JP2022027540A - 回転電気機械 - Google Patents
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Abstract
【課題】スタータモータとオルタネータとしての機能を果たしつつ、簡易な制御機構により始動時には高出力を発揮し、高回転時の発電機構としても用いる事のできる回転電気機械を提供する。【解決手段】内燃機関50のクランク軸52との間に動力伝達経路を持つ回転軸14と、回転軸14の周囲に配置された非回転のステータコイル18と、ステータコイル18と離間してステータコイル18の対向面に位置する永久磁石16aを備えたロータ16と、を有し、ステータコイル18は、U、V、Wの3相から成り、各相が複数のコイルから構成され、各相を構成するコイルの接続形式を直列形式と並列形式、並列形式に更に1つのコイル若しくは2以上のコイルを直列に繋げたコイル鎖を直列に繋げたもののいずれかへの切り替えを可能とする回路部20を備えたことを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、回転電気機械に係り、特に内燃機関の始動用動力源としての使用、及び内燃機関が稼働している際の発電機としての使用の双方に好適な特性を有する回転電気機械に関する。
従来、内燃機関を搭載した車両等には、内燃機関を始動するためのスタータモータと、内燃機関始動後の動力を利用して発電を行うオルタネータとが個別に備えられていた。これに対し、ハイブリッド車やアイドリングストップ機能を備えた車両が増えて来た近年では、特許文献1-3に開示されているように、スタータモータとオルタネータの機能を兼ね備えたモータジェネレータを搭載する車両が増えてきている。
例えば特許文献1に開示されている発電機モータ(本願におけるモータジェネレータの文献内での名称)は、内燃機関により駆動されることで、バッテリを充電すると共に、バッテリからの電力供給を受けることで、内燃機関をクランキングさせることが示されている。また、特許文献2に開示されている始動兼発電装置(本願におけるモータジェネレータの文献内での名称)は、スタータモータとオルタネータの機能の他、車両走行中のアシストモータとしての機能も持たせることが示されている。さらに、特許文献3に開示されている始動用電動機兼用発電機(本願におけるモータジェネレータの文献内での名称)には、当該機器に、内燃機関の点火装置駆動用コイルや、インジェクター駆動用コイルなどの単相発電コイルを内装し、多機能化と共に、装置全体としての小型化を図るように構成されている。
上記特許文献に開示されているようなモータジェネレータによれば、各機器を分散配置するよりもコンパクトな構成とすることができ、装置全体としての小型化を図る事ができる。
しかし、内燃機関を始動する際のクランキングには、大きなトルクが必要となるのに対し、高回転域での発電機構としては、大きなトルクを得るための巻線構造が抵抗を増す事となり、内燃機関の出力並びに発電双方の効率を低下させてしまう可能性がある。また、高回転域での出力電圧がドライバの定格電圧を超える範囲となる場合には、機器の故障を招く恐れも生じる。このため従来では、駆動時の位相制御により出力を高めたり、クラッチやギヤ機構により機械的にトルクや負荷を調節する事が成されて来たが、制御や付加機構が複雑化する事が否めなかった。
そこで本発明では、単一の回転電気機械により、スタータモータとオルタネータとしての機能を果たしつつ、簡易な制御機構により始動時には高出力を発揮し、高回転時の発電機構としても用いる事のできる回転電気機械を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための回転電気機械は、内燃機関に付帯される回転電気機械であって、前記内燃機関のクランク軸との間に機械的な動力伝達経路を持つ回転軸と、前記回転軸の周囲に配置されたステータコイルと、前記ステータコイルと離間して前記ステータコイルの対向面に位置する磁石を備えたロータと、を有し、前記ステータコイルは、少なくとも3相(本願においてはU、V、W相とする)から成り、各相が複数のコイルから構成され、各相を構成するコイルの接続形式を直列形式と並列形式並びに直列と並列の混用(並列形式に更に1つのコイル若しくは2以上のコイルを直列に繋げたコイル鎖を直列に繋げたもの。以下、本願では直並混用と言う)のいずれかへの切り替えを可能とする回路部を備えたことを特徴とする。
また、上記のような特徴を有する回転電気機械における前記回路部にはドライバが接続され、前記ドライバには、前記回転軸の回転数に基づいて切り替え信号を出力する旨の指令信号を出力するマイコンが備えられているようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、ステータコイルは、回転軸の回転数に基づいて直列形式、並列形式または直並混用の接続切り替えが自動で成されることとなる。
また、上記のような特徴を有する回転電気機械において前記切り替え信号を出力する旨の指令信号は、前記回転軸の回転数が予め定められた閾値よりも高いか否かの判定に基づいて出力されることが望ましい。このような特徴を有する事とした場合、回転数が低い場合の接続形式と、回転数が高い場合の接続形式を予め定めることで、内燃機関を始動する際には、低回転で高トルクを発揮することのできる接続形式(例えば直列形式)とし、内燃機関が高回転で回転している場合に発電機として機能させる場合には、高回転型の接続形式(例えば並列形式)を自動で選択することが可能となる。直並混用形式を採用するとき、直列形式と並列形式の中間が選択できるので、例えば、発電機として機能させるのは直並混用も可能となり、低回転で高トルクを直列形式に準じて発揮できる直並混用も選択できることになる。
さらに、上記のような特徴を有する回転電気機械では、前記ステータコイルに対して電力を供給する際には、前記回路部により前記直列形式が選択され、前記回転軸の回転数が前記閾値よりも高くなった際には、前記回路部により前記並列形式が選択されるように、前記マイコンが指令信号を出力するようにしている。このような特徴を有する事によれば、各回転域に対して特性に応じた接続形式を選択する事が可能となる。
また、上記目的を達成するための回転電気機械は、能動的または受動的な動力の入出力が成される動力伝達経路を持つ回転軸と、前記回転軸の周囲に配置された非回転のステータコイルと、前記ステータコイルと離間して前記ステータコイルの対向面に位置する磁石を備えたロータと、を有し、前記ステータコイルは、3相以上から成り、各相が複数のコイルから構成され、各相を構成するコイルの接続形式を直列形式、並列形式または直並混用のいずれかへの切り替えを可能とする回路部を備えることにより、発電機と動力源を兼ねた装置としたことを特徴とするものであれば良い。
上記のような特徴を有する回転電気機械によれば、スタータモータとオルタネータとしての機能を果たしつつ、簡易な制御機構により始動時には高出力を発揮し、高回転時の発電機構としても用いる事が可能となる。
以下、本発明の回転電気機械に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の一部に過ぎない。よって、発明の効果を奏する限りにおいて、その構成の一部や形態に変化を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
[基本構成]
本実施形態に係る回転電気機械(以下、モータジェネレータ10と称す)は図4に概略構成を示すように、内燃機関50に対して直結される構造としており、モータジェネレータ10に対してバッテリ34が接続されている。内燃機関50に対する直結構造の詳細は図1に示すように、その回転軸14が、内燃機関50のクランク軸52との間に機械的な動力伝達経路を持つように構成されている。ここで、機械的な動力伝達経路とは、カップリング54等を用いてクランク軸52に直結されている場合の他、ギヤやプーリー及びベルトなどを介して動力の伝達が図られるものも含む事ができる。
本実施形態に係る回転電気機械(以下、モータジェネレータ10と称す)は図4に概略構成を示すように、内燃機関50に対して直結される構造としており、モータジェネレータ10に対してバッテリ34が接続されている。内燃機関50に対する直結構造の詳細は図1に示すように、その回転軸14が、内燃機関50のクランク軸52との間に機械的な動力伝達経路を持つように構成されている。ここで、機械的な動力伝達経路とは、カップリング54等を用いてクランク軸52に直結されている場合の他、ギヤやプーリー及びベルトなどを介して動力の伝達が図られるものも含む事ができる。
本実施形態に係るモータジェネレータ10は、ハウジング12と、回転軸14、ステータコイル18、及びロータ16を基本として構成される、いわゆるコアレス型の回転電気機械である。ハウジング12は、外殻を構成する要素であり内部空間に回転軸14やステータコイル18、及びロータ16を収容している。回転軸14は、ハウジング12を貫通するように配置され、ハウジング12との交点に備えられた軸受12aにより、回転自在に支持されている。
ステータコイル18は、複数の相(本実施形態ではU相、V相、W相の3相)に分けられたコイル群により、円筒状を成すように構成されている(図2参照)。ステータコイル18を構成するU相、V相、W相は、それぞれ極を構成する複数のコイルから成っている。図2に示す形態では、各相を1/2(つまり2等分)に分けて、第1コイルU1、第2コイルU2、第1コイルV1、第2コイルV2、第1コイルW1、第2コイルW2から成るように構成している。より具体的な一例として、内側円筒状コイル体を構成する相がU相であり、半径方向において内側円筒状コイル体よりも外側に位置する相がV相、さらにV相の外側に位置する相をW相とし、各相に第1コイル(U1、V1、W1)と第2コイル(U2、V2、W2)を定めている。なお、内側からU相、V相、W相とするのは一例であり、異なる順序、重なり方でも良い。また、図2では各相は順次電気角でほぼ1/3ずつ円周方向にずれて配置されている。このような構成のステータコイル18は、一方の端面が固定部材であるステータ(図1に示す例ではハウジング12)に支持されるように構成されている。
ここで、説明簡単化の為に「ほぼ1/3ずつ円周方向にずれて」と述べたが、厳密にはU相とV相、W相は電気角で120°ずれる。機械角(実際の角度)では2極の場合U相に対しV相は120°、W相は240°ずれる。4極の場合U相に対しV相は60°又は240°、W相は120°又は300°ずれる。6極の場合U相に対しV相は40°、160°、280°、W相は80°、200°、320°ずれ、8極の場合U相に対しV相は30°、120°、210°、300°、W相は60°、150°、240°、330°ずれる。こうして10極、12極と法則に従ってずれることになる。U相、V相、W相は電気角でそれぞれ120°ずつずれるが、機械角で表現すると極数によりずれる角度が変わるので図2は模式的に表現している。
また、ロータ16は、円筒状を成すアウターヨーク16cとインナーヨーク16b、及び永久磁石16aを有し、一方の端面が回転軸14と接続されている。アウターヨーク16cは、上述したステータコイル18外周側(円筒中心を基点とした半径方向外周側)に位置する要素であり、インナーヨーク16bは、ステータコイル18の内周側に位置する要素である。また、本実施形態に係るモータジェネレータ10では永久磁石16aを、アウターヨーク16cの内側であって、ステータコイル18の対向面に備えるように構成している。
このような構成のコアレス型の回転電気機械は、動力発生源と回転軸14とが離れている事より、モータとして作用させた際には、その大きさに比して大きな出力、及びトルクを得る事が可能となる。また、ステータコイル18が鉄心を備えないため、自己インダクタンスを小さく抑える事ができる。
さらに、このような構成のモータジェネレータ10では、ステータコイル18を構成する際、巻き線に図3に示すようなリッツ線を用いると共に絶縁層によるコーティングで形状形成する構成としている。なおリッツ線は、複数の導電線18aが束ねられて構成されており、各導電線18aの外周は、エナメル層18bで覆われている。さらに、導電線18a(束としての導電線18a)の外周には、ガラス繊維のような繊維状物による外皮層18cが設けられている。なお、本実施形態では、コアレスモータの採用によりインダクタンス低減の効果が図られている。
また、実施形態に係るモータジェネレータ10には、入出力電力を制御するためのドライバ30が付帯されている。また、ドライバ30には、少なくともマイコン32とバッテリ34が接続されている。マイコン32は、ドライバ30に対する出力電力の制御、並びに内部回路の切り替え信号の出力制御を行うための要素であり、各種指令信号の入力を行う。一方ドライバ30からは、マイコン32に対して例えば電流値の入力が行われ、マイコンは、この電流値に基づいて指令信号の制御を行うようにすれば良い。また、マイコンには、エンコーダ等の回転数検出器36が備えられ、モータジェネレータ10の回転軸14や、内燃機関50のクランク軸52の回転数の検出を行う事ができるように構成されている。
バッテリ34は、モータジェネレータ10がモータとして稼働する際には電力を供給するための電源としての役割を担い、モータジェネレータ10が発電機として稼働する際には電力を蓄える蓄電池としての役割を担う要素である。なお、電力の供給、及び蓄電については、いずれもドライバ30を介して制御されることとなる。
[回路構成]
このような基本構成を有するモータジェネレータ10における各ステータコイル18の作用説明を簡単化するため、図5、図6に示すように、各相のコイルを2つにして説明する。ステータコイル18を構成する各相を2つのコイル(第1コイルU1、第2コイルU2、第1コイルV1、第2コイルV2、第1コイルW1、第2コイルW2)により構成している。本実施形態に係るステータコイル18は、3相のコイルで構成されている。尚、これは例示であり、コイルの形態が極数を決めるものではない。例えば12極の場合、U1、U2、V1、V2、W1,W2の各相の夫々が全て6コイル直列のコイル体であったり、8極の場合、U1、U2、V1、V2、W1、W2の各相の夫々が全て4コイル直列のコイル体であったりしても良い。このようにステータコイル18の形態から極数を決定することはできず、極数が偶数であれば何極でも構わない。本例では、各相を構成するコイル(第1コイルU1と第2コイルU2、第1コイルV1と第2コイルV2、第1コイルW1と第2コイルW2)の間には、切り替えスイッチを構成する回路部20(20U、20V、20W)が備えられている。
このような基本構成を有するモータジェネレータ10における各ステータコイル18の作用説明を簡単化するため、図5、図6に示すように、各相のコイルを2つにして説明する。ステータコイル18を構成する各相を2つのコイル(第1コイルU1、第2コイルU2、第1コイルV1、第2コイルV2、第1コイルW1、第2コイルW2)により構成している。本実施形態に係るステータコイル18は、3相のコイルで構成されている。尚、これは例示であり、コイルの形態が極数を決めるものではない。例えば12極の場合、U1、U2、V1、V2、W1,W2の各相の夫々が全て6コイル直列のコイル体であったり、8極の場合、U1、U2、V1、V2、W1、W2の各相の夫々が全て4コイル直列のコイル体であったりしても良い。このようにステータコイル18の形態から極数を決定することはできず、極数が偶数であれば何極でも構わない。本例では、各相を構成するコイル(第1コイルU1と第2コイルU2、第1コイルV1と第2コイルV2、第1コイルW1と第2コイルW2)の間には、切り替えスイッチを構成する回路部20(20U、20V、20W)が備えられている。
回路部20は、入力側1ポート、出力側2ポートの切り替えスイッチが2つ(第1スイッチA、第2スイッチB)、並列に配置されて成る。第1スイッチAの入力側ポートには、第1コイルU1、V1、W1がそれぞれ接続され、第2スイッチBの入力側ポートには、第1バイパス線が接続されている。第1スイッチAの出力側ポートには、aポート側に第2コイルU2、V2、W2が接続され、bポート側に第2バイパス線が接続されている。また、第2スイッチBの出力側ポートには、aポート側が開放(未接続)となっており、bポート側には、第2コイルU2、V2、W2からの分岐線が接続されている。
このような回路構成とする事で、回路部20を構成するスイッチの切り替えにより、第1コイルU1、V1、W1と第2コイルU2、V2、W2とを直列接続、または並列接続に切り替える事が可能となる。具体的には、第1スイッチAと第2スイッチBを共にaポートに接続した場合、第1コイルU1、V1、W1と第2コイルU2、V2、W2が直列接続となる(図5参照)。一方、第1スイッチAと第2スイッチBを共にbポートに接続した場合、第1コイルU1、V1、W1と第2コイルU2、V2、W2は、並列接続となる(図6参照)。すなわち、第1スイッチAと第2スイッチBの切り替えタイミングは一致するように構成されている。
このような切り替え制御において、第1コイルU1、V1、W1と第2コイルU2、V2、W2を直列接続するシステム(第1システムと称す)では、トルク特製が良好となる。一方、第1コイルU1、V1、W1と第2コイルU2、V2、W2とを並列接続するシステム(第2システムと称す)では、回転特性が良好となる。
図7に、第1システムと第2システムのトルクと回転数の関係特性(T-N特性)と、トルクと電流の関係特性(T-I特性)をそれぞれ示す。第2システムと第1システムを比較すると、第2システムでは常用回転域が高いため、トルクの向上に伴う使用電力の立ち上がり勾配が急な事を読み取ることができる。一方、第1システムでは、低回転域で高いトルクを発生させる事ができるものの、定格回転数が第2システムの半分程度にとどまってしまっている事を読み取ることができる。
実施形態に係るモータジェネレータ10における、回路部20に対して切り替え信号の入力を行う制御部が、上述したドライバ30である。なお、ドライバ30には、マイコン32を介して予め定められた回転数を閾値として切り替え信号の出力を成すように指令信号が入力されることとなる。
切り替え信号を出力する旨の指令信号を出力するための回転数は、モータジェネレータ10の回路部20の切り替えにより得られる各システム(第1システムと第2システム)の特性に合わせて任意に定めるようにすれば良い。各システムの特性が図7に示すようなものである場合には、例えば1500rpm程度を閾値とし、回転数が閾値以下の場合には第1システム、回転数が閾値より高い場合には第2システムへ切り替えるように切り替え信号を出力する構成とすれば良い。
[作用]
このような構成のモータジェネレータ10では、内燃機関50の始動前には、回転検出器36により検出される回転軸14の回転数はゼロである。このため、回路部20は、第1システムとしてスイッチングされた上で電力の供給が成される。
このような構成のモータジェネレータ10では、内燃機関50の始動前には、回転検出器36により検出される回転軸14の回転数はゼロである。このため、回路部20は、第1システムとしてスイッチングされた上で電力の供給が成される。
ドライバ30は、バッテリ34からモータジェネレータ10へ電力の供給を行うように制御を成す。第1システムとして稼働されたモータジェネレータ10は、消費電流の少ない(第2システム比で約1/2)低回転域において高い出力トルクを発揮する事が可能なモータとして働くため、バッテリ34の容量が少なくなり、大電流が取り出せなくなった場合などであっても、小さな電流値で大きなトルクを得ることができる(第2システム比で約1/2の電流容量)。よって、内燃機関50のクランク軸52を所定の回転数で回転させることができ、内燃機関50の始動が可能となる。
内燃機関50が始動した後、ドライバ30は、バッテリ34からモータジェネレータ10への給電を停止する。これにより、モータジェネレータ10は、回転軸14が内燃機関50により回されることとなり、発電機として機能することとなる。ここで、図8に内燃機関50の回転数とモータジェネレータ10による発電特性の関係を示す。なお、図8に示すグラフは、横軸が内燃機関の回転数(rpm)であり、縦軸がモータジェネレータ10により発電される電力の出力電圧(V)として、発電特性を示すものである。
図8からは、第1システムでは、閾値(図8においては1500rpm)として定めた回転数で定格電圧(図8においては50V)に達することを読み取ることができる。このことから、閾値の回転数よりも高い回転数の帯域では、第1システムで稼働するモータジェネレータ10は、エンジンに対する負荷(抵抗)が大きくなると共に、ドライバ30に入力される電圧が高くなり、過電圧を与える恐れが生じる。
このため、エンジンの回転数(回転数検出器36による検出回転数)が閾値に達した場合、あるいはモータジェネレータ10が発電機として稼働し始める際、マイコン32はドライバ30に対して指令信号を出力し、ドライバ30は、指令信号に基づいて切り替え信号を出力する。これにより、モータジェネレータ10の稼働回路は、第2システムへと切り替えられ、出力電圧が一時的に低下し、3000rpmまで、出力電圧を定格電圧以下でモータジェネレータ10を稼働させることが可能となる。これにより、定格電圧の範囲内で多くの電流をバッテリ34に取り出す事が可能となる。なお、当然ながら、図4に示すように、バッテリ34に溜められた電力は、バッテリ34を電源とした外部出力に供給することができる。
図9に示すグラフは、実施形態に係るモータジェネレータ10をエンジン発電機として使用した際、定格回転数3000rpmで稼働(第2システム)させた場合における出力電流と出力電圧、及び出力電力の関係を示すものである。図9からは、出力電力がリニアに上昇していることを読み取る事ができる。
このように本実施態様ではいわゆるコアレスモータ構造を採用している。コアレスモータではコイル切替を行った場合にスパイク電圧が実質的に発生せず、切替素子類を傷めることがない。こうした事象に本願発明者等が想到したことにより、本実施形態のようなコアレスモータによるコイルの接続形式の切り替えを実現するに至ったのである。
一般的に、モータの回転時にコイルの接続形式を切り替えると、切り替え時に電流は一瞬、スイッチ素子により停止させられる。この瞬間、スイッチ素子にはインダクタンスに比例したスパイク電圧が発生する。素子で切り離せば半導体スイッチ素子に高電圧がかかる。このためコアドモータでは、コイル接続パターンの切替に際して電流の急変が起き(=スパイク電圧の発生)、瞬時に半導体素子へ高電圧がかかって素子を破壊してしまう恐れがある。
これに対し、本願発明者等は、スパイク電圧の発生を抑制する事ができれば、回転中のモータにおいてコイルの接続方式を効果的に切り替える事が可能となるという課題を見出した。そして、一般的なコアドモータ(つまり鉄心の歯の部分にコイルを巻き付けたもの)と、本願に係るコアレスモータとでは、コイル特性が大きく異なることに気付いた。ここで要となるのがスパイク電圧が如何なるものなのかという点である。コイルに対する電流が切り替わるとき、コイルに流れている電流は一瞬止められることとなる。コイルにインダクタンスがあると、電流によるエネルギーが内蔵される(E=インダクタンス×電流の二乗)。このエネルギーは電流が止められた端子に電圧となって現れる。これがスパイク電流発生の原理である。
本願発明者等の検討したところでは、鉄芯歯付きのコアドモータは鉄芯の歯にコイルが巻かれているのでインダクタンスが大きくなる。これに対してコアレスモータは鉄芯が無いのでインダクタンスが小さくなる。インダクタンスは、一般的に(回転数と容量が等しければ)コアレスモータを1とすると鉄芯付きコアドモータは20位になり、各段の差が生じることとなる。
つまり、コアレスモータではインダクタンスが小さいため、電流急変で発生するスパイク電圧がコアドモータに比べて格段(1/20程度)に小さくなる。このようにモータのインダクタンスが小さくなれば、半導体素子を破壊することも無くなるという事象に本願発明者が想到した事により、コアレスモータによるコイルの接続形式の切り替えが実現されたのである。こうしてコアレスモータに適用したならば発生するスパイク電圧を抑えてモータ動作中にスムーズに電流切り替えを行うことが可能になる。
したがって、回転電気機械において運転中に接続形式の切り替えを行うには、スパイク電圧の発生を抑えることが課題になるということに本願発明者が初めて着眼したと言える。尚、コアレスモータと同様にスロットレスタイプも鉄心歯にコイルを巻き付けていない構成だからコアドモータの範疇ではあるもののスロットレスモータでも同様の効果が得られる。
[効果]
上記のような特徴を有するモータジェネレータ10によれば、単一の回転電気機械により、スタータモータとオルタネータとしての機能を果たすことができる。また、簡易な制御機構により始動時には高出力を発揮すると共に、高回転時の発電機構としても用いる事ができる。
上記のような特徴を有するモータジェネレータ10によれば、単一の回転電気機械により、スタータモータとオルタネータとしての機能を果たすことができる。また、簡易な制御機構により始動時には高出力を発揮すると共に、高回転時の発電機構としても用いる事ができる。
また、ステータコイル18に鉄心を備えず、かつリッツ線による形状維持の強度確保を図っている事により、自己インダクタンスを小さく抑える事ができ、回路部20による接続切り替えによるスイッチングから特性切り替えに至るまでの応答性を高める事ができると共に、ロータ16を回転させる際の反トルクによるステータコイル18の変形を防ぐことができる。なお、ステータコイル18の変形を防ぐための構成としては、ステータコイル18に対して耐変形層(不図示)を設けるようにしても良い。
ステータコイル18に付加する耐変形層としては、円筒状に構成したステータコイル18の少なくとも一方の側面(内側または外側)に、フィルムシートを貼付する事によれば良い。フィルムシートとしては、繊維強化プラスチック(FRP)などであれば良く、特に、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)などにより構成されたシートである事が望ましい。このような構成とする事で、モータジェネレータ10を大容量化した場合であっても、ロータ16の反トルクによりステータコイル18が変形する事を防ぐことが可能となる。
また、実施形態に係るモータジェネレータ10のような、いわゆるコアレスモータは鉄心が無い。従って、インダクタンスが小さくなる。これに対し、インダクタンスが大きいと電流の変化は起きにくくなる。そのため、無理に電流の変化を発生させると高電圧が発生する。大きな電流が流れている時に、急に電流を切ると(例えばパラ(第2システム)からシリーズ(直列:第1システム)に切り替えればその瞬間に電流は切られてしまう)、高電圧が発生してしまう。そうなると回路に過電圧がかかって回路の素子が壊れる可能性が大きい。回路素子は過電圧に弱いからである。
このため、コアドモータなどのインダクタンスが大きいモータでは、対策として、回路切替時の大電圧を発生させないようにする為の付帯設備や電流を作業手順上で一旦切って入れ替えるなどの作業追加などを工夫せざるを得なくなる。よって、コアドモータの巻線切替利用では、巻線切替時の急な電流変化による過電圧発生による事故を回避するための各種予防策の素子類を複数個用いざるを得ず結線が複雑になってしまう。
これに対して本実施形態に係る構成のモータジェネレータ10では、過電圧がコアドモータ(鉄心モータ)のわずか数分の1(例えば1/20以下)しか発生しない。このため、余計な付帯設備や事故回避作業が不要となり、直列、並列の切替が瞬時に行えることとなる。これは、本願発明者等によって初めて着想され、実証できた技術である。
一般的にモータを乗物に適用する際、コアドモータのようにインダクタンスが大きいモータの場合、負荷がかかっている状態でモータに対する供給電流をカットすると、ロータの回転を止めようとする抵抗が作用するため、スピードが落ちてショックが生じる。これに対し、本発明に係るモータジェネレータ10を採用した場合には、インダクタンスに起因したショックが生じ難いという事もいう事ができる。
[複数コイルの接続による応用例]
上記実施形態の説明ではコイル数が偶数であったが、本発明を実施するにあたっては、コイルを奇数とすることもできる。そして、各相ごとの全てのコイルが直列形式の場合、各相ごとの全てのコイルが並列形式の場合(並列形式と並列形式を直列に繋げた場合を含む)、そして直並混用の場合の選択バリエーションができる。図10に5コイルのコイル接続のバリエーションを示す。尚、図10に示す例では、切替回路を省略して描いている。また、説明を分かり易くするため、1コイルを1Ωとしている。図10に示すように5コイルが用意されていれば、使用コイル数の選択により1Ω、2Ω、3Ω、4Ω、5Ωが選択できるが、更にコイルの直並列組み合わせの切り替えで0.2Ω、0.83Ω、1.25Ω、2Ω、2.33Ω、3.5Ωも選択することができる。コイル数を増やせば更に細かいパターンを選択する事も可能となる。
上記実施形態の説明ではコイル数が偶数であったが、本発明を実施するにあたっては、コイルを奇数とすることもできる。そして、各相ごとの全てのコイルが直列形式の場合、各相ごとの全てのコイルが並列形式の場合(並列形式と並列形式を直列に繋げた場合を含む)、そして直並混用の場合の選択バリエーションができる。図10に5コイルのコイル接続のバリエーションを示す。尚、図10に示す例では、切替回路を省略して描いている。また、説明を分かり易くするため、1コイルを1Ωとしている。図10に示すように5コイルが用意されていれば、使用コイル数の選択により1Ω、2Ω、3Ω、4Ω、5Ωが選択できるが、更にコイルの直並列組み合わせの切り替えで0.2Ω、0.83Ω、1.25Ω、2Ω、2.33Ω、3.5Ωも選択することができる。コイル数を増やせば更に細かいパターンを選択する事も可能となる。
次にこの5コイル使用のケースでコイル接続切替の方法について、図11のイメージ図にて説明する。コイルの接続パターンの考え方であるが、まず(a)発電電圧が異なる為、循環電流が発生するものは除外する。すなわち誘起電圧が異なるコイル組を並列接続した場合などが循環電流が発生する接続パターンであり、そのようなパターンは除外する。次に(b)トルク定数及び端子間抵抗・インダクタンスが同じになる接続の場合、例えば2つずつ直列にしたものを2組作り、その2組を並列にしたものと、2コイルずつを並列にしたものを2組作ってその2組を直列にする場合が考えられるが、後者の接続方法を採用している。前者の接続はコイル特性のばらつきに起因する循環電流を小さくすることが期待できるがその実現のためにはスイッチの数を増やさねばならない。よって本例では後者を採用している。
図11のLu、Lv、Lwはコイルで脇の数字はコイル番号を示す。 スイッチについて、Svx、Svx2、Svx3、Svx4(xはU、V、Wを意味する。以下同じ)はVスイッチを、Stx1、Stx2、Stx3、Stx4はThroughスイッチを、Scx1、Scx2、Scx3、Scx4はcomスイッチをそれぞれ示している。各相のコイル数が増える場合、この回路図の縦方向に各コイルと各スイッチが同じパターンで増えていく。
1相あたり5コイルの場合、有効なコイルの組み合わせは全部で18種類できる。必要となるスイッチの数は(=9×((コイル数/相)-1)=36個)なので、スイッチON/OFFの組み合わせを変えるだけで、より滑らかな切替が期待できる。
そして全部並列であれば低トルクの高回転数となり発電機機能に適しているが、それよりも回転数が低くても全部直列には至らぬ直並混用でも発電機として用いることができる。一方、全部直列であれば通常のモータに適するが、それよりも高トルクとなる直並混用でもモータとして用いることができる。つまり、直並混用パターンの発電機利用の選択は任意に設定可能になる。
10………モータジェネレータ、12………ハウジング、12a………軸受、14………回転軸、16………ロータ、16a………永久磁石、16b………インナーヨーク、16c………アウターヨーク、18………ステータコイル、18a………導電線、18b………エナメル層、18c………外皮層、20(20U、20V、20W)………回路部、30………ドライバ、32………マイコン、34………バッテリ、36………回転数検出器、50………内燃機関、52………クランク軸、54………カップリング。
Claims (5)
- 内燃機関に付帯される回転電気機械であって、
前記内燃機関のクランク軸との間に機械的な動力伝達経路を持つ回転軸と、
前記回転軸の周囲に配置されたステータコイルと、
前記ステータコイルと離間して前記ステータコイルの対向面に位置する磁石を備えたロータと、を有し、
前記ステータコイルは、3相以上から成り、各相が複数のコイルから構成され、各相を構成するコイルの接続形式を直列形式と並列形式、並列形式に更に1つのコイル若しくは2以上のコイルを直列に繋げたコイル鎖を直列に繋げたもののいずれかへの切り替えを可能とする回路部を備えたことを特徴とする回転電気機械。 - 請求項1に記載の回転電気機械であって、
前記回路部にはドライバが接続され、
前記ドライバには、前記回転軸の回転数に基づいて切り替え信号を出力する旨の指令信号を出力するマイコンが備えられていることを特徴とする回転電気機械。 - 請求項2に記載の回転電気機械であって、
前記切り替え信号を出力する旨の指令信号は、前記回転軸の回転数が予め定められた閾値よりも高いか否かの判定に基づいて出力されることを特徴とする回転電気機械。 - 請求項3に記載の回転電気機械であって、
前記ステータコイルに対して電力を供給する際には、前記回路部により前記直列形式が選択され、
前記回転軸の回転数が前記閾値よりも高くなった際には、前記回路部により前記並列形式が選択されるように、前記マイコンが指令信号を出力することを特徴とする回転電気機械。 - 能動的または受動的な動力の入出力が成される動力伝達経路を持つ回転軸と、
前記回転軸の周囲に配置された非回転のステータコイルと、
前記ステータコイルと離間して前記ステータコイルの対向面に位置する磁石を備えたロータと、を有し、
前記ステータコイルは、3相以上から成り、各相が複数のコイルから構成され、各相を構成するコイルの接続形式を直列形式と並列形式、並列形式に更に1つのコイル若しくは2以上のコイルを直列に繋げたコイル鎖を並列に繋げたもののいずれかへの切り替えを可能とする回路部を備えることにより、発電機と動力源を兼ねた装置としたことを特徴とする回転電気機械。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020129622 | 2020-07-30 | ||
JP2020129622 | 2020-07-30 |
Publications (2)
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JP2022027540A5 JP2022027540A5 (ja) | 2024-05-31 |
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ID=80264093
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2021118809A Pending JP2022027540A (ja) | 2020-07-30 | 2021-07-19 | 回転電気機械 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022027540A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2024062594A1 (ja) * | 2022-09-22 | 2024-03-28 | 株式会社Subaru | モータ駆動システム |
-
2021
- 2021-07-19 JP JP2021118809A patent/JP2022027540A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2024062594A1 (ja) * | 2022-09-22 | 2024-03-28 | 株式会社Subaru | モータ駆動システム |
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