JP2022026603A - 樹脂積層体及びこれを用いた回路基板材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】低誘電特性を有し、かつ線熱膨張係数が低い樹脂積層体、及びこれを用いた回路基板材料を提供する。【解決手段】結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体を含有する樹脂層(A)と、ガラス転移点が100℃以上であり、12GHzにおける誘電正接が0.02未満である非晶性樹脂を含有する樹脂層(B)とを含む、樹脂積層体を用いる。環状ポリオレフィン樹脂共重合体として、少なくとも1種の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び少なくとも1種の水素化共役ジエンポリマーブロック単位を含む樹脂共重合体、又はこの樹脂共重合体の不飽和カルボン酸及び/若しくはその無水物による変性体を用いることができる。【選択図】なし
Description
本発明は低誘電特性及び低熱膨張率性に優れた樹脂積層体、及びこれを用いた回路基板材料に関する。
一般に、電気・電子機器に使用される回路基板材料としては、銅張積層板(CCL)と言われる、紙やガラス等の基材に樹脂を含浸させたシート(プリプレグ)を重ね、加圧加熱処理して得た絶縁板の表面に銅箔を施したものや、フレキシブルプリント基板(FPC)と言われる、ベースフィルムの上に絶縁接着層を形成してその上に銅等の導体箔を張り合わせたものが主に使われる。
近年、電気・電子機器において情報伝達量、速度の向上のため、通信周波数の高周波化が進んでおり、その中で、伝送損失(α)の増大が大きな課題となっている。この伝送損失(α)の値が低いほど、情報信号の減衰が少なく、通信の高い信頼性が確保できることを意味する。
伝送損失(α)は周波数(f)に比例するため、高周波数領域での通信ではαが大きくなり、信頼性の低下につながる。伝送損失(α)を抑える手法として、周波数(f)と同じく、αが比例する誘電正接(tanδ)を低減する方法が挙げられる。通信信号の高速伝送のためには、誘電正接(tanδ)の低い材料、即ち、低誘電特性を有する材料が求められている。
伝送損失(α)は周波数(f)に比例するため、高周波数領域での通信ではαが大きくなり、信頼性の低下につながる。伝送損失(α)を抑える手法として、周波数(f)と同じく、αが比例する誘電正接(tanδ)を低減する方法が挙げられる。通信信号の高速伝送のためには、誘電正接(tanδ)の低い材料、即ち、低誘電特性を有する材料が求められている。
低誘電特性を有する材料として、例えば、特許文献1には、特定の構造を有するポリイミドと、特定の構造を有するビスイミド系化合物とを有する低誘電樹脂組成物及び積層板、金属張積層板が記載されている。
ところで、特許文献1のような低誘電樹脂と、金属層とを積層して回路基板材料を作製する場合、樹脂層と金属層との線熱膨張係数の差が大きいと、積層後にカールや反りが発生する場合がある。近年、電気・電子機器は小型化や多層化が進んでいるため、樹脂層の線熱膨張係数を低減して、積層体のカールや反りを改善することが求められている。
そこで、本発明の目的は、低誘電特性を有し、かつ線熱膨張係数が低い樹脂積層体、及びこれを用いた回路基板材料を提供することにある。
そこで、本発明の目的は、低誘電特性を有し、かつ線熱膨張係数が低い樹脂積層体、及びこれを用いた回路基板材料を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の環状ポリオレフィン樹脂層と、特定の非晶性樹脂を含む層を積層することで、上記課題を解決し得ることを見出した。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
[1]結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体を含有する樹脂層(A)と、ガラス転移点が100℃以上であり、12GHzにおける誘電正接が0.02未満である非晶性樹脂を含有する樹脂層(B)とを含む、樹脂積層体。
[2]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、ポリオレフィンの側鎖にシクロヘキサンを有する、[1]に記載の樹脂積層体。
[3]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、少なくとも1種の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び少なくとも1種の水素化共役ジエンポリマーブロック単位を含む樹脂共重合体、又はこの樹脂共重合体の不飽和カルボン酸及び/若しくはその無水物による変性体である、[1]又は[2]に記載の樹脂積層体。
[4]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、前記水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位を少なくとも2個含む樹脂共重合体である、[3]に記載の樹脂積層体。
[5]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、スチレンとブタジエンの水素化トリブロックコポリマー若しくは水素化ペンタブロックコポリマー、又はこれらの不飽和カルボン酸及び/若しくはその無水物による変性体である、[3]又は[4]に記載の樹脂積層体。
[6]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体の誘電正接が、12GHzにおいて0.005未満である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
[7]前記非晶性樹脂が、脂環式オレフィン重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリスルホン並びにこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
[8]少なくとも一方の最外層が樹脂層(A)である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
[9][1]~[8]のいずれか1項に記載の樹脂積層体と、導体とを積層してなる回路基板材料。
[2]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、ポリオレフィンの側鎖にシクロヘキサンを有する、[1]に記載の樹脂積層体。
[3]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、少なくとも1種の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び少なくとも1種の水素化共役ジエンポリマーブロック単位を含む樹脂共重合体、又はこの樹脂共重合体の不飽和カルボン酸及び/若しくはその無水物による変性体である、[1]又は[2]に記載の樹脂積層体。
[4]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、前記水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位を少なくとも2個含む樹脂共重合体である、[3]に記載の樹脂積層体。
[5]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、スチレンとブタジエンの水素化トリブロックコポリマー若しくは水素化ペンタブロックコポリマー、又はこれらの不飽和カルボン酸及び/若しくはその無水物による変性体である、[3]又は[4]に記載の樹脂積層体。
[6]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体の誘電正接が、12GHzにおいて0.005未満である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
[7]前記非晶性樹脂が、脂環式オレフィン重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリスルホン並びにこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
[8]少なくとも一方の最外層が樹脂層(A)である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
[9][1]~[8]のいずれか1項に記載の樹脂積層体と、導体とを積層してなる回路基板材料。
本発明によれば、低誘電特性を有し、かつ線熱膨張係数が低い樹脂積層体、及びこれを用いた回路基板材料を得ることができる。
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
以下において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
以下において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
1.樹脂積層体
本発明の樹脂積層体は、結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体を含有する樹脂層(A)と、ガラス転移点が100℃以上であり、12GHzにおける誘電正接が0.02未満である非晶性樹脂を含有する樹脂層(B)とを含む積層体である。
以下、各層について詳細に説明する。
本発明の樹脂積層体は、結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体を含有する樹脂層(A)と、ガラス転移点が100℃以上であり、12GHzにおける誘電正接が0.02未満である非晶性樹脂を含有する樹脂層(B)とを含む積層体である。
以下、各層について詳細に説明する。
<<樹脂層(A)>>
本発明の樹脂積層体における樹脂層(A)は、結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体を含有する。
樹脂層(A)における環状ポリオレフィン樹脂共重合体の含有量は、20質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。樹脂層(A)が環状ポリオレフィン樹脂共重合体のみからなる(100質量%)ものであってもよい。環状ポリオレフィン樹脂共重合体の含有量が上記範囲以上であることで、低誘電特性を示すことができる。
本発明の樹脂積層体における樹脂層(A)は、結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体を含有する。
樹脂層(A)における環状ポリオレフィン樹脂共重合体の含有量は、20質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。樹脂層(A)が環状ポリオレフィン樹脂共重合体のみからなる(100質量%)ものであってもよい。環状ポリオレフィン樹脂共重合体の含有量が上記範囲以上であることで、低誘電特性を示すことができる。
<環状ポリオレフィン樹脂共重合体>
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体における「環状」とは、環状ポリオレフィン樹脂共重合体が有する脂環式構造、具体的には、ポリオレフィンの側鎖に有する脂環式構造のことをいう。当該脂環式構造の好適な例としては、シクロアルカン、ビシクロアルカン、多環式化合物等が挙げられ、なかでもシクロアルカンが好ましく、シクロヘキサンがより好ましい。
また、当該脂環式構造は、後述する水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が有する、芳香族環の水素化により生じる脂環式構造であることがより好ましい。
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体における「環状」とは、環状ポリオレフィン樹脂共重合体が有する脂環式構造、具体的には、ポリオレフィンの側鎖に有する脂環式構造のことをいう。当該脂環式構造の好適な例としては、シクロアルカン、ビシクロアルカン、多環式化合物等が挙げられ、なかでもシクロアルカンが好ましく、シクロヘキサンがより好ましい。
また、当該脂環式構造は、後述する水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が有する、芳香族環の水素化により生じる脂環式構造であることがより好ましい。
(環状ポリオレフィン樹脂共重合体の物性)
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体は、結晶融解ピーク温度が100℃未満である。
環状ポリオレフィン樹脂共重合体の結晶融解ピーク温度は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、65℃以上がさらに好ましい。また、結晶融解ピーク温度は、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましい。
なお、本発明における結晶融解ピーク温度とは、加熱速度10℃/分で測定される示差走査熱量測定(DSC)において、結晶融解ピークが検出されたときの温度である。
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体は、結晶融解ピーク温度が100℃未満である。
環状ポリオレフィン樹脂共重合体の結晶融解ピーク温度は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、65℃以上がさらに好ましい。また、結晶融解ピーク温度は、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましい。
なお、本発明における結晶融解ピーク温度とは、加熱速度10℃/分で測定される示差走査熱量測定(DSC)において、結晶融解ピークが検出されたときの温度である。
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体の誘電正接は、12GHzにおいて0.005未満であることが好ましく、0.001未満であることがより好ましい。誘電正接が小さければ小さいほど誘電損失も小さくなるので、回路基板材料とした際の電気信号の伝達効率、高速化が得られるために好ましい。誘電正接の下限は特に限定されず、0以上であればよい。
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体のメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、通常0.1g/10分以上であり、成形方法や成形体の外観の観点から、好ましくは0.5g/10分以上である。
また、通常20.0g/10分以下であり、材料強度の観点から、好ましくは10.0g/10分以下、より好ましくは5.0g/10分以下である。
MFRは、ISO R1133に従って、測定温度230℃、測定荷重2.16kgの条件で測定することで求められる。
また、通常20.0g/10分以下であり、材料強度の観点から、好ましくは10.0g/10分以下、より好ましくは5.0g/10分以下である。
MFRは、ISO R1133に従って、測定温度230℃、測定荷重2.16kgの条件で測定することで求められる。
<環状ポリオレフィン(a)>
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体としては、低誘電特性の観点から、少なくとも1種の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び少なくとも1種の水素化共役ジエンポリマーブロック単位を含む環状ポリオレフィン樹脂共重合体(以下、「環状ポリオレフィン(a)」ともいう)、又は当該環状ポリオレフィン(a)の不飽和カルボン酸及び/若しくはその無水物による変性体(以下、「変性環状ポリオレフィン(a’)」ともいう)が好ましい。
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体としては、低誘電特性の観点から、少なくとも1種の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び少なくとも1種の水素化共役ジエンポリマーブロック単位を含む環状ポリオレフィン樹脂共重合体(以下、「環状ポリオレフィン(a)」ともいう)、又は当該環状ポリオレフィン(a)の不飽和カルボン酸及び/若しくはその無水物による変性体(以下、「変性環状ポリオレフィン(a’)」ともいう)が好ましい。
本発明において「ブロック」とは、コポリマーの構造的又は組成的に異なった重合セグメントからのミクロ相分離を表すコポリマーの重合セグメントをいう。ミクロ相分離は、ブロックコポリマー中で重合セグメントが混じり合わないことにより生ずる。
なお、ミクロ相分離とブロックコポリマーは、PHYSICS TODAYの1999年2月号32-38頁の“Block Copolymers-Designer Soft Materials”で広範に議論されている。
なお、ミクロ相分離とブロックコポリマーは、PHYSICS TODAYの1999年2月号32-38頁の“Block Copolymers-Designer Soft Materials”で広範に議論されている。
環状ポリオレフィン(a)は、水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(以下「ブロックA」ともいう)及び水素化共役ジエンポリマーブロック(以下「ブロックB」ともいう)からなるジブロックコポリマー、ブロックA及びブロックBの少なくとも一方を2以上含むトリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、ペンタブロックコポリマー等が挙げられる。
環状ポリオレフィン(a)は、ブロックAを少なくとも2個含むことが好ましく、例えば、A-B-A型、A-B-A-B型、A-B-A-B-A型などが好適に挙げられる。
環状ポリオレフィン(a)は、ブロックAを少なくとも2個含むことが好ましく、例えば、A-B-A型、A-B-A-B型、A-B-A-B-A型などが好適に挙げられる。
また、環状ポリオレフィン(a)はそれぞれの末端に芳香族ビニルポリマーからなるセグメントを含むことが好ましい。このため、本発明の水素化ブロックコポリマーは、少なくとも2個の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(ブロックA)を有し、この2個の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(ブロックA)の間には、少なくとも1つの水素化共役ジエンポリマーブロック単位(ブロックB)を有することが好ましい。これらの観点から、環状ポリオレフィン(a)は、A-B-A型又はA-B-A-B-A型がより好ましい。
環状ポリオレフィン(a)における水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(ブロックA)の含有率は、好ましくは30~99モル%、より好ましくは40~90モル%である。なかでも、さらに好ましくは50モル%以上、よりさらに好ましくは60モル%以上である。
水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(ブロックA)の比率が上記下限以上であれば剛性が低下することがなく、耐熱性や線熱膨張率も良好となる。一方、上記上限以下であれば脆性が悪化することがない。
水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(ブロックA)の比率が上記下限以上であれば剛性が低下することがなく、耐熱性や線熱膨張率も良好となる。一方、上記上限以下であれば脆性が悪化することがない。
また、環状ポリオレフィン(a)における水素化共役ジエンポリマーブロック単位(ブロックB)の含有率は、好ましくは1~70モル%、より好ましくは10~60モル%である。なかでも、さらに好ましくは50モル%以下、よりさらに好ましくは40モル%以下である。
水素化共役ジエンポリマーブロック単位(ブロックB)の比率が上記下限以上であれば脆性が悪化することがなく、上記上限以下であれば剛性が低下することがない。一方、上記上限以下であれば剛性が低下することがなく、耐熱性や線熱膨張率も良好となる。
水素化共役ジエンポリマーブロック単位(ブロックB)の比率が上記下限以上であれば脆性が悪化することがなく、上記上限以下であれば剛性が低下することがない。一方、上記上限以下であれば剛性が低下することがなく、耐熱性や線熱膨張率も良好となる。
環状ポリオレフィン(a)を構成する水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び水素化共役ジエンポリマーブロック単位はそれぞれ、後に詳述する芳香族ビニルモノマー及び1,3-ブタジエンなどの共役ジエンモノマーから構成されるポリマーブロックを水素化することで得ることができる。
また、環状ポリオレフィン(a)は官能基のないブロックコポリマーであることが好ましい。「官能基のない」とはブロックコポリマー中に如何なる官能基、即ち、炭素原子と水素原子以外の原子を含む基が存在しないことを意味する。
また、環状ポリオレフィン(a)は官能基のないブロックコポリマーであることが好ましい。「官能基のない」とはブロックコポリマー中に如何なる官能基、即ち、炭素原子と水素原子以外の原子を含む基が存在しないことを意味する。
以下、水素化する前の芳香族ビニルポリマーブロック単位及び共役ジエンポリマーブロック単位を形成するためのモノマーについて説明する。
(芳香族ビニルモノマー)
水素化前の芳香族ビニルポリマーブロック単位の原料となる芳香族ビニルモノマーは、一般式(1)で示されるモノマーである。
水素化前の芳香族ビニルポリマーブロック単位の原料となる芳香族ビニルモノマーは、一般式(1)で示されるモノマーである。
上記一般式(1)において、Rは水素又はアルキル基であり、Arはフェニル基、ハロフェニル基、アルキルフェニル基、アルキルハロフェニル基、ナフチル基、ピリジニル基又はアントラセニル基である。
前記Rがアルキル基である場合、炭素数は好ましくは1~6であり、該アルキル基はハロ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基及びカルボキシル基のような官能基で単置換若しくは多重置換されていてもよい。
また、前記Arは、フェニル基又はアルキルフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
また、前記Arは、フェニル基又はアルキルフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン(全ての異性体を含み、特にp-ビニルトルエンが好ましい)、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン(全ての異性体を含む)、及びこれらの混合物が挙げられ、なかでも、スチレンが好ましい。
(共役ジエンモノマー)
水素化前の共役ジエンポリマーブロック単位の原料となる共役ジエンモノマーは、2個の共役二重結合を持つモノマーであればよく、特に限定されるものではない。
共役ジエンモノマーとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2-メチル-1,3-ペンタジエンとその類似化合物、及びこれらの混合物が挙げられ、なかでも、1,3-ブタジエンが好ましい。
水素化前の共役ジエンポリマーブロック単位の原料となる共役ジエンモノマーは、2個の共役二重結合を持つモノマーであればよく、特に限定されるものではない。
共役ジエンモノマーとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2-メチル-1,3-ペンタジエンとその類似化合物、及びこれらの混合物が挙げられ、なかでも、1,3-ブタジエンが好ましい。
なお、共役ジエンモノマーとして1,3-ブタジエンを用いる場合、その重合体であるポリブタジエンは、1,4-結合単位([-CH2-CH=CH-CH2-])と1,2-結合単位([-CH2-CH(CH=CH2)-])とが存在するため、水素化により、前者はポリエチレンの繰り返し単位と同様の構造(エチレン構造)を与え、後者は1-ブテンを重合した際の繰り返し単位と同様の構造(1-ブテン構造)を与える。したがって、本発明に係る水素化共役ジエンポリマーブロックは、エチレン構造及び1-ブテン構造の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
また、共役ジエンモノマーとしてイソプレンを用いる場合、その重合体であるポリイソプレンは、1,4-結合単位([-CH2-C(CH3)=CH-CH2-])、3,4-結合単位([-CH2-CH(C(CH3)=CH2)-])及び1,2-結合単位([-CH2-C(CH3)(CH=CH2)-])が存在し、水素化により得られる3種の繰り返し単位の少なくともいずれかを含むものとなる。
また、共役ジエンモノマーとしてイソプレンを用いる場合、その重合体であるポリイソプレンは、1,4-結合単位([-CH2-C(CH3)=CH-CH2-])、3,4-結合単位([-CH2-CH(C(CH3)=CH2)-])及び1,2-結合単位([-CH2-C(CH3)(CH=CH2)-])が存在し、水素化により得られる3種の繰り返し単位の少なくともいずれかを含むものとなる。
(ブロック構造)
環状ポリオレフィン(a)はSBS、SBSB、SBSBS、SBSBSB、SIS、SISIS、及びSISBS(ここで、Sはポリスチレン、Bはポリブタジエン、Iはポリイソプレンを意味する。)のようなトリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、ペンタブロックコポリマー等のマルチブロックコポリマーの水素化によって製造されることが好ましい。ブロックは、線状ブロックでもよく、分岐していてもよい。分岐している場合の重合連鎖はコポリマーの骨格に沿ってどの位置に結合していてもよい。また、ブロックは、線状ブロックのほかに、テーパーブロック、又はスターブロックであってもよい。
環状ポリオレフィン(a)はSBS、SBSB、SBSBS、SBSBSB、SIS、SISIS、及びSISBS(ここで、Sはポリスチレン、Bはポリブタジエン、Iはポリイソプレンを意味する。)のようなトリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、ペンタブロックコポリマー等のマルチブロックコポリマーの水素化によって製造されることが好ましい。ブロックは、線状ブロックでもよく、分岐していてもよい。分岐している場合の重合連鎖はコポリマーの骨格に沿ってどの位置に結合していてもよい。また、ブロックは、線状ブロックのほかに、テーパーブロック、又はスターブロックであってもよい。
環状ポリオレフィン(a)を構成する水素化前のブロックコポリマーは、芳香族ビニルポリマーブロック単位及び共役ジエンポリマーブロック単位以外の1又は複数の追加ブロック単位を含んでいてもよく、例えばトリブロックコポリマーの場合には、これらの追加ブロック単位はトリブロックポリマー骨格のどの位置に結合していてもよい。
前記水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位の好ましい例としては、水素化ポリスチレンを挙げることができ、前記水素化共役ジエンポリマーブロック単位の好ましい例としては、水素化ポリブタジエン又は水素化ポリイソプレンを挙げることができ、水素化ポリブタジエンがより好ましい。
そして、環状ポリオレフィン(a)の好ましい一態様としては、スチレンとブタジエンの水素化トリブロックコポリマー又は水素化ペンタブロックコポリマーを挙げることができ、他の如何なる官能基又は構造的変性剤も含まないことが好ましい。
そして、環状ポリオレフィン(a)の好ましい一態様としては、スチレンとブタジエンの水素化トリブロックコポリマー又は水素化ペンタブロックコポリマーを挙げることができ、他の如何なる官能基又は構造的変性剤も含まないことが好ましい。
(水素化レベル)
環状ポリオレフィン(a)は、ブタジエンなどの共役ジエンに由来する二重結合に加えて、スチレンなどに由来する芳香族環も水素化されるものであり、実質的に完全に水素化されている。具体的には、以下に示す水素化レベルを達成しているものをいう。
すなわち、環状ポリオレフィン(a)の水素化レベルは、好ましくは水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が90%以上、水素化共役ジエンポリマーブロック単位が95%以上;より好ましくは水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が95%以上、水素化共役ジエンポリマーブロック単位が99%以上;更に好ましくは水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が98%以上、水素化共役ジエンポリマーブロック単位が99.5%以上;特に好ましくは水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が99.5%以上、水素化共役ジエンポリマーブロック単位が99.5%以上である。
このように高レベルの水素化をすることによって、誘電損失を低減することができる。
なお、水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位の水素化レベルとは、芳香族ビニルポリマーブロック単位が水素化によって飽和される割合を示し、水素化共役ジエンポリマーブロック単位の水素化レベルとは、共役ジエンポリマーブロック単位が水素化によって飽和される割合を示す。
なお、各ブロック単位の水素化レベルは、プロトンNMRを用いて決定される。
環状ポリオレフィン(a)は、ブタジエンなどの共役ジエンに由来する二重結合に加えて、スチレンなどに由来する芳香族環も水素化されるものであり、実質的に完全に水素化されている。具体的には、以下に示す水素化レベルを達成しているものをいう。
すなわち、環状ポリオレフィン(a)の水素化レベルは、好ましくは水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が90%以上、水素化共役ジエンポリマーブロック単位が95%以上;より好ましくは水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が95%以上、水素化共役ジエンポリマーブロック単位が99%以上;更に好ましくは水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が98%以上、水素化共役ジエンポリマーブロック単位が99.5%以上;特に好ましくは水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が99.5%以上、水素化共役ジエンポリマーブロック単位が99.5%以上である。
このように高レベルの水素化をすることによって、誘電損失を低減することができる。
なお、水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位の水素化レベルとは、芳香族ビニルポリマーブロック単位が水素化によって飽和される割合を示し、水素化共役ジエンポリマーブロック単位の水素化レベルとは、共役ジエンポリマーブロック単位が水素化によって飽和される割合を示す。
なお、各ブロック単位の水素化レベルは、プロトンNMRを用いて決定される。
環状ポリオレフィン(a)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の環状ポリオレフィン(a)としては、市販のものを用いることができ、具体的には三菱ケミカル(株)製:テファブロック(商標登録)が挙げられる。
本発明の環状ポリオレフィン(a)としては、市販のものを用いることができ、具体的には三菱ケミカル(株)製:テファブロック(商標登録)が挙げられる。
<変性環状ポリオレフィン(a’)>
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体として、変性された変性環状ポリオレフィン(a’)を用いてもよい。変性環状ポリオレフィンは、前述した環状ポリオレフィン(a)の、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による変性体である。
環状ポリオレフィン(a)を変性することによりポリマーの極性が大きくなるので、銅箔等の金属層との接着性向上が期待できる。
本発明の環状ポリオレフィン樹脂共重合体として、変性された変性環状ポリオレフィン(a’)を用いてもよい。変性環状ポリオレフィンは、前述した環状ポリオレフィン(a)の、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による変性体である。
環状ポリオレフィン(a)を変性することによりポリマーの極性が大きくなるので、銅箔等の金属層との接着性向上が期待できる。
(環状ポリオレフィン(a)の変性操作)
以下、環状ポリオレフィン(a)の変性操作について説明する。この変性操作は、環状ポリオレフィン(a)に、変性剤として不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を添加して反応させることによって行われることが好ましい。
以下、環状ポリオレフィン(a)の変性操作について説明する。この変性操作は、環状ポリオレフィン(a)に、変性剤として不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を添加して反応させることによって行われることが好ましい。
[変性剤]
前記変性剤としての不飽和カルボン酸及び/又はその無水物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸類等の不飽和カルボン酸、及びこれらの無水物が挙げられる。
また、酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸類が挙げられる。
なお、ナジック酸類又はその無水物としては、エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸)、メチル-エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸)等及びその無水物が挙げられる。
前記変性剤としての不飽和カルボン酸及び/又はその無水物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸類等の不飽和カルボン酸、及びこれらの無水物が挙げられる。
また、酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸類が挙げられる。
なお、ナジック酸類又はその無水物としては、エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸)、メチル-エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸)等及びその無水物が挙げられる。
これらの不飽和カルボン酸及び/又はその無水物の中では、アクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸が好ましい。
不飽和カルボン酸及び/又はその無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
不飽和カルボン酸及び/又はその無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[変性方法]
上記環状ポリオレフィン(a)を上記の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物で変性することにより、変性環状ポリオレフィン(a’)を得ることができる。変性の方法としては、溶液変性、溶融変性、電子線や電離放射線の照射による固相変性、超臨界流体中での変性等が好適に用いられる。
中でも設備やコスト競争力に優れた溶融変性が好ましく、連続生産性に優れた押出機を用いた溶融混練変性がより好ましい。
このとき用いられる装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサーが挙げられる。中でも連続生産性に優れた単軸押出機、二軸押出機が好ましい。
上記環状ポリオレフィン(a)を上記の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物で変性することにより、変性環状ポリオレフィン(a’)を得ることができる。変性の方法としては、溶液変性、溶融変性、電子線や電離放射線の照射による固相変性、超臨界流体中での変性等が好適に用いられる。
中でも設備やコスト競争力に優れた溶融変性が好ましく、連続生産性に優れた押出機を用いた溶融混練変性がより好ましい。
このとき用いられる装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサーが挙げられる。中でも連続生産性に優れた単軸押出機、二軸押出機が好ましい。
一般に、環状ポリオレフィン(a)への不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による変性は、環状ポリオレフィン(a)を構成するブロック単位の1つである水素化共役ジエンポリマーブロック単位の炭素-水素結合を開裂させて炭素ラジカルを発生させ、これに不飽和官能基が付加するというグラフト反応によって行われる。
炭素ラジカルの発生源としては、上述した電子線や電離放射線の他、高温度とする方法や、有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等のラジカル発生剤を用いることもできる。ラジカル発生剤としては、コストや操作性の観点から有機過酸化物を用いることが好ましい。
炭素ラジカルの発生源としては、上述した電子線や電離放射線の他、高温度とする方法や、有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等のラジカル発生剤を用いることもできる。ラジカル発生剤としては、コストや操作性の観点から有機過酸化物を用いることが好ましい。
上記アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジアゾニトロフェノールが挙げられる。
上記無機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウムが挙げられる。
上記無機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウムが挙げられる。
上記有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル及びケトンパーオキサイド群に含まれるものが挙げられる。
具体的には、キュメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジt-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド;ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエイト、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイドが挙げられる。
これらのラジカル発生剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
具体的には、キュメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジt-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド;ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエイト、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイドが挙げられる。
これらのラジカル発生剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[溶融混練変性]
一般的に用いられる溶融混練変性の操作は、環状ポリオレフィン(a)、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物、有機過酸化物を配合し、混練機、押出機に投入し、加熱溶融混練しながら押出を行ない、先端ダイスから出てくる溶融樹脂を水槽等で冷却して変性環状ポリオレフィン(a’)を得るものである。
一般的に用いられる溶融混練変性の操作は、環状ポリオレフィン(a)、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物、有機過酸化物を配合し、混練機、押出機に投入し、加熱溶融混練しながら押出を行ない、先端ダイスから出てくる溶融樹脂を水槽等で冷却して変性環状ポリオレフィン(a’)を得るものである。
環状ポリオレフィン(a)と不飽和カルボン酸及び/又はその無水物との配合比率は、環状ポリオレフィン(a)100質量部に対し、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物が0.2~5質量部である。
環状ポリオレフィン(a)に対する不飽和カルボン酸及び/又はその無水物の配合比率が上記下限以上であれば、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性率が得られる。また、上記上限以下であれば、未反応の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物が残留することがなく、誘電特性としても好ましい。
環状ポリオレフィン(a)に対する不飽和カルボン酸及び/又はその無水物の配合比率が上記下限以上であれば、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性率が得られる。また、上記上限以下であれば、未反応の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物が残留することがなく、誘電特性としても好ましい。
上記不飽和カルボン酸及び/又はその無水物と上記有機過酸化物との配合比率は、上記不飽和カルボン酸及び/又はその無水物100質量部に対し、上記有機過酸化物が20~100質量部である。
上記不飽和カルボン酸及び/又はその無水物に対する上記有機過酸化物の配合比率が上記下限以上であれば、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性率が得られる。また、上記上限以下であれば、環状ポリオレフィン(a)の劣化が生じず、色相が悪化することがない。
上記不飽和カルボン酸及び/又はその無水物に対する上記有機過酸化物の配合比率が上記下限以上であれば、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性率が得られる。また、上記上限以下であれば、環状ポリオレフィン(a)の劣化が生じず、色相が悪化することがない。
また溶融混練変性条件としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機においては150~300℃の温度にて押出すことが好ましい。
[変性率]
上記不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による、変性環状ポリオレフィン(a’)の変性率は0.1~2質量%が好ましい。
変性率が上記下限以上であれば、ポリマーの極性が大きくなり、銅箔等の金属層との接着性が向上するので好ましい。また、上記上限以下であれば、環状ポリオレフィン(a)の誘電損失の悪化を防止できる。また、臭気の発生や色の悪化も防ぐことができる。
上記変性環状ポリオレフィン(a’)の変性率は、上記変性環状ポリオレフィン(a’)をメチルエステル化処理した後、プロトンNMRにて測定することができる。
上記不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による、変性環状ポリオレフィン(a’)の変性率は0.1~2質量%が好ましい。
変性率が上記下限以上であれば、ポリマーの極性が大きくなり、銅箔等の金属層との接着性が向上するので好ましい。また、上記上限以下であれば、環状ポリオレフィン(a)の誘電損失の悪化を防止できる。また、臭気の発生や色の悪化も防ぐことができる。
上記変性環状ポリオレフィン(a’)の変性率は、上記変性環状ポリオレフィン(a’)をメチルエステル化処理した後、プロトンNMRにて測定することができる。
本発明の樹脂層(A)は、その機能性の更なる向上を目的として、環状ポリオレフィン樹脂共重合体以外の成分を任意に含んでよい。具体的には、環状ポリオレフィン樹脂共重合体以外の環状ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマー、紫外線防止剤、帯電防止剤、酸化防止剤、カップリング剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
<<樹脂層(B)>>
本発明における樹脂層(B)は、ガラス転移点が100℃以上であり、12GHzにおける誘電正接が0.02未満である非晶性樹脂(b)を含有する。非晶性の樹脂を使用することで、非晶成分の多い環状ポリオレフィン樹脂共重合体を含む樹脂層(A)と剥離なく好適に積層しやすくなる。
本発明における樹脂層(B)は、ガラス転移点が100℃以上であり、12GHzにおける誘電正接が0.02未満である非晶性樹脂(b)を含有する。非晶性の樹脂を使用することで、非晶成分の多い環状ポリオレフィン樹脂共重合体を含む樹脂層(A)と剥離なく好適に積層しやすくなる。
<非晶性樹脂(b)>
非晶性樹脂(b)のガラス転移点は100℃以上であり、120℃以上が好ましく、130℃以上がさらに好ましい。また、200℃未満が好ましく、170℃未満がより好ましく、150℃未満がさらに好ましい。非晶性樹脂(b)のガラス転移点が上記の下限以上であることで、耐熱性が向上し、加熱における線熱膨張や冷却時の収縮による寸法変化を抑制することができる。一方でガラス転移点が上記の上限以下であることで、変性環状ポリオレフィン樹脂を含む樹脂層(A)と剥離や積層ムラがなく良好に積層することができる。
前記ガラス転移点は、JIS K7121(2012年)に準じて示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定されるものである。
非晶性樹脂(b)のガラス転移点は100℃以上であり、120℃以上が好ましく、130℃以上がさらに好ましい。また、200℃未満が好ましく、170℃未満がより好ましく、150℃未満がさらに好ましい。非晶性樹脂(b)のガラス転移点が上記の下限以上であることで、耐熱性が向上し、加熱における線熱膨張や冷却時の収縮による寸法変化を抑制することができる。一方でガラス転移点が上記の上限以下であることで、変性環状ポリオレフィン樹脂を含む樹脂層(A)と剥離や積層ムラがなく良好に積層することができる。
前記ガラス転移点は、JIS K7121(2012年)に準じて示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定されるものである。
樹脂層(B)における非晶性樹脂(b)の12GHzにおける誘電正接は0.02未満が好ましく、0.01未満がより好ましい。誘電正接が小さければ小さいほど誘電損失も小さくなるので、回路基板とした際の電気信号の伝達効率、高速化が得られるために好ましい。誘電正接の下限は特に限定されず、0以上であればよい。
樹脂層(B)における非晶性樹脂(b)は脂環式オレフィン重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリスルホン並びにこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。なかでも、低誘電特性の観点から、脂環式オレフィン重合体がより好ましい。
前述の脂環式オレフィン重合体とは、脂環式オレフィン由来の構造単位を有する重合体であり、具体的には、脂環式オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、脂環式オレフィンの付加(共)重合体、脂環式オレフィンと、エチレン、プロピレン等のα-オレフィンとのランダム共重合体、または、上記(共)重合体を不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体を意味する。これらのなかでも、ノルボルネンとエチレンユニットを付加重合させた環状オレフィンコポリマー(COC)や、ノルボルネン又はジシクロペンタジエンを開環重合させ、水素添加で安定化させて得られる環状オレフィンポリマー(COP)を好適に使用できる。
前述のポリカーボネートとは、主鎖中に炭酸エステル結合を含む線状高分子であり、例えば種々のジヒドロキシジアリールをエステル交換により反応させて得ることができる重合体である。具体的には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)と、ホスゲン又はジフェニルカーボネートとから製造されるポリカーボネートを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
前述のポリアリレートは、ジカルボン酸成分と二価フェノール成分との重縮合物である。ポリアリレートのガラス転移点は、前記ジカルボン酸成分及び二価フェノール成分を適宜選択することで調整することができる。具体的には、テレフタル酸及びソフタル酸とビスフェノールAとからなるポリアリレートを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
前述のポリスルホンとは、スルホニル基を有することを特徴とする高分子である。製法としては、オレフィンとスルホキシドの共重合やポリスルフィドの酸化などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の樹脂層(B)における非晶性樹脂(b)の含有割合は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。樹脂層(B)が非晶性樹脂(b)のみからなる(100質量%)ものであってもよい。非晶性樹脂(b)の含有割合が上記範囲以上であることで、樹脂層(A)と積層した際に好適に耐熱性を向上し、線熱膨張係数も低減する効果が期待できる。
また、非晶性樹脂(b)としては上記に挙げられた樹脂のうち1種類を使用するのでもよく、2種類以上を組み合わせて使用するのでもよい。
また、非晶性樹脂(b)としては上記に挙げられた樹脂のうち1種類を使用するのでもよく、2種類以上を組み合わせて使用するのでもよい。
本発明の樹脂層(B)は、さらに機能性を付与する目的で前記非晶性樹脂(b)以外にも適宜他の成分を配合することができる。具体的には、樹脂層(A)との接着性を向上するために樹脂層(A)と同じ環状ポリオレフィン樹脂共重合体を配合したり、本発明の樹脂積層体の耐屈曲性を向上するために熱可塑性エラストマーなどを配合したりすることができる。さらには、紫外線防止剤、酸化防止剤、カップリング剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、無機フィラー、有機フィラー等を任意に配合することができる。
<<樹脂積層体の構成>>
本発明の樹脂積層体は、樹脂層(A)と樹脂層(B)とを少なくとも1つずつ有する。
従って、樹脂層(A)と樹脂層(B)の2層構成であってもよく、樹脂層(B)の両面に樹脂層(A)を配置するか、樹脂層(A)の両面に樹脂層(B)を配置した3層構成であってもよい。さらに樹脂層(A)と樹脂層(B)を複数回重ね合わせた多層構成であってもよい。また、樹脂層(A)及び/又は樹脂層(B)の片面に樹脂層(A)及び(B)以外の樹脂層が設けられていてもよい。具体的には、樹脂層間の接着性を向上するための接着層や、樹脂積層体の視認性を付与するための着色樹脂層などが設けられていてもよい。
本発明の樹脂積層体は、樹脂層(A)と樹脂層(B)とを少なくとも1つずつ有する。
従って、樹脂層(A)と樹脂層(B)の2層構成であってもよく、樹脂層(B)の両面に樹脂層(A)を配置するか、樹脂層(A)の両面に樹脂層(B)を配置した3層構成であってもよい。さらに樹脂層(A)と樹脂層(B)を複数回重ね合わせた多層構成であってもよい。また、樹脂層(A)及び/又は樹脂層(B)の片面に樹脂層(A)及び(B)以外の樹脂層が設けられていてもよい。具体的には、樹脂層間の接着性を向上するための接着層や、樹脂積層体の視認性を付与するための着色樹脂層などが設けられていてもよい。
上記のなかでも、樹脂積層体の反りを抑制する観点からは、樹脂積層体の両方の最外層が樹脂層(A)である構成、又は樹脂積層体の両方の最外層が樹脂層(B)である構成が好ましい。すなわち、樹脂層(B)の両面に樹脂層(A)を配置した3層構成、樹脂層(A)の両面に樹脂層(B)を配置した3層構成、樹脂層(A)と樹脂層(B)を複数回重ね合わせ、樹脂積層体の両方の最外層を樹脂層(A)とする多層構成、又は樹脂層(A)と樹脂層(B)を複数回重ね合わせ、樹脂積層体の両方の最外層を樹脂層(B)とする多層構成が好ましい。
また、樹脂層(A)が変性環状ポリオレフィン(a’)を含有する場合には、金属層との接着性の観点から、樹脂積層体の少なくとも一方の最外層が樹脂層(A)であることが好ましく、樹脂積層体の両方の最外層が樹脂層(A)であることがより好ましい。
また、樹脂層(A)が変性環状ポリオレフィン(a’)を含有する場合には、金属層との接着性の観点から、樹脂積層体の少なくとも一方の最外層が樹脂層(A)であることが好ましく、樹脂積層体の両方の最外層が樹脂層(A)であることがより好ましい。
本発明の樹脂積層体の厚さは特に限定されないが、加工性、実用性を考慮した場合、10~200μm程度であることが好ましい。
また、本発明の樹脂積層体における樹脂層(A)の厚さは、樹脂積層体全体の10~60%であることが好ましく、樹脂層(B)の厚さは、樹脂積層体全体の40%~90%であることが好ましい。各樹脂層の厚みが上記の範囲内であることで、樹脂層(B)による耐熱性向上、線熱膨張率の抑制効果を好適に発現することができる。なお、樹脂積層体中に上記樹脂層(A)及び樹脂層(B)を複数有する場合は、各層の厚さの合計値が上記範囲内にあるとよい。
<<樹脂積層体の特性>>
本発明の樹脂積層体の12GHzにおける誘電正接は0.005未満であることが好ましく、より好ましくは0.002未満である。誘電正接は低ければ低いほど誘電損失を低減できるので、回路基板とした際の電気信号の伝達効率、高速化が得られるために好ましい。誘電正接の下限は特に限定されず、0以上であればよい。
本発明の樹脂積層体の12GHzにおける誘電正接は0.005未満であることが好ましく、より好ましくは0.002未満である。誘電正接は低ければ低いほど誘電損失を低減できるので、回路基板とした際の電気信号の伝達効率、高速化が得られるために好ましい。誘電正接の下限は特に限定されず、0以上であればよい。
また、本発明の樹脂積層体の平均線熱膨張率は、0℃から100℃の温度範囲において、15ppm/℃以上であることが好ましく、20ppm/℃以上であることがより好ましい。また、115ppm/℃以下であることが好ましく、100ppm/℃以下であることがより好ましい。樹脂積層体の線熱膨張率が上記の範囲内にあることで、樹脂積層体を用いた成形品の収縮を抑制したり、電気・電子機器用の回路基板材料用途で樹脂積層体を使用する際に、銅箔等の金属層との収縮率の差によって積層後に積層体がカールしたり反ったりする不具合を改善することができる。
2.樹脂積層体の製造方法
以下、本発明の樹脂積層体の製造方法について説明するが、以下の説明は、本発明の樹脂積層体を製造する方法の一例であり、本発明の樹脂積層体は以下に説明する製造方法により製造される樹脂積層体に限定されるものではない。
以下、本発明の樹脂積層体の製造方法について説明するが、以下の説明は、本発明の樹脂積層体を製造する方法の一例であり、本発明の樹脂積層体は以下に説明する製造方法により製造される樹脂積層体に限定されるものではない。
本発明の樹脂積層体は、例えば、樹脂層(A)の原料となる環状ポリオレフィン樹脂共重合体およびその他添加剤を単軸、あるいは、二軸押出機等で溶融混合し、同様に樹脂層(B)の原料となる非晶性樹脂(b)およびその他添加剤を溶融混合し、それらをTダイにより共押出し、キャストロールで急冷、固化することにより作製することができる。
樹脂層(A)と樹脂層(B)とを積層する方法としては、上記のように共押出で積層してもよく、個々に製膜した樹脂層(A)および樹脂層(B)、その他の層をラミネートや熱プレスで積層してもよい。また、積層の際には、樹脂層間の接着性を向上するために接着層を設けてもよい。
3.樹脂積層体の用途
本発明の樹脂積層体は、銅箔積層板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、アンダーフィル材料、3D-LSI用インターチップフィル、絶縁シート、放熱基板等、回路基板の材料として用いることができるが、何らこれらに限定されるものではない。
本発明の樹脂積層体は、銅箔積層板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、アンダーフィル材料、3D-LSI用インターチップフィル、絶縁シート、放熱基板等、回路基板の材料として用いることができるが、何らこれらに限定されるものではない。
<<回路基板材料>>
本発明の樹脂積層体は、導体と接着することにより回路基板材料とすることができる。
導体としては、銅、アルミニウム等の導電性金属や、これらの金属を含む合金等からなる金属箔、あるいはメッキやスパッタリングで形成された金属層を用いることができる。
電気・電子機器用の回路基板材料として用いる場合、樹脂積層体の厚みは10μm以上200μm以下が好ましい。また、導体の厚みは0.2μm以上70μm以下が好ましい。
本発明の樹脂積層体は、導体と接着することにより回路基板材料とすることができる。
導体としては、銅、アルミニウム等の導電性金属や、これらの金属を含む合金等からなる金属箔、あるいはメッキやスパッタリングで形成された金属層を用いることができる。
電気・電子機器用の回路基板材料として用いる場合、樹脂積層体の厚みは10μm以上200μm以下が好ましい。また、導体の厚みは0.2μm以上70μm以下が好ましい。
本発明の回路基板材料は、誘電正接が十分に低いことが特徴である。
回路基板材料の、12GHzにおける誘電正接は0.01未満であることが好ましく、より好ましくは0.008未満である。誘電正接は低ければ低いほど回路基板とした際の電気信号の伝達効率、高速化が得られるために好ましい。誘電正接の下限は特に限定されず、0以上であればよい。
回路基板材料の、12GHzにおける誘電正接は0.01未満であることが好ましく、より好ましくは0.008未満である。誘電正接は低ければ低いほど回路基板とした際の電気信号の伝達効率、高速化が得られるために好ましい。誘電正接の下限は特に限定されず、0以上であればよい。
<<回路基板材料の製造方法>>
本発明における回路基板材料は、例えば次のような方法で製造できる。
本発明の樹脂積層体に導体を積層したあと、フォトレジスト等を用いて回路を形成し、こうした層を必要数重ねる。
樹脂積層体と導体との積層は、樹脂積層体に導電性金属箔を直接重ね合わせる方法であってもよく、接着剤を用いて樹脂積層体と導電性金属箔とを接着する方法であってもよい。また、メッキやスパッタリングにより導電性金属層を形成する方法であってもよく、これらの方法を組み合わせて行ってもよい。
本発明における回路基板材料は、例えば次のような方法で製造できる。
本発明の樹脂積層体に導体を積層したあと、フォトレジスト等を用いて回路を形成し、こうした層を必要数重ねる。
樹脂積層体と導体との積層は、樹脂積層体に導電性金属箔を直接重ね合わせる方法であってもよく、接着剤を用いて樹脂積層体と導電性金属箔とを接着する方法であってもよい。また、メッキやスパッタリングにより導電性金属層を形成する方法であってもよく、これらの方法を組み合わせて行ってもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
<測定方法>
(1)誘電特性
空洞共振器法を用いて、樹脂積層体の面内方向の12GHzにおける誘電正接を測定し、下記の基準により評価した。
[評価基準]
A(good):誘電正接が0.005未満
B(poor):誘電正接が0.005以上
(1)誘電特性
空洞共振器法を用いて、樹脂積層体の面内方向の12GHzにおける誘電正接を測定し、下記の基準により評価した。
[評価基準]
A(good):誘電正接が0.005未満
B(poor):誘電正接が0.005以上
(2)線熱膨張係数
樹脂積層体から幅3mm、長さ10mmのサイズに試験片を切り出し、当該試験片の線熱膨張係数を、(株)日立ハイテクサイエンス製TMA/SS7100を用いてJIS K7197に準拠して測定し、下記の基準により評価した。
[評価基準]
A(good):0℃から100℃における平均線熱膨張係数が115ppm/℃未満
B(poor):0℃から100℃における平均線熱膨張係数が115ppm/℃以上
樹脂積層体から幅3mm、長さ10mmのサイズに試験片を切り出し、当該試験片の線熱膨張係数を、(株)日立ハイテクサイエンス製TMA/SS7100を用いてJIS K7197に準拠して測定し、下記の基準により評価した。
[評価基準]
A(good):0℃から100℃における平均線熱膨張係数が115ppm/℃未満
B(poor):0℃から100℃における平均線熱膨張係数が115ppm/℃以上
<原料>
[環状ポリオレフィン樹脂共重合体]
・a-1:変性環状ポリオレフィン(a’)として三菱ケミカル社製「テファブロック(登録商標)CP MC940AP」を用いた。
・結晶融解ピーク温度:75℃
・誘電正接:0.0009(12GHz)
・密度(ASTM D792):0.94g/cm3
・MFR(230℃、2.16kg):3g/10分
・水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位:含有率67モル%、水素化レベル99.5%以上の水素化ポリスチレン
・水素化共役ジエンポリマーブロック単位:含有率33モル%、水素化レベル99.5%以上の水素化ポリブタジエン
・ブロック構造:ペンタブロック構造、合計水素化レベル:99.5%以上
・マレイン酸変性率:1.2質量%
・Mw:68000
[環状ポリオレフィン樹脂共重合体]
・a-1:変性環状ポリオレフィン(a’)として三菱ケミカル社製「テファブロック(登録商標)CP MC940AP」を用いた。
・結晶融解ピーク温度:75℃
・誘電正接:0.0009(12GHz)
・密度(ASTM D792):0.94g/cm3
・MFR(230℃、2.16kg):3g/10分
・水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位:含有率67モル%、水素化レベル99.5%以上の水素化ポリスチレン
・水素化共役ジエンポリマーブロック単位:含有率33モル%、水素化レベル99.5%以上の水素化ポリブタジエン
・ブロック構造:ペンタブロック構造、合計水素化レベル:99.5%以上
・マレイン酸変性率:1.2質量%
・Mw:68000
[非晶性樹脂]
・b-1:ノルボルネン‐エチレンを重合した脂環式オレフィンコポリマー(COC)、誘電正接=0.0002(12GHz)、Tg=138℃
・b-2:ポリカーボネート、誘電正接=0.0059(12GHz)、Tg=145℃
・b-3:シクロペンタジエンを開環重合した水素化脂環式オレフィンポリマー(COP)、誘電正接=0.0002(12GHz)、Tg=102℃
・b-4:ノルボルネン‐エチレンを重合した低Tg脂環式オレフィンコポリマー(COC)、誘電正接=0.0002(12GHz)、Tg=69℃
・b-1:ノルボルネン‐エチレンを重合した脂環式オレフィンコポリマー(COC)、誘電正接=0.0002(12GHz)、Tg=138℃
・b-2:ポリカーボネート、誘電正接=0.0059(12GHz)、Tg=145℃
・b-3:シクロペンタジエンを開環重合した水素化脂環式オレフィンポリマー(COP)、誘電正接=0.0002(12GHz)、Tg=102℃
・b-4:ノルボルネン‐エチレンを重合した低Tg脂環式オレフィンコポリマー(COC)、誘電正接=0.0002(12GHz)、Tg=69℃
<実施例1>
樹脂層(A)として変性環状ポリオレフィン樹脂a-1を、樹脂層(B)として非晶性樹脂b-1を、それぞれ単軸押出機を用いて溶融混錬し、Tダイで表裏層に樹脂層(A)、中間層に樹脂層(B)となるように共押出し、キャスティングロールで冷却、固化することで厚さ100μmの樹脂積層体を製膜した。各層の厚みは、樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)が1/8/1となるように各押出機の吐出量を調整した。得られた樹脂積層体について、誘電特性と線熱膨張係数を評価した。結果を表1に示す。
樹脂層(A)として変性環状ポリオレフィン樹脂a-1を、樹脂層(B)として非晶性樹脂b-1を、それぞれ単軸押出機を用いて溶融混錬し、Tダイで表裏層に樹脂層(A)、中間層に樹脂層(B)となるように共押出し、キャスティングロールで冷却、固化することで厚さ100μmの樹脂積層体を製膜した。各層の厚みは、樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)が1/8/1となるように各押出機の吐出量を調整した。得られた樹脂積層体について、誘電特性と線熱膨張係数を評価した。結果を表1に示す。
<実施例2、3、比較例2>
樹脂層(A)、樹脂層(B)として表1に記載の配合と積層比で共押出した以外は実施例1と同様の方法で樹脂積層体を製膜した。得られた樹脂積層体について、誘電特性と線熱膨張係数を評価した。結果を表1に示す。
樹脂層(A)、樹脂層(B)として表1に記載の配合と積層比で共押出した以外は実施例1と同様の方法で樹脂積層体を製膜した。得られた樹脂積層体について、誘電特性と線熱膨張係数を評価した。結果を表1に示す。
<比較例1>
比較例として、変性環状ポリオレフィン樹脂a-1を、単軸押出機を用いて溶融混錬して得られた、厚さ100μmのシートについて誘電特性と線熱膨張係数を評価した。結果を表1に示す。
比較例として、変性環状ポリオレフィン樹脂a-1を、単軸押出機を用いて溶融混錬して得られた、厚さ100μmのシートについて誘電特性と線熱膨張係数を評価した。結果を表1に示す。
(結果)
上記の表1の実施例1~3に示す通り、非晶性樹脂(b)として所定の誘電正接とガラス転移点を示す樹脂を含む樹脂層(B)を、樹脂層(A)に積層することで変性環状ポリオレフィン樹脂(a-1)の誘電特性を維持したままで、線熱膨張係数を低減できることが示された。一方で、比較例2のようにガラス転移点が所定の値よりも小さい樹脂(b)を用いる場合には期待する効果が得られないことが示された。本発明による樹脂積層体を例えば電気・電子回路基板材料として用いることで、誘電損失を低減しつつ、金属層との熱膨張率差によって生じる基板のカールや反りを抑制できる。
上記の表1の実施例1~3に示す通り、非晶性樹脂(b)として所定の誘電正接とガラス転移点を示す樹脂を含む樹脂層(B)を、樹脂層(A)に積層することで変性環状ポリオレフィン樹脂(a-1)の誘電特性を維持したままで、線熱膨張係数を低減できることが示された。一方で、比較例2のようにガラス転移点が所定の値よりも小さい樹脂(b)を用いる場合には期待する効果が得られないことが示された。本発明による樹脂積層体を例えば電気・電子回路基板材料として用いることで、誘電損失を低減しつつ、金属層との熱膨張率差によって生じる基板のカールや反りを抑制できる。
Claims (9)
- 結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体を含有する樹脂層(A)と、ガラス転移点が100℃以上であり、12GHzにおける誘電正接が0.02未満である非晶性樹脂を含有する樹脂層(B)とを含む、樹脂積層体。
- 前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、ポリオレフィンの側鎖にシクロヘキサンを有する、請求項1に記載の樹脂積層体。
- 前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、少なくとも1種の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び少なくとも1種の水素化共役ジエンポリマーブロック単位を含む樹脂共重合体、又はこの樹脂共重合体の不飽和カルボン酸及び/若しくはその無水物による変性体である、請求項1又は2に記載の樹脂積層体。
- 前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、前記水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位を少なくとも2個含む樹脂共重合体である、請求項3に記載の樹脂積層体。
- 前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体が、スチレンとブタジエンの水素化トリブロックコポリマー若しくは水素化ペンタブロックコポリマー、又はこれらの不飽和カルボン酸及び/若しくはその無水物による変性体である、請求項3又は4に記載の樹脂積層体。
- 前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体の誘電正接が、12GHzにおいて0.005未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
- 前記非晶性樹脂が、脂環式オレフィン重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリスルホン並びにこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
- 少なくとも一方の最外層が樹脂層(A)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
- 請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂積層体と、導体とを積層してなる回路基板材料。
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