次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る射出成形機Mの全体的な主要構成について、図1を参照して説明する。
図1において、Mは射出成形機であり、射出装置Mi及び型締装置Mcを備える。射出装置Miは、前端に射出ノズル3nを、後部にホッパ21をそれぞれ有する加熱筒3を備え、この加熱筒3の内部にはスクリュ4を挿通させるとともに、加熱筒3の後端にはスクリュ駆動部23を配設する。スクリュ駆動部23は、片ロッドタイプの射出ラム24rを内蔵する射出シリンダ(油圧シリンダ)24を備え、射出シリンダ24の前方に突出するラムロッド24rsはスクリュ4の後端に結合する。また、射出ラム24rの後端には、射出シリンダ24に取付けた計量モータ(オイルモータ)25のシャフトがスプライン結合する。26は、射出装置Miを進退移動させて金型2に対するノズルタッチ又はその解除を行う射出装置移動シリンダを示す。これにより、射出装置Miは、射出ノズル3nを金型2にノズルタッチし、金型2のキャビティ内に溶融(可塑化)した樹脂R(図5)を射出充填することができる。
一方、型締装置Mcは、型締シリンダ(油圧シリンダ)27の駆動ラム27rにより可動型2mを変位させる直圧方式の油圧式型締装置である。この型締装置Mcは、位置が固定され、かつ離間して配した固定盤28を備え、この固定盤28と型締シリンダ27間に架設した複数のタイバー29…にスライド自在に搭載した可動盤30を備える。この可動盤30に型締シリンダ27から前方に突出したラムロッド27rsの先端を固定する。また、固定盤28には固定型2cを取付けるとともに、可動盤30には可動型2mを取付け、この固定型2cと可動型2mにより金型2を構成する。これにより、型締シリンダ27は金型2に対する型開閉及び型締を行うことができる。この場合、型締装置Mcには型締シリンダ(油圧シリンダ)27を使用するため、この型締装置Mcは、少なくとも金型2内の樹脂Rの固化に伴って樹脂Rの自然圧縮が可能である。
他方、射出成形機Mは、図1に示す油圧回路35を備え、この油圧回路35は、油圧駆動源となる可変吐出型油圧ポンプ36及びバルブ回路37を備えるとともに、油圧ポンプ36を駆動制御するポンプ回路38を備える。油圧ポンプ36は不図示の斜板を内蔵するため、この斜板の傾斜角(斜板角)を大きくすれば、ポンプピストンのストロークが大きくなり、吐出流量を増加させることができるとともに、斜板角を小さくすれば、ポンプピストンのストロークが小さくなり、吐出流量を減少させることができる。このため、斜板角を所定の角度に設定すれば、吐出流量(最大容量)が所定の大きさに固定される固定吐出流量を設定することができる。
また、油圧ポンプ36の吐出口は、バルブ回路37の一次側に接続し、さらに、バルブ回路37の二次側は、射出成形機Mにおける射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に接続する。したがって、バルブ回路37には、射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26にそれぞれ接続する切換バルブ(電磁バルブ)を備えている。なお、各切換バルブは、それぞれ一又は二以上のバルブ部品をはじめ、必要な付属油圧部品等により構成され、少なくとも、射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に対する作動油の供給,停止,排出に係わる切換機能を備えている。
ポンプ回路38は、可変吐出型油圧ポンプ36のポンプモータ(サーボモータ)を制御することにより吐出流量及び吐出圧力を可変することができ、これに基づいて、上述した射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に対する駆動制御を行うことができるとともに、成形サイクルにおける各動作工程の制御を行うことができる。このように、斜板角の変更により固定吐出流量を設定可能な可変吐出型油圧ポンプ36を使用すれば、ポンプ容量を所定の大きさの固定吐出流量(最大容量)に設定できるとともに、固定吐出流量を基本として吐出流量及び吐出圧力を可変できるため、容易かつ円滑な制御を行うことができる。
さらに、射出成形機Mは、図1に示す制御系41を備える。この制御系41は特定成形モードによる成形処理を実行する制御機能を備える。この特定成形モードは、予め、射出充填時に可動型2mと固定型2c間に所定の型隙間Lmが生じ、かつ良品成形可能な成形射出圧力Piと良品成形可能な成形型締力Pcを求めて設定するとともに、成形時には、成形型締力Pcにより型締装置Mcを型締し、かつ成形射出圧力Piをリミッタ圧力Psとして設定し、射出装置Miを駆動して金型2に対する樹脂Rの射出充填を行う成形方法となる。
制御系41は、成形機コントローラ本体42cと、この成形機コントローラ本体42cに付属するディスプレイ42dを有する成形機コントローラ42を備える。成形機コントローラ本体42cは、CPU及び内部メモリ等のハードウェアを内蔵するコンピュータ機能を備え、付属する内部メモリ42mには、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため制御プログラム(ソフトウェア)を含む各種プログラムを格納するプログラムエリア42mpを有するとともに、各種データ(データベース)類を記憶可能なデータエリア42mdが含まれる。したがって、プログラムエリア42mpには、前述した特定成形モードを実行するためのソフトウェアが格納されており、特定成形モード機能部Faとして機能させることができる。
また、ディスプレイ42dは、ディスプレイ本体42dd及びこのディスプレイ本体42ddに付設したタッチパネル42dtを備え、このディスプレイ本体42dd及びタッチパネル42dtは不図示の表示インタフェースを介して成形機コントローラ本体42cに接続する。したがって、このタッチパネル42dtにより各種設定操作及び選択操作等を行うことができる。
さらに、成形機コントローラ本体42cには、少なくとも型隙間Lmを検出する型隙間センサを含む各種のセンサ類43,及び各種のスイッチ類44を接続するとともに、前述したポンプ回路38及びバルブ回路37を接続する。
次に、本実施形態に係る射出成形機Mの要部の構成及び機能について、図1-図12を参照して具体的に説明する。
本実施形態に係る射出成形機Mは、上述した主要構成に加え、本発明の要部を構成する一部還流射出機能部5、即ち、射出装置Miの加熱筒3に収容したスクリュ4を前進移動させることによりスクリュ4の前端部におけるスクリュヘッド部4sの前方の樹脂Rを金型2に射出充填すると同時に、当該樹脂Rの一部となる所定量の還流樹脂Rmを、スクリュヘッド部4sの内部側及び/又はスクリュヘッド部4sの外周部側を通して当該スクリュヘッド部4sの後方におけるスクリュ本体部4m側へ還流させる一部還流射出機能部5を備える。
このため、図1に示すように、成形機コントローラ42は、一部還流射出機能部5を機能させるためのソフトウェアが格納されており、このソフトウェアにより、後述する、射出圧力追加設定機能部Fs,逆回転制御機能部Fc,逆回転設定機能部Fcs,をそれぞれ機能させることができる。
以下、本発明の要部となる一部還流射出機能部5を備える射出成形機Mについて、第一実施例及び第二実施例を挙げて説明する。
第一実施例
まず、第一実施例に係る射出成形機Mに備える一部還流射出機能部5の構成について、図1-図3を参照して説明する。
図2は、図1に示す射出成形機Mにおける射出装置Miの一部、即ち、仮想線円A部の抽出拡大図であって、第一実施例に係る一部還流射出機能部5を備えた射出装置Miの一部を示している。
図2中、4はスクリュであり、スクリュ本体部4mの周面には螺旋状のスクリュフライト4fを有するとともに、スクリュ4の前端部にはスクリュヘッド部4sを備える。例示するスクリュヘッド部4sは、前端に、円錐先端部4scを有し、この円錐先端部4scの後端面は、軸方向Dsに配した取付軸部4sjを介してスクリュ本体部4mの前端面に取り付けるとともに、この円錐先端部4scとスクリュ本体部4m間には、前後に移動可能な円筒形の逆止弁部4snを配する。
なお、一般的な射出成形機による成形モードにおける逆止弁の機能は次のようになる。まず、計量工程では、樹脂がスクリュ本体部側からスクリュヘッド部の前方へ移動する計量が行われるため、逆止弁は樹脂の移動に伴って前方の開位置に移動する。即ち、樹脂の前方への移動が許容される。また、射出工程では、計量された樹脂圧が後方に作用するため、逆止弁は後方の閉位置に移動する。これにより、樹脂の後方への逆流は逆止弁により阻止される。したがって、逆止弁の形状は円筒形となり、逆止弁の外周面は、加熱筒の内周面に当接して隙間はほぼ無い状態になるとともに、逆止弁の内周面の内方に、樹脂の流動可能な樹脂通路が遮断される。
一方、本発明の第一実施例に係る射出成形機Mでは、図2に示すように、逆止弁部4snとして、全体を円筒形に形成するとともに、この外周面上に、還流樹脂Rmを後方へ通す少なくとも一つの還流通路11…、例示の場合、周方向へ等間隔に配した複数の還流通路11…を形成した。このような還流通路11…を設けて構成すれば、スクリュヘッド部4sの変更又は追加加工等により実現できるため、容易かつ低コストに実施できるとともに、既存の射出成形機にも適用できるなど、汎用性に優れた形態として実施できる。
この場合、還流通路11は、軸方向Dsに平行となる直線溝により形成し、還流通路11の断面積の大きさは、還流樹脂Rmの量(還流量)が、金型2に射出充填する樹脂Rの容量に対して、10-60〔%〕の範囲となるように選定することが望ましい。このように選定すれば、成形品生産における生産効率と歩留率を良好にバランスさせることが可能になるため、生産効率の確保及び歩留率の確保の観点から双方の最適化を図ることができる。
なお、図2中、12は逆止弁部4snの内周面と取付軸部4sjの外周面間に設けられる樹脂通路を示すとともに、13…は、円錐先端部4scの外周面に形成した複数の樹脂通路を示す。したがって、樹脂通路13…は、周方向における等間隔位置にそれぞれ切欠き形成される。これにより、逆止弁部4snが前方の開位置へ移動し、円錐先端部4scの後端面に当接した状態においても、樹脂通路12と樹脂通路13…は連通状態が確保されるとともに、逆止弁部4snが後方の閉位置へ移動し、スクリュ本体部4mの前端面に当接すれば、樹脂通路12は遮断される。
また、還流樹脂Rmの還流量は、還流通路11…の存在に加え、成形時の射出圧力の大きさに左右されるため、第一実施例における一部還流射出機能部5では、成形機コントローラ42に、後述する成形射出圧力Pi(リミッタ圧力Ps)を変更可能な射出圧力追加設定機能部Fsを設けた。この射出圧力追加設定機能部Fsは、少なくとも、成形時の射出圧力Pisを、樹脂Rが還流しないときの成形射出圧力Piに対して所定の大きさだけ高く設定する機能を備える。
このような射出圧力追加設定機能部Fsを設ければ、還流通路11…を設けて構成する場合であっても、還流樹脂Rmの還流量を、射出圧力追加設定機能部Fsにより任意に設定できるため、還流量の設定を容易に行うことができるとともに、金型2に対して射出充填する本来の樹脂Rの量(充填量)への影響を回避することができる。したがって、還流する成形時の射出圧力Pisは、還流しないときの成形射出圧力Piによる本来の成形に影響を与えないように設定することが望ましい。
図3は、樹脂Rが還流しない場合(還流無)と所定量の還流樹脂Rmが還流する場合(還流有)の成形時における各種物理量の大きさを示したものである。図3において、射出ピーク圧Ppは、後述するリミッタ圧力Psに相当する。このため、例示は、還流無のときの射出ピーク圧Pp(リミッタ圧力Ps)が50.5〔MPa〕であるのに対して、還流有、即ち、本実施形態に係る射出成形方法では、還流無に対して、やや大きい値となる52.5〔MPa〕に設定した場合を示している。この射出ピーク圧Pp(リミッタ圧力Ps)は、射出圧力追加設定機能部Fsにより設定できる。
この結果、還流無のときの射出容量Qiは、71.2〔立方センチメートル〕に対して、還流有のときの射出容量Qiは、98.0〔立方センチメートル〕に増加した。したがって、還流率は、{(98.0-71.2)/71.2}×100=37.6〔%〕となり、10-60〔%〕の範囲を確保している。また、これに伴い、射出時におけるスクリュの射出ストロークXiは、還流無のときは、44.8〔mm〕であるのに対して、還流有のときは、61,4〔mm〕まで長くなった結果を示している。
このように、一部還流射出機能部5を構成するに際し、成形時の射出圧力Pisを、樹脂Rが還流しないときの射出圧力Piに対して所定の大きさだけ高く設定する射出圧力追加設定機能部Fsを設ければ、還流通路11…を設けて構成する場合であっても、還流樹脂Rmの還流量を、射出圧力追加設定機能部Fsにより任意に設定できるため、還流量の設定を容易に行うことができるとともに、金型2に対して射出充填する本来の樹脂Rの量(充填量)への影響を回避することができる。
次に、第一実施例に係る射出成形機Mを用いた射出成形方法の成形手順について、図1-図8を参照して説明する。
最初に、本実施形態に係る射出成形方法に用いる特定成形モードの事前設定を行う。なお、この特定成形モードの基本的な成形手順は、本出願人が既に提案した前述の特許文献1(国際公開WO2011/161899号公報)に記載の手順と同じである。
以下、事前設定の手順について説明する。まず、射出装置Mi側の射出条件となる射出圧力を、成形機コントローラ本体42cにより初期設定する。このときの射出圧力は、射出装置Miの能力(駆動力)に基づく射出圧力を設定できる。また、型締装置Mc側の型締条件となる型締力を、成形機コントローラ本体42cにより初期設定する。このときの型締力は、型締装置Mcの能力(駆動力)に基づく型締力を設定できる。
次いで、初期設定した射出圧力に対する最適化処理を行うことにより生産時に用いる成形射出圧力Piを求めるとともに、初期設定した型締力に対する最適化処理を行うことにより生産時に用いる成形型締力Pcを求める。型締力及び射出圧力の最適化は次のように行うことができる。まず、初期設定した型締力及び射出圧力を用いて試し成形を行う。型締力を大きめに設定した場合、バリは発生しないとともに、ヒケ,ソリ,ガス抜き状態に関しては不良傾向又は稍不良傾向となる。そして、型締力の大きさ及び射出圧力の大きさを段階的に変化させ、それぞれの段階で試し成形を行うことにより、固定型2cと可動型2m間の型隙間Lmの大きさを不図示の型隙間センサ(反射型光学センサ等)により取得し、ディスプレイ42dの画面における波形表示部に表示させるとともに、成形品の良否状態を観察する。
この波形表示部に表示される型隙間Lmの変化状態を図7に示す。図7は、射出開始後、to時点で金型2が開きはじめ、tp時点で最大の型隙間Lmpが生じる。この後、徐々に閉じる方向に変位し、最終的には、残留する型隙間Lmrに落ち着いて安定する。
そして、射出圧力の最適化は、射出充填時に移動型2mと固定型2c間に上述した所定の型隙間Lm(0.03-0.30〔mm〕程度)が生じ、かつ良品成形可能となることを条件にして成形射出圧力Piとすることができる。具体的には、適宜、射出圧力も変化させ、樹脂Rが金型2に対して正常に充填しなくなる手前の大きさを選択することができる。また、求めた成形射出圧力Piは、生産時の射出圧力に対するリミッタ圧力Psとして設定する。
この場合、前述したように、射出圧力追加設定機能部Fsを用いて、成形時の射出圧力Pisを、還流しないときの射出圧力Piに対して、所定の大きさだけ高く設定する。例示の場合、50.5〔MPa〕の射出圧力Piに対して、やや大きい値(52.5〔MPa〕)を成形時の射出圧力Pisとし、この射出圧力Pisをリミッタ圧力Psとして設定した。一方、これらの試し成形を、条件を変更して繰り返すことにより前述した条件を満たす型締力を選定できる。選定した型締力は、生産時に金型2で型締を行う際の成形型締力Pcとして設定する。この場合、型締力及び射出圧力の大きさは、オペレータが任意に設定してもよいし、射出成形機Mに備えるオートチューニング機能等を併用しつつ自動又は半自動により求めてもよい。
次に、生産時の具体的な処理手順について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
生産時には、まず、本実施形態に係る射出成形方法の基本的な成形方法となる特定成形モードの処理手順に基づいて樹脂Rに対する可塑化処理を行う(ステップS1)。この場合、後述する還流した所定量の還流樹脂Rmも混合するため、この可塑化処理には、可塑化促進処理が含まれる。可塑化処理時には、油圧ポンプ36の制御及びバルブ回路37の切換により、射出装置Miの計量モータ25が回転駆動される。
なお、特定成形モードでは、一般的な成形モードによる成形方法のような樹脂Rを正確に計量する計量工程は不要である。即ち、特定成形モードにおける射出処理は、キャビティ内に樹脂Rが満たされるまで射出動作を行うのみでよいため、可塑化工程における樹脂Rは多めに可塑化処理すれば足りる。換言すれば、一般的な計量工程における計量動作は行うが、正確な計量値を得るための計量制御は不要となる。特に、本実施形態に係る射出成形機では、一部還流射出機能部5による還流動作を含み、可塑化蓄積樹脂Rの残部の一部(還流樹脂Rm)、即ち、射出樹脂量Riに対して、10-60〔%〕の範囲となる還流量を還流させるため、成形品の体積(1ショット量)に対して、2倍以上となる可塑化処理量を確保することが望ましい。
図5は、可塑化処理時における樹脂Rの挙動を示している。この場合、スクリュ4が設定された回転速度及び期間にわたり回転する。スクリュ4の回転により、樹脂Rは前方へ移送されるため、図5中、矢印D1…に示すように、スクリュ本体部4m側の樹脂Rは、スクリヘッド部4sを通してこの前方へ蓄積される。即ち、スクリュ本体部4m側から前方へ樹脂Rが移動することにより、逆止弁部4snが図5に示す前方の開位置に移動するため、スクリュ本体部4m側の樹脂Rは、逆止弁部4snの内側の樹脂通路12及び円錐先端部4scの樹脂通路13…を通して円錐先端部4scの前方に至る。これにより、可塑化処理された樹脂Rは、円錐先端部4scの前方における加熱筒3内に徐々に蓄積されるとともに、蓄積に伴ってスクリュ4は後方へ移動する。
また、油圧ポンプ36の制御及びバルブ回路37の切換により、型締装置Mcの型締シリンダ27を駆動し、型締力が、設定した成形型締力Pcとなるように、金型2に対する型締を行う(ステップS2)。この後、バルブ回路37の切換及び油圧ポンプ36の制御により、射出装置Miの射出シリンダ24を駆動し、金型2に対して樹脂Rの射出処理を開始する(ステップS3)。この場合、スクリュ4は定格動作により前進させればよく、スクリュ4に対する速度制御は不要である。射出の開始により、加熱筒3内の可塑化溶融した樹脂Rは、図6中の矢印D2に示すように、射出ノズル3nを通して金型2のキャビティ内に充填される(ステップS4)。そして、樹脂Rの充填に伴い、射出圧力が上昇する(ステップS5)。この後、射出圧力がリミッタ圧力Psに達すれば、リミッタ圧力Ps(射出圧力Pis)に維持するための制御、即ち、オーバーシュートを防止する制御が行われ、射出圧力はリミッタ圧力Psに維持(制限)される(ステップS6)。したがって、射出動作では実質的な一圧制御が行われる。
一方、ステップS3における樹脂Rの射出開始に従って、図6に示すように、スクリュ4の前方に蓄積された樹脂Rは、金型2に射出充填されると同時に、一部還流射出機能部5の機能により、樹脂Rの一部となる所定量の還流樹脂Rmが、スクリュヘッド部4sの後方におけるスクリュ本体部4m側へ徐々に還流される(ステップSN)。即ち、射出時には、スクリュ4が前方へ移動するため、前方の樹脂圧により逆止弁部4snが後方の閉位置へ移動する。この結果、逆止弁部4snの内側における樹脂通路12は遮断されるが、スクリュヘッド部4sの前方に蓄積された樹脂Rの一部となる還流樹脂Rmは、射出圧力Pisにより、図6に示す矢印D3…のように、スクリュヘッド部4sの円錐先端部4scの外周面と加熱筒3の内周面間の隙間、更には、逆止弁部4snの外周面における還流通路11…を通してスクリュ本体部4m側へ還流される。
他方、金型2のキャビティ内に樹脂Rが満たされることにより、金型2は樹脂Rに加圧され、固定型2cと可動型2m間に型隙間Lm(図7)が発生する(ステップS7)。この型隙間Lmは、予め設定した成形型締力Pc及び成形射出圧力Pi(射出圧力Pis)に基づいて発生する。この場合、射出開始から予め設定した射出時間が経過すれば、金型2に対する樹脂Rの射出充填が終了するため、成形射出圧力Pi(射出圧力Pis)の印加を停止又は低下させる。これにより、実質的な射出工程が終了するため、これに伴い、還流作用も終了する(ステップS8)。
射出工程(還流作用)の終了により、樹脂Rの可塑化処理が行われる(ステップS9)。この場合、スクリュ本体部4mの前側には、還流された所定量の還流樹脂Rmが混在、即ち、スクリュ4の前方に蓄積された一次可塑化処理された樹脂Rの一部の還流樹脂Rmがスクリュ本体部4m側へ戻されて混在するため、この還流樹脂Rmが混在する樹脂Rに対する可塑化処理が行われる。したがって、可塑化の不十分な樹脂Rがスクリュ4の前方に蓄積された場合であっても再可塑化処理が行われることになり、より可塑化がより促進されることになる。
また、射出工程が終了すれば、時間の経過に伴って樹脂Rの固化が進行するとともに、この固化に伴って樹脂Rの自然圧縮が行われる(ステップS10)。即ち、樹脂Rの固化により容量が減少するため、この容量の減少に追従するように、金型2(特に可動型2m)の弾性復帰による加圧作用により自然圧縮が行われる。そして、設定した冷却時間が経過すれば、バルブ回路37の切換及び油圧ポンプ36の制御により、型締シリンダ27を駆動し、可動型2mを後退させることにより型開きを行うとともに、エジェクタシリンダ31を駆動し、可動型2mに付着した成形品の突き出し処理を行う(ステップS11,S12)。これにより、成形品が取り出され、一成形サイクルが終了する。この後、次の成形が継続する場合には、型締、射出、冷却等の処理が同様に行なわれる(ステップS13,S2…)。
図8は、本実施形態(第一実施例)に係る射出成形方法により還流した場合(還流有)の型変位量のバラツキと還流しない場合(還流無)の型変位量のバラツキの標準偏差値の比較図を示す。即ち、図8は、30個の成形品を成形した際の図7における型隙間Lmの最大値Lmpのバラツキを示したものである。これによれば、還流無の標準偏差値は、4.2〔μm〕であるのに対して、還流有の標準偏差値は、3.8〔μm〕となり、概ね、11〔%〕ほどの改善がみられた。このことは、可塑化処理された樹脂Rの均質化がより高められたことを意味し、成形品の歩留率に関してもこの改善の割合に対応した歩留率が得られた。
よって、このような第一実施例に係る射出成形機M(射出成形方法)によれば、基本的な構成(機能)として、射出装置Miの加熱筒3に収容したスクリュ4を前進移動させることによりスクリュ4の前端部におけるスクリュヘッド部4sの前方の樹脂Rを金型2に射出充填すると同時に、当該樹脂Rの一部となる所定量の還流樹脂Rmを、スクリュヘッド部4sにおける還流通路11…を通して当該スクリュヘッド部4sの後方におけるスクリュ本体部4m側へ還流させるようにしたため、最終成形品の歩留率を大幅に高めることができ、特に、従来のいわば限界的な歩留率をより高めることができる新たな射出成形方法(射出成形機)として提供することができる。この結果、大型成形品や特殊樹脂成形品等の生産における生産効率の向上及び生産コストの削減を実現可能になり、資源ロスの発生の回避及びエネルギー消費の無駄の回避にも有効に貢献できる。
特に、第一実施例に係る射出成形機M(射出成形方法)では、型締装置として少なくとも金型2内の樹脂Rの固化に伴って樹脂Rの自然圧縮が可能となる型締装置Mcを使用し、予め、射出充填時に可動型2mと固定型2c間に所定の型隙間Lmが生じ、かつ良品成形可能な成形射出圧力Piと良品成形可能な成形型締力Pcを求めて設定するとともに、成形時に、成形型締力Pcにより型締装置Mcを型締し、かつ成形射出圧力Piをリミッタ圧力Psとして設定し、射出装置Miを駆動して金型2に対する樹脂の射出充填を行う成形方法に適用したため、計量工程が存在しない特定成形モード、即ち、射出装置Mi側の状態にほとんど影響を受けない特定成形モードに対して本発明に係る射出成形方法を適用可能となり、上述した、生産効率の向上及び生産コストの削減を実現し、更に、資源ロスの発生の回避及びエネルギー消費の無駄の回避に貢献する観点から最適な形態として実施できる。
第二実施例
次に、第二実施例に係る射出成形機Mに備える一部還流射出機能部5の構成について、図9-図10を参照して説明する。
図9は、図1に示す射出成形機Mにおける射出装置Miの一部、即ち、仮想線円A部の抽出拡大図であって、第二実施例に係る一部還流射出機能部5を備えた射出装置Miの一部を示している。
第二実施例の射出装置Miは、図9に示すように、第一実施例の図2に示した射出成形機Mに備える射出装置Miと基本的な構成は同じである。第二実施例では、一部還流射出機能部5を構成するに際し、図1に示す成形機コントローラ42に、スクリュ4を逆回転させる逆回転制御機能部Fcを追加的に設けることにより、還流樹脂Rmの還流促進及び量的制御を可能にしたものである。このため、内部メモリ42mのプログラムエリア42mpには、逆回転制御機能部Fcを実現するためのソフトウェアが格納されている。一部還流射出機能部5を構成するに際し、このような逆回転制御機能部Fcを設ければ、スクリュ4自身に対する形態上の変更が不要になるため、スクリュ4に対する制御処理により還流させることが実現可能になり、更なる実施の容易化を図れるとともに、汎用性をより高めることができる。
また、この逆回転制御機能部Fcには、スクリュ4を逆回転させる期間及び回転速度を設定する逆回転設定機能部Fcsを設けた。このような逆回転設定機能部Fcsを設ければ、還流樹脂Rmの還流量を、逆回転設定機能部Fcsにより設定可能になるため、任意の還流量を容易に設定できるとともに、金型2に対して射出充填する本来の充填量への影響を回避することができる。
この場合、スクリュ4を逆回転させる期間及び回転速度を設定するに際しては、成形射出圧力Piによりスクリュ4を前進移動させ、スクリュヘッド部4sの前方の樹脂Rを金型2に射出すると同時に、当該樹脂Rの一部となる所定量の還流樹脂Rm、即ち、金型2に射出充填する樹脂Rの容量に対して、10-60〔%〕の範囲に選定した量の還流樹脂Rmが、スクリュヘッド部4sの内部側となる樹脂通路12を通して当該スクリュヘッド部4sの後方におけるスクリュ本体部4m側へ還流させることができる期間及び回転速度を設定することが望ましい。
その他、図9中、図1及び図2と同一部分には同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
次に、第二実施例に係る射出成形機Mを用いた射出成形方法の成形手順について、図1及び図10(図4)に示すフローチャートを参照して説明する。
図10に示すフローチャートは、図4に示したフローチャートにおけるステップSNにおける具体的処理を示したものであり、射出成形方法の全体の成形手順は、図4に示すフローチャートに従って行われる。即ち、第二実施例に係る射出成形機Mを用いる射出成形方法は、第一実施例における特定成形モードと同様の事前設定を行うとともに、生産時における具体的な処理手順は、図4に示したステップSNの処理内容を除き、ステップS1-S11は基本的に同じになる。このため、以下においては、図10を参照して、ステップSNにおける第二実施例に係る処理部分についてのみ詳細に説明する。
今、図4に示すフローチャートにおけるステップS3が行われている状態を想定する。ステップS3では、射出装置Miの射出シリンダ24が駆動されることにより金型2に対する樹脂Rの射出処理が開始し、スクリュ4の前方に蓄積された樹脂Rは金型2に充填される(ステップS4)。
一方、所定のタイミング、例えば、射出処理が開始したタイミング又は所定の設定時間が経過したタイミング等で、逆回転制御機能部Fcにより、スクリュ4を逆回転制御する(ステップSN1)。これにより、スクリュ4は、逆回転設定機能部Fcsで設定された回転速度により矢印Drn方向に逆回転する。この結果、スクリュヘッド部4sの前方に蓄積されたスクリュヘッド部4s側に存在する樹脂Rの一部のスクリュ本体部4m側への還流が促進される(ステップSN2)。即ち、スクリュ本体部4mの逆回転により樹脂Rを後方へ移動させる作用が働くため、スクリュヘッド部4sの前方に蓄積された樹脂Rの一部となる所定量の還流樹脂Rmは、スクリュヘッド部4sにおける還流通路11…を通してスクリュ本体部4m側へ逆流して戻されるとともに、還流の促進が図られる。
そして、逆回転設定機能部Fcsで設定された期間(還流時間)が経過したなら逆回転制御を停止する(ステップSN3,SN4)。他方、金型2側においては、射出充填により型隙間Lmが生じるとともに、射出工程が終了すれば、時間の経過に伴って樹脂Rの固化が進行するとともに、この固化に伴って樹脂Rの自然圧縮が行われるなど、第一実施例と同様の処理(挙動)が行われる(ステップS5,S6,S7…)。
よって、第二実施例に係る射出成形機Mを用いた射出成形方法によれば、一部還流射出機能部5により、第一実施例と同様の作用(機能)を行わせることができるため、第一実施例と同様の基本的効果を享受できることに加え、還流作用の促進化という第一実施例以上の効果を享受できる。
なお、図11は、第二実施例による射出成形方法を用いた際のスクリュ回転と還流量の関係を示す。このように、第二実施例による射出成形方法を用いれば、還流樹脂Rmの還流促進及び量的制御が可能になるため、スクリュ回転と還流量を比例させることができるなど、還流量を任意に制御することができる。
以上、好適実施形態(第一実施例及び第二実施例)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、図2に示した第一実施例は、円筒形の逆止弁部4snを用いたスクリュヘッド部4sを例示したが、図12(a)に示すようなボール形の逆止弁部4snを用いたスクリュヘッド部4sであってもよく、各種形態の逆止弁部4sn及びスクリュヘッド部4sを適用することができ、その構成や種類は問わない。なお、図12(a)中、51は樹脂通路を示す。その他、図12(a)において、図2と同一構成部分及び同一機能部分には同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。したがって、図12(a)は、第一実施例の変更例となり、射出成形機Mの基本的な構成及び射出成形方法の基本的な処理手順は、前述した第一実施例と同じになる。
また、本発明に係る射出成形機M及び射出成形方法は、図12(b)に示すような逆止弁部4snを有しないスクリュヘッド部4sであっても適用することが可能であり、逆止弁部4snの有無は問わない。なお、図12(b)中、52はフライト部を示す。その他、図12(b)において、図9と同一構成部分及び同一機能部分には同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。したがって、図12(b)は、第一実施例又は第二実施例の変更例となり、射出成形機Mの基本的な構成及び射出成形方法の基本的な処理手順は、前述した第一実施例又は第二実施例と同じになる。
なお、還流させる所定量の還流樹脂Rmは、金型2に射出充填する樹脂Rの容量に対して、10-60〔%〕の範囲に選定することが望ましいが、樹脂Rの種類や成形品の種類等に応じて任意の範囲を選定可能である。さらに、一部還流射出機能部5を構成するに際し、スクリュヘッド部4sに、還流樹脂Rmを還流させる少なくとも一つの還流通路11…を設ける構成を例示したが、スクリュヘッド部4sの外径を稍小さく選定したり、加熱筒3の内径を大径化したり、加熱筒3の内壁の一部に溝加工を施すなどにより構成する場合も還流通路11に含まれる概念である。また、射出圧力追加設定機能部Fsは、必須の要素となるものではなく、例えば、還流通路11…の形態によっては、必ずしも射出圧力追加設定機能部Fsを設けることを要しない。なお、所定量の還流樹脂Rmをスクリュ本体部4m側へ還流させるに際しては、スクリュヘッド部4sの内部側を通す形式,スクリュヘッド部4sの外周部側を通す形式,スクリュヘッド部4sの内部側及びスクリュヘッド部4sの外周部側の双方を通す形式のいずれであってもよい。他方、特定成形モードを使用する場合に最適であるが、一般的な成形モードを使用する射出成形機Mや射出成形方法にも同様に適用可能である。また、射出成形機Mは、油圧式射出成形機であってもよいし電動式射出成形機であってもよく、その駆動方式は問わない。