JP2022027190A - 回折格子 - Google Patents
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Abstract
【課題】軟X線領域において利用される回折格子の回折効率を従来よりも改善すること。【解決手段】回折格子(1)は、表面に周期的な凹凸構造が形成された回折格子基板(11)と、Au、Ni、C、及びB4Cのいずれかからなる基本反射層(12)と、W、Ir、Re、及びOsのいずれか又はW、Ir、Re、及びOsの少なくとも1つを含む化合物からなる増反射層(13)と、を備えている。【選択図】図1
Description
本発明は、軟X線領域において利用される回折格子に関する。
エネルギーが約0.1keVから約4keV付近(波長が約0.3nmから約12nm付近に対応)の軟X線を反射型回折格子で分光する場合、実用的な回折効率を得るため、回折格子に対して入射光を回折格子面とすれすれの方向から入射させる斜入射条件で使用する。
軟X線領域では回折格子の表面に反射膜として積層する物質の屈折率nMは、1よりわずかに小さい。高い回折効率を得るためには一般に、回折格子面に垂直な法線方向から測った入射角αが鏡面の全反射条件であるsinα≧nM(α≧π/2-{2(1-nM)}1/2)を満たすようにする。しかしながら、回折格子の溝の効果により回折される光のエネルギーは、正反射条件を満たす零次光や多くの次数光に分散されるだけでなく、表面物質内に吸収される成分も存在するため、計測に利用される1次光(または-1次光)の強度は回折格子溝のない鏡の全反射の場合の強度に比較して非常に弱くなる。このため、例えば溝形状が矩形状のラミナー型回折格子においては、溝の深さ、凹凸構造の山面と谷面の面積比を最適化し、山面と谷面からの光が所望の回折次数の光の回折光方向で強め合う正の干渉を起こすように設計される(特許文献1参照)。
さらに、軟X線領域で高い回折効率を得る方法として、回折格子の表面に低密度物質層と、前記低密度物質層よりも密度が高い高密度物質層を交互に周期的に積層して形成された構造を具備する軟X線多層膜回折格子を用いる方法がある。この方法は高密度物質層で回折された各光が干渉し、光が強められる必要がある。このためには、入射光を多層膜の膜内部まで侵入させる必要があるが、軟X線領域の全反射条件では侵入深さが小さいために膜内部まで光が侵入できず、多層膜の効果を活かすことができなかった。このことが軟X線多層膜回折格子で高い回折効率を得ることを困難にさせていた(特許文献2参照)。
それに対して、回折格子の表面に従来から用いられている金(Au)やニッケル(Ni)などにより構成された基本反射層の上に、光の吸収が小さい非晶質炭素により構成された増反射層を最適な厚さで積層することにより、回折効率を向上させることができることが数値計算や実験により見出されている(特許文献3及び非特許文献1,2参照)。
M. Koike et. al., "Enhancement of diffraction efficiency of laminar-type diffraction gratings overcoated with diamond-like carbon (DLC) in soft X-ray region," AIP Conf. Proc. 1741, 040045 (2016), (4pages) ; doi: 10.1063/1.4952917.
T. Imazono et al., "Experimental evaluation of enhancement of diffraction efficiency by overcoating diamond-like carbon (DLC) on soft X-ray laminar-type gratings," AIP Conf. Proc. 1741, 040043 (2016), (4 pages) ; doi: 10.1063/1.4952915.
しかしながら、本願の発明者らは、全反射条件によって数十ナノメートル程度の深さの物質内部までしか光エネルギーが侵入できない軟X線領域において、基本反射層と、非晶質炭素により構成された増反射層とを備えた回折格子には、回折効率を改善する余地があると考えた。
本発明の一態様は、上述した課題に鑑み成されたものであり、その目的は、軟X線領域において利用される回折格子の回折効率を従来よりも改善することである。
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る回折格子は、表面に周期的な凹凸構造が形成された回折格子基板と、上記回折格子基板の表面を覆う、金(Au)、ニッケル(Ni)、炭素(C)、及び炭化ホウ素(B4C)のいずれかからなる基本反射層と、上記基本反射層の表面を覆う、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、及びオスミウム(Os)のいずれか又はW、Ir、Re、及びOsの少なくとも1つを含む化合物からなる増反射層と、を備えている。
上記の構成によれば、基本反射層と増反射層の相関効果により、入射エネルギーが零次を含む反射回折光として回折される割合が増加する。そのため、本回折格子は、全反射条件によって物質内部深くまで侵入できないエネルギーの軟X線領域において、非晶質炭素により構成された増反射層を備えた従来の回折格子と比較して、回折効率を改善することができる。
また、本発明の第2の態様に係る回折格子は、上記第1の態様において、上記増反射層の厚さは、1nm以上50nm以下である、ことが好ましい。
増反射膜の厚さが1nm未満である場合、厚さが均一でピンホールの発生を抑えた薄膜を形成することが難しい。また、増反射膜の吸収により、入射エネルギーが到達可能な膜厚は50nm以下である。したがって、増反射層の好ましい厚さは、1nm以上50nm以下である。
また、本発明の第3の態様に係る回折格子は、上記第1又は第2の態様において、上記増反射層を第1の増反射層として、上記第1の増反射層の表面を覆う、Au、Ni、C、及びB4Cのいずれかからなる第2の増反射層と、上記第2の増反射層の表面を覆う、W、Ir、Re、及びOsのいずれか又はW、Ir、Re、及びOsの少なくとも1つを含む化合物からなる第3の増反射層と、を更に備えている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、軟X線領域に含まれる電磁波の1次(または-1次)回折光の回折効率を高めることができるため、第2の増反射層及び第3の増反射層を含まない回折格子(すなわち、本発明の第1又は第2の態様)よりも更に回折効率を改善することができる。
本発明の一態様によれば、軟X線領域において利用される回折格子の回折効率を従来よりも改善することができる。
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係る回折格子1について、図1を参照して説明する。図1は、回折格子1の構造を示す断面図である。
本発明の第1の実施形態に係る回折格子1について、図1を参照して説明する。図1は、回折格子1の構造を示す断面図である。
本願の発明者らは、周期的且つ矩形状の溝形状を持つラミナー型の軟X線回折格子の回折効率を一定の波長範囲で高めるには、(1)回折格子溝が形成された回折格子基板の表面(以下において回折格子面とも称する)に、金(Au)又はニッケル(Ni)、あるいは、Au及びNiの積層構造により構成された基本反射層を積層し、(2)基本反射層の表面に、非晶質炭素により構成された増反射層を積層すればよいことを見いだした(非特許文献1,2)。
本願の発明者らは、更なる研究の結果、鉄のL発光(Fe-Lα,β)の波長である1.7nm以上1.8nm以下の範囲(すなわちエネルギーが700eV以上720eV(エレクトロンボルト)以下の範囲)を中心とした領域(軟X線領域)の回折効率を高めるために、増反射層をタングステン(W)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、またはオスミウム(Os)のいずれか又はW、Ir、Re、及びOsの少なくとも1つを含む化合物により構成すればよいことを見出した。
以下に説明する回折格子1は、本願発明の一態様であり、図1に示すように、回折格子基板11と、基本反射層12と、増反射層13とを備えている。
回折格子基板11は、例えば石英ガラス(SiO2)製の基板の表面に周期的な凹凸構造である回折格子溝を形成することによって得られる。この回折格子溝は、軟X線領域に含まれる電磁波に対して回折格子として機能するように形成されている。したがって、回折格子1は、軟X線用のラミナー型回折格子である。なお、回折格子基板11を構成する材料は、石英ガラスに限定されるものではない。
図1に図示した直交座標系おいては、回折格子の表面中心Oでの回折格子面の垂線(法線)方向をx軸方向と定め、表面中心Oでの回折格子面の接線方向をy軸方向と定め、表面中心Oにおいて紙面に垂直な方向をz軸と定めている。ここで、x軸方向から入射光の方向へ張る角度を入射角αとする。したがって、回折格子面から入射光の方向に張る角度θとの間にはθ=90°-αの関係がある。また、x軸方向から測定に用いる波長λの回折次数mが+1次の回折光の方向を回折角βとする。入射角αと回折角βとの双方について、符号は、x軸から反時計廻りを正とする。
回折格子溝はラミナー型と一般に称される矩形波状である。回折格子基板11において、回折格子溝の、溝周期を格子定数σとし、溝の山部の長さを長さγとし、溝の深さを深さhとする。因みに入射角α、回折角β、回折次数m(m=±1,±2,±3,・・・)、波長λ、及び格子定数σの間には回折格子の式と称されるsinα+sinβ=mλ/σの関係がある。
基本反射層12は、回折格子基板11の上に、その表面を覆うように堆積された薄膜であって、金(Au)、ニッケル(Ni)、炭素(C)、もしくは炭化ホウ素(B4C)の何れかからなる薄膜である。以下において、基本反射層12の厚さを膜厚d12とする。基本反射層12をAuで構成する場合、膜厚d12の一例としては、30nmが挙げられる。しかし、膜厚d12は、これに限定されるものではなく、構成する材料や、使用する波長λなどに応じて適宜定めることができる。
増反射層13は、基本反射層12の上に、その表面を覆うように堆積された薄膜であって、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、またはオスミウム(Os)のいずれか又はW、Ir、Re、及びOsの少なくとも1つを含む化合物からなる薄膜である。以下において、増反射層13の厚さを膜厚d13とする。増反射層13をWで構成する場合、膜厚d13の一例としては、3.8nmが挙げられ、増反射層13をIr又はOsで構成する場合、膜厚d13の一例としては、7.0nmが挙げられる。しかし、膜厚d13は、これらに限定されるものではなく、構成する材料や、使用する波長λなどに応じて適宜定めることができる。なお、膜厚d13は、1nm以上50nm以下である、ことが好ましい。
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る回折格子2について、図2を参照して説明する。図2は、回折格子2の構造を示す断面図である。
本発明の第2の実施形態に係る回折格子2について、図2を参照して説明する。図2は、回折格子2の構造を示す断面図である。
上述した鉄のL発光(Fe-Lα,β)の波長である1.7nm以上1.8nm以下の範囲(すなわちエネルギーが700eV以上720eV(エレクトロンボルト)以下の範囲)を中心とした領域(軟X線領域)の回折効率を高めるために、本発明の第2の実施形態に係る回折格子2は、図2に示すように、回折格子基板21と、基本反射層22と、第1の増反射層23と、第2の増反射層24と、第3の増反射層25と、を備えている。
回折格子2の回折格子基板21、基本反射層22、及び第1の増反射層23の各々は、それぞれ、回折格子1の回折格子基板11、基本反射層12、及び増反射層13と同様に構成されている。したがって、ここでは、その説明を省略する。すなわち、回折格子2は、回折格子1と同様に、軟X線用のラミナー型回折格子である。回折格子基板21においても、回折格子基板11と同様に、回折格子溝の、溝周期を格子定数σとし、溝の山部の長さを長さγとし、溝の深さを深さhとする。また、基本反射層22の厚さを膜厚d22とし、第1の増反射層23の厚さを膜厚d23とする。
第2の増反射層24は、第1の増反射層23の上に、その表面を覆うように堆積された薄膜であって、Au、Ni、C、及びB4Cのいずれかからなる薄膜である。すなわち、第2の増反射層24は、基本反射層22と同様の材料群により構成されている。なお、基本反射層22がAuまたはNiにより構成され、第2の増反射層24がCまたはB4Cにより構成される組合せも有望である。以下において、第2の増反射層24の厚さを膜厚d24とする。
第3の増反射層25は、第2の増反射層24の上に、その表面を覆うように堆積された薄膜であって、W、Ir、Re、及びOsのいずれか又はW、Ir、Re、及びOsの少なくとも1つを含む化合物からなる薄膜である。すなわち、第3の増反射層25は、第1の増反射層23と同様の材料により構成されている。以下において、第3の増反射層25の厚さを膜厚d25とする。
例えば、基本反射層22及び第2の増反射層24の各々としてAuを採用し、第1の増反射層23及び第3の増反射層25の各々としてWを採用することができる。
第2の増反射層24をAuで構成した場合の膜厚d24、及び、第3の増反射層25をWで構成した場合の膜厚d25の各々の一例としては、30nmが挙げられる。しかし、膜厚d24及び膜厚d25は、これに限定されるものではなく、構成する材料や、使用する波長λなどに応じて適宜定めることができる。
〔実施例及び比較例〕
本発明の第1の実施例の第1例は、図1に示した回折格子1の実施例であり、回折格子基板11において、格子定数σ、深さh、長さγ、及びデューティ比γ/σの各々として、それぞれ、σ=417nm(1/σ=2400本/mm)、h=6nm、γ=125nm、及びγ/σ=0.30を採用した。また、基本反射層12の材料としてAuを採用し、膜厚d12としてd12=30nmを採用した。また、増反射層13の材料としてWを採用し、膜厚d13を、0nm<d13≦16nmの範囲で変化させた。
本発明の第1の実施例の第1例は、図1に示した回折格子1の実施例であり、回折格子基板11において、格子定数σ、深さh、長さγ、及びデューティ比γ/σの各々として、それぞれ、σ=417nm(1/σ=2400本/mm)、h=6nm、γ=125nm、及びγ/σ=0.30を採用した。また、基本反射層12の材料としてAuを採用し、膜厚d12としてd12=30nmを採用した。また、増反射層13の材料としてWを採用し、膜厚d13を、0nm<d13≦16nmの範囲で変化させた。
本発明の第1の実施例の第2例は、上述した第1の実施例の第1例の構成をベースにし、増反射層13の材料をWからIrに置換したものである。第1の実施例と同様に、膜厚d13を、0nm<d13≦16nmの範囲で変化させた。
本発明の第1の実施例の第3例は、上述した第1の実施例の第1例の構成をベースにし、増反射層13の材料をWからOsに置換したものである。第1の実施例と同様に、膜厚d13を、0nm<d13≦16nmの範囲で変化させた。
本発明の第2の実施例は、図2に示した回折格子2の実施例であり、回折格子基板21において、格子定数σ、深さh、長さγ、及びデューティ比γ/σの各々として、それぞれ、σ=417nm(1/σ=2400本/mm)、h=6nm、γ=167nm、及びγ/σ=0.40を採用した。基本反射層22の材料としてAuを採用し、膜厚d22としてd22=30nmを採用した。第1の増反射層23の材料としてWを採用し、膜厚d23としてd23=4.0nmを採用した。第2の増反射層24の材料としてAuを採用し、膜厚d24としてd24=4.0nmを採用した。第3の増反射層25の材料としてWを採用し、膜厚d25としてd25=4.0nmを採用した。
また、本発明の比較例である回折格子であって、従来から用いられている回折格子9の構造を図8に示す。図8は、回折格子9の構造を示す断面図である。回折格子9は、回折格子基板91と、基本反射層92とを備えている。回折格子基板91及び基本反射層92の各々は、回折格子1の回折格子基板11及び基本反射層12と同様に構成されている。すなわち、回折格子9は、回折格子1から増反射層13を省略したものである。
回折格子基板91は、第1の実施例と回折格子基板11と同じ構成を採用している。すなわち、基本反射層12に対応する基本反射層92の材料は、Auである。また、基本反射層92の厚さを膜厚d92とする。回折格子基板91においても、格子定数σ、深さh、長さγ、及びデューティ比γ/σの各々を、それぞれ、σ=417nm(1/σ=2400本/mm)、h=6nm、γ=125nm、γ/σ=0.30に設定した。基本反射層92の材料としてAuを採用し、膜厚d92としてd92=30.0nmを採用した。
図3は、第1の実施例の第1例における回折効率の2次元分布図であって、Auの基本反射層12上に増反射層13を付加した場合で、増反射層13の材料をWとして膜厚d13を、0nm<d13≦16nmの範囲で変化させ、且つ、波長λ=1.76nmの電磁波を用いて入射角αを84°≦α≦89°の範囲で変化させた場合に得られた回折効率の2次元分布図である。図3によれば、α=87.6°且つd13=3.8nmにおいて、6.2%の回折効率が得られることが分かった。
図4は、第1の実施例の第2例における回折効率の2次元分布図であって、Auの基本反射層12上に増反射層13を付加した場合で、増反射層13の材料をIrとして膜厚d13を、0nm<d13≦16nmの範囲で変化させ、且つ、波長λ=1.76nmの電磁波を用いて入射角αを84°≦α≦89°の範囲で変化させた場合に得られた回折効率の2次元分布図である。図4によれば、α=87.6°且つd13=7.0nmにおいて、7.0%の回折効率が得られることが分かった。
図5は、第1の実施例の第3例における回折効率の2次元分布図であって、Auの基本反射層12上に増反射層13を付加した場合で、増反射層13の材料をOsとして膜厚d13を、0nm<d13≦16nmの範囲で変化させ、且つ、波長λ=1.76nmの電磁波を用いて入射角αを84°≦α≦89°の範囲で変化させた場合に得られた回折効率の2次元分布図である。図4によれば、α=87.6°且つd13=7.0nmにおいて、7.1%の回折効率が得られることが分かった。
図6は、比較例、d13=4.3nmを採用した第1の実施例の第1例(増反射層13の材料はW)、及び第2の実施例(第1の増反射層23、第2の増反射層24、及び第3の増反射層25の各々の材料は、それぞれ、W、Au、及びW)における回折効率の入射角α依存性を示すグラフである。すなわち、図6は、以下の3つの例における回折効率の入射角依存性を示すグラフである。
(1)比較例。
(2)図1で示した第1の実施例の第1例において最大の回折効率が得られたWの基本反射層12の膜厚4.3nmとした例。
(3)図2で示した第2の実施例において、σ=417 nm、h=6.0nm、デューティ比(a/σ)=0.40(a=167nm)のSiO2製である回折格子基板21に基本反射層22の膜厚が30nm、Wの第1の増反射層23の膜厚が4.0nm、Auの第2の増反射層24の膜厚が2.0nm、第3の増反射層25の膜厚4.0nmの条件で堆積された回折格子の場合の例。
図6によれば、第2の実施例の回折格子2は比較例の回折格子9に対して約25%の回折効率の改善が得られ、第1の実施例の回折格子1に対して約5%の回折効率の改善が得られることが分かった。さらに、比較例の場合、入射角αとしてα=88.7°を採用することが一般的であり、この場合の回折効率は0.043であった。したがって、比較例においてα=88.7°に設定した場合と比較して、第2の実施例は、約50%の回折効率の向上が得られることが分かった。更に、比較例において一般的に用いられていたα=88.7°よりα=87.5°と入射角αが小さくなることから、入射光方向から見た回折格子の見込み角が1.92倍になる。そのため、回折効率の向上分と合わせると、第2の実施例における1次回折光の光量は、比較例と比較して約2.4倍に増加することが分かった。
図7は、図6と同様の条件で計算した、比較例、第1の実施例の第1例(増反射層13の材料はW)、及び第2の実施例(第1の増反射層23、第2の増反射層24、及び第3の増反射層25の各々の材料は、それぞれ、W、Au、及びW)における回折効率の波長依存性を示すグラフである。図7によれば、第1の実施例及び第2の実施例において実用的な波長範囲と考えられる1nm≦λ≦8nmのほぼ全領域において、第1の実施例及び第2の実施例は、比較例に比較して回折効率の改善が得られることが分かった。
電子顕微鏡に搭載した軟X線発光回折格子分光器に組み込むことにより、電子線で試料を励起し、鉄鋼のなどの軟X線発光の分光計測に基づく微量成分分析、鉄を含む永久磁石材料開発、スピントロニクスデバイス中における鉄化合物の状態分析等に用いることができる。また、励起源として各種加速器等により生成される放射光、イオンビーム、高周波放電、プラズマ放電光源等も用いることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
1,2 回折格子
11,21 回折格子基板
12,22 基本反射層
13,23 増反射層(第1の増反射層)
24 第2の増反射層
25 第3の増反射層
11,21 回折格子基板
12,22 基本反射層
13,23 増反射層(第1の増反射層)
24 第2の増反射層
25 第3の増反射層
Claims (3)
- 表面に周期的な凹凸構造が形成された回折格子基板と、
上記回折格子基板の表面を覆う、金(Au)、ニッケル(Ni)、炭素(C)、及び炭化ホウ素(B4C)のいずれかからなる基本反射層と、
上記基本反射層の表面を覆う、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、及びオスミウム(Os)のいずれか又はW、Ir、Re、及びOsの少なくとも1つを含む化合物からなる増反射層と、を備えている、
ことを特徴とする回折格子。 - 上記増反射層の厚さは、1nm以上50nm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の回折格子。 - 上記増反射層を第1の増反射層として、
上記第1の増反射層の表面を覆う、Au、Ni、C、及びB4Cのいずれかからなる第2の増反射層と、
上記第2の増反射層の表面を覆う、W、Ir、Re、及びOsのいずれか又はW、Ir、Re、及びOsの少なくとも1つを含む化合物からなる第3の増反射層と、を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回折格子。
Priority Applications (1)
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