JP2022014632A - メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法 - Google Patents

メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】明度Lが40以上の色相を持ちながら、波長290~400nm領域の紫外線吸収率が93%以上であり、さらに引張強度にも優れたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供する。【解決手段】粒径D50%が0.1~0.9μmであり、かつD50%/D90%>0.55の関係を満たす酸化チタン粒子を、あらかじめメタ型全芳香族ポリアミドの低粘度溶液中で高速撹拌した分散溶液を紡糸ドープと混合撹拌し、粒径D90%が2.0μm以下となる紡糸ドープを製造した後、該酸化チタンが繊維中に2.0~7.0質量%含有されるよう紡糸する。【選択図】なし

Description

本発明は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維に関するものであり、さらに詳しくは、明度Lが40以上であり、かつ波長290~400nm領域の紫外線吸収率が93%以上であり、さらに引張強度が2.8cN/dtex以上であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法に関するものである。
従来より、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドが耐熱性及び難燃性に優れていることは周知であり、また、これらの全芳香族ポリアミドはアミド系極性溶媒に可溶であり、全芳香族ポリアミドを該溶媒に溶解した重合体溶液から乾式紡糸、湿式紡糸、半乾半湿式紡糸等の方法により繊維となし得ることもよく知られている。
これら全芳香族ポリアミドのうち、ポリメタフェニレンイソフタルアミドで代表されるメタ型全芳香族ポリアミド(「メタアラミド」と称されることもある)の繊維は、耐熱・難燃性繊維として特に有用なものであり、これらの特性を発揮する分野、例えば、フィルター、電子部品等の産業用途や、耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される防護衣等の防災安全衣料用途等に用いられている。
さらに、これら繊維が例えば防護衣に使用される場合、屋外での使用による強い紫外線暴露などの人体への影響が懸念される。また、工場などで用いられる作業着等においては、電装設備周辺での作業により強い短波長の電磁波に暴露されるなど人体への影響が懸念される。そしてこれら短波長領域の電磁波を反射および吸収し、人体へ透過させない特性が必要と考えられる。
この特性を持たせるために各波長の吸収が大きいカーボンブラックを繊維中に多く添加したものが用いられているが、黒か非常に濃い色のみとなり、波長の長い赤外領域もよく吸収するため炎天下等で非常に熱くなり着用性の悪いものとなっている。また、色が濃色のものに限定されるため夜間などの暗所での視認性が悪いという欠点を有していた。
ここで、波長290~400nmの紫外線領域は、紫外線UVAおよびUVBと呼ばれる領域であり、一般的な繊維製品における紫外線遮蔽対策として、例えば特許文献1には複合金属酸化物(ZnO)1-x(Al(式中、Xは0.005≦X<0.2である)を紫外線遮蔽剤として、繊維にその水分散液を処理する方法が提案されている。
しかし、この方法では、繊維表面のみへの付着となり、紫外線遮蔽剤の付着量を多くすることが困難であるという課題があった。また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、一般的な繊維と異なりその染色工程において分子鎖内への染料拡散を促進させるキャリヤー剤を用いるが、このキャリヤー剤により紫外線遮蔽剤の脱落が起こってしまうという課題があった。
また、特許文献2には、光による変色への対策として、水への溶解度が0.04mg/L未満である紫外線吸収剤を含み、染色繊維の染着率が90%以上であり、キャリヤー染色前後における耐光性保持率が80%以上である全芳香族ポリアミド繊維が提案されている。しかし、この繊維においても、特許文献1と同様に、工程での紫外線吸収剤の脱落が発生するために、染色後に波長290~400nm領域の紫外線吸収率を高くするには、この紫外線吸収剤の添加量を多くしなければならず、このことに起因する強度低下が起こ
り、防護衣料等において安心して使用できる強度が得られないという問題があった。
特開2013-237950号公報 特開2011-236543号公報
本発明の目的は、かかる従来技術における問題点を解消し、明度Lが40以上の色相を持ちながら、波長290~400nm領域の紫外線吸収率が93%以上であり、さらに引張強度にも優れたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、メタ型全芳香族ポリアミド繊維に特定の粒径分布を有する酸化チタンを含有させるとき、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、
1.明度Lが40以上のメタ型全芳香族ポリアミド繊維であって、該繊維の波長290~400nm領域の紫外線吸収率が93%以上であり、かつ引張強度が2.8cN/dtex以上であることを特徴とするメタ型全芳香族ポリアミド繊維、及び
2.粒径D50%が0.1~0.9μmであり、かつ粒径D50%とD90%との比が下式(1)を満たす酸化チタン粒子を、あらかじめメタ型全芳香族ポリアミドの低粘度溶液中で高速撹拌した分散溶液を紡糸ドープと混合撹拌し、粒径D90%が2.0μm以下となる紡糸ドープを製造した後、該酸化チタンが繊維中に2.0~7.0質量%含有されるよう紡糸することを特徴とするメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法、
D50%/D90%>0.55 (1)
3.上記1記載のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を含んでなる布帛、
が提供される。
本発明によれば、明度Lが40以上の色相を持ちながら、波長290~400nm領域の紫外線吸収率が93%以上であり、さらに引張強度にも優れたメタ型全芳香族ポリアミド繊維が得られるので、屋外での使用による強い紫外線暴露や、工場の電装設備周辺での作業により強い短波長の電磁波に暴露された場合の人体への影響が可及的に低減された防護衣や作業着を得ることができる。
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明におけるメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミンとメタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとを原料として、例えば溶液重合や界面重合させることにより製造されるポリアミドであるが、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えばパラ型等の他の共重合成分を共重合したものであってもよい。
上記メタ型芳香族ジアミンとしては、メタフェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフエニルスルホン等が例示され、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば2,4-トルイレンジアミン、2,6-トルイレンジアミン、2,4-ジアミノクロルベンゼン、2,6-ジアミノクロルベンゼン等を使用することもできる。なかでも、メタフェニレンジアミン又はメタフェニレンジアミンを70モル%以上含有する上記の混合ジアミンが好ましい。
また、上記メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライドなどが例示され、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3-クロルイソフタル酸クロライド、3-メトキシイソフタル酸クロライドを使用することもできる。なかでも、イソフタル酸クロライド又はイソフタル酸クロライドを70モル%以上含有する上記の混合カルボン酸ハライドが好ましい。
上記のジアミンとジカルボン酸ハライド以外で使用し得る共重合成分としては、芳香族ジアミンとして、パラフェニレンジアミン、2,5-ジアミノクロルベンゼン、2,5-ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジン等のベンゼン誘導体、1,5-ナフチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられ、一方、芳香族ジカルボン酸ハライドとして、テレフタル酸クロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’-ビフェニルジカルボン酸クロライド、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド等が挙げられる。
これらの共重合成分の共重合比は、あまりに多くなりすぎるとメタ型全芳香族ポリアミドの特性が低下しやすいので、ポリアミドの全酸成分を基準として20モル%以下が好ましい。特に、好適なメタ型全芳香族ポリアミドは、全繰返し単位の80モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位からなるポリアミドであり、なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好ましい。
かようなメタ型全芳香族ポリアミドの重合度は、30℃において97%濃硫酸を溶媒として測定した固有粘度(IV)が1.3~3.0の範囲が適当である。
次に、ここで得られたメタ型全芳香族ポリアミドを、溶媒に溶解して紡糸ドープを調整するが、重合後のメタ型全芳香族ポリアミドを単離せずにそのまま紡糸ドープとすることも可能である。ここで用いる溶媒としてアミド系溶媒を一般的に用いることができ、主なアミド系溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと称することがある)、ジメチルホルムアミド(以下DMFと称することがある)、ジメチルアセトアミド(以下DMAcと称することがある)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取り扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPの場合には、通常は10~30質量%の範囲とすることが好ましい。
本発明においては、得られたポリマー溶液の一部を、その溶媒である有機溶剤を用いて、ポリマー濃度が0~10質量%となるように希釈した低粘度のポリマー溶液を作成したのち、粒径D50%が0.1~0.9μmであり、かつ粒径D50%とD90%が、下記式(1)
D50%/D90%>0.55 (1)
を満たす酸化チタン粒子を50質量%となるまで高速撹拌しながら徐々に添加したのち、希釈していないポリマー溶液に、ポリマー成分の質量に対し2.0~7.0質量%となるよう添加し、該ポリマー溶液を十分に撹拌し酸化チタンを均一に分散させる。これを減圧脱泡して紡糸ドープとする。得られた紡糸ドープにおける粒径D90%は2.0μm以下
である。
尚、この際使用する酸化チタンは、上述の通り、粒径D50%が0.1~0.9μmで、上記式(1)を満足するものであればアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型が任意に使用できるが、繊維強度維持の観点から、光触媒としての活性が低いとされるルチル型の酸化チタンを使用することが好ましい。また、酸化チタンの表面処理において有機物を用いないものが好ましい。
該酸化チタンの粒径D50%が0.1μm未満の場合、得られる繊維が非常にコストの高いものとなり、一方、該酸化チタンの粒径D50%が0.9μmを越える場合は、十分な繊維強度が得られにくくなる。
さらに、上記式(1)で表される粒径D50%とD90%の比が0.55以下の場合においても、同様に十分な繊維強度が得られにくくなる。
また、得られた紡糸ドープにおける粒径D90%が2.0μmを越える場合は、紡糸工程中において繊維強度が不十分なため断糸等が発生し安定した紡糸が困難となる。
次に、前述の通り調製された紡糸ドープを凝固浴中へ紡出し凝固させる。紡糸装置は特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置が使用できる。また、安定して紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等には特に限定はなく、例えば、孔数が500~3000個、孔径が0.03~0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金を用いても良い。また、紡糸口金から紡出する際の紡糸ドープの温度は、10~90℃の範囲が適当である。
本発明の繊維を得るために用いる凝固浴としては、無機塩を含まないNMP濃度45~60質量%の水溶液を、浴液の温度10~35℃の範囲で用いる。NMP濃度45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、原繊維の残存溶媒量が多く残留することとなる。またNMP濃度60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができなくなる場合がある。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1~30秒の範囲が適当である。
本発明においては、凝固浴の成分あるいは条件を上記の通りに設定することにより、繊維表面に形成されるスキンを薄くし、繊維内部まで均一な構造にすることができ、その結果、染色性を向上させるとともに、アミド結合の中で空気中の水分を有効に取り込めるものを増加させることができ、高い平衡水分率の易染性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることが可能となる。
次に、凝固浴にて凝固して得られた繊維が可塑状態にあるうちに、可塑延伸浴中にて繊維を延伸する。可塑延伸浴としては特に限定されるものではなく、従来公知の浴液を採用することができる。本発明の繊維を得るためには、可塑延伸浴中での延伸倍率を3.5~5.0倍の範囲とする必要があり、さらに好ましくは3.7~4.5倍の範囲である。
本発明の繊維の製造においては、可塑延伸浴中で特定倍率の可塑延伸を行うことにより、凝固糸中からの脱溶媒を促進することができる。可塑延伸浴中での延伸倍率が3.5倍未満である場合には、凝固浴中からの脱溶媒が不十分となり、破断強度が低くなり、紡績工程等の加工工程における取扱いが困難となる場合がある。一方、可塑延伸浴中での延伸倍率が5.0倍を越える場合は、単糸切れが発生するため、工程安定性が悪くなる。
可塑延伸浴の温度は10~90℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは20~90℃である。
可塑延伸に続き、繊維中に残留している溶媒を洗浄する。この工程においては、可塑延伸浴中で延伸された繊維を十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質に影響を及ぼすことから、多段で行うことが好ましい。特に洗浄工程における洗浄浴の温度及び洗浄浴液のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態及び洗浄浴からの水の繊維中への侵入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とするためにも、洗浄工程を多段とし、温度条件や濃度条件を適切な範囲に制御することが好ましい。
尚、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入が一気に起こるため繊維中に巨大なボイドが生成し、品質の劣化を招く。このため、最初の洗浄浴は、30℃以下の低温とすることが好ましい。
繊維中に溶媒が残っている場合、繊維が黄色く変色する上に、該繊維を用いた製品の加工や使用に際しての環境安全性も好ましくないので、本発明の繊維に含まれる溶媒量は0.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
次いで、洗浄工程を経た繊維を乾燥、熱処理する。乾燥、熱処理の方法は特に限定されないが、例えば、熱ローラー、熱板等を用いる方法などが挙げられる。
本発明の繊維を得るためには、熱処理温度を140~290℃の範囲とすることが好ましく、225~270℃の範囲とすることがさらに好ましく、230~260℃の範囲が最も好ましい。
該熱処理温度が140℃未満の場合には、繊維の結晶化が不十分となり、繊維強度が低くなり、また繊維の収縮が大きくなる場合がある。一方、熱処理温度が290℃より高い場合は、繊維の結晶化の進行にともない、繊維表面における微細な孔を塞いでしまうため、得られた繊維の平衡水分率は、一般的なメタ型全芳香族ポリアミド繊維と変わらないものとなってしまう場合がある。
熱処理が施された繊維には、必要に応じて、さらに捲縮加工を加えても良い。さらに捲縮加工後、適当な繊維長に切断し、短繊維として使用しても良いし、マルチフィラメントとして巻き取っても良い。
上記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、次いで、未染色のまま、或いは淡色に染色されて、明度Lが40以上のメタ型全芳香族ポリアミド繊維とされる。ここで、明度Lが40未満の場合、即ち、濃色に染色された場合は、そもそも染料自体が波長290~400nm領域の紫外線を吸収してしまうので、紫外線吸収率を93%以上とすることはさほど困難ではない。つまり、本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、明度Lが40以上の色相を持ちながら、波長290~400nm領域の紫外線吸収率を93%以上に高めた点に最大の特徴がある。
尚、上記の染色は短繊維或いはマルチフィラメントの状態で実施しても良いし、短繊維に切断する前の長繊維の状態で染色した後、繊維の切断を行っても構わない。
また、上記メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度は2.8cN/dtex以上であることが必要である。該引張強度が2.8cN/dtex未満の場合は、防護衣料等に使用した場合、充分な強度が得られない。引張強度の上限については特に制限はないが、実用上の観点からは7.0cN/dtex以下が好ましい。
かくして得られた本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、マルチフィラメント糸条或いは短繊維を常法により紡績してなる紡績糸条となした後、織編物等の布帛とされても良い。
この際、布帛の組織は特に限定されず、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織などの織物組織が好適に例示される。これらの織組織を有する織物は、レピア織機やエアージェット織機など通常の織機を用いて通常の方法により製織することができる。層数も特に限定されず単層でもよいし2層以上の多層構造を有する織物でもよい。なお、編物でもよい。
また、布帛は製編織に次いで後加工を施すことが好ましく、具体的な後加工工程は、精練、乾燥、リラックス、毛焼、染色および機能化処理などの工程を例示できる。精練やリラックス処理は、拡布処理であってもよいし、液流精練・リラックス処理であってもよい。具体的には、連続精練や連続乾燥において拡布ノンテンション機で処理する方法であり、例えばソフサー精練機や乾絨、シュリンクサーファー、ショートループ、ルシオール乾燥機などを用いた方法になる。また場合によっては、精練やリラックス工程を省く事も可能である。
かくして得られた布帛の目付は120~260g/m、より好ましくは150~240g/mの範囲であることが好ましい。該範囲より小さいと、該布帛を作業服に使用した際に、人体へ到達する電磁波を抑制する効果が十分ではなくなるおそれがある。逆に、それぞれ該範囲より大きいと、効果は十分であるものの、作業服として着用快適性や活動性が低下するおそれがある。
また、上記布帛は、耐アーク性試験ASTM F1959-1999において測定したATPV値が8.0cal/cm以上(レベル2クリア)であることが好ましい。
さらに、上記布帛は、フラッシュ火炎に対する難燃性能の指標である、ISO 15025:2000 Procedure B法に記載の燃焼試験により測定される残じん時間が1秒以下であることが好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
なお、実施例中の「部」および「%」は特に断らない限りすべて質量基準に基づくまたであり、量比は特に断らない限り質量比を示す。実施例および比較例における各物性値は下記の方法で測定した。
<固有粘度(I.V.)>
ポリマーを97%濃硫酸に溶解し、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した。
<粒子径>
JIS Z 8091に基づき、レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック型)をもちいて粒度分布の測定を行い、その粒子の累積分布が90%の時の粒子径をD90%とし、累積分布が50%の時の粒子径をD50%として求めた。
<繊度>
JIS L1015に基づき、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛繊度にて表記した。
<引張強度、引張伸度>
JIS L1015に基づき、インストロン社製 型番5565を用いて、以下の条件で測定した引張破断強度、引張破断伸度の値を繊維の引断強度、引張伸度とした。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
<明度L値>
得られた原綿を染色等で着色したのち、カード機を用いて開繊し、1.3グラム取り出し直径30mmの測定用の円形セルに詰め、分光色彩計 SD7000(日本電色工業製)を用いて測定した。
<波長290~400nm領域の紫外線吸収率>
得られた原綿をカード機で開繊して薄いシートを積層させ、ニードルパンチで絡合させ目付100g/mのフェルトを作成したのち分光色彩計 SD7000(日本電色工業製)を用いて測定された反射率より波長290~400nm領域の紫外線吸収率を求めた。
[実施例1~3]
(ポリマーの製造)
乾燥窒素雰囲気下の反応容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)721.5質量部を秤量し、このDMAc中にメタフェニレンジアミン97.2質量部(50.18モル%)を溶解させ、0℃に冷却した。この冷却したDMAc溶液に、さらにイソフタル酸クロライド(以下IPCと略す)181.3質量部(49.82モル%)を徐々に攪拌しながら添加し、重合反応を行った。
次に、平均粒径が10μm以下の水酸化カルシウム粉末を66.6質量部秤量し、重合反応が完了したポリマー溶液に対してゆっくり加え、中和反応を実施した。水酸化カルシウムの投入が完了した後、さらに40分間攪拌して、透明なポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液からポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ、1.65であった。また、ポリマー溶液中のポリマー濃度は、17質量%であった。
(ドープの製造)
得られたポリマー溶液の一部を用い、DMAcでポリマー濃度が5質量%となるように希釈ポリマー溶液を作成したのち、粒径D50%が0.55μm、(粒径D50%)/(粒径D90%)=0.58の酸化チタン粒子を50質量%となるまで高速撹拌しながら徐々に添加したのち、希釈していないポリマー溶液に、ポリマー成分の質量に対し実施例1では2.0質量%、実施例2では、3.0質量%、実施例3では、7.0質量%となるよう添加し、該ポリマー溶液を十分に撹拌し酸化チタンを均一に分散させた。これを減圧脱泡して紡糸ドープとした。
この紡糸ドープ中の酸化チタン粒子径を測定した結果、D90%は、それぞれ実施例1が1.85μm、実施例2が1.78μm、実施例3が1.93μmであった。
(紡糸)
上記紡糸ドープを、孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量部)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して紡糸した。
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度280℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、原綿を得た。
(染色)
カチオン染料(日本化薬社製、商品名:Kayacryl Blue GSL-ED(B-54))3%owf、酢酸0.3mL/L、硝酸ナトリウム20g/L、キャリア剤としてベンジルアルコール70g/L、分散剤として染色助剤(明成化学工業社製、商品名:ディスパーTL)0.5g/Lを含む染色液を用意した。
原綿と当該染色液の浴比を1:40として、120℃下60分間の染色処理を実施した。
染色処理後、ハイドロサルファイト2.0g/L、アミラジンD(第一工業製薬社製、商品名:アミラジンD)2.0g/L、水酸化ナトリウム1.0g/Lの割合で含有する処理液を用いて、浴比1:20で80℃下20分間の還元洗浄を実施し、水洗後に乾燥することにより染色繊維を得た。
この繊維における破断強度の測定を行ったところ実施例1は3.2cN/dtex、実施例2は3.0cN/dtex、実施例3は2.8cN/dtexと、いずれも2.8cN/dtex以上であり、防護衣料等に用いるのに問題ない強度を有していた。
得られた繊維を開繊し分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用い明度Lを測定した結果、実施例1は、41.5、実施例2は、42.3、実施例3は、43.7であった。また、これら繊維を用いて目付100g/mのフェルトを作成し波長290~400nm領域の吸収率を測定したところ、実施例1では、93.3%、実施例2では、95.1%、実施例3では、96.3%と良好な結果であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1で製造したポリマー溶液に酸化チタン粒子を添加することなく、減圧脱泡して紡糸ドープとした以外は実施例1と同様に実施した。染色後に得られた繊維における破断強度、破断伸度の測定を行ったところ3.4cN/dtexと、防護衣料等に用いるのに問題ない強度を有していた。
得られた繊維を開繊し分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用い明度Lを測定した結果、40.0であった。
また、これら繊維を用いて目付100g/mのフェルトを作成し、波長290~400nm領域の吸収率を測定したところ、89.5%と90%に満たない値であった。結果を表1に示す。
[比較例2]
(ドープの製造)
実施例1で製造したポリマー溶液に、ポリマー対比5.0質量%の紫外線吸収剤2-[2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(水への溶解度:0.01mg/L)を混合溶解させ、減圧脱法して紡糸ドープとした以外は実施例1と同様に実施した。
染色後に得られた繊維における破断強度、破断伸度の測定を行ったところ2.5cN/dtexと防護衣料等に用いるのに問題ない強度を有していた。
得られた繊維を開繊し分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用い明度Lを測定した結果、40.3であった。また、これら繊維を用いて目付100g/mのフェルト
を作成し、波長290~400nm領域の吸収率を測定したところ、92.3%と比較例1に対して向上がみられたが十分なものではなかった。結果を表1に示す。
[比較例3]
(ドープの製造)
比較例2のドープ製造において紫外線吸収剤2-[2-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(水への溶解度:0.01mg/L)の添加量をポリマー対比8.0質量%とした以外は比較例2と同様に実施した。染色後に得られた繊維における破断強度、破断伸度の測定を行ったところ2.3cN/dtexと防護衣料等に用いるのに不十分な強度であった。
得られた繊維を開繊し分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用い明度Lを測定した結果、40.2であった。また、これら繊維を用いて目付100g/mのフェルトを作成し波長290~400nm領域の吸収率を測定したところ、93.7%と良好な結果であったが、強度に問題が残った。結果を表1に示す。
[比較例4~5]
(ドープの製造)
実施例1で製造したポリマー溶液の一部を用いDMAcでポリマー濃度が5質量%となるように希釈ポリマー溶液を作成したのち、粒径D50%:0.55μm、(粒径D50%)/(粒径D90%)=0.58の酸化チタン粒子を50質量%となるまで高速撹拌しながら徐々に添加したのち、希釈していないポリマー溶液に、ポリマー成分の質量に対し比較例4では1.9質量%、比較例5では、7.1質量%となるよう添加し、該ポリマー溶液を十分に撹拌し酸化チタンを均一に分散させた。これを減圧脱泡して紡糸ドープとした。
この紡糸ドープ中の酸化チタン粒子径を測定した結果、D90%は、それぞれ比較例4が1.77μm、比較例5が1.92μmであった。この紡糸ドープの製造方法以外は実施例1と同様に実施した。
比較例4において染色後に得られた繊維における破断強度、破断伸度の測定を行ったところ3.3cN/dtexと防護衣料等に用いるのに問題ない強度を有していた。
得られた繊維を開繊し分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用い明度Lを測定した結果、41.3であった。また、これら繊維を用いて目付100g/mのフェルトを作成し波長290~400nm領域の吸収率を測定したところ、91.7%と比較例1に対して向上がみられたが十分なものではなかった。結果を表1に示す。
一方、比較例5において染色後に得られた繊維における破断強度、破断伸度の測定を行ったところ2.1cN/dtexと防護衣料等に用いるのに不十分な強度であった。
得られた繊維を開繊し分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用い明度Lを測定した結果、44.5であった。また、これら繊維を用いて目付100g/mのフェルトを作成し波長290~400nm領域の吸収率を測定したところ、96.2%と良好な結果であったが、強度に問題が残った。結果を表1に示す。
[比較例6]
(ドープの製造)
実施例1で製造したポリマー溶液の一部を用いDMAcでポリマー濃度が5%となるように希釈ポリマー溶液を作成したのち、粒径D50%が0.55μm、(粒径D50%)/(粒径D90%)=0.58の酸化チタン粒子を50質量%となるまで高速撹拌しながら徐々に添加したのち、希釈していないポリマー溶液に、ポリマー成分の質量に対し3.
0質量%となるよう添加し、該ポリマー溶液を十分に撹拌し酸化チタンを分散させた。これを減圧脱泡して紡糸ドープとした。この紡糸ドープ中の酸化チタン粒子径を測定した結果、D90%は、2.67μmであった。この紡糸ドープの製造方法以外は実施例1と同様に実施した。
染色後に得られた繊維における破断強度、破断伸度の測定を行ったところ2.4cN/dtexと防護衣料等に用いるのに不十分な強度であった。
得られた繊維を開繊し分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用い明度Lを測定した結果、41.6であった。また、これら繊維を用いて目付100g/mのフェルトを作成し波長290~400nm領域の吸収率を測定したところ、94.3%と良好な結果であったが、酸化チタンがポリマー成分の質量に対し3.0質量%と同量添加されている実施例2に対し強度に問題が残った。結果を表1に示す。
[比較例7]
(ドープの製造)
実施例1で製造したポリマー溶液の一部を用いDMAcでポリマー濃度が5%となるように希釈ポリマー溶液を作成したのち、粒径D50%:1.10μm、(粒径D50%)/(粒径D90%)=0.51の酸化チタン粒子を50質量%となるまで高速撹拌しながら徐々に添加したのち、希釈していないポリマー溶液に、ポリマー成分の質量に対し2.0質量%となるよう添加し、該ポリマー溶液を十分に撹拌し酸化チタンを分散させた。これを減圧脱泡して紡糸ドープとした。
この紡糸ドープ中の酸化チタン粒子径を測定した結果、D90%は、3.42μmであった。この紡糸ドープの製造方法以外は実施例1と同様に実施しようとしたが、延伸する工程で頻繁に糸が切れ、繊維として十分なものを得ることができなかった。
Figure 2022014632000001
本発明によって得られたメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、防護衣料等の使用に耐えうるレベルの繊維強度を持ち、かつ明度Lが40以上の色相を持ちながら、波長290~400nm領域の紫外線吸収率が93%以上となり、特に屋外や、工場などの電装設備周辺で着用される耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される防護衣料・作業着等の用途へ好適に使用できる。

Claims (3)

  1. 明度Lが40以上のメタ型全芳香族ポリアミド繊維であって、該繊維の波長290~400nm領域の紫外線吸収率が93%以上であり、かつ引張強度が2.8cN/dtex以上であることを特徴とするメタ型全芳香族ポリアミド繊維。
  2. 粒径D50%が0.1~0.9μmであり、かつ粒径D50%とD90%との比が下式(1)を満たす酸化チタン粒子を、あらかじめメタ型全芳香族ポリアミドの低粘度溶液中で高速撹拌した分散溶液を紡糸ドープと混合撹拌し、粒径D90%が2.0μm以下となる紡糸ドープを製造した後、該酸化チタンが繊維中に2.0~7.0質量%含有されるよう紡糸することを特徴とするメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
    D50%/D90%>0.55 (1)
  3. 請求項1記載のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を含んでなる布帛。
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