JP2022045865A - 脱臭装置及び脱臭方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、定期交換の頻度や交換部品の仕様を決定するため、臭気成分の濃度の時間変化を計測し、計測値を記録装置(データロガー)に記録して、季節や時間帯を通じた臭気成分の濃度の変動について傾向を分析することが一般的である。この場合、データロガーに記録されたデータは、データ量などにもよるが例えば1か月間といった比較的長期間の運転を経た後に回収され、分析される。
臭気性ガスと薬液とを混合する脱臭塔と、
前記脱臭塔の内部に設置された薬液放出部と、
前記脱臭塔に流入する前記臭気性ガスに含まれる臭気成分の濃度を測定する検出器と、
前記薬液放出部に前記薬液を供給する薬液供給装置と、
前記薬液を外部に排出する薬液排出装置と、
前記薬液供給装置及び前記薬液排出装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記検出器の出力する臭気成分の濃度に基づいて前記薬液の排出量を制御することを特徴とする。
前記検出器の出力する臭気成分の濃度に基づいて前記薬液の前記薬液放出部への流量を制御することを特徴とする。
充填剤を備えた充填部を更に具備すると共に、前記充填部と前記薬液放出部とで反応モジュールを構成し、
前記脱臭塔の内部に前記反応モジュールが複数設けられ、
前記制御装置は、前記検出器の出力する臭気成分の濃度に基づいて、前記薬液放出部のそれぞれに対する前記薬液の流量を制御することを特徴とする。
前記検出器は所定のサンプリング周期で臭気成分の濃度を測定し、
前記制御装置は、前記サンプリング周期より長い時間間隔で前記検出器の出力する臭気成分の濃度を積算することを特徴とする。
前記薬液に薬品成分を供給する薬品成分供給装置を備え、
前記制御装置は前記薬品成分供給装置を制御し、
前記検出器の出力する臭気成分の濃度に基づいて前記薬液に供給する前記薬品成分の量を制御することを特徴とする。
前記薬品成分は次亜塩素酸ナトリウムであり、前記薬品成分供給装置は、電解槽を含むことを特徴とする。
臭気成分を含む臭気性ガスを脱臭塔内で薬液と反応させて脱臭する脱臭方法であり、
前記脱臭塔に流入する臭気性ガスに含まれる臭気成分の濃度を検出器により測定する工程と、
前記臭気成分の濃度に基づいて前記脱臭塔から前記薬液の排出量を制御することを特徴とする。
前記検出器が測定した臭気成分の濃度に基づいて前記脱臭塔に放出する前記薬液の流量を制御する工程を更に含むことを特徴とする。
前記検出器が測定した臭気成分の濃度に基づいて前記薬液に供給する次亜塩素酸ナトリウムの量を制御する工程を更に含むことを特徴とする。
充填剤を備えた充填部を更に具備すると共に、前記充填部と前記薬液放出部とで反応モジュールを構成し、
前記脱臭塔の内部に前記反応モジュールが複数設けられ、
前記検出器が測定した臭気成分の濃度に基づいて選択された前記反応モジュールの前記薬液放出部に前記薬液を供給する工程を含むことを特徴とする。
前記薬液放出部から放出する前記薬液の流量を幾何学的最適流量範囲で制御する工程を含むことを特徴とする脱臭方法。
電源用コネクタ及び検出器用コネクタを有する筐体を備え、
前記筐体内には、直流電源と検出器用制御回路とデータロガーとを有し、
前記直流電源は前記電源用コネクタを介して供給される交流電力を直流電力に変換し前記検出器用制御回路に供給し、
前記検出器用制御回路は前記検出器用コネクタ介して接続される検出器に電力を供給するとともに、前記検出器からの信号を受信し、前記データロガーに出力し、
前記データロガーは前記検出器用制御回路から入力した信号をデータとして記録することを特徴とする。
前記筐体は窓を有し、
前記測定ユニットは表示装置を有し、
前記表示装置は、前記データを表示可能であり、前記表示装置は前記窓から視認可能であることを特徴とする。
前記筐体は本体部と、前記本体部に開閉可能に支持された蓋部とを有し、
前記窓は前記蓋部に設けられ、
前記本体部に前記電源用コネクタ及び前記検出器用コネクタが設けられていることを特徴とする。
<装置構成>
図1は、本発明の一実施形態における脱臭装置100の構成を示す。図1に示すように、脱臭装置100は脱臭塔1を備えており、薬液と臭気性ガスとを混合し、反応させて脱臭する湿式脱臭装置である。
処理対象である臭気成分を含む被処理ガスG(例えばアンモニア、硫化水素等の硫黄系の臭気成分を含む臭気性ガス)は、脱臭塔1のガス流入口2から取り入れられ、第1の配管3により脱臭塔1内部に誘導される。以下、臭気性ガスである被処理ガスGをガスGと称する。
脱臭塔1内部に誘導されたガスGは、第1の配管3の開口端部3aから放出され、脱臭塔1の上方に進む。
なお、第1の配管3に更にファンを設け、ガスGを誘導してもよい。
以下では、検出器Sとして、硫化水素センサを使用し、薬品として次亜塩素を使用した例について説明するが、その例に限定されるものではない。検出器Sとしてアンモニアセンサ、アルデヒドセンサ等を使用することができる。例えば、アンモニアセンサを用いて酸洗浄塔についても同様の装置構成及びその制御が可能である。また、アルデヒドセンサを用いてアルデヒド用洗浄塔についても同様である。薬液5に使用する薬品は、処理対象のガスGに含まれる臭気成分に応じて、適宜に公知の薬品を採用することができる。
放出された薬液5は、薬液放出部4の下方に位置する充填部6へ供給される。充填部6は多孔質セラミックやプラスチック等からなり、薬品5とガスGとの反応を促進する触媒である充填剤を備える。特に酸化能力が高い酸化触媒としては、既知の多孔性湿式セラミック酸化触媒を好適に使用することができる。薬液放出部4とその直下に設けられた充填部6との組み合わせは、ガスGと薬液5とを反応させるための反応モジュールを構成する。
なお、視認性のため薬液5は図において省略している。
デミスター7は、例えばメッシュ状ワイヤから構成され、ガスGに含まれる(薬液5の)ミストを除去する気液分離器である。デミスター7により分離された薬液5は、下方に移動(落下)する。
循環薬液槽9に設けられた第1の排出口10(循環用排出口)には、第2の配管11が接続され、第2の配管11は、脱臭塔1の外部に設けられた第1のポンプ12の流入口に接続されている。第1のポンプ12の流出口(薬液5の吐出部)には、第3の配管13が接続されている。
第1のポンプ12は薬液を循環させ反応部に供給する薬液循環ポンプであり薬液供給装置として機能する。
また分岐部14において、第4の配管15及び第5の配管16に、それぞれ(図示しない)バルブを設け、各バルブの開度により、第4の配管15と第5の配管16とに流れ込む薬液5の分配比を調整してもよい。
第2の配管11、第3の配管13及び第4の配管15は、ガスGと反応させるために薬液5を循環させるための循環用配管を構成する。
また、第3の配管13にはpH計19が設けられており、循環する薬液5のpHを測定し、監視することができる。
従って、第5の配管16は、循環する薬液5の一部をサンプリングする。
循環する薬液5の流量(又は薬液放出部4に薬液5を供給する流量)は、第1のポンプ12により制御可能である。
循環薬液槽9に貯留された薬液5は、第2のポンプ24により脱臭装置100の外部に排出される。
第2のポンプ24は、第6の配管23中を流れる薬液5の流量を制御することで、薬液5の排出量を制御して排出する薬液排出装置として機能する。
なお、第1の排出口10を分岐し第6の配管23に接続してもよいが、薬液5の流量制御の観点から第2の排出口22を独立して設けることが好適である。
次亜塩素酸ナトリウムは、図示しないタンクからポンプにより供給することも可能であるが、後述するように、塩化ナトリウム水溶液を電解槽において電気分解することで供給してもよい。
次亜塩素酸ナトリウム供給装置26は、後述する制御装置33により制御され、次亜塩素酸濃度計20の出力に基づいて、薬液5中の次亜塩素酸ナトリウムの濃度を所定の範囲、例えば400~500[ppm]になるように制御することができる。
そのため、脱臭装置100は、アルカリ溶液を収容するタンク29を備え、タンク29には第8の配管30が接続されてもよい。第8の配管30は脱臭塔1の導入口31を介して脱臭塔1内に延びる。第8の配管30には第3のポンプ32が設置されている。第3のポンプ32はタンク29内の苛性ソーダ等のアルカリ溶液を脱臭塔1の循環薬液槽9に注入することができる。
このようにタンク29及び第3のポンプ32はアルカリ溶液供給装置を構成するとともにpH値調整装置としても機能する。第3のポンプ32は、後述する制御装置33により制御され、pH計19の出力に基づいて、薬液5中のpH値を制御できる。
従って、脱臭装置100は、次亜塩素酸ナトリウム供給装置26及び/又はタンク29と第3のポンプ32との組み合わせからなるアルカリ溶液供給装置により、薬液5のpH値を、例えば7.0~7.8の所定の範囲に維持できる。
同様に、流量計18、pH計19及び次亜塩素酸濃度計20は、それぞれ第2の信号線35(流量計用信号線)、第3の信号線36(pH計用信号線)及び第4の信号線37(濃度計用信号線)により制御装置33と接続されている。流量計18、pH計19力及び次亜塩素酸濃度計20の出力は、それぞれ第2の信号線35、第3の信号線36及び第4の信号線37を介して制御装置33に入力される。制御装置33は、薬液5の流量、pH値、次亜塩素酸濃度を監視し、また制御装置33の記録装置に記録することができる。
制御装置33は、第5の信号線38、第6の信号線39、第7の信号線40及び第8の信号線41により、それぞれ第1のポンプ12、第2のポンプ24、次亜塩素酸ナトリウム供給装置26及び第3のポンプ32と接続されている。
後述するように制御装置33は決定した運転条件に基づいて制御信号を生成し、第5の信号線38、第6の信号線39、第7の信号線40及び第8の信号線41を介して、それぞれ第1のポンプ12、第2のポンプ24、次亜塩素酸ナトリウム供給装置26及び第3のポンプ32に出力し、これらの装置を制御することができる。
その結果、制御装置33は、ガスGに含まれる臭気成分の濃度、薬液5の流量、pH値、次亜塩素酸濃度を監視しながら、脱臭装置100の運転を制御する。
制御装置33は、演算装置、入出力装置、記録装置を備えたマイコンやパソコン等を使用することができる。
配管264には、電解槽261とポンプ262とが設置されている。ポンプ262により、循環薬液槽9の薬液5は第3の排出口263から配管264に導入され、電解槽261を介して循環薬液槽9に戻される。電解槽261に流入した薬液5を電気分解し、次亜塩素酸ナトリウムを生成する。
生成する次亜塩素酸ナトリウムの量は、電解槽261の電気分解用電極に投入する電力により制御することができるが、電解槽261を流れる薬液5の流量によっても制御することができる。
電解槽261を流れる薬液5の流量はポンプ262により制御可能である。
ガスGに含まれる臭気成分の濃度は、一般には一定ではなく、季節、時刻、環境温度等に依存して変化する。
図3は、ガスGに含まれる臭気性成分濃度の時間変化(一日の変化)を示すグラフである。縦軸は臭気成分の濃度、横軸は時刻を示す。図3中実線は臭気成分の濃度を示す。従来の脱臭装置は、最大濃度のガスGを脱臭可能なように、循環させる薬液の次亜塩素酸ナトリウム濃度及び薬液放出部からの放出量(流量)を設定している。例えば、臭気成分の濃度(実線)の最大値に対してマージン(余裕)を見込んだ臭気成分の濃度(図3中の点線)のガスGを脱臭することができる薬液5の放出量(及び次亜塩素酸濃度)を確定し、その放出量を設定値(固定値)として採用している。このように、薬液や脱臭装置を稼働する電力の消費は、ガスGに含まれる臭気成分の濃度の最大値により決まることとなり、従来の一定量の薬液を供給する脱臭方法は不経済である。
従って、脱臭装置の運転条件をガスGの実際の臭気成分の濃度に合わせて変更することにより、効率的にガスGの脱臭を行うことができる。
検出器Sが測定した臭気成分の濃度値は、第1の信号線34を介して制御装置33に入力される。
制御装置33の記録装置には、予め実験等により取得された脱臭効率(臭気成分の除去効率)の臭気成分の濃度値及び薬液5の流量の依存性が保存されている。そのため、制御装置33は、得られた臭気成分の濃度値(及びガスGの風量)に基づいて薬液5の薬液放出部4からの放出流量(又は第1の流路を循環する薬液5の循環薬液流量)を決定することができる。臭気成分の濃度の増加にともない薬液5の薬液放出部4からの放出流量を増加させるために、例えば、薬液5の薬液放出部4からの放出流量(循環薬液流量)を臭気成分の濃度に比例して決定する。例えば、時刻tにおいてガスGの臭気成分の濃度をg(t)とし、薬液5の薬液放出部4からの放出流量をF(t)とすると、F(t)は以下のようになる。
F(t)=Ag(t)
ここで、Aは常数である。
ただし、実験により薬液5の脱臭効率がガスGに含まれる臭気成分の濃度に依存する場合、Aは臭気成分の濃度を表す関数(A=A(g(t))としてもよい。
なお、制御値として、例えば流量値や第1のポンプ12に供給する電力値が例示される。
バルブ開度による薬液5等の液体の流量制御は、他のポンプについても同様に適用可能である。
また、上記は薬液5の流量制御方法を限定するものではなく、他の流量制御方法を排除するものではない。
例えば、ガスGの風量と臭気成分の濃度との積により薬液5の薬液放出部4からの放出流量を決定してもよい。この場合、ガスGの風量をJ(t)とし、以下のように F(t)を設定してもよい。
F(t)=Ag(t)J(t)
上式は単位時間当たりに脱臭装置100に流入する臭気成分の量に相当する。従って、ガスGの風量が変動するような場合においては、臭気成分の濃度の代わりに単位時間当たりの臭気成分量を使用すればよい。すなわち、各実施形態において臭気成分の濃度として単位時間当たりの臭気成分量を使用すればよい。
制御装置33は、入力された次亜塩素酸ナトリウム濃度に基づき、例えば所定の次亜塩素酸ナトリウム濃度になるよう、次亜塩素酸ナトリウム供給装置26に対して制御値を送信する。
例えば、次亜塩素酸ナトリウム供給装置26が、図2に示すように電解槽261により次亜塩素酸ナトリウムを供給する場合、電解槽261の電極に印加する電圧を制御し、又は次亜塩素酸ナトリウムをタンクからポンプにより供給する場合、ポンプを制御することで、次亜塩素酸ナトリウムの供給量を制御できる。
その結果、薬液5の次亜塩素酸ナトリウム濃度を所定の値に設定することができる。
制御装置33は、臭気成分の濃度に従って次亜塩素酸ナトリウム濃度を設定し、次亜塩素酸濃度計20の測定値が、次亜塩素酸ナトリウム濃度の設定値に一致するように次亜塩素酸ナトリウム供給装置26を制御する。
制御装置33は、入力されたpHの測定値に基づき、タンク29に接続されている第3のポンプ32(アルカリ溶液供給ポンプ)に対して制御値を送信する。
例えば制御装置33は、pHの測定値が所定の値(pH目標値)より低い場合、pH値を上げるため、第3のポンプ32に対してタンク29に貯蔵されている苛性ソーダ等のアルカリ溶液を注入するように第3のポンプ32を駆動する。例えば、pHの測定値と所定の値との乖離値が大きくなるに従い、循環薬液槽9へのアルカリ溶液の流量を増大させるように第3のポンプ32を制御してもよく、例えばPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)によりアルカリ溶液の流量を制御してもよい。
なお、制御装置33は、最適な薬液5のpH値(例えば、7.0~7.8)を記録装置に保存している。
なお、臭気成分の濃度に対する応答性は、次亜塩素酸ナトリウム濃度(薬品成分濃度)の制御より薬液5の流量制御の方が優れており、例えば薬液5の流量制御のみを採用してもよい。
湿式脱臭装置は、循環する薬液と臭気性ガスに含まれる臭気成分との反応により、臭気性ガスの脱臭を行う。脱臭効率の劣化は、使用する薬液の劣化によるものと考えられる。
脱臭効率が低下した状態でも臭気成分を除去し得るように、十分なマージンを持つ運転条件で脱臭装置を稼働する必要がある。そのため、薬液や脱臭装置を稼働する電力の消費の無駄が発生することになる。
低下した脱臭効率を回復させるためには、定期的メンテナンス作業において薬液交換を行う必要がある。脱臭効率を保証するために薬液交換頻度を高めると、薬液ロスが増大する。その結果、経済的効率が低下するとともに、操作者の負担も増大する。
以下では、さらに効率的に脱臭を行うことができる脱臭方法について説明する。
被処理ガスGと薬液5との主な反応として以下の反応式1~7が例示される。
(式1)H2S+4NaOCl+2NaOH→Na2SO4+4NaCl+2H2O
(式2)H2S+NaOCl→S+NaCl+2H2O
(式3)CH3SH+3NaOCl+NaOH→CH3SO3Na+3NaCl+H2O
(式4)(CH3)2S+2NaOCl→(CH3)2SO2+2NaCl
(式5)(CH3)2S2+5NaOCl+2NaOH→2CH3SO3Na+5NaCl+H2O
(式6)2NH3+3NaOCl→N2+3NaCl+3H2O
(式7)CO2+2NaOH→Na2CO3+H2O
上式において生成物、Na2SO4、NaCl、S、CH3SO3Na、(CH3)2SO2、Na2CO3が「塩」として循環する薬液5に溶解又は蓄積する。
実際の脱臭処理を調査した結果、ガスGの脱臭処理が進むと、「塩」が薬液5中に蓄積され、薬液5中の「塩」濃度は、次亜塩素酸ナトリウムや苛性ソーダの濃度より高濃度、例えば数桁高くなることさえある。
発明者らは、薬液5の脱臭効率の経時劣化を低減するには、上記化学反応等により生成され、蓄積された「塩」を低減することが有効であることを見出した。
検出器Sは、ガスGに含まれる臭気成分の濃度を所定のサンプリング周期で測定し、測定値を制御装置33に出力している。制御装置33は、受信した臭気成分の濃度測定値を記録装置に記録することができる。
さらに制御装置33は、記録された臭気成分の濃度測定値を用い演算処理装置により、所定の期間(積算期間)、臭気成分の濃度を積算する。そのため積算期間(積算周期)は、検出器Sのサンプリング周期より長く、サンプリング周期の2以上の自然数倍、例えば5倍(5分)とすることができる。このように、臭気成分の濃度として過去5分間の積算値を用いることにより、リアルタイム性も殆ど失われず、濃度の急激な変動にも追随することができることとなる。
なお、検出された臭気成分濃度の積算値の代わりに、所定期間の平均値に従い薬液5を排出する流量の制御を行ってもよい。
また、検出された臭気成分濃度を積算することなく、臭気成分濃度に従い薬液5を排出する流量の制御を行ってもよい。この場合、第2のポンプ24の稼働時間が増大し、消費電力が増大するが、反応による「塩」の低減は可能である。
V(t)=∫Bg(τ)dτ
ただし、時間積分範囲はt-Tからtまでである。
ここで、Bは常数である。
なお、「塩」の生成量(又は「塩」を生成する反応速度)がガスGに含まれる臭気成分の濃度に依存する場合、Bは臭気成分の濃度の関数(B=B(g(t))としてもよいが、通常Bは常数を使用する。
V(t)=BΣDg(tk)
ここでg(tk)は、k番目の測定時刻tkにおけるガスGに含まれる臭気成分の濃度の測定値であり、Σg(tk)は、直近の連続した所定の範囲(k=i-nからiまで、すなわち時刻ti-nからtiまで)の臭気成分の濃度の総和を意味し、(n+1)個の臭気成分の濃度の測定値の総和を意味する。
サンプリング周期Dが一定の場合(時刻tkに依存しない場合)、以下のようになる。
V(t)=BDΣg(tk)
なお、実際のガスGに含まれる臭気成分の濃度は、その挙動(絶対値や変化率)に応じて、例えば時間帯や季節に応じて、検出器Sのサンプリング周期を変更してもよい。サンプリング周期Dが時刻tiに依存して変化する場合は、以下のようになる。
V(t)=BΣD(tk)g(tk)
V(t)=∫Bg(τ)J(τ)dτ
又は
V(t)=BΣDg(tk)J(tk)
このように、薬液5は、第2のポンプ24により積算期間毎に、積算期間の臭気成分の濃度の積算値に基づいて決定された排出量だけ、部分的に排出される。薬液5の循環流量に対して、例えば、0.01~10%の薬液5を排出する。薬液5の部分的な排液周期は、例えば臭気成分の濃度の積算周期と一致させることもできる。
図4に示されるように、薬液5の排出量の変動は、薬液5の循環流量の変動に比べ緩やかである。「塩」の蓄積を軽減するために行う薬液5の部分的排出であるため、薬液5の排出をガスGに含まれる臭気成分の濃度の変動に対して即時的に対応するのではなく、臭気成分の濃度の積算値に基づいて薬液5の排出量を決定することができる。
積算周期(積算時間)は、ガス検出器Sのサンプリング周期とは独立して設定できるため、薬液5の損失を低減しつつ「塩」の蓄積を防止する積算時間間隔を設定することができる。
臭気成分の濃度を積算する時間は、適宜変更してもよい。例えば臭気成分の濃度が、一日の時間帯に依存する場合や、季節に依存する場合、例えば臭気成分の濃度が低いことが予想される時間帯や季節において、積算時間を相対的に長く設定してもよい。例えば、午前6時から午前10までの間、午後2時から午後6時までの間は臭気濃度の積算時間はガス検出器Sのサンプリング周期の5倍、その他の時間帯は臭気濃度の積算時間はガス検出器Sのサンプリング周期の10倍とする等、1日の時間帯に依存して臭気濃度の積算時間を変更してもよい。
臭気成分の濃度が低いことが予想される時間帯等において臭気成分の濃度を積算する時間を長く設定することで、第2のポンプ24の稼働時間を低減し消費電力を低減してもよい。
なお、臭気成分の濃度の積算値は∫g(τ)dτ又はΣDg(tk)により算出できる。
周期的(又は間欠的)な薬液5の部分的排出により「塩」の蓄積は軽減できるが、完全に排出できない「塩」の蓄積の累積的増加に対処するため、積算期間毎の臭気成分の濃度の積算値により決定される薬液5の排出量を、臭気成分の濃度の総積算値により補正してもよい。
補正された薬液5の排出量をV’(t)、臭気成分の濃度の総積算値(時間積分)をS(t)とすると、薬液5の排出量は、例えば以下のように補正してもよい。
V’(t)=V(t)(1+CS(t))
ここで、Cは常数である。
上式は、臭気成分の濃度の総積算値の増加とともに、徐々に薬液5の排出量を増やす補正係数(1+CS(t))を元の薬液5の排出量V(t)に乗じることにより、薬液5の排出量を補正している。
S(t)=∫g(τ)dτ
ただし、時間積分範囲は0からtまでである。
実際の検出器Sは所定のサンプリング周期(間隔)でガスGに含まれる臭気成分の濃度を測定するため、サンプリング周期(サンプリング間隔)をD(ti)として、以下のようになる。
S(t)=Σg(ti)D(ti)
となり、D(ti)が一定の場合、以下のようになる。
S(t)=DΣg(ti)
ただし、積算期間は時刻0からtまでである。
従って、制御装置33は、薬液5の総排出量と総補充量を記録することができ、脱臭装置100で使用される薬液5の容量を管理してもよい。
なお、排出することにより減少した薬液5は、次亜塩素酸ナトリウム供給装置26から補充することができるが、薬液5の補充のために、さらに追加的に配管とポンプを設けてもよい。
なお、薬液5の補充周期は、薬液5の排液周期(臭気成分の濃度の積算期間)と同じ又はその自然数倍であってもよいが、それに限定するものではない。循環薬液槽(薬液貯留部)9に貯留されている薬液5の容量(又は水位)に応じて適宜補充すればよい。
さらに、脱臭装置100は、所定の積算周期で臭気成分の濃度の積算値を求め、臭気成分の濃度の積算値に基づいて薬液5の一部を排出することで、生成される「塩」の蓄積を低減し薬液5の劣化を低減することができる。
例えば、高い臭気成分の濃度のガスGが流入した場合、薬液放出部4から放出される薬液5の流量を増大させ素早く応答し臭気成分を除去でき、また、ガスGに含まれる臭気成分の濃度が低下した場合、薬液5の流量を低下させることができ、薬液5及び電力の消費を低減できる。一方、「塩」の蓄積を低減するための排出量は、臭気成分の濃度に基づいて決定されるため、過剰に薬液5が排出されることがなく、薬液5の損失を防止しながら最適な薬液5により臭気成分の除去が可能となる。
その結果、脱臭装置100は、経済的にも消費エネルギー的にも効率的にガスGの脱臭処理を実行するとともに、操作者の負担を軽減することができる。
第1のポンプ12と比例電磁式流量制御弁の両方の制御により、排液管25から排出される流量と薬液放出部4から放出される流量とを制御することが可能である。
第1のポンプ12と比例電磁式流量制御弁の高度な制御技術が必要となるが、第2のポンプ24を不要とすることができ、装置の小型化が可能となる。
横軸は時刻、左縦軸は濃度、右縦軸は流量を示し、実線(A)は次亜塩素酸濃度、点線(B)はガスGの硫化水素濃度、破線(C)は薬液5の排出流量を例示する。なお、臭気成分濃度と薬品成分濃度とは、同軸に表示するために、適宜スケーリングしている。
測定を実施した2020年8月21~23日は「大潮」であったため、潮位が上昇した。その影響により、下水管に海水が流入し、通常時よりも臭気成分濃度が脱臭装置の入口付近で大きくなる現象が生じた。
臭気成分濃度が高い場合、臭気成分と薬液5中の薬品成分とが迅速に反応することにより薬品成分が消費される。さらに、ガスGの臭気成分濃度に合わせて薬液5の排液量を制御することにより、薬液5中で「塩」の生成による化学反応の抑制が防止される。そのため、薬品供給装置26からの薬品成分(次亜塩素酸ナトリウム)の供給と臭気成分との反応による薬品成分(次亜塩素酸ナトリウム)の消費との収支バランスが良好に維持され、ガスGの臭気成分濃度と薬品成分濃度との応答性が高くなると考えられる。
ガスGの臭気成分濃度が高い場合、薬液放出(噴射)部4からの薬品5の放出量を制限することで、第1のポンプ12(薬液循環ポンプ)及びそれに接続された配管等への圧力低減し、脱臭装置100への機械的な負担を軽減することで、耐久性の向上又はメンテナンス頻度の低減を図ることができる。
なお、運転条件を変更する所定の臭気成分濃度は、例えば薬品成分濃度の臭気成分濃度に対する応答性から決定すればよい。例えば、図5において縦軸の薬品成分濃度の中央値に設定してもよい。
通常状態では、ガスGに含まれる臭気成分の濃度は、図3に示すように変化するが、場合によっては、突発的に通常想定される濃度値を超えることがある。従って、脱臭装置100は、このような突発的に臭気成分の濃度が増大するガスGの脱臭処理にも対応しなけらばならないことがある。
図6は、ガスGに含まれる臭気成分の濃度の変動例を示すグラフであり、臭気成分の濃度が、急に増加及び減少する時間帯が存在する例を示す。図中縦軸は臭気成分の濃度、横軸は時刻であり、実線はガスGに含まれる臭気成分の濃度を示す。通常の状態では、図中点線以下の範囲で臭気成分の濃度が推移する。しかし、図中ハッチングで示した時間領域Aにおいて、点線で示す値を超えて、臭気成分の濃度が急激に増大している。
例えば、発生頻度の少ない時間領域Aの最大の臭気成分の濃度に合わせて次亜塩素酸濃度を高く設定すると、薬液5のランニングコストが増大することになる。
第1の充填部6aに薬液5を供給する第1の薬液放出部4aの直下には第1の充填部6aが設置されており、第1の薬液放出部4aと第1の充填部6aとの組み合わせからなる第1の反応モジュールを構成する。なお、第1の薬液放出部4aの直下に第1の充填部6aが設置されているとは、第1の薬液放出部4aと第1の充填部6aの間に他の充填部(具体的には、第2の充填部6b)が設置されていないことを意味する。
従って、第1の薬液放出部4aは下方に位置する第1の充填部6a及び第2の充填部6bの全てに薬液5を供給し、第2の薬液放出部4bは下方に位置する第2の充填部6bに薬液5を供給するが上方に位置する第1の充填部6aには薬液5を供給しない。
ガスGは、第1の充填部6a及び第2の充填部6bにおいて薬液5と反応することができる。
第1の薬液循環ポンプ12a及び第2の薬液循環ポンプ12bの吐出口は、それぞれ配管13a及び配管13bが接続されており、さらに脱臭塔1の第1の導入口17a及び第2の導入口17bを介して、第1の薬液放出部4a及び第2の薬液放出部4bに接続されている。
制御装置33は、第1の流量計18a及び第2の流量計18bが測定した流量値をフィードバックして、第1の薬液循環ポンプ12a及び第2の薬液循環ポンプ12bを制御し、所定の流量の薬液5を循環させることができる。
図8は、充填部における薬液5の薬品成分(次亜塩素酸)濃度の充填部中の分布を模式的に示すグラフである。縦軸は薬品成分濃度であり、横軸は充填部内の距離であり、充填部の上端面からの距離である。
図8(a)は、図1に示す1つの充填部6における薬品成分濃度の分布を示し、図8(b)は、図7に示す第1の充填部6a及び第2の充填部6bから構成される2つの充填部における薬品成分濃度の分布を示す。
なお、図8(a)、(b)において薬品成分濃度を示す関数は、理解のため一次関数の例を示しているが、一次関数に限定されるものではない。
図8(a)の充填部6、図8(b)の第1の充填部6a及び第2の充填部6bには、充填剤として同じ触媒が同じ密度で充填されている。従って、図8(a)の充填部6に使用されている充填剤の量は、図8(b)の第1の充填部6a及び第2の充填部6bに使用されている充填剤の量の総和に等しい。
なお、理解を容易にするため図8に示すような構成により脱臭原理を説明するが、第1の充填部6aと第2の充填部6bとの高さの関係、また充填部に収容する触媒の密度の関係等は、上記に限定するものではない。
なお、充填部6aの上端面の薬液5の薬品成分濃度は、図8(a)に示す充填部6の上端面の薬液5の薬品成分濃度に等しい。
一方、第1の充填部6aの高さHaは、図8(a)の充填部6の高さHより小さいため、第1の充填部6aの下端面(底面)での薬品成分濃度は充填部6の下端面の薬品成分濃度より高い。
図8(b)の点線Laは、第2の薬液放出部4bから薬液5が供給されずに第1の充填部6aを介して第1の薬液放出部4aから薬液5が供給された場合の第2の充填部6bにおける薬液5の薬品成分濃度を示し、図8(b)の点線Lbは、第1の薬液放出部4aから薬液5が供給されずに第2の薬液放出部4bから薬液5が供給された場合の第2の充填部6bにおける薬液5の薬品成分濃度を示す。
図8(b)の領域Bにおける実線は、第1の薬液放出部4a及び第2の薬液放出部4bから薬液5が供給された場合の第2の充填部6bにおける薬液5の薬品成分濃度を示す。この場合、第2の充填部6bにおける薬液5は、点線Lba及び点線Lbで示される薬液5の混合液となる。
一般に化学反応速度は、反応物の濃度に依存するため、化学反応領域である2つの充填部(第1の充填部6a及び第2の充填部6b)内に供給される薬液5の実質的な薬品成分濃度を高めることで、ガスGの脱臭効率を向上させることができる。
また、2つの充填部(第1の充填部6a及び第2の充填部6b)を有する脱臭装置100の方が、ガスGの流れ方向に沿った、充填部内の薬液5の薬品成分濃度が高い領域の長さが拡大される。
この場合、第1の充填部6a及び第2の充填部6bを、図1に示す1つの充填部6として使用することができる。すなわち、実施形態1の脱臭装置100と同様の運転制御を採用することができる。この際、第2の反応モジュールにおける第2の薬液放出部4bからは薬液5を放出しない(放出する薬液5の流量がゼロ)。すなわち、第1の薬液循環ポンプ12aのみを稼働し、第2の薬液循環ポンプ12bを稼働しない。
通常状態では第1の薬液循環ポンプ12aのみを稼働して脱臭装置100を運転するため、電力消費量の増大を防止できる。
具体的には、ガスGに含まれる臭気成分の濃度が予め設定した閾値以下の場合、第2の薬液放出部4bに薬液5を供給せず(第2の薬液放出部4bへ薬液を供給する流量をゼロとし)、第1の薬液放出部4aから放出される薬液5の流量(供給流量)は、検出器Sで検出される臭気成分の濃度に依存して変化させる。
臭気成分の濃度が予め設定した閾値を超える場合、第1の薬液放出部4aから放出される薬液5の流量を所定の最大値に設定し、第2の薬液放出部4bから放出される薬液5の流量を検出器Sで検出される臭気成分の濃度に依存して変化させることができる。
充填部(第1の充填部6a及び第2の充填部6b)内での実質的な薬品成分濃度の増大は、逆に循環薬液槽9の薬液5(又は循環する薬液5)の薬品成分濃度を低下し得ることを意味し、その意味においても薬液5のランニングコストの増加を低減できる。
実施形態3においては、図7に示すように充填部6を多段の充填部から構成することにより、従来の脱臭装置と比較してより広範囲で脱臭処理に最適な薬液5の供給流量の制御が可能となる。
なお、理解のため、図9においてはハッチング領域は簡略化して描画されており、薬液5が供給される領域を限定するものではない。
薬液5の薬液放出部4からの放出角、充填部6の上端面の半径(又は面積)及び薬液放出部4と充填部6の上端面との距離、の幾何学的関係により、充填部6に収容された触媒表面に散布された薬液5とガスGに含まれる臭気成分との反応を効率よく促進させる薬液循環流量条件が確定することができる。
一方、図9(c)に示す状態では、図9(b)に示す状態での脱臭効率に対して、薬液5の流量が増大する効果により脱臭効率は増加するものの、一部の薬液5は充填部6の触媒作用の効果を(十分に)得られず、薬液流量の増加による脱臭効率の増加が鈍化(制限)される。
従って、図9(b)に示す幾何学的な薬液5の散布状態を実現することができる薬液5の流量(「最適化流量」と称す)の近傍で効率的に脱臭能力の制御が可能となる。例えば、薬液5の流量の範囲は、幾何学的な最適化流量を含む流量制御範囲(「幾何学的最適流量範囲」と称す)であり、好適には幾何学的な最適化流量の0.8倍~1.2倍の範囲である。
位置Pbにおいては、充填部6の上端面Stと平行な面での薬液5の散布領域(断面積)は上端面Stの領域(面積)と等しくなり、図9(b)に示す状態に相当する。
また、位置Pbより薬液放出部4からの距離が長い位置Pcにおいては、充填部6の上端面Stと平行な面での薬液5の散布領域(断面積)は上端面Stの領域(面積)より大きくなり、図9(c)に示す状態に相当する。
角度θは、薬液5の供給流量である放出量に依存するため、上記関係式から薬液5の放出量が確定できる。
すなわち、薬液放出部4から供給される薬液5の幾何学的な最適化流量は、充填部6の上端面Stと平行な面において薬液5が散布される領域の面積(断面積)と、充填部6の上端面Stの面積とが等しくなる流量である。従って、幾何学的な最適化流量は、薬液放出部4の1点から放射状に薬液5が放出される場合に限定されず、例えば、複数薬液放出部4から薬液5を放出する等の様々な放出(散布)方法について求めることができる。
なお、上述の脱臭効果の計測方法は、他の実施形態においても適応可能である。
制御装置33は、第1の薬液循環ポンプ12a及び第2の薬液循環ポンプ12bを制御することにより、検出器Sにより検出されたガスGに含まれる臭気成分の濃度に従って、第1の幾何学的最適流量範囲及び第2の幾何学的最適流量範囲内で、第1の薬液放出部4a及び第2の薬液放出部4bから供給される薬液5の流量を制御する。
制御装置33は、第1の幾何学的最適流量範囲内及び第2の幾何学的最適流量範囲内で、実施形態1において説明したように、検知器Sから入力した臭気成分の濃度に依存して、第1の薬液放出部4a及び第2の薬液放出部4bから供給する薬液5の流量を変化させることができる。そのため、脱臭装置100は、臭気性ガスの脱臭に使用される薬液の利用効率を向上させ、さらに効率的にガスGの脱臭処理を行うことができる。
具体的には、制御装置33は、第1の薬液循環ポンプ12aを制御することにより、検出された臭気成分の濃度に従い、第1の充填部6aに対する幾何学的な最適化流量を含む流量範囲(第1の幾何学的最適流量範囲、例えば第1の幾何学的な最適化流量の0.8から1.2倍の範囲)内で第1の薬液放出部4aから第1の充填部6aに供給する薬液5の流量を制御する。
なお、第2の薬液放出部4bから薬液5は供給されない。
具体的には、制御装置33は、第1の薬液循環ポンプ12aを制御することにより、第1の幾何学的最適流量範囲で最大流量の薬液5を第1の薬液放出部4aから第1の充填部6aに供給し、そして、第2の薬液循環ポンプ12bを制御することにより、第2の幾何学的最適流量範囲内で、検出された臭気成分の濃度に従い、第2の薬液放出部4bから第2の充填部6bに供給する薬液5の流量を制御する。
例えば、第1の薬液放出部4aから流れ込む薬液5の流量を第1の幾何学的な最適化流量の1.2倍とし、第2の薬液放出部4bから流れ込む薬液5の流量を、第2の幾何学的最適流量範囲(例えば第2の幾何学的な最適化流量の0.8から1.2倍)内で、検出された臭気成分の濃度(又は検出された臭気成分の濃度から予め設定した閾値を差し引いた値)に応じて制御する。
例えば、第1の薬液放出部4a及び第2の薬液放出部4bの両方において、一定の流量の薬液5を放出してもよい。
検知器Sから入力した臭気成分の濃度が予め設定した閾値以下の場合、第1の薬液放出部4aのみから第1の充填部6aに対する幾何学的最適流量の範囲内の一定の流量の薬液5を第1の充填部6aに供給し、検知器Sから入力した臭気成分の濃度が予め設定した閾値を超える場合、さらに第2の薬液放出部4bから第2の充填部6bに対する幾何学的最適流量範囲内の一定の流量の薬液5を第2の充填部6bに供給し、第1の薬液放出部4a及び第2の薬液放出部4bから第1の充填部6a及び第2の充填部6bに薬液5を供給してもよい。
なお、幾何学的最適流量範囲での薬液の供給流量制御は実施形態1においても適用可能である。
制御装置33は、多段に積層された複数の反応モジュールを、反応モジュールの数から1少ない予め設定した閾値を使用して、最上段のモジュールから下段のモジュールへと順に、薬液5の供給流量を制御すればよい。
逆にガスGに含まれる臭気成分の濃度が減少した場合、臭気成分の濃度の減少とともに、下段に設けられた反応モジュールから順に選択し、選択された反応モジュールへの薬液の供給を停止する。従って、脱臭処理を行う場合、最上段に設置された反応モジュールには常に薬液が供給されている。
制御装置33により、第1の薬液放出部4a、第2の薬液放出部4b及び第3の薬液放出部4cに対応した第1の薬液循環ポンプ12a、第2の薬液循環ポンプ12b及び第3の薬液循環ポンプ12cを制御することで、それぞれの(第1、第2及び第3の)反応モジュールの運転を制御できる。
従来の脱臭装置99と本発明に係る脱臭装置100との運転コストの比較実験を行った。
図11に示すように、導入された臭気成分を含むガスGは2つに分岐され、バルブV1及びバルブV2により風量が調整され、従来の脱臭装置99及び本発明に係る脱臭装置100に導入される。脱臭処理されたガスGは、ファンFにより大気放出される。
脱臭装置99は、次亜塩素酸(NaOCl)及びNaOHの薬液を使用し、脱臭装置100は、次亜塩素酸の制御のため電解槽を用い、NaCl及びNaOHの薬液を使用した。
具体的には、図11に示すように、ガスGの臭気成分濃度は、入口側のガス検出器Siにより測定される。脱臭装置99により脱臭処理されたガスGの臭気成分濃度は、脱臭装置99の出口側のガス検出器So1により測定され、脱臭装置100により脱臭処理されたガスGの臭気成分濃度は、脱臭装置100の出口側のガス検出器So2により測定される。
入口側の検出器Siにより測定した結果、ガスGの臭気成分であるメチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル及び二硫化メチルの濃度は、それぞれ0.28、6.4、0.032及び0.02[ppm]であることが確認された。
脱臭装置99の出口側の検出器So1により測定した結果、脱臭処理後のガスGのメチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル及び二硫化メチルの濃度は、それぞれ0.005[ppm]未満 、0.001[ppm]、0.001[ppm]未満及び0.001[ppm]未満であった。
脱臭装置100の出口側の検出器So2により測定した結果、脱臭処理後のガスGのメチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル及び二硫化メチルの濃度は、それぞれ0.005[ppm]未満 、0.001[ppm]未満、0.001[ppm]未満及び0.001[ppm]未満であった。
入口側の検出器Siにより測定した結果、ガスGの臭気成分であるメチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル及び二硫化メチルの濃度は、それぞれ0.14、5.2、0.023及び0.017[ppm]であることが確認された。
脱臭装置99の出口側の検出器So1により測定した結果、脱臭処理後のガスGのメチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル及び二硫化メチルの濃度は、それぞれ0.005[ppm]未満、0.003[ppm]、0.001[ppm]未満及び0.001未満であった。
脱臭装置100の出口側の検出器So2により測定した結果、脱臭処理後のガスGのメチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル及び二硫化メチルの濃度は、それぞれ0.005[ppm]未満、0.001[ppm]未満、0.001[ppm]未満及び0.001[ppm]未満であった。
なお、図12は本質的に図5と同様の経時変化を示すグラフであるが、図5のグラフは視認性のため軸のスケールを調整していため、特に縦軸のスケールが図12のグラフと異なる。
その結果、本発明に係る脱臭装置100の処理コストは、従来の脱臭装置99の処理コストの0.39倍(61%低減)であり、脱臭装置100により大幅なコスト低減を図ることが可能であることが確認された。
脱臭装置の脱臭効果を確認等するため、ガスGの臭気成分濃度の測定を容易にすることができる測定ユニット50について説明する。以下に説明するように測定ユニット50は、検出器を稼働し、検出器の測定データを収集することができる。
なお、流出口8に排気ダクトを更に設け、排気ダクトに出口側ガス検出器Soを設置してもよい。
また、検出器用ポートは、検出器Si、Soを取り外した際には閉栓プラグをネジ等により取り付けることも可能である。
直流電源DC1、DC2は、電源用コネクタ52を介して供給される交流電力を直流電力に変換し、直流電力を制御回路CTL1、CTL2に供給する。
切替スイッチSW1、SW2は、第1及び第2の検出器S1、S2の出力信号レベルに合わせて、データロガーDLへの入力チャネルの選択を行うことができる。そのため、ガスGに含まれる臭気成分濃度のレベル(低濃度又は高濃度)に応じて、切替スイッチSW1、SW2によりデータロガーDLへの入力チャネルを選択でき、適切に精度良く臭気成分濃度の測定が可能である。
なお、データロガーDLが検出信号をデータとして記録装置に保存するとは、例えば信号線を介して入力された検出信号(アナログ信号)をデジタル化し、記録装置に記録(保存)することを意味する。ただし、データロガーDLが入力する検出信号がデジタル信号の場合は、デジタル化処理をすることなく記録装置に記録することも可能である。
図14(c)に示すように、筐体51の形状はアタッシュケース状(箱型の鞄状)であり、本体部55(収容部)と蓋部56とから構成されている。漏電ブレーカーELB、直流電源DC1、DC2、データロガーDL、切替スイッチSW1、SW2及び制御回路CTL1、CTL2は、本体部55に収容されている。電源用コネクタ52及び検出器用コネクタ53a、53bは本体部に設けられ、窓54は蓋部56に設けられている。
本体部55に対して蓋部56を開いた状態で切替スイッチSW1、SW2等の操作が可能となる。
本体部55及び蓋部56の前面部と対向する背面部には、図示しない蝶番が設けられ、本体部55及び蓋部56は、蝶番により回動可能(開閉可能)に支持されている。
本体部55と蓋部56とを留具58により固定した状態で、作業者が取手57を把持し、持ち運ぶことができる。
蓋部56は、収容された各構成要素(漏電ブレーカーELB、データロガーDL等)を覆い、保護する効果を奏する。ガスGの臭気成分濃度の測定時に不慮の事故で収容された構成要素が破損することを防止する。
従って、必要に応じて測定ユニット50を脱臭装置100の検出器S(S1、S2)に接続し、容易にガスGの臭気成分濃度を測定することができる。
なお、測定ユニット50は従来の脱臭装置にも使用可能であり、既存の脱臭装置への利用も容易である。
1 脱臭塔
2 ガス流入口
3 第1の配管
3a 開口端部
4 薬液放出部
4a 第1の薬液放出部
4b 第2の薬液放出部
5 薬液
6 充填部
6a 第1の充填部
6b 第2の充填部
7 デミスター
8 流出口
9 循環薬液槽(薬液貯留部)
10 第1の排出口(循環用排出口)
10a 第1の循環用排出口
10b 第2の循環用排出口
11 第2の配管
11a、11b 配管
12 第1のポンプ(薬液供給装置)
12a 第1の薬液循環ポンプ
12b 第2の薬液循環ポンプ
13 第3の配管
13a、13b 配管
14 分岐部
15 第4の配管
16 第5の配管
17 導入口
17a 第1の導入口
17b 第2の導入口
18 流量計
18a 第1の流量計
18b 第2の流量計
19 pH計
20 次亜塩素酸濃度計
21 導入口
22 第2の排出口(外部排出口)
23 第6の配管
24 第2のポンプ(薬液排出装置)
25 排液管(ドレーン)
26 薬品(次亜塩素酸ナトリウム)供給装置
27 第7の配管
28 導入口
29 タンク
30 第8の配管
31 導入口
32 第3のポンプ(アルカリ溶液供給ポンプ)
33 制御装置
34、34a、34b 第1の信号線(センサ用信号線)
35 第2の信号線(流量計用信号線)
35a 第1の流量計用信号線
35b 第2の流量計用信号線
36 第3の信号線(pH計用信号線)
37 第4の信号線(濃度計用信号線)
38 第5の信号線
39 第6の信号線
40 第7の信号線
41 第8の信号線
50 測定ユニット
51 筐体
52 電源用コネクタ
53a、53b 検出器用コネクタ
54 窓(開口部)
55 本体部
56 蓋部
57 取手
58 留具(ロック機構)
261 電解槽
262 ポンプ
263 第3の排出口
264 配管
G ガス(被処理ガス)
S、S1、S2 検出器
Si、Si1、Si2 入口側ガス検出器
So、So1、So2 出口側ガス検出器
DC1、DC2 直流電源
CTL1、CTL2 制御回路
DL データロガー
ELB 漏電ブレーカー
SW1、SW2 切替スイッチ
Claims (15)
- 臭気性ガスと薬液とを混合する脱臭塔と、
前記脱臭塔の内部に設置された薬液放出部と、
前記脱臭塔に流入する前記臭気性ガスに含まれる臭気成分の濃度を測定する検出器と、
前記薬液放出部に前記薬液を供給する薬液供給装置と、
前記薬液を外部に排出する薬液排出装置と、
前記薬液供給装置及び前記薬液排出装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記検出器の出力する前記臭気成分の濃度に基づいて前記薬液の排出量を制御することを特徴とする脱臭装置。 - 前記臭気成分の濃度が、予め定められた期間における濃度の積算値であるように構成された請求項1記載の脱臭装置。
- 前記検出器の出力する臭気成分の濃度に基づいて前記薬液の前記薬液放出部への流量を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の脱臭装置。
- 充填剤を備えた充填部を更に具備すると共に、前記充填部と前記薬液放出部とで反応モジュールを構成し、
前記脱臭塔の内部に前記反応モジュールが複数設けられ、
前記制御装置は、前記検出器の出力する臭気成分の濃度に基づいて、前記薬液放出部のそれぞれに対する前記薬液の流量を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の脱臭装置。 - 前記検出器は所定のサンプリング周期で臭気成分の濃度を測定し、
前記制御装置は、前記サンプリング周期より長い時間間隔で前記検出器の出力する臭気成分の濃度を積算することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の脱臭装置。 - 前記薬液に薬品成分を供給する薬品成分供給装置を備え、
前記制御装置は前記薬品成分供給装置を制御し、
前記検出器の出力する臭気成分の濃度に基づいて前記薬液に供給する前記薬品成分の量を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の脱臭装置。 - 前記薬品成分は次亜塩素酸ナトリウムであり、前記薬品成分供給装置は、電解槽を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の脱臭装置。
- 臭気成分を含む臭気性ガスを脱臭塔内で薬液と反応させて脱臭する脱臭方法であり、
前記脱臭塔に流入する臭気性ガスに含まれる臭気成分の濃度を検出器により測定する工程と、
前記臭気成分の濃度に基づいて前記脱臭塔から前記薬液の排出量を制御することを特徴とする脱臭方法。 - 前記検出器が測定した臭気成分の濃度に基づいて前記脱臭塔に放出する前記薬液の流量を制御する工程を更に含むことを特徴とする請求項8記載の脱臭方法。
- 前記検出器が測定した臭気成分の濃度に基づいて前記薬液に供給する次亜塩素酸ナトリウムの量を制御する工程を更に含むことを特徴とする請求項8又は9記載の脱臭方法。
- 充填剤を備えた充填部を更に具備すると共に、前記充填部と前記薬液放出部とで反応モジュールを構成し、
前記脱臭塔の内部に前記反応モジュールが複数設けられ、
前記検出器が測定した臭気成分の濃度に基づいて選択された前記反応モジュールの前記薬液放出部に前記薬液を供給する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の脱臭方法。 - 前記薬液放出部から放出する前記薬液の流量を幾何学的最適流量範囲で制御する工程を含むことを特徴とする請求項11記載の脱臭方法。
- 電源用コネクタ及び検出器用コネクタを有する筐体を備え、
前記筐体内には、直流電源と検出器用制御回路とデータロガーとを有し、
前記直流電源は前記電源用コネクタを介して供給される交流電力を直流電力に変換し前記検出器用制御回路に供給し、
前記検出器用制御回路は前記検出器用コネクタ介して接続される検出器に電力を供給するとともに、前記検出器からの信号を受信し、前記データロガーに出力し、
前記データロガーは前記検出器用制御回路から入力した信号をデータとして記録することを特徴とする測定ユニット。 - 前記筐体は窓を有し、
前記測定ユニットは表示装置を有し、
前記表示装置は、前記データを表示可能であり、前記表示装置は前記窓から視認可能であることを特徴とする請求項13記載の測定ユニット。 - 前記筐体は本体部と、前記本体部に開閉可能に支持された蓋部とを有し、
前記窓は前記蓋部に設けられ、
前記電源用コネクタ及び前記検出器用コネクタは、前記本体部に設けられていることを特徴とする請求項14記載の測定ユニット。
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