JP2022041601A - 骨又は軟骨関連疾患のスクリーニング方法 - Google Patents

骨又は軟骨関連疾患のスクリーニング方法 Download PDF

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【課題】骨または軟骨に関連する疾患を治療するための薬物のスクリーニング方法の提供。【解決手段】哺乳類のiPS細胞から誘導されたCD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種の条件を満たす軟骨前駆細胞集団または前記軟骨前駆細胞集団から誘導された軟骨細胞に候補物質を作用させて軟骨形成能を評価する工程を含む、軟骨関連疾患に有効な薬物のスクリーニング方法。【選択図】なし

Description

本発明は、骨又は軟骨関連疾患のスクリーニング方法に関する。
本明細書において、「CPC」は軟骨前駆細胞又は軟骨前駆細胞集団の意味で使用され、「LBM」は肢芽間葉系細胞又は肢芽間葉系細胞集団の意味で使用される。
体性幹細胞の一つである間葉系幹細胞は骨芽細胞や軟骨細胞といった細胞への分化能を有した細胞であり、再生医療への応用も考慮されているが、分化誘導効率の低さや自己増殖能の制限が難点となっている。また多能性幹細胞を用いた従来の分化誘導方法は、目的とする組織細胞へ直接誘導することに焦点を置いているが、その誘導効率と品質の低さが問題視されている(非特許文献1及び2)。
また、骨芽細胞又は軟骨細胞の質が悪いと得られる骨組織、軟骨組織の質が低下し、スクリーニングに使用する材料として好ましくない。
Stem Cell Reports. 2015 Mar 10;4(3):404-18. Nat Biotechnol. 2015 Jun;33(6):638-45.
本発明は、骨または軟骨に関連する疾患を治療するための薬物のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の骨又は軟骨関連疾患のスクリーニング方法を提供するものである。
項1. 哺乳類のiPS細胞から誘導されたCD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種の条件を満たす軟骨前駆細胞集団または前記軟骨前駆細胞集団から誘導された軟骨細胞に候補物質を作用させて軟骨形成能を評価する工程を含む、軟骨関連疾患に有効な薬物のスクリーニング方法。
項2. 前記軟骨前駆細胞集団または前記軟骨前駆細胞集団から誘導された軟骨細胞が、軟骨関連疾患患者由来のiPS細胞から誘導された軟骨前駆細胞集団または前記軟骨前駆細胞集団から誘導された軟骨細胞を含む、項1に記載の軟骨関連疾患に有効な薬物のスクリーニング方法。
項3. 哺乳類のiPS細胞から誘導されたRunx2陽性率が95%以上である骨芽前駆細胞集団または前記骨芽前駆細胞集団から誘導された骨芽細胞に候補物質を作用させて骨形成能に対する影響を評価する工程を含む、骨関連疾患に有効な薬物のスクリーニング方法。
項4. 前記骨芽前駆細胞集団または前記骨芽前駆細胞集団から誘導された骨芽細胞が、骨関連疾患患者由来のiPS細胞から誘導されたRunx2陽性率が95%以上である骨芽前駆細胞または前記骨芽前駆細胞集団である、項3に記載の骨関連疾患に有効な薬物のスクリーニング方法。
本発明により、骨又は軟骨関連疾患に有効な薬物をスクリーニングすることができる。このスクリーニング方法において、骨又は軟骨関連疾患の患者由来のiPS細胞から誘導された疾患モデルを使用することで、骨又は軟骨関連疾患に有効な薬物を見つけやすくなる。
本発明のスクリーニング方法の一例を示す。化合物ライブラリーで処理後のノジュール面積を比較する。 本発明のスクリーニング方法の一例を示す。ACGII-1 hCPCの軟骨分化能を改善出来る化合物が発見された。 本発明のスクリーニング方法の一例を示す。ACGII-1 ExpLBM細胞の軟骨分化能を改善出来る化合物が発見された。 ACGII-1 ExpLBMの軟骨分化能を改善する化合物の探索。 本発明の概要を示す。
本発明において、哺乳類の肢芽間葉系細胞(LBM)は、軟骨前駆細胞とRunx2陽性骨芽前駆細胞の両方に分化することができる多能性の細胞である。一方、軟骨前駆細胞(Chondrocyte Progenitor Cells, 以下、「CPC」と略すことがある)は、骨芽細胞へ分化しない点で、LBMとは異なる細胞である。軟骨細胞/軟骨組織は、本発明で品質管理されたLBM、本発明で品質管理されたCPCから誘導した方が良好なものが得られる。本発明の品質管理方法により高品質のLBM、CPCが得られ、LBMから誘導される骨芽前駆細胞、該骨芽前駆細胞から誘導される骨芽細胞又は骨組織、CPCから誘導される軟骨細胞又は軟骨組織は、スクリーニングに適した安定した品質のものになる。
本発明のスクリーニング方法に使用するCPC、軟骨細胞、Runx2陽性骨芽前駆細胞及び骨芽細胞は、骨又は軟骨関連疾患患者由来のiPS細胞から分化誘導されたものが好ましい。骨又は軟骨関連疾患患者由来のiPS細胞から分化誘導されたCPC、軟骨細胞、Runx2陽性骨芽前駆細胞及び骨芽細胞は、患者と同様な骨又は軟骨関連疾患と関連する性質を有し、これらのいずれかに対し骨又は軟骨産生能を高める物質は骨又は軟骨関連疾患の治療薬になり得る。
CPCはFGFシグナル活性化剤の存在下に継代培養することによりその細胞数を大きく増加させることができる。CPCの継代培養により染色体の異常が起こらないことを本発明者は確認した。
本明細書において、「多能性幹細胞」とは、自己複製する能力(自己複製能)と他の複数系統の細胞に分化する能力(多分化能)を併せて有する細胞を意味する。細胞が多能性幹細胞であることの確認は、自己複製能と多分化能を有することの確認に換えて、Oct3/4、Klf-4などの幹細胞マーカーの発現によっても確認することもできる。「前駆細胞」とは、幹細胞から最終の分化先である機能細胞へ分化する途中にある細胞を意味する。Runx2陽性骨芽前駆細胞は骨芽細胞に分化誘導することができる細胞であり、LBMから骨芽前駆細胞集団に分化誘導することにより、Runx2の陽性率が95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、特に99.5%以上、最も好ましくは100%Runx2陽性の骨芽前駆細胞集団を得ることができる。Runx2の陽性率が高い骨芽前駆細胞集団を使用することでより安定した高品質の骨芽細胞を得ることができ、本発明のスクリーニングに適している。また、本発明の軟骨前駆細胞及び軟骨細胞は、LBM及びCPCの段階で品質管理をすることで、より安定した高品質のCPC、軟骨細胞、Runx2陽性骨芽前駆細胞及び骨芽細胞を得ることができる。
本発明のCPC、軟骨細胞、Runx2陽性骨芽前駆細胞及び骨芽細胞の由来生物は、哺乳類、例えばヒト、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、サル、チンパンジーなどが例示され、ヒトが好ましい。
PRRX1(Paired related homeobox 1)タンパク質とは、ホメオドメインを有する転写因子の一つであり、発生過程において側板中胚葉由来の肢芽で特異的に発現することが知られている。
ヒト(Homo sapiens)のPRRX1遺伝子のcDNAの塩基配列及びPRRX1タンパク質のアミノ酸配列は、米国生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)が提供するGenBankに、下記のアクセッション番号で登録されている(複数のリビジョン(revision)が登録されている場合、最新のリビジョンを指すと理解される。):
ヒトPRRX1遺伝子:NM_006902(NM_006902.5)、NM_022716(NM_022716.4)
ヒトPRRX1タンパク質:NP_008833(NP_008833.1)、NP_073207(NP_073207.1)。
細胞がPRRX1タンパク質陽性であることは、公知の手法により検出することができる。例えば、PRRX1遺伝子の転写プロモーター配列により発現が制御されるレポーター遺伝子による検出、PRRX1タンパク質に対する特異的な抗体を用いた免疫染色による検出等が例示される。
本発明のLBM又はその分化細胞は、多能性幹細胞由来である。多能性幹細胞由来であるとは、多能性幹細胞を原材料細胞として分化誘導された細胞であることを意味する。例えば、多能性幹細胞由来のLBM又はその分化細胞は、分化誘導の工程の少なくとも一部が生体外でされたLBM又はその分化細胞である。
多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)などの万能性(あらゆる体細胞及び生殖系列の細胞に分化する能力を有する細胞)が好ましい。
本発明のLBM、CPC、軟骨細胞、Runx2陽性骨芽前駆細胞及び骨芽細胞は、好ましい実施態様において、CD9陰性、CD24陽性、CD29陽性、CD44陽性、CD46陽性、CD49f陰性、CD55陽性、CD57陰性、CD58陽性、CD90陽性、CD99陽性、CD140A陽性、CD140B陽性、SSEA1陰性、SSEA3陰性、SSEA4陽性、TRA-1-60陰性、TRA-1-81陰性、CD73陰性、CD105陰性及びCD166陰性からなる群から選択される少なくとも一つの抗原マーカーの発現陽性または陰性の特徴を有する。
LBMは、PRRX1陽性であり、FGFシグナルを活性化する環境下で増殖性を有する。本発明の1つの実施形態において、LBMの表面抗原は、CD44陽性、CD99陽性、CD140B陽性、CD9陰性、CD49f陰性及びCD57陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種又は6種の条件を満たすことが好ましい。LBMがCD44陽性、CD99陽性、CD140B陽性、CD9陰性、CD49f陰性及びCD57陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種又は6種の条件を満たす場合、軟骨前駆細胞又は骨芽前駆細胞に分化誘導するための原料として好ましい。したがって、D44陽性、CD99陽性、CD140B陽性、CD9陰性、CD49f陰性及びCD57陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種又は6種の要件を満たすか否かを確認することにより、軟骨前駆細胞又は骨芽前駆細胞の原料としてのLBMの品質管理を行うことができる。
本発明の好ましい1つの実施形態において、CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種、少なくとも2種又は3種の条件を満たす哺乳類の軟骨前駆細胞集団は、高品質の軟骨組織を産生又は再生することができる。したがって、CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種、少なくとも2種又は3種の条件を満たすか否かを調べることで軟骨前駆細胞集団の品質管理を行うことができる。
本発明の品質管理方法において、LBMではCD44、CD99、CD140B、CD9、CD49f及びCD57からなる群から選ばれる少なくとも1種の表面抗原の発現の有無を検出し、CPCではCD90、CD140B及びCD82からなる群から選ばれる少なくとも1種の発現の有無を検出する。CPCでは、これら3つのうちCD90、CD140Bについては陽性であることが好ましく、CD82については陰性であることが好ましい。LBMでは、これら6つのうち、CD44、CD99、CD140Bについては陽性であることが好ましく、CD9、CD49f及びCD57については陰性であることが好ましい。ここで、CD抗原の発現の「陽性」と「陰性」は、コントロール(抗体を入れていないサンプル)から得られる数値(陰性ヒストグラム)をおくことにより判断される。
PRRX1陽性/陰性の判断は、例えばPRRX1-tdTomatoレポーター細胞を使用したフローサイトメトリーの数値を基準に行うことができ、具体的には、tdTomatoの測定値が4x104以上の値にピークが出る場合をPRRX1陽性、2x104以下の値にピークが出る場合をPRRX1陰性とすることができる。tdTomatoは蛍光標識の一例であり、他の標識を用いた場合にも同様の基準でPRRX1陽性/陰性を判断することができる。
骨芽前駆細胞又は軟骨前駆細胞は、大量に製造し、凍結保存されて必要なときに骨又は軟骨の産生又は再生を促進する薬物探索のためのスクリーニングに使用され得る。
凍結保存された軟骨前駆細胞がスクリーニングに使用する材料として好ましいことは、軟骨前駆細胞が、CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種、少なくとも2種又は3種の条件を満たすことで確認できる。したがって、CD90陽性、CD140B陽性、CD82陰性の要件を満たすか否かを確認することにより、軟骨前駆細胞の品質管理を行うことができる。
軟骨前駆細胞又は軟骨細胞が、軟骨関連疾患患者のiPS細胞から分化誘導された場合、この患者由来軟骨前駆細胞又は軟骨細胞は、軟骨関連疾患の治療薬のスクリーニングに使用でき、凍結保存することが好ましい。
同様に、骨芽前駆細胞又は骨芽細胞が、骨関連疾患患者のiPS細胞から分化誘導された場合、この患者由来骨芽前駆細胞又は骨芽細胞は、軟骨関連疾患の治療薬のスクリーニングに使用でき、同様に凍結保存することが好ましい。
本発明の好ましいスクリーニング方法は、軟骨関連疾患患者又は骨関連疾患の患者由来のiPSから誘導された軟骨前駆細胞、軟骨細胞もしくはRunx2陽性骨芽前駆細胞又は骨芽細胞に候補物質を作用させ、候補物質により骨又は軟骨の状態が改善されたか否かを評価することにより実施され得る。本発明のスクリーニング方法の一例は、図1~3に例示されている。
本発明のスクリーニング方法の他の好ましい実施形態において、軟骨関連疾患又は骨関連疾患に罹患していないヒト由来のiPS細胞から誘導された軟骨前駆細胞、軟骨細胞もしくはRunx2陽性骨芽前駆細胞又は骨芽細胞に候補物質を作用させ、候補物質により骨又は軟骨の産生又は再生が促進されたか否かを評価することにより実施され得る。
軟骨関連疾患としては、II型コラーゲン異常症、再発性多発軟骨炎(Relapsing Polychondritis)、変形性関節症、関節リウマチ、軟骨無形成症などが挙げられる。
骨関連疾患としては、変形性関節症、骨粗しょう症、骨軟化症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死、離断性骨軟骨炎、骨形成不全症などが挙げられる。
iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞からLBMを分化誘導する条件が不適切である場合、LBMの品質が損なわれることになる。したがって、軟骨前駆細胞集団、骨芽前駆細胞集団に誘導する前にLBM がCD44陽性、CD99陽性、CD140B陽性、CD9陰性、CD49f陰性及びCD57陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種又は6種の条件を満たすか否かを確認し、品質管理を行うことが望ましく、軟骨前駆細胞に関し、LBMの表面抗原による品質管理と軟骨前駆細胞の表面抗原による品質管理を2重に行うことが好ましい。
LBMの調製において、まず多能性幹細胞から側板中胚葉細胞に分化誘導することができる。
哺乳類、特にヒトの多能性幹細胞から側板中胚葉細胞に分化誘導する手段としては、公知の手段を用いることができる。例えば、文献:Loh et al,2016, Cell, 451-467に記載の方法に準じた方法を採用することができる。具体的には哺乳類、特にヒトの多能性幹細胞からまず原始線条細胞(Mid-primitive streak)へと分化誘導を行い、次いで原始線条細胞から側板中胚葉細胞への分化誘導を行う。
側板中胚葉細胞に分化誘導されたことは、例えば側板中胚葉細胞の特異的マーカーであるHAND1タンパク質の発現を検出することにより確認することができる。
次いで、側板中胚葉細胞をWntシグナルを活性化する環境下で培養し、LBMに分化誘導し、LBMをさらに分化誘導することで、CPCを得ることができる。本発明により品質管理されたCPCは凍結保存することにより、必要なときに軟骨細胞又は軟骨組織に導くことができる。
以下において、特に好ましい哺乳類であるヒトを例に挙げて説明する。
hLBMを以下のような不適切な条件でhCPCに誘導すると、CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性の条件を全て満たさない細胞のピークと全て満たす細胞のピークが存在するCPC集団が得られるか(ダブルピーク)、或いはCD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性の条件を全て満たさない細胞の単一のピークからなるCPC集団が得られる。これらのCPC集団から軟骨細胞、軟骨組織に分化誘導しても、薬物スクリーニングに使えるような高品質の軟骨細胞、軟骨組織は得られない。
ヒト肢芽間葉系細胞(hLBM)をhCPCに誘導するために、継代培養の過程で1度でもコンフルエントな条件で培養すると、CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性の条件を全て満たさない細胞のピークが発現し、スクリーニングに適さないhCPCになる。
CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性の条件を全て満たすhCPCを得るためには、細胞がサブコンフルエントになる前に継代を行うことが好ましい。
CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種の条件を全て満たさない細胞の単一のピークからなるhCPC集団(PRRX1陰性)は軟骨細胞又は軟骨組織に誘導することは不適切であるが、CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種の条件を全て満たす細胞(PRRX1陽性)と満たさない細胞(PRRX1陰性)のダブルピークになった場合、その後に継代培養を続けるにつれて、全体がCD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性の条件を全て満たさない細胞から構成される細胞集団に収束するので、CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種の条件を全て満たさない細胞のピークが確認できた時点で培養を停止することができる。なお、培養の終了時点で、CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性の条件を全て満たさない細胞によるピークが確認できない程度、好ましくはCD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種の条件を全て満たさない細胞の割合が5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、特にこのような不適切な細胞を実質的に含まないhCPCは、本発明のスクリーニング方法に好ましく使用できる。
CD44陽性、CD99陽性、CD140B陽性、CD9陰性、CD49f陰性及びCD57陰性の条件を全て満たさない細胞の単一のピークからなるLBM(PRRX1陰性)は、PRRX1陽性であるhCPC(=CD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性の条件を全て満たすhCPC)又は骨芽前駆細胞に誘導することは不適切である。なお、培養の終了時点で、CD44陽性、CD99陽性、CD140B陽性、CD9陰性、CD49f陰性及びCD57陰性の条件を全て満たさない細胞によるピークが確認できない程度、好ましくはCD44陽性、CD99陽性、CD140B陽性、CD9陰性、CD49f陰性及びCD57陰性の条件を全て満たさない細胞の割合が5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、特にこのような不適切な細胞を実質的に含まないLBMは、本発明のスクリーニングに好ましく使用可能なhCPC、軟骨細胞、Runx2陽性骨芽前駆細胞、骨芽細胞を誘導することができる。
本発明の特に好ましい1つの実施形態は、本発明の品質管理方法で良好な品質であることが示されたLBMを用いて、CPCを調製し、さらにCPCについて本発明の品質管理方法を行う2段階の品質管理方法である。LBMとCPCについての2段階の品質管理方法を行うことで、CPCさらには最終的に得られる軟骨細胞、軟骨組織の品質をさらに高めることができる。
CPCは、2次元培養物或いは塊状の3次元培養物のいずれであってもよいが、スクリーニングに使用するときは、2次元培養物が好ましい。
本発明の品質管理方法により選別されたCPCの軟骨細胞への分化誘導方法において、Wntシグナルを活性化する環境下での培養を行う期間は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されるものではない。例えば、24時間~12日程度、4日間~8日間程度とすることができる。必要に応じて、培地交換を行うことができる。培養条件は、常法に準じることが好ましい。
培養において、必要において継代を行うことができる。継代を行う場合は、コンフルエント状態に到達する前または直後に細胞を回収し、細胞を新しい培地に播種する。また、本発明の培養において、培地を適宜交換することもできる。
CPCから軟骨細胞に誘導する培地は、特に限定されず、公知の軟骨誘導培地を用いることができる。軟骨誘導培地として、L-アスコルビン酸、ITS、GDF5、BMP4などの含む公知の組成が挙げられる。必要に応じて、ストレプトマイシン、ペニシリンなどの抗菌薬、Non-Essential Amino Acids(NEAA)、ROCK阻害剤(例えば、Y-27362)等の成分を添加することができる。
かくして、軟骨細胞が製造される。
軟骨細胞が得られたことは、例えばサフラニンO染色が陽性であること、Alcian Blue染色が陽性であることなどにより確認することができる。
<多能性幹細胞をLBMへ分化誘導する方法>
本発明のLBMは、多能性幹細胞から側板中胚葉細胞を分化誘導する工程、及び前記工程により分化誘導された細胞を、Wntシグナルを活性化する環境下で培養する工程の組み合わせにより製造することができる。
側板中胚葉細胞を介した分化誘導方法
多能性幹細胞
本発明のLBMの製造方法において、多能性幹細胞としては、上記のものを使用できいる。
側板中胚葉細胞
本発明のLBMの製造方法において、まず多能性幹細胞から側板中胚葉細胞を分化誘導する。
多能性幹細胞から側板中胚葉細胞への分化誘導は、上記のように実施することができる(図5参照)。
側板中胚葉細胞が分化誘導されたことは、例えば側板中胚葉細胞の特異的マーカーであるHAND1タンパク質の発現を検出することにより確認することができる。
側板中胚葉細胞から本発明のPRRX1陽性の肢芽間葉系細胞集団への分化誘導
次いで、分化誘導された側板中胚葉細胞をWntシグナルを活性化する環境下で培養し、本発明のPRRX1陽性のLBMに分化誘導する。なお、前の培養環境の影響を低減するために、PBS緩衝液等での洗浄を適宜行った上でWntシグナルを活性化する環境下での培養を行うことが好ましい。側板中胚葉細胞からLBMへの分化誘導は、FGF2などのFGFシグナル活性化剤の非存在下で行うことが好ましい。
側版中胚葉細胞はFGF2などのFGFシグナル活性化剤とBMPとの存在下で培養すると、心臓中胚葉に分化する。したがって、側板中胚葉からLBMに誘導する場合、Wntシグナルを活性化する条件を使用するが、FGF2などのFGFシグナル活性化剤の有効量を培地中に添加しないことが望ましい。側板中胚葉細胞は、FGFシグナル活性化剤フリーの培地でLBMに分化誘導されるので、LBMに誘導する時点では、細胞数は大きく増加しない。
本発明の特徴の1つは、LBMをWntシグナル活性化環境下でFGF2などのFGFシグナル活性化剤の存在下に培養することで、細胞数を増やしながらスクリーニングに使用できる軟骨前駆細胞を得る点にある。従来、FGFシグナル活性化剤は、側板中胚葉に作用させると心臓中胚葉のような目的外の細胞への分化を促進するために、LBMに対しては使用できないと思われていたが、本発明者は、いったんLBMに誘導した後に、Wntシグナル活性化剤とFGFシグナル活性化剤を作用させることで高品質の軟骨前駆細胞が得られることを見出した。
Wntシグナルを活性化する環境下での培養
側板中胚葉細胞は、例えば有効量のWntシグナル活性化剤の存在下で培養をすることでWntシグナルを活性化する環境下での培養行うことができる。上記のように、この培養時には、FGFシグナル活性化剤の含有量は細胞増殖促進作用の有効量未満であることが好ましく、FGF2シグナル活性化剤を含まないことがより好ましい。
Wntシグナル活性化剤は、Wntにより媒介されるシグナル伝達(特に、カノニカルWnt経路)を増強するものである。Wntシグナル活性化剤としては、GSK3β阻害剤、Wntファミリータンパク質などが挙げられる。
GSK3β阻害剤としては、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-Dichlorophenyl)-5-(5-methyl-1H-imidazol-2-yl)-2-pyrimidinyl]amino]ethyl]amino]-3-pyridinecarbonitrile)、XAV939、LiClなどが挙げられる。
Wntシグナル活性化剤としてCHIR99021を用いる場合、その添加量は例えば、0.1~20μM程度、好ましくは1~10μMとすることができる。
BMPシグナルを抑制する環境下での培養
本発明の好ましい実施態様において、分化誘導された側板中胚葉細胞をWntシグナルを活性化する環境下で培養する工程を、BMPシグナルを抑制する環境下で行うことができる。
BMPシグナルを抑制する環境下での培養は、例えば有効量のBMPシグナル抑制剤の存在下で培養をすることで行うことができる。
BMPシグナル抑制剤は、BMPにより媒介されるシグナル伝達を抑制(阻害)するものである。BMPシグナル抑制剤としては、LDN193189(4-[6-[4-(1-Piperazinyl)phenyl]pyrazolo[1,5-a]pyrimidin-3-yl]quinoline)又はその塩(例えば、塩酸塩)、DMH-1などが挙げられる。
BMPシグナル抑制剤としてLDN193189を用いる場合、その添加量は例えば、0.1~10μM程度、好ましくは0.2~5μMとすることができる。
TGFβシグナルを抑制する環境下での培養
本発明の好ましい実施態様において、分化誘導された側板中胚葉細胞をWntシグナルを活性化する環境下で培養する工程を、さらにTGFβシグナルを抑制する環境下で行うことができる。
TGFβシグナルを抑制する環境下での培養は、例えば有効量のTGFβシグナル抑制剤の存在下で培養をすることで行うことができる。
TGFβシグナル抑制剤は、TGFβにより媒介されるシグナル伝達を抑制(阻害)するものである。TGFβシグナル活性化剤としては、A-83-01(3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド)、SB431542 などが挙げられる。
TGFβシグナル抑制剤としてA-83-01を用いる場合、その添加量は例えば、0.1~10μM程度、好ましくは0.2~5μMとすることができる。
ヘッジホッグシグナルを抑制する環境下での培養
本発明の好ましい実施態様において、分化誘導された側板中胚葉細胞をWntシグナルを活性化する環境下で培養する工程を、さらにヘッジホッグ(HH)シグナルを抑制する環境下で行うことが好ましい。
ヘッジホッグシグナルを抑制する環境下での培養は、例えば有効量のヘッジホッグシグナル抑制剤の存在下で培養をすることで行うことができる。
ヘッジホッグシグナル抑制剤は、ヘッジホッグにより媒介されるシグナル伝達を抑制(阻害)するものである。ヘッジホッグシグナル活性化剤としては、ビスモルデギブ(Vismordegib)、シクロパミン、ソニデジブなどが挙げられる。
ヘッジホッグシグナル抑制剤としてビスモルデギブを用いる場合、その添加量は例えば、10nM~1μM程度、好ましくは50nM~500nM程度とすることができる。
本発明の方法(A)は、目的とする本発明のLBM又はその分化細胞の誘導効率の観点から、Wntシグナルを活性化する環境下かつBMPシグナルを抑制する環境下での培養を行うことが好ましく、Wntシグナルを活性化する環境下かつBMPシグナルを抑制する環境下であって、TGFβシグナルを抑制する環境下及び/又はヘッジホッグシグナルを抑制する環境下での培養を行うことがより好ましく、Wntシグナルを活性化する環境下かつBMPシグナルを抑制する環境下かつTGFβシグナルを抑制する環境下かつヘッジホッグシグナルを抑制する環境下での培養を行うことがさらに好ましい。
側板中胚葉細胞のLBMへの分化誘導は、Wntシグナル活性化環境下に行い、さらに、TGFβシグナル抑制剤、BMPシグナル抑制剤及びヘッジホッグシグナル抑制剤からなる群から選ばれる1種、2種又は3種の存在下に行うことができ、TGFβシグナル抑制剤、BMPシグナル抑制剤、TGFβシグナル抑制剤、及びヘッジホッグシグナル抑制剤の存在下に行うことがより好ましい。
培養
培養は、細胞及び培地を格納するための適切な容器中で行うことができる。好適な培養を行う手法として、約37℃程度および二酸化炭素濃度約5%程度の条件下で培養する手法が例示されるが、これに限定されない。上記条件での培養は、例えば公知のCO2インキュベータを用いて温度及びCO2濃度を制御しながら行うことができる。
培養は二次元細胞培養(平面培養)で行うことができる。二次元細胞培養は、容器を必要に応じて細胞の接着を促進するコーティング処理して行うことができる。
Wntシグナルを活性化する環境下での培養を行う期間は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されるものではない。例えば、6時間~4日程度、好ましくは1日間~3日間程度、より好ましくは2日間程度(48時間程度)とすることができる。必要に応じて、培地交換を行うことができる。培養条件は、常法に準じることが好ましい。
培養において、必要に応じて継代を行うことができる。継代を行う場合は、コンフルエント状態に到達する前または直後に細胞を回収し、細胞を新しい培地に播種する。また、本発明の培養において、培地を適宜交換することもできる。コンフルエント状態に到達してから培養を続けるとLBMの品質が低下し、品質管理において条件を満たさなくなる可能性が高い。
培地
培地としてCDM2 basal medium、IMDM培地、F12培地などの無血清培地を用いることが好ましい。動物由来成分不含の状態で分化誘導並びに維持培養が可能である。また、ストレプトマイシン、ペニシリンなどの抗菌薬、Non-Essential Amino Acids(NEAA)、ROCK阻害剤(例えば、Y-27632)等の成分を添加することができる。
かくして、本発明の多能性幹細胞由来であり、PRRX1タンパク質陽性であるLBMが製造される。
本発明により製造されたPRRX1タンパク質陽性である個々のLBM細胞は、生体内において側板中胚葉細胞から分化する肢芽細胞と同等の性質を有すると考えられる。本発明のLBMは、均質な細胞集団であるが、生体内のLBM細胞は、様々な細胞と共存する状態にあり、例えばPRRX1タンパク質陽性の条件と、CD44陽性、CD99陽性、CD140B陽性、CD9陰性、CD49f陰性及びCD57陰性の条件の一方又は両方を満たさない細胞を含む集団として存在するので、本発明の肢芽間葉系細胞集団(LBM)は、新規なものである。
本発明のLBMは、均質かつ高品質であって、軟骨前駆細胞と骨芽前駆細胞に誘導することができ、軟骨前駆細胞と骨芽前駆細胞自体、或いはさらにこれらから得られた骨芽細胞、軟骨細胞は、スクリーニングにおける使用に適している。
<骨芽前駆細胞への分化誘導>
本発明のLBMは、例えばRunx2陽性骨芽前駆細胞(以下、「Runx2陽性細胞」と記載することがある)に分化誘導する原材料細胞として使用することができる。
Runx2陽性細胞は、骨芽細胞、さらに骨組織へと分化及び発生することができる細胞を意味する。Runx2陽性細胞及びそれから誘導される骨芽細胞は、骨関連疾患の治療薬のスクリーニングに好適に使用することができる。
本発明のLBMを、Wntシグナルを活性化しない環境下で培養する工程を含む方法により、Runx2陽性細胞を得ることができる。
Wntシグナルを活性化しない環境下での培養
Wntシグナルを活性化しない環境下での培養は、具体的にはWntシグナル活性化剤を実質的に含まない培地を用いた培養により行うことができる。当該Wntシグナル活性化剤を含まない環境下で培養する工程の直前にWntシグナル活性化剤を含む培地を用いていた場合、PBS緩衝液等での洗浄を適宜行いWntシグナル活性化剤を除去した上で当該Wntシグナル活性化剤を含まない環境下での培養を行うことが好ましい。このような洗浄を行った場合等は、培地中に微量のWntシグナル活性化剤を含んでいたとしても、Wntシグナルは活性化されないので「Wntシグナルを活性化しない環境下」に包含される。
Wntシグナル活性化剤としては、上記のものが挙げられる。
BMPシグナルを抑制する環境下での培養
本発明のRunx2陽性細胞への分化誘導の好ましい実施態様において、無血清培地中でBMPシグナルを抑制する環境下でLBMを培養する。
BMPシグナルを抑制する環境下での培養は、例えば有効量のBMPシグナル抑制剤の存在下で培養をすることで行うことができる。
BMPシグナル抑制剤は、上記のものが挙げられる。
BMPシグナル抑制剤としてLDN193189を用いる場合、その添加量は例えば、0.1~1μM程度、好ましくは0.2~5μMとすることができる。
TGFβシグナルを活性化する環境下での培養
本発明のRunx2陽性細胞への分化誘導の好ましい実施態様において、無血清培地中で培養する工程を、さらにTGFβシグナルを活性化する環境下で行うことができる。
TGFβシグナルを活性化する環境下での培養は、例えば有効量のTGFβシグナル活性化剤の存在下で培養をすることで行うことができる。
TGFβシグナル活性化剤は、TGFβにより媒介されるシグナル伝達を増強するものである。TGFβシグナル活性化剤としては、TGFβ1タンパク質などが挙げられる。
TGFβシグナル活性化剤としてTGFβ1タンパク質を用いる場合、その添加量は例えば、0.1~10μM程度、好ましくは0.2~5μMとすることができる。
ヘッジホッグシグナルを活性化する環境下での培養
本発明のRunx2陽性細胞への分化誘導の好ましい実施態様において、無血清培地中で培養する工程を、さらにヘッジホッグ(HH)シグナルを活性化する環境下で行うことが好ましい。
ヘッジホッグシグナルを活性化する環境下での培養は、例えば有効量のヘッジホッグシグナル活性化剤の存在下で培養をすることで行うことができる。
ヘッジホッグシグナル活性化剤は、ヘッジホッグにより媒介されるシグナル伝達を増強するものである。ヘッジホッグシグナル活性化剤としては、21Kなどのヘッジホッグアゴニストなどが挙げられる。
ヘッジホッグシグナル活性化剤として21Kを用いる場合、その添加量は例えば、 1~100nM程度、好ましくは1~10nM程度とすることができる。
培養
培養は、細胞及び培地を格納するための適切な容器中で行うことができる。好適な培養を行う手法として、約37℃程度および二酸化炭素濃度約5%程度の条件下で培養する手法が例示されるが、これに限定されない。上記条件での培養は、例えば公知のCO2インキュベータを用いて温度及びCO2濃度を制御しながら行うことができる。
Runx2陽性細胞へ分化誘導する方法において、培養は二次元細胞培養(平面培養)で行うことができる。二次元細胞培養は、培養器具を必要に応じて細胞の接着を促進するコーティング処理して行うことができる。
Runx2陽性細胞へ分化誘導する方法において、Wntシグナルを活性化しない環境下での培養を行う期間は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されるものではない。例えば、6時間~4日程度、好ましくは1日間~3日間程度、より好ましくは2日間程度(48時間程度)とすることができる。必要に応じて、培地交換を行うことができる。培養条件は、常法に準じることが好ましい。
培養において、必要において継代を行うことができる。継代を行う場合は、コンフルエント状態に到達する前または直後に細胞を回収し、細胞を新しい培地に播種する。また、本発明の培養において、培地を適宜交換することもできる。
培地
本発明ではCDM2 basal medium、IMDM培地、F12培地などの無血清培地を用いることが好ましい。動物由来成分不含の状態で分化誘導並びに維持培養が可能である。また、ストレプトマイシン、ペニシリンなどの抗菌薬、Non-Essential Amino Acids(NEAA)、ROCK阻害剤(例えば、Y-27362)等の成分を添加することができる。
かくして、Runx2陽性細胞が製造される。
Runx2陽性骨芽前駆細胞が得られたことは、例えばRunx2の発現が陽性であること、アリザリンレッドの染色が陽性であることなどにより確認することができる。
<軟骨前駆細胞(CPC)への分化誘導>
本発明のLBMは、例えばCPCに分化誘導する原材料細胞として使用することができる。
CPC及び軟骨細胞は、軟骨関連疾患を治療する薬物のスクリーニング方法に使用することができる。
本発明のLBMを、Wntシグナルを活性化する環境下、かつ、FGF2などのFGFシグナル活性化剤の存在下に培養する工程を含む方法により、軟骨前駆細胞集団を得ることができる。
Wntシグナルを活性化する環境下での培養
Wntシグナルを活性化する環境下での培養は、例えば有効量のWntシグナル活性化剤の存在下で培養をすることで行うことができる。
Wntシグナル活性化剤は、Wntにより媒介されるシグナル伝達(特に、カノニカルWnt経路)を増強するものである。Wntシグナル活性化剤としては、GSK3β阻害剤、Wntファミリータンパク質などが挙げられる。
GSK3β阻害剤としては、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-Dichlorophenyl)-5-(5-methyl-1H-imidazol-2-yl)-2-pyrimidinyl]amino]ethyl]amino]-3-pyridinecarbonitrile)、XAV939、LiClなどが挙げられる。
Wntシグナル活性化剤としてCHIR99021を用いる場合、その添加量は例えば、0.1~20μM程度、好ましくは1~10μMとすることができる。
FGFシグナル活性化剤の存在下での培養
LBMの軟骨前駆細胞への分化誘導には、FGFシグナル活性化剤が必要である。FGFシグナル活性化剤の非存在下にWntシグナルを活性化する環境下で培養しても軟骨前駆細胞は得られない。
FGFシグナル活性化剤は、軟骨前駆細胞への分化誘導とともに、細胞数の増加にも寄与し、軟骨前駆細胞を大量に得ることを可能にする。
FGFシグナル活性化剤としては、FGF2などが挙げられ、FGF2が好ましい。
軟骨前駆細胞の分化誘導は、多段階で行うことが好ましい。具体的には、
(i)FGFシグナル活性化剤の存在下での培養(好ましくはWntシグナル活性化剤の非存在下)をする工程、次いで
(ii)好ましくはWntシグナル活性化剤の非存在下かつFGFシグナルの活性化剤の非存在下での培養をする工程
の2段階で行うことが好ましい。
培養
培養は、細胞及び培地を格納するための適切な容器中で行うことができる。好適な培養を行う手法として、約37℃程度および二酸化炭素濃度約5%程度の条件下で培養する手法が例示されるが、これに限定されない。上記条件での培養は、例えば公知のCO2インキュベータを用いて温度及びCO2濃度を制御しながら行うことができる。
培養において、必要において継代を行うことができる。継代を行う場合は、コンフルエント状態に到達する前または直後に細胞を回収し、細胞を新しい培地に播種する。また、本発明の培養において、培地を適宜交換することもできる。
培地
培地は、特に限定されない。好ましい実施態様において、公知の軟骨誘導培地を用いることができる。軟骨誘導培地として、L-アスコルビン酸、ITS、GDF5、BMP4などの含む公知の組成が挙げられる。必要に応じて、ストレプトマイシン、ペニシリンなどの抗菌薬、Non-Essential Amino Acids(NEAA)、ROCK阻害剤(例えば、Y-27362)等の成分を添加することができる。
かくして、軟骨前駆細胞が製造される。
軟骨前駆細胞が得られたことは、例えばサフラニンO染色が陽性であること、Alcian Blue染色が陽性であることなどにより確認することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
実施例1
II型コラーゲン異常症関連疾患患者由来iPSC株(ACGII-1, HCG)より軟骨前駆細胞を作製し、図1に示す手順に従い、軟骨前駆細胞を軟骨前駆細胞用培地で3日間培養後、Step 1培地で6日間培養し、さらにStep 2培地で6日間培養し、ハイスループットスクリーニングに供した。96ウェルプレートを用い、軟骨分化能を改善する可能性のある候補物質をStep 1培地とStep 2培地中に添加し、軟骨組織への分化誘導を行うことで、候補物質のスクリーニングを行った。候補物質の有効性は、培地中の軟骨のノジュールを測定することにより評価した。
候補物質の分注は、Multiple dispenser(Bio Tec, SDR384SR)を用い、ノジュールの測定は、BZ-X710(KEYENCE)を用いた。
候補物質は、FDA approved drug library Japan version(□)の場合、培地中に5μMの濃度で添加し、Natural Product Compound Libraru(●) の場合、培地中に1μg/mlの濃度で添加した。図2に示されるように、患者由来のiPS細胞を用いて疾患モデルを作製することで、II型コラーゲン異常症関連疾患患者の軟骨前駆細胞の軟骨分化能を改善できる化合物が発見された。
健常人由来iPSC株(414C2)から分化誘導した軟骨前駆細胞について、Step 2でBMP4の存在下(complete)または非存在下(BMP4(-))で培養したときの軟骨組織のノジュールの形成を確認した。結果を図3に示す。BMP4は軟骨分化を促進する物質の例であり、図1~3の結果から、患者由来のiPS細胞から軟骨(前駆)細胞又は骨芽(前駆)細胞を調製することで、骨又は軟骨関連疾患の治療薬のスクリーニングが可能であることが示された。
実施例2
II型コラーゲン異常症(Achondrogenesis)患者由来iPSCよりヒト軟骨前駆細胞(ExpLBM)を樹立した。同細胞を上記プロトコルに従い、候補薬剤の存在下にて軟骨分化誘導処理を行い、その後アルシアンブルー染色により軟骨分化能を測定した。その結果、5種類の化合物(Catanospermine, Mevastatin, Felodipine, Nimodipine, Bicalutamide)が軟骨分化能を促進する働きがあることがわかった(図4)。

Claims (4)

  1. 哺乳類のiPS細胞から誘導されたCD90陽性、CD140B陽性及びCD82陰性からなる群から選ばれる少なくとも1種の条件を満たす軟骨前駆細胞集団または前記軟骨前駆細胞集団から誘導された軟骨細胞に候補物質を作用させて軟骨形成能を評価する工程を含む、軟骨関連疾患に有効な薬物のスクリーニング方法。
  2. 前記軟骨前駆細胞集団または前記軟骨前駆細胞集団から誘導された軟骨細胞が、軟骨関連疾患患者由来のiPS細胞から誘導された軟骨前駆細胞集団または前記軟骨前駆細胞集団から誘導された軟骨細胞を含む、請求項1に記載の軟骨関連疾患に有効な薬物のスクリーニング方法。
  3. 哺乳類のiPS細胞から誘導されたRunx2陽性率が95%以上である骨芽前駆細胞集団または前記骨芽前駆細胞集団から誘導された骨芽細胞に候補物質を作用させて骨形成能に対する影響を評価する工程を含む、骨関連疾患に有効な薬物のスクリーニング方法。
  4. 前記骨芽前駆細胞集団または前記骨芽前駆細胞集団から誘導された骨芽細胞が、骨関連疾患患者由来のiPS細胞から誘導されたRunx2陽性率が95%以上である骨芽前駆細胞または前記骨芽前駆細胞集団である、請求項3に記載の骨関連疾患に有効な薬物のスクリーニング方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023244016A1 (ko) * 2022-06-15 2023-12-21 연세대학교 산학협력단 골관절염의 예방 또는 치료용 조성물 및 이의 용도

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