JP2022014152A - 軟磁性粉末、組成物、成形品、軟磁性粉末の製造方法 - Google Patents

軟磁性粉末、組成物、成形品、軟磁性粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】飽和磁化が高く、軟磁気特性を具備する軟磁性粉末及びその製造方法を提供する。【解決手段】鉄原子で構成される結晶構造を有する粒子を含む、粉末であり、結晶構造を構成する2以上の鉄原子の間に窒素原子及び炭素原子が存在し、組成が下式(1)で表される、軟磁性粉末;酸化鉄を含む原料粉末に還元処理を施すことで、鉄原子で構成される結晶構造を有する粒子を含む鉄粉末を得た後に、鉄粉末に窒化処理を施し、次いで炭化処理を施すことで、前記結晶構造に窒素原子及び炭素原子を保持させ、組成が下式(1)で表される粉末を得る、軟磁性粉末の製造方法。Fe100-(α+β+γ)CαNβOγ・・・式(1)式(1)中、αは1~11原子%であり、βは0.1~10原子%であり、γは0.1~10原子%である。【選択図】なし

Description

本発明は、軟磁性粉末、組成物、成形品、軟磁性粉末の製造方法に関する。
一般に磁性材料は、硬磁性材料と軟磁性材料に分類できる。特に、軟磁性材料は磁気異方性が低く、外部磁場の影響を受けて磁化しやすい。加えて、軟磁性材料は外部磁場の増減に対して磁気分極の増減が比例する傾向があり、ヒステリシス特性が小さい。軟磁性材料は、これらの利点があることから産業的な利用価値が高い。
軟磁性材料として、Fe-Si-Al系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Si-Bのアモルファス合金、Fe-Si-B-Cu-Nbのナノ結晶合金等が知られている。しかし、これらの軟磁性材料は飽和磁化が低いという問題がある。そのため、これらの軟磁性材料を磁気デバイスに適用した際には、磁気デバイスの出力を高くできない。
一方で飽和磁化が高く、磁気デバイスの出力を高くすることができる磁性材料として、窒化鉄粉末が知られている。窒化鉄粉末としては、α’’-Fe16等の窒化鉄を含む粉末が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
特許文献1には、窒化鉄系磁性粉末が記載されている。特許文献1の実施例では、マグネタイト等の粉末を還元処理した後、アンモニアガスを用いて加圧条件下で窒化処理を行い、被処理粉末の表面を除酸化処理して磁性粉末を得ている。
特許文献2には、窒化鉄粉末の製造方法が記載されている。特許文献2では、磁場を印加した状態で鉄粉をカルボン酸溶液中で溶解してゲルを作製し、当該ゲルの乾燥物から有機成分を除去し、次いで還元処理及び窒化処理を施して窒化鉄粒子を生成することが提案されている。
特開2005-183932号公報 特開2013-016750号公報
しかし、従来の窒化鉄粉末は軟磁性材料と比較して磁気異方性が高く、ヒステリシス特性も大きい。実際、特許文献1、2で提案されている窒化鉄粉末は、いずれも保磁力を高くすることを目的に製造されており、軟磁気特性を具備しない。
本発明は、飽和磁化が高く、軟磁気特性を具備する軟磁性粉末及びその製造方法を提供する。
本発明は下記の態様を有する。
[1] 鉄原子で構成される結晶構造を有する粒子を含む、粉末であり、前記結晶構造を構成する2以上の鉄原子の間に窒素原子及び炭素原子が存在し、組成が下式(1)で表される、軟磁性粉末。
Fe100-(α+β+γ)αβγ・・・式(1)
式(1)中、αは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する炭素原子の比率であり、かつ前記αは1~11原子%であり;βは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する窒素原子の比率であり、かつ前記βは0.1~10原子%であり;γは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する酸素原子の比率であり、かつ前記γは0.1~10原子%である。
[2] 前記結晶構造の結晶子径が、5~500nmである、[1]に記載の軟磁性粉末。
[3] 前記粉末の平均粒子径が、0.1~150μmである、[1]又は[2]に記載の軟磁性粉末。
[4] 保磁力が、150Oe以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の軟磁性粉末。
[5] 飽和磁化が、150emu/g以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の軟磁性粉末。
[6] BET法による比表面積が、0.05~300m/gである、[1]~[5]のいずれかに記載の軟磁性粉末。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の軟磁性粉末を含む、組成物。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載の軟磁性粉末の成形物である、成形品。
[9] 前記軟磁性粉末の含有量が、前記成形物100体積%に対して40体積%以上である、[8]に記載の成形品。
[10] ボンド磁性体である、[8]又は[9]に記載の成形品。
[11] 酸化鉄を含み、かつ、平均粒子径が0.1~150μmである原料粉末に還元処理を施すことで、鉄原子で構成される結晶構造を有する粒子を含む鉄粉末を得た後に、前記鉄粉末に窒化処理を施し、次いで炭素含有化合物のガスを含む雰囲気下で100~300℃の条件で炭化処理を施すことで、前記結晶構造に窒素原子及び炭素原子を保持させ、組成が下式(1)で表される粉末を得る、軟磁性粉末の製造方法。
Fe100-(α+β+γ)αβγ・・・式(1)
式(1)中、αは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する炭素原子の比率であり、かつ前記αは1~11原子%であり;βは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する窒素原子の比率であり、かつ前記βは0.1~10原子%であり;γは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する酸素原子の比率であり、かつ前記γは0.1~10原子%である。
[12] 前記酸化鉄が、FeO、Fe及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一種以上である、[11]に記載の軟磁性粉末の製造方法。
[13] 前記結晶構造の結晶子径が、5~500nmである、[11]又は[12]に記載の軟磁性粉末の製造方法。
[14] 前記還元処理を、露点が-100~0℃である水素ガスを含む雰囲気下で行う、[11]~[13]のいずれかに記載の軟磁性粉末の製造方法。
[15] 前記窒化処理を、アンモニアを含む雰囲気下で行う、[11]~[14]のいずれかに記載の軟磁性粉末の製造方法。
[16] 前記窒化処理の処理温度が、100~300℃である、[11]~[15]のいずれかに記載の軟磁性粉末の製造方法。
[17] 前記炭化処理の後、100~300℃の条件で熱処理を前記粉末にさらに施す、[11]~[16]のいずれかに記載の軟磁性粉末の製造方法。
本発明によれば、飽和磁化が高く、軟磁気特性を具備する軟磁性粉末が提供される。
実施例3の軟磁性粉末について測定したX線回折パターンを示す図である。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
<軟磁性粉末>
本発明の軟磁性粉末は、特定の粒子(III)を含む粉末である。粒子(III)は、鉄原子を主成分とし、さらに炭素原子、窒素原子で構成される結晶構造(III)を有する。結晶構造(III)においては、2以上の鉄原子の間に窒素原子及び炭素原子が存在する。
結晶構造(III)は鉄の正方晶となることが一般的である。また、鉄の正方晶においては、直方体又は立方体の各頂点に鉄原子が配置される。そのため、本発明の軟磁性粉末においては、結晶構造(III)の各頂点に配置された2以上の鉄原子の間に窒素原子及び炭素原子が存在すると考えられる。
本発明の軟磁性粉末においては、結晶構造(III)が本発明の軟磁性粉末の特徴的な磁気特性を実質的に発現すると考えられている。明確なメカニズムは不明であるが、鉄で構成される結晶構造の一部に窒素原子及び炭素原子が取り込まれる結果、軟磁気特性(すなわち、保磁力が低いこと)と高い飽和磁化との両方を同時に実現でき、飽和磁化の高い軟磁性材料として利用できると考えられる。
粒子(III)は、粒子1つあたりに結晶構造(III)を1つだけ有してもよく、粒子1つあたりに複数の結晶構造(III)を有してもよい。通常、粒子(III)は複数の結晶構造(III)を有する場合が多い。この場合、粒子(III)は、複数の結晶構造(III)の集合体であるとも言える。結晶構造(III)の集合体においては、複数の結晶構造(III)同士の間に境界面が形成されていると考えられる。
本発明の軟磁性粉末は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、粒子(III)以外の粒子をさらに含んでもよい。
本発明の軟磁性粉末の組成は、下式(1)で表される。
Fe100-(α+β+γ)αβγ ・・・式(1)
式(1)中、αは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する炭素原子の比率であり;βは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する窒素原子の比率であり;γは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する酸素原子の比率である。
αは、鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対して1~11原子%であり、1.2~11原子%が好ましく、6~11原子%がより好ましく、6~10原子%がさらに好ましく、7~11原子%が特に好ましい。αが前記下限値以上であるため、炭素量が充分に多くなり、軟磁性粉末の保磁力が低くなる。その結果、軟磁性材料として利用できるほど充分な軟磁気特性が発現する。αが前記上限値以下であるため、FeC等の鉄の炭化物の含有量が少なく、高い飽和磁化が維持される。
βは、鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対して0.1~10原子%であり、1~10原子%が好ましく、1~8原子%がより好ましく、2~8原子%がさらに好ましく、1~5原子%が特に好ましい。βが前記下限値以上であるため、窒素量が充分となり、軟磁性粉末の飽和磁化が高い。βが前記上限値以下であるため、FeN等の鉄の窒化物の含有量が少なく、高い飽和磁化が維持される。
γは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対して0.1~10原子%であり、0.1~8原子%が好ましく、0.1~6原子%がより好ましく、1.5~6原子%がさらに好ましく、2~5原子%が特に好ましい。γが前記下限値以上であるため、結晶構造(III)を構成する2以上の鉄原子の間に窒素原子及び炭素原子が保持される。γが前記上限値以下であるため、Fe等の鉄の酸化物の含有量が少なく、高い飽和磁化が維持される。
α、β、γはガス質量分析法により測定できる。ガス質量分析に使用できる装置としては、例えば、堀場製作所製の酸素・窒素分析装置「EMGA-92」、炭素・硫黄分析装置「EMIA-Expert」が挙げられる。
鉄原子量(100-(α+β+γ))は、例えば、ICP発光分光分析、蛍光X線分析により測定することも可能である。ICPは、Inductively Coupled Plasmaの略である。
本発明の軟磁性粉末の組成が前記式(1)で表され、α、β、γが所定の範囲内であることから、本発明の軟磁性粉末は保磁力が低くなり、軟磁気特性と高い飽和磁化との両方を同時に実現できる。その結果、高出力が求められる磁気デバイスにも適用できる高い飽和磁化と、軟磁性材料として充分な軟磁気特性が発現する。
結晶構造(III)の結晶子径は、5~500nmが好ましく、10~500nmがより好ましく、20~100nmがさらに好ましい。結晶子径が前記下限値以上であると、酸素量が過剰に高くなりにくく、軟磁気特性が発現しやすい。結晶子径が前記上限値以下であると、窒素原子及び炭素原子が結晶構造(III)の一部に保持されやすくなり、α、βが所定の下限値以上の値となりやすい。
結晶構造(III)の結晶子径は、軟磁性粉末についてX線回折パターンを測定し、下式(2)に示すシェラーの式を用いて算出できる。
D=Kλ/(Bcosθ) ・・・式(2)
式(2)中、Dは結晶構造(III)の結晶子径であり、λはX線の波長であり、θはブラック角であり、Kは定数で0.9である。X線回折パターンの測定には、X線回折装置(例えば、株式会社リガク製「SmartLab」等)を使用できる。
軟磁性粉末の保磁力は150Oe以下が好ましく、100Oe以下がより好ましく、50Oe以下がさらに好ましい。保磁力が前記下限値以上であると、軟磁気特性が充分に発現しているといえ、軟磁性材料として利用しやすい。保磁力の下限値は特に限定されない。保磁力は、例えば、1Oe以上でもよく、10Oe以上でもよい。
保磁力は、磁力計(例えば、東英工業株式会社製「VSM-5型」)を用いて、磁界:15kOe、温度:20℃の条件下で測定できる。
軟磁性粉末の飽和磁化は150emu/g以上が好ましく、180emu/g以上がより好ましく、200emu/g以上がさらに好ましい。飽和磁化が前記下限値以上であると、高出力が求められる磁気デバイスに充分に適用できる。飽和磁化の上限値は特に限定されない。飽和磁化は、例えば、220emu/g以下でもよく、210emu/g以下でもよい。
飽和磁化は、磁力計(例えば、東英工業株式会社製「VSM-5型」)を用いて、磁界:15kOe、温度:20℃の条件下で測定できる。
軟磁性粉末のBET法による比表面積は、0.05~300m/gが好ましく、1~300m/gがより好ましく、50~100m/gがさらに好ましい。軟磁性粉末のBET法による比表面積が前記下限値以上であると、成形品とした際の磁束密度が高くなる傾向がある。軟磁性粉末のBET法による比表面積が前記上限値以下であると、軟磁性粉末が化学的に安定化する傾向があり、軟磁性粉末の取扱性がよくなる。
軟磁性粉末のBET法による比表面積は、熱伝導度検出器を用いた流動法によって測定できる。軟磁性粉末のBET法による比表面積の測定には、例えば、株式会社島津製作所製フローソーブ「III2305/231」を使用できる。
軟磁性粉末の平均粒子径は、0.1~150μmが好ましく、1~150μmがより好ましく、1~100μmがさらに好ましく、1~60μmが特に好ましい。平均粒子径が前記下限値以上であると、軟磁性粉末の成形性がよくなる。その結果、成形物とした際に高密度で軟磁性粉末を充填でき、成形品の磁束密度が高くなる。平均粒子径が前記上限値以下であると、軟磁性粉末の窒化度、炭化度が粉末全体で均一となり、軟磁気特性が発現しやすい。
平均粒子径は、粒子分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製「MT3000シリーズ」)により測定できる。
特許文献1に記載の従来の窒化鉄系磁性粉末は、平均粒子径がナノメートルオーダーであり、成形物とした際に磁性粉末の密度が低く、成形品の磁束密度を充分に高くできない、という問題もあった。これに対し、本発明の軟磁性粉末においては、後述の実施例でも示すように、平均粒子径をマイクロメートルオーダーとすることができる。したがって、飽和磁化が高く、軟磁気特性を具備するという利点に加えて、成形品の磁束密度を従来よりも高くすることができる、という利点もある。
(作用機序)
以上説明した本発明の軟磁性粉末においては、2以上の鉄原子で構成される結晶構造に炭素原子が存在する。そのため、粉末の保磁力が低くなり、軟磁気特性が発現する。加えて、式(1)で表される所定の組成において、αが充分に高く、炭素量が充分である。したがって、本発明の軟磁性粉末は軟磁性材料として利用できるほど充分な軟磁気特性を具備する。
また、本発明の軟磁性粉末においては、2以上の鉄原子で構成される結晶構造に窒素原子が存在する。加えて、式(1)で表される所定の組成において、βが充分に高く、窒素量が充分である。したがって、本発明の軟磁性粉末の飽和磁化が従来の窒化鉄粉末と同等以上に高く維持される。
<軟磁性粉末の製造方法>
本発明者らは窒化鉄の磁気特性の基礎的研究を行ってきた。その研究過程で、FeO、Fe、Fe等の酸化鉄を含む原料粉末を、水素雰囲気中で還元して、酸素が微量に残存した鉄粉末とした後、アンモニア等のガス雰囲気中で窒化処理を行い、窒化鉄粉末を合成し、次いでアセチレン等の炭素含有化合物のガス雰囲気中で炭化処理を行うと、窒素、炭素、酸素を含む磁性粉末が得られ、この磁性粉末が軟磁気特性を発現していることを初めて知見した。
以下、本発明の軟磁性粉末の製造方法の詳細について説明する。
本発明の軟磁性粉末の製造方法では、組成が下式(1)で表される粉末を得る。
Fe100-(α+β+γ)αβγ・・・式(1)
式(1)中、α、β、γの詳細及び好ましい態様は、<軟磁性粉末>の項で説明した内容と同内容である。
従来の窒化鉄粉末の製造においては、鉄原子で構成される結晶構造の内部に窒素原子及び炭素原子の両方を保持させることができず、窒化鉄粉末に軟磁気特性を付与できなかった。これに対し、本発明においては、γが所定の下限値以上であるため、鉄原子で構成される結晶構造の内部に炭素原子がさらに取り込まれる。その結果、軟磁性材料として利用できるほど充分な軟磁気特性が発現する。
本発明の軟磁性粉末の製造方法では、酸化鉄を含み、かつ、平均粒子径が0.1~150μmである原料粉末に還元処理を施すことで、鉄原子で構成される結晶構造(I)を有する粒子(I)を含む鉄粉末を得る。鉄粉末は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、粒子(I)以外の粒子をさらに含んでもよい。
原料粉末の平均粒子径は、0.1~150μmであり、1~150μmが好ましく、1~100μmがさらに好ましく、1~60μmが特に好ましい。平均粒子径が前記下限値以上であると、炭化反応が充分に起き、充分な軟磁気特性が発現する。また、軟磁性粉末を成形物とした際に高密度で充填でき、成形品の磁束密度が高くなる。平均粒子径が前記上限値以下であると、軟磁性粉末の窒化度、炭化度が粉末全体で均一となり、軟磁気特性が発現しやすい。ここで、軟磁性粉末の製造の際に、分級等の粒子径を調整していなければ、得られる軟磁性粉末の平均粒子径は、原料粉末の平均粒子径と原則としてほとんど一致すると考えられる。
軟磁気特性を具備する軟磁性粉末が得られやすいことから、原料粉末の酸化鉄は、FeO、Fe及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一種以上が好ましい。
原料粉末に還元処理を施すことで、鉄原子で構成される結晶構造(I)を有する粒子(I)を形成できる。ここで、酸化鉄の還元の際に、微量の酸素原子が残存した鉄粉末とすることができ、還元の際に残存した酸素原子は、得られる軟磁性粉末にも存在する。
結晶構造(I)は、例えば、鉄の立方晶となる。鉄粉末は、窒化処理及び炭化処理を施す前の粉末であるから、結晶構造(I)には原則として窒素原子及び炭素原子が実質的に存在しない。
結晶構造(I)の結晶子径は、5~500nmが好ましく、10~500nmがより好ましく、20~100nmがさらに好ましい。結晶子径が前記下限値以上であると、酸素量が過剰に高くなりにくく、軟磁気特性が発現しやすい。結晶子径が前記上限値以下であると、その後の窒化処理、炭化処理の際に窒素原子、炭素原子を結晶構造に保持させやすくなり、α、βが所定の下限値以上に高くなる傾向がある。
ここで、本発明の軟磁性粉末の製造方法においては、鉄粉末に窒化処理、炭化処理を順次施すことで、結晶構造(I)が、後述の結晶構造(II)、結晶構造(III)と順次変化する。このように鉄粉末中の結晶構造(I)は、製造の過程で原子組成が変化するが、その結晶子径は大きく変化しないと考えられる。そのため、鉄粉末における結晶構造(I)の結晶子径は、軟磁性粉末の結晶構造(III)でもそのまま維持されると考えられる。すなわち、軟磁性粉末中の粒子が有する結晶構造(III)の結晶子径は、鉄粉末の結晶構造(I)の結晶子径と原則としてほとんど一致すると考えられる。
還元処理は、水素ガスを含む雰囲気下で行うことが好ましい。水素ガスの露点は-100~0℃が好ましく、-80~-20℃がより好ましく、-100~-60℃がさらに好ましい。水素ガスの露点が前記下限値以上であると、結晶構造(I)の結晶子径が過剰に大きくなりにくく、その後の窒化処理、炭化処理の際に窒素原子、炭素原子を結晶構造に保持させやすくなる。水素ガスの露点が前記上限値以下であると、保磁力がさらに低くなり、充分な軟磁気特性が発現しやすい。原料粉末の還元反応が充分に進行し、酸化鉄が残留しにくい。
還元処理の処理温度は200~600℃が好ましく、300~500℃がより好ましい。還元処理の処理温度が前記下限値以上であると、原料粉末の還元反応が充分に進行し、酸化鉄が残留しにくい。還元処理の処理温度が前記上限値以下であると、結晶構造(I)の結晶子径が過剰に大きくなりにくく、その後の窒化処理、炭化処理の際に窒素原子、炭素原子を結晶構造に保持させやすくなる。
還元処理の処理時間は1~20時間が好ましく、3~10時間がより好ましい。還元処理の処理時間が前記下限値以上であると、原料粉末の還元反応が充分に進行し、酸化鉄が残留しにくい。還元処理の処理時間が前記上限値以下であると、結晶構造(I)の結晶子径が過剰に大きくなりにくく、その後の窒化処理、炭化処理の際に窒素原子、炭素原子を結晶構造に保持させやすくなる。
本発明の軟磁性粉末の製造方法では、鉄粉末を得た後に、鉄粉末に窒化処理を施し、次いで炭素含有化合物のガスを含む雰囲気下で100~300℃の条件で炭化処理を施すことで、粒子(I)に形成された結晶構造(I)に窒素原子及び炭素原子を順次保持させ、結晶構造(III)を得る。
窒化処理においては、粒子(I)を含む鉄粉末に、炭化処理の前に鉄粉末に窒化処理を施すことで、粒子(I)に形成された結晶構造(I)に窒素原子を保持させることができる。その結果、窒化鉄の粒子(II)を含む窒化鉄粉末が生成する。窒化鉄の粒子(II)は、2以上の鉄原子の間に窒素原子が存在する結晶構造(II)を有する。このように粒子(I)に窒化処理を施すことで、結晶構造(I)を、窒素原子を含む結晶構造(II)とすることができる。
結晶構造(II)においては、近接する鉄原子間に窒素原子が導入されることで、鉄原子間の距離が結晶構造(I)と比較して拡張されていると考えられる。そのため、窒化処理に次いで炭素処理を施すことで、結晶構造(II)を構成する2以上の鉄原子の間に炭素原子をさらに保持させて、軟磁気特性を発現する結晶構造(III)とすることができると考えられる。
窒化処理は、アンモニアを含む雰囲気下で行うことが好ましい。窒化処理の際には、アンモニアに加えて水素ガス、不活性ガスを併用してもよい。
窒化処理の処理温度は100~300℃が好ましく、150~220℃がより好ましい。窒化処理の処理温度が前記下限値以上であると、結晶構造(I)に窒素原子を保持させやすく、結晶構造(II)を形成しやすい。窒化処理の処理温度が前記上限値以下であると、激しい窒化反応を抑制でき、FeN等の不要な窒化物の生成を抑制できる。
窒化処理の処理時間は、1~20時間が好ましく、3~10時間がより好ましい。窒化処理の処理時間が前記下限値以上であると、窒化反応が充分に進行し、βを所定の下限値以上に調整しやすい。窒化処理の処理時間が前記上限値以下であると、FeN等の不要な窒化物の生成を抑制できる。
炭化処理は、炭素含有化合物のガスを含む雰囲気下で行う。炭素含有化合物のガスとしては、例えば、アセチレンガス、エチレンガス、メタンガス等の有機化合物のガスでもよく、一酸化炭素、二酸化炭素等の無機化合物のガスでもよい。これらの中でも、結晶構造(II)に炭素原子を保持させて結晶構造(III)を形成しやすいことから、アセチレンガスが好ましい。
炭化処理の際には、炭素原子の比率、すなわちαが高くなる傾向があることから、炭素含有化合物のガスに加えて水素ガスを併用してもよい。
炭化処理の条件について、炭化処理の処理温度は100~300℃であり、120~280℃がより好ましい。炭化処理の処理温度が前記下限値以上であると、αが充分に高くなり、所定の組成の軟磁性粉末が得られやすい。炭化処理の処理温度が前記上限値以下であると、激しい炭化反応を抑制でき、FeC等の不要な炭化物の生成を抑制できる。
炭化処理の処理時間は1~20時間が好ましく、3~10時間がより好ましい。炭化処理の処理時間が前記下限値以上であると、αが充分に高くなり、所定の組成の軟磁性粉末が得られやすい。炭化処理の処理時間が前記上限値以下であると、FeC等の不要な炭化物の生成を抑制できる。
本発明の軟磁性粉末の製造方法においては、炭化処理の後に得られた粉末に、100~300℃の条件で熱処理をさらに施してもよい。熱処理により、軟磁性粉末に含まれる窒素原子、炭原子素、酸素原子の組成を調整でき、軟磁性粉末の磁気特性を微調整することもできる。ただし、熱処理の条件によっては、粉末に付与された軟磁気特性が損なわれる場合がある。そのため熱処理の有無は、この点に留意しながら所望の軟磁性粉末の性状を考慮して決定される。
熱処理の処理温度は、100~300℃が好ましく、150~250℃がより好ましい。熱処理の処理時間は、1~50時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。熱処理の処理温度、処理時間が前記数値範囲内であると、軟磁気特性を維持しながら、軟磁性粉末の磁気特性を調整できる。
(用途)
本発明の軟磁性粉末は、軟磁性材料として利用できる。軟磁性材料の形態としては、例えば、組成物、成形品が挙げられる。
組成物は、本発明の強磁性粉末を含む。組成物は、軟磁性粉末に加えて、バインダー樹脂、添加剤をさらに含んでもよい。
バインダー樹脂としては、成形品を得る際の成形方法にあわせて適宜選択できる。例えば、射出成形、押出成形、カレンダ-成形の場合には、熱可塑性樹脂を使用できる。圧縮成形の場合には、熱硬化性樹脂を使用できる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、ポリフェニレンサルファイド、液晶樹脂、ゴム等のエラストマーが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノ-ル樹脂等が挙げられる。ただし、バインダー樹脂はこれらの例示に限定されず、種々の成形方法に応じて選択できる。
添加剤としては、可塑剤、滑剤、カップリング剤等が挙げられる。これらの添加剤の使用により、組成物を成形品とした際の成形性、磁気特性を高めることができる。また、フェライト磁石粉末等の本発明の軟磁性粉末以外の磁性粉末を添加剤として組成物に配合してもよい。
本発明の組成物は、例えば、強磁性粉末とバインダー樹脂と必要に応じて添加剤とを混合し、混練することで製造できる。混合の際には、ヘンシェルミキサー、V字ミキサー等の混合機等を使用してもよい。混練の際には一軸混練機、二軸混練機、押出混練機等を使用してもよい。
強磁性粉末の含有量は、組成物100質量%に対して60~95質量%が好ましく、80~90質量%がより好ましい。
バインダー樹脂の含有量は、組成物100質量%に対して1~10質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。
添加剤の含有量は、組成物100質量%に対して1~2質量%が好ましく、0.1~0.5質量%がより好ましい。
成形品は、本発明の軟磁性粉末の成形物である。成形品中の軟磁性粉末の含有量は、成形物100体積%に対して40体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましい。軟磁性粉末の含有量が成形物100体積%に対して40体積%以上であると、成形品から発生する磁束密度がさらに高くなる。その結果、高出力が求められる磁気デバイスにさらに好適に適用できる。
成形品は、例えば、ボンド磁性体の形態でもよい。ボンド磁性体は、本発明の軟磁性粉末とバインダー樹脂と必要に応じて添加剤とを含む混合物を成形することで製造できる。バインダー樹脂としては、上述の組成物について例示したものと同様のものが挙げられる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
<測定方法>
(原料粉末の平均粒子径)
原料粉末の平均粒子径は、マイクロトラック・ベル株式会社製「MT3000II型」を使用して測定した。
(軟磁性粉末の平均粒子径)
軟磁性粉末の平均粒子径は、マイクロトラック・ベル株式会社製「MT3000II型」を使用して測定した。
(軟磁性粉末の比表面積)
軟磁性粉末の比表面積(m/g)は、株式会社島津製作所製フローソーブ「III2305/231」を使用してBET法により測定した。
(結晶子径)
結晶子径(nm)は、X線回折装置(株式会社リガク製「SmartLab」等)を用いて、X線回折パターンを測定し、下式(2)のシェラーの式を用いて算出した。
D=Kλ/(Bcosθ) ・・・式(2)
式(2)中、Dは結晶粒子の粒子径(nm)であり、λはX線の波長(nm)であり、θはブラック角(回折角2θの半分)であり、Kは定数で0.9である。
例えば、図1は実施例3の軟磁性粉末について測定したX線回折パターンを示す図である。実施例3では図1に示すX線回折パターンに基づいてシェラーの式から結晶子径を算出した。
(飽和磁化、保磁力)
軟磁性粉末の飽和磁化(emu/g)、保磁力(Oe)は、振動試料型磁力計(東英工業株式会社製「VSM-5型」)を使用して、磁界:15kOe、温度:20℃の条件下で測定した。
<原料粉末>
実施例で使用した原料粉末は以下の通りである。
粉末1:平均粒子径が35μmであり、Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末2:平均粒子径が0.05μmであり、Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末3:平均粒子径が0.1μmであり、Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末4:平均粒子径が12μmであり、Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末5:平均粒子径が55μmであり、Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末6:平均粒子径が90μmであり、Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末7:平均粒子径が150μmであり、Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末8:平均粒子径が180μmであり、Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末9:平均粒子径が15μmであり、FeOを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末10:平均粒子径が18μmであり、α―Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末11:平均粒子径が12μmであり、γ―Feを主成分とする酸化鉄粉末。
粉末12:平均粒子径が25μmであり、Feを主成分とする酸化鉄粉末。
<実施例1>
原料として、100mgの粉末1を石英サヤに入れ、熱処理炉に静置した。熱処理炉内に窒素ガスを流量3L/分の条件で15分供給し、窒素置換を行った。その後、露点が-80℃である水素ガスを流量3L/分の条件で熱処理炉内に供給し、10℃/分で400℃まで熱処理炉内を昇温し、熱処理炉内の温度を400℃で4時間保持した。熱処理炉内の温度を下げ、室温まで温度が低下したことを確認した後、水素ガスの供給を止め、窒素ガスを流量3L/分の条件で熱処理炉内に供給し、窒素置換を行い、粉末1に還元処理を施した。
次いで、アンモニアガスを流量3L/分の条件で熱処理炉内に供給し、10℃/分で160℃まで昇温し、熱処理炉内の温度を160℃で5時間保持した。熱処理炉内の温度を下げ、室温まで温度が低下したことを確認した後、アンモニアガスの供給を止め、窒素ガスを流量3L/分の条件で熱処理炉内に供給し、窒素置換を行い、被処理粉末に窒化処理を施した。
その後、アセチレン:25体積%と窒素:75体積%の混合ガスを3L/分の条件で熱処理炉内に供給し、10℃/分で100℃まで昇温し、熱処理炉内の温度を100℃で8時間保持した。熱処理炉内の温度を下げ、室温まで温度が低下したことを確認した後、アセチレンガスの供給を止め、窒素ガスを流量3L/分の条件で熱処理炉内に供給し、窒素置換を行い、被処理粉末に炭化処理を施した。その後熱処理炉から実施例1の軟磁性粉末を回収した。
<実施例2~5、比較例1、2>
炭化処理の処理温度を表1、2に示す各温度に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2~5の軟磁性粉末、比較例1、2の磁性粉末をそれぞれ得た。
<実施例6~10、比較例3、4>
窒化処理の処理温度を表1、2に示す各温度に変更した以外は、実施例3と同様にして実施例6~10の軟磁性粉末、比較例3、4の磁性粉末をそれぞれ得た。
<実施例11~15、比較例5、6>
還元処理の処理温度を表1、2に示す各温度に変更した以外は、実施例3と同様にして実施例11~15の軟磁性粉末、比較例5、6の磁性粉末をそれぞれ得た。
<実施例16~20、比較例7、8>
原料粉末を粉末1の代わりに表1、2に示す各粉末2~8に変更した以外は、実施例3と同様にして実施例16~20の軟磁性粉末、比較例7、8の磁性粉末をそれぞれ得た。
<実施例21~25、比較例9、10>
還元処理に使用する水素ガスの露点を表2に示す各温度に変更した以外は、実施例3と同様にして実施例21~25の軟磁性粉末、比較例9、10の磁性粉末をそれぞれ得た。
<実施例26~28>
原料粉末を粉末1の代わりに表2に示すように各粉末10~12に変更した以外は、実施例3と同様にして実施例26~28の軟磁性粉末をそれぞれ得た。
<実施例29~33>
表2に示すように原料粉末として粉末12に変更し、炭化処理に使用するガスを表2に示す各炭素含有化合物のガスに変更し、炭化処理の温度を180℃に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例29~33の軟磁性粉末を得た。
実施例29では、炭素含有化合物のガスとしてエチレンガスを使用した。
実施例30では、炭素含有化合物のガスとしてメタンガスを使用した。
実施例31では、炭素含有化合物のガスとして、アセチレンガス(25体積%)と水素ガス(75体積%)との混合ガスを炭化処理に使用した。
実施例32では、炭素含有化合物のガスとして、一酸化炭素ガス(50体積%)と水素ガス(50体積%)との混合ガスを炭化処理に使用した。
実施例33では、炭素含有化合物のガスとして、二酸化炭素ガス(50体積%)と水素ガス(50体積%)との混合ガスを炭化処理に使用した。
<実施例34~38、比較例11、12>
炭化処理の後、室温まで温度が低下したことを確認した後、アセチレンガスの供給を止め、真空下、100℃、10時間の条件で熱処理を炭化処理後の粉末にさらに施した以外は、実施例3と同様にして実施例34の軟磁性粉末を得た。
熱処理の条件を、アルゴンガス雰囲気下、200℃の条件に変更した以外は、実施例34と同様にして実施例35の軟磁性粉末を得た。
熱処理の条件を、水素ガス雰囲気下、200℃の条件に変更した以外は、実施例34と同様にして実施例36の軟磁性粉末を得た。
熱処理の条件を、窒素ガス雰囲気下、250℃の条件に変更した以外は、実施例34と同様にして実施例37の軟磁性粉末を得た。
熱処理の条件を、窒素(90体積%)と水素(10体積%)の混合ガス雰囲気下、300℃で10時間に変更した以外は、実施例34と同様にして実施例38の軟磁性粉末を得た。
熱処理の条件を、80℃、5時間の条件に変更した以外は、実施例34と同様にして比較例11の磁性粉末を得た。
熱処理の条件を、320℃、5時間の条件に変更した以外は、実施例38と同様にして比較例12の磁性粉末を得た。
Figure 2022014152000001
Figure 2022014152000002
各例で得られた粉末について、組成を分析し、比表面積、結晶構造(III)の結晶子径、飽和磁化、保磁力を上述の測定方法にしたがって測定した。結果を表3、4に示す。
Figure 2022014152000003
Figure 2022014152000004
実施例1~5の軟磁性粉末の組成は、Fe86.9-871-110.1-10であった。実施例1~5の軟磁性粉末の飽和磁化は180~215emu/gの範囲内であった。実施例1~5の軟磁性粉末の保磁力は2~50Oeの範囲内であった。実施例1~5の軟磁性粉末の比表面積は75m/gであった。
実施例6~10の軟磁性粉末の組成は、Fe84-871-110.1-10であった。実施例6~10の軟磁性粉末の結晶子径は20nmであった。実施例6~10の軟磁性粉末の飽和磁化は175~210emu/gの範囲内であった。実施例6~10の軟磁性粉末の保磁力は5~45Oeの範囲内であった。実施例6~10の軟磁性粉末の比表面積は75m/gであった。
実施例11~15の軟磁性粉末の組成は、Fe86.9-871-110.1-10であった。実施例11~15の軟磁性粉末の結晶子径は5~500nmの範囲内であった。実施例11~15の軟磁性粉末の飽和磁化は182~210emu/gの範囲内であった。実施例11~15の軟磁性粉末の保磁力は5~46Oeの範囲内であった。実施例11~15の軟磁性粉末の比表面積は75m/gであった。
実施例16~20の軟磁性粉末の組成は、Fe86.9-88.41.2-10.30.1-9.21.2-2.1であった。実施例16~20の軟磁性粉末の結晶子径は20nmであった。実施例16~20の軟磁性粉末の飽和磁化は174~211emu/gの範囲内であった。実施例16~20の軟磁性粉末の保磁力は3~48Oeの範囲内であった。実施例16~20の軟磁性粉末の比表面積は100~300m/gであった。
実施例21~25の軟磁性粉末の組成は、Fe78.9-88.91-110.1-100.1-10であった。実施例21~25の軟磁性粉末の結晶子径は5~500nmの範囲内であった。実施例21~25の軟磁性粉末の飽和磁化は178~212emu/gの範囲内であった。実施例21~25の軟磁性粉末の保磁力は5~45Oeの範囲内であった。実施例21~25の軟磁性粉末の比表面積は75m/gであった。
実施例26~28の軟磁性粉末の組成は、Fe87であった。実施例26~28の軟磁性粉末の結晶子径は20nmであった。実施例26~28の軟磁性粉末の飽和磁化は211~215emu/gの範囲内であった。実施例26~28の軟磁性粉末の保磁力は14~23Oeの範囲内であった。実施例26~28の軟磁性粉末の比表面積は75m/gであった。
実施例29~33の軟磁性粉末の組成は、Fe85-906-11であった。実施例29~33の軟磁性粉末の結晶子径は20nmであった。実施例29~33の軟磁性粉末の飽和磁化は209~214emu/gの範囲内であった。実施例29~33の軟磁性粉末の保磁力は11~21Oeの範囲内であった。実施例29~33の軟磁性粉末の比表面積は75m/gであった。
実施例34~38の軟磁性粉末の組成は、Fe84.8-89.77-110.9-1.82-2.6であった。実施例34~38の軟磁性粉末の結晶子径は31~36nmの範囲内であった。実施例34~38の軟磁性粉末の飽和磁化は201~211emu/gの範囲内であった。実施例34~38の軟磁性粉末の保磁力は9~18Oeの範囲内であった。実施例34~38の軟磁性粉末の比表面積は75m/gであった。
比較例1~4では、α、βが所定の数値範囲外であり、良好な軟磁気特性が得られなかった。
比較例5では原料粉末が充分に還元されず、酸化鉄が残留したと考えられる。比較例6では結晶構造(I)の結晶子径が過度に大きくなり、窒化反応が充分に起きなかったと考えられる。
比較例7では炭化反応が充分に起きず、良好な軟磁気特性が得られなかったと考えられる。また、比較例7では成形体密度が20%程度まで低下した。比較例8では窒化反応、炭化反応が充分に起きず、良好な軟磁気特性が得られず、飽和磁化も低下したと考えられる。
比較例9では原料粉末の還元処理が充分に起きなかったと考えられる。比較例10では、結晶子径が過剰に大きくなり、窒化反応が充分に起きなかったと考えられる。
比較例11、12では、粉末に熱処理を施す前までは軟磁気特性が発現し、良好な軟磁気特性が得られていたが、熱処理により炭素の量が過度に減少し、保磁力が700Oe程度まで増加し、炭化処理の直後は発現していた軟磁気特性が、熱処理によって損なわれたと考えられる。

Claims (17)

  1. 鉄原子で構成される結晶構造を有する粒子を含む、粉末であり、
    前記結晶構造を構成する2以上の鉄原子の間に窒素原子及び炭素原子が存在し、
    組成が下式(1)で表される、軟磁性粉末。
    Fe100-(α+β+γ)αβγ・・・式(1)
    式(1)中、αは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する炭素原子の比率であり、かつ前記αは1~11原子%であり;βは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する窒素原子の比率であり、かつ前記βは0.1~10原子%であり;γは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する酸素原子の比率であり、かつ前記γは0.1~10原子%である。
  2. 前記結晶構造の結晶子径が、5~500nmである、請求項1に記載の軟磁性粉末。
  3. 前記粉末の平均粒子径が、0.1~150μmである、請求項1又は2に記載の軟磁性粉末。
  4. 保磁力が、150Oe以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の軟磁性粉末。
  5. 飽和磁化が、150emu/g以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の軟磁性粉末。
  6. BET法による比表面積が、0.05~300m/gである、請求項1~5のいずれか一項に記載の軟磁性粉末。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の軟磁性粉末を含む、組成物。
  8. 請求項1~6のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の成形物である、成形品。
  9. 前記軟磁性粉末の含有量が、前記成形物100体積%に対して40体積%以上である、請求項8に記載の成形品。
  10. ボンド磁性体である、請求項8又は9に記載の成形品。
  11. 酸化鉄を含み、かつ、平均粒子径が0.1~150μmである原料粉末に還元処理を施すことで、鉄原子で構成される結晶構造を有する粒子を含む鉄粉末を得た後に、
    前記鉄粉末に窒化処理を施し、次いで炭素含有化合物のガスを含む雰囲気下で100~300℃の条件で炭化処理を施すことで、前記結晶構造に窒素原子及び炭素原子を保持させ、組成が下式(1)で表される粉末を得る、軟磁性粉末の製造方法。
    Fe100-(α+β+γ)αβγ・・・式(1)
    式(1)中、αは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する炭素原子の比率であり、かつ前記αは1~11原子%であり;βは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する窒素原子の比率であり、かつ前記βは0.1~10原子%であり;γは鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の合計100原子%に対する酸素原子の比率であり、かつ前記γは0.1~10原子%である。
  12. 前記酸化鉄が、FeO、Fe及びFeからなる群から選ばれる少なくとも一種以上である、請求項11に記載の軟磁性粉末の製造方法。
  13. 前記結晶構造の結晶子径が、5~500nmである、請求項11又は12に記載の軟磁性粉末の製造方法。
  14. 前記還元処理を、露点が-100~0℃である水素ガスを含む雰囲気下で行う、請求項11~13のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の製造方法。
  15. 前記窒化処理を、アンモニアを含む雰囲気下で行う、請求項11~14のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の製造方法。
  16. 前記窒化処理の処理温度が、100~300℃である、請求項11~15のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の製造方法。
  17. 前記炭化処理の後、100~300℃の条件で熱処理を前記粉末にさらに施す、請求項11~16のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の製造方法。
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