JP2022046385A - ハニカム構造による地盤改良工法、地盤改良体 - Google Patents

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Abstract

【課題】軟弱地盤の強化や液状化対策を目的とした地盤改良において、対象領域全体にわたって均一に(または格子状に)施工する従来工法とほぼ同等の改良効果を持ち、地盤の改良域を従来工法より低減し、工期・工費を削減できる地盤改良工法ならびに地盤改良体を提供する。【解決手段】高圧噴射攪拌工法により、平面視で改良体中心に位置する円形部(シャフト部)と前記円形部より3方向に伸びる羽根部(ブレード部)を持つ柱状改良体を一連の噴射で造成する柱状改良体造成工程を含み、前記柱状改良体造成工程を繰り返して、複数の柱状改良体が一定間隔で配置されるように造成するとともに、隣り合う柱状改良体が羽根部を介して連結するように複数の柱状改良体を造成することによって、地盤中にハニカム構造の地盤改良体を造成する。【選択図】図5

Description

本発明は、軟弱地盤の強化や液状化対策を目的として、対象地盤に硬化材を高圧注入する高圧噴射攪拌工法を利用して、地盤中に地盤改良体を造成する方法と、複数本の地盤改良体の組み合わせからなる造成体を構築する方法に関するものである。
高圧噴射攪拌工法は、一般に地盤中で注入ロッドの先端に取り付けられた先端噴射装置から硬化材及び圧縮空気を水平方向に噴射することにより地盤を切削して土と硬化材を混合攪拌する地盤改良工法である。通常は、地盤に挿入した状態の注入ロッドを回転させ、一定時間ごとに数cmずつ段階的に引き上げることにより略円柱状の大径改良体を造成する。従来、地盤の覆工支保や強化支保、或いは止水を目的とする地盤改良体造成のために用いられることが多く、複数の略円柱状の改良体を高密度に平面配置することにより造成体を構築する手法がとられている。また近年、軟弱地盤の強化や液状化対策を目的とした地盤改良への適用が増加しており、高密度な平面配置に加え、大径改良体を連結して格子状に配置する手法等がとられるようになっている。
改良体を格子状や壁状に配置する場合により効率的に配置することを目的とし、従来の略円柱状の改良体に加え、噴射された硬化材噴流の到達距離を制御して平面形状が円形以外の例えば扇形を組み合わせたような形状の地盤改良体を造成する工法が実用化されている。
特許第5904460号公報 特許第5954810号公報
高圧噴射攪拌工法を用いた地盤改良では、個々の平面的な形状が円形、扇形を組み合わせた形状に関わらず、通常、図1に示すような改良体のラップ配置による全面改良(100%改良)、接点配置による高改良率改良が用いられている。特に前者の配置は、止水効果が必要な地盤掘削に伴う掘削底盤における地盤改良体の構築や地盤改良による遮水壁の構築、高い改良強度が必要となるブロック状の地盤改良などに採用されている。しかしながら、軟弱地盤の強化や液状化対策を地盤改良の目的とした場合、必ずしも対象領域全体にわたって高改良率で地盤改良体を造成することが必要でなく、改良目的や設計上必要な改良地盤特性に適した、より効率的かつ経済的な地盤改良工法、すなわち改良率を低く抑えた地盤改良工法が求められている。
高圧噴射攪拌工法において、改良率を低く抑える方法として個々の改良体を離して配置する方法があるが、鉛直応力に対する支持力は増加するが、群杭のような効果となり改良域に一体的な挙動を期待することはできない。また、鉛直応力以外の応力、例えば水平応力に対して地盤を拘束する効果がなく、十分な抵抗力を発揮することができない。対象地盤の拘束力を増加させ鉛直方向だけでなく水平方向の応力にも対応するためには、それぞれの改良体を連結させる方が高い改良効果を発揮することができる。改良体を連結し平面上に配置する方法としては、単純な規則に従った配置を行うことが最も効率的であり、代表的なものに正多角形による平面充填がある。この平面充填が可能な図形には、図2に示すとおり、三角形、四角形、六角形があるが、正六角形による平面充填は外力に対して粘り強い挙動をし、かつ正六角形が最も周が短い。すなわち、正六角形による平面充填が最も効率的であると言える。改良体の配置と改良効果の関係を表1に示す。平面充填は、ラップ配置や接点配置に比べて地盤の拘束効果や外力に対する抵抗力などが劣っているが、改良率を低く抑えることができることが特徴である。
Figure 2022046385000002
正六角形となる平面充填を構築しハニカム構造(蜂の巣状)の地盤改良体を造成する場合、従来の高圧噴射攪拌工法で一般的に用いられている円柱形の改良体を組み合わせる方法では例えば図3に示すような配置になると考えられ、1辺の長さが2mの正六角形を構築するためには直径1.2mの円が12個必要である。(平面充填として配置した場合は、5個の円が受け持っている。)多くの本数の改良体造成が必要となり、高圧噴射攪拌工法において施工能率が施工本数と反比例することを当てはめると、必ずしも効率的かつ経済的な地盤改良工法とならず、これが大きな問題となる。
上述した課題に鑑み、本発明の目的は、地中にハニカム構造(蜂の巣状)の地盤改良体を効果的に配置することにより、改良目的に適した効率的かつ経済的な地盤改良工法を実現することにある。
また、本発明の他の目的は、改良目的に適した効率的かつ経済的な構造の地盤改良体を提供することにある。
本発明は、上記の課題に対応してこれを解決するため、効率的にハニカム構造の地盤改良体を構築するためのユニットとして「三ツ矢」形、すなわち平面的に見て中心の円形部(シャフト部)と中心より3方向に伸びる羽根部(ブレード部)を持つ柱状改良体を造成し、複数の柱状改良体をハニカム構造をなすように連結することで、例えば軟弱地盤中にハニカム構造の地盤改良体を効率的に構築するものである。具体的には、削孔等により地盤中に挿入した先端噴射装置から地盤改良材(硬化材となる固化材スラリー)及び圧縮空気を高圧で噴射して改良体を造成する高圧噴射攪拌工法を用いて、平面的に見て中心の円形部と中心より3方向(例えば、時計の12時方向、4時方向、8時方向)に伸びる羽根部を持つ柱状改良体を一連の噴射により短時間で造成し、一定間隔で配置した複数の柱状改良体を連結することで、少ない改良体本数により地盤中にハニカム構造の地盤改良体を構築することを可能にする低改良率の地盤改良工法である。一例として、柱状改良体の平面形状を図5に、構築するハニカム構造の地盤改良体の平面形状を図6に示す。柱状改良体は、ハニカム構造の地盤改良体の一部分(1ユニット)を構成するものである。
高圧噴射攪拌工法において、造成される改良体の大きさは、硬化材及び圧縮空気による地盤の切削及び混合攪拌が可能な距離で決まる。この切削及び混合攪拌が可能な距離は、対象となる地盤の強度特性に加えて、硬化材及び圧縮空気の噴射仕様(単位時間当たりの噴射量、噴射圧力)と噴射時間(噴射流の移動時間、噴射回数)により決まり、高圧噴射攪拌工法の実用段階では、通常、それぞれの噴射仕様と噴射時間を設定して標準的な改良体の大きさ(改良体造成径)を定めている。また、[先行技術文献]で示した扇形を組み合わせた形状の改良体を造成する特許第5904460号及び特許第5954810号による地盤改良工法では、大きな扇形部分を低速回転(噴射時間を長くすること)で造成し、小さな扇形部分を高速回転(噴射時間を短くすること)で造成する方法をとっている。なお、地盤中における実大の噴射による実験結果として、回転数を15rpm以上(回転周期4秒以下)で改良体の造成径が著しく減少することが報告されている。
本発明では、大きな切削距離が必要な3方向に伸びる羽根部の造成では回転の一時停止または例えば毎分6回転以下の低速回転とすることで噴射時間を長くとり、径の小さい円形部の造成では例えば毎分20回転以上の高速回転とすることで噴射時間を極端に短くし、一連の注入ロッドの回転により「三ツ矢」形の平面形状を形成し、この回転に併せて注入ロッドを上昇させることで、断面「三ツ矢」形で柱状の地盤改良体の造成を可能にしている。円形部は、注入ロッドの回転を120°、240°、480°、600°など120°の倍数で、かつ360°の倍数を除く回転角で行うことにより効率よく造成することができる。ただし、羽根部の造成で低速回転とする場合は、上記の値から羽根部の回転角を引いた角度にする。
なお、円形部の造成径をより小さく設定する場合は、さらに回転速度を高め毎分30回転以上に設定することが望ましい。
この「三ツ矢」形の改良体は、従来の施工技術による2工程、すなわち異なる噴射仕様により、工程1で注入ロッドの揺動施工による羽根部の造成、工程2で注入ロッドの回転施工による円形部の造成を行うことで造成が可能である。しかし、2工程になることで施工能率は大きく低下するため、一連の施工による施工性の向上度は非常に高いと考えられる。
造成径3m以上の大径の改良体造成が可能な代表的な高圧噴射攪拌工法では、噴射口のノズルは通常直径3~6mmであるが、噴射口から離れるに従って拡散し噴射流の径が大きくなり、通常は、噴射口から2m離れた位置で噴射流の径が20cm程度となる。地盤を拘束することができる強度を持つハニカム構造の構築において、羽根部にある程度の厚さが必要になるため、噴射口の回転方向の移動を伴う噴射が効果的である。つまり、柱状改良体の羽根部の造成時において、注入ロッドは低速で回転させたままでもよく、或いは、回転を一時停止させてもよいが、羽根部にある程度の厚さを持たせることを考慮する場合には、羽根部の造成時において地盤改良材を高圧噴射しながら注入ロッドを回転させることが望ましい。
なお、回転角度を大きくすると羽根部の先端部の広がりが必要以上に大きくなり、改良率が高くなることで経済的な優位性が低くなるおそれがある。本発明ではこの問題を以下のような方法で解決している。
まず、中心部付近に円柱状の改良体を造成することにより中心部付近の羽根部の薄さを補う。上記の特性を持つ噴射流において円形部の直径を150cmとした場合、羽根部の根元に当たる中心から75cm離れた位置の噴射流の径(羽根部の厚さ)は、7.5cmになる。さらに、先端噴射装置に装着する3つの噴射口の位置を中心軸から左右に偏心させ、それぞれの噴射口による3回の噴射により羽根部の改良体を造成する。これにより噴射流の軸が左右に振れた3本となり、偏心距離をそれぞれ2cmとした場合、中心から75cm離れた位置の羽根部の厚さは4cm増加し11.5cmとなる。加えて、羽根部の造成時間で注入ロッドを10°回転させれば、羽根部の根元の厚さは25cmにすることができる。これらの根拠となる模式図を図7と図8に、1ステップ当りの造成フローを図9に、羽根部厚さ拡大の検討結果を表2に示す。なお、実施工では、噴射流による地盤の浸食により改良体の厚さはさらに数cm増加する。
Figure 2022046385000003
本発明では、3方向の羽根部の造成を同時に行うために先端噴射装置に噴射方向の異なる3つの噴射口を有している。これは単位時間当たりの噴射量アップにつながり、所定の量の硬化材を注入するという側面においては造成時間を短縮することができる。しかし、羽根部の噴射による地盤の切削及び混合攪拌において、大きなボリュームを持つ円柱状の改良体に比べて、限られた厚さの空間となる羽根部の改良体では硬化材と切削した地盤の土粒子の混合物の混合攪拌が不十分になる可能性がある。なお、本発明では1ヶ所の羽根部造成を3回の噴射により行う仕様となるが、一般的な高圧噴射攪拌工法が2回噴射仕様を採用していることを考慮すると、3回目の噴射に切削力向上の期待は必要ないと考えられる。これに対して、3つの噴射口の1つを羽根部改良体内の混合攪拌用とすることで改良体の均一性を高めることができる。例えば、混合攪拌用の噴射口を噴射流の拡がり角度を変えることで混合攪拌能力に長けた構造にする、噴射方向を水平より10°程度下向きにすることで噴射流の流れが側面から見てより弧を描くようになり、混合攪拌効率を高めることができる。
噴射流と混合攪拌のイメージを図10に示す。
本発明は、以上のような構成により、軟弱地盤などの対象地盤中にハニカム構造の地盤改良体を少ない改良体本数で短時間に配置することができ、この結果、低改良率の地盤改良により、軟弱地盤の強化や液状化対策に必要な地盤改良、すなわち地盤の拘束力を高めるとともに地盤支持力を増加させることを可能にしている。また、従来の高圧噴射攪拌工法に比べて効率的で経済性の高い地盤改良を提供することを可能にしている。
ハニカム構造の地盤改良体の効率的な構築方法について、従来技術である円形改良体を組み合わせたもの、ここでは改良体造成径1.2mの円柱状の改良体により1辺の長さが2mのハニカム構造を構築する方法(図3)と比較した結果を図4に示す。両者に改良体有効厚さや改良率の違いはあるが、「三ツ矢」形の改良体1本の施工で円形改良体5本の組合せと同等の寸法のハニカム構造を構築することが可能であり、施工本数の減少により大幅な施工能率アップ(施工時間の短縮)が可能となる。
また、回転の一時停止または低速回転での噴射による羽根部の造成と高速回転を伴う噴射による円形部の造成の連続的な一連の噴射(絶え間ない一連の噴射)による「三ツ矢」形の改良体の造成は、従来の施工技術による2工程、すなわち異なる噴射仕様により、工程1で注入ロッドの揺動施工による羽根部の造成、工程2で注入ロッドの回転施工による円形部の造成を行う施工に比べて、大幅な施工能率アップ(作業の簡略化と施工時間の短縮)が可能となる。
高速回転による円形部(シャフト部)があることにより、噴射口近くで羽根部の有効厚さが薄くなることを防ぐことができる。
羽根部の造成において、噴射口を左右に偏心させた構造をもつ先端噴射装置による施工は、施工仕様を変えることなく羽根部の有効厚さを数cm厚くすることを可能にしている。
3つの噴射口のうち1つを混合攪拌用とすることで、地盤切削性能をほとんど低下させることなく混合攪拌性能の向上を可能にしている。
高圧噴射攪拌工法の標準的な改良体配置 平面充填が可能な図形 円柱形の改良体による正六角形状配置(例) ハニカム構造のユニット改良体の比較 「三ツ矢」の柱状改良体の平面形状(例) 構築するハニカム構造の地盤改良体の平面形状(例) 先端噴射装置の噴射口位置と噴射流の到達範囲 先端噴射装置の噴射口位置(図7の拡大図) 一つの羽根部の1ステップ当りの造成フロー 噴射流と混合攪拌のイメージ
以下、本発明の実施形態の具体例について説明する。
(ハニカム構造の地盤改良体)
はじめに、本発明の地盤改良工法により造成するハニカム構造の地盤改良体について説明する。ハニカム構造の地盤改良体を図6に例示する。また、ハニカム構造の地盤改良体の1ユニットをなす柱状改良体を図5に例示する。
ハニカム構造の地盤改良体は、一定間隔で配置された複数の柱状改良体が地盤中でハニカム構造をなすように連結したもので構成される。ハニカム構造の地盤改良体の1ユニットをなす柱状改良体は、その周囲にある他の柱状改良体と連結している。
ハニカム構造の地盤改良体の1ユニットを構成する柱状改良体は、平面視で略「三ツ矢」形状になるように造成されている。
平面視「三ツ矢」形の各柱状改良体は、図5に例示するように、
・平面視で柱状改良体の中心に位置する円形部(シャフト部)と、
・円形部より3方向に伸びる羽根部(ブレード部)を
有している。
円形部は平面視で略円形状であって、羽根部の厚みよりも大きな径を有している。
3方向に伸びる羽根部は、本実施形態では、平面視で略等角度間隔(略120°間隔)で形成されている。なお、3方向に伸びる羽根部の間隔は、必ずしも120°に限定されるものではない。すなわち、造成する地盤改良体(複数の柱状改良体が連結したもの)が平面視で実質的にハニカム構造を構成するものであれば、3方向に伸びる羽根部の間隔(角度)は特に限定されない。
ハニカム構造の地盤改良体を構成する各柱状改良体は、その羽根部の先端において、隣に位置する他の柱状改良体が具備する羽根部の先端に連結している。連結している部分において、一の羽根部は他の羽根部と一体化している。
(地盤改良工法に用いる先端噴射装置)
高圧噴射攪拌工法に用いる先端噴射装置は、地盤中に挿入する注入ロッドの先端に装着して用いる装置である。
この先端噴射装置は、図7に例示するように、平面的に見て中心より角度を略3等分した3方向に配置した噴射口A,B,Cを有している。
先端噴射装置に配置する3つの噴射口のうち、噴射口Cは、中心軸c上に配置した構造となっている。噴射口Aは、中心軸aより右に偏心して配置した構造となっている。噴射口Bは、中心軸bより左に偏心して配置した構造となっている。
つまり、噴射口Aは、その噴射流の中心が、中心軸aより(噴射口Bとは逆側に)偏心して配置した構造となっている。噴射口Bは、中心軸bより(噴射口Aとは逆側に)偏心して配置した構造となっている。噴射口Cは、その噴射流の中心が中心軸cに一致するように配置した構造となっている。
なお、ここでいう中心軸a,b,cは、先端噴射装置の中心軸xに対し直交する円形平面を略3等分(略等角度間隔で3分割)する仮想線である。図7に例示する実施形態では中心軸a,b,cは120°間隔で描かれているが、噴射口A,B,Cの配置基準となる中心軸a,b,cの間隔は120°に限定されるものではなく、120±数°程度(例えば110°~130°の範囲内、あるいは115°~125°の範囲内)の間隔であっても、本発明の技術的範囲に含まれる。
(高圧噴射攪拌工法を用いた地盤改良工法)
次に、前述したハニカム構造の地盤改良体を造成する地盤改良工法について説明する。
本発明の地盤改良工法は高圧噴射攪拌工法を用いる。この地盤改良工法では、地盤中に挿入した注入ロッドの先端に取り付けた先端噴射装置から地盤改良材(固化材スラリー)及び圧縮空気を高圧で噴射しつつ、この回転に併せて注入ロッドを上昇させることで、地中に平面視三ツ矢形の柱状改良体を造成する。平面視三ツ矢形の柱状改良体を、本実施形態では「柱状改良体」という。
本発明では、柱状改良体の造成工程を繰り返して、複数の柱状改良体が一定間隔で配置されるように造成する。このとき、隣り合う柱状改良体が羽根部を介して連結し一体化するように複数の柱状改良体を造成する。これにより、ハニカム構造の地盤改良体が地盤中に造成される。
ハニカム構造の地盤改良体の1ユニットをなす柱状改良体の造成工程では、平面視で改良体中心に位置する円形部とこの円形部より3方向に伸びる羽根部を持つ柱状改良体を一連の噴射で造成する。
柱状改良体の造成にあたっては、羽根部の造成と、円形部の造成を、連続的に行う。
羽根部の造成時には、地盤中に挿入した注入ロッドを低速回転(例えば毎分6回転以下の低速で回転)させつつ、その先端に取り付けた先端噴射装置から地盤改良材(固化材スラリー)及び圧縮空気を高圧で噴射する。
円形部の造成時には、地盤中に挿入した注入ロッドを高速回転(例えば毎分20回転以上の高速で回転)させつつ、その先端に取り付けた先端噴射装置から地盤改良材(固化材スラリー)及び圧縮空気を高圧で噴射する。
上述した羽根部の造成と円形部の造成は(2工程に分けて行うのではなく)絶え間ない一連の施工により行う。羽根部の造成と円形部の造成を連続的に行い、さらに、注入ロッドの回転に併せて該注入ロッドを一定時間ごとに数cmずつ段階的に引き上げることにより平面視三ツ矢形の柱状改良体を造成する。
なお、前述したとおり、本実施形態では、先端噴射装置は平面的に見て中心より角度を略3等分した3方向に配置した噴射口A,B,Cを有している。噴射口Aは、中心軸より右に偏心して配置した構造となっている。噴射口Bは、中心軸より左に偏心して配置した構造となっている。噴射口Cは、中心軸上に配置した構造となっている。
そのため、図7、図8に例示するように、ひとつの羽根部の造成にあたっては、噴射口A,B,Cによる3回の噴射により羽根部の造成が行われる。なお、図7に例示する実施形態では、噴射口A,B,Cからの各噴射流の到達距離を平面視で等しく描いているが、必ずしもすべての噴射流の到達距離を等しく設定する必要はなく、例えば図10に例示するように実噴射口Cからの噴射流の到達距離を他より短くしてもよい。
上述した実施形態では、羽根部の造成時に注入ロッドを低速回転させているが、羽根部の造成時には必ずしも注入ロッドを常時回転させる必要はなく、注入ロッドを一時停止させてもよい。
また、高圧噴射攪拌工法の先端噴射装置に配置する3つの噴射口A,B,Cのいずれか一又は二に異なる能力を持たせてもよい。例えば図10に示すように、3つの噴射口のうち2つについては、噴射方向を水平に設定して地盤切削に長けた構造とし、残りの1つについては、噴射方向を水平より10°程度下向きにして混合攪拌能力に長けた構造にすることも可能である。このように噴射流の拡がり角度を変えることで噴射流の流れが側面から見てより円を描くようになり、混合攪拌効率を高めることができる。

Claims (6)

  1. ロッド先端に取り付けた先端噴射装置から地盤改良材を高圧で噴射して地盤中に改良体を造成する高圧噴射攪拌工法を用いた地盤改良工法であって、
    平面視で改良体中心に位置する円形部と前記円形部より3方向に伸びる羽根部を持つ柱状改良体を一連の噴射で造成する柱状改良体造成工程を含んでおり、
    前記柱状改良体造成工程を繰り返して、複数の柱状改良体が一定間隔で配置されるように造成するとともに、隣り合う柱状改良体が羽根部を介して連結するように複数の柱状改良体を造成することによって、地盤中にハニカム構造の地盤改良体を造成することを特徴とする地盤改良工法。
  2. ロッドを回転させつつ地盤改良材を高圧噴射する柱状改良体造成工程において、
    回転の一時停止または低速回転での噴射による羽根部の造成と、
    高速回転での噴射による円形部の造成を
    連続的に行うことを特徴とする請求項1記載の地盤改良工法。
  3. 高圧噴射攪拌工法の先端噴射装置は、平面的に見て中心より角度を略3等分した3方向に配置した噴射口を有しており、
    ロッドを回転させつつ地盤改良材を高圧噴射する柱状改良体造成工程において、
    回転の一時停止または毎分6回転以下の低速回転での噴射による羽根部の造成と、
    毎分20回転以上の高速回転での噴射による円形部の造成を
    連続的に行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地盤改良工法。
  4. 高圧噴射攪拌工法の先端噴射装置に配置する3つの噴射口は、それぞれが、中心軸上に配置、中心軸より右に偏心して配置、中心軸より左に偏心して配置した構造であり、
    ひとつの羽根部をそれぞれの噴射口による3回の噴射により柱状改良体を造成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の地盤改良工法。
  5. 高圧噴射攪拌工法の先端噴射装置に配置する3つの噴射口のうち、
    2つの噴射口を地盤切削用とし、
    1つの噴射口を羽根部改良体内の混合攪拌用とする、
    ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載の地盤改良工法。
  6. 一定間隔で配置された複数の柱状改良体が地盤中で連結することで構成されるハニカム構造の地盤改良体であって、
    ハニカム構造の地盤改良体を構成する各柱状改良体は、
    平面視で柱状改良体の中心に位置し、羽根部の厚みよりも大きな直径の円形部と、
    前記円形部より3方向に伸びる羽根部と、
    を有することを特徴とするハニカム構造の地盤改良体。
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