JP2022025729A - カンキツ品種の識別方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カンキツ品種「あすみ」を他のカンキツ品種から精度良く迅速に識別可能な技術であり、且つ、検査現場等でも広く導入可能な技術を提供する。【解決手段】 (1)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーCp0419の欠失型配列を検出する工程、(2)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーIND214の欠失型配列を検出する工程、及び(3)前記(1)及び(2)に記載の工程においてCp0419欠失型配列及びIND214欠失型配列の両方が検出された場合に、対象試料であるカンキツ植物の品種が品種「あすみ」であると判定する工程を含む、カンキツ品種の識別方法を提供する。【選択図】 図6

Description

本発明は、カンキツ品種「あすみ」を他のカンキツ品種から精度良く迅速に識別可能な技術であり且つ検査現場でも広く導入可能な技術に関する。
近年、カンキツの「あすみ」、ブドウの「シャインマスカット」など農研機構で育成した優良な新品種が海外へ流出し、無断で栽培される事例が顕在化している。今後、これらの生産物による権利侵害の発生が懸念されることから、権利侵害が想定される諸国において品種登録出願が行われると伴に、権利侵害を立証するためのDNA品種識別技術の開発が進められている。「あすみ」の育成者権の侵害を監視するためには、税関等の水際において輸入を阻止することが重要である。このため、既存の品種識別技術に加え、税関等の検査現場において簡易かつ迅速に品種識別が可能な技術開発が求められている。
農研機構果樹茶部門は、国内で流通するカンキツの種苗を対象としたCAPSマーカーによる品種識別技術を開発した。当該技術に関して、当部門ではISO(国際標準化機構)基準に準拠したカンキツ品種のDNA品種識別技術マニュアルを作成している(非特許文献1)。ここで、CAPSマーカー分析技術は、特定のゲノム領域を対象にしたPCR増幅断片を特定の制限酵素で切断し、品種間に存在する塩基置換や欠失・挿入といったゲノムDNAの多型によって生じる制限酵素断片のサイズの差異を利用する技術である。当該技術を利用した分析には高額機器が不要であり、検査現場への普及性は高い。
しかしながら、果実や加工品を対象とした品種識別では、糖、酸、ポリフェノールなどの夾雑物の混入、加工時の熱処理や化学処理などにより高品質のDNAサンプルが得にくい。そのため、制限酵素を利用した多型検出のためには比較的長いPCR増幅断片を利用するCAPS分析法は、夾雑物によりPCRや制限酵素処理における酵素阻害やPCR増幅効率の低下などにより、分析結果が不安定になる課題がある。
また、同部門では、CAPS法の他に、果実や加工品を対象としたSNPマーカーによる品種識別技術を開発した(非特許文献2)。当該SNP分析法は、100bp程度の特定のゲノム領域を対象にしたPCR増幅断片中の1塩基多型を蛍光標識したオリゴヌクレオチドプローブで検出する技術であり、高精度に多型が検出でき、分析に要する時間が極めて短いという利点がある。
この点、SNP分析法は、CAPS法での分析精度の課題を克服した技術と認められるところ、一方、SNPマーカーの検出に利用する特殊な修飾プローブ合成や試薬等のランニングコストが高額であるという課題が認められる。また、当該SNP法を簡便に行うためには、リアルタイムPCR装置の導入が必要となる。
CAPSマーカーによるカンキツ22品種のDNA品種識別技術、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、2019年3月29日 初版 Breeding Science, (2020) https://doi.org/10.1270/jsbbs.19142; T. Endo et al.; TaqMan-MGB SNP genotyping assay to identify 48 citrus cultivars distributed in the Japanese market Tree Genetics & Genomes, (2014) 10, 1001-1013; T. Shimada et al.; Construction of a citrus framework genetic map anchored by 708 gene-based markers Plant Molecular Biology Reporter, (2018) https://doi.org/10.1007/s11105-018-1111-1; Q. Fang et al.; Development of Species-Specific InDel Markers in Citrus
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みてなされたものでありその課題とする処は、カンキツ品種「あすみ」を他のカンキツ品種から精度良く迅速に識別可能な技術であり、且つ、検査現場等でも広く導入可能な技術を提供することを目的とする。
上記従来技術の状況において、本発明者らはカンキツ植物のゲノムDNAに存在する184種類のインデルマーカーに着目して検討を行ったところ、品種「あすみ」にてアレル多型を示す2種類のインデルマーカーCp0419及びIND214を見出した。
そこで、本発明者らは、日本国内の98%以上のカンキツ果実の流通量をカバーする48品種を含めて、インデルマーカーCp0419及びIND214のアレル型を調査したところ、Cp0419及びIND214の両方のインデルマーカーのアレル型が「ヘテロ型」(相同染色体に挿入型配列と欠失型配列を有するヘテロ型)を示したカンキツ品種は、品種「あすみ」のみであることを見出した。ここで、当該調査結果は、日本国内の流通量の観点でISO13495国際基準に定められる品種識別の精度を充足する調査結果と認められた。即ち、インデルマーカーCp0419及びIND214の両方の遺伝子座に関して、挿入型配列と欠失型配列をヘテロで有するアレル型を見出すことによって、品種「あすみ」の識別が可能となることが示された。
更に本発明者らは、Cp0419及びIND214の両方のインデルマーカーのいずれからも欠失型配列が検出された場合、識別対象のカンキツ品種が品種「あすみ」であると判定できることを見出した。即ち、品種「あすみ」の識別は、Cp0419及びIND214の両方の遺伝子座から「インデルマーカーの欠失型配列のみ」を検出することによって、当該識別が可能であることが示された。
本発明者らは上記知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明は具体的には以下に記載の発明に関する。
[項1]
下記(1)、(2)、及び(3)に記載の工程を含む、カンキツ品種の識別方法:
(1)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーCp0419の欠失型配列を検出する工程、
(2)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーIND214の欠失型配列を検出する工程、
(3)前記(1)及び(2)に記載の工程においてCp0419欠失型配列及びIND214欠失型配列の両方が検出された場合に、対象試料であるカンキツ植物の品種が品種「あすみ」である、又は、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種である、と判定する工程、

前記(1)に記載のカンキツ植物ゲノムのインデルマーカーCp0419に関して、
(1a)カンキツ標準品種であるクレメンティンのゲノムで示した場合、第5染色体上のエンドプロテアーゼClp遺伝子の第1イントロン内に存在するインデルマーカーの遺伝子座であって、当該クレメンティンのCp0419挿入型配列を含む配列番号1に記載の塩基配列で示した場合、第2117番目の塩基「G」がCp0419遺伝子座の最上流塩基を示し、第2287番目の塩基「T」がCp0419遺伝子座の最下流塩基を示し、第2118番目の塩基から第2286番目の塩基までの塩基配列が挿入配列を示し、
(1b)対象試料であるカンキツ植物ゲノムのCp0419遺伝子座に関して、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」の間に上記に対応する挿入配列が存在する塩基配列の場合にはCp0419挿入型配列を示し、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」の間に挿入配列が存在しない塩基配列の場合にはCp0419欠失型配列を示す、

前記(2)に記載のカンキツ植物ゲノムのインデルマーカーIND214に関して、
(2a)カンキツ標準品種であるクレメンティンのゲノムで示した場合、第1染色体上のHIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子の上流領域に存在するインデルマーカーの遺伝子座であって、当該クレメンティンのIND214挿入型配列を含む配列番号7に記載の塩基配列で示した場合、第2503番目の塩基「T」がIND214遺伝子座の最上流塩基を示し、第2713番目の塩基「T」がIND214遺伝子座の最下流塩基を示し、第2504番目の塩基から第2712番目の塩基までの塩基配列が挿入配列を示し、
(2b)対象試料であるカンキツ植物ゲノムのIND214遺伝子座に関して、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」の間に上記に対応する挿入配列が存在する塩基配列の場合にはIND214挿入型配列を示し、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」の間に挿入配列が存在しない塩基配列の場合にはIND214欠失型配列を示す。
[項2]
前記(1)に記載の工程が、Cp0419の挿入型配列と欠失型配列のヘテロ型のアレル多型を検出することを含む工程であり、
前記(2)に記載の工程が、IND214の挿入型配列と欠失型配列のヘテロ型のアレル多型を検出することを含む工程であり、
前記(3)に記載の工程が、Cp0419に関する上記ヘテロ型多型及びIND214に関する上記ヘテロ型多型の両方が検出された場合に、対象試料であるカンキツ植物の品種が品種「あすみ」である、又は、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種である、と判定する工程である、
項1に記載のカンキツ品種の識別方法。
[項3]
前記(1)に記載のCp0419欠失型配列を検出する工程、及び、前記(2)に記載のIND214欠失型配列を検出する工程が、
カンキツ植物の植物体、前記植物体の加工品、又は前記植物体若しくは加工品から抽出されたDNA、を対象試料としたPCR反応を含む工程である、項1又は2に記載のカンキツ品種の識別方法。
[項4]
前記(1)に記載の工程と前記(2)に記載の工程が、同一のPCR反応液を用いて同時に行われる工程である、項1~3のいずれかに記載のカンキツ品種の識別方法。
[項5]
項1~4のいずれかに記載のカンキツ品種の識別方法を使用することを含む、
品種「あすみ」、若しくは、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種、の植物体を栽培する方法、
品種「あすみ」、若しくは、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種、の果実を生産する方法、又は、
品種「あすみ」、若しくは、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種、の果実の加工品を生産する方法。
本発明は、カンキツ品種「あすみ」を他のカンキツ品種から精度良く迅速に識別可能な技術であり、且つ、検査現場等でも広く導入可能な技術を提供することを可能とする。
カンキツ品種「あすみ」の果実の外観、縦断面、及び横断面を撮影した写真像図である。写真右下のbarは5cmを示す。 カンキツ植物の染色体上において、インデルマーカーCp0419及びIND214の遺伝子座の位置を模式的に示した図である。 インデルマーカーCp0419の遺伝子座及びその周辺領域に関する情報を示した模式図である。 インデルマーカーIND214の遺伝子座及びその周辺領域に関する情報を示した模式図である。 実験例2において、アレル多型を検出するためにインデルマーカー遺伝子座を挟む位置にてプライマー設計を行ったことを示す説明図である。 実験例2のアレル多型の検出による品種識別試験に関して、PCR増幅産物の電気泳動像及び検出結果を示した図である。図6AはCp0419に関する多型分析の結果を示し、図6BはIND214に関する多型分析の結果を示す。図中の「●」は品種「あすみ」の試料を示す。また、「+」は多型バンドが検出された試料を示す。 実験例3において、インデルマーカー欠失型配列の検出を行うためにインデルマーカー遺伝子座を含むプライマー設計を行ったことを示す説明図である。 実験例3のインデルマーカー欠失型配列の検出による品種識別試験に関して、PCR増幅産物の電気泳動像及び検出結果を示した図である。図8AはCp0419に関する欠失型配列の検出結果を示し、図8BはIND214に関する欠失型配列の検出結果を示す。図中の「●」は品種「あすみ」の試料を示す。また、「+」は欠失型配列の増幅バンドが検出されたことを示す。 実験例4のマルチプレックスPCR法による品種識別試験に関して、PCR増幅産物の電気泳動像及び検出結果を示した図である。図中の「●」は品種「あすみ」の試料を示す。また、「+」は欠失型配列の増幅バンドが検出されたことを示す。 実験例5のアレル多型の検出による品種識別試験に関して、PCR増幅産物の電気泳動像及び検出結果を示した図である。図10AはCp0419に関する多型分析の結果を示し、図10BはIND214に関する多型分析の結果を示す。図中の「+」は多型バンドが検出された試料を示す。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明に係る技術的範囲は、下記した構成を全て含む態様に限定されるものではない。また、本発明に係る技術的範囲は、下記に記載した構成以外の他の構成を含む態様を除外するものではない。
[用語の説明]
本明細書中、「塩基配列の変異」は、塩基配列を構成する塩基の置換、欠失、及び/又は挿入による変異を意味する用語として用いる。
本明細書中、「品種」という用語は、「種(species)」の下位分類を指し、集団として他の品種(又は系統)と区別可能な外形的及び/又は生理的な特性(表現型)を有し、同一世代の特性が十分に類似した均一性が有し、世代を超えて前記特性が維持される安定性を備える集団を指す用語として用いている。
本明細書中、ある塩基から(より)上流又は下流に**番目の塩基という表現は、その塩基の上流側又は下流側に1つ隣の塩基を第1番目の塩基として数えて上流又は下流に**番目の塩基を意味する。
本明細書中、ある塩基配列の3’端の塩基から(より)上流に**番目の塩基とは、その3’端の塩基の1つ上流側の塩基を1番目の塩基として数えて上流に**番目の塩基を意味する。
1.カンキツ品種の識別方法
本発明は、カンキツ品種「あすみ」又はその後代品種を他のカンキツ品種から精度良く迅速に識別可能な技術であり、且つ、検査現場等でも広く導入可能な技術に関する。
[識別対象]
本発明に係るカンキツ品種の識別技術は、カンキツ品種「あすみ」又はその後代品種を他のカンキツ品種の植物から識別する技術に関する。
本発明に係る技術の適用対象である「カンキツ植物」とは、カンキツ属に属する植物を指す。カンキツ属に属する植物は、その果実が果皮の内側に果肉が詰まった小袋が放射状に並んだ構造にて構成され、食用・食材として供される重要な農産物資源となる場合が多い。また、カンキツ属の植物体は、常緑性の低木(樹木)であり落葉はせず、温暖地域での栽培に適した性質を有し、日本の温暖地域での栽培にも適する。
ここで、本明細書中、「カンキツ属(Citrus、別名ミカン属)」とは、ミカン科ミカン連に属する分類群を指す。カンキツ属(genus Citrus)に属する各植物は、分類上は‘種(species)’とされる場合もあるが、変異発生した単一樹から栄養生殖によって栽培種として分布拡大した例が多く、実質的な遺伝子的な差異は、品種(系統)レベル程度の遺伝的差異しかない場合が多い。近年の遺伝子型を比較した研究では、カンキツ属の原種は、わずか4種程度で、それ以外のほとんど種は、雑種であるという説が有力である。この点、カンキツ属は、比較的種間雑種や接ぎ木が容易な分類群であり、遺伝的背景(植物種としての基本的特性)がお互いに近い種で構成されている分類群と認められる。
カンキツ属(Citrus)に属する植物としては、近年の遺伝子型を比較した研究では、これらカンキツ属のほとんどの種は遺伝的に近縁であり、雑種形成により誕生したという説が有力であり、特に真正柑橘亜属とされる種どうしは極めて近縁であると認められる。
これらの観点から、本明細書中のカンキツ属に属する各植物(カンキツ植物)としては、それぞれの区別が可能な分類単位を「品種」として捉えて扱う。また、本発明では、変種や他の集団から区別可能な系統等の各種集団に関しても、カンキツ属に属する集団であれば、同義に捉えて(即ち、品種と同レベルの分類集団と捉えて)、識別対象とすることが可能である。
本発明のカンキツ品種の識別技術において、インデルマーカーCp0419及びIND214の欠失型配列を検出して他のカンキツ品種から識別可能な品種は、品種「あすみ」である。ここで、品種「あすみ」は、本出願人により作出された新規のカンキツ育成品種であり、品種登録番号:第23723号として品種登録されている。
品種「あすみ」の平均的な品種特性としては、次の特性を挙げることができる。樹勢は中程度で土壌及び気象条件に対する適応範囲は広く、様々なカンキツ産地での栽培が可能である。地上部ではトゲの発生が多く、ソウカ病に強く、カイヨウ病に弱い。隔年結果性は中程度、成熟期が1月下旬~2月上旬で、果実重が平均150g程度である。
果実の果肉部分の糖度が15%程度、酸度が1.1%程度、芳香を有し、食味が非常に高い。β-クリプトキサンチンを1.66mg/果肉100g程度と多く含有する。外果皮の剥皮性は中程度であるが、果実あたりの種子が平均1.5粒と少なく、じょうのう膜が柔らかく比較的食べやすい。
また、本発明のカンキツ品種の識別技術では、その識別原理の観点から、品種「あすみ」の後代品種のうちCp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示すカンキツ品種に関しても、本技術を利用して他のカンキツ品種から識別することが可能となる。
ここで、品種「あすみ」の後代品種としては、品種「あすみ」に由来する品種や品種「あすみ」を基に作出された品種を挙げることができる。当該後代品種としては、例えば、交配、突然変異、遺伝子導入、ゲノム編集等によって作出された後代品種を挙げることができる。また、当該後代品種としては、本出願後に品種として登録された作出品種も含まれる。また、当該後代品種には、品種「あすみ」の後代系統、品種「あすみ」に由来する作出系統、品種「あすみ」に由来する変異系統、等の各集団も含まれる。
また、品種「あすみ」と同じアレル型とは、Cp0419及びIND214の両方の遺伝子座に関して、ヘテロ型(挿入型配列/欠失型配列)のアレル多型を指す。なお、当該
アレル型が品種「あすみ」に由来するものであれば、これらの遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列に変異が発生した場合でも、本発明の品種識別技術の適用が可能である。
本発明の識別技術において、品種「あすみ」との区別が可能な「他のカンキツ品種」としては、インデルマーカーCp0419及びIND214の両方又はいずれかが欠失型配列とはならないカンキツ品種を挙げることができる。他のカンキツ品種に属するカンキツ植物では、インデルマーカーCp0419及びIND214のアレル型が、品種「あすみ」とは異なるアレル型を示す。
ここで、本発明の識別技術を用いて品種「あすみ」との区別が可能な当該他のカンキツ品種としては、例えば、下記の実験例にて示されたクレメンティン、ウンシュウミカン、グレープフルーツ、スイートオレンジ、レモン、不知火、イヨ(伊予柑)、ナツミカン、ハッサク、ポンカン、璃の香、みはや、あすき、麗紅、津之輝、西南のひかり、津之望、はるひ、清見、せとか、はるみ、はれひめ、甘平、紅まどんな、等を挙げることができる。これら24種類のカンキツ品種は品種「あすみ」と合わせると(計25種類)、日本国内ではほとんど流通していないクレメンティンを考慮したとしても、日本国内のカンキツ果実流通量の94%以上を占める。この点、ISO13495国際基準に定められる品種識別技術では、流通量90%以上を識別可能な技術を基準としているところ、当該技術が同国際基準を充足する技術であることを示す。
また、本発明の識別技術を用いて品種「あすみ」との区別が可能な当該他のカンキツ品種としては、例えば、下記の実験例にて示されたユズ、河内晩柑、ヒュウガナツ、スダチ、シークワサー、カラマンダリン(カラ)、タンカン、セミノール、カボス、天草、黄金柑、紀州ミカン、スイートスプリング、三宝柑、アンコール、たまみ、西之香、佐賀マンダリン、マーコット、南香、あまか、カンキツ中間母本農6号、カブス、等を、当該他のカンキツ品種として挙げることができる。
上記したクレメンティン及び品種「あすみ」等の25種類に加えて、これら23種類の品種を合わせると(計48種類)、日本国内のカンキツ果実流通量の98%以上を占める。この点は、本発明の識別技術が非常に高い精度で品種「あすみ」の識別を可能とする品種識別技術であることを示している。
更に、本発明の識別技術を用いて品種「あすみ」との区別が可能な当該他のカンキツ品種としては、下記実験例の結果及びその系統関係を考慮して、インデルマーカーCp0419及びIND214の両方又はいずれかが欠失型配列とはならないカンキツ品種を、他のカンキツ品種として挙げることが可能となる。例えば、ブンタン等に関しても、本発明の識別技術の原理的な観点から、品種「あすみ」との区別が可能な他のカンキツ品種と認めることができる。
[インデルマーカー欠失型配列の検出工程]
本発明に係るカンキツ識別技術は、(工程1)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーCp0419の欠失型配列を検出する工程、及び、(工程2)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーIND214の欠失型配列を検出する工程、を含む、カンキツ品種の識別方法に関する。
ここで、カンキツ植物ゲノムDNAからインデルマーカー欠失型配列の検出は、既存の核酸検出技術を利用することによって行うことが可能である。例えば、PCR法を利用した技術、ハイブリダイゼーション法を利用した技術、等を利用することができる。また、プローブとプライマーを併用したリアルタイムPCR法、野生型と欠失型の2種類のプローブを併用したドットブロット法、等の多型検出技術を利用することも可能である。
本発明に係る欠失型配列検出工程としては、その容易性及び迅速性の点から、欠失型配列を特異的に増幅可能なプライマーセットを用いた通常のPCR法を利用した技術によって行うことが好適である。PCR法に用いる反応試薬や反応条件等の手法は、プライマー特異的なPCR増幅断片が得られる反応試薬や反応条件等の手法であれば特に制限はなく、公知の手法にて行うことが可能である。
PCR増幅断片の検出手段としては、常法又は新規の手法によって行うことが可能である。一例としては、エチジウムブロマイド、蛍光物質、発色物質、発光物質、放射性同位体等を利用してPCR増幅断片の検出を行うことが可能であるが、特にこれらに制限はない。
試料
本発明に係る識別技術は、識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカー欠失型配列を検出する工程を含む。
当該検出工程における欠失型配列の検出は、カンキツ植物の植物体自体やそのゲノムDNAを含む試料を用いて行うことが可能である。詳しくは、当該検出工程では、カンキツ植物の植物体、前記植物体の加工品、又は前記植物体若しくは加工品から抽出されたDNA、等を用いて検出を行うことが可能である。
当該検出工程において欠失型配列の検出に用いるカンキツ植物の植物体としては、カンキツ植物の植物体に含まれる全て又はいずれかの部位や組織、全て又はいずれかの生育段階に属する植物体、等を試料として用いることができる。より具体的には、成長芽、側芽、生育枝、枝、葉、葉柄、トゲ、茎、花蕾、花、果実、種子、根、などを挙げることができる。また、果実を構成する外果皮、内果皮、果肉、種子等を挙げることができる。当該試料として好適には、ポリフェノール類等の夾雑物が少なくDNA抽出又はPCR増幅等のし易い、葉や芽等の組織や器官を用いることが好適である。また、識別したい果実から各構成組織を採取して、当該検出工程の試料として用いることも勿論可能である。
また、当該検出工程では、上記のカンキツ植物の加工品を試料として用いることも可能である。当該加工品としては、様々な加工処理や加工段階のものが含まれるが、PCRによるDNA増幅が可能な程度の加工処理や加工段階のものを用いることが好適である。一例としては、植物体の搾汁物、植物体の抽出物、搾汁残渣、抽出残渣、植物体そのものの加工物(植物体の切断物、粉砕物、ペースト状物、ピューレ状物、乾燥物、粉末物、冷凍処理物、各種化学的処理等)等を挙げることができる。特にこれらの加工品の具体的な例示としては、果実を利用してこれらの加工態様を示す果実加工品を用いることが好適である。当該果実加工品としては、例えば、果肉を含むストレートジュース、果肉をシロップ漬けにした缶詰、ドライフルーツ、等の果実加工品を好適に挙げることができる。
Cp0419遺伝子座
当該インデルマーカー欠失型配列の検出工程では、(工程1)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーCp0419の欠失型配列を検出する工程、を含む。
ここで、インデルマーカーCp0419は、カンキツゲノムの第5染色体上のエンドプロテアーゼClp遺伝子の第1イントロンに存在するインデルマーカーである(図2、図3)。クレメンティンのCp0419挿入型配列を示す配列番号1に記載の塩基配列で示した場合、エンドプロテアーゼClp遺伝子を示す第1エクソンの最上流塩基から最終エクソンの最下流塩基までの塩基配列で示される領域は、第1590番目の塩基から第2825番目の塩基までの塩基配列で示される領域に該当する。また、当該第1イントロンは、配列番号1に示される塩基配列における第2000番目の塩基から第2346番目の塩基までの塩基配列で示される領域に該当する。また、当該遺伝子の5’UTRは、配列番号1に示される塩基配列における第1501番目の塩基から第1589番目の塩基までの塩基配列に該当する。
Cp0419遺伝子座に挿入配列を有する挿入型配列(Cp0419挿入型配列)では、当該第1イントロン中に存在するCp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」の間に、約170bpの挿入配列が存在する。クレメンティンのCp0419挿入型配列を示す配列番号1に記載の塩基配列で示した場合、Cp0419遺伝子座の最上流塩基である第2117番目の塩基「G」とCp0419遺伝子座の最下流塩基である第2287番目の塩基「T」の間に、169bpの挿入配列が存在する。
クレメンティンは、当該挿入配列が存在するタイプの配列(Cp0419挿入型配列)と当該挿入配列が存在しないタイプの配列(Cp0419欠失型配列)とを、相同染色体にヘテロで有するアレル型を示す。ここで、Cp0419欠失型配列では、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」の間に挟まれた領域(上記した約170bpの挿入配列)が欠失した塩基配列(「GT」の2塩基)となる(図3)。また、品種「あすみ」も、クレメンティンと同様に、Cp0419挿入型配列とCp0419欠失型配列とを相同染色体にヘテロで有するアレル型を示す。品種「あすみ」から単離されたCp0419欠失型配列を含む塩基配列は、配列番号2に記載の塩基配列として示すことができる。品種「あすみ」のCp0419欠失型配列を示す配列番号2に記載の塩基配列で示した場合、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」は第355番目の塩基に該当し、最下流塩基「T」は第356番目の塩基に該当する。
即ち、本発明では、カンキツ植物ゲノムのインデルマーカーCp0419に関して、次の定義をすることができる:
カンキツ標準品種であるクレメンティンのゲノムで示した場合、第5染色体上のエンドプロテアーゼClp遺伝子の第1イントロン内に存在するインデルマーカーの遺伝子座であって、当該クレメンティンのCp0419挿入型配列を含む配列番号1に記載の塩基配列で示した場合、第2117番目の塩基「G」がCp0419遺伝子座の最上流塩基を示し、第2287番目の塩基「T」がCp0419遺伝子座の最下流塩基を示し、第2118番目の塩基から第2286番目の塩基までの塩基配列が挿入配列を示し、;
対象試料であるカンキツ植物ゲノムのCp0419遺伝子座に関して、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」の間に上記に対応する挿入配列が存在する塩基配列の場合にはCp0419挿入型配列を示し、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」の間に挿入配列が存在しない塩基配列の場合にはCp0419欠失型配列を示す。
ここで、対象試料であるカンキツ植物ゲノムのCp0419遺伝子座とは、対象試料であるカンキツ植物ゲノムにおいて、クレメンティンゲノムのCp0419とオーソログ関係にある遺伝子座(共通祖先において同一起源の遺伝子座)を指す。また、上記に対応する挿入配列とは、対象試料であるカンキツ植物ゲノムにおいて、クレメンティンゲノムの挿入配列とのオーソログ関係にある挿入配列(共通祖先において同一起源の挿入配列)を指す。当該挿入配列に関しては、タンパク質機能とは関係ない進化速度が速い領域であるが、配列同一性が非常に高い場合(例えば、クレメンティンゲノムの挿入配列である配列番号1の第2118番目の塩基から第2286番目の塩基までの塩基配列に対して配列同一性90%以上、好ましくは95%以上の場合)には、お互いに対応する同一起源の配列に該当すると判断できる。
また、対象試料であるカンキツ植物ゲノムのCp0419遺伝子座の末端塩基及びその周辺領域を構成する塩基配列に関しても、上記と同様に認識することが可能である。例えば、エンドプロテアーゼClp遺伝子の5’UTRの最上流塩基より上流に1000番目、好ましくは560番目、の塩基(上流1kbp以内には上流調節領域が多く存在する)からCp0419遺伝子座の最上流塩基までの塩基配列及びCp0419遺伝子座の最下流塩基から最終エクソンの最後の塩基までの塩基配列に対して、配列同一性85%以上、90%以上、又は95%以上を示す場合、お互いに対応する配列に該当すると判断できる。
Cp0419欠失型配列を検出するためのプライマーセット
当該検出工程におけるCp0419欠失型配列の検出は、Cp0419欠失型配列のPCR増幅が可能なように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCR法を利用する方法によって好適に行うことが可能である。
(遺伝子座を挟むプライマーセット)
当該検出工程においてCp0419欠失型配列の検出が可能なオリゴヌクレオチドプライマーとしては、例えば、インデルマーカーの遺伝子座を挟む位置に1対のオリゴヌクレオチドプライマーからなるプライマーセット(1対のCp0419検出用共通領域プライマーのプラマーセット)を設計し、Cp0419欠失型配列のPCR増幅断片の増幅の有無による検出が可能となるオリゴヌクレオチドプライマーを設計する態様を挙げることができる(図5参照)。
当該1対のオリゴヌクレオチドプライマーを含むプライマーセットを用いてPCR増幅を行った場合、インデルマーカー挿入型配列がゲノムに存在する場合、挿入配列を含む長鎖DNA断片が増幅する。一方、インデルマーカー欠失型配列がゲノムに存在する場合、挿入配列に相当する長さが欠失した短鎖DNA断片が増幅する。
従って、当該プライマーセットを用いて検出工程を行って、挿入配列に相当する長さが欠失した短鎖DNA断片が増幅した場合、対象試料のゲノムDNAのCp0419遺伝子座にはCp0419欠失型配列が存在すると判断することが可能となる。
「1対のCp0419検出用共通領域プライマー」(フォワードプライマー及びリバースプライマー)にて構成されるプライマーセットとしては、具体的には、下記のCp0419遺伝子座を含むDNA断片を増幅可能な次の1対のオリゴヌクレオチドプライマー(p1)及び(p2)を用いることが可能である:
(p1)カンキツ植物ゲノムのCp0419遺伝子座の最上流塩基「G」より上流に1000番目の塩基から当該最上流塩基「G」までの塩基配列に含まれる16塩基以上の塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー、及び、
(p2)カンキツ植物ゲノムのCp0419遺伝子座の最下流塩基「T」からその下流に1000番目の塩基までの塩基配列の相補配列に含まれる16塩基以上の塩基配列であって、上記(p1)に記載のプライマーとCp0419遺伝子座を挟む向き及び位置にてプライマー対を形成可能な塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー。
ここで、上記(p1)及び(p2)に記載のオリゴヌクレオチドプライマーは、そのプライマー機能を発揮するための塩基配列として、これらのオリゴヌクレオチドプライマーのプライマーセットとして用いて表1、表2、表5、及び表6に記載されたカンキツ品種(計48種類)のゲノムDNAに対してPCR反応を行った場合に、その全てのカンキツ品種に対してCp0419挿入型配列又はCp0419欠失型配列の増幅が可能な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーである態様を、好適に挙げることができる。
(欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット)
また、当該検出工程においてCp0419欠失型配列の検出が可能なオリゴヌクレオチドプライマーとしては、例えば、Cp0419欠失型配列が存在する場合にのみPCR増幅が生じるように、挿入配列に分断されていたCp0419遺伝子座の最上流塩基と最下流塩基を繋いだ塩基配列からなるCp0419欠失型配列特異的プライマーを設計する態様を挙げることができる(図7参照)。
当該Cp0419欠失型配列特異的プライマーとこれとプライマー対を形成するCp0419検出用共通領域プライマーを含むプライマーセットを用いてPCR増幅を行った場合、インデルマーカー挿入型配列がゲノムに存在する場合にはCp0419欠失型配列特異的プライマーのアニーリングが生じずにPCR増幅断片は検出されない。一方、インデルマーカー欠失型配列がゲノムに存在する場合、Cp0419欠失型配列特異的プライマーのアニーリングが生じ、PCR増幅断片が検出される。
従って、当該プライマーセットを用いて検出工程を行って、Cp0419欠失型配列と一致する塩基長のDNA断片が増幅した場合、対象試料のゲノムDNAのCp0419遺伝子座には、Cp0419欠失型配列が存在すると判断することが可能となる。
「Cp0419欠失型配列特異的プライマー」とこれと対になる「Cp0419検出用共通領域プライマー」としては、具体的には、Cp0419欠失型配列のみを特異的に増幅可能なオリゴヌクレオチドプライマー(p11)及びこれとプライマー対を形成するCp0419検出用共通領域プライマー(p12)を用いることが可能である:
(p11)カンキツ植物ゲノムのCp0419の挿入配列が存在しない欠失型配列の塩基配列に含まれる16塩基以上の塩基配列であって、当該16塩基以上の塩基配列が当該Cp0419遺伝子座である2塩基(Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」からなる2塩基)を含んで構成される塩基配列であり、当該16塩基以上の塩基配列の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの間に前記Cp0419遺伝子座である2塩基を含む塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー、又は、カンキツ植物ゲノムのCp0419の挿入配列が存在しない欠失型配列の塩基配列の相補配列に含まれる16塩基以上の塩基配列であって、当該16塩基以上の塩基配列が当該Cp0419遺伝子座である2塩基(Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」からなる2塩基)の相補2塩基を含んで構成される塩基配列であって、当該16塩基以上の塩基配列の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの間に、前記Cp0419遺伝子座である2塩基の相補2塩基を含む塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー、及び、
(p12)カンキツ植物ゲノムのCp0419遺伝子座の最下流塩基「T」からその下流に1000番目の塩基までの塩基配列の相補配列に含まれる16塩基以上の塩基配列、又は、カンキツ植物ゲノムのCp0419遺伝子座の最上流塩基「G」より上流に1000番目の塩基から当該最上流塩基「G」までの塩基配列に含まれる16塩基以上の塩基配列、であって、上記(p11)に記載のプライマーとプライマー対を形成可能な塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー。
ここで、上記(p11)及び(p12)に記載のオリゴヌクレオチドプライマーは、そのプライマー機能を発揮するための塩基配列として、これらのオリゴヌクレオチドプライマーのプライマーセットとして用いて表1、表2、表5、及び表6に記載されたカンキツ品種(計48種類)のゲノムDNAに対してPCR反応を行った場合に、クレメンティン並びに試料5、9、12、16、21、23、32、及び42として示されたカンキツ品種に対してCp0419欠失型配列の増幅が可能であって、且つ、その他の試料として示されたカンキツ品種に対してはPCR増幅が生じない塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーである態様を、好適に挙げることができる。
(プライマー設計事項)
上記したオリゴヌクレオチドプライマーの設計条件としては、(p1)と(p2)はプライマー対を形成する同じプライマーセットのプライマーどうしであるため、(p1)がフォワードプライマーの場合は(p2)はリバースプライマーとなり、(p1)がリバースプライマーの場合は(p2)がフォワードプライマーとなる。同様に、(p11)と(p12)はプライマー対を形成する同じプライマーセットのプライマーどうしであるため、(p11)がフォワードプライマーの場合は(p12)はリバースプライマーとなり、(p11)がリバースプライマーの場合は(p12)がフォワードプライマーとなる。
また、プライマーの設計条件としては、Cp0419遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列、又はその相補配列に含まれる塩基配列を、連続して少なくとも16塩基含むプライマーであることが好適である。好適な塩基長(塩基:mer)としては、当該塩基配列又はその相補配列に含まれる塩基配列を、16塩基以上、17塩基以上、18塩基以上、19塩基以上、又は20塩基以上、を含むプライマーであることが好適である。また、当該オリゴヌクレオチドプライマーの塩基長の上限としては、プライマーとして機能する範囲を逸脱しない範囲であれば特に制限はないが、例えば上記塩基配列の塩基長が、50塩基以下又は40塩基以下のものを挙げることができる。
また、配列特異的性を上げて、非特異的PCR増幅を下げるためには、プライマー対を形成するプライマーとのTm値(アニーリング温度)やGC含量等を近似した値に合わせた上で、塩基長の長い適切なプライマーを設計することが好適である。
また、当該オリゴヌクレオチドプライマーの5’端は、ベクター挿入等に利用するための制限酵素サイトや各種ベクター導入用の修飾塩基配列を付加したものであっても良く、また、蛍光物質や標識物質等を結合した形態のものであっても良い。また、オリゴヌクレオチドプライマーの3’端の塩基は、Cp0419遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又はその相補配列と完全一致する塩基配列であることが好適である。
上記に記載のオリゴヌクレオチドプライマーを設計可能な領域としては、増幅産物の塩基長がPCR増幅に適した領域であることが好適である。具体的には、PCR増幅断片の塩基長(塩基対:bp)が、PCR増幅の容易性の観点から2kbp以下となる位置に、上記した1対のCp0419検出用共通領域プライマーのプライマーセット(遺伝子座を挟むプライマーセット)、又は、上記Cp0419欠失型配列特異的プライマーとCp0419検出用共通領域プライマーのプライマーセット(欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット)を設計することが好適である。
より好ましくは、PCR増幅断片の塩基長が、2kb以下、1.5kbp以下、1.2kbp以下、1kbp以下、又は800bp以下となる位置にプライマーセットを設計することが好適である。PCR増幅断片長の下限としては、例えば、非特異的増幅との区別の観点から、PCR増幅断片の塩基長が50bp以上、100bp以上、150bp以上、又は200bp以上となる位置にプライマーセットを設計することが好適である。実施形態としては、例えば100~1000bp、200~800bp、246~768bp、又は371~768bpの範囲が挙げられる。
PCRの技術的な点を考慮すると、(p1)、(p2)、及び(p12)に記載のCp0419検出用共通領域プライマーを設計可能な領域(図5、図7参照)としては、PCR増幅の容易性の観点から、具体的には、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」より上流に1000番目の塩基から当該最上流塩基「G」までの塩基配列で示される領域、又は、最下流塩基「T」からその下流に1000番目の塩基までの塩基配列で示される領域、を好適に挙げることができる。好ましくは当該上流又は下流に1000番目、900番目、800番目、又は750番目の塩基までの領域を好適に挙げることができる。
また、当該プライマー設計の実施形態として、一例としては、品種「あすみ」又は標準品種クレメンティン等におけるこれらの対応領域をプライマー設計領域とすることが可能である。
(p11)に記載のCp0419欠失型配列特異的プライマーとしては、Cp0419欠失型配列に関して、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」からなる2塩基又はその相補2塩基が存在する欠失型配列を特異的に検出するプライマーとして機能するため、プライマーを構成する塩基配列の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの間に、当該2塩基又はその相補2塩基を含む塩基配列を有するプライマーであることが好適である(図7参照)。好ましくは、当該2塩基又はその相補2塩基を、プライマー構成塩基配列の3’端の塩基より上流に9番目、より好ましくは8番目の塩基から当該3’端の塩基までの間に含む塩基配列、を有するプライマーであることが好適である。
また、当該プライマー設計の実施形態として、一例としては、品種「あすみ」等におけるこれらの対応領域をプライマー設計領域とすることが可能である。
上記(p1)、(p2)、(p11)、及び(p12)に記載のプライマーとしては、上記した各種プライマー設計条件に関して、対象試料ゲノムDNA上におけるCp0419遺伝子座及びその周辺領域の増幅が可能となる塩基配列を含むプライマーを、本発明のカンキツ識別技術に用いることが可能な上記プライマーとして採用できる。また、上記のCp0419遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又は相補配列に対して、1又は数個の変異を有する塩基配列を含むプライマーであっても、対象試料ゲノムDNA上におけるCp0419遺伝子座及びその周辺領域の増幅が可能となる塩基配列を含むプライマーであれば、上記プライマーとして使用することが可能である。
当該プライマーを構成する塩基配列に関して、Cp0419遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又は相補配列に対する変異数としては、対象試料ゲノムDNA上におけるCp0419遺伝子座及びその周辺領域の増幅が可能となる範囲であれば特に制限はないが、例えば、3塩基以下、2塩基以下、又は1塩基以下を挙げることができる。特に好ましくは、変異数が2塩基以下のものを好適に挙げることができる。
当該変異配列を含むプライマーの態様としては、好ましくは、プライマー構成塩基の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの間の塩基配列が、Cp0419遺伝子座及びその周辺領域の塩基配列又はその相補配列上の塩基配列と一致するプライマーを挙げることができる。当該態様では、それより5’側の塩基に変異を有する塩基配列であっても、3’側での配列特異的な結合能が担保されるため、上記の欠失型配列の検出機能が担保されたプライマーとして用いることが可能となる。好ましくは、当該プライマーにおいてCp0419遺伝子座及びその周辺領域の塩基配列又はその相補配列上の塩基配列に一致する領域としては、プライマー構成塩基配列の3’端の塩基より上流に12番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、又は20番目の塩基から当該3’端の塩基までの間の塩基配列で示される領域、を好適に挙げることができる。
また、当該変異配列を含むプライマー態様としては、上記Cp0419遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又はその相補配列に対する変異箇所を除いて、プライマー構成塩基配列の全体で16塩基以上、17塩基以上、18塩基以上、19塩基以上、又は20塩基以上が、上記Cp0419遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又は相補配列と一致する塩基配列を含むプライマーであることが好適である。
下記実験例に基づく好適な態様としては、(p1)、(p2)、(p11)、及び/又は(p12)に記載のプライマーに関して、品種「あすみ」の塩基配列、若しくは、品種「あすみ」の塩基配列に対して変異が2塩基以下であってプライマー構成塩基の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの塩基配列を含む全体で16塩基以上が品種「あすみ」の塩基配列と一致する塩基配列、又は、これらの相補配列に該当する塩基配列、を含むプライマーを好適に挙げることができる。そして、当該プライマーとしては、下記実験例で示した48種類のカンキツ品種のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った場合において、その全てのカンキツ品種に対して、下記実験例で示されたCp0419挿入型配列及びCp0419欠失型配列のPCR増幅様式と同様のPCR増幅様式を示す塩基配列を含むプライマーを、本発明のカンキツ識別技術に用いることが可能なプライマーとして好適に採用することができる。
なお、ここでの「実験例の(中略)PCR増幅様式と同様」という表現は、下記実験例の48種類のカンキツ品種に対するPCR増幅の有無による検出様式が同じかどうかを指し、プライマー設計位置等の相違による増幅断片の塩基長の相違は許容される内容として記載されている。
また、同様に、(p1)、(p2)、(p11)、及び/又は(p12)に記載のプライマーに関して、クレメンティンの塩基配列、若しくは、クレメンティンの塩基配列に対して変異が2塩基以下であってプライマー構成塩基の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの塩基配列を含む全体で16塩基以上がクレメンティンの塩基配列と一致する塩基配列、又は、これらの相補配列に該当する塩基配列、を含むプライマーに関しても、上記と同様の条件にてプライマーを設計することが可能である。
IND214遺伝子座
当該インデルマーカー欠失型配列の検出工程では、(工程2)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーIND214の欠失型配列を検出する工程、を含む。
ここで、インデルマーカーIND214は、カンキツゲノムの第1染色体上のHIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子の上流領域に存在するインデルマーカーである(図2、図4)。クレメンティンのIND214挿入型配列を示す配列番号7に記載の塩基配列で示した場合、HIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子を示す第1エクソンの最上流塩基から最終エクソンの最下流塩基までの塩基配列で示される領域は、第3186番目の塩基から第11658番目の塩基までの塩基配列で示される領域に該当する。また、5’UTRは、配列番号7に示される塩基配列における第3001番目の塩基から第3185番目の塩基までの塩基配列に該当し、第3001番目の塩基より上流側の領域(第1番目の塩基から第3000番目の塩基までの塩基配列で示される領域)は、当該遺伝子の上流領域に該当する。ここで、配列番号7に記載の塩基配列で示した場合、IND214遺伝子座の最下流塩基は、当該遺伝子の5’UTRの最上流塩基から上流に288番目の塩基に該当し、IND214遺伝子座は当該遺伝子の上流調節領域が存在する領域にあるインデルマーカーと認められる。
IND214遺伝子座に挿入配列を有する挿入型配列(IND214挿入型配列)では、当該遺伝子の上流領域中に存在するIND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」の間に、約210bpの挿入配列が存在する。クレメンティンのIND214挿入型配列を示す配列番号7に記載の塩基配列で示した場合、IND214遺伝子座の最上流塩基である第2503番目の塩基「T」とIND214遺伝子座の最下流塩基である第2713番目の塩基「T」の間に、209bpの挿入配列が存在する。
クレメンティンは、当該挿入配列が存在するタイプの配列(IND214挿入型配列)を、相同染色体にホモで有するアレル型を示す。一方、品種「あすみ」では、当該挿入配列が存在するタイプの配列(IND214挿入型配列)と当該挿入配列が存在しないタイプの配列(IND214欠失型配列)とを、相同染色体にヘテロで有するアレル型を示す。ここで、IND214欠失型配列では、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」の間に挟まれた領域(上記した約210bpの挿入配列)が欠失したタイプの塩基配列(「TT」の2塩基)となる(図4)。品種「あすみ」から単離されたIND214欠失型配列を含む塩基配列は、配列番号8に記載の塩基配列として示すことができる。品種「あすみ」のIND214欠失型配列を示す配列番号8に記載の塩基配列で示した場合、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」は第58番目の塩基に該当し、最下流塩基「T」は第59番目の塩基に該当する。
即ち、本発明では、カンキツ植物ゲノムのインデルマーカーIND214に関して、次の定義をすることができる:
カンキツ標準品種であるクレメンティンのゲノムで示した場合、第1染色体上のHIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子の上流領域に存在するインデルマーカーの遺伝子座であって、当該クレメンティンのIND214挿入型配列を含む配列番号7に記載の塩基配列で示した場合、第2503番目の塩基「T」がIND214遺伝子座の最上流塩基を示し、第2713番目の塩基「T」がIND214遺伝子座の最下流塩基を示し、第2504番目の塩基から第2712番目の塩基までの塩基配列が挿入配列を示し、;
対象試料であるカンキツ植物ゲノムのIND214遺伝子座に関して、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」の間に上記に対応する挿入配列が存在する塩基配列の場合にはIND214挿入型配列を示し、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」の間に挿入配列が存在しない塩基配列の場合にはIND214欠失型配列を示す。
ここで、対象試料であるカンキツ植物ゲノムのIND214遺伝子座とは、対象試料であるカンキツ植物ゲノムにおいて、クレメンティンゲノムのIND214とオーソログ関係にある遺伝子座(共通祖先において同一起源の遺伝子座)を指す。また、上記に対応する挿入配列とは、対象試料であるカンキツ植物ゲノムにおいて、クレメンティンゲノムの挿入配列とのオーソログ関係にある挿入配列(共通祖先において同一起源の挿入配列)を指す。当該挿入配列に関しては、タンパク質機能とは関係ない進化速度が速い領域であるが、配列同一性が非常に高い場合(例えば、クレメンティンゲノムの挿入配列である配列番号7の第2504番目の塩基から第2712番目の塩基までの塩基配列に対して配列同一性90%以上、好ましくは95%以上の場合)には、お互いに対応する同一起源の配列に該当すると判断できる。
また、対象試料であるカンキツ植物ゲノムのIND214遺伝子座の末端塩基及びその周辺領域を構成する塩基配列に関しても、上記と同様に認識することが可能である。例えば、HIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子の5’UTRの最上流塩基より上流に1000番目、好ましくは560番目、の塩基(上流1kbp以内には上流調節領域が多く存在する)からIND214遺伝子座の最上流塩基までの塩基配列及びIND214遺伝子座の最下流塩基から最終エクソンの最後の塩基までの塩基配列に対して、配列同一性85%以上、90%以上、又は95%以上を示す場合、お互いに対応する配列に該当すると判断できる。
IND214欠失型配列を検出するためのプライマーセット
当該検出工程におけるIND214欠失型配列の検出は、IND214欠失型配列のPCR増幅が可能なように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCR法を利用する方法によって好適に行うことが可能である。
(遺伝子座を挟むプライマーセット)
当該検出工程においてIND214欠失型配列の検出が可能なオリゴヌクレオチドプライマーとしては、例えば、インデルマーカーの遺伝子座を挟む位置に1対のオリゴヌクレオチドプライマーからなるプライマーセット(1対のIND214検出用共通領域プライマーのプラマーセット)を設計し、IND214欠失型配列のPCR増幅断片の増幅の有無による検出が可能となるオリゴヌクレオチドプライマーを設計する態様を挙げることができる(図5参照)。
当該1対のオリゴヌクレオチドプライマーを含むプライマーセットを用いてPCR増幅を行った場合、インデルマーカー挿入型配列がゲノムに存在する場合、挿入配列を含む長鎖DNA断片が増幅する。一方、インデルマーカー欠失型配列がゲノムに存在する場合、挿入配列に相当する長さが欠失した短鎖DNA断片が増幅する。
従って、当該プライマーセットを用いて検出工程を行って、挿入配列に相当する長さが欠失した短鎖DNA断片が増幅した場合、対象試料のゲノムDNAのIND214遺伝子座にはIND214欠失型配列が存在すると判断することが可能となる。
「1対のIND214検出用共通領域プライマー」(フォワードプライマー及びリバースプライマー)にて構成されるプライマーセットとしては、具体的には、下記のIND214遺伝子座を含むDNA断片を増幅可能な次の1対のオリゴヌクレオチドプライマー(p3)及び(p4)を用いることが可能である:
(p3)カンキツ植物ゲノムのIND214遺伝子座の最上流塩基「T」より上流に1000番目の塩基から当該最上流塩基「T」までの塩基配列に含まれる16塩基以上の塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー、及び、
(p4)カンキツ植物ゲノムのIND214遺伝子座の最下流塩基「T」からその下流に1000番目の塩基までの塩基配列の相補配列に含まれる16塩基以上の塩基配列であって、上記(p3)に記載のプライマーとIND214遺伝子座を挟む向き及び位置にてプライマー対を形成可能な塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー。
ここで、上記(p3)及び(p4)に記載のオリゴヌクレオチドプライマーは、そのプライマー機能を発揮するための塩基配列として、これらのオリゴヌクレオチドプライマーのプライマーセットとして用いて表1、表2、表5、及び表6に記載されたカンキツ品種(48種類)のゲノムDNAに対してPCR反応を行った場合に、その全てのカンキツ品種に対してIND214挿入型配列又はIND214欠失型配列の増幅が可能な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーである態様を、好適に挙げることができる。
(欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット)
また、当該検出工程においてIND214欠失型配列の検出が可能なオリゴヌクレオチドプライマーとしては、例えば、IND214欠失型配列が存在する場合にのみPCR増幅が生じるように、挿入配列に分断されていたIND214遺伝子座の最上流塩基と最下流塩基を繋いだ塩基配列からなるIND214欠失型配列特異的プライマーを設計する態様を挙げることができる(図7参照)。
当該IND214欠失型配列特異的プライマーとこれとプライマー対を形成するIND214検出用共通領域プライマーを含むプライマーセットを用いてPCR増幅を行った場合、インデルマーカー挿入型配列がゲノムに存在する場合にはIND214欠失型配列特異的プライマーのアニーリングが生じずにPCR増幅断片は検出されない。一方、インデルマーカー欠失型配列がゲノムに存在する場合、IND214欠失型配列特異的プライマーのアニーリングが生じ、PCR増幅断片が検出される。
従って、当該プライマーセットを用いて検出工程を行って、IND214欠失型配列と一致する塩基長のDNA断片が増幅した場合、対象試料のゲノムDNAのIND214遺伝子座には、IND214欠失型配列が存在すると判断することが可能となる。
「IND214欠失型配列特異的プライマー」とこれと対になる「IND214検出用共通領域プライマー」としては、具体的には、IND214欠失型配列のみを特異的に増幅可能なオリゴヌクレオチドプライマー(p13)及びこれとプライマー対を形成するIND214検出用共通領域プライマー(p14)を用いることが可能である:
(p13)カンキツ植物ゲノムのIND214の挿入配列が存在しない欠失型配列の塩基配列に含まれる16塩基以上の塩基配列であって、当該16塩基以上の塩基配列が当該IND214遺伝子座である2塩基(IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」からなる2塩基)を含んで構成される塩基配列であり、当該16塩基以上の塩基配列の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの間に前記IND214遺伝子座である2塩基を含む塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー、又は、カンキツ植物ゲノムのIND214の挿入配列が存在しない欠失型配列の塩基配列の相補配列に含まれる16塩基以上の塩基配列であって、当該16塩基以上の塩基配列が当該IND214遺伝子座である2塩基(IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」からなる2塩基)の相補2塩基を含んで構成される塩基配列であって、当該16塩基以上の塩基配列の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの間に、前記IND214遺伝子座である2塩基の相補2塩基を含む塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー、及び、
(p14)カンキツ植物ゲノムのIND214遺伝子座の最下流塩基「T」からその下流に1000番目の塩基までの塩基配列の相補配列に含まれる16塩基以上の塩基配列、又は、カンキツ植物ゲノムのIND214遺伝子座の最上流塩基「T」より上流に1000番目の塩基から当該最上流塩基「T」までの塩基配列に含まれる16塩基以上の塩基配列、であって、上記(p13)に記載のプライマーとプライマー対を形成可能な塩基配列、を含むオリゴヌクレオチドプライマー。
ここで、上記(p13)及び(p14)に記載のオリゴヌクレオチドプライマーは、そのプライマー機能を発揮するための塩基配列として、これらのオリゴヌクレオチドプライマーのプライマーセットとして用いて表1、表2、表5、及び表6に記載されたカンキツ品種(計48種類)のゲノムDNAに対してPCR反応を行った場合に、試料2、3、6、7、8、12、13、18、26、35、38、及び47として示されたカンキツ品種に対してIND214欠失型配列の増幅が可能であって、且つ、クレメンティン並びにその他の試料番号にて示されたカンキツ品種に対してはPCR増幅が生じない塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーである態様を、好適に挙げることができる。
(プライマー設計事項)
上記したオリゴヌクレオチドプライマーの設計条件としては、(p3)と(p4)はプライマー対を形成する同じプライマーセットのプライマーどうしであるため、(p3)がフォワードプライマーの場合は(p4)はリバースプライマーとなり、(p3)がリバースプライマーの場合は(p4)がフォワードプライマーとなる。同様に、(p13)と(p14)はプライマー対を形成する同じプライマーセットのプライマーどうしであるため、(p13)がフォワードプライマーの場合は(p14)はリバースプライマーとなり、(p13)がリバースプライマーの場合は(p14)がフォワードプライマーとなる。
また、プライマーの設計条件としては、IND214遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列、又はその相補配列に含まれる塩基配列を、連続して少なくとも16塩基含むプライマーであることが好適である。好適な塩基長(塩基:mer)としては、当該塩基配列又はその相補配列に含まれる塩基配列を、16塩基以上、17塩基以上、18塩基以上、19塩基以上、又は20塩基以上、を含むプライマーであることが好適である。また、当該オリゴヌクレオチドプライマーの塩基長の上限としては、プライマーとして機能する範囲を逸脱しない範囲であれば特に制限はないが、例えば上記塩基配列の塩基長が50塩基以下又は40塩基以下のものを挙げることができる。
また、配列特異的性を上げて、非特異的PCR増幅を下げるためには、プライマー対を形成するプライマーとのTm値(アニーリング温度)やGC含量等を近似した値に合わせた上で、塩基長の長い適切なプライマーを設計することが好適である。
また、当該オリゴヌクレオチドプライマーの5’端は、ベクター挿入等に利用するための制限酵素サイトや各種ベクター導入用の修飾塩基配列を付加したものであっても良く、また、蛍光物質や標識物質等を結合した形態のものであっても良い。また、オリゴヌクレオチドプライマーの3’端の塩基は、IND214遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又はその相補配列と完全一致する塩基配列であることが好適である。
上記に記載のオリゴヌクレオチドプライマーを設計可能な領域としては、増幅産物の塩基長がPCR増幅に適した領域であることが好適である。具体的には、PCR増幅断片の塩基長(塩基対:bp)が、PCR増幅の容易性の観点から2kbp以下となる位置に、上記した1対のIND214検出用共通領域プライマーのプライマーセット(遺伝子座を挟むプライマーセット)、又は、上記IND214欠失型配列特異的プライマーとIND214検出用共通領域プライマーのプライマーセット(欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット)を設計することが好適である。
より好ましくは、PCR増幅断片の塩基長が、2kb以下、1.5kbp以下、1.2kbp以下、1kbp以下、又は800bp以下となる位置にプライマーセットを設計することが好適である。PCR増幅断片長の下限としては、例えば、非特異的増幅との区別の観点から、PCR増幅断片の塩基長が50bp以上、100bp以上、150bp以上、又は200bp以上となる位置にプライマーセットを設計することが好適である。実施形態としては、例えば100~1000bp、200~800bp、246~768bp、又は246~505bpの範囲が挙げられる。
PCRの技術的な点を考慮すると、(p3)、(p4)、及び(p14)に記載のIND214検出用共通領域プライマーを設計可能な領域(図5、図7参照)としては、PCR増幅の容易性の観点から、具体的には、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」より上流に1000番目の塩基から当該最上流塩基「T」までの塩基配列で示される領域、又は、最下流塩基「T」からその下流に1000番目の塩基までの塩基配列で示される領域、を好適に挙げることができる。好ましくは当該上流又は下流に1000番目、900番目、800番目、750番目、又は500番目の塩基までの領域を好適に挙げることができる。
また、当該プライマー設計の実施形態として、一例としては、品種「あすみ」又は標準品種クレメンティン等におけるこれらの対応領域をプライマー設計領域とすることが可能である。
(p13)に記載のIND214欠失型配列特異的プライマーとしては、IND214欠失型配列に関して、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」からなる2塩基又はその相補2塩基が存在する欠失型配列を特異的に検出するプライマーとして機能するため、プライマーを構成する塩基配列の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの間に、当該2塩基又はその相補2塩基を含む塩基配列を有するプライマーであることが好適である(図7参照)。好ましくは、当該2塩基又はその相補2塩基を、プライマー構成塩基配列の3’端の塩基より上流に9番目、より好ましくは8番目の塩基から当該3’端の塩基までの間に含む塩基配列、を有するプライマーであることが好適である。
また、当該プライマー設計の実施形態として、一例としては、品種「あすみ」等におけるこれらの対応領域をプライマー設計領域とすることが可能である。
上記(p3)、(p4)、(p13)、及び(p14)に記載のプライマーとしては、上記した各種プライマー設計条件に関して、対象試料ゲノムDNA上におけるIND214遺伝子座及びその周辺領域の増幅が可能となる塩基配列を含むプライマーを、本発明のカンキツ識別技術に用いることが可能な上記プライマーとして採用できる。また、上記のIND214遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又は相補配列に対して、1塩基以上の変異を有する塩基配列を含むプライマーであっても、対象試料ゲノムDNA上におけるIND214遺伝子座及びその周辺領域の増幅が可能となる塩基配列を含むプライマーであれば、上記プライマーとして使用することが可能である。
当該プライマーを構成する塩基配列に関して、IND214遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又は相補配列に対する変異数としては、対象試料ゲノムDNA上におけるIND214遺伝子座及びその周辺領域の増幅が可能となる範囲であれば特に制限はないが、好ましくは、3塩基以下、2塩基以下、又は1塩基以下を挙げることができる。特に好ましくは、変異数が2塩基以下のものを好適に挙げることができる。
ここで、当該変異配列を含むプライマーの態様としては、例えば、プライマー構成塩基の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの間の塩基配列が、IND214遺伝子座及びその周辺領域の塩基配列又はその相補配列上の塩基配列と一致するプライマーを好適に挙げることができる。当該態様では、それより5’側の塩基に変異を有する塩基配列であっても、3’側での配列特異的な結合能が担保されるため、上記の欠失型配列の検出機能が担保されたプライマーとして用いることが可能となる。好ましくは、当該プライマーにおいてIND214遺伝子座及びその周辺領域の塩基配列又はその相補配列上の塩基配列に一致する領域としては、プライマー構成塩基配列の3’端の塩基より上流に12番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、又は20番目の塩基から当該3’端の塩基までの間の塩基配列で示される領域、を好適に挙げることができる。
また、当該変異配列を含むプライマー態様としては、上記IND214遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又はその相補配列に対する変異箇所を除いて、プライマー構成塩基配列の全体で16塩基以上、17塩基以上、18塩基以上、19塩基以上、又は20塩基以上が、上記IND214遺伝子座及びその周辺領域を構成する塩基配列又は相補配列と一致する塩基配列を含むプライマーであることが好適である。
下記実験例に基づく好適な態様としては、(p3)、(p4)、(p13)、及び/又は(p14)に記載のプライマーに関して、品種「あすみ」の塩基配列、若しくは、品種「あすみ」の塩基配列に対して変異が2塩基以下であってプライマー構成塩基の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの塩基配列を含む全体で16塩基以上が品種「あすみ」の塩基配列と一致する塩基配列、又は、これらの相補配列に該当する塩基配列、を含むプライマーを好適に挙げることができる。そして、当該プライマーとしては、下記実験例で示した48種類のカンキツ品種のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った場合において、その全てのカンキツ品種に対して、下記実験例で示されたIND214挿入型配列及びIND214欠失型配列のPCR増幅様式と同様のPCR増幅様式を示す塩基配列を含むプライマーを、本発明のカンキツ識別技術に用いることが可能なプライマーとして好適に採用することができる。
なお、ここでの「実験例の(中略)PCR増幅様式と同様」という表現は、下記実験例の48種類のカンキツ品種に対するPCR増幅の有無による検出様式が同じかどうかを指し、プライマー設計位置等の相違による増幅断片の塩基長の相違は許容される内容として記載されている。
また、同様に、(p3)、(p4)、(p13)、及び/又は(p14)に記載のプライマーとしては、クレメンティンの塩基配列、若しくは、クレメンティンの塩基配列に対して変異が2塩基以下であってプライマー構成塩基の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの塩基配列を含む全体で16塩基以上がクレメンティンの塩基配列と一致する塩基配列、又は、これらの相補配列に該当する塩基配列、を含むプライマーに関しても、上記と同様の条件にてプライマーを設計することが可能である。
インデルマーカー欠失型配列検出工程の態様
本発明に係る識別対象である品種「あすみ」は、Cp0419及びIND214の両方のインデルマーカーのアレル型が「ヘテロ型」(相同染色体に挿入型配列と欠失型配列を有するヘテロ型)を示すカンキツ品種であるところ、本発明者は、当該品種「あすみ」の識別はCp0419及びIND214の両方の遺伝子座から「インデルマーカーの欠失型配列のみ」を検出することによって可能となることが見出した。この点、本発明のカンキツ識別技術では、当該欠失型配列検出工程を必須工程として採用することが可能となる。
当該欠失型配列検出工程をPCR法にて行う場合、上記したインデルマーカーの遺伝子座を挟むプライマーセット又は欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセットを用いて当該工程を行うことが可能となる。特には、増幅断片として「欠失型配列のみ」の検出が可能となる欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセットを用いて、当該工程を行うことが好適である。
また、本発明に係るカンキツ品種識別技術では、インデルマーカー欠失型配列検出工程をインデルマーカーのアレル多型検出工程として行うことも可能である。
即ち、本発明に係るカンキツ品種識別技術では、(工程1)Cp0419の欠失型配列を検出する工程を、Cp0419の挿入型配列と欠失型配列のヘテロ型のアレル多型を検出することを含む工程として行うことが可能となる。また、本発明に係るカンキツ品種識別技術では、(工程2)IND214の欠失型配列を検出する工程を、IND214の挿入型配列と欠失型配列のヘテロ型のアレル多型を検出することを含む工程として行うことが可能となる。
当該欠失型配列検出工程をアレル多型検出工程としてPCR法で行う場合、上記したインデルマーカーの遺伝子座を挟むプライマーセットを用いて、当該工程を行うことが可能となる。
本発明に係るカンキツ識別技術では、(工程1)と(工程2)の順番には特に制限はなく、(工程1)を行った後に(工程2)を行う態様、(工程2)を行った後に(工程1)を行う態様が可能である。また、上記の(工程1)及び(工程2)を別々に行う態様に加えて、(工程1)と(工程2)を同時に行う態様も可能である。
また、(工程1)と(工程2)の検出工程を、同一の試料溶液を用いて行う態様も可能である。例えば、PCR法を利用して行う場合、(工程1)と(工程2)を同一のPCR反応液を用いて行う態様が可能である。当該態様としては、上記したCp0419欠失型配列を検出するためのプライマーセットとIND214欠失型配列を検出するためのプライマーセットを同一溶液中に含むPCR反応液を調製し、1回のPCR反応にてCp0419欠失型配列の増幅とIND214欠失型配列の増幅を同時に行う態様(マルチプレックス法)を挙げることができる。
当該欠失型配列検出工程をマルチプレックスPCR法で行う場合、Cp0419欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット、及び、IND214欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット、の4種類のプライマーを含んだ状態のPCR反応液を調製して、当該工程を行うことが好適である。
また、当該マルチプレックス法にてPCR反応を行う場合、Cp0419欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセットでのPCR増幅断片の塩基長と、IND214欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセットでのPCR増幅断片の塩基長とが、電気泳動でお互いに識別可能な塩基長で且つ近似した長さの塩基長となるようにプライマー設計をすることが好適である。また、これら4種類のプライマーのTm値(アニーリング温度)やGC含量等が近似した値になるようにプライマー設計することが好適である。
当該態様を採用した場合、マルチプレックス法による1検体のPCR反応液を電気泳動するのみで、Cp0419欠失型配列とIND214欠失型配列の増幅の有無を1度に判断することが可能となる。
[判定工程]
本発明に係るカンキツ識別技術は、前記のインデルマーカー欠失型配列検出工程を行った後、その検出結果から識別対象のカンキツ植物が品種「あすみ」又はその後代品種であるかを判定する工程を含む。
本発明のカンキツ識別技術では、上記した(工程1)及び(工程2)に記載のインデルマーカー欠失型配列検出工程を行った後、その欠失型配列の検出結果に基づいて(工程3)に係る判定工程を行う。
ここで、インデルマーカーであるCp0419及びIND214に関して、カンキツ属に属する多くのカンキツ品種では、これらの遺伝子座に挿入配列を有する挿入型配列をホモ型で有するアレル型(挿入型配列/挿入型配列)を示す。一方、後述する実験例の結果が示すように、一部のカンキツ品種では、これらの遺伝子座のいずれか1つに関して、挿入配列が欠失した欠失型配列を相同染色体の1本に有するヘテロ型のアレル型(挿入型配列/欠失型配列)を示すカンキツ品種が数種存在する。
それに対して、Cp0419及びIND214の両方のアレル型がヘテロ型(挿入型配列/欠失型配列)を示すカンキツ品種は品種「あすみ」のみと認められ、少なくとも本出願時における主要な他のカンキツ品種では、同様のアレル多型を示す品種は発見されていない。
この点、Cp0419及びIND214の欠失型配列は、ヘテロ型のアレル多型を示すカンキツ品種のゲノムDNAにしか存在しない配列である。そのため、本発明のカンキツ識別技術では、Cp0419欠失型配列及びIND214欠失型配列の両方が検出された場合に、対象試料であるカンキツ植物の品種が品種「あすみ」又はその後代品種であると判定することが可能となる。
即ち、本発明に係るカンキツ識別技術は、(工程3):前記(工程1)及び(工程2)において、Cp0419欠失型配列及びIND214欠失型配列の両方が検出された場合に、対象試料であるカンキツ植物の品種が品種「あすみ」である、又は、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種である、と判定する工程を含む、カンキツ品種の識別方法に関する。
また、本発明に係るカンキツ識別技術では、前記(工程1)及び/又は(工程2)をインデルマーカーのアレル多型検出工程として行った場合、(工程3)の判定工程を、上記ヘテロ型のアレル多型(挿入型配列/欠失型配列)が検出された場合に、対象試料であるカンキツ植物の品種が品種「あすみ」又はその後代品種であると判定することも可能となる。
即ち、本発明に係るカンキツ識別技術では、(工程3)の判定工程を、Cp0419に関する上記ヘテロ型多型及びIND214に関する上記ヘテロ型多型の両方が検出された場合に、対象試料であるカンキツ植物の品種が品種「あすみ」である又はCp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種である、と判定する工程として行うことも可能となる。
[その他の工程等]
本発明に係るカンキツ識別技術では、上記(工程1)、(工程2)、及び(工程3)以外の他の工程を含む態様とすることも可能である。例えば、(工程1)及び(工程2)の前に他の工程を含む態様とすることが可能であり、(工程3)の後に他の工程を含む態様とすることが可能である。また、(工程1)、(工程2)、及び(工程3)の間に他の工程を含む態様とすることも可能である。
他の工程としては、公知及び/又は新規の技術的事項を含む工程を含み特に制限はないが、例えば、対象植物の植物体の外形的又は生理的な表現型(例えば、地上部の形態、生育特性、果実の形態や品質、代謝物質や分泌物質の特性、等)に基づく対象試料植物の選別工程、他のDNA識別技術(SNP、SSR、CAPS、RFLP等の解析)に基づく品種識別工程、等を併せて行う態様も可能である。
2.カンキツ品種識別技術に関する発明及び応用発明
本出願に関する発明としては、上記段落1.に記載されたカンキツ品種の識別技術に関する発明、当該識別技術を用いるための技術的特徴に関する発明、並びに、当該識別技術を利用した発明、等に関する発明が含まれる。
[各種方法に関する発明]
本発明に関するカンキツ識別技術としては、カンキツ品種の識別方法に関する発明が含まれる。詳しくは、本発明には、品種「あすみ」又はCp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種を他のカンキツ品種から識別する方法に関する発明が含まれる。
また、本発明に係るカンキツ識別技術を利用した発明としては、上記したカンキツ品種「あすみ」又はその後代品種を識別する方法を使用することを含む、各種方法に関する発明が含まれる。例えば、品種「あすみ」又はその後代品種の植物体を栽培する方法、品種「あすみ」又はその後代品種の果実を生産する方法、又は、品種「あすみ」又はその後代品種の果実の加工品を生産する方法、等に関する発明が含まれる。
当該植物体の栽培方法、果実の生産方法、果実の加工品の生産方法としては、本発明に係るカンキツ品種識別方法を用いること以外は、常法や公知の手法にて行うことが可能である。また、これらの各種方法の発明に関しては、各種工程、条件、手法、手段等に関しては、上記段落の記載を参照又は引用することが可能である。また、本発明の特徴部分以外の各種工程、条件、手法、手段等に関しては、常法や公知の手法等を採用することが可能である。
また、カンキツ果実の加工品の生産方法において、生産物に該当するカンキツ果実加工品としては、上記段落の加工品に関する記載を参照又は引用することも可能であるが、例えば、果肉を含むストレートジュース、果肉をシロップ漬けにした缶詰、ドライフルーツ、等の果実加工品を挙げることができる。
[カンキツ品種識別キットに関する発明]
本発明としては、上記したカンキツ識別技術を用いるための技術的特徴に関する発明として、品種「あすみ」又はその後代品種を識別するためのカンキツ品種識別キットに関する発明が含まれる。
即ち、本発明は下記のカンキツ品種識別キットに関する発明を含まれる:
下記(A)に記載のプライマーセット及び下記(B)に記載のプライマーセットを含む、カンキツ品種「あすみ」又はCp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種、を識別するためのカンキツ品種識別キット:
(A)下記(a-1)又は(a-2)に記載のCp0419欠失型配列を検出可能なプライマーセット:
(a-1)前記(p1)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー、及び、前記(p2)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー、からなるプライマーセット、
(a-2)前記(p11)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー、及び、前記(p12)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー、からなるプライマーセット、;
(B)下記(b-1)又は(b-2)に記載のIND214欠失型配列を検出可能なプライマーセット:
(b-1)前記(p3)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー、及び、前記(p4)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー、からなるプライマーセット、
(b-2)前記(p13)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー、及び、前記(p14)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー、からなるプライマーセット。
当該カンキツ品種識別キットは、上記した品種「あすみ」又はその後代品種を識別するためのプライマーセットとして、(A)に記載のCp0419欠失型配列を検出するためのプライマーセット、並びに、(B)に記載のIND214欠失型配列を検出するためのプライマーセット、の両方のプライマーセット(計4種類のプライマー)を含むカンキツ品種識別キットに関する。
ここで、(A)に記載のCp0419欠失型配列を検出するためのプライマーセットとしては、(p1)及び(p2)の2種類のプライマーからなるプライマーセット(Cp0419遺伝子座を挟む位置に設計されたプライマーセット)、又は、(p11)及び(p12)の2種類のプライマーからなるプライマーセット(Cp0419欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット)、のいずれかを含めることが可能である。
また、(B)に記載のIND214欠失型配列を検出するためのプライマーセットとしては、(p3)及び(p4)の2種類のプライマーからなるプライマーセット(IND214遺伝子座を挟む位置に設計されたプライマーセット)、又は、(p13)及び(p14)の2種類のプライマーからなるプライマーセット(IND214欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット)、のいずれかを含めることが可能である。
本発明に係るカンキツ品種識別キットの好適態様としては(A)に記載のCp0419欠失型配列を検出するためのプライマーセットとしては、(p11)及び(p12)の2種類のプライマーからなるプライマーセット(Cp0419欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット)を含め、(B)に記載のIND214欠失型配列を検出するためのプライマーセットとしては、(p13)及び(p14)の2種類のプライマーからなるプライマーセット(IND214欠失型配列特異的プライマーを含むプライマーセット)を含めた態様とすることが好適である。
当該態様では、インデルマーカーの「欠失型配列のみ」を増幅可能なプライマーセットを含んで構成されるキットであるため、マルチプレックス法等に好適に用いることが可能となる。
また、本発明に係るカンキツ品種識別キットとしては、上記プライマーセット以外に各種構成物品を含むキットの態様とすることが可能である。例えば、各種試薬、酵素、rbcL遺伝子増幅用プライマーセット等の陽性コントロールとなるプライマーセット、等を含むキットの態様とすることも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
[実験手法]
以下の実験例において行われた試験及び解析等に関して、特に明示のない箇所に関しては、下記の手法や条件にて試験及び解析等を行った。
(1)「DNA抽出及びPCR反応」
カンキツ植物の果実から外果皮を切り出し、乳鉢内で液体窒素を用いて試料を凍結させ、乳棒にて試料の粉砕を行った。得られた粉末化した試料について、DNA抽出キットであるDNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社)を用いて、トータルDNAの抽出を行った。当該手法にて得られたトータルDNAには、ゲノムDNAと葉緑体DNAが含まれる。
上記抽出したトータルDNAを鋳型として、KOD DNA polymerase(Toyobo社)及び下記に記載のプライマーセットを用いて、PCR反応によるDNA断片の増幅を行った。PCR反応は、PCR用サーマルサイクラー(ProFlex PCR System、Thermo Fisher Scientific社)及び96穴プレート又は8連チューブを用いて、下記の条件にて行った。
なお、以下の品種識別試験に関する実験例で用いられたCp0419遺伝子座又はIND214遺伝子座を増幅するためのプライマーは、品種「あすみ」の欠失型配列の塩基配列を基に設計されたプライマーである。これらのうちの最短プライマーは17塩基であった。また、これらのプライマーの一部には、他のカンキツ品種(標準品種クレメンティン)の塩基配列に対して最大2塩基の相違(プライマー構成塩基20塩基のうち、3’端の塩基から上流に11番目の塩基と12番目の塩基での相違)が認められたが、クレメンティン配列との一致率の最も低いプライマーであってもプライマー構成塩基の3’端の塩基より上流に10番目の塩基から当該3’端の塩基までの塩基配列を含めて全体で18塩基の塩基配列は一致するものであった。
これらのプライマーがクレメンティンを含む本実験例2~5で用いた計48種類の全てのカンキツ品種のCp0419遺伝子座又はIND214遺伝子座を含む領域を増幅可能なプライマーであることは、以下の実験例にて確認された(表1~6、図6、図8、図9、図10)。
(PCR反応液)
2×KOD One PCR Master Mix Blue 5μL
プライマー溶液(各4pmol/μL) 1μL
試料DNA(5ng/μL) 1μL
滅菌超純水 3μL
(計 10μL)
(PCR条件)
98℃ 1秒
32サイクル×(98℃10秒 →56℃5秒 →68℃2秒)
68℃ 30秒
4℃ サンプル回収まで
上記PCR反応後の反応液にloading dye(青色素)を加えて2%アガロースゲルにアプライし、1×TAEバッファー中で電気泳動を行った。サイズマーカーである100bpラダーも同時に電気泳動した。
電気泳動後のゲルをEtBr溶液中にて20分間染色し、紫外線照射を行ってサイズに応じて分離されたDNA増幅断片をバンドとして検出した。
[実験例1]『品種「あすみ」を識別可能なインデルマーカーの選抜』
カンキツ属植物のインデルマーカーに関して、品種「あすみ」に特有なアレル型を示すインデルマーカーの探索を行った。本例で検討に用いたインデルマーカーは、カンキツ属植物において遺伝子座自体は公知のインデルマーカーであるところ(非特許文献3、4)、カンキツ属植物の各品種が有するゲノムDNAが有するアレル型は知られていない。
(1)「品種「あすみ」を識別可能なインデルマーカー多型の探索」
カンキツ属植物においてインデルマーカー185種類に関して、インデルマーカーの遺伝子座を挟む位置でPCRプライマーを設定し、品種「あすみ」から抽出したトータルDNAに対してPCR反応を行って、それぞれのプライマーセットを用いてゲノムDNAから増幅されたPCR増幅断片の塩基長を電気泳動により検出した。DNA抽出、PCR反応、DNA検出等の手法及び条件は、上記の記載に準じて行った。
その結果、上記調査した185種類のインデルマーカーのうち、Cp0419に関するプライマーセットを用いてPCR反応を行ったところ、塩基長の異なる2種類のPCR増幅断片が得られることが示された。同様に、IND214に関するプライマーセットを用いてPCR反応を行った場合も、塩基長の異なる2種類のPCR増幅断片が得られることが示された。
当該結果から、品種「あすみ」では、Cp0419のインデルマーカーの遺伝子座に関して、当該遺伝子座に挿入配列を有する配列(Cp0419挿入型配列)と挿入配列を有さない配列(Cp0419欠失型配列)を相同染色体にヘテロで有するカンキツ品種であることが示された。同様に、品種「あすみ」は、IND214のインデルマーカーの遺伝子座に関しても、当該遺伝子座に挿入配列を有する配列(IND214挿入型配列)と挿入配列を有さない配列(IND214欠失型配列)をヘテロで有するカンキツ品種であることが示された。
(2)「Cp0419及びIND214の塩基配列情報」
カンキツ植物のインデルマーカーCp0419及びIND214に関して、これらの塩基配列に関する情報を以下に示す。
(Cp0419)
インデルマーカーCp0419は、ゲノム情報が解読されているカンキツの標準種の1つであるクレメンティンゲノムの第5染色体上(https://phytozome.jgi.doe.gov/pz/portal.html)、エンドプロテアーゼClp遺伝子(配列番号1に示す塩基配列内に存在する遺伝子)の第1イントロンに存在するインデルマーカーである(図2、図3)。
ここで、クレメンティンのCp0419挿入型配列を含む塩基配列は、配列番号1に記載の塩基配列として示すことができる。クレメンティンのエンドプロテアーゼClp遺伝子に関して、第1エクソンの最上流塩基から最終エクソンの最下流塩基までの塩基配列で示される領域は、配列番号1に示される塩基配列において、第1590番目から第2825番目の塩基にて示される塩基配列に該当する領域である。また、当該第1イントロンは、配列番号1に示される塩基配列における第2000番目から第2346番目の塩基にて示される塩基配列で示される領域である。また、5’UTRは、配列番号1に示される塩基配列における第1501番目の塩基から第1589番目の塩基までの塩基配列に該当する。
クレメンティンの当該Cp0419挿入型配列では、配列番号1に示されるCp0419遺伝子座の最上流塩基である第2117番目の塩基「G」とCp0419遺伝子座の最下流塩基である第2287番目の塩基「T」の間に、169bpの挿入配列(配列番号1の第2118番目の塩基から第2286番目の塩基までの領域)が存在する。
クレメンティンは、当該挿入配列が存在するタイプの配列(Cp0419挿入型配列)と当該挿入配列が存在しないタイプの配列(Cp0419欠失型配列)とを、相同染色体にヘテロで有するアレル型を示す。ここで、Cp0419欠失型のエンドプロテアーゼClp遺伝子の第1イントロンでは、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」の間に挟まれた領域(上記の挿入配列)が欠失した塩基配列となる(図3)。
本例の選抜試験の結果では、品種「あすみ」は、クレメンティンと同様にCp0419挿入型配列とCp0419欠失型配列とを相同染色体にヘテロで有するアレル型を示した。品種「あすみ」から単離されたCp0419欠失型配列を含む塩基配列は、配列番号2に記載の塩基配列として示すことができる。
(IND214)
インデルマーカーIND214は、ゲノム情報が解読されているカンキツの標準種の1つであるクレメンティンゲノムの第1染色体上(https://phytozome.jgi.doe.gov/pz/portal.html)、HIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子(配列番号7に示す塩基配列内に存在する遺伝子)の上流領域に存在するインデルマーカーである(図2、図4)。
ここで、クレメンティンのIND214挿入型配列を含む塩基配列は、配列番号7に記載の塩基配列として示すことができる。クレメンティンのHIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子に関して、第1エクソンの最上流塩基から最終エクソンの最下流塩基までの塩基配列で示される領域は、配列番号7に示される塩基配列において、第3186番目から第11658番目の塩基にて示される塩基配列に該当する領域である。また、5’UTRは、配列番号7に示される塩基配列における第3001番目の塩基から第3185番目の塩基までの塩基配列に該当し、第3001番目の塩基より上流側の領域(第1番目の塩基から第3000番目の塩基までの塩基配列で示される領域)は、当該遺伝子の上流領域に該当する。IND214遺伝子座の最下流塩基は、当該遺伝子の5’UTRの最上流塩基から上流に288番目の塩基に該当するため、IND214遺伝子座は当該遺伝子の上流調節領域にあるインデルマーカーと認められる。
クレメンティンの当該IND214挿入型配列では、配列番号7に示されるIND214遺伝子座の最上流塩基である第2503番目の塩基「T」とIND214遺伝子座の最下流塩基である第2713番目の塩基「T」の間に、209bpの挿入配列(配列番号7の第2504番目の塩基から第2712番目の塩基までの領域)が存在する。クレメンティンは、当該挿入配列が存在するタイプの配列(Cp0419挿入型配列)を相同染色体にホモで有するアレル型を示す。
本例での選抜試験の結果では、品種「あすみ」は、クレメンティンとは異なり当該挿入配列が存在するタイプの配列(IND214挿入型配列)と当該挿入配列が存在しないタイプの配列(IND214欠失型配列)とを、相同染色体にヘテロで有するアレル型を示した。ここで、IND214欠失型でのHIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子の上流領域では、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」の間に挟まれた領域(上記の挿入配列)が欠失した塩基配列となる(図4)。品種「あすみ」から単離されたIND214欠失型配列を含む塩基配列は、配列番号8に記載の塩基配列として示すことができる。
[実験例2]『カンキツ品種識別試験』
上記試験により選抜した2種類のインデルマーカーに関するアレル多型分析を行うことで、主要なカンキツ品種から品種「あすみ」の識別が可能かを検討した。
(1)「Cp0419及びIND214に関するアレル多型分析」
品種「あすみ」を含むカンキツ品種24種類(試料1~24)からトータルDNAを抽出し、Cp0419の遺伝子座を挟む位置で設計したオリゴヌクレオチドプライマーのプライマーセット(配列番号3、4)を用いてPCR反応を行い、電気泳動を行って増幅されたDNA断片のサイズを検出した。同様に、IND214の遺伝子座を挟む位置で設計したオリゴヌクレオチドプライマーのプライマーセット(配列番号9、10)を用いてPCR反応を行い、電気泳動を行って増幅されたDNA断片のサイズを検出した。DNA抽出、PCR反応、DNA検出等の手法及び条件は、上記の記載に準じて行った。
本例におけるCp0419及びIND214のプライマー設計位置としては、図5に示すようにインデルマーカーの遺伝子座を挟む位置に設計した(図3~5)。
詳しくは、本例におけるCp0419の増幅プライマーセットのうちの上流側プライマーは、配列番号3で示す塩基配列からなる21塩基のオリゴヌクレオチドプライマー(Cp0419検出用共通領域プライマー1)である。当該プライマーはフォワードプライマーであり、品種「あすみ」のCp0419を含むゲノム領域を示す配列番号2の第1番目の塩基から第21番目の塩基までの塩基配列に相当するプライマーである。また、当該プライマーとプライマー対を形成する下流側プライマーは、配列番号4で示す塩基配列からなる17塩基のオリゴヌクレオチドプライマー(Cp0419検出用共通領域プライマー2)である。当該プライマーはリバースプライマーであり、品種「あすみ」のCp0419を含むゲノム領域を示す配列番号2の第583番目の塩基から第599番目の塩基までの塩基配列の相補配列に相当するプライマーである。
ここで、当該プライマーセットを用いたPCR増幅を行った場合、インデルマーカー挿入型配列がゲノムに存在する場合、挿入配列を含む長鎖DNA断片(長鎖DNA断片に相当する768bp又はこれと同程度の塩基長のバンド)が増幅することが予想される。一方、インデルマーカー欠失型配列がゲノムに存在する場合、挿入配列に相当する長さが欠失した短鎖DNA断片(短鎖DNA断片に相当する599bp又はこれと同程度の塩基長のバンド)が増幅することが予想される。
当該プライマーセットを用いてクレメンティンから抽出したトータルDNAに対してPCR増幅を行ったところ、長鎖DNA断片に相当するバンドと短鎖DNA断片に相当するバンドの2本バンドが増幅することが確認された。
同様に、IND214の増幅プライマーセットのうちの上流側プライマーは、配列番号9で示す塩基配列からなる22塩基のオリゴヌクレオチドプライマー(IND214検出用共通領域プライマー1)である。当該プライマーはフォワードプライマーであり、品種「あすみ」のIND214を含むゲノム領域を示す配列番号8の第1番目の塩基から第22番目の塩基までの塩基配列に相当するプライマーである。また、当該プライマーとプライマー対を形成する下流側プライマーは、配列番号10で示す塩基配列からなる20塩基のオリゴヌクレオチドプライマー(IND214検出用共通領域プライマー2)である。当該プライマーはリバースプライマーであり、品種「あすみ」のIND214を含むゲノム領域を示す配列番号8の第277番目の塩基から第296番目の塩基までの塩基配列の相補配列に相当するプライマーである。
ここで、当該プライマーセットを用いたPCR増幅を行った場合、インデルマーカー挿入型配列がゲノムに存在する場合、挿入配列を含む長鎖DNA断片(長鎖DNA断片に相当する505bp又はこれと同程度の塩基長のバンド)が増幅することが予想される。一方、インデルマーカー欠失型配列がゲノムに存在する場合、挿入配列に相当する長さが欠失した短鎖DNA断片(短鎖DNA断片に相当する296bp又はこれと同程度の塩基長のバンド)が増幅することが予想される。
当該プライマーセットを用いてクレメンティンから抽出したトータルDNAに対してPCR増幅を行ったところ、長鎖DNA断片に相当する1本バンドのみが増幅し、短鎖DNA断片に相当するバンドの増幅は確認されなかった。
Cp0419に関するPCR増幅の結果を図6Aに、IND214に関するPCR増幅の結果を図6Bに示した。
その結果、Cp0419の解析結果に関して、調査した24種類のカンキツ品種のうちの18種類のカンキツ品種では、Cp0419挿入型配列のPCR増幅断片のみ(長鎖DNA断片に相当する1本バンド)が増幅することが示された。即ち、これらの18種類のカンキツ品種では、Cp0419挿入型配列を相同染色体にホモで有するアレル型であることが示された。
一方、品種「あすみ」(試料12)を含む6種類のカンキツ品種に関しては、Cp0419挿入型配列及びCp0419欠失型配列の両方のPCR増幅断片(長鎖DNA断片に相当するバンド及び短鎖DNA断片に相当するバンドの2本バンド)が増幅することが示された。即ち、これらの6種類のカンキツ品種に関しては、Cp0419挿入型配列及びCp0419欠失型配列を相同染色体にヘテロで有するアレル型であることが示された。
同様に、IND214の解析結果に関して、調査した24種類のカンキツ品種のうちの16種類のカンキツ品種では、IND214挿入型配列のPCR増幅断片のみ(長鎖DNA断片に相当する1本バンド)が増幅することが示された。即ち、これらの16種類のカンキツ品種では、IND214挿入型配列を相同染色体にホモで有するアレル型であることが示された。
一方、品種「あすみ」(試料12)を含む8種類のカンキツ品種に関しては、IND214挿入型配列及びIND214欠失型配列の両方のPCR増幅断片(長鎖DNA断片に相当するバンド及び短鎖DNA断片に相当するバンドの2本バンド)が増幅することが示された。即ち、これらの8種類のカンキツ品種に関しては、IND214挿入型配列及びIND214欠失型配列を相同染色体にヘテロで有するアレル型であることが示された。
(2)「品種「あすみ」の識別」
上記のCp0419及びIND214に関する多型解析の結果を精査したところ、調査した24種類のカンキツ品種(試料1~24)及び標準品種であるクレメンティンのうち、Cp0419及びIND214の両方のインデルマーカーのアレル型がヘテロ型を示したカンキツ品種は、品種「あすみ」(試料12)のみであることが示された(表1、表2、図6A、図6B)。また、調査した他のカンキツ品種からは、品種「あすみ」と同様のアレル多型を示す品種は発見されなかった。
ここで、本例にて調査した24種類のカンキツ品種(試料1~24)及びクレメンティンの計25種類のカンキツ品種は、本願出願時において日本国内に流通するカンキツ果実流通量の94%を占めるカンキツ品種である。この点、ISO13495国際基準に定められる品種識別技術では、流通量90%以上を識別可能な技術を基準としているところ、本例の調査結果は、当該技術が同国際基準を充足する技術であることを示す結果であると認められた。
以上の結果及び知見から、Cp0419及びIND214に関する多型解析を行って両方のインデルマーカーのアレル型が「ヘテロ型」である場合、ISO13495国際基準を充足する精度にて、識別対象のカンキツ品種が品種「あすみ」に該当すると判断できることが示された。
Figure 2022025729000002
Figure 2022025729000003
[実験例3]『インデルマーカー欠失型配列の検出を利用した品種識別技術』
上記2種類のインデルマーカーに関して、インデルマーカーの欠失型配列のみを増幅可能なプライマーセットを設計して品種「あすみ」の識別試験を行った。
(1)「Cp0419欠失型配列の検出」
Cp0419の遺伝子座に関して、Cp0419欠失型が存在する場合にのみPCR増幅が生じるように、挿入配列に分断された共通配列を繋いだ塩基配列からなるCp0419欠失型配列特異的プライマーを設計した(図3、図7)。
当該Cp0419欠失型配列特異的プライマーは、配列番号6で示す塩基配列からなる26塩基のオリゴヌクレオチドプライマーである。当該プライマーはリバースプライマーであり、品種「あすみ」のCp0419欠失型配列を含むゲノム領域を示す配列番号2の第348番目の塩基から第373番目の塩基までの塩基配列の相補配列に相当するプライマーである。当該プライマーを構成する塩基のうち、3’端の塩基から上流に7番目と8番目の2塩基は、Cp0419欠失型配列の遺伝子座を示す2塩基の相補2塩基に該当する。
また、当該プライマーとプライマー対を形成する下流側プライマーは、配列番号5で示す塩基配列からなる26塩基のオリゴヌクレオチドプライマー(Cp0419検出用共通領域プライマー3)である。当該プライマーはフォワードプライマーであり、品種「あすみ」のCp0419を含むゲノム領域を示す配列番号2の第3番目の塩基から第28番目の塩基までの塩基配列に相当するプライマーである。
実験例2にて調製したカンキツ品種24種類のトータルDNAを鋳型として上記プライマーセットを用いたPCR反応を行い、電気泳動を行って増幅されたDNA断片を検出した。DNA抽出、PCR反応、DNA検出等の手法及び条件は、上記の記載に準じて行った。結果を図8Aに示した。
その結果、実験例2にてCp0419挿入型とCp0419欠失型のヘテロ型を示した品種「あすみ」を含む8種類のカンキツ品種から、PCR増幅を示すDNA断片がシングルバンドとして検出されることが確認された(図8A)。品種「あすみ」で確認された当該PCR増幅バンドの断片長は371bpであることから、上記設計したプライマーセットで予想されるCp0419欠失型配列の塩基長に相当するDNA断片であることが確認された。
一方、実験例2にてCp0419挿入型のホモ型を示した16種類のカンキツ品種からは、PCR増幅断片を示すバンドは何も検出されなかった。また、本例にて調査した24種類のカンキツ品種のいずれにおいても、Cp0419挿入型に対応するPCR増幅断片は検出されなかった。
(2)「IND214欠失型配列の検出」
IND214の遺伝子座に関して、IND214欠失型が存在する場合にのみPCR増幅が生じるように、挿入配列に分断された共通配列を繋いだ塩基配列からなるIND214欠失型配列特異的プライマーを設計した(図4、図7)。
当該IND214欠失型配列特異的プライマーは、配列番号11で示す塩基配列からなる18塩基のオリゴヌクレオチドプライマーである。当該プライマーはフォワードプライマーであり、品種「あすみ」のIND214欠失型配列を含むゲノム領域を示す配列番号8の第49番目の塩基から第66番目の塩基までの塩基配列に相当するプライマーである。当該プライマーを構成する塩基のうち、3’端の塩基から上流に7番目と8番目の2塩基は、IND214欠失型配列の遺伝子座を示す2塩基に該当する。
また、当該プライマーとプライマー対を形成する下流側プライマーは、配列番号12で示す塩基配列からなる27塩基のオリゴヌクレオチドプライマー(IND214検出用共通領域プライマー3)である。当該プライマーはリバースプライマーであり、品種「あすみ」のCp0419を含むゲノム領域を示す配列番号8の第268番目の塩基から第294番目の塩基までの塩基配列の相補配列に相当するプライマーである。
実験例2にて調製したカンキツ品種24種類のトータルDNAを鋳型として上記プライマーセットを用いたPCR反応を行い、電気泳動を行って増幅されたDNA断片を検出した。DNA抽出、PCR反応、DNA検出等の手法及び条件は、上記の記載に準じて行った。結果を図8Bに示した。
その結果、実験例2にてIND214挿入型とIND214欠失型のヘテロ型を示した品種「あすみ」を含む8種類のカンキツ品種から、PCR増幅を示すDNA断片がシングルバンドとして検出されることが確認された(図8B)。品種「あすみ」で確認された当該PCR増幅バンドの断片長は246bpであることから、上記設計したプライマーセットで予想されるIND214欠失型配列の塩基長に相当するDNA断片であることが確認された。
一方、実験例2にてIND214挿入型のホモ型を示した16種類のカンキツ品種からは、PCR増幅断片を示すバンドは何も検出されなかった。また、本例にて調査した24種類のカンキツ品種のいずれにおいても、IND214挿入型に対応するPCR増幅断片は検出されなかった。
(3)「品種「あすみ」の識別」
Cp0419及びIND214のPCR増幅結果(図8A、図8B)を精査したところ、調査した24種類のカンキツ品種のうち、Cp0419欠失型配列とIND214欠失型配列の両方のPCR増幅が検出されたものは、品種「あすみ」のみであることが示された。当該結果は、実験例2の多型解析の結果と一致する結果であった。
なお、本例にて調査した24種類のカンキツ品種からのトータルDNAに対して、ポジティブコントロールとしてrbcL遺伝子のPCR増幅を行うためのプライマーセット(配列番号13、14)を用いてPCR反応を行ったところ、全ての試料からDNA増幅断片が検出され、DNA試料としては問題ないことが確認された。
以上の結果から、識別対象のカンキツ品種において、Cp0419及びIND214の両方のインデルマーカーのいずれからも欠失型配列が検出された場合、ISO13495国際基準を充足する精度にて、識別対象のカンキツ品種が品種「あすみ」であると判定できることが示された。即ち、Cp0419及びIND214の両方のインデルマーカーから「インデルマーカーの欠失型配列」のみを検出することによって、品種「あすみ」の識別が可能であることが示された。
Figure 2022025729000004
Figure 2022025729000005
[実験例4]『マルチプレックスPCR法による品種識別技術』
実験例3で設計したプライマーセットを用いて、マルチプレックスPCR法による品種識別が可能かを検証した。
実験例3にて設計したCp0419欠失型配列特異的プライマー(配列番号6:リバースプライマー)及びCp0419検出用共通領域プライマー3(配列番号5:フォワードプライマー)を各2pmol/μL並びにIND214欠失型配列特異的プライマー(配列番号11:フォワードプライマー)及びIND214検出用共通領域プライマー3(配列番号12:リバースプライマー)を各4pmol/μL含む1/10倍希釈TE溶液を調製した。
当該プライマーミックス溶液を用いて、実験例2にて調製したカンキツ品種24種類のトータルDNAを鋳型として上記プライマーセットを用いたPCR反応を行い、電気泳動を行って増幅されたDNA断片を検出した。DNA抽出、PCR反応、DNA検出等の手法及び条件は、上記の記載に準じて行った。結果を図9に示した。
その結果、調査した24種類のカンキツ品種のうち、品種「あすみ」からの試料(試料12)でのみ、Cp0419欠失型配列とIND214欠失型配列の両方のPCR増幅に該当する2本のDNA増幅バンドが検出された(図9)。当該結果は実験例3でのインデルマーカー欠失型配列の個別検出の結果と一致する結果であった。
当該結果から、Cp0419欠失型配列をシングルバンドとして検出可能なプライマーセット、及び、IND214欠失型配列をシングルバンドとして検出可能なプライマーセット、を含むマルチプレックスでのPCR反応を行うことによって、Cp0419欠失型配列とIND214欠失型配列とを1回のPCR反応で同時に増幅して検出可能なことが示された。
以上の結果から、マルチプレックスPCR反応を行うことによって、品種「あすみ」の品種識別が更に容易に実行可能となることが示された。
[実験例5]『他のカンキツ品種に関するCp0419及びIND214アレル型の確認』
上記実験例2にてアレル型が判明したカンキツ品種以外のカンキツ品種に関して、Cp0419及びIND214のアレル型にて品種「あすみ」との識別が可能かを検証した。
日本国内での流通が見られる品種を含む下記表に示した23種類のカンキツ品種(試料25~47)に関して、Cp0419及びIND214のアレル多型分析を行った。
下記23種類のカンキツ品種の植物体からトータルDNAを抽出し、実験例2で用いたCp0419の遺伝子座を挟む位置で設計したプライマーセット(配列番号3、4)を用いてPCR反応を行い、電気泳動を行って増幅されたDNA断片のサイズを検出した。同様に、IND214の遺伝子座を挟む位置で設計したプライマーセット(配列番号9、10)を用いてPCR反応を行い、電気泳動を行って増幅されたDNA断片のサイズを検出した。DNA抽出、PCR反応、DNA検出等の手法及び条件は、上記の記載に準じて行った。結果を図10に示した。
その結果、Cp0419の解析結果に関して、調査した23種類のカンキツ品種のうちの21種類のカンキツ品種では、Cp0419の長鎖DNA断片に相当する1本バンドが増幅し、挿入配列ホモ型のアレル型を示した。一方、2種類のカンキツ品種では、Cp0419の長鎖DNA断片に相当するバンド及び短鎖DNA断片に相当するバンドの2本バンドが増幅し、挿入型配列/欠失型配列のヘテロ型のアレル多型を示した。
また、IND214の解析結果に関して、調査した23種類のカンキツ品種のうちの19種類のカンキツ品種では、IND214の長鎖DNA断片に相当する1本バンドが増幅し、挿入配列ホモ型のアレル型を示した。一方、4種類のカンキツ品種では、IND214の長鎖DNA断片に相当するバンド及び短鎖DNA断片に相当するバンドの2本バンドが増幅し、挿入型配列/欠失型配列のヘテロ型のアレル多型を示した。
上記のCp0419及びIND214に関する多型解析の結果を精査したところ、Cp0419及びIND214の両方のインデルマーカーのアレル型がヘテロ型を示したカンキツ品種は、本例で調査した23種類のカンキツ品種(試料25~47)には存在しないことが示された。即ち、本例で調査した23種類のカンキツ品種の中に、Cp0419及びIND214のアレル型に関して、品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種が存在しないことが示された。
ここで、上記実験例2にてアレル型が判明した25種類のカンキツ品種(標準品種+試料1~24)に、本例にて調査した23種類のカンキツ品種(試料25~47)を加えた計48種類のカンキツ品種は、本願出願時において日本国内に流通するカンキツ果実流通量の98%を占めるカンキツ品種である。この点、本例の調査結果は、当該技術が極めて高い精度で品種「あすみ」の識別が可能であることを裏付ける結果を示した。
Figure 2022025729000006
Figure 2022025729000007
海外に流出したカンキツ品種「あすみ」の農作物や加工品が日本に向けて輸出された場合、税関における水際差し止めを請求するためには、侵害疑義品であるという証拠を提出する必要がある。本発明に基づくカンキツ品種「あすみ」の識別技術は、検査を行う公的機関や民間検査会社等での実施が想定される。
また、カンキツ栽培、種苗流通、果実流通、果実加工等を行う事業者においても、種子、苗木、果実、加工品等に対して、品種「あすみ」の識別を精度良く行うために利用されることが期待される。
1. インデルマーカー挿入型配列
11. Cp0419挿入型配列及びその周辺領域
21. IND214挿入型配列及びその周辺領域
2. インデルマーカー欠失型配列
12. Cp0419欠失型配列及びその周辺領域
22. IND214欠失型配列及びその周辺領域
41. エンドプロテアーゼClp遺伝子
51. エンドプロテアーゼClp遺伝子の第1イントロン領域
42. HIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子
52. HIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子の上流領域
3. インデルマーカー遺伝子座(挿入型の場合は挿入配列を含む領域)
31. インデルマーカー遺伝子座の最上流塩基
32. インデルマーカー遺伝子座の最下流塩基
33. 挿入配列
301. Cp0419遺伝子座
302. IND214遺伝子座
61. インデルマーカー近傍の上流側共通配列
62. インデルマーカー近傍の下流側共通配列
71. インデルマーカー検出用共通領域プライマー
72. インデルマーカー検出用共通領域プライマー
73. インデルマーカー欠失型配列特異的プライマー

Claims (5)

  1. 下記(1)、(2)、及び(3)に記載の工程を含む、カンキツ品種の識別方法:
    (1)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーCp0419の欠失型配列を検出する工程、
    (2)識別対象であるカンキツ植物のゲノムDNAから、インデルマーカーIND214の欠失型配列を検出する工程、
    (3)前記(1)及び(2)に記載の工程においてCp0419欠失型配列及びIND214欠失型配列の両方が検出された場合に、対象試料であるカンキツ植物の品種が品種「あすみ」である、又は、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種である、と判定する工程、

    前記(1)に記載のカンキツ植物ゲノムのインデルマーカーCp0419に関して、
    (1a)カンキツ標準品種であるクレメンティンのゲノムで示した場合、第5染色体上のエンドプロテアーゼClp遺伝子の第1イントロン内に存在するインデルマーカーの遺伝子座であって、当該クレメンティンのCp0419挿入型配列を含む配列番号1に記載の塩基配列で示した場合、第2117番目の塩基「G」がCp0419遺伝子座の最上流塩基を示し、第2287番目の塩基「T」がCp0419遺伝子座の最下流塩基を示し、第2118番目の塩基から第2286番目の塩基までの塩基配列が挿入配列を示し、
    (1b)対象試料であるカンキツ植物ゲノムのCp0419遺伝子座に関して、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」の間に上記に対応する挿入配列が存在する塩基配列の場合にはCp0419挿入型配列を示し、Cp0419遺伝子座の最上流塩基「G」と最下流塩基「T」の間に挿入配列が存在しない塩基配列の場合にはCp0419欠失型配列を示す、

    前記(2)に記載のカンキツ植物ゲノムのインデルマーカーIND214に関して、
    (2a)カンキツ標準品種であるクレメンティンのゲノムで示した場合、第1染色体上のHIV-1 Vpr結合タンパク質遺伝子の上流領域に存在するインデルマーカーの遺伝子座であって、当該クレメンティンのIND214挿入型配列を含む配列番号7に記載の塩基配列で示した場合、第2503番目の塩基「T」がIND214遺伝子座の最上流塩基を示し、第2713番目の塩基「T」がIND214遺伝子座の最下流塩基を示し、第2504番目の塩基から第2712番目の塩基までの塩基配列が挿入配列を示し、
    (2b)対象試料であるカンキツ植物ゲノムのIND214遺伝子座に関して、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」の間に上記に対応する挿入配列が存在する塩基配列の場合にはIND214挿入型配列を示し、IND214遺伝子座の最上流塩基「T」と最下流塩基「T」の間に挿入配列が存在しない塩基配列の場合にはIND214欠失型配列を示す。
  2. 前記(1)に記載の工程が、Cp0419の挿入型配列と欠失型配列のヘテロ型のアレル多型を検出することを含む工程であり、
    前記(2)に記載の工程が、IND214の挿入型配列と欠失型配列のヘテロ型のアレル多型を検出することを含む工程であり、
    前記(3)に記載の工程が、Cp0419に関する上記ヘテロ型多型及びIND214に関する上記ヘテロ型多型の両方が検出された場合に、対象試料であるカンキツ植物の品種が品種「あすみ」である、又は、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種である、と判定する工程である、
    請求項1に記載のカンキツ品種の識別方法。
  3. 前記(1)に記載のCp0419欠失型配列を検出する工程、及び、前記(2)に記載のIND214欠失型配列を検出する工程が、
    カンキツ植物の植物体、前記植物体の加工品、又は前記植物体若しくは加工品から抽出されたDNA、を対象試料としたPCR反応を含む工程である、請求項1又は2に記載のカンキツ品種の識別方法。
  4. 前記(1)に記載の工程と前記(2)に記載の工程が、同一のPCR反応液を用いて同時に行われる工程である、請求項1~3のいずれかに記載のカンキツ品種の識別方法。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のカンキツ品種の識別方法を使用することを含む、
    品種「あすみ」、若しくは、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種、の植物体を栽培する方法、
    品種「あすみ」、若しくは、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種、の果実を生産する方法、又は、
    品種「あすみ」、若しくは、Cp0419及びIND214に関して品種「あすみ」と同じアレル型を示す品種「あすみ」の後代品種、の果実の加工品を生産する方法。
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