JP2022034446A - 乳性組成物及びこれを含む加工食品、並びに乳性組成物の光酸化防止方法 - Google Patents

乳性組成物及びこれを含む加工食品、並びに乳性組成物の光酸化防止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光酸化を防止することにより、該光酸化による臭いの発生が抑制された乳性組成物及びこれを含む加工食品、並びに乳性組成物の光酸化を防止する方法を提供することを課題とする。【解決手段】乳及び/又は乳製品と、フマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の塩とを含む、乳性組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、乳性組成物及びこれを含む加工食品、並びに乳性組成物の光酸化防止方法に関する。
コンビニエンスストアやスーパー等の食品販売店では、ケーキやプリン等の乳加工食品等の加工食品が売られている。食品販売店において、該加工食品は、加工食品自体が露出された状態や、加工食品が包装容器中に保持された状態、加工食品がショーケースで囲われた状態で、陳列棚に陳列される。該包装容器は、消費者に包装容器中の加工食品の外観を見てもらうため、中身が見えるように透明、または半透明の樹脂フィルムでパッケージされていることが多く、また、該ショーケースも、同様の理由から透光性を有するものが用いられる。
食品販売店において食品棚等に陳列される商品は、店外からの太陽光の照射や店内の照明器具からの光の照射を受ける。この場合、上述した状態で陳列された加工食品は、加工食品自体がこれらの光の照射を受けてしまう。これにより、光酸化による加工食品の退色や、オフフレーバーの発生による品質の劣化が生じ、さらに、該光酸化反応により臭気成分が生成され、独特な臭いを消費者に与えてしまう。この問題に対し、加工食品を包装する容器として遮光性のあるものを用いたり、加工食品自体をプラスチック等の材料からなる商品見本に変更したりする対策が講じられているが、商品陳列上の制約や、販売形態により、必ずしもこのような対策が適用できるわけではない。このような背景から、加工食品の光酸化の劣化を防止するための技術開発が進められている。
近年、加工食品の中でも、乳、並びにクリーム、バター、又はチーズ等の乳製品(乳及び乳製品を総称して「乳製品等」、「乳成分」とも称する。)に含まれるリボフラビン(ビタミンB2)の光酸化による臭いの発生を抑制する研究が進められている。
特許文献1及び2には、乳成分中のリボフラビンの含有量を低減させることにより光酸化の発生を抑制させる技術が開示されており、具体的には、特許文献1には、乳製品等から分離、分画された乳素材の水層からリボフラビンを選択的、効率的に除去し低減する技術が開示され、特許文献2には、脱脂乳を合成吸着樹脂と接触させることにより、リボフラビンを選択的に吸着除去し、主要成分が処理前とほぼ変わらない脱脂乳類が得られる技術が開示されている。
非特許文献1には、乳脂原料素材に対して特定の処理を行うことにより、具体的には遠心分離処理を行うことにより、アイスクリーム中のリボフラビンを効果的に除去する技術が開示されている。
特許文献3には、特定の成分を乳成分に添加することにより光酸化を抑制する技術が開示されており、具体的には、カロテノイド類、トコフェロール類、及び茶抽出物を乳成分に添加する方法が開示されている。
特許公開2001-149006号公報 特許公開2008-148618号公報 特許公開2015-104384号公報
塩田 誠、「アイスクリームの光酸化防止技術の開発」、日本食品保蔵科学会誌、2006年、VOL.32、No.4、p.159-168
上述の特許文献1及び2、並びに非特許文献1には、乳成分中のリボフラビンの含有量を減少させる方法が開示されているが、製造コストや設備が煩雑で現実的ではなく、また、効果が不十分なものであった。
一方で、上述の特許文献3に開示されるように、リボフラビンを含む乳成分の光酸化を抑制するために、特定の物質を含有させる方法の検討も進められているが、乳成分の種類によっては含有させることが好まれない物質も多様に存在するため、現在でも、光酸化を抑制できる物質に関する技術に対するニーズは強く、さらなる検討が期待されている。
さらには、光を直接遮断する方法等も検討されてきたが、乳成分を含む加工食品を販売するコンビニエンスストアやスーパーマーケット等の場において全ての該加工食品の光を遮断することは現実的に不可能であった。
そこで本発明は、光酸化を防止することにより、該光酸化による臭いの発生が抑制された乳性組成物及びこれを含む加工食品、並びに乳性組成物の光酸化を防止する方法を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、乳及び/又は乳製品を含む乳性組成物中で特定の塩が存在する環境下で該加工食品に光を照射することにより臭気が発生することを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]乳及び/又は乳製品と、フマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の塩とを含む、乳性組成物。
[2]10℃におけるpHが6.8以上である、[1]に記載の乳性組成物。
[3]前記塩が乳酸、酢酸、クエン酸、りんご酸、フィチン酸、炭酸、重炭酸、リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩である、[1]又は[2]に記載の乳性組成物。
[4]前記塩が、クエン酸三ナトリウム及び/又は重炭酸ナトリウムである、[3]に記載の乳性組成物。
[5]さらに酸化防止剤を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の乳性組成物。
[6]前記酸化防止剤が、ラジカル消去能または1重項酸素消去能を有する、[5]に記載の乳性組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の乳性組成物を含む加工食品。
[8]乳及び/又は乳製品を含む乳性組成物を準備するステップ、及び
前記乳性組成物にフマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の塩を添加する塩添加ステップ、
を含む、乳性組成物の光酸化防止方法。
本発明によれば、光酸化を防止することにより、該光酸化による臭いの発生が抑制された乳性組成物及びこれを含む加工食品、並びに乳性組成物の光酸化を防止する方法を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
<乳性組成物>
本発明の一実施形態である乳性組成物(単に「乳性組成物」とも称する)は、乳及び/又は乳製品と、フマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の塩とを含む、乳性組成物である。
本明細書において、乳及び/又は乳製品(以下、乳及び乳製品を総称して「乳製品等」、「乳成分」とも称する。)とは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(通常、「乳等省令」と略称する。)で定められるものであってよく、また、これに準ずるものであってもよいが、特には乳等省令で定められるものである。
具体的に、「乳」とは、乳等省令第2条第1項で定められる生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、又は加工乳であり、「乳製品」とは、同条第12項で定められるクリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、調製液状乳、発酵乳、乳酸菌飲料(無脂乳固形分3.0%以上を含むものに限る。)、又は乳飲料である。
乳製品等にはリボフラビン(ビタミンB2)が含まれるが、該リボフラビンは、下記反応式(1)に従い、酸化還元反応を示す。下記反応式(1)のリボフラビンの酸化還元反応に伴い酸素(O)が、一重項酸素()や酸化物イオン(通常「スーパーオキシド」とも称される。)(O )になり、これらが変化した酸素が乳製品等中の物質(脂質やアミノ酸、鉄等)と反応し、過酸化物の生成やラジカルの発生を起こす。本発明者らは、該過酸化物やラジカルは、さらに反応する事で、過酸化物の分解が起こり、臭気発生物質となることを見出した。
Figure 2022034446000001
さらに、本発明者らは、リボフラビンがpHの変化により異なる反応を示すことに着目した。具体的には、下記反応式(2)で示すように、酸性環境下で光照射を行うとリボフラビンはルミクロームになり、また、塩基性環境下で光照射を行うとリボフラビンはルミフラビンとなる。
Figure 2022034446000002
本発明者らは、上記反応式(2)のリボフラビンの反応に着目し、特定の塩の添加によるpHの変化を利用することにより、上記反応式(1)のリボフラビンの酸化還元反応を抑制し、ひいては食品中の脂質等の酸化を防止することができると推測している。
本実施形態に係る乳性組成物には、乳製品等に含まれているリボフラビンやアミノ酸等の成分、及び上記の特定の塩が含有されているが、発明の効果が得られる範囲で、その他の任意の物質(成分)を含有させることができる。乳性組成物に含有し得る物質(成分)を以下に説明するが、これらの材料の入手方法は特段制限されず、公知の製造方法により製造されたものであっても、市販されているものであってもよい。
[乳及び/又は乳製品(乳製品等)]
乳及び/又は乳製品(乳製品等)については、上述したように、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で定められるものを用いることができ、その種類は特段制限されないが、塩の添加により容易にpHを調整できる点から、牛乳、クリームが好ましく、空気を含ませたホイップの形態(例えば、ホイップクリーム)で提供され、遮光されない状況で陳列されることが多いという点から、クリームがより好ましい。なお、乳製品等は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種類以上を任意の種類及び割合で併用してもよい。
乳性組成物中の乳製品等の含有量は、用途に応じて適宜設定し得るが、光酸化の抑制効果が充分に得られる観点から、通常0.5重量%以上であり、3重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましく、90重量%以上であることが特に好ましく、また、通常99.9重量%以下であり、99重量%以下であることが好ましく、95重量%以下であることがより好ましく、92重量%以下であることがさらに好ましい。
[リボフラビン(ビタミンB2)]
乳製品等に含まれるリボフラビン(ビタミンB2)の態様は特段制限されず、公知のものを使用することができる。なお、リボフラビンは栄養素のひとつであり、乳製品等以外にも、肉類や卵、葉菜類、全粒穀物等に含まれる。また、リボフラビンは、乳製品等に含まれる成分であるが、これとは別に外部から添加されていてもよい。
乳性組成物中のリボフラビンの含有量は、特段制限されないが、光酸化は、わずかな量のリボフラビンによってもひきおこされるという観点から、通常0.001ppm以上であり、0.01ppmであることが好ましく、0.1ppm重量%以上であることがより好ましく、1ppm重量%以上であることがさらに好ましく、また、通常1000ppm以下重量%以下であり、100ppm以下重量%以下であることが好ましく、10ppm以下重量%以下であることがさらに好ましい。
上述のリボフラビンの構造や含有量の特定は、栄養表示基準等で示されている方法、すなわち試料を塩酸抽出した後、酵素(タカヂアスターゼ)処理して有利のリボフラビンとし、逆相液体クロマトグラフィー(HPLC)-蛍光法で測定することができる。
また、以下に示すリボフラビン以外の成分の構造や含有量についても、特定可能である場合には、同様の方法を適用することができる。また、乳性組成物に含まれる各成分の含有量は、製造時の原料の仕込み量から算出することもできる。
リボフラビンは、食品中に広く含まれるが、生体中においてはリン酸エステル体として存在する。リボフラビンの含有量は、常法に基づき、そのエステル構造を分解し遊離体のリボフラビンとして求めることができる。
[アミノ酸]
乳製品等に含まれるアミノ酸の態様は特段制限されず、公知のものを使用することができる。また、アミノ酸は、乳製品等に含まれる成分であるが、これとは別に外部から添加されていてもよい。
アミノ酸の種類は、特段制限されず、システイン、メチオニン、リシン、アルギニン、プロリン、グルタミン酸等が挙げられるが、酸化の受けやすさの観点から、メチオニン、システイン、リシン、アルギニンが好ましく、特にメチオニンであることが好ましい。メチオニンは、臭気の原因の一種である硫黄含有物質を発生させるが、リボフラビンの酸化還元反応の抑制により、該硫黄含有物質の発生を抑制することができると考えられる。これらのアミノ酸は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種類以上を任意の種類及び割合で併用してもよい。
乳性組成物中のアミノ酸の含有量は、特段制限されないが、光酸化反応に十分に影響を与えうるという観点から、通常5ppm以上であり、10ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがさらに好ましく、300ppm以上であることが特に好ましく、500ppm以上であることがことさら特に好ましく、1000ppm以上であることが最も好ましく、また、通常100000ppm重量%以下であり、50000ppm重量%以下であることが好ましい。
乳性組成物に含まれるアミノ酸の1種類としてメチオニンが含まれる場合、乳性組成物中のメチオニンの含有量は、特段制限されないが、光酸化反応に十分に影響を与え得るという観点から、通常10ppm以上であり、100ppm以上であることが好ましく、300ppm以上であることがより好ましく、また、通常3000ppm重量%以下であり、1000ppm重量%以下であることが好ましい。
乳性組成物において、リボフラビンの含有量に対するアミノ酸の含有量の比率は、特段制限されないが、リボフラビンに起因した光増感酸化反応が起こる場合、基質に対して十分にアミノ酸が存在する必要がある観点から、重量比率で、通常等量以上であり、2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましく、また、通常50000倍以下であり、30000倍以下であることが好ましく、10000倍以下であることがより好ましく、5000倍以下であることがさらに好ましい。
アミノ酸の存在形態は特に制限されることはないが、アミノ酸により構成されるタンパク質や、アミノ酸結合性の脂質、糖質などについても含まれる。
[塩]
乳性組成物は、乳性組成物の温度10℃におけるpHを所望の範囲とすることができる観点から、特定の塩(単に「塩」とも称する。)を含む該特定の塩は、フマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸、これらの酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の塩であるが、食品によく利用される観点から、乳酸、酢酸、クエン酸、りんご酸、フィチン酸、炭酸、重炭酸、リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が好ましく、乳性組成物に与える食味が好ましいという観点から、クエン酸塩、重炭酸塩が好ましく、食品添加物として、特に日本国内で利用できるという観点から、クエン酸三ナトリウム及び/又は重炭酸ナトリウムが好ましく、日本国内で食品添加物としてアルカリ域でのpH調整剤として利用できるという観点から、重炭酸ナトリウムが好ましい。これらの化合物は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種類以上を任意の種類及び割合で併用してもよい。
乳性組成物中の塩の含有量は、特段制限されないが、製剤特有の塩味、苦みが食品に与える影響を最小にしながらも、光酸化による劣化臭抑制効果を最大に発揮させるという観点から、通常0.01重量%以上であり、0.05重量%以上であることが好ましく、0.08重量%以上であることがより好ましく、0.16重量%以上であることがさらに好ましく、また、通常5重量%以下であり、2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以下であることがさらに好ましい。
上記の特定の塩は、所望のpHの範囲とすることができる観点から含有されるものであるが、乳性組成物のpHは、該乳性組成物に含まれ得る他の物質(成分)によって調整されていてもよい。
また、乳性組成物に含まれ得る塩は、上記の特定の塩に限定されず、他の塩が含まれていてもよい。
[酸化防止剤]
乳性組成物は、製造や流通、保管中における品質の劣化を防ぐ観点から、酸化防止剤を含んでいてもよく、その態様は乳性組成物に添加し得るものであれば特段制限されず、公知のものを使用することができる。
酸化防止剤の種類は、特段制限されず、例えば、アスコルビン酸、ビタミンE(トコフェロール)、ヘスペレチン、ルチン、酵素処理ルチン、β-カロテン、カテキン、ジブチルヒドロキシトルエン、オリザノール、亜硫酸塩等が挙げられる。これらの中でも特に、ラジカル消去能または1重項(一重項)酸素消去能といった活性酸素種の消去能を有するものであることが好ましい。ラジカル消去能とは、おもに多価不飽和脂肪酸が酸化される際のラジカル連鎖反応において進行する、脂質ペルオキシラジカルと反応し、自身が安定ラジカルに変化する事や、電子を供与することでラジカル連鎖反応を停止する物質の事をさし、ラジカル消去能を有するものとしては、ビタミンC、ビタミンE、カテキンなどが知られている。一重項酸素消去能とは、安定酸素分子である三重項酸素が光により励起された場合に発生する、エネルギーレベルの高い一重項酸素と反応し、自らが励起三重項状態となることにより酸素を三重項状態に安定させる物質の事をさし、1重項酸素消去能を有するものとしては、β-カロテンやビタミンEが知られている。例えば、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンであることが好ましく、特にビタミンEであることが好ましい。リボフラビンの酸化還元反応に伴い、周囲の酸素が一重項酸素となり、該一重項酸素が油脂等に結合して臭気発生物質が発生したり、また、油脂等がラジカルとなって、該ラジカルが酸素と結合して臭気発生物質が発生したりするが、上記の、ラジカル消去能または
1重項酸素消去能を有する酸化防止剤を用いることによりこの問題を改善することが可能となる。これらの酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種類以上を任意の種類及び割合で併用してもよい。
乳性組成物中の酸化防止剤の含有量は、特段制限されないが、光酸化による劣化臭の発生をより長期で抑えるという観点から、通常0.001重量%以上であり、0.01重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、また、通常2重量%以下であり、0.5重量%以下であることが好ましい。
乳性組成物において、上記の特定の塩の含有量に対する酸化防止剤の含有量の比率は、特段制限されないが、光酸化による劣化臭を抑えながら、製剤由来特有の塩味、苦みの影響を最小限にするという観点から、重量比率で、通常0.01以上であり、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましく、また、通常5以下であり、2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。
[脂質]
乳性製品等は通常脂質を含んでいるため、乳性組成物は、通常脂質を含んでおり、その態様は乳性組成物に添加し得るものであれば特段制限されず、公知のものを使用することができる。
脂質の種類は、特段制限されず、例えば、グリセリンやポリグリセリン等のアルコールと脂肪酸とのエステルである単純脂質、分子中にリン酸や糖を含む複合脂質、単純脂質や複合脂質から加水分解によって誘導される誘導脂質等が挙げられる。また、脂質は、乳製品等に含まれる成分であるが、これとは別に外部から添加して含有量を調整してもよい。
上記の各種の脂質を構成する脂肪酸の種類は、特段制限されず、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸等のモノ不飽和脂肪酸、リノール酸等のジ不飽和脂肪酸、リノレン酸、ピノレン酸等のトリ不飽和脂肪酸等が挙げられるが、光酸化によるオフフレーバーが発生しやすい観点から、不飽和脂肪酸を含むことが好ましく、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸を含むことが好ましい。不飽和脂肪酸に含まれる二重結合は1つ以上(オレイン酸)が好ましく、2つ以上(リノール酸)がより好ましく3つ以上(リノレン酸)が好ましく、通常6つ以下(DHA)であり、より好ましくは5以下(EPA)である。
乳性組成物中の脂質の含有量は、特段制限されないが、光酸化による劣化臭は、わずかな脂質酸化によっても引き起こされるという観点から、通常0.1重量%以上であり、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましく、また、通常90重量%以下であり、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、60重量%以下であることがさらに好ましい。
脂質は、中性脂質であれば飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の混合物であり、植物性の脂質であれば、不飽和脂肪酸の割合が高く、動物性の脂質であれば飽和脂肪酸の比率が高い。このうち、劣化臭の主な原因となるのは不飽和脂肪酸である。通常市販されている脂質では、飽和脂肪酸含有量が特に多い製品(例えばヤシ油)であっても、少なくとも若干量以上(例えば、脂質全体に対して0.1重量%以上)の不飽和脂肪酸が含まれている。
脂質全体に対する不飽和脂肪酸の割合は、特段制限されないが、光酸化による劣化臭を抑制する本発明の効果が得られやすい観点から、通常1重量%以上であり、4重量%以上であることが好ましく、8重量%以上であることがより好ましく、また、通常95重量%以下であり、90重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましい。
[その他の物質(成分)]
乳性組成物は、適宜用途に応じて、上記の物質(成分)以外の成分(その他の成分)を含有してよく、例えば、糖類、賦形剤、液体担体、油性担体、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、崩壊剤、滑沢剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、浸透圧調整剤、防腐剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、矯臭剤、細菌抑制剤等が挙げられる。
乳性組成物中のその他の成分の含有量は、特段制限されず、特にホイップクリームに用いた場合における起泡性および食味等観点から、通常2重量%以上であり、5重量%以上であることが好ましく、7重量%以上であることがより好ましく、また、通常30重量%以下であり、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましい。
[乳性組成物食品の特性]
(pH)
乳性組成物の10℃におけるpHは、pHの変化による異味の発生を最小限に抑えるという観点から、好ましくは6.8以上であり、7.0以上であることがより好ましく、7.1以上であることがさらに好ましく、7.2以上であることが特に好ましく、7.3以上であることがことさら特に好ましく、また、通常9.0以下であり、8.5以下であることが好ましく、8.2以下であることがより好ましく、8.0以下であることがさらに好ましい。
10℃におけるpHは、一般的な測定法でよく、pH計(例えば堀場製作所製F-72)で測定することができる。
[乳性組成物の使用態様]
乳性組成物の使用態様は、特段制限されず、そのままの態様で用いてもよく、後述するように加工食品に含まれる態様で用いてもよい。乳性組成物や加工食品自体が露出された状態や、乳性組成物や加工食品が包装容器中に保持された状態、乳性組成物や加工食品がショーケースで囲われた状態で、使用することができる。
包装容器を用いる態様においては、乳性組成物や加工食品は容器に保持されていれば特段制限されず、容器の材料としては、例えば、ガラスやポリマー性の透明容器を用いることができる(容器外からの食品の視認性を確保しつつ、本発明の効果が得られる観点から、好ましくは紫外線等の透過を阻害しない全光透過率の高いものである)。
また、容器の外から中身の乳性組成物や加工食品を目視することができる観点から、該容器の少なくとも一部の透過光量が、0.1%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましく、また、該透過光量の上限を設定することは要しないが、通常99%以下である。この透過光量の条件を充たす部分は、容器の一部であっても、全部であってもよい。
透過光量は、日本電色社工業株式会社製のヘーズメーターで測定することができる。
<乳性組成物の製造方法>
上記の乳性組成物の製造方法は、特段制限されず、適宜用途に応じて、公知の方法を適用することができる。
例えば、乳及び/又は乳製品を含む、上述した特定の塩以外の各原料の混合物を準備するステップ(製造方法における混合物準備ステップ)、及び該混合物に特定の塩を添加する塩添加ステップ(製造方法における塩添加ステップ)を含むことにより乳性組成物を製造することができる。
これらの混合物準備ステップと塩添加ステップとは、別々に実施してもよいが、同時に
実施する、つまり、原料の混合物として特定の塩を添加してもよい。
上記の混合物準備ステップにおける原料としては、上記の乳性組成物に含有し得る原料を用いることができる。
上記の塩添加ステップにおける特定の塩としては、上述したものを用いることができ、該ステップにおいては、温度10℃におけるpHを6.8以上に調整することが好ましい。また、pHの条件については、上述の乳性組成物におけるpHの条件を適用することができる。
乳性組成物の製造方法では、酸化防止剤を用いる場合、酸化防止剤および特定の塩が均一に添加される条件であればより望ましい。
<乳性組成物の光酸化防止方法>
本発明の別の実施形態である乳性組成物の光酸化防止方法(単に「光酸化防止方法」とも称する)は、乳及び/又は乳製品を含む乳性組成物を準備するステップ(光酸化方法における乳性組成物準備ステップ)、及び
前記乳性組成物にフマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の塩を添加するステップ(光酸化防止方法における塩添加ステップ)、
を含む、乳性組成物の光酸化防止方法である。
これらの乳性組成物準備ステップと塩添加ステップとは、別々に実施してもよいが、同時に実施する、つまり、準備ステップにおける乳性組成物の原料として特定の塩を添加してもよい。
上記の乳性組成物準備ステップにおける乳性組成物としては、上述した乳性組成物を用いることができる。
上記の塩添加ステップにおける特定の塩としては、上述したものを用いることができ、該ステップにおいては、温度10℃におけるpHを6.8以上に調整することが好ましい。また、pHの条件については、上述の乳性組成物におけるpHの条件を適用することができる。
乳性組成物の光酸化防止方法では、酸化防止剤を用いる場合、酸化防止剤および特定の塩が均一に添加される条件であればより望ましい。
<乳性組成物の光酸化防止剤>
本発明の別の実施形態である乳性組成物の光酸化防止剤(単に「光酸化防止剤」とも称する)は、乳及び/又は乳製品と、フマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の塩とを含む、乳性組成物の光酸化防止剤である。
光酸化防止剤には、適宜用途に応じて、上述の乳性組成物の説明で示した各原料を含有させることができる。
<加工食品>
本発明の別の実施形態である食品、特に加工食品は、乳性組成物を含む(有する)加工食品であれば特段制限されない。例えば、ホイップクリームやプリンなどの形態、食品に塗布した形態や混合した形態、他の食品と混ぜ込んだ形態(乳脂肪以外の脂肪を含む所謂コンパウンドクリームや乳脂肪を含まないノンデイリークリーム)が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。なお、実施例で使用した材料及び評価項目の測定法は以下の通りである。実施例中の「%」は、特に記載がない場合は重量基準である。
<実験1>
[乳性組成物の作製]
実施例では、下記の原料を用いた。
・乳製品:市販品の生クリーム(水分を55重量%、たんぱく質を2.0重量%、炭水化物を3.0重量%、脂質を40重量%含み、リボフラビン(ビタミンB2)を1.5ppm、メチオニンを400ppm含む。その脂質中の主な脂肪酸組成は、ラウリン酸3.8%、ミリスチン酸が12%、パルミチン酸が33%、ステアリン酸9%、オレイン酸20%、リノール酸2.4%である。)
・塩基性の化合物1:重炭酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬社製の食品添加物規格)・塩基性の化合物2:クエン酸三ナトリウム(富士フィルム和光純薬社製の食品添加物規格)
・酸化防止剤:抽出ビタミンE乳液(三菱ケミカルフーズ社製の抽出ビタミンE乳液、ビタミンEの有効成分量20重量%)
(実施例1)
市販品の生クリーム 91.9重量%に重炭酸ナトリウム 0.10重量%と、グラニュー糖 8重量%を添加し、ケンミックスミキサー(愛工舎製)を用いて約4分間攪拌し、乳性組成物1を作製した。
(実施例2)
重炭酸ナトリウムの仕込み量を0.10重量%から0.20重量%に変更したこと以外は上記の実施例1における乳性組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、乳性組成物2を得た。
(実施例3)
原料として抽出ビタミンE乳液 0.50重量%を仕込んだこと、以外は上記の実施例1における乳性組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、乳性組成物3を得た。
(実施例4)
原料として抽出ビタミンE乳液 0.50重量%を仕込んだこと、及び重炭酸ナトリウムの添加量を0.10重量%から0.20重量%に変更したこと以外は上記の実施例1における乳性組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、乳性組成物4を得た。
(実施例5)
原料として抽出ビタミンE乳液 0.50重量%を仕込んだこと、及び重炭酸ナトリウム 0.10重量%をクエン酸三ナトリウム 0.20重量%に変更したこと以外は上記の実施例1における乳性組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、乳性組成物5を得た。
(比較例1)
重炭酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は上記の実施例1における乳性組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、乳性組成物6を得た。
[風味評価]
上記の各乳性組成物を用いて、3名のパネラーにより、風味評価を行った。具体的には、各乳性組成物に対して、1500Lxの照度で12時間、積算で18kLx・hの光を照射した後、光照射後の乳性組成物の臭いを1~7の7段階の風味スコア(風味スコア1:不良、7:良好)で評価し、各パネラーの評価の平均値を算出し評価値とした。該風味評価の結果を下記の表1に示す。
また、原料として抽出ビタミンE乳液 0.50重量%を仕込んだこと、及び重炭酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は上記の実施例1における乳性組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用して得られた乳性組成物7を用いて風味スコアの評価を行った結果を参考例1として記載する。
また、上記の比較例1を用いて、上記の光照射を行わずに風味スコアの評価を行った結果を参考例2として記載する。
なお、下記の表1における「重量%」は、乳性組成物全量に対する重量割合を表す。
Figure 2022034446000003
上記の表1から、重炭酸ナトリウムを含む実施例1及び2における乳性組成物は、重炭酸ナトリウムを含まない比較例1と比較して、重炭酸ナトリウムやクエン酸三ナトリウムを含む実施例3~5における乳性組成物は、重炭酸ナトリウムやクエン酸三ナトリウムを含まない参考例1と比較して、風味スコアが高い、つまり臭いが良好であることが分かる。これは、光酸化による劣化臭の発生を抑制したためであると考えられる。
また、抽出ビタミンE乳液を含有せず重炭酸ナトリウムを含有する実施例1及び2、と比較して、抽出ビタミンE乳液及び重炭酸ナトリウムの両方を含有する実施例3及び4の方が、風味スコアが高いことが分かる。これは、ビタミンEの添加により光酸化により生じる過酸化物の分解を抑制したためであるためであると考えられる。
また、クエン酸三ナトリウムを含む実施例5の乳性組成物は、酸味を有していた。
<実験2>
[乳性組成物の作製]
上記の実施例4及び5、比較例1、並びに参考例1及び2で作製した各乳性組成物を用
いた。
[ヘキサナールの発生量評価]
上記の乳性組成物に対して、光安定性試験機LST2000(東京理化機械)を用いて1500Lxの光を12時間照射し、積算照度で18kLx・hの光を照射した後、ヘッドスペースSPMEサンプラー付きガスクロマトグラフ質量分析計GC Agilent6890N、MS 5973MSD(AGILENT社)で、ヘキサナールの発生量評価を行った。ヘキサナールは
、脂質に含まれるリノール酸が酸化されて発生する異臭味の要因の一つである。該ヘキサナールの発生量評価の結果を下記の表2に示す。
なお、下記の表2における「重量%」は、乳性組成物全量に対する重量割合を表す。
Figure 2022034446000004
上記の表2から、重炭酸ナトリウムやクエン酸三ナトリウムを含む実施例4及び5における乳性組成物は、重炭酸ナトリウムやクエン酸三ナトリウムを含まない参考例1と比較して、ヘキサナールの発生量が少ない、つまり臭いが良好であることが分かる。これは、脂質の光酸化が抑制されたためであるためであると考えられる。
また、実施例4及び5の比較から、重炭酸ナトリウムの方がクエン酸三ナトリウムよりも、ヘキサナールの発生量の抑制効果が高いことが分かる。これはこの添加濃度域においてはクエン酸三ナトリウムより、重炭酸ナトリウムのほうがpHの上昇効果が高いためである。
<実験3>
[乳性組成物の作製]
上記の実施例4、比較例1、及び参考例1で作製した各乳性組成物を用いた。
[嗜好度の評価]
上記の各乳性組成物に対して、1500Lxの光を12時間照射し、積算照度で18kLx・h又は54kLx・hの光を照射した後、シェッフェの一対試験法(浦の変法)で、平均嗜好度の評価を行った。実施例4、比較例1、及び参考例1の各乳性組成物を用いて、3名のパネラーにより、風味評価を行った。具体的には、各乳性組成物の組み合わせ2個ずつの対に対して、評価する順序関係を区別してとらえて組をつくる。ここでは3個の試料に対して、6組の組み合わせができる。それを3名のパネラーそれぞれが評価を行い、先に評価した乳性組成物の風味が、あとで評価した乳性組成物の風味に比べてどの程
度有意にあるか(または劣っているか)を評価した。評価は-2、-1、0、1、2の5段階の風味スコア(風味スコア-2:不良、2:良好)で判定した。各乳性組成物について、それぞれのパネラーの風味スコアの合計を18×(2×パネラーの数×試行サンプル数)で除して算出した値を平均嗜好度とし、これを下記の表3に示す。また、各乳性組成物間の平均嗜好度の差及び統計的有意義を求めた結果を、下記の表4に示す。表4における統計的有意差について、有意水準5%以下又は0.01%以上を「有」とし、5%超かつ100%未満を「無」とした。
なお、下記の表3における「重量%」は、乳性組成物全量に対する重量割合を表す。
Figure 2022034446000005
Figure 2022034446000006
上記の表3及び4から、重炭酸ナトリウムを含む実施例4の乳性組成物が、重炭酸ナトリウムを含まない参考例1の乳性組成物よりも、嗜好度に優れることが分かる。
また、その嗜好度の差は光照射の積算照度が大きいほど、大きくなることがわかる。これより、光酸化が進行するに従い、pHを上昇させた効果が大きくなることが分かる。
以上より、本発明によれば、光酸化を防止することにより、該光酸化による臭いの発生が抑制された乳性組成物及びこれを含む加工食品、並びに乳性組成物の光酸化を防止する方法を提供することができる。

Claims (8)

  1. 乳及び/又は乳製品と、フマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の塩とを含む、乳性組成物。
  2. 10℃におけるpHが6.8以上である、請求項1に記載の乳性組成物。
  3. 前記塩が乳酸、酢酸、クエン酸、りんご酸、フィチン酸、炭酸、重炭酸、リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩である、請求項1又は2に記載の乳性組成物。
  4. 前記塩が、クエン酸三ナトリウム及び/又は重炭酸ナトリウムである、請求項3に記載の乳性組成物。
  5. さらに酸化防止剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の乳性組成物。
  6. 前記酸化防止剤が、ラジカル消去能または1重項酸素消去能を有する、請求項5に記載の乳性組成物。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の乳性組成物を含む加工食品。
  8. 乳及び/又は乳製品を含む乳性組成物を準備するステップ、及び
    前記乳性組成物にフマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上の塩を添加する塩添加ステップ、
    を含む、乳性組成物の光酸化防止方法。
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