JP2022013879A - ポリエチレン微多孔膜捲回体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、微多孔膜の平面性を全幅かつ全長に渡って均一に長期に安定させ、生産性に優れるポリエチレン微多孔膜、ポリエチレン微多孔膜捲回体とその製造方法を提供することである。【解決手段】40℃、24時間熱処理後のMD熱収縮率とTD熱収縮率が、0≦(0.67×MD熱収縮率)+(1.33×TD熱収縮率)≦0.4となるポリエチレン微多孔膜を、円筒状のコアに捲回して成るポリエチレン微多孔膜捲回体であり、その巻き外と巻き内におけるMD熱収縮率の差を0.2%未満とする。ポリエチレン微多孔膜のMDの熱緩和処理を適切に行うことにより、それを得ることが出来る。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエチレン微多孔膜捲回体及びその製造方法に関する。
ポリエチレン微多孔膜は、種々の物質の分離や選択ろ過に用いられる、分離膜、セパレータ等として広く用いられおり、例えば、精密ろ過膜、燃料電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータなどとして使用されている。
これらの中でも、ポリエチレン微多孔膜は、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話、デジタルカメラなどに広く使用されているリチウムイオン電池用のセパレータとして特に好適に使用されている。その理由は、ポリエチレン微多孔膜が優れた膜の機械強度やシャットダウン特性を有していることが挙げられる。
リチウムイオン電池用のセパレータとしては、電池とした状態で高温サイクル試験、オーブン試験などにおいて優れた結果を示すなど、高温下での特性維持が求められると共に、異常発熱時の安全性が強く要求されるため、近年、ポリエチレン微多孔膜に安全性や耐熱性を付与する機能層を積層することがある。
機能層はポリエチレン微多孔膜に塗布されることで設けられる場合が多く、製造コストダウンのため、例えば、500mm幅以上への広幅化や1000m長以上のポリエチレン微多孔膜捲回体での加工が実施されている。
しかしながら、広幅で長尺のセパレータは微小な寸法変化でも影響が大きく、平面性を全幅かつ全長に渡って均一に長期に安定させることが困難であり、セパレータにたるみを生じる場合がある。特にポリエチレン微多孔膜のたるみは、機能層を塗布する際に蛇行の要因となり塗工時のロスが増大し生産性が上がらないという問題があった。
そのためセパレータには広幅で長尺であり、且つ良好な平面性かつ優れた加工性を要求されている。特許文献1から4には、平面性や長期寸法安定性の改善について微多孔膜の厚みやガーレー透気度の均一化や熱収縮率の低下の改善例が示されている。
国際公開第2014/054726号 国際公開第2013/099539号 国際公開第2013/146585号 国際公開第2015/190487号
しかしながら、特に熱収縮特性の改善についてはどれも熱緩和工程での改善手法が記載されているものの、捲回体全体の均一な平面性や長期寸法安定性を改善する技術は十分に開示されていない。例えば、熱緩和工程として微多孔膜の巻取り工程前までに高温で熱処理を行うことがあるが、この工程は電池特性に重要なガーレー透気抵抗度、突刺強度、引張強度といった他の物性に影響を与え、電池性能を損なう可能性がある。
そのため、巻取り工程前の熱緩和処理の代替手段として巻取り後の捲回体を熱緩和処理することがある。この工程は捲回体における長期寸法安定性の向上といった効果がある。しかし、特に幅広で且つ長尺の捲回体に熱緩和処理を行うと捲回体の巻き内と巻き外、幅方向で不均一な熱緩和が起こり微多孔膜の収縮が不均一となり最終製品であるセパレータの平面性が悪化する問題がある。
本発明の課題は、微多孔膜の平面性を全幅かつ全長に渡って均一に長期に安定させ、生産性に優れるポリエチレン微多孔膜、ポリエチレン微多孔膜捲回体とその製造方法を提供することである。
本発明者らは、広幅長尺の微多孔膜の巻取り後の捲回体を熱緩和処理すると捲回体全体を均一に緩和することができず、その結果、低温でのMD熱収縮率が不均一となることを見出した。MD熱収縮率がTD熱収縮率に影響を与える関係にあることから、不均一な熱緩和処理が収縮特性や平面性に影響を与えることを見出した。
そこで、巻取り工程前での熱緩和工程に着目し、その熱緩和工程を適切に制御することによりポリエチレン微多孔膜の40℃、24時間における熱収縮率を特定の範囲とすることで、他の特性を損なうことなく長期寸法安定性と優れた平面性の両立により、生産性に優れ、弛み等の外観特性にも優れるポリエチレン微多孔膜、ポリエチレン微多孔膜捲回体、及びその製造方法を見出した。
(1)ポリエチレン微多孔膜を、円筒状のコアに捲回して成る、ポリエチレン微多孔膜捲回体であって、ポリエチレン微多孔膜は厚みが4μm以上20μm以下であり、ガーレー透気抵抗度50秒/100mL以上500秒/100mL以下であり、厚み1μmあたりの突刺強度が0.4N/μm以上0.6N/μm以下であり、MD引張破断強度が200MPa以上400MPa以下であり、40℃、24時間熱処理後のポリエチレン微多孔膜のMD熱収縮率とTD熱収縮率が、0≦(0.67×MD熱収縮率)+(1.33×TD熱収縮率)≦0.4を満たし、ポリエチレン微多孔膜捲回体の巻き外部と巻き内部におけるMD熱収縮率の差が0.20%未満である、ポリエチレン微多孔膜捲回体。
(2)前記ポリエチレン微多孔膜の幅が20mm以上2000mm以下であり、巻き長さが1000m以上15000m以下である、請求項1に記載のポリエチレン微多孔膜捲回体。
(3)前記ポリエチレン微多孔膜の幅が1500mm以上5000mm以下であり、巻き長さが1000m以上15000m以下である、(1)又は(2)に記載のポリエチレン微多孔膜捲回体。
(4)(1)に記載のポリエチレン微多孔膜の製造方法であって、原料として用いるポリエチレン組成物が、重量平均分子量1×10以上の超高分子量ポリエチレンを5質量%以上60質量%以下含有することを特徴とする、ポリエチレン微多孔膜の製造方法。
(5)(1)から(4)に記載のポリエチレン微多孔膜捲回体の製造方法であって、
(a)ポリエチレン組成物を、溶剤に加熱溶解させたポリエチレン溶液を調製する工程、
(b)前記ポリエチレン溶液をダイより押し出して押出物をシート状に成形する工程、
(c)前記押出成形物を冷却してゲル状シートを成形する工程、
(d)前記ゲル状シートを二軸延伸する工程、
(e)二軸延伸した後のゲル状シートから前記溶剤を除去して微多孔構造の膜を得る工程、
(f)前記膜を再延伸する工程、
(g)再延伸した後の膜を熱固定する工程、
(h)熱固定した後の膜をロール温度80℃以上120℃以下、周速度差2.0%以上、ロールとの接触時間(複数のロールの合計時間)が2秒以上となるよう、複数のロールで膜の長手方向(MD)の熱緩和処理を行う工程、
ここで(h)における周速度差は、複数のロールの、膜の搬送方向の最初のロールから最後のロールにかけて徐々に周速度を小さくしていき、その最初のロールの周速度をVf、最後のロールの周速度をVlとしたとき、
周速度差=(Vl-Vf)/Vf×100 (%)
により算出される値とする。
(i)熱緩和処理後の膜を、巻き取り張力0.5MPa以上2.0MPa以下で円筒状のコアに巻き取る工程、
を含むポリエチレン微多孔膜捲回体の製造方法。
本発明によれば、長期保管時の製品幅の寸法変化抑制と最終製品端部のたるみ抑制の両立が可能となる。上記の効果により、電池内部での収縮による電池作製時における捲回時の巻きずれを抑制し、微多孔膜表面に耐熱層を塗布する工程での蛇行や塗布ムラが発生しにくくなることから、電池安全性や生産性に優れたセパレータとなるポリエチレン微多孔膜捲回体を提供することができる。
図1(a)はたるみ測定機の概要を示す模式図である。図2(b)は、図1(a)中のA1-A2までの断面の一例を示す模式図である。 図2は長手方向の熱緩和処理工程の一例の概要を示す模式図である。
次に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の
実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1]ポリエチレン微多孔膜、ポリエチレン微多孔膜捲回体
まずポリエチレン微多孔膜及びポリエチレン微多孔膜捲回体について以下に説明する。
本発明のポリエチレン微多孔膜は、厚みが4μm以上20μm以下、40℃、24時間熱処理した後のポリエチレン微多孔膜のMD熱収縮率とTD熱収縮率が、0≦(0.67×MD収縮率)+(1.33×TD収縮率)≦0.4を満たし、捲回体の巻き外部と巻き内部におけるMD熱収縮率の差が0.20%未満である。
本発明者らはポリエチレン微多孔膜を40℃、24時間での長手方向(MD)及び幅手方向(TD)の熱収縮率を一定の範囲とすることが長期保管時の幅収縮と製品端部たるみ改善のために有効であることを見出した。
40℃、24時間熱処理した後のポリエチレン微多孔膜のMD熱収縮率とTD熱収縮率が、0≦(0.67×MD)+(1.33×TD)≦0.4の関係式を満たすことで、優れた平面性と長期寸法安定性の両立が可能となる。また、0≦(0.67×MD)+(1.33×TD)≦0.3を満たすことがより好ましく、好ましい範囲とすることで、より平面性に優れたポリエチレン微多孔膜捲回体となる。
関係式は以下に算出した。ポリエチレン微多孔膜のMD熱収縮率とTD熱収縮率の測定値はどちらか一方が収縮した際に一方はポアソン比による面積変化の影響によって膨張すると考えられるため、このポアソン比による面積変化の影響を考慮した下記の式を解くことで算出した関係式である。
Figure 2022013879000001
Figure 2022013879000002
ν:ポアソン比=0.5、ε:測定で得られる熱収縮、ε:元の熱収縮率
Figure 2022013879000003
これらの式では測定値であるεは測定値と別方向の元の熱収縮率εのν倍した値の分、膨張していると考えられるため、測定値εを上記1、2式のように表した。ここで上記式1、2の連立方程式の逆行列を求めた式3では、長手方向の収縮率(MD)と幅手方向の収縮率(TD)の測定値εの相関関係を示しており、各MDとTDの元の熱収縮率εを測定値から算出することができる。この式3から上記関係式を見出した。
40℃、24時間熱処理した後のポリエチレン微多孔膜のMD熱収縮率とTD熱収縮率は、長手方向の熱緩和処理条件のロール温度、ロール周速度差、ロールとの接触時間にて調整できる。ロール温度を高温化し、ロール周速度差を大きく、接触時間を長くすることで各方向の熱収縮率を低下させることができる。40℃、24時間熱処理した後のポリエチレン微多孔膜は実施例の測定方法で求めることができる。
ポリエチレン微多孔膜のガーレー透気度は、電池安全性と電池特性の観点から、50秒/100ml以上500秒/100ml以下が好ましい。50秒/100ml未満の場合は、ポリエチレン微多孔膜の強度を損なう可能性があり、500秒/100mlを超えると、良好なイオン電導性が得られないため、良好な電池特性が得られない。ガーレー透気度は実施例の測定方法で求めることができる。
ポリエチレン微多孔膜の突刺強度は、電池安全性の観点から、厚み1μmあたりの突刺強度が0.4N/μm以上0.6N/μm以下が好ましい。0.4N/μm未満の場合は、電極材の鋭利部やデンドライト発生時にピンホールが発生しやすくなり、内部短絡しやすくなることで、電池安全性を担保することができない。0.6N/μmよりも高い場合、高分子量の原料の使用や高延伸倍率で作製する場合が多く、熱収縮率が高くなる傾向にある。突刺強度は実施例の測定方法で求めることができる。
ポリエチレン微多孔膜のMD引張破断強度は、電池安全性と電池作製時の巻回性の観点から50MPa以上400MPa以下が好ましく、150MPa以上300MPa以下がより好ましい。50MPa未満の場合、電池作製時のポリエチレン微多孔膜の破れや、電池作製時の張力により伸びてしまうことがある。400MPaよりも高い場合、突刺強度と同様の理由で熱収縮率が高くなる傾向にある。MD引張破断強度は実施例の測定方法で求めることができる。
ポリエチレン微多孔膜を巻芯に捲回したポリエチレン微多孔膜捲回体の巻き外部と巻き内部で、40℃、24時間熱処理した後のポリエチレン微多孔膜のMD熱収縮率の差が0.20%未満であり、好ましくは0.15%以内である。MD熱収縮率の差が0.20%を超えると原反内部における熱緩和が不均一となり、ポリエチレン微多孔膜捲回体における平面性が悪化する。下限は特に限定しないが0%が好ましい。差が0%に近づくことで収縮特性が均一となり、優れた平面性を得ることができる。ここでいう巻き外部は原反ロールの最表層位置であり、巻き内部は原反ロール4000m位置である。
ポリエチレン微多孔膜捲回体の巻き外部と巻き内部でのMD熱収縮率の差は、長手方向の熱緩和処理条件を適宜調整することにより、40℃、24hにおける各方向の熱収縮率を低下させることで差分を減少させることができる。
上記MD熱収縮率の差は、ポリエチレン微多孔膜捲回体の巻き外部と巻き内部から切り出した試験片の40℃、24hの熱処理前後で長手方向の長さを測定し、MD熱収縮率を求めて差分を算出することで求めることができる。
ポリエチレン微多孔膜捲回体のポリエチレン微多孔膜の幅は20mm以上2000mm以下が好ましく、500mm以上2000mm以下が生産性の観点から、より好ましい。巻き長さが1000m以上10000m以下が好ましく、2000m以上10000m以下が生産性の観点からより好ましい。
[2]ポリエチレン微多孔膜捲回体の製造方法
次に、本発明のポリエチレン微多孔膜捲回体の製造方法を具体的に説明する。
原料として用いるポリエチレン組成物として、ポリエチレン微多孔膜の強度の観点から重量平均分子量1×10以上の超高分子量ポリエチレンを5質量%以上60質量%以下で含有することが好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましい。5質量%以下の場合、ポリエチレン微多孔膜の強度が低下する傾向にあり、60質量%を超えるとポリエチレン微多孔膜の熱収縮率は増大する傾向にある。
本発明のポリエチレン微多孔膜、及びポリエチレン微多孔膜捲回体の製造方法は、以下の工程からなる。
(a)ポリエチレン組成物を、溶剤に加熱溶解させたポリエチレン溶液を調製する工程、
(b)前記ポリエチレン溶液をダイより押し出して押出物をシート状に成形する工程、
(c)前記押出成形物を冷却してゲル状シートを成形する工程、
(d)前記ゲル状シートを二軸延伸する工程、
(e)二軸延伸した後のゲル状シートから前記溶剤を除去して微多孔構造の膜を得る工程、
(f)前記膜を再延伸する工程、
(g)再延伸した後の膜を熱固定する工程、
(h)熱固定した後の膜をロール温度80℃以上120℃以下、周速度差2.0%以上、ロールとの接触時間(複数のロールの合計時間)が2秒以上となるよう、複数のロールで膜の長手方向(MD)の熱緩和処理を行う工程、
(i)熱緩和処理後の膜を、巻き取り張力0.5MPa以上2.0MPa以下で、円筒状のコアに巻き取る工程、
を含むポリエチレン微多孔膜、及びポリエチレン微多孔膜捲回体の製造方法。
ここで(h)における周速度差は、複数のロールの、膜の搬送方向の最初のロールから最後のロールにかけて徐々に周速度を小さくしていき、その最初のロールの周速度をVf、最後のロールの周速度をVlとしたとき、
周速度差=(Vl-Vf)/Vf×100 (%)
により算出される値とする。
(a)ポリエチレン溶液の調製工程
ポリエチレン微多孔膜はポリエチレン組成物を含む。ポリエチレン組成物に含まれるポリエチレン樹脂は、重量平均分子量(Mw)1×10未満のポリエチレン、重量平均分子量1×10以上のポリエチレン及びこれらの混合物であることが好ましい。ポリエチレン組成物は、突刺強度の向上、貫通孔径の微細化の観点から、特に重量平均分子量1×10以上のポリエチレンを含有することが好ましい。電池用セパレータとして用いたときに電池の安定性や安全性が向上することができる。
重量平均分子量1×10未満のポリエチレンは高密度ポリエチレンが好ましい。高密度ポリエチレンの重量平均分子量は、強度の観点から、1×10以上1×10未満が好ましい。重量平均分子量が1×10未満のポリエチレンの含有率は、ポリエチレン組成物100質量%に対して50質量%以上99質量%以下が好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましい。
重量平均分子量1×10以上のポリエチレンは超高分子量ポリエチレン。超高分子量ポリオレフィンの重量平均分子量は1×10以上1×10以下が好ましい。重量平均分子量1×10以上のポリエチレンの含有率は、ポリエチレン組成物100質量%に対して1質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下より好ましい。
ポリエチレン組成物のポリエチレン分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(MW/Mn))は、ポリエチレン微多孔膜の成形性の観点から、50以下が好ましく、1.2以上50以下より好ましい。ポリエチレン組成物は、微多孔膜の強度向上、孔の微細化の観点から、超高分子ポリエチレンを含有することが好ましい。一方で、超高分子ポリエチレンを含有すると熱収縮率特性は悪化する傾向がある。
ポリエチレン組成物には、ポリエチレン樹脂のほかに、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリエチレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤や熱安定剤の種類および添加量を適宜選択することは微多孔膜の特性の調整又は増強として重要である。
このポリエチレン組成物を、可塑剤に加熱溶解させてポリエチレン溶液を調製する。ポリエチレン溶液は、ポリエチレン組成物と可塑剤との合計を100質量%として、ポリエチレン組成物を50質量%以下とすることが好ましい。これにより成形加工性が安定し、微多孔膜の厚み方向の収縮が大きくなるのを防ぐことができる。
可塑剤としては、ポリエチレンを十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されない。比較的高倍率の延伸を可能とするために、溶剤は室温で液体であるのが好ましい。液体溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。
(b)押出物の成形工程
前記ポリエチレン溶液を押出機内で溶融混練し、ダイより押し出して押出物を成形する。優れた微多孔膜の厚み均一性を得るためにポリエチレン溶液を良好に分散させることが好ましい。分散性の観点から、押出機の中で2か所以上に分けてポリエチレン組成物に可塑剤を添加することが好ましい。また、二軸押出機を用いる場合には、混錬する樹脂の劣化を防ぎながら良好な分散性を得る観点から、シリンダ内径を40mm~100mmとすることが好ましい。さらに良好な分散の観点から、二軸押出機のスクリュー回転数、二軸押出機のスクリュー回転数(Ns)に対するポリエチレン溶液の押出量Qを適宜調整することが好ましい。特に、二軸押出機のスクリュー回転数を300rpm~600rpmとすることが好ましい。
(c)ゲル状シートの成形工程
次に、得られた押出物を冷却することによりゲル状シートが得られ、冷却により、溶剤によって分離されたポリエチレンのミクロ相を固定化することができる。冷却は少なくともゲル化温度以下まで50℃/分以上の冷却速度で行うことが好ましい。
冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等がある。
(d)ゲル状シートの延伸工程
得られたゲル状シートを延伸する。延伸はゲル状シートを加熱し、通常のテンター方式、ロール方式、もしくはこれらの方法の組み合わせによって所定の倍率で行う。ここで、延伸は二軸延伸であることが好ましい。二軸延伸では、同時二軸延伸、逐次延伸、多段延伸、それらの組合せなどを用いることが可能である。
延伸温度はゲル状シートの融点+10℃以下にするのが好ましく、(ポリエチレン組成物の結晶分散温度)~(ゲル状シートの融点+5℃)の範囲にするのがより好ましい。ポリエチレン組成物は結晶分散温度が約90~100℃のとなるので、延伸温度は90~130℃の範囲が好ましい。結晶分散温度はASTMD4065に従って測定した動的粘弾性の温度特性から求める。または、NMRから求める場合もある。
以上のような延伸によりゲルシートに形成された高次構造に開裂が起こり、結晶相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに、細孔が拡大するので、電池用セパレータに好適になる。
(e)溶剤の除去工程
次に、延伸した後のゲル状シート中に残留する溶剤を、洗浄溶剤を用いて除去する。ポリエチレン相と溶媒相とは分離しているので、溶剤の除去により微多孔構造の膜が得られる。その後、洗浄溶剤を乾燥して除去する。乾燥の方法は特に限定されないが、加熱乾燥法、風乾法等により乾燥する。乾燥温度は、ポリエチレン組成物の結晶分散温度以下であることが好ましく、特に、結晶分散温度-5℃以下であることが好ましい。
(f)再延伸工程
乾燥した膜を少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)してもよい。再延伸は、膜を加熱しながらテンター方式やロール方式等により行うことができる。再延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸または逐次延伸のいずれでもよいが、同時二軸延伸が好ましい。多段延伸の場合は、同時二軸または/および逐次延伸を組み合わせることにより行う。
再延伸の温度は、ポリエチレン組成物の融点以下にすることが好ましく、ポリエチレン組成物の結晶分散温度-20℃から融点の範囲内にするのがより好ましい。再延伸の温度が90~135℃であるときは、再延伸の倍率は、一軸延伸の場合は1.01~2.0倍の範囲とし、二軸延伸の場合は長手方向および幅方向にそれぞれ1.01~2.0倍とする。なお、再延伸の倍率は、長手方向と幅方向で異なってもよい。再延伸の速度は長手およびTD方向ともに3%/秒以上とする。再延伸速度は長手方向および幅方向で互いに独立して設定してもよい。
(g)熱固定工程
再延伸後の膜を熱固定処理する。この熱固定処理によって膜の結晶が安定化し、ラメラ層が均一化される。熱固定方式はテンター方式やロール方式等により行うことができる。熱固定の温度はポリエチレン組成物の結晶分散温度から融点+10℃の範囲内とする。
(h)長手方向の熱緩和工程
次いで、熱固定後の膜を所定の条件で長手方向に収縮させる(熱緩和処理する)ことが必要である。この長手方向の熱緩和処理によって延伸の際に膜内に生じる長手方向の残留歪みを低減することができ、40℃、24時間における熱収縮率を調整できる。これにより0≦(0.67×MD)+(1.33×TD)≦0.4の関係式の範囲に調整が可能となり、長期寸法安定性が向上し、不均一な熱緩和処理が不要となり平面性を良好なものとすることができる。
膜を長手方向に熱緩和処理する方法として、例えばテンター中で微多孔膜をリニアモーター式クリップ等のクリップに把持し、加熱した状態でクリップ間距離を長手方向に縮めるテンター式の方法や、テンター内でクリップに把持された膜の端部や中央部にカッターにより切り込みを入れ、長手方向の張力を低下させる方法等を用いることができる。
特に、搬送方向の前方(押出機に近い側)にあるロールの周速よりも後方(巻き取り機に近い側)にあるロールの周速を遅くするようにロール間に周速度差をつけた加熱したロール上に膜を搬送することで、膜を長手方向に緩和させる方法が好ましい。
膜をロール方式にて長手方向に熱緩和処理することにより、テンタークリップ方式に比べて膜を所望の温度で均一に加熱できるだけでなく、緩和率や緩和速度を制御しやすい。またテンター方式のようにクリップで幅手方向を固定していないため、幅手方向にも熱緩和処理をすることができる。これらの理由から、熱緩和処理の方式は最も好ましくは、ロール方式である。図2はそのロール方式の熱緩和工程の一例を示す模式図である。矢印は微多孔膜の進行方向を示す。R1、R2、R3はロールの番号を示すが、図2の模式図に於いては最初のロールがR1に、最後のロールがR3に相当する。
ここで、熱緩和処理の温度は、ポリエチレン組成物の結晶分散温度以上~融点以下であり、より好ましくは80~120℃の範囲とする。温度を高温にすることで、各方向の40℃、24時間における熱収縮率を低下させることができる。
加熱ロールによる熱緩和処理では、ロールの数は制限されないが、ロールの周速度差を利用して微多孔膜を長手方向に収縮させて緩和させる必要があるため、最低限2本のロールが必要である。加熱ロールの周速度差は、2%より大きく、30%以内の範囲とする。この加熱ロールの周速度差を大きくすることで長手方向に膜が収縮し、各方向の40℃、24時間における収縮率を低下させることができる。この周速度差は、複数のロールの、膜の搬送方向の最初のロールから最後のロールにかけて徐々に周速度を小さくしていき、その最初のロールの周速度をVf、最後のロールの周速度をVlとしたとき、周速度差=(Vf-Vl)/Vf×100 (%)により算出される値とする。
加熱ロールとの接触時間(加熱時間)は2秒以上とする。膜と加熱ロールとの接触時間は、膜の走行速度、加熱ロールの径、及び膜のロールへの進入角度で制御することができる。長手方向の熱緩和処理における緩和処理温度、ロール周速度差、接触時間の各条件を適宜調整することにより、40℃、24時間における各方向の収縮率を関係式の範囲に調整することができる。
長手方向の熱緩和工程に使用するロールの直径は150~600mm、好ましくは250~450mmである。
長手方向の熱緩和工程に使用するロールの素材としては、ステンレスや鉄製およびそれらにメッキ処理した金属製ロール、ハードクロム製ロール、金属製の中心部分にゴムを被覆したゴムロール、金属製の中心部分にセラミックを被覆したセラミックロール等が好適に用いられる。またロールの加熱方法としては、中心部分を中空として内部に加熱されたスチームや熱水または熱媒を通して加熱する方法、あるいは内部に電熱線を施して加熱する方法、または電磁波にて誘導加熱で加熱する方法等がある。
また、(g)熱固定工程と(h)長手方向に熱緩和処理工程との間、又は(h)長手方向に熱緩和処理工程の後に、膜を幅方向に熱緩和させてもよい。熱緩和方式としては、テンター方式、ロール方式又は圧延方式により行うことができる。
(i)巻き取り工程
熱緩和処理後の膜を巻き芯に巻き取り、ポリエチレン微多孔膜捲回体を得る。巻き芯に巻き取る際の巻取張力は0.5MPa以上2.0MPa以下の範囲が好ましい。より好ましくは0.6MPa以上1.5MPa以下である。0.5MPaより低い張力で巻き取ると、巻き取り時に捲回体端部のズレが生じたり、フィルムが巻き締まる際に捲回体内部にシワが発生したりする。一方で2.0MPaより強い張力で巻き取ると、捲回体の巻き外部と巻き内部で残留歪みの差が生じやすくなるため、均一な平面性や長期寸法安定性を確保することが難しい。
また、巻き取り工程後に所定の幅や長さに再度スリットして捲回体を作製してもよい。
以上のように、巻取り前のポリエチレン微多孔膜に長手方向の熱緩和処理を行うことにより、長期寸法安定性、平面性が良好なポリエチレン微多孔膜捲回体を得ることができる。
実施例と比較例で得られたポリエチレン微多孔膜の評価方法について説明する。
(a)40℃、24時間での熱収縮率(%)
実施例、及び比較例における40℃、24時間熱処理におけるMD及びTDの熱収縮率は、以下の方法で測定した。
ポリエチレン微多孔膜捲回体から微多孔膜を繰り出しカットした枚葉の微多孔膜サンプルから、幅方向両端部および中央部の位置から3点の試験片を切り出した。試験片の切り出しは(株)ダンベル製打ち抜き器により打ち抜くことにより実施し、試験片サイズは65mm×65mm(MD×TD)の正方形とした。次いで切り出した試験片サンプルのMD及びTDの寸法を、画像寸法測定機(キーエンス社製、TM-065R)により測定した。その後、試験片サンプルを2枚の紙(コピー用紙)で挟んだ状態とし、庫内40℃に温度制御した熱風循環オーブン(エスペック社製、PV-332M)に24時間投入し、熱処理を行った。取り出した熱処理後の試験片サンプルのMD及びTDの寸法を同様の方法で測定し、熱処理後の寸法とした。そして、熱処理前の寸法(L)と熱処理後の寸法(L)から以下の式により各試験片サンプルの熱収縮率を算出した。3つの試験片サンプルのMD及びTDのそれぞれ平均値を、そのポリエチレン微多孔膜のMD及びTDの熱収縮率とした。
熱収縮率(%)=100×(L-L)/L
捲回体における微多孔膜の熱収縮率の測定位置である、巻き外及び巻き内について、それぞれ捲回体の表層部及び巻き芯部とし、巻き外は最表層から2~3層程度微多孔膜を剥がした位置から微多孔膜MD長3m以内の位置、巻き内についてはコアから2~3層程度外側の位置から表層側に微多孔膜MD長3m以内の位置とした。
(b)105℃、8時間での熱収縮率(%)
熱風循環オーブンにいれて105℃、8時間静置した以外は、上記(a)と同様に測定し、熱収縮率を求めた。
(c)捲回体を60℃、4時間熱処理したときの幅方向の熱収縮率(%)
実施例で得られたポリエチレン微多孔膜捲回体から捲き出して0~1000mの長さと、2000~4000mの長さからスリットした2本の測定用捲回体(幅61mm、長さ1000m)を熱風循環オーブンにいれて60℃、4時間静置して熱処理を行った後、幅手方向の長さを測定した。熱処理前の幅方向長さは、熱処理前の測定用捲回体からポリエチレン微多孔膜を3m程度取り除いてから切り出した長手方向が1m程度の試験片について、長手方向3点で幅方向の長さを測定し、各測定値を熱処理前の幅方向長さとした。熱処理後の幅方向長さは、熱処理後の測定用捲回体から熱処理前と同様に試験片を切り出し長手方向3点で幅方向の長さを測定し、各測定値を熱処理後の幅方向長さとした。熱処理前後の試験片の長さは画像寸法測定機(キーエンス社製)にて測定した。また、幅方向の各熱収縮率については、上記(a)と同じ式で算出した。2本の測定用捲回体から得られた熱収縮率の平均値を、捲回体を60℃、4時間熱処理したときの幅方向の熱収縮率とした。ポリエチレン微多孔膜の長期寸法安定性は、捲回体を60℃、4時間熱処理したときの幅方向の熱収縮率が0.8%未満のときは良好(〇)、0.8%以上のときは不良(×)と評価できる。
(d)微多孔膜の厚み(μm)
ポリエチレン微多孔膜を長手方向95mm、幅方向95mmの正方形に切って試験片を作製した。試験片の中心部と四つの角部の計5点を接触厚さ計(ミツトヨ(Mitutoyo)製ライトマチックVL-50A)により、接触圧0.15Nでポリエチレン微多孔膜の厚みを測定した。ポリエチレン微多孔膜捲回体からポリエチレン微多孔膜を切り出し、試験片とした。試験片の幅手方向に60mm間隔にそれぞれの試験片で測定を実施し、平均値をポリエチレン微多孔膜の厚みとした。
(e)ガーレー透気抵抗度(秒/100mL)
実施例で得られたポリエチレン微多孔膜から試験片を切り出した。切り出した試験片をJISP8117に準拠して、23℃、65%RHにて幅手方向に60mm間隔で測定し、測定値の平均値をポリエチレン微多孔膜のガーレー透気抵抗度とした。
(f)突刺強度(N/μm)
実施例で得られたポリエチレン微多孔膜捲回体から上記(d)と同様に試験片を切り出した。切り出した試験片を球状の先端表面(曲率半径R:0.5mm)を有する直径1mmの針を用いて2mm/秒の速度で突き刺したときの最大荷重を測定し、その測定値の平均値を(d)で求めた厚みで割ることで厚み1μm当たりの突刺強度とした。
(g)MD引張破断強度(MPa)
実施例で得られたポリオレフィン微多孔膜捲回体からMD方向50mm、TD方向10mmの試験片を切り出した。切り出した試験片をASTM D882に準拠してチャック間距離は20mmで、引張速度は100mm/分でのポリエチレン微多孔膜のMD引張破断強度を測定し、5 回の測定結果の平均値をMD引張破断強度とした。
(g)幅方向の端部のたるみ(mm)
実施例で得られたポリエチレン微多孔膜捲回体から繰り出したポリエチレン微多孔膜をロール間距離1.5mの2本のロールに架けて、繰り出し端部に荷重3Nを加えたときの幅端部のたるみを測定した。幅端部のたるみは、両端部についてロールに架けた微多孔膜の正常部を基準としてたるんでいる箇所の長さを計測した。幅端部たるみ長さの最も大きい値を採用し、ポリオレフィン微多孔膜捲回体の少なくとも2本以上から得られた値の平均値を幅端部のたるみとした。ポリエチレン微多孔膜の平面性は、幅端部のたるみが0mm以上10mm以下のときは良好(〇)、11mm以上20mm以下のときは普通(△)、21mm以上のときは不良(×)と評価できる。
ポリエチレン微多孔膜の幅方向の端部たるみの測定方法について図1を参照して説明する。図1(a)のようにポリエチレン微多孔膜捲回体から繰り出したポリオレフィン微多孔1をロール2とロール3の間に架かける。繰り出し端部の4に測定荷重を加え、もう一方の端部5は捲回体から切り離さずにある。この状態で幅方向の端部たるみについて測定する。幅方向の端部たるみの測定は図1(b)にあるようにロール間に架かるポリエチレン微多孔膜の正常部を基準としてたるみ部までの長さを両端部について測定する。なお、この測定は、長時間荷重をかけ続けると、荷重により試験片が伸びてしまうことがあり、試験片に荷重をかけ始めた時から、測定終了までを30秒以内で行うこととする。
(実施例1)
重量平均分子量(Mw)が2.0×10、融点(Tm)が135℃および結晶分散温度が90℃の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)30質量%と、重量平均分子量が2.9×10、融点が135℃および結晶分散温度が90℃を有した高密度ポリエチレン(HDPE)70質量%とからなるポリエチレン組成物を調製した。ポリエチレンの組成物の融点は135℃であり、結晶分散温度は90℃であった。
ポリエチレン組成物を28.5質量%となるように二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィンを71.5質量%となるように供給し、溶融混練することで、ポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を二軸押出機に設けたダイから押し出し、40℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを成形した。得られたゲル状シートを延伸工程にて長手方向、幅方向の順に延伸した。延伸工程ではまずロール延伸機により延伸温度120℃で7.7倍に長手方向に延伸し、その後、テンター延伸機により125℃で8.9倍に幅手方向に延伸し、逐次二軸延伸した。
次いで延伸したゲル状シートを塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去し、洗浄、風乾した。その後、テンター延伸装置により130℃で幅手方向に1.7倍に再延伸した後、そのままテンター延伸装置に固定して長手方向および幅手方向の両方向に寸法変化が無いように、130℃で熱固定処理し、その後、熱緩和工程を行った。熱緩和工程は幅手方向の熱緩和処理後、長手方向の熱緩和処理を行う。まず幅手方向の熱緩和処理は、熱緩和処理後に同テンター内にて125℃にて幅方向に5.6%緩和させた。次いで、長手方向の熱緩和処理は、95℃に加熱されたロール上に幅手方向の熱緩和処理後の膜を搬送し、ロール間の周速度差を利用して膜を緩和処理した。ロールによる熱緩和処理は、巻き取り機側のロールの周速を押出機側のロールの周速に比べて遅くすることで周速度差を3.6%とし、ロールの接触時間2.5秒で膜を長手方向に、緩和させた。これを巻取り、ポリエチレン微多孔膜の原反ロールを作製した。作製後の原反ロールは熱緩和処理を行わずにスリット工程にてポリエチレン微多孔膜の原反ロールを幅515mmと長さ1000mにスリットし、ポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.28%、巻き内部が0.38%であった。表1に実施例、及び比較例のポリエチレン微多孔膜の製造条件、表2にポリエチレン微多孔膜及びポリエチレン微多孔膜捲回体の評価結果を示す。
(実施例2)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜の捲回体を作製した。原反ロールに熱緩和処理を行わずにスリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅800mmと長さ2000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.51%、巻き内部が0.64%であった。
(実施例3)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜の捲回体を作製した。原反ロールに熱緩和処理を行わずにスリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅780mmと長さ1000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.32%、巻き内部が0.38%であった。
(実施例4)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜の捲回体を作製した。原反ロールに熱緩和処理を行わずにスリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅780mmと長さ2000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.31%、巻き内部が0.43%であった。
(実施例5)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜の捲回体を作製した。原反ロールに熱緩和処理を行わずにスリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅1310mmと長さ4000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.34%、巻き内部が0.42%であった。
(比較例1)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの残留応力の緩和を目的に原反ロールを60℃の保管庫に24時間投入し、熱緩和処理を行った。熱緩和処理後、スリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅515mmと長さ1000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.21%、巻き内部が0.42%であった。
(比較例2)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.49%、巻き内部が0.57%であった。
(比較例3)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの残留応力の緩和を目的に原反ロールを60℃の保管庫に24時間投入し、熱緩和処理を行った。熱緩和処理後、スリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅800mmと長さ2000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.37%、巻き内部が0.16%であった。
(比較例4)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの残留応力の緩和を目的に原反ロールを60℃の保管庫に24時間投入し、熱緩和処理を行った。熱緩和処理後、スリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅515mmと長さ1000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.63%、巻き内部が0.86%であった。
(比較例5)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの残留応力の緩和を目的に原反ロールを60℃の保管庫に24時間投入し、熱緩和処理を行った。熱緩和処理後、スリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅515mmと長さ1000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.10%、巻き内部が0.31%であった。
(比較例6)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの残留応力の緩和を目的に原反ロールを60℃の保管庫に24時間投入し、熱緩和処理を行った。熱緩和処理後、スリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅515mmと長さ1000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.22%、巻き内部が0.45%であった。
(比較例7)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの残留応力の緩和を目的に原反ロールを60℃の保管庫に24時間投入し、熱緩和処理を行った。熱緩和処理後、スリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅780mmと長さ2000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.20%、巻き内部が0.42%であった。
(比較例8)
熱緩和工程は表1の製造条件とし、それ以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの残留応力の緩和を目的に原反ロールを60℃の保管庫に24時間投入し、熱緩和処理を行った。熱緩和処理後、スリット工程にてポリエチレン微多孔膜を幅780mmと長さ2000mにスリットしたポリエチレン微多孔膜捲回体を作製した。原反ロールの巻き外部、巻き内部の40℃、24hのMD収縮率は、巻き外部が0.30%、巻き内部が0.57%であった。
Figure 2022013879000004
表2に実施例、及び比較例それぞれのポリエチレン微多孔膜、及びポリエチレン微多孔膜捲回体の評価結果を示す。実施例1~5において得られたポリエチレン微多孔膜捲回体は、強度やガーレー透気抵抗度等の重要な物性を損なうことなく、均一な収縮特性を有しており、弛みが良好であり、優れた長期安定性と平面性を示した。比較例1~8では強度やガーレー透気抵抗度等の重要な物性は実施例と同等レベルであったが、収縮特性が均一でなく、弛みが大きく(悪く)、長期安定性と平面性の両立ができなかった。即ち、実施例では長手方向の熱緩和処理を適切に行ったことにより、高強度であり、かつ全長にわたり平面性に優れ、弛みも良好なポリエチレン微多孔膜捲回体が得られた。
Figure 2022013879000005
1 ポリエチレン微多孔膜
2、3 ロール
4、5 ポリエチレン微多孔膜の端部
6 加熱ロール

Claims (5)

  1. ポリエチレン微多孔膜を、円筒状のコアに捲回して成る、ポリエチレン微多孔膜捲回体であって、ポリエチレン微多孔膜は厚みが4μm以上20μm以下であり、ガーレー透気抵抗度が50秒/100mL以上500秒/100mL以下であり、厚み1μmあたりの突刺強度が0.4N/μm以上0.6N/μm以下であり、MD引張破断強度が200MPa以上400MPa以下であり、40℃、24時間熱処理後のポリエチレン微多孔膜のMD熱収縮率とTD熱収縮率が、0≦(0.67×MD熱収縮率)+(1.33×TD熱収縮率)≦0.4を満たし、ポリエチレン微多孔膜捲回体の巻き外部と巻き内部におけるMD熱収縮率の差が0.20%未満である、ポリエチレン微多孔膜捲回体。
  2. 前記ポリエチレン微多孔膜の幅が20mm以上2000mm以下であり、巻き長さが1000m以上15000m以下である、請求項1に記載のポリエチレン微多孔膜捲回体。
  3. 前記ポリエチレン微多孔膜の幅が1500mm以上5000mm以下であり、巻き長さが1000m以上15000m以下である、請求項1又は2に記載のポリエチレン微多孔膜捲回体。
  4. 原料として用いるポリエチレン組成物が重量平均分子量1×10以上の超高分子量ポリエチレンを5質量%以上60質量%以下含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のポリエチレン微多孔膜捲回体。
  5. 請求項1から4に記載のポリエチレン微多孔膜捲回体の製造方法であって、
    (a)ポリエチレン組成物を、溶剤に加熱溶解させたポリエチレン溶液を調製する工程、
    (b)前記ポリエチレン溶液をダイより押し出して押出物をシート状に成形する工程、
    (c)前記押出成形物を冷却してゲル状シートを成形する工程、
    (d)前記ゲル状シートを二軸延伸する工程、
    (e)二軸延伸した後のゲル状シートから前記溶剤を除去して微多孔構造の膜を得る工程、
    (f)前記膜を再延伸する工程、
    (g)再延伸した後の膜を熱固定する工程、
    (h)熱固定した後の膜をロール温度80℃以上120℃以下、周速度差2.0%以上、ロールとの接触時間(複数のロールの合計時間)が2秒以上となるよう、複数のロールで膜の長手方向(MD)の熱緩和処理を行う工程、
    ここで(h)における周速度差は、複数のロールの、膜の搬送方向の最初のロールから最後のロールにかけて徐々に周速度を小さくしていき、その最初のロールの周速度をVf、最後のロールの周速度をVlとしたとき、
    周速度差=(Vl-Vf)/Vf×100 (%)
    により算出される値とする。
    (i)熱緩和処理後の膜を、巻き取り張力0.5MPa以上2.0MPa以下で円筒状のコアに巻き取る工程、
    を含むポリエチレン微多孔膜捲回体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023140330A1 (ja) * 2022-01-20 2023-07-27 株式会社トクヤマ 多孔質膜、イオン交換膜、水電解装置、及び多孔質膜の製造方法

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