動的光散乱測定装置(dynamic light scattering,DLS)により従来のポリビニルアルコール水溶液を解析すると、ポリビニルアルコール分子鎖の一部に凝集現象が観察されるが、この凝集現象はエマルジョンの特性を低下させてしまう。
本発明は、ポリビニルアルコールが水溶液中で大きな粒子凝集を生成するか否かは、ブロック長さと分岐度に関係しており、この凝集現象は乳化安定性及び保護コロイド性にも影響することを発見した。そこで、本発明は、ポリビニルアルコールポリマーとアルカリ化条件を制御することにより、ポリビニルアルコールに特定の粒径比率範囲を持たせて、保護コロイド性の高いポリビニルアルコールを得る。
これに鑑み、本発明はポリビニルアルコールを提供することを主な目的としており、ポリビニルアルコールは比率(B)を有しており、比率(B)=g(2)-1(τ=100μs) /g(2)-1(τ=0.5μs)であり、g(2)は選択角度における自己相関関数であり、τは遅延時間であり、Iは信号の強度であり、g2(q;τ)={I(q,t)I(q,t+τ)}/{I(q,t)}2に基づいており、qは散乱ベクトルであり、tは時間であり、それは動的光散乱測定装置(dynamic light scattering,DLS)により6.4wt%のポリビニルアルコール溶液を測定して得たものであり、そのうち、比率(B)の範囲は0<(B)<0.38であることを特徴とする。
好ましい実施形態中、ポリビニルアルコールはブロック指数(η)をさらに有し、ブロック指数(η)の範囲は0.4<η<1である。
好ましい実施形態中、ポリビニルアルコールは4%水溶液透明度(%)をさらに有し、4%水溶液透明度(%)は98%より大きい。
好ましい実施形態中、ポリビニルアルコールは分岐指数(BI)をさらに有し、分岐指数は(BI)≦0.9である。
好ましい実施形態中、ポリビニルアルコールは水相GPCにより解析した数平均分子量(Mn)をさらに有し、数平均分子量は(Mn)≦12800である。
好ましい実施形態中、ポリビニルアルコールは加水分解度をさらに有し、加水分解度の範囲は86~89mol%である。
好ましい実施形態中、ポリビニルアルコールは結晶化温度(Tc)をさらに有し、結晶化温度(Tc)の範囲は135~138℃である。
本発明の別の目的は、保護溶液を提供することであり、上述のポリビニルアルコールを分散剤として含むことを特徴とする。
本発明の別の目的は、ポリ酢酸ビニルエマルジョンを提供することであり、ポリ酢酸ビニルエマルジョンは上述の保護溶液による合成を経たものであることを特徴とする。
好ましい実施形態中、ポリ酢酸ビニルエマルジョンは60℃で2カ月の放置を経た後、常温(25℃)下で粘度測定を行い、基本的に分離が生じないか、又は粘度変化値が20,000(cp)を超えない。
本発明のPVAは、アルカリ化条件、ブロック長さ、分岐度を制御することにより得るものであり、特定の範囲の粒径比率(B)を有しており、PVAを分散剤とすることで、さらに安定した保護コロイドのPVA溶液を得ることができ、適度な粘度安定性を有している。従って、本発明のPVAは良好な保護コロイド効果を有することができ、且つポリビニルアルコールの使用量を低減することができ、比較的安定したエマルジョン粘度などの有利な効果を有する。
上述は本発明における全ての実施形態又は全ての態様を示したものではなく、本明細書で詳述する新しい態様及び新しい特徴の例を提供したに過ぎない。本発明の他の特徴及び利点は、以下の図面に基づく詳細な説明から容易に明白となる。上述の図面は、本発明の実施形態の様々な特徴を例示的に示したものである。
本発明の詳細な説明及び技術内容に関して、図に基づき以下の通り説明する。本発明中の図面における比率については、説明を簡単なものとするため、実際の比率では描いておらず、図面及び比例は本発明の範囲を限定するものではない。本発明の各態様は添付図面に示す配置、手段及び特性に限らないことを理解されたい。
別段の記載がない限り、本明細書で使用する「又は」とは、「及び/又は」を意味する。本明細書で使用する「含む」又は「備える」とは、1つ以上の他の構成部材、工程、操作及び/若しくは構成要素の存在を排除しないこと、又は上述の構成部材、工程、操作及び/若しくは構成要素に追加されることを意味する。本明細書で使用する「含む」、「備える」、「含有する」、「包括する」、「有する」は互いに置換可能であり、限定されない。
本明細書で使用する「一」とは、文法対象物が1つ以上(即ち、少なくとも1つ)であることを意味する。同様に、本明細書及び特許請求の範囲で使用する単数形式の「一」、「1つ」、「1種」及び「当該」は、複数指示物を含む。
操作の実施例中又は他の指示する場所を除き、成分及び/又は反応条件の量を示す全ての数字は、全ての場合においていずれも「約」という用語を用いて修飾することができ、示した数字の±5%以内であるという意味である。本明細書で使用する「基本的に含まない」又は「実質的に含まない」という用語は、特定の特性が約2%未満であることを意味する。本明細書中に明確に記載されている全ての要素又は特性は、特許請求の範囲から否定的に除外することができる。
別段に定義されない限り、本明細書中の全ての技術及び科学用語の意味は、本発明が属する技術分野の当業者が理解する意味と同じである。また、本明細書で使用する以下の用語は以下の意味を有する。
本発明はポリビニルアルコールに関するものであり、比率(B)を有し、比率(B)=g(2)-1(τ=100μs)/g(2)-1(τ=0.5μs)であり、それは動的光散乱測定装置により6.4wt%のポリビニルアルコール溶液を測定して得たものであり、そのうち、比率(B)の範囲は約0<(B)<0.38であることを特徴とする。
別の態様として、本発明は保護溶液を提供するが、それは上述のポリビニルアルコールを分散剤として含むことを特徴とする。別の態様として、本発明はポリ酢酸ビニルエマルジョンを提供するが、ポリ酢酸ビニルエマルジョンは上述の保護溶液による合成を経たものであることを特徴とする。
本明細書で使用する「動的光散乱測定装置(dynamic light scattering,DLS)」とは、図1(a)及び(b)に示す通り、特定の角度において散乱光強度の時間的な揺らぎデータを観測するものであり、粒子は溶媒中で溶媒分子と衝突することでブラウン運動をしており、数値に変動を生じさせる。g(2)(τ)は選択角度における自己相関関数であり、τは遅延時間であり、Iは信号の強度であり、自己相関関数は経時的に減衰する特性を有し、水溶液の安定性が低いと、減衰速度がより遅く、減衰時間がより長くなる。水溶液の安定性が高いと(凝集度が小さいほど)、減衰速度がより速く、減衰時間がより短くなる。図2に示す通り、特定減衰時間範囲(τ=100μs)におけるg(2)-1の数値と開始(τ=0.5μs)におけるg(2)-1の数値の比率が、本明細書中でいう比率(B)であり、減衰速度指標となる。比率g(2)-1(τ=100μs)/ g(2)-1(τ=0.5μs)が小さいほど、減衰速度がより速く、水溶液の安定性が高いことを表している。100μs以降は、複数のPVA分子鎖が凝集して成る粒子の寄与度に対応している。好ましい実施形態中、DLSにより6.4wt%のポリビニルアルコール溶液を測定して得た本発明のPVAの比率(B)の範囲は、約0<(B)<0.38である。好ましい実施形態中、DLSにより6.4wt%のポリビニルアルコール溶液を測定して得た本発明のPVAの比率(B)は、比率(B)<0.38であり、例えば0.38未満、0.37未満、0.36未満、0.35未満、0.34未満、0.33未満、0.32未満、0.31未満、0.3未満、0.29未満、0.28未満、0.27未満、0.26未満、0.25未満、0.24未満、0.23未満、0.22未満、0.21未満、0.2未満、0.19未満、0.18未満、0.17未満、0.16未満、0.15未満、0.14未満、0.13未満、0.12未満、0.11未満、0.1未満、0.09未満、0.08未満、0.07未満、0.06未満、0.05未満、0.04未満、0.03未満、0.02未満又は0.01未満であるが、これらに限らない。好ましい実施形態中、DLSにより6.4wt%のポリビニルアルコール溶液を測定して得た本発明のPVAの比率(B)の範囲は、約0.1≦(B)≦0.3であり、例えば0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3又は上述した任意の2つの値間の範囲であるが、これらに限らない。好ましい実施形態中、DLSにより6.4wt%のポリビニルアルコール溶液を測定して得た本発明のPVAの比率(B)は、その比率(B)が約0.11、0.189、0.225、0.231、0.254又は0.298である。
本明細書で使用する「ポリビニルアルコール(POLYVINYL ALCOHOL,PVA)」は、1種の水溶性ポリマーであり、良好な造膜性を有し、形成される膜は優れた接着力、耐溶剤性、耐摩擦性、引張強さ及び酸素バリア性を有する。ポリビニルアルコールは、親水基と疎水基の2種類の官能基を同時に有しており、下記式(I)の分子構造で表されるため、ポリビニルアルコールは界面活性の性質を備えており、高分子乳化、懸濁重合反応の保護コロイドとすることができる。
式(I)中、Oは親水基構造を表し、Cは疎水基構造を表している。
nは親水基構造のモル数を表し、mは疎水基構造のモル数を表している。
本明細書で使用する「アルカリ化度/加水分解度」とは、疎水性の酢酸基が親水基に置換された程度であり、n/(n+m)で表される。そのうち、nとmは、それぞれPVA分子中の親水基構造のモル数と疎水基構造のモル数であり、即ち式(I)中のnとmである。本明細書ではアルカリ化度を加水分解度とも呼び、その値が高いほど親水性物質に対する親和力がより高くなる。本発明は、アルカリ化度がPVA分子鎖の水溶液中における凝集状態に影響することを発見した。好ましい実施形態中、本発明におけるPVAの加水分解度の範囲は約86~89mol%であり、例えば86mol%、86.1mol%、86.2mol%、86.3mol%、86.4mol%、86.5mol%、86.6mol%、86.7mol%、86.8mol%、86.9mol%、87mol%、87.1mol%、87.2mol%、87.3mol%、87.4mol%、87.5mol%、87.6mol%、87.7mol%、87.8mol%、87.9mol%、88mol%、88.1mol%、88.2mol%、88.3mol%、88.4mol%、88.5mol%、88.6mol%、88.7mol%、88.8mol%、88.9mol%、89mol%又は上述した任意の2つの値間の範囲であるが、これらに限らない。好ましい実施形態中、本発明におけるPVAの加水分解度の範囲は約87~88mol%であり、例えば87mol%、87.1mol%、87.15mol%、87.2mol%、87.25mol%、87.3mol%、87.35mol%、87.4mol%、87.45mol%、87.5mol%、87.55mol%、87.6mol%、87.65mol%、87.7mol%、87.75mol%、87.8mol%、87.85mol%、87.9mol%、87.95mol%、88mol%又は上述した任意の2つの値間の範囲であるが、これらに限らない。より好ましい実施形態中、本発明におけるPVAの加水分解度の範囲は87.09~87.88mol%であり、例えば87.09mol%、87.17mol%、87.58mol%、87.81mol%、87.86mol%又は87.88mol%であるが、これらに限らない。
本明細書で使用する「ブロック指数(blockiness index,η)」とは、PVA分子のブロック性(Blockiness)を指し、ブロック性が高いほど結晶セグメントがより長くなる。即ち、式(I)中で示されている親水基構造の「O」がより長くなる。NMRは、高分子微細構造を測定するのに有用なツールであり、本明細書で使用するブロック指数(η)は、炭素13核磁気共鳴(13C NMR)を用いて測定することで得ることができ、化学シフトδ=38~46ppmの間において、3つの顕著な共鳴ピークを有し、右から左へそれぞれVAc-VAc、VOH-VAc、VOH-VOHdiadの共鳴ピークを有する。下記方程式の(VAc,VAc)、(VOH,VAc)、(VOH,VOH)は、それぞれδ=39ppm、δ=42ppm及びδ=45ppmの共鳴ピークが占める面積百分率である。
ダイアド組成(Dyad composition):
式中、Iは信号強度である。
ブロック指数(block character,η)の計算を経て、0≦η<1であるとき、ブロック特性を一部有する高分子であることを表し、η=0であるとき、共重合体試料がブロックコポリマー(block copolymer)であることを表し、η=1の場合は完全にランダムコポリマー(random copolymer)であり、1<η≦2である場合、試料が交互共重合体(alternate copolymer)の構造で組成される傾向にある。つまり、ηが低いほどブロック性がより高くなる。本発明は、ブロック程度がPVA分子鎖の水溶液中における凝集状態に影響することを発見した。好ましい実施形態中、本発明におけるPVAのブロック指数(η)の範囲が約0.4<η<1で水溶液安定性を得ることができ、例えば0.4<η≦0.95、0.4<η≦0.9、0.4<η≦0.85、0.4<η≦0.8、0.4<η≦0.75、0.4<η≦0.7、0.4<η≦0.65、0.4<η≦0.6、0.4<η≦0.55、0.4<η≦0.5、0.45≦η<1、0.5≦η<1、0.55≦η<1、0.6≦η<1、0.65≦η<1、0.7≦η<1、0.75≦η<1、0.8≦η<1、0.85≦η<1、0.9≦η<1又は0.95≦η<1であるが、これらに限らない。ηが0.4未満だと水溶液安定性が悪くなり、ηが1より大きいとブロックポリマー及び交互重合体に変わり、水溶液の安定性制御に適さない。好ましい実施形態中、本発明におけるPVAのブロック指数(η)の範囲は約0.4<η≦0.5であり、例えば0.401、0.405、0.41、0.415、0.42、0.425、0.43、0.435、0.44、0.445、0.45、0.455、0.46、0.465、0.47、0.475、0.48、0.485、0.49、0.495、0.50又は上述した任意の2つの値間の範囲であるが、これらに限らない。
本明細書で使用する「分岐指数(branching index,BI)」は、PVA分子構造の分岐度を表すのに用いられ、遊離基鎖がOH基上のC(図3(a)中の赤色の円)に転移して、アルカリ化できない分岐(図3(a)中の青い円)が生じたことを指す。本明細書で使用する分岐指数は、図3(b)に示す通り、13C NMRを用いた測定により得ることができ、化学シフトは40~50ppm区間のCH2と65~70ppmのCH信号の間にあり、分岐度の定量に用いることができるが、即ち、BI=ΣCH/ΣCH2であり、その比率が高すぎると分岐度がより低くなり、水溶液の安定性の面で不利となる。好ましい実施形態中、本発明におけるPVAの分岐指数は(BI)≦0.9であり、例えば0.9、0.85、0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、0.05又は上述した任意の2つの値間の範囲であるが、これらに限らない。好ましい実施形態中、本発明におけるPVAの分岐指数(BI)は0.7~0.9の間であり、例えば0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9又は上述した任意の2つの値間の範囲であるが、これらに限らない。
本発明のポリビニルアルコールは、優れた透明度を有する。好ましい実施形態中、本発明におけるポリビニルアルコールの4%水溶液中の透明度(%)は98%より大きく、例えば98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%であるが、これらに限らない。
好ましい実施形態中、本発明のポリビニルアルコールの数平均分子量は(Mn)<12815であり、水相GPCにより解析して得る。好ましい実施形態中、本発明のポリビニルアルコールは、Mn≦12800である。より好ましい実施形態中、本発明のポリビニルアルコールのMnは12600~12850の間であり、例えば12600、12610、12620、12630、12640、12650、12660、12670、12680、12690、12700、12710、12720、12730、12740、12750、12760、12770、12780、12790、12800、12810、12820、12830、12840、12849又は上述した任意の2つの値間の範囲であるが、これらに限らない。
好ましい実施形態中、本発明におけるポリビニルアルコールの結晶化温度(Tc)の範囲は135~138℃であり、例えば135℃、135.1℃、135.2℃、135.3℃、135.4℃、135.5℃、135.6℃、135.7℃、135.8℃、135.9℃、136℃、136.1℃、136.2℃、136.3℃、136.4℃、136.5℃、136.6℃、136.7℃、136.8℃、136.9℃、137℃、137.1℃、137.2℃、137.3℃、137.4℃、137.5℃、137.6℃、137.7℃、137.8℃、137.9℃、138℃又は上述した任意の2つの値間の範囲であるが、これらに限らない。
本発明のポリ酢酸ビニルエマルジョンは良好な粘度安定性を有し、例えば、60℃で2カ月の放置を経た後、常温(25℃)下で測定を行い、基本的に分離が生じないか、又は粘度変化値が20,000(cp)を超えない。上述の粘度変化値は、例えば20,000(cp)以下、19,000(cp)以下、18,000(cp)以下、17,000(cp)以下、16,000(cp)以下、15,000(cp)以下、14,000(cp)以下、13,000(cp)以下、12,000(cp)以下、11,000(cp)以下、10,000(cp)以下、9,000(cp)以下、8,000(cp)以下、7,000(cp)以下、6,000(cp)以下、5,000(cp)以下、4,000(cp)以下、3,000(cp)以下、2,000(cp)以下、1,000(cp)以下であるが、これらに限らない。
以下で提供する本発明の各態様の非限定的実施例は、主に本発明の各態様及びそれにより達成される効果を明らかにするためのものである。
本発明に基づき、アルカリ化度、ブロック度、分岐度の制御によりPVAを調製し、且つそれをPVA水溶液の実施例1~6及び比較例1~5に調製した。
A.特性解析
DLS解析:装置はゼータサイザーナノ ZS(Zetasizer Nano ZS)を使用、散乱角度は173度、PVA RIは1.479、PVA吸光係数は0、溶媒粘度(水)は0.8872cp、溶媒屈折率(水)は1.33、温度は25℃、平衡時間は0秒、解析用の槽は使い捨て可能なキュベット(cuvettes、DTS0012型)を使用、操作回数は11回、操作時間は10秒、測定回数は3回、測定の間の遅延は0秒とした。実験データは3組を測定して平均値を取った。
6.4wt% PVA水溶液の調製:70℃の環境下で6.4wt% PVA/脱イオン水溶液を調製し、12~15時間攪拌して、調製完了後すぐにDLS解析を行った。メンブレンフィルタを用いた濾過は行わなかった。
結晶化温度の測定:装置はTA Instruments社のDSC25型示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter,DSC)を使用、実験温度区間は30℃~250℃、30℃及び250℃のそれぞれにおいて1分間温度維持、昇降温速度は10℃/minとし、1st降温時の結晶化温度(Tc)を記録した。
ブロック指数の測定:実験温度は27℃とし、80mgのPVAを1mLのD2Oに溶かして試料を調製し、磁場周波数は500MHzとした。
分岐指数の測定:実験温度は27℃とし、15mgのPVAを1mLのDMSOに溶かして試料を調製し、磁場周波数は500MHzとした。
4%水溶液の透明度測定:実験温度は常温、試料のSample holderは石英cell、光路長は20mmとし、分光光度計を用いて430nmで透明度を測定した。
粘度測定:Brookfield LVT粘度計を使用し、#4のスピンドルにより各種のせん断速度において粘度を測定し、6rpm/30度/1atmにおいて測定した後、1分間未満の間隔で増加するせん断応力を測定し、後続の測定を行った。
B.エマルジョンの調製
2Lの反応器内に360gの脱イオン水を加え、温度を30℃以下に維持し、撹拌機を起動して、52gのPVAを入れて15分間撹拌した後、80℃まで昇温させ、PVAが完全に溶解するまで撹拌を続けた。PVAが溶解した後、炭酸水素ナトリウム0.5g、硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)0.5gを加えて、完全に溶解させた。温度を80℃に維持し、0.48gのAmmonium Sulfateを23gの水に溶解し、反応器内に一度に加えた。その後、495gの酢酸ビニルを6時間以内に反応器へ滴加して反応させた。上述の反応時間終了後、0.24gのAmmonium Sulfateを11gの水に溶解し、反応器内に加えて、反応温度を85℃まで昇温させ、90分間反応を継続した。反応完了後、冷却してPVAcエマルジョンを得た。
C.結果
本発明に基づく例示的な実施例1~4及び比較例1、2の動的光散乱法のグラフは図4に示す通りである。実施例1~6及び比較例1~5の特性並びに実験条件は表1を参照されたい。そのうち、比率(B)=g(2)-1(100)/g(2)-1(0.5)であり、安定度の欄中、Oは均一を表し、Xは分離を表している。
実施例1~6は、特定減衰時間におけるg(2)-1比率、特定のブロック長さ及び分岐度を有することを示しており、PVAが水溶液中で比較的大きな粒子凝集を生成するか否かは、ブロック長さと分岐度に関係しており、この凝集は乳化安定性及び保護コロイド性にも影響することが分かった。従って、本発明は、PVA重合とアルカリ化条件を制御することにより、高い保護コロイド特性のPVAを得ることができる。
比較では、比較例は水溶液状態において分子間凝集を形成しやすいため、g(2)-1(τ)の減衰速度が低くなり、対応してエマルジョン粘度が不安定になっている。ηブロック度は0.4未満であり、ブロック性が高い(more block)ほど、結晶セグメントがより長くなり、水溶液の安定度が低くなる。分岐指数は0.9より大きく、分岐度が低いほど水溶液の安定度が低くなる。
要約すると、本発明のPVAは、適度なアルカリ化条件、適度なブロック長さ、分岐度により、適度な粘度安定性を達成し、保護コロイドのPVAとして、良好な保護コロイド効果を有することができ、且つポリビニルアルコールの使用量を低減することができ、比較的安定したエマルジョン粘度などの有利な効果を有する。
本明細書において提供する全ての範囲は、割り当て範囲内における各特定の範囲及び割り当て範囲の間の二次範囲の組み合わせを含むという意味である。また、別段の説明がない限り、本明細書が提供する全ての範囲は、いずれも範囲のエンドポイントを含み、例えば1~5の間には両エンドポイントの1、5が含まれる。従って、範囲1~5は、具体的には1、2、3、4及び5、並びに2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などの二次範囲を含む。
本明細書において参照される全ての刊行物及び特許出願はいずれも参照により本明細書に組み込まれ、且つありとあらゆる目的から、各刊行物又は特許出願はいずれも各々参照により本明細書に組み込まれることを明確且つ個々に示している。本明細書と参照により本明細書に組み込まれるあらゆる刊行物又は特許出願との間に不一致が存在する場合には、本明細書に準ずる。