JP2022003175A - インクジェット捺染装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】画像濃度及び湿潤摩擦堅ろう度に優れる捺染物を形成でき、かつ捺染物の触感の低下を抑制できるインクジェット捺染装置を提供する。【解決手段】インクジェット捺染装置は、捺染対象に画像を形成するインクジェット捺染装置であって、前記捺染対象の特定領域に前処理液を吐出する前処理液吐出ヘッドと、前記捺染対象の前記特定領域にインクを吐出する記録ヘッドと、前記捺染対象に後処理液を吐出する後処理液吐出ヘッドとを備える。前記前処理液は、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有する。前記インクは、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有する。前記後処理液は、滑剤及び水を含有する。【選択図】図1
Description
本発明は、インクジェット捺染装置に関する。
インクジェット捺染装置においては、例えば、顔料、分散剤及び水を含有するインクが用いられる。顔料を含有するインクを用いたインクジェット捺染装置は、形成される捺染物の摩擦堅ろう度(特に、湿潤摩擦堅ろう度)が低い傾向がある。そのため、インクジェット捺染装置には、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を向上させることが要求されている。また、インクジェット捺染装置では、形成される捺染物の画像濃度を向上させると共に捺染物の触感の低下を抑制することも要求されている。
インクジェット捺染装置において、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を向上させる方法として、例えば、捺染対象にインクを吐出した後に捺染対象を後処理する方法が検討されている。捺染対象を後処理液で後処理することにより、捺染対象の表面に形成された画像が保護されるため、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を向上できる。
また、インクジェット捺染装置において、形成される捺染物の画像濃度を向上させると共に捺染物の触感の低下を抑制する方法として、捺染対象にインクを吐出する前に捺染対象を前処理液で前処理する方法が検討されている。捺染対象を前処理液で前処理することにより、インクに含まれる顔料が捺染対象の表面に留まり易くなるため、形成される捺染物の画像濃度を向上できる。また、捺染対象を前処理液で前処理することにより、インクに含まれる顔料等の成分が捺染対象の内部に浸透して捺染対象が硬くなる現象を抑制できる。その結果、形成される捺染物の触感の低下を抑制できる。特許文献1には、ポリエステル樹脂粒子とスチレン−ブタジエン樹脂粒子とを含有する前処理液を用いて前処理するインクジェット捺染装置が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット捺染装置によっても、形成される捺染物の画像濃度及び湿潤摩擦堅ろう度を十分に向上させると共に捺染物の触感の低下を十分に抑制することは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像濃度及び湿潤摩擦堅ろう度に優れる捺染物を形成でき、かつ捺染物の触感の低下を抑制できるインクジェット捺染装置を提供することである。
本発明に係るインクジェット捺染装置は、捺染対象に画像を形成するインクジェット捺染装置であって、前記捺染対象の特定領域に前処理液を吐出する前処理液吐出ヘッドと、前記捺染対象の前記特定領域にインクを吐出する記録ヘッドと、前記捺染対象に後処理液を吐出する後処理液吐出ヘッドとを備える。前記前処理液は、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有する。前記インクは、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有する。前記後処理液は、滑剤及び水を含有する。
本発明に係るインクジェット捺染装置によれば、画像濃度及び湿潤摩擦堅ろう度に優れる捺染物を形成でき、かつ捺染物の触感の低下を抑制できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下において、体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定された値である。
本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。本明細書に記載の各成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<インクジェット捺染装置>
本発明のインクジェット捺染装置は、捺染対象に画像を形成するインクジェット捺染装置であって、捺染対象の特定領域に前処理液を吐出する前処理液吐出ヘッドと、捺染対象の特定領域にインクを吐出する記録ヘッドと、捺染対象に後処理液を吐出する後処理液吐出ヘッドとを備える。前処理液は、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有する。インクは、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有する。後処理液は、滑剤及び水を含有する。
本発明のインクジェット捺染装置は、捺染対象に画像を形成するインクジェット捺染装置であって、捺染対象の特定領域に前処理液を吐出する前処理液吐出ヘッドと、捺染対象の特定領域にインクを吐出する記録ヘッドと、捺染対象に後処理液を吐出する後処理液吐出ヘッドとを備える。前処理液は、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有する。インクは、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有する。後処理液は、滑剤及び水を含有する。
本発明のインクジェット捺染装置は、上述の構成を備えることにより、画像濃度及び湿潤摩擦堅ろう度に優れる捺染物を形成でき、かつ捺染物の触感の低下を抑制できる。その理由は以下の通りであると推察される。公知のインクジェット捺染装置は、例えば、前処理液を捺染対象にスプレー塗布するスプレー塗布部を備える。ここで、前処理液は、捺染対象の全面に塗布される必要はなく、捺染対象においてインクが吐出される予定の領域のみに塗布されればよい。しかし、スプレー塗布部は、捺染対象の一部の領域のみに選択的に前処理液を塗布することは困難であるため、捺染対象の広範な領域に前処理液を塗布する。このように、スプレー塗布部を備える公知のインクジェット捺染装置は、必要量よりも過剰な量の前処理液を捺染対象に塗布する傾向がある。そのため、スプレー塗布部を備える公知のインクジェット捺染装置は、前処理後の捺染対象に多量の水分が含まれる。捺染対象に含まれる水分は、捺染対象の表面に顔料が結着することを妨げる。以上から、スプレー塗布部を備える公知のインクジェット捺染装置は、画像形成において、インクに含まれる顔料を捺染対象の表面に結着させることが難しく、その結果、形成される捺染物の画像濃度が低い傾向がある。スプレー塗布部を備える公知のインクジェット捺染装置において、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を向上させる方法として、例えば、前処理後の捺染対象を乾燥させる乾燥部を設ける方法が挙げられる。しかし、この方法は、インクジェット捺染装置が大型化するため、あまり実用的ではない。
これに対して、本発明のインクジェット捺染装置は、前処理液吐出ヘッドを備える。前処理液吐出ヘッドは、前処理液の吐出位置を容易かつ精密に制御できる。そのため、前処理液吐出ヘッドは、捺染対象において、インクが吐出される予定の領域(特定領域)に前処理液を選択的に吐出できる。このように、本発明のインクジェット捺染装置は、前処理液吐出ヘッドを備えることで、必要量よりも過剰な量の前処理液を捺染対象に塗布しない。その結果、本発明のインクジェット捺染装置は、前処理後の捺染対象に含まれる水分量を低減し、形成される捺染物の湿潤堅ろう度を向上できる。また、本発明のインクジェット捺染装置は、後処理液吐出ヘッドを備える。後処理液吐出ヘッドは、画像形成後の捺染対象に対して後処理液を吐出する。後処理液は、捺染対象に形成された画像を保護することにより、形成される捺染物の湿潤堅ろう度を更に向上させる。更に、本発明のインクジェット捺染装置は、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有する前処理液と、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有するインクと、滑剤及び水を含有する後処理液とを用いる。前処理液に含まれるバインダー樹脂粒子は、捺染対象の表面において、インクに含まれるアニオン性分散剤と含有する。これにより、インクに含まれる顔料が捺染対象の表面で凝集し、捺染対象の表面に顔料が留まり易くなる。このように、上述の前処理液及びインクを組み合わせることで、形成される捺染物の画像濃度を更に向上させ、かつ捺染物の触感の低下をより効果的に抑制できる。また、後処理液に含まれる滑剤は、形成される捺染物の表面に滑り性を付与する。以上より、本発明のインクジェット捺染装置は、画像濃度及び湿潤摩擦堅ろう度に優れる捺染物を形成でき、かつ捺染物の触感の低下を抑制できる。
図1を参照しながら、本発明のインクジェット捺染装置を説明する。なお、理解しやすくするために、図1は、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数等は、適宜変更されてもよい。図1は、本発明のインクジェット捺染装置の一例であるインクジェット捺染装置10の要部を示す側面図である。図1に示すインクジェット捺染装置10は、フラットベッド式のインクジェット捺染装置である。
図1に示すインクジェット捺染装置10は、前処理液吐出ヘッド1と、記録ヘッド2と、後処理液吐出ヘッド3と、載置台4とを備える。記録ヘッド2は、第1記録ヘッド2a、第2記録ヘッド2b、第3記録ヘッド2c、及び第4記録ヘッド2dを有する。
前処理液吐出ヘッド1は、捺染対象Tの特定領域に前処理液を吐出する。特定領域とは、捺染対象Tにおいて、記録ヘッド2がインクを吐出することが予定されている領域(画像が形成されることが予定されている領域)である。前処理液吐出ヘッド1は、ヘッドであるため、容易かつ精密に前処理液の吐出位置を制御できる。前処理液吐出ヘッド1としては、特に限定されないが、例えば、ピエゾ方式ヘッド及びサーマルインクジェット方式ヘッドが挙げられる。
記録ヘッド2は、捺染対象Tの特定領域にインクを吐出する。記録ヘッド2が有する、第1記録ヘッド2a、第2記録ヘッド2b、第3記録ヘッド2c、及び第4記録ヘッド2dは、それぞれ、異なる色のインク(例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、及びブラックインク)を吐出する。記録ヘッド2としては、特に限定されないが、例えば、ピエゾ方式ヘッド及びサーマルインクジェット方式ヘッドが挙げられる。
後処理液吐出ヘッド3は、捺染対象Tの特定領域に後処理液を吐出する。後処理液吐出ヘッド3は、ヘッドであるため、容易かつ精密に後処理液の吐出位置を制御できる。後処理液吐出ヘッド3としては、特に限定されないが、例えば、ピエゾ方式ヘッド及びサーマルインクジェット方式ヘッドが挙げられる。
インクジェット捺染装置10は、前処理液吐出ヘッド1、記録ヘッド2及び後処理液吐出ヘッド3により、捺染対象Tの特定領域に前処理液、インク及び後処理液を重ねて塗布する。これにより、インクジェット捺染装置10は、スプレー塗布等によって広範な領域に前処理液及び後処理液を塗布する公知のインクジェット捺染装置と比較し、前処理液及び後処理液の塗布量を低減しつつ、前処理効果及び後処理効果を十分に発揮させることができる。
前処理液吐出ヘッド1、記録ヘッド2及び後処理液吐出ヘッド3は、望ましくは、前処理液のドット、インクのドット、及び後処理液のドットが重なるように各液を吐出することが好ましい。
載置台4には、捺染対象Tが載置される。捺染対象Tにインク、前処理液及び後処理液が吐出可能なように、載置台4の上方に、前処理液吐出ヘッド1、記録ヘッド2及び後処理液吐出ヘッド3が配設されている。モーター(不図示)の駆動により、載置台4は、前処理液吐出ヘッド1から後処理液吐出ヘッド3に向かう方向(例えば、図1の右方向)に、水平に移動する。載置台4が水平に移動することにより、載置台4上の捺染対象Tが搬送される。
捺染対象Tは、織物であってもよいし、編み物であってもよい。捺染対象Tとしては、例えば、綿生地、絹生地、麻生地、アセテート生地、レーヨン生地、ナイロン生地、ポリウレタン生地、及びポリエステル生地が挙げられる。
捺染物の形成において、まず、捺染対象Tを載置した載置台4が水平に移動して、前処理液吐出ヘッド1と対向する位置に、捺染対象Tが搬送される。前処理液吐出ヘッド1から、捺染対象Tの特定領域に、前処理液が吐出される。このようにして、捺染対象Tに前処理が行われる。次に、捺染対象Tを載置した載置台4が更に水平に移動して、記録ヘッド2と対向する位置に、捺染対象Tが搬送される。記録ヘッド2から、捺染対象Tの特定領域に、インクが吐出される。このようにして、前処理後の捺染対象Tに画像が形成される。次に、捺染対象Tを載置した載置台4が更に水平に移動して、後処理液吐出ヘッド3と対向する位置に、捺染対象Tが搬送される。後処理液吐出ヘッド3から、捺染対象Tの特定領域に、後処理液が吐出される。このようにして、画像形成後の捺染対象Tに後処理が行われる。
前処理液、インク及び後処理液及を吐出する位置を正確にコントロールするために、前処理液吐出ヘッド1、記録ヘッド2及び後処理液吐出ヘッド3と、捺染対象Tとの間の距離は、それぞれ、1mm以上5mm以下であることが好ましい。
以上、インクジェット捺染装置10について説明した。但し、本発明のインクジェット捺染装置は、インクジェット捺染装置10に限定されず、例えば、以下の通りに変更可能である。
例えば、本発明のインクジェット捺染装置において、後処理液吐出ヘッドは、捺染対象の広範な領域(例えば、捺染対象の全面)に後処理液を吐出してもよい。但し、捺染対象に過剰量の後処理液が吐出された場合、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度が低下するおそれがある。そのため、後処理液吐出ヘッドは、後処理液の吐出量を減らす観点から、捺染対象の特定領域に後処理液を吐出することが好ましい。
また、本発明のインクジェット捺染装置において、載置台4は、任意構成であり、省略可能である。更に、本発明のインクジェット捺染装置は、載置台を固定した状態で、前処理液吐出ヘッド、記録ヘッド及び後処理液吐出ヘッドを水平に移動させてもよい。更に、本発明のインクジェット捺染装置が備える記録ヘッドの個数は、1〜3個又は5個以上であってもよい。更に、本発明のインクジェット捺染装置は、フラットベッド式ではないインクジェット捺染装置であってもよい。以上、図面に基づいて本発明のインクジェット捺染装置について説明した。
上述の通り、後処理液吐出ヘッドは、捺染対象の特定領域に後処理液を吐出することが好ましい。この場合、前処理液の吐出量は、特定領域の全ての部位において一定であり、インクの吐出量は、特定領域の全ての部位において一定であるか、又は特定領域の部位毎に異なり、かつ後処理液の吐出量は、特定領域の全ての部位において一定であることが好ましい。そして、単位面積当たりの前処理液の吐出量をVP、単位面積当たりのインクの最大吐出量をVImax、単位面積当たりの後処理液の吐出量をVAとしたときに、VImaxに対するVPの比率RPは、40%以上220%以下であり、VImaxに対するVAの比率RAは、40%以上220%以下であることが好ましい。
上述の通り、インクの吐出量は、特定領域の全ての部位において一定であるか、又は特定領域の部位毎に異なることが好ましい。インクの吐出量が特定領域の全ての部位において一定である場合、濃淡を有しない画像が形成された捺染物を得ることができる。インクの吐出量が特定領域の部位毎に異なる場合、濃淡を有する画像が形成された捺染物を得ることができる。なお、本発明のインクジェット捺染装置が2種類以上のインクを用いる場合(2個以上の記録ヘッドを備える場合)、インクの吐出量とは、2種類以上のインクの合計吐出量を示す。
上述の通り、前処理液の吐出量は、特定領域の全ての部位において一定であり、かつ後処理液の吐出量は、特定領域の全ての部位において一定であることが好ましい。また、単位面積当たりの前処理液の吐出量VP、及び単位面積当たりの後処理液の吐出量VAは、単位面積当たりのインクの最大吐出量VImaxを基準として決定することが好ましい。ここで、上述の通り、濃淡を有する画像が形成された捺染物を得るためには、インクの吐出量を特定領域の部位毎に変化させる必要がある。つまり、捺染対象の特定領域には、インクの吐出量が多い領域と、インクの吐出量が少ない領域とが生じる場合がある。そして、インクの吐出量が多い領域において、前処理液及び後処理液の吐出量が不十分であると、捺染対象に対して確実に前処理及び後処理を行うことが困難となる。これに対して、前処理液の吐出量VP、及び後処理液の吐出量VAを、インクの最大吐出量VImaxを基準として決定することで、インクの吐出量が多い領域においても、前処理液及び後処理液の吐出量が不十分となることを抑制できる。その結果、捺染対象に対して、確実に前処理及び後処理を行うことができる。
VImaxに対するVPの比率RPを40%以上とすることで、捺染対象に対して更に確実に前処理を行うことができ、その結果、画像濃度に更に優れる捺染物を形成し、かつ捺染物の触感の低下を更に確実に抑制できる。VImaxに対するVPの比率RPを220%以下とすることで、前処理後の捺染対象に含まれる水分を更に低減でき、その結果、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上できる。
VImaxに対するVAの比率RAを40%以上とすることで、捺染対象に対して更に確実に後処理を行うことができ、その結果、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上できる。VImaxに対するVAの比率RAを220%以下とすることで、後処理後の捺染対象に含まれる水分を更に低減し、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上できる。
前処理液吐出ヘッドが前処理液を吐出してから記録ヘッドが前記インクを吐出するまでの間隔を第1吐出間隔とし、記録ヘッドがインクを吐出してから後処理液吐出ヘッドが後処理液を吐出するまでの間隔を第2吐出間隔としたときに、第1吐出間隔及び前記第2吐出間隔は、それぞれ、15ミリ秒以上15秒以内であることが好ましい。第1吐出間隔及び前記第2吐出間隔を短くすることで、捺染対象の表面付近で顔料を捺染対象に結着させることができ、その結果、形成される捺染物の画像濃度を更に向上させ、かつ捺染物の触感の低下を更に効率的に抑制できる。第1吐出間隔及び前記第2吐出間隔を長くすることで、捺染対象の内部で顔料を捺染対象に結着させ、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上できる。第1吐出間隔及び前記第2吐出間隔をそれぞれ15ミリ秒以上15秒以下とすることで、捺染物の画像濃度の向上と、捺染物の湿潤摩擦堅ろう度の向上と、捺染物の触感の低下の抑制とをバランスよく達成できる。
[前処理液]
前処理液は、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有する。前処理液は、多価アルコール及びノニオン界面活性剤のうち少なくとも1つを更に含有することが好ましい。
前処理液は、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有する。前処理液は、多価アルコール及びノニオン界面活性剤のうち少なくとも1つを更に含有することが好ましい。
(バインダー樹脂粒子)
バインダー樹脂粒子は、カチオン樹脂を含む。バインダー樹脂粒子におけるカチオン樹脂の含有割合としては、80質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
バインダー樹脂粒子は、カチオン樹脂を含む。バインダー樹脂粒子におけるカチオン樹脂の含有割合としては、80質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
バインダー樹脂粒子の平均粒子径としては、30nm以上150nm以下が好ましく、45nm以上80nm以下がより好ましい。バインダー樹脂粒子の平均粒子径を30nm以上とすることで、バインダー樹脂粒子が捺染対象の表面に留まり易くなる。その結果、捺染対象の表面において、インクが含む顔料とバインダー樹脂粒子とが凝集するため、形成される捺染物の画像濃度を更に向上できる。バインダー樹脂粒子の平均粒子径を150nm以下とすることで、前処理液の吐出性を向上できる。
(カチオン樹脂)
カチオン樹脂は、カチオン性基を含む。カチオン性基としては、例えば、アミノ基(例えば、一級アミノ基、二級アミノ基及び三級アミノ基)及び四級アンモニウム基が挙げられる。なお、三級アミノ基は、芳香族複素環(例えば、ピリジン環)を形成していてもよい。二級アミノ基は、複素環式アミン基(例えば、ピぺリジン環及びピロリジン環)を形成していてもよい。カチオン性基としては、アミノ基又は四級アンモニウム基が好ましく、トリメチルアンモニウム基、ジメチルアミノ基、ピリジル基、下記化学式(A)で表される基、及び−NH2が挙げられる。下記化学式において、*は、それぞれ、結合手を示す。なお、カチオン性基は、酸(例えば、塩酸及び酢酸)又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)と共に塩を形成していてもよい。
カチオン樹脂は、カチオン性基を含む。カチオン性基としては、例えば、アミノ基(例えば、一級アミノ基、二級アミノ基及び三級アミノ基)及び四級アンモニウム基が挙げられる。なお、三級アミノ基は、芳香族複素環(例えば、ピリジン環)を形成していてもよい。二級アミノ基は、複素環式アミン基(例えば、ピぺリジン環及びピロリジン環)を形成していてもよい。カチオン性基としては、アミノ基又は四級アンモニウム基が好ましく、トリメチルアンモニウム基、ジメチルアミノ基、ピリジル基、下記化学式(A)で表される基、及び−NH2が挙げられる。下記化学式において、*は、それぞれ、結合手を示す。なお、カチオン性基は、酸(例えば、塩酸及び酢酸)又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)と共に塩を形成していてもよい。
カチオン樹脂は、カチオン性基含有不飽和モノマーに由来する特定繰り返し単位(以下、繰り返し単位(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。カチオン樹脂は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)のみを有してもよいが、繰り返し単位(1)と、カチオン性基を有しない不飽和モノマーに由来する繰り返し単位(2)とを含むことが好ましい。このように、カチオン樹脂が繰り返し単位(2)を含むことで、前処理液の溶媒及びカチオン樹脂の親和性が適度に低下する傾向がある。その結果、前処理液のエマルションとしての安定性を向上できる。
カチオン性基含有不飽和モノマーは、例えば、カチオン性基と、重合性基(例えば、ビニル基、アリル基及び(メタ)アクリロイル基)とを有する。カチオン性基含有不飽和モノマーにおけるカチオン性基の個数としては、1個が好ましい。カチオン性基含有不飽和モノマーにおける重合性基の個数としては、1個又は2個が好ましい。具体的なカチオン性基含有不飽和モノマーとしては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル四級塩が好ましい。
カチオン樹脂における繰り返し単位(1)の含有割合としては、10質量%以上60質量%以下が好ましく、25質量%以上45質量%以下がより好ましい。繰り返し単位(1)の含有割合を10質量%以上とすることで、カチオン樹脂に十分なカチオン性を付与できる。繰り返し単位(1)の含有割合を60質量%以下とすることで、前処理液の溶媒及びカチオン樹脂の親和性が適度に低下する傾向がある。その結果、前処理液のエマルションとしての安定性を向上できる。
カチオン性基を有しない不飽和モノマーとしては、例えば、ビニル化合物、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル及びエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。ビニル化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン及びスチレンが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びフタル酸が挙げられる。なお、エチレン性不飽和カルボン酸は、無水物であってもよい。
カチオン性基を有しない不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ブチルが好ましい。
カチオン樹脂において、繰り返し単位(2)の含有割合としては、40質量%以上90質量%以下が好ましく、55質量%以上75質量%以下がより好ましい。繰り返し単位(2)の含有割合を40質量%以上90質量%以下とすることで、前処理液の溶媒及びカチオン樹脂の親和性が適度に低下する傾向がある。その結果、前処理液のエマルションとしての安定性を向上できる。
カチオン樹脂としては、アクリル酸ブチルとジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル四級塩との共重合体が好ましい。
前処理液におけるバインダー樹脂粒子の含有割合としては、1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上3.5質量%以下がより好ましい。バインダー樹脂粒子の含有割合を1.0質量%以上とすることで、形成される捺染物の画像濃度を更に向上でき、かつ捺染物の触感の低下を更に効果的に抑制できる。バインダー樹脂粒子の含有割合を5.0質量%以下とすることで、前処理液の吐出性を向上できる。
(水)
前処理液における水の含有割合としては、20.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、45.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。水の含有割合を20.0質量%以上70.0質量%以下とすることで、前処理液の溶媒及びカチオン樹脂の親和性が適度に低下する傾向がある。その結果、前処理液のエマルションとしての安定性を向上できる。
前処理液における水の含有割合としては、20.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、45.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。水の含有割合を20.0質量%以上70.0質量%以下とすることで、前処理液の溶媒及びカチオン樹脂の親和性が適度に低下する傾向がある。その結果、前処理液のエマルションとしての安定性を向上できる。
(多価アルコール)
多価アルコールとは、複数のヒドロキシ基で置換されたアルカンを示す。上述のアルカンとしては、例えば、炭素原子数2以上10以下の直鎖状アルカン及び炭素原子数2以上10以下の分岐状アルカンが挙げられる。多価アルコールの有するヒドロキシ基の個数としては、2個以上5個以下が好ましく、2個以上3個以下がより好ましい。多価アルコールの炭素原子数としては、2以上5以下が好ましく、2以上3以下がより好ましい。
多価アルコールとは、複数のヒドロキシ基で置換されたアルカンを示す。上述のアルカンとしては、例えば、炭素原子数2以上10以下の直鎖状アルカン及び炭素原子数2以上10以下の分岐状アルカンが挙げられる。多価アルコールの有するヒドロキシ基の個数としては、2個以上5個以下が好ましく、2個以上3個以下がより好ましい。多価アルコールの炭素原子数としては、2以上5以下が好ましく、2以上3以下がより好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールが挙げられる。多価アルコールとしては、プロピレングリコールが好ましい。
前処理液における多価アルコールの含有割合としては、20.0質量%以上75.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。多価アルコールの含有割合を20.0質量%以上75.0質量%以下とすることで、前処理液の溶媒及びカチオン樹脂の親和性が適度に低下する傾向がある。その結果、前処理液のエマルションとしての安定性を向上できる。
(界面活性剤)
界面活性剤は、捺染対象に対する前処理液の浸透性(濡れ性)を向上させる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
界面活性剤は、捺染対象に対する前処理液の浸透性(濡れ性)を向上させる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートエーテル、モノデカノイルショ糖、及びアセチレングリコールのエチレンオキシド付加物が挙げられる。前処理液において、ノニオン界面活性剤としては、アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物が好ましい。
前処理液が界面活性剤を含有する場合、前処理液における界面活性剤の含有割合としては、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。
(他の成分)
前処理液は、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
前処理液は、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
[前処理液の製造方法]
前処理液は、例えば、バインダー樹脂粒子を含有する樹脂粒子分散液と、水と、必要に応じて添加される任意成分(例えば、多価アルコール及びノニオン界面活性剤)とを混合することで調製できる。樹脂粒子分散液は、例えば、バインダー樹脂粒子と、水と、界面活性剤とを含有する。樹脂粒子分散液は、例えばカチオン樹脂の原料となるモノマー(例えば、カチオン性基含有不飽和モノマー及びカチオン性基を有しない不飽和モノマー)と、界面活性剤(例えば、カチオン界面活性剤)と、水と、重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)とを反応(乳化重合)させることにより調製できる。
前処理液は、例えば、バインダー樹脂粒子を含有する樹脂粒子分散液と、水と、必要に応じて添加される任意成分(例えば、多価アルコール及びノニオン界面活性剤)とを混合することで調製できる。樹脂粒子分散液は、例えば、バインダー樹脂粒子と、水と、界面活性剤とを含有する。樹脂粒子分散液は、例えばカチオン樹脂の原料となるモノマー(例えば、カチオン性基含有不飽和モノマー及びカチオン性基を有しない不飽和モノマー)と、界面活性剤(例えば、カチオン界面活性剤)と、水と、重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)とを反応(乳化重合)させることにより調製できる。
[インク]
インクは、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有する。インクは、水溶性有機溶媒及びノニオン界面活性剤のうち少なくとも1つを更に含有することが好ましい。
インクは、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有する。インクは、水溶性有機溶媒及びノニオン界面活性剤のうち少なくとも1つを更に含有することが好ましい。
(顔料)
顔料は、例えば、溶媒に分散して存在する。インクの色濃度、色相、又は安定性を向上させる観点から、顔料のD50としては、30nm以上250nm以下が好ましく、70nm以上160nm以下がより好ましい。
顔料は、例えば、溶媒に分散して存在する。インクの色濃度、色相、又は安定性を向上させる観点から、顔料のD50としては、30nm以上250nm以下が好ましく、70nm以上160nm以下がより好ましい。
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
インクにおける顔料の含有割合としては、1.0質量%以上12.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以上7.0質量%以下がより好ましい。顔料の含有割合を1.0質量%以上とすることで、形成される捺染物の画像濃度を更に向上できる。顔料の含有割合を12.0質量%以下とすることで、インクの流動性を向上できる。
(アニオン性分散剤)
アニオン性分散剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ポリカルボン酸、及びポリカルボン酸の塩が挙げられる。ポリカルボン酸の塩としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アミン塩及びポリカルボン酸金属塩(例えば、ポリカルボン酸ナトリウム塩)が挙げられる。アニオン性分散剤としては、ポリカルボン酸アミン塩が好ましい。
アニオン性分散剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ポリカルボン酸、及びポリカルボン酸の塩が挙げられる。ポリカルボン酸の塩としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アミン塩及びポリカルボン酸金属塩(例えば、ポリカルボン酸ナトリウム塩)が挙げられる。アニオン性分散剤としては、ポリカルボン酸アミン塩が好ましい。
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石けん(例えば、ステアリン酸ナトリウム及びドデカン酸ナトリウム)、及びスルホン酸塩化合物(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)が挙げられる。
ポリカルボン酸としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリフタル酸、及び(メタ)アクリル酸とマレイン酸との共重合体が挙げられる。
ポリカルボン酸アミン塩に含まれるアミンとしては、例えば、1級アルキルアミン、2級アルキルアミン及び3級アルキルアミンが挙げられる。1級アルキルアミン、2級アルキルアミン及び3級アルキルアミンが有するアルキル基としては、例えば、炭素原子数1以上4以下のアルキル基(例えば、メチル基及びエチル基)が挙げられる。
インクにおいて、アニオン性分散剤の含有割合としては、0.5質量%以上7.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上3.5質量%以下がより好ましい。アニオン性分散剤の含有割合を0.5質量%以上とすることで、インクにおける顔料の分散性を向上できる。アニオン性分散剤の含有割合を7.0質量%以下とすることで、インクの吐出性を向上できる。
(水)
インクにおける水の含有割合としては、50.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以上80.0質量%以下が好ましい。
インクにおける水の含有割合としては、50.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以上80.0質量%以下が好ましい。
(水溶性有機溶媒)
水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、多価アルコールのエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、チオジグリコール、グリセリン及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、多価アルコールのエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、チオジグリコール、グリセリン及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが挙げられる。
多価アルコールのエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
ラクタム化合物としては、例えば、2−ピロリドン及びN−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
アセテート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、グリコール化合物が好ましく、ジエチレングリコールがより好ましい。
インクが水溶性有機溶媒を含有する場合、インクにおける水溶性有機溶媒の含有割合としては、5.0質量%以上50.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以上30.0質量%以下がより好ましい。
(ノニオン界面活性剤)
ノニオン界面活性剤は、インクに含まれる各成分の相溶性及び分散安定性を向上させる。また、ノニオン界面活性剤は、捺染対象に対するインクの浸透性(濡れ性)を向上させる。
ノニオン界面活性剤は、インクに含まれる各成分の相溶性及び分散安定性を向上させる。また、ノニオン界面活性剤は、捺染対象に対するインクの浸透性(濡れ性)を向上させる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートエーテル、モノデカノイルショ糖、及びアセチレングリコールのエチレンオキシド付加物が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物が好ましい。
インクがノニオン界面活性剤を含有する場合、インクにおけるノニオン界面活性剤の含有割合としては、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
(他の成分)
インクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
インクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
[インクの調製方法]
インクは、例えば、顔料分散液と、水と、必要に応じて配合される他の成分(例えば、水溶性有機溶媒及びノニオン界面活性剤)とを攪拌機により均一に混合することにより調製できる。顔料分散液は、顔料と、アニオン性分散剤とを含有する。インクの調製では、各成分を均一に混合した後、遠心分離処理により異物及び粗大粒子を除去してもよい。遠心分離処理の条件としては、例えば、遠心速度を5000rpm以上20000rpm以下、遠心時間を30秒以上5分以下とすることができる。
インクは、例えば、顔料分散液と、水と、必要に応じて配合される他の成分(例えば、水溶性有機溶媒及びノニオン界面活性剤)とを攪拌機により均一に混合することにより調製できる。顔料分散液は、顔料と、アニオン性分散剤とを含有する。インクの調製では、各成分を均一に混合した後、遠心分離処理により異物及び粗大粒子を除去してもよい。遠心分離処理の条件としては、例えば、遠心速度を5000rpm以上20000rpm以下、遠心時間を30秒以上5分以下とすることができる。
(顔料分散液)
顔料分散液は、顔料と、アニオン性分散剤とを含有する分散液である。顔料分散液の分散媒としては、水が好ましい。顔料分散液は、水溶性有機溶媒を更に含有することが好ましい。
顔料分散液は、顔料と、アニオン性分散剤とを含有する分散液である。顔料分散液の分散媒としては、水が好ましい。顔料分散液は、水溶性有機溶媒を更に含有することが好ましい。
顔料分散液における顔料の含有割合としては、例えば、5.0質量%以上25.0質量%以下である。顔料分散液におけるアニオン性分散剤の含有割合としては、例えば、2.0質量%以上10.0質量%以下である。顔料分散液が水溶性有機溶媒を含有する場合、顔料分散液における水溶性有機溶媒の含有割合としては、例えば、2.0質量%以上10.0質量%以下である。
顔料分散液は、顔料と、アニオン性分散剤と、分散媒(例えば、水)と、必要に応じて添加される成分(例えば、水溶性有機溶媒)とをメディア型湿式分散機により湿式分散することで調製できる。メディア型湿式分散機による湿式分散では、メディアとして、例えば、小粒径ビーズ(例えば、D50が0.5mm以上1.5mm以下のビーズ)を用いることができる。ビーズの材質としては、特に限定されないが、硬質の材料(例えば、ガラス及びジルコニア)が好ましい。
インクの製造において顔料分散液を使用する場合、インクの全原料に対する顔料分散液の割合としては、例えば、25.0質量%以上60.0質量%以下である。
[後処理液]
後処理液は、滑剤及び水を含有する。後処理液における滑剤の含有割合としては、1.0質量%以上20.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上15.0質量%以下がより好ましい。滑剤の含有割合を1.0質量%以上とすることで、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上しつつ、捺染物の触感の低下を更に効果的に抑制できる。滑剤の含有割合を15.0質量%以下とすることで、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上できる。
後処理液は、滑剤及び水を含有する。後処理液における滑剤の含有割合としては、1.0質量%以上20.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上15.0質量%以下がより好ましい。滑剤の含有割合を1.0質量%以上とすることで、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上しつつ、捺染物の触感の低下を更に効果的に抑制できる。滑剤の含有割合を15.0質量%以下とすることで、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上できる。
滑剤としては、例えば、ワックスを含むワックス粒子、パラフィンを含むパラフィン粒子及びシリコーンオイルを含むオイル粒子が挙げられ、シリコーンオイルを含むオイル粒子が好ましい。
(シリコーンオイル)
シリコーンオイルは、イオン性基含有シリコーンオイルを含むことが好ましい。シリコーンオイルは、イオン性基含有シリコーンオイルに加えて、それ以外のシリコーンオイル(以下、その他のシリコーンオイルと記載することがある)を更に含んでもよい。後処理液がシリコーンオイルを含むオイル粒子を含有することで、次の第1〜第2の利点が得られる。更に、シリコーンオイルがイオン性基含有シリコーンオイルを含むことで、次の第3〜第4の利点が得られる。
シリコーンオイルは、イオン性基含有シリコーンオイルを含むことが好ましい。シリコーンオイルは、イオン性基含有シリコーンオイルに加えて、それ以外のシリコーンオイル(以下、その他のシリコーンオイルと記載することがある)を更に含んでもよい。後処理液がシリコーンオイルを含むオイル粒子を含有することで、次の第1〜第2の利点が得られる。更に、シリコーンオイルがイオン性基含有シリコーンオイルを含むことで、次の第3〜第4の利点が得られる。
第1の利点を説明する。シリコーンオイルには、摩擦低減作用がある。後処理液がオイル粒子を含有することで、捺染対象に形成された画像がシリコーンオイルでコートされ、捺染対象の表面の摩擦が低減する。その結果、捺染対象に形成された画像が摩擦された場合であっても色落ちが生じ難く、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上できる。また、摩擦低減作用があるシリコーンオイルでコートされることにより、捺染対象の糸同士の摩擦が低減する。その結果、画像形成により引き起こされる捺染対象のごわつきが低減され、捺染物の触感の低下が更に抑制される。
第2の利点を説明する。シリコーンオイルは、撥水性を有する。後処理液がオイル粒子を含有することで、撥水性を有するシリコーンオイルで捺染対象がコートされ、捺染対象の表面に撥水性が付与される。その結果、捺染対象に形成された画像が湿潤状態で摩擦された場合であっても、色落ちが生じ難く、湿潤摩擦堅ろう度に更に優れた捺染物を形成できる。
なお、第1の利点及び第2の利点は、後処理液がオイル粒子を含有する代わりに、オイル粒子を含有するインクを用いることでも得ることができる。しかし、後処理液がオイル粒子を含有する場合、オイル粒子を含有するインクを用いる場合と比較し、粘度の高いシリコーンオイルを含むオイル粒子を使用できる。そして、粘度の高いシリコーンオイルを含むオイル粒子を使用した方が、湿潤摩擦堅ろう度に更に優れた捺染物を形成できる。そのため、インクがオイル粒子を含有するよりも、後処理液がオイル粒子を含有することが好ましい。
第3の利点を説明する。シリコーンオイルがイオン性基含有シリコーンオイルを含むことで、イオン性基と捺染対象との間、及びイオン性基と捺染対象上に吐出されたインク成分との間に、結合が形成されると推測される。この結合によって、捺染物が水に晒された際に、捺染対象からインク成分及びシリコーンオイルが洗い流され難くなる。その結果、湿潤摩擦堅ろう度に更に優れた捺染物を形成できる。
第4の利点を説明する。シリコーンオイルがイオン性基含有シリコーンオイルを含むことで、後処理液の溶媒に対するオイル粒子の分散性を向上できる。その結果、後処理液は、後処理液吐出ヘッドから吐出し易くなる。以上、第1〜第4の利点を説明した。
シリコーンオイルの粘度としては、1000mm2/秒以上が好ましく、1500mm2/秒以上がより好ましい。シリコーンオイルの粘度が1000mm2/秒以上であると、形成される捺染物を摩擦した際に、捺染物からシリコーンオイルが脱離し難くなる。そのため、捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上できる。なお、粘度の高いシリコーンオイルは、捺染対象にごわつきを付与する場合がある。しかし、既に述べたように、後処理液は、後処理液吐出ヘッドから吐出されるため、吐出量を低減できる。その結果、1000mm2/秒以上の高粘度のシリコーンオイルを使用した場合であっても、捺染対象にごわつきを引き起こし難く、形成される捺染物の触感の低下を効果的に抑制できる。なお、シリコーンオイルの粘度の上限としては、100000mm2/秒以下が好ましく、6000mm2/秒以下がより好ましい。
シリコーンオイルの粘度は、25℃における動粘度を意味する。オイル粒子が2種以上のシリコーンオイル(例えば、イオン性基含有シリコーンオイル及びその他のシリコーンオイル)を含有する場合には、シリコーンオイルの粘度は、2種以上のシリコーンオイルの混合物の粘度を意味する。
シリコーンオイルの粘度は、JIS(日本産業規格)Z8803:2011(液体の粘度測定方法)に記載の方法に準拠して測定される。なお、シリコーンオイルの粘度の測定においては、例えば、有機溶媒(例えば、トルエン)を用いることで、後処理液からシリコーンオイルを抽出できる。抽出されたシリコーンオイルは、洗浄し、乾燥させることにより、粘度の測定に供することができる。
オイル粒子の平均粒子径(水性媒体中での分散粒子径)としては、100nm以上250nm以下が好ましく、120nm以上220nm以下がより好ましい。オイル粒子の平均粒子径がこのような範囲内であると、後処理液吐出ヘッドから後処理液を吐出し易くなる。
なお、オイル粒子は、シリコーンオイル以外の成分を更に含んでもよい。但し、摩擦堅ろう度に更に優れた捺染物を形成しかつ捺染物の触感の低下を更に効果的に抑制するために、オイル粒子は、シリコーンオイルのみを含むことが好ましい。
既に述べたように、オイル粒子に含有されるシリコーンオイルは、イオン性基含有シリコーンオイルを含むことが好ましく、その他のシリコーンオイル(例えば、非変性シリコーンオイル)を更に含んでもよい。
(イオン性基含有シリコーンオイル)
イオン性基含有シリコーンオイルは、例えば、イオン性基で変性されたシリコーンオイルである。イオン性基含有シリコーンオイルとしては、例えば、側鎖にイオン性基が導入された変性シリコーンオイル、及び末端基にイオン性基が導入された変性シリコーンオイルが挙げられる。
イオン性基含有シリコーンオイルは、例えば、イオン性基で変性されたシリコーンオイルである。イオン性基含有シリコーンオイルとしては、例えば、側鎖にイオン性基が導入された変性シリコーンオイル、及び末端基にイオン性基が導入された変性シリコーンオイルが挙げられる。
イオン性基含有シリコーンオイルとしては、例えば、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、及びシラノール変性シリコーンオイルが挙げられ、アミノ変性シリコーンオイルが好ましい。なお、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、及びシラノール変性シリコーンオイルは、各々、イオン性基として、アミノ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、及びシラノール基を有する。
水性媒体中でオイル粒子を好適に分散させるために、イオン性基含有シリコーンオイルの官能基当量としては、1000g/mol以上5500g/mol以下が好ましい。官能基当量は、1molの官能基(イオン性基)あたりの分子量である。
オイル粒子が含むシリコーンオイルの総質量に対する、イオン性基含有シリコーンオイルの含有割合としては、30質量%以上100質量%以下が好ましく、40質量%以上100質量%以下がより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
後処理液がオイル粒子を含有する場合、後処理液は、分散剤を含有することなく、後処理液中でオイル粒子が分散していることが好ましい。例えば、イオン性基含有シリコーンオイルを含むオイル粒子は、水性媒体中で好適に分散する。このため、後処理液は、イオン性基含有シリコーンオイルを含むオイル粒子を含有することで、分散剤を含有しない場合であっても、オイル粒子の分散状態を維持できる。分散剤は、親水性基を有することが多い。後処理液が親水性基を有する分散剤を含有する場合、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度が低下する場合がある。そのため、後処理液が分散剤を含有しないことで、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を更に向上できる。分散剤としては、例えば、界面活性剤、樹脂分散剤、及び多糖類が挙げられる。
(水)
水は、後処理液において、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。後処理液における水の含有割合としては、50質量%以上90質量%以下が好ましく、55質量%以上70質量%以下がより好ましい。
水は、後処理液において、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。後処理液における水の含有割合としては、50質量%以上90質量%以下が好ましく、55質量%以上70質量%以下がより好ましい。
(他の成分)
後処理液は、必要に応じて、滑剤及び水以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、酸及び塩基が挙げられる。
後処理液は、必要に応じて、滑剤及び水以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、酸及び塩基が挙げられる。
(酸)
後処理液がオイル粒子を含有し、オイル粒子がアニオン性基を有するイオン性基含有シリコーンオイルを含む場合には、後処理液は、酸を更に含有することが好ましい。酸によってアニオン性基の電離が促され、水性媒体中で、イオン性基含有シリコーンオイルを含むオイル粒子が好適に分散する。酸としては、例えば、強酸、及び弱酸が挙げられる。強酸としては、例えば、塩酸、パラトルエンスルホン酸、及び硫酸が挙げられる。弱酸としては、例えば、安息香酸、及び酢酸が挙げられる。酸としては、強酸が好ましく、塩酸、パラトルエンスルホン酸、又は硫酸がより好ましい。後処理液が酸を含有する場合、酸の含有割合としては、濃度1mol/Lの酸の量に換算して、1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましい。
後処理液がオイル粒子を含有し、オイル粒子がアニオン性基を有するイオン性基含有シリコーンオイルを含む場合には、後処理液は、酸を更に含有することが好ましい。酸によってアニオン性基の電離が促され、水性媒体中で、イオン性基含有シリコーンオイルを含むオイル粒子が好適に分散する。酸としては、例えば、強酸、及び弱酸が挙げられる。強酸としては、例えば、塩酸、パラトルエンスルホン酸、及び硫酸が挙げられる。弱酸としては、例えば、安息香酸、及び酢酸が挙げられる。酸としては、強酸が好ましく、塩酸、パラトルエンスルホン酸、又は硫酸がより好ましい。後処理液が酸を含有する場合、酸の含有割合としては、濃度1mol/Lの酸の量に換算して、1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましい。
(塩基)
後処理液がオイル粒子を含有し、オイル粒子がカチオン性基を有するイオン性基含有シリコーンオイルを含む場合には、後処理液は、塩基を更に含有することが好ましい。塩基によってカチオン性基の電離が促され、水性媒体中で、イオン性基含有シリコーンオイルを含有するオイル粒子が好適に分散する。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウムが挙げられる。後処理液が塩基を含有する場合、塩基の含有割合としては、濃度1mol/Lの塩基の量に換算して、1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましい。
後処理液がオイル粒子を含有し、オイル粒子がカチオン性基を有するイオン性基含有シリコーンオイルを含む場合には、後処理液は、塩基を更に含有することが好ましい。塩基によってカチオン性基の電離が促され、水性媒体中で、イオン性基含有シリコーンオイルを含有するオイル粒子が好適に分散する。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウムが挙げられる。後処理液が塩基を含有する場合、塩基の含有割合としては、濃度1mol/Lの塩基の量に換算して、1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましい。
[後処理液の調製方法]
後処理液は、例えば、水と、滑剤(例えば、オイル粒子)を含有するエマルションと、必要に応じて添加される成分(例えば、酸又は塩基)とを混合することで調製できる。この場合、全原料の使用量に対するエマルションの使用量の割合としては、例えば、15質量%以上50質量%以下である。
後処理液は、例えば、水と、滑剤(例えば、オイル粒子)を含有するエマルションと、必要に応じて添加される成分(例えば、酸又は塩基)とを混合することで調製できる。この場合、全原料の使用量に対するエマルションの使用量の割合としては、例えば、15質量%以上50質量%以下である。
エマルションは、例えば、シリコーンオイルと、水と、必要に応じて用いられる酸又は塩基とを、ホモジナイザーで乳化することで調製できる。エマルションの調製において、乳化時間としては、例えば、5分以上1時間以下である。乳化温度としては、例えば、5℃以上40℃以下である。
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
[平均粒子径の測定]
各粒子(詳しくは、バインダー樹脂粒子及びオイル粒子)の平均粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザー ナノZS」)を用いて、ISO 13321:1996(Particle size analysis−Photon correlation spectroscopy)に記載の方法に準拠して測定した。各粒子の平均粒子径の測定には、各粒子を含有する溶液(詳しくは、樹脂粒子分散液及び後処理液)を水で1000倍に希釈した測定試料を用いた。
各粒子(詳しくは、バインダー樹脂粒子及びオイル粒子)の平均粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザー ナノZS」)を用いて、ISO 13321:1996(Particle size analysis−Photon correlation spectroscopy)に記載の方法に準拠して測定した。各粒子の平均粒子径の測定には、各粒子を含有する溶液(詳しくは、樹脂粒子分散液及び後処理液)を水で1000倍に希釈した測定試料を用いた。
[粘度の測定]
シリコーンオイルの粘度は、温度25℃の環境下で、JIS Z8803:2011(液体の粘度測定方法)に記載の方法に準拠して測定した。シリコーンオイルの粘度の測定には、JIS Z8803:2011の「6.2.3 ウベローデ粘度計」に記載のウベローデ粘度計を用いた。
シリコーンオイルの粘度は、温度25℃の環境下で、JIS Z8803:2011(液体の粘度測定方法)に記載の方法に準拠して測定した。シリコーンオイルの粘度の測定には、JIS Z8803:2011の「6.2.3 ウベローデ粘度計」に記載のウベローデ粘度計を用いた。
[前処理液の調製]
温度計及び攪拌羽を備えた容量1Lの3つ口フラスコ(反応容器)に、イオン交換水790.0gと、カチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン(登録商標)24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド)29.0gとを投入した。次いで、ウォーターバスを用いて、反応容器の内温を80℃に昇温させた。別途、アクリル酸ブチル89.4gとジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル四級塩47.5gとを含有する混合液Aと、過硫酸カリウム0.5gとイオン交換水30.0gとを含有する混合液Bとを準備した。次いで、反応容器の内温を80℃に保持したまま、混合液A及び混合液Bを5時間かけて反応容器に各々滴下した。次いで、反応容器の内温を80℃で2時間保持することで、重合反応を行った。これにより、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子を含有する樹脂粒子分散液を得た。得られた樹脂粒子分散液中のバインダー樹脂粒子の平均粒子径(キュムラント平均粒子径)は、50nmであった。
温度計及び攪拌羽を備えた容量1Lの3つ口フラスコ(反応容器)に、イオン交換水790.0gと、カチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン(登録商標)24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド)29.0gとを投入した。次いで、ウォーターバスを用いて、反応容器の内温を80℃に昇温させた。別途、アクリル酸ブチル89.4gとジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル四級塩47.5gとを含有する混合液Aと、過硫酸カリウム0.5gとイオン交換水30.0gとを含有する混合液Bとを準備した。次いで、反応容器の内温を80℃に保持したまま、混合液A及び混合液Bを5時間かけて反応容器に各々滴下した。次いで、反応容器の内温を80℃で2時間保持することで、重合反応を行った。これにより、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子を含有する樹脂粒子分散液を得た。得られた樹脂粒子分散液中のバインダー樹脂粒子の平均粒子径(キュムラント平均粒子径)は、50nmであった。
上述の樹脂粒子分散液20gと、イオン交換水40gと、プロピレングリコール39.5gと、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)440」)0.5gとを混合することで、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有する前処理液を得た。
[インクの調製]
アニオン性分散剤(サンノプコ株式会社製「ノプコスパース(登録商標)6100」、特殊ポリカルボン酸アミン塩)6.0質量部と、ジエチレングリコール5.0質量部と、イオン交換水74.0質量部とを混合した。得られた混合液に、カーボンブラック(東海カーボン株式会社製「#7550B/F」)15.0質量部を加えた後、30分間プレミキシングを行った。その後、プレミキシング後の混合液に対して、下記条件で分散処理を行った。
分散機:サンドグラインダー(アイメックス株式会社製)
粉砕メディア:ジルコニアビーズ(D50:1mm)
粉砕メディア充填率:60体積%
粉砕時間:6時間
アニオン性分散剤(サンノプコ株式会社製「ノプコスパース(登録商標)6100」、特殊ポリカルボン酸アミン塩)6.0質量部と、ジエチレングリコール5.0質量部と、イオン交換水74.0質量部とを混合した。得られた混合液に、カーボンブラック(東海カーボン株式会社製「#7550B/F」)15.0質量部を加えた後、30分間プレミキシングを行った。その後、プレミキシング後の混合液に対して、下記条件で分散処理を行った。
分散機:サンドグラインダー(アイメックス株式会社製)
粉砕メディア:ジルコニアビーズ(D50:1mm)
粉砕メディア充填率:60体積%
粉砕時間:6時間
分散処理後の混合液に対して遠心分離(10000rpm、2分)を行い、粗大粒子を沈殿させた。得られた上澄みを、顔料分散液とした。顔料分散液におけるカーボンブラックの含有割合は、12.5質量%であった。顔料分散液におけるカーボンブラックのD50は、130nmであった。
なお、カーボンブラックのD50は、顔料分散液をイオン交換水で300倍に希釈した溶液を試料として、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定した。
顔料分散液40.0質量部と、ジエチレングリコール20.0質量部と、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」、アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物)1.0質量部と、イオン交換水39.0質量部とを混合した。これにより、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有するインクを得た。インクは、カーボンブラックの含有割合が5.0質量%、アニオン性分散剤の含有割合が2.4質量%、ジエチレングリコールの含有割合が22.2質量%、ノニオン界面活性剤の含有割合が1.0質量%であった。
[後処理液の調製]
300gのアミノ変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製「KF−864」、粘度:1,700mm2/秒、比重:0.98、官能基当量:3,800g/mol)、600gのイオン交換水、及び100gの塩酸(濃度:1mol/L)を、ビーカーに入れた。ホモジナイザー(IKA社製「ウルトラタラックスT25」)を用いて、回転速度10000rpmで15分間、ビーカーの内容物を攪拌し、30分間静置した。次いで、120メッシュのステンレスフィルターで、ビーカーの内容物をろ過し、アミノ変性シリコーンオイルを含むオイル粒子が分散しているエマルションを得た。エマルションに含有されるオイル粒子の平均粒子径は、150nmであった。
300gのアミノ変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製「KF−864」、粘度:1,700mm2/秒、比重:0.98、官能基当量:3,800g/mol)、600gのイオン交換水、及び100gの塩酸(濃度:1mol/L)を、ビーカーに入れた。ホモジナイザー(IKA社製「ウルトラタラックスT25」)を用いて、回転速度10000rpmで15分間、ビーカーの内容物を攪拌し、30分間静置した。次いで、120メッシュのステンレスフィルターで、ビーカーの内容物をろ過し、アミノ変性シリコーンオイルを含むオイル粒子が分散しているエマルションを得た。エマルションに含有されるオイル粒子の平均粒子径は、150nmであった。
33.30gの上述のエマルション(アミノ変性シリコーンオイルの含有割合:30質量%、アミノ変性シリコーンオイルの含有量:9.99g)、33.35gのイオン交換水、及び33.35gのプロピレングリコールを混合して、後処理液を得た。後処理液において、アミノ変性シリコーンオイルの含有割合は、10質量%であった。
<インクジェット捺染装置>
捺染対象を載置する載置台と、載置台の上方に固定して配設される3個のヘッド(京セラ株式会社製「KJB4ヘッド」)とを備えるインクジェット捺染装置を用意した。載置台は、水平移動することによって載置している捺染対象を搬送する機能を有していた。3個のヘッドは、ノズルの先端と捺染対象との距離が3mmとなる位置に配設した。上述の前処理液、インク及び後処理液を、3個の記録ヘッドにそれぞれセットした。3個のヘッドは、それぞれ、25℃を保持するように設定した。以下、前処理液、インク及び後処理液をセットしたヘッドを、それぞれ、前処理液吐出ヘッド、記録ヘッド及び後処理液吐出ヘッドとする。捺染対象としては、ポリエステル製のトロピカル生地を用いた。
捺染対象を載置する載置台と、載置台の上方に固定して配設される3個のヘッド(京セラ株式会社製「KJB4ヘッド」)とを備えるインクジェット捺染装置を用意した。載置台は、水平移動することによって載置している捺染対象を搬送する機能を有していた。3個のヘッドは、ノズルの先端と捺染対象との距離が3mmとなる位置に配設した。上述の前処理液、インク及び後処理液を、3個の記録ヘッドにそれぞれセットした。3個のヘッドは、それぞれ、25℃を保持するように設定した。以下、前処理液、インク及び後処理液をセットしたヘッドを、それぞれ、前処理液吐出ヘッド、記録ヘッド及び後処理液吐出ヘッドとする。捺染対象としては、ポリエステル製のトロピカル生地を用いた。
[実施例1]
上述のインクジェット捺染装置に対して、以下の通りの設定を行い、これを実施例1のインクジェット捺染装置とした。詳しくは、前処理液の吐出量は、特定領域の全ての部位において一定とした。インクの吐出量は、特定領域の全ての部位において一定とした。後処理液の吐出量は、特定領域の全ての部位において一定とした。単位面積当たりの前処理液の吐出量VPは、20g/m2に設定した。単位面積当たりのインクの吐出量は、20g/m2に設定した。上述の通り、インクの吐出量は、特定領域の全ての部位において一定であるため、インクの最大吐出量VImaxは20g/m2である。単位面積当たりの後処理液の吐出量VAは、20g/m2に設定した。前処理液吐出ヘッドが前処理液を特定領域に吐出してから記録ヘッドがインクを特定領域に吐出するまでの第1吐出間隔は、50ミリ秒に設定した。記録ヘッドがインクを特定領域に吐出してから後処理液吐出ヘッドが後処理液を特定領域に吐出するまでの第2吐出間隔は、50ミリ秒に設定した。
上述のインクジェット捺染装置に対して、以下の通りの設定を行い、これを実施例1のインクジェット捺染装置とした。詳しくは、前処理液の吐出量は、特定領域の全ての部位において一定とした。インクの吐出量は、特定領域の全ての部位において一定とした。後処理液の吐出量は、特定領域の全ての部位において一定とした。単位面積当たりの前処理液の吐出量VPは、20g/m2に設定した。単位面積当たりのインクの吐出量は、20g/m2に設定した。上述の通り、インクの吐出量は、特定領域の全ての部位において一定であるため、インクの最大吐出量VImaxは20g/m2である。単位面積当たりの後処理液の吐出量VAは、20g/m2に設定した。前処理液吐出ヘッドが前処理液を特定領域に吐出してから記録ヘッドがインクを特定領域に吐出するまでの第1吐出間隔は、50ミリ秒に設定した。記録ヘッドがインクを特定領域に吐出してから後処理液吐出ヘッドが後処理液を特定領域に吐出するまでの第2吐出間隔は、50ミリ秒に設定した。
(捺染物の形成)
以下の方法により、実施例1のインクジェット捺染装置を用いて、捺染物を形成した。まず、載置台を用いて捺染対象を搬送しながら、前処理液吐出ヘッド、記録ヘッド及び後処理液吐出ヘッドを用いて、捺染対象に対して前処理液、インク及び後処理液をこの順番で吐出した。詳しくは、捺染対象の200mm×80mmの長方形状領域(特定領域)に対して、前処理液吐出ヘッドを用いて前処理液を吐出した。次いで、捺染対象の特定領域に対して、記録ヘッドを用いてインクを吐出した。これにより、捺染対象の特定領域に、長方形状のソリッド画像(試験画像)を形成した。次いで、捺染対象の特定領域に対して、後処理液吐出ヘッドを用いて後処理液を吐出した。これにより、捺染物を得た。
以下の方法により、実施例1のインクジェット捺染装置を用いて、捺染物を形成した。まず、載置台を用いて捺染対象を搬送しながら、前処理液吐出ヘッド、記録ヘッド及び後処理液吐出ヘッドを用いて、捺染対象に対して前処理液、インク及び後処理液をこの順番で吐出した。詳しくは、捺染対象の200mm×80mmの長方形状領域(特定領域)に対して、前処理液吐出ヘッドを用いて前処理液を吐出した。次いで、捺染対象の特定領域に対して、記録ヘッドを用いてインクを吐出した。これにより、捺染対象の特定領域に、長方形状のソリッド画像(試験画像)を形成した。次いで、捺染対象の特定領域に対して、後処理液吐出ヘッドを用いて後処理液を吐出した。これにより、捺染物を得た。
[実施例2〜15]
上述のインクジェット捺染装置に対して、下記表1及び表2に示す通りの設定を行い、これを実施例2〜15のインクジェット捺染装置とした。そして、実施例1のインクジェット捺染装置による捺染物の形成と同様の方法で、実施例2〜15のインクジェット捺染装置による捺染物の形成を行った。
上述のインクジェット捺染装置に対して、下記表1及び表2に示す通りの設定を行い、これを実施例2〜15のインクジェット捺染装置とした。そして、実施例1のインクジェット捺染装置による捺染物の形成と同様の方法で、実施例2〜15のインクジェット捺染装置による捺染物の形成を行った。
[実施例16]
上述のインクジェット捺染装置に対して、記録ヘッドによってインクを吐出する際に、単位面積当たりのインクの吐出量が特定領域の部位毎に変化するように設定した。つまり、実施例16のインクジェット捺染装置は、特定領域の一部の部位では単位面積当たりのインクの吐出量を多くすることで画像濃度の高い画像を形成し、別の部位では単位面積当たりのインクの吐出量を少なくすることで画像濃度の低い画像を形成するように設定された。詳しくは、実施例16のインクジェット捺染装置は、最も画像濃度の高い領域において、単位面積当たりのインクの吐出量(インクの最大吐出量VImax)が30g/m2となるように設定された。また、実施例16のインクジェット捺染装置は、最も画像濃度の低い領域において、単位面積当たりのインクの吐出量(インクの最低吐出量)が5g/m2となるように設定された。それ以外の設定は、実施例1のインクジェット捺染装置と同様とした。これを実施例16のインクジェット捺染装置とした。実施例1のインクジェット捺染装置による捺染物の形成と同様の方法で、実施例16のインクジェット捺染装置による捺染物の形成を行った。実施例16のインクジェット捺染装置は、捺染対象の特定領域(200mm×80mm)に、長方形状のソリッド画像を形成する代わりに、濃淡を有する長方形状の試験画像を形成した。
上述のインクジェット捺染装置に対して、記録ヘッドによってインクを吐出する際に、単位面積当たりのインクの吐出量が特定領域の部位毎に変化するように設定した。つまり、実施例16のインクジェット捺染装置は、特定領域の一部の部位では単位面積当たりのインクの吐出量を多くすることで画像濃度の高い画像を形成し、別の部位では単位面積当たりのインクの吐出量を少なくすることで画像濃度の低い画像を形成するように設定された。詳しくは、実施例16のインクジェット捺染装置は、最も画像濃度の高い領域において、単位面積当たりのインクの吐出量(インクの最大吐出量VImax)が30g/m2となるように設定された。また、実施例16のインクジェット捺染装置は、最も画像濃度の低い領域において、単位面積当たりのインクの吐出量(インクの最低吐出量)が5g/m2となるように設定された。それ以外の設定は、実施例1のインクジェット捺染装置と同様とした。これを実施例16のインクジェット捺染装置とした。実施例1のインクジェット捺染装置による捺染物の形成と同様の方法で、実施例16のインクジェット捺染装置による捺染物の形成を行った。実施例16のインクジェット捺染装置は、捺染対象の特定領域(200mm×80mm)に、長方形状のソリッド画像を形成する代わりに、濃淡を有する長方形状の試験画像を形成した。
[比較例1〜2]
実施例1のインクジェット捺染装置から後処理液吐出ヘッドを取り外したものを、比較例1のインクジェット捺染装置とした。また、実施例1のインクジェット捺染装置から前処理液吐出ヘッドを取り外したものを、比較例2のインクジェット捺染装置とした。実施例1のインクジェット捺染装置による捺染物の形成と同様の方法で、比較例1及び2のインクジェット捺染装置による捺染物の形成を行った。
実施例1のインクジェット捺染装置から後処理液吐出ヘッドを取り外したものを、比較例1のインクジェット捺染装置とした。また、実施例1のインクジェット捺染装置から前処理液吐出ヘッドを取り外したものを、比較例2のインクジェット捺染装置とした。実施例1のインクジェット捺染装置による捺染物の形成と同様の方法で、比較例1及び2のインクジェット捺染装置による捺染物の形成を行った。
[比較例3]
上述のインクジェット捺染装置に対して、前処理液吐出ヘッドで前処理液を吐出しないように設定した。それ以外の設定は、実施例1のインクジェット捺染装置と同様とした。これを比較例3のインクジェット捺染装置とした。以下の点を変更した以外は、実施例1のインクジェット捺染装置による捺染物の形成と同様の方法で、比較例3のインクジェット捺染装置による捺染物の形成を行った。比較例3のインクジェット捺染装置による捺染物の形成では、前処理液吐出ヘッドで前処理液を特定領域に吐出する代わりに、単位面積当たりの前処理液の塗布量が20g/m2となるように、スプレーを用いて前処理液を捺染対象の全面に予め塗布した。
上述のインクジェット捺染装置に対して、前処理液吐出ヘッドで前処理液を吐出しないように設定した。それ以外の設定は、実施例1のインクジェット捺染装置と同様とした。これを比較例3のインクジェット捺染装置とした。以下の点を変更した以外は、実施例1のインクジェット捺染装置による捺染物の形成と同様の方法で、比較例3のインクジェット捺染装置による捺染物の形成を行った。比較例3のインクジェット捺染装置による捺染物の形成では、前処理液吐出ヘッドで前処理液を特定領域に吐出する代わりに、単位面積当たりの前処理液の塗布量が20g/m2となるように、スプレーを用いて前処理液を捺染対象の全面に予め塗布した。
<評価>
実施例1〜16及び比較例1〜3のインクジェット捺染装置により形成された捺染物に対して、画像濃度、触感及び湿潤摩擦堅ろう度を評価した。評価結果を下記表1及び表2に示す。
実施例1〜16及び比較例1〜3のインクジェット捺染装置により形成された捺染物に対して、画像濃度、触感及び湿潤摩擦堅ろう度を評価した。評価結果を下記表1及び表2に示す。
[画像濃度]
捺染物の試験画像の画像濃度を、反射濃度計(X−Rite社製「RD−19」)を用いて測定した。なお、実施例16のインクジェット捺染装置により形成された捺染物については、試験画像において最も画像濃度の高い部位における画像濃度を測定した。画像濃度は、以下の基準に沿って判断した。
捺染物の試験画像の画像濃度を、反射濃度計(X−Rite社製「RD−19」)を用いて測定した。なお、実施例16のインクジェット捺染装置により形成された捺染物については、試験画像において最も画像濃度の高い部位における画像濃度を測定した。画像濃度は、以下の基準に沿って判断した。
特に良好:画像濃度が1.4以上
良好:画像濃度が1.1以上1.4未満
不良:画像濃度が1.1未満
良好:画像濃度が1.1以上1.4未満
不良:画像濃度が1.1未満
[触感]
捺染物から、220mm×100mmの長方形状の試験片を切り出した。詳しくは、中央に試験画像(200mm×80mm)が位置し、かつ試験画像の周囲に幅10mmの余白部(画像が形成されていな部位)が存在するように、試験片を切り出した。次に、試験片を二つ折りにした。詳しくは、折り目が試験片の両短辺に対して平行となるように、試験片を二つ折りにした(二つ折り後の寸法:110mm×100mm)。次に、二つ折りにされた試験片のループ高さ(折り目の位置のふくらみ)を測定した。測定されたループ高さを、触感の評価値とした。ループ高さは、その値が高い程、捺染後に捺染対象が硬くなって折り目でふくらんでいることを示す。即ち、ループ高さが高い捺染物は、触感が低下していると判断される。捺染物の触感の低下を抑制できているか否かは、下記基準に基づいて判断した。なお、実施例16のインクジェット捺染装置により形成された捺染物については、最も画像濃度が高くなる部分が折り目となるように、画像の形成及び試験片の切り出しを行った。
捺染物から、220mm×100mmの長方形状の試験片を切り出した。詳しくは、中央に試験画像(200mm×80mm)が位置し、かつ試験画像の周囲に幅10mmの余白部(画像が形成されていな部位)が存在するように、試験片を切り出した。次に、試験片を二つ折りにした。詳しくは、折り目が試験片の両短辺に対して平行となるように、試験片を二つ折りにした(二つ折り後の寸法:110mm×100mm)。次に、二つ折りにされた試験片のループ高さ(折り目の位置のふくらみ)を測定した。測定されたループ高さを、触感の評価値とした。ループ高さは、その値が高い程、捺染後に捺染対象が硬くなって折り目でふくらんでいることを示す。即ち、ループ高さが高い捺染物は、触感が低下していると判断される。捺染物の触感の低下を抑制できているか否かは、下記基準に基づいて判断した。なお、実施例16のインクジェット捺染装置により形成された捺染物については、最も画像濃度が高くなる部分が折り目となるように、画像の形成及び試験片の切り出しを行った。
効果的に抑制できている:ループ高さが20mm未満
抑制できている:ループ高さが20mm以上25mm未満
抑制できていない:ループ高さが25mm以上
抑制できている:ループ高さが20mm以上25mm未満
抑制できていない:ループ高さが25mm以上
参考のため、捺染を行っていない捺染対象についても、220mm×100mmの長方形状の試験片を切り出した。次に、試験片を二つ折りにした。詳しくは、折り目が試験片の両短辺に対して平行となるように、試験片を二つ折りにした(二つ折り後の寸法:110mm×100mm)。次に、二つ折りにされた試験片のループ高さ(折り目の位置のふくらみ)を測定した。測定されたループ高さは、17mmであった。
[湿潤摩擦堅ろう度]
JIS(日本産業規格)L−0849:2013(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)に記載の摩擦試験機II形(学振形)法に従って、測定対象となる捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を測定した。
JIS(日本産業規格)L−0849:2013(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)に記載の摩擦試験機II形(学振形)法に従って、測定対象となる捺染物の湿潤摩擦堅ろう度を測定した。
詳しくは、捺染対象において試験画像が形成されている領域から、220mm×30mmの試験片を1枚切り出した。これを湿潤摩擦堅ろう度の評価に用いた。
湿潤摩擦堅ろう度の評価では、試験片の中央部100mmの領域に対して、水で十分に湿潤させた摩擦用綿金巾を毎分30往復の速度で1000往復摩擦させた(摩擦試験)。この際、摩擦用綿金巾には、2Nの荷重を付加した。摩擦試験後に摩擦用綿金巾を十分に風乾させた。次いで、反射濃度計(X−Rite社製「RD−19」)を用いて、摩擦試験後の摩擦用綿金巾を測定した。詳しくは、摩擦用綿金巾に対して、摩擦試験で試験片と接触することで着色した領域の画像濃度Aと、摩擦試験で試験片と接触しなかったため着色しなかった領域の画像濃度Bとを測定した。そして、画像濃度A及び画像濃度Bの画像濃度差Δ(画像濃度A−画像濃度B)を測定した。湿潤摩擦堅ろう度は、以下の評価基準に沿って判断した。なお、実施例16のインクジェット捺染装置により形成された捺染物を摩擦試験後に目視で確認したところ、極端に色落ちした部分は存在しなかった。
特に良好:画像濃度差Δが0.10以下
良好:画像濃度差Δが0.10超0.25以下
不良:画像濃度差Δが0.25超
良好:画像濃度差Δが0.10超0.25以下
不良:画像濃度差Δが0.25超
なお、下記表1及び表2において、「−」は、該当する工程を行っていないことを示す。濃淡の「無」は、濃淡を有しない画像を形成したことを示す。濃淡の「有」は、濃淡を有する画像を形成したことを示す。「第1間隔」及び「第2間隔」は、それぞれ、第1吐出間隔及び第2吐出間隔を示す。「スプレー」は、スプレーで塗布したことを示す。
表1及び表2に示すように、実施例1〜16のインクジェット捺染装置は、捺染対象に画像を形成するインクジェット捺染装置であって、捺染対象の特定領域に前処理液を吐出する前処理液吐出ヘッドと、捺染対象の特定領域にインクを吐出する記録ヘッドと、捺染対象に後処理液を吐出する後処理液吐出ヘッドとを備えていた。前処理液は、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有していた。インクは、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有していた。後処理液は、滑剤及び水を含有していた。実施例1〜16のインクジェット捺染装置は、捺染物の触感の低下を抑制しつつ、画像濃度及び湿潤摩擦堅ろう度に優れる捺染物を形成できた。
一方、比較例1〜3のインクジェット捺染装置は、上述の構成を満たさなかった。そのため、比較例1〜3のインクジェット捺染装置は、捺染物の触感の低下を抑制しつつ、画像濃度及び湿潤摩擦堅ろう度に優れる捺染物を形成することができなかった。
詳しくは、比較例1のインクジェット捺染装置は、後処理液吐出ヘッドを備えなかった。比較例1のインクジェット捺染装置は、後処理を行わないため、形成される捺染物の湿潤摩擦堅ろう度が不良であった。
比較例2のインクジェット捺染装置は、前処理液吐出ヘッドを備えなかった。比較例2のインクジェット捺染装置は、前処理を行わないため、形成される捺染物の画像濃度が不良であった。
比較例3のインクジェット捺染装置は、捺染対象の全面にスプレーで前処理液を塗布した。比較例3のインクジェット捺染装置は、前処理後の捺染対象に多量の水分が含まれるため、インクに含まれる顔料を捺染対象の表面に結着させることが出来ず、その結果、画像濃度が低下したと判断される。
本発明に係るインクジェット捺染装置は、捺染物を形成するために用いることができる。
1 前処理液吐出ヘッド
2 記録ヘッド
2a 第1記録ヘッド
2b 第2記録ヘッド
2c 第3記録ヘッド
2d 第4記録ヘッド
3 後処理液吐出ヘッド
4 載置台
T 捺染対象
2 記録ヘッド
2a 第1記録ヘッド
2b 第2記録ヘッド
2c 第3記録ヘッド
2d 第4記録ヘッド
3 後処理液吐出ヘッド
4 載置台
T 捺染対象
Claims (4)
- 捺染対象に画像を形成するインクジェット捺染装置であって、
前記捺染対象の特定領域に前処理液を吐出する前処理液吐出ヘッドと、
前記捺染対象の前記特定領域にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記捺染対象に後処理液を吐出する後処理液吐出ヘッドとを備え、
前記前処理液は、カチオン樹脂を含むバインダー樹脂粒子及び水を含有し、
前記インクは、顔料、アニオン性分散剤及び水を含有し、
前記後処理液は、滑剤及び水を含有する、インクジェット捺染装置。 - 前記後処理液吐出ヘッドは、前記捺染対象の前記特定領域に前記後処理液を吐出する、請求項1に記載のインクジェット捺染装置。
- 前記前処理液の吐出量は、前記特定領域の全ての部位において一定であり、
前記インクの吐出量は、前記特定領域の全ての部位において一定であるか、又は前記特定領域の部位毎に異なり、かつ
前記後処理液の吐出量は、前記特定領域の全ての部位において一定であり、
単位面積当たりの前記前処理液の吐出量をVP、単位面積当たりの前記インクの最大吐出量をVImax、単位面積当たりの前記後処理液の吐出量をVAとしたときに、
VImaxに対するVPの比率RPは、40%以上220%以下であり、
VImaxに対するVAの比率RAは、40%以上220%以下である、請求項2に記載のインクジェット捺染装置。 - 前記前処理液吐出ヘッドが前記前処理液を吐出してから前記記録ヘッドが前記インクを吐出するまでの間隔を第1吐出間隔とし、
前記記録ヘッドが前記インクを吐出してから前記後処理液吐出ヘッドが前記後処理液を吐出するまでの間隔を第2吐出間隔としたときに、
前記第1吐出間隔及び前記第2吐出間隔は、それぞれ、15ミリ秒以上15秒以内である、請求項1〜3の何れか一項に記載のインクジェット捺染装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023163189A1 (ja) * | 2022-02-28 | 2023-08-31 | 京セラ株式会社 | 循環装置、印刷装置、循環方法および印刷方法 |
EP4335649A1 (en) | 2022-09-07 | 2024-03-13 | Seiko Epson Corporation | Printing system and estimation method |
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WO2023163189A1 (ja) * | 2022-02-28 | 2023-08-31 | 京セラ株式会社 | 循環装置、印刷装置、循環方法および印刷方法 |
JP7473750B2 (ja) | 2022-02-28 | 2024-04-23 | 京セラ株式会社 | 循環装置、印刷装置、循環方法および印刷方法 |
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