JP2022039446A - 合金粉の製造方法、有価金属の回収方法 - Google Patents

合金粉の製造方法、有価金属の回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アトマイズ加工により粒径ばらつきの小さい合金粉が得られるようにするための方法を提供すること。【解決手段】本発明は、合金熔湯Mから水アトマイズ法によりCuとNiとCoとを含む合金粉を製造する方法である。合金熔湯Mは、Cu、Ni、Co、Mn、及びFeの5つ金属元素をそれぞれ0.1質量%以上、その5つ金属元素の合計で98質量%以上含有し、水アトマイズ装置1は、合金熔湯Mが内部に注湯され出湯ノズル11Nより出湯させるタンディッシュ11と、タンディッシュ11から落下する合金熔湯Mに高圧水を噴射する流体噴射ノズル12と、を備え、タンディッシュ11の内部が、上下方向の上方に向かうに従って合金熔湯Mの湯面面積が大きくなる形状のものを用い、合金熔湯Mの温度を、Ni、Co、Mn、及びFeの合計質量%を「T」とするとき、(1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下に調整する。【選択図】図1

Description

本発明は、合金粉の製造方法、並びにその合金粉の製造方法を利用した有価金属の回収方法に関する。
近年、軽量で大出力の二次電池としてリチウムイオン電池が普及している。リチウムイオン電池は、アルミニウムや鉄等の金属製の外装缶の内部に、銅箔からなる負極集電体に黒鉛等の負極活物質を固着させた負極材と、アルミニウム箔からなる正極集電体にニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウム等の正極活物質を固着させた正極材と、ポリプロピレンの多孔質有機樹脂フィルム等からなるセパレータと、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質を含む電解液等を封入した構造を有する。
リチウムイオン電池の主要な用途の一つに、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。これらに使用されたリチウムイオン電池は、自動車が寿命に達したり、あるいは電池自身が寿命に達したりすると、廃リチウムイオン電池となる。自動車のライフサイクルと共に、自動車に搭載されたリチウムイオン電池も将来大量に廃棄される見込みとなっている。
このような使用済みの電池や製造中に生じた不良品(以下、これらを総じて「廃リチウムイオン電池」と称する)を資源として再利用する提案が多くなされている。例えば、特許文献1には、アルミニウム外装缶を備える廃リチウムイオン電池を網状体の上に載置し、アルミニウムの融点のおよそ660℃以上の温度で加熱することによって、アルミニウム材を熔融させて網状体の網目から落下させ、一方で、電池本体部を構成する非熔融の材料を網状体上に残存させることにより、熔融したアルミニウム材と、非熔融の材料とを分離する方法が提案されている。
ところで、廃リチウムイオン電池にカルシウム酸化物等のアルミニウム酸化物との混合物の融点を降下させるフラックスを加えて大気中で1400℃以上に熔融すると、銅、ニッケル、コバルト、鉄等のいわゆる酸化物の標準生成自由エネルギーが炭素よりも高い金属を含有する合金と、アルミニウム、カルシウム、リチウム等の酸化物生成自由エネルギーが炭素よりも低い金属を含有する酸化物に分離することができる。銅、ニッケル、コバルト、鉄を主に含有する合金から銅を分離できれば、既存の銅製錬プロセスに投入して銅金属として回収され、ニッケル、コバルトは既存のニッケル製錬プロセスやコバルト製錬プロセスを経てニッケル金属やコバルト金属として回収することができる。これにより、低コストでの有価金属の回収が可能となる。
しかしながら、銅ニッケルコバルト鉄合金を既存の銅製錬プロセスへ投入すると、銅とニッケルは分離回収されるものの、コバルトは鉄と共に酸化物へ分配されてしまうため、コバルト単体として回収することが困難となる。そのため、銅ニッケルコバルト合金を酸浸出することによりニッケル及びコバルトを溶媒中に溶解し、銅を溶解残渣として分離して、既存の製錬プロセスを活用することで銅、ニッケル、コバルトを回収する方法が検討されている。一般的に、銅ニッケル合金は、耐食性が高く、粒径、形状、表面粗さ、組成分布等、粒形態によっては硫酸中で24時間を超えても全く溶解しない場合があり、安定して酸に溶解する銅ニッケルコバルト合金が求められている。
例えば、その銅ニッケルコバルト合金に関して、ガスアトマイズ法により粉末化することで酸浸出性が向上することが提案されている。
国際公開公報第2020/013293号
さて、銅ニッケルコバルト合金粉に関して、その合金粉を分級して、pHが0.5~3の硫酸溶液での酸浸出性を調査した結果、粒径が10μm未満のような微粉では濃硫酸と激しく反応するためpH濃度調整のための制御が困難になり、一方で、粒径が300μmを超える粗大粉では溶解し難いということが分かった。
銅ニッケルコバルト合金等の熔湯(合金熔湯)をアトマイズ法により粉末化すると、ガスアトマイズ法でも水アトマイズ法でも、得られる合金粉の粒度分布がいわゆる双峰性分布となり、目標粒径よりも粗粒側に山が発生することが確認されている。このような双峰性分布となることに伴う粗粒の発生は、酸浸出時の溶解速度低下の原因となる。そのため、発生した粗粒を分級除去しなければならず、その結果生産性の低下をもたらしていた。
アトマイズ法による粉末化によって双峰性分布となることの原因の一つには、流体を衝突させることで合金熔湯を粉末化するときの合金熔湯の供給量(供給速度)が安定化しないことであることが分かった。合金熔湯の供給量が一定でないことにより、流体を衝突させて得られる金属粉の粒径にばらつきが生じてしまう。
また、アトマイズ加工時における合金熔湯の温度も、得られる合金粉の粒径に影響を与えるものであることが分かった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、例えば廃リチウムイオン電池に含有される銅、ニッケル、コバルト等の有価物を回収するにあたり、アトマイズ加工により粒径ばらつきの小さい合金粉(アトマイズ粉)が得られるようにするための合金粉の製造方法、並びにその方法を利用した有価金属の回収方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、水アトマイズ加工に際して、タンディッシュの湯面高さが所定の目標高さを維持している時間帯と、熔解炉から合金熔湯を注湯し過ぎて湯面高さが高くなる時間帯とが発生することを発見した。湯面高さが高い時間帯の場合には、流体を衝突させて粉末化する箇所(アトマイズ粉砕部)への合金熔湯の供給量が一時的に高まり、そのために破砕後の合金粉の粒径が大きくなって、粒径分布が双峰性分布となることが分かった。
そして、水アトマイズ加工に用いる水アトマイズ装置において、高速で噴射される流体(高圧水)に合金熔湯が接触するまでの落下速度(換言すると、タンディッシュからの合金熔湯の供給量(供給速度))を一定に保つことが重要であり、タンディッシュ内の湯面高さを一定にすることでそれを実現できることを見出した。さらに、その水アトマイズ装置に注湯する合金熔湯の温度について、合金熔湯の組成に応じて特定の範囲に調整することで、粒径ばらつきをより効果的に抑えることができることを見出した。
そこで、水アトマイズ装置として、熔解炉から注湯される金属熔湯を貯留して底部に装着された出湯ノズルより出湯させるタンディッシュの内部形状が特定の形状に形成されたものを用いることで、タンディッシュ内における湯面高さのばらつきを抑え、合金熔湯の供給量を安定化させる方法を考えた。また、その水アトマイズ装置に注湯する合金熔湯についても、その温度を特定の範囲に調整することで、より一層に粒径ばらつきの小さい合金粉が得られる点を考慮し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、合金熔湯に高圧水を噴射して合金粉を製造する水アトマイズ装置を用いて、銅とニッケルとコバルトとを構成成分として含む合金粉を製造する方法であって、前記合金熔湯は、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、及び鉄の5つ金属元素をそれぞれ0.1質量%以上、該5つ金属元素の合計で98質量%以上含有するものであり、前記水アトマイズ装置として、前記合金熔湯が内部に注湯され、該合金熔湯を底部に装着された出湯ノズルより出湯させるタンディッシュと、前記タンディッシュの下方に配置され、該タンディッシュから落下する前記合金熔湯に前記高圧水を噴射する流体噴射ノズルと、を備えていて、前記タンディッシュの少なくともその内部が、上下方向の上方に向かうに従って、注湯される前記合金熔湯の湯面の面積が大きくなるような形状に形成されているものを用い、前記合金熔湯の温度を、ニッケル、コバルト、マンガン、及び鉄の合計質量%を「T」とするとき、(1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下の範囲に調整する、合金粉の製造方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記合金熔湯は、銅を24質量%以上80質量%以下の範囲で含有するものである、合金粉の製造方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記水アトマイズ装置は、前記タンディッシュの内部が逆円錐台の形状に形成されている、合金粉の製造方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記合金熔湯は、廃リチウムイオン電池に由来するものである、合金粉の製造方法である。
(5)本発明の第5の発明は、廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法であって、水アトマイズ装置を用い、前記廃リチウムイオン電池に由来する合金熔湯に高圧水を噴射して、銅とニッケルとコバルトとを構成成分として含む合金粉を製造する工程と、前記合金粉を酸により浸出する工程と、を含み、前記合金粉を製造する工程では、請求項1乃至4のいずれかに記載の合金粉の製造方法を実行する、有価金属の回収方法である。
本発明によれば、水アトマイズ加工による合金粉の製造において、粒径ばらつきの小さい合金粉を効果的に製造することができる。
そしてこれにより、例えば廃リチウムイオン電池からの有価金属の回収方法において、銅ニッケルコバルトの合金粉をアトマイズ加工により製造するに際しても、得られる合金粉の粒径ばらつきが抑えられ、酸浸出の処理に供する合金粉として酸浸出制御し易い合金粒を効果的に得ることが可能となる。
アトマイズ装置の構成の一例を示す図である。 タンディッシュ内部の垂直断面図であり、内部の形状の例を示す図である。 タンディッシュ内部の垂直断面図であり、内部の形状の例を示す図である。 従来の円筒形状の内部形状を有するタンディッシュを示す図である。 タンディッシュ内部の垂直断面図であり、従来型のタンディッシュとの形状比較に基づいて機能を説明するための図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.合金粉の製造方法≫
本実施の形態に係る合金粉の製造方法は、合金熔湯に高圧水を噴射して合金粉を製造する水アトマイズ装置を用いて、銅とニッケルとコバルトとを構成成分として含む合金粉を製造する方法である。
ここで、水アトマイズ装置に供する合金熔湯、すなわち、合金粉の製造原料である合金熔湯は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、及び鉄(Fe)の5つ金属元素を含有するものである。合金熔湯は、その5つの金属元素のそれぞれを0.1質量%以上の割合で含有し、また、5つ金属元素の合計で98質量%以上の割合で含有するものである。さらに、合金熔湯中において、Cuは他の金属元素と比べて相対的にその含有割合が大きく、具体的には、Cuは24質量%以上80質量%以下の割合で含まれる。
詳しくは後述するが、本実施の形態に係る合金粉の製造方法は、廃リチウムイオン電池から有価金属を回収するプロセスにおいて、有価金属であるNi及びCoを酸浸出するための原料となる、CuとNiとCoとを構成成分として含む合金粉(銅ニッケルコバルト合金粉)を製造するための方法に好適である。廃リチウムイオン電池は、使用済み廃電池や電池製造過程にて生じた電池不良品であり、電池の構成材料として、Cu、Ni、Coのほか、少なくとも上述した金属元素であるMn、Feを含む。したがって、廃リチウムイオン電池を加熱熔融して得られる合金熔湯は、Cu、Ni、Co、Mn、及びFeを含有するものであり、相対的にCuの含有割合が大きい。
本実施の形態に係る合金粉の製造方法は、上述したように合金熔湯を用いて水アトマイズ法により合金粉(アトマイズ粉)を得る方法であり、特に、水アトマイズ装置として、合金熔湯が内部に注湯され、その合金熔湯を底部に装着された出湯ノズルより出湯させるタンディッシュの少なくともその内部が、特定の形状に形成されているものを用いる。具体的には、水アトマイズ装置におけるタンディッシュは、その少なくとも内部が、上下方向の上方に向かうに従って、注湯される合金熔湯の湯面の面積が大きくなるような形状に形成されている。
また、合金粉の製造方法では、上述した構成の水アトマイズ装置のタンディッシュに注湯する合金熔湯の温度を、Ni、C、Mn、及びFeの合計質量%を「T」とするとき、(1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下の範囲に調整する。
このような合金粉の製造方法によれば、水アトマイズ装置のタンディッシュにおける合金熔湯の湯面高さをほぼ一定に保つことができ、それにより、タンディッシュからの合金熔湯の供給量を安定化させることができる。その結果、安定した供給量で供給される合金熔湯により、その合金熔湯に流体を噴射して製造される合金粉の粒径ばらつきを抑えることができる。さらに、水アトマイズ装置のタンディッシュに注湯する合金熔湯の温度を特定の範囲に調整し、その合金熔湯に対して高圧水を噴射して合金粉としているため、得られる合金粉の粒径ばらつきを、より一層効果的に抑えることができる。
上述したように、この合金粉の製造方法は、例えば、廃リチウムイオン電池から有価金属を回収するプロセスにおける、CuとNiとCoとを構成成分として含む合金粉の製造方法に好適である。すなわち、この製造方法により得られる合金粉(銅ニッケルコバルト合金粉)は、粒径ばらつきが小さい合金粉であることから、その合金粉を酸浸出に供することで、NiやCo等の有価金属の浸出効率を効果的に向上させることができる。
[水アトマイズ装置について]
まず、合金粉を製造方法に用いる水アトマイズ装置について説明する。水アトマイズ装置は、合金熔湯に流体である高圧水を噴射して熔滴状に粉砕させ、粉砕されて飛散した熔滴を凝固させることにより合金粉を製造する装置である。なお、熔滴状とは、合金熔湯が液滴(熔滴)の状態にあることをいう。また、得られる金属粉をアトマイズ粉ともいう。
図1は、本実施の形態に係る方法に用いるアトマイズ装置の構成の一例を示す図である。水アトマイズ装置1は、熔解炉(坩堝炉)3から注湯された合金熔湯Mを出湯するタンディッシュ11と、タンディッシュ11から落下する合金熔湯Mに流体を噴射する流体噴射ノズル12と、流体噴射ノズル12を上部に設け、流体噴射により熔滴を形成して合金粉を生成させる場となるチャンバー13と、を備える。
そして、水アトマイズ装置1においては、タンディッシュ11の少なくともその内部形状が、上下方向の上方に向かうに従って、注湯される合金熔湯Mの湯面の面積が大きくなるような形状に形成されている。
このような水アトマイズ装置1によれば、タンディッシュ11における合金熔湯Mの湯面高さをほぼ一定に保つことができ、それにより、タンディッシュ11からの合金熔湯Mの供給量を安定化させることができる。その結果、安定した供給量で供給される合金熔湯Mにより、その合金熔湯Mに流体を噴射して製造される合金粉の粒径ばらつきを抑えることができる。
(タンディッシュ)
タンディッシュ11は、熔解炉3から注湯される合金熔湯Mを内部に貯留し、底部11bに装着された出湯ノズル11Nより、合金熔湯Mをチャンバー13内に出湯する。タンディッシュ11から出湯する合金熔湯Mは、出湯ノズル11Nから自由落下してチャンバー13内に供給される。
なお、出湯ノズル11Nから合金熔湯Mをチャンバー13内へ出湯することを、合金熔湯Mを「供給する」とも表現する。詳しく後述するが、出湯ノズル11Nから自由落下する合金熔湯Mは、チャンバー13の上部位置に設けられた流体噴射ノズル12から噴射される高圧水と衝突して熔滴となり、チャンバー13内に飛散した状態で供給される。
タンディッシュ11は、少なくともその内部が、上下方向の上方に向かうに従って、熔解炉3から注湯され貯留される合金熔湯Mの湯面の面積が大きくなるような形状に形成されている。上下方向とは、図1に示す構成図紙面の上下の方向をいい、図1中に垂直断面で示すタンディッシュ11のその垂直方向をいう。換言すると、タンディッシュ11内において底部11bから上部の開口部11aに向かって合金熔湯Mが徐々に貯まっていく方向である。また、合金熔湯Mの湯面とは、図1中で「Ms」で指し示す部分であり、タンディッシュ11内に注湯され貯留される合金熔湯Mの上面をいい、例えばタンディッシュ11の内部形状が逆円錐台の形状である場合、合金熔湯Mの湯面は略円形の面となる。また、湯面の面積とは、合金熔湯Mの上面の面積をいう。なお、開口部10aとは、タンディッシュ11に上部付近に設けられた、熔解炉3からの合金熔湯Mの注湯口を意味する。
図2、図3は、タンディッシュ11の内部の垂直断面図であり、内部の形状の例を示す図である。図に示すように、タンディッシュ11の内部は、例えば逆円錐台形、逆円錐形である。タンディッシュ11の内部は、底部11bから上部の開口部11aに向かって、つまりは、注湯される合金熔湯Mの湯面の高さ(湯面レベル)が高くなるに従って、その湯面の面積が次第に大きくなるような形状に形成されている。
このような内部形状のタンディッシュ11では、例えば目標とする所定の湯面レベル(湯面高さ)においてその合金熔湯Mの湯面高さをほぼ一定に維持することができる。すなわち、タンディッシュ11の出湯ノズル11Nから合金熔湯Mを供給していく一方で、連続的に一定速度でタンディッシュ11内に熔解炉3から新たな合金熔湯Mを注湯していくとき、タンディッシュ11の内部形状が、湯面レベルが高くなるに従ってその湯面の面積が大きくなる形状であることにより、注湯される合金熔湯Mの湯面高さの変動は緩やかになるため、例えば目標湯面レベルにて湯面高さをほぼ一定に維持することができる。なお、熔解炉3からタンディッシュ11への合金熔湯Mの注湯速度は、おおよそ一定の速度に保たれている。また、タンディッシュ11への合金熔湯Mの注湯は、例えば、熔解炉3を傾動させることで行うことができる(図1参照)。
出湯ノズル11Nから供給される合金熔湯Mの供給量(供給速度)は、タンディッシュ11内の合金熔湯Mの湯面高さに基づく圧力に起因するため、湯面高さをほぼ一定に維持できれば、出湯ノズル11Nから供給される単位時間当たりの合金熔湯Mのノズル径に応じた供給量もほぼ一定に安定化させることができる。
なお、合金熔湯Mの供給量は、製造した金属粉の粒径や後述する流体噴射ノズル12からの高圧水の噴射量等の条件に応じて適宜設定すればよい。例えば、合金熔湯Mの供給量としては10kg/分以上75kg/分以下程度の範囲に設定する。
ここで、出湯ノズル11Nからチャンバー13内に供給された合金熔湯Mは、チャンバー13上部の流体噴射ノズル12から噴射される高圧水が衝突して熔滴状となって飛散する。このとき、タンディッシュ11からの合金熔湯Mの供給量が変化すると、形成される熔滴の大きさも変化することになり所定の時間内で製造される合金粉(アトマイズ粉)の粒径分布にばらつきが生じる。例えば、熔解炉3からの注湯される合金熔湯Mの湯面高さが高くなると、高くなった湯面高さに基づいて出湯ノズルNから供給される合金熔湯Nの供給量が大きくなる。すると、一定速度で噴射される高圧水が衝突して形成される熔滴の大きさは大きくなり、相対的に粒径の大きな合金粉が製造され、その粒度分布は例えば双峰性分布となる等、粒径のばらつきが生まれる。
この点において、上述したタンディッシュ11の内部形状であることにより、注湯される合金熔湯Mの湯面高さをほぼ一定に維持できれば、合金熔湯Mの供給量も安定化させることが可能となる。これにより、高圧水が衝突して形成される熔滴の大きさのばらつきを抑えることができ、得られる合金粉の粒度分布はシャープな単峰性分布となる。
また、熔解炉3からタンディッシュ11への合金熔湯Mの注湯が終了し、タンディッシュ11内の合金熔湯Mが減少して湯面高さが徐々に低くなる段階の場合、例えば図4に示すような従来の円筒形状の内部形状を有するタンディッシュ100では、湯面高さの低下に伴い、出湯ノズル100Nから供給される金属熔湯の供給量は徐々に低下する。すると、その供給量の低下により、一定速度で噴射される高圧水が衝突して形成される熔滴の大きさは小さくなり、相対的に粒径の小さな合金粉が製造され、その粒度分布は例えば双峰性分布となる等、粒径のばらつきが生まれる。なお、図4に示すタンディッシュ100の内部の円筒形状は、湯面レベルが高くなるに従ってその湯面の面積が大きくなる形状ではなく、湯面レベルにかかわらずその湯面の面積が一定となる形状である。
この点において、上述したタンディッシュ11の内部形状であることにより、図5に示すように内部が円筒形状のタンディッシュ(仮想線で表す部分の形状)と比べて、図中の破線丸囲み部に示す部分、すなわち合金熔湯Mの供給量を低下させることになる部分が無くなる。そのため、湯面高さが徐々に低くなってもその湯面高さに基づく圧力の変動は小さくなり、これにより、合金熔湯Mの供給量を安定に維持することができる。そして、合金熔湯Mの供給量も安定化させることが可能となることにより、高圧水が衝突して形成される熔滴の大きさのばらつきを抑えることができ、得られる合金粉の粒度分布はシャープな単峰性分布となる。
このようにタンディッシュ11によれば、熔解炉3から連続的に合金熔湯Mが内部に注湯される段階においても、また、合金熔湯Mの注湯が終了して徐々の湯面高さが低くなってくる段階においても、出湯ノズル11Nから供給される合金熔湯Mの供給量を安定化させることができる。
図2、図3での説明に戻り、タンディッシュ11(11A,11B)の内部の形状は、これら図に示すように、例えば逆円錐台形、逆円錐形である。タンディッシュ11の内部は、上部の開口部11aの径(開口部径)Rが、底部11bの径(底部径)Rよりも大きくなるように形成され、これにより、合金熔湯Mの湯面の高さが高くなるに従ってその湯面の面積が次第に大きくなるような形状となっている。なお、当然に、タンディッシュ11の内部の垂直断面視(図2、図3)において、合金熔湯Mの湯面の位置(図示しない)に相当する位置の壁面が傾斜しており、例えば逆円錐台形や逆円錐形の形状を構成している。
図2に示すタンディッシュ11Aと、図3に示すタンディッシュ11Bとでは、開口部径Rと底部径Rとの比率が異なる態様をそれぞれ例示している。RとRの比率としては、特に限定されないが、R/Rで表す比の関係が0.25以上0.65以下程度であることが好ましく、0.30以上0.55以下程度であることがより好ましい。R/Rが0.25より小さすぎると、所定の目標高さでの湯面高さをほぼ一定に維持できるものの、内容積が小さくなり、アトマイズ加工による処理効率が低下する。一方で、R/Rが0.65より大きくなると、図4に示したような円筒形状に近似していくようになるため、湯面高さを安定化させることが困難になる可能性がある。
また、図3に示すタンディッシュ11Bのように、内部が逆円錐台の形状に形成されたタンディッシュの底部11bにおいて、その底部11bに装着された出湯ノズル11Nに向かって下方に傾斜する傾斜部21を設けることができる。なお、傾斜部21は、タンディッシュ11Bの内部に設けられる。このように、出湯ノズル11Nに向かって下方に傾斜する傾斜部21が設けられることで、特に、合金熔湯Mの注湯が終了して徐々の湯面高さが低くなってくる段階において、出湯ノズル11Nを介して供給される合金熔湯Mの供給量の低下をより一層効率的に抑えることができる。これにより、供給量をより安定化させることができ、得られる合金粉の粒径のばらつきを抑えることができる。
なお、タンディッシュ11の構成材料は、特に限定されず、例えばアルミナ製とすることができる。また、タンディッシュ11の底部11bに装着された出湯ノズル11Nの構成材料についても、特に限定されず、例えばジルコニア製とすることができる。また、出湯ノズル11Nのノズル径も、合金熔湯Mの組成や出湯量等に応じて適宜決定すればよく、例えばノズル直径で3mm~10mm程度とすることができる。
また、図1~3では、タンディッシュ11における開口部11aについて、その全面が開口しているような形態を示しているが、全面に開口していることに限られない。上述したように、開口部10aとは、タンディッシュ11に上部付近に設けられた、熔解炉3からの合金熔湯Mの注湯口を意味するものであり、タンディッシュ11の天井付近の一部に熔解炉3からの合金熔湯Mが注湯される開口があればよい。なお、その場合でも、開口部10aとは、その開口している部分を含むタンディッシュ11の上面を意味する。
(流体噴射ノズル)
流体噴射ノズル12は、後述するチャンバー13の上部(天井)位置に設けられ、タンディッシュ11の出湯ノズル11Nから供給され自由落下する合金熔湯Mに対して流体である高圧水を噴射するノズルである。なお、流体噴射ノズル12が設けられて合金熔湯Mに高圧水を噴射する位置が、合金熔湯Mを熔滴状に粉砕する位置となるため、当該部分がアトマイズ粉砕部となる。
流体である高圧水は、合金熔湯Mを粉砕するための媒体である。
流体噴射ノズル12の構造や形状は、高圧水を所望とする噴射量で合金熔湯Mに噴射でれば、特に限定されない。また、流体噴射ノズル12は、落下する合金熔湯Mを中心軸として、相対するように偶数個(例えば、2個、4個、6個)設けられることが好ましい。また、流体噴射ノズル12においては、製造される合金粉の収量が最大となるように、合金熔湯Mに対して噴射される高圧水の角度(噴射角度)を調整することができる。例えば、高圧水の相対角度(頂角)が例えば30°~50°になるように調整して、落下する合金熔湯Mに対する水の噴射角度(頂角)が15°~25°となるように調整できる。
また、流体噴射ノズル12から噴射する高圧水の噴射条件は、製造しようとする合金粉(銅ニッケルコバルト合金粉)の粒径等に応じて適宜設定することが好ましい。
具体的にその噴射条件に関して、噴射する高圧水の圧力としては、例えば6MPa以上20MPa以下程度に設定することが好ましい。圧力が6MPa未満であると、得られる合金粉の粒径が過度に大きくなる可能性があり、圧力が20MPaを超えると、合金粉が過度に微細になって分離回収性が低下する可能性がある。また、圧力を高めるために、高価なポンプを使用する必要があり、合金粉の製造コストが高くなる。
また、合金熔湯Mの供給量(落下量)に対する高圧水の噴射量の質量比(比水率)としては、例えば5.0倍以上7.0倍以下程度に設定することが好ましい。合金熔湯Mの供給量は単位時間あたりの平均供給量であり、また高圧水の噴射量は単位時間あたりの平均噴射量であり、合金熔湯Mの供給量や高圧水の噴射量が時間変動する場合にはその平均値である。比水率が5.0倍未満であると、得られる合金粉の粒径が過度に大きくなる可能性があり、比水率が7.0倍を超えると、合金粉が微細になり過ぎる可能性がある。
また、噴射する高圧水の温度としては、例えば2℃以上35℃以下程度に設定することが好ましい。水温が過度に低いと、設備を停止した場合に配管内で水が凍結して水漏れ等の問題を引き起こす恐れがあり、水温が過度に高いと、得られる合金粉の粒径が大きくなる傾向にある。なお、高圧水の温度は、図示しないチラー等を設けてその設定温度を調整することで制御できる。
(チャンバー)
チャンバー13は、出湯ノズル11Nの位置においてタンディッシュ11と連結されており、タンディッシュ11からその出湯ノズル11Nを介して合金熔湯Mが供給される。また、チャンバー13は、上述した流体噴射ノズル12を上部に設け、出湯ノズル11Nから供給され自由落下する合金熔湯Mに対して高圧水を噴射することで熔滴を形成して合金粉を生成させる。
具体的に、チャンバー13内においては、出湯ノズル11Nを介して落下する合金熔湯Mに対して高圧水を噴射すると、その合金熔湯Mが粉砕されて熔滴が生成する。生成した熔滴は、チャンバー13内を飛散して底部の方向へと落下していく。また、生成した熔滴は、高圧水によって冷却され、さらにチャンバー13内で飛散して落下していく過程で冷却され、急速に凝固して合金粉の形態となる。水アトマイズ法を行う水アトマイズ装置1では、チャンバー13内の下部には流体噴射ノズル12から噴射された水が貯留され水相を形成しており、凝固状態へと向かう合金粉もその水相中に流入して冷却される。
なお、チャンバー13においては、製造される合金粉の収量が最大となるように、合金熔湯Mに対して噴射される高圧水の角度(噴射角度)が調整されている。また、上述したように、単位時間内に落下する合金熔湯量、噴射する単位時間当たりの高圧水量、噴射する高圧水の圧力、高圧水の温度等については、合金粉の収量や所望とする合金粉の粒径等に応じて適宜設定することができる。
また、チャンバー13は、内部に空気が侵入しないように、窒素ガス等の不活性ガスを流入させることによってその内圧を大気圧よりも高く維持できる構造となっている。また、チャンバー13には、ガス排出構造18が連結されており、チャンバー13内に充満する水素ガス等のガスを空気の流入無しに外部に排出可能となっている。
チャンバー13の底部には、合金粉を含むスラリーを排出するための排出口13eが設けられており、排出口13eに連結された回収配管14を介して合金粉が回収される。
(その他の構成)
水アトマイズ装置1においては、回収配管14の他方の端部にフィルタ15が連結されている。フィルタ15では、回収配管2を介して排出された合金粉を含むスラリーに対する固液分離処理が施され、スラリーから固形分である合金粉が分離され回収される。フィルタ15において合金粉が分離された後の水は、配管を介して接続されたタンク16に貯留され、図示しないチラー等により温度調整が行われたのち、高圧ポンプ17にて流体噴射ノズル12に循環供給される。流体噴射ノズル12では、循環された水に圧力を付加し、合金熔湯Mを粉砕するための高圧水として再利用する。
[合金熔湯の温度調整について]
本実施の形態に係る合金粉の製造方法では、上述した構成の水アトマイズ装置1に注湯する合金熔湯Mの温度を、特定の範囲に調整する。具体的には、合金熔湯Mに含有される、Ni、C、Mn、及びFeの合計質量%を「T」とするとき、(1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下の範囲に調整する。
ここで、合金熔湯Mは、Cu、Ni、Co、Mn、及びFeの5つ金属元素を含有するものであり、その5つの金属元素のそれぞれを0.1質量%以上の割合で含有し、また、5つ金属元素の合計で98質量%以上の割合で含有する。さらに、合金熔湯Mにおいて、Cuは他の金属元素と比べて相対的にその含有割合が大きく、具体的には、Cuは24質量%以上80質量%以下の割合で含まれる。
本発明者らは、例えば廃リチウムイオン電池から回収されるCu-Ni-Co3元系の主要10組成の融点を調査した結果、Cu品位に反比例して1280℃~1363℃であることが分かった(融点=1451℃-2.86×Cu品位)。実際には、還元熔融における還元度によって、還元度が高いと合金中のFeやMnが増加し、還元度が低いとFeやMnが減少してCo品位も低下するが、廃リチウムイオン電池からのCo回収率を95%以上となるように還元度を振ったときに得られた合金の融点としては、1383℃~1483℃となる。そして、合金の流動性を確保するという点も考慮したときの近似直線から、合金熔湯Mの温度としては、Ni、Co、Mn、及びFeの合計質量をT質量%とすると、「(1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下」という範囲を導き出すことができる。
このような組成の合金熔湯Mの温度を上述した特定の範囲((1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下の範囲)に調整することで、合金熔湯において熔融状態を適切に保持することができる。そしてまた、このように温度調整した合金熔湯Mを水アトマイズ装置1に注湯してアトマイズ加工することで、得られる合金粉の粒径ばらつきをより一層に抑えることができることが見出された。これにより、シャープな粒度分布を有する合金粉を得ることができる。
合金熔湯Mの温度調整は、水アトマイズ装置1のタンディッシュ11に合金熔湯Mを注湯する熔解炉(図1に示す熔解炉3)で行うことができる。例えば、熔解炉3を誘導炉等により構成し、所定の周波数の出力によって合金熔湯M(タンディッシュ11に注湯する前の合金熔湯M)の温度を調整する。なお、熔解炉3での温度調整は、その熔解炉3にて合金を熔湯化する段階において行ってもよく、あるいは、熔湯化して合金熔湯を得たのちに、温度調整のステップを別途設けて熱を加える等することで行ってもよい。
また、合金熔湯Mの温度調整は、水アトマイズ装置1のタンディッシュ11内にて行ってもよい。例えば、タンディッシュ11からチャンバー13内に合金熔湯Mを供給する前に、タンディッシュ11の内部又は外部から熱を付加することによって合金熔湯Mを加熱する。これにより、合金熔湯Mを特定の温度範囲に調整する。
また、熔解炉3から水アトマイズ装置1のタンディッシュ11内に合金熔湯Mを注湯するに先立ち、空のタンディッシュ11内を、例えばLPGバーナーで1000℃以上に加熱しておいてもよい。これにより、タンディッシュ11内に貯められる合金熔湯Mと、熔解炉3内の合金熔湯Mとの温度差が解消され、タンディッシュ11内に注湯された合金熔湯Mの温度低下を抑えることができ、適切な温度を維持できる。
≪2.有価金属の回収方法≫
次に、上述した合金粉の製造方法を利用した、有価金属の回収方法について説明する。
本実施の形態に係る有価金属の回収方法は、廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法である。具体的に、この有価金属の回収方法は、廃リチウムイオン電池に対して前処理を行う工程(廃電池前処理工程)S1と、前処理後の廃リチウムイオン電池を熔融して合金熔湯(CuとNiとCoとを含む合金熔湯)を準備する工程(合金熔湯準備工程)S2と、合金熔湯に流体を噴射して合金粉を製造する工程(合金粉製造工程)S3と、製造した合金粉を酸により浸出する工程(酸浸出工程)S4と、を含む。
そして、合金粉製造工程S3では、上述した合金粉の製造方法を利用することを特徴としている。すなわち、タンディッシュ11の少なくとも内部が、上下方向の上方に向かうに従って、注湯される合金熔湯Mの湯面の面積が大きくなるような形状に形成されている水アトマイズ装置1を用い、合金熔湯Mの温度を、(1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下の範囲に調整する。なお、合金熔湯Mに含有される、Ni、C、Mn、及びFeの合計質量%を「T」としている。
このような方法により合金粉を製造することで、タンディッシュ11における合金熔湯Mの湯面高さをほぼ一定に保つことができ、タンディッシュ11からの合金熔湯Mの供給量を安定化させることができる。その結果、安定した供給量で供給される合金熔湯Mにより、その合金熔湯Mに流体を噴射して製造される合金粉の粒径ばらつきを抑えることができる。また、合金熔湯Mの温度を特定の範囲に調整していることで、得られる合金粉の粒径ばらつきをより一層効果的に抑えることができる。
廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法において、CuとNiとCoとを構成成分として含む合金粉(銅ニッケルコバルト合金)に対して酸浸出を施し、NiやCoを選択的に溶液中に浸出させるとき、合金粉の粒径ばらつきが酸浸出効率に影響を及ぼすことが確認されている。粒度分布を含む粒形態によっては、ほとんど酸に溶解しない場合もある。この点、合金粉製造工程S3において上述した方法により合金粉(アトマイズ粉)を製造することで、粒径のばらつきが抑えられ、シャープな粒度分布を有する合金粉を得ることができ、酸浸出に供したときにその浸出効率を向上させることが可能となる。
[廃電池前処理工程]
廃電池前処理工程S1は、有価金属の回収原料である廃リチウムイオン電池に対して前処理を施す工程である。前処理とは、後述する合金熔湯準備工程S2にて原料を熔融して合金熔湯を得るに先立つ処理である。ここで、廃リチウムイオン電池とは、使用済みの電池だけでなく、電池の製造過程で生じた不良品の電池も包含する意味である。
具体的に、廃電池前処理工程S1は、廃リチウムイオン電池を無害化する無害化工程S11と、廃リチウムイオン電池を粉砕する粉砕工程S12と、を有する。
無害化工程S11は、廃リチウムイオン電池の爆発防止及び無害化、並びに外装缶の除去を目的する処理(「無害化処理」ともいう)を行う工程である。リチウムイオン電池は密閉系であるため、内部に電解液等を有している。そのため、廃リチウムイオン電池をそのまま用いて粉砕処理等を行うと、爆発の恐れがあり危険である。このことから、何らかの手法で放電処理や電解液除去処理を施すことが好ましい。また、廃リチウムイオン電池を構成する外装缶は、金属であるアルミニウム(Al)や鉄(Fe)から構成されることが多く、こうした金属製の外装缶はそのまま回収することが比較的容易である。したがって、無害化工程S11において電解液及び外装缶を除去することで、安全性を高めるとともに、有価金属(Cu、Ni、Co)の回収率を高めることができる。
無害化処理の具体的な方法は、特に限定されない。例えば、針状の刃先で廃リチウムイオン電池を物理的に開孔し、電解液を除去する手法が挙げられる。また、廃リチウムイオン電池を加熱して電解液を燃焼することで無害化する手法が挙げられる。
無害化工程S11において外装缶に含まれるAlやFeを回収する場合には、除去した外装缶を粉砕した後に、粉砕物を篩振とう機を用いて篩分けしてもよい。Alは軽度の粉砕で容易に粉状になるため、これを効率的に回収することができる。また、磁力選別によって外装缶に含まれるFeを回収してもよい。
粉砕工程S12は、無害化処理後の廃リチウムイオン電池の内容物を破砕して破砕物を得る工程である。得られた破砕物は、熔融化(熔湯化)するための原料(熔融原料)となる。粉砕工程S12は、乾式製錬プロセスでの反応効率を高めることを目的とした処理を行う工程であり、反応効率を高めることで、有価金属(Cu、Ni、Co)の回収率を高めることができる。
粉砕処理の具体的な方法は、特に限定されない。カッターミキサー等の従来公知の粉砕機を用いて破砕することができる。
[予備加熱工程]
必要に応じて、後述する熔融工程S21を含む合金熔湯準備工程S2の前に、破砕した廃リチウムイオン電池(破砕物)を予備加熱(酸化焙焼)処理して予備加熱物にする工程(予備加熱工程)を設けてもよい。
予備加熱工程(酸化焙焼工程)では、廃リチウムイオン電池に含まれる炭素量を減少させる処理を行う。このような工程を設けることで、廃リチウムイオン電池が炭素を過剰に含む場合であっても、その炭素を有効に酸化除去でき、後工程の熔融工程S21にて有価金属の合金一体化を促進させることができる。
すなわち、熔融工程で有価金属は還元されて局所的な熔融微粒子になるが、炭素は熔融微粒子(有価金属)が凝集する際の物理的な障害となることがある。炭素により、熔融微粒子の凝集一体化及びそれによる熔融合金(メタル)とスラグの分離が妨げられると、有価金属の回収率が低下してしまうことがある。これに対して、予備加熱工程を設けて炭素を酸化除去しておくことで、熔融工程での熔融微粒子の凝集一体化を進行させることができ、有価金属の回収率を高めることができる。また、廃リチウムイオン電池に含まれるリン(P)は、比較的還元されやすい不純物であるため、炭素が過剰に存在すると、リンが還元されて有価金属と共に熔融合金に取り込まれてしまう可能性がある。その点、予備加熱工程にて過剰な炭素を予め除去しておくことで、熔融合金へのリンの混入を防ぐことができる。なお、予備加熱物(予備加熱処理後の粉砕物)に含まれる炭素量としては、1質量%未満であることが好ましい。
また、予備加熱工程を設けることで、酸化のばらつきを抑えることが可能となる。予備加熱工程では、廃リチウムイオン電池に含まれる比較的付加価値の低い金属(Al等)を酸化することが可能な酸化度で処理(酸化焙焼)することが好ましい。予備加熱処理の温度、時間及び/又は雰囲気を調整することで、酸化度を容易に制御できる。
酸化度の調整は、例えば次のようにして行う。すなわち、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、炭素(C)、マンガン(Mn)、リン(P)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)は、一般的に、Al>Li>C>Mn>P>Fe>Co>Ni>Cuの順に酸化されていく。予備加熱工程における処理では、Alの全量が酸化されるまで酸化を進行させる。なお、Feの一部が酸化されるまで酸化を促進させるようにしてもよいが、Coが酸化されてスラグへ分配されることがない程度に酸化度を留めることが好ましい。
予備加熱処理は、酸化剤の存在下で行うことが好ましい。これにより、不純物である炭素(C)の酸化除去及びAlの酸化を効率的に行うことができる。酸化剤は、特に限定されないが、取り扱いが容易な点で酸素含有ガス(空気、準酸素、酸素富化ガス等)が好ましい。また、酸化剤の導入量としては、例えば酸化処理の対象となる各物質の酸化に必要な化学当量の1.2倍程度が好ましい。
予備加熱処理の温度(加熱温度)は、600℃以上が好ましく、700℃以上がより好ましい。このような加熱温度とすることで、炭素の酸化効率をより一層に高めることができ、また加熱時間を短縮できる。また、加熱温度は900℃以下が好ましく、これにより熱エネルギーコストを抑制することができ、予備加熱の効率を高めることができる。
予備加熱処理は、公知の焙焼炉を用いて行うことができる。また、後工程の熔融工程S21で使用する熔融炉とは異なる炉(予備炉)を用い、その予備炉内で行うことが好ましい。予備加熱炉として、装入物を焙焼しながら酸化剤(酸素等)を供給してその内部で酸化処理を行うことが可能な炉である限り、あらゆる形式の炉を用いることができる。一例としては、従来公知のロータリーキルン、トンネルキルン(ハースファーネス)が挙げられる。
[合金熔湯準備工程]
合金熔湯準備工程S2は、廃リチウムイオン電池を熔融して合金熔湯(CuとNiとCoとを含む合金熔湯)Mを準備する工程である。合金熔湯準備工程S2は、廃リチウムイオン電池の粉砕物を熔融する熔融工程S21と、熔融物からスラグを分離して有価金属を含む合金を回収する回収工程S22と、回収した合金を合金熔湯Mにする熔湯化工程S23と、を有する。
熔融工程S21は、熔融原料(廃リチウムイオン電池の破砕物又は予備加熱物)を熔融炉内に投入し、その熔融原料を加熱熔融して、Cuと、Niと、Coと、を構成成分として含む合金(メタル)と、この合金の上方に位置するスラグと、を生成する。具体的には、まず、熔融原料を加熱熔融することによって熔体にする。熔体は、合金とスラグとを熔融した状態で含んでいる。次いで、得られた熔体を熔融物にする。熔融物は、合金とスラグとを凝固した状態で含む。
合金は、主として有価金属を含む。そのため、有価金属とその他の成分とのそれぞれを、合金及びスラグとして分離することが可能となる。このことは、比較的付加価値の低い金属(Al等)は酸素親和力が高いのに対し、有価金属は酸素親和力が低いためである。例えば、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、炭素(C)、マンガン(Mn)、リン(P)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)は、一般的に、Al>Li>C>Mn>P>Fe>Co>Ni>Cuの順に酸化されていく。つまり、Alが最も酸化され易く、Cuが最も酸化されにくい。そのため、比較的付加価値の低い金属(Al等)は容易に酸化されてスラグになり、有価金属(Cu、Ni、Co)は還元されて合金になる。このようにして、比較的付加価値の低い金属と有価金属とを、スラグと合金とに分離することができる。
熔融原料を熔融するに際しては、酸素分圧を制御してもよい。酸素分圧の制御は、公知の手法で行うことができる。例えば、熔融原料や、その熔融原料が熔解して得られた熔体に、還元剤や酸化剤を導入する方法が挙げられる。還元剤としては、炭素品位の高い材料(黒鉛粉、黒鉛粒、石炭、コークス等)や一酸化炭素を用いることができる。あるいは、熔融原料のうち炭素品位の高い成分を還元剤として用いることもできる。また、酸化剤としては、酸化性ガス(空気、酸素等)や炭素品位の低い材料を用いることができる。あるいは、熔融原料のうち炭素品位の低い成分を酸化剤として用いることもできる。
還元剤や酸化剤の導入についても公知の手法により行うことができる。例えば、還元剤や酸化剤が固体状物質である場合には、これを熔融原料や熔体に投入して導入することができる。また、還元剤や酸化剤がガス状物質である場合には、熔融炉に設けられたランス等の導入口から導入することができる。還元剤や酸化剤の導入タイミングについても、特に限定されず、熔融原料を熔融炉内に投入すると同時に導入してもよく、あるいは熔融原料が熔融して熔体になった段階で導入してもよい。
また、熔融工程S21における熔融処理では、フラックスを導入(添加)してもよい。フラックスを添加することで、熔融処理温度を低温化することができ、エネルギーコストを低減させることができる。さらに、リン(P)の除去をより一層進行させることができる。フラックスは、不純物元素を取り込んで融点の低い塩基性酸化物を形成する元素を含むものであることが好ましい。例えば、リンは酸化すると酸性酸化物となるため、熔融処理により形成されるスラグが塩基性となるほど、スラグにリンを取り込ませて除去し易くなる。その中でもフラックスとしては、安価でかつ常温において安定であるカルシウム化合物を含むものがより好ましい。カルシウム化合物として、例えば酸化カルシウム(CaO)や炭酸カルシウム(CaCO)を挙げることができる。
熔融処理において、熔融原料を熔融する際の加熱温度は特に限定されないが、1400℃以上1600℃以下が好ましく、1450℃以上1550℃以下がより好ましい。加熱温度を1400℃以上にすることで、有価金属(Cu、Co、Ni)が十分に熔融し、流動性が高められた状態で合金を形成する。そのため、後述する回収工程S22にて合金とスラグとを分離する際の効率性を高めることができる。また、より好ましく加熱温度を1450℃以上にすることで、合金の流動性をさらに高めることができ、不純物成分と有価金属との分離効率をより一層向上させることができる。一方で、加熱温度が1600℃を超えると、熱エネルギーが無駄に消費されるとともに、坩堝や炉壁等の耐火物の消耗が激しくなり、生産性が低下する可能性がある。
回収工程S22は、熔融工程S21で得られた熔融物からスラグを分離して、有価金属を含む合金を合金原料として回収する。スラグと合金とは、その比重が異なる。合金に比べ比重の小さいスラグは、合金の上部に集まるため、比重分離によって容易に分離回収することができる。回収工程S22での処理により、Cuと、Niと、Coと、を構成成分として含む合金原料を得ることができる。
熔湯化工程S23は、回収した合金原料を加熱熔解して合金熔湯Mにする。具体的には、準備した合金原料を熔解炉(坩堝炉)内に投入し、その合金原料を加熱熔解することによって、流動性がある熔湯(合金熔湯M)にする。加熱熔解の温度としては、後述する合金粉製造工程S3にて所望の合金粉を製造する観点から、1450℃以上1550℃以下が好ましい。熔湯化工程S23での処理により、Cuと、Niと、Coと、を構成成分として含む合金熔湯Mを得ることができる。
ここで、熔湯化工程S23において得られる合金熔湯Mは、Cu、Ni、Co、Mn、及びFeの5つ金属元素を含有するものである。合金熔湯は、その5つの金属元素のそれぞれを0.1質量%以上の割合で含有し、また、5つ金属元素の合計で98質量%以上の割合で含有するものである。さらに、合金熔湯中において、Cuは他の金属元素と比べて相対的にその含有割合が大きく、具体的には、Cuは24質量%以上80質量%以下の割合で含まれる。
そして、熔湯化工程S23では、その合金熔湯Mの温度を、Ni、C、Mn、及びFeの合計質量%を「T」とするとき、(1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下の範囲に調整する。合金熔湯Mの温度調整は、熔湯化する処理の過程において行ってもよく、つまり熔湯化条件の加熱温度を調整することで行ってもよく、あるいは、熔湯化して合金熔湯Mを得たのちに、別途加熱するステップを設けて特定の温度範囲に調整するようにしてもよい。
[合金粉製造工程]
合金粉製造工程S3は、水アトマイズ装置1を用いたアトマイズ法により合金粉(アトマイズ粉)を製造する工程である。具体的には、熔解炉にて得られた特定の温度を有する合金熔湯Mを、水アトマイズ装置1を構成するタンディッシュ11内に注湯し、タンディッシュ11からチャンバー13内に所定の供給量で合金熔湯Mを自由落下により供給して、落下する合金熔湯Mに高圧水を噴射することにより熔滴状に粉砕させる。チャンバー13内では、粉砕されて飛散した熔滴が急速に冷却され凝固することによって、合金粉が生成する。
本実施の形態に係る有価金属の回収方法では、合金粉製造工程S3において、上で詳述した構成を有する水アトマイズ装置1を用いて合金粉を製造することを特徴としている。すなわち、水アトマイズ装置1として、合金熔湯Mが内部に注湯されてその合金熔湯Mを底部11bに装着された出湯ノズル11Nより出湯させるタンディッシュ11と、タンディッシュ11の下方に配置されてそのタンディッシュ11から落下する合金熔湯Mに流体を噴射する流体噴射ノズル12と、を備えていて、タンディッシュ11の少なくともその内部が、上下方向の上方に向かうに従って、熔解炉3から注湯される合金熔湯Mの湯面の面積が大きくなるような形状に形成されている装置を用いる。
水アトマイズ装置1の具体的な構成等については、上で詳述したとおりであるため、ここでの説明は省略する。
合金粉製造工程S3において、水アトマイズ装置1を用いて合金粉を製造することにより、タンディッシュ11における合金熔湯Mの湯面高さをほぼ一定に保つことができ、それにより、タンディッシュ11からの合金熔湯Mの供給量を安定化させることができる。そしてその結果、安定した供給量で供給される合金熔湯Mにより、その合金熔湯Mに流体を噴射して製造される合金粉の粒径ばらつきを抑えることができる。
また、このような水アトマイズ装置1に注湯する合金熔湯Mの温度を、上述した特定の範囲に調整していることにより、得られる合金粉の粒径のばらつきをより効果的に抑えることができる。
そして、このようにして製造される、粒径ばらつきの小さい合金粉によれば、後述する酸浸出工程S4での酸浸出に供することで、NiやCo等の有価金属の浸出効率を効果的に向上させることができる。
[酸浸出工程]
酸浸出工程S4(有価金属回収工程)では、製造された合金粉に酸溶媒による浸出処理を施して、合金粉からNi及びCoを酸溶媒に選択的に溶解する。また、それにより、銅(Cu)をNi及びCoから分離する。このようにして、Cuと分離した形態で、Ni及びCoの有価金属を回収することができる。
酸溶媒としては、有価金属の回収に用いられる公知の酸溶液を用いることができる。具体的に、酸溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。例えば酸溶液として硫酸を用い、その硫酸に合金粉を浸漬させることで、合金粉中のNi及びCoが硫酸溶液中に溶解し、溶液中で硫酸ニッケル及び硫酸コバルトになる。一方で、合金粉中のCuは、溶解度の低い硫酸銅になり、残渣物として沈殿する。したがって、沈殿物となったCu成分(硫酸銅)を、Ni及びCoを含む溶液から分離することができる。
上述したように、合金粉製造工程S3にて製造される合金粉は、粒径ばらつきが小さい合金粉である。そのため、酸浸出処理における浸出性と分離回収性に優れているという特徴がある。したがって、このような合金粉、すなわち特定の温度範囲に調整した合金熔湯Mを水アトマイズ装置1に注湯して製造された合金粉を用いる、本実施の形態に係る有価金属の回収方法によれば、有価金属であるNi及びCoを高い浸出率でもって浸出できるとともに、Ni及びCoとCuとを高い分離性でもって分離回収することができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
≪実施例、比較例≫
[実施例]
実施例及び比較例において、廃電池市場で流通しているリチウムイオン電池工場の中間品スクラップや無害化された使用済の廃電池を使用し(廃電池前処理工程S1)、その廃電池試料から合金熔湯準備工程S2を経て合金熔湯を得た。そして、合金粉製造工程S3にて、得られた合金熔湯から、銅(Cu)と、ニッケル(Ni)と、コバルト(Co)とを構成成分として含む合金粉を製造した。
合金熔湯準備工程S2では、熔湯化工程S23を経て、下記表1に示す組成の合金熔湯(M)を得た。表1では、ガス成分(炭素、窒素、酸素)を除く化学定量分析結果の組成を示している。なお、下記表2中には、熔湯化して得られた合金熔湯(合金粉製造工程S3に供する合金熔湯)(M)に含まれる、Ni、C、Mn、及びFeの合計質量%「T」を示す。また、熔湯化工程S23では、合金熔湯Mを得るにあたり、加熱条件を制御することで、得られる合金熔湯(M)の温度を、下記表2に示す「合金熔湯の温度」となるように調整した。
Figure 2022039446000002
合金粉製造工程S3では、図1に構成例を示すようなアトマイズ装置(1)を用いた。すなわち、タンディッシュ(11)の内部が、上下方向の上方に向かうに従って、注湯される合金熔湯(M)の湯面の面積が大きくなるような形状である逆円錐台形状の水アトマイズ装置(1)を用いた。より具体的に、実施例1~4では、内部断面形状が図2に示すようなものであって、開口部(11a)の径Rと底部(11b)の径Rとの比(R/R)が0.5であるタンディッシュ(11)を備えた水アトマイズ装置(1)を用いた(下記表2中では「逆円錐台形[1]と表記する」)。また、実施例5では、内部断面形状が図3に示すようなものであって、開口部(11a)の径Rと底部(11b)の径Rとの比(R/R)が0.3であるタンディッシュ(11)を備えた水アトマイズ装置(1)を用いた(下記表2中では「逆円錐台形[2]と表記する」)。
なお、水アトマイズ装置(1)において、タンディッシュ(11)はアルミナ製であり、そのタンディッシュ11の底部(11b)にはノズル直径4mm~8mmのジルコニア製の出湯ノズル(11N)が装着されているものであった。
合金粉製造工程S3では、周波数400Hzの誘導炉(熔解炉3)の出力により合金熔湯の温度を調整し、その誘導炉(5)を傾動させて、内部形状が逆円錐台形のタンディッシュ(111)へ合金熔湯(M)を流し込み、タンディッシュ(11)内の合金熔湯(M)の湯面高さをほぼ一定に保つとともに、出湯ノズル(11N)からの単位時間当たりの出湯量を一定にして、水アトマイズ装置(1)のチャンバー(13)内に合金熔湯(M)を供給した。
なお、誘導炉(5)からタンディッシュ(11)への合金熔湯(M)の出湯にあたり、誘導炉(5)内の合金熔湯(M)の温度と、タンディッシュ(11)の出湯ノズル(11N)から出湯される合金熔湯(M)の温度とが同程度の温度に保持されるように、事前に空のタンディッシュ(11)内をLPGバーナーで1000℃以上に加熱しておいた。
水アトマイズ装置(1)では、ほぼ一定の出湯量でタンディッシュ(11)から出湯ノズル(11N)を介してチャンバー(13)内に合金熔湯(M)を供給し、出湯ノズル(11N)から落下した合金熔湯(M)に対してチャンバー(13)の上部に設けた流体噴射ノズル(12)から高圧水を噴射し、熔滴状に粉砕して合金粉を製造した。チャンバー(13)内で得られた合金粉は、回収配管(14)を介してフィルタ(15)まで移送させ、そこで固液分離した回収した。
[比較例]
比較例では、水アトマイズ装置として、内部断面形状が図4に示すような円筒形状のタンディッシュ(100)を備える装置を用い、合金熔湯の温度を下記表2に示す温度(表2中の「合金熔湯の温度」)となるように調整したこと以外は、実施例と同様にして合金粉を製造した。
≪結果及び評価≫
下記表2に、実施例1~5及び比較例1、2の各試験例における合金粉の製造条件とその試験結果を示す。表2中には、熔湯化して得られた合金熔湯(合金粉製造工程S3に供する合金熔湯)(M)に含まれる、Ni、C、Mn、及びFeの合計質量%「T」も併せて示す。また、表2中における「合金熔湯調整温度範囲」とは、合計質量%「T」を用いて計算される、(1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下の温度範囲である。
各試験では、それぞれの条件で合金粉(アトマイズ粉)を製造加工したときの加工時における異常の有無、製造した合金粉の粒度分布、及びその合金粉を酸浸出したときの酸浸出効率を評価した。
アトマイズ加工時の異常に関しては、加工中に出湯ノズル(11N)における湯詰まりの発生について確認し、湯詰まりの異常が発生した場合を異常有り(表中に「有」と表記)とし、湯詰まりの異常が発生しなかった場合を異常無し(表中に「無」と表記)として評価した。
合金粉の粒度分布については、粒径300μm以上の粗粒粉の発生がなく、また5μm未満の微粉の発生がなかった場合を良好(表中に「○」と表記)と判断し、粗粒粉及び微細粉のいずれか又はその両方が発生した場合を不良(表中に「×」と表記)と判断して評価した。
酸浸出効率に関しては、各試験例で製造した、Cuと、Niと、Coと、を構成成分として含む合金粉を硫酸溶液に浸漬させて酸浸出処理を行い、処理開始から6時間以内に98%以上の溶解率(浸出率)でNi及びCoが溶解した場合には酸浸出効率が良好(表中に「○」と表記)と判断し、98%未満の溶解率であった場合には酸浸出効率が不十分(表中に「×」と表記)と判断して評価した。なお、硫酸溶液は、Ni及びCoが硫酸塩として溶解するのに必要な硫酸量の2.0当量~3.0当量となる量を用意した。
Figure 2022039446000003
実施例1~4では、タンディッシュ(11)内の形状が逆円錐台形に形成された水アトマイズ装置(1)を用いたとともに、合金熔湯(M)の温度を合金熔湯調整温度範囲に含まれる温度に調整して合金粉を製造したことにより、製造された合金粉について、粒径300μm以上の粗粒粉や5μm未満の微粉の発生はなかった。さらに、合金粉に対する酸浸出においても、6時間以内に98%以上のNi及びCoが溶解して良好であった。また、アトマイズ加工中は湯詰まり等の異常は発生せず良好な操作が可能であった。
また、実施例5でも、タンディッシュ(11)内の形状が逆円錐台形に形成された水アトマイズ装置(1)を用いたとともに、合金熔湯(M)の温度を合金熔湯調整温度範囲に含まれる温度(1460℃)に調整して合金粉を製造したことにより、製造された合金粉について、粒径300μm以上の粗粒粉や5μm未満の微粉の発生はなかっただけでなく、5μm以上の範囲での微粉の割合が少なく、よりシャープな粒度分布であった。このことは、実施例5では、実施例1~4で用いた装置よりもR/Rの比率がより小さい略逆円錐形に形成されたものを用いて合金粉を製造したことで、タンディッシュ(11)内の合金熔湯が少なくなった段階においても、出湯ノズル(11N)からの供給量の変動が少なかったためと考えられる。さらに、合金粉に対する酸浸出においても、6時間以内に98%以上のNi及びCoが溶解して良好であった。また、アトマイズ加工中は湯詰まり等の異常は発生せず良好な操作が可能であった。
一方で、比較例1では、タンディッシュ(100)内の形状が従来型の円筒形状に形成された水アトマイズ装置を用いて合金粉を製造したことにより、アトマイズ加工中は湯詰まり等の異常は発生しなかったものの、粒径300μm以上の粗粒が発生し、また5μm未満の微粉が発生した。また、その合金粉に対する酸浸出においても、6時間以内でのNi及びCoの溶解率が98%未満となった。
また、比較例2では、実施例1~5と同様にタンディッシュ(11)内の形状が逆円錐台形に形成された水アトマイズ装置(1)を用いて合金粉を製造したものの、合金熔湯の温度が合金熔湯調整温度範囲に含まれない温度(1400℃)であったことにより、粒径300μm以上の粗粒が発生した。また、その合金粉に対する酸浸出においても、9時間の処理時間でNi及びCoの溶解率が98%未満となった。
1 水アトマイズ装置
11,11A,11B タンディッシュ
11a 開口部
11b 底部
11N 出湯ノズル
12 流体噴射ノズル
13 チャンバー
13e 排出口
14 回収配管
15 フィルタ
16 タンク
17 高圧ポンプ
18 ガス排出構造
21 傾斜部
3 熔解炉(誘導炉)

Claims (5)

  1. 合金熔湯に高圧水を噴射して合金粉を製造する水アトマイズ装置を用いて、銅とニッケルとコバルトとを構成成分として含む合金粉を製造する方法であって、
    前記合金熔湯は、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、及び鉄の5つ金属元素をそれぞれ0.1質量%以上、該5つ金属元素の合計で98質量%以上含有するものであり、
    前記水アトマイズ装置として、
    前記合金熔湯が内部に注湯され、該合金熔湯を底部に装着された出湯ノズルより出湯させるタンディッシュと、前記タンディッシュの下方に配置され、該タンディッシュから落下する前記合金熔湯に前記高圧水を噴射する流体噴射ノズルと、を備えていて、
    前記タンディッシュの少なくともその内部が、上下方向の上方に向かうに従って、注湯される前記合金熔湯の湯面の面積が大きくなるような形状に形成されているものを用い、
    前記合金熔湯の温度を、ニッケル、コバルト、マンガン、及び鉄の合計質量%を「T」とするとき、(1383+1.9×T)℃以上(1483+1.9×T)℃以下の範囲に調整する、
    合金粉の製造方法。
  2. 前記合金熔湯は、銅を24質量%以上80質量%以下の範囲で含有するものである、
    請求項1に記載の合金粉の製造方法。
  3. 前記水アトマイズ装置は、
    前記タンディッシュの内部が逆円錐台の形状に形成されている、
    請求項1又は2に記載の合金粉の製造方法。
  4. 前記合金熔湯は、廃リチウムイオン電池に由来するものである、
    請求項1乃至3のいずれかに記載の合金粉の製造方法。
  5. 廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法であって、
    水アトマイズ装置を用い、前記廃リチウムイオン電池に由来する合金熔湯に高圧水を噴射して、銅とニッケルとコバルトとを構成成分として含む合金粉を製造する工程と、
    前記合金粉を酸により浸出する工程と、を含み、
    前記合金粉を製造する工程では、請求項1乃至4のいずれかに記載の合金粉の製造方法を実行する、
    有価金属の回収方法。
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