JP2022029195A - 熱交換器及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Al-Cu-Si-Zn系またはAl-Cu-Si系のろう材によるAl製の接続管の腐食を抑制すること。【解決手段】接続管40が重力方向の上側に位置すると共にAl製の伝熱管10が重力方向の下側に位置するように接続管40を伝熱管10の先端部11に差し込んで嵌合部42を構成する。接続管40として、接続管40の外壁面45のうちの少なくともろう材60を配置する位置から伝熱管10の端面14に対応する位置まで連続して外壁面45に形成されると共に、接続管40よりも電位が低い犠牲層44を有するものを用いる。Al-Cu-Si-Zn系またはAl-Cu-Si系のろう材60として、複数の相に基づく電位の幅を持つと共に接続管40の電位よりも高い電位の相を持つものを用いる。接続管40の径方向においてろう材60を犠牲層44の上に配置し、犠牲層44の上でろう材60を溶融させる。【選択図】図3

Description

本発明は、熱交換器及びその製造方法に関する。
近年では、熱交換器の伝熱管及び接続管としてAl製のものが用いられ始めている。一般的なAl-Si系のろう材は、Al製の接続管及びAl製の伝熱管との融点の差が小さいので、ろう付け時の許容温度範囲が狭くなる。そこで、特許文献1では、Al-Cu-Si-Zn系またはAl-Cu-Si系の低融点のろう材を用いてAl製の接続管とAl製の伝熱管とを部分ろう付けすることで、ろう付け時の許容温度範囲を広くする方法が提案されている。
具体的には、まず、接続管が重力方向の上側に位置すると共に伝熱管が重力方向の下側に位置するように接続管を伝熱管の先端部に差し込んで嵌合部を構成する。次に、ろう材を接続管の外壁面に配置する。続いて、ろう材を溶融させ、溶融したろう材を嵌合部の隙間に流し込む。こうして、嵌合部を部分ろう付けする。
特開2017-122549号公報
しかしながら、上記従来の技術では、溶融したろう材の大部分が嵌合部に流れたとしても、接続管の外壁面にろう材の一部が薄膜として残されてしまう。発明者らは、部分ろう付け後の接続管を詳しく調べたところ、腐食の一種である孔食が接続管に発生していたことがわかった。
これは、Al-Cu-Si-Zn系のろう材は、組成が均質では無く、Alが主成分のα相と共晶とに分かれ、さらに共晶にはθ相(AlCu)とZnリッチの相とが存在するためである。すなわち、ろう材は、低電位の側のZnリッチの相から高電位の側のθ相まで、電位の幅を持つ。ろう材のθ相は、Al製の接続管よりも電位が高いので、接続管に対して貴の電位となる。このため、電位差腐食が接続管に発生してしまう。ろう材が厚い部分ではろう材中の低電位のZnリッチ相及びα相の優先腐食でろう材の自己腐食がなされるが、接続管の外壁面に残されたろう材の薄膜部ではZnリッチの相及びα相が早期に消失する。このため、ろう材のθ相による接続管の電位差腐食が進行してしまう。Al-Cu-Si系のろう材についても同様に、ろう材が持つ相に基づいて電位差腐食が発生してしまう。
上記の腐食は、Al製の接続管とAl製の伝熱管との嵌合部に低融点のろう材を流し込んで部分ろう付けする場合に発生する材質特有の現象である。当該現象は、接続管の寿命を低下させてしまう原因の一つとなる。
本発明は上記点に鑑み、Al-Cu-Si-Zn系またはAl-Cu-Si系のろう材によるAl製の接続管の腐食を抑制することができる熱交換器の製造方法を提供することを第1の目的とする。また、当該製造方法によって得られる熱交換器を提供することを第2の目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、Al製の接続管(40)と、Al製のフィン(20)が接合されると共に先端部(11)の内径が接続管の外径よりも大きいAl製の伝熱管(10)と、を用意する。また、接続管が重力方向の上側に位置すると共に伝熱管が重力方向の下側に位置するように接続管を伝熱管の先端部に差し込んで嵌合部(42)を構成する(組み付け工程)。
次に、ろう材(60)を用意し、少なくともろう材の一部が伝熱管の先端部の端面(14)の上方に位置するように、ろう材(60)を配置する(配置工程)。続いて、ろう材を溶融させ、溶融させたろう材を嵌合部の隙間に流し込むことにより、嵌合部を部分ろう付けする(接合工程)。
組み付け工程では、接続管として、接続管の外壁面(45)のうちの少なくともろう材を配置する位置から伝熱管の端面に対応する位置まで連続して外壁面に形成されると共に、接続管よりも電位が低い犠牲層(44)を有するものを用意する。
配置工程では、ろう材として、Al-Cu-Si-Zn系またはAl-Cu-Si系のものであって、複数の相に基づく電位の幅を持つと共に接続管の電位よりも高い電位の相を持つものを用意し、接続管の径方向においてろう材を犠牲層の上に配置する。接合工程では、犠牲層の上でろう材を溶融させる。
請求項9に記載の発明では、熱交換器は、Al製の接続管(40)と、Al製のフィン(20)が接合されると共に先端部(11)の内径が接続管の外径よりも大きいAl製の伝熱管(10)と、接続管が伝熱管の先端部に差し込まれることで構成された嵌合部(42)を部分ろう付けしたろう材(60)を含む。
接続管は、接続管と伝熱管とが連結された連結方向において、接続管の外壁面(45)のうちの少なくとも伝熱管の先端部の端面(14)よりも上方の位置から伝熱管の端面に対応する位置まで連続して外壁面に形成されると共に、接続管よりも電位が低い犠牲層(44)を有する。
ろう材は、Al-Cu-Si-Zn系またはAl-Cu-Si系のものであって、複数の相に基づく電位の幅を持つと共に接続管の電位よりも高い電位の相を持つものである。さらに、ろう材は、犠牲層のうちの伝熱管の端面から上方に位置する部分において、接続管の径方向において、犠牲層の上に形成された薄膜部(61)と、嵌合部の隙間に配置されると共に、径方向において薄膜部よりも厚い埋込部(62)と、を有する。
これによると、部分ろう付け後にも、接続管の外壁面には犠牲層が存在するので、溶融後のろう材(60)は接続管の径方向において犠牲層の上に薄膜状に残される。このため、薄膜状のろう材による電位差腐食は接続管よりも電位が低い犠牲層に優先して起こるので、薄膜状のろう材と接続管との電位差腐食を抑制することができる。したがって、Al-Cu-Si-Zn系またはAl-Cu-Si系のろう材によるAl製の接続管の腐食を抑制することができる。
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
一実施形態に係る熱交換器の斜視図である。 伝熱管と接続管との嵌合部付近の一部断面図である。 図2のA部拡大断面図である。 Al-Cu-Si-Zn系のろう材が持つ電位の幅を示した図である。 ろう材の組成を示した図である。 接合工程を説明するための図である。 犠牲層に発生する層状腐食を示した接続管の一部断面図である。 接続管に犠牲層が設けられた場合の層状腐食を示した図であり、左図は嵌合部付近の外観図であり、中央図は左図のA-A断面図であり、右図は接続管の径方向に平行な断面図である。 接続管に犠牲層が設けられない場合の孔食進行を示した図であり、左図は連結方向に平行な断面図であり、右図は接続管の径方向に平行な断面図である。
以下、本発明の一実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る熱交換器は、例えば冷凍サイクルの冷媒と空気との間で熱交換を行うプレートフィン熱交換器に適用される。以下、プレートフィン熱交換器を熱交換器という。
図1に示されるように、熱交換器1は、伝熱管10、フィン20、サイドプレート30、31、接続管40、及びヘッダ50、51を備えている。これら伝熱管10、フィン20、サイドプレート30、31、接続管40、及びヘッダ50、51は、Al製である。Al製とは、AlまたはAl合金により構成されていることを意味する。
伝熱管10は、内部を冷媒が流通する管部品である。伝熱管10は、ヘアピン状すなわち略U字状に曲折されて構成されている。伝熱管10は、長手部分が並列に配置されるように熱交換器1に複数設けられている。各伝熱管10のU字部分はそれぞれ長手部分の一方向に配置されている。そして、各伝熱管10はフィン20に接合されている。伝熱管10を複数配置した列を一列と定義すると、複数の伝熱管10は4列配置されている。
図示しないが、伝熱管10の内面には、複数の螺旋状の溝と、螺旋状の溝間の突起として螺旋状に延びるフィンと、が形成されている。これにより、伝熱管10の内面と冷媒との接触面積が増えるので、伝熱管10の伝熱性能が向上する。
フィン20は、空気と伝熱管10との伝熱面積を増大させて空気と冷媒との熱交換を促進する伝熱促進部材である。フィン20は、プレート状に形成されたプレートフィンである。フィン20は熱交換器1に複数設けられている。サイドプレート30、31は、複数のフィン20の最上層と最下層とに設けられた板部品である。
接続管40は、複数の伝熱管10同士や伝熱管10とヘッダ50、51とを接続する管部品である。接続管40は、直線状及びU字状に形成されている。接続管40として、L曲げ構造、2曲げ構造、3曲げ構造等を有するものを採用しても良い。ヘッダ50、51は、伝熱管10に対して冷媒の分配または集合を行う部品である。
伝熱管10及び接続管40は、例えば、純Alの1000系やAl-Mn系の3000系によって構成される。例えば、伝熱管10及び接続管40として、A3003が用いられる。伝熱管10及び接続管40の外径は、例えばφ6である。伝熱管10の板厚は例えば0.36mmであり、接続管40の板厚は例えば1mmである。
次に、伝熱管10と接続管40との接続構造について説明する。図2に示されるように、伝熱管10の先端部11は、口拡部12及びフレア加工部13を有する。口拡部12は、内径が接続管40の外径よりも大きくされた部分である。フレア加工部13は、口拡部12の先端部分が円錐状に広げられた部分である。
そして、接続管40の先端部41が伝熱管10の先端部11に差し込まれることで嵌合部42が構成されている。図3に示されるように、嵌合部42における伝熱管10の長手方向の長さ、すなわち伝熱管10の径方向に伝熱管10と接続管40とがオーバーラップしている部分の長さは1mm以上になっている。
また、嵌合部42において口拡部12の内面と接続管40の外面との管の隙間は管径差で例えば0.05mmである。当該隙間にろう材60が充填されている。ろう材60は、伝熱管10の長手方向において、伝熱管10の先端部11の端面14よりも接続管40の先端部41側の位置から、接続管40の先端部41の端面43の一部を覆う位置まで充填されている。
さらに、接続管40は、犠牲層44を有する。犠牲層44は、接続管40と伝熱管10とが連結された連結方向において、接続管40の外壁面45のうちの少なくとも伝熱管10の先端部11の端面14よりも上方の位置から伝熱管10の端面14に対応する位置まで連続して外壁面45に形成される。端面14に対応する位置とは、連結方向において、ろう材60の部分ろう付け後にろう材60の一部が接続管40の外壁面45に薄膜状に残される部分のうちの伝熱管10の側の端部の位置である。具体的には、後述するろう材60の薄膜部61のうちの連結方向における伝熱管10の側の端部の位置である。図3では、犠牲層44は、接続管40の外壁面45の全体に形成されている。なお、図2では、ろう材60及び犠牲層44を省略している。
犠牲層44は、接続管40よりも電位が低いものである。犠牲層44は、例えば、ZnまたはZnを含む合金により構成されている。
接続管40及び犠牲層44は、例えばAl心材の外壁面をZnのクラッド材で覆ったクラッド管として構成される。接続管40の製造時に外壁面45の全体を覆うことができるので、接続管40に容易に犠牲層44を設けることができる。クラッド管として、例えばAl-Zn-Mg系の7000系を用いることができる。または、接続管40の外壁面45の一部にZnを溶射することによって、接続管40の外壁面45の一部あるいは全体に犠牲層44を設けることもできる。接続管40の径方向における犠牲層44の厚みは、例えば100μmである。接続管40をクラッド管とした場合、接続管40の径方向における心材の厚みは、例えば900μmである。
ろう材60は、嵌合部42において伝熱管10と接続管40とを部分ろう付けした固定材である。ろう材60は、薄膜部61及び埋込部62を有する。薄膜部61は、連結方向において犠牲層44のうちの伝熱管10の端面14から上方に位置する部分の上に径方向に形成された部分である。薄膜部61は、径方向の厚みが例えば50μm以下である。
埋込部62は、嵌合部42における伝熱管10の内面と接続管40の外壁面45との隙間に配置されると共に、接続管40の径方向において、薄膜部61よりも厚い部分である。埋込部62は、径方向の最大厚みTが例えば500μm以上である。すなわち、埋込部62の厚みには、ろう材60のフィレット部も含まれる。
図3では、連結方向において、埋込部62が伝熱管10の端面14よりも下方に位置する場合が示されているが、ろう材60の量や流れ方によっては埋込部62の一部が伝熱管10の端面14よりも上方に位置する場合がある。どちらの場合にも、薄膜部61の厚みと埋込部62の厚みとは明らかに差がある。また、薄膜部61は、必ず犠牲層44の上に配置される。言い換えると、犠牲層44は、少なくとも薄膜部61が配置される位置に形成されている。
ろう材60は、弗化セシウム系の非腐食性フラックスを塗布したAl-Cu-Siの3元素系共晶組成近傍のものにZnを添加したものである。すなわち、ろう材60は、Al-Cu-Si-Zn系のものであり、複数の相によって構成されている。
図4に示されるように、複数の相とは、α相、Znリッチの相、共晶のθ相である。α相は-680mVの電位を持ち、Znリッチの相は-785mVの電位を持ち、共晶のθ相は-593mVの電位を持つ。つまり、ろう材60は、複数の相に基づいて-785mVから-593mVまでの電位の幅を持つ。なお、各電位は参照電極として銀/塩化銀(飽和KCl液中)を用いて測定された値である。
比較例として、Al-Si系のろう材は、α相とSiリッチの相を含む。α相は-693mVの電位を持ち、Siリッチの相は-623mVの電位を持つ。しかしながら、Al-Si系のろう材の電位の幅は、Al-Cu-Si-Zn系のろう材60の電位の幅に対して非常に狭い。
また、A3003のAl心材は、-693mVの電位を持つ。他のAl心材であるA1050は、-690mVの電位を持つ。すなわち、ろう材60は、電位の幅の上限値が-593mVであることから、電位の幅の中に、Al製の接続管40の電位を含む。つまり、ろう材60は、接続管40の電位よりも高い電位の相を持つものである。
上記のように、Al-Cu-Si-Zn系のろう材60は、Al-Si系のろう材及びAl製の接続管40よりも電位が高い共晶のθ相を持つ。このように、Al-Cu-Si-Zn系のろう材60のθ相は、接続管40との電位差すなわちイオン化傾向の差が大きいと共に接続管40に対して貴の電位となるので、Al-Si系のろう材よりも電位差腐食を促進させる。
一般的に、A-Si系のろう材はAlの純度が99.00%以上のものである純Alに対して貴の電位となり、純Alに孔食の腐食を発生させる。そして、Al-Cu-Si-Zn系のろう材60もAl製の接続管40に孔食の腐食を発生させる。したがって、ろう材60は、接続管40の電位よりも少なくとも70mVを超える電位を含む。
一方、犠牲層44が追加されたA7072(Zn1%)は接続管40よりも電位が低いものであり、例えば-823mVの電位を持つ。犠牲層44はろう材60及び接続管40の両方よりも電位が低いので、犠牲層44がろう材60に対して犠牲防食の役割を果たす。
ろう付け性に優れる低融点のろう材60としては、固相線温度が低いことと同時に、Al-10Siの液相線温度が598℃以下であることが望ましい。また、ろう材60に含まれるCuの含有率を下げるとろう材60の融点は下がるが、Cuの含有率を下げ過ぎてしまうとろう材60の融点が下がらなくなる。このため、Cuの含有量が10重量%以上、Siの含有量が3%以上、Znの含有量が3重量%以上の組成とする必要がある。そこで、図5の実施例1に示されるように、Al-Cu-Si-Zn系のろう材60は、Cuの含有率を23.5重量%、Siの含有率を4.5重量%、Znの含有率を5.3重量%としたときの固相線温度が489℃、液相線温度が533℃に成分調整されている。あるいは、図5の実施例2に示されるように、Cuの含有率を10重量%、Siの含有率を7.1重量%、Znの含有率を9重量%としたときの固相線温度が485℃、液相線温度が580℃に成分調整されている。図5に示された各ろう材成分の固相線及び液相線の各温度はCALPHAD法により取得した。
これにより、ろう材60は、従来のAl-Si系の固相線温度577℃に対して大幅に低温化されている。すなわち、本実施形態に係るろう材60は低融点ろう材である。この温度域でろう付けするためにフラックスは420℃の低温から活性を有する。以上が、熱交換器1の全体構成である。
次に、熱交換器1の製造方法について説明する。まず、組み付け工程を行う。このため、接続管40及び伝熱管10を用意する。具体的には、引き抜き加工によりAlまたはAl合金からなる管を形成する。また、管の内面に転造加工を施すことにより内面に溝が設けられた伝熱管10を複数形成する。
また、クラッド加工や溶射の方法により接続管40の外壁面45の全体にZnの犠牲層44を形成することで、犠牲層44を備えた接続管40を複数用意する。なお、接続管40の外壁面45のうちの少なくともろう材60の薄膜部61が形成される部分に犠牲層44を部分的に設けても良い。
続いて、複数のフィン20及びサイドプレート30、31を用意し、各フィン20及びサイドプレート30、31に伝熱管10が挿通される図示しない貫通孔を形成する。そして、複数のフィン20を等間隔に配置した後、貫通孔に伝熱管10を挿通する。例えば、伝熱管10を4列に配置する。
この後、伝熱管10を拡管する。例えば、伝熱管10の内径より径が大きい拡管子を伝熱管10内に挿通し、拡管子により伝熱管10を機械的に拡管する。伝熱管10を拡管することで、複数のフィン20及びサイドプレート30、31と伝熱管10とを密着させて接合する。また、同様の工法で伝熱管10の先端部11に口拡部12及びフレア加工部13を形成する。
そして、接続管40が重力方向の上側に位置すると共に伝熱管10が重力方向の下側に位置するように接続管40を伝熱管10の先端部11に差し込むことにより、複数の嵌合部42を構成する。この場合、重力方向は連結方向と同じ方向となる。
次に、ろう材60を配置する配置工程を行う。このため、上述のAl-Cu-Si-Zn系のろう材60であって、複数の相に基づく電位の幅を持つと共に電位の幅の中に接続管40の電位よりも70mVを超える電位を含むものを用意する。ろう材60に含まれるCu、Si、Znの含有量は、例えば、図5の実施例1を採用する。また、ろう材60を、Al-Cu-Si-Zn合金の粉末、Cs-Al-F系のフラックス、及び有機バインダによって構成されるペースト状のものとする。ろう材60の合金性質上、固形化してリングろう等の状態としておくことが困難であるためである。
続いて、図6に示されるように、少なくともろう材60の一部が伝熱管10の先端部11の端面14の上方に位置するように、ペースト状のろう材60を犠牲層44に塗布する。また、ろう材60を接続管40の周方向に連続的に一周配置するか、または周方向に断続的に部分配置する。これにより、接続管40の径方向において、複数の接続管40それぞれの犠牲層44の上にろう材60をそれぞれ配置する。
このようにろう材60を接続管40に供給することで、溶けたろう材60が嵌合部42の隙間に引き込まれるようにすることができる。また、ろう材60にボイドが含まれた状態で嵌合部42に引き込まれることを抑制することができる。なお、ろう材60の全体を先端部11の端面14の上方に位置させることでこのような効果をさらに高めることができる。
続いて、嵌合部42を部分ろう付けする接合工程を行う。例えば、大気雰囲気中で550℃~620℃の温度範囲となるように高周波加熱を行う。高周波加熱は、電磁誘導の原理を利用した非接触の加熱方法である。
まず、接続管40を伝熱管10よりも優先的に加熱する。具体的には、接続管40のうちろう材60を配した部位を550℃程度に局所加熱してろう材60を犠牲層44の上で溶融させる。また、伝熱管10の温度を接続管40の温度よりも低く加熱する。例えば、嵌合部42の下部すなわち伝熱管10の口拡部12の下部の温度をろう材60の固相線温度以下(例えば410℃)に調整する。
このように嵌合部42を加熱することで、溶融したろう材60が厚肉の接続管40側から薄肉の伝熱管10側のフレア加工部13を介して嵌合部42の隙間に流れ込む。上述のように、伝熱管10の内面には複数の溝が形成されているので、毛細管現象によってろう材60が当該隙間に引き込まれる。
また、伝熱管10の口拡部12の下部の温度がろう材60の固相線温度以下に調整されているので、ろう材60は口拡部12の下部で凝固しやすくなっている。したがって、伝熱管10として内面溝付管を用いたとしても、ろう材60が嵌合部42よりもさらに重力方向の下側に流れていくことはない。また、ろう材60が嵌合部42よりも重力方向の下側に流れにくくなるので、嵌合部42がろう付け不良になる恐れがない。このようにして、複数の嵌合部42を同時に部分ろう付けする。これにより、複数の嵌合部42において、部分ろう付け後のろう材60の薄膜部61は径方向の厚みが50μm以下となり、埋込部62は径方向の最大厚みTが500μm以上となる。
上記のようにして、ヘッダ50、51に接合された接続管40を伝熱管10にろう付け接合する。その他、仕上げ工程等を行う。こうして、熱交換器1が完成する。
以上説明したように、本実施形態では、接続管40に予め犠牲層44を設け、犠牲層44に塗布したろう材60を溶融させることで嵌合部42を部分ろう付けしている。このため、部分ろう付け後にも、接続管40の外壁面45には犠牲層44が存在し、溶融後のろう材60は接続管40の径方向において犠牲層44の上に薄膜部61として残される。よって、ろう材60の薄膜部61による電位差腐食は接続管40よりも電位が低い犠牲層44に優先して起こる。したがって、図7に示されるように、犠牲層44の一部に層状腐食が起こるので、Al-Cu-Si-Zn系のろう材60の薄膜部61とAl製の接続管40との電位差腐食を抑制することができる。すなわち、電位差腐食に対して接続管40を延命させることができる。なお、犠牲層44の層状腐食の部分は例えば腐食生成物や隙間等になる。
ここで、ろう付け時のろう材60の流動により、ろう材60の埋込部62の範囲で犠牲層44がエロ-ジョン、すなわち犠牲層44がろう材60内に溶融し、犠牲層44が残らないこともある。ろう材60の埋込部62の範囲とは、ろう材60のうちの薄膜部61以外の範囲である。その場合、ろう材60のうちの薄膜部61以外の部分ではろう材60の厚みが保たれるため、ろう材60の中の低電位部の自己腐食が進む。よって、接続管40の腐食が遅れ、ひいては接続管40を延命させることができる。
発明者らは、接続管40に犠牲層44を設けた場合と設けない場合とで、腐食試験としてSWAAT試験を行った。試験時間は192時間とした。
接続管40に犠牲層44を設けた場合であって、ろう材60の組成を図5の実施例1、2とした場合の結果を図8に示す。図5及び図8に示されるように、腐食の形態は、犠牲層44の内部に広がる層状腐食で収まる結果となった。接続管40の腐食深さは0.09mmであり、犠牲層44によって接続管40の腐食が充分に抑制されていた。また、ろう材60に引け巣は無かった。なお、埋込部62においては、埋込部62が薄膜部61に対して充分に厚いことから、埋込部62の内部で腐食が進む。このため、埋込部62の腐食は、接続管40に影響しない。
これに対し、接続管40に犠牲層44を設けない場合であって、ろう材60の組成を図5の対比例3~6とした場合の結果を図9に示す。図5及び図9に示されるように、腐食の形態は、接続管40の径方向に進行する孔食となった。
図5の対比例3~5に示されるように、ろう材60のCuの含有量が大きいほど腐食が進行した。特に、対比例3については、接続管40の板厚が1mmであるのに対して、腐食深さが0.93mmとなった。
対比例6は、ろう材60のCuの含有量を小さくしてZnの含有量を大きくしたものである。対比例6のようにCuの含有率を下げたことで腐食深さは0.14mmとなり、対比例3~5よりも接続管40の腐食を抑制する効果が上がった。但し、対比例6は、引け巣がろう材60の表面に多く確認された。これは、ろう材60の亀裂の原因になったり、低温環境でろう材60の凍結割れの原因になる。よって、対比例6は、対比例3~5に対しては腐食の抑制効果が向上したものの、引け巣が起きやすく扱いづらいものであった。
さらに、対比例7、8はろう付け性が悪いものだった。このため、対比例7、8のろう材は伝熱管10と接続管40との部分ろう付けに使用しなかった。これに伴い、上記の腐食試験も行わなかった。なお、対比例9はAl-10Siとの比較を示すためのものである。
以上の結果からも、接続管40に犠牲層44を設けることによって、Al-Cu-Si-Zn系のろう材60とAl製の接続管40との電位差腐食を抑制できることが証明された。
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された熱交換器1の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば1組の伝熱管10及び接続管の接合に上記の方法を適用しても良い。あるいは、伝熱管10の列を3列、5列等のように、3列以上配置しても良い。また、伝熱管10として内面溝付管を用いる例について説明したが、伝熱管10として平滑管を用いても良い。
ろう材60として、Al-Cu-Si系のものを用いても良い。Al-Cu-Si系のろう材60は、Al-Cu-Si-Zn系のろう材60と同様に、複数の相に基づく電位の幅を持つと共に接続管40の電位よりも高い電位の相を持つ。Al-Cu-Si系のろう材60の電位の幅は、図4に示されたZnリッチ相の電位を含まない幅である。
配置工程における接続管40へのろう材60の供給方法は、リング状のろう材鋳物、樹脂バインダの成形品、ゴムバインダ成形品等を用いても良い。
10 伝熱管、11 先端部、14 端面、20 フィン、40 接続管、42 嵌合部、44 犠牲層、45 外壁面、60 ろう材、61 薄膜部、62 埋込部

Claims (13)

  1. Al製の接続管(40)と、Al製のフィン(20)が接合されると共に先端部(11)の内径が前記接続管の外径よりも大きいAl製の伝熱管(10)と、を用意し、前記接続管が重力方向の上側に位置すると共に前記伝熱管が前記重力方向の下側に位置するように前記接続管を前記伝熱管の前記先端部に差し込んで嵌合部(42)を構成する組み付け工程と、
    ろう材(60)を用意し、少なくとも前記ろう材の一部が前記伝熱管の前記先端部の端面(14)の上方に位置するように、前記ろう材を配置する配置工程と、
    前記ろう材を溶融させ、溶融させた前記ろう材を前記嵌合部の隙間に流し込むことにより、前記嵌合部を部分ろう付けする接合工程と、
    を含み、
    前記組み付け工程では、前記接続管として、前記接続管の外壁面(45)のうちの少なくとも前記ろう材を配置する位置から前記伝熱管の前記端面に対応する位置まで連続して前記外壁面に形成されると共に、前記接続管よりも電位が低い犠牲層(44)を有するものを用意し、
    前記配置工程では、前記ろう材として、Al-Cu-Si-Zn系またはAl-Cu-Si系のものであって、複数の相に基づく電位の幅を持つと共に前記接続管の電位よりも高い電位の相を持つものを用意し、前記接続管の径方向において前記ろう材を前記犠牲層の上に配置し、
    前記接合工程では、前記犠牲層の上で前記ろう材を溶融させる、熱交換器の製造方法。
  2. 前記組み付け工程では、前記犠牲層を有する前記接続管を複数用意すると共に、前記伝熱管を複数用意することにより、前記嵌合部を複数構成し、
    前記配置工程では、前記複数の接続管それぞれの前記犠牲層の上に前記ろう材をそれぞれ配置し、
    前記接合工程では、前記複数の嵌合部を同時に部分ろう付けする、請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
  3. 前記組み付け工程では、前記伝熱管を複数配置した列を一列と定義すると、前記複数の伝熱管を3列以上配置する、請求項2に記載の熱交換器の製造方法。
  4. 前記配置工程では、前記ろう材として、Al-Cu-Si-Zn合金の粉末、Cs-Al-F系のフラックス、及び有機バインダによって構成されるペースト状のものを用意し、ペースト状の前記ろう材を前記犠牲層に塗布する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換器の製造方法。
  5. 前記配置工程では、前記ろう材として、Cuの含有率が10重量%以上であるものを用意する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の熱交換器の製造方法。
  6. 前記配置工程では、前記ろう材として、Siの含有率が3重量%以上であると共に、Znの含有率が3重量%以上であるものを用意する、請求項5に記載の熱交換器の製造方法。
  7. 前記接合工程では、前記部分ろう付け後の前記ろう材は、前記犠牲層のうちの前記ろう材を配置した部分から前記伝熱管の前記端面に対応する部分までの前記犠牲層の上に位置する薄膜部(61)と、前記嵌合部の隙間に位置する埋込部(62)と、を有し、前記薄膜部は前記径方向の厚みが50μm以下であり、前記埋込部は前記径方向の最大厚みが500μm以上である、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換器の製造方法。
  8. 前記配置工程では、前記ろう材として、前記ろう材の前記電位の幅の中に前記接続管の電位よりも70mVを超える電位を含むものを用意する、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の熱交換器の製造方法。
  9. Al製の接続管(40)と、
    Al製のフィン(20)が接合されると共に先端部(11)の内径が前記接続管の外径よりも大きいAl製の伝熱管(10)と、
    前記接続管が前記伝熱管の前記先端部に差し込まれることで構成された嵌合部(42)を部分ろう付けしたろう材(60)と、
    を含み、
    前記接続管は、前記接続管と前記伝熱管とが連結された連結方向において、前記接続管の外壁面(45)のうちの少なくとも前記伝熱管の前記先端部の端面(14)よりも上方の位置から前記伝熱管の前記端面に対応する位置まで連続して前記外壁面に形成されると共に、前記接続管よりも電位が低い犠牲層(44)を有し、
    前記ろう材は、Al-Cu-Si-Zn系またはAl-Cu-Si系のものであって、複数の相に基づく電位の幅を持つと共に前記接続管の電位よりも高い電位の相を持つものであり、
    さらに、前記ろう材は、
    前記犠牲層のうちの前記伝熱管の前記端面から上方に位置する部分において、前記接続管の径方向において、前記犠牲層の上に形成された薄膜部(61)と、
    前記嵌合部の隙間に配置されると共に、前記径方向において前記薄膜部よりも厚い埋込部(62)と、
    を有する、熱交換器。
  10. 前記ろう材は、Cuの含有率が10重量%以上である、請求項9に記載の熱交換器。
  11. 前記ろう材は、Siの含有率が3重量%以上であると共に、Znの含有率が3重量%以上である、請求項10に記載の熱交換器。
  12. 前記薄膜部は、前記径方向の厚みが50μm以下であり、
    前記埋込部は、前記径方向の最大厚みが500μm以上である、請求項9ないし11のいずれか1つに記載の熱交換器。
  13. 前記ろう材は、前記ろう材の前記電位の幅の中に前記接続管の電位よりも70mVを超える電位を含む、請求項9ないし12のいずれか1つに記載の熱交換器。
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