以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《実施形態1》
実施形態1に係る清掃装置100は、管群に含まれる管の表面に付着した付着物を清掃する。ここでは、清掃装置100がボイラの伝熱管を清掃する場合について説明する。図1は、清掃装置100の側面図である。図2は、清掃装置100の正面図である。図3は、清掃機構を断面図で表した、清掃装置の正面図である。
ボイラ内には、複数の管Pによって形成された管群Q(図2,3参照)が設けられている。管Pの内部には、水等の流体が流通している。管Pは、伝熱管であり、ボイラの燃焼室で発生した熱と熱交換を行う。例えば、複数の管Pは、水平方向に延びており、水平方向及び鉛直方向に配列されている。つまり、管群Qにおいては、水平方向において複数の管Pが互いに平行な状態で配列されていると共に、鉛直方向において複数の管Pが互いに平行な状態で配列されている。管Pは、導電性を有する材料で形成されている。また、管Pは、略円形断面を有する円管である。
尚、一の管Pと他の管Pとは、それぞれの端部が繋がって、1本の管を形成する場合もある。つまり、管群Qには、1本の管が水平方向に延びた後、折り返して再び水平方向に延びる場合や、1本の管が水平方向に延びた後、折り返して再び水平方向に延びることを繰り返し、全体として蛇行するように延びる場合がある。本明細書では、このような場合であっても、水平方向に延びる部分の1つ1つを1本の管Pとして捉えるものとする。そのため、実際には連続した1本の管であっても、水平方向に延びる部分が複数存在すれば、複数の管Pとして扱う。
ボイラでは、燃焼により生じた灰が管Pに付着し得る。灰の一部は、溶融してクリンカになるものもある。このように、管Pの表面には、灰やクリンカ等の付着物が付着している。ここで、付着物とは、管Pの表面に直接的に接触しているものに限られず、管Pの表面に直接的に接触しているものにさらに積み重なっているものも含む。例えば、管Pの表面に直接的に接触している灰だけでなく、その上にさらに堆積している灰も付着物に含まれる。
清掃装置100は、所定の配列方向(ここでは、水平方向)に配列された複数の管Pの上に載置される。清掃装置100は、装置本体1と、装置本体1に設けられ、管群Qに含まれる管Pの上を走行する走行機構2と、装置本体1から降下して、水平方向に配列された複数の管Pに含まれる2本の管Pの隙間から管群Q内に進入して、管Pの表面の付着物を清掃する清掃機構3と、装置本体1に設けられ、2本の管Pの一方の管Pに対する配列方向の相対位置を検出する第1センサ71aと、装置本体1に設けられ、2本の管Pの他方の管Pに対する配列方向の相対位置を検出する第2センサ71bとを備えている。清掃装置100は、清掃装置100を制御する本体コントローラ9(図1参照)をさらに備えていてもよい。清掃装置100は、2本の管Pの間に清掃機構3を降下及び上昇させ、2本の管P及びそれらの下方に並ぶ管Pに付着した付着物を清掃する。
清掃装置100は、走行機構2の走行方向の位置が第1センサ71aと異なる位置において装置本体1に設けられ、一方の管Pに対する配列方向の相対位置を検出する第3センサ71cと、走行機構2の走行方向の位置が第2センサ71bと異なる位置において装置本体1に設けられ、他方の管Pに対する配列方向の相対位置を検出する第4センサ71dとをさらに備えていてもよい。清掃装置100は、複数の管Pに載置された状態の装置本体1及び走行機構2の少なくも一方を撮像するビジョンセンサ8(図1参照)をさらに備えていてもよい。ビジョンセンサ8は、撮像装置の一例である。本体コントローラ9は、制御部の一例である。
以下、説明の便宜上、清掃装置100を基準に互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を規定する。清掃装置100の走行方向(即ち、走行機構2の走行方向)にX軸を設定し、清掃装置100の上下方向(即ち、清掃機構3の昇降方向)にZ軸を設定し、清掃装置100の幅方向(即ち、走行方向及び上下方向の両方に直交する方向)にY軸を設定する。
また、管群Qを基準に互いに直交するU軸、V軸及びW軸を規定する。管Pが延びる方向にU軸を設定し、U軸に直交し且つ水平な方向にV軸を設定し、U軸に直交し且つ鉛直な方向にW軸を設定する。
装置本体1は、XY平面上に拡がる平板状のベース11と、ベース11に設けられ、清掃機構3を収容するケース12と、清掃機構3を装置本体1から昇降させる昇降機構14とを有している。ベース11の略中央には、ベース11を貫通する開口11a(図3参照)が形成されている。ケース12は、X軸方向を長手方向とする略長方形の断面を有する角筒状に形成されている。ケース12は、ベース11の開口11aを貫通している。
走行機構2は、ベース11の下面に取り付けられた2本のクローラ21を有している。クローラ21は、X軸方向に進行するように構成されている。つまり、クローラ21の駆動輪の回転軸は、Y軸方向に延びている。2本のクローラ21は、ベース11の開口11aを挟んでY軸方向に並んでいる。
清掃機構3は、装置本体1から降下及び上昇して、走行機構2よりも下方に位置する管Pの表面の付着物を清掃する。清掃機構3は、清掃を行わないときには、ケース12内に収容されている。清掃機構3は、清掃を行うときには、ケース12から下方へ降下し、管群Q内を進行しながら、管群Qに含まれる管Pの表面を清掃する。
昇降機構14は、2基のウインチ15と、各ウインチ15に巻き上げられるワイヤ16とを有している。ウインチ15は、ベース11の上面に設置されている。2基のウインチ15は、X軸方向においてケース12を挟むように配置されている。ワイヤ16は、ウインチ15のリールに巻き掛けられている。ワイヤ16の一端は、清掃機構3に取り付けられている。つまり、清掃機構3は、2本のワイヤ16でつり下げられた状態となっており、昇降機構14によってZ軸方向に昇降させられる。
第1~第4センサ71a~71dのそれぞれは、同じ構成をしている。以下、第1~第4センサ71a~71dのそれぞれを区別しない場合には、単に「センサ71」と称する。センサ71は、配列方向におけるセンサ71と管Pとの相対位置を検出する。具体的には、センサ71は、センサ71から管Pの表面までの距離を検出する。センサ71は、ベース11の下面に取り付けられている。
ビジョンセンサ8は、複数の管Pに載置された装置本体1を上方から撮像する。そのため、ビジョンセンサ8は、装置本体1及び走行機構2の少なくも一方と走行機構2が載置された複数の管Pとが含まれる画像を取得する。
本体コントローラ9は、装置本体1に搭載されている。本体コントローラ9には、オペレータが指令を入力する際に操作する外部コントローラ98が接続されていてもよい。外部コントローラ98は、ケーブル99を介して本体コントローラ9に接続されている。オペレータは、外部コントローラ98を操作することによって、本体コントローラ9に指令を入力する。例えば、外部コントローラ98は、指令として、清掃装置100への動作指令が入力可能である。それに加えて、外部コントローラ98は、動作に関連する各種設定を入力可能であってもよい。尚、外部コントローラ98は、本体コントローラ9に無線接続されていてもよい。
以下、清掃機構3についてさらに詳細に説明する。図4は、清掃機構3をY軸方向に見た図である。図5は、スクレーパ34が収容された状態の、図4のS-S線における清掃ユニット4の断面図である。図6は、スクレーパ34が拡がった状態の、図4のS-S線における清掃ユニット4の断面図である。図7は、ガイド5が縮まった状態の清掃機構3をX軸方向に見た図である。図8は、ガイド5が拡がった状態の清掃機構3をX軸方向に見た図である。
清掃機構3は、フレーム31と、フレーム31に支持された3つの清掃ユニット4と、清掃機構3が管群Q内を進行する際に清掃機構3を進行方向に案内するガイド5とを有している。
フレーム31は、図4に示すように、概ね四角形の枠状に形成されている。フレーム31は、カバー31aが取り付けられており、これにより、全体として箱状に形成されている。フレーム31のうちX軸方向の両端に設けられ、Z軸方向に延びる一対の縦フレーム31bのそれぞれには、昇降機構14のワイヤ16が取り付けられる係止部31cが設けられている。
フレーム31のY軸方向の寸法は、2本の管Pの間隔GVよりも小さく設定されている。一方、フレーム31のX軸方向の寸法は、2本の管Pの間隔GVよりも大きく設定されている。つまり、清掃装置100のX軸方向と管群QのU軸方向とが一致する場合には、フレーム31は、2本の管Pの間に進入することができる。
3つの清掃ユニット4は、フレーム31に支持されている。3つの清掃ユニット4は、フレーム31の下部から下方に突出している。
3つの清掃ユニット4は、X軸方向に配列されている。3つの清掃ユニット4は、Z軸方向(即ち、清掃機構3の昇降方向)における位置が異なっている。具体的には、真ん中の清掃ユニット4は、両側の清掃ユニット4に比べて下方に突出している。以下、3つの清掃ユニット4をそれぞれ区別する場合には、X軸方向に並ぶ順に、「第1清掃ユニット4A」、「第2清掃ユニット4B」、「第3清掃ユニット4C」と称する。
清掃ユニット4は、Z軸と平行(即ち、清掃機構3の昇降方向と平行)な回転軸A回りに回転しながら管Pに接触して管Pの表面の付着物を除去するように構成されている。具体的には、清掃ユニット4は、図4に示すように、Z軸と平行に延びる回転軸A回りに回転する回転シャフト32と、管Pの表面に接触することによって管Pの表面の付着物を除去するスクレーパ34と、回転軸Aと同軸に設けられた円板35と、回転軸A上であって清掃ユニット4の先端に設けられた掘削部36とを有している。回転シャフト32は、フレーム31に支持されたモータ(図示省略)によって回転駆動される。清掃ユニット4は、清掃部の一例であり、スクレーパ34は、接触部の一例である。
回転シャフト32の先端部に、円板35、スクレーパ34及び掘削部36が設けられている。4枚の円板35が、回転軸Aと同軸上に等間隔で配置されている。円板35は、回転シャフト32に回転不能な状態で取り付けられている。つまり、円板35は、回転シャフト32と一体的に回転する。円板35の直径は、2本の管Pの間隔GVよりも小さく設定されている。
4枚の円板35によって3つの隙間が形成されている。図5,6に示すように、各隙間に3つのスクレーパ34が配置されている。隣り合う各2つの円板35の間には、回転軸Aと平行な揺動軸Bに沿って延びる3本の揺動シャフト37が設けられている。3本の揺動シャフト37は、回転軸Aから偏心した位置において、回転軸A回りに等間隔を空けて設けられている。各スクレーパ34は、揺動シャフト37に揺動可能な状態で連結されている。スクレーパ34は、概ね円弧状に形成されている。スクレーパ34は、例えば、アルミ合金、炭素鋼、ウレタンゴム又は真鍮で形成されている。
図5に示すように、スクレーパ34のうち揺動軸Bから遠い端部である先端部34aが回転軸Aに最も接近した状態においては、スクレーパ34は、2つの円板35の隙間内に完全に収容される。すなわち、スクレーパ34は、円板35の外周縁Eの内側に収容される。スクレーパ34が円板35内に収容された状態において、Z軸方向(即ち、清掃機構3の昇降方向)に見た場合の清掃ユニット4の形状は、2本の管Pの間隔GVを直径とする円内に収まっている。ここで、「外周縁Eの内側に収容される」とは、スクレーパ34が外周縁Eからはみ出さないことを意味している。つまり、スクレーパ34は、円板35の間に収容されたときに、外周縁Eと面一な状態であってもよい。
一方、図6に示すように、スクレーパ34は、回転シャフト32の遠心力によって先端部34aが回転軸Aから離れるように揺動し、回転軸Aを中心とする半径方向外側へ拡がる。このとき、スクレーパ34は、円板35の外周縁Eよりも外側へ突出する(即ち、外周縁Eから外側へはみ出す)。
以下、特段の断りがない限り、「半径方向」とは、回転軸Aを中心とする半径方向を意味する。
掘削部36は、図4に示すように、回転シャフト32の先端に配置されている。掘削部36は、回転シャフト32に回転不能な状態で取り付けられている。つまり、掘削部36は、回転シャフト32と一体的に回転する。掘削部36は、概ね円錐状に、即ち、先鋭な形状に形成されている。掘削部36には、掘削部36によって削った切屑を逃がすための溝が形成されている。
さらに、図4,7,8に示すように、フレーム31のうち一対の縦フレーム31bのそれぞれに、ガイド5が設けられている。ガイド5は、一対の第1ブレード51A及び第2ブレード51Bと、第1ブレード51A及び第2ブレード51Bを縦フレーム31bに連結する4つの第1~第4リンク61~64とを有している。第1ブレード51Aと第2ブレード51Bとは、左右対称な形状をしている。第1ブレード51A及び第2ブレード51Bは、Y軸方向におけるガイド5の外側の管Pと接触することによって、清掃機構3を案内する。第1ブレード51Aと第2ブレード51Bとを区別しない場合には、単に「ブレード51」と称する。第1~第4リンク61~64は全て、同じ形状をしている。第1リンク61、第2リンク62、第3リンク63及び第4リンク64のそれぞれを区別しない場合には、単に「リンク6」と称する。
各ブレード51は、Z軸方向に延びる形状をしている。各ブレード51は、Y軸方向の外側(即ち、フレーム31のY軸方向中央から遠い側)に概ねZ軸方向に延びるエッジ53を有している。エッジ53が、管Pと接触する。各ブレード51には、第1~第4リンク61~64が連結されている。
各リンク6の長手方向中央部は、縦フレーム31bに回転自在に取り付けられている。第1リンク61と第2リンク62とは、同じ回転軸Cに取り付けられている。第3リンク63と第4リンク64とは、同じ回転軸Dに取り付けられている。各リンク6の長手方向一端部(以下、「第1端部」と称する)が第1ブレード51Aに連結され、各リンク6の長手方向他端部(以下、「第2端部」と称する)が第2ブレード51Bに連結されている。
詳しくは、第1リンク61の第1端部61aは、第1ブレード51Aに形成された、Z軸方向に延びる長孔54に、回転自在且つ長孔54内を摺動可能に取り付けられている。第1リンク61の第2端部61bは、第2ブレード51Bに回転自在に取り付けられている。第2リンク62の第1端部62aは、第1ブレード51Aに回転自在に取り付けられている。第2リンク62の第2端部62bは、第2ブレード51Bに形成された、Z軸方向に延びる長孔54に、回転自在且つ長孔54内を摺動可能に取り付けられている。
同様に、第3リンク63の第1端部63aは、第1ブレード51Aに形成された、Z軸方向に延びる長孔54に、回転自在且つ長孔54内を摺動可能に取り付けられている。第3リンク63の第2端部63bは、第2ブレード51Bに回転自在に取り付けられている。第4リンク64の第1端部64aは、第1ブレード51Aに回転自在に取り付けられている。第4リンク64の第2端部64bは、第2ブレード51Bに形成された、Z軸方向に延びる長孔54に、回転自在且つ長孔54内を摺動可能に取り付けられている。
第1リンク61及び第2リンク62は、第1リンク61の第1端部61aと第2リンク62の第2端部62bとがY軸方向に離れ且つ、第1リンク61の第2端部61bと第2リンク62の第1端部62aとがY軸方向に離れるように、コイルバネ(図示省略)によって回転軸C回りに付勢されている。
同様に、第3リンク63及び第4リンク64は、第3リンク63の第1端部63aと第4リンク64の第2端部64bとがY軸方向に離れ且つ、第3リンク63の第2端部63bと第4リンク64の第1端部64aとがY軸方向に離れるように、コイルバネ(図示省略)によって回転軸D回りに付勢されている。
こうして、第1ブレード51A及び第2ブレード51Bは、Z軸方向に延びる姿勢を維持したまま、Y軸方向へ互いに離れるように付勢されている。つまり、第1ブレード51A及び第2ブレード51Bは、Y軸方向においてガイド5の外側に位置する管Pにエッジ53を押し付けるように付勢されている。
次に、このように構成された清掃機構3の清掃動作について説明する。図9は、清掃機構3が管Pを清掃している状態をX軸方向に見た図である。
清掃機構3は、3つの清掃ユニット4の配列方向が2本の管Pと平行な状態で、2本の管Pの隙間に進入していく。このとき、清掃機構3は、回転シャフト32を回転させ、2本の管P及びそれらの下方に並ぶ管Pに付着した付着物を清掃する。
回転シャフト32の回転による遠心力によってスクレーパ34が回転軸Aを中心とする半径方向外側に拡がる。ただし、十分なスペースが存在しない場合には、スクレーパ34は最大には拡がらず、可能な範囲で拡がる。つまり、スクレーパ34の半径方向外側のスペースがZ軸方向位置によって異なる場合、スクレーパ34は、半径方向外側のスペースに応じて拡がりを変化させながら降下していく。清掃機構3が管群Q内を降下する場合、図9に示すように、スクレーパ34の半径方向外側に管Pが存在しない位置、又は、スクレーパ34の半径方向外側に管Pが存在するもののスクレーパ34が届かない位置においては、スクレーパ34は、最大限拡がった状態となる(図9における第1清掃ユニット4Aの比較的上部のスクレーパ34を参照)。スクレーパ34の半径方向外側に管Pが存在し且つスクレーパ34が管Pに届く位置においては、スクレーパ34が管Pに接触する状態まで拡がる(図9における第1清掃ユニット4Aの比較的下部のスクレーパ34及び第2清掃ユニット4Bのスクレーパ34を参照)。その結果、スクレーパ34は、管Pの横を通過する際に、管Pの表面形状に倣って半径方向への拡がりを変更しながら管Pの表面に接触する。
つまり、清掃機構3の進行方向に沿って配列された(即ち、W軸方向に配列された)複数の管Pの間にスクレーパ34が入り込んで、該複数の管Pの間に存在する付着物を除去すると共に該複数の管Pの表面に接触して管Pの付着物を除去する。その結果、スクレーパ34は、管Pの表面のうち、清掃機構3が通過するスペースに面している部分だけでなく、該スペースから清掃機構3の進行方向と交差する方向(例えば、V軸方向)に離れた部分(即ち、奥まった部分)に付着した付着物も除去する。
好ましくは、スクレーパ34が最も拡がった状態におけるスクレーパ34の外接円F(図6参照)の直径は、V軸方向に並ぶ2本の管Pの軸心間の距離よりも大きく設定されている。これにより、スクレーパ34は、管Pの側方をW軸方向に通過することによって、管Pの表面のうち概ね半周部分の付着物を除去することができる。
こうして、スクレーパ34は、管Pの表面に付着した付着物を削り落としていく。
ここで、清掃機構3が2本の管Pの間を降下していく際に、清掃機構3の進行方向の前方(即ち、清掃機構3の下方)に灰等の付着物が存在している場合がある。清掃ユニット4の先端には、掘削部36が設けられている。掘削部36は、清掃機構3が降下する際に、回転シャフト32と一体的に回転している。そのため、清掃機構3が降下する際に清掃機構3の下方に存在する付着物を掘削部36が掘削していく。これにより、清掃機構3を円滑に降下させることができる。
さらに、清掃機構3が管群Q内を進行する際には、ガイド5が清掃機構3を案内している。詳しくは、ガイド5の第1ブレード51A及び第2ブレード51Bは、Y軸方向において互いに離間する方向へ付勢されている。そのため、第1ブレード51Aは、V軸方向一方側の管Pに接触し、第2ブレード51Bは、V軸方向他方側の管Pに接触する。こうして、清掃機構3は、V軸方向両側に位置する管Pに対してV軸方向位置が決められる。
清掃対象の管Pのうち最も下方の管Pを清掃ユニット4が通過するまで降下すると、降下時における清掃が完了する。
清掃機構3は、降下時だけでなく、上昇時にも管Pの清掃を実行する。清掃機構3が上昇する際にも、スクレーパ34は、管Pの表面形状に倣って半径方向への拡がりを変更しながら管Pの表面に接触し、管Pの表面に付着した付着物を削り落としていく。つまり、清掃機構3は、降下時と上昇時との両方で、管Pの表面をスクレーパ34で清掃することができる。
清掃機構3には、X軸方向に並ぶ3つの清掃ユニット4が設けられているので、清掃機構3の1回の降下及び/又は上昇によって、管PのうちU軸方向位置が異なる3箇所が清掃される。
続いて、センサ71について詳細に説明する。
各センサ71は、渦電流センサである。詳しくは、センサ71は、図示を省略するが、励磁コイルと受信コイルとを有している。励磁コイルに高周波電流が印加されることによって、対象物に渦電流が発生する。受信コイルは、この渦電流を検出する。センサ71と対象物との距離に応じて、受信コイルによって検出される渦電流の大きさが変化する。つまり、センサ71は、センサ71と対象物との距離に応じた検出電圧を取得することによって、実質的にセンサ71と対象物との距離を検出する。清掃装置100においては、対象物は管Pである。センサ71は、管Pの表面までの距離を検出する。
走行機構2は配列方向に配列された複数の管Pの上を走行するので、配列方向に配列された複数の管Pは、走行機構2が走行する走行面を形成する。このとき、センサ71は、走行面、即ち、配列方向及び管軸方向を含む平面に対して平行移動する。
図10は、センサと管との位置関係を説明する説明図である。センサ71は、励磁コイルの軸心が鉛直方向を向くように配置されている。センサ71が発生させる磁界は拡がりを有するため、センサ71は、鉛直下方を中心に或る程度拡がりを有する範囲に存在する対象物までの距離も検出する。ここでは、説明の便宜上、図10の実線の矢印で示すように、センサ71は、管Pの表面のうちセンサ71の鉛直下方に位置する点までの距離を検出するものとする。
管Pは円管なので、センサ71が配列方向へ平行移動すると、センサ71と管Pの表面との距離も変化する。詳しくは、センサ71が、一点鎖線で示すように、実線で示す位置から配列方向へ管Pの頂部へ近づく側へ移動すると、センサ71と管Pの表面との距離は短くなる。さらに、センサ71が、破線で示すように、配列方向へ移動して管Pの頂部を通り過ぎると、センサ71と管Pの表面との距離は長くなっていく。このように、センサ71と管Pの表面との距離は、配列方向における管Pとセンサ71との相対位置に応じて変化する。
図1~3に示すように、第1及び第2センサ71a,71bと第3及び第4センサ71c,71dとは、走行機構2の走行方向の位置が異なるように配置されている。具体的には、第1及び第2センサ71a,71bは、ベース11のうち走行方向における一端部に配置されている。第3及び第4センサ71c,71dは、ベース11のうち走行方向における他端部に配置されている。第1及び第2センサ71a,71bが一対となり、第3及び第4センサ71c,71dが一対となる。それぞれの対が、清掃機構3の配列方向の位置を検出する。
詳しくは、第1及び第2センサ71a,71bは、図2に示すように、走行方向に直交する方向(具体的には、清掃装置100の幅方向)の位置が異なるように配置されている。第1及び第2センサ71a,71bは、清掃機構3から幅方向の両側へ等距離だけ離れている。すなわち、幅方向において、第1センサ71aと第2センサ71bとの間の中央に清掃機構3が位置する。第3及び第4センサ71c,71dの幅方向の配置は、第1及び第2センサ71a,71bと同様である。つまり、第1センサ71aの幅方向の位置と第3センサ71cの幅方向の位置は同じであり、第2センサ71bの幅方向の位置と第4センサ71dの幅方向の位置は同じである。
第1及び第2センサ71a,71bは、走行機構2の走行方向が2本の管Pに沿う方向を向いている際に、図2に示すように、配列方向の位置が互いに異なるように配置される。同様に、第3及び第4センサ71c,71dは、走行機構2の走行方向が2本の管Pに沿う方向を向いている際に、図3に示すように、配列方向の位置が互いに異なるように配置される。
ここで、配列方向における、2つのセンサ71の測定点と2本の管Pとの寸法関係について詳細に説明する。測定点とは、管Pの表面のうち、センサ71からの距離が検出される点である。この例では、各センサ71は、主として管Pの表面のうちセンサ71の鉛直下方に位置する点までの距離を検出する。つまり、配列方向において、センサ71の位置と測定点の位置とは、同じである。以下では、説明の便宜上、センサ71の配列方向位置を測定点の配列方向位置として説明する。
図11は、第1及び第2センサ71a,71bと2本の管Pとの寸法関係を説明する説明図である。各対の2つのセンサ71の配列方向のピッチ(即ち、各対の2つのセンサ71の測定点の配列方向のピッチ)Mは、配列方向における2本の管Pの間隔GVよりも大きく、且つ、配列方向における2本の管P全体の寸法Lよりも小さく設定されている。さらに、2つのセンサ71の配列方向のピッチMは、2本の管Pの配列方向のピッチ(即ち、2本の管Pの管軸間の距離)Nと一致しない。具体的には、2つのセンサ71の配列方向のピッチMは、2本の管Pの配列方向のピッチNよりも小さい。以下、説明の便宜上、2本の管Pのうち第1センサ71aが接近する管Pを「第1管P1」と称し、2本の管Pのうち第2センサ71bが接近する管Pを「第2管P2」と称する。
2つのセンサ71のピッチMは、2本の管Pの間隔GVよりも大きく且つ2本の管P全体の寸法Lよりも小さく設定されているので、2つのセンサ71の鉛直下方に2本の管Pが位置する状況が起こり得る。例えば、第1センサ71aが第1管P1の表面までの距離S1検出し、同時に、第2センサ71bが第2管P2の表面までの距離S2を検出し得る。このとき、第3センサ71cも第1管P1の表面までの距離を検出し、同時に、第4センサ71dも第2管P2の表面までの距離を検出し得る。
さらに、2つのセンサ71の配列方向のピッチMは、2本の管Pの配列方向のピッチNと一致しないので、2つのセンサ71のそれぞれが2本の管Pの頂部までの距離を同時に検出する状況が起こり得ない。例えば、第1センサ71aが第1管P1の頂部の表面までの距離S1を検出するときには、第2センサ71bは、第2管P2の頂部以外の部分の表面までの距離S2を検出する。
この例では、清掃装置100の幅方向において、第1センサ71aと第2センサ71bとの間の中央に清掃機構3が位置するので、配列方向において清掃機構3が2本の管Pの中央に位置するときには、図11に示すように、第1及び第2センサ71a,71bは、2本の管Pのそれぞれの頂部以外の部分までの距離S1,S2を検出する。第1及び第2センサ71a,71bは、配列方向において第1管P1の軸心と第2管P2の軸心との間に配置されている。このとき、第1センサ71aから第1管P1までの距離S1と、第2センサ71bから第2管P2までの距離S2とは、略等しい。つまり、配列方向において、第1センサ71aと第2センサ71bとの中点と、2本の管Pの中点とが一致する。以下、2本の管Pに対する第1及び第2センサ71bのこの位置を「中央位置」と称する。
図12は、第1及び第2センサ71a,71bが配列方向において中央位置から第1管P1側へ変位した場合の第1及び第2センサ71a,71bと2本の管Pとの位置関係を示す説明図である。図13は、第1及び第2センサ71a,71bが配列方向において中央位置から第2管P2側へ変位した場合の第1及び第2センサ71a,71bと2本の管Pとの位置関係を示す説明図である。第1及び第2センサ71a,71bのそれぞれが検出する管Pの表面までの距離S1,S2は、前述の如く、配列方向におけるセンサ71と管Pとの相対位置に応じて変化する。ここで、第1及び第2センサ71a,71bの配列方向のピッチMは、2本の管Pの配列方向のピッチNと一致しない。そのため、配列方向において、2つのセンサ71の一方の測定点が管Pの頂部に近づく場合には、2つのセンサ71の他方の測定点は、管Pの頂部から遠ざかる。例えば、図12に示すように、第1及び第2センサ71a,71bが中央位置から配列方向の第1管P1の側へ変位すると、第1センサ71aの測定点が第1管P1の頂部に近づく一方、第2センサ71bの測定点は、第2管P2の頂部から遠ざかる。このとき、第1センサ71aから第1管P1までの距離S1は短くなる一方、第2センサ71bから第2管P2までの距離S2は長くなる。図13に示すように、第1及び第2センサ71a,71bが中央位置から配列方向の第2管P2の側へ変位すると、第1センサ71aの測定点が第1管P1の頂部から遠ざかる一方、第2センサ71bの測定点は、第2管P2の頂部へ近づく。このとき、第1センサ71aから第1管P1までの距離S1は長くなる一方、第2センサ71bから第2管P2までの距離S2は短くなる。
このように、2つのセンサ71のそれぞれが2本の管Pの頂部までの距離を同時に検出する状況が起こり得ないように2つのセンサ71を配置することによって、配列方向における2つのセンサ71と2本の管Pとの相対位置が変化すると、一方のセンサ71の検出距離と他方のセンサ71の検出距離との相対関係が変化する。つまり、第1センサ71aの検出距離S1と第2センサ71bの検出距離S2との相対関係は、配列方向における第1センサ71a及び第2センサ71bと2本の管Pとの相対位置と相関がある。
第1センサ71aの検出距離S1と第2センサ71bの検出距離S2との相対関係の一例は、第1センサ71aの検出距離S1と第2センサ71bの検出距離S2との距離差ΔS(=S1-S2)である。第1及び第2センサ71a,71bが中央位置に位置するとき、距離差ΔSは0となる。
第1及び第2センサ71a,71bが配列方向において中央位置から第1管P1の側へ変位すると、距離差ΔSは0よりも小さくなる。第1センサ71aが配列方向において第1管P1の頂部の位置に達するまでは、距離差ΔSは単調に減少する。尚、第1センサ71aが配列方向において第1管P1の頂部の位置を超えると、第1センサ71aの検出距離S1は増加に転じる。一方、第2センサ71bの第1管P1側への変位に応じて、第2センサ71bの検出距離S2の増加率はしだいに大きくなる。やがて、第2センサ71bの下方に第2管P2が存在しなくなり、第2センサ71bは、第2管P2までの距離を検出しないようになる。
一方、第1及び第2センサ71a,71bが配列方向において中央位置から第2管P2の側へ変位すると、距離差ΔSは0よりも大きくなる。第2センサ71bが配列方向において第2管P2の頂部の位置に達するまでは、距離差ΔSは単調に増加する。尚、第2センサ71bが配列方向において第2管P2の頂部の位置を超えると、第2センサ71bの検出距離S2は増加に転じる。一方、第1センサ71aの第2管P2側への変位に応じて、第1センサ71aの検出距離S1の増加率はしだいに大きくなる。やがて、第1センサ71aの下方に第1管P1が存在しなくなり、第1センサ71aは、第1管P1までの距離を検出しないようになる。
このように、第1及び第2センサ71a,71bは、配列方向に配列された2本の管Pのそれぞれの表面までの距離を検出することによって、配列方向における2本の管Pに対する第1及び第2センサ71a,71bの相対位置を検出している。第1及び第2センサ71a,71b並びに清掃機構3は、ベース11に設けられている。つまり、第1及び第2センサ71a,71bは、実質的に、配列方向における2本の管Pに対する清掃機構3の相対位置を検出する。
第3及び第4センサ71c,71dも、第1及び第2センサ71a,71bと同様に配置されている。そのため、第3及び第4センサ71c,71dも、配列方向に配列された2本の管Pのそれぞれの表面までの距離を検出することによって、配列方向における2本の管Pに対する第3及び第4センサ71c,71dの相対位置、ひいては、配列方向における2本の管Pに対する清掃機構3の相対位置を検出する。
さらに、第1及び第2センサ71a,71bと第3及び第4センサ71c,71dは、走行方向における異なる位置に配置されているので、第1~第4センサ71a~71dの検出距離に基づいて、2本の管P(詳しくは、2本の管Pの管軸)に対する走行機構2の走行方向の傾きを求めることができる。図14は、走行機構2の走行方向と2本の管Pとが平行な場合の装置本体1をZ軸方向に見た図である。図15は、走行機構2の走行方向が2本の管Pに対して傾いている場合の装置本体1をZ軸方向に見た図である。
詳しくは、図14に示すように、2本の管Pに対して走行機構2の走行方向が平行である場合には、第1及び第2センサ71a,71bによって検出される清掃機構3の配列方向における相対位置と、第3及び第4センサ71c,71dによって検出される清掃機構3の配列方向における相対位置とは一致する。一方、第1及び第2センサ71a,71bによって検出される清掃機構3の配列方向における相対位置と第3及び第4センサ71c,71dによって検出される清掃機構3の配列方向における相対位置とが異なることは、図15に示すように、走行機構2の走行方向が2本の管Pに対して傾いていることを意味する。
このように、第1~第4センサ71a~71dは、実質的に、2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きも検出する。
それに加えて、ビジョンセンサ8は、装置本体1及び走行機構2の少なくも一方と走行機構2が載置された複数の管Pとが含まれる画像を取得する。このビジョンセンサ8の画像によれば、複数の管Pに対する走行機構2の位置関係を検出することができる。詳しくは、画像に複数の管Pと走行機構2とが含まれている場合には、複数の管Pに対する走行機構2の位置関係を取得することができる。装置本体1と走行機構2との寸法及び配置によっては画像に走行機構2が含まれず、装置本体1が含まれる場合もあり得る。しかし、走行機構2は装置本体1に設けられているので、複数の管Pに対する装置本体1の位置関係が分かれば、複数の管Pに対する走行機構2の位置関係もわかる。
これら第1~第4センサ71a~71dの検出距離及びビジョンセンサ8の取得画像は、本体コントローラ9に入力される。
本体コントローラ9は、清掃機構3によって管群Qに含まれる管Pを清掃する清掃制御を実行する。その際、本体コントローラ9は、第1~第4センサ71a~71dの検出結果及びビジョンセンサ8の取得画像に基づいて、走行機構2の走行制御を実行する。例えば、本体コントローラ9は、走行機構2を作動させて清掃装置100を目標位置へ移動させ、その位置で清掃機構3及び昇降機構14を作動させる。
図16は、本体コントローラ9のブロック図である。詳しくは、本体コントローラ9は、処理部91と記憶部92とを有している。
記憶部92は、各種プログラム及び各種データを記憶する、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体である。記憶部92は、ハードディスク等の磁気ディスク、CD-ROM及びDVD等の光ディスク、又は半導体メモリによって形成されている。
処理部91は、CPU(Central Processing Unit)及び/又はDSP(Digital Signal Processor)等の各種プロセッサと、VRAM、RAM及び/又はROM等の各種半導体メモリとを有している。処理部91は、記憶部92に記憶された各種プログラムを読み出して実行することによって、清掃装置100の各部を統括的に制御し、清掃制御及び走行制御を実行するための各種機能を実現する。具体的には、処理部91は、第1傾き算出部93と、位置算出部94と、第2傾き算出部95と、走行実行部96と、清掃実行部97とを機能ブロックとして有している。
第1傾き算出部93は、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて、清掃対象となる2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾き(以下、「走行機構2の傾き」と称する)を算出する。第1傾き算出部93は、ビジョンセンサ8の取得画像の画像処理を行って、装置本体1の下方に位置する管Pと走行機構2とを抽出する。第1傾き算出部93は、抽出された管P及び走行機構2に基づいて、走行機構2の傾きが所定の第1傾斜範囲に入っているか否かを判定する。
位置算出部94は、清掃対象となる2本の管Pに対する清掃機構3の配列方向の相対位置(以下、「清掃機構3の配列方向位置」と称する)を算出する。具体的には、位置算出部94は、第1及び第2センサ71a,71bの検出距離に基づいて、清掃機構3の配列方向位置を算出する。それに加えて、位置算出部94は、第3及び第4センサ71c,71dの検出距離に基づいて清掃機構3の配列方向位置を算出する。さらに、位置算出部94は、算出された清掃機構3の配列方向位置に基づいて、清掃機構3が配列方向において2本の管Pの中央を含む所定の位置範囲に入っているか否かを判定する。清掃機構3が位置範囲に入っている場合、清掃機構3が配列方向において2本の管Pの間隔GVに内側に入っており、清掃機構3は降下して間隔GVへ進入することができる。
具体的には、位置算出部94は、第1及び第2センサ71a,71bの検出距離の距離差ΔS(以下、「第1距離差ΔS1」と称する)が以下の式(1)を満たし、且つ、第3及び第4センサ71c,71dの検出距離の距離差ΔS(以下、「第2距離差ΔS2」と称する)が以下の式(2)を満たす場合に、清掃機構3が位置範囲に入っていると判定する。
α1≦ΔS1≦β1 ・・・(1)
α2≦ΔS2≦β2 ・・・(2)
ここで、例えば、α1,α2は負の値であり、β1,β2は正の値である。つまり、式(1)は、第1距離差ΔS1が0を含む所定の範囲内に入っていることを意味する。同様に、式(2)は、第2距離差ΔS2が0を含む所定の範囲内に入っていることを意味する。
尚、この例では、第1及び第2センサ71a,71bと第3及び第4センサ71c,71dとで清掃機構3に対する配列方向の配置が同じであるので、α1とα2とは同じ値であり、β1とβ2とは同じ値である。また、配列方向において第1センサ71aと第2センサ71bとの間の中央に清掃機構3が位置するので、α1とβ1の絶対値は同じである。同様に、配列方向において第3センサ71cと第4センサ71dとの間の中央に清掃機構3が位置するので、α2とβ2の絶対値は同じである。ただし、α1、β1、α2及びβ2の値は、これらに限定されない。
第1距離差ΔS1は、清掃機構3の配列方向位置に関連するパラメータである。つまり、第1距離差ΔS1を求めることは、実質的に、清掃機構3の配列方向位置を求めることに相当する。同様に、第2距離差ΔS2は、清掃機構3の配列方向位置に関連するパラメータである。つまり、第2距離差ΔS2を求めることは、実質的に、清掃機構3の配列方向位置を求めることに相当する。
第2傾き算出部95は、走行機構2の傾きを、第1傾き算出部93よりも詳細な範囲で算出する。第2傾き算出部95は、第1~第4センサ71a~71dの検出距離に基づいて走行機構2の傾きを算出する。第2傾き算出部95は、走行機構2の傾きが、2本の管Pと走行機構2の走行方向とが平行な場合を含む所定の第2傾斜範囲に入っているか否かを判定する。第2傾斜範囲は、第1傾斜範囲よりも小さい範囲である。
第2傾き算出部95は、第1及び第2センサ71a,71bの検出距離に基づいて算出される清掃機構3の配列方向位置と、第3及び第4センサ71c,71dの検出距離に基づいて算出される清掃機構3の配列方向位置とに基づいて、走行機構2の傾きを算出する。具体的には、第2傾き算出部95は、第1距離差ΔS1及び第2距離差ΔS2を用いて、走行機構2の傾きを算出する。
第1距離差ΔS1と第2距離差ΔS2とが同じである場合には、第2傾き算出部95は、2本の管Pと走行機構2の走行方向とは平行であると判定する。第1距離差ΔS1と第2距離差ΔS2との差ΔS3(以下、「前後距離差ΔS3」と称する)が0でない場合には、第2傾き算出部95は、2本の管Pに対して走行機構2の走行方向が傾いていると判定する。走行機構2の傾きが大きいほど、前後距離差ΔS3の絶対値が大きくなる。第2傾き算出部95は、前後距離差ΔS3が以下の式(3)を満たす場合に、走行機構2の傾きが第2傾斜範囲に入っていると判定する。
γ≦ΔS3≦δ ・・・(3)
ここで、例えば、γは負の値であり、δは正の値である。つまり、式(3)は、前後距離差ΔS3が0を含む所定の範囲内に入っていることを意味する。
走行実行部96は、2本のクローラ21のそれぞれの駆動力を算出し、算出された駆動力を2本のクローラ21へ出力する。走行機構2を直進させる場合には、走行実行部96は、基本的には、2本のクローラ21の駆動力を同じにする。走行機構2を旋回させる場合には、走行実行部96は、2本のクローラ21の駆動力を異ならせる。例えば、走行実行部96は、旋回時に半径方向内側に位置するクローラ21の出力を0とし、半径方向外側に位置するクローラ21の出力を所定値に設定する。
走行実行部96は、清掃機構3が位置範囲に入り、且つ、走行機構2の傾きが第2傾斜範囲に入るように、走行機構2を制御する。具体的には、走行実行部96は、まず、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて(即ち、第1傾き算出部93の判定結果に基づいて)、走行機構2の傾きが第1傾斜範囲に入るように、2本のクローラ21の駆動力を算出し、駆動力を2本のクローラ21へ出力する。以下、走行機構2の傾きが第1傾斜範囲に入ることを「第1条件」と称する。
第1条件が満たされると、走行実行部96は、第1~第4センサ71a~71dの検出距離に基づいて(即ち、位置算出部94及び第2傾き算出部95の判定結果に基づいて)、清掃機構3が位置範囲に入り、且つ、走行機構2の傾きが第2傾斜範囲に入るように、2本のクローラ21の駆動力を算出し、駆動力を2本のクローラ21へ出力する。以下、清掃機構3が位置範囲に入り、且つ、走行機構2の傾きが第2傾斜範囲に入ることを「第2条件」と称する。
清掃実行部97は、清掃機構3による清掃制御を実行する。清掃実行部97は、走行実行部96を介して走行機構2を制御して、清掃機構3を複数の管P上の所望の清掃位置まで移動させ、清掃位置において清掃機構3を降下及び上昇させて管Pの清掃を行う。清掃実行部97は、清掃位置を変更して、清掃機構3による清掃を繰り返す。
以下、本体コントローラ9の制御について具体的に説明する。図17は、清掃制御におけるフローチャートである。
まず、清掃制御に関連する各種設定(例えば、配列方向における管Pの本数、配列方向への管Pのピッチ、走行機構2の管Pに沿った移動距離、昇降機構14による清掃機構3の降下距離等)が本体コントローラ9に設定される。この設定は、例えば、オペレータが外部コントローラ98を介して行う。
続いて、オペレータは、清掃装置100を管Pの上に載置する。オペレータは、外部コントローラ98を操作して、清掃装置100を清掃開始位置まで移動させる。例えば、清掃開始位置は、2本のクローラ21が2本の管Pと平行となり、且つ、清掃機構3が2本の管PのU軸方向の一端部に位置し、且つ、清掃機構3が管Pの配列方向(即ち、V軸方向)において2本の管Pの間に位置する位置である。
清掃装置100が清掃開始位置まで移動すると、オペレータは、外部コントローラ98を介して清掃開始の指令を入力する。
本体コントローラ9が清掃開始の指令を受け付けると(ステップS1)、処理部91は、第2条件が満たされているか否かを判定する。具体的には、走行実行部96は、まずステップS2において、第1傾き算出部93の判定結果に基づいて、第1条件が満たされているか否かを判定する。第1条件が満たされていない場合には、走行実行部96は、ステップS3において、第1傾き算出部93の判定結果に基づいて、第1条件を満たすように2本のクローラ21のそれぞれの駆動力を算出し、算出された駆動力を2本のクローラ21へ出力する。
算出された駆動力によって2本のクローラ21が走行した後、走行実行部96は、第1条件が満たされているか否かを再び判定する(ステップS2)。第1条件が満たされるまで、走行実行部96は、ステップS2,S3を繰り返す。
第1条件が満たされると、走行実行部96は、ステップS4において、位置算出部94及び第2傾き算出部95の判定結果に基づいて、第2条件が満たされているか否かを判定する。第2条件が満たされていない場合には、走行実行部96は、ステップS5において、第1傾き算出部93の判定結果に基づいて、第2条件を満たすように2本のクローラ21のそれぞれの駆動力を算出し、算出された駆動力を2本のクローラ21へ出力する。
算出された駆動力によって2本のクローラ21が走行した後、走行実行部96は、第2条件が満たされているか否かを再び判定する(ステップS4)。第2条件が満たされるまで、走行実行部96は、ステップS4,S5を繰り返す。
第2条件が満たされると、清掃実行部97は、ステップS6において、清掃機構3の回転シャフト32を回転駆動させ、この状態で清掃機構3を昇降機構14によって2本の管Pの間に降下させる。スクレーパ34は、管群Q内のスペースに応じて半径方向への拡がりを変更しながら、管Pの表面の付着物を削り落としていく。
設定された降下距離まで清掃機構3が降下すると、清掃実行部97は、昇降機構14によって清掃機構3を上昇させる。清掃機構3が上昇する際にも、スクレーパ34は、管Pの表面形状に倣って半径方向への拡がりを変更しながら管Pの表面に接触し、管Pの表面の付着物を削り落としていく。つまり、清掃機構3は、降下時と上昇時との両方で、管Pの表面をスクレーパ34で清掃する。
清掃機構3の降下及び上昇の一往復が終了すると、ステップS7において、清掃実行部97は、清掃機構3が2本の管PのU軸方向の他端部(即ち、清掃を開始した端部とは反対側の端部)に達したか否かを判定する。清掃機構3が2本の管Pの他端部に達したか否かは、清掃制御の開始時に設定された、走行機構2の管Pに沿った移動距離に基づいて判定される。尚、清掃機構3が2本の管Pの端部に達したか否かの判定は、リミットスイッチ等のセンサを用いて行ってもよい。
清掃機構3が2本の管Pの他端部に達していない場合には、ステップS8において、清掃実行部97は、第2条件が満たされているか否かの判定を行ってからの、清掃機構3の降下及び上昇の一往復を行った回数(以下、「清掃回数」と称する)が所定回数に達したか否かを判定する。
清掃機構3の降下及び上昇の回数が所定回数に達していない場合には、清掃実行部97は、ステップS9において、走行実行部96を介して、走行機構2を2本の管Pに沿ってU軸方向へ所定量だけ移動させる。所定量は、3つの清掃ユニット4のX軸方向の寸法に対応する。その後、清掃実行部97は、ステップS6において、清掃機構3を再度、降下及び上昇させる。これにより、清掃機構3は、管Pのうち、先の清掃機構3の降下及び上昇時とはU軸方向位置が異なる部分を清掃する。
こうして、清掃実行部97がステップS6~S9を繰り返すと、やがて、清掃回数が所定回数に達する。清掃回数が所定回数に達すると、走行実行部97は、ステップS2~S5の走行制御を再び実行する。
つまり、清掃機構3の降下及び上昇の一往復、及び、2本の管Pに沿った所定量の移動が所定回数行われるごとに、第2条件が満たされているか否かが確認される。第2条件が満たされていない場合には、第2条件が満たされるように清掃機構3の配列方向位置及び走行機構2の傾きが調整される。
このように、走行機構2が清掃機構3の配列方向位置及び走行機構2の傾きを定期的に調整しながら、清掃機構3のU軸方向の位置を変更して管Pの清掃を継続する。
やがて、清掃機構3が2本の管Pの他端部に達すると、ステップS7においてYESと判定される。その場合、ステップS10において、清掃実行部97は、配列方向における全ての管Pの隙間の清掃が完了したか否かを判定する。具体的には、清掃実行部97は、清掃制御の開始時に設定された、配列方向における管Pの本数に基づいて、全ての管Pの隙間の清掃が完了したか否かを判定する。
全ての管Pの隙間の清掃が完了していない場合には、ステップS11において、清掃実行部97は、走行実行部96を介して、清掃機構3を隣の管Pの隙間へ移動させる。詳しくは、走行実行部96は、2本のクローラ21を管Pと平行な状態から2本の管Pと略直交する状態まで旋回させる。そして、走行実行部96は、走行機構2に管Pを横断させ、清掃が終了した2本の管Pの隙間の隣の隙間に清掃機構3が位置するようになるまで走行機構2を移動させる。このとき、走行実行部96は、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて、清掃機構3が隣の管Pの隙間に位置するか否かを判定する。あるいは、走行実行部96は、清掃制御の開始時に設定された、配列方向への管Pのピッチに基づいて、走行機構2の移動量を決定してもよい。尚、新たな2本の管Pの一方は、先に清掃が終了した2本の管Pの一方の管Pである。
清掃機構3が隣の管Pの隙間に移動すると、走行実行部96は、2本のクローラ21を管Pと略平行な状態となるまで旋回させる。旋回後、走行実行部96は、清掃機構3が2本の管PのU軸方向の端部に位置するように走行機構2を移動させる。
隣の管Pの隙間への清掃機構3の移動が完了すると、走行実行部96は、ステップS2~S5の走行制御を実行する。
その後、清掃実行部97は、ステップS6以降の処理を実行することによって、2本の管Pの新たな隙間において前述と同様の清掃が行われる。このときにも、第2条件が満たされるように走行実行部96による走行制御が定期的に実行される。こうして、清掃装置100は、2本の管Pを変更しながら清掃を繰り返すことによって、管群Qに含まれる管Pの清掃を行う。
最終的に、全ての管Pの隙間の清掃が完了すると、清掃装置100による管群Qの清掃が終了する。
このように、清掃装置100は、第1管P1との相対距離を検出する第1センサ71aと第2管P2との相対距離を検出する第2センサ71bとを設けることによって、1つの管Pに対する清掃機構3の相対位置ではなく、第1管P1及び第2管P2に対する清掃機構3の相対位置を求めることができる。その結果、清掃機構3を、配列方向において第1管P1と第2管P2との間に適切に配置することができる。ひいては、清掃機構3を第1管P1と第2管P2との隙間に適切に進入させることができる。
ここで、第1及び第2センサ71a,71bとして渦電流センサを採用することによって、灰等の粉塵が舞う環境下であっても、第1及び第2センサ71a,71bは、管Pの表面までの距離を検出することができる。
さらには、走行機構2が載置される管Pの表面は、灰等の付着物が堆積している。そのため、レーザ等を用いた光学式のセンサでは、管Pの表面までの距離に誤差が含まれやすい。それに対し、渦電流センサであれば、管Pの表面が付着物で覆われていても、管Pの表面までの距離を精度よく検出することができる。
また、渦電流センサから発生させられる磁束は拡がりを有するので、渦電流センサは、光学式のセンサに比べて広い範囲に存在する管Pまでの距離を検出することができる。前述のように間隔を空けて配列された複数の管Pにおいて、第1及び第2センサ71a,71bが管Pまでの距離を検出できない状況を減らすことができる。
さらに、第1及び第2センサ71a,71bがそれぞれ第1及び第2管P1,P2の頂部までの距離を同時に検出しないように、第1及び第2センサ71a,71bが配置されている。例えば、第1及び第2センサ71a,71bが鉛直下方に向かって管Pの表面までの距離を検出する場合には、配列方向における第1及び第2センサ71a,71bのピッチMは、配列方向における第1及び第2管P1,P2のピッチNと一致しない(即ち、ずれている)。これにより、配列方向における第1及び第2センサ71a,71bと第1及び第2管P1,P2との相対位置の変化に応じて、第1センサ71aの検出距離S1と第2センサ71bの検出距離S2との相対関係、例えば、第1距離差ΔS1が変化する。つまり、第1センサ71aの検出距離S1と第2センサ71bの検出距離S2との相対関係に基づいて、配列方向における第1及び第2センサ71a,71bと第1及び第2管P1,P2との相対位置を求めることができる。さらには、第1センサ71aの検出距離S1と第2センサ71bの検出距離S2との大小関係(すなわち、第1距離差ΔS1の符号)によって、配列方向において第1及び第2センサ71a,71bが中央位置から第1管P1と第2管P2のどちら側にずれているかを判定することができる。
さらに、清掃装置100は、第1及び第2センサ71a,71bに加えて、走行機構2の走行方向における位置が異なる位置に配置された第3及び第4センサ71c,71dをさらに設けることによって、走行機構2の傾きを求めることができる。これにより、走行機構2の走行によって2本の管Pに沿った方向における清掃機構3の位置を変えつつ管Pの清掃を継続した場合に、清掃機構3の配列方向位置が適切な範囲から外れる可能性があるか否かを判断することができる。つまり、走行機構2の傾きを求めることによって、将来的に、清掃機構3の配列方向位置が適切な範囲から外れることを未然に防ぐことができる。
それに加えて、清掃装置100は、ビジョンセンサ8を備えることによって、走行機構2の傾きを的確に求めることができる。つまり、ビジョンセンサ8の取得画像に基づく走行機構2の傾きの判定は、2本の管Pと走行機構2又は装置本体1との全体的な画像に基づいて行われるため、概略的な走行機構2の傾きの判定に適している。一方、第1~第4センサ71a~71dの検出距離に基づく走行機構2の傾き判定は、局所的な2本の管Pに対する装置本体1の相対位置に基づいて行われるため、詳細な走行機構2の傾きの判定に適している。そこで、処理部91は、まずはビジョンセンサ8の取得画像に基づいて、走行機構2の傾きが第1傾斜範囲に入っているか否かを判定し、走行機構2の傾きが第1傾斜範囲に入っている場合に、第1~第4センサ71a~71dの検出距離に基づいて、走行機構2の傾きが第1傾斜範囲よりも小さい第2傾斜範囲に入っているか否かを判定する。こうすることで、走行機構2の傾きを的確に判定することができる。
以上のように、清掃装置100は、装置本体1と、装置本体1に設けられ、所定の配列方向に配列された複数の管Pの上を走行する走行機構2と、装置本体1から降下して、複数の管Pに含まれる2本の管Pの間に進入して、管Pの表面の付着物を清掃する清掃機構3と、装置本体1に設けられ、2本の管Pの一方の管Pである第1管P1に対する配列方向の相対位置を検出する第1センサ71aと、装置本体1に設けられ、2本の管Pの他方の管Pである第2管P2に対する配列方向の相対位置を検出する第2センサ71bとを備える。
この構成によれば、第1センサ71aにより検出される相対位置と第2センサ71bにより検出される相対位置に基づいて、配列方向における第1及び第2管P1,P2に対する装置本体1の相対位置を求めることができる。清掃機構3は装置本体1に設けられているので、結果として、配列方向における第1及び第2管P1,P2に対する清掃機構3の相対位置が求められる。このように、第1センサ71aと第2センサ71bの2つのセンサを設けることによって、1つの管Pに対する清掃機構3の相対位置ではなく、第1及び第2管P1,P2に対する清掃機構3の相対位置が求められる。これにより、清掃機構3を配列方向において第1管P1と第2管P2との間の適切な位置に配置することができる。その結果、管P上を走行する走行機構2の移動精度を向上させることができる。
また、第1センサ71aは、第1管P1に対する配列方向の相対位置として、第1管P1の表面までの距離を検出し、第2センサ71bは、第2管P2に対する配列方向の相対位置として、第2管P2の表面までの距離を検出する。
この構成によれば、第1及び第2センサ71a,71bは、測距センサである。第1及び第2センサ71a,71bは装置本体1に設けられているので、配列方向において第1及び第2管P1,P2に対する装置本体1の位置が変化すれば、第1管P1に対する第1センサ71aの配列方向における相対位置及び第2管P2に対する第2センサ71bの配列方向における相対位置も変化する。第1センサ71aの配列方向における相対位置が変化すると、第1センサ71aと第1管P1との距離が変化し、同様に、第2センサ71bの配列方向における相対位置が変化すると、第2センサ71bと第2管P2との距離も変化する。よって、第1及び第2センサ71a,71bの検出結果である検出距離に基づいて、配列方向における第1及び第2管P1,P2に対する装置本体1の相対位置、即ち、清掃機構3の配列方向位置を求めることができる。
さらに、清掃装置100は、第1及び第2センサ71a,71bによる検出結果(即ち、検出距離)に基づいて、配列方向における2本の管Pに対する清掃機構3の相対位置を求める本体コントローラ9(制御部)をさらに備える。
この構成によれば、本体コントローラ9は、第1及び第2センサ71a,71bによる検出距離に基づいて、清掃機構3の配列方向位置を求める。例えば、本体コントローラ9は、第1及び第2センサ71a,71bによる検出距離に基づいて、清掃機構3の配列方向位置が所定の範囲内に入っているか否かを求める。つまり、ユーザが、第1及び第2センサ71a,71bによる検出距離に基づいて、清掃機構3の配列方向位置を判断する必要がない。
また、清掃装置100は、走行機構2の走行方向の位置が第1センサ71aと異なる位置において装置本体1に設けられ、第1管P1に対する配列方向の相対位置を検出する第3センサ71cと、走行機構2の走行方向の位置が第2センサ71bと異なる位置において装置本体1に設けられ、第2管P2に対する配列方向の相対位置を検出する第4センサ71dとをさらに備える。
この構成によれば、第1及び第2センサ71a,71bに加えて、第3及び第4センサ71c,71dが設けられる。第1及び第2センサ71a,71bと第3及び第4センサ71c,71dとは、走行機構2の走行方向における位置が異なる位置に設けられている。そのため、走行機構2の走行方向における位置が異なる2か所において、清掃機構3の配列方向位置を求めることができる。その結果、清掃機構3の配列方向位置を精度よく求めることができる。
本体コントローラ9は、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出結果に基づいて、配列方向における2本の管Pに対する清掃機構3の相対位置を求める。
この構成によれば、本体コントローラ9によって求められる清掃機構3の配列方向位置の精度が向上する。
さらに、本体コントローラ9は、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出結果に基づいて、2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きを求める。
この構成によれば、本体コントローラ9は、清掃機構3の配列方向位置に加えて、走行機構2の傾きを求める。前述の如く、第1及び第2センサ71a,71bと第3及び第4センサ71c,71dとは、走行機構2の走行方向における位置が異なる位置に設けられている。そのため、第1及び第2センサ71a,71bによって求められる清掃機構3の配列方向位置と、第3及び第4センサ71c,71dによって求められる清掃機構3の配列方向位置とに基づいて、走行機構2の傾きを求めることができる。走行機構2の傾きがわかれば、清掃機構3の配列方向位置が適切な範囲から外れることを未然に防ぐことができる。
また、清掃装置100は、複数の管Pに載置された状態の走行機構2及び装置本体1の少なくも一方を撮像するビジョンセンサ8(撮像装置)をさらに備え、本体コントローラ9は、ビジョンセンサ8によって取得された画像に基づいて、2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きが所定の第1傾斜範囲に入っているか否かを判定すると共に、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出結果に基づいて、2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きが第1傾斜範囲よりも小さい第2傾斜範囲に入っているか否かを判定する。
この構成によれば、走行機構2の傾きは、2つの方法で判定される。比較的大きな走行機構2の傾きは、ビジョンセンサ8による取得画像に基づいて判定される。一方、比較的小さな走行機構2の傾きは、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dの検出距離に基づいて判定される。ビジョンセンサ8による取得画像に基づく判定は、2本の管Pと走行機構2又は装置本体1との全体的な画像に基づいて行われるため、概略的な走行機構2の傾きの判定に適している。一方、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dの検出距離に基づく判定は、局所的な2本の管Pに対する装置本体1の相対位置に基づいて行われるため、詳細な走行機構2の傾きの判定に適している。走行機構2の傾きの大きさに応じて、これらの判定を使い分けることによって、走行機構2の傾きを的確に判定することができる。
また、本体コントローラ9は、配列方向において清掃機構3が所定の位置範囲に入るように、第1及び第2センサ71a,71bの検出結果に基づいて走行機構2を制御する。
この構成によれば、本体コントローラ9は、第1及び第2センサ71a,71bによる検出距離に基づいて走行機構2を制御する。これにより、配列方向において清掃機構3が所定の範囲内に入るように、清掃機構3の配列方向位置が調整される。
清掃装置100は、走行機構2の走行方向の位置が第1センサ71aと異なる位置において装置本体1に設けられ、第1管P1に対する配列方向の相対位置を検出する第3センサ71cと、走行機構2の走行方向の位置が第2センサ71bと異なる位置において装置本体1に設けられ、第2管P2に対する配列方向の相対位置を検出する第4センサ71dとをさらに備え、本体コントローラ9は、配列方向において清掃機構3が所定の位置範囲に入るように、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出結果に基づいて走行機構2を制御する。
この構成によれば、第1及び第2センサ71a,71bに加えて、第3及び第4センサ71c,71dが設けられる。第1及び第2センサ71a,71bと第3及び第4センサ71c,71dとは、走行機構2の走行方向における位置が異なる位置に設けられている。そのため、走行機構2の走行方向における異なる位置において、清掃機構3の配列方向位置を判断することができる。その結果、清掃機構3の配列方向位置が精度よく調整される。
また、清掃装置100は、走行機構2の走行方向の位置が第1センサ71aと異なる位置において装置本体1に設けられ、第1管P1に対する配列方向の相対位置を検出する第3センサ71cと、走行機構2の走行方向の位置が第2センサ71bと異なる位置において装置本体1に設けられ、第2管P2に対する配列方向の相対位置を検出する第4センサ71dとをさらに備え、本体コントローラ9は、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出結果に基づいて走行機構2を制御して、2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きを調整する。
この構成によれば、本体コントローラ9は、清掃機構3の配列方向位置に加えて、走行機構2の傾きを調整する。前述の如く、第1及び第2センサ71a,71bと第3及び第4センサ71c,71dとは、走行機構2の走行方向における位置が異なる位置に設けられている。そのため、第1及び第2センサ71a,71bによって求められる清掃機構3の配列方向位置と、第3及び第4センサ71c,71dによって求められる清掃機構3の配列方向位置とに基づいて、走行機構2の傾きを求めることができる。走行機構2の傾きがわかれば、清掃機構3の配列方向位置が適切な範囲から外れることを未然に防ぐことができる。
さらに、清掃装置100は、複数の管Pに載置された状態の走行機構2及び装置本体1の少なくも一方を撮像するビジョンセンサ8をさらに備え、本体コントローラ9は、配列方向において清掃機構3が所定の位置範囲に入るように、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出結果に基づいて走行機構2を制御し、2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きが所定の第1傾斜範囲に入るように、ビジョンセンサ8によって取得された画像に基づいて走行機構2を制御し、2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きが第1傾斜範囲よりも小さい第2傾斜範囲に入るように、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出結果に基づいて走行機構2を制御する。
この構成によれば、第1及び第2センサ71a,71bの検出距離に加えて、第3及び第4センサ71c,71dの検出距離に基づいて、配列方向において清掃機構3が所定の位置範囲に入るように走行機構2が制御される。つまり、走行機構2の走行方向の異なる位置における清掃機構3の配列方向位置に基づいて、走行機構2が制御される。その結果、清掃機構3の配列方向位置が精度よく調整される。それに加え、走行機構2の傾きが、2つの方法で調整される。比較的大きな走行機構2の傾きは、ビジョンセンサ8による取得画像に基づいて調整される。一方、比較的小さな走行機構2の傾きは、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dの検出距離に基づいて調整される。ビジョンセンサ8による取得画像に基づく調整は、2本の管Pと走行機構2又は装置本体1との全体的な画像に基づいて行われるため、概略的な走行機構2の傾きの調整に適している。一方、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dの検出距離に基づく調整は、局所的な2本の管Pに対する装置本体1の相対位置に基づいて行われるため、詳細な走行機構2の傾きの調整に適している。走行機構2の傾きの大きさに応じて、これらの調整を使い分けることによって、走行機構2の傾きを的確に調整することができる。
また、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dは、管Pに発生する渦電流を検出する渦電流センサである。
この構成によれば、灰等の粉塵が舞う環境下であっても、管Pの表面が付着物で覆われた状況下であっても、管Pの表面までの距離を正確に検出することができる。
続いて、清掃装置100の変形例について説明する。
〈変形例1〉
例えば、処理部91は、記憶部92に記憶された走行モデルを用いて、2本のクローラ21の駆動力を求めてもよい。詳しくは、走行モデルは、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて求められる走行機構2の傾き、及び、第1~第4センサ71a~71dの検出距離が入力されると、第2条件を満たすような2本のクローラ21の駆動力を出力する。例えば、走行モデルは、予め機械学習等によって生成され、記憶部92に記憶されている。
図18は、変形例1に係る清掃制御のフローチャートである。変形例においては、図17のフローチャートのステップS2~S5に代えて、ステップS12において走行実行部96が走行制御を実行する。具体的には、第1傾き算出部93は、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて、走行機構2の傾きを算出する。走行実行部96は、記憶部92から走行モデルを読み出すと共に、第1~第4センサ71a~71dの検出距離及び第1傾き算出部93によって算出された走行機構2の傾きを走行モデルに入力することによって、2本のクローラ21の駆動力を求める。走行実行部96は、得られた駆動力を2本のクローラ21へ出力する。尚、第2条件が満たされている場合には、走行モデルは、2本のクローラ21の駆動力を出力しない。その場合、走行実行部96は、走行制御による清掃機構3の配列方向位置の調整及び走行機構2の傾きの調整を行わない。実質的に、走行モデルは、第2条件を満たすか否かを判定している。その他のステップは、図17のフローチャートと同じである。尚、位置算出部94及び第2傾き算出部95は、省略される。
このような走行モデルを用いることによって、第1~第4センサ71a~71dの検出距離及び第1傾き算出部93によって算出された走行機構2の傾きから、2本のクローラ21の駆動力を直接求めることができる。
尚、処理部91による2本のクローラ21の駆動力の導出は、走行モデルを用いる方法に限定されない。例えば、処理部91は、ファジィ制御(ファジィ推論)によって2本のクローラ21の駆動力を求めてもよい。記憶部92には、ファジィ制御に関するメンバシップ関数が記憶されている。メンバシップ関数は、ユーザにより調整可能であってもよい。例えば、処理部91は、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて求められる走行機構2の傾き、及び、第1~第4センサ71a~71dの検出距離を入力として、ファジィ推論によって2本のクローラ21の駆動力を出力する。尚、入力は、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて求められる走行機構2の傾き、第1距離差ΔS1、第2距離差ΔS2及び前後距離差ΔS3等であってもよい。
〈変形例2〉
走行機構2は、前述の2本のクローラ21に加えて、もう1組のクローラを有していてもよい。図19は、変形例2に係る清掃装置100の側面図である。
変形例2に係る清掃装置100の走行機構2は、2本の第2クローラ22をさらに有する。以下、説明の便宜上、クローラ21を「第1クローラ21」と称する。
第2クローラ22の走行方向は、第1クローラ21の走行方向と直交する。具体的には、第2クローラ22は、Y軸方向に進行するように構成されている。一方の第2クローラ22は、ベース11のうちX軸方向における一端部に配置されている。他方の第2クローラ22は、ベース11のうちX軸方向における他端部に配置されている。
第2クローラ22は、ベース11に対して昇降可能に構成されている。具体的には、第2クローラ22は、第1クローラ21よりも上方の退避位置(図19の二点鎖線)と、第1クローラ21よりも下方の走行位置(図19の実線)との間で昇降可能に構成されている。つまり、装置本体1がX軸方向へ移動する(即ち、管Pに沿って移動する)際には、第2クローラ22は、退避位置に位置して管Pと接触しておらず、第1クローラ21が管Pと接している。走行機構2は、第1クローラ21によってX軸方向へ走行する。一方、装置本体1がY軸方向へ移動する(即ち、管Pを横断する)際には、第2クローラ22は、走行位置に位置して管Pと接し、第1クローラ21は管Pと接触していない。走行機構2は、第2クローラ22によってY軸方向へ走行する。
この構成によれば、第2クローラ22を介して装置本体1が管Pを横断する際にも、第1及び第2センサ71a,71bは、管Pの配列方向の位置が互いに異なるように配置される。つまり、装置本体1が管Pを横断する際に、清掃機構3が配列方向において新たな管Pの隙間GVに入った否かを第1及び第2センサ71a,71bの検出距離に基づいて判定することができる。
《実施形態2》
続いて、実施形態2に係る清掃装置200について説明する。図20は、清掃装置200の側面図である。
清掃装置200は、主に清掃機構203及び昇降機構214の構成が清掃装置100の清掃機構3及び昇降機構14と異なる。以下、清掃装置200のうち清掃装置100と異なる構成を中心に説明する。清掃装置200のうち清掃装置100と同様の構成については同様の符号を付して、説明を省略する。
清掃装置200は、水平方向の所定の配列方向に並ぶ複数の管Pの上に載置される。清掃装置200は、装置本体201と、装置本体201に設けられ、管群Qに含まれる管Pの上を走行する走行機構2と、装置本体201から降下して、水平方向に配列された複数の管Pに含まれる2本の管Pの隙間から管群Q内に進入して、管Pの表面の付着物を清掃する清掃機構203と、装置本体201に設けられ、2本の管Pの一方の管Pに対する配列方向の相対位置を検出する第1センサ71aと、装置本体1に設けられ、2本の管Pの他方の管Pに対する配列方向の相対位置を検出する第2センサ71bとを備えている。清掃装置200は、清掃装置200を制御する本体コントローラ9をさらに備えていてもよい。清掃装置200は、走行機構2の走行方向の位置が第1センサ71aと異なる位置において装置本体1に設けられ、一方の管Pに対する配列方向の相対位置を検出する第3センサ71cと、走行機構2の走行方向の位置が第2センサ71bと異なる位置において装置本体1に設けられ、他方の管Pに対する配列方向の相対位置を検出する第4センサ71dとをさらに備えていてもよい。清掃装置200は、複数の管Pに載置された状態の装置本体201及び走行機構2の少なくも一方を撮像するビジョンセンサ8をさらに備えていてもよい。尚、図20においては、第2センサ71b及び第4センサ71dの図示を省略している。
清掃装置200は、走行機構2が載置された複数の管Pのうちの2本の管Pの隙間に清掃機構203を昇降機構214によって降下及び上昇させ、2本の管P及びそれらの下方に並ぶ管Pに付着した付着物を清掃する。
尚、清掃装置100の場合と同様に、説明の便宜上、清掃装置200を基準に互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を規定する。具体的には、清掃装置200の走行方向(即ち、走行機構2の走行方向)にX軸を設定し、清掃装置200の上下方向(即ち、昇降機構214の昇降方向)にZ軸を設定し、清掃装置200の幅方向(即ち、走行方向及び上下方向の両方に直交する方向)にY軸を設定する。
装置本体201は、XY平面上に拡がる平板状のベース211と、ベース211に設けられ、昇降機構214を支持するフレーム212とを有している。ベース211の略中央には、ベース211を貫通する開口(図示省略)が形成されている。
走行機構2は、ベース211の下面に取り付けられている。清掃装置200の走行機構2の構成は、清掃装置100の走行機構2の構成と概ね同じである。
清掃機構203は、液体を噴射するノズル204と、ノズルに液体を供給する供給部とを有している。ノズル204は、流体を噴射することによって管Pの表面の付着物を除去するように構成されている。この例では、噴射される液体は、水である。
ノズル204は、ノズル本体241と、複数の噴口242とを有している。ノズル本体241は、Z軸方向に延びる軸心Hを有する円柱状に形成されている。複数の噴口242は、ZX平面に対して対称に配置されている。より詳しくは、複数の噴口242は、ノズル本体241において軸心Hを中心とする周方向に等間隔で配置されている。噴口242からは、軸心Hを中心とする半径方向に液体が噴射される。つまり、ノズル204からは、軸心Hを中心に放射状に液体が噴射される。また、Z軸方向(即ち、ノズル204の昇降方向)に見た場合のノズル204の形状は、清掃装置200が載置される2本の管PのV軸方向の間隔GV(図2,3参照)を直径とする円内に収まっている。ノズル204は、清掃部の一例である。
供給部は、清掃装置200の外部に設けられた、液体の供給源と、供給源とノズル204とを接続するホース251とを有している。
昇降機構214は、いわゆるパンタグラフである。昇降機構214は、パンタグラフを構成する複数のリンク215を有している。具体的には、交差する状態で長手方向中央部が回転自在に連結された2つのリンク215を1組として、一の組の2つのリンク215の長手方向端部が別の組の2つのリンク215の長手方向端部とそれぞれ回転自在に連結されている。最下位の組の2つのリンク215の長手方向一端部(別の組のリンクが連結されていない端部)にはそれぞれ、比較的短いリンク215が回転自在に連結されている。これらの短いリンク215には、ノズル204(詳しくは、ノズル本体241)が連結されている。昇降機構214は、清掃機構203においてノズル204を支持する支持部としても機能する。
最上位の組の2つのリンク215の長手方向一端部(別の組のリンクが連結されていない端部)は、フレーム212に連結されている。フレーム212は、ベース211からZ軸方向に延びる一対の縦フレーム212aと、一対の縦フレーム212aの上端部に接続され、X軸方向に延びる横フレーム212bとを有している。最上位の組の一方のリンク215(以下、「第1リンク215A」と称する)は、回転自在且つX軸方向に摺動不能な状態で横フレーム212bに連結されている。最上位の組の他方のリンク215(以下、「第2リンク215B」と称する)は、回転自在且つX軸方向に摺動可能な状態で横フレーム212bに連結されている(図20の矢印参照)。
第2リンク215Bは、駆動部(図示省略)によって、横フレーム212bに沿ってX軸方向へ移動させられる。第2リンク215Bの長手方向一端部が第1リンク215Aの長手方向一端部から離れる方向へ移動させられると、パンタグラフ全体のZ軸方向寸法が縮まり、その結果、ノズル204が上昇する。一方、第2リンク215Bの長手方向一端部が第1リンク215Aの長手方向一端部へ近づく方向へ移動させられると、パンタグラフ全体のZ軸方向寸法が大きくなり、その結果、ノズル204が降下する。
昇降機構214のY軸方向の寸法は、2本の管Pの間隔GVよりも小さい一方、昇降機構214のX軸方向の寸法は、2本の管Pの間隔GVよりも大きい。清掃装置200のX軸方向と管群QのU軸方向とが一致する場合には、昇降機構214は、2本の管Pの間に進入することができる。
続いて、清掃装置200の動作について説明する。図21は、清掃機構203が管Pを清掃している状態をY軸方向を向いて見た図である。
清掃装置200は、2本の管Pの間に清掃機構203を降下及び上昇させることによって、2本の管P及び2本の管Pの下方に配列された管Pを清掃する。2本のクローラ21が2本の管P上に管Pと平行な状態で載り、且つ、ノズル204がV軸方向において2本の管Pの間に位置する状態から清掃が開始される。
ノズル204が昇降機構214によって2本の管Pの間に降下させられる。このとき、ノズル204からは液体が噴射されている。噴射された液体は、管Pの表面の付着物を除去する。ノズル204は、Z軸と交差する方向に液体を噴射しているので、ノズル204の進行方向に沿って配列された(即ち、W軸方向に配列された)複数の管Pの間に液体を噴射して、該複数の管Pの間に存在する付着物を除去すると共に該複数の管Pの表面の付着物を除去する。その結果、ノズル204は、管Pの表面のうち、ノズル204が通過するスペースに面している部分だけでなく、該スペースからノズル204の進行方向と交差する方向(例えば、V軸方向)に離れた部分(即ち、奥まった部分)に付着した付着物も除去する。ノズル204は、軸心Hを中心に放射状に液体を噴射するので、V軸方向においてノズル204の両側の管Pの付着物を除去する。
こうして、ノズル204は、管Pの側方をW軸方向に通過することによって、管Pの表面のうち概ね半周部分の付着物を除去していく。
ノズル204は、清掃対象の管Pのうち最も下方の管Pを通過するまで降下すると、昇降機構214によって上昇させられる。ノズル204が上昇する際にも、ノズル204は、管Pに液体を噴射して、管Pの付着物を削り落としていく。つまり、ノズル204は、降下時と上昇時との両方で管Pの表面を清掃する。
ノズル204の上下の往復が終了すると、清掃装置200は、2本の管Pに沿ってU軸方向へ所定量だけ移動する。その後、ノズル204は、再度、降下及び上昇を実行する。つまり、ノズル204は、管Pのうち、先のノズル204の降下及び上昇時とはU軸方向位置が異なる部分を清掃する。
清掃装置200は、清掃装置100と同様に、U軸方向の位置を変更しながらノズル204の降下及び上昇を繰り返していき、清掃装置200が載置された2本の管PのU軸方向の一端部から他端部までの移動を終了する。続いて、清掃装置200は、V軸方向へ移動し、ノズル204を異なる2本の管Pの間に配置させ、新たな2本の管P及びその下方の管Pに対して前述と同様の清掃を行う。こうして、清掃装置200は、清掃装置200が載置される2本の管Pを変更しながら前述の清掃を繰り返すことによって、管群Qに含まれる管Pの清掃を行う。
このように構成された清掃装置200において、第1~第4センサ71a~71dは、清掃装置100と同様に配置されている。清掃装置200は、第1管P1との相対距離を検出する第1センサ71aと第2管P2との相対距離を検出する第2センサ71bとを設けることによって、1つの管Pに対する清掃機構203の相対位置ではなく、第1管P1及び第2管P2に対する清掃機構203の相対位置を求めることができる。その結果、清掃機構203を、配列方向において第1管P1と第2管P2との間に適切に配置することができる。ひいては、清掃機構203を第1管P1と第2管P2との隙間に適切に進入させることができる。その他、配列方向における第1管P1及び第2管P2に対する清掃機構203の相対位置、及び、2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きに関し、清掃装置200は、清掃装置100と同様の作用効果を奏する。
以上のように、清掃装置200は、装置本体201と、装置本体201に設けられ、管群Qに含まれる、所定の配列方向に配列された複数の管Pの上を走行する走行機構2と、装置本体1から降下して、複数の管Pに含まれる2本の管Pの隙間から管群Q内に進入して、管Pの表面の付着物を清掃する清掃機構203と、装置本体201に設けられ、2本の管Pの一方の管Pである第1管P1に対する配列方向の相対位置を検出する第1センサ71aと、装置本体201に設けられ、2本の管Pの他方の管Pである第2管P2に対する配列方向の相対位置を検出する第2センサ71bとを備える。
この構成によれば、第1センサ71aにより検出される相対位置と第2センサ71bにより検出される相対位置に基づいて、配列方向における第1及び第2管P1,P2に対する装置本体201の相対位置を求めることができる。清掃機構203は装置本体201に設けられているので、結果として、配列方向における第1及び第2管P1,P2に対する清掃機構203の相対位置が求められる。このように、第1センサ71aと第2センサ71bの2つのセンサを設けることによって、1つの管Pに対する清掃機構203の相対位置ではなく、第1及び第2管P1,P2に対する清掃機構203の相対位置が求められる。これにより、清掃機構203を配列方向において第1管P1と第2管P2との間の適切な位置に配置することができる。その結果、管P上を走行する走行機構2の移動精度を向上させることができる。
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
例えば、走行機構2又は昇降機構14,214の構成は、前述の構成に限られるものではない。例えば、走行機構2は、クローラではなく、車輪であってもよい。昇降機構14は、ウインチではなく、ラックアンドピニオンやパンタグラフであってもよい。昇降機構214は、パンタグラフではなく、ウインチやラックアンドピニオンであってもよい。
清掃機構3が備える清掃ユニット4の個数は、3個に限られるものではない。清掃ユニット4は、1個、2個又は4個以上であってもよい。清掃機構3の昇降方向、即ち、Z軸方向における各清掃ユニット4の位置は、前述の位置に限られるものではない。例えば、3個の清掃ユニット4のZ軸方向の位置は、同じであってもよい。あるいは、3個の清掃ユニット4のZ軸方向の位置は、全て異なっていてもよい。
清掃ユニット4の構成は、前述の構成に限られるものではない。例えば、清掃ユニット4が有するスクレーパ34の個数は、3個に限られず、1個、2個又は4個以上であってもよい。清掃ユニット4は、円板35又は掘削部36を有していなくてもよい。前述の清掃ユニット4は、4枚の円板35によって形成される3つの隙間のそれぞれに複数のスクレーパ34が設けられている。つまり、3組のスクレーパ34が設けられている。しかし、スクレーパ34の組数は、1組、2組又は4組以上であってもよい。
スクレーパ34の形状は、円弧状でなく、例えば直線状であってもよい。スクレーパ34は、揺動する構成ではなく、摺動する構成であってもよい。例えば、スクレーパ34に長孔が形成され、2つの円板35の間に設けられたピンが長孔に挿通されるようにスクレーパ34がピンに連結される構成であってもよい。この構成の場合、スクレーパ34は、長孔内をピンが相対的に移動するようにピンに対して摺動可能である。スクレーパ34が摺動可能な構成であれば、回転シャフト32の遠心力がスクレーパ34に作用すると、スクレーパ34は遠心力に従って摺動し、半径方向外側へ拡がる。
清掃機構3は、ガイド5を備えているが、ガイド5を備えていなくてもよい。ガイド5の構成は、前述の構成に限られるものではない。ガイド5は、リンク6を有していなくてもよい。例えば、ブレード51は、フレーム31に対して摺動可能に連結され、且つ、バネ等でY軸方向外側へ付勢された構成であってもよい。
ノズル204の構成は、前述の構成に限られるものではない。噴口242の個数及び配置は、任意に設定することができる。また、清掃機構203は、ノズル204を複数有していてもよい。複数のノズル204が設けられている場合、複数のノズル204のZ軸方向位置は、一致していなくてもよい。その場合、清掃装置100と同様に、走行機構2が2本の管Pに沿って走行する際には複数のノズル204が2本の管Pの間に進入しており、走行機構2が旋回する際には最も下方に位置するノズル204だけが2本の管Pの間に進入していてもよい。
また、清掃機構203のノズル204から噴射する物質は、液体に限られない。例えば、ノズル204は、空気等の気体や、管Pの清掃に適した粒体を噴射してもよい。ここで、「粒体」とは、粉のような微粒子も含む。例えば、「粒体」は、金属又はセラミック等の微小な球体である。
センサ71の個数は、4個に限定されない。例えば、第3及び第4センサ71c,71dが省略されてもよい。あるいは、さらにもう2つのセンサ71が設けられてもよい。
センサ71は、渦電流センサに限定されない。レーザ等を用いた光学式センサ又は超音波を用いた超音波センサであってもよい。
配列方向の位置が異なる2つのセンサ71(第1及び第2センサ71a,71b又は第3及び第4センサ71c,71d)の配置は、前述の配置に限定されない。例えば、2つのセンサ71の配列方向のピッチMは、2本の管Pの配列方向のピッチNよりも大きくてもよい。このような構成であっても、配列方向における第1及び第2センサ71a,71bと第1及び第2管P1,P2との相対位置の変化に応じて、第1センサ71aの検出距離S1と第2センサ71bの検出距離S2との相対関係、例えば、第1距離差ΔS1が変化する。
センサ71の向きは、鉛直下方に限定されない。センサ71は、斜め下方を向くように配置されていてもよい。
配列方向の位置が異なる2つのセンサ71は、走行方向における位置がそれぞれ異なっていてもよい。
ビジョンセンサ8は、省略されてもよい。清掃装置100,200は、走行機構2の傾きを調整しなくてもよい。清掃機構3の配列方向位置が位置範囲から外れてしまうことを未然に防止することができなくなるものの、第1及び第2センサ71a,71bの検出距離に基づいて清掃機構3の配列方向位置を調整することによって、清掃機構3を2つの管Pの隙間に適切に進入させることができる。ただし、配列方向の位置が異なる2つのセンサ71を、走行方向の位置が異なる複数個所に設けることによって、それらのセンサ71の検出距離に基づいて走行機構2の傾きを求めることができる。その場合には、清掃装置100,200は、走行機構2の傾きを調整する。
また、4個のセンサ71とビジョンセンサ8との組み合わせではなく、2個のセンサ71(例えば、第1及び第2センサ71a,71b)とビジョンセンサ8との組み合わせであってもよい。この場合、2個のセンサ71の検出距離に基づいて清掃機構3の配列方向位置が判定され、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて走行機構2の傾きが判定される。
また、第1条件及び第2条件は、任意に設定し得る。例えば、第1条件及び第2条件は、段階的に設定された条件であり、第2条件の方が第1条件よりも厳しい条件である。あるいは、第1条件は、ビジョンセンサ8の検出結果に基づいて判定される条件であり、第2条件は、第1~第4センサ71a~71dの検出結果に基づいて判定される条件である。
第2条件を判定する前に、第1~第4センサ71a~71dの全てが管Pまでの距離を検出できるか否かが判定されてもよい。第1~第4センサ71a~71dのうちいずれかのセンサが管Pまでの距離を検出できない場合、第2条件が満たされているか否かを判定することができない。第1~第4センサ71a~71dの全てが管Pまでの距離を検出しているか否かは、第1~第4センサ71a~71dのそれぞれの検出結果が適切な範囲(即ち、センサ71が管Pまでの距離を検出できている場合の出力範囲)に入っているか、あるいは、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて判定された走行機構2又は清掃機構3の位置が2本の管Pに対して適切な位置範囲(即ち、第1~第4センサ71a~71dが管Pまでの距離を検出できる位置範囲)に入っているかによって判定され得る。第1~第4センサ71a~71dのうちいずれかのセンサが管Pまでの距離を検出できない場合には、処理部91は、ビジョンセンサ8の取得画像に基づいて判定された走行機構2又は清掃機構3の位置が2本の管Pに対して適切な位置範囲に入るように2本のクローラ21の駆動力を算出して、清掃機構3の位置を調整してもよい。あるいは、本体コントローラ9は、警報を発して、ユーザへ手動による清掃機構3の位置の調整を促してもよい。
第1条件及び第2条件が満たされるように走行機構2の駆動力の調整を行うタイミングは、2本の管Pに沿った所定量の移動が所定回数行われたとき(即ち、ステップS8の判定)に限定されない。例えば、走行機構2の移動時に並行して、第1条件及び第2条件が満たされているかを監視して、第1条件及び第2条件が満たされるように走行機構2の駆動力を調整してもよい。
本体コントローラ9は、第1条件及び第2条件が満たされるように走行機構2を制御しているが、これに限定されない。本体コントローラ9は、配列方向における2本の管Pに対する清掃機構3の相対位置等を求めるだけで、走行機構2を制御しなくてもよい。例えば、本体コントローラ9は、第1及び第2センサ71a,71bによる検出距離、若しくは、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出距離に基づいて配列方向における2本の管Pに対する清掃機構3の相対位置を求め、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出結果に基づいて2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きを求め、又は、ビジョンセンサ8によって取得された画像に基づいて2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きを求め、求めた結果を出力(例えば、表示)してもよい。あるいは、本体コントローラ9は、ビジョンセンサ8によって取得された画像に基づいて2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きが第1傾斜範囲に入っているか否かを判定すると共に、第1、第2、第3及び第4センサ71a,71b,71c,71dによる検出結果に基づいて2本の管Pに対する走行機構2の走行方向の傾きが第2傾斜範囲に入っているか否かを判定してもよい。オペレータは、本体コントローラ9によって求められた結果又は判定され結果に基づいて、外部コントローラ98を操作して走行機構2を操縦してもよい。
管Pは、円管に限定されない。センサ71が渦電流センサである場合には、角管であっても、配列方向におけるセンサ71と管Pとの相対位置に応じて、管Pのうちセンサ71の検出範囲に存在する部分の大きさが変化するので、センサ71によって管Pに対する配列方向の相対位置を検出することができる。センサ71が渦電流センサでない場合であっても、(すなわち、センサ71が光学式センサ等であっても)、管の表面から走行機構2の走行面までの距離が配列方向の位置に応じて変化する形状の管であれば、配列方向におけるセンサ71と管Pとの相対位置に応じてセンサ71から管Pの表面までの距離が変化する。そのため、センサ71によって管Pに対する配列方向の相対位置を検出することができる。