JP2022014495A - 抗菌部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】抗菌性および屈曲性に優れ、安定して使用することが可能な抗菌部材を提供する。【解決手段】基板11と、この基板11上に成膜された下地層12と、この下地層12の基板11とは反対側の面に形成されるとともに最表層に配置された銅層13と、を有しており、銅層13は、銅又は銅合金で構成され、下地層12は、金属酸化物で構成されており、基板11は、可撓性樹脂材料で構成されていることを特徴とする。曲率半径6mmでの屈曲試験を100回実施後において、クラックが確認されないことが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、抗菌性および屈曲性に優れた抗菌部材に関するものである。
一般に、医療機関、公共施設、衛生管理に厳しい研究施設(例えば食品、化粧品、医薬品等)において使用される机、椅子、棚等の什器や、手すり、ドアノブ等においては、多数の人が触れるおそれがあるため、伝染病の予防、ウィルスや細菌の拡散防止の観点からも抗菌性を有していることが望ましい。
ここで、机、椅子、棚等の什器や、手すり、ドアノブ等の各種製品の表面に抗菌性を付与するものとして、例えば特許文献1、2に示す抗菌フィルム(抗ウィルス性フィルム)が提案されている。
特許文献1においては、可撓性高分子フィルム基材の表面に抗菌性金属薄膜(例えば、銅、銀、銅合金、銀合金)を形成した抗菌フィルムが提案されている。
特許文献2においては、基材となるフィルム上に、CuおよびPdからなる金属粒子が島状に散在した抗ウィルス性フィルムが提案されている。
特開2010-247450号公報 特開2018-134753号公報
ところで、特許文献1,2に開示された抗菌性フィルムにおいては、基材として樹脂フィルムを用いており、基材を構成する樹脂材料からの水分により、基材と金属薄膜との密着性が阻害されることがあった。このため、抗菌性フィルムを屈曲させた際に、基材と金属薄膜とが剥離したり、基材や金属薄膜にクラックが生じたりするおそれがあった。
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、抗菌性および屈曲性に優れ、安定して使用することが可能な抗菌部材を提供することを目的としている。
この課題を解決するために、本発明の抗菌部材は、基板と、この基板上に成膜された下地層と、この下地層の前記基板とは反対側の面に形成されるとともに最表層に配置された銅層と、を有しており、前記銅層は、銅又は銅合金で構成され、前記下地層は、金属酸化物で構成されており、前記基板は、可撓性樹脂材料で構成されていることを特徴としている。
この構成の抗菌部材においては、最表層に銅又は銅合金からなる銅層が配置されているので、抗菌性に優れている。
また、前記基板が可撓性樹脂材料で構成されており、この基板と銅層との間に、金属酸化物からなる下地層が配設されているので、基板を構成する可撓性樹脂材料からの水分が銅層側に移動することが抑制され、基板と銅層との密着性が確保される。よって、本発明の抗菌部材を屈曲させた場合であっても、基板と銅層との剥離やクラックの発生を抑制でき、安定して使用することができる。
なお、銅層は、銅又は銅合金で構成され、その表面に酸化膜が形成されていてもよい。
ここで、本発明の抗菌部材においては、曲率半径6mmでの屈曲試験を100回実施後において、クラックが確認されないことが好ましい。
この場合、上述のように屈曲試験を実施した場合でもクラックが生じていないため、様々な形状の製品の表面に対して密着させて配置することができ、製品の表面に抗菌性を付与することができる。
また、本発明の抗菌部材においては、前記銅層の厚みが5μm以下であることが好ましい。
この場合、銅層の厚みが上述のように抑制されているので、屈曲させた際に銅層においてクラックが生じることを抑制できるとともに、下地層から剥離することが抑制され、屈曲性をさらに向上させることができる。
さらに、本発明の抗菌部材においては、前記下地層の厚みが500nm以下であることが好ましい。
この場合、下地層の厚みが上述のように抑制されているので、屈曲させた際に下地層においてクラックが生じることを抑制することができ、屈曲性をさらに向上させることができる。
また、本発明の抗菌部材においては、前記基板の厚みが500μm以下であることが好ましい。
この場合、基板の厚みが上述のように抑制されているので、基板自体の屈曲性が確保され、屈曲性をさらに向上させることができる。
さらに、本発明の抗菌部材においては、前記下地層を構成する前記金属酸化物は、In酸化物,Sn酸化物,Zn酸化物,Nb酸化物,Ti酸化物,Al酸化物,Ga酸化物,W酸化物,Mo酸化物、Si酸化物,Zr酸化物,Ta酸化物,Y酸化物,Ge酸化物,Cu酸化物,Ag酸化物から選択されるいずれか一種又は二種以上を含むことが好ましい。
この場合、前記下地層が、上述の金属酸化物で構成されているので、基板を構成する樹脂材料からの水分が銅層側へ移動することを確実に抑制し、基板と銅層との密着性をさらに向上することができ、屈曲性をさらに向上させることができる。
また、本発明の抗菌部材においては、前記銅層は、Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnのから選択される一種又は二種以上を合計で0.1mass%以上含むとともに、Cuの含有量が45mass%以上とされた銅合金で構成されていることが好ましい。
この場合、銅層におけるCuの含有量が45mass%以上とされているので、抗菌性を十分に確保することができる。また、銅層が、Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnのから選択される一種又は二種以上を合計で0.1mass%以上含んでいるので、銅層の変色を抑制することができる。
さらに、本発明の抗菌部材においては、前記銅層の表層には、Cu酸化膜が形成されており、このCu酸化膜におけるCuOとCuOのモル比率CuO/CuOが、CuO/CuO<1であることが好ましい。
この場合、銅層の表層に形成されたCu酸化膜においてCuOがCuOよりも多く含まれており、抗菌性を十分に確保することができる。
また、本発明の抗菌部材においては、前記基板の前記下地層とは反対側の面に粘着層が設けられていることが好ましい。
この場合、粘着層を用いて、各種製品の表面に抗菌部材を容易に配置することが可能となる。
本発明によれば、抗菌性および屈曲性に優れ、安定して使用することが可能な抗菌部材を提供することができる。
本発明の実施形態における抗菌部材の一例を示す説明図である。 実施例において屈曲性を評価する試験方法の説明図である。
以下に、本発明の一実施形態である抗菌部材について説明する。
本実施形態である抗菌部材10は、例えば、机、椅子、棚等の什器や、手すり、ドアノブ等の各種製品の表面に配置され、各種製品の表面に抗菌性を付与するものである。
本実施形態である抗菌部材10は、図1に示すように、基板11の一面(図1において上面)に配設された下地層12と、この下地層12の基板11とは反対側の面側に積層された銅層13と、を備えている。
なお、本実施形態においては、図1に示すように、基板11の下地層12とは反対側の面に粘着層15が形成されている。
ここで、本実施形態である抗菌部材10は、屈曲性に優れており、様々な形状の製品の表面に密着させて配設することができる。
具体的には、本実施形態である抗菌部材10においては、曲率半径6mmでの屈曲試験を100回実施後においてクラックが確認されないことが好ましい。
基板11は、下地層12および銅層13を支持するものであり、本実施形態では、屈曲性に優れた可撓性樹脂材料で構成されている。
基板11を構成する可撓性樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンフタレート(PET),ポリオレフィン(PO),アクリル,ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
ここで、本実施形態において、抗菌部材10の屈曲性をさらに確保するためには、基板11の厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。一方、基板11の剛性を確保するためには、基板11の厚みは、10μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。
下地層12は、可視光が透過する金属酸化物で構成されている。下地層12が、基板11からのガス成分・水分が銅層13へと到達することを抑制するバリア層として機能し、界面の剥離現象を抑える作用効果を有している。また、基板11と銅層13の間に下地層12として金属酸化物を配置することで、銅層13(Cu)と下地層12(金属酸化物)間の界面エネルギーが下がり、銅層13におけるCuの凝集を抑える作用効果を有している。
下地層12を構成する金属酸化物としては、In酸化物,Sn酸化物,Zn酸化物,Nb酸化物,Ti酸化物,Al酸化物,Ga酸化物,W酸化物,Mo酸化物、Si酸化物,Zr酸化物,Ta酸化物,Y酸化物,Ge酸化物,Cu酸化物,Ag酸化物から選択されるいずれか一種又は二種以上を含むことが好ましい。
具体的には、In-Sn酸化物,Al-Zn酸化物,In-Zn酸化物,Zn-Sn酸化物,Zn-Sn-Al酸化物,Ga-Zn酸化物,Zn-Y酸化物,Ga-Zn-Y酸化物,In-Ga-Zn酸化物等が挙げられる。
ここで、本実施形態において、抗菌部材10の屈曲性をさらに確保するためには、下地層12の厚みは、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。一方、バリア層としての作用効果をさらに奏功せしめるためには、下地層12の厚みは、2nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。
銅層13は、銅又は銅合金で構成されている。ここで、銅又は銅合金においては、抗菌作用(菌を減らす作用を含む)を有することが知られている。多数の人が接触するような部材に抗菌性(菌を減らす作用)のある銅合金を使用することで様々な菌、ウィルスによる感染を予防することが可能となる。
ここで、本実施形態において、抗菌部材10の屈曲性をさらに確保するためには、銅層13の厚みは、5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。一方、抗菌性を十分に確保するためには、銅層13の厚みは、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、15nm以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態においては、銅層13がZn,Sn,Ni,Al,Si,Mnのから選択される一種又は二種以上を合計で0.1mass%以上含むとともに、Cuの含有量が45mass%以上とされた銅合金で構成されていてもよい。
Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnのから選択される一種又は二種以上を合計で0.1mass%以上含むことにより、成膜した際の銅層13の均一性や耐久性などを大きく向上させることが可能となる。なお、この作用効果を十分に奏功せしめるためには、Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnのから選択される一種又は二種以上の合計含有量を0.2mass%以上とすることがより好ましく、0.3mass%以上とすることがさらに好ましい。
また、Cuの含有量が45mass%以上であれば、Cuによる抗菌性を十分に確保することが可能となる。なお、Cuの含有量の下限は、47.5mass%以上であることがより好ましく、50mass%以上であることがさらに好ましい。
さらに、本実施形態においては、銅層13の最表面にCu酸化膜が形成されることがある。この銅層13の最表面において、CuOとCuOのモル比率CuO/CuOが、CuO/CuO<1であることが好ましい。すなわち、CuOをCuOよりも多含むことが好ましい。CuOをCuOよりも多く含むことで、抗菌性を十分に確保することが可能となる。
なお、CuOとCuOのモル比率CuO/CuOは、0.9未満であることがより好ましく、0.8未満であることがより好ましい。
以下に、本実施形態に係る抗菌部材10の製造方法について説明する。
まず、粘着層15を形成した基板11を準備する。
次に、スパッタリング法により、基板11の一方の面(粘着層15とは反対側の面)に、下地層12を成膜する。このとき、下地層12を構成する酸化物に対応した組成のスパッタリングターゲットを用いることが好ましい。例えば、下地層12を構成する金属酸化物からなる酸化物スパッタリングターゲットを用いてもよいし、下地層12を構成する金属酸化物の金属スパッタリングターゲットを用いて酸素を導入して反応性スパッタ法を適用してもよい。なお、スパッタリングターゲットの導電性等を考慮して、DC(直流)スパッタ、RF(高周波)スパッタ、MF(中周波)スパッタ、AC(交流)スパッタ等を適宜選択して使用することが好ましい。
次に、成膜した下地層12の上に、スパッタリング法により、銅層13を成膜する。このとき、銅層13を構成する銅又は銅合金に対応した組成のスパッタリングターゲットを用いる。このとき、銅層13の厚みが指定の厚みとなるように、スパッタ条件を適宜調整する。なお、スパッタリング時には、一定時間成膜した際の膜厚を段差測定計(DEKTAK-XT)で測定することでスパッタリングレートを測定し、その値から成膜時間を調整して、狙い膜厚となるように成膜する。
上述の工程により、本実施形態である抗菌部材10を製造することが可能となる。
以上のような構成とされた本実施形態である抗菌部材10によれば、最表層に銅又は銅合金からなる銅層13が配置されているので、抗菌性に優れている。
また、基板11が可撓性樹脂材料で構成されており、この基板11と銅層13との間に、金属酸化物からなる下地層12が配設されているので、基板11を構成する可撓性樹脂材料からの水分が銅層13側に移動することが抑制され、基板11と銅層13との密着性が確保される。よって、本実施形態である抗菌部材10を屈曲させた場合であっても、基板11と銅層13とが剥離することを抑制でき、安定して使用することができる。
また、本実施形態におい、曲率半径6mmでの屈曲試験を100回実施後においてクラックが確認されない場合には、様々な形状の製品の表面に対して密着させて配置することができ、製品の表面に抗菌性を付与することができる。
さらに、本実施形態において、銅層13の厚みが5μm以下である場合、あるいは、下地層12の厚みが500nm以下である場合、あるいは、基板11の厚みが500μm以下である場合には、抗菌部材10の屈曲性をさらに向上させることができる。
さらに、本実施形態において、銅層13が、Zn,Sn,Ni,Al,Si,Mnのから選択される一種又は二種以上を合計で0.1mass%以上含むとともに、Cuの含有量が45mass%以上とされた銅合金で構成されている場合には、抗菌性を十分に確保することができるとともに、銅層13の耐久性が向上し、変色の発生を抑制することができる。
また、本実施形態において、銅層13の表層にCu酸化膜が形成されており、このCu酸化膜におけるCuOとCuOのモル比率CuO/CuOが、CuO/CuO<1である場合には、CuOがCuOよりも多く含まれており、抗菌性を十分に確保することができる。
さらに、本実施形態において、基板11の下地層とは反対側の面に粘着層15が設けられている場合には、粘着層15を用いて、各種製品の表面に抗菌部材10を容易に配置することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、粘着層を形成したものとして説明したが、粘着層を形成しないものであってもよい。
また、銅層を構成する銅又は銅合金は、実施形態に記載したものに限定されることはなく、各種銅合金を用いることができる。例えば、CuとZnを主成分とする黄銅にSn、Ni,Al,Pb,Mn,Si,P等を添加したものであってもよい。この場合でも、Cuの含有量を45mass%以上とすることが好ましい。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
銅層を成膜する際に使用されるスパッタリングターゲットを、以下に示す手順で製造した。
まず、原料として、純度99.9mass%以上のCu原料と、純度99mass%以上の金属原料とを所定の組成となるように秤量する。次に、溶解炉中において、Cu原料を高真空または不活性ガス雰囲気中で溶解し、得られた溶湯に所定の含有量の金属原料を添加する。その後、真空または不活性ガス雰囲気中で溶解して溶解鋳造インゴットを作製する。得られたインゴットを冷間圧延した後、大気中で例えば600℃、2時間保持の熱処理を施し、次いで機械加工することにより、直径152.4mm、厚さ6mmの寸法を有する円板状に作製し、銅層を形成するスパッタリングターゲットを製造した。
下地層を成膜する際に使用されるスパッタリングターゲットについては、株式会社高純度化学より購入した表1および表2に記載のものを用いた。
これらのスパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートに半田付けし、これを直流マグネトロンスパッタ装置に装着し、真空排気装置にて直流マグネトロンスパッタ装置内を5×10-5Pa以下まで排気した後、Arガスを導入してターゲットと平行に配置した洗浄済みの表1および表2に示す基板と、上記ターゲットとの間にプラズマを発生させることで下地層および銅層を形成した。下地層の成膜条件、および、銅層の成膜条件を以下に示す。
<下地層の成膜条件>
使用ガス:Ar+2体積%酸素
ガス圧:0.67Pa
スパッタリング電力:直流300W
ターゲット/基板間距離:70mm
<銅層の成膜条件>
到達真空度:5×10-5Pa以下
使用ガス:Ar
ガス圧:0.67Pa
スパッタリング電力:直流200W
ターゲット/基板間距離:70mm
上述のようにして得られた抗菌部材について、以下の項目について評価した。
(銅層を形成するスパッタリングターゲットの成分組成)
銅層を形成するスパッタリングターゲットから分析用サンプルを採取して、ICP発光分光分析法によって成分を測定した。なお、銅層を形成するスパッタリングターゲットと成膜した銅層の組成とが一致していることを確認している。
なお、表中の「他」の組成としては、Pb,Mg,Zr,Te,Cr,Fe,Co,P等を用いることができる。
(膜厚測定)
下地層および銅層の厚みは、透過電子顕微鏡(TEM)によって下地層および銅層の断面を観察することで確認し、狙い値通りの厚みで成膜されていることを確認した。TEM観察のための試料作製には、例えば、クロスセクションポリッシャー(CP)や、集束イオンビーム(FIB)を用いることができる。
(屈曲性)
抗菌部材に対して、温度30℃、相対湿度90%の環境下に24時間保持した後に、曲率半径6mmで凹と凸とに交互に100回ずつ屈曲試験を行い、試験後に抗菌部材を観察し、剥離及び内部の剥離(クラック)の有無を確認した。
具体的には、図2の(a)に示すように、抗菌部材10を、屈曲試験用治具20の台部20b上に立設された一対の挟持体20aの間に挟み、図2の(b)(c)に示すように、左に1回、右に1回曲げることを100回ずつ行う。なお、一対の挟持体20aは、それぞれ先端が曲率半径6mmの断面円弧形状とされている。すなわち、挟持体20aの曲率半径6mmmの先端に抗菌部材10が位置するようにセットして試験を行った。
クラックの有無については、5回試験を行い、基板側から観察したクラックが5回とも発生した場合は「×」、1回~4回の場合は「○」、1回もクラックが確認されなかったものを「◎」とした。
(抗菌活性評価)
抗菌活性は表面に形成するスパッタリングターゲットの銅および銅合金の抗菌活性を評価し、その特性とした。
スパッタリングに用いたターゲットの表面をサンドペーパー#1000にて研磨を行い、新生面を露出させた後、表面酸化状態を調整してサンプルとした。リファレンス材には銅成分が含まれていないステンレス板を用いた。その後、JIS Z 2801に準拠し各試験片の表面に一定の黄色ブドウ球菌を接種し、30min後の生菌数(cfu)を定量した。N=3で実施し、定量された生菌数を用い、以下の式から得られる菌の減少率を求め、菌の減少率が2を超えた場合には「○」、菌の減少率が0を超え2以下の場合には「△」、菌の減少率が0以下の場合には「×」として評価を行った。
菌の減少率=-log(2h後の試験片の生菌数(cfu)/初期の接種菌数(cfu))
(表面の酸化物の存在形態)
スパッタリングターゲットと同等のサンプル用意し、酸化・還元雰囲気で熱処理することで、表面に存在する酸化物の形態を表3のように変化させた。これにより表面酸化物のCuOとCuOの比率を変化させ、その抗菌活性を測定した。表面酸化物の状態は、XPS分析にて測定した。
Figure 2022014495000002
Figure 2022014495000003
Figure 2022014495000004
下地層を形成せずに基板(PET樹脂基板)上に直接銅層を厚み1000nmで成膜した比較例においては、屈曲性が「×」となった。基板からの水分が銅層側に移動し、基板と銅層との密着性が低下したためと推測される。
これに対して、可撓性樹脂材料からなる基板と銅層との間に金属酸化物からなる下地層を形成した本発明例1-30においては、屈曲性「〇~◎」となった。また、表1および表2に示す組成の銅層においては、いずれも菌の減少率が2を超えて「〇」との評価になった。
さらに、表3に示すように、銅層の表層に形成されたCu酸化膜におけるCuOとCuOのモル比率CuO/CuOを1未満とした本発明例28においては、Cu酸化膜におけるCuOとCuOのモル比率CuO/CuOが1以上であった本発明例31に比べて、抗菌性が向上することが確認された。
以上のことから、本発明例によれば、抗菌性および屈曲性に優れ、安定して使用することが可能な抗菌部材を提供可能であることが確認された。
10 抗菌部材
11 基板
12 下地層
13 銅層

Claims (9)

  1. 基板と、この基板上に成膜された下地層と、この下地層の前記基板とは反対側の面に形成されるとともに最表層に配置された銅層と、を有しており、
    前記銅層は、銅又は銅合金で構成され、前記下地層は、金属酸化物で構成されており、
    前記基板は、可撓性樹脂材料で構成されていることを特徴とする抗菌部材。
  2. 曲率半径6mmでの屈曲試験を100回実施後において、クラックが確認されないことを特徴とする請求項1に記載の抗菌部材。
  3. 前記銅層の厚みが5μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抗菌部材。
  4. 前記下地層の厚みが500nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抗菌部材。
  5. 前記基板の厚みが500μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抗菌部材。
  6. 前記下地層を構成する前記金属酸化物は、In酸化物,Sn酸化物,Zn酸化物,Nb酸化物,Ti酸化物,Al酸化物,Ga酸化物,W酸化物,Mo酸化物、Si酸化物,Zr酸化物,Ta酸化物,Y酸化物,Ge酸化物,Cu酸化物,Ag酸化物から選択されるいずれか一種又は二種以上を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の抗菌部材。
  7. 前記銅層は、Zn,Sn,Ni,Al,Mnのから選択される一種又は二種以上を合計で0.1mass%以上含むとともに、Cuの含有量が45mass%以上とされた銅合金で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の抗菌部材。
  8. 前記銅層の表層には、Cu酸化膜が形成されており、このCu酸化膜におけるCuOとCuOのモル比率CuO/CuOが、CuO/CuO<1であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の抗菌部材。
  9. 前記基板の前記下地層とは反対側の面に粘着層が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の抗菌部材。
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