JP2022030402A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱伝導率が小さい難削材を刃先温度が高くなる切削に供したとき、耐チッピング性、耐欠損性を発揮する切削工具を提供する。【解決手段】TiとAlの複合窒化物層として、刃先稜線から逃げ面方向に、刃先稜線からの距離が50μmを超えない点と、刃先稜線からの距離が100~500μmの間に{111}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内の結晶粒が30%以上を占める層とこの層から逃げ面方向へ遠ざかる方向へ50~500μmの範囲の中の50μm以上の長さで{100}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内の結晶粒が30%以上を占める層と、刃先稜線からすくい面方向に、刃先稜線からの距離が50μmを超えない刃先稜線に最も近い点と、刃先稜線からの距離が100μm以上の刃先稜線に最も遠い点との間に{111}面の法線方がなす傾斜角が10°以内の結晶粒が30%以上を占める層と、を有する表面被覆切削工具。【選択図】図1

Description

本発明は、熱伝導率が小さい被削材に対して高負荷が作用する切削加工であっても、硬質被覆層が優れた耐チッピング性・耐欠損性を備えることにより、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、「被覆工具」ということがある)に関するものである。
従来、炭化タングステン(以下、「WC」で示す)基超硬合金等の工具基体の表面に、硬質被覆層として、Ti-Al系の複合窒化物層や複合炭窒化物層を蒸着法により被覆形成した被覆工具があり、これらは、優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
そして、前記硬質被覆層を被覆形成した被覆工具のさらなる耐摩耗性および耐チッピング性の向上のために、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、TiとAlの複合窒化物層(以下、TiAlN層ともいう)を含む硬質被覆層において、負荷の大きい切れ刃部分にAl量の少ないTiAlN膜を配置させ、膜の硬さをあえて小さくさせることにより靭性を担保し、耐チッピング性を確保している被覆工具が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、硬質被覆層において、結晶の成長方向と結晶の{111}面の法線方向を揃えることにより、鋳造材料の機械加工において極めて有利な性能を発揮する被覆工具が記載されている。
さらに、例えば、特許文献3には、TiとAlの複合炭窒化物層の結晶成長優越方位が結晶学的{111}面との関係において存在することが、特に好ましいと記載されている。
特開2017-124463号公報 特表2016-522323号公報 特表2017-508632号公報
近年の切削加工における切削対象校種の多様化の要求は強く、これに伴い、被覆工具には、熱伝導率が小さい被削材に対して高負荷が作用する切削加工に対しても、より一層、耐チッピング性、耐欠損性等の耐異常損傷性とともに、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性が求められている。
しかし、本発明者の検討によれば、前記特許文献1~3で提案されている被覆工具では、熱伝導率が小さい被削材に対して高負荷が作用する切削加工においては、耐摩耗性、耐欠損性、耐チッピング性が未だ十分ではなく、満足できる工具寿命を有しているとはいえない。その理由は以下のとおりと推定している。
前記特許文献1に記載されているTiAlN層は、刃先にAl濃度の小さい膜を配しているため、刃先近傍の被膜の熱伝導性が低下し、切削時の到達温度が高くなるため前記被削材の切削時に、所望の耐摩耗性、耐チッピング性を発揮できるとはいえない。
特許文献2および3に記載されている被覆工具では、硬質被覆層において、{111}面の法線方向の配向が強い組織がより適している旨が示されているが、インコネル等のNi基耐熱合金やステンレス鋼等の前記被削材に対し、刃先の到達温度がより高くなるような、高負荷の切削加工に供する際には、被膜の持つ伝熱特性と機械的特性の温度依存性のバランスの観点からまだ改善の余地が残されている。
本発明は、熱伝導率が小さい被削材であるNi基耐熱合金やステンレス鋼等の難削材について、切削時に刃先の到達温度が高くなりやすい切削加工に供したときであっても、優れた耐チッピング性、耐欠損性を備え、長期の使用にわって優れた切削性能を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明者は、刃先部分のTiAlN硬質被覆層(硬質皮膜)を構成する結晶粒に配向分布を持たせ、前記切削加工に供したときの耐摩耗性、耐欠損性、耐チッピング性について鋭意検討を行った。その結果、刃先稜線近傍の逃げ面の所定範囲に前記結晶粒の{111}面の法線方向に主に配向した層と、この層に対して刃先稜線から遠い所定範囲に同{100}面の法線方向に主に配向した層を有し、さらに、すくい面の所定範囲に、同{111}面の法線方向に配向した層を配置するとき、耐摩耗性を確保しつつ、耐欠損性、耐チッピング性の優れたTiAlN硬質被覆層を得るとの新規な事項を知見した。
また、必要に応じて、逃げ面に{110}面の法線方向に配向した層をさらに設けることが好ましいことも見出した。
本発明は、前記知見に基づく表面被覆切削工具であって、次のとおりのものである。
「(1)工具基体と、該工具基体の表面に設けた硬質被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
(a)前記硬質被覆層は、TiとAlの複合窒化物層を少なくとも含み、
(b)前記TiとAlの複合窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒を含み、
(c)前記TiとAlの複合窒化物層を組成式:(Ti(1-x)Al)Nで表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合x(但し、xは原子比)が、0.60≦x≦0.95を満足し、
(d)前記TiとAlの複合窒化物層は、前記工具基体の表面の法線方向に対して{111}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内である前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が30%以上を占める配向した層を、刃先稜線から逃げ面方向に、前記刃先稜線からの距離が50μmを超えない前記刃先稜線に最も近い点と、前記刃先稜線からの距離が100~500μmの前記刃先稜線に最も遠い点との間に連続的に有し、
(e)前記TiとAlの複合窒化物層は、前記配向した層の前記刃先稜線から最も遠い点を起点に、前記刃先稜線から前記逃げ面方向へ遠ざかる方向の距離が50~500μmの範囲の中の50μm以上の長さの領域において、前記工具基体の表面の法線方向に対して{100}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内である前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が30%以上を占める配向した層を有し、
(f)前記TiとAlの複合窒化物層は、前記工具基体の表面の法線方向に対して{111}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内である前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が30%以上を占める配向した層を、刃先稜線からすくい面方向に、前記刃先稜線からの距離が50μmを超えない前記刃先稜線に最も近い点と、前記刃先稜線からの距離が100μm以上の前記刃先稜線に最も遠い点との間に連続的に有する、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記TiとAlの複合窒化物層は、前記刃先稜線から前記逃げ面方向へ遠ざかる方向の距離が100~600μmの範囲の中の50μm以上の領域において、前記工具基体の表面の法線方向に対して{110}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内である前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が20%以上を占める配向した層を有する前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記TiとAlの複合窒化物層は、前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の占める割合が50面積%以上であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
本発明によれば、逃げ面に{111}面の法線方向に配向したTiAlN層と{100}面の法線方向に配向したTiAlN層が、また、すくい面に{111}面の法線方向に配向したTiAlN層が存在することにより、熱伝導率が小さい被削材に対して高負荷が作用する切削加工であっても耐摩耗性を確保しつつ、耐欠損性、耐チッピング性の優れた被覆工具を得ることができる。
本発明の実施形態の表面被覆切削工具において、刃先稜線から逃げ面方向およびすくい面方向において配向したTiAlN硬質層の分布の一例を示す模式図である。
本発明の表面被覆切削工具の実施形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書および特許請求の範囲において数値範囲を「M~N」(M、Nはともに数値)で表現するとき、その範囲は上限(N)および下限(M)の数値を含んでいる。また、上限(N)と下限(M)の単位は同じである。
本実施形態では、図1に模式的に示すような配向したTiAlN硬質層を有している。以下、このTiAlN硬質層(TiAlN層)について説明する。
TiAlN層の平均層厚:
硬質被覆層は、後述する組成式:(Ti1-xAl)Nで表されるTiAlN層を少なくとも含む。このTiAlN層は、硬さが高く、優れた耐チッピング性、耐摩耗性を有するが、特に平均層厚が1.0~20.0μmのとき、その特性が際立って発揮される。その理由は、平均層厚が1.0μm未満では、層厚が薄いため長期の使用にわたっての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20.0μmを超えると、TiAlN層の結晶粒が粗大化しやすくなり、チッピングを発生しやすくなるためである。より好ましい平均層厚は2.0~10.0μmである。
なお、逃げ面とすくい面の平均層厚は異なっていてもよい。
ここで平均層厚の測定は、例えば切削時に工具と被削材とが直接接触する領域内の逃げ面およびすくい面において、各構成層の工具基体に垂直な方向の断面(縦断面)を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率5000倍で観察し、観察視野内の5点を平均して求めることができる。
NaCl型の面心立方構造
TiAlN層においてNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒を含むことが好ましい。そして、このNaCl型の面心立方構造結晶粒が、刃先稜線方向を法線とする断面に占める割合は、50面積%以上がより好ましく、さらには70面積%以上がより一層好ましい。その理由は、高硬度であるNaCl型の面心立方構造の結晶粒の割合が六方晶構造の結晶粒に比して高くなり、硬さが向上するためである。なお、面積率の上限は100面積%(すべてNaCl型の面心立方構造である)であってもよい。
なお、逃げ面とすくい面で前記割合が異なっていてもよい。
TiAlN層の組成:
TiAlN層の組成は、組成式:(Ti1-xAl)Nで表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合(以下、「Alの平均含有割合」という)xが、0.60≦x≦0.95、(ただし、xは原子比)を満足することが好ましい。
なお、逃げ面とすくい面で前記Alの平均含有割合が異なっていてもよい。
その理由は、以下のとおりである。
Alの平均含有割合xが0.60未満であると、TiAlN層は耐酸化性に劣るため、合金鋼等の高速断続切削に供した場合に、耐摩耗性が十分でなく、一方、0.95を超えると硬さに劣る六方晶の析出量が増大して硬さが低下し、耐摩耗性が低下する。したがって、0.60≦x≦0.95が好ましい。より好ましくは0.70≦x≦0.90である。なお、(Ti1-xAl)とNとの比は、1:1に限らない。
刃先稜線から逃げ面方向に存在する{111}面の法線方向に配向したTiAlN層:
工具基体の表面の法線方向に対して、{111}面の法線方向のなす傾斜角が10°以内であるNaCl型の面心立方構造の結晶粒の割合(後述する頻度割合)が30%以上を占める配向したTiAlN層({111}面の法線方向配向層ということがある)を有することが好ましい。そして、この{111}面の法線方向配向層は、刃先稜線から逃げ面方向に、刃先稜線からの距離が50μmを超えない点(刃先稜線に最も近い点)から刃先稜線からの距離が100~500μmの点(刃先稜線に最も遠い点)との間で連続的に存在することが好ましい。
ここで、{111}面の法線方向配向層について、配向する結晶粒の割合(頻度割合)が30%以上であること、および、前記刃先稜線に最も近い点と最も遠い点の間で連続的に存在することが好ましい理由は、これらを満足することによって、{111}面の法線方向配向層の特性が十分に発現して、耐欠損性、耐チッピング性が十分に発揮されるためである。
{111}面の法線方向配向層に対して刃先稜線から逃げ面方向に遠ざかる方向に存在する{100}面の法線方向に配向したTiAlN層:
前記{111}面の法線方向配向層における刃先稜線から最も遠い点を起点に、刃先稜線から逃げ面方向に遠ざかる方向の距離が50~500μmの範囲の中の50μm以上の長さの領域において、工具基体の表面の法線方向に対して{100}面の法線方向のなす傾斜角が10°以内であるNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の割合(頻度割合)が30%以上を占める配向したTiAlN被覆層({100}面の法線方向配向層ということがある)を有することが好ましい。
ここで、前記{100}面の法線方向配向層について、配向する結晶粒の割合(頻度割合)が30%以上であること、および、前記50μm以上の長さの領域に存在することが好ましい理由は、これらを満足することによって、{100}面の法線方向配向層の特性が十分に発現して、耐欠損性、耐チッピング性が十分に発揮されるためである。
刃先稜線からすくい面方向に存在する{111}面の法線方向に配向したTiAlN層:
{111}面の法線方向配向層が刃先稜線からすくい面方向に、刃先稜線からの距離が50μmを超えない点(刃先稜線に最も近い点)から刃先稜線からの距離が100μm以上の点(刃先稜線に最も遠い点)との間で連続的に存在することが好ましい。
この刃先稜線に最も遠い点の上限は特にないが、本明細書に一例として記載した製造方法にしたがえば、2000μmが一応の上限となる。
ここで、{111}面の法線方向配向層について、配向する結晶粒の割合(頻度割合)が30%以上であること、および、前記刃先稜線に最も近い点と最も遠い点の間で連続的に存在することが好ましい理由は、これらを満足することによって、{111}面の法線方向配向層の特性が十分に発現して、耐欠損性、耐チッピング性が十分に発揮されるためである。
{110}面の法線方向に配向した硬質被覆層:
刃先稜線から、逃げ面方向に、100~600μmの範囲において、少なくとも50μm以上の領域において、工具基体の表面の法線方向に対して{110}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内であるNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の割合(頻度割合)が20%以上を占める配向した層({110}面の法線方向配向層ということがある)が存在することが、より好ましい。
前記結晶粒の割合(頻度割合)が20%以上とし、かつ、この{110}面法線方向配向層の長さを50μm以上の領域とする理由は、この数値範囲を満足すると、{110}面の法線方向配向層の特性が十分に発現し、耐欠損性、耐チッピング性がより一層向上するためである。
なお、前記刃先稜線とは、逃げ面とすくい面とをそれぞれ平面で近似し、その平面を延長した場合に両延長平面が交差する交線をいい、刃先稜線からの距離は、刃先稜線を法線とする断面における刃先稜線との交点からそれぞれの断面上での逃げ面およびすくい面に沿った距離をいう。
工具基体の表面の法線とNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の特定の結晶面の法線とのなす角度とその割合の測定:
工具基体の表面の法線とTiAlN層のNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の特定の結晶面({111}、{110}、{100}面)のなす角度の測定は、以下のように行う。まず、TiAlN層の刃先稜線方向を法線とする断面を研磨面として、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットする。次に、前記研磨面に対して所定の観察範囲(例えば、工具基体の表面と水平方向に幅10μm、この幅の中点が25μm以上離れたもの)を設定する。
続いて、工具基体の表面の法線方向(断面研磨面における工具基体の表面と垂直な方向)に対して、前記観察範囲内の測定点ごとの結晶粒の{111}、{110}、{100}面の法線がなす傾斜角を測定すべく、前記研磨面の法線に対して、70度の入射角度、10kVの加速電圧、1nAの照射電流で、0.1μm/stepの間隔により、電子線を観察範囲に照射し、電子線後方散乱解析像を得て、傾斜角を測定する。そして、得られた電子線後方散乱解析像をPole Plotsで表示して、傾斜角が10°以内にある結晶粒の頻度割合を求める。
配向層の頻度割合は、急激に変化することはなく、上記の方法を用いて測定することによって、測定に於ける誤差の影響(主には、結晶粒毎のバラツキ、測定サンプルの位置や角度)を抑制できる。また、隣接する観察領域において、配向割合からみて配向層でといえるときは、この隣接する観察範囲の間に存在する領域も配向層といえることを、本発明の導出過程で確認している。
さらに、配向層の端部は、隣接する観察範囲の片方の頻度割合からみて配向層といえないときは、配向層の頻度割合からみて配向層と判定される観察範囲の中点とする。
なお、前記Pole Plotsは、例えば面心立方構造を有するCuに対する文献「J.A.Nucci, et al., Appl. Phys. Lett. 69 (1996) 4017.」などに記載されているように、測定対象の物質がどの方位に偏っているかを、完全にランダムな多結晶構造を有している状態と比較して示す指標である。前記文献では頻度を表すために「times random」の単位で表記されている。本発明の測定結果の処理においては、基準となる面方位の法線方向を0°として90°までの傾斜角に対する結晶粒の頻度の合計に対する前記0°から10°までの傾斜角を有する結晶粒の頻度の合計の割合(頻度割合)を、着目する面の法線方向に配向した割合とし「%」で算出し、この割合が特定値以上のものを配向した硬質被覆層と扱う。
また、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の占める割合は、前記観察範囲の全測定点数を分母とし、NaCl型の面心立方構造を示すKikuchiパターンが測定された測定点数を分子として、それらの割合から「面積%」を算出する。
工具基体:
工具基体は、この種の工具基体として従来公知の基材であれば、本発明の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例を挙げるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、さらに、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、cBN焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかである。
下部層および上部層:
硬質被覆層として前記TiAlN層を有する層を設けることによって十分な耐摩耗性、耐欠損性、耐チッピング性を有するが、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層を含む下部層、および/または、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層と組み合わせて使用してもよい。
なお、前記Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物ならびに酸化アルミニウム層の組成は、化学量論的割合のものに限定されるものではない。
製造方法:
本発明のTiAlN層は、例えば、次のような条件でCVDにより作製することができる。
逃げ面の成膜:
すくい面をマスクし、以下の条件で逃げ面を成膜する。
反応ガス組成(%は容量%を表し、ガス群Aとガス群Bの和を100容量%とする)
ガス群A:NH:0.3~0.6%、Ar:25.0~35.0%、
:20.0~30.0%
ガス群B:AlCl:0.04~0.06%、
TiCl:0.01~0.03%、N:25.0~30.0%、
:残
反応雰囲気圧力:4.5~5.5kPa
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:8.0~15.0秒
1周期当たりのガス供給時間0.2~0.6秒
ガス群Aとガス群Bの供給の位相差0.10~0.15秒
すくい面の成膜:
逃げ面をマスクし、以下の条件で逃げ面を成膜する。
反応ガス組成(%は容量%を表し、ガス群Aとガス群Bの和を100容量%とする)
ガス群A:NH:1.0~1.5%、N:0.0~5.0%、
:55.0~60.0%、
ガス群B:AlCl:0.60~0.90%、
TiCl:0.20~0.30%、N:0.0~12.0%、
:残
反応雰囲気圧力:4.5~5.5kPa
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:1.0~5.0秒
1周期当たりのガス供給時間0.15~0.25秒
ガス群Aとガス群Bの供給の位相差0.10~0.15秒
以下に実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
原料粉末として、いずれも1~3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、NbC粉末、Cr粉末およびCo粉末を用意した。これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370~1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結した。焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体Aを作製した。
次に、これら工具基体Aの表面にCVD装置を用いて、TiAlN層を形成した。CVDによる成膜条件は次のとおりである。
表3、表4に示される成膜条件A~Hにより所定時間の成膜を行った。
この条件で、TiAlN層を形成することにより、表6に示す平均層厚、Alの平均含有割合xを有する本発明被覆工具1~8を製造した。
なお、本発明被覆工具1~3および8については、表2に示される形成条件で、表5に示される下部層を形成した。
また、比較の目的で、工具基体Aの表面に表3、表4に示される形成条件でCVDにより成膜を行うことにより、表7に示される平均層厚を有し、少なくともTiAlN層を含む硬質被覆層を蒸着形成して比較被覆工具1~8を製造した。
なお、比較被覆工具1~4については、表2に示される形成条件で、表5に示される下部層を形成した。
平均層厚は、本発明被覆工具1~8、比較被覆工具1~8の逃げ面およびすくい面において、各構成層の工具基体に垂直な方向の断面(縦断面)を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率5000倍で観察し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して求めた。
TiAlN層のAlの平均含有割合xについては、電子線マイクロアナライザ(Electron-Probe-Micro-Analyser:EPMA)を用い、工具基体の表面を研磨した試料において、逃げ面およびすくい面に対して電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点の平均から求めた。
表6、表7に、前記で求めたxの値を示す(xは、TiとAlの原子数の合量に対するAlの原子数の比であって、TiとAlの測定結果を用い、Nや不可避的に含まれるCやOなどの他の元素は用いずに算出している)。
工具基体の表面の法線とNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の特定の結晶面の法線とのなす角度の測定とその割合、面心立方構造の面積割合(面積%)は、前述した方法で求め、表6、表7に示した。なお、これら表において、「{111}面の法線方向配向層」の「上)配向割合30%以上の測定点の刃先稜線からの最遠距離(μm)」、「{100}面の法線方向の配向層」の「上)配向割合30%以上の{100}面の法線配向層からの最遠距離(μm)」および「{110}面の法線方向配向層」の「上)配向割合20%以上の測定点の刃先稜線からの最遠距離(μm)」に数値の記載のないもの(「-」の記載のもの)は、それぞれ、本発明で規定する配向割合を有する領域が50μm未満であることを示している。また、「下)配向割合」と記載している数値は、その欄の「上)」で示した位置(>1000のときは1000μmの位置)の配向割合を示した。
Figure 2022030402000002
Figure 2022030402000003
Figure 2022030402000004
Figure 2022030402000005
Figure 2022030402000006
Figure 2022030402000007
Figure 2022030402000008
次に、前記各種の被覆工具をいずれもカッタ径80mmの合金鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、本発明被覆工具1~8、比較被覆工具1~8について、以下に示す、析出硬化系ステンレス鋼の高速断続切削の一種である湿式高速正面フライス、センターカット切削加工試験(切削試験1)を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削試験1:析出硬化系ステンレス鋼の湿式高速正面フライス、センターカット切削加工
カッタ径: 80mm
被削材: JIS・SUS630幅60mm、長さ250mmのブロック材
切削速度: 350m/min
切り込み: 2.0mm
一刃送り量: 0.3mm/刃
切削時間: 12分
Figure 2022030402000009
表8に示される結果から、本発明の被覆工具は析出硬化系ステンレス鋼等の高速断続切削加工に用いた場合でも、チッピング、欠損の発生もなく、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、TiAlN層において、本発明で規定する事項を一つでも満足していない比較被覆工具は、析出硬化系ステンレス鋼等の高速断続切削加工において、チッピング等の異常損傷の発生、あるいは、摩耗進行により、短時間で寿命に至ることが明らかである。
<実施例2>
原料粉末として、いずれも1~3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、TiN粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表9に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370~1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格CNMG120412のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体B~Dをそれぞれ製造した。
次に、これら工具基体B~Dの表面にCVD装置を用いて、TiAlN層を形成した。CVDによる成膜条件は次のとおりである。
表3、表4に示される成膜条件A~Hにより所定時間の成膜を行った。
この条件で、TiAlN層を形成することにより、表10、11に示す平均層厚、Alの平均含有割合xを有する本発明被覆工具9~16ならびに比較被覆工具9~16を製造した。
なお、本発明被覆工具9~12および16、比較被覆工具9~12については、表2に示される形成条件で、表5に示される下部層を形成した。
平均層厚、TiAlN層のAlの平均含有割合x、工具基体の表面の法線とNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の特定の結晶面の法線とのなす角度の測定とその割合、面心立方構造の面積割合(面積%)は、前述した方法で求め、また、前述した表記方法で表記し、表10、表11に示した。
Figure 2022030402000010
Figure 2022030402000011
Figure 2022030402000012
つぎに、前記各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具9~16、比較被覆工具9~16について、以下に示
す、Ni基耐熱合金の湿式連続旋削加工試験(切削試験2)を実施し、いずれも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
結果を表12に示す。なお、比較被覆工具9~16については、チッピング発生が原因で寿命に至ったため、寿命に至るまでの時間を示す。
切削試験2:Ni基耐熱合金の湿式連続旋削加工
被削材:Ni-19Cr-19Fe-3Mo-0.9Ti-0.5Al-5.1(Nb+Ta)合金の丸棒
切削速度: 100m/min
切り込み: 0.7mm
送り: 0.3mm/rev
切削時間: 10分
Figure 2022030402000013
表12に示される結果から、本発明の被覆工具はNi基耐熱合金等の湿式連続旋削加工に用いた場合でも、チッピング、欠損の発生もなく、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、TiAlN層において、本発明で規定する事項を一つでも満足していない比較被覆工具は、Ni基耐熱合金等の湿式連続旋削加工において、チッピング等の異常損傷の発生、あるいは、摩耗進行により、短時間で寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の被覆工具は、熱伝導率が小さい被削材に対して高負荷が作用する切削加工ばかりでなく、各種の被削材の被覆工具として用いることができ、しかも、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分に満足する対応ができるものである。

Claims (3)

  1. 工具基体と、該工具基体の表面に設けた硬質被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
    (a)前記硬質被覆層は、TiとAlの複合窒化物層を少なくとも含み、
    (b)前記TiとAlの複合窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒を含み、
    (c)前記TiとAlの複合窒化物層を組成式:(Ti(1-x)Al)Nで表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合x(但し、xは原子比)が、0.60≦x≦0.95を満足し、
    (d)前記TiとAlの複合窒化物層は、前記工具基体の表面の法線方向に対して{111}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内である前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が30%以上を占める配向した層を、刃先稜線から逃げ面方向に、前記刃先稜線からの距離が50μmを超えない前記刃先稜線に最も近い点と、前記刃先稜線からの距離が100~500μmの前記刃先稜線に最も遠い点との間に連続的に有し、
    (e)前記TiとAlの複合窒化物層は、前記配向した層の前記刃先稜線から最も遠い点を起点に、前記刃先稜線から前記逃げ面方向へ遠ざかる方向の距離が50~500μmの範囲の中の50μm以上の長さの領域において、前記工具基体の表面の法線方向に対して{100}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内である前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が30%以上を占める配向した層を有し、
    (f)前記TiとAlの複合窒化物層は、前記工具基体の表面の法線方向に対して{111}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内である前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が30%以上を占める配向した層を、刃先稜線からすくい面方向に、前記刃先稜線からの距離が50μmを超えない前記刃先稜線に最も近い点と、前記刃先稜線からの距離が100μm以上の前記刃先稜線に最も遠い点との間に連続的に有する、
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記TiとAlの複合窒化物層は、前記刃先稜線から前記逃げ面方向へ遠ざかる方向の距離が100~600μmの範囲の中の50μm以上の領域において、前記工具基体の表面の法線方向に対して{110}面の法線方向がなす傾斜角が10°以内である前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が20%以上を占める配向した層を有する請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記TiとAlの複合窒化物層は、前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の占める割合が50面積%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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