JP2022034926A - 車輪用軸受装置の予圧検査方法 - Google Patents

車輪用軸受装置の予圧検査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】予圧をより高精度に判定できる車輪用軸受装置の予圧検査方法を提供する。【解決手段】圧入工程S02後に第1の内輪高さを測定する工程S03、S03後に軸受予圧値を算出する工程S04、S02後に圧入後回転トルクを測定する工程S06、S03とS06後の加締工程S07、S07後に加締部の温度を測定する工程S08、S07後に第2の内輪高さを測定する工程S09、補正後の内輪4の押込み量を推定する工程S11、最終隙間を算出する工程S12、第2の軸受予圧値を算出する工程S13、S07後に加締後回転トルクを測定する工程S14、加締後回転トルクを補正する工程S16、予圧変化量を推定する工程S17、第3の軸受予圧値を算出する工程S18、第2、第3の軸受予圧値がそれぞれ閾値内であるか否かと、第2、第3の軸受予圧値の相対差が閾値内であるか否かと、に基づいて予圧の適否を判定する工程S19、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は車輪用軸受装置の予圧検査方法に関する。
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。このような車輪用軸受装置においては、軸受装置を構成する転動体と軌道輪との間に予圧が付与されている。
軸受装置に予圧を付与することにより、軸受装置の剛性を高めるとともに振動および騒音を抑制することができる。しかし、予圧を過大に付与すると回転トルクの増加や寿命の低下を招く原因となり得るため、軸受装置に適正な予圧が付与されているかどうかを確認することが重要である。
軸受装置に付与されている予圧を確認する方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、複列に転動体が設けられた転がり軸受において、軸方向における予圧隙間を測定することによって、当該軸受に付与された予圧を測定する予圧測定方法が知られている。
軸受に付与された予圧を予圧隙間から求める場合、例えばハブ輪を内輪に加締めて内方部材を構成する仕様の車輪用軸受装置においては、ハブ輪を加締めた際の内輪の押込量を予圧隙間減少量に換算し、予圧隙間減少量と加締加工前の予圧隙間とを合わせることで、軸受装置に付与された予圧を求めることが可能である。
特開平10-185717号公報
しかし、ハブ輪を内輪に加締める構成の軸受装置においては、加締加工時に内側軌道面の形状崩れ等の異常が生じた場合、内輪の押込量から予圧隙間減少量を精度良く求めることが困難となり、軸受装置に付与された予圧の測定値の信頼度が低下するおそれがある。
そこで、本発明においては、車輪用軸受装置に付与されている予圧をより高い信頼度で検査することができる車輪用軸受装置の予圧検査方法を提供する。
即ち、第一の発明は、内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、外周に軸方向に延びる小径段部を有したハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された内輪からなり、前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、を備えた車輪用軸受装置の予圧検査方法であって、前記ハブ輪の前記小径段部に対して、前記内輪を、軸方向において前記内輪が前記ハブ輪に当接する位置まで圧入する圧入工程と、前記圧入工程後における前記ハブ輪のアウター側端部から前記内輪のインナー側端部までの第1の内輪高さを測定する第1の内輪高さ測定工程と、前記圧入工程後における前記両軌道面と前記転動体との軸方向負隙間を測定し、前記軸方向負隙間に基づいて前記車輪用軸受装置の軸受予圧値を算出する第1の軸受予圧値算出工程と、前記圧入工程後に前記内方部材と前記外方部材とを相対的に回転させたときの前記車輪用軸受装置の圧入後回転トルクを測定する圧入後回転トルク測定工程と、前記第1の内輪高さ測定工程と前記圧入後回転トルク測定工程の後で、前記小径段部のインナー側端部を前記内輪に加締める加締工程と、前記加締工程後における前記小径段部と前記内輪との加締部の温度を測定する加締後温度測定工程と、前記加締工程後における前記ハブ輪のアウター側端部から前記内輪のインナー側端部までの第2の内輪高さを測定する第2の内輪高さ測定工程と、前記第1の内輪高さと前記第2の内輪高さの差分高さを算出するとともに、前記加締部の温度に基づいて前記差分高さを補正し、補正後の前記差分高さに基づいて前記ハブ輪に対する前記内輪の押込み量を推定する内輪押込み量推定工程と、推定した前記内輪の押込み量に基づいて前記内輪と前記ハブ輪の隙間減少量を算出するとともに、前記隙間減少量に基づいて前記内輪と前記ハブ輪の最終隙間を算出する最終隙間算出工程と、算出した前記最終隙間に基づいて前記車輪用軸受装置の第2の軸受予圧値を算出する第2の軸受予圧値算出工程と、前記加締工程後に前記内方部材と前記外方部材とを相対的に回転させたときの前記車輪用軸受装置の加締後回転トルクを測定する加締後回転トルク測定工程と、前記加締工程後の前記加締部の温度に基づいて前記加締後回転トルクにおける温度変化に起因するトルク増加量を推定するとともに、前記加締後回転トルクから前記トルク増加量を減じて前記加締後回転トルクを補正する加締後回転トルク補正工程と、前記圧入後回転トルクと補正後の前記加締後回転トルクとの差分トルクを算出するとともに、前記差分トルクに基づいて加締加工に起因する予圧変化量を推定する予圧変化量推定工程と、前記第1の軸受予圧値に前記予圧変化量を加えて第3の軸受予圧値を算出する第3の軸受予圧値算出工程と、前記第2の軸受予圧値と前記第3の軸受予圧値がそれぞれ所定の閾値範囲内であるか否かと、前記第2の軸受予圧値と前記第3の軸受予圧値との差分予圧値が所定の閾値範囲内であるか否かと、に基づいて前記車輪用軸受装置に付与された予圧の適否を判定する判定工程と、を備えることを特徴とする車輪用軸受装置の予圧検査方法である。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、第一の発明によれば、車輪用軸受装置に付与されている予圧をより高い信頼度で検査することができる。
予圧検査方法が実施される車輪用軸受装置を示す側面断面図である。 予圧検査方法のフローを示す図である。 内輪がハブ輪の小径段部に仮圧入された状態の車輪用軸受装置を示す側面断面図である。 内輪がハブ輪の小径段部に圧入された状態の車輪用軸受装置を示す側面断面図である。 ハブ輪と外輪とを相対的に回転させたときの時間とトルクとの関係を示す図である。 ハブ輪と外輪とを相対的に回転させたときの回転数とトルクとの関係を示す図である。 ハブ輪の小径段部を内輪に加締めた状態の車輪用軸受装置を示す側面断面図である。 加締部温度と回転トルク増加量との関係を示す図である。 軸受予圧と回転トルクとの関係を示す図である。 第2の回転トルク測定工程後に外輪のインナー側端部にインナー側シール部材を装着する様子を示す側面断面図である。 加締前温度測定工程を行う場合の予圧検査方法の第1実施例のフローを示す図である。 加締加工前の加締部に対応する部位の温度を測定している状態の車輪用軸受装置を示す側面断面図である 加締前温度測定工程を行う場合の予圧検査方法の第2実施例のフローを示す図である。
[車輪用軸受装置]
以下に、図1を用いて、本発明に係る予圧検査方法が実施される車輪用軸受装置の第一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。
図1に示す車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は第3世代と称呼される構成を備えており、外方部材である外輪2と、内方部材であるハブ輪3および内輪4と、転動列である二列のインナー側ボール列5およびアウター側ボール列6と、インナー側シール部材9およびアウター側シール部材10とを具備する。ここで、インナー側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。また、軸方向とは、車輪用軸受装置1の回転軸に沿った方向を表す。
外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材9が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材10が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。外輪2の内周面には、インナー側の外側軌道面2cと、アウター側の外側軌道面2dとが形成されている。外輪2の外周面には、外輪2を車体側部材に取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体的に形成されている。車体取り付けフランジ2eには、車体側部材と外輪2とを締結する締結部材(ここでは、ボルト)が挿入されるボルト孔2gが設けられている。
ハブ輪3のインナー側端部には、外周面にアウター側端部よりも縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3における小径段部3aのアウター側端部には肩部3eが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、ハブ輪3と車輪又はブレーキ部品とを締結するためのハブボルトが圧入されるボルト孔3fが設けられている。
ハブ輪3には、外輪2のアウター側の外側軌道面2dに対向するようにアウター側の内側軌道面3cが設けられている。ハブ輪3における車輪取り付けフランジ3bの基部側には、アウター側シール部材10が摺接するリップ摺動面3dが形成されている。アウター側シール部材10は、外輪2とハブ輪3とによって形成された環状空間のアウター側開口端に嵌合している。ハブ輪3は、車輪取り付けフランジ3bよりもアウター側の端部にアウター側端面3gを有している。
ハブ輪3の小径段部3aには、内輪4が設けられている。内輪4は、圧入および加締加工によりハブ輪3の小径段部3aに固定されている。内輪4は、転動列であるインナー側ボール列5およびアウター側ボール列6に予圧を付与している。内輪4は、インナー側端部にインナー側端面4bを有しており、アウター側端部にアウター側端面4cを有している。ハブ輪3のインナー側端部には、内輪4のインナー側端面4bに加締められた加締部3hが形成されている。なお、内輪4において、ハブ輪3の加締部3hが密接されている部位を内輪4側の加締部4dと呼ぶ。加締部4dは、インナー側端面4bの一部である。即ち、車輪用軸受装置1における加締部は、ハブ輪3側の加締部3hと内輪4側の加締部4dにより構成されている。
内輪4の外周面には、内側軌道面4aが形成されている。つまり、ハブ輪3のインナー側には、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。内輪4の内側軌道面4aは、外輪2のインナー側の外側軌道面2cと対向している。
転動列であるインナー側ボール列5とアウター側ボール列6とは、転動体である複数のボール7が保持器8によって保持されることにより構成されている。インナー側ボール列5は、内輪4の内側軌道面4aと、外輪2のインナー側の外側軌道面2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側ボール列6は、ハブ輪3の内側軌道面3cと、外輪2のアウター側の外側軌道面2dとの間に転動自在に挟まれている。
車輪用軸受装置1においては、外輪2と、ハブ輪3および内輪4と、インナー側ボール列5と、アウター側ボール列6とによって複列アンギュラ玉軸受が構成されている。なお、車輪用軸受装置1は複列円錐ころ軸受によって構成されていてもよい。
[予圧検査方法]
次に車輪用軸受装置1の予圧検査方法について説明する。図2に示すように、本実施形態における予圧検査方法は、車輪用軸受装置1の組立を行う途中で行っている。具体的には、予圧検査方法は、仮圧入工程(S01)、圧入工程(S02)、第1の内輪高さ測定工程(S03)、第1の軸受予圧値算出工程(S04)、なじみ工程(S05)、圧入後回転トルク測定工程(S06)、加締工程(S07)、加締後温度測定工程(S08)、第2の内輪高さ測定工程(S09)、押込み変化量推定工程(S10)、内輪押込み量推定工程(S11)、最終隙間算出工程(S12)、第2の軸受予圧値算出工程(S13)、加締後回転トルク測定工程(S14)、トルク増加量推定工程(S15)、加締後回転トルク補正工程(S16)、予圧変化量推定工程(S17)、第3の軸受予圧値算出工程(S18)、判定工程(S19)、およびインナー側シール部材装着工程(S20)を備えている。予圧検査方法の各工程について、以下に説明する。
(仮圧入工程)
図3に示すように、ハブ輪3は、軸方向が垂直方向となり、アウター側端面3gが下方に位置する姿勢で、支持台11に載置されている。支持台11にはハブ輪3のアウター側端面3gが接地している。支持台11に載置されたハブ輪3には、外輪2がインナー側ボール列5およびアウター側ボール列6を介して回転可能に装着されている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材10が嵌合されている。ハブ輪3と外輪2との間にはグリースが充填されている。
仮圧入工程(S01)においては、まず支持台11に載置されたハブ輪3の小径段部3aに、内輪4を仮圧入する。内輪4の仮圧入は、内輪4を上方から小径段部3aに圧入し、内輪4のアウター側端面4cがハブ輪3の肩部3eに当接する手前で圧入を停止することにより行われる。ここで、内輪4の圧入作業は、例えば、油圧シリンダ又はエアシリンダ等の押込装置を用いて所定の圧力を作用させた状態で行われる。内輪4の仮圧入が完了した時点では、軌道面(例えば外側軌道面2cおよび内側軌道面4a)と転動体(例えばボール7)との間には軸方向正隙間G0が存在している。この軸方向正隙間G0は、例えば外輪2の軸方向移動量から測定することができる。
仮圧入工程(S01)においては、軌道面(例えば外側軌道面2cおよび内側軌道面4a)と転動体(例えばボール7)との間の軸方向正隙間G0と、内輪4の仮圧入後における、ハブ輪3のアウター側端面3gと内輪4のインナー側端面4bとの間の軸方向寸法H0とを測定する。軸方向寸法H0は、ダイヤルゲージ等の計測器12により測定することができる。
(圧入工程)
仮圧入工程(S01)の後に圧入工程(S02)を実施する。図4に示すように、圧入工程(S02)においては、内輪4のアウター側端面4cがハブ輪3の肩部3eに当接する位置まで、内輪4を小径段部3aに圧入する。
(第1の内輪高さ測定工程)
圧入工程(S02)の後に第1の内輪高さ測定工程(S03)を実施する。図4に示すように、内輪4の小径段部3aへの圧入が完了した後に、内輪4の圧入後におけるハブ輪3のアウター側端面3gと内輪4のインナー側端面4bとの間の軸方向寸法である第1の内輪高さH1を測定する。また、軸方向寸法H0から第1の内輪高さH1を引いた値を、仮圧入工程(S01)において測定した軌道面と転動体間の軸方向正隙間G0から引くことで、内輪4の圧入後における軌道面と転動体間の軸方向負隙間G1を求める(G1=G0-(H0-H1))。
(第1の軸受予圧値算出工程)
第1の内輪高さ測定工程(S03)の後に第1の軸受予圧値算出工程(S04)を実施する。第1の軸受予圧値算出工程(S04)においては、圧入工程(S02)で求めた軸方向負隙間G1に基づいて、圧入工程後の軸受に付与されている第1の軸受予圧値P1を算出する。第1の軸受予圧値P1は、車輪用軸受装置1における軸方向負隙間と軸受予圧値との関係を、予め実験等により求めておき、この関係に圧入工程(S02)で求めた軸方向負隙間G1を当て嵌めることにより算出する。なお、この軸方向負隙間と軸受予圧値との関係は、車輪用軸受装置1の仕様毎に求めることができる。
(なじみ工程)
第1の軸受予圧値算出工程(S04)の後になじみ工程(S05)を実施する。なじみ工程(S05)においては、内輪4が圧入されたハブ輪3と、外輪2とを相対的に回転させることにより、ハブ輪3と外輪2との間に充填されているグリースをインナー側ボール列5およびアウター側ボール列6のボール7になじませる。なじみ工程(S05)においては、外輪2を固定しておいて、ハブ輪3を回転させてもよいし、ハブ輪3を固定しておいて外輪2を回転させてもよい。
なじみ工程(S05)を実施することで、ハブ輪3と外輪2とを相対的に回転させたときに、グリースとボール7との間に生じる抵抗を一定にすることができる。これにより、後に実施される圧入後回転トルク測定工程(S06)および加締後回転トルク測定工程(S14)において車輪用軸受装置1の回転トルクを測定したときに、測定した回転トルクにばらつきが生じることを抑制することが可能となる。
(圧入後回転トルク測定工程)
なじみ工程(S05)の後に圧入後回転トルク測定工程(S06)を実施する。図4に示すように、圧入後回転トルク測定工程(S06)においては、小径段部3aに内輪4が圧入されたハブ輪3と、外輪2とを相対的に回転させたときの第1の回転トルクTaを、トルク測定器13により測定する。圧入後回転トルク測定工程(S06)においては、外輪2を固定しておいて、ハブ輪3を回転させてもよいし、ハブ輪3を固定しておいて外輪2を回転させてもよい。
ハブ輪3を回転させた場合は、外輪2を回転させた場合よりもインナー側ボール列5およびアウター側ボール列6におけるボール7の公転速度が遅くなり、ハブ輪3の回転速度が変化したときに測定される回転トルク値のばらつきが小さくなるため、回転トルク測定工程では、ハブ輪3を回転させるほうが好ましい。なお、ハブ輪3を回転させる場合には、ハブ輪3が載置されている支持台11を回転させることにより、ハブ輪3を回転させることができる。
また、圧入後回転トルク測定工程(S06)においては、軸受の起動トルクではなく、回転トルクを測定している。図5に示すように、起動トルクは軸受の回転を開始したときの初動トルクのピーク値であるが、時間の経過に伴って低下していき、経時的な変化が大きい。よって、繰り返し再現性に乏しい。これに対し、回転トルクは軸受が回転を開始した後のトルクであり、経時的な変化が殆どなく一定の値を示す。従って、圧入後回転トルク測定工程(S06)においては、回転トルクである第1の回転トルクTaを測定することにより、軸受のトルク値を高精度に測定することが可能となっている。
図6に示すように、ハブ輪3と外輪2とを相対的に回転させたときの軸受の回転トルクは、ハブ輪3または外輪2の回転数が一定値以上の範囲においては回転数が増えるに従って増加していくが、ハブ輪3または外輪2の回転数が極小さいときには回転数が上昇するにつれて減少し、その後に増加転じている。つまり、軸受の回転トルクは、回転数の上昇に伴って減少から増加に転じる領域があり、その領域においては、回転数の変化に対する回転トルクの変動度合いが小さくなっている。
圧入後回転トルク測定工程(S06)においては、ハブ輪3または外輪2は、測定される回転トルクにばらつきが生じないように一定回転数で回転させている。また、ハブ輪3または外輪2の回転数は、回転トルクが減少から増加に転じる領域における回転数N1~N2の範囲に設定している。これにより、第1の回転トルクTaの測定中に仮に回転数が変化したとしても、回転トルクの変動を小さくすることが可能である。
圧入後回転トルク測定工程(S06)においては、内方部材3、4と外方部材2との間に動摩擦力が発生している状態で回転トルクを測定している。具体的には、内方部材3、4と転動体7との間、ハブ輪3とアウター側シール部材10との間及び外輪2と転動体7、アウター側シール部材10との間に動摩擦力が発生している状態で、回転トルクの測定を行っている。一般的に、動摩擦係数は、静摩擦係数と比較して小さく、かつ、ばらつきが小さいので、回転トルクを高精度に測定することができる。
本実施形態では、回転数の範囲の下限値となる回転数N1は、動摩擦力が生じている状態で回転トルクの測定が可能となる10回転/minに設定される。回転数の範囲の上限値となる回転数N2は、ハブ輪3と外輪2との間に充填されるグリースの撹拌抵抗が極力小さくなる回転数である60回転/minに設定される。ハブ輪3または外輪2の回転数は、10回転/min~60回転/minの範囲の中でも、回転数の変化に対する回転トルクの変動が最も小さくなる10回転/min程度に設定することが好ましい。
圧入後回転トルク測定工程(S06)においては、ハブ輪3または外輪2を、回転数の変化に対する回転トルクの変動度合いが小さくなる、小さな回転数N1~N2の範囲にて回転させることで、仮にハブ輪3または外輪2の回転数が変化した場合でも、回転トルクの変動を最小限に抑えることができ、回転トルクを高精度で測定することが可能となっている。
また、圧入後回転トルク測定工程(S06)においては、外輪2とハブ輪3とによって形成された環状空間のアウター側開口端にアウター側シール部材10が嵌合された状態で、車輪用軸受装置1の回転トルクが測定されている。ここで、アウター側シール部材10は、内輪4の固定のために加締められるハブ輪3の小径段部3aとは軸方向反対側に位置しているため、次に述べる加締工程(S07)において、仮に内側軌道面4a等に異常が生じても、アウター側シール部材10のシールトルクに影響が生じ難く、車輪用軸受装置1の回転トルクにも変化が生じ難い。
(加締工程)
圧入後回転トルク測定工程(S06)の後に加締工程(S07)を実施する。加締工程(S07)においては、ハブ輪3における小径段部3aのインナー側端部を内輪4のインナー側端面4bに加締める加締加工を行う。加締加工は、例えば揺動加締め加工により行うことができる。
(加締後温度測定工程)
加締工程(S07)の後に加締後温度測定工程(S08)を実施する。加締後温度測定工程(S08)においては、ハブ輪3における小径段部3aのインナー側端部を内輪4のインナー側端面4bに加締めた加締部3h・4dの温度t1を測定する。温度t1の測定は、温度測定器14によって行う。
加締後温度測定工程(S08)における加締部3h・4dの温度測定は、例えば、揺動加締め加工を行うための加締装置に対して、組み立て途中の車輪用軸受装置1を移載する移載装置の一部に加締部3h・4dの温度測定を行う温度測定器14を設けておくことが好ましい。このような構成とすれば、組み立て途中の車輪用軸受装置1を加締加工後に加締装置から次工程に向けて移載する工程の途中で効率よく温度を測定することができる。温度測定器14としては、接触式および非接触式のものを用いることができる。なお、加締後温度測定工程(S08)において温度測定を行う部位は、加締加工による温度上昇の影響を適切に捉えることができる部位であればよく、内輪4のインナー側端面4bとしてもよい。
そして、加締後温度測定工程(S08)の後に、第2の内輪高さ測定工程(S09)および加締後回転トルク測定工程(S14)を実施する。なお、第2の内輪高さ測定工程(S09)と加締後回転トルク測定工程(S14)の実施タイミングの先後は問わない。
ここではまず、第2の内輪高さ測定工程(S09)に続く一連の工程(S09)~(S13)を説明する。各工程(S09)~(S13)は、所謂すきま法による予圧検査方法に係る工程である。
(第2の内輪高さ測定工程)
加締後温度測定工程(S08)の後に第2の内輪高さ測定工程(S09)を実施する。第2の内輪高さ測定工程(S09)においては、図7に示すように、加締加工後におけるハブ輪3のアウター側端面3gと内輪4のインナー側端面4bとの間の軸方向寸法である第2の内輪高さH2を測定する。そして、第1の内輪高さH1から第2の内輪高さH2を引いた値である内輪4の押込み量Dを算出する。(D=H1-H2)。内輪4の押込み量Dは、内輪4の圧入完了後から小径段部3aの加締加工完了後までの内輪4の軸方向の移動量を示すものである。
(押込み変化量推定工程)
第2の内輪高さ測定工程(S09)の後に押込み変化量推定工程(S10)を実施する。押込み変化量推定工程(S10)においては、加締部3h・4dの温度t1に基づいて、加締加工時の温度上昇に起因する内輪4の押込み量Dの変化量である押込み量減少量ΔDを推定する。加締加工後の車輪用軸受装置1においては、温度上昇によりハブ輪3および内輪4が膨張するため、内輪4の押込み量Dは、温度上昇がない場合に比べて小さくなっている。この小さくなっている分の押込み量Dが、押込み量減少量ΔDである。押込み量減少量ΔDは、例えば加締部3h・4dの温度t1と、押込み量減少量ΔDとの関係を予め実験等により求めておき、この関係に測定した温度t1を当て嵌めることにより推定することができる。なお、この加締部3h・4dの温度t1と、押込み量減少量ΔDとの関係は、車輪用軸受装置1の仕様毎に求めることができる。
(内輪押込み量推定工程)
押込み変化量推定工程(S10)の後に内輪押込み量推定工程(S11)を実施する。内輪押込み量推定工程(S11)においては、押込み量減少量ΔDに基づいて内輪4の押込み量Dを補正し、補正後の押込み量Dである補正後押込み量Dhを推定する。(Dh=D+ΔD)
(最終隙間算出工程)
内輪押込み量推定工程(S11)の後に最終隙間算出工程(S12)を実施する。最終隙間算出工程(S12)においては、加締加工前の軸方向負隙間G1から内輪4の補正後の押込み量Dhより算出される隙間減少量ΔGを減じて最終隙間G2を算出する。(G2=G1-ΔG)隙間減少量ΔGは、押込み量Dと隙間減少量ΔGとの関係を予め実験等により求めておき、この関係に測定した補正後の押込み量Dhを当て嵌めることにより推定することができる。なお、この押込み量Dと隙間減少量ΔGとの関係は、車輪用軸受装置1の仕様毎に求めることができる。
(第1の軸受予圧値算出工程)
最終隙間算出工程(S12)の後に第2の軸受予圧値算出工程(S13)を実施する。第2の軸受予圧値算出工程(S13)においては、最終隙間G2に基づいて、加締加工後の軸受に付与されている軸受予圧値P2をすきま法により算出する。軸受予圧値P2は、車輪用軸受装置1における最終隙間と軸受予圧値との関係を、予め実験等により求めておき、この関係に最終隙間G2を当て嵌めることにより算出する。なお、この最終隙間と軸受予圧値との関係は、車輪用軸受装置1の仕様毎に求めることができる。
次に、加締後回転トルク測定工程(S14)に続く一連の工程(S14)~(S18)を説明する。各工程(S14)~(S18)は、所謂トルク法による予圧検査方法に係る工程である。なお、前述したすきま法による予圧検査方法に係る一連の工程(S09)~(S13)に含まれる各工程と、以下で説明するトルク法による予圧検査方法に係る一連の工程(S14)~(S18)に含まれる各工程の間では、実施タイミングの先後は関係なく、各一連の工程は平行して行うことができる。
(加締後回転トルク測定工程)
加締後温度測定工程(S08)の後には、加締後回転トルク測定工程(S14)を実施する。加締後回転トルク測定工程(S14)においては、圧入後回転トルク測定工程(S06)と同様に、内方部材3、4と外方部材2との間に動摩擦力が発生している状態で回転トルクを測定している。加締後回転トルク測定工程(S14)においては、小径段部3aが内輪4に加締められたハブ輪と外輪とを相対的に回転させたときの第2の回転トルクTbを、トルク測定器13により測定する。但し、圧入後回転トルク測定工程(S06)の場合と同様に、ハブ輪3を回転させた方が、ハブ輪3の回転速度が変化したときに測定される回転トルク値のばらつきが小さくなるため好ましい。
加締後温度測定工程(S08)は、加締後回転トルク測定工程(S14)の直前に実施することが好ましく、加締後温度測定工程(S08)から加締後回転トルク測定工程(S14)を行うまでの時間をできる限り短くすることが好ましい。加締後温度測定工程(S08)から加締後回転トルク測定工程(S14)を行うまでの時間を短くすることで、温度降下を少なくすることができ、これにより、後述する第3の軸受予圧値P3の算出精度を高めることができる。
(トルク増加量推定工程)
加締後回転トルク測定工程(S14)の後にトルク増加量推定工程(S15)を実施する。トルク増加量推定工程(S15)においては、加締後温度測定工程(S08)で測定した加締部3h・4dの温度に基づいて、加締加工時の温度上昇に起因する第2の回転トルクTbの増加量ΔTbを推定する。
この場合、増加量ΔTbは、図8に示すように、加締部3h・4dの温度と第2の回転トルクTbの増加量との関係(線Q)を予め実験等により求めておき、この関係に加締部3h・4dの温度t1を当て嵌めることにより推定する。なお、この加締部3h・4dの温度と第2の回転トルクTbの増加量との関係は、車輪用軸受装置1の仕様毎に求めることができる。
(加締後回転トルク補正工程)
トルク増加量推定工程(S15)の後に加締後回転トルク補正工程(S16)を実施する。加締後回転トルク補正工程(S16)においては、トルク増加量推定工程(S15)で推定した第2の回転トルクTbの増加量ΔTbに基づいて、第2の回転トルクTbを補正する。具体的には、第2の回転トルクTbの値から増加量ΔTbを減じて、補正後の第2の回転トルクTbである第3の回転トルクTc(Tc=Tb-ΔTb)を算出する。
(予圧変化量推定工程)
加締後回転トルク補正工程(S16)の後に予圧変化量推定工程(S17)を実施する。予圧変化量推定工程(S17)においては、図9に示すような、軸受予圧と回転トルクとの関係(線R)を予め実験等により求めておき、この関係に第1の回転トルクTaと第3の回転トルクTcを当て嵌めて差分トルクΔTを算出する。そして、予圧変化量推定工程(S17)においては、算出した差分トルクΔTに基づいて、図9に示す関係より加締加工に起因する予圧変化量ΔPを推定する。
この場合、予圧変化量ΔPは、図9に示すように、車輪用軸受装置1の軸受予圧と軸受の回転トルクとの関係(曲線Q)を予め実験等により求めておき、この関係に差分トルクΔTを当て嵌めることにより算出する。なお、この軸受予圧と軸受の回転トルクとの関係(線R)は、車輪用軸受装置1の仕様毎に求めることができる。
(第3の軸受予圧値算出工程)
予圧変化量推定工程(S17)の後には、第3の軸受予圧値算出工程(S18)を実施する。第3の軸受予圧値算出工程(S18)においては、第1の軸受予圧値P1に予圧変化量ΔPを加算して、第3の軸受予圧値P3を算出する。
(判定工程)
第2の軸受予圧値算出工程(S13)と、第3の軸受予圧値算出工程(S18)が完了した後に判定工程(S19)を実施する。判定工程(S19)においては、1)第2の軸受予圧値P2が所定の閾値内であるか否か、2)第3の軸受予圧値P3が所定の閾値内であるか否か、3)第2の軸受予圧値P2と第3の軸受予圧値P3の相対差が所定の閾値内であるか否か、の3つの条件に基づいて、車輪用軸受装置1に付与された予圧の適否を判定する。
本実施形態に係る予圧検査方法においては、第2の軸受予圧値P2を算出する際に、加締加工時の温度上昇を考慮して最終隙間G3を補正している。このため、すきま法に基づいて精度よく第2の軸受予圧値P2を算出することが可能になっており、判定工程(S19)においては、第2の軸受予圧値P2に基づく判定精度が高められている。
また、本実施形態に係る予圧検査方法においては、圧入後回転トルクと加締後回転トルクに基づいて第3の軸受予圧値P3を算出する際に、加締加工時の温度上昇を考慮して予圧変化量ΔPを補正している。このため、トルク法に基づいて精度よく第3の軸受予圧値P3を算出することが可能になっており、判定工程(S19)においては、第3の軸受予圧値P3に基づく判定精度が高められている。
さらに、本実施形態に係る予圧検査方法においては、所謂すきま法により算出された第2の軸受予圧値P2と、所謂トルク法により算出された第3の軸受予圧値P3とを照合して、両者が予め設定した相対差の範囲内に収まることを確認することで、車輪用軸受装置1の軸受に付与されている予圧値をさらに高精度に検証することが可能となっている。その結果、判定工程(S19)において、車輪用軸受装置1の予圧範囲が適正か否かを従来よりも高精度に検証することができるため、軸受寿命が確保された車輪用軸受装置1を安定的に供給することができる。
(インナー側シール部材装着工程)
判定工程(S19)の後にインナー側シール部材装着工程(S20)を実施することで、車輪用軸受装置1の組立工程が完了する。すなわち、インナー側シール部材装着工程(S20)は、車輪用軸受装置1の組立方法の一部である。図10に示すように、インナー側シール部材装着工程(S20)においては、外輪2のインナー側開口部2aにインナー側シール部材9を嵌合することにより、外輪2のインナー側端部と内輪4のインナー側端部との間にインナー側シール部材9を装着する。
インナー側シール部材9を加締工程(S07)の前に装着すると、加締工程(S07)におけるハブ輪3の加締め度合等によってインナー側シール部材9の外輪2および内輪4との間の摺動抵抗が変化する。また、加締工程(S07)の後であっても加締後回転トルク測定工程(S14)の前にインナー側シール部材9を装着すると、インナー側シール部材9の装着状態によってインナー側シール部材9の外輪2および内輪4との間の摺動抵抗が変化する。
従って、インナー側シール部材9を加締工程(S07)または加締後回転トルク測定工程(S14)の前に装着すると、加締後回転トルク測定工程(S14)において測定される第2の回転トルクTbのばらつきに影響を及ぼすおそれがある。同様に、圧入後回転トルク測定工程(S06)の前にインナー側シール部材9を装着した場合は、インナー側シール部材9の装着状態によって、圧入後回転トルク測定工程(S06)において測定される第1の回転トルクTaのばらつきに影響を及ぼすおそれがある。
しかし、本実施形態においては、加締後回転トルク測定工程(S14)の後にインナー側シール部材装着工程(S20)を実施するようにしているので、圧入後回転トルク測定工程(S06)および加締後回転トルク測定工程(S14)おいて車輪用軸受装置1の第1の回転トルクTaおよび第2の回転トルクTbを測定する際に、インナー側シール部材9の影響による回転トルクのばらつきが生じることがなく、車輪用軸受装置1の回転トルクを高精度に測定することが可能となっている。
なお、本実施形態においては従動輪用の車輪用軸受装置1について説明したが、本予圧検査方法は、ハブ輪を加締加工する仕様の駆動輪用の車輪用軸受装置にも適用することができる。
(加締前温度測定工程)
車輪用軸受装置1の予圧検査方法においては、図11に示すように、加締工程(S07)の前に加締前温度測定工程(S21)を実施すると好ましい。加締前温度測定工程(S21)においては、図12に示すように、ハブ輪3における小径段部3aのインナー側端部を内輪4のインナー側端面4bに加締める前の加締部3h・4dに対応する部位の温度t0を測定する。
図2に示した車輪用軸受装置1の予圧検査方法においては、加締めた後の加締部3h・4dの温度t1のみを測定している。この場合、車輪用軸受装置1の加締める前の加締部3h・4dに対応する部位の温度は、車輪用軸受装置1の周囲温度(常温)に等しいものとして、加締め後における加締部3h・4dの温度上昇を算出している。しかしながら、車輪用軸受装置1の周囲温度は、検査装置の設置環境(国・地域・季節・時刻等)の差異により変化する。
一方、図11に示した車輪用軸受装置1の予圧検査方法のように、加締加工前の加締部3h・4dに対応する部位の温度を正確に把握する構成として、加締加工後における加締部3h・4dの温度上昇値を算出すれば、車輪用軸受装置1の予圧検査の精度をさらに高めることが可能になる。
また、図13に示すように、加締前温度測定工程(S21)は、第1の内輪高さ測定工程(S03)と同時に行うとより好ましい。このような構成は、第1の内輪高さ測定工程(S03)において第1の内輪高さH1を測定するための測定装置の一部に温度測定器14を設ける構成とすることによって容易に実現することができる。このような構成とすれば、組み立て途中の車輪用軸受装置1について、第1の内輪高さH1を測定すると同時に、加締部3h・4dに対応する部位の温度を測定することが可能になり、検査精度の向上を図りながら、一連の予圧検査の工程を短縮させることができる。なお、温度測定器としては、接触式および非接触式のものを用いることができる。
さらに、図13に示すように、加締前温度測定工程(S21)を、なじみ工程(S05)および圧入後回転トルク測定工程(S06)よりも前に行うことで、なじみ工程(S05)や圧入後回転トルク測定工程(S06)の実施により生じる車輪用軸受装置1の温度変化の影響も排除することができる。これにより、加締前温度測定工程(S21)を、なじみ工程(S05)および圧入後回転トルク測定工程(S06)の後に行った場合(図11参照)に比べて、軸受予圧値の推定精度をよりよくすることができる。
さらに、図13に示すように、加締後温度測定工程(S08)は、第2の内輪高さ測定工程(S09)と同時に行うとより好ましい。上述したように、第1の内輪高さ測定工程(S03)において第1の内輪高さH1を測定するための測定装置の一部に温度測定器14を設ける構成とすれば、組み立て途中の車輪用軸受装置1について、第2の内輪高さH2を測定すると同時に、加締部3h・4dの温度を測定することも可能になる。これにより、一連の予圧検査の工程をさらに短縮させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 車輪用軸受装置
2 外輪
2c (インナー側の)外側軌道面
2d (アウター側の)外側軌道面
3 ハブ輪
3a 小径段部
3c 内側軌道面
4 内輪
4a 内側軌道面
5 インナー側ボール列
6 アウター側ボール列
7 ボール
9 インナー側シール部材
G1 軸方向負隙間
G2 最終隙間
P1 第1の軸受予圧値
P2 第2の軸受予圧値
P3 第3の軸受予圧値
S02 圧入工程
S03 第1の内輪高さ測定工程
S04 第1の軸受予圧値算出工程
S06 圧入後回転トルク測定工程
S07 加締工程
S08 加締後温度測定工程
S09 第2の内輪高さ測定工程
S11 内輪押込み量推定工程
S12 最終隙間算出工程
S13 第2の軸受予圧値算出工程
S14 加締後回転トルク測定工程
S15 トルク増加量推定工程
S16 加締後回転トルク補正工程
S17 予圧変化量推定工程
S18 第3の軸受予圧値算出工程
S19 判定工程
S21 加締前温度測定工程
Ta 第1の回転トルク
Tb 第2の回転トルク
ΔT 差分トルク
ΔP 予圧変化量
D (内輪の)押込み量
ΔD 押込み量減少量
Dh 補正後の押込み量

Claims (6)

  1. 内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、
    外周に軸方向に延びる小径段部を有したハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された内輪からなり、前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、
    前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
    を備えた車輪用軸受装置の予圧検査方法であって、
    前記ハブ輪の前記小径段部に対して、前記内輪を、軸方向において前記内輪が前記ハブ輪に当接する位置まで圧入する圧入工程と、
    前記圧入工程後における前記ハブ輪のアウター側端部から前記内輪のインナー側端部までの第1の内輪高さを測定する第1の内輪高さ測定工程と、
    前記圧入工程後における前記両軌道面と前記転動体との軸方向負隙間を測定し、前記軸方向負隙間に基づいて前記車輪用軸受装置の軸受予圧値を算出する第1の軸受予圧値算出工程と、
    前記圧入工程後に前記内方部材と前記外方部材とを相対的に回転させたときの前記車輪用軸受装置の圧入後回転トルクを測定する圧入後回転トルク測定工程と、
    前記第1の内輪高さ測定工程と前記圧入後回転トルク測定工程の後で、前記小径段部のインナー側端部を前記内輪に加締める加締工程と、
    前記加締工程後における前記小径段部と前記内輪との加締部の温度を測定する加締後温度測定工程と、
    前記加締工程後における前記ハブ輪のアウター側端部から前記内輪のインナー側端部までの第2の内輪高さを測定する第2の内輪高さ測定工程と、
    前記第1の内輪高さと前記第2の内輪高さの差分より前記内輪の押込み量を算出するとともに、前記加締部の温度に基づいて前記内輪の押込み量を補正し、前記ハブ輪に対する補正後の前記内輪の押込み量を推定する内輪押込み量推定工程と、
    推定した補正後の前記内輪の押込み量に基づいて前記両軌道面と前記転動体の隙間減少量を算出するとともに、前記隙間減少量と前記軸方向負隙間に基づいて前記内輪と前記ハブ輪の最終隙間を算出する最終隙間算出工程と、
    算出した前記最終隙間に基づいて前記車輪用軸受装置の第2の軸受予圧値を算出する第2の軸受予圧値算出工程と、
    前記加締工程後に前記内方部材と前記外方部材とを相対的に回転させたときの前記車輪用軸受装置の加締後回転トルクを測定する加締後回転トルク測定工程と、
    前記加締工程後の前記加締部の温度に基づいて前記加締後回転トルクにおける温度変化に起因するトルク増加量を推定するとともに、前記加締後回転トルクから前記トルク増加量を減じて前記加締後回転トルクを補正する加締後回転トルク補正工程と、
    前記圧入後回転トルクと補正後の前記加締後回転トルクとの差分トルクを算出するとともに、前記差分トルクに基づいて加締加工に起因する予圧変化量を推定する予圧変化量推定工程と、
    前記第1の軸受予圧値に前記予圧変化量を加えて第3の軸受予圧値を算出する第3の軸受予圧値算出工程と、
    前記第2の軸受予圧値と前記第3の軸受予圧値がそれぞれ所定の閾値内であるか否かと、前記第2の軸受予圧値と前記第3の軸受予圧値の相対差が所定の閾値内であるか否かと、に基づいて前記車輪用軸受装置に付与された予圧の適否を判定する判定工程と、を備えることを特徴とする車輪用軸受装置の予圧検査方法。
  2. 前記加締部の温度を、
    該加締部を構成する前記内輪の温度とした請求項1に記載の車輪用軸受装置の予圧検査方法。
  3. 前記加締工程の前に前記加締部の温度を測定する加締前温度測定工程をさらに備え、
    前記加締工程前の前記加締部に対応する部位の温度と前記加締工程後の前記加締部の温度との温度変化量を算出し、
    前記内輪押込み量推定工程および前記トルク増加量推定工程における前記加締部の温度として前記温度変化量を用いる請求項1または請求項2に記載の車輪用軸受装置の予圧検査方法。
  4. 前記加締前温度測定工程を、前記第1の内輪高さ測定工程において同時に行う請求項3に記載の車輪用軸受装置の予圧検査方法。
  5. 前記加締後温度測定工程を、前記第2の内輪高さ測定工程において同時に行う請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車輪用軸受装置の予圧検査方法。
  6. 前記加締後温度測定工程を、前記加締後回転トルク測定工程の直前に行う請求項1~請求項5の何れか一項に記載の車輪用軸受装置の予圧検査方法。
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