JP2022030256A - 炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収方法 - Google Patents

炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収方法 Download PDF

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Takamasa Wajima
紘平 冨田
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Abstract

【課題】炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を回収する方法であって、炭素繊維強化樹脂に対して加熱処理を行う方法でありながら、当該処理による劣化が少ない炭素繊維を回収することが可能な方法を提供する。【解決手段】本開示の炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収方法は、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂を、溶媒に浸漬していない状態で、アルカリ金属化合物の存在下、400℃未満の温度で加熱処理する工程を有する。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 1.掲載アドレス https://confit.atlas.jp/guide/event/mmij2020a/subject/2K62201-08-05/crosssearch 2.掲載日 令和2年1月10日 3.公開者 冨田紘平、和嶋隆昌
本開示は、炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収方法に関する。
炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂は、軽量であり、しかも強度および耐久性が高いという優れた特徴を有するため、スポーツ産業、一般産業および航空宇宙産業などの様々な分野で使用されている。
炭素繊維強化樹脂の生産量は年々増加しており、炭素繊維強化樹脂の使用済み製品の廃材も年々増加している。また、炭素繊維強化樹脂を製造する際に、端材および屑類などの工程廃材も多く発生する。しかしながら、その優れた耐久性のため、炭素繊維強化樹脂の廃材を通常の焼却炉で処理することは困難である。このため、廃材の大半は、破砕および粉砕後に埋立処理されているが、埋立処理のための処分場が不足している。また、炭素繊維は、その製造に多量のエネルギーを必要とするため、高価である。したがって、炭素繊維強化樹脂の廃材を処理するとともに炭素繊維を回収する技術が望まれている。
炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を回収する方法としては、例えば、有機溶媒を含む処理液に炭素繊維強化樹脂を浸漬し、マトリックス樹脂を分解および溶解させる溶解処理法(例えば特許文献1参照)、炭素繊維強化樹脂を加熱することによってマトリックス樹脂を熱分解させる熱分解処理法(例えば特許文献2参照)が知られている。
特開2005-255835号公報 国際公開第2018/212016号
溶解処理法は、有機溶媒を繰り返し使用することが困難であり、高コストとなる傾向にある。そこで本発明者らは、熱分解処理法について検討したが、従来技術の熱分解処理法は、例えば500℃以上の高温加熱を必要とし、回収される炭素繊維の劣化が大きい傾向にある。
本開示の課題は、炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を回収する方法であって、炭素繊維強化樹脂に対して加熱処理を行う方法でありながら、当該処理による劣化が少ない炭素繊維を回収することが可能な方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するため検討した結果、以下に記載の回収方法により上記課題を解決できることを見出した。すなわち本開示の炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収方法は、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂を、溶媒に浸漬していない状態で、アルカリ金属化合物の存在下、400℃未満の温度で加熱処理する工程を有する。
本開示によれば、炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を回収する方法であって、炭素繊維強化樹脂に対して加熱処理を行う方法でありながら、当該処理による劣化が少ない炭素繊維を回収することが可能な方法を提供することができる。
図1は、実施例の回収試験で回収されたガス収量を示す。 図2は、回収試験で得られた固体残渣の残存率を示す。 図3は、回収試験で得られた、ふるい上の固体残渣量を示す。 図4は、回収試験で得られた固体残渣の外観写真である。 図5は、回収試験で得られた固体残渣の外観写真である。 図6は、回収試験で得られた濾液の外観写真である。 図7は、回収試験で得られた濾液のGC-MSの分析結果を示す。 図8は、回収試験で得られた固体残渣のSEM写真である。 図9は、回収試験で回収されたガス収量を示す。
本明細書において数値範囲を示す「A~B」は、「~」の前後に記載された数値Aおよび数値Bを、下限値および上限値、または上限値および下限値として含む。例えば「1~10」は、1以上10以下の数値範囲を意味する。
[炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収方法]
本開示の炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収方法(以下「回収方法(R)」ともいう)は、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂に対して特定条件下で加熱処理を行う工程(以下「工程(1)」ともいう)を有する。
<工程(1)>
工程(1)では、炭素繊維強化樹脂を、溶媒に浸漬していない状態で、アルカリ金属化合物の存在下、400℃未満の温度で加熱処理する。この加熱処理によって、炭素繊維強化樹脂に含まれるマトリックス樹脂を分解させることができる。炭素繊維強化樹脂を加熱処理して得られた物を以下「熱処理物」ともいう。
≪炭素繊維強化樹脂≫
炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有し、通常はマトリックス樹脂中に強化材としての炭素繊維を含有する繊維強化樹脂である。炭素繊維強化樹脂は、一般的に、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とも呼ばれる。
(炭素繊維)
炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石炭ピッチまたは石油ピッチ等のピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、気相成長系炭素繊維が挙げられ、PAN系炭素繊維およびピッチ系炭素繊維が好ましい。炭素繊維強化樹脂は、1種または2種以上の炭素繊維を含有することができる。
炭素繊維は、単繊維における平均直径(平均繊維径)が0.1~30μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましい。炭素繊維の直径は、例えば、JIS R7607「炭素繊維-単繊維の直径及び断面積の試験方法」に準拠した試験方法で求めることができる。炭素繊維は、長繊維でも短繊維でもよい。炭素繊維の平均繊維長は、特に限定されず、例えば100mm以下である。直径および繊維長の平均値は、例えば、回収方法(R)によって得られた炭素繊維から任意に選択された100個に基づき算出することができる。
炭素繊維の形態としては、例えば、複数の単繊維を一方向に引き揃えた繊維束(フィラメントまたはトウ)、繊維束が任意の長さに切断されたチョップド糸、チョップド糸よりもさらに細かく分断されたミルド;一方向材(UD材)、織物、編物、不織布などの炭素繊維基材が挙げられる。炭素繊維強化樹脂は、1種または2種以上の形態の炭素繊維を含有することができる。また、炭素繊維強化樹脂は、1つまたは複数の炭素繊維基材を含有することができる。
炭素繊維強化樹脂中の炭素繊維の含有割合は、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。炭素繊維の含有割合は、例えば、後述する実施例欄に記載した熱重量分析により求めることができ、また、JIS K7075「炭素繊維強化プラスチックの繊維含有率及び空洞率試験方法」に準拠した試験方法で求めることもできる。
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂から形成された樹脂、熱可塑性樹脂から形成された樹脂が挙げられる。マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂から形成された樹脂が好ましく、熱硬化性樹脂が熱硬化して形成された樹脂がより好ましい。炭素繊維強化樹脂は、1種または2種以上のマトリックス樹脂を含有することができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、シアネートエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂が挙げられ、アルカリ金属化合物の存在下における加熱処理により分解が良好に進む点から、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。マトリックス樹脂は、1種の熱硬化性樹脂から形成されていてもよく、2種以上の熱硬化性樹脂から形成されていてもよい。
熱硬化性樹脂は、加熱によって硬化する樹脂であってもよく、加熱とともに硬化剤の作用によって硬化する樹脂であってもよい。エポキシ樹脂の場合は、硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、およびアルコール類のジグリシジルエーテル化物、ならびにこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、および水添体が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。マトリックス樹脂は、1種の熱可塑性樹脂から形成されていてもよく、2種以上の熱可塑性樹脂から形成されていてもよい。
マトリックス樹脂としては、一実施形態において、熱硬化性樹脂が熱硬化して架橋構造が形成された樹脂であって、架橋構造中にエステル結合およびアミド結合等の官能基を含む樹脂が好ましい。このような架橋構造を有するマトリックス樹脂は、上記官能基がアルカリ金属の水酸化物などのアルカリ金属化合物によってさらに良好に分解され、低温でも低分子化すると考えられる。
炭素繊維強化樹脂中のマトリックス樹脂の含有割合は、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
(他の成分)
炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維およびマトリックス樹脂以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などの添加剤が挙げられる。炭素繊維強化樹脂は、1種または2種以上の添加剤を含有することができる。
(炭素繊維強化樹脂の形態)
炭素繊維強化樹脂は、ペレット、プリプレグおよびその積層体、スタンパブルシートおよびその積層体などの中間材の形態でもよく、製品の形態でもよい。炭素繊維強化樹脂は、使用済み製品の廃材でもよく、また、中間材または製品の製造過程で生じる、端材および屑類などの工程廃材でもよい。プリプレグは、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させて得られる、熱硬化性樹脂が半硬化状態のシートである。スタンパブルシートは、炭素繊維に熱可塑性樹脂を含浸させて得られるシートである。炭素繊維強化樹脂としては、使用済み製品の廃材、または中間材もしくは製品の製造過程で生じる工程廃材を用いることが好ましい。回収方法(R)を用いることにより、通常の焼却炉で処理することが困難であった上記廃材を、省エネルギーかつ低コストで容易に処理することができる。
製品の場合は、製品全体が炭素繊維強化樹脂であってもよく、製品の一部が炭素繊維強化樹脂であってもよい。すなわち工程(1)における加熱処理の対象は、少なくとも炭素繊維強化樹脂を含んでいればよく、例えば炭素繊維強化樹脂と他の部材との複合体であってもよい。他の部材としては、例えば、炭素繊維以外の強化繊維を含有する繊維強化樹脂、強化繊維を含有しない樹脂成形品、金属、セラミックスが挙げられる。
製品としては、例えば、スポーツ産業、一般産業および航空宇宙産業における製品が挙げられる。具体的には、スポーツ産業では、ゴルフクラブのシャフト、釣り竿、スキーポール、テニスおよびバドミントン用のラケット枠材、野球用のバット、ホッケー用のスティック等の製品に用いられる部材が挙げられる。一般産業では、自動車、船舶および鉄道車両における、構造材、ドライブシャフト、フライホイールおよび板バネ;各種容器(例:高圧タンク、濾過タンク)、ローラ、ケーブル、屋根材、風車ブレード等の製品に用いられる部材が挙げられる。航空宇宙産業では、航空機の部材(例:主翼、尾翼または胴体に用いられる構造材)、ロケットの部材が挙げられる。
炭素繊維強化樹脂の形状は、特に限定されない。炭素繊維強化樹脂の形状としては、例えば、板状、シート状、角パイプ状、丸パイプ状、断面L形状、断面T形状、断面C形状、断面H形状、その他の任意の立体形状が挙げられる。
炭素繊維強化樹脂が大型の中間材または製品である場合は、必要に応じて炭素繊維強化樹脂を切断機により適当な大きさに切断してもよい。長繊維を含有する炭素繊維強化樹脂を切断する場合、長繊維をできるだけ長尺で回収できる点から、炭素繊維強化樹脂に含まれる長繊維の長手方向に沿って炭素繊維強化樹脂を切断することが好ましい。
≪アルカリ金属化合物≫
アルカリ金属化合物は、加熱処理においてマトリックス樹脂の分解触媒として作用すると考えられる。アルカリ金属化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の化合物であり、例えば、アルカリ金属の、水酸化物、アルコラート、フェノラート、無機酸塩(例:リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩)、有機酸塩が挙げられる。これらの中でも、マトリックス樹脂の分解を低温で良好に進行させることができる点から、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムがより好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。アルカリ金属化合物は、1種または2種以上用いることができる。
アルカリ金属化合物を用いることで、400℃未満、特に300℃以下という低温でもマトリックス樹脂の分解が良好に進み、一実施形態では、マトリックス樹脂が、ガス状化合物とともに、溶媒可溶性の非ガス状化合物へと分解する。回収方法(R)では上記低温で加熱処理を行えるため、500℃以上の高温加熱を必要とする従来技術の熱分解処理法と比べ、劣化が少なく、強度および耐久性の高い炭素線維を回収することができる。
工程(1)後、アルカリ金属化合物は、通常、炭素繊維強化樹脂の熱処理物とともに残存する。このため、アルカリ金属化合物を回収し、再利用することが可能であり、コストの点で有利である。
後述するように、アルカリ金属化合物の粒子を用いることが好ましい。アルカリ金属化合物の粒子の形状としては、例えば、球状、フレーク状、不定形状が挙げられる。また、アルカリ金属化合物は、例えば、粉末状、顆粒状である。アルカリ金属化合物の粒子を用いる場合は、粒径は特に限定されない。
アルカリ金属化合物の使用量は、マトリックス樹脂の分解が良好に進む点から、炭素繊維強化樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは100質量部以上、特に好ましくは150質量部以上である。アルカリ金属化合物の使用量の上限は特に限定されないが、コストの点から、アルカリ金属化合物の使用量は、炭素繊維強化樹脂100質量部に対して、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは300質量部以下である。
≪加熱処理の条件≫
工程(1)では、炭素繊維強化樹脂を、溶媒に浸漬していない状態で、加熱処理する。本開示における「加熱処理」とは、炭素繊維強化樹脂を有機溶媒、水などの溶媒に浸漬していない状態で加熱し、マトリックス樹脂を低分子化させる処理を意味し、炭素繊維強化樹脂を溶媒に浸漬した状態で加熱し、溶媒中の反応場を利用して特定の結合を開裂させてマトリックス樹脂を低分子化させる溶解処理法とは異なる。上記有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、アミド溶媒が挙げられる。
なお、上記加熱処理は、例えば、アルカリ金属化合物の溶液を炭素繊維強化樹脂に塗布した後に、当該樹脂を加熱する方法や、炭素繊維強化樹脂をアルカリ金属化合物の溶液に浸漬し次いで引き上げた後に、当該樹脂を加熱する方法を包含する。また、上記加熱処理は、炭素繊維強化樹脂をアルカリ金属化合物の融解液に浸漬する方法を包含する。すなわち、上記溶媒には、アルカリ金属化合物の融解液は含まれない。これらの方法では、アルカリ金属化合物を炭素繊維強化樹脂の表面に効果的に分散および/または被覆させることができる。
工程(1)では、溶媒が存在しない状態(ただし、例えば水酸化ナトリウムのように、潮解性を有するアルカリ金属化合物の場合は、吸収された水分が存在してもよい)で、炭素繊維強化樹脂を加熱処理することが好ましい。
工程(1)では、炭素繊維強化樹脂をアルカリ金属化合物の存在下に加熱処理する。本開示における「アルカリ金属化合物の存在下」とは、アルカリ金属化合物と炭素繊維強化樹脂とが少なくとも一部において接触している状態を意味する。例えば、アルカリ金属化合物の粒子と炭素繊維強化樹脂とを接触させてもよく、アルカリ金属化合物の融解液と炭素繊維強化樹脂とを接触させてもよく、アルカリ金属化合物の溶液(例:水溶液)を炭素繊維強化樹脂に塗布してもよく、炭素繊維強化樹脂をアルカリ金属化合物の溶液(例:水溶液)に浸漬した後に引き上げてもよい。
これらの中でも、充分な量のアルカリ金属化合物を炭素繊維強化樹脂に接触させることができる点から、アルカリ金属化合物の粒子と炭素繊維強化樹脂とを接触させて、上記加熱を行うことが好ましい。例えば、炭素繊維強化樹脂上に上記粒子を配置する、上記粒子中に炭素繊維強化樹脂を埋没させる等の態様が挙げられる。
加熱処理は、従来公知の反応器内において行うことができる。加熱方法としては、例えば、熱風などを用いた対流加熱;赤外線、遠赤外線、マイクロ波などを用いた放射加熱;熱板接触などによる伝導加熱;およびこれらの2つ以上の任意の組合せが挙げられる。
加熱処理における炭素繊維強化樹脂の加熱温度は、400℃未満であり、好ましくは380℃以下、より好ましくは350℃以下、さらに好ましくは330℃以下、よりさらに好ましくは300℃以下、特に好ましくは290℃以下、280℃以下または260℃以下であり、好ましくは200℃を超え、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上である。
加熱温度が400℃未満であれば、炭素繊維の劣化を抑制することができ、特に300℃以下であれば、炭素繊維の劣化を充分に抑制することができ、したがって、強度(例:引張強度)に優れる炭素繊維を回収することができる。また、このような低温条件であれば、高温条件を必要とする従来技術の熱分解処理法に比べてマトリックス樹脂の炭化が抑制されるので、炭化物が少なくなり、炭素繊維の分離が容易となる。加熱温度が200℃超であれば、マトリックス樹脂の分解を充分に進行させることができる。
加熱処理における炭素繊維強化樹脂の加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定される。加熱時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、さらに好ましくは15分以上、よりさらに好ましくは25分以上、特に好ましくは50分以上である。加熱時間が下限値以上であれば、マトリックス樹脂の分解を充分に進行させることができる。加熱時間の上限は特に限定されないが、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下、さらに好ましくは2時間以下である。
炭素繊維強化樹脂に対する加熱処理は、常圧下で行ってもよく、減圧下または加圧下で行ってもよい。加熱処理は、常圧下で行うことが好ましい。
炭素繊維強化樹脂に対する加熱処理は、炭素繊維表面の酸化劣化を抑制でき、強度(例:引張強度)がバージン材と遜色ない程度の炭素繊維を回収できる点から、非酸化性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。非酸化性ガス雰囲気は、酸素ガスを含まない雰囲気、または酸素ガスを実質的に含まない雰囲気である。酸素ガスを実質的に含まない雰囲気とは、炭素繊維強化樹脂を加熱する際に、酸素ガスが意図的に加えられた雰囲気は包含しないが、不可避的に酸素ガスが混入した雰囲気は包含する。非酸化性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスが挙げられる。
炭素繊維強化樹脂を上記条件下で加熱することによって、通常、マトリックス樹脂が分解して少なくとも一部がガス状化合物として気化し、例えば固体状の熱処理物が得られる。熱処理物は、炭素繊維を含み、さらに非ガス状化合物を含んでもよい。
工程(1)における好ましい実施形態は、安全面およびコスト面などの点から、アルカリ金属化合物の使用量が、炭素繊維強化樹脂100質量部に対して、150~300質量部であり、加熱温度が220~330℃であり、加熱時間が50分~2時間である。
工程(1)で得られた熱処理物は、必要に応じて下記工程(2)に供される。
<ガス回収工程>
回収方法(R)の一実施形態は、工程(1)の加熱処理によってマトリックス樹脂から発生するガス(ガス状化合物)を回収する工程をさらに有する。
工程(1)において炭素繊維強化樹脂を加熱処理すると、通常、マトリックス樹脂の少なくとも一部はガス状化合物へと分解する。ガス状化合物としては、マトリックス樹脂の種類によるが、例えば、水素(H2)およびメタン(CH4)などの、燃料として利用可能なガスが挙げられる。アルカリ金属化合物の存在下におけるエポキシ樹脂の分解においては、通常、水素(H2)およびメタン(CH4)が発生する。したがって、回収方法(R)は、炭素繊維だけでなく、燃料として利用可能なガスも回収することができる。
<工程(2)>
工程(1)においてマトリックス樹脂が充分にガス状化合物へと分解した場合は、得られた熱処理物をそのまま再生炭素繊維として用いることができる。マトリックス樹脂がガス状化合物と非ガス状化合物とに分解した場合は、得られた熱処理物から炭素繊維を分離することが好ましい。
すなわち回収方法(R)の一実施形態は、工程(1)の加熱処理で得られた熱処理物から炭素繊維を分離する工程(以下「工程(2)」ともいう)をさらに有する。
分離方法は特に限定されないが、例えば、熱処理物を洗浄液で洗浄する方法が挙げられる。一実施形態において、工程(1)の加熱処理でマトリックス樹脂の少なくとも一部を溶媒可溶性の非ガス状化合物(エポキシ樹脂の場合は例えばフェノール類)へと分解させることができ、したがって、熱処理物中に含まれる非ガス状化合物を、洗浄液中に溶解させることができる。
洗浄方法としては、例えば、浸漬洗浄、超音波洗浄、スプレー洗浄、シャワー洗浄、ジェット洗浄が挙げられ、これらの2種以上の方法を組み合わせてもよい。浸漬洗浄および超音波洗浄の場合は、熱処理物を洗浄液に浸漬し、必要に応じて撹拌した後、炭素繊維を洗浄液から分離する。分離方法としては、例えば、濾過、沈殿分離、遠心分離が挙げられる。なお、従来技術の溶解処理法では、炭素繊維強化樹脂を溶解処理液に浸漬し、樹脂を低分子化させて処理液に溶解させた後、炭素繊維と樹脂を含む処理液とを分離する。これに対して、工程(2)を有する一実施形態の回収方法(R)は、炭素繊維強化樹脂を溶解処理液に浸漬していない状態で加熱した後、分解したマトリックス樹脂を含む熱処理物を洗浄液で洗浄するので、溶解処理法とは異なる。
洗浄液としては、例えば、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、γ-ブチロラクトン等のエステル溶媒;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶媒が挙げられる。洗浄液としては水および有機溶媒の混合液を用いてもよく、また、有機溶媒は1種または2種以上用いることができる。洗浄液としては、少なくとも水を含む洗浄液が好ましく、水の含有割合が50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上または80質量%以上の洗浄液がより好ましい。
また、洗浄液としては、塩酸、リン酸水溶液などの酸性水溶液を用いてもよい。
洗浄の条件は特に限定されない。洗浄液の温度は、常温でもよいが、洗浄液が液状を保つ温度であってもよく、例えば溶媒可溶性の非ガス状化合物およびアルカリ金属化合物の溶解量を高めるために加温してもよい。例えば少なくとも水を含む洗浄液を用いる場合は、洗浄液の温度は、好ましくは5~90℃、より好ましくは10~80℃である。また、洗浄時間も特に限定されない。
上記洗浄方法により、熱処理物に圧縮応力、引張応力、せん断応力などの機械的な力を加える方法に比べて炭素繊維を劣化させることなく、熱処理物から炭素繊維を容易に分離することができる。
工程(1)の加熱処理後の反応器内には、熱処理物の他に、通常、工程(1)で用いたアルカリ金属化合物も存在する。熱処理物およびアルカリ金属化合物を洗浄液で洗浄することにより、アルカリ金属化合物を非ガス状化合物とともに洗浄液中に溶解させることができる。このようにして得られる溶液を「樹脂溶解液」ともいう。樹脂溶解液を公知の方法で処理することにより、アルカリ金属化合物を回収することができる。また、樹脂溶解液を燃料として使用した後に、アルカリ金属化合物を回収して再利用することもできる。紙パルプの製造過程で回収されるいわゆる黒液は、燃料として使用(焼却)した後に、残渣の無機物が回収および再利用されているが、この黒液と同様の使用プロセスが樹脂溶解液について想定される。
炭素繊維を洗浄した後、オーブン等の乾燥機を用いて炭素繊維を乾燥してもよい。
回収方法(R)は、従来技術の熱分解処理と比べて、炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収を低温で行うことができ、また、加熱処理中に発生するガスを燃料として利用することもできる。また、マトリックス樹脂の分解触媒として用いられるアルカリ金属化合物は繰り返し利用可能であるため、回収方法(R)のランニングコストも従来技術に比べて低い。さらに、回収方法(R)は、炭素繊維強化樹脂に含まれていたときの形態のままで、強度および耐久性に優れる、再利用可能な炭素繊維を回収することができる。
以上の回収方法(R)を用いて、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂から、省エネルギーかつ低コストで、高品位な再生炭素繊維を製造することができる。
[炭素繊維強化樹脂の製造方法]
本開示の炭素繊維強化樹脂の製造方法(以下「製造方法(P)」ともいう)は、上述した回収方法(R)を用いて、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を再生炭素繊維として得る工程、および再生炭素繊維と樹脂とを用いて炭素繊維強化樹脂を製造する工程を有する。
回収方法(R)により回収した再生炭素繊維は、そのまま用いることができる。
また、再生炭素繊維に対して、繊維の取扱い性を改良するために、従来公知のサイジング処理を行ってもよい。サイジング処理は、例えば、炭素繊維集束用の処理剤(サイジング剤)を炭素繊維表面に塗布し、必要に応じて加熱して、サイジング剤と炭素繊維とを結合させる処理である。サイジング剤としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が挙げられる。再生炭素繊維に対するサイジング剤の付着量は、再生炭素繊維100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。
再生炭素繊維に対して、炭素繊維とマトリックス樹脂との密着性を高めるために、陽極電解酸化やオゾン酸化によって炭素繊維表面を酸化することで、含酸素官能基を導入する表面処理を行ってもよい。
炭素繊維強化樹脂を製造するために用いられる樹脂としては、例えば、(マトリックス樹脂)欄に記載した、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂が挙げられ、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂がより好ましく、エポキシ樹脂がさらに好ましい。
回収方法(R)で得られた炭素繊維とともに、必要に応じて、リサイクル品ではない炭素繊維(バージン材)や、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維などの各種の無機繊維または有機繊維を用いることができる。
製造方法(P)で得られる炭素繊維強化樹脂は、ペレット、プリプレグおよびその積層体、スタンパブルシートおよびその積層体などの中間材の形態でもよく、製品の形態でもよい。製品の場合は、製品全体が炭素繊維強化樹脂であってもよく、製品の一部が炭素繊維強化樹脂であってもよい。例えば炭素繊維強化樹脂と他の部材との複合体であってもよい。他の部材としては、例えば、炭素繊維以外の強化繊維を含有する繊維強化樹脂、強化繊維を含有しない樹脂成形品、金属、セラミックスが挙げられる。
再生炭素繊維を用いて炭素繊維強化樹脂を製造する方法としては、従来公知の製造方法を用いることができる。以下に数例を記載するが、製造方法(P)はこれらの例になんら限定されない。
ペレットを製造する方法としては、例えば、複数の単繊維を一方向に引き揃えた繊維束(フィラメントまたはトウ)、繊維束が任意の長さに切断されたチョップド糸、チョップド糸よりもさらに細かく分断されたミルド等の炭素繊維に、マトリックス樹脂を形成する樹脂を含浸させ複合化させる方法が挙げられる。
樹脂の含浸方法としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、プレス機、高速ミキサー、射出成形機を用いる方法が挙げられる。複合化の際に、樹脂とともに、必要に応じて、添加剤を用いてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤が挙げられる。
炭素繊維強化樹脂の製品は、例えば、上記ペレットを成形することにより得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、中空成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、発泡射出成形法が挙げられる。
プリプレグの製造方法としては、例えば、熱硬化性樹脂を離型シート上に塗布して樹脂フィルムを作成し、次いで当該樹脂フィルムと炭素繊維基材とを重ね合わせ、加熱および加圧することにより、炭素繊維基材に半硬化した熱硬化性樹脂を含浸させる方法;熱硬化性樹脂を加熱して低粘度化させてから、炭素繊維基材に当該樹脂を含浸させる方法;熱硬化性樹脂を溶媒に溶解させて樹脂の溶液を得て、炭素繊維基材を当該溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。
炭素繊維強化樹脂の製品は、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、シートワインディング法、プルトルージョン成形法、レジントランスファー成形法、シートモールディングコンパウンドプレス成形法により得ることができる。
一例を挙げると、炭素繊維強化樹脂の製品は、例えば、プリプレグを加熱および加圧して、あるいはプレプレグを複数枚積層し、加熱および加圧して、半硬化状態の熱硬化性樹脂を充分に硬化させることにより得ることができる。
本開示は、例えば以下の[1]~[12]に関する。
[1]炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂を、溶媒に浸漬していない状態で、アルカリ金属化合物の存在下、400℃未満の温度で加熱処理する工程を有する、炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収方法。
[2]上記加熱処理の温度が、200℃を超える温度である、上記[1]に記載の回収方法。
[3]上記加熱処理を非酸化性ガス雰囲気下で行う、上記[1]または[2]に記載の回収方法。
[4]上記アルカリ金属化合物が、アルカリ金属の水酸化物である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の回収方法。
[5]上記炭素繊維強化樹脂100質量部に対して上記アルカリ金属化合物を10~1000質量部用いる、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の回収方法。
[6]上記炭素繊維強化樹脂が、使用済み製品の廃材、中間材の製造過程で生じる工程廃材、および製品の製造過程で生じる工程廃材から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の回収方法。
[7]上記加熱処理によって上記マトリックス樹脂から発生するガスを回収する工程をさらに有する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の回収方法。
[8]上記加熱処理で得られた熱処理物から上記炭素繊維を分離する工程をさらに有する、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の回収方法。
[9]上記炭素繊維を分離する工程において、上記熱処理物を洗浄液で洗浄する、上記[8]に記載の回収方法。
[10]上記洗浄液が、少なくとも水を含む、上記[9]に記載の回収方法。
[11]上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の回収方法を用いて、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を再生炭素繊維として得る工程を有する、再生炭素繊維の製造方法。
[12]上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の回収方法を用いて、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を再生炭素繊維として得る工程、および上記再生炭素繊維と樹脂とを用いて炭素繊維強化樹脂を製造する工程を有する、炭素繊維強化樹脂の製造方法。
以下、本開示の回収方法を試験例に基づきより詳細に説明する。
[試験片]
国内で製造された炭素繊維強化樹脂(濾過タンクの構造材、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂から形成されたもの)の廃材を1cm×1cmの大きさに切断し、試験片を作成した。
試験片の熱重量分析(TGA;大気雰囲気下または窒素ガス雰囲気下、昇温速度10℃/min)を行った。TGAの結果より、大気雰囲気下および窒素ガス雰囲気下ともに、重量減少は2段階で起きていたことから、300℃付近からマトリックス樹脂の分解による重量減少が起こり、600℃付近から炭素繊維の分解による重量減少が起こると考えられる。マトリックス樹脂の重量減少が終わる600℃付近の重量比から、試験片中の炭素繊維の含有割合は約65質量%であり、マトリックス樹脂の含有割合は約35質量%であると推測した。
[回収試験]
炭素繊維強化樹脂の廃材(上記試験片)1gと水酸化ナトリウムの粉末0g、1g、2gまたは3gとをステンレス製反応器に入れ、反応器に窒素ガスを100mL/minで45分間流通させ、窒素置換した。その後、流量20mL/minの窒素ガス雰囲気下、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、500℃または600℃で0~90分間加熱処理を行った。加熱後、40分間放冷し、反応器に蒸留水150mLを入れて、ホットスターラーにより回転速度600rpm、温度70℃で30分間攪拌した。その後、反応器内の混合物を濾過し、固体残渣および濾液を得た。
加熱中に発生したガスは、ガスパックで回収し、ガスクロマトグラフ(GC-8A、SHIMADZU製)で収量および成分を分析した。
固体残渣は、乾燥機により60℃で12時間以上乾燥した後、電子天秤で質量を測定した。また、上記乾燥後の固体残渣を乳鉢ですりつぶし、次いで106μmメッシュのふるいで分級することで、固体残渣を炭素繊維と炭化物粉末とに分離した。電子天秤および走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM-6510A、JEOL社製)を用いて、分離された炭素繊維の質量および表面状態をそれぞれ測定した。
濾液は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)(GCMS-QP2010Plus、SHIMADZU製)で分析した。
[評価]
上記加熱処理の加熱時間を60分間で固定し、水酸化ナトリウムの添加量および加熱温度を変化させた際のガス収量を図1に、加熱後の固体残渣の残存率を図2に、加熱後の固体残渣を乳鉢ですりつぶし、次いで分級した際にふるい上に残った固体残渣量(炭素繊維量)を図3に示す。固体残渣の残存率は、固体残渣の質量/試験片の質量(1g)×100(%)から算出される。なお、図中における「1:1」などは、炭素繊維強化樹脂(試験片):水酸化ナトリウムの質量比を示す。
図1に示すとおり、ガス収量は、加熱温度が高くなるに従い、また、水酸化ナトリウムの添加量が高くなるに従い増加している。したがって、水酸化ナトリウムによってマトリックス樹脂の分解およびガス化が促進されたと考えられる。また、水酸化ナトリウムを添加した場合は、回収されたガスはほぼH2とCH4とから構成されている。400℃未満では、水酸化ナトリウムを添加しなかった場合は、有効利用できるガスがほとんど得られていないが、水酸化ナトリウムを添加した場合は、有効利用できるガスが得られている。
図2に示すとおり、水酸化ナトリウムを添加しなかった場合は、固体残渣の残存率は300℃以上で減少し、その後ほぼ一定になった。これに対して、水酸化ナトリウムを添加した場合は、固体残渣の残存率は250℃で減少しており、加熱温度が高くなると水酸化ナトリウムを添加しなかった場合とほぼ同じ残存率で一定となった。この結果から、水酸化ナトリウムを添加することによって、より低温でマトリックス樹脂の分解が進むことがわかる。
図3に示すとおり、水酸化ナトリウムを添加しなかった場合は、ふるい上に残った固体残渣量は、加熱温度が高くなるに従い徐々に減少した。これに対して、水酸化ナトリウムを添加した場合は、ふるい上に残った固体残渣量は、250℃で大きく減少しており、250℃から350℃では大きな減少は見られなかったが、400℃以上ではほとんどの残渣がふるいを通り、大きく減少した。水酸化ナトリウムを添加した場合は、400℃以上では炭素繊維が劣化し、すりつぶしにより粉末状になるため、ふるい上に残る固体残渣量が大きく減少したと考えられる。
加熱前の試験片、および質量比(試験片:水酸化ナトリウム)が1:1または1:2で、加熱温度が250℃の条件で処理して得られた固体残渣、および上記質量比が1:2で、加熱温度が600℃の条件で処理して得られた固体残渣の外観写真を図4に示す。上記質量比1:1で加熱温度250℃の固体残渣では、大部分が繊維状になったが、板状の残渣が一部残っていた(図4(b))。上記質量比1:2で加熱温度250℃および600℃の固体残渣では、板状の残渣は観察されず、全てが繊維状になった(図4(c)および(d))。
また、水酸化ナトリウム無添加で、加熱温度が300℃、400℃、500℃または600℃の条件で処理して得られた固体残渣、および上記質量比が1:2で、加熱温度が250℃または350℃の条件で処理して得られた固体残渣の外観写真を図5に示す。水酸化ナトリウム無添加の場合は、500℃まではほとんど板状のままであり、600℃では炭素繊維の劣化が見られた。
上記質量比が1:2で、加熱温度が250℃および600℃の条件で処理して得られた濾液の外観写真を図6に、GC-MSで分析したクロマトグラムを図7に示す。上記質量比1:2で加熱温度250℃の濾液は黒色で(図6(a))、上記質量比1:2で加熱温度600℃の濾液は透明であった(図6(b))。加熱温度250℃の濾液のクロマトグラムからは多くのピークが検出され、そのピークのほとんどは樹脂成分であるフェノール類に帰属された。加熱温度250℃では、マトリックス樹脂が水溶性の低分子化合物(フェノール類等)に分解され、当該低分子化合物が蒸留水に溶解したと考えられる。
図8に、上記質量比が1:2で、加熱温度が250℃および600℃の条件で処理して得られた固体残渣のSEM写真を示す。上記質量比1:2で加熱温度250℃の炭素繊維では、表面に残った樹脂は確認されず、炭素繊維が劣化している様子も確認されなかった(図8(a))。一方、上記質量比1:2で加熱温度600℃の炭素繊維では、繊維が削れて細くなった部分や、表面が粗くなった部分が確認された(図8(b))。水酸化ナトリウムを添加し、加熱温度400℃以上で処理すると、水酸化ナトリウムによって樹脂のガス化が促進されるが、炭素繊維にも影響を及ぼし、炭素繊維に劣化が生じたと考えられる。
上記質量比を1:2、加熱温度を250℃で固定し、加熱時間を変化させた際のガス収量を図9に示す。加熱時間の増加とともにガス収量は増加し、加熱時間60分以上でほぼ一定となった。固体残渣の外観は、加熱時間0分では加熱前の試験片と変わらなかった。加熱時間15~45分の残渣では、板状の残渣が確認されたが、加熱時間60分以上の残渣では、板状の残渣は確認されず、全て繊維状であった。

Claims (12)

  1. 炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂を、溶媒に浸漬していない状態で、アルカリ金属化合物の存在下、400℃未満の温度で加熱処理する工程
    を有する、炭素繊維強化樹脂からの炭素繊維の回収方法。
  2. 前記加熱処理の温度が、200℃を超える温度である、請求項1に記載の回収方法。
  3. 前記加熱処理を非酸化性ガス雰囲気下で行う、請求項1または2に記載の回収方法。
  4. 前記アルカリ金属化合物が、アルカリ金属の水酸化物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の回収方法。
  5. 前記炭素繊維強化樹脂100質量部に対して前記アルカリ金属化合物を10~1000質量部用いる、請求項1~4のいずれか一項に記載の回収方法。
  6. 前記炭素繊維強化樹脂が、使用済み製品の廃材、中間材の製造過程で生じる工程廃材、および製品の製造過程で生じる工程廃材から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の回収方法。
  7. 前記加熱処理によって前記マトリックス樹脂から発生するガスを回収する工程
    をさらに有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の回収方法。
  8. 前記加熱処理で得られた熱処理物から前記炭素繊維を分離する工程
    をさらに有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の回収方法。
  9. 前記炭素繊維を分離する工程において、前記熱処理物を洗浄液で洗浄する、請求項8に記載の回収方法。
  10. 前記洗浄液が、少なくとも水を含む、請求項9に記載の回収方法。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の回収方法を用いて、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を再生炭素繊維として得る工程
    を有する、再生炭素繊維の製造方法。
  12. 請求項1~10のいずれか一項に記載の回収方法を用いて、炭素繊維とマトリックス樹脂とを含有する炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を再生炭素繊維として得る工程、および
    前記再生炭素繊維と樹脂とを用いて炭素繊維強化樹脂を製造する工程
    を有する、炭素繊維強化樹脂の製造方法。
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