑制しにくくなり、破砕及び分級を行う場合でもコバルトやニッケルの濃縮物から銅又は銅合金を分離しにくくなることがある。
また、熱処理温度とは、熱処理時のリチウムイオン二次電池の温度のことを意味する。熱処理温度は、熱処理温度中のリチウムイオン二次電池に、カップル、サーミスタなどの温度計を差し込むことにより、測定することができる。
なお、前記リチウムイオン二次電池の前記外装容器が主にアルミニウムで構成されていて前記熱処理中に溶融する場合、前記リチウムイオン二次電池の下に前記溶融金属を回収する受け皿を配置することで、外装容器由来の熔融金属(アルミニウム)として、熱処理物から容易に分離できる。
また、上記の所定の熱処理温度で熱処理を行うことにより、例えば、正極集電体がアルミニウム箔であり、負極集電体が銅箔である積層体において、アルミニウム箔からなる正極集電体が脆化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなる。この正極集電体の脆化は溶融又は酸化反応により生ずる。また、溶融して流れ落ちたアルミニウムは、受け皿に回収される。一方、銅からなる負極集電体は、銅の融点未満の温度で熱処理されるため、溶融することがなく、後述する分級工程を行う場合は、粗粒産物としてコバルトやニッケルの濃縮物(細粒産物)から分離できるようになる。
熱処理時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1分間以上5時間以下が好ましく、1分間以上2時間以下がより好ましく、1分間以上1時間以下が特に好ましい。熱処理時間が特に好ましい範囲内であると、熱処理にかかるコストの点で有利である。なお、ここでの熱処理時間に保持時間(昇温段階)は含まれない。
熱処理に用いる雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する事ができるが、空気中で行うことができる。酸素濃度が低い雰囲気とすることにより、正極集電体由来の金属及び負極集電体由来の金属を高品位かつ高い回収率で回収できる点から好ましい。
リチウムイオン二次電池の外装容器に熱処理温度より低い融点を有する材料が用いられている場合、酸素濃度11vol%以下の低酸素雰囲気下、又は、少なくとも焙焼中のリチウムイオン二次電池内部(特に、リチウムイオン二次電池の外装容器内に配置された正極集電体と負極集電体)において酸素濃度が11vol%以下となるように、熱処理することが好ましい。
また、低酸素雰囲気の実現方法としては、例えば、リチウムイオン二次電池、正極、又は負極を、酸素遮蔽容器に収容し熱処理することにより実現することができる。
酸素遮蔽容器の材質としては、熱処理温度以上の融点である材質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱処理温度が800℃である場合は、この熱処理温度よりも高い融点を有する鉄、ステンレス鋼などが挙げられる。
このように、リチウムイオン二次電池を酸素遮蔽容器に収容して熱処理したときは、アルミニウムを含む正極集電体が脆化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなる。一方、銅からなる負極集電体は、酸素遮蔽容器の酸素遮蔽効果及びリチウムイオン二次電池に含まれるカーボン等の負極活物質による還元効果により、酸素分圧が低い状態で熱処理されるため、酸化による脆化が生じない。
このため、破砕工程における破砕により、正極集電体は細かく破砕され、負極集電体は、破砕後も比較的大きな箔として存在し、後述する分級工程を行う場合も、より効果的かつ高度に選別できるようになる。
リチウムイオン二次電池中の電解液燃焼によるガス圧を放出するために、酸素遮蔽容器には開口部を設けることが好ましい。開口部は、その形状、大きさ、形成箇所などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、開口部の開口面積は、開口部が設けられている外装容器の表面積に対して12.5%以下となるように設けることが好ましい。開口部の開口面積は、開口部が設けられている外装容器の表面積に対して6.3%以下であることがより好ましい。開口部の開口面積が外装容器の表面積に対して12.5%を超えると、集電体の大部分が熱処理によって酸化しやすくなってしまう。
<破砕工程>
本発明では、熱処理工程で得られた熱処理物を破砕する破砕工程を行うことができ、破砕工程で得られた破砕物に対して後述する分級工程を実施してもよい。
破砕は、熱処理物(焙焼物)を破砕して破砕物を得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱処理物を衝撃により破砕して破砕物を得ることが好ましい。例えば、リチウムイオン二次電池の筐体を熱処理工程において溶融させないときは、熱処理物に衝撃を与える前に、切断機により熱処理物を切断する予備破砕をしておくことがより好ましい。
衝撃により破砕を行う方法としては、例えば、回転する打撃板により熱処理物を投げつけ、衝突板に叩きつけて衝撃を与える方法や、回転する打撃子(ビーター)により熱処理物を叩く方法が挙げられ、これらの方法は、例えば、ハンマークラッシャーやチェーンミルやエンドミルなどにより行うことができる。また、例えば、セラミックや鉄などのボールやロッドにより熱処理物を叩く方法でもよく、これらの方法は、ボールミルやロッドミルなどにより行うことができる。また、衝撃による破砕方法以外では、圧縮による破砕を行う刃幅、刃渡りの短い二軸破砕機等で破砕してもよい。
ここで、衝撃によりリチウムイオン二次電池の熱処理物を破砕することで、活物質と集電体の単体分離が良好に生じる。また、活物質は元来数10nmの粒子である一方、集電体は箔状の形状であることから、衝撃破砕により活物質の解砕が優先的に生じ、結果、次の分級工程で分離することができる。
破砕工程における破砕時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、リチウムイオン二次電池1kgあたりの破砕時間は、1秒間以上30分間以下が好ましく、2秒間以上10分間以下がより好ましく、3秒間以上5分間以下が特に好ましい。破砕時間が、1秒未満であると、破砕されないことがあり、30分間を超えると、過剰に破砕され、負極集電体由来の銅が次の分級工程において細粒産物側に回収されることがある。
また、破砕工程における破砕条件としては、例えば、チェーンミルやハンマーミル等の衝撃式・打撃式破砕機で破砕する場合、チェーンやハンマーの先端速度を10m/sec以上300m/sec以下とし、破砕機中の対象物の滞留時間を1秒以上10分以下とすることが好ましい。こうすることにより、本発明の有価物の回収方法では、正極材である銅やアルミニウム、筐体に由来するFeなどの部材を過剰に粉砕させずに破砕することができる。
<分級工程>
次に、熱処理工程で得られた熱処理物、又は破砕工程で得られた破砕物に対して、粗粒産物と細粒産物とに分級する分級工程を行うことができる。分級方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振動篩、多段式振動篩、JIS Z8801の標準篩、乾式もしくは湿式のサイクロンなどを用いて行うことができる。
なお、アルミニウム(Al)は、筐体由来の比較的大きな塊の状態のもの、正極集電体由来の箔状のアルミニウム(アルミ箔)、箔状のアルミニウムが破砕された細かい形状のものがあり、粗粒産物と細粒産物の両方に含まれる。
本発明で採用する、前記分級工程における分級点は、0.6mm~2.4mmとすることが好ましく、1.0mm~2.0mmが特に好ましい。分級点が2.4mmを超えた場合、銅の粗粒産物への回収率が低下する場合がある。一方、分級点が0.6mm未満の場合、低い融点の金属を含む集電体由来の金属及び電極の活物質の粗粒産物中への混入が増加し、粗粒産物中の高い融点の集電体由来の金属(銅又は銅合金)の品位が低下し、かつ細粒産物への正極活物質由来のコバルトやニッケル回収率が低下することがある。このような各有価物の適切な分離の観点から、分級点は好ましくは1.0mm~2.0mmである。
これらの分級により、粗粒産物として外装容器および融点の高い集電体由来の金属(すなわち銅)を、細粒産物としてコバルト、ニッケルなどの正極活物質や、カーボンなどの負極活物質をそれぞれ分離回収することができる。ただし、この段階では粗粒産物にカーボン(粉末の状態であることが一般的である)やフッ素などが残存していることが多い。また、コバルト、ニッケル、マンガンなどの正極活物質由来の成分も、破砕時などに粗粒産物に巻き込まれて、粗粒産物として回収される場合がある。また、熱処理時に熔融後、他リチウムイオン構成部材に付着し分離できなかった外装容器由来のアルミニウムや、熱処理時に熔融が不完全であった外装容器由来のアルミニウムも、粗粒産物として回収される場合がある。これらの物質については、例えば、後述する湿式選別工程において分離することができる。
前記分級工程で回収した粗粒産物は2.4mmを超える分級点で分級し、その細粒産物側に回収された産物(中間産物)を後述する磁力選別工程に供してもよい。粗粒産物の再分級により、当該再分級で回収した粗粒産物に高品位の銅を回収することができる。この再分級で回収した粗粒産物に対しては、乾式・湿式を問わない物理選別(例えば、磁力選別や比重選別)を行い、銅の品位を更に高めた産物を回収することもできる。
また、前記分級工程で選別した細粒産物には、コバルト、ニッケル、リチウム、正極集電体由来のアルミニウムなどが含まれる。この細粒産物に対して、物理選別工程や湿式精製工程を行い、細粒産物からコバルト、ニッケル、リチウムの濃縮物を回収してもよい(ここでカーボンをコバルト等から分離することができる)。
また、粗粒産物篩上物(篩上物)と細粒産物(篩下物)との分級(篩分け)を複数回繰り返してもよい。この再度の分級により、各産物の不純物品位をさらに低減することができる。
なお、破砕工程及び分級工程は、同時進行で行うこともできる。例えば、熱処理工程で得られた熱処理物を破砕しながら、破砕物を粗粒産物と細粒産物とに分級する破砕・分級工程(破砕・分級)として、破砕工程及び分級工程を行ってもよい。
<磁力選別工程>
上述したように、本発明の有価物の回収方法においては、熱処理工程で得られた熱処理物又は分級工程で粗側に得られた粗粒産物に対して、磁力により、磁着物と非磁着物とに選別する磁力選別工程を更に含むことが好ましい。この場合、磁着物として鉄が磁着物に分離され、非磁着物として銅とアルミニウムを主とする非磁着物(磁着物が除去された粗粒産物)を回収できる。なお、以下では、磁力による選別を「磁力選別」又は「磁選」と称することがある。
磁力選別機は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、棒磁石、格子型マグネット、ロータリーマグネット、マグネットストレーナー、高磁力プーリ(マグネットプーリ)磁選機、ドラム型磁選機、吊下げ型磁選機などが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、ドラム型磁選機、吊下げ型磁選機を用いることが好ましい。磁力選別工程は乾式工程でも湿式工程でもよい。
ここで、磁着物とは、磁力(磁界)を発生させる磁力源(例えば、磁石、電磁石など)が発生させた磁力により、当該磁力源との間で引力を生じて、当該磁力源側に吸着可能なものを意味する。磁着物としては、例えば、強磁性体の金属などが挙げられる。強磁性体の金属としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどが挙げられる。
非磁着物とは、上記の磁力源が発生させた磁力では、当該磁力源側に吸着されないものを意味する。非磁着物としては、特に制限はなく、目的に応じて選択できる。また、金属の非磁着物としては、例えば、常磁性体又は反磁性体の金属が挙げられる。常磁性体又は反磁性体の金属としては、例えば、アルミニウム、マンガン、金、銀、銅などが挙げられる。
粗粒産物から鉄を磁着物として分離する場合は、磁力選別における磁力の大きさとしては、例えば、磁束密度を0.01T(100G)以上とすることが好ましい。なお、「T」はテスラを意味し、「G」はガウスを意味する。
また、粗粒産物から、ステンレスを選別する場合は、上記の範囲よりも高磁力を用いてもよい。なお、異なる磁力を組み合わせて多段階で使用することも可能である。
なお、磁力選別工程を行わない場合、粗粒産物に含まれる鉄は、湿式選別工程では重産物側に分離することができるが、鉄を湿式処理した場合には錆が発生することがあり、この場合は販売可能な性状の鉄を回収しがたいことから、湿式選別工程の前に磁選工程を行うことが好ましい。
<湿式選別工程>
次に、熱処理工程で得られた熱処理物、好ましくは分級工程で粗側に得られた粗粒産物、更に好ましくはその後に磁選工程で回収した非磁着産物(磁着物が除去された粗粒産物;非磁着物)に対して、液体存在下で外力を印加することにより、重産物と主に銅を含む軽産物に分別する湿式選別工程(湿式比重選別工程)が行われる。即ち、この湿式選別工程では、熱処理物や粗粒産物に液中で振動を与えることができる。
液体存在下において、熱処理物、粗粒産物又は非磁着物に対し外力を印加することで、熱処理物や粗粒産物や非磁着物に液中で振動を与えることができ、摩擦を付与できる。カーボン粉が付着した負極集電体由来の銅(又は銅合金)がそれら同士もしくは他構成物や摩擦を付与する装置の内壁と摩擦されることで、カーボン粉は負極集電体から剥離して液体中に分離される(銅などが沈降したあとの振とう液中に存在する)。また、前記銅(又は銅合金)は破砕工程等を経ても箔の形状を一定程度保持しており、液中で沈降する際に水の抵抗を強く受けて、見かけ比重は小さい。一方外装ケース由来のアルミニウムや鉄は塊状であり、見かけ比重は大きい。これらのことから、湿式選別工程(湿式比重選別工程)により粗粒産物の構成物である負極集電体由来の箔状の銅(又は銅合金)は軽産物として回収され、外装ケース由来のアルミニウム(熱処理時に溶融物として分離回収できなかったもの)や鉄(磁選工程で回収できなかったもの。ステンレスを含む。)は重産物として回収される。なお、軽産物は、例えば、銅褐色なので、色により重産物と区別することもできる。
ここで、本発明では、液体中での見かけの比重(形状の違いによる液体中での抵抗の大きさを考慮したときに、その物質が軽い物質としてふるまうか、重い物質としてふるまうか)の差異を利用して、例えば、液体中での見かけの比重が軽い構成物が選別されたものを「軽産物」と称し、液体中での見かけの比重が重い構成物が選別されたものを「重産物」と称する。例えば、液体中において、重力方向の下側には重産物が選別され、重力方向の上側には軽産物が選別される。
また、上記の通り、カーボンは負極集電体から剥離し、後述する網状体などを通過して振とう液中に分離できる。また、摩擦により正極集電体由来のアルミニウム(酸化アルミニウムとなっていると考えられる)は細粒化し、これも振とう液中に分離できる。
更に、比重選別が湿式であることにより、カーボンと他構成物との付着水分による吸着や静電気力に起因する吸着を低減できるため、カーボンの分離が乾式に比べ容易となる。銅などに含まれるフッ素とリチウムは湿式選別時に溶出し、カーボンの分離と同時に振とう液中に分離することができる。
このように、湿式選別工程では、粗粒産物同士や粗粒産物と装置の摩擦を利用して、重産物、軽産物及び振とう液中に目的物を良好に分別できるが、分別効率を高める観点からは、前記湿式選別工程で粗粒産物に与える振動が鉛直方向上下(略重力方向)であることが好ましい。
ここで、湿式選別工程は、熱処理物、粗粒産物又は非磁着物に対し、液体存在下で外力を印加して、重産物と主に銅を含む軽産物とに選別できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、以下では、熱処理物、粗粒産物又は非磁着物を区別せずに「粗粒産物等」と称することがある。
湿式選別工程において、粗粒産物等に対し、液体存在下で外力を印加する際に、粗粒産物等を液体存在下とする手法としては、粗粒産物等の周囲に液体が存在するようにできる手法であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
粗粒産物等を液体存在下とする手法としては、例えば、粗粒産物等にスプレーなどで液体を吹きかける手法、粗粒産物等にシャワーなどで液体を注ぎかける(液体をかけ流す)手法、粗粒産物等を液体中に浸ける(液体に投入する)手法などが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、粗粒産物等を液体存在下とする手法としては、粗粒産物等を液体中に浸ける(液体に投入する)手法が、粗粒産物等の周囲に十分な量の液体を存在させやすい点から好ましい。
粗粒産物等を液体中に浸ける(液体に投入する)手法においては、例えば、粗粒産物等を留まった液体(静止した液体)に浸けてもよいし、流れている液体(流水など)に浸けてもよい。
また、湿式選別工程において用いる液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水などが挙げられる。湿式選別工程で用いる水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、工業用水、河川水、海水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、精製水、熱水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記液体としては水を用いることがコストや環境負荷の点から好ましく、この水には分散剤等を添加してもよい。
また、湿式選別工程にて、粗粒産物等に対し、液体存在下で外力を印加する際において、粗粒産物等に外力を印加する手法としては、印加した外力により、重産物と主に銅を含む軽産物とに選別可能な手法であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
粗粒産物等に外力を印加する手法としては、例えば、粗粒産物等に振動を加える手法、粗粒産物等に上下に脈動する水流を与える(液体に振動を与える)方法、粗粒産物等を叩くことなどにより連続的な衝撃を加える手法などが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、粗粒産物等に外力を印加する手法としては、粗粒産物等に振動を加える手法又は粗粒産物等に上下に脈動する水流を与える方法が、粗粒産物等を容易に選別できる点から好ましい。
このように、本発明では、湿式選別工程において、粗粒産物等に対し、液体存在下で外力を印加する際には、粗粒産物等を液体中に浸けた状態で、当該粗粒産物等に振動を加えることや、粗粒産物等に脈動する水流を与えることが好ましい。
粗粒産物等を液体中に浸けた状態で、当該粗粒産物等に振動を加える手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粗粒産物を網状体上に載せ、網状体を液体中で振動させる手法が好ましい。言い換えると、本発明では、湿式選別工程において、粗粒産物を網状体に載せ、網状体を液体中で振動させることにより、軽産物と重産物に選別することが好ましい。これより、軽産物としての銅の品位をより向上させることができる。
粗粒産物を液体に浸けた状態で、当該粗粒産物に脈動する水流を与える方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粗粒産物を固定された網状体状に載せ、液体に機械的にあるいは圧縮空気を利用して圧力を与えて脈動水流を形成させ、粗粒産物を脈動水流で分散させる手法が好ましい。これより、軽産物としての銅の品位をより向上させることができる。
ここで、湿式選別工程に用いる装置としては、湿式で、熱処理物、粗粒産物又は非磁着物(粗粒産物等)に、分散させた状態で振動を与えて選別できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、ジグ選別機や湿式揺動テーブル選別機、二層式比重選別機、遠心式比重選別機、薄流選別機などを使用できる。これらの中でもジグ選別機は、簡易な装置であり、また粗粒産物等に対して振とうにより簡易に重力方向の振動を与えることができ、好ましい。また、選別の様子を容易に確認できる点から、装置の少なくとも一部が透明な材質で形成されることが好ましい。
前記装置は、粗粒産物等を搭載でき、少なくとも一部に液体が流通可能な構造を有する網状体を備えることが好ましい。網状体の目開きとしては、液体が流通可能であり、粗粒産物等に含まれる選別の対象となる有価物(例えば、銅)が通過できない大きさの目開きであれば特に制限はない。より具体的には、網状体の目開きは、0.1mm以上、50mm以下であることが好ましく、0.2mm以上、20mm以下であることがより好ましい。
上述した網状体を液体中で振動させる際の振動方向、又は粗粒産物に脈動する水流を与える際の水流の脈動方向は、重産物と主に銅を含む軽産物とに選別できれば特に制限はないが、鉛直方向(略重力方向)とすることが好ましい。言い換えると、本発明においては、湿式選別工程において、網状体を略重力方向に振動させること、又は略重力方向に脈動する水流を粗粒産物に与えることが好ましい。こうすることにより、本発明では、粗粒産物等に含まれる各物質の形状や比重を利用して、粗粒産物等の軽産物と重産物とへの選別を、より効率的に短時間で行うことができる。
また、前記湿式選別工程で粗粒産物等に与える振動(当該工程に用いる装置の、振動する箇所の振動)、又は前記水流の脈動の速さは、振動速度が1mm/s(1秒間に1mm移動する)~1000mm/sであることが好ましい。また、振動1往復に要する時間が0.1秒~5秒であることが好ましい。1mm/s未満の振動速度又は脈動速度や振動1往復に要する時間が5秒を超えるのでは、処理対象の粗粒産物に主に含まれる銅、鉄、アルミニウムの分離が不十分となりやすく、1000mm/sを超える振動速度や1往復に要する時間が0.1秒未満では振動が激しすぎて分離よりも混合状態になりやすい。これらの観点から、振動速度は30mm/s~500mm/sであることがより好ましく、1往復に要する時間は1秒~4秒であることがより好ましい。
さらに、上述した網状体の振幅(振幅;往復運動させる際の、選別手段の移動距離)又は脈動水流による水面の脈動幅は、粗粒産物等を重産物と主に銅を含む軽産物とに選別できれば特に制限はなく、例えば、1mm以上2000mm以下であることが好ましく、10mm以上1000mm以下であることがより好ましい。
加えて、上述した網状体又は液体に振動を与える時間及び振動数(液体の場合は脈動数と同義)としては、粗粒産物等を重産物と主に銅とを含む軽産物とに選別できれば特に制限はなく、例えば、振動速度を50mm/sとして、50mmの振幅で300回上下に振とう(300往復)させる場合は、10分間の振動をさせることになる。
また、網状体に振動を与える手法としては、特に制限はなく、例えば、作業者が網状体を有する選別装置を手で持って、略重力方向(上下方向)に往復運動させる手法を用いてもよいし、モータ等を有する装置により、自動的に、略重力方向(上下方向)に往復運動させてもよい。液体に振動を与える方法としては、特に制限はなく、例えば、圧縮空気を利用し水位を上下させる手法を用いてもよい。
なお、湿式選別工程においては、粗粒産物等を軽産物、中比重産物、重産物など3層以上に分離してもよい。リチウムイオン二次電池中の銅は、負極集電体の箔状の銅以外にも、銅線、銅板など厚い銅部材の形態でも少量含まれる場合があり、これらは、アルミニウムよりも見かけ比重が大きいため、この場合は箔状の銅を軽産物に回収でき、その他の銅部材を重産物に回収でき、アルミニウムを中比重産物に回収できる。
また、本発明では、重産物と軽産物の2層に分離させて回収した重産物を、再度、比重選別してもよい。この重産物には、アルミニウム以外に、リチウムイオン二次電池に含まれる上記少量の銅部材も含まれ、重産物を比重選別した軽産物にアルミニウムを分離し、重産物を比重選別した重産物に銅部材を回収できる。この比重選別は、乾式の比重分離であってもよい。
なお、湿式選別工程では、炭素(カーボン)が付着した箔状の銅が、一部液体中に浮遊する場合がある。この銅は軽産物として回収してもよく、カーボンの剥離が不十分な銅として回収し、再度破砕工程に供してもよい。
以上説明したように、本発明における湿式選別工程では、粗粒産物から前記軽産物として高品位の銅が得られる。具体的には、分別される主に銅を含む軽産物の銅品位が90%以上であり、カーボン品位が5%以下であり、フッ素品位が0.2%以下である。また、軽産物のアルミニウム品位が1%以下であることが好ましく、リチウム品位が0.2%以下であることが好ましい。
図1Aは、湿式選別工程において選別手段を用いて液体中で非磁着物を選別する際の様子の一例を示す概念図である。
図1Aに示す例においては、液体収容容器10に水Wが収容されている。そして、図1Aに示す例では、非磁着物30が、収容部21を有する選別手段20に収容されており、選別手段20の収容部21の底部には篩部(網状体)22が設けられている。また、選別手段20における収容部21には、篩部22を介して水Wが流入しており、収容部21の内部には水Wが存在し、非磁着物30は水Wの中に位置している。
湿式選別工程においては、例えば、図1Aにおける矢印Aの方向(略重力方向)に選別手段20を振動させることにより選別を行う。つまり、図1Aに示した例では、選別手段20を水Wの中で振動させることにより、非磁着物30に外力を印加して振動させることで、非磁着物30を選別する。また、図1Aに示すように、選別手段20を水Wの中で振動させることにより、非磁着物30に含まれる銅などの有価物に付着した炭素(カーボン)31における、付着水分による吸着や静電気力に起因する吸着を低減でき、炭素(カーボン)31が分離され、炭素(カーボン)31は篩部22を通って水Wに分離される。
また、選別手段20を水Wの中で振動させる際には、収容部21の開口部(上側)が、水Wの水面よりも低い位置にならないように振動させることが好ましい。こうすることにより、収容部21の内部に生じる浮揚物が、収容部21の外部に漏れ出ることを防ぐことができる。
図1Bは、湿式選別工程において選別手段を用いて液体中で非磁着物を選別した後の様子の一例を示す概念図である。
図1Bは、図1Aに示した例において、十分に選別手段20を振動させて、非磁着物30を、重産物32と軽産物33に選別したときの様子の一例を示す。図1Bに示すように、選別手段20を水Wの中で略重力方向に振動させることにより、非磁着物30に含まれる各物質の形状や比重を利用して、重産物32と軽産物33に効率的に選別することができる。
また、図1Bにおいては、非磁着物30に外力を印加して振動させることで、非磁着物30どうしが擦れ合って摩擦が生じるため、炭素(カーボン)31が剥離して細かい粉となって水Wの中に分離できると共に、非磁着物30に含まれるフッ素は水Wの中に溶出するため、フッ素も水Wの中に分離できる。
なお、本発明は、上述した図1A及び図1Bに示したような選別手段を用いることに限定されるものではなく、例えば、液体収容容器10を用いずに、選別手段20における収容部21自体に水Wを保有できるようにし(篩部22を設けずに、収容部21の底部を密閉し)、収容部21に水Wを満たした状態で選別手段20を振動させることにより、水Wの中で非磁着物30を振動させて、重産物32と軽産物33に選別することもできる。
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回収工程などが挙げられる。
<<回収工程>>
回収工程は、例えば、湿式選別工程において選別した重産物と主に銅を含む軽産物とを分離して回収する工程とすることができる。
回収工程においては、例えば、選別手段を液体中から取り出して、液体を取り除いた後に、熱処理物、粗粒産物又は非磁着物(粗粒産物等)を、上部から所定の厚みで採取したものを軽産物とし、残りを重産物として回収することができる。粗粒産物等を上部から所定の厚みで採取する際には、例えば、薬さじを用いて採取する手法、平板状の部材を軽産物と重産物の境に差し込むことにより分離して採取する手法などが挙げられる。
また、重産物と軽産物の判別は、軽産物は銅が濃縮されて銅褐色を呈するため、銅褐色の部分を軽産物とし、それ以外の部分を重産物とすることで判別することができる。
<実施形態の一例>
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池の選別方法における実施形態の一例について説明する。図2は、本発明の有価物の回収方法における一実施形態の流れの一例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態では、まず、リチウムイオン二次電池を、筐体由来のアルミニウムを回収するための受け皿の上に配置し、660℃以上1,100℃以下の熱処理温度で熱処理する(熱処理工程)。熱処理工程においては、リチウムイオン二次電池の筐体由来のアルミニウムを溶融させて溶融物として、受け皿に回収する。
次に、リチウムイオン二次電池の熱処理物を破砕して破砕物を得る(破砕工程)。
続いて、破砕物を1.2mm以上2.4mm以下の分級点で分級して粗粒産物(篩上物)と細粒産物(篩下物)に分級する(分級工程)。ここで、粗粒産物(篩上物)には、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、炭素(C;カーボン)、フッ素(F)などが含まれる。一方、細粒産物(篩下物)は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、炭素(C;カーボン)、アルミニウム(Al)などが含まれる。
次いで、粗粒産物に対し磁力による選別(磁選)を行い、粗粒産物を、磁着物と非磁着物とに選別する(磁力選別工程)。ここで、磁着物には、鉄(Fe)が選別されて濃縮され、非磁着物には、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、炭素(C;カーボン)、フッ素(F)などが含まれる。
そして、非磁着物に対し、液体存在下で外力を印加して選別することにより、当該非磁着物を、軽産物と重産物に選別する(湿式選別工程)。より具体的には、本実施形態では、湿式選別工程においては、例えば、非磁着物を収容する収容部を有する選別手段に、粗粒産物を収容し、選別手段を液体中で略重力方向に振動させることにより、非磁着物の各物質を、重産物と軽産物と振とう液とに分離する。
本実施形態では、重産物にアルミニウム(Al)が濃縮され、軽産物に銅(Cu)が濃縮され、振とう液(液体)には、炭素(C;カーボン)とフッ素(F)が分離される。
このようにして、本実施形態においては、リチウムイオン二次電池に含まれる有価物(例えば、銅)を、フッ素及び炭素(カーボン)と高い精度で分離し、高い品位で当該有価物を選別できる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<熱処理>
外装ケース(筐体)がアルミニウム製(一部部品に鉄を含む)である車載用リチウムイオン二次電池パック300kg(当該リチウムイオン二次電池は正極集電体がアルミニウム箔であり、負極集電体が銅箔であり、負極活物質が炭素材であり、電解液はフッ素を含んでいた)に対して、図2のフローに示すように、熱処理工程、破砕工程、分級工程、磁選工程及び湿式選別工程を行い、有価物を回収した。具体的には以下のとおりである。
前記リチウムイオン二次電池パックに対して、熱処理装置として炉内が円筒型の固定床炉(直径4300mm×高さ6500mm)を用いて、熱処理温度800℃(室温から15minかけて800℃に昇温後、2時間保持)、大気雰囲気下の条件で、熱処理を行った。熱処理においては、車載用リチウムイオン二次電池パックを、筐体由来のアルミニウムを回収するための受け皿の上に配置し、当該筐体由来のアルミニウムを溶融させて溶融物として、受け皿に回収した。
<破砕及び分級>
次いで、破砕工程では、破砕装置として、チェーンミル(クロスフローシュレッダーS-1000、佐藤鉄工株式会社製)を用い、チェーン回転数の設定30Hz、破砕時間30秒の条件で、車載用リチウムイオン二次電池パックの熱処理物を破砕して、破砕物を得た。
続いて、分級工程として、篩目の目開きが1.2mmの振動篩(型式STZF-90-210TB、大東振動工学株式会社製)を用いて、車載用リチウムイオン二次電池パックの破砕物を篩分け(分級)した。そして、篩分け後の1.2mmの篩上(粗粒産物)と篩下(細粒産物)をそれぞれ採取した。
<磁力選別>
次に、得られた粗粒産物を、磁束密度が500G(0.05T)の吊り磁選機(SP-610 SC-2 SPCL-L、エリーズマグネチックス社製)を用い、鉄を磁着物に除去することにより、磁着物と非磁着物を分離した。
<湿式選別>
次に、得られた非磁着物に対して、湿式選別工程を行った。
まず、15Lのバケツ中に、横断面形状が正六角形で、その正六角形の中心を通る対角線長さが110mm、高さ25mmの囲いを6段重ねた構造であり(合計で高さ150mm)底面に目開き600μmの篩を有するジグ選別機(図3)を設置し、非磁着物135gを入れた。このとき、ジグ選別機をバケツ底部から100mm持ち上げた状態で、4段目と5段目の境界線まで水面が達するように振とう液(振とう液)としての水を13L加えた。非磁着物は3段目を超える高さまで充填されていた。
なお、実施例1で用いた湿式ジグ選別機は、図3に示すように、側面(収容部21)が透明な材質で形成されており、内部の様子を外側から目視で確認することができる。
次に、湿式ジグ選別機を、50mm/sの速度かつ50mmの振幅で、300回上下(重力方向)に振とう(振動)させた(1回の上下動(1往復)に要した時間は約2秒である)。振とう中は、水面が4段目と5段目の境界線付近から6段目の上面手前までの間を往復するようにし、ジグ選別機上部から振とう液がこぼれないように注意した。
振とう後、水面の浮揚物を掬って取り除いた後にジグ選別機をバケツから取り出し、篩上にある非磁着物の上部25mm分が目視で銅褐色と確認できたため、薬さじで回収し、銅濃縮物(軽産物)とし、品位を評価した。
また、振とう時(振動時)に、湿式ジグ選別機の底部の篩から水と一緒に排出された産物(つまり、底部の600μmの目を通過した産物)は、振とう液として回収した。
<評価>
軽産物の品位は、以下のようにして評価した。軽産物の重量を、電磁式はかり(商品名:GX-8K、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて測定した後、軽産物を王水(富士フイルム和光純薬株式会社製)に加熱溶解させ、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(iCaP6300、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)により分析を行い、各元素の含有割合(品位)を求めた。なお、非磁着物(フィード)に対しても、同様に品位の評価を行った。この結果を表1に示す。
(比較例1)
前記非磁着物に対して行うジグ選別(湿式選別)に代えてエアテーブル(乾式比重選別)を用い、軽産物として銅濃縮物を回収した他は、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池パックからの有価物の回収を行い、得られた軽産物の品位を評価した。
以上の試験結果を表1に示す。
Figure 2022049700000002
表1に示すように、非磁着物(フィード)における、銅(Cu)品位は約68%であるのに対し、実施例1では軽産物の銅品位は約96%に向上できた。
アルミニウム(Al)に関しては、非磁着物(フィード)でのアルミニウム品位17.7%に対して軽産物のアルミニウム品位が0.4%と低減していたことから、外装ケース由来の塊状のAlは重産物として分離でき、脆化・細粒化した正極集電体Al箔由来のアルミニウムは、湿式選別中の振動・他構成物との接触により細粒化し、振とう液中へ分離できたものと考えられる。
さらに、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)については、非磁着物(フィード)では分級及び磁力選別で除ききれなかった分が、1.0%~1.6%含まれていたが、実施例1では、軽産物のCo、Ni、Mnの品位をいずれも0.2%以下に低減できた。
加えて、リチウム(Li)とフッ素(F)については、実施例1では湿式選別により、振とう液中に溶出分離でき、Liを0.2%以下、Fを0.2%以下にできた。
そして、炭素(C;カーボン)については、非磁着物(フィード)の炭素の品位が7.7%であったのに対して、実施例1では軽産物のC品位を3.2%に低減できた。これは、カーボンを上澄液に分離したことによるものと考えられる。
一方、比較例1では、上記の酸化アルミニウムの細粒が、軽産物側に回収された。また、Co、Ni、Mn及びカーボンは、軽産物に濃縮された。
また、乾式比重選別のため、リチウムとフッ素を軽産物から除去できなかった。
A 振動方向を示す矢印
W 水
10 液体収容容器
20 選別手段
21 収容部
22 篩部(網状体)
30 非磁着物
31 炭素(カーボン)
32 重産物
33 軽産物

Claims (11)

  1. 構成材料として、アルミニウムと、カーボンと、銅箔とを含むリチウムイオン二次電池を熱処理する熱処理工程と、
    前記熱処理工程で得られた熱処理物に対し0.6mm~2.4mmの分級点で分級する分級工程と、
    前記分級工程で粗側に得られた粗粒産物に対し、液体存在下で外力を印加して、重産物と銅を含む軽産物とに分別する湿式選別工程と、
    を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  2. 前記湿式選別工程で、前記粗粒産物を網状体上に配置し、前記網状体又は前記液体に振動を与えることにより、前記粗粒産物の構成物を重産物と銅を含む軽産物とに分別する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  3. 前記湿式選別工程で、前記網状体又は前記液体に与える振動が鉛直方向である、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  4. 前記湿式選別工程で与える振動が、前記網状体又は前記液体に与える振動速度が1mm/s~1000mm/sで、1往復に要する時間が0.1秒~5秒の振動である、請求項2又は3に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  5. 前記網状体の目開きが、0.1mm~50mmである、請求項2から4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  6. 前記リチウムイオン二次電池がフッ素を含む、請求項1から5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  7. 前記湿式選別工程で分別される軽産物のアルミニウム品位が1%以下である、請求項1から6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  8. 前記熱処理工程で得られた前記熱処理物を破砕する破砕工程を行い、得られた破砕物に対して前記分級工程を行う、請求項1から7のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  9. 前記分級工程で粗側に得られた前記粗粒産物を磁力選別する磁力選別工程を行い、磁着物が除去された前記粗粒産物に対して前記湿式選別工程を行う、請求項1から8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  10. 前記熱処理工程における熱処理温度が、660℃以上1100℃以下である、請求項1から9のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  11. 前記湿式選別工程がジグ選別機を用いて行われる、請求項1から10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。

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