JP2022000319A - メタルボンド砥石 - Google Patents
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Abstract
【課題】砥石損耗量が小さくなるように充分な砥粒の保持力があり、しかも加工時には工作物の切り屑の逃げ場所となる気孔が充分に存在するようにして、切れ味の向上と耐摩耗性の向上とを両立させたメタルボンド砥石にする。【解決手段】砥粒1をメタルボンド2で結合し、粒径100nm以下のシリカ微粒子3aの凝集した平均粒径30〜100μmの球状シリカゲル3を、砥石組織内に所定量だけ分散状態で含有したメタルボンド砥石Aとする。球状シリカゲル3が研磨面に現れてワークに接触し、その接触により、球状シリカゲル3の一部が砕けて外部に開口した気孔7が研磨面に形成される。【選択図】図1
Description
この発明は、超砥粒等の硬質砥粒をメタルボンドで結合した砥石に関し、例えばホーニング加工、超仕上げ加工、研削加工、切断加工などに使用できるメタルボンド砥石に関する。
一般に、メタルボンド砥石は、ボンドマトリックス型の構造であり、基本的には自然気孔を有しておらず、砥粒保持力が強くて耐摩耗性には優れている。
ただし、気孔は、ワークを加工する時に発生する切り屑(研磨屑)の排出を促すために必要なものであり、適度に形成しておく必要がある。
ただし、気孔は、ワークを加工する時に発生する切り屑(研磨屑)の排出を促すために必要なものであり、適度に形成しておく必要がある。
加工時に切り屑の逃げ場所となる気孔が不足すると、切り屑が排出されずに目詰まりや溶着を起こしやすくなり、そのような状態のメタルボンド砥石は、切れ味が悪くなり、加工抵抗も大きくなって、高精度で高能率な加工を行うことが困難になる。ただし、気孔が多くなりすぎると砥粒の保持力が低下するという弊害が起こる。
さらに図2を参照し、加工時のメタルボンド砥石Aの表面状態と工作物(ワーク)Wとの関係を説明する。
メタルボンド2から突出している砥粒1の刃先が、ワーク(被加工物)Wに接しながら図中矢印方向に切削することによって生じる切り屑4は、ワークWとメタルボンド砥石Aの表面との僅かな隙間dからメタルボンド2を抉りながら移動する。
メタルボンド2から突出している砥粒1の刃先が、ワーク(被加工物)Wに接しながら図中矢印方向に切削することによって生じる切り屑4は、ワークWとメタルボンド砥石Aの表面との僅かな隙間dからメタルボンド2を抉りながら移動する。
このときメタルボンド2が抉られやすければ、切り屑4は逃げやすく切れ味は良くなるが、砥粒1の保持部分付近まで抉られると、砥粒1が脱落しやすくなり、砥石損耗量が増大してメタルボンドの性能が損なわれ、砥石寿命も短くなる。
反対にボンドマトリックスのメタルボンド2が強固な場合は排出される切り屑4によってボンドマトリックスがあまり抉られないため、砥粒1が摩耗して突き出し量が減少する。そうすると、隙間dが小さくなるから、切り屑4の排出がより困難となり、切れ味の低下を引き起こすことになる。
そして、排出されない切り屑4が大きな固まりになると、目詰まりし、さらには溶着を起こして砥石表面の砥粒の切れ刃を塞ぐことにもなり、切れ味が極端に低下する。
また溶着部分は砥石表面から隆起してワークに対して局所的に高圧で接することになるから、砥石組織が破壊されやすくなり、砥石損耗量の大幅な悪化を招き、または仕上げ面粗さが悪くなる。
このようなことからメタルボンド砥石は、基本的に有気孔ボンドシステムを備えているビトリファイドボンド砥石に較べると切れ味が劣る傾向があった。
ここで、メタルボンド砥石の切れ味を向上させるために、有気孔化を図る手段としては以下のような手段が知られている。
例えば、金属結合剤粉末中に、ダイヤモンド砥粒等の超砥粒および多孔質ケイ酸カルシウム粉末を混合し、この混合物を圧粉成形および焼結してなるメタルボンド砥石では、高温で焼結するときに、多孔質ケイ酸カルシウム粒子を収縮させて気孔を形成することが知られている(特許文献1)。
気孔形成剤としては、上記以外に砥石の焼成工程において燃えない無機質の中空微粒子などが用いられてきた。
中空微粒子を分散状態に添加したメタルボンド砥石としては、中空微粒子としてシリカバルーン、シラスバルーン、ガラスバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーンなどを用いたものが知られている(特許文献2)。
このようにしてメタルボンド砥石を有気孔化すれば、加工時に切り屑の逃げ場所となる気孔によって、切り屑が排出されやすく、目詰まりが発生し難くなり、溶着も起り難くなる。
しかし、特許文献1に記載される多孔質ケイ酸カルシウム粒子を気孔形成剤として採用すると、この粒子は不定形なものであり、かつ比較的柔らかくて成形時の圧力に比例して圧縮されて粒子の大きさが変化するので、気孔率の調整が容易でなく、また所期したボンドマトリックスの安定した特性も得られ難い。
また、特許文献2に記載されるように、メタルボンドに中空微粒子を分散状態に添加すると、高い成形圧力では中空物質の薄い殻は耐えられずに破壊されてしまうので、有効な空洞を作るためには成形圧力を低圧にする必要がある。
そのような低い圧力で成形すると、ボンドマトリックスが弱くなってメタルボンド砥石の有効性が損なわれてしまう。
そのような低い圧力で成形すると、ボンドマトリックスが弱くなってメタルボンド砥石の有効性が損なわれてしまう。
特に超仕上げ加工では、砥石の研磨面をワークに隙間なく面接触させた状態で加工するので、ワークから削り出された切り屑がメタルボンド砥石の気孔部に詰まりやすく、気孔の大きさや嵩密度の調整は欠かせない品質条件である。
また、ホーニング加工は、ホーニング砥石を、シューと呼ばれる砥石台に接着し、筒状工作物の内側を研磨する加工であり、例えば自動車部品のシリンダーの内径加工などに用いられるが、精密な内面の仕上加工として、小粒径の超砥粒を用い、工作物に砥石を比較的低い適性圧力で接触させて高品質な表面に加工する必要がある。
このようなホーニング加工は、加工物と砥石が面接触で接し、加工物から削り出される切り屑は、細長い長方体状の砥石と加工物の間を長い距離を移動して排出されることになるので特に切り屑が排出されにくい。
最近のホーニング加工における超仕上げ加工では、加工時間の短縮や面粗さの向上がより要求されており、可及的に小さな砥粒による高能率かつ高精度の加工が要求され、さらに高寿命化も要求されている。
このような要望に対応するため、砥粒支持力の高いメタルボンド砥石を用い、しかも切り屑を安定して排出させる必要があった。
このような要望に対応するため、砥粒支持力の高いメタルボンド砥石を用い、しかも切り屑を安定して排出させる必要があった。
しかしながら、前述のように金属組織に有気孔を形成すると、母体のメタルボンド自身が弱くなる傾向があり、切れ味の向上を図ると耐摩耗性は低下してしまうという問題がある。
また超仕上げ加工用砥石には、加工時間の短縮や仕上げ面粗さのさらなる向上のために、より細かい粒径の砥粒を用いた高能率で高精度の加工が可能となるメタルボンド砥石が要望されている。
このように高能率・高精度で研削等の前記加工をするためには、メタルボンド砥石の切れ味をより向上させ、耐摩耗性も向上させる必要がある。しかしながら、上述したようにメタルボンド砥石の切れ味の向上と耐摩耗性の向上とを両立させることは容易ではない。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決し、砥石損耗量が小さくなるように充分な砥粒の保持力があり、しかも加工時には工作物の切り屑の逃げ(退避)場所となる気孔が充分に存在するようにして、切れ味の向上と耐摩耗性の向上とを両立させたメタルボンド砥石とすることである。
上記の課題を解決するため、この発明においては、硬質砥粒をメタルボンドで結合させたメタルボンド砥石であって、粒径100nm以下のシリカ微粒子の凝集した平均粒径30〜100μmの球状シリカゲルを、前記メタルボンド砥石の組織内に分散状態で5〜30体積%含有するメタルボンド砥石としたのである。
上記したように構成されるこの発明のメタルボンド砥石は、成形時及び焼成時に球状シリカゲルが圧力及び加熱に耐えて変形や焼失することなく、加圧に充分耐える球形状を維持する。
メタルボンド砥石の使用時に、被加工物(ワーク)の凹凸のある表面に球状シリカゲルが接触すると、凝集していた粒径100nm以下のシリカ微粒子が部分的に破砕された状態になり、砥石表面には空洞、すなわち気孔が出現する。これにより、生じた切り屑は、前記空洞に一時的に収容でき、その後、加工液等と共に砥石表面から適宜に排出される。
切り屑の排出によって砥石表面の溶着した砥粒が突き出ることもなく、溶着は防止されて切れ味は向上する。そして、砥石表面は、このように摩耗して新生した面が繰り返し現れて、良好な切れ味が持続するメタルボンド砥石になる。
また、ワークと非接触状態で砥石内部に存在する所定の大きさの球状シリカゲルは、球状のまま存在することによって、成形時及び加工時に外部から圧力を受ける砥石組織を内部から支持する。
以上のような作用によって、切れ味の向上が図れ、かつ耐摩耗性も良いメタルボンド砥石となる。すなわち、見かけ上は無気孔のメタルボンド砥石でありながら、研削や超仕上げ等の加工時には、砥石表面に所要な気孔が出現するメタルボンド砥石になる。
球状シリカゲルは、ホーニング加工のように低速でワークに接触させる加工において、容易に被加工物との接触部のみで球状シリカゲルが破壊されるので、加工に所要の気孔を備えることができる。
上記作用が、砥石表面に均一に奏されるように、上記球状シリカゲルは、粒径100nm以下のシリカ微粒子の凝集した二次粒子からなることが好ましい。粒径100nmを超えるシリカ微粒子は、ファンデルワールス力による凝集力や結合力が充分でなく、均一な球形状および粒子径になるような調製が容易でない。
また、二次粒子である球状シリカゲルは、平均粒径30〜100μmのものが適切である。平均粒径30μm未満の小粒径では、砥石表面に形成される気孔が砥粒に比べて小さすぎて空洞(気孔)に切り屑が収容され難くなって好ましくない。また、球状シリカゲルの平均粒径が100μmを超える大粒径では、大きく形成される空洞の周囲の砥粒の支持力が低下することになるので好ましくない。
球状シリカゲルの配合割合は、前記メタルボンド砥石の組織内に分散状態で5〜30体積%である。
砥石組織(100体積%)中に5体積%未満の少量では、加工時の砥石表面に充分な密度で気孔を形成することができずに好ましくない。また、30体積%を超えて球状シリカゲルを配合すると、砥石の組織を充分に支えることが困難になって好ましくない。このような理由によって、より好ましい球状シリカゲルの配合割合は、10〜20体積%である。
砥石組織(100体積%)中に5体積%未満の少量では、加工時の砥石表面に充分な密度で気孔を形成することができずに好ましくない。また、30体積%を超えて球状シリカゲルを配合すると、砥石の組織を充分に支えることが困難になって好ましくない。このような理由によって、より好ましい球状シリカゲルの配合割合は、10〜20体積%である。
また、球状シリカゲルの細孔容積は、70〜85%であることが好ましい。なぜなら、細孔容積が70%未満の球状シリカゲルは、緻密になり小破砕及び脱落が起り難くなるので好ましくない。また、細孔容積が85%を超える粗い球状シリカゲルでは、砥石の組織を充分に支えることが困難になって好ましくない。
また、上記メタルボンドが、溶融温度750℃以下のメタルボンドであることが好ましい。砥石成形に当たって球状シリカゲルの塊は、高温(800℃以上)では溶融してしまい空洞部が無くなるばかりでなく、焼結してしまって硬い塊となり、気孔の役目を成さなくなってしまうからである。
また、超仕上げ加工のように、砥石の研磨面をワークに隙間なく面接触させて加工を行うためには、できるだけ硬質の砥粒を用いて高能率化できるように、上記硬質砥粒が、ダイヤモンド砥粒または立方晶系窒化硼素砥粒であることが好ましい。
また、高精度加工のためには、上記硬質砥粒が、粒径2〜300μmの硬質砥粒であることが好ましい。
また、高精度加工のためには、上記硬質砥粒が、粒径2〜300μmの硬質砥粒であることが好ましい。
上記のメタルボンド砥石の製造方法としては、メタルボンドが、焼結時に球状シリカゲルが溶融しないように750℃以下の低温で加熱することが好ましい。すなわち、ダイヤモンド砥粒や立方晶系窒化硼素(CBN)砥粒のような超砥粒等の硬質砥粒と粉末状メタルボンドを混合してメタルボンド中に硬質砥粒を分散させ、次いで、平均粒径が30〜100μmの球状シリカゲルを所定量添加し、さらに混合して前記硬質砥粒とメタルボンドと球状シリカゲルが混ざり合った混合物を形成し、その混合物を成形型に入れて圧粉成形し、得られた圧粉体を750℃以下で加熱して焼結するメタルボンド砥石の製造方法を採用することが好ましい。
この発明のメタルボンド砥石は、所定粒径の球状シリカゲルが、分散状態で所定量配合されており、非加工状態では見かけ上の気孔を備えていないが、加工時には砥石がワークに接触した面において、球状シリカゲルが小破砕及び脱落して気孔が形成され、切り屑は、球状シリカゲルの脱落部に一時的に収容され、その後、加工液と共に適宜に排出され、安定した切れ味の持続するメタルボンド砥石となる。
また、砥石内部に存在する球状シリカゲルは、原型のままで存在して砥石の組織を常時支えるので、充分な砥粒の保持力を有しており、切れ味向上と砥石の耐摩耗性の向上を両立させたメタルボンド砥石となる利点がある。
また、この発明のメタルボンド砥石の製造方法によれば、焼結するときに球状シリカゲルが溶融せず、または多孔質性が損なわれないので、効率よく切れ味向上と耐摩耗性の向上を両立させたメタルボンド砥石が製造できる利点がある。
この発明のメタルボンド砥石の実施形態の砥石組織の概略構造を、以下に模式的に示した図面及び顕微鏡写真を参照しつつ説明する。
図1に示すように、実施形態のメタルボンド砥石は、砥粒1をメタルボンド2で結合し、粒径100nm以下のシリカ微粒子3aの凝集した平均粒径30〜100μmの球状シリカゲル3を、砥石組織内に所定量だけ分散状態で含有したものである。
図1に示すように、実施形態のメタルボンド砥石は、砥粒1をメタルボンド2で結合し、粒径100nm以下のシリカ微粒子3aの凝集した平均粒径30〜100μmの球状シリカゲル3を、砥石組織内に所定量だけ分散状態で含有したものである。
砥粒1は、ダイヤモンド砥粒または立方晶系窒化硼素砥粒等の超砥粒が適用できる。そのような砥粒1は、平均粒径が100μm以下、好ましくは、2〜30μm程度のものが用いられることが、超仕上げ等の高精度の加工に適切である。
図2に示すように、例えば静止したワークWに対して、図中の矢印で示される切削方向にメタルボンド砥石Aが進むとき、砥石表面に露出している砥粒1は、摺動する状態で接触したワークWから切り屑4を削り出しながら進み、その背後にメタルボンド2の隆起した支え尾部5が形成される。また、砥粒1の前方には切り屑4の先端で抉られたメタルボンド2の摩耗クレーター6が形成される。切り屑4は、砥粒1の移動する方向に対して前方に形成されるが、砥粒1の動きに対応して摩耗クレーター6が連続していくので、例えばホーニング加工では砥石1の後方にV溝状に広がって摩耗クレーター6が形成される。
図2に示すように、例えば静止したワークWに対して、図中の矢印で示される切削方向にメタルボンド砥石Aが進むとき、砥石表面に露出している砥粒1は、摺動する状態で接触したワークWから切り屑4を削り出しながら進み、その背後にメタルボンド2の隆起した支え尾部5が形成される。また、砥粒1の前方には切り屑4の先端で抉られたメタルボンド2の摩耗クレーター6が形成される。切り屑4は、砥粒1の移動する方向に対して前方に形成されるが、砥粒1の動きに対応して摩耗クレーター6が連続していくので、例えばホーニング加工では砥石1の後方にV溝状に広がって摩耗クレーター6が形成される。
図1、2中の符号7は、加工中の砥石表面に開口した気孔であり、気孔7の内部のシリカ微粒子3aは、気孔7の内面に沿って一部残存している状態となる場合が多い。図示した空白部分の多い気孔7は、内部のシリカ微粒子3aの殆どが脱け落ちているものであり、砥石表面の摩耗によって気孔7の開口径は変化する。
球状シリカゲル3は、ナノミリサイズ(100nm以下、例えば10nm程度)の無数のシリカ微粒子3aを凝集化して得られたものであって、球状シリカゲル3の平均粒径は30〜100μmのものが採用される。このような球状シリカゲル3は、砥石の組織中に砥石の体積比で3〜20%含まれている。
この発明に用いる球状シリカゲル3は、例えばゲル法シリカと通称される湿式法による合成非晶質シリカを採用することができ、これは周知の製造工程を経て得られる。すなわち球状シリカゲル3は、ケイ酸ナトリウムと硫酸などの無機酸の中和反応を酸性領域で進行させることにより、粒径100nm以下のシリカ微粒子3aを一次粒子として、その成長を制御しながら凝集させて得ることができる。
このような球状シリカゲル3は、クロマトグラフィー用シリカゲルとして市販されている富士シリシア株式会社製の球状シリカゲル(PSQ,SMB)などを用いることができる。
その球状シリカゲル3の外観を拡大した写真を図3に示す。写真の球状シリカゲルは、粒径がほぼ60μmである。この球状シリカゲルの表面を部分的に3万倍に拡大した走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示す。球状シリカゲルの表面は、凝集したシリカ微粒子3a(図2参照)で覆われている。
この発明のメタルボンド砥石は、硬質砥粒と粉末状メタルボンドを混合してメタルボンド中に硬質砥粒を分散させ、次いで、平均粒径が30〜100μmの球状シリカゲルを所定量添加し、球状シリカゲルが破壊されないように低速で軽い混合を続行して硬質砥粒とメタルボンドと球状シリカゲルが混ざり合った粉体を形成し、その混合粉体を成形型に注入して圧縮し、圧粉体を形成する。
圧粉体の状態では、球状シリカゲルはその形状によって成形圧力に耐えることができるので、得られた圧粉体を750℃以下に加熱して焼結する方法で製造できる。
圧粉体の状態では、球状シリカゲルはその形状によって成形圧力に耐えることができるので、得られた圧粉体を750℃以下に加熱して焼結する方法で製造できる。
成形体の焼成温度は、750℃を超えると成形体の焼成時に添加した球状シリカゲルが溶けて強固に固まり、ワークとの接触による破壊が起こり難くなるから、この場合は球状シリカゲルによる所期した効果が充分に得られなくなり好ましくない。
メタルボンド砥石は、使用時の耐熱性を考えて、できるだけ高温に耐えるものが好ましいので、焼成温度の下限が500℃程度に設定するのが好ましい。従って、焼成温度は750℃以下、例えば500〜750℃の範囲で結合剤のメタルボンドを溶融させることが好ましい。
メタルボンドの具体例としては、銅錫(Cu−Sn)系、またはこれに銀(Ag)を添加した組成物が特に好ましい例として挙げられる他、周知のメタルボンド組成として、Cu−Sn−Co系、Cu−Sn−Ni系、Cu−Sn−Fe−Ni系、Cu−Sn−Fe−Co系などが挙げられる。
図2に示されるように、球状シリカゲル3を添加したこの発明のメタルボンド砥石Aは、研磨面が摩耗していくと組織中に埋没していた球状シリカゲル3が研磨面に現れてワークに接触し、その接触により、球状シリカゲル3の一部が砕けて外部に開口した気孔7が研磨面に現れる。
その気孔7の周辺に存在する砥粒1は、エッジが露出してワークに接触しやすくなっており、そのエッジが切れ刃となってワークを削るエッジ効果が期待でき、実質の加工面圧力を増やすことも可能になって良好な切れ味が発揮される。
また、気孔7が切り屑4の排出を促すことから、安定した切れ味が持続される。球状シリカゲル3は、一部が砕けても、砕けていない部分は組織中に残る。そのため、メタルボンド砥石の砥粒支持力の大幅な低下が抑制されて砥石損耗量の増加が抑えられる。
また、この発明に用いる球状シリカゲル3は、従来採用されていた粒径や形状の一定していない気孔形成剤とは異なり、シリカ微粒子が凝集したものであるから、粒径と形状が安定しており、これにより砥石の品質の安定化も図りやすい。
[実施例1−8]
実施例のメタルボンド砥石は、砥粒として、平均粒径30μm(粒度500番メッシュ)のCBN砥粒を用い、結合剤のメタルボンドは、焼成温度が高温帯になると、添加した球状シリカゲルの焼結が進行して砕け難くなるので、500〜650℃の低融点で焼成可能な表1の組成を持つものを用いた。
実施例のメタルボンド砥石は、砥粒として、平均粒径30μm(粒度500番メッシュ)のCBN砥粒を用い、結合剤のメタルボンドは、焼成温度が高温帯になると、添加した球状シリカゲルの焼結が進行して砕け難くなるので、500〜650℃の低融点で焼成可能な表1の組成を持つものを用いた。
また表2に示すように、砥粒、結合剤、球状シリカゲルの配合割合は、製造後の砥石容量で5〜30%の間で5%間隔になるように、砥粒配合量を100質量部とした場合の質量部で配合した。球状シリカゲルは、最小粒子サイズが6nm程度の無数のシリカが凝集状態で結合して球状の塊になっている富士シリシア株式会社製の球状シリカゲル(PSQ,SMB)を用いた。
上記球状シリカゲルは、平均粒径がφ30μm、φ60μm、φ100μmであり、これらの球状シリカゲルは、嵩密度が0.5g/cm3であり、保有する細孔の容積が0.70〜0.85ml/gである。
上記の材料を用い、所定量の砥粒に対して所定配合量のメタルボンドを混合し、砥粒を均一分散させ、次いで所定量の球状シリカゲルを攪拌混合した。混合に際して球状シリカゲルは、脆くて流動する状態では加圧に弱いので、砕けないように乳鉢と乳棒を用いて手作業で混合した。
調合された混合物は、カーボン製の型に均一な高さにまで入れ、常温で30MPaの圧力で固めて圧粉体を作製した。次いで、抵抗焼結機を用いて成形圧力40MPaで加圧加熱し、最高温度560℃で1分間保持した後、加圧を解いて自然冷却後、脱型し、実施例1−8のメタルボンド砥石を製造した。
[比較例1−3]
原材料として、気孔形成剤を添加しない比較例1、または球状シリカゲルに代えて球状カーボンを所定量用いたこと以外は、実施例と全く同様の条件で比較例2,3のメタルボンド砥石を製造した。
原材料として、気孔形成剤を添加しない比較例1、または球状シリカゲルに代えて球状カーボンを所定量用いたこと以外は、実施例と全く同様の条件で比較例2,3のメタルボンド砥石を製造した。
得られた実施例1−8及び比較例1−3のメタルボンド砥石の砥粒、結合剤、球状シリカゲルまたは球状カーボンの容積比(体積%)と、物性として嵩密度(g/cm3)、抗折力(MPa)を測定し、表3に示した。
また、得られた実施例1−8及び比較例1−3のメタルボンド砥石を試験砥石として、以下の実機研削によるホーニング加工試験を行った。
[ホーニング加工試験]
図5に示すように、ホーニング盤を用いたホーニング加工は、ホーニングヘッド8の内側で主軸11と一体に回転する砥石台9に取り付けた試験砥石10に研削液を注ぎながら、試験砥石10を円筒(シリンダー)状のワークWの内径に油圧で押し付け、主軸11を回転させながら軸方向に往復運動させて精密仕上げする加工である。
[ホーニング加工試験]
図5に示すように、ホーニング盤を用いたホーニング加工は、ホーニングヘッド8の内側で主軸11と一体に回転する砥石台9に取り付けた試験砥石10に研削液を注ぎながら、試験砥石10を円筒(シリンダー)状のワークWの内径に油圧で押し付け、主軸11を回転させながら軸方向に往復運動させて精密仕上げする加工である。
ホーニング盤は、浜野鉄工製精密ホーニング盤を用い、油圧拡張機構で試験砥石10をワークWの内径に押し付けてテスト加工を行った。
ワークWには内部まで硬度が一定で品質的に安定しているベアリング鋼(軸受鋼)のSUJ2を用い、外径φ60mm、内径φ41mm、長さ40mmの円筒状のものを用いた。また加工条件を同一にするため、ワークの加工面は、予めCBN砥粒の150番(平均粒径100μm)集中度50のメタルボンド砥石を用いてホーニング加工による粗加工(前加工)を行い、前加工粗さは5〜6μmRzに統一しておいた。
試験砥石寸法は、3mm×3.5mm×25mmとし、実施例および比較例の各例について4本の試験砥石を用いた。
ワークWには内部まで硬度が一定で品質的に安定しているベアリング鋼(軸受鋼)のSUJ2を用い、外径φ60mm、内径φ41mm、長さ40mmの円筒状のものを用いた。また加工条件を同一にするため、ワークの加工面は、予めCBN砥粒の150番(平均粒径100μm)集中度50のメタルボンド砥石を用いてホーニング加工による粗加工(前加工)を行い、前加工粗さは5〜6μmRzに統一しておいた。
試験砥石寸法は、3mm×3.5mm×25mmとし、実施例および比較例の各例について4本の試験砥石を用いた。
試験条件は、先端部分が油圧で拡張可能な主軸11の回転数285rpm(36.8m/min)、主軸往復速度6.5m/min、交差角20度とした。
砥石加圧は、油圧拡張によってワークに接触時に過負荷な荷重が掛からないように、低圧力の1.94MPaで1秒加圧からスタートし、2.96MPaで6秒間加工し、最後の2秒は低圧に戻して面粗さの向上を図った。
砥石加圧は、油圧拡張によってワークに接触時に過負荷な荷重が掛からないように、低圧力の1.94MPaで1秒加圧からスタートし、2.96MPaで6秒間加工し、最後の2秒は低圧に戻して面粗さの向上を図った。
ホーニング加工液は日本グリース製の油性CK−200を使用し、加工数は各例についして10個とし、「切れ味」を評価する「取り代」は、10個の平均値であり、φ20μmを目安に良否を判定した。また、評価項目の「砥石損耗量」は、10個の合計損耗量を10個で割った1個当たりの砥石損耗量とした。
その他の評価項目としては、加工効率を評価する「消費電力値」、高精度を評価する項目として「面粗さ」を調べた。
その他の評価項目としては、加工効率を評価する「消費電力値」、高精度を評価する項目として「面粗さ」を調べた。
以上の試験結果を、以下の表4にまとめて示し、この加工試験後の実施例2、4、8及び比較例1、2の砥石表面の走査式電子顕微鏡写真を図6−10に示した。なお、表4中に総合的な評価を4段階の記号(◎〇△×)で示した。
表3及び表4の結果からも明らかなように、実施例1は、球状シリカゲルを容積率で5%(実質4.6%)含有するものであり、球状の気孔形成剤を全く添加しなかった比較例1に比べて、消費電力値は十分低い値であり、取り代はφ2.4−φ6.3μm増加して切れ味は向上し、砥石損耗量は増加すること無く、面粗さも向上しており、有効性が認められた。
実施例2−4は、球状シリカゲルを容積率(体積%)で9.7〜19.9%含有するものであり、図6(実施例2)及び図7(実施例4)のSEM写真から判別されるように、球状シリカゲルが全体の10%または20%近くを占めていた。
また実施例2の消費電力値は、比較例1に比べて若干上がるが実用上充分に低い値であり、実施例3−4では消費電力量は減少傾向を示し、取り代はφ4.6−6.3μm増加して切れ味は良好であった。また砥石損耗量も1.6−2.9μmと少なく、面粗さも良好であった。
また実施例2の消費電力値は、比較例1に比べて若干上がるが実用上充分に低い値であり、実施例3−4では消費電力量は減少傾向を示し、取り代はφ4.6−6.3μm増加して切れ味は良好であった。また砥石損耗量も1.6−2.9μmと少なく、面粗さも良好であった。
実施例5、6は、球状シリカゲルの配合割合は実施例4と同じであるが、その粒径をφ60μm、φ30μmにそれぞれ変更している。その試験結果は、消費電力値が低く切れ味の良い砥石であることを示すほか、実施例4とほぼ同じ傾向を示し、取り代がやや低く、砥石損耗量は微かに増加した。
実施例7、8は、実施例1−4と同じ粒径φ100μmの球状シリカゲルを容積率で24.6−29.8%配合したものである。消費電力値は実施例4と同程度に低く効率よくソフトな加工ができており、取り代も比較例1に比べて6.8−8.4μm向上し切れ味が優れていた。なお、砥石損耗量は3.9−5.3μmと増加傾向にあるが、面粗さは良好であり、薄物の加工物や真円度重視の加工の様な切れ味重視の加工には有効であって許容範囲の評価が得られた。
また、図8に示される実施例8の加工後の砥石表面のSEM写真からみると、球状シリカゲルは砥石表面の30%近くを占め、加工後の切り屑の排出が容易になって、加工後の切り屑が通った摩耗クレーターの明確な跡が少なくなっているのが分かる。
[比較例1]
比較例1は、評価の基準としたメタルボンド砥石であり、加工後の砥石表面を図9のSEM写真6に示した。比較例1の砥石損耗量は少なく、仕上げ面粗さも問題は無く、消費電力値も比較的低く良好であったが、取り代が、切れ味の有効判定の基準とするφ20μmに届かずφ17.4μmと少なかった。
比較例1は、評価の基準としたメタルボンド砥石であり、加工後の砥石表面を図9のSEM写真6に示した。比較例1の砥石損耗量は少なく、仕上げ面粗さも問題は無く、消費電力値も比較的低く良好であったが、取り代が、切れ味の有効判定の基準とするφ20μmに届かずφ17.4μmと少なかった。
[比較例2]
比較例2は、各実施例に用いた球状シリカゲルに代えて、球状カーボンを容積率で19.5%含有するメタルボンド砥石であり、図10に示される加工後の砥石表面のSEM写真からも明らかなように、球状カーボンが半数近く抜け落ちており、取り代がφ15.9μmと低下しており、切れ味が不良であった。
比較例2は、各実施例に用いた球状シリカゲルに代えて、球状カーボンを容積率で19.5%含有するメタルボンド砥石であり、図10に示される加工後の砥石表面のSEM写真からも明らかなように、球状カーボンが半数近く抜け落ちており、取り代がφ15.9μmと低下しており、切れ味が不良であった。
[比較例3]
比較例3は、比較例2において球状カーボンの含有量を容積率で28.8%に変更したメタルボンド砥石である。消費電力値は低くソフトな加工が出来ているが、取り代は比較例2とほぼ同様であって切れ味は不良であり、さらに砥石損耗量は7.7μmと大幅に増えた。
比較例3は、比較例2において球状カーボンの含有量を容積率で28.8%に変更したメタルボンド砥石である。消費電力値は低くソフトな加工が出来ているが、取り代は比較例2とほぼ同様であって切れ味は不良であり、さらに砥石損耗量は7.7μmと大幅に増えた。
次に、上記したホーニング加工試験後のメタルボンド砥石(代表例として実施例3)の表面を形状解析レーザ顕微鏡(キーエンス社:VK−X100)で撮影および測定し、砥石表面に開口した気孔の形態について、断面の凹凸形状と深さを調べ、それらの結果を図11及び図12に示した。
図11に示されるLの幅の部分を測定した球状シリカゲルは、一部が崩壊して気孔を形成していた。図12に示される結果からは、砥石表面に開口する気孔の直径が約50μmであり、その深さは約30μmであることが確認できた。
以上のように実施例および比較例、それらに形成された気孔の形態から考察すれば、気孔の空洞の占める容積を砥石容積の5%から30%まで5%ずつ増加させれば、これに比例して取り代が増え、切れ味が向上していくことが分かった。
ただし、砥石損耗量はそれに従って増加傾向になるから、空洞(気孔)が増える程、砥石とワークの接触面積が少なくなり、加工面圧が上昇して切れ味が増し、このとき多量に排出される切り屑は空洞(気孔)部を通って排出されるので、溶着が起こり難いと考えられた。
また耐摩耗性を考慮すると、空洞の占める容積は5〜20%が望ましく、切れ味を重視した加工に対しては20〜30%が適切であると言える。よって最も適切な球状シリカゲルの配合量は、10〜20体積%であると推定され、所定量の球状シリカゲルを配合した実施例は、切れ味の向上と砥石の耐摩耗性の向上を両立させたメタルボンド砥石となっていた。
1 砥粒
2 メタルボンド
3a シリカ微粒子
3 球状シリカゲル
4 切り屑
5 支え尾部
6 摩耗クレーター
7 気孔
8 ホーニングヘッド
9 砥石台
10 試験砥石
11 主軸
A メタルボンド砥石
d 隙間
W ワーク
2 メタルボンド
3a シリカ微粒子
3 球状シリカゲル
4 切り屑
5 支え尾部
6 摩耗クレーター
7 気孔
8 ホーニングヘッド
9 砥石台
10 試験砥石
11 主軸
A メタルボンド砥石
d 隙間
W ワーク
Claims (6)
- 硬質砥粒をメタルボンドで結合させたメタルボンド砥石であって、
粒径100nm以下のシリカ微粒子の凝集した平均粒径30〜100μmの球状シリカゲルを、前記メタルボンド砥石の組織内に分散状態で5〜30体積%含有するメタルボンド砥石。 - 上記球状シリカゲルが、細孔容積70〜85%の球状シリカゲルである請求項1に記載のメタルボンド砥石。
- 上記メタルボンドが、溶融温度750℃以下のメタルボンドである請求項1または2に記載のメタルボンド砥石。
- 上記硬質砥粒が、ダイヤモンド砥粒または立方晶系窒化硼素砥粒である請求項1〜3のいずれかに記載のメタルボンド砥石。
- 上記硬質砥粒が、粒径2〜300μmの硬質砥粒である請求項4に記載のメタルボンド砥石。
- 請求項1に記載のメタルボンド砥石の製造方法であって、
硬質砥粒と粉末状メタルボンドを混合して前記硬質砥粒を前記メタルボンド中に分散させ、次いで平均粒径30〜100μmの球状シリカゲルを所定量添加すると共に混合し、前記硬質砥粒とメタルボンドと球状シリカゲルの混合物を成形型に入れて圧粉成形し、得られた圧粉体を750℃以下に加熱して焼結するメタルボンド砥石の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020105894A JP2022000319A (ja) | 2020-06-19 | 2020-06-19 | メタルボンド砥石 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2022000319A true JP2022000319A (ja) | 2022-01-04 |
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ID=79241806
Family Applications (1)
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JP2020105894A Pending JP2022000319A (ja) | 2020-06-19 | 2020-06-19 | メタルボンド砥石 |
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2020
- 2020-06-19 JP JP2020105894A patent/JP2022000319A/ja active Pending
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