JP6692196B2 - リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、製造過程で発生した不良品や使用機器及び電池の寿命などに伴い廃棄されるリチウムイオン二次電池の正極集電体及び負極集電体などから有価物を回収可能なリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、従来の鉛蓄電池、ニッカド二次電池などに比較して軽量、高容量、高起電力の二次電池であり、パソコン、電気自動車、携帯機器などの二次電池として使用されている。例えば、前記リチウムイオン二次電池の正極には、コバルトやニッケルなどの有価物が、コバルト酸リチウム(LiCoO)、三元系正極材(LiNiCoMn2(x+y+z))などとして使用されている。
前記リチウムイオン二次電池は、今後も使用の拡大が予想されていることから、製造過程で発生した不良品や使用機器及び電池の寿命などに伴い廃棄される前記リチウムイオン二次電池から有価物を回収することが、資源リサイクルの観点から望まれている。前記リチウムイオン二次電池から前記有価物を回収する際には、使用されている種々の金属を分離して回収することが、回収物の価値を高める点から重要である。近年、前記リチウムイオン二次電池の製造コストの低減を主目的とし、特に車載用の前記リチウムイオン二次電池において低コバルト及びニッケル品位の正極材を有する前記リチウムイオン二次電池が開発され、相対的に集電体及び外装容器を構成する金属の金属価値が前記リチウムイオン二次電池全体の価値に占める比率は増加している。前記集電体及び前記外装容器構成物の中では、特に銅を用いている前記集電体の価値が高く、効率的な分離及び回収技術の確立が重要性を増している。
リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法として、前記リチウムイオン二次電池を焙焼し、得られた焙焼物を破砕した後、破砕物を篩別して、篩上側に主としてケースの破砕物を、篩下側に主として正極の破砕物及び負極の破砕物を回収し、篩下に含まれる正極及び負極の前記破砕物に衝撃力を与えて正極を正極集電体及び正極活物質に、負極を負極集電体及び負極活物質にそれぞれ分離し、結果物を篩別して、篩上側に主として前記正極集電体及び前記負極集電体を含む金属製部材、篩下側に主として前記正極活物質及び前記負極活物質を回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、使用済みリチウム二次電池を焙焼し、次に破砕した後、破砕物を篩分けし、篩下をテーブル選別機によって重量選別し、テーブル尾鉱を磁力選別するリチウム二次電池からのコバルト、銅、リチウムの回収方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、本願出願人は、前記リチウムイオン二次電池を焙焼した後、焙焼物を打撃により破砕し、破砕物を篩分けして篩下に有価物を回収する方法を提案している(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、前記特許文献1の方法では、前記正極集電体の融点及び前記負極集電体の融点のいずれよりも低い温度で焙焼するため、篩分け工程によっては前記正極集電体と前記負極集電体を分離できない可能性があった。また、前記特許文献2の方法では、負極集電体由来の金属を、正極活物質由来の金属と十分に分離することができず、それぞれの金属を分離回収することができなかった。前記特許文献3の方法では、篩分けにより前記負極集電体の金属と前記正極集電体の金属とをある程度分離することはできているが、前記負極集電体の前記金属及び前記正極集電体の前記金属のいずれかの回収率及び品位がともに十分ではなかった。
特開2014−199774号公報 特開平8−287967号公報 特開2012−79630号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、リチウムイオン二次電池の正極集電体及び負極集電体の少なくともいずれかから高品位の有価物を、高い回収率で回収でき、かつ工程が簡単なリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 正極集電体と、負極集電体とを含む積層体を収容する外装容器を有するリチウムイオン二次電池を、前記正極集電体及び前記負極集電体のうち、低い融点の集電体の融点以上、かつ高い融点の前記集電体の融点未満の温度で焙焼して焙焼物を得る焙焼工程を少なくとも含み、
前記外装容器が開口部を有し、前記開口部の開口面積が、前記開口部が設けられている前記外装容器の表面積に対して12.5%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<2> 前記リチウムイオン二次電池又は前記積層体を、前記高い融点の前記集電体の融点以上の融点である酸素遮蔽容器に収容して焙焼する<1>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<3> 前記酸素遮蔽容器が開口部を有し、前記開口部の開口面積が、前記開口部が設けられている前記酸素遮蔽容器の表面積に対して12.5%以下である請求項<2>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<4> 前記焙焼工程後に前記外装容器内の集電体が露出するように焙焼物を切断する切断工程を行う前記<1>から<3>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、リチウムイオン二次電池の正極集電体及び負極集電体の少なくともいずれかから高品位の有価物を、高い回収率で回収でき、かつ工程が簡単なリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法を提供することができる。
(リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法)
本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法は、焙焼工程を少なくとも含み、切断工程、破砕工程、及び分離工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
<焙焼工程>
前記焙焼工程は、正極集電体と、負極集電体とを含む積層体を収容する外装容器を有するリチウムイオン二次電池を、前記正極集電体及び前記負極集電体のうち、低い融点の集電体の融点以上、かつ高い融点の前記集電体の融点未満の温度で焙焼して焙焼物を得る工程である。
前記焙焼工程においては、前記リチウムイオン二次電池及び前記積層体の少なくともいずれか一方を、前記高い融点の前記集電体の融点以上の融点である酸素遮蔽容器に収容して焙焼することが好ましい。
前記集電体の融点は、前記集電体が単一の金属であれば、その金属の融点であり、前記集電体が合金や複合材料の場合には、例えば、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA)により融点を測定することができる。
−リチウムイオン二次電池−
前記リチウムイオン二次電池としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムイオン二次電池の製造過程で発生した不良品のリチウムイオン二次電池、使用機器の不良、使用機器の寿命などにより廃棄されるリチウムイオン二次電池、寿命により廃棄される使用済みのリチウムイオン二次電池などが挙げられる。
前記リチウムイオン二次電池の形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記リチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネート型、円筒型、ボタン型、コイン型、角型、平型などが挙げられる。
前記リチウムイオン二次電池としては、例えば、正極と、負極と、セパレーターと、電解質及び有機溶剤を含有する電解液と、前記正極、前記負極、前記セパレーター及び前記電解液を収容する電池ケースである外装容器とを備えたものが挙げられる。
−−正極−−
前記正極としては、正極集電体上に正極材を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状、シート状などが挙げられる。
−−−正極集電体−−−
前記正極集電体としては、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正極集電体の形状としては、例えば、箔状などが挙げられる。
前記正極集電体の材質としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好ましい。
−−−正極材−−−
前記正極材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、希少有価物を含有する正極活物質を少なくとも含み、必要により導電剤と、結着樹脂とを含む正極材などが挙げられる。
前記希少有価物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、マンガン、コバルト、及びニッケルの少なくともいずれかであることが好ましい。
前記正極活物質としては、例えば、マンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、コバルトニッケル酸リチウム(LiCo1/2Ni1/2)、LiNiCoMnなどが挙げられる。
前記導電剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、金属炭化物などが挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、アクリロニトリル、エチレンオキシド等の単独重合体又は共重合体、スチレン−ブタジエンゴムなどが挙げられる。
−−負極−−
前記負極としては、負極集電体上に負極材を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状、シート状などが挙げられる。
−−−負極集電体−−−
前記負極集電体としては、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極集電体の形状としては、例えば、箔状などが挙げられる。
前記負極集電体の材質としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、銅が好ましい。
−−−負極材−−−
前記負極材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グラファイト、ハードカーボン等の炭素材、チタネイトなどが挙げられる。
なお、前記正極集電体と、前記負極集電体とは前記積層体の構造を有しており、前記積層体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記積層体を、前記正極集電体及び前記負極集電体のうち融点の高い方が外側となるように筒状に巻いたものなどが挙げられる。
−外装容器−
前記外装容器には開口部を設ける。前記開口部の開口面積は、前記開口部が設けられている前記外装容器の表面積に対して12.5%以下となるように設ける。前記開口部の開口面積は、前記開口部が設けられている前記外装容器の表面積に対して6.3%以下であることが好ましい。前記開口部の開口面積が前記外装容器の表面積に対して12.5%を超えると、前記集電体の大部分が焙焼によって酸化しやすくなってしまう。
前記開口部は、その形状、大きさ、形成箇所などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記開口部の開口の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単一の開口である形状や、複数の開口からなる形状などが挙げられる。
前記開口部の大きさとしては、前記外装容器の前記表面積に対して12.5%以下であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記開口部の形成箇所としては、前記外装容器の表面であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−酸素遮蔽容器−
前記酸素遮蔽容器としては、前記リチウムイオン二次電池及び前記積層体の少なくともいずれか一方を収容し、外気と遮蔽することで、酸素の流入を抑えることができれば、その形状、構造、大きさ、材質などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記酸素遮蔽容器は、前記酸素遮蔽容器の内部ガス圧力制御するために、上述の外装容器と同様に開口部を設けてもよい。前記開口部の面積を前記酸素遮蔽容器の表面積で除した値である開口率は、12.5%以下が好ましく、6.3%以下がより好ましい。前記開口率が12.5%を超えると、前記集電体の大部分が焙焼によって酸化しやすくなってしまう。
前記酸素遮蔽容器の開口部は、その形状、大きさ、形成箇所などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記外装容器と同様である。
前記酸素分圧としては、前記酸素遮蔽容器に収容された前記リチウムイオン二次電池、及び前記積層体を焙焼する際に、前記酸素分圧が0%〜5%であることが好ましい。また、前記開口部は、焙焼するまでの間、塞がれていることが好ましい。前記開口部を塞ぐ部材については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記酸素遮蔽容器の大きさとしては、特に制限はなく、前記リチウムイオン二次電池、及び前記積層体の大きさに応じて適宜選択することができる。
前記酸素遮蔽容器の材質としては、前記正極集電体及び前記負極集電体のうち、前記低い融点の前記集電体の融点以上の融点である材質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記正極集電体がアルミニウムであり、前記負極集電体が銅である場合は、前記アルミニウムの融点である660.32℃よりも高い融点を有する鉄、ステンレス鋼などが挙げられる。
前記酸素遮蔽容器は、例えば、前記リチウムイオン二次電池の前記外装容器であってもよく、前記積層体を、前記正極集電体及び前記負極集電体のうち融点の高いほうが外側となるように筒状に巻いた状態の、前記融点の高いほうの前記集電体を前記酸素遮蔽容器として代用してもよい。前記リチウムイオン二次電池の前記外装容器が、前記高い融点の前記集電体の融点以上の融点である材質であれば、前記リチウムイオン二次電池の安全上から、前記外装容器が封止された前記開口部を有する構造であるため、前記リチウムイオン二次電池の前記外装容器自体を前記酸素遮蔽容器とすることが好ましい。
−焙焼−
前記焙焼は、前記正極集電体及び前記負極集電体のうち、前記低い融点の前記集電体の融点以上、かつ前記高い融点の前記集電体の融点未満の温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、670℃以上が好ましく、670℃以上1,100℃以下がより好ましく、700℃以上900℃以下が特に好ましい。前記焙焼温度が、670℃未満であると、前記低い融点の前記集電体の脆性化が十分に生じないことがあり、1,100℃を超えると、前記低い融点の前記集電体及び前記高い融点の前記集電体のいずれもが脆性化し、破砕及び分級による前記集電体の分離効率が低下する。
前記焙焼温度で前記焙焼を行うことにより、例えば、前記正極集電体がアルミニウムであり、前記負極集電体が銅である前記積層体において、アルミニウム箔からなる前記正極集電体が溶融して脆性化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなる。一方、前記銅からなる前記負極集電体は、前記銅の融点未満の温度で焙焼されるため、溶融することがなく、後述する分離工程において、高度に選別できるようになる。また、前記積層体及び前記リチウムイオン二次電池のいずれかを前記酸素遮蔽容器に収容して焙焼したときは、前記アルミニウム箔からなる前記正極集電体が溶融して脆性化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなり、一方、前記銅からなる前記負極集電体は、酸素分圧が低い状態で焙焼されるため、酸化による脆性化が生じない。このため、前記破砕工程における破砕により、前記正極集電体は細かく破砕され、前記負極集電体は、破砕後も粗粒として存在し、後述する分離工程において、より効果的かつ高度に選別できるようになる。
前記焙焼温度とは、焙焼時の前記リチウムイオン二次電池及び前記酸素遮蔽容器のうちいずれかの温度のことをいう。前記焙焼温度は、焙焼中の前記リチウムイオン二次電池及び前記酸素遮蔽容器のうちいずれかに、カップル、サーミスタなどの温度計を差し込むことにより、測定することができる。
前記焙焼時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1分間以上5時間以下が好ましく、1分間以上2時間以下がより好ましく、1分間以上1時間以下が特に好ましい。前記焙焼時間は前記低い融点の前記集電体が所望の温度まで到達する焙焼時間であればよく、保持時間は短くてもよい。前記焙焼時間が、前記特に好ましい範囲内であると、焙焼にかかるコストの点で有利である。
前記焙焼の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、焙焼炉を用いる方法などが挙げられる。
前記焙焼炉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロータリーキルン、流動床炉、トンネル炉、マッフル等のバッチ式炉、キュポラ、ストーカー炉などが挙げられる。
前記焙焼に用いる雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大気雰囲気、酸化雰囲気、不活性雰囲気、還元性雰囲気、低酸素雰囲気などが挙げられる。
前記大気雰囲気(空気雰囲気)とは、酸素が21体積%、窒素が78体積%の大気(空気)を用いた雰囲気を意味する。
前記酸化雰囲気とは、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気中に酸素を1質量%〜21質量%含む雰囲気を意味し、酸素を1質量%〜5質量%含む雰囲気が好ましい。
前記不活性雰囲気とは、窒素又はアルゴンからなる雰囲気を意味する。
前記還元性雰囲気とは、例えば、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気中にCO、H、HS、SOなどを含む雰囲気を意味する。
前記低酸素雰囲気とは、酸素分圧が5%以下である雰囲気を意味する。
これらの中でも、前記低酸素雰囲気が、前記正極集電体由来の金属及び前記負極集電体由来の金属を高品位かつ高い回収率で回収できる点から好ましい。
<切断工程>
前記焙焼工程の後には、正極集電体や負極集電体から高品位の有価物を、高効率で分離回収する観点から切断工程を行うことが好ましい。
前記切断工程とは、前記外装容器内の集電体が露出するよう焙焼物を切断することを行う。言い換えれば、外装容器の筐体が切断されて、集電体が剥き出しになるような状態であればよく、集電体まで切断されても構わない。これより、その後の回収工程での有価物の回収効率が高まる。
前記切断としては、例えば、回転する刃や砥石を用いる方法、二軸破砕機(刃渡りの長い)等のせん断力を用いた破砕機による切断、刃や砥石が切断部を往復することによる切断、シャーリング等の刃を切断対象物に押し付けて切断する方法、酸素、アルゴン、水素、窒素、エアー等のガスを用いる切断、高速の液体を切断部に噴霧することによるジェット切断、プラズマを用いる切断などが挙げられる。
<破砕工程>
前記破砕工程としては、前記焙焼物を破砕して、破砕物を得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記焙焼物を衝撃により破砕して前記破砕物を得ることが好ましく、前記焙焼物に前記衝撃を与える前に、切断機により、前記焙焼物を切断する予備破砕しておくことがより好ましい。
−破砕−
前記破砕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記衝撃により破砕を行う方法としては、回転する打撃板により投げつけ、衝突板に叩きつけて前記衝撃を与える方法や、回転する打撃子(ビーター)により前記焙焼物を叩く方法が挙げられ、例えば、ハンマークラッシャーなどにより行うことができる。また、セラミックなどのボールにより前記焙焼物を叩く方法が挙げられ、ボールミルなどにより行うことができる。また、圧縮による破砕を行う刃幅、刃渡りの短い二軸粉砕機で破砕することにより行うことができる。
前記衝撃により、前記破砕物を得ることにより、前記低い融点の前記集電体の破砕を促進し、一方、形態が著しく変化していない前記高い融点の前記集電体が、箔状などの形態で存在する。そのため、前記破砕工程において、前記高い融点の前記集電体は、切断されるにとどまり、前記高い融点の前記集電体の細粒化は、前記低い融点の前記集電体と比較し進行しにくいため、後述する分離工程において前記低い融点の前記集電体と前記高い融点の前記集電体とが効率的に分離できる状態の前記破砕物を得ることができる。更に、前記酸素遮蔽容器が前記リチウムイオン二次電池の前記外装容器である場合、前記切断機により予め前記外装容器に亀裂を生じさせた後に前記衝撃による破砕をすることで、前記亀裂付近での優先的な破砕を促進し、結果として、前記外装容器の内部の負極活物質が前記外装容器から分離しやすくなる。
ここで、前記負極活物質とは、グラファイトなどの炭素材料のことをいう。
前記破砕時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、リチウムイオン二次電池1kgあたりの処理時間は1秒間以上30分間以下が好ましく、2秒間以上10分間以下がより好ましく、3秒間以上5分間以下が特に好ましい。前記破砕時間が、1秒間未満であると、破砕されないことがあり、30分間を超えると、過剰に破砕されてしまうことがある。
<分離工程>
前記分離工程としては、前記破砕物を篩分けして篩上と篩下に選別して、それぞれにおいて回収物を得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記破砕物を多段による前記篩分けすることにより、複数の前記篩分けを同時に行うことができる工程を含むものが好ましく、更に、それぞれに篩分けられた分離物に対して、磁力選別をする工程を含むものがより好ましい。
ここで、2段の篩分けのときに、1段目の篩の篩上に分離されるものを粗粒産物、2段目の篩上に分離されるものを中間産物、2段目の篩下に分離されるものを微粒産物という。
−篩分け−
前記篩分けとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振動篩、多段式振動篩、サイクロン、JIS Z8801の標準篩などを用いて行うことができる。
前記篩の篩目の目開きとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記2段の前記篩分けのときは、1段目の篩目開きは20mm以上200mm以下が好ましく、2段目の篩目開きは、0.025mm以上10mm以下が好ましい。
前記1段目の篩目開きが200mmを超えた場合、例えば、前記破砕物に前記酸素遮蔽容器を含むときに、前記中間産物中へ前記酸素遮蔽容器由来の金属の混入が増加し、前記高い融点の前記集電体由来の金属との分離成績が低下する場合がある。前記1段目の篩目開きが20mm未満の場合、前記粗粒産物中への前記融点の高いほうの前記集電体由来の金属の混入が増加し、前記酸素遮蔽容器との分離成績が低下する場合がある。前記2段目の篩目開きが10mmを超えた場合、前記高い融点の前記集電体由来の金属の前記微粒産物中への混入が増加し、前記低い融点の前記集電体及び活物質との分離成績が低下する。一方、前記2段目の篩目開きが0.025mm未満の場合、前記低い融点の前記集電体由来の金属及び活物質の前記中間産物中への混入が増加し、前記中間産物中の前記高い融点の前記集電体由来の金属の品位が低下する場合がある。
前記篩分けにより、前記粗粒産物として不純物の少ない前記酸素遮蔽容器を、前記中間産物として不純物の少ない前記融点の高いほうの前記集電体の前記金属を回収することができる。
なお、前記粗粒産物、前記中間産物、前記微粒産物を再度、前記篩分けしてもよい。この再度の前記篩分けにより、各産物の不純物品位を更に低減することができる。
また、前記篩分け時に、前記2段目の篩上に解砕促進物、例えば、ステンレス球やアルミナボールをのせて篩うことにより、前記2段目篩上に残留した少量の前記低い融点の前記集電体を解砕し微粒化させることで、前記中間産物中における前記高い融点の前記集電体の金属の品位を更に向上させることができる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有価物の回収工程などが挙げられる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
リチウムイオン二次電池として、開口率1.2%の開口部を有する外装容器を備えた使用済みのリチウムイオン二次電池を用いた。前記リチウムイオン二次電池は、前記正極集電体がアルミニウム(融点660℃)であり、前記負極集電体が銅(融点1,085℃)である。
前記リチウムイオン二次電池の金属含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(iCaP6300、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により、リチウムイオン二次電池を構成する金属材料及び活物質の質量を100質量%とした場合、それぞれ、銅が7.8質量%、鉄が35.0質量%、アルミニウムが4.3質量%、マンガンが13.8質量%、コバルトが2.1質量%、ニッケルが1.9質量%、残量は33.4質量%で殆どがカーボンであった。
−焙焼工程−
マッフル炉(FJ−41、ヤマト科学株式会社製)に前記リチウムイオン二次電池を入れ、焙焼温度を900℃とし、昇温速度13.3℃/分間、空気通気量20L/分間で900℃まで昇温した。温度が900℃に到達後、900℃で24時間焙焼し、焙焼物を得た。また、炉内雰囲気は大気雰囲気とした。
−切断・破砕・分離工程−
前記焙焼工程により得られた前記焙焼物を、開口率が12.5%となるように筐体をディスクグラインダー(GWS6−100、BOSCH社製)により切断(切断工程)した後、インパクトクラッシャー(KAP-40W HDブレーカー、株式会社アーステクニカ製)を用い、50Hz(ロータ周速25m/s)で1回破砕した。
次に、目開き100mmの篩による篩分け(1回目)を行い、篩上に前記外装容器由来の鉄が主体の粗粒産物を分離・除去した。前記焙焼後筐体の切断は、筐体内から負極集電体を効率的に破砕分離するための前処理として実施した。前記1回目の篩分けの篩下物について、ハンマークラッシャー(マキノ式スイングハンマークラッシャーHC−20−3.7、槇野産業株式会社製)を用い、50Hz(ハンマー周速38m/s)、出口部分の目開き10mmの条件で1回追加破砕した。
前記ハンマークラッシャーを用いた追加破砕工程により得られた前記破砕物を、篩目の目開き2.4mmの篩を用いて篩分け(2回目)した。この2回目の篩分けの篩上物については磁選を行い、前記外装容器由来の鉄を除いて中間産物を得た。前記2回目の篩分けの篩下として微粒産物を得た。
<評価>
篩分け後の100mmの篩の篩上、2.4mmの篩の篩上、篩下(2.4mmの篩の篩下)をそれぞれ採取し、質量を測定した後、王水に加熱溶解させ、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(iCaP6300、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により分析を行い、以下のようにして各種金属の各粒度産物中の品位及び回収率を求めた。
・品位(%)=溶解液中濃度×溶解液量÷溶解試料量×100
・回収率(%)=(各産物中品位×各産物回収量)÷Σ(各産物中品位×各産物回収量)×100
篩分けの結果を表1に示した。回収した銅の品位及び銅の回収率を表2に示した。
(実施例2)
実施例1において、リチウムイオン二次電池の外装容器の開口部の開口率を6.3%とした以外は、実施例1と同様にして、焙焼工程、及び切断・破砕・分離工程を行い、選別後に質量の測定を行い、回収された各種金属の含有割合を求めた。篩分けの結果を表1に示した。回収した銅の品位及び銅の回収率を表2に示した。
(実施例3)
実施例1において、リチウムイオン二次電池の外装容器の開口部の開口率を12.5%とし、焙焼工程後の切断工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、焙焼工程、及び破砕・分離工程を行い、選別後に質量の測定を行い、回収された各種金属の含有割合を求めた。篩分けの結果を表1に示した。回収した銅の品位及び銅の回収率を表2に示した。
(実施例4)
実施例1で用いたリチウムイオン二次電池と同様な電池を1個、外装容器を外した集電体のみの状態で、まとめて酸素遮蔽容器に装填し、この酸素遮蔽容器の表面積に対して開口率12.5%の開口部を有する前記酸素遮蔽容器を用いた。前記酸素遮蔽容器はステンレス(SUS304、融点1,400℃以上)製である。これ以外は、実施例1と同様にして、焙焼工程、粉砕工程、及び篩選別工程を行い、選別後に質量の測定を行い、回収された各種金属の含有割合(電池1個当たり)を求めた。篩分けの結果を表1に示した。回収した銅の品位及び銅の回収率を表2に示した。
(比較例1)
実施例1において、リチウムイオン二次電池の外装容器の開口率を15.0%とし、焙焼工程後の切断工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、焙焼工程、及び破砕・分離工程を行い、選別後に質量の測定を行い、回収された各種金属の含有割合を求めた。篩分けの結果を表1に示した。回収した銅の品位及び銅の回収率を表2に示した。
(比較例2)
実施例1において、リチウムイオン二次電池の外装容器の開口率を25.0%とし、焙焼工程後の切断工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、焙焼工程、及び破砕・分離工程を行い、選別後に質量の測定を行い、回収された各種金属の含有割合を求めた。篩分けの結果を表1に示した。回収した銅の品位及び銅の回収率を表2に示した。
(比較例3)
実施例1において、リチウムイオン二次電池の外装容器の開口率を40.0%とし、焙焼工程後の切断工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、焙焼工程、及び破砕・分離工程を行い、選別後に質量の測定を行い、回収された各種金属の含有割合を求めた。篩分けの結果を表1に示した。回収した銅の品位及び銅の回収率を表2に示した。
(比較例4)
実施例1において、リチウムイオン二次電池から前記集電体を取り出し、前記集電体だけを焙焼し(開口率100%に相当)、焙焼工程後の切断工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、焙焼工程、及び破砕・分離工程を行い、選別後に質量の測定を行い、回収された各種金属の含有割合を求めた。篩分けの結果を表1に示した。回収した銅の品位及び銅の回収率を表2に示した。
Figure 0006692196
Figure 0006692196
表2の結果から、実施例1〜4においては、優れた銅回収率及び銅品位が得られた。また、実施例1〜4は、外装容器又は酸素遮蔽容器の開口率が12.5%以下であるため、前記中間産物に銅を、前記微粒産物にアルミニウムを高効率で分離できることがわかった。
これに対して、比較例1〜4では、銅及びアルミニウムの大部分が前記微粒産物となってしまい、銅とアルミニウムを分離することができなかった。
本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法は、リチウムイオン二次電池から前記集電体や前記外装容器等の有価物を高い回収率で回収でき、かつ工程が簡単であることから、リチウムイオン二次電池からの有価物の回収に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 正極集電体と、負極集電体とを含む積層体を収容する外装容器を有するリチウムイオン二次電池を、前記正極集電体及び前記負極集電体のうち、低い融点の集電体の融点以上、かつ高い融点の前記集電体の融点未満の温度で焙焼して焙焼物を得る焙焼工程を少なくとも含み、
    前記外装容器が開口部を有し、前記開口部の開口面積が、前記開口部が設けられている前記外装容器の表面積に対して12.5%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  2. 前記リチウムイオン二次電池又は前記積層体を、前記外装容器とは異なる前記低い融点の前記集電体の融点以上の融点である酸素遮蔽容器に収容して焙焼する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  3. 前記酸素遮蔽容器が開口部を有し、前記開口部の開口面積が、前記開口部が設けられている前記酸素遮蔽容器の表面積に対して12.5%以下である請求項2に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  4. 前記焙焼工程後に、篩分けをする分離工程を含む請求項1から3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  5. 前記焙焼工程後に前記外装容器内の集電体が露出するように焙焼物を切断する切断工程を行う請求項1から4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  6. 前記開口部の開口面積が、前記開口部が設けられている前記外装容器の表面積に対して6.3%以下である請求項1から5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  7. 前記焙焼工程が、700℃以上900℃以下で行われる請求項1から6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  8. 前記篩分けが、2段による篩分けであって、
    1段目の篩目開きが、20mm以上200mm以下であり、2段目の篩目開きが、0.025mm以上10mm以下である請求項4に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
  9. 前記焙焼工程後に、前記外装容器内の前記集電体が露出するように焙焼物を切断する切断工程を更に有する請求項1から8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
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