JP2022044461A - 全固体二次電池、積層全固体二次電池及びこれらの製造方法 - Google Patents

全固体二次電池、積層全固体二次電池及びこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 全固体二次電池の表面の凹凸を低減しながらも、前記集電部に従来よりもさらに亀裂が生じにくい、もしくは前記集電部が切断されにくい全固体二次電池を提供する。【解決手段】 正極層又は負極層の一方である第1極層と、前記第1極層の両面にそれぞれ積層された固体電解質層と、前記各固体電解質層の外面にそれぞれ積層された正極層又は前記負極層の他方である第2極層と、前記第1極層の側端面に配置された絶縁層と、前記第1極層から前記絶縁層を貫通して外側に突出する箔状の集電部とを備えた全固体二次電池であって、前記集電部が突出する側における前記絶縁層の側端面に、当該絶縁層の他の側端面とは表面粗さが異なる異表面部が形成されていることを特徴とする全固体二次電池。【選択図】図1

Description

本発明は、全固体二次電池、積層全固体二次電池及びこれらの製造方法に関するものである。
全固体二次電池のエネルギー密度を向上させるために、全固体二次電池を複数個積層させて使用することが考えられる。
このように全固体二次電池を複数個積層して使用する場合には、レート特性の向上や短絡抑制によるサイクル特性の向上のために、特許文献1に記載されているように、正極層又は負極層の一方(以下、第1極層ともいう。)と、該第1極層の表裏面にそれぞれ配置された固体電解質層と、該各固体電解質層の外面にそれぞれ積層された正極層又は負極層の他方(以下、第2極層ともいう。)を積層する構成とし、さらに各全固体二次電池表面の凹凸を低減して、隣接する全固体二次電池への物理的な影響を低減することが好ましい。
そこで、特許文献1では、前述したような構成の積層体を支持板上に置いた状態でラミネートパックし、等方圧プレスによって積層方向から加圧することで、表面の凹凸をさらに低減した全固体二次電池を作製している。
特開2019-121558号公報
しかしながら、前述したように等方圧プレスによって積層方向から加圧して製造した全固体二次電池では、充放電容量が発揮できなくなる不具合がごく稀にではあるが起こることに本発明者は気が付いた。
本発明者が鋭意検討した結果、この不具合の原因は、前記第1極層を外部の配線に電気的に接続するために設けられた箔状の突出部分である集電部の一部に亀裂が生じている、または該集電部が切断されていることが原因であることが明らかとなった。
このように前記集電部に亀裂が生じる又は前記集電部が切断されてしまうと、前記第1極層と外部の配線との間の電気的接続が遮断されてしまうので、前記集電部をもう一度前記第1極層と電気的に接続する工程が必要になり、全固体二次電池の製造工程が複雑になってしまうという問題がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、全固体二次電池の表面の凹凸を低減しながらも、前記集電部に従来よりもさらに亀裂が生じにくい、もしくは前記集電部が従来よりも切断されにくい全固体二次電池及び全固体二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明に係る全固体二次電池は、以下のような製造方法によって製造されるものである。
前記第1極層の両面に固体電解質層がそれぞれ積層されており、前記各固体電解質層の外面に前記第2極層がそれぞれ積層されており、前記第1極層を外部の配線に電気的に接続する箔状の集電部が前記第1極層から外側に突出するように配置され、該集電部を保護する集電部保護部材が前記集電部を包むように配置されている積層体を製造する積層体製造工程と、該積層体に、その積層方向から加圧する加圧工程と、前記加圧工程の後に、前記集電部保護部材を除去する除去工程とを含むことを特徴とする全固体二次電池製造方法。
このように構成した全固体二次電池の製造方法によれば、前記積層体に加圧している間、前記集電部の突出部分を前記集電部保護部材によって包み込んで保護することができるので、加圧によって集電部に亀裂が生じる若しくは集電部が切断されてしまうことを抑えることができる。
前記積層体が、前記第一極層の側端面を覆うように配置された絶縁層をさらに備え、前記集電部保護部材が前記絶縁層の側端面に一体に形成された余剰絶縁層であるものとすれば、前記絶縁層と前記集電部保護部材との間に隙間ができてしまうことがないので、前記集電部の亀裂や切断をより低減することができる。
前記余剰絶縁層と前記絶縁層との間に切り込みが形成されているものであれば、前記余剰絶縁層だけを除去しやすいので好ましい。前記余剰絶縁層をより除去しやすくするためには、前記切り込みが、前記絶縁層の積層方向における厚みの5%以上99%以下の範囲で形成されていることが好ましい。
前述したような製造方法によって製造された全固体二次電池は、以下のような特徴を有する。
前記第1極層と、前記第1極層の両面にそれぞれ積層された固体電解質層と、前記各固体電解質層の外面にそれぞれ積層された前記第2極層と、前記第1極層の側端面に配置された絶縁層と、前記第1極層から前記絶縁層を貫通して外側に突出する箔状の集電部とを備えた全固体二次電池であって、前記集電部が突出する側における前記絶縁層の側端面に、当該絶縁層の他の側端面とは表面の粗さが異なる異表面部が形成されている。
前記異表面部の一例としては、前記絶縁層の他の側端面に比べて表面が粗い粗化部となっているものを挙げることができる。
前記異表面部は、より具体的には、前記絶縁層の側端面の外側に形成されていた余剰絶縁層を除去した際に形成されたものであり、前記余剰絶縁層が、当該余剰絶縁層の除去前において前記集電部の突出部分を包み込んで保護するものである。
前記絶縁層から前記余剰絶縁層を除去することによって形成される前記異表面部の前記積層方向の高さが、前記絶縁層の前記積層方向の厚みの1%以上95%以下であるものを挙げることができる。
本発明の具体的な実施態様としては、前記絶縁層と前記集電体保護部材との間の切り込みは、前記集電体保護部の厚みの5%以上99%以下の深さで形成されているものを挙げることができる。
製造工程をより簡単にするために、前記余剰絶縁層と前記絶縁層とが一体成形されているものであることが好ましい。
具体的な実施態様としては、前記絶縁層が樹脂からなるものである又は樹脂を含有するものであることが好ましい。
前記絶縁層が、さらに絶縁性フィラーを含有するものであれば、該絶縁性フィラーによって前記絶縁層を形成する材料同士の密着性を向上させ、前記絶縁層の強度を向上させることができる。
前記絶縁性フィラーとして、繊維状樹脂、樹脂製不織布、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、ベーマイト、チタン酸バリウム、炭酸バリウム、イットリア及び酸化マンガンなどからなる群より選ばれる1種以上の物質が挙げられる。
前記集電部が突出している側の前記絶縁層の外縁の一部又は全部が前記第2極層の外縁よりも外側に位置するようにすれば、前記第1極層と前記第2極層(正極層と負極層)との間の物理的な接触による短絡を抑えることができるので好ましい。
前記第1極層と前記第2極層(正極層と負極層)との間の短絡をより抑えるには、前記第2極層の外縁の一部又は全部が、前記絶縁層の上に配置されていることが好ましい。
全固体二次電池全体の構造的な安定性をより向上させるためには、前記第1極層が、前記正極層であることが好ましい。
前記固体電解質層が、リチウム、リン及び硫黄を少なくとも含む硫化物系固体電解質を含有する全固体二次電池とすれば、より電池性能を向上させることができるので好ましい。
前記負極層は、リチウムと合金を形成する負極活物質及び/又はリチウムと化合物を形成する負極活物質を含み、充電時に前記負極層の内部に金属リチウムが析出可能であり、前記負極層の充電容量の80%以上が金属リチウムにより発揮されるものとすることが好ましい。
本発明の具体的な実施態様としては、前記負極層は、無定形炭素、金、白金、パラジウム、ケイ素、銀、アルミニウム、ビスマス、錫及び亜鉛からなる群より選択されるいずれか一種以上を含むものを挙げることができる。
本発明によれば、全固体電池の製造方法が加圧工程を含むものであるので、全固体二次電池の表面の凹凸を平坦化することができる。
さらに、加圧している間に、前記集電部の突出部分を前記集電部保護部材で包み込んで保護するので、前記集電部に直接圧力がかかって前記集電部の突出部分の根元で亀裂が生じたり、前記集電部が切断されたりすることを従来よりもさらに抑えることができる。
本発明の一実施形態に係る全固体二次電池の概略構成を示す断面図である。 本実施形態に係る全固体二次電池の概略構成を示す拡大断面図である。 本実施形態に係る全固体二次電池の概略構成を示す拡大平面図である。 本実施形態に係る全固体二次電池の製造方法を示す模式図である。 本実施形態に係る全固体二次電池の製造方法を示す模式図である。 本実施形態に係る全固体二次電池の製造方法を示す模式図である。 本実施形態に係る全固体二次電池の余剰絶縁層、絶縁層及び正極層を積層方向から視た模式図である。 余剰絶縁層材料の側端面を表す模式図。 本実施形態に係る全固体二次電池の製造方法を示す模式図である。 本実施形態に係る全固体二次電池の粗化部を示す拡大図である。 本発明の実施例に係る全固体二次電池の充放電評価の結果を示すグラフである。 本発明の実施例及び比較例に係る全固体二次電池のサイクル特性を示すグラフである。 本発明の実施例に係る全固体二次電池の充放電評価の結果を示すグラフである。 本発明の比較例に係る全固体二次電池の充放電評価の結果を示すグラフである。 本発明の比較例に係る全固体二次電池の充放電評価の結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る全固体二次電池のサイクル特性を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、図中の各構成要素は、説明の容易化のために適宜拡大または縮小されており、図中の各構成要素の大きさ、比率は、実際のものとは異なる場合がある。
<1.全固体二次電池の構成>
まず、本発明の実施形態に係る全固体二次電池1の構成について説明する。
本実施形態に係る全固体二次電池1は、正極層10と、負極層20と、固体電解質層30とを備えているものである。より具体的には、正極層10又は負極層20の一方(以下、第1極層ともいう。)と、前記第1極層の両面にそれぞれ積層された固体電解質層30と、前記各固体電解質層の外面にそれぞれ積層された正極層10と負極層20の他方(以下、第2極層ともいう。)と、前記第1極層の側端面Sに配置された絶縁層13とを備える全固体リチウム二次電池1である。本実施形態では、図1及び図2に示すように、前記第1極層が正極層10であり、前記第2極層が負極層20であるものについて説明する。なお、側端面とは、前記各層の積層方向ではない周囲の端部であり、前記各層の積層方向に対して垂直な方向における各層の端部を意味する。
(1-1.正極層)
正極層10は、図2に示すように、正極集電体11と正極活物質層12とを含む。
正極集電体11としては、例えば、ステンレス鋼、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)又はこれらの合金からなる板状体または箔状体等を挙げることができる。
正極活物質層12は、図2に示すように、正極集電体11の両面に配置されている。正極活物質層12は、正極活物質及び固体電解質を含有する。
正極活物質層12に含有される固体電解質は、固体電解質層30に含有される固体電解質と同種のものであっても、同種でなくてもよい。固体電解質の詳細は、後述する固体電解質層30の項にて説明する。
前記正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することが可能な正極活物質であればよい。
例えば、前記正極活物質は、例えば、粉末状又は粒状のものであり、コバルト酸リチウム(以下、LCOと称する)、ニッケル酸リチウム(Lithium nickel oxide)、ニッケルコバルト酸リチウム(lithium nickel cobalt oxide)、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(以下、NCAと称する)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(以下、NCMと称する)、マンガン酸リチウム(Lithium manganate)、リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate)等のリチウム塩、硫化ニッケル、硫化銅、硫黄、酸化鉄、又は酸化バナジウム等を用いて形成することができる。これらの正極活物質は、それぞれ単独で用いられてもよく、また2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
また、前記正極活物質は、上述したリチウム塩のうち、層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含んで形成されることが好ましい。ここで「層状」とは、薄いシート状の形状を表す。また、「岩塩構造」とは、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型構造のことを表し、具体的には、陽イオンおよび陰イオンの各々が形成する面心立方格子が互いに単位格子の稜の1/2だけずれて配置された構造を表す。
このような層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩としては、例えば、LiNiCoAl(NCA)、またはLiNiCoMn(NCM)(ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、かつx+y+z=1)などの三元系遷移金属酸化物のリチウム塩を挙げることができる。
前記正極活物質が、上記の層状岩塩型構造を有する三元系遷移金属酸化物のリチウム塩を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー(energy)密度および熱安定性を向上させることができる。
前記正極活物質は、被覆層によって覆われていても良い。ここで、本実施形態の被覆層は、全固体二次電池1の正極活物質の被覆層として公知のものであればどのようなものであってもよい。被覆層の例としては、例えば、LiO-ZrO等を挙げることができる。
また、正極活物質が、NCAまたはNCMなどの三元系遷移金属酸化物のリチウム塩にて形成されており、正極活物質としてニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態での正極活物質からの金属溶出を少なくすることができる。これにより、本実施形態に係る全固体二次電池1は、充電状態での長期信頼性およびサイクル(cycle)特性を向上させることができる。
ここで、正極活物質の形状としては、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状を挙げることができる。また、正極活物質の粒径は特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲であれば良い。なお、正極層10における正極活物質の含有量も特に制限されず、従来の全固体二次電池1の正極層10に適用可能な範囲であれば良い。
また、正極活物質層12には、上述した正極活物質および固体電解質に加えて、例えば、導電助剤、結着材、フィラー(filler)、分散剤、イオン伝導助剤等の添加物が適宜配合されていてもよい。
正極活物質層12に配合可能な導電助剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、金属粉等を挙げることができる。また、正極活物質層12に配合可能なバインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)等を挙げることができる。さらに、正極活物質層12に配合可能なフィラー、分散剤、イオン伝導助剤等としては、一般に全固体二次電池1の電極に用いられる公知の材料を用いることができる。
(1-2.負極層)
負極層20は、例えば、図2に示すように、板状または箔状の負極集電体21と、該負極集電体21上に形成された負極活物質層22とを含む。
負極集電体21は、本実施形態では、全固体二次電池1の最外層を形成するものである。
この負極集電体21は、リチウムと反応しない、すなわち合金および化合物のいずれも形成しない材料で構成されることが好ましい。
負極集電体21を構成する材料としては、ステンレスのほかに、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、およびニッケル(Ni)などを挙げることができる。
負極集電体21は、これらの金属のいずれか1種で構成されていても良いし、2種以上の金属の合金またはクラッド材で構成されていても良い。
負極活物質層22は、例えば、リチウムと合金を形成する負極活物質とリチウムと化合物を形成する負極活物質とのうちの少なくとも一方を含む。そして、負極活物質層22は、このような負極活物質を含有することにより、以下に説明するように、負極活物質層22の一方又は両方の表面上に金属リチウムを析出させることができるように構成されていても良い。
前記負極活物質は、例えば、無定形炭素、金、白金、パラジウム(Pd)、ケイ素(Si)銀、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫、アンチモン、および亜鉛等を挙げることができる。
ここで、前記無定形炭素としては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックやグラフェン等を挙げることができる。
前記負極活物質の形状は、特に限定されず、粒状であっても良いし、例えば、めっき層のような均一な層状のものであってもよい。
前者の場合、リチウムイオンは、粒状の負極活物質同士の隙間を通過して、負極活物質層22と負極集電体21との間に主にリチウムからなる金属層が形成され、一部のリチウムは負極活物質内の金属元素と合金を形成するなどして負極活物質層22内に存在する。
一方で、後者の場合、負極活物質層22と固体電解質層30との間に前記金属層が析出する。
上述した中でも、負極活物質層22は、無定形炭素として、窒素ガス吸着法により測定される比表面積が100m/g以下である低比表面積無定形炭素と、窒素ガス吸着法により測定される比表面積が300m/g以上である高比表面積無定形炭素との混合物を含むことが好ましい。
負極活物質層22は、これらの負極活物質のいずれか一種だけを含有していても良いし、2種以上の負極活物質を含有していても良い。例えば、負極活物質層22は、前記負極活物質として無定形炭素のみを含有していても良いし、金、白金、パラジウム、ケイ素、銀、アルミニウム、ビスマス、錫、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択されるいずれか一種以上を含有していてもよい。また、負極活物質層22は、金、白金、パラジウム、ケイ素、銀、アルミニウム、ビスマス、錫、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択されるいずれか一種以上と無定形炭素との混合物を含有していても良い。
無定形炭素と前述した金などの金属との混合物の混合比(質量比)は、1:1~1:3程度であることが好ましい、負極活物質をこれらの物質で構成することで、全固体二次電池1の特性がさらに向上する。
前記負極活物質として、無定形炭素とともに金、白金、パラジウム、ケイ素、銀、アルミニウム、ビスマス、錫、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択されるいずれか一種以上を使用する場合、これら負極活物質の粒径は4μm以下であることが好ましい。この場合、全固体二次電池1の特性がさらに向上する。
また、前記負極活物質として、リチウムと合金を形成可能な物質、例えば、金、白金、パラジウム、ケイ素、銀、アルミニウム、ビスマス、錫、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択されるいずれか一種以上を使用する場合、負極活物質層22は、これら金属からなる層であってもよい。例えば、この金属の層は、めっき層であってもよい。
負極活物質層22は、必要に応じて、さらにバインダを含んでも良い。このバインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PET)、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド等を挙げることができる。バインダは、これらの1種で構成されていても、2種以上で構成されていてもよい。このようにバインダを負極活物質層22に含めることにより、特に前記負極活物質が粒状の場合に、該負極活物質の離脱を抑えることができる。負極活物質層22に含有されるバインダの含有率は、負極活物質層22の総質量に対して、例えば、0.3質量%以上20.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以上15.0質量%以下である。
また、負極活物質層22には、従来の全固体二次電池1で使用される添加剤、例えばフィラー、分散材、イオン伝導材などが適宜配合されていても良い。
負極活物質層22の厚みは、前記負極活物質が粒状の場合には、特に制限されないが、例えば、1.0μm以上20.0μm以下、好ましくは1.0μm以上10μm以下である。このような厚みにすることにより、負極活物質層22の上述した効果を十分に得つつ負極活物質層22の抵抗値を十分に低減でき、全固体二次電池1の特性を十分に改善できる。
一方で、負極活物質層22の厚みは、前記負極活物質が均一な層を形成する場合には、例えば、1.0nm以上100.0nm以下である。この場合の負極活物質層22の厚みの上限値は、好ましくは95nm、より好ましくは90nm、さらに好ましくは50nmである。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、負極活物質層22は、全固体二次電池1の負極活物質層22として、利用可能な任意の構成を採用することが可能である。
例えば、負極活物質層22は、前述した負極活物質と、固体電解質と、負極層導電助剤とを含む層であっても良い。
この場合、例えば、前記負極活物質として金属活物質またはカーボン(carbon)活物質等を用いることができる。前記金属活物質としては、例えば、リチウム(Li)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、及びケイ素(Si)等の金属、ならびにこれらの合金等を用いることができる。また、カーボン活物質としては、例えば、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス(coke)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール(furfuryl alchol)樹脂焼成炭素、ポリアセン(polyacene)、ピッチ(pitch)系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛、及び難黒鉛化性炭素等を用いることができる。なお、これらの負極活物質は、単独で用いられても良く、また2種以上を組み合わせて用いられても良い。
前記負極層導電助剤および前記固体電解質は、正極活物質層12に含まれる導電剤及び固体電解質と同様の化合物を用いることができる。そのため、これらの構成についてのここでの説明は省略する。
(1-3.固体電解質層)
前記固体電解質層30は、正極層10と負極層20との間に形成される層であり、固体電解質を含むものである。
本実施形態では、固体電解質層30は、正極層10と負極層20との間に積層されている。
固体電解質層30の厚みは、電池として完成した状態での厚みが5μm以上100μm以下であればよい。この厚みは8μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
前記固体電解質は例えば、粉末状のものであり、例えば硫化物系固体電解質材料で構成される。
該硫化物系固体電解質材料としては、例えば、LiS-P、LiS-P-LiX(Xはハロゲン元素、例えばI、Br、Cl)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、Li2-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは正の数、ZはGe、ZnまたはGaのいずれか)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは正の数、MはP、Si、Ge、B、Al、GaまたはInのいずれか)等を挙げることができる。ここで、前記硫化物系固体電解質材料は、出発原料(例えば、LiS、P等)を溶融急冷法やメカニカルミリング(mechanical milling)法等によって処理することで作製される。また、これらの処理の後にさらに熱処理を行っても良い。固体電解質は、非晶質であっても良く、結晶質であっても良く、両者が混ざった状態でも良い。
また、固体電解質として、上記の硫化物系固体電解質材料のうち、硫黄と、ケイ素、リンおよびホウ素からなる群から選択される1種以上の元素とを含有する材料を用いることが好ましい。これにより、固体電解質層30のリチウム伝導性が向上し、全固体二次電池1の電池特性が向上する。特に、固体電解質として少なくとも構成元素として硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含むものを使用するのが好ましく、特にLiS-Pを含むものを用いることがより好ましい。
ここで、固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料としてLiS-Pを含むものを用いる場合、LiSとPとの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50~90:10の範囲で選択されてもよい。また、固体電解質層30には、バインダを更に含んでいても良い。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)等を挙げることができる。固体電解質層30に含まれるバインダは、正極活物質層12および負極活物質層22内のバインダと同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであっても良い。
(1-4.絶縁層)
絶縁層13は、例えば、本実施形態における第1極層である正極層10の側端面Sの全体を覆うように正極層10の側端面Sに密着して配置されたものである。この絶縁層13は、電気を通さない素材である絶縁層材料13Aを用いて形成されているものであれば良いが、絶縁層材料13Aを構成する素材としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、またはこれらのコポリマーなどの樹脂を含有する樹脂フィルム等を挙げることができる。このような樹脂フィルムであれば、例えば、等方圧プレス等の加圧成形によって、正極層10に密着させて剥がれ落ちにくくすることができる。また、該絶縁層材料13Aが、これらの樹脂に絶縁性のフィラーなどを混ぜ込んだものであればなお良い。絶縁層材料13Aが、絶縁性フィラーを含有することによって、絶縁層材料13A同士の密着性が良くなり、絶縁層材料13Aによって絶縁層13を形成する際や使用時における、絶縁層13の強度を向上させることができる。また、絶縁層材料13Aが、樹脂とともに絶縁性のフィラーを含有することによって、絶縁層13の表面に絶縁性フィラーを混ぜ込むことによる微細な凹凸を形成することができる。この絶縁層13の表面の凹凸形状によって、固体電解質層30を積層する際に固体電解質層30が絶縁層13からより剥がれ落ちにくくすることもできる。前記絶縁性フィラーは、粒子状、繊維状、針状又は板状のものなど様々な形状のものを使用することができる。これらの中でも、前記効果を特に顕著に奏するものとして繊維状又は不織布状の絶縁性フィラーを使用することが好ましい。
前記絶縁性フィラーとしては、コスト上昇を抑える観点から、例えば、繊維状樹脂、樹脂製不織布、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、ベーマイト、チタン酸バリウム、炭酸バリウム、イットリア及び酸化マンガンからなる群より選ばれる1種以上の物質からなるものを使用することが好ましい。
(1-5.集電部)
正極集電体11及び負極集電体21は、集電部を介して外部の配線に接続されている。前記集電部は、例えば、図2及び図3に示すように、正極集電体11を外部の配線等に電気的に接続する正極集電部111と、負極集電体21を外部の配線に接続する負極集電部211とを備えている。
正極集電部111は、例えば、正極集電体11と同じ素材で形成された箔状のものである。該正極集電部111は、正極集電体11から延出するように、正極集電体11と一体に形成されている。各図面では、正極集電体11と正極集電部111との間に想像線を記載してある。
本実施形態では、前記第1極層である正極層10が備える正極集電体11を外部の配線に接続する正極集電部111が、絶縁層13を貫通して外側に突出するように構成されている。なお、説明の便宜上、図1~10においては、この正極集電部111が突出する方向を突出方向、全固体二次電池1を構成する各層を前記積層方向から視た平面図における前記突出方向に対して垂直な方向を幅方向としている。
負極集電部211は、例えば、負極集電体21と同じ素材で形成された箔状のものである。該負極集電部211は、負極集電体21から延出するように負極集電体21と一体に形成されていている。図3では、負極集電体21と負極集電部211との間に想像線を記載してある。
より具体的に説明すると、正極集電体11は、全固体二次電池1の使用時において、該正極集電体11の一端部に取り付けられた正極集電部111および図示しない端子(集電タブ)を介して配線に接続される。
同様にして、負極集電体21は、全固体二次電池1の使用時において、該負極集電体21の一端部に取り付けられた負極集電部211および図示しない端子(集電タブ)を介して配線に接続される。
なお、正極集電部111及び負極集電部211の厚みは、一体に形成されている正極集電体11又は負極集電体21の厚みによって適宜変更できるものであるが、例えば、1μm以上50μm以下、より好ましくは5μm以上30μm以下のものである。
<2.全固体二次電池の製造方法>
続いて、本実施形態に係る全固体二次電池1を製造する方法及び手順の一例について図4~8を参照しながら説明する。
本実施形態に係る全固体二次電池1の製造方法は、以下のような工程を含むものである。
(2-1.正極層の作製)
正極活物質層12を構成する材料(正極活物質、バインダ等)を非極性溶媒に添加することで、正極活物質層塗工液(この正極活物質層塗工液は、スラリー(sullury)状のものであってもいし、ペースト(paste)状のものであってもよい。他の層を形成するために使用される塗工液も同様である。)を作製する。ついで、図4(a)に示すように、得られた正極活物質層塗工液を正極集電体11の両表面に塗布、乾燥した後、正極集電体11と塗布した正極活物質層12をトムソン刃などで矩形板状に打抜く。このようにして得られた積層体を正極構造体と呼ぶ。この正極構造体をPETフィルムが敷かれたアルミ板上に置き、この正極構造体の周囲に絶縁層13を形成する略矩形リング状の絶縁層材料13Aを配置して、これら全体の上にさらにPETフィルムを配置した後、ラミネートパックして等方圧による加圧処理をする(等方圧プレス)ことによって、積層方向から圧力かけて図4(b)に示す、切り取り前正極層10Aを作製する。
(2-2.負極層の作製)
負極活物質層22を構成する材料(負極活物質、バインダ等)を極性溶媒または非極性溶媒に添加することで、負極活物質層塗工液を作製する。ついで、図5(a)に示すように、得られた負極活物質層塗工液を負極集電体21上に塗布し乾燥する。これを矩形板状となるようにトムソン刃などで打抜くことにより負極層20を作製する。
(2-3.固体電解質層の作製)
固体電解質層30は、硫化物系固体電解質材料にて形成された固体電解質により作製することができる。固体電解質の作製方法は以下の通りである。
まず、溶融急冷法やメカニカルミリング(mechanical milling)法により出発原料を処理する。
例えば、溶融急冷法を用いる場合、出発原料(例えば、LiS、P等)を所定量混合し、ペレット状にしたものを真空中で所定の反応温度で反応させた後、急冷することによって硫化物系固体電解質材料を作製することができる。なお、LiSおよびPの混合物の反応温度は、好ましくは400℃~1000℃であり、より好ましくは800℃~900℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1時間~12時間であり、より好ましくは1時間~12時間である。さらに、反応物の急冷温度は、通常10℃以下であり、好ましくは0℃以下であり、急冷速度は、通常1℃/sec~10000℃/sec程度であり、好ましくは1℃/sec~1000℃/sec程度である。
また、メカニカルミリング法を用いる場合、ボールミルなどを用いて出発原料(例えば、LiS、P等)を撹拌させて反応させることで、硫化物系固体電解質材料を作製することができる。なお、メカニカルミリング法における撹拌速度および撹拌時間は特に限定されないが、撹拌速度が速いほど硫化物系固体電解質材料の生成速度を速くすることができ、撹拌時間が長いほど硫化物系固体電解質材料への原料の転化率を高くすることができる。
その後、溶融急冷法またはメカニカルミリング法により得られた混合原料を所定温度で熱処理した後、粉砕することにより粒子状の固体電解質を作製することができる。固体電解質がガラス転移点を持つ場合は、熱処理によって非晶質から結晶質に変わる場合がある。
続いて、上記の方法で得られた固体電解質と、他の添加剤、例えば、バインダ等と分散媒とを含む固体電解質層塗工液を作製する。分散媒としては、キシレン、ジエチルベンゼンなどの汎用の非極性溶媒を用いることができる。もしくは固体電解質と比較的反応性の乏しい極性溶媒を用いることもできる。固体電解質及び他の添加物の濃度は、形成する固体電解質層30の組成及び液状組成物の粘度などに応じて、適宜調節することができる。
前述した固体電解質の液状組成物を表面が離型処理されたPETフィルム上にブレードで塗工し、乾燥させた後、PETフィルム上に固体電解質層30が形成された固体電解質シートを作製する。
(2-4.積層工程)
前述したようにして作製した負極層20の片面に、図5(a)にしめすように、負極層20と同じ形状またはより大きな形状になるように打ち抜いた固体電解質シートを積層し、これらを等方圧プレスすることによって、図5(b)に示すように、負極層20と固体電解質層30とを密着させ一体化する。固体電解質層30が負極層20より大きな形状の場合、固体電解質層30のうち、負極層20上に積層したときに外側に突出している部分については除去することもできる。この積層体を、電解質負極構造体20Aと呼ぶことにする。
次に、図6(a)に示すように、前述した切り取り前正極層10Aを両面から2つの電解質負極構造体20Aで挟むように積層する。このとき、正極層10の両面に電解質負極構造体20Aの固体電解質層30がそれぞれ接触するように電解質負極構造体20Aを積層し、これら全体をラミネートパックして等方圧プレスすることによって、図6(b)に示すような積層体である未処理全固体二次電池1Aを製造する。
本実施形態では前述した積層工程において、図2、図3及び図6(b)に示すように、絶縁層13の外縁1Eが負極層20の外縁2Eよりも外側になるようにしてある。
絶縁層13の外縁1Eは、負極層20の外縁2Eよりも、例えば、1μm以上2mm以下の範囲で外側にずれて配置されていればよい。このずれ幅の範囲は、0.05mm以上1mm以下であることが好ましく、0.1mm以上0.5mm以下の範囲であればより好ましい。
より具体的には、図2、図3及び図6(b)に示すように、本実施形態では、負極層20の外縁2Eの少なくとも一部が正極層10の周囲に設けられた絶縁層13の外縁1Eよりは内側であり、好ましくは絶縁層13上に位置するように積層してある。
このように構成すれば、例えば、図2に記載されている全固体二次電池1において、外部からの圧力によって負極層20が正極層10側に押し付けられて変形してしまった場合であっても、正極層10と負極層20との間の物理的短絡を抑制することができる。
図2に記載されている全固体二次電池1においては、特に、負極層20の外縁2Eと、正極層10とが、正極集電部111を介して物理的な短絡を起こしやすいので、図2、図3、図6(b)に示すように、正極層10をその側端面Sから覆う絶縁層13の外縁1Eの一部が、少なくとも正極集電部111が突出している側において、負極層20の外縁2Eよりも外側にあれば良い。このようにしておけば、負極集電体21又は負極活物質層22の外縁2Eと正極集電部111とが接触することによる正極層10と負極層20との間の短絡を抑止することができる。絶縁層13の外縁1Eの一辺又は全周が負極層20の外縁2Eよりも外側にあるようにしても良い。
絶縁層13の外縁1Eとは、図2、図3、図6(b)に示すように、絶縁層13の側端面のうち、積層方向に対して垂直な方向における最も外側の縁(外縁)を指し、より具体的には、正極集電部111が突出している側の絶縁層13の外縁を指す。また、負極層20の外縁2Eとは、負極層20の側端面のうち、積層方向に対して垂直な方向における最も外側の縁(外縁)を指し、本実施形態においては、例えば、負極集電体21又は負極活物質層22の側端面のうち積層方向に対して垂直な方向における最も外側の縁である。
(2-5.等方圧プレス)
以下に、前述した等方圧プレスによる加圧処理(加圧工程)について説明する。
等方圧プレスは、積層体の少なくとも一方の面側に例えば、SUS板などの支持板4を配置して行う。この等方圧プレスによって、切り取り前正極層10A、電解質負極構造体20A又は未処理全固体二次電池1Aを形成する各積層体に対して、その積層方向からの加圧処理を行うことができる。
等方圧プレスの圧力媒体としては、水やオイル等の液体や、粉体等を挙げることができる。圧力媒体としては液体を用いることがより好ましい。
等方圧プレスにおける圧力は、特に限定されないが、例えば10~1000MPa、好
ましくは100~500MPaとすることができる。また、加圧時間は、特に限定されず、例えば1~120分、好ましくは5~30分とすることができる。さらに、加圧時における圧力媒体の温度も特に限定されず、例えば20~200℃、好ましくは50~100℃とすることができる。
なお、等方圧プレス時には、全固体二次電池1を構成する積層体は、支持板4と共に、樹脂フィルム等によりラミネートされ、外部雰囲気から遮断された状態とすることが好ましい。
等方圧プレスは、ロールプレス等の他のプレス法と比較し、全固体二次電池1を構成する各層の割れの抑制や、全固体二次電池1の反り防止の観点から有利である。
(2-6.本発明に係る全固体二次電池の製造方法の特徴点)
しかして、本発明に係る全固体二次電池1の製造方法の特徴は、少なくとも前述した加圧工程の間は、集電部(111又は211)の突出部分を包み込んで保護する集電部保護部材14によって集電部(111又は211)の全体を両面から覆っておくことである。
本実施形態では、中心に挟み込まれている前記第1極層である正極層10の正極集電体11に取り付けられている正極集電部111の突出部分を集電部保護部材14で覆うようにしている。
集電部保護部材14は、少なくとも等方圧をかけている間、正極集電部111全体を隙間なく覆うことができるように、正極集電部111の面積よりも大きい面を有するものであればよく、その形状は特に限定されない。集電部保護部材14は、例えば、図7に示すように絶縁層13と一体に形成され、絶縁層13の幅と同じ幅及び厚みで、絶縁層13から正極集電部111と同じ方向に正極集電部111よりも大きく突出する矩形板状の余剰絶縁層14とするのが製造のしやすさという観点から好ましい。なお、各図面では分かりやすいように、絶縁層13と余剰絶縁層14との間に想像線を記載してある。
本実施形態では、この余剰絶縁層14は、図8に示すように、リング状の絶縁層材料13Aの端部に一体に形成された集電部保護部材材料14Aによって形成されるものである。
本実施形態では、図8に示すような、絶縁層材料13Aと集電部保護部材材料14Aとを備える余剰絶縁層材料13Bを2枚用意し、これら2枚の余剰絶縁層材料13Bを、正極集電部111全体の両面を集電部保護部材材料14Aで挟むように配置してから等方圧による圧力処理をすることによって、図7に示すように、正極集電部111を余剰絶縁層14で覆うようにしてある。なお、図8は、余剰絶縁層材料13Bの側端面を表す模式図である。
集電部保護部材材料14Aは絶縁層材料13Aとは独立して形成されたものであっても良いが、図7及び図8に示すように、絶縁層材料13Aの端部に、絶縁層材料13Aと一体に形成されていることが製造のしやすさという観点から好ましい。
集電部保護部材14の厚みは、例えば、正極集電部111の片側に積層されている集電部保護部材材料14A一枚分の厚みが10μm以上500μm以下であることが好ましく、50μm以上300μm以下であることがより好ましく、80μm以上200μm以下であることがとくに好ましい。また、この好ましい厚みは正極層10の厚みに応じて変わり、正極活物質層12の厚みと近い厚みのものが適している。集電部保護部材材料14Aを正極集電部111の両面に積層した状態での集電部保護部材14全体の合計厚みは、20μm以上1000μm以下であることが好ましく、100μm以上600μm以下であることがより好ましく、160μm以上400μm以下であることが特に好ましい。先程も述べたように、この好ましい合計厚みも正極層10の厚みに応じて変わり、正極集電体11の両面に形成された2つの正極活物質層12の合計厚みと近い厚みのものが適している。
このように、集電部保護部材14の厚みが、正極活物質層12の厚みに対応した厚さであることで正極集電部111を覆っている集電部保護部材14と正極層10との段差が低減し、加圧処理の際に正極集電部111に亀裂が入ったり、切断されたりすることをより効果的に抑えることができる。
正極集電部111の両面にそれぞれ1枚ずつ積層される2枚の集電部保護部材材料14Aの厚みは互いに同じであっても良いし、異なっていても良い。また、絶縁層13の厚みと集電部保護部材14の厚みは互いに同じであっても良く、異なっていても良い。
製造工程を簡便にすることができるので、集電部保護部材14は、前述した絶縁層13と同じ素材からなるものであることが好ましいが、これに限られない。
正極集電部111を集電部保護部材14で覆うタイミングは、特に限定されず、等方圧プレスをしている間、正極集電部111が集電部保護部材14で覆われていれば良い。例えば、集電部保護部材14を形成する集電部保護部材材料14Aが絶縁層材料13Aと一体に形成されていない場合などには、正極集電体11に正極活物質層12を積層する前から、正極集電部111を集電部保護部材14で覆っておくようにしても良い。
前述したように、正極集電部111を集電部保護部材14で覆った状態で等方圧をかけて、全固体二次電池1を構成するすべての層を密着させ未処理全固体二次電池1Aを成形する。その後、図9に示すように、未処理全固体二次電池1Aから集電部保護部材14である余剰絶縁層14を除去する除去工程を経ることによって、全固体二次電池1が完成する。なお、図9中、図9(a)は未処理全固体二次電池1Aを、図9(b)は余剰絶縁層14を除去した後の全固体二次電池1を示す。この図9では、絶縁層13が2枚の絶縁層材料13Aで形成されているが、これら絶縁層材料13Aは、例えば、初回充電時に加熱されて一体化するものとしても良い。
余剰絶縁層14は、正極集電部111が露出するように、例えば、全固体二次電池1を構成する各層の積層方向に対して垂直な方向へ手で引っ張って切り取る。この時、例えば、絶縁層13と余剰絶縁層14との間の厚み方向に切り込み13Cを入れておけば、余剰絶縁層14を除去しやすい。この切り込み13Cは、正極集電部111側から積層方向外側に向かって形成されていても良いし、積層方向外側から正極集電部111側に向かって形成されていても良い。さらに、切り込み13Cは余剰絶縁層14の幅全体にわたって形成されていても良いが、例えば、破線状に形成されていても良いし、切り取り始めるきっかけとなるように余剰絶縁層14の幅方向の一端又は両端から所定長さの範囲にだけ切り込み13Cが形成されていても良い。
切り込み13Cの厚み方向の深さは、全固体二次電池1の積層方向における絶縁層13の厚みの5%以上99%以下の範囲であることが好ましい。絶縁層の厚みの5%以上の深さで切り込み13Cが形成されていれば、余剰絶縁層14を切り取りやすいので好ましい。絶縁層13の厚みの99%以下の深さの切り込み13Cであれば、等方圧をかけている間に正極集電部111に亀裂が生じることや切断されてしまうことを抑えることができるので好ましい。
なお、余剰絶縁層14を取り除く方法は前述したものに限らず、例えば、人の手ではな
く工具や機械によって取り除くようにしても良い。
<3.本実施形態に記載の製造方法によって製造された全固体二次電池の特徴>
絶縁層13と一体に形成された余剰絶縁層14を、前記絶縁層13から手で引っ張って切断するなどして除去した全固体二次電池1は、図10に示すように、正極集電部111が突出する側における絶縁層13の側端面に、絶縁層13の他の側端面とは異なる表面粗さの異表面部13Dが形成されている。
この異表面部13Dは、例えば、余剰絶縁層14を絶縁層13から手で引っ張って除去したときに形成される不規則な断面のことであり、絶縁層13の他の側端面と比べて表面粗さが粗い粗化部13Dとなっている。本実施形態では、余剰絶縁層14を引っ張ってちぎっているので、粗化部13Dは余剰絶縁層14と絶縁層13との境界で樹脂が裂けてささくれた状態になっている。本実施形態のように絶縁層13と余剰絶縁層14との間に切り込み13Cが形成されている場合には、図10に示すように切り込み13Cが形成されていた部分を除く部分において、この粗化部13Dが形成される。なお、この図10は、余剰絶縁層14が除去された後の全固体二次電池1(図9(b)に示す。)を、正極集電部111が突出している側から視た模式図であり、正極集電部111から外側に向けて絶縁層13の厚みの半分程度まで切り込み13Cが形成されている場合の全固体二次電池の絶縁層13及び正極集電部111を示すものである。粗化部13D等の異表面部13Dは、前述したように、例えば、切り込み13Cが形成されていた場所によってその形成される場所が異なるものであり、絶縁層13と余剰絶縁層14との間全体に及んで形成されているものであっても良いし、一部のみに形成されていても良い。粗化部13Dの積層方向における厚みは、切り込みを除いた範囲である絶縁層の厚みの1%以上95%以下であることが好ましい。
<4.本実施形態に係る全固体二次電池及び全固体二次電池の製造方法による効果>
全固体二次電池1は粉体を固めて各層を形成しているので、等方圧等による圧力処理をしないまま製造すると、粉体と粉体との間のわずかな隙間などによって各層の表面にくぼみや凹凸ができてしまう恐れがある。本実施形態に係る全固体二次電池1の製造方法によれば、等方圧プレスによって全体を成形しているので、全固体二次電池1の表面の凹凸をできるだけ小さく抑えることができる。その結果、これら全固体二次電池1を複数個積層した積層全固体二次電池において、全固体二次電池1の凸部にのみ電流が集中することを避けることができる。
このように全固体二次電池1の表面の一部分にのみ電流が集中することを回避できれば、正極層10及び負極層20の全体が充放電に寄与するので、積層全固体二次電池の充放電容量を向上させることができる。
また、正極層10及び負極層20が全体にわたって均一に充放電に寄与することによって、例えば、金属リチウムなどが一部の場所にのみ集中して析出することを抑えることができる。その結果、金属リチウムの析出による短絡を抑えることもできる。
また、等方圧プレスをしている間は、正極集電部111の全面を集電部保護部材14によって両面から覆っているので、正極集電部111に亀裂が生じることや正極集電部111が切断されてしまうことを抑えることができる。
その結果、正極集電部111を正極集電体11につなぎなおす手間をかけることなく、信頼性の高い全固体二次電池1及び積層全固体二次電池を製造することができる。
<5.積層全固体二次電池の製造方法>
前述したようにして製造した全固体二次電池1を複数個積層して、積層全固体二次電池を得る。積層時には、絶縁層13を介し、負極集電体21と、他の全固体二次電池1の負極集電体21とが対向するように配置する。これにより、比較的多数、例えば3つや4つ以上の全固体二次電池1を積層してもサイクル特性を十分に維持し、短絡が生じにくい積層全固体二次電池を製造することができる。
<6.本実施形態に係る全固体二次電池の充放電>
本実施形態に係る全固体二次電池1の充放電について以下に説明する。
本実施形態に係る全固体二次電池1は、その充電時の初期においては、負極活物質層22内のリチウムと合金又は化合物を形成する負極活物質がリチウムイオンと合金又は化合物を形成することにより、負極活物質層22内にリチウムが吸蔵される。その後、負極活物質層22により発揮される充電容量を超えた後は、負極活物質層22の一方又は両方の表面上に金属リチウムが析出し、金属リチウム層が形成される。金属リチウムは、合金又は化合物を形成可能な負極活物質を介して拡散しつつ形成されたものであるため、樹枝状(デンドライト状)ではなく、主に負極活物質層22と負極集電体21との間に均一に形成されたものとなる。放電時には、負極活物質層22及び前記金属リチウム層中から金属リチウムがイオン化し、正極活物質層12側に移動する。したがって、結果的に金属リチウム自体を負極活物質として使用することができるので、エネルギー密度が向上する。
さらに、前記金属リチウム層が、負極活物質層22と負極集電体21との間、すなわち負極層20の内部に形成される場合、負極活物質層22は、前記金属リチウム層を被覆することになる。これにより、負極活物質層22は金属層の保護層として機能する。これにより、全固体二次電池1の短絡及び容量低下が抑制され、ひいては、全固体二次電池1の特性が向上する。
負極活物質層22において、金属リチウムの析出を可能とする方法としては、例えば、正極活物質層12の充電容量を負極活物質層22の充電容量より大きくする方法を挙げることができる。具体的には、正極活物質層12の充電容量と負極活物質層22の充電容量との比(容量比)は、以下の数式(1)の要件を満たす。
0.002<b/a<0.5 (1)
a:正極活物質層12の充電容量(mAh)
b:負極活物質層22の充電容量(mAh)
前記数式(1)で表される容量比が0.002より大きい場合には、負極活物質層22の構成に関わらず、負極活物質層22がリチウムイオンからの金属リチウムの析出を十分に媒介することができるので、金属リチウム層の形成が適切に行われやすくなる。また、前記金属リチウム層が負極活物質層22と負極集電体21との間に生じる場合、負極活物質層22が保護層として十分に機能することが可能であるため好ましい。そのため、上記容量比は、より好ましくは、0.01以上、さらに好ましくは0.03以上である。
また、上記容量比が0.5未満である場合と、充電時において負極活物質層22がリチウムの大部分を貯蔵してしまうということがないので、負極活物質層22の構成に関わらず、金属リチウム層を均一に形成しやすくなる。上記容量比は、より好ましくは0.2以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。
前記容量比は0.01より大きいことがより好ましい。容量比が0.01以下となる場合、全固体二次電池1の特性が低下する恐れがあるからである。この理由としては、負極活物質層22が保護層として十分機能しなくなることが挙げられる。例えば、負極活物質層22の厚さが非常に薄い場合、容量比が0.01以下となりうる。この場合、充放電の繰り返しによって負極活物質層22が崩壊し、デンドライトが析出、成長する可能性がある。この結果、全固体二次電池1の特性が低下してしまう恐れがある。また、前記容量比は、0.5よりも小さいことが好ましい。前記容量比が0.5以上になると、負極層20におけるリチウムの析出量が減って、電池容量が減ってしまうこともあり得るからである。同様の理由から、前記容量比が0.25未満であることがより好ましいと考えられる。また、前記容量比が0.25未満であることによって電池の出力特性も、より向上させることができる。
ここで、正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電比容量(mAh/g)に正極活物質層12中の正極活物質の質量を乗じることで得られる。正極活物質が複数種類使用される場合、正極活物質毎に比充電容量×質量の値を算出し、これらの値の総和を正極活物質層12の充電容量とすれば良い。負極活物質層22の充電容量も同様の方法で算出される。すなわち、負極活物質層22の充電容量は、負極活物質の充電比容量(mAh/g)に負極活物質層22中の負極活物質の質量を乗じることで得られる。負極活物質が複数種類使用される場合、負極活物質毎に充電比容量×質量の値を算出し、これらの値の総和を負極活物質層22の容量とすれば良い。ここで、正極活物質および負極活物質の充電比容量は、リチウム金属を対極に用いた全固体ハーフセルを用いて見積もられた容量である。実際には、全固体ハーフセルを用いた測定により正極活物質層12および負極活物質層22の充電容量が直接測定される。
充電容量を直接測定する具体的な方法としては、以下のような方法を挙げることができる。まず正極活物質層12の充電容量は、正極活物質層12を作用極、Liを対極として使用した全固体ハーフセルを作製し、OCV(開放電圧)から上限充電電圧までCC-CV充電を行うことで測定する。該上限充電電圧とは、JIS C 8712:2015の規格で定められたものであり、リチウムコバルト酸系の正極活物質を使用する正極活物質層12に対しては4.25V、それ以外の正極活物質を使用する正極活物質層12についてはJIS C 8712:2015のA.3.2.3(異なる上限充電電圧を適用する場合の安全要求事項)の規定を適用して求められる電圧を指す。負極活物質層22の充電容量については、負極活物質層22を作用極、Liを対極として使用した全固体ハーフセルを作製し、OCV(開放電圧)から0.01VまでCC-CV充電を行うことで測定する。
このようにして測定された充電容量をそれぞれの活物質の質量で除算することで、充電比容量が算出される。正極活物質層12の充電容量は、1サイクル目の充電時に測定される初期充電容量であってもよい。
本発明の実施形態では、負極活物質層22の充電容量に対して正極活物質層12の充電容量が過大になるようにしてある。後述するように、本実施形態では、全固体二次電池1を、負極活物質層22の充電容量を超えて充電する。すなわち、負極活物質層22を過充電する。充電の初期には、負極活物質層22内にリチウムが吸蔵される。すなわち、負極活物質は、正極層10から移動してきたリチウムイオンと合金または化合物を形成する。負極活物質層22の容量を超えて充電が行われると、負極活物質層22の裏側、すなわち負極集電体21と負極活物質層22との間にリチウムが析出し、このリチウムによって金属リチウム層が形成される。
このような現象は、負極活物質を特定の物質、すなわちリチウムと合金又は化合物を形成する物質で構成することで生じる。放電時には、負極活物質層22および金属リチウム層中のリチウムがイオン化し、正極層10側に移動する。したがって、全固体二次電池1では、金属リチウムを負極活物質として使用することができる。より具体的には、負極層20の充電容量(負極活物質層22及び金属リチウム層により発揮される充電容量の合計充電容量)を100%とした場合、その80%以上の充電容量が前記金属リチウム層により発揮されるようにすることが好ましい。
さらに、負極活物質層22は、前述した金属リチウム層を前記固体電解質層30側から被覆するので、前記金属リチウム層の保護層として機能するとともに、デンドライトの析出、成長を抑制することができる。これにより、全固体二次電池1の短絡および容量低下がより効率よく抑制され、ひいては、全固体二次電池1の特性が向上する。
<7.本発明に係る他の実施形態>
本発明に係る全固体二次電池は、前述したものに限られない。
例えば、前記第1極層が負極層であり、前記第2極層が正極層であるものとしても良い。
前記実施形態では、前記第1極層の側端面に絶縁層が配置されるものを説明したが、前記第2極層の側端面にも絶縁層を備えるものとしてもよい。
正極層と負極層との間に設けられている固体電解質層30は、少なくとも1層積層されていればよく、2層、3層、4層又はそれ以上積層されていても良い。
前述した実施形態では、絶縁層から余剰絶縁層を除去したあとに形成される異表面部の具体例として粗化部を説明したが、絶縁層の形成方法や、余剰絶縁層の除去方法によっては、前記異表面部が絶縁層の他の表面よりも滑らかなものであってもよい。
本発明は、全固体リチウムイオン二次電池に限らず、箔状の集電部を備え、等方圧プレス等の加圧処理によって成形して製造する全固体二次電池に広く応用できるものである。
(実施例1)
次に、上述した実施形態の実施例を説明する。実施例1では、以下の工程により全固体二次電池1を作製し、作製した全固体二次電池1について評価を行った。
[正極層の作製]
正極活物質としてのLiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)三元系粉末と、硫化物系固体電解質としてのLi2S-P2S5(80:20モル%)非晶質粉末と、正極層導電性物質(導電助剤)としての気相成長炭素繊維粉末とを60:35:5の質量%比で秤量し、自転公転ミキサを用いて混合した。
次いで、この混合粉に、結着剤としてのSBRが溶解した脱水キシレン溶液をSBRが混合粉の総質量に対して5.0質量%となるように添加して1次混合液を作製した。
この1次混合液に、粘度調整のための脱水キシレンを適量添加することで、2次混合液を作製した。
さらに、混合粉の分散性を向上させるために、直径5mmのジルコニアボールを、空間、混合粉、ジルコニアボールがそれぞれ混練容器の全容積に対して1/3ずつを占めるように2次混合液に投入した。
これにより生成された3次混合液を自転公転ミキサに投入し、3000rpmで3分撹拌することで、正極活物質層塗工液を作製した。
次いで、正極集電体11として厚さ20μmのアルミ箔集電体を用意し、卓上スクリーン印刷機に正極集電体11を載置し、厚みが150μmのメタルマスクを用いて前記正極活物質層塗工液をシート上に塗工した。その後、正極活物質層塗工液が塗工されたシートを60℃のホットプレートで30分乾燥させた後、裏面側にも塗工し、さらに60℃のホットプレートで30分乾燥させた後、80℃で12時間真空乾燥させた。これをトムソン刃で矩形板状に打抜くことで、正極集電体11上の両面に正極活物質層12を形成した。乾燥後の正極集電体11及び正極活物質層12の総厚さは330μm前後であった。
絶縁性の樹脂フィルムをピナクルダイで打ち抜いて、集電部保護部材材料14Aと絶縁層材料13Aとが一体となっている余剰絶縁層材料13Bを製造した。前記余剰絶縁層材料13Bに含まれる絶縁層材料13Aの形状は、正極活物質層12をその周囲から丁度囲める大きさのリング状のものとした。本実施例で使用した絶縁性の樹脂フィルムは、絶縁性フィラーとして樹脂製不織布を含有する大日本印刷株式会社製のものである。この余剰部分(集電部保護部材材料14A)とリング状部分(絶縁層材料13A)との間には、フィルムの厚み方向にフィルムの厚みの70%程度の切れ込みが形成されており、集電部保護部材材料14Aによって形成された余剰絶縁層14を加圧成形後に容易に切り取ることが可能な構造となっている。正極集電体11及び正極活物質層12を、表面が離型処理されたPETフィルム(以下、離型フィルム)を貼った厚さ3mmのアルミ板(支持材)上に載せて、前述した絶縁層材料13Aを正極活物質層12の周囲に配置した後、さらに離型フィルムで覆い、厚さ0.3mmで余剰絶縁層材料13Bと同形状のSUS製の金属プレート(支持材)でさらに覆った後、支持材を含めて真空ラミネートパックを行った。加圧媒体中に沈め、490MPaにて静水圧処理(等方圧プレスによる圧密化工程)を行うことで、絶縁層材料13Aは正極集電体11及び正極活物質層12と一体化した。
この正極集電体11の両面に正極活物質層12が積層され、これら正極活物質層12の積層方向とは異なる側周面を覆う絶縁層材料13Aを備えたものを切り取り前正極層10Aと呼ぶこととする。
[負極層の作製]
負極集電体21として厚さ10μmのニッケル箔集電体を用意した。また、負極活物質として、旭カーボン社製CB1(窒素吸着比表面積は約339m/g、DBP給油量は約193ml/100g)、旭カーボン社製CB2(窒素吸着比表面積は約52m/g、DBP給油量は約193ml/100g)、および粒径3μmの銀粒子を準備した。なお、この銀粒子の粒径は、例えばレーザー式粒度分布系を用いて測定したメジアン径(いわゆるD50)を用いることができる。
ついで、1.5gのCB1及び1.5gのCB2、1gの銀粒子を容器に入れ、そこへバインダ(クレハ社製#9300)5質量%を含むN-メチルピロリドン(NMP)溶液を4g加えた。ついで、この混合溶液に総量30gのNMPを少しずつ加えながら混合溶液を撹拌することで、負極活物質層塗工液を作製した。この負極活物質層塗工液をNi箔上にブレードコーターを用いて塗布し、空気中で80℃で約20分間乾燥させ負極活物質層22を形成した。これにより得られた積層体を100℃で約12時間真空乾燥しピナクルダイで打抜いた。以上の工程により、負極層20を作製した。
[固体電解質層塗工液の作製]
硫化物系固体電解質としてのLi2S-P2S5(80:20モル%)非晶質粉末に、固体電解質に対して1質量%となるように、脱水キシレンに溶解したSBRバインダを添加して1次混合スラリーを生成した。さらに、この1次混合スラリーに、粘度調整のための脱水キシレンおよび脱水ジエチルベンゼンを適量添加することで、2次混合スラリーを生成した。さらに、混合粉の分散性を向上させるために、直径5mmのジルコニアボールを、空間、混合粉、ジルコニアボールがそれぞれ混練容器の全容積に対して1/3ずつを占めるように3次混合スラリーに投入した。これにより作製した3次混合液を自転公転ミキサに投入し、3000rpmで3分撹拌することで、固体電解質層塗工液を作製した。
[固体電解質シートの作製]
作製した固体電解質層塗工液を、表面が離型処理されたPETフィルム上にブレードで塗工し、40℃のホットプレートで10分乾燥させた後、40℃で12時間真空乾燥させ固体電解質シートを得た。乾燥後の固体電解質層の厚みは42μm前後であった。乾燥した固体電解質シートはトムソン刃で打ち抜き、所定の大きさに加工した。
[電解質負極構造体の作製]
固体電解質層30と負極活物質層22とが接触するように負極層20の表面に固体電解質シートを配置し、これらを離型フィルムの貼られた厚さ3mmのアルミ板(支持材)上に載せて、前記支持材を含めて真空ラミネートパックを行った。加圧媒体中に沈め、10MPaにて静水圧処理(等方圧プレスによる圧密化工程)を行うことで、固体電解質シート上の固体電解質層は負極層20と一体化した。これを電解質負極構造体20Aと呼ぶこととする。
[全固体二次電池の作製]
作製した切り取り前正極層10Aを2つの電解質負極構造体20Aで挟むように配置した。この際、電解質負極構造体20Aの正極集電部111が突出している側の外縁2Eが、切り込み13Cと正極層10の側端面Sとの間に位置するように配置した。
この積層体をで、離型フィルムを貼った厚さ3mmのアルミ板(支持材)上に載せて、さらに離型フィルムで覆い、厚さ0.3mmで電解質負極構造体20Aと同じ形状のSUS製の金属プレート(支持材)でさらに覆った後、支持材を含めて真空ラミネートパックを行った。加圧媒体中に沈め、490MPaにて静水圧処理(等方圧プレスによる圧密化工程)を行った。続いて、得られた未処理全固体二次電池1Aをラミネートパックから取り出して、余剰絶縁層14を絶縁層13と余剰絶縁層14との間に形成された切り込み13Cから切り取ることで、全固体二次電池1の単セル(単電池)を作製した。
なお、実施例では、支持材としてアルミ板とSUS製の金属プレートを使用しているが、これら支持材の材質は、等方圧による加圧処理に耐えうる強度を有する素材であれば特に限定されない。
[積層全固体二次電池の作製]
作製した全固体二次電池1の単セルを4層積層した後、正極集電部111および負極集電部211にそれぞれAl金属製タブおよびNi金属製タブを溶接し、ラミネネートパックして積層全固体二次電池を得た。
[全固体二次電池の評価]
上記の手順で作製した積層全固体二次電池をその積層方向の外側から2枚の金属板で挟み、あらかじめ前記金属板に開けておいた穴に皿バネを入れたネジを通し、電池への印加圧力が1.0MPaとなるようネジを締め付けた。電池の特性評価は、前述したように加圧した状態の積層全固体二次電池に対して、45℃で、0.1Cの定電流で、上限電圧4.25Vまで充電した後、0.05Cの電流になるまで定電圧で充電し、放電は終止電圧2.5Vまで0.1C放電する充放電条件で充放電評価装置TOSCAT-3100により評価した。この評価結果を図11に示す。
また、充放電のサイクル評価のために、前述したように加圧した状態の積層全固体二次電池に対して、45℃で、0.33Cの定電流で、上限電圧4.25Vまで充電し、終止電圧2.5Vまで0.33Cで放電する充放電サイクル評価を行った。その結果を図12に示す。
さらにこの積層全固体二次電池について、ラミネートフィルムを含む全体の厚みを、フィルム厚み測定器によって測定した。測定は異なる6点において行い、厚みのばらつきを調べることによって、表面の凹凸を評価した。結果を表1に示す。
図11のグラフでは、理論容量を超えるような過充電やスパイク状の充放電曲線が観察されないことから充放電が問題なく行われていることから、短絡現象なく、正極集電部111に亀裂が生じることや切断されていないことが分かる。
また、この図11のグラフから、実施例1で作製した積層全固体二次電池は短絡することなく充放電可能であることが確認できた。
また、図12の結果から、実施例1で作製した積層全固体二次電池は安定した充放電サイクル特性を発揮していることが確認できた。
(実施例2)
実施例2では、正極層10と負極層20との間に固体電解質層30を2層形成した以外は、実施例1と同様の手順で全固体二次電池1及びこれら全固体二次電池1を積層した積層全固体二次電池を作製し、評価を行った。固体電解質層30を2層形成する方法は以下の通りである。
[電解質正極構造体の作製]
2つの固体電解質シートで切り取り前正極層10Aを挟むようにした状態で、これらを離型フィルムの貼られた厚さ3mmのアルミ板(支持材)上に載せて、さらに離型フィルムで覆い、厚さ0.3mmで切り取り前正極層10Aと同形状のSUS製の金属プレート(支持材)でさらに覆った後、支持材を含めて真空ラミネートパックを行った。加圧媒体中に沈め、30MPaにて静水圧処理(等方圧プレスによる圧密化工程)を行うことで、電解質シート上の電解質層は切り取り前正極層10Aと一体化した。これを電解質正極構造体と呼ぶこととする。
[全固体二次電池及び積層全固体二次電池の作製]
作製した電解質正極構造体を2つの電解質負極構造体20Aで挟むように配置した後は、実施例1と同様にして全固体二次電池1及び積層全固体二次電池を作製した。
[全固体二次電池の評価]
実施例2で作製した積層全固体二次電池について、実施例1と同様の手順で充放電評価及び充放電サイクル評価を行い、充放電評価の結果を図13に、充放電サイクル評価の結果を図12にそれぞれ示した。図13及び図12の結果から、正極層10と負極層20との間に固体電解質層30を2層積層した全固体二次電池1を使用した場合も、実施例1と同様に正極集電部111は亀裂が生じたり切断されたりしておらず、また短絡することもなく安定して充放電可能であることが確認できた。
(比較例1)
実施例1で使用した余剰絶縁層材料13Bの代わりに切り込み13Cおよび集電部保護部材材料14Aを備えていない絶縁層材料13Aを使い、その他は実施例1と同じ手順で全固体二次電池1及び積層全固体二次電池を作製し、実施例1と同一の手順で充放電評価を行った。この評価結果を図14に示す。
この図14のグラフでは、スパイク状の充放電曲線が観察されていることから、正極集電部111に亀裂が生じているか切断されてしまっていることで、理論容量を大きく下回る充放電容量しか検出できなかった。この図14のグラフの場合、その充放電容量と理論容量との比較から計算すると、積層全固体二次電池を構成している4層の全固体二次電池1のうち2つ又は3つの全固体二次電池1の正極集電部111に亀裂が生じているか切断されていると考えられる。
(比較例2)
実施例1で使用した余剰絶縁層材料13Bの代わりに切り込み13Cおよび集電部保護部材材料14Aを備えていない絶縁層材料13Aを使い、[正極層の作製]工程および[全固体二次電池の作製]工程において、実施例1で使用した0.3mmのSUS製の金属プレートを使用せずに支持材としてアルミ板のみを使用して全固体二次電池1を作製した他は実施例1と同様の手法で積層全固体二次電池を作製し、この積層全固体二次電池の評価を行った。
この積層全固体二次電池について、実施例1と同様にして、ラミネートフィルムを含む全体の厚みを、フィルム厚み測定器によって測定した。測定は異なる6点において行い、厚みのばらつきを調べることによって、表面の凹凸を評価した。結果を表1に示す。
充放電評価の結果を図15に、充放電サイクル評価の結果を図12にそれぞれ示した。図15の結果から、比較例2で作製した積層全固体二次電池では、理論容量以上の過剰な充電量が生じていることから、正極集電部111は亀裂が生じたり切断されたりしていないものの、短絡が起こっていると考えられる。
さらに図12の結果から、短絡により充放電容量の劣化が顕著に表れていることが分かる。
(実施例3)
実施例1で作製した全固体二次電池1を積層せずに単セルのまま、正極集電体11および負極集電体21にそれぞれAl金属製タブおよびNi金属製タブを溶接し、ラミネートパックし電池試験に供した。実施例1と同様にして充放電サイクル特性評価を行った結果を図16に示す。
この結果から、実施例1の積層全固体二次電池と同様の良好なサイクル特性を観察することができた。
この実施例3の全固体二次電池1について、その厚みを、実施例1と同様にして、ラミネートフィルムを含む全体の厚みを越しにフィルム厚み測定器を用いて6点厚みを測定し、厚みのばらつきを評価した。その結果を表1に示す。
(比較例3)
比較例2で作製した全固体二次電池1を積層せずに単セルのまま、ラミネートパックし、ラミネートフィルムを含む全体の厚みを越しにフィルム厚み測定器を用いて6点厚みを測定し、厚みのばらつきを評価した。測定方法は実施例1と同様である。その結果を表1に示す。
Figure 2022044461000002
表1の結果から、実施例1と比較例2、実施例3と比較例3とについて、それぞれ厚みのばらつきを比較すると、等方圧プレスを行う際に厚さ0.3mmのSUS製の金属プレートを用いた実施例1及び実施例3においては、等方圧プレスを行う際にSUS製の金属プレートを用いていない(支持材を正極層10又は全固体二次電池1の片面のみに配置して加圧処理を行った)比較例1及び比較例3よりも厚みのばらつきが明らかに小さく、表面の凹凸が抑えられていることが分かる。
表面の凹凸を小さく抑えることができれば、凸部にのみ集中して電流が集中することがなくなる。
このように一部分にのみ集中して電流がかからなくなると、正極層10及び負極層20の全体が充放電に寄与するので、全固体二次電池1の充放電容量を向上させることができる。
また、正極層10及び負極層20が全体にわたって均一に充放電に寄与することによって、例えば、金属リチウムなどがある一部の場所にのみ集中して析出することによる短絡を抑えることもできる。
その結果、図12に示したように、実施例1及び実施例2では短絡が生じず安定した充放電サイクルを実現できたと考えられる。
以上の結果から分かるように、実施例1又は実施例3のように全固体二次電池1の表面をより平坦にするためには、正極層10、負極層20又は全固体二次電池1を形成する積層体を、2枚の支持材で積層方向の両面から挟んだ状態で加圧処理をすることが好ましい。しかしながら、両面から支持材で挟んだ状態で等方圧プレスなどの加圧処理をする場合には、比較例1と比較例2との比較からも分かるように、集電部に亀裂が生じたり集電部が切断されたりする確率が高まる。そこで、全固体二次電池1を両面から支持材で挟んだ状態で加圧処理をする場合には、余剰絶縁層14を備えることによる効果がより顕著に発揮されたと考えられる。
このように、両面から支持材で挟んだ状態で等方圧プレス等の加圧処理をする場合には、一方の支持材の積層方向から視た形状を、加圧処理される正極層10、負極層20又は全固体二次電池1を形成する積層体の積層方向から視た形状と同じ形状にしておくことが好ましい。例えば支持材として全固体二次電池1と異なるより大きな形状のもので両面から挟んだ状態で等方圧による加圧処理をすると、支持体の正極層10、負極層20又は全固体二次電池1と当接していない部分が積層方向に大きく曲がってしまい支持体を再利用できなくなる。また、支持体と支持体の間に挟まれた全固体二次電池1の厚みによって支持材間に空間が生じることで、真空ラミネートパックしたラミネート材が等方圧による加圧処理の際に破れてしまうこともあり得る。
実施例1及び実施例2では、全固体二次電池1を4積層した積層全固体二次電池について検討したが、本発明に係る全固体二次電池1を5層以上積層した積層全固体二次電池においても同様に、正極集電部111に亀裂が生じたり切断されたりせず、短絡も起こりにくい積層全固体二次電池とすることができることが十分に推論できる。
なお、本発明はこれら実施例に限られるものでないことはいうまでもない。
1 全固体二次電池
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質層
13 絶縁層
14 集電部保護部材(余剰絶縁層)
20 負極層
21 負極集電体
22 負極活物質層
30 固体電解質層

Claims (20)

  1. 正極層又は負極層の一方である第1極層と、
    前記第1極層の両面にそれぞれ積層された固体電解質層と、
    前記各固体電解質層の外面にそれぞれ積層された前記正極層又は前記負極層の他方である第2極層と、
    前記第1極層の側端面に前記第1極層を覆うように配置された絶縁層と、
    前記第1極層から前記絶縁層を貫通して外側に突出する箔状の集電部とを備えた全固体二次電池であって、
    前記集電部が突出する側における前記絶縁層の側端面に、当該絶縁層の他の側端面とは表面粗さが異なる異表面部が形成されていることを特徴とする全固体二次電池。
  2. 前記異表面部が、前記絶縁層の他の側端面に比べてその表面が粗い粗化部であることを特徴とする請求項1に記載の全固体二次電池。
  3. 前記異表面部が、前記絶縁層の側端面の外側に形成されていた余剰絶縁層を除去した際に形成されたものであることを特徴とする請求項2記載の全固体二次電池。
  4. 前記余剰絶縁層が、当該余剰絶縁層の除去前において前記集電部の突出部分を包み込んで保護するものである請求項3に記載の全固体二次電池。
  5. 前記異表面部の前記積層方向における厚みが、前記絶縁層の前記積層方向における厚みの1%以上95%以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の全固体二次電池。
  6. 前記余剰絶縁層が、前記絶縁層と一体成形されているものであることを特徴とする請求項3又は4に記載の全固体二次電池。
  7. 前記絶縁層が、樹脂を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の全固体二次電池。
  8. 前記絶縁層が、絶縁性フィラーをさらに含有するものであることを特徴とする請求項7記載の全固体二次電池。
  9. 前記絶縁性フィラーが、繊維状樹脂、樹脂製不織布、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、ベーマイト、チタン酸バリウム、炭酸バリウム、イットリア及び酸化マンガンからなる群より選ばれる1種以上の物質からなるものであることを特徴とする請求項8記載の全固体二次電池。
  10. 前記集電部が突出する側における前記絶縁層の外縁の一部又は全部が、前記第2極層の外縁よりも外側に位置することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の全固体二次電池。
  11. 前記第2極層の外縁の一部又は全部が、前記絶縁層の上に配置されていることを特徴とする請求項10記載の全固体二次電池。
  12. 前記第1極層が、正極層であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の全固体二次電池。
  13. 前記固体電解質層が、リチウム、リン及び硫黄を少なくとも含有する硫化物系固体電解質を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の全固体二次電池。
  14. 前記負極層が、リチウムと合金を形成する負極活物質及び/又はリチウムと化合物を形成する負極活物質を含み、充電時に前記負極層の内部に金属リチウムが析出可能であり、前記負極層の充電容量の80%以上が金属リチウムにより発揮されるものであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の全固体二次電池。
  15. 前記負極層が、無定形炭素、金、白金、パラジウム、ケイ素、銀、アルミニウム、ビスマス、錫及び亜鉛からなる群より選択されるいずれか一種以上を含むものであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の全固体二次電池。
  16. 請求項1乃至15記載の全固体二次電池が2つ以上積層されていることを特徴とする積層全固体二次電池。
  17. 正極層又は負極層の一方である第1極層の両面に固体電解質層がそれぞれ積層されており、前記各固体電解質層の外面に前記正極層又は前記負極層の他方である第2極層がそれぞれ積層されており、前記第1極層を外部の配線に電気的に接続する箔状の集電部が前記第1極層から外側に突出するように配置され、該集電部を保護する集電部保護部材が前記集電部を包むように配置されている積層体を製造する積層体製造工程と、
    該積層体に、その積層方向から加圧する加圧工程と、
    前記加圧工程の後に、前記集電部保護部材を除去する除去工程とを含むことを特徴とする全固体二次電池製造方法。
  18. 前記積層体が、前記第1極層の側端面を覆うように配置された絶縁層をさらに備え、
    前記集電部保護部材が、前記絶縁層の側端面に一体に形成された余剰絶縁層であることを特徴とする請求項17記載の全固体二次電池製造方法。
  19. 前記絶縁層と前記余剰絶縁層との間に、前記余剰絶縁層を除去するための切り込みを形成することを特徴とする請求項18記載の全固体二次電池製造方法。
  20. 前記切り込みが、前記余剰絶縁層の厚みの5%以上99%以下の範囲で形成されていることを特徴とする請求項19記載の全固体二次電池製造方法。

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