JP2022041126A - アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤、および、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤 - Google Patents

アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤、および、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤 Download PDF

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Abstract

【課題】アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤、および、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤を提供する。【解決手段】炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩を有効成分として含有する、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤、および、抗ウイルス剤を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤、および、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤に関する。
ウイルスは、DNAまたはRNAをゲノムとして有し、宿主に感染した後、宿主内で自身のゲノムを複製して増殖する。ウイルスが感染した宿主では、ウイルスの種類に応じて様々な症状が引き起こされる。
例えば、コロナウイルス(CoV)は、上気道または下気道などに感染し、主として呼吸器系などに症状が出るウイルスである。より具体的に、SARS-CoV-1は、下気道(例えば、肺)に感染して増殖し、主として下気道に炎症を引き起こすウイルスである。一方、SARS-CoV-2は、上気道(例えば、鼻腔および咽頭)に感染して増殖し、主として上気道に炎症を引き起こすウイルスである。SARS-CoV-2の場合、上気道にて引き起こされた炎症が、後に下気道へと移行して、重症化する場合もある。
SARS-CoV-2の感染力は、SARS-CoV-1の感染力よりも10~20倍高いと推定されており、感染力の違いが、症状の違い(例えば、重症化、重症化呼吸不全)を生み出している原因の一つであると考えられている。それ故に、現在、SARS-CoV-1およびSARS-CoV-2をはじめとして、様々なウイルスの感染メカニズムの解明が進められている。
一般的に、ウイルスは、ウイルスの表面に存在するタンパク質と、標的細胞の表面に存在する受容体との結合を介して、標的細胞へ感染する。例えば、SARS-CoV-1およびSARS-CoV-2は、ウイルスの表面に存在するスパイク(S)タンパク質と、標的細胞の表面に存在するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)との結合を介して、標的細胞へ感染することが知られている(非特許文献1)。更に、コロナウイルスは、ACE2を多く発現する細胞に感染し易いこと(非特許文献2)、ACE2の発現量が重症化と関連すること(非特許文献3)、および、ACE2は、上気道および下気道の上皮細胞(例えば、鼻粘膜上皮細胞)、並びに、腸管の上皮細胞で多く発現していること(非特許文献4および5)も知られている。
Zhou P,et. al.,A Pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin. Nature.2020 Mar;579(7798):270-273. Hong Peng Jia,et al.,ACE2 Recepter Expression and Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus Infection Depend on Differentiation of human Airway Epithelia.J Virol.2005 Dec;79(23):14614-21. Samuel James Brake et al., Smoking Upregulates Angiotensin-Converting Enzyme-2 Receptor: A Potential Adhesion Site for Novel Coronavirus SARS-Cov-2(Covid-19), J. Clin. Med, 2020, 9, 841 Daniel J.Jackson,et al.Association of respiratory allergy,asthma and expression of the SARS-CoV-2 recepter ACE2.J Allergy Clin Immunol.2020 Apr 22 Waradon Sungnak et al., SARS-CoV-2 entry factors are highly expressed in nasal epithelial cells together with innate immune genes, Nat. Med, 2020
SARS-CoV-2による世界での死者は50万人以上にのぼっており、ワクチン、抗ウイルス薬等の開発が進められているが、いまだ有効な治療法は確立されていない。
本発明の一態様は、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤、および、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、(i)ウイルスに感染した細胞では、ウイルスの受容体として機能するACE2の発現量が増加し、ウイルスの更なる感染が容易になること、および、(ii)炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩によってACE2の発現を抑制できること、を新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の一態様は以下である。
〔1〕炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩を有効成分として含有する、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤。
〔2〕炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩を有効成分として含有する、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤。
〔3〕上記ウイルスは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、または、coronavirus NL63である、〔2〕に記載の抗ウイルス剤。
〔4〕投与剤型が、点鼻薬、噴霧薬、口内洗浄薬、または、外用薬である、〔2〕または〔3〕に記載の抗ウイルス剤。
〔5〕炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩の、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制化合物としての使用。
〔6〕炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩の、抗ウイルス化合物としての使用。
本発明の一態様によれば、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤、および、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤を提供することができる。
気道上皮細胞における、プロピオン酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 気道上皮細胞における、プロピオン酸ナトリウムによるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 気道上皮細胞における、dsRNAによるACE2の発現の促進を定量化したグラフである。 dsRNAを添加した気道上皮細胞における、プロピオン酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 dsRNAを添加した気道上皮細胞における、プロピオン酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 気道上皮細胞における、酢酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 dsRNAを添加した気道上皮細胞における、酢酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 気道上皮細胞における、酪酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 dsRNAを添加した気道上皮細胞における、酪酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 気道上皮細胞における、吉草酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 dsRNAを添加した気道上皮細胞における、吉草酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 鼻粘膜上皮細胞における、プロピオン酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。 dsRNAを添加した鼻粘膜上皮細胞における、プロピオン酸によるACE2の発現の抑制を定量化したグラフである。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態及び実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。本明細書中、数値範囲に関して「A~B」と記載した場合、当該記載は「A以上B以下」を意図する。
[1.アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤、および、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤]
本発明の一実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤は、炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩を有効成分として含有するものである。本発明の一実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤は、炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩を有効成分として含有するものである。
アンジオテンシン変換酵素2は、様々なウイルスの受容体として機能する。アンジオテンシン変換酵素2の発現を抑制すれば、標的細胞へのウイルスの感染を防ぐことができ、その結果、標的細胞内でのウイルスの増殖、標的細胞からのウイルスの排出、および、排出されたウイルスによる更なる感染という、ウイルス感染の悪循環を防ぐことができる。それ故に、本発明の一実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤は、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤として好適に利用することができる。
本発明の一実施形態に係る抗ウイルス剤は、アンジオテンシン変換酵素2の発現を抑制することによって、(i)ウイルスが未感染である生体に対する、ウイルスの感染の予防(換言すれば、ウイルス感染症の予防)、および、(ii)生体内で複製されたウイルスの新たな標的細胞への感染の予防(換言すれば、ウイルス感染症の治療)を行うことができる。それ故に、本発明の一実施形態に係る抗ウイルス剤は、ウイルス感染症の予防剤または治療剤として利用することができる。
以下に、本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤について説明する。
[1-1.アンジオテンシン変換酵素2]
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、アンジオテンシンIまたはアンジオテンシンIIに作用して、それぞれを、例えばアンジオテンシン(1-9)またはアンジオテンシン(1-7)に変換する酵素である。本明細書において、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、如何なる生物種のものであり得、例えば、ヒトのアンジオテンシン変換酵素2であってもよく、非ヒト動物(例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラット)のアンジオテンシン変換酵素2であってもよい。
[1-2.アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルス]
本明細書において、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を受容体とするウイルスとは、受容体であるACE2との結合を介して標的細胞に感染するウイルスを意図する。当該ウイルスとしては、例えば、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、coronavirus NL63などを挙げることができる。
[1-3.有効成分]
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤は、炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩を有効成分として含有する。なお、本明細書において、炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸を「短鎖脂肪酸」ともいう。当該短鎖脂肪酸であれば、効果的にアンジオテンシン変換酵素2の発現を抑制することができる。
上記短鎖脂肪酸を構成する炭素の数は、6個以下であり得るが、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または、1個であってもよい。生体内で拡散し易いという観点から、短鎖脂肪酸を構成する炭素の数は、少ないほど好ましい。
上記短鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよいが、短鎖脂肪酸の安定性が高い(例えば、他の物質との反応性が低く生体に悪影響を及ぼすことが無い、他の物質との反応性が低く長期保存が可能)という観点から、飽和脂肪酸であることが好ましい。また、不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸であってもよく、多価不飽和脂肪酸(二価以上)であってもよい。
上記短鎖脂肪酸は、様々な官能基を有するものであり得る。上記短鎖脂肪酸は、例えば、1つ以上の「-OH」を有するもの、複数の「-COOH」を有するものなどであってもよい。これらの官能基によって、上記短鎖脂肪酸の性質(例えば、水溶性)を所望の性質に調節することができる。
短鎖脂肪酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸などが挙げられる。生物の大腸内では、腸内細菌が食物繊維(難消化性糖類)を発酵させる際に、短鎖脂肪酸が生産される。例えば、ヒトの大腸内では、主として、酢酸、プロピオン酸、および、酪酸が生産される。これらの短鎖脂肪酸は、生物の健康維持に欠かせない役割を果たしている。生物の健康に悪影響を及ぼすことが無いという観点から、短鎖脂肪酸の中では、酢酸、プロピオン酸、および、酪酸が好ましい。
本明細書において、「塩」とは、医薬品として被験体に投与することが生理学的に許容されうる塩であるならば、限定されない。塩の例としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、有機塩基塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩など)、有機酸塩(酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、蟻酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩など)、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩など)を挙げられる。「塩」は、水に溶け易く、投与し易い等の利点を有する。また、後述する実施例から明らかなように、「塩」は、ACE2の発現抑制効果がより高いという効果を有する。
[1-4.他の成分]
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤は、上述した有効成分(短鎖脂肪酸、または、その塩)以外の成分を含有していてもよい。有効成分以外の成分は、薬学的に許容され得る成分であればよく、例えば、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体、賦形剤、溶媒などであり得る。
上記緩衝剤の例としては、リン酸またはリン酸塩、ホウ酸またはホウ酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、炭酸または炭酸塩、酒石酸または酒石酸塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモールなどが挙げられる。上記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムなどが挙げられる。上記ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなどが挙げられる。上記クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなどが挙げられる。上記酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが挙げられる。上記炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。上記酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムなどが挙げられる。
上記pH調整剤の例としては、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
上記等張化剤の例としては、イオン性等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、非イオン性等張化剤(グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトールなど)が挙げられる。
上記防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノールなどが挙げられる。
上記抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、アテロコラーゲンなどが挙げられる。
上記賦形剤の例としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプン、結晶セルロースなどが挙げる。
上記溶媒の例としては、水、生理的食塩水、アルコールなどが挙げられる。
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤は、上述した他の成分として所望の効果を有する薬効成分を含んでいてもよく、所望の効果を有する薬効成分と併用されてもよい。
当該薬効成分としては、ウイルス感染に伴う様々な症状を改善させるためのもの(例えば、抗菌薬)、および、ウイルス感染以前に患っていた病気を改善させるためのものを挙げることができる。例えば、糖尿病の治療薬(例えば、thiazolidinediones)、および、高血圧の治療薬の中には、ACE2の発現を増強し、その結果、ウイルス感染を増長させるものがある。このような治療薬と、本発明の一実施形態に係る抗ウイルス剤とを併用すれば、当該治療薬によって増長されるウイルス感染を効果的に防ぎながら、ウイルス感染症および他の病気(例えば、糖尿病、高血圧)を同時に治療することができる。
[1-5.有効成分、および、他の成分の含有量]
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤に含まれる有効成分の量は、特に限定されない。当該有効成分の量は、例えば、薬剤の総重量に対して、0.001重量%~100重量%であってもよく、0.01重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~95重量%であってもよく、0.1重量%~90重量%であってもよく、0.1重量%~80重量%であってもよく、0.1重量%~70重量%であってもよく、0.1重量%~60重量%であってもよく、0.1重量%~50重量%であってもよく、0.1重量%~40重量%であってもよく、0.1重量%~30重量%であってもよく、0.1重量%~20重量%であってもよく、0.1重量%~10重量%であってもよい。
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤に含まれる有効成分以外の成分の量は、特に限定されない。当該有効成分以外の成分の量は、例えば、薬剤の総重量に対して、0重量%~99.999重量%であってもよく、0重量%~99.99重量%であってもよく、0重量%~99.9重量%であってもよく、5重量%~99.9重量%であってもよく、10重量%~99.9重量%であってもよく、20重量%~99.9重量%であってもよく、30重量%~99.9重量%であってもよく、40重量%~99.9重量%であってもよく、50重量%~99.9重量%であってもよく、60重量%~99.9重量%であってもよく、70重量%~99.9重量%であってもよく、80重量%~99.9重量%であってもよく、90重量%~99.9重量%であってもよい。
[1-6.投与対象、投与形態および剤型]
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤の投与対象としては、特に限定されず、ヒトであってもよく、非ヒト動物(例えば、家畜、愛玩動物、および、実験動物)であってもよい。非ヒト動物としては、例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラットが挙げられる。
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤は、任意の投与経路によって投与対象に投与され得る。投与経路の例としては、経鼻投与、経粘膜投与、経口投与、非経口投与、経皮投与、経静脈投与が挙げられる。
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤の剤型は、任意の剤型であり得る。剤形の例としては、点鼻薬、噴霧薬、内服薬、外用薬(例えば、手指用の消毒薬、アルコールを含有しない手指用の消毒薬、アルコールを使用できない対象用の消毒薬など)、注射剤坐剤、吸入剤、および、口内洗浄薬(例えば、マウスウォッシュ、うがい薬)が挙げられる。
例えば、SARS-CoV-1は、下気道(例えば、肺)に感染して増殖し、主として下気道に炎症を引き起こすウイルスである。一方、SARS-CoV-2は、上気道(例えば、鼻腔および咽頭)に感染して増殖し、主として上気道に炎症を引き起こすウイルスである。それ故に、本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤は、上気道および/または下気道へ投与し易い投与経路(例えば、経鼻投与、経粘膜投与)にて投与されるものであり、かつ、当該投与経路に適した剤型(例えば、点鼻薬、噴霧薬、口内洗浄薬)のものであることが好ましい。
上述した投与経路の中では、噴霧機またはエアロゾル発生機による経粘膜投与が特に好ましい。噴霧機またはエアロゾル発生機としては、インサフレーター、ネブライザー、加圧パック、搾り出し式ボトル、注射器、点滴器、スプレーデバイスなどが挙げられる。上述した剤型の中では、噴霧薬が特に好ましい。噴霧薬であれば、有効成分を標的の上気道細胞に容易に送達できるという利点を有する。
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤の剤型は、(i)化粧品(例えば、化粧水、乳液、シャンプー、リンス)の成分、(ii)石鹸(例えば、ハンドソープ)の成分、(iii)洗剤(例えば、住居用洗剤、台所用洗剤、衣料用洗剤)の成分、(iv)衛生用品(例えば、ウエットティッシュ)の成分、(v)消毒液(例えば、手指用の消毒液)の成分として用いることも可能である。
[1-7.製剤および処方]
短鎖脂肪酸またはその塩、および、その他の成分を原料として、公知の手法により、本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤を製剤することができる。
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤を投与する場合、所望の効果が得られるならば、投与量に制限はない。例えば、生体内における有効成分の濃度が0.1mM以上、1.0mM以上、10mM以上、20mM以上、50mM以上、または、100mM以上になるように、投与量を設定することができる。投与量の上限値は限定されず、例えば、生体内における有効成分の濃度が1000mM以下、500mM以下、100mM以下、50mM以下、20mM以下、または、10mM以下になるように、投与量の上限値を設定することができる。
本発明の一実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤、および、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤を投与する場合、所望の効果が得られるならば、投与間隔に制限はない。上記投与間隔は、例えば、1時間に1回、6時間に1回、12時間に1回、1日間に1回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1箇月間に1回、2箇月間に1回、3箇月間に1回、4箇月間に1回、5箇月間に1回、6箇月間に1回、または、1年間に1回であり得る。
[2.その他]
<1>炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩を有効成分として含有する抗ウイルス剤を被験体(例えば、ヒト、または、非ヒト動物)に投与する工程を有する、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスの感染症の予防方法または治療方法。
<2>上記ウイルスは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、または、coronavirus NL63である、<1>に記載の予防方法または治療方法。
<3>上記抗ウイルス剤は、点鼻薬、噴霧薬、口内洗浄薬、または、外用薬である、<1>または<2>に記載の予防方法または治療方法。
<4>アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤を製造するための、炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩の使用。
<5>上記ウイルスは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、または、coronavirus NL63である、<4>に記載の使用。
<6>上記抗ウイルス剤は、点鼻薬、噴霧薬、口内洗浄薬、または、外用薬である、<4>または<5>に記載の使用。
<7>アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤を製造するための、炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩の使用。
<8>炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩の、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制化合物(または、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤)としての使用。
<9>炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩の、抗ウイルス化合物(または、抗ウイルス剤)としての使用。
以下に実施例を挙げて本発明を詳説するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
(ヒト気管支上皮細胞の準備)
ヒト気管支上皮細胞(NHBE細胞:Normal human bronchial epithelial cell(fisher scientific社製))を24ウェルコラーゲンコートマイクロプレート(IWAKI社製)に播種し、ハイドロコルチゾンを含む培養液(BEGM、Lonza社製)を用いて、5%COインキュベーター内で培養した。培養液の交換を隔日で行い、上記NHBE細胞が、24ウェルコラーゲンコートマイクロプレートに飽和状態で生育した状態における細胞数の8割程度にまで増殖した時点で、培養液をハイドロコルチゾンを除いた培養液に交換し、24時間さらに培養した。
(培養細胞の刺激)
上記(ヒト気管支上皮細胞の準備)項で培養したNHBE細胞に以下の条件で刺激を行った。
(1-1)刺激を行わない(Cont.);
(1-2)培養液中での濃度が1.0mMであるプロピオン酸(propionic acid)にて刺激;
(1-3)培養液中での濃度が10mMであるプロピオン酸にて刺激;
(1-4)培養液中での濃度が20mMであるプロピオン酸にて刺激;
(1-5)培養液中での濃度が1.0mMであるプロピオン酸ナトリウム(sodium propionate)にて刺激;
(1-6)培養液中での濃度が10mMであるプロピオン酸ナトリウムにて刺激;
(1-7)培養液中での濃度が20mMであるプロピオン酸ナトリウムにて刺激;
(1-8)培養液中での濃度が0.25μg/mlであるdsRNA(フナコシ社製poly IC)にて刺激;
(1-9)培養液中での濃度が2.5μg/mlであるdsRNAにて刺激;
(1-10)培養液中での濃度が25μg/mlであるdsRNAにて刺激;
(1-11)培養液中での濃度がそれぞれ0.1mM、2.5μg/mlであるプロピオン酸およびdsRNAにて刺激;
(1-12)培養液中での濃度がそれぞれ1.0mM、2.5μg/mlであるプロピオン酸およびdsRNAにて刺激;
(1-13)培養液中での濃度がそれぞれ10mM、2.5μg/mlであるプロピオン酸およびdsRNAにて刺激;
(1-14)培養液中での濃度がそれぞれ20mM、2.5μg/mlであるプロピオン酸およびdsRNAにて刺激;
(1-15)培養液中での濃度がそれぞれ0.1mM、25μg/mlであるプロピオン酸およびdsRNAにて刺激;
(1-16)培養液中での濃度がそれぞれ1.0mM、25μg/mlであるプロピオン酸およびdsRNAにて刺激;
(1-17)培養液中での濃度がそれぞれ10mM、25μg/mlであるプロピオン酸およびdsRNAにて刺激;
(1-18)培養液中での濃度がそれぞれ20mM、25μg/mlであるプロピオン酸およびdsRNAを添加。
「poly IC」は、ポリイノシン酸およびポリシチジル酸からなる2本鎖RNAを意図し、ウイルスの感染時に発現する二本鎖(Double Strand、ds)RNAのアナログであって、Toll容受容体3(TLR3)のリガンドとして、ウイルスの感染時と同様の免疫応答を誘導する物質である。
(RNA抽出によるACE2の発現量の定量)
上記(培養細胞の刺激)項の(1-1)~(1-18)の各条件で刺激を行った各NHBE細胞を、それぞれ6時間、5%COインキュベーター内で培養した。その後、NucleoSpinTM RNA(タカラバイオ株式会社製)を用いて、各NHBE細胞からRNAを抽出した。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems社製)を用いて、抽出したRNAから一本鎖cDNAを合成した。StepOnePlus real time PCR System(Applied Biosystems社製)を用いて、TaqMan法に基づく半定量的リアルタイムPCRによって、ACE2の発現量を定量した。リアルタイムPCRに用いるプライマーとしては、Applied Biosystems社製のプライマープローブセット(ACE2:Hs01085333_m1、GAPDH:Hs99999905_m1)を使用した。定量結果を図1~図5に示す。
〔実施例2〕
上記(ヒト気管支上皮細胞の準備)項で培養したNHBE細胞に、以下の条件で刺激を行ったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ACE2発現量を定量した。結果を図6~7に示す。
(2-1)刺激を行わない(Cont.);
(2-2)培養液中での濃度が1.0mMである酢酸(Acetic acid)にて刺激;
(2-3)培養液中での濃度が10mMである酢酸にて刺激;
(2-4)培養液中での濃度が20mMである酢酸にて刺激;
(2-5)培養液中での濃度が25μg/mlであるdsRNAにて刺激;
(2-6)培養液中での濃度がそれぞれ1.0mM、25μg/mlである酢酸およびdsRNAにて刺激
(2-7)培養液中での濃度がそれぞれ10mM、25μg/mlである酢酸およびdsRNAにて刺激;
(2-8)培養液中での濃度がそれぞれ20mM、25μg/mlである酢酸およびdsRNAを添加。
〔実施例3〕
上記(ヒト気管支上皮細胞の準備)項で培養したNHBE細胞に、以下の条件で刺激を行ったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ACE2発現量を定量した。結果を図8~9に示す。
(3-1)刺激を行わない(Cont.);
(3-2)培養液中での濃度が0.1mMである酪酸(Butyric acid)にて刺激;
(3-3)培養液中での濃度が1.0mMである酪酸にて刺激;
(3-4)培養液中での濃度が10mMである酪酸にて刺激;
(3-5)培養液中での濃度が25μg/mlであるdsRNAにて刺激;
(3-6)培養液中での濃度がそれぞれ0.1mM、25μg/mlである酪酸およびdsRNAにて刺激
(3-7)培養液中での濃度がそれぞれ1.0mM、25μg/mlである酪酸およびdsRNAにて刺激;
(3-8)培養液中での濃度がそれぞれ10mM、25μg/mlである酪酸およびdsRNAを添加。
〔実施例4〕
上記(ヒト気管支上皮細胞の準備)項で培養したNHBE細胞に、以下の条件で刺激を行ったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ACE2発現量を定量した。結果を図10~11に示す。
(4-1)刺激を行わない(Cont.);
(4-2)培養液中での濃度が1.0mMである吉草酸(Valeric acid)にて刺激;
(4-3)培養液中での濃度が10mMである吉草酸にて刺激;
(4-4)培養液中での濃度が20mMである吉草酸にて刺激;
(4-5)培養液中での濃度が25μg/mlであるdsRNAにて刺激;
(4-6)培養液中での濃度がそれぞれ1.0mM、25μg/mlである吉草酸およびdsRNAにて刺激
(4-7)培養液中での濃度がそれぞれ10mM、25μg/mlである吉草酸およびdsRNAにて刺激;
(4-8)培養液中での濃度がそれぞれ20mM、25μg/mlである吉草酸およびdsRNAを添加。
〔実施例5〕
(ヒト鼻粘膜上皮細胞の準備)
ヒト鼻粘膜上皮細胞を、健常人の下甲介粘膜をブラシ擦過することによって採取した。採取した鼻粘膜上皮細胞を直径10cmの細胞培養ディッシュに入れ、当該鼻粘膜上皮細胞を、培養液(BEGM、Lonza社)を用いて5%COインキュベーター内で培養した。前記ヒト鼻粘膜上皮細胞が細胞培養ディッシュの底面積の6-7割程度を覆うまでに増えた時点で、ヒト鼻粘膜上皮細胞を回収し、細胞数をカウントした。1×10個のヒト鼻粘膜上皮細胞を量り取り、24ウェルコラーゲンコートマイクロプレート(IWAKI社製)に播種し、ハイドロコルチゾンを含む培養液(BEGM、Lonza社製)を用いて、5%COインキュベーター内で培養した。培養液の交換を隔日で行い、上記ヒト鼻粘膜上皮細胞が、24ウェルコラーゲンコートマイクロプレートに飽和状態で生育した状態における細胞数の8割程度にまで増殖した時点で、培養液をハイドロコルチゾンを除いた培養液に交換し、24時間さらに培養した。
(培養細胞の刺激)
上記(ヒト鼻粘膜上皮細胞の準備備)項で培養した鼻粘膜上皮細胞に以下の条件で刺激を行った。
(5-1)刺激を行わない(Cont.);
(5-2)培養液中での濃度が0.1mMであるプロピオン酸(propionic acid)にて刺激;
(5-3)培養液中での濃度が1.0mMであるプロピオン酸にて刺激;
(5-4)培養液中での濃度が10mMであるプロピオン酸にて刺激;
(5-5)培養液中での濃度が20mMであるプロピオン酸にて刺激;
(5-6)培養液中での濃度が25μg/mlであるdsRNAにて刺激;
(5-7)培養液中での濃度がそれぞれ20mM、25μg/mlであるプロピオン酸およびdsRNAを添加。
(RNA抽出によるACE2の発現量の定量)
上記(培養細胞の刺激)項の(5-1)~(5-7)の各条件で刺激を行った各鼻粘膜上皮細胞を、それぞれ6時間、5%COインキュベーター内で培養した。その後、NucleoSpinTM RNA(タカラバイオ株式会社製)を用いて、各鼻粘膜上皮細胞からRNAを抽出した。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems社製)を用いて、抽出したRNAから一本鎖cDNAを合成した。StepOnePlus real time PCR System(Applied Biosystems社製)を用いて、TaqMan法に基づく半定量的リアルタイムPCRによって、ACE2の発現量を定量した。リアルタイムPCRに用いるプライマーとしては、Applied Biosystems社製のプライマープローブセット(ACE2:Hs01085333_m1、GAPDH:Hs99999905_m1)を使用した。定量結果を図12~図13に示す。
〔試験結果〕
図1より明らかなように、元々ACE2の発現量が多いヒト気管支上皮細胞において、プロピオン酸を添加した(1-2)~(1-4)では、プロピオン酸を添加しなかった(1-1)と比して、プロピオン酸の濃度依存的にACE2の発現が抑制されていることが示された。
図2より明らかなように、ヒト気管支上皮細胞において、プロピオン酸ナトリウムを添加した(1-5)~(1-7)では、プロピオン酸を添加しなかった(1-1)と比して、プロピオン酸ナトリウムの濃度依存的にACE2の発現が抑制されていることが示された。また、図1および図2から、「塩」はACE2発現抑制効果がより高いことが理解できる。
図3より明らかなように、(1-1)と、(1-8)~(1-10)との比較によると、ウイルス感染のモデルであるdsRNAを添加した(1-8)~(1-10)において、dsRNAを添加しなかった(1-1)と比して、ACE2の発現が促進されていることが示された。このことから、ウイルス感染によって、ACE2の発現量が増加することが示された。
図4より明らかなように、(1-9)と、(1-11)~(1-14)との比較によると、dsRNAの濃度が2.5μg/mlの場合に、dsRNAのみを添加した(1-9)と比して、dsRNAに加えてプロピオン酸を添加した(1-11)~(1-14)において、ACE2の発現が抑制されていることが示された。
図5より明らかなように、(1-10)と、(1-15)~(1-18)との比較によると、dsRNAの濃度が25μg/mlの場合に、dsRNAのみを添加した(1-10)と比して、dsRNAに加えてプロピオン酸を添加した(1-15)~(1-18)において、ACE2の発現が抑制されていることが示された。
図6より明らかなように、ヒト気管支上皮細胞において、酢酸を添加した(2-3)~(2-4)では、酢酸を添加しなかった(2-1)と比して、酢酸の濃度依存的にACE2の発現が抑制されていることが示された。
図7より明らかなように、(2-5)と、(2-7)~(2-8)との比較によると、dsRNAの濃度が25μg/mlの場合に、dsRNAのみを添加した(2-5)と比して、dsRNAに加えて酢酸を添加した(2-7)~(2-8)において、ACE2の発現が抑制されていることが示された。
図8より明らかなように、ヒト気管支上皮細胞において、酪酸を添加した(3-3)~(3-4)では、酪酸を添加しなかった(3-1)と比して、酪酸の濃度依存的にACE2の発現が抑制されていることが示された。
図9より明らかなように、(3-5)と、(3-7)~(3-8)との比較によると、dsRNAの濃度が25μg/mlの場合に、dsRNAのみを添加した(3-5)と比して、dsRNAに加えて酪酸を添加した(3-7)~(3-8)において、ACE2の発現が抑制されていることが示された。
図10より明らかなように、ヒト気管支上皮細胞において、吉草酸を添加した(4-3)~(4-4)では、吉草酸を添加しなかった(4-1)と比して、吉草酸の濃度依存的にACE2の発現が抑制されていることが示された。
図11より明らかなように、(4-5)と、(4-7)~(4-8)との比較によると、dsRNAの濃度が25μg/mlの場合に、dsRNAのみを添加した(4-5)と比して、dsRNAに加えて吉草酸を添加した(4-7)~(4-8)において、ACE2の発現が抑制されていることが示された。
図12より明らかなように、元々ACE2の発現量が多いヒト鼻粘膜上皮細胞において、プロピオン酸を添加した(5-2)~(5-5)では、プロピオン酸を添加しなかった(5-1)と比して、プロピオン酸の濃度依存的にACE2の発現が抑制されていることが示された。
図13より明らかなように、(5-7)と、(5-8)との比較によると、dsRNAの濃度が25μg/mlの場合に、dsRNAのみを添加した(5-7)と比して、dsRNAに加えてプロピオン酸を添加した(5-8)において、ACE2の発現が抑制されていることが示された。
以上の結果から、短鎖脂肪酸、または、その塩によってACE2の発現を抑制できることが示された。
本発明の一実施形態に係る発現抑制剤、および、抗ウイルス剤は、ウイルス感染症の予防および治療に好適に利用できる。

Claims (6)

  1. 炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩を有効成分として含有する、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制剤。
  2. 炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩を有効成分として含有する、アンジオテンシン変換酵素2を受容体とするウイルスに対する抗ウイルス剤。
  3. 上記ウイルスは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、または、coronavirus NL63である、請求項2に記載の抗ウイルス剤。
  4. 投与剤型が、点鼻薬、噴霧薬、口内洗浄薬、または、外用薬である、請求項2または3に記載の抗ウイルス剤。
  5. 炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩の、アンジオテンシン変換酵素2の発現抑制化合物としての使用。
  6. 炭素数が6以下の直鎖状または分枝状の脂肪酸、または、その塩の、抗ウイルス化合物としての使用。
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