JP2022042116A - 医療デバイスおよび方法 - Google Patents

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侑右 高橋
Yusuke Takahashi
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【課題】焼灼を行う電極による構造の温度上昇を抑制でき、構造的に安定して冷却を促進できる医療デバイスおよび方法を提供する。【解決手段】医療デバイス10は、形状記憶金属の線材からなる拡張体21と、拡張体21の基端が固定された長尺なシャフト部20と、拡張体21に沿って設けられる少なくとも1つの電極22と、を備え、拡張体21は、径方向内側に窪む凹部51を有し、凹部51は、底部56と、底部56の基端から径方向外側に延びる基端側起立部52と、底部56の先端から径方向外側に延びる先端側起立部53と、有し、電極22は、基端側起立部52に沿って配置され、凹部51は、先端側起立部53に、拡張体21の拡張時に電極22と対向する対向面63を含む対向面部62を有し、対向面部62は、血液中に露出する血液露出面65を有し、血液露出面65は、電極22の生体組織と接触可能な導電面80よりも大きな面積を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、生体組織にエネルギーを付与する医療デバイスおよびシャントを形成する方法に関する。
血管や心臓などの生体管腔内で生体組織に物理的エネルギーを付与して、生体組織を死滅させるアブレーションが一般的に行われている。ところで、生体組織のアブレーションの際に、近傍の血液が加熱されると、血栓が生じる可能性がある。このため、例えば特許文献1には、生体組織に電流を印可するアブレーション電極を振動させて、血流によって電極を冷却できるアブレーションカテーテルが記載されている。
ところで、心臓疾患の一つとして、慢性心不全が知られている。慢性心不全は、心機能の指標に基づいて収縮不全と拡張不全に大別される。拡張不全に罹患した患者は、心筋が肥大化してスティッフネス(硬さ)が増すことで、左心房の血圧が高まり、心臓のポンプ機能が低下する。これにより、患者は、肺水腫などの心不全症状を呈することとなる。また、肺高血圧症等により右心房側の血圧が高まり、心臓のポンプ機能が低下することで心不全症状を呈するような心臓疾患もある。
近年、これらの心不全患者に対し、上昇した心房圧の逃げ道となるシャント(穿刺孔)を心房中隔に形成し、心不全症状の緩和を可能にするシャント治療が注目されている。シャント治療は、経静脈アプローチで心房中隔にアクセスし、所望のサイズの穿刺孔を形成する。さらに、拡張させた穿刺孔の形状を維持するために、穿刺孔を焼灼することが行われている。
特許第4582015号明細書
特許文献1に記載の発明は、電極を能動的に振動させる必要があるため、構造が複雑となるとともに、操作が煩雑となる。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、焼灼を行う電極による構造の温度上昇を抑制でき、構造的に安定して冷却を促進できる医療デバイスおよび方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスは、形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体を含む拡張体と、前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、前記拡張体に沿って設けられる少なくとも1つの電極と、を備え、前記拡張体は、径方向内側に窪み、前記拡張体の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部を有し、前記凹部は、径方向の最も内側に位置する底部と、底部の基端から径方向外側に延びる基端側起立部と、底部の先端から径方向外側に延びる先端側起立部と、有し、前記電極は、前記受容空間に面するように、前記基端側起立部と前記先端側起立部の一方に沿って配置され、前記凹部は、前記基端側起立部と先端側起立部の他方に、前記拡張体の拡張時に前記電極と対向する対向面を含む対向面部を有し、前記対向面部は、前記対向面とは反対側に設けられ、前記電極部と前記対向面部との間に生体組織が配置された際に血液中に露出する血液露出面を含む露出部を有し、前記血液露出面は、前記電極の生体組織と接触可能な導電面よりも大きな面積、または、前記拡張体本体を形成する形状記憶金属よりも熱放射率の高い熱放射面を有する。
上記のように構成した医療デバイスは、電極により生体組織を焼灼する際に、電極と対向することで温度上昇する対向面部の熱を、血液露出面から放熱または熱放射して逃がすことができる。このため、医療デバイスは、焼灼を行う電極による構造の温度上昇を抑制し、構造的に安定して冷却を促進できる。
前記露出部は、凹凸構造を有し、前記血液露出面の少なくとも一部は、前記凹凸構造の表面に形成されてもよい。これにより、熱を血液へ逃がすための血液露出面の面積が広くなり、対向面部の温度上昇を効果的に抑制できる。
前記凹凸構造は、前記対向面と反対側のベース面と、前記ベース面と略垂直な方向に前記ベース面から延びた少なくとも1つのフィンと、を有してもよい。これにより、フィンによって血液露出面の面積を効果的に増加できるため、対向面部の温度上昇を効果的に抑制できる。
前記凹凸構造は、前記対向面と反対側のベース面に形成された粗面部を有してもよい。これにより、熱を血液へ逃がすための血液露出面の面積が粗面部によって広くなり、対向面部の温度上昇を効果的に抑制できる。
前記露出部は、前記拡張体本体の表面に形成され、前記拡張体本体よりも高い熱放射率を有する熱放射面を含む熱放射層を有してもよい。これにより、熱放射層から熱放射によって熱を血液へ逃がすことができ、対向面部の温度上昇を効果的に抑制できる。
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスの他の態様は、形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体を含む拡張体と、前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、前記拡張体に沿って設けられる少なくとも1つの電極と、を備え、前記拡張体は、前記拡張体本体の少なくとも一部と接触し、かつ、前記形状記憶金属よりも熱伝導率が高い熱伝導層を有し、前記拡張体本体は、前記電極の生体組織への接触時に前記電極を支持する電極支持部を含み前記電極が生体組織に接触する際に前記電極の近傍に配置される電極近傍部を有し、前記熱伝導層は、前記拡張体本体に沿って、前記電極近傍部から前記拡張体本体の電極近傍部以外の部分に延びている。
上記のように構成した医療デバイスは、電極により生体組織を焼灼する際に、電極近傍部の熱を、熱伝導層に伝導させて電極近傍部から逃がすことができる。このため、医療デバイスは、焼灼を行う電極により構造の温度が上がり過ぎず、構造的に安定して冷却を促進できる。
前記熱伝導層は、前記拡張体本体の延在方向の略全体にわたって延びてもよい。これにより、電極近傍部の熱を、熱伝導層を伝導させて電極近傍部から効果的に逃がすことができる。
前記熱伝導層は、前記拡張体本体の表面を覆う熱伝導コーティング層を有してもよい。これにより、電極近傍部の熱を、熱伝導コーティング層を伝導させて電極近傍部から効果的に逃がすことができる。
前記拡張体は、前記熱伝導コーティング層および/または前記拡張体本体の表面を覆う絶縁層を有してもよい。これにより、熱伝導コーティング層および/または拡張体本体を電極から絶縁して、熱伝導コーティング層および/または拡張体本体に電流が流れることを防止できる。
前記熱伝導層は、前記拡張体本体の表面を覆い、前記形状記憶金属よりも熱伝導率が高いフィラーを含む樹脂チューブにより形成されてもよい。これにより、電極近傍部から熱伝導層へ伝わる熱を、フィラーを用いて電極近傍部から効果的に逃がすことができる。また、樹脂チューブを拡張体本体に配置するのみで、熱伝導層を拡張体に容易に配置できる。
前記熱伝導層は、前記拡張体本体の内部に設けられた内層であってもよい。これにより、温度が上昇する熱伝導層が血液に接触しにくくなるため、血栓の形成を抑制できる。
前記拡張体は、前記熱伝導層の少なくとも一部に隣接して設けられ、前記電極の生体組織への接触時に血液中に露出可能な血液露出面を含む露出部を有してもよい。これにより、電極から熱伝導層へ伝わる熱を、露出部から血液へ伝達させて効果的に逃がすことができる。
前記血液露出面は、前記拡張体本体よりも熱放射率の高い熱放射面を有してもよい。これにより、電極から熱伝導層へ伝わる熱を、血液露出面の熱放射面から外部へ熱放射して、電極近傍部から効果的に逃がすことができる。
上記目的を達成する本発明に係る方法は、径方向内側に窪んだ凹部を含む径方向に拡縮可能な拡張体と、前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、前記拡張体の前記凹部の一部に沿って設けられる少なくとも1つの電極と、を備える医療デバイスを用いて心房中隔にシャントを形成する方法であって、前記拡張体の拡張時に前記凹部で画成される受容空間を挟んで対向するように、前記電極と、前記凹部に設けられ前記電極と対向する対向面を含む対向面部と、を配置し、心房中隔に形成された穿刺孔内に前記凹部を配置して、前記受容空間に前記穿刺孔を取り囲む生体組織を受容し、前記拡張体を拡張させて前記電極と前記対向面部とで前記生体組織を挟み込んだ状態で、印加した前記電極で前記生体組織を焼灼し、前記電極による前記生体組織の焼灼時に、前記生体組織から前記対向面部へ伝わる熱を、当該対向面部の前記対向面とは反対側に設けられる血液露出面から当該血液露出面に接触する血液へ放熱または熱放射することで、前記対向面部を冷却する。
上記のように構成した方法は、電極により生体組織を焼灼する際に、電極と対向することで温度上昇する対向面部の熱を、血液露出面から放熱または熱放射して逃がすため、焼灼を行う電極による医療デバイスの温度上昇を抑制し、構造的に安定して冷却を促進できる。
上記目的を達成する本発明に係る方法の他の態様は、形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体を含む拡張体と、前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、前記拡張体に沿って設けられる少なくとも1つの電極と、備える医療デバイスを用いて心房中隔にシャントを形成する方法であって、心房中隔に形成された穿刺孔内に、前記拡張体本体の少なくとも一部と接触し、かつ、前記形状記憶金属よりも熱伝導率が高い熱伝導層を含む前記拡張体を配置し、前記拡張体を拡張させて前記穿刺孔を取り囲む生体組織に前記電極を接触させた状態で、印加した前記電極で前記生体組織を焼灼し、前記電極による前記生体組織の焼灼時に、前記拡張体本体の前記電極の近傍に配置される電極近傍部から、前記熱伝導層により前記電極近傍部から離れた部分に熱を伝導させることで、前記電極近傍部を冷却する。
上記のように構成した方法は、電極により生体組織を焼灼する際に、電極近傍部の熱を、熱伝導層を伝導させて電極近傍部から逃がすため、焼灼を行う電極による医療デバイスの温度上昇を抑制し、構造的に安定して冷却を促進できる。
第1実施形態に係る医療デバイスの全体構成を表した正面図である。 拡張体付近の拡大斜視図である。 拡張体の電極および対向面部の付近を示す斜視図である。 拡張体のストラットを平坦に延ばした状態を示す正面図であり、(A)はストラットの表面、(B)はストラットの裏面を示す。 第1実施形態に係る医療デバイスを使用した方法の説明図であって、医療デバイスは正面図で、生体組織は断面図で、それぞれ模式的に示す説明図である。 医療デバイスの先端部を心房中隔に挿入した状態を、医療デバイスの一部は正面図で、収納シースおよび生体組織は断面図で、それぞれ模式的に示す説明図である。 拡張体を心房中隔に配置した状態を、医療デバイスは正面図で、生体組織は断面図で、それぞれ模式的に示す説明図である。 心房中隔において拡張体を拡径させた状態を、医療デバイスは正面図で、生体組織は断面図で、それぞれ模式的に示す説明図である。 心房中隔の穿刺孔を拡張体によって拡張させた状態を、医療デバイスは正面図で、生体組織は断面図で、それぞれ模式的に示す説明図である。 第1実施形態に係る医療デバイスの変形例を示す斜視図であり、(A)は第1変形例、(B)は第2変形例、(C)は第3変形例、(D)は第4変形例である。 第1実施形態に係る医療デバイスの第5変形例の拡張体のストラットを平坦に延ばした状態を示す正面図である。 第1実施形態に係る医療デバイスの第6変形例の拡張体の一部を示す断面図である。 第2実施形態に係る医療デバイスの拡張体を示す断面図である。 第2実施形態に係る医療デバイスの第6変形例の拡張体を示す断面図である。 医療デバイスの変形例を示す正面図であり、(A)は第7変形例、(B)は第8変形例を示す。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書では、医療デバイス10の生体内腔に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る医療デバイス10は、図9に示すように、患者の心臓Hの心房中隔HAに形成された穿刺孔Hhを拡張し、拡張した穿刺孔Hh(シャント)をその大きさに維持する維持処置を行うことができるように構成されている。
図1に示すように、本実施形態の医療デバイス10は、長尺なシャフト部20と、シャフト部20の先端部に設けられる拡張体21と、シャフト部20の基端部に設けられる操作部23と、を有している。拡張体21には、前述の維持処置を行うための少なくとも1つの電極22が設けられる。
シャフト部20は、図1および2に示すように、先端部に拡張体21を保持しているアウターシャフト31と、アウターシャフト31の内部に配置されるインナーシャフト32と、アウターシャフト31を収納する収納シース30と、を有している。アウターシャフト31は、先端部に、拡張体21の基端が固定された基端固定部37を有する。収納シース30は、アウターシャフト31に対して軸方向に進退移動可能である。収納シース30は、シャフト部20の先端側に移動した状態で、その内部に、収縮させた拡張体21を収納できる。拡張体21を収納した状態から、収納シース30を基端側に移動させることで、拡張体21を露出させることができる。
アウターシャフト31の内部には、牽引シャフト33が収納されている。牽引シャフト33は、アウターシャフト31の先端から先端側に突出しており、その先端部が先端部材35に固定されている。牽引シャフト33の基端部は、操作部23より基端側に導出されている。牽引シャフト33の先端部が固定されている先端部材35は、拡張体21には固定されていなくてよい。これにより、先端部材35は、拡張体21を圧縮方向に牽引することが可能である。また、拡張体21を収納シース30に収納する際、先端部材35を拡張体21から先端側に離すことによって、拡張体21の延伸方向への移動が容易になり、収納性を向上させることができる。
拡張体21は、図2~4に示すように、高い弾性を有する拡張体本体70を有している。拡張体21は、周方向に間隔を開けて配置された複数のストラット50を有している。本実施形態においてストラット50は、周方向に4本が設けられている。なお、ストラット50の数は、特に限定されない。ストラット50は、それぞれ拡張体21の径方向に拡張および収縮可能である。外力が作用しない自然状態において、拡張体21は径方向へ展開した基準形態となる。ストラット50の基端部は、アウターシャフト31の先端部から先端側に延出している。ストラット50の先端部は、全てのストラット50が集合して固定されている固定部36から基端側に延出している。ストラット50は、拡張体21の軸方向の両端部から中央部に向かって、径方向に大きくなるように傾斜している。また、ストラット50は、軸方向中央部に、拡張体21の径方向内側に窪んでいる谷形状の凹部51を有する。凹部51は、拡張体21の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する。
凹部51は、基端側起立部52と先端側起立部53とを有している。凹部51は、さらに、基端側外凸部55と、底部56と、先端側外凸部57とを有している。先端側起立部53は、底部56の先端から径方向外側に延びている。基端側起立部52は、底部56の基端から径方向外側に延びている。基端側起立部52と先端側起立部53の間の間隔は、基準形態において、径方向の内側よりも外側において軸方向に多少大きく開いていることが好ましい。これにより、基端側起立部52と先端側起立部53の間に、径方向の外側から生体組織を配置することが容易である。
基端側外凸部55は、基端側起立部52の基端側に位置して、径方向の外側へ凸形状に形成されている。
底部56は、基端側起立部52と先端側起立部53の間に位置して、径方向の内側へ凸形状に形成されている。底部56は、曲がりやすいように、中央貫通孔59が形成されている。
先端側外凸部57は、先端側起立部53の先端側に位置して、径方向の外側へ凸形状に形成されている。ストラット50は、先端側外凸部57および先端側起立部53の付近に、1つの先端側貫通孔60が形成されている。先端側貫通孔60は、拡張体21の径方向へ貫通している。これにより、先端側外凸部57は、曲げ剛性が低くなる。このため、先端側外凸部57は、径方向の外側へ凸形状となるように変形しやすいとともに、凸形状が平坦となるように変形しやすい。なお、先端側貫通孔60の数は、特に限定されない。したがって、先端側貫通孔60の数は、2つ以上であってもよい。
基端側起立部52は、先端側に向かう面を備えた電極支持部54を有している。電極支持部54には、電極22が配置される。
先端側起立部53は、幅方向の両外側に設けられる2つの外縁部61と、2つの外縁部61の間に設けられる対向面部62とを有している。幅方向とは、拡張体21の軸方向と直交する方向であって拡張体21の径方向と直交する方向である。対向面部62は、拡張体21の拡張時に、基端側起立部52の電極支持部54に配置される電極22と対向可能な対向面63を有している。対向面部62は、対向面63とは反対側に設けられる血液露出面65を含む露出部66を有している。
対向面部62は、2つの外縁部61の間で、先端側起立部53の底部56側の部位から先端側外凸部57側へ向かって突出している。対向面部62は、2つの外縁部61の間に、2つの外縁部61から間隔を空けて配置される。対向面部62の先端側外凸部57側の端部は、自由端となっている。したがって、対向面部62は、基端部が固定された片持ち梁状の形態であるため、撓みやすい。このため、対向面部62は、対向面63に受ける先端側へ向かう力によって、各々の外縁部61よりも容易に撓むことができる。対向面部62は、2つの外縁部61に挟まれるように配置されるが、2つの外縁部61の間に位置する空間に、必ずしも厳密に位置する必要はない。対向面部62は、2つの外縁部61の間に位置する空間から、多少ずれた位置で、2つの外縁部61に挟まれるように配置されてもよい。なお、対向面部62は、2つの外縁部61の間に位置する空間に、少なくとも一部が配置されることが好ましい。
対向面部62は、基端側、すなわち底部56に近い側に、1つの基端貫通孔64が形成されている。基端貫通孔64は、拡張体21の径方向へ貫通している。これにより、対向面部62は、底部56に近い側の曲げ剛性が低い。このため、対向面部62は、対向面63に受ける力によって、容易に撓むことができる。なお、基端貫通孔64の数は、特に限定されない。したがって、基端貫通孔64の数は、2つ以上であってもよい。また、対向面部62は、基端貫通孔64が形成されなくてもよい。
露出部66は、表面積を増加させるための凹凸構造を有している。凹凸構造は、本実施形態では、対向面の反対側のベース面67と、ベース面67と略垂直な方向にベース面67から延びた複数のフィン68とを有している。血液露出面65は、ベース面67およびフィン68の表面に形成される。各々のフィン68は、ストラット50の延在方向に沿って形成されている。なお、フィン68の数は、特に限定されず、例えば1つであってもよい。
本実施形態では、基端側起立部52に電極22を、先端側起立部53に対向面部62を、それぞれ設けているが、先端側起立部53に電極22を、基端側起立部52に対向面部62を、それぞれ設けてもよい。
拡張体21を形成するストラット50は、例えば、円筒から切り出した平板形状を有する。ストラット50は、厚み50~500μm、幅0.3~2.0mmとすることができる。ただし、拡張体21を形成するストラット50は、この範囲外の寸法を有していてもよい。また、ストラット50の形状は、限定されず、例えば円形の断面形状や、それ以外の断面形状を有していてもよい。
電極22は、生体組織と接触可能な導電面80を有している。電極22は、基端側起立部52の電極支持部54に設けられているので、凹部51が心房中隔HAを挟持する際、電極22からのエネルギーは、心房中隔HAに対して右心房HRa側から伝達される。なお、電極22が先端側起立部53に設けられる場合、電極22からのエネルギーは、心房中隔HAに対して左心房HLa側から伝達される。
電極22は、例えば、外部装置であるエネルギー供給装置(図示しない)から電気エネルギーを受けるバイポーラ電極で構成される。この場合、各ストラット50に配置された電極22間で通電がなされる。電極22とエネルギー供給装置とは、絶縁性被覆材で被覆された導線(図示しない)により接続される。導線は、シャフト部20および操作部23の電源コネクタ44を介して外部に導出され、エネルギー供給装置に接続される。
電極22は、他にも、モノポーラ電極として構成されていてもよい。この場合、体外に用意される対極板との間で通電がなされる。また、電極22は、エネルギー供給装置から高周波の電気エネルギーを受給して発熱する発熱素子(電極チップ)でもよい。この場合、各ストラット50に配置された電極22間で通電がなされる。さらに、電極22は、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、レーザー等のコヒーレント光、加熱した流体、冷却された流体、化学的な媒体により加熱や冷却作用を及ぼすもの、摩擦熱を生じさせるもの、電線等を備えるヒーター等のように、穿刺孔Hhに対してエネルギーを付与可能な要素により構成することができ、具体的な形態は特に限定されない。
操作部23は、図1に示すように、術者が把持する筐体40と、術者が回転操作可能な操作ダイヤル41と、操作ダイヤル41の回転に連動して動作する変換機構42とを有している。牽引シャフト33は、操作部23の内部において、変換機構42に保持されている。変換機構42は、操作ダイヤル41の回転に伴い、保持する牽引シャフト33を軸方向に沿って進退移動させることができる。変換機構42としては、例えばラックピニオン機構を用いることができる。
拡張体本体70は、金属材料で形成することができる。この金属材料としては、例えば、チタン系(Ti-Ni、Ti-Pd、Ti-Nb-Sn等)の合金、銅系の合金、ステンレス鋼、βチタン鋼、Co-Cr合金を用いることができる。なお、拡張体本体70の材料は、ニッケルチタン合金等の形状記憶合金(形状記憶金属)であることが好ましい。ただし、拡張体本体70の材料はこれらに限られず、その他の材料で形成されてもよい。
シャフト部20は、アウターシャフト31の内部にインナーシャフト32を有しており、インナーシャフト32の内部に牽引シャフト33が収納されている。牽引シャフト33および先端部材35には、軸方向に沿ってガイドワイヤルーメンが形成されており、ガイドワイヤ11を挿通させることができる。
シャフト部20の収納シース30、アウターシャフト31およびインナーシャフト32は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されることが好ましい。そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリイミド、PEEK、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。
牽引シャフト33は、例えば、ニッケル-チタン合金、銅-亜鉛合金等の超弾性合金、ステンレス鋼等の金属材料、比較的剛性の高い樹脂材料などの長尺状の線材で形成することができる。また、上記にポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、フッ素樹脂などの樹脂材料を被覆したもので形成してもよい。
先端部材35は、例えば、ニッケル-チタン合金、銅-亜鉛合金等の超弾性合金、ステンレス鋼等の金属材料、比較的剛性の高い樹脂材料などで形成することができる。
次に、第1実施形態に係る医療デバイス10を使用して心房中隔HAにシャントを形成する方法について説明する。本方法は、心不全(左心不全)に罹患した患者に対して行われる。より具体的には、図5に示すように、心臓Hの左心室の心筋が肥大化してスティッフネス(硬さ)が増すことで、左心房HLaの血圧が高まる慢性心不全に罹患した患者に対して行われる処置の方法である。
術者は、貫通孔Hhの形成に際し、ガイディングシース及びダイレータが組み合わされたイントロデューサを心房中隔HA付近まで送達する。イントロデューサは、例えば、下大静脈Ivを介して右心房HRaに送達することができる。また、イントロデューサの送達は、ガイドワイヤ11を使用して行うことができる。術者は、ダイレータにガイドワイヤ11を挿通し、ガイドワイヤ11に沿わせて、イントロデューサを送達させることができる。なお、生体に対するイントロデューサの挿入、ガイドワイヤ11の挿入等は、血管導入用のイントロデューサを用いるなど、公知の方法で行うことができる。
次に、術者は、右心房HRa側から左心房HLa側に向かって、穿刺デバイス(図示しない)をおよびダイレータを貫通させ、貫通孔Hhを形成する。穿刺デバイスとしては、例えば、先端が尖ったワイヤ等のデバイスを使用することができる。穿刺デバイスは、ダイレータに挿通させて心房中隔HAまで送達する。穿刺デバイスは、ダイレータからガイドワイヤ11を抜去した後、ガイドワイヤ11に代えて心房中隔HAまで送達することができる。
次に、術者は、予め右心房HRaから貫通孔Hhを介して左心房HLaに挿入されたガイドワイヤ11に沿って、医療デバイス10を心房中隔HA付近に送達する。そして、図6に示すように、医療デバイス10の先端部の一部は、心房中隔HAに開けた貫通孔Hhを通過して、左心房HLaに達するようにする。医療デバイス10の挿入の際、拡張体21は、収納シース30に収納された収縮形態となっている。収縮形態において、自然状態では凸形状である基端側外凸部55、底部56および先端側外凸部57が平坦に近い形状に変形することで、拡張体21が径方向に収縮している。
次に、収納シース30を基端側に移動させることにより、拡張体21の先端側の部分を左心房HLa内に露出させる。これにより、拡張体21のうち先端側の部分は、自己の復元力によって左心房HLa内で径方向へ展開する。次に、収納シース30を基端側に移動させることにより、図7に示すように、拡張体21の全体を露出させる。これにより、拡張体21のうち基端側の部分が、自己の復元力によって右心房HRa内で径方向へ展開する。このとき、底部56は、貫通孔Hhの内側に配置される。これにより、拡張体21の全体が、自己の復元力によって展開し、元の基準形態または基準形態に近い形態に復元する。この際、心房中隔HAは、基端側起立部52と先端側起立部53との間の受容空間に配置される。生体組織の挟持方向において、電極22と対向面部62の間に、心房中隔HAが配置される。なお、拡張体21は、貫通孔Hhに接触することで、完全に基準形態に戻らずに、基準形態に近い形状に戻る可能性がある。なお、この状態において、拡張体21は、収納シース30に覆われず、かつ牽引シャフト33から力を受けていない。拡張体21のこの形態も、基準形態に含まれると定義することができる。
次に、術者は、凹部51によって心房中隔HAを保持した状態で操作部23を操作し、牽引シャフト33を基端側に移動させる。これにより、図8に示すように、軸方向へ圧縮力を受ける拡張体21は、基準形態よりも径方向に拡張した拡張形態となる。拡張体21は、拡張形態となることで、基端側起立部52と先端側起立部53が近づき、基端側起立部52と先端側起立部53の間に心房中隔HAを挟持する。このとき、電極22と対向面部62は対向する。凹部51は、心房中隔HAを挟持した状態でさらに拡張し、貫通孔Hhを径方向に押し広げる。
基端側起立部52と先端側起立部53が離れた状態から、基端側起立部52と先端側起立部53が近づくと、図8および9に示すように、基端側起立部52と先端側起立部53の間に心房中隔HAが挟まれる。そして、電極22が、心房中隔HAを先端側へ押圧する。このとき、先端側起立部53は、2つの外縁部61の間で対向面部62を先端側へ撓ませて、2つの外縁部61の間に、電極22に押圧される心房中隔HAを受け入れる。対向面部62の対向面63は、心房中隔HAを介して電極22から力を受けて、電極22と略平行になるように撓む。そして、対向面部62は、柔軟に撓みつつ、電極22に押される心房中隔HAに、電極22の押し込み方向と逆方向の反発力を作用させる。これにより、電極22は、心房中隔HAに対して密着する。たがって、心房中隔HAは、電極22の導電面80および対向面63の間に挟まれる。対向面部62の血液露出面65は、左心房HLa内で血液に露出している。
貫通孔Hhを拡張させた後、血行動態の確認を行う。術者は、図9に示すように、下大静脈Iv経由で右心房HRaに対し、血行動態確認用デバイス100を送達する。血行動態確認用デバイス100としては、例えば、公知のエコーカテーテルを使用することができる。術者は、血行動態確認用デバイス100で取得されたエコー画像を、ディスプレイ等の表示装置に表示させ、その表示結果に基づいて貫通孔Hhを通る血液量を確認することができる。
次に、術者は、図8に示すように、貫通孔Hhの大きさを維持するために維持処置を行う。維持処置では、電極22を通して貫通孔Hhの縁部にエネルギーを付与することにより、貫通孔Hhの縁部をエネルギーによって焼灼(加熱焼灼)する。電極22を通して貫通孔Hhの縁部付近の生体組織が焼灼されると、縁部付近には生体組織が変性した変性部が形成される。変性部における生体組織は弾性を失った状態となるため、貫通孔Hhは拡張体21により押し広げられた際の形状を維持できる。
電極22と対向して配置されるとともに焼灼される生体組織と接触する対向面63を含む対向面部62は、焼灼された生体組織から熱を受けて、温度が上昇する。対向面部62に伝わった熱は、凹凸構造であるベース面67およびフィン68の表面である血液露出面65から、血液へ伝達される。凹凸構造は、表面積が大きいため、効果的に熱を血液へ放熱できる。このため、対向面部62の温度が上昇し過ぎることを抑制して、対向面部62の表面で血栓が形成されることを抑制できる。
また、片持ち梁状であるために撓んで生体組織に接触しやすい対向面部62に形成される対向面63は、生体組織と密着しやすい。このため、生体組織と対向面63の間に意図しない隙間が生じて血栓が形成されることを抑制できる。
また、片持ち梁状の対向面部62は、撓んで生体組織に接触しやすい反面、先端側貫通孔60に囲まれるように先端側貫通孔60に隣接するために、放熱しにくい。しかしながら、対向面部62は、表面積が大きい血液露出面65を備えることで、先端側貫通孔60に隣接しても、高い放熱性を得ることができる。
維持処置後には、再度血行動態を確認し、貫通孔Hhを通る血液量が所望の量となっている場合、術者は、拡張体21を縮径させ、収納シース30に収納した上で、貫通孔Hhから抜去する。さらに、術者は、医療デバイス10全体を生体外に抜去し、処置を終了する。
以上のように、第1実施形態に係る医療デバイス10は、形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体70を含む拡張体21と、拡張体21の基端が固定された基端固定部37を含む先端部を有する長尺なシャフト部20と、拡張体21に沿って設けられる少なくとも1つの電極22と、を備え、拡張体21は、径方向内側に窪み、拡張体21の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部51を有し、凹部51は、径方向の最も内側に位置する底部56と、底部56の基端から径方向外側に延びる基端側起立部52と、底部56の先端から径方向外側に延びる先端側起立部53と、有し、電極22は、受容空間に面するように、基端側起立部52と先端側起立部53の一方に沿って配置され、凹部51は、基端側起立部52と先端側起立部53の他方に、拡張体21の拡張時に電極22と対向する対向面63を含む対向面部62を有し、対向面部62は、対向面63とは反対側に設けられ、電極22と対向面部62との間に生体組織が配置された際に血液中に露出する血液露出面65を含む露出部66を有し、血液露出面65は、電極22の生体組織と接触可能な導電面80よりも大きな面積を有する。
上記のように構成した医療デバイス10は、電極22により生体組織を焼灼する際に、電極22と対向することで温度上昇する対向面部62の熱を、血液露出面65から放熱して逃がすことができる。このため、医療デバイス10は、焼灼を行う電極22による構造の温度上昇を抑制し、構造的に安定して冷却を促進できる。したがって、医療デバイス10は、電極22と対向する対向面部62の過度な温度上昇を抑制して、血栓の形成を抑制できる。
また、露出部66は、凹凸構造を有し、血液露出面65の少なくとも一部は、凹凸構造の表面に形成される。これにより、熱を血液へ逃がすための血液露出面65の面積が広くなり、対向面部62の温度上昇を効果的に抑制できる。
また、凹凸構造は、対向面63と反対側のベース面67と、ベース面67と略垂直な方向にベース面67から延びた少なくとも1つのフィン68と、を有する。これにより、少なくとも1つのフィン68によって血液露出面65の面積を効果的に増加できるため、対向面部62の温度上昇を効果的に抑制できる。
また、本発明は、シャントを形成する方法をも提供する。本方法は、径方向内側に窪んだ凹部51を含む径方向に拡縮可能な拡張体21と、拡張体21の基端が固定された基端固定部37を含む先端部を有する長尺なシャフト部20と、拡張体21の凹部51の一部に沿って設けられる少なくとも1つの電極22と、を備える医療デバイス10を用いて心房中隔HAにシャントを形成する方法であって、拡張体21の拡張時に凹部51で画成される受容空間を挟んで対向するように、電極22と、凹部51に設けられ電極22と対向する対向面63を含む対向面部62と、を配置し、心房中隔HAに形成された穿刺孔Hh内に凹部51を配置して、受容空間に穿刺孔Hhを取り囲む生体組織を受容し、拡張体21を拡張させて電極22と対向面部62とで生体組織を挟み込んだ状態で、印加した電極22で生体組織を焼灼し、電極22による生体組織の焼灼時に、生体組織から対向面部62へ伝わる熱を、当該対向面部62の対向面63とは反対側に設けられる血液露出面65から当該血液露出面65に接触する血液へ放熱または熱放射することで、対向面部62を冷却する。
上記のように構成した方法は、電極22により生体組織を焼灼する際に、電極22と対向することで温度上昇する対向面部62の熱を、血液露出面65から放熱または熱放射して逃がすことができる。このため、本方法は、焼灼を行う電極22による医療デバイス10の温度度上昇を抑制し、構造的に安定して冷却を促進できる。したがって、電極22と対向する対向面部62の過度な温度上昇を抑制して、血栓の形成を抑制できる。
なお、露出部66の凹凸構造は、導電面80よりも大きな面積を有する血液露出面65を備えれば、特に限定されない。例えば、図10(A)に示す第1変形例のように、露出部66の凹凸構造は、2つのフィン68の間に溝68Aを有する1つの部材68Bにより形成されてもよい。また、図10(B)に示す第2変形例のように、露出部66の凹凸構造は、ストラット50の延在方向と垂直な断面形状が、円弧形状の部材68Cにより形成されてもよい。また、図10(C)に示す第3変形例のように、露出部66の凹凸構造は、ストラット50の延在方向に並ぶ複数のフィン68と、隣接するフィン68の間に配置される複数の溝68Aと、を有する部材68Dにより形成されてもよい。また、図10(D)に示す第4変形例のように、露出部66は、ストラット50の延在方向に貫通する内腔68Eが形成された円筒68Fであってもよい。また、露出部66の凹凸構造は、例えば複数の柱状のピンを有する構造であってもよい。
また、露出部66の凹凸構造は、対向面63と反対側のベース面67に形成された粗面部を有してもよい。粗面部は、微小な凸部を有するように粗く形成される。各々の微小な凸部の大きさは、例えば15~250μmである。粗面部の微小な凸部は、熱を血液へ逃がすための血液露出面65の面積を広げることができる。
また、露出部66は、導電面80よりも大きな面積を有する血液露出面65を備えれば、凹凸構造を備えなくてもよい。例えば、図11に示す第5変形例のように、血液露出面65は、平滑な面で形成されてもよい。
また、血液露出面65は、拡張体本体70を形成する形状記憶金属よりも熱放射率の高い熱放射面72を有してもよい。例えば、図12に示す第6変形例のように、露出部66は、拡張体本体70の表面に形成され、熱放射面72を備えた熱放射層71を有してもよい。これにより、熱放射層71から熱放射によって熱を血液へ逃がすことができ、対向面部62の温度上昇を効果的に抑制できる。熱放射層71の材料は、特に限定されない。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る医療デバイス10は、図13に示すように、拡張体21に設けられる熱伝導層73によって拡張体21に沿って熱を逃がす点で、第1実施形態と異なる。
第2実施形態に係る医療デバイス10の拡張体21は、形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体70と、拡張体本体70の少なくとも一部と接触する熱伝導層73と、絶縁層74とを有している。
拡張体本体70は、電極22の近傍に配置される電極近傍部75を有している。電極近傍部75は、電極22の生体組織への接触時に電極22を支持する電極支持部54を有している。電極近傍部75は、電極22が生体組織に接触する際に、電極22の近傍に配置される。電極近傍部75は、電極支持部54および対向面部62を含んでもよい。または、電極近傍部75は、凹部51であってもよい。
熱伝導層73は、拡張体本体70の一方面側にコーティングされた熱伝導コーティング層である。熱伝導層73は、拡張体本体70を形成する形状記憶金属よりも高い熱伝導率を備えている。一例として、拡張体本体70の材料がニッケル-チタン合金である場合、熱伝導層73の材料は、ニッケル-チタン合金よりも高い熱伝導率を有する材料であり、例えばZn、Al、Ag、Au、Ni、Sn、Cu等を含む金属材料を適用できる。なお、熱伝導層73は、拡張体本体70の両面を覆ってもよく、拡張体本体70の全面を覆ってもよい。
または、熱伝導層73は、拡張体本体70の表面を覆い、拡張体本体70を形成する形状記憶金属よりも高い熱伝導率を備えたフィラーを含む樹脂チューブであってもよい。フィラーとは、樹脂材料に混ぜ込まれる充填剤であり、樹脂材料に特性を付与することができる。樹脂チューブは、例えば熱収縮チューブである。熱収縮チューブは、拡張体本体70に被された状態で加熱されることで収縮し、拡張体本体70に密着することができる。
絶縁層74は、電気絶縁性を備えた層であり、拡張体本体70および熱伝導層73の全体を覆っている。絶縁層74は、電極22から拡張体本体70や熱伝導層73への短絡を防止できる。なお、絶縁層74は、拡張体本体70または熱伝導層73の一部のみを覆ってもよい。例えば、絶縁層74は、拡張体本体70および/または熱伝導層73の電極22と隣接する部位のみを覆ってもよい。
また、拡張体21は、電極22の生体組織への接触時に血液中に露出可能な血液露出面65を備える露出部66を有する。血液露出面65は、電極22から熱伝導層73へ伝わる熱を外部へ効果的に熱放射できるように、拡張体本体70よりも熱放射率の高い熱放射面72を有することが好ましい。血液露出面65を備える露出部66は、絶縁層74に形成されてもよい。なお、露出部66は、絶縁層74に形成されずに、絶縁層74よりも外側の層に形成されてもよい。露出部66は、電極22から熱伝導層73へ伝わる熱を外部へ効果的に放熱できるように、表面積を増加させるための凹凸構造を有してもよい。
第2実施形態に係る医療デバイス10を使用する際には、第1実施形態と同様に、拡張体21を貫通孔Hhに挿入して拡張させる。次に、術者は、貫通孔Hhの大きさを維持するために、電極22を通して貫通孔Hhの縁部にエネルギーを付与することにより、貫通孔Hhの縁部を焼灼する。このとき、拡張体本体70の電極近傍部75は、焼灼された生体組織から熱を受けて、温度が上昇する。電極近傍部75に伝わった熱は、熱伝導層73を、拡張体本体70に沿って電極近傍部75から離れた部分へ伝導する。このため、電極近傍部75の温度上昇を抑制して、電極近傍部75の表面で血栓が形成されることを抑制できる。
以上のように、第2実施形態に係る医療デバイス10は、形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体70を含む拡張体21と、拡張体21の基端が固定された基端固定部37を含む先端部を有する長尺なシャフト部20と、拡張体21に沿って設けられる少なくとも1つの電極22と、を備え、拡張体21は、拡張体本体70の少なくとも一部と接触し、かつ、形状記憶金属よりも熱伝導率が高い熱伝導層73を有し、拡張体本体70は、電極22の生体組織への接触時に電極22を支持する電極支持部54を含み電極22が生体組織に接触する際に電極22の近傍に配置される電極近傍部75を有し、熱伝導層73は、拡張体本体70に沿って、電極近傍部75から拡張体本体70の電極近傍部75以外の部分に延びている。
上記のように構成した医療デバイス10は、電極22により生体組織を焼灼する際に、電極近傍部75の熱を、熱伝導層73に伝導させて電極近傍部75から逃がすことができる。このため、医療デバイス10は、焼灼を行う電極22により構造の温度が上がり過ぎず、構造的に安定して冷却を促進できる。したがって、医療デバイス10は、電極22の近傍の電極近傍部75の過度な温度上昇を抑制して、血栓の形成を抑制できる。
また、熱伝導層73は、拡張体本体70の延在方向の略全体にわたって延びている。これにより、電極近傍部75の熱を、熱伝導層73に伝導させて電極近傍部75から効果的に逃がすことができる。なお、熱伝導層73は、拡張体本体70の延在方向の一部にのみ設けられてもよい。
また、熱伝導層73は、拡張体本体70の表面を覆う熱伝導コーティング層を有する。これにより、電極近傍部75の熱を、熱伝導コーティング層に伝導させて電極近傍部75から効果的に逃がすことができる。
また、拡張体21は、熱伝導コーティング層および/または拡張体本体70の表面を覆う絶縁層74を有する。これにより、熱伝導コーティング層および/または拡張体本体70を電極22から絶縁して、熱伝導コーティング層および/または拡張体本体70に電流が流れることを防止できる。
また、熱伝導層73は、拡張体本体70の表面を覆い、拡張体本体70を形成する形状記憶金属よりも熱伝導率が高いフィラーを含む樹脂チューブであってもよい。これにより、電極近傍部75から熱伝導層73へ伝わる熱を、フィラーを用いて電極近傍部75から効果的に逃がすことができる。また、樹脂チューブを拡張体本体70に配置するのみで、熱伝導層73を拡張体21に容易に配置できる。
また、拡張体21は、熱伝導層73の少なくとも一部に隣接して設けられ、電極22の生体組織への接触時に血液中に露出可能な血液露出面65を含む露出部66を有する。これにより、電極22から熱伝導層73へ伝わる熱を、露出部66から血液へ伝達させることができるため、電極近傍部75から効果的に逃がすことができる。
また、血液露出面65は、拡張体本体70よりも熱放射率の高い熱放射面72を有してもよい。これにより、電極22から熱伝導層73へ伝わる熱を、血液露出面65の熱放射面72から外部へ熱放射して、電極近傍部75から効果的に逃がすことができる。
また、熱伝導層73は、図14に示す第7変形例のように、拡張体本体70の内部に設けられた内層であってもよい。これにより、温度が上昇する熱伝導層73が血液に接触しにくくなるため、血栓の形成を抑制できる。
また、第2実施形態のような熱伝導性の高い熱伝導層73を備える構成の場合、電極22が配置される位置は、対向する部位(対向面部62)を有する位置に限定されず、例えば底部56であってもよい。
また、第2実施形態におけるシャントを形成する方法は、形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体70を含む拡張体21と、拡張体21の基端が固定された基端固定部37を含む先端部を有する長尺なシャフト部20と、拡張体21に沿って設けられる少なくとも1つの電極22と、備える医療デバイス10を用いて心房中隔HAにシャントを形成する方法であって、心房中隔HAに形成された穿刺孔Hh内に、拡張体本体70の少なくとも一部と接触し、かつ、前記形状記憶金属よりも熱伝導率が高い熱伝導層73を含む拡張体21を配置し、拡張体21を拡張させて穿刺孔Hhを取り囲む生体組織に電極22を接触させた状態で、印加した電極22で生体組織を焼灼し、電極22による生体組織の焼灼時に、拡張体本体70の電極22の近傍に配置される電極近傍部75から、熱伝導層73により電極近傍部75から離れた部分に熱を伝導させることで、電極近傍部75を冷却する。
上記のように構成した方法は、電極22により生体組織を焼灼する際に、電極近傍部75の熱を、熱伝導層73を伝導させて電極22から逃がすため、焼灼を行う電極22による医療デバイス10の温度上昇を抑制し、構造的に安定して冷却を促進できる。したがって、電極22の近傍の電極近傍部75の過度な温度上昇を抑制して、血栓の形成を抑制できる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、本発明は、図15(A)に示すように、拡張体21の凹部51よりも先端側の部位が設けられない医療デバイス10に適用されてもよい。このような医療デバイス10であっても、第1実施形態のような放熱性の高い血液露出面65を有する構成や、第2実施形態のような熱伝導性の高い熱伝導層73を備える構成とすることができる。
また、本発明は、図15(B)に示すように、拡張体21の基端側起立部52よりも先端側の部位が設けられない医療デバイス10に適用されてもよい。このような医療デバイス10であっても、第2実施形態のような熱伝導性の高い熱伝導層73を備える構成とすることができる。また、本発明は、拡張体がメッシュ状の医療デバイスに適用されてもよい。
10 医療デバイス
20 シャフト部
21 拡張体
22 電極
37 基端固定部
50 ストラット
51 凹部
52 基端側起立部
53 先端側起立部
54 電極支持部
56 底部
62 対向面部
63 対向面
65 血液露出面
66 露出部
67 ベース面
68 フィン
70 拡張体本体
71 熱放射層
72 熱放射面
73 熱伝導層
74 絶縁層
75 電極近傍部
80 導電面
HA 心房中隔
HRa 右心房
HLa 左心房
Hh 穿刺孔

Claims (15)

  1. 形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体を含む拡張体と、
    前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、
    前記拡張体に沿って設けられる少なくとも1つの電極と、を備え、
    前記拡張体は、径方向内側に窪み、前記拡張体の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部を有し、
    前記凹部は、径方向の最も内側に位置する底部と、底部の基端から径方向外側に延びる基端側起立部と、底部の先端から径方向外側に延びる先端側起立部と、有し、
    前記電極は、前記受容空間に面するように、前記基端側起立部と前記先端側起立部の一方に沿って配置され、
    前記凹部は、前記基端側起立部と先端側起立部の他方に、前記拡張体の拡張時に前記電極と対向する対向面を含む対向面部を有し、
    前記対向面部は、前記対向面とは反対側に設けられ、前記電極部と前記対向面部との間に生体組織が配置された際に血液中に露出する血液露出面を含む露出部を有し、
    前記血液露出面は、前記電極の生体組織と接触可能な導電面よりも大きな面積、または、前記拡張体本体を形成する形状記憶金属よりも熱放射率の高い熱放射面を有することを特徴とする医療デバイス。
  2. 前記露出部は、凹凸構造を有し、
    前記血液露出面の少なくとも一部は、前記凹凸構造の表面に形成されることを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
  3. 前記凹凸構造は、前記対向面と反対側のベース面と、前記ベース面と略垂直な方向に前記ベース面から延びた少なくとも1つのフィンと、を有することを特徴とする請求項2に記載の医療デバイス。
  4. 前記凹凸構造は、前記対向面と反対側のベース面に形成された粗面部を有することを特徴とする請求項2に記載の医療デバイス。
  5. 前記露出部は、前記拡張体本体の表面に形成され、前記拡張体本体よりも高い熱放射率を有する熱放射面を含む熱放射層を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
  6. 形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体を含む拡張体と、
    前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、
    前記拡張体に沿って設けられる少なくとも1つの電極と、を備え、
    前記拡張体は、前記拡張体本体の少なくとも一部と接触し、かつ、前記形状記憶金属よりも熱伝導率が高い熱伝導層を有し、
    前記拡張体本体は、前記電極の生体組織への接触時に前記電極を支持する電極支持部を含み前記電極が生体組織に接触する際に前記電極の近傍に配置される電極近傍部を有し、
    前記熱伝導層は、前記拡張体本体に沿って、前記電極近傍部から前記拡張体本体の電極近傍部以外の部分に延びていることを特徴とする医療デバイス。
  7. 前記熱伝導層は、前記拡張体本体の延在方向の略全体にわたって延びていることを特徴とする請求項6に記載の医療デバイス。
  8. 前記熱伝導層は、前記拡張体本体の表面を覆う熱伝導コーティング層を有することを特徴とする請求項6または7に記載の医療デバイス。
  9. 前記拡張体は、前記熱伝導コーティング層および/または前記拡張体本体の表面を覆う絶縁層を有することを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の医療デバイス。
  10. 前記熱伝導層は、前記拡張体本体の表面を覆い、前記形状記憶金属よりも熱伝導率が高いフィラーを含む樹脂チューブにより形成されることを特徴とする請求項6~9のいずれか1項に記載の医療デバイス。
  11. 前記熱伝導層は、前記拡張体本体の内部に設けられた内層であることを特徴とする請求項6または7に記載の医療デバイス。
  12. 前記拡張体は、前記熱伝導層の少なくとも一部に隣接して設けられ、前記電極の生体組織への接触時に血液中に露出可能な血液露出面を含む露出部を有することを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
  13. 前記血液露出面は、前記拡張体本体よりも熱放射率の高い熱放射面を有することを特徴とする請求項6~12のいずれか1項に記載の医療デバイス。
  14. 径方向内側に窪んだ凹部を含む径方向に拡縮可能な拡張体と、前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、前記拡張体の前記凹部の一部に沿って設けられる少なくとも1つの電極と、を備える医療デバイスを用いて心房中隔にシャントを形成する方法であって、
    前記拡張体の拡張時に前記凹部で画成される受容空間を挟んで対向するように、前記電極と、前記凹部に設けられ前記電極と対向する対向面を含む対向面部と、を配置し、
    心房中隔に形成された穿刺孔内に前記凹部を配置して、前記受容空間に前記穿刺孔を取り囲む生体組織を受容し、
    前記拡張体を拡張させて前記電極と前記対向面部とで前記生体組織を挟み込んだ状態で、印加した前記電極で前記生体組織を焼灼し、
    前記電極による前記生体組織の焼灼時に、前記生体組織から前記対向面部へ伝わる熱を、当該対向面部の前記対向面とは反対側に設けられる血液露出面から当該血液露出面に接触する血液へ放熱または熱放射することで、前記対向面部を冷却することを特徴とする方法。
  15. 形状記憶金属の線材からなる径方向に拡縮可能な拡張体本体を含む拡張体と、前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、前記拡張体に沿って設けられる少なくとも1つの電極と、備える医療デバイスを用いて心房中隔にシャントを形成する方法であって、
    心房中隔に形成された穿刺孔内に、前記拡張体本体の少なくとも一部と接触し、かつ、前記形状記憶金属よりも熱伝導率が高い熱伝導層を含む前記拡張体を配置し、
    前記拡張体を拡張させて前記穿刺孔を取り囲む生体組織に前記電極を接触させた状態で、印加した前記電極で前記生体組織を焼灼し、
    前記電極による前記生体組織の焼灼時に、前記拡張体本体の前記電極の近傍に配置される電極近傍部から、前記熱伝導層により前記電極近傍部から離れた部分に熱を伝導させることで、前記電極近傍部を冷却することを特徴とする方法。
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