JP2022035454A - 衝撃吸収部材 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、衝撃吸収部材に関する。
例えば、下記特許文献1には、角筒状の衝撃吸収部材が開示されている。この衝撃吸収部材の中心軸の延設方向における一端面(後端面)が、例えば、車両の骨格部材(サイドメンバ)に固定される。そして、その他端面(前端面)に、バンパーリインフォースメントが接続される。車両のバンパーに物体が衝突して、衝撃吸収部材に衝撃荷重が作用すると、衝撃吸収装置が、その中心軸方向に圧縮されるように変形していく。すなわち、衝撃吸収部材を構成する各壁部が座屈変形する。これにより、衝撃エネルギーが吸収(変形エネルギーに変換)される。
衝撃吸収部材による衝撃エネルギーの吸収量は、衝撃吸収部材に作用する衝撃荷重(言い換えれば、衝撃荷重に対する衝撃吸収部材の反力(以下、単に「荷重」と呼ぶ))及び衝撃吸収部材の変形ストロークの積分値に相当する。よって、衝撃吸収効率を高めるためには、荷重の変化(衝撃吸収部材の反力の変化)をできるだけ抑制することが好ましい。すなわち、衝撃吸収部材の変形開始から変形終了までの過程において、荷重の変動の振幅を小さく、周期を短くすることが好ましい。
ここで、衝撃吸収部材は、その先端側(バンパーリインフォースメント側)の部分から後端側(サイドメンバ側)の部分へ向かって、順に座屈していく。すなわち、衝撃吸収部材は、蛇腹状に変形する。言い換えれば、衝撃吸収部材を構成する各壁部の複数の箇所にて座屈が生じる。その過程において、荷重が変動する。具体的には、バンパーに物体が衝突してから衝撃吸収部材が変形し始めるまでの過程で、荷重が急激に上昇する。そして、衝撃吸収部材の各壁部の前端部である第1部分がそれぞれ座屈し始めると、荷重が一時的に低下する。第1部分が座屈してそれ以上変形しなくなると、再び、荷重が増大する。つぎに、第1部分の後方に位置する第2部分が座屈し始めると、再び、荷重が低下する。このように、荷重(衝撃吸収部材の反力)は、衝撃吸収部材の変形ストロークに応じて周期的に変化する。すなわち、衝撃吸収部材の変形過程において、周期的に荷重が低下する。上記のような荷重の変動が、衝撃エネルギーの吸収効率を低下させる要因の1つとして挙げられる。
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、衝撃エネルギーの吸収効率を向上させた衝撃吸収部材を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る衝撃吸収装置は、所定の方向に延設された筒状の周壁部であって、前記所定の方向にそれぞれ延設された複数の帯板状の壁部からなる周壁部と、前記周壁部の内部にて前記所定の方向に延設された帯板状のリブであって、その幅方向における少なくとも一方の端部が前記周壁部の内周面に接続されているリブと、を備える。前記複数の壁部のうちの隣り合う壁部同士の接続部、又は前記周壁部の内周面と前記リブとの接続部を含む所定の範囲の板厚に比べて、その他の部分の板厚が大きい。
本発明の一態様において、前記複数の壁部及び前記リブの板厚がそれらの全体に亘って一定であって、且つ前記リブの板厚が前記複数の壁部の板厚に比べて大きい。
上記のように、本発明に係る衝撃吸収部材において、隣り合う周壁部同士の接続部、又は前記筒状部の内周面と前記リブとの接続部を含む所定の範囲の板厚を、その他の部分の板厚に比べて小さく設定した。従来の衝撃吸収部材では、前記所定の範囲の板厚がその他の部分と同一である、又は前記所定の範囲の板厚が他の部分に比べて大きい。よって、本発明に係る衝撃吸収部材の前記接続部付近が、従来の衝撃吸収部材に比べて座屈し易い。よって、衝撃吸収部材の座屈箇所(周壁部における折れ曲がり箇所)の数が比較的多くなる。言い換えれば、変形ストロークと荷重との関係を表す特性図(図4参照)において、荷重の振幅が小さく、且つ周期が短くなる。また、その他の部分の板厚が比較的大きいので、荷重の最大値を高く保持できる。したがって、本発明によれば、衝撃エネルギーを効率的に吸収できる。
本発明の一実施形態に係る衝撃吸収部材1(1L,1R)について説明する。衝撃吸収部材1は、車両Vに適用され、車両Vに物体が衝突したとき、その衝撃エネルギーを吸収する。ここで、まず、衝撃吸収部材1が組み付けられた車両Vの前部の構成について簡単に説明しておく。この車両Vは、図1に示すように、左右一対のサイドメンバSL,SR、及びバンパーリインフォースメントBRを有する。サイドメンバSL,SRは、車両の側部にて車両前後方向にそれぞれ延設されている。サイドメンバSL,SRは、車両前後方向に延設された筒状の本体部と、前記本体部の前端面及び後端面に形成されたフランジ状のブラケットを有する。バンパーリインフォースメントBRは、サイドメンバSL,SRの前方にて、車両Vの車幅方向における左端から右端に亘って延設されている。バンパーリインフォースメントBRは、車幅方向に延びる筒状に形成されている。車両Vの平面視において、バンパーリインフォースメントBRは、車幅方向における中央部よりも車幅方向における両端側が少し後方に位置するように湾曲している。バンパーリインフォースメントBRは、衝撃吸収部材1(1L,1R)を介してサイドメンバSL,SRに接続される。つまり、衝撃吸収部材1(1L,1R)の後端部がサイドメンバSL,SRのフランジ部に組み付けられ、その衝撃吸収部材1(1L,1R)の前端部に、バンパーリインフォースメントBRが組み付けられ、る。なお、サイドメンバSLに取り付けられる衝撃吸収部材1LとサイドメンバSRに取り付けられる衝撃吸収部材1Rとは、車幅方向に対して垂直な平面(対称面)に関して面対称である。そこで、以下、衝撃吸収部材1Lについて説明し、衝撃吸収部材1Rの説明を省略する。
次に、衝撃吸収部材1Lの構成について説明する。衝撃吸収部材1Lは、衝撃吸収部10とブラケット20とを備える。衝撃吸収部10の外郭は、角筒状に形成されている。衝撃吸収部10の中心軸に対して垂直な断面Aの外形は長方形を呈する(図3参照)。以下の説明において、衝撃吸収部10の中心軸の延設方向をX方向と呼ぶ。また、断面Aの長辺の延設方向をY方向と呼び、短辺の延設方向をZ方向と呼ぶ。なお、衝撃吸収部材1は、衝撃吸収部10のX方向が車両前後方向に一致し、Y方向が車幅方向に一致し、Z方向が車両高さ方向に一致するように、サイドメンバSL(SR)とバンパーリインフォースメントBRとの間に配置される。
すなわち、衝撃吸収部10の外郭は、衝撃吸収部材1が車両に取り付けられた状態において車両前後方向(X方向)に延びる筒状の周壁部11を有する。周壁部11は、X方向にそれぞれ延びる帯板状の上壁部11a、下壁部11b、右壁部11c及び左壁部11dを有する(図2及び図33参照)。上壁部11a及び下壁部11bの形状は同一であり、両者が車両高さ方向(Z方向)に離間している。上壁部11a及び下壁部11bの板厚方向が、車両高さ方向(Z方向)に対して平行である。右壁部11c及び左壁部11dの形状は同一であり、両者が車幅方向(Y方向)に離間している。右壁部11c及び左壁部11dの板厚方向が、車幅方向(Y方向)に対して平行である。右壁部11cの上端が、上壁部11aの右端に接続され、右壁部11cの下端が、下壁部11bの右端に接続されている。また、左壁部11dの上端が、上壁部11aの左端に接続され、左壁部11dの下端が、下壁部11bの左端に接続されている。
周壁部11の内部に、車両前後方向(X方向)にそれぞれ延びる帯板状の複数(例えば3個)のリブ12が、車幅方向(Y方向)に等間隔に設けられている。各リブ12の板厚方向が、車幅方向(Y方向)に対して平行である。つまり、リブ12は、右壁部11c(左壁部11d)に対して平行配置されている。リブ12の上端が上壁部11aに接続され、リブ12の下端が、下壁部11bに接続されている。
上壁部11a、下壁部11b、右壁部11c及び左壁部11dの板厚t1は同一であり、各壁部の全面にわたり、板厚t1が一定である。各リブ12の板厚t2は同一であり、各リブ12の全面に亘り、板厚t2が一定である。リブ12の板厚t2は、周壁部11の板厚t1よりも大きく設定されている。なお、衝撃吸収部10の後端面10aは、車両前後方向(X方向)に対して垂直な平面状である。衝撃吸収部10の前端面10bは、その左側端部を除き、車両前後方向(X方向)に対して垂直な平面状である。衝撃吸収部10の左端部は、バンパーリインフォースメントBRの形状(湾曲形状)に沿うように(干渉しないように)、前端面10bのその他の部分に対して傾斜している(図2参照)。
衝撃吸収部10は、次のようにして製造される。まず、金属材料(例えばアルミニウム材)を押出加工して、角筒状の中間成形体が形成される。この中間成形体は、衝撃吸収部10を構成する各壁部(上壁部11a、下壁部11b、右壁部11c、左壁部11d及びリブ12)に相当する部位を有する。なお、前記金属材料の押出方向が、X方向に相当する。次に、中間成形体の前端部の左端部が、バンパーリインフォースメントBRの形状(湾曲形状)に沿うように(干渉しないように)トリミングされる。このようにして、衝撃吸収部10が製造される。
ブラケット20は、衝撃吸収部10の後端面10b(サイドメンバSL側)に接合される後側ブラケット21と、衝撃吸収部10の前端10a(バンパーリインフォースメントBR側)に接合される前側ブラケット22から構成されている。後側ブラケット21は、略平板状部材である。衝撃吸収部材1Lの正面視(車両Vの前方(又は後方))から見た状態)において、後側ブラケット21の外縁部は、衝撃吸収部10の外周面から外方へ張り出している。後側ブラケット21の外縁部には、その板厚方向へ貫通する複数の貫通孔TH21が設けられている。この貫通孔TH21に締結部材(ボルト)が挿入され、その先端がサイドメンバSLに締結される。これにより、衝撃吸収部材1がサイドメンバSLに固定される。
前側ブラケット22は、衝撃吸収部10の前端面に沿うように形成された(曲げ形成)板状部材である。衝撃吸収部材1Lの正面視(車両Vの前方(又は後方))から見た状態)において、前側ブラケット22の外縁部は、衝撃吸収部10の外周面から外方へ少し張り出している。前側ブラケット22には、その板厚方向へ貫通する複数の貫通孔TH22が設けられている。この貫通孔TH22に締結部材(ボルト)が挿入され、その先端がバンパーリインフォースメントBRに締結される。これにより、バンパーリインフォースメントBRが、衝撃吸収部材1に固定される。
上記のように構成された衝撃吸収部材1が適用された車両Vの前方から、物体が、衝撃吸収部材1のX方向に対して平行に衝突した際の、衝撃吸収部材1の変形ストロークS及び荷重Fに関するコンピュータシミュレーション結果を図4乃至図7に示す。同コンピュータシミュレーションにおいて、周壁部11(上壁部11a、下壁部11b、右壁部11c及び左壁部11d)の板厚t1とリブ12の板厚t2の比率R(=t2/t1)を下記のように設定した。上記のように、本実施形態では、板厚t2が板厚t1より大きく設定しているため、比率Rは「1」より大きい。また、比較例として、比率Rが「1」である場合のシミュレーション結果を図8に示す。なお、各実施例及び比較例の外形は同一であり、相違点は、比率Rの設定のみである。また、各実施例及び比較例における板厚t1は共通である。
・実施例1 R=1.13 (図4)
・実施例2 R=1.3 (図5)
・実施例3 R=1.5 (図6)
・実施例4 R=2.0 (図7)
・比較例 R=1.0 (図8)
・実施例1 R=1.13 (図4)
・実施例2 R=1.3 (図5)
・実施例3 R=1.5 (図6)
・実施例4 R=2.0 (図7)
・比較例 R=1.0 (図8)
各実施例及び比較例において、衝撃吸収部材1がサイドメンバSLに支持された状態でX方向に蛇腹状に圧縮されるように変形していく。すなわち、衝撃吸収部10の周壁部11を構成する上壁部11a、下壁部11b、右壁部11c及び左壁部、並びに各リブ12が、それらの前端側の部分から後端側の部分へ向かって順に座屈していく。
ここで、一般に、単なる帯板状の構造材の座屈強度に比べ、長手方向に延びる稜線部、又は交差部(長手方向に垂直な断面においてT字形、十字形、H字形などを呈する部位)を有する構造材の座屈強度が大きい。
実施例1乃至実施例4及び比較例において、上壁部11aと右壁部11cとの接続部、上壁部11aと左壁部11dとの接続部、下壁部11bと右壁部11cとの接続部、及び下壁部11bと左壁部11dとの接続部は、X方向に延びる稜線部(角部)を構成している。また、各リブ12と上壁部11aとの接続部、及び各リブ12と上壁部11aとの接続部は、その断面A(図3参照)においてT字形を呈する交差部を構成している。
比較例では、周壁部11の板厚t1とリブ12の板厚t2とを同一に設定しているのに対し、実施例1乃至実施例4では、板厚t2を板厚t1より大きく設定している。このように、比較例の稜線部及び交差部に比べて、実施例1乃至実施例4の稜線部及び交差部の座屈強度を少し小さく設定した。なお、板厚t1に加えて板厚t2を小さくしてしまうと、荷重Fの最大値が低下してしまい、全体としての衝撃吸収量が低下してしまうので、リブ12の板厚t2の板厚を周壁部t1の板厚t1より大きく設定して、荷重Fの最大値の低下を抑制した。これにより、実施例1乃至実施例4の座屈箇所の数を、比較例に比べて多くして(分散させて)、実施例1乃至実施例4(図4乃至図7参照)の荷重Fの振幅を、比較例(図8参照)よりも小さくするとともに、実施例1乃至実施例4の荷重Fの変動周期を、比較例より短く設定し、且つ荷重Fの最大値を高く保持できた。このように、実施例1乃至実施例4によれば、比較例に比べて、衝撃エネルギーを効率的に吸収できる。なお、図9及び図10に示すように、実施例1乃至実施例4のうち、比率Rを「1.13」に設定した実施例1の荷重Fの振幅(最大荷重と最小荷重の差)が最も小さく、衝撃吸収効率が高くなった。実施例1より比率Rが大きい実施例2乃至実施例4では、リブ12の座屈強度が大きくなりすぎるため、上記のような結果になると考えられる。なお、図9において、変形の全過程において荷重Fが一定(最大荷重)であると仮定した場合の衝撃吸収量(100%)に対する、実施例1乃至実施例4及び比較例の衝撃吸収量の比率を示した。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
本実施形態は、衝撃吸収部材1(1L,1R)を、車両の前部に設けられて、車両の前方から作用する衝撃エネルギーを吸収する部材として利用した例であるが、本発明は、他の方向から(後方、側方)などから作用する衝撃吸収エネルギーを吸収する部材としても利用可能である。その場合、衝撃吸収部10のX方向が、衝撃荷重の方向(衝突物体の移動方向)に一致するように、衝撃吸収部材1を配置すればよい。
また、上記実施形態では、周壁部11を構成する上壁部11a、下壁部11b、右壁部11c及び左壁部11dの板厚t1をそれらの全面に亘って一定とし、且つリブ12の板厚t2をそれらの全面に亘って一定とし、そのうえで、板厚t2を板厚t1より大きく設定した。しかし、これに代えて、図11及び図12に示すように、稜線部及び/又は交差部の近傍の所定の範囲の板厚t3に比べて、その他の部分の板厚t0を大きく設定することによっても、上記実施形態(実施例1乃至実施例4)と同様の効果が得られる。
また、上記実施形態では、衝撃吸収部10の断面形状が長方形を呈するが(図3参照)、断面形状は、上記実施形態に限られない。例えば、衝撃吸収部10の断面形状が、正方形又は多角形を呈してもよい。また、上記実施形態では、衝撃吸収部10の周壁部11の内部に3つのリブ12が設けられているが、リブ12の数を変更してもよい。また、上記実施形態では、複数のリブ12が平行配置されているが、リブ12同士が交差していてもよい。例えば、2つのリブ12が互いに垂直に交差していてもよい。
1(1L,1R)…衝撃吸収部材、11…周壁部、11a…上壁部、11b…下壁部、11c…右壁部、11d…左壁部、12…リブ、20…ブラケット、BR…バンパーリインフォースメント、F…荷重、R…比率、S…変形ストローク、SL,SR…サイドメンバ、V…車両、t0~t3…板厚
Claims (2)
- 所定の方向に延設された筒状の周壁部であって、前記所定の方向にそれぞれ延設された複数の帯板状の壁部からなる周壁部と、
前記周壁部の内部にて前記所定の方向に延設された帯板状のリブであって、その幅方向における少なくとも一方の端部が前記周壁部の内周面に接続されているリブと、
を備え、
前記複数の壁部のうちの隣り合う壁部同士の接続部、又は前記周壁部の内周面と前記リブとの接続部を含む所定の範囲の板厚に比べて、その他の部分の板厚が大きい、衝撃吸収部材。 - 請求項1に記載の衝撃吸収部材において、
前記複数の壁部及び前記リブの板厚がそれらの全体に亘って一定であって、且つ前記リブの板厚が前記複数の壁部の板厚に比べて大きい、衝撃吸収部材。
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