JP2022018677A - 透過型スクリーンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】露光光により作られた開口アレイが、映像光の一部を遮蔽することを抑制する。【解決手段】スクリーン20はレンズアレイ21と開口アレイ24とを備え、レンズアレイ21のアレイ面Paにレンズが配列されている。映像光Picが角度αで傾きながらレンズ22rに入射し、レンズ22rで屈折し、開口アレイ24を通過し、出射するとき、及び、露光光Expが角度βで傾きながらレンズ22rに入射し、レンズ22rで屈折するとき、特定の条件式を満たす。【選択図】図6
Description
本発明はマイクロレンズアレイを備える透過型スクリーンの製造方法に関する。
特許文献1はマイクロレンズアレイとその反対側に配置された開口アレイとを備える透過型のスクリーンの製造方法を開示している。かかる方法では、片面にマイクロレンズアレイの形成された透明基材上に開口アレイを形成する。まず透明基材表面のマイクロレンズアレイの配置された面とは反対側の面にネガティブレジストを塗布する。次にマイクロレンズアレイ側から透明基材に向かって露光光を照射する。露光光でネガティブレジストを露光し、さらに現像することでレジストパターンを形成する。レジストパターンを形成した透明基材の面上に金属膜を形成する。レジストパターンを除去することで金属膜からなる開口アレイを形成する。
上記の方法でスクリーンを作製した後、マイクロレンズアレイ側からスクリーンに映像光が投射されるように、スクリーンを配置する。これによりヘッドアップディスプレイを製造できる。ここでマイクロレンズアレイの有するマイクロレンズに関する露光光の像点距離と、映像光の像点距離とが等しくなるように、露光光及び映像光の少なくともいずれか一方を調整する。
上記態様において、焦点距離の調整だけでは露光光の光路と映像光の光路との間にずれが生じる可能性がある。この場合、露光光を用いて作られた開口アレイが、映像光の一部を遮蔽することがある。本発明は露光光により作られた開口アレイが、映像光の一部を遮蔽することを抑制するための方法を提供することを目的とする。
[1] ヘッドアップディスプレイ用の中間スクリーンを製造する方法であって、
前記中間スクリーンは、その背面にマイクロレンズアレイを有する透明基材と、前記透明基材の正面に設けられた開口アレイとを備える透過型のスクリーンであり、
前記マイクロレンズアレイのアレイ面Paにレンズが配列されており、
前記アレイ面Pa上の任意のレンズ(以下、基準レンズという。)に関して、任意の投影視方向から投影視した時に、可視光線を含む映像光が前記アレイ面Paの法線に対して角度αで傾きながら前記基準レンズに入射し、前記基準レンズで屈折し、前記開口アレイを通過し、前記正面側に向かって出射するものであり、ここで前記透明基材の厚みT(μm)と前記基準レンズの焦点距離F(μm)とは下記式の通り表され、
前記開口アレイを形成する際、
前記マイクロレンズアレイを形成した前記透明基材の前記正面側にレジストを配し;
紫外光線を含む露光光にて前記レジストを露光するところ、前記投影視方向から投影視した時に、前記露光光は前記アレイ面Paの法線に対して角度βで傾きながら前記基準レンズに入射するとともに、前記基準レンズで屈折し、またαとβとは下記式の通り表され、
nVis:可視光線に対する前記透明基材の屈折率
nUV:紫外光線に対する前記透明基材の屈折率
θ:マイクロレンズアレイのアレイ面Paに対するレンズ面の傾斜の最大値;
前記レジストを現像することで前記正面にレジストパターンを形成し;
前記レジストパターンを形成した前記透明基材の面上に遮光膜を形成することで前記遮光膜に開口アレイを形成する方法。
[2] 前記マイクロレンズアレイは、前記スクリーンの縦方向に平行であるとともに前記アレイ面に直交する各断面を通じて横向きにシリンドリカルな凸面と、前記スクリーンの横方向に平行であるとともに前記アレイ面に直交する各断面を通じて縦向きにシリンドリカルな凸面とが併合した、クロスシリンドリカルな凸レンズ面である、
[1]の方法。
[3] 前記焦点距離Fに関して、前記スクリーンの縦方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離と、前記スクリーンの横方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離との内、前記厚みTに近い値を有するものが選択されるよう、前記投影視方向が選択される、
[1]~[2]のいずれかの方法。
[4] 前記スクリーンの縦方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離と、前記スクリーンの横方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離とが等しく、またこれらが前記焦点距離Fに相当し、
前記映像光を前記スクリーンの横方向及び縦方向から投影視した時に、前記アレイ面Paの法線に対して前記映像光が成す角度の内、より大きい方が前記角度αとして選択されるように、前記投影視方向が選択される、
[1]~[3]のいずれかの方法。
[5] 前記遮光膜は金属膜であり、
前記レジストはネガティブフォトレジストであり、
さらに前記レジストパターンを除去することで、前記遮光膜に開口アレイを形成する、
[1]~[4]のいずれかの方法。
[6] 前記レジストはポジティブフォトレジストであり、
前記レジストパターン上に斜め方向から金属スパッタを吹き付けることで前記遮光膜に開口アレイを形成する、
[1]~[5]のいずれかの方法。
[7] 前記マイクロレンズアレイの各レンズに対して、前記開口アレイの各開口が組になっている、
[1]~[6]のいずれかの方法。
[8] その背面にマイクロレンズアレイを有する透明基材と、前記透明基材の正面に設けられた遮光膜であって開口アレイを有するものとを備える透過型の中間スクリーンを、プロジェクターと組み合わせたヘッドアップディスプレイの使用であって、
前記マイクロレンズアレイのアレイ面Paにレンズが配列されており、
前記アレイ面Pa上の任意のレンズ(以下、基準レンズという。)に関して、任意の投影視方向から投影視した時に、波長λUVの紫外光線が前記アレイ面Paの法線に対して角度βで傾きながら前記基準レンズに入射する条件のもとで、前記遮光膜は、前記紫外光線が前記マイクロレンズアレイで屈折することで形成される前記紫外光線の影に一致し、ここで前記透明基材の厚みT(μm)と前記基準レンズの焦点距離F(μm)とは下記式の通り表され、
波長λVisの可視光線を含む映像光を前記プロジェクターが前記中間スクリーンの前記背面に照射すると、前記映像光は前記基準レンズで屈折し、前記開口アレイを通過し、前記正面側に向かって出射するところ、前記アレイ面Paの法線に対して角度αで傾きながら前記基準レンズに入射するものであり、またαとβとは下記式で表される関係を有し、
nVis:波長λVisの可視光線に対する前記透明基材の屈折率
nUV:波長λUVの紫外光線に対する前記透明基材の屈折率
θ:マイクロレンズアレイのアレイ面Paに対するレンズ面の傾斜の最大値、
前記中間スクリーンより出射する前記映像光を、さらに透明な光学素子に反射させることで映像を観察者に提示できるように、透明な光学素子の前に前記ヘッドアップディスプレイを配置する、
使用。
[9] 前記光学素子は自動車の窓ガラスであり、
前記観察者は前記自動車の乗員である、
[8]の使用。
前記中間スクリーンは、その背面にマイクロレンズアレイを有する透明基材と、前記透明基材の正面に設けられた開口アレイとを備える透過型のスクリーンであり、
前記マイクロレンズアレイのアレイ面Paにレンズが配列されており、
前記アレイ面Pa上の任意のレンズ(以下、基準レンズという。)に関して、任意の投影視方向から投影視した時に、可視光線を含む映像光が前記アレイ面Paの法線に対して角度αで傾きながら前記基準レンズに入射し、前記基準レンズで屈折し、前記開口アレイを通過し、前記正面側に向かって出射するものであり、ここで前記透明基材の厚みT(μm)と前記基準レンズの焦点距離F(μm)とは下記式の通り表され、
前記マイクロレンズアレイを形成した前記透明基材の前記正面側にレジストを配し;
紫外光線を含む露光光にて前記レジストを露光するところ、前記投影視方向から投影視した時に、前記露光光は前記アレイ面Paの法線に対して角度βで傾きながら前記基準レンズに入射するとともに、前記基準レンズで屈折し、またαとβとは下記式の通り表され、
nUV:紫外光線に対する前記透明基材の屈折率
θ:マイクロレンズアレイのアレイ面Paに対するレンズ面の傾斜の最大値;
前記レジストを現像することで前記正面にレジストパターンを形成し;
前記レジストパターンを形成した前記透明基材の面上に遮光膜を形成することで前記遮光膜に開口アレイを形成する方法。
[2] 前記マイクロレンズアレイは、前記スクリーンの縦方向に平行であるとともに前記アレイ面に直交する各断面を通じて横向きにシリンドリカルな凸面と、前記スクリーンの横方向に平行であるとともに前記アレイ面に直交する各断面を通じて縦向きにシリンドリカルな凸面とが併合した、クロスシリンドリカルな凸レンズ面である、
[1]の方法。
[3] 前記焦点距離Fに関して、前記スクリーンの縦方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離と、前記スクリーンの横方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離との内、前記厚みTに近い値を有するものが選択されるよう、前記投影視方向が選択される、
[1]~[2]のいずれかの方法。
[4] 前記スクリーンの縦方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離と、前記スクリーンの横方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離とが等しく、またこれらが前記焦点距離Fに相当し、
前記映像光を前記スクリーンの横方向及び縦方向から投影視した時に、前記アレイ面Paの法線に対して前記映像光が成す角度の内、より大きい方が前記角度αとして選択されるように、前記投影視方向が選択される、
[1]~[3]のいずれかの方法。
[5] 前記遮光膜は金属膜であり、
前記レジストはネガティブフォトレジストであり、
さらに前記レジストパターンを除去することで、前記遮光膜に開口アレイを形成する、
[1]~[4]のいずれかの方法。
[6] 前記レジストはポジティブフォトレジストであり、
前記レジストパターン上に斜め方向から金属スパッタを吹き付けることで前記遮光膜に開口アレイを形成する、
[1]~[5]のいずれかの方法。
[7] 前記マイクロレンズアレイの各レンズに対して、前記開口アレイの各開口が組になっている、
[1]~[6]のいずれかの方法。
[8] その背面にマイクロレンズアレイを有する透明基材と、前記透明基材の正面に設けられた遮光膜であって開口アレイを有するものとを備える透過型の中間スクリーンを、プロジェクターと組み合わせたヘッドアップディスプレイの使用であって、
前記マイクロレンズアレイのアレイ面Paにレンズが配列されており、
前記アレイ面Pa上の任意のレンズ(以下、基準レンズという。)に関して、任意の投影視方向から投影視した時に、波長λUVの紫外光線が前記アレイ面Paの法線に対して角度βで傾きながら前記基準レンズに入射する条件のもとで、前記遮光膜は、前記紫外光線が前記マイクロレンズアレイで屈折することで形成される前記紫外光線の影に一致し、ここで前記透明基材の厚みT(μm)と前記基準レンズの焦点距離F(μm)とは下記式の通り表され、
nUV:波長λUVの紫外光線に対する前記透明基材の屈折率
θ:マイクロレンズアレイのアレイ面Paに対するレンズ面の傾斜の最大値、
前記中間スクリーンより出射する前記映像光を、さらに透明な光学素子に反射させることで映像を観察者に提示できるように、透明な光学素子の前に前記ヘッドアップディスプレイを配置する、
使用。
[9] 前記光学素子は自動車の窓ガラスであり、
前記観察者は前記自動車の乗員である、
[8]の使用。
本発明により露光光により作られた開口アレイが、映像光の一部を遮蔽することを抑制するための方法を提供することを目的とする。
<スクリーンとマイクロレンズの基本構成>
まず製造すべきスクリーンの特徴を図1から図6を用いて説明する。図1は斜め視したスクリーン20と光源30を示す。スクリーン20は背面(Rear)にレンズアレイ21を備える。本実施形態において便宜的に+Z方向を正面(Front)とし、-Z方向を背面とする。背面から見てスクリーン20の左方向を+X方向とする。スクリーン20の上方向を+Y方向とする。
図1において、レンズアレイ21はマイクロレンズアレイである。レンズアレイ21はレンズ22p,22q及び22rを初めとして無数のマイクロレンズを備える平坦膜である。レンズアレイの形状は全て同一でもよく、また数種類のレンズが混在していても良い。以下、平坦膜を構成する面をアレイ面という場合がある。図中においてマイクロレンズは模式的に拡大して表示されている。マイクロレンズは+X軸方向及び+Y軸方向に格子状に隙間なく配置されている。マイクロレンズアレイの配置方法は正方格子配列などの矩形格子でもよく、あるいは六角格子配列でも良い。
図1に示すスクリーン20はリアスクリーン、リアタイプスクリーン又はリアプロジェクションスクリーンと呼ばれる透過型のスクリーンである。スクリーン20をヘッドアップディスプレイに用いることができる。光源30から映像光を投射することで、スクリーン20をヘッドアップディスプレイの中間スクリーンとして用いることができる。
図2はマイクロレンズアレイのアレイ面Paの斜視図である。アレイ面Paは平坦である。アレイ面Pa上に長方形のマイクロレンズが配列されている。図中では任意に選ばれたマイクロレンズとしてレンズ22rが描かれている。以下レンズ22rを基準レンズという場合がある。レンズ22rは長方形のマイクロレンズである。レンズ22rの縦方向及び横方向がアレイ面Pa上の縦方向及び横方向に揃えられている。
図2において映像光Picがレンズ22rに入射する。映像光Picは可視光線である。映像光Picは赤、緑及び青の三原色を含んでいる。映像光PicはXY平面上に広がるレンズアレイに対して斜めに入射する。
図3はマイクロレンズの拡大図である。レンズ22rは、いわゆるクロスシリンドリカル型の非球面レンズである。レンズ22rは、いわゆる光軸に対して回転対称なレンズではない。レンズ22rは、Y軸と平行な半円柱レンズのレンズ面とX軸と平行な半円柱レンズのレンズ面とが、一つの面上で融合したような形状を有する。図中においてレンズ22rのレンズ面上の格子線はレンズの形状を説明するための補助線であり、実際のレンズ面には刻まれていない。
一態様において図3に示すレンズ22rはY―Z平面と平行な断面における経線が全て等しく、X-Z平面と平行な断面における経線が全て等しい形状を有する。従って、縦方向と横方向とで焦点距離が異なっていてもよい。すなわちレンズ22rは、意図的に非点収差を与えられたレンズであってもよい。
図3においてレンズ22rは横向きにすなわちX軸方向の向きにシリンドリカルである。具体的にはレンズ22rの縦方向すなわちY軸方向に平行であるとともにアレイ面Paに直交する各断面、すなわちY-Z平面に平行な各断面を通じてシリンドリカルである。レンズの曲率半径がいずれの断面においても等しい。図中にはY-Z平面に平行な一断面が斜めのハッチングとともに例示されている。
図3においてさらにレンズ22rは縦向きにすなわちY軸方向の向きにシリンドリカルである。具体的にはレンズ22rの横方向に平行であるとともにアレイ面Paに直交する各断面、すなわちX-Z平面に平行な各断面を通じてシリンドリカルである。レンズの曲率半径がいずれの断面においても等しい。
レンズ22rは長方形レンズ(Rectangular lens)である。一態様においてレンズ22rは正方形レンズ(Square lens)でもよい。レンズ22rは縦横の長さが一致していない長方形でもよい。正方形レンズを含め、長方形レンズは平坦なアレイ面上に隙間なく並べられることが特徴である。
図4は図2に記載のレンズ22rのY-Z平面投影図である。投影視方向は横方向すなわちX軸に平行な方向である。レンズ22r及び映像光Pic投影視した時、映像光Picがアレイ面Paの法線に対して角度αで傾きながらレンズ22rに入射する。
図5は図2に記載のレンズ22rのX-Z平面投影図である。投影視方向は縦方向すなわちY軸に平行な方向である。レンズ22r及び映像光Pic投影視した時、映像光Picがアレイ面Paの法線に対して角度αで傾きながらレンズ22rに入射する。
図6はY-Z平面と平行な断面におけるスクリーン20を示す。光路を分かりやすくするため各部材のハッチングを省略している。スクリーン20は透明基材23と、開口アレイを有する遮光膜24とを備える。
透明基材23の材質は樹脂でもよい。樹脂の例は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP)、アクリル系紫外線硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化樹脂などである。二種類以上の樹脂を二層以上重ね合わせて透明基材23を作製してもよい。
遮光膜24は透明基材23の正面の平坦な面に設けられる。遮光膜24の開口アレイは遮光部25で取り囲まれた開口部26p,26q,26r及びその他の開口部からなる。本実施形態では遮光膜24それ自体を開口アレイと呼ぶ場合がある。マイクロレンズアレイ中のレンズ22p,22q及び22rに対して、開口アレイを構成する開口部26p,26q及び26rがそれぞれ組になっている。
図6においてレンズアレイ21中のレンズ22p,22q及び22rはY軸方向に間隔Pyで並んでいる。レンズ間の間隔のことを周期という場合がある。図中では映像光Picが透明基材23の背面側よりレンズ22rに入射する。映像光Picはレンズ22rで屈折する。映像光Picはさらに遮光膜24の開口アレイを通過する。具体的には開口部26rを通過する。映像光Picはスクリーン20の正面側に向かって出射する。
<色収差の考慮>
図6に示す開口アレイを備える遮光膜24はセルフアライメント露光により形成される。遮光膜24を形成する際には透明基材23の正面側にレジストを塗布した後、紫外光線を含む露光光Expにてレジストを露光する。図には、この時に用いる露光光Expの光路も示されている。
図6において露光光ExpはXY平面上に広がる透明基材23の背面側より、レンズアレイ21に対して斜めに入射する。先に述べた通り図3ではX軸に平行な投影視方向から映像光Picを投影視している。これと同じ方向から露光光Expを再び投影視した場合に、断面視した図6に同様に表されるように、露光光Expはアレイ面Paの法線に対して角度βで傾きながらレンズ22rに入射する。
<セルフアライメント露光>
本実施形態の特徴を説明する上で、セルフアライメント露光を具体的に説明する。図7はセルフアライメント露光による遮光膜24の形成の流れ図である。各ステップにおいて透明基材23の正面は図の下方、透明基材23の背面は図の上方である。まずステップS31に示すように透明基材23の正面側にレジスト41を塗布する。一例においてレジスト41はネガティブフォトレジストである。
図7のステップS31においてレジスト41を塗布する方法としては、スピンコート、ダイコート、スプレーコート及びロールコートなどが挙げられる。さらに塗布したレジスト41の溶媒を揮発させるために乾燥を行う。乾燥には、ホットプレート、オーブン、真空乾燥機、赤外線ヒータなどを使える。塗布及び乾燥を行わない方法として、フイルムレジストをラミネートする方法をとれる。
図7のステップS31において露光光Expが透明基材23の正面からレンズ22rとその他のマイクロレンズとに入射する。露光光Expは紫外光である。なお露光光Expは透明基材23に対して斜めに入射するが図7においてはその様子は省略されている。露光光Expは、レンズ22rとその他のマイクロレンズにて集光される。露光光Expでレジスト41を露光する。
次に図7のステップS32に示すように露光光Expによって露光した部分のレジスト41は被露光レジスト42p,42q及び42rとなる。さらにレジスト41を現像することで透明基材23の正面にレジストパターンを形成する。現像に際して、露光が終わったレジスト41を透明基材23ごと現像液に晒す。現像法は浸漬法、揺動法、パドル法及びスプレー法のいずれかでもよい。現像後は、純水にて透明基材23を水洗いし、乾燥させる。
図7のステップS32において、レジストパターンに被露光レジスト42p,42q及び42rが残る。被露光レジスト42p,42q及び42rはそれぞれ独立している。なぜなら、それぞれ独立したレンズ22p,22q及び22rを通る露光光Expによって形成されるとともに、レジスト41中の感光していない部分は除去されるからである。
次に図7のステップS33においてレジストパターンを形成した透明基材23の正面に遮光膜24を形成する。遮光膜24の厚みは1μm以下でもよい。厚みは100nm以上、200nm以下でもよい。遮光膜24は金属膜でもよい。金属膜の形成は、蒸着、スパッタ及び電鋳のいずれかの手段で行ってもよい。蒸着法であれば被露光レジスト42p,42q及び42rの側面に金属膜が形成されにくい。被露光レジストの側面に金属膜が形成されると後述するリフトオフがしにくい場合がある。このため蒸着法が好ましい。
図7のステップS33において遮光膜24の形成に必要な作業は透明基材23の正面側全体に行われる。被露光レジスト42p,42q及び42r上にも遮光膜44p,44q及び44rが形成される。遮光膜44p,44q及び44rはそれぞれ独立している。
次に図7のステップS34において遮光膜44p,44q及び44rを被露光レジスト42p,42q及び42rごと選択的に除去する(リフトオフ)。除去は溶剤を被露光レジスト42p,42q及び42rに接触させることで行ってもよい。また溶剤に透明基材23ごと浸漬することで被露光レジスト42p,42q及び42rを除去してもよい。リフトオフを促進するために溶剤を加温してもよく、また透明基材23に振動を与えてもよい。
以上の工程を経て、図7のステップS34において遮光部25並びに開口部26p,26q,26r及びその他開口部からなる開口アレイを備える遮光膜24が形成される。遮光膜24の付加された透明基材23はスクリーンとして使用できる。なお遮光膜24を金属膜として説明したが、他の例において遮光膜24はブラックマトリックスでもよい。
遮光膜24の実体部分は遮光部25からなる。遮光部25は露光光Expの影に一致している。ここでいう影とは、露光光Expの含む紫外光線がマイクロレンズアレイで屈折することで形成される影である。
<交錯を回避するための照射の角度の調整>
本実施形態の特徴はセルフアライメント露光に起因して生じる映像光と遮光膜との交錯を回避することにある。本実施形態では露光光の照射の角度の調整を行う。図8にて交錯が発生する条件を説明しつつ、これを回避するための方法を説明する。
図8は断面視したスクリーン90を示す。スクリーン90では露光光Expの入射の角度を映像光Picの入射の角度αと等しくした上で遮光膜94が形成されている。映像光Pic及び露光光Expはレンズ22rの界面、すなわちレンズ面で屈折する。映像光Picも露光光Expも透明基材23内を進む。映像光Picの平均的な波長と露光光Expの平均的な波長との間には差異がある。
図8において透明基材23における屈折率は光の波長ごとに異なる。波長の長い可視光線を有する映像光Picは屈折率が低い。波長の短い紫外光線を有する露光光Expは屈折率が高い。したがって透明基材23はいわゆる色収差を生じる。例としてPMMAの絶対屈折率の波長依存性を図9に示す。
図8において、いわゆる色収差によってこれらの光の光路にずれが生じる。したがって開口部96rを通るべき映像光Picの一部が遮光部95と交錯する。本実施形態では図6に示すように交錯を回避するために露光光Expの入射の角度βを映像光Picの入射の角度αよりも大きくする。αとβとの関係は以下に示す関係を有することが好ましい。
nVis:波長λVisの可視光線に対する透明基材の絶対屈折率
nUV:波長λUVの紫外光線に対する透明基材の絶対屈折率
θ:マイクロレンズアレイのアレイ面Paに対するレンズ面の傾斜の最大値
nUV:波長λUVの紫外光線に対する透明基材の絶対屈折率
θ:マイクロレンズアレイのアレイ面Paに対するレンズ面の傾斜の最大値
図6中では角度βは角度αと角度αtiltとの和に等しい。しかしながら上記式の通り角度βは一定の範囲で変動してもよい。
可視光線の波長λVisは一例において550nmである。紫外光線の波長λUVは一例において365nmである。
傾斜の最大値θはレンズ22rの外縁における傾斜の値であってもよい。レンズ面上の内側に傾斜最大の部分があってもよい。傾斜の最大値θは好ましくは5度以上40度以下、より好ましくは10度以上25度以下である。マイクロレンズアレイ中には傾斜の最大値θの異なる複数種のレンズが混在していてもよい。マイクロレンズアレイは単一種のレンズでからなるものでもよい。
角度αtiltを表す上記式を導出する上では、図6中のレンズ22rの上縁で屈折する光に着目している。ここでスネルの法則に従い、紫外光線を含む露光光Expの照射時に次のように表される。γは屈折角である。
可視光線を含む映像光Picの照射時に次のように表される。屈折角γを露光光Expの照射時と揃える。
上記二つの式よりsinγをキャンセルすることで角度αtiltを以下の通り表せる。
図6において映像光Picの入射の角度αを予め決定しておき、これに合わせて露光光Expの入射の角度βを定めてもよい。映像光の角度αは好ましくは40度以下、より好ましくは35度以下、より好ましくは30度以下、より好ましくは25度以下である。
角度αを定めた後、図7を用いて説明したように露光光Expによってレジストを現像することでレジストパターンを形成する。この時、露光光Expの入射の角度を角度αに基づいて定めた角度βとする。さらにレジストパターンを形成した透明基材23の面上に遮光膜24を形成することで、遮光膜24に開口アレイを形成する。
<映像光と露光光とに関する留意点>
図6についてのいくつかの留意点を述べておく。まず映像光Pic及び露光光Expの光路は本来放射状に拡散する。しかしながら、光源からスクリーンまでの距離に比べて、レンズの間隔Pyは非常に小さい。したがってこれらの光は平行光と同視できる。
図6では一つの図に映像光Picと露光光Expの光路が同時に示されている。映像光Picはスクリーン20の使用時にこれに対して照射される。露光光Expはスクリーン20の製造時に透明基材23に対して照射される。本実施形態において露光光Expと映像光Picとは本質的にいって、同時に照射されるものではない。ただし、遮光膜を付す前の透明基材23に対して又は完成したスクリーン20に対して、これらの光線を同時に照射することを本発明から除外するものではない。
図6に示すレンズ22rは色収差を有するため、レンズ22rに対しては光の波長ごとに焦点距離F(μm)が異なる。本実施形態では焦点距離F(μm)は波長550nmの光に対する焦点距離である。
図6中では映像光Picの光路と露光光Expの光路とが透明基材23内で一致している。しかしながらこれは模式的なものであり、これらの光路は厳密には一致しない。なぜならレンズ22rが色収差を有しているところ、本実施形態では、角度αに合わせて角度βの大きさを調整しているだけだからである。
図2において、基準レンズとして選ばれたレンズ22rはレンズアレイ21の中心付近に位置する。基準レンズはレンズアレイ21の上の中心にあってもよい。基準レンズは光源から最も遠い位置にあってもよい。基準レンズはレンズアレイ21の中心を挟んで映像光の光源と反対側にあってもよい。
<透明基材厚み>
図6において透明基材23の厚みT(μm)と基準レンズたるレンズ22rの焦点距離F(μm)との関係は下記式の通り表される。厚みTがこの範囲にあることで遮光膜24の開口アレイの開口率を低くできる。すなわち遮光部25による外光の遮蔽を向上できる。
<透明基材厚みが焦点距離より大きい場合>
次に光学的な諸条件を検討する。図10は比較例のスクリーン80aが示されている。スクリーン80aは図6に示した透明基材23よりも厚い透明基材83aからなる。透明基材83aはレンズアレイ21を備える。透明基材83aの厚みT(μm)は、焦点距離F(μm)Fよりも30μm大きい、又はそれよりも大きい。
図10において映像光Picはレンズアレイ21に入射する。透明基材83aの正面側において映像光Picが出射する際、それらのビーム径が拡大する。透明基材の正面側において、図10に示された出射のビーム径は図8に示された出射のビーム径よりも大きい。
図10においてスクリーン80aは遮光膜84aを備える。遮光膜84aは遮光部85aと開口部86p、86q、86r及びその他の開口からなる開口アレイを有する。開口部86p、86q及び86rの径はレンズアレイ21のレンズの間隔Pyに近い値をとる。これは映像光Picと同様に露光光Expの出射のビーム径も大きくなるからである。
図10においても、図8と同様に映像光Picの入射の角度αは露光光Expの入射の角度βに等しい。この時、映像光Picは開口部86p、86q及び86rを通過する。さらに映像光Picは遮光部85aと交錯する。遮光部85aは映像光Picの一部を遮断する。しかしながら遮光膜84aの開口アレイにおいて、出射する映像光Picのビーム径は十分に拡大されている。したがって遮光部85aによる映像光Picの透過率の低下は小さい。
なお遮光膜は本来、外光が光学系の中で迷光となることを防止するために設けられている。遮光部が小さければ、すなわち開口アレイの開口率が大きければその効果も弱まる。このため図10からは透明基材の厚みT(μm)は、焦点距離F(μm)Fに30μmを加えた値よりも小さいことが好ましいことが分かる。この場合、開口アレイの開口率は好ましくは77.7%より小さく、好ましくは9.0%より小さく、好ましくは8.7%以下である。
<透明基材厚みが焦点距離より小さい場合>
図11は比較例のスクリーン80bが示されている。スクリーン80bは図6に示した透明基材23よりも薄い透明基材83bからなる。透明基材83bはレンズアレイ21を備える。透明基材83bの厚みT(μm)は、焦点距離F(μm)Fよりも30μm小さい、又はそれよりも小さい。なお本図における焦点距離Fに関して、透明基材83bの正面側で出射する光の屈折が考慮されるが、図には表されていない。
図11において映像光Picはレンズアレイ21に入射する。またスクリーン80bは遮光膜84bを備える。遮光膜84bは遮光部85bと開口87p、87q、87r及びその他の開口からなる開口アレイを有する。
図11においても、図8と同様に映像光Picの入射の角度αは露光光Expの入射の角度βに等しい。この時、映像光Picは開口87p、87q及び87rを通過する。さらに映像光Picは遮光部85bと交錯する。遮光部85bは映像光Picの一部を遮断する。しかしながら開口87rと映像光Picとの間のずれは大きくない。これはレンズアレイ21と開口アレイとの距離が小さいからである。したがって遮光部85bによる映像光Picの透過率の低下は小さい。
なお遮光膜は本来、外光が光学系の中で迷光となることを防止するために設けられている。遮光部が小さければ、すなわち開口アレイの開口率が大きければその効果も弱まる。このため図11からは透明基材の厚みT(μm)は、焦点距離F(μm)Fから30μmを引いた値よりも大きいことが好ましいことが分かる。この場合、開口アレイの開口率は好ましくは63.3%より小さく、好ましくは9.0%より小さく、好ましくは8.7%以下である。
図6から図11においては投影視方向は全て横方向すなわちX軸方向であった。しかしながら図5で示したように投影視方向は縦方向すなわちY軸方向でもよい。いずれの投影視方向を基準として映像光の入射角と露光光の入射角との関係を捉えるかは、以下の通り選択する。図12及び図13を用いて説明する。
<クロスシリンドリカルレンズの縦横の焦点距離が異なる場合>
図12は縦方向Dv及び横方向Dhにおけるレンズ22rの焦点距離の違いを表す。本実施形態では焦点距離を考慮して縦方向Dv及び横方向Dhの中から投影視方向を選択する。焦点距離Fhは縦方向Dvに直交する断面Sh上の経線から求められる。ここで経線上の曲率半径をRhとする。レンズ22rは平凸レンズであるから、レンズメーカーの式よりFh=Rh/(nVis-1)である。nVisは可視光線に対する透明基材の絶対屈折率である。焦点距離Fvは横方向Dhに直交する断面Sv上の経線から求められる。ここで経線上の曲率半径をRvとする。レンズメーカーの式よりFv=Rv/(nVis-1)である。
図12において投影視方向を縦方向Dv及び横方向Dhの中から選択する際は、焦点距離が厚みTに近くなるようにする。すなわち焦点距離Fhと焦点距離Fvとの内、厚みTに近い値を有するものを選択する。露光光の入射角及び映像光の入射角の関係もこの投影視方向において規定する。
図12において横方向Dhから観察した時の厚みThと焦点距離Fhとの差の絶対値よりも、縦方向Dvから観察した時の厚みTvと焦点距離Fvとの差の絶対値の方が小さい。したがって、図中では投影視方向として横方向Dhを選択することが好ましい。この時、焦点距離Fvを上述の焦点距離Fとして取り扱う。
図13は縦方向Dv及び横方向Dhにおけるレンズ22rの焦点距離の違いが無い状態を表す。本実施形態では映像光Picの入射角αを考慮して縦方向Dv及び横方向Dhの中から投影視方向を選択する。映像光Picに代えて露光光の入射角を考慮対象としてもよい。
<クロスシリンドリカルレンズの縦横の焦点距離が等しい場合>
図13において焦点距離Fhは縦方向Dvに対して直交する断面Sh上の経線から求められる。焦点距離Fvは横方向Dhに直交する断面Sv上の経線から求められる。焦点距離FhとFvとは等しいので、これらを上述の焦点距離Fとして取り扱う。
図13において映像光Picを縦方向Dvから投影視したとき、アレイ面Paの法線に対して映像光Picは角度Ihを成している。映像光Picを横方向Dhから投影視したとき、アレイ面Paの法線に対して映像光Picは角度Ivを成している。投影視方向を縦方向Dv及び横方向Dhから選択する際は、入射角の大きい投影視方向を選択する。
図13において角度Ih及び角度Ivの内、より大きい方が上述の角度αとして選択される。図中では角度Ivが角度Ihより大きいので角度Ihを上述の角度αとして選択する。露光光の入射角及び映像光の入射角の関係もこの投影視方向において規定する。
<セルフアライメント露光の変形>
図14はセルフアライメント露光の変形例の流れ図である。以下、図7と異なる点を中心に説明する。特に説明されていない場合は図7と同様に作業を行う。まずステップS36に示すように透明基材23の正面側にレジスト46を塗布する。レジスト46はポジティブフォトレジストである。露光光Expでレジスト46を露光する。
次に図14のステップS37に示すように露光光Expによって露光した部分のレジスト46は被露光レジスト47p,47q及び47rとなる。露光しない部分は硬化する。レジスト46を現像することで透明基材23の正面にレジストパターンを形成する。レジストパターンから被露光レジスト47p,47q及び47rが除去される。
次に図14のステップS38において、レジスト46で作られたレジストパターン上に斜め方向から金属スパッタ48を吹き付ける。ステップS39に示すようにレジスト46上に遮光膜24を形成する。遮光膜24は、開口部26p、26q、26r及びその他の開口並びに遮光部25からなる開口アレイを備える。
<ヘッドアップディスプレイ>
本実施形態の一態様はヘッドアップディスプレイにおけるスクリーンの利用である。図15はヘッドアップディスプレイ50の光学系を示す。各数値は後述する実施例にて利用したものであるため、ここでは考慮しない
図15において、スクリーン20を、光源30を備えるプロジェクター55と組み合わせることでヘッドアップディスプレイ50を作製する。プロジェクター55が可視光線を含む映像光Picをスクリーン20の背面に照射する。
一態様において図15に示すように、スクリーン20を中間スクリーンとして用いる。ここで中間スクリーンの用語は観察者がスクリーン20の正面を直接視認するわけではないことを表す。一例として光学系に対してさらに透明な光学素子51を付加する。光学素子51はガラス製でもよい。
図15においてスクリーン20は光源30と光学素子51との間の光路上に位置する。観察者から見てスクリーン20は光学素子51の手前に位置する。スクリーン20は光学素子51に向けて映像光を送る。スクリーン20より出射する映像光を、さらに透明な光学素子に反射させる。これにより映像を観察者に提示する。観察者は光学素子51で反射した映像光を視認する。
一態様において図15に示すヘッドアップディスプレイ50を自動車に使用できる。ここで光学素子51は自動車の窓ガラスであってもよい。光学素子51を観察する観察者は自動車の乗員であってもよい。
<光源の位置関係>
図15に示す光学系においてスクリーン20の表面にはマイクロレンズアレイが形成されている。また光源30をスクリーン20に対して-y方向かつ-Z方向に配置している。このため映像光が下方からレンズアレイに入射する。スクリーン20をZ軸方向に投影視した時、光源30はY軸に平行な、スクリーン20の中央線の延長線上に位置する。
図15においてスクリーン20の下端は光源30から24.3mmとした。光源30からスクリーン20までの水平距離は137.9mmとした。なお光源30は放射状に拡がる映像光が、遡って元々収束していた点を仮想的に表したものである。
図15においてスクリーン20の寸法はX軸方向に80mm、Y軸方向に40mmとした。スクリーンの透明基材の厚みは140μmとした。レンズアレイ中の格子状のレンズの周期はX軸方向とY軸方向とでそれぞれPx=Py=30μmである。レンズはクロスシリンドリカルレンズであり、X軸方向の曲率半径Rh=60μm、Y軸方向の曲率半径Rv=60μmである。
図15において、X軸方向に投影視した時のレンズアレイに対する映像光の入射の角度は光源30の迎角から求められる。この場合、映像光の入射の角度はレンズアレイ内の各レンズにおいて-Y方向に対して10度から25度である。
図15において、Y軸方向に投影視した時のレンズアレイに対する映像光の入射の角度は光源30の左右角から求められる。この場合、映像光の入射の角度はレンズアレイ内の各レンズにおいて+X方向及び-X方向に対して各々0度から16.6度である。
図15においてスクリーン20の正面に開口アレイを作製する。図6に示す露光光Expの入射の角度βを求めるため各パラメーターを検討する。まず図13を参照する。本実施例では縦方向Dvから投影視した時のレンズ22rの焦点距離Fhと、横方向Dhから投影視した時の焦点距離Fvとのいずれも122μmである。そこで図6における焦点距離F=122μmとした。
図15に戻る。本実施例では基準レンズをスクリーン20のY軸方向に平行な中央線上にとる。先に述べた通り光源30は中央線の延長線上に位置する。再び図13を参照する。ここで映像光Picの入射の角度を確認する。縦方向Dvから投影視した時のアレイ面Paの法線に対する入射の角度Ihは0度である。横方向Dhから投影視した時のアレイ面Paの法線に対する入射の角度Ivは10度から25度である。そこで映像光Picの入射の角度αとして角度Iv=10度~25度を選ぶ。
図6に戻る。レンズ22rのレンズ面の傾斜の最大値θは14.5度である。透明基材23の材質はポリメチルメタクリレート(PMMA)である。波長365nmの紫外光線の透明基材23に対する絶対屈折率nUVは1.514である。波長550 nmの可視光線の透明基材23に対する屈折率nVisは1.494である。
図16は角度αと角度αtiltとの関係を表す下記式のグラフである。角度αが10度の時、角度αtiltは0.3度である。また角度αが25度の時、角度αtiltは0.6度である。また角度αが増加すると角度αtiltは単調に増加する。
図17は右側面視した透明基材23及び露光光Expの光源29である。光源29は波長365nmの紫外光線を露光光Expとして透明基材23に照射する。図17において透明基材23の下端は光源29から24.4mmとした。光源29から透明基材23までの水平距離は134.5mmとした。なお光源29内では、放射状に拡がる露光光が遡って元々収束していることが仮想的に表されている。
図17において露光光の入射の角度はレンズアレイ内の各レンズにおいて-Y方向に対して10.3度から25.6度である。露光光の入射の角度βの下限を、角度α=10度と、角度αが10度の時の角度αtilt=0.3度との和とした。さらに角度βの上限を角度α=25度と、角度αが25度の時の角度αtilt=0.6度との和とした。このように配置された光源29を用いることで透明基材23の正面に開口アレイを形成できる。
<映像光の透過率>
次に露光光と映像光の入射の角度の組によって映像光の透過率がどの程度変化するかをコンピューター解析した。照明設計解析用ソフトウェアLightTools(商標SYNOPSYS製)を用いて、スクリーンの正面に形成される開口アレイの開口率[%]を算出した。さらに開口アレイを透過する映像光の透過率を算出した。各パラメーターは上述の実施例に記載の通りである。
解析結果を図18から図20のグラフ(Chart I、Chart II及びChart III)に表す。図中において黒い正方形のマークは露光光と映像光の入射の角度が一致することを表す。黒いひし形のマークは露光光と映像光の入射の角度が一致しないことを表す。さらに解析結果を下記の表にまとめた。ここで透過率が100%であることは映像光と遮光膜の交錯がない状態を示す。透過率が0%であることは遮光膜が映像光を完全に遮蔽する状態に相当する。Chart IV及びChart Vは後述する。
上記図表に示すように露光光を映像光よりも傾けることで映像光の透過率を高められることが分かる。またその効果は映像光の入射の角度が大きいほど、より強く表れることが分かる。
<基材厚みの考慮>
先に説明した図10では透明基材の厚みTを焦点距離Fに対してより大きくしている。この場合、露光光Expのビーム径が拡大するので開口部86rが拡大する。ここでは焦点距離F=122μmに対して透明基材の基材厚みTを約2倍の240μmとした。映像光の角度αは25度とした。これは角度αが10度から25度の範囲で、角度αtiltが一番大きくなる角度αの値である。
解析結果を図21のグラフ(Chart IV)と上記表に示す。露光光の入射の角度βによらず映像光の透過率は一様に優れている。しかしながら表に示すように遮光膜における開口率が77.7 %まで上昇した。これは遮光膜が外光を遮断する能力に劣ることを示す。
先に説明した図11では透明基材の厚みTを焦点距離Fに対してより小さくしている。この場合、露光光Expのビーム径があまり収束していないので、開口部87rが拡大する。ここでは焦点距離F=122μmに対して透明基材の基材厚みTを約1/3倍の40μmとした。映像光の角度αは25度とした。
解析結果を図22のグラフ(Chart IV)と上記表に示す。露光光の入射の角度βによらず映像光の透過率は一様にとても優れている。しかしながら表に示すように遮光膜における開口率が63.3%まで上昇した。これは遮光膜が外光を遮断する能力に劣ることを示す。
20 スクリーン、 21 レンズアレイ、 22p-r レンズ、 23 透明基材、 24 遮光膜、 25 遮光部、 26p-r 開口部、 29-30 光源、 41 レジスト、 42p-r 被露光レジスト、 44p-r 遮光膜、 46 レジスト、 47p-r 被露光レジスト、 48 金属スパッタ、 50 ヘッドアップディスプレイ、 51 光学素子、 55 プロジェクター、 80a-b スクリーン、 83a-b 透明基材、 84a-b 遮光膜、 85a-b 遮光部、 86p-r 開口部、 87p-r 開口部、 90 スクリーン、 94 遮光膜、 95 遮光部、 96r 開口部、 Dh 横方向、 Dv 縦方向、 Exp 露光光、 F 焦点距離、 Fh 焦点距離、 Fv 焦点距離、 Ih 角度、 Iv 角度、 Pa アレイ面、 Pic 映像光、 Py 間隔、 Rh 曲率半径、 Rv 曲率半径、 S31-S34 ステップ、 S36-S39 ステップ、 Sh 断面、 Sv 断面、 T 厚み、 Th 厚み、 Tv 厚み、 α 角度、 αtilt 角度、 β 角度、 γ 屈折角、 θ 傾斜の最大値、 λUV 波長、 λVis 波長
Claims (9)
- ヘッドアップディスプレイ用の中間スクリーンを製造する方法であって、
前記中間スクリーンは、その背面にマイクロレンズアレイを有する透明基材と、前記透明基材の正面に設けられた開口アレイとを備える透過型のスクリーンであり、
前記マイクロレンズアレイのアレイ面Paにレンズが配列されており、
前記アレイ面Pa上の任意のレンズ(以下、基準レンズという。)に関して、任意の投影視方向から投影視した時に、可視光線を含む映像光が前記アレイ面Paの法線に対して角度αで傾きながら前記基準レンズに入射し、前記基準レンズで屈折し、前記開口アレイを通過し、前記正面側に向かって出射するものであり、ここで前記透明基材の厚みT(μm)と前記基準レンズの焦点距離F(μm)とは下記式の通り表され、
前記マイクロレンズアレイを形成した前記透明基材の前記正面側にレジストを配し;
紫外光線を含む露光光にて前記レジストを露光するところ、前記投影視方向から投影視した時に、前記露光光は前記アレイ面Paの法線に対して角度βで傾きながら前記基準レンズに入射するとともに、前記基準レンズで屈折し、またαとβとは下記式の通り表され、
nUV:紫外光線に対する前記透明基材の屈折率
θ:マイクロレンズアレイのアレイ面Paに対するレンズ面の傾斜の最大値;
前記レジストを現像することで前記正面にレジストパターンを形成し;
前記レジストパターンを形成した前記透明基材の面上に遮光膜を形成することで前記遮光膜に開口アレイを形成する方法。 - 前記マイクロレンズアレイは、前記スクリーンの縦方向に平行であるとともに前記アレイ面に直交する各断面を通じて横向きにシリンドリカルな凸面と、前記スクリーンの横方向に平行であるとともに前記アレイ面に直交する各断面を通じて縦向きにシリンドリカルな凸面とが併合した、クロスシリンドリカルな凸レンズ面である、
請求項1に記載の方法。 - 前記焦点距離Fに関して、前記スクリーンの縦方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離と、前記スクリーンの横方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離との内、前記厚みTに近い値を有するものが選択されるよう、前記投影視方向が選択される、
請求項1~2のいずれかに記載の方法。 - 前記スクリーンの縦方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離と、前記スクリーンの横方向に直交するレンズ断面上の経線から求められる焦点距離とが等しく、またこれらが前記焦点距離Fに相当し、
前記映像光を前記スクリーンの横方向及び縦方向から投影視した時に、前記アレイ面Paの法線に対して前記映像光が成す角度の内、より大きい方が前記角度αとして選択されるように、前記投影視方向が選択される、
請求項1~3のいずれかに記載の方法。 - 前記遮光膜は金属膜であり、
前記レジストはネガティブフォトレジストであり、
さらに前記レジストパターンを除去することで、前記遮光膜に開口アレイを形成する、
請求項1~4のいずれかに記載の方法。 - 前記レジストはポジティブフォトレジストであり、
前記レジストパターン上に斜め方向から金属スパッタを吹き付けることで前記遮光膜に開口アレイを形成する、
請求項1~5のいずれかに記載の方法。 - 前記マイクロレンズアレイの各レンズに対して、前記開口アレイの各開口が組になっている、
請求項1~6のいずれかに記載の方法。 - その背面にマイクロレンズアレイを有する透明基材と、前記透明基材の正面に設けられた遮光膜であって開口アレイを有するものとを備える透過型の中間スクリーンを、プロジェクターと組み合わせたヘッドアップディスプレイの使用であって、
前記マイクロレンズアレイのアレイ面Paにレンズが配列されており、
前記アレイ面Pa上の任意のレンズ(以下、基準レンズという。)に関して、任意の投影視方向から投影視した時に、波長λUVの紫外光線が前記アレイ面Paの法線に対して角度βで傾きながら前記基準レンズに入射する条件のもとで、前記遮光膜は、前記紫外光線が前記マイクロレンズアレイで屈折することで形成される前記紫外光線の影に一致し、ここで前記透明基材の厚みT(μm)と前記基準レンズの焦点距離F(μm)とは下記式の通り表され、
nUV:波長λUVの紫外光線に対する前記透明基材の屈折率
θ:マイクロレンズアレイのアレイ面Paに対するレンズ面の傾斜の最大値、
前記中間スクリーンより出射する前記映像光を、さらに透明な光学素子に反射させることで映像を観察者に提示できるように、透明な光学素子の前に前記ヘッドアップディスプレイを配置する、
使用。 - 前記光学素子は自動車の窓ガラスであり、
前記観察者は前記自動車の乗員である、
請求項8に記載の使用。
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