JP2021524259A - 血液細胞の選択的ライシス及び微生物細胞の分離のための方法及び組成物 - Google Patents

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Abstract

真核細胞の選択的ライシス及び微生物細胞の分離のための方法及び組成物が提供される。サンプル中の血液細胞及び/又は他の真核細胞は、サポニンとアルカリ性緩衝剤と、任意選択的にポリアネトールスルホン酸ナトリウムと非イオン性界面活性剤と、を含む血液ライシス試薬をサンプルに添加して混合物を形成することと、混合物をアジテートすることと、により、選択的にライシスされうる。次いで、混合物中の微生物細胞は、たとえば、遠心分離や濾過などの分離方法を用いて分離されうるとともに、任意選択的に成長培地で検出又は培養されうる。サンプルとの混合時の微生物細胞のインタクト性を保存するのに好適な血液ライシス試薬組成物が提供される。サンプルが血液サンプルである実施形態例では、血液ライシス試薬組成物は、遠心分離時又は濾過時の可視血液デブリの存在を回避又は低減するように選択されうる。【選択図】図16D

Description

関連出願の相互参照
本願は、「真核細胞の選択的ライシスのための方法及び組成物」という名称の2018年5月25日出願の米国仮特許出願第62/676,771号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に基づく優先権を主張するとともに、さらに「血液細胞の選択的ライシス及び微生物細胞の分離のための方法及び組成物」という名称の2018年12月6日出願の米国仮特許出願第62/776,126号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に基づく優先権を主張する。
薬剤耐性病原体の出現は、通常の感染疾患をこれまで以上に強力な抗生物質を用いて治療することを医師に余儀なくする世界的医療危機である。これは主に原因病原体の同定の複雑さ及びそれに要する時間に起因し、培養検体で高い陰性率の知見があっても医師により経験的に処方することが余儀なくされる。最終結果として、耐性株の出現が有意に増加し、治療コストが高くなり、しかも広域スペクトルの不必要な抗生物質の摂取に伴う副作用リスクの増加に起因して回復サイクルが長くなっている。
広域スペクトル抗生物質は、敗血症又は敗血症性ショックの症状を呈している患者を治療するときに通常処方される。これらの病態の重症度を考慮して、医師は、多くの場合、直ちに1種以上の広域スペクトル抗生物質を処方し、薬剤の十分な効果を評価できるまで又は微生物学的結果が得られるまで治療レジメンを変更する可能性は低い。たとえば、文書「Surviving Sepsis Campaign Guideline」(SSCG)には、可能性のある細菌/真菌病原体に対する1種以上の広域スペクトル剤からなる静脈内抗生物質が、重篤な敗血症及び敗血症性ショックを認識してから1時間以内に開始されるべきであるという治療プロトコルが推奨されている[R.P.Dellinger et al.,Crit.Care Med 2008]。抗微生物レジメンは毎日再評価されるべきであり、病原体が分かったら、適正規範の問題として、より適切な狭域スペクトル抗微生物薬剤が投与されるべきであると、治療プロトコルに明記されている。
残念ながら、現在の臨床細菌学的方法は、典型的には、病原体同定情報の提供が遅すぎて患者のアウトカムに影響を与えないおそれがある。これは検体採取から病原体同定及び感受性試験の結果報告までの2〜3日間のタイムラグに起因する。タイムラグの原因としては、専門臨床微生物学者が配属された臨床実験室に検体を輸送する必要があること、血液培養及び固形培養培地上での検体の継代培養後の後続コロニー形成に時間を要することが挙げられる。できる限り迅速に、好ましくは2時間以内に臨床微生物学実験室に接種血液培養ボトルを輸送することが推奨されるが、通常の就業時間後に臨床微生物学実験室に到着する検体は、スタッフが翌日到着するまで典型的には一晩保持される。血液培養陽性は、典型的には細菌では少なくとも8〜18時間及び真菌では1〜3日間かかる。陽性血液培養物を得た後で検体を固形寒天上で継代培養すると、コロニーを形成するために細菌ではさらに少なくとも8〜12時間及び真菌では1〜4日間必要となる。プレートが検査され、同定及び感受性試験のために適切なコロニーが選択される。プロセスは、解析及び解釈をさらに必要とし、その後、典型的には3日目に報告が出されるので、遅すぎて抗生物質の選択及び患者のアウトカムに有意な影響を与えないおそれがある。
臨床微生物学実験室ワークフローの多くの側面は自動化されているが、臨床細菌学は、依然としてきわめて多くの労力を要する。多くの実験室では、現在、Vitek(BioMerieux)又はPhoenix(Becton−Dickenson)のどちらかの機器を用いて同定及び感受性試験を自動化している。しかしながら、これらのシステム及び質量分析に基づくより新しいシステムは、依然として専門職員による寒天プレートからの適切なコロニーの選択に依存する。
全血から直接得られるような未処理サンプルで病原体の直接迅速同定を促進する新しい技術が出現している。かかる迅速方法は、典型的には、サンプル中の微生物細胞の完全性への影響を最小限に抑える試みをしつつ、哺乳動物細胞を選択的にライシスする試薬を含む初期細胞ライシス工程を利用する。
真核細胞の選択的ライシス及び微生物細胞の分離のための方法及び組成物が提供される。サンプル中の血液細胞及び/又は他の真核細胞は、サポニンとアルカリ性緩衝剤と、任意選択的にポリアネトールスルホン酸ナトリウムと非イオン性界面活性剤と、を含む血液ライシス試薬をサンプルに添加して混合物を形成することにより、選択的にライシスされうる。次いで、混合物中の微生物細胞は、たとえば、遠心分離や濾過などの分離方法を用いて分離されうるとともに、任意選択的に成長培地で検出又は培養されうる。サンプルとの混合時の微生物細胞のインタクト性を保存するのに好適な血液ライシス試薬組成物が提供される。サンプルが血液サンプルである実施形態例では、血液ライシス試薬組成物は、遠心分離時又は濾過時の可視血液デブリの存在を回避又は低減するように選択されうる。
それゆえ、第1の態様では、サンプルから微生物細胞を分離する方法が提供され、本方法は、
0.75〜60mg/mlのサポニン濃度と、0.35〜50mg/mlのポリアネトールスルホン酸ナトリウム濃度と、7.8〜10のpHと、を有する混合物が得られるように、血液サンプルと、サポニンとポリアネトールスルホン酸ナトリウムとアルカリ性緩衝剤とを含む血液ライシス試薬である血液ライシス試薬と、を混合することと、
混合物から微生物細胞を分離することと、
を含む。
他の一態様では、サンプルから微生物細胞を分離する方法が提供され、本方法は、
7.8〜10のpHと、サンプル中の血液細胞のライシスを行うのに好適なサポニン濃度と、を有する混合物が得られるように、サンプルと、サポニンとアルカリ性緩衝剤とを含む血液ライシス試薬である血液ライシス試薬と、を混合することと、
混合物から微生物細胞を分離することと、
を含む。
以下の詳細な説明及び図面を参照すれば、本開示の機能的及び有利な側面の理解を深めることが可能である。
次に、単なる例にすぎないが、図面を参照して実施形態を説明する。
遠心分離を介してサンプル中の微生物細胞をライシス、分離、及び濃縮する方法例を模式的に例示する。 図1A−1Fの続きである。 インテグレート流体処理カートリッジを用いて自動遠心分離及び洗浄を実施するためのシステム例の模式図を示す。 捕集チューブからサンプルを直接抽出し続いて遠心分離及び洗浄を行って濃縮及び精製された微生物細胞のサスペンジョンを得るように構成されたインテグレート流体処理カートリッジ例を例示する。 図3Aの続きである。 図3Bの続きである。 自動遠心分離及び洗浄を実施する方法例を例示するフローチャートを提供する。 サポニンとポリアネトールスルホン酸ナトリウム(SPS)とを含有する等体積のタイプ1血液ライシス試薬を用いてさまざまな体積の全血サンプルの溶血を実施し続いて2回の遠心洗浄を行った後の遠心分離機チューブの画像を示す。 Triton X−100とSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有する等体積のタイプ2血液ライシス試薬を用いてさまざまな体積の全血サンプルの溶血を実施し続いて2回の遠心洗浄を行った後の遠心分離機チューブの画像を示す。 全血サンプルと、Triton X−100とSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ2血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、微生物細胞インタクト性の尺度としてリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT−PCR)と、を実施した後に得られたさまざまな細菌種のΔC値をプロットする。 スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと、Triton X−100とSPSとを含有する試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種でのTriton X−100濃度へのΔCの依存性をプロットする。 スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと、炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とSPSとを含有する試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種での緩衝剤濃度へのΔCの依存性をプロットする。 スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと、炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とサポニンAとSPSとを含有する試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌での緩衝剤濃度へのΔCの依存性をプロットする。 全血サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後に得られたさまざまな細菌種でのΔC値をプロットする。 全血サンプルと、Triton X−100とSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ2血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後に得られたさまざまな細菌種でのΔC値をプロットする。(すでに図6に示される)。 全血サンプルと、さまざまな濃度のサポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種でのサポニン濃度へのΔCの依存性をプロットする。 全血サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とさまざまな濃度のTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種でのTriton X−100濃度へのΔCの依存性をプロットする。 全血サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100又はTween−20とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のタイプ3血液ライシス試薬中の非イオン性界面活性剤のタイプへのΔCの依存性を比較する。 全血サンプルと、SPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種での緩衝剤濃度へのΔCの依存性をプロットする。 初期緩衝剤濃度(混合前の緩衝剤濃度)への混合後のpHの依存性をプロットする。 スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するさまざまなpH値のタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種及び3つの異なる血液ライシス試薬pH値(pH値は全血との混合前に測定された)でのΔC値をプロットし、図13Aは、0.75%w/vのTriton X−100濃度でのデータを提示し、且つ図13Bは、0.38%w/vのTriton X−100濃度でのデータを提示する。 全血サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するさまざまなpH値のタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種及び3つの異なる血液ライシス試薬pH値(pH値は、血液ライシス試薬の他の成分との混合前の初期緩衝剤のものである)でのΔC値をプロットする。 タイプ3血液ライシス試薬の調製に利用された初期炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤のpH(9.5、10、及び10.5)の関数として最終混合物(タイプ3血液ライシス試薬+全血)のpHをプロットする。 タイプ3血液ライシス試薬の調製時及び後続使用時に測定されたpH変化を実証する表である。 全血サンプルと、サポニンとSPSとさまざまな濃度の炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種及び3つの異なる血液ライシス試薬pH値(pH値は全血との混合前に測定された)でのΔC値をプロットする。 全血サンプルと、サポニンとSPSとそれぞれ異なる緩衝剤系とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種及び3つの異なる血液ライシス試薬(各々異なる緩衝剤系を利用する)でのΔC値をプロットする。 全血との混合前及び混合後のサポニンとSPSとそれぞれ異なる緩衝剤系pH10とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬の測定されたpH変化を実証する表である。 3mlの体積を有する全血サンプルと、サポニンとさまざまな濃度のSPSとを含有する試薬と、を接触させ、続いて2回の遠心洗浄工程を行った後の遠心分離機チューブの画像を示す。 3mlの体積を有する全血サンプルと、サポニンとさまざまな濃度のSPSとTriton X−100とを含有する試薬と、を接触させ、続いて2回の遠心洗浄工程を行った後の遠心分離機チューブの画像を示す。 3mlの体積を有する全血サンプルと、サポニンとさまざまな濃度のSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有する試薬と、を接触させ、続いて2回の遠心洗浄工程を行った後の遠心分離機チューブの画像を示す。 3mlの体積を有する全血サンプルと、サポニンとさまざまな濃度のSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、続いて2回の遠心洗浄工程を行った後の遠心分離機チューブの画像を示す。 全血サンプルと、さまざまな濃度のサポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種でのSPS濃度へのΔCの依存性をプロットする。 各種消泡剤を含む血液ライシス試薬の性能をまとめた表である。 消泡剤なし(左側)及びあり(右側)の遠心分離機チューブでボルテックス後の泡高さを示す画像を提示する。 消泡剤なし(HR3)及びあり(HR5)のチューブで泡高さの時間依存性をまとめた表である。 消泡剤なし(HR3)及びあり(HR5)で血液ライシス試薬の安定性を比較した表である。 さまざまな貯蔵緩衝剤のサポニン溶液でサポニン調製後の室温貯蔵0日目(図18A)及び23日目(図18B)のサポニンの溶血活性の濃度依存性をプロットする。 図18Aの続きである。 さまざまな貯蔵緩衝剤のサポニン溶液を用いてサポニン調製後の室温貯蔵0日目及び23日目のヒツジ赤血球の溶血のHC50値(μg/mL)を提示する表である。 スパイクリン酸塩緩衝剤サンプル(図19A)又はスパイク全血サンプル(図19B)と、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、熱ライシスと、リアルタイムRT−PCRと、を実施した後のさまざまな細菌種及び3つの異なる貯蔵条件でのΔC値をプロットする。 図19Aの続きである。 各種クエン酸塩緩衝剤強度(図20A)及び酢酸塩緩衝剤強度(図20B)でのNaCOの測定pHの依存性を表す漸増曲線をプロットする。 図20Aの続きである。 陽性血液培養サンプルと、サポニンとSPSとを含有するタイプ1血液ライシス試薬と、を対流混合により接触させ、続いて2回の遠心洗浄工程を行った後の遠心分離機チューブの画像を示す。 陽性血液培養サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を対流混合により接触させ、続いて2回の遠心洗浄工程を行った後の遠心分離機チューブの画像を示す。 陽性血液培養サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とをさまざまな組成で含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、続いて2回の遠心洗浄工程を行った後の細胞サスペンジョン中のS.アウレウス(S.aureus)、E.コリ(E.coli)、及びP.アエルギノサ(P.aeruginosa)の同定でのMALDI(VITEK−MS−ID)の性能を示す。 陽性血液培養サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、続いて1〜4回の遠心洗浄工程を行った後の細胞サスペンジョン中のK.ニューモニア(K.pneumonia)のMALDI(VITEK−MS−ID)同定での洗浄サイクル数への依存性を示す。 タイプ2及びタイプ3血液ライシス試薬に接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の全血サンプルから回収されたS.アウレウス(S.aureus)の寒天プレーティング結果を示す。 サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬に接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の全血サンプルから回収されたP.ミラビリス(P.mirabilis)の寒天プレーティング結果を示す。 サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬に接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の全血サンプルから回収されたP.アエルギノサ(P.aeruginosa)の寒天プレーティング結果を示す。 サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬に接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の全血サンプルから回収されたP.アエルギノサ(P.aeruginosa)(PA)、P.ミラビリス(P.mirabilis)(PM)、及びS.アウレウス(S.aureus)(SA)の寒天プレーティング結果(プレートカウント)を示す。 対流混合によりサポニンとSPSとさまざまな濃度の炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬に接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の全血サンプルから回収されたP.ミラビリス(P.mirabilis)の寒天プレーティング結果を示す。 サポニンとSPSとさまざまな濃度の炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬を用いて対流混合により処理し、続いて遠心分離及び濃縮を行った全血サンプルから回収されたS.アウレウス(S.aureus)の寒天プレーティング結果を示す。 サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤と2つの異なる濃度のTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬に対流混合により接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の5mLの体積の全血サンプルから回収されたS.アウレウス(S.aureus)の寒天プレーティング結果を示す。 SPSとサポニンと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤と2つの異なる濃度のTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬に対流混合により接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の5mLの体積の全血サンプルから回収されたP.ミラビリス(P.mirabilis)の寒天プレーティング結果を示す。 SPSとサポニンと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤と2つの異なる濃度のTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬に対流混合により接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の5mLの体積の全血サンプルから回収されたP.アエルギノサ(P.aeruginosa)(ATCC−35554)の寒天プレーティング結果を示す。 SPSとサポニンと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤と2つの異なる濃度のTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬に対流混合により接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の5mLの体積の全血サンプルから回収されたP.アエルギノサ(P.aeruginosa)(臨床単離物)の寒天プレーティング結果を示す。 SPSとサポニンと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とを含有するタイプ3血液ライシス試薬に対流混合により接触させ、続いて5、10、及び15分間の3つの異なる遠心分離時間で遠心分離及び濃縮を行った後の5mLの体積の全血サンプルから回収されたP.アエルギノサ(P.aeruginosa)(臨床単離物)の寒天プレーティング結果を示す。 1mLの陽性血液培養サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の陽性血液培養サンプルからのS.アウレウス(S.aureus)の回収をVITEK−MS−ID(質量分析同定による同定)、VITEK2−ID(酵素的同定方法)、及びVITEK2−AST(マイクロ希釈方法による抗微生物剤感受性試験)との関連で示す。 1mLの陽性血液培養サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の陽性血液培養サンプルからのE.コリ(E.coli)の回収をVITEK−MS−ID、VITEK2−ID、及びVITEK2−ASTとの関連で示す。 1mLの陽性血液培養サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の陽性血液培養サンプルからのP.アエルギノサ(P.aeruginosa)の回収をVITEK−MS−ID、VITEK2−ID、及びVITEK2−ASTとの関連で示す。 1mLの陽性血液培養サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、続いて遠心分離及び濃縮を行った後の陽性血液培養サンプルからのK.ニューモニエ(K.pneumoniae)の回収をVITEK−MS−ID、VITEK2−ID、及びVITEK2−ASTとの関連で示す。 4mLの全血サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有するタイプ3血液ライシス試薬と、を接触させ、遠心分離及び濃縮と、コロニー成長のために寒天プレーティングと、を実施した後の全血からの24株(8種から3株ずつ)のグラム陽性細菌、24株(8種から3株ずつ)のグラム陰性細菌、及び12株(4種から3株ずつ)の真菌の生存細胞回収をVITEK−MS−ID、VITEK2−ID、及びVITEK2−ASTとの関連でまとめた表である。 対流混合を実施する方法を模式的に例示する。
以下で考察される詳細を参照して本開示の各種実施形態及び態様を説明する。以下の説明及び図面は本開示の例示であり、本開示の限定と解釈されるべきではない。多くの具体的詳細は、本開示の各種実施形態の十分な理解を提供するために記載される。しかしながら、ある特定の場合には、周知又は従来の詳細は、本開示の実施形態の簡潔な考察を提供するために記載されない。
本明細書で用いられる場合、「comprise(〜を含む)」及び「comprising(〜を含む)」という用語は、包括的且つオープンエンドであり排他的ではないと解釈されるべきである。具体的には、本明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合、「comprise(〜を含む)」及び「comprising(〜を含む)」という用語並びにその変化形は、指定のフィーチャー、工程、又は成分が含まれることを意味する。これらの用語は、他のフィーチャー、工程、又は成分の存在を排除すると解釈されるべきではない。
本明細書で用いられる場合、「模範的」という用語は、「例、実例、又は例示として機能すること」を意味し、本明細書に開示される他の構成よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
本明細書で用いられる場合、「約」及び「おおよそ」という用語は、値の範囲の上限及び下限で存在しうる変動、たとえば、性質、パラメーター、及び寸法の変動をカバーすることを意味する。とくに明記されていない限り、「約」及び「おおよそ」という用語は、±25パーセント以下を意味する。
とくに明記されていない限り、いずれの特定の範囲又はグループも、範囲又はグループさらにはそれに包含されるあらゆる可能なサブ範囲又はサブグループの及び同様にその中のいずれかのサブ範囲又はサブグループに関するあらゆるメンバーを個別に意味する簡略表現として理解されるべきである。とくに明記されていない限り、本開示は、サブ範囲又はサブグループのあらゆる具体的メンバー及び組合せに関し、それらを明示的に組み込む。
本明細書で用いられる場合、量又はパラメーターと組み合わせて用いられるときの「〜程度」という用語は、明記された量又はパラメーターのおおよそ1/10〜10倍にわたる範囲を意味する。
とくに定義がない限り、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、当業者により一般に理解されているものと同一の意味を有することが意図される。文脈などを介してとくに指定がない限り、本明細書で用いられる場合、以下の用語は、以下の意味を有することが意図される。
本明細書で用いられる場合、「インタクト細胞」という語句は、核酸を含有する微生物細胞を意味し、この場合、微生物細胞は、限定されるものではないが遠心分離、濾過、マイクロ流体分離、免疫磁気分離などの分離方法を介して分離可能である。
本明細書で用いられる場合、「サンプル」という語句は、1つ以上の微生物細胞を含有する、含有しうる、又は含有すると推測される液体又はサスペンジョンを意味する。サンプルの例としては、限定されるものではないが、リンパ液、脳脊髄液、血液(たとえば、全血、血液培養物、及び血漿)、尿、痰、唾液などの体液が挙げられる。サンプルの他の例としては、限定されるものではないが糞便を含むホモジナイズされた組織サスペンジョン、筋肉組織、脳組織、及び肝組織のホモジナイズされたサスペンジョンが挙げられる。サンプルは、処理されても処理されなくてもよく、任意選択的に1種以上の試薬又は成長培地を含んでいてもよい。血液培養サンプル(成長培地と全血とを含有するサンプル)の場合には、血液培養サンプルは、検出モダリティーを介して(たとえば、自動血液培養システムを介して)微生物細胞の存在が陽性とみなされる血液培養サンプル、1つ以上の中間培養検出モダリティーを介して行われる測定に基づいて微生物細胞が存在すると推測される中間培養血液培養サンプル、又は初期検出結果を入手できない中間培養血液培養サンプルでありうる。
本明細書で用いられる場合、「血液細胞」という語句は、血中に存在する哺乳動物細胞、たとえば、限定されるものではないが、赤血球、白血球、及び血小板を意味する。
本明細書で用いられる場合、「血液サンプル」という語句は、1つ以上の血液細胞を含むいずれかのサンプルを意味する。血液サンプルの例としては、限定されるものではないが、全血サンプル、血液培養サンプル、バフィーコートサンプル、及び血小板サンプルが挙げられる。
本明細書で用いられる場合、「全血」又は「全血サンプル」という語句は、血漿と血液細胞とを含む哺乳動物血液を意味する。「全血」又は「全血サンプル」は、抗凝固試薬などの1種以上の試薬を含みうる。たとえば、全血は、1種以上の試薬、たとえば、限定されるものではないが、SPS(ポリアネトールスルホン酸ナトリウム)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、クエン酸ナトリウム、及びヘパリンをはじめとする抗凝固剤を含みうるサンプルボトルに採取されうる。
本明細書で用いられる場合、「選択的ライシス」という語句は、ライシス後にインタクトな状態を維持する微生物細胞画分がライシス後にインタクトな状態を維持する真核細胞画分を超える血液ライシス試薬又はライシスプロセスを意味し、この場合、真核細胞は、サンプルが採取された被験者に関連付けられる。
本明細書で用いられる場合、「微生物細胞」及び「微生物」という語句は、細菌(たとえば、グラム陽性及びグラム陰性細菌さらには細菌胞子)及び単細胞真菌(たとえば、酵母及びカビ)を含む。
本明細書で用いられる場合、「真核細胞」という語句は、真菌を除く真核生物、たとえば、甲殻動物などの無脊椎動物と脊椎動物とを含む動物、とくに、血液を含有する動物を起源とする細胞を意味する。本明細書で用いられる場合、「脊椎動物」は、冷血動物(魚、爬虫動物、両生動物)と温血動物(鳥及び哺乳動物)との両方を含む。
本明細書で用いられる場合、ある体積のサンプルとある体積の血液ライシス試薬(ただし、血液ライシス試薬は緩衝剤系を含む)とを混合することにより形成される混合物に関連して用いられるときの「有効緩衝剤濃度」という語句は、血液ライシス試薬の緩衝剤濃度と、血液ライシス試薬の体積を血液ライシス試薬の体積とサンプルの体積との和で除算することにより生成される比と、の積を意味する。有効緩衝剤濃度は、最終混合物中の緩衝剤系への血液ライシス試薬の寄与(すなわち、血液ライシス試薬の緩衝剤濃度に適用される稀釈倍率)を表し、サンプル中に存在する緩衝成分に起因して最終混合物中の実際の緩衝剤濃度とは異なることもある。
本明細書で用いられる場合、「分離プロセス」という語句は、微生物細胞を分離し任意選択的に濃縮するのに好適なプロセスを意味する。分離プロセスの例としては、限定されるものではないが、遠心分離、濾過、免疫磁気分離、及びマイクロ流体分離が挙げられる。
従来的には、微生物細胞を含有すると推測される全血サンプルは、高濃度の細胞を得るために成長培地の存在下で初期培養され、次いで、個別コロニーの成長をサポートするために寒天プレート上で継代培養される。次いで、コロニーからの微生物細胞は、後続アッセイに使用される。残念ながら、かかる成長ベース法は、後続アッセイをサポートするのに十分な微生物成長を達成するために多くの時間又は日数の時間遅延を必要とする。
最近、成長工程を必要とすることなく血液培養の不在下で全血から微生物細胞を直接検出する努力がなされている。全血サンプルから微生物細胞を直接同定するには、典型的には、後続同定アッセイの実施前に微生物細胞の分離及び濃縮が必要となる。たとえば、全血からの微生物細胞の直接同定に使用するのに好適な、微生物細胞の分離及び濃縮の改善された方法は、「微生物サンプルのプレ処理方法」という名称の米国特許第9,707,555号明細書及び「微生物細胞の抽出のための装置及び方法」という名称の国際特許公報PCT/CA2013/000992号パンフレット(両方ともその全体が本願をもって参照により組み込まれる)に開示されている。
国際特許公報PCT/CA2013/000992号パンフレットに開示される方法によれば、全血や培養血液などの血液ベースサンプルは、血液ライシス試薬(BLR)と組み合わされて遠心分離に付される。血液ライシス試薬は、インタクト且つ遠心分離に好適な微生物細胞を残しつつ、残留血液デブリが遠心分離時に有意に沈降しないよう血液細胞をライシス及び消化する。図1A〜1Mは、国際特許公報PCT/CA2013/000992号パンフレットの教示の一実施形態に係るプレ処理デバイス及び方法の実現形態例(クッション液体が利用される)を例示し、これらの教示は以下に簡潔にまとめられる。
図1Aを参照して、国際特許公報PCT/CA2013/000992号パンフレットの教示によれば、ある体積の血液ライシス試薬22とある体積のクッション液体21とを含有するプレ処理ベッセル20が提供される。プレ処理ベッセル20は、マイクロ遠心分離機チューブなどの遠心分離に好適なベッセルである。クッション液体21は、遠心分離時に微生物が沈降する液体表面32を形成するように機能する高密度且つ水非混和性の液体である。図1Aに示されるように、クッション液体21は、重力の影響下でプレ処理ベッセル20のボトムに沈降するような密度を有する。クッション液体21に関連して本明細書で用いられる「高密度」という用語は、標的微生物細胞が支配的遠心力下で実質的にクッション液体を透過しないような十分に高い密度を意味することが理解されよう。したがって、クッション液体21の密度は、微生物細胞及び他の液体の両方の密度よりも大きくなるように選択される。クッション液体はまた、プレ処理プロセス全体を通して個別の液状相を維持するように、他の液体、たとえば、限定されるものではないが、全血、全血と混合された血液培養培地、血液ライシス試薬22、及び洗浄液体(以下に記載の通り)に対して非混和性である。
図1Bは、血液ライシス試薬22と血液サンプル26との混合により混合物30(図1Cに示される)が形成されるプレ処理ベッセル20へのある体積の血液サンプル26の添加を例示する。プレ処理ベッセル20にサンプルを提供した後(たとえば、ピアシング可能なゴムストッパー25を介して)、プレ処理ベッセルは、サンプルと血液ライシス試薬22とのさらなる混合を生じるようにアジテートされうる(図1Cに示される)。混合物30を形成しプレ処理ベッセル20をアジテートした後、プレ処理ベッセル20は、図1Dに例示されるように遠心分離される。プレ処理ベッセル20は、図1Dに示されるように、混合物30中の微生物細胞をサスペンジョンから排出してクッション液体21と上清33との間の界面32に捕集するのに好適な速度及び好適な時間で遠心分離される。国際特許公報PCT/CA2013/000992号パンフレットに教示されるように、約300〜850の範囲内の分子量を有するフッ素化炭化水素がクッション液体として好適である。例は、FC−40、FC−43、FC−70、及びFC−77であり、クッション液体体積は、すべての標的沈殿物が表面上に捕集されるように、適正に大きな沈降表面を提供するのに十分な程度に大きくすべきである。
遠心分離後、プレ処理ベッセル20は、クッション液体21がプレ処理ベッセル20のボトムに移動して重力によりそこに残留するように、後続吸引及びディスペンス操作に好適な位置に、たとえば、図1Eに示されるように垂直オリエンテーションでリオリエンされうる。細胞の再懸濁を予防すれば、図1Fに示されるように上清のほとんどの除去が可能になるので、保持された微生物細胞を含有するごく小さな体積の残留上清が残るにすぎない。
図1G〜1Kに示されるように、次いで上清を精製するために並びにプレ処理サンプル中に存在する血液細胞デブリ及び血液ライシス試薬の濃度を低減するために、任意選択的に1回以上の洗浄サイクルを実施しうる。図1Gを参照して、ある体積の洗浄液体35をサンプルプレ処理ベッセル20に添加しうる。洗浄液体35の添加後、遠心分離時にベッセル壁に沈降又は吸着した可能性のあるデブリを再懸濁するために溶液は混合される。これは、図1Hに示されるようにボルテックスするにより達成されうる。プレ処理ベッセル20は、図1D〜1Fに記載したのと同様に図1I〜1Kに示されるように、続いて遠心分離されリオリエントされ上清の実質的部分が除去される。
(任意選択的)洗浄サイクルの実施後、保持された微生物細胞が残留上清37に再懸濁されるように、プレ処理ベッセル20を図1Lに示されるようにアジテートしうる。たとえば、以上に記載したように、プレ処理ベッセル20をロースピードでおおよそ5〜20秒間ボルテックスしうる。アジテーション後、プレ処理ベッセル20が保持された微生物細胞のサスペンジョンをクッション液体21上に含むように、図1Mに示されるようにクッション液体21をプレ処理ベッセル20のボトムに沈降させる。次いで、抽出サンプル(プレ処理サンプル38という)が得られるようにこの残留サスペンジョンを除去しうる。
国際特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットの方法に基づいて微生物細胞の分離及び濃縮を実施するための自動システム例は、「自動遠心分離を実施するための装置、システム、及び方法」という名称の国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレット(その全体が本出願をもって参照により組み込まれる)に教示される。図2は、自動遠心分離(及び/又は洗浄)を実施するためのインテグレートシステム例100の例示を提供する。システム例100は、遠心分離のために1つ以上のインテグレート流体処理カートリッジ120を受け取る遠心分離機110を含む。遠心分離機110は、モーター付きローター114に接続されてインテグレート流体処理カートリッジ120を受け取るように構成される1つ以上のレセプタクル112を含む。カートリッジレセプタクル112は、たとえば、実験室遠心分離機では通常の固定角タイプ又はスイングバケットタイプでありうる(たとえば、各レセプタクル112は、モーター付きローター114にピボット接続されうる)。
カートリッジインターフェースアセンブリー(ユニット)130は、インテグレート流体処理カートリッジ120内の流体のフローを制御するために、モーター付きローター114が静置状態にあるときにインテグレート流体処理カートリッジ120に取外し可能にエンゲージ(又はインターフェース)するように構成される。カートリッジインターフェースアセンブリー130とインテグレート流体カートリッジとのインターフェーシングは、たとえばカートリッジインターフェースアセンブリーとインテグレート流体カートリッジ120との間の直接インターフェースを介して又はたとえば遠心分離機110上(たとえば、モーター付きローター114上又はカートリッジレセプタクル112上)のインターフェース(たとえば、アクチュエーションインターフェース)を介して、行いうる。遠心分離機110及びカートリッジインターフェースアセンブリー130は、制御及び処理ユニット140を介して制御される。
国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレットの教示によれば、図3Aの模式図例を参照して、インテグレート流体処理カートリッジ例500は、濃縮サスペンジョンが得られるように全血からの微生物細胞の自動分離及び洗浄に好適なエレメントが組み込まれて描かれる。インテグレート流体処理カートリッジ例は、サンプル移送レセプタクル501と、マクロ流体遠心分離チャンバー502と、希釈剤チャンバー504と、上清チャンバー506と、を含む。希釈剤チャンバー504は、洗浄緩衝剤流体505がプレ充填され、シャットアウトバルブ512を備えたコンジット510を介してマクロ流体遠心分離チャンバー502に流体接続され、大気へのベント515を含有し、それ以外では閉じている。上清チャンバー506は、シャットアウトバルブ513を備えたコンジット511を介してマクロ流体遠心分離チャンバー502に流体接続され、大気へのベント516を含有し、それ以外では上清チャンバー506は閉じている。マクロ流体遠心分離チャンバー502は、遠心分離時に微生物細胞の吸着又はトラッピングを最小限に抑える円錐又は丸底形状と平滑内表面とを有し、それぞれのコンジットへの開口522、523、524、525、526を除いて閉じている。本実施形態例では、マクロ流体遠心分離チャンバーは、血液含有サンプル(たとえば、全血、血液培養サンプル、又は他の血液含有サンプル)の処理に使用され、微生物細胞の回収を支援するために並びに標的核酸の完全性及び回収を損なうおそれのある細胞のコンパクション傷害を最小限に抑えるために、血液ライシス試薬503とクッション流体529とを含有する。
サンプル移送レセプタクルは、レセプタクルのボトムに取り付けられたニードル507を備える。ニードルは、マクロ流体遠心分離チャンバー502に至るシャットオフバルブ509を備えた流体路508に接続される。ピアシング可能なキャップ521を有するサンプルチューブ又は容器520、たとえば、血液サンプルと成長培地とを含有するVacutainer(登録商標)血液採取チューブや血液培養チューブなどは、ニードル507がキャップ521をピアシングしてニードル及び流体路508を介してカートリッジへのサンプル流体の移送を可能にするように、サンプル移送レセプタクルに挿入されうる。任意選択的に、ニードル507は、ニードルを汚染から保護するピアシング可能なフード508でカバーされる。
国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレットにより教示されるインテグレート流体処理カートリッジ例500は、閉カートリッジ(以下に記載のベント以外)であり、サンプルの挿入に続いて、カートリッジのチャンバー内及びコンジット内の濃縮サスペンジョンの分離及び洗浄に必要とされるすべての機能を実施し、カートリッジのチャンバーに貯蔵されたすべての試薬及び溶液を有し、且つ廃棄上清をはじめとするすべての過剰の液体をカートリッジのチャンバーに保持する。ベント及びポートの1つ以上は、デバイスの目標範囲内への微生物病原体の進入を予防するのに十分な程度に小さな細孔サイズを有する空気透過性メンブレンにより保護されうる。本実施形態例によれば、すべての過剰及び廃棄の液体は、カートリッジに貯蔵され、ユーザーに触れない。そのため、閉カートリッジは、サンプルとの直接接触からユーザーを保護するとともに分離及び洗浄プロセス時にサンプルが外的因子による汚染を受けにくいデバイスを提供する。
国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレットにより教示されるように、自動分離及び洗浄プロセスは、図3Aに示されるインテグレート流体処理カートリッジ例500を参照して図4に概説される。国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレットに詳細に記載されるカートリッジインターフェースアセンブリーは、カートリッジポート518を介するカートリッジバルブ509、512、513、及び517並びにカートリッジ遠心分離チャンバーへの正及び負の両方のゲージ圧の適用が可能な空気置換デバイスのアクチュエーションを含めて必要な動作を実施するのに必要とされるすべてコンポーネントを備える。
サンプルを含有するサンプルチューブ520は、カートリッジ500のサンプル移送レセプタクル501に挿入され、それにより、チューブキャップ521をピアシングして図4の300に示されるマクロ流体遠心分離チャンバーへのサンプル移送を実施する。カートリッジインターフェースアセンブリーは、以下に詳細に記載されるカートリッジレセプタクルを介してカートリッジにエンゲージし、バルブ509が開且つバルブ512、513、及び517が閉であるようにアクチュエートされ、それにより、サンプルチューブからの経路508を除くマクロ流体遠心分離チャンバーから出るすべての流体路をシールする。
空気置換デバイスは、ポートとのシール接続を提供するコネクターを介してポート518にエンゲージされる。任意選択的に、リジッド又はフレキシブルチューブは、空気置換デバイスをコネクターに接続する。マクロ流体遠心分離チャンバー502へのサンプル移送は、マクロ流体遠心分離チャンバーから空気を抽出して流体路508を介してサンプルフローをサンプルチューブ520からマクロ流体遠心分離チャンバー502に流入させるように空気置換デバイスを操作することにより実施される。ポート518のエントリー523は、ポート518へのエントリー523に流体が流入しないように、流体レベルを超えて且つ流体レベルとエントリー523との間に十分なエアギャップをもたせて位置決めされなければならない。空気置換アクチベートフローは、あらかじめ決められた体積のサンプルがマクロ流体遠心分離チャンバーに移送されるように制御下で達成される。
国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレットの教示の一実施形態によれば、流路508へのエントリー522はまた、流体レベルを超えてエアギャップ中に存在するので、所望の体積のサンプル移送に続いて、空気置換ビアポート518を逆転させることにより、マクロ流体遠心分離チャンバー内への少量の空気置換を提供して流路508からサンプル流体を除去し、この残留サンプルを移動させてサンプルチューブ520中に戻すことが可能である。次いで、バルブ509は閉じられ、サンプルチューブ520はレセプタクル501から任意選択的に除去される。
血液ライシス試薬503は、サンプル移送プロセス前に遠心分離チャンバー502内に存在しうるか、又は代替的にサンプルと同様に血液ライシス試薬チューブから移送されうる。代替的に、血液ライシス試薬貯蔵チャンバーをカートリッジ上に提供しうるとともに、以下に記載されるマクロ流体遠心分離チャンバーへの洗浄緩衝剤の移動に類似した方法で血液ライシス試薬503をマクロ流体遠心分離チャンバーに移動させるために、バルブとエアベントとを備えた流体路を提供しうる。
国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレットに教示されるように、マクロ流体遠心分離チャンバー502へのサンプルの添加後、サンプル及び血液ライシス試薬503は、図4の305に示されるように任意選択的に混合されうる。機器がカートリッジのボルテクシング、シェーキング、又は周期的反転を実施する混合機構を提供しうる。この操作は、マクロ流体遠心分離チャンバー502から出るすべての流体路のバルブを閉じて実施される。混合時の空気路への流体の進入を防止するために、ポート518への流体路上にバルブを提供しうる。追加的又は代替的に、流体がポート518に達するのを防止するために、マクロ流体遠心分離チャンバーとポート518との間の空気路に流体の通過を防止する空気透過性メンブレンを配置しうる。このメンブレンはまた、環境又は空気置換デバイスからの微生物の進入を防止するエアフィルターとして機能するように構成されうる。代替的に、支配的条件下で開口523への流体の進入が防止されるように又はポート518に至る進行が防止されるように、ポート518とマクロ流体遠心分離チャンバーへのエントリー開口523との間の経路を高流動抵抗をもたせて設計可能である。同様に、希釈剤チャンバー505及び上清チャンバー506のベント515及び516はそれぞれ、類似の目的で機能するように高流動抵抗を有する空気透過性メンブレン及び/又は経路を備えうる。
混合工程305に続いて、遠心沈降工程310が実施され、カートリッジインターフェースアセンブリーは、モーター付きローター114からディスエンゲージされ、カートリッジ120は、たとえば、以上に記載のPCT特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットの方法に従って、マクロ流体遠心分離チャンバー内の微生物細胞がクッション液体上に沈降するように遠心分離される。遠心分離機は、たとえば、アングル遠心分離機又はハンギングバケット遠心分離機でありうるとともに、遠心分離パラメーターは、たとえば、PCT特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットに提供される条件に従って選択されうる。
マクロ流体遠心分離ベッセル内の流体に適用される相対遠心力は、たとえば1000〜15,000g、又はたとえば2,000〜12,000g、又はたとえば3000〜10,000g、又はたとえば3000〜7,000g、又はたとえば5000〜10,000g、又はたとえば4000〜8,000gの範囲内でありうる。生物学的サンプルからの細菌細胞及び真菌細胞の分離を含む用途では、好適な相対遠心力(RCF)は、1000g〜15000gの範囲内、より具体的には3000g〜7000gの範囲内であることが見いだされている。
図4の遠心沈降工程310に続いて、遠心分離機ローターは停止され、カートリッジインターフェースアセンブリーは、315に示されるようにモーター付きローターにリエンゲージされ、マクロ流体遠心分離チャンバー502から上清チャンバー506への上清527の抽出は、320に示されるように実施され、それにより、残留物528(微生物細胞を含有する)は、マクロ流体遠心分離チャンバー502のボトムに保持される。この動作は、バルブ509、512、及び517を閉じたまま、且つ空気置換デバイスコネクターをポート518にエンゲージさせた状態で、且つマクロ流体遠心分離チャンバー内に制御可能に空気置換を行いながら、開放バルブ513により実施される。そのため、上清の空気置換誘導フローは、エントリー524が上清の最下位の下方に配置された流体路511を介して達成される。任意選択的に、エントリー524は、マクロ流体遠心分離チャンバーから圧出される上清の最下位に配置され、そのため、マクロ流体遠心分離チャンバーからの残留物528の抽出は防止される。
上清抽出工程320に続いて、洗浄緩衝剤ディスペンス工程325及び330が実施され、それにより、洗浄緩衝剤は、マクロ流体遠心分離チャンバー502内にディスペンスされる。この動作は、バルブ509、513、及び517を閉じたまま、且つ空気置換デバイスコネクターをポート518にエンゲージさせた状態で、且つマクロ流体遠心分離チャンバー502から制御可能に空気排出を行いながら、開放バルブ512により実施される。そのため、洗浄緩衝剤の空気置換誘導フローは、流体路510を介して達成される。洗浄緩衝剤路510のエントリー525は、好ましくはマクロ流体遠心分離チャンバー内の流体レベルの最上位の上方に配置される。
洗浄緩衝剤ディスペンス工程544に続いて、マクロ流体遠心分離チャンバー内の洗浄緩衝剤と残留流体とを完全に混合するために混合工程332が実施される。これは、以上に記載したように、カートリッジのボルテクシング、シェーキング、又は周期的反転により実施されうる。混合工程332に続いて、捕集された微生物細胞を再沈降させるために遠心沈降工程310が実施され、上清は、工程320と同様に遠心分離チャンバーから除去される。工程325〜335及び310〜320のシーケンスは、全体として洗浄サイクルを形成し、それにより、細胞サスペンジョンは洗浄緩衝剤で希釈され、微生物細胞は再沈殿され、且つ上清は抽出される。洗浄サイクルは、汚染物及び妨害物が十分に希薄になった最終微生物細胞サスペンジョンを得るのに必要とされる複数の追加の洗浄サイクルを行うために、複数回繰り返されうる。
国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレットに教示されるように、所望の稀釈倍率は、サンプルの組成及び下流の検出手順に依存する。生物学的サンプルからの細菌細胞及び真菌細胞の分離と、微生物細胞の電気的ライシスと、リボソームRNAの逆転写リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(逆転写RT−PCR)増幅を介する検出と、を含む用途が意図される一実施形態では、稀釈倍率は、100〜100000の範囲内で選択され、より好ましい範囲は、1000〜50000である。血液サンプルからの細菌細胞及び真菌細胞の分離と、微生物細胞のライシスと、DNAのPCR増幅を介する検出と、を含む他の一実施形態では、稀釈倍率は、適切なアンプリコン検出スキームと共に阻害剤耐性ポリメラーゼ酵素が利用される限り、1程度に小さくしうる。全血でのDNA増幅及び検出方法の模範的実現形態は、先行技術に報告されている(たとえば、L.A.Neely et al.,Science translational medicine5.182(2013):182ra54−182ra54)。
最終上清抽出工程320に続いて、混合工程342は、沈降微生物細胞を最終残留流体528に再懸濁して最終サスペンジョンを生成するために実施される。再懸濁工程342に続いて、最終サスペンジョンは、流体路510を介して空気置換により抽出される。最終サスペンジョンの体積は、用途の性質に依存する。たとえば、意図される用途が全血又は培養血液中の微生物細胞の検出である場合、最終細胞サスペンジョンの体積は、10μL〜500μLの範囲内で選択されうるとともに、より好ましい範囲は、20μL〜120μL又は50〜100μLである。最終細胞サスペンジョンの抽出時、バルブ517は開かれ、バルブ509、512、及び513は閉じられ、且つ空気は、ポート518を介してマクロ流体遠心分離チャンバー内に置換され、流体路516を介して開口526から流体を置換する。開口526は、クッション流体529のトップ表面に位置決めされるので、最終サスペンジョン全体又はサスペンジョンの実質的にすべては、図3Aに示されるように、クッション流体529をなんら圧出することなくマクロ流体遠心分離チャンバーから圧出される。代替的に、開口526は、最終サスペンジョン及びクッション流体の一部又は全部が流体路516を介してマクロ流体遠心分離チャンバーから圧出されるように位置決めされる。流体路516は、その次の下流カートリッジエレメントに至り、このエレメントは、いくつかの実施形態では、カートリッジ外でのさらなる処理のために、カートリッジからの最終サスペンジョンの回収を可能にするように構成された1つ又は複数のチャンバーでありうるとともに、他の実施形態では、これはサスペンジョン捕集チャンバー又はたとえば以下に記載の電気的ライシスチャンバーへの流体路でありうる。
図3B及び3Cは、国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレットに開示されるように、閉システムで自動サンプル調製を実施するための及び任意選択的に1つ以上の追加の後続処理工程(たとえばアッセイ)を実施するためのインテグレートカートリッジ例を例示する。インテグレートカートリッジ例700は、3つのコンポーネントを有して示されており、第1のコンポーネント698は、サンプル移送レセプタクル501と、マクロ流体遠心分離チャンバー502と、希釈剤チャンバー504と、上清チャンバー506と、を含む。第1のコンポーネント698は、デバイスの形態及び機能に適合可能な物質から作製された単一プラスチック成形品でありうる。代替的に、第1のコンポーネント698は、デバイスの材料、形態、及び機能に一致する手段により成形又は形成されたプラスチック部品であるサブコンポーネントのアセンブリーでありうる。これに関連して、材料は、カートリッジが受ける高遠心力に耐える十分に高い強度のものが選択されるべきであり、且つ材料は、使用される流体に適合可能とすべきであり、且つ分子用途の場合には、下流プロセスを妨害する汚染物をプレ処理細胞サスペンジョンに導入すべきではない。第1のコンポーネント698を作製可能な材料の例は、限定されるものではないが、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、PET、ポリスチレン、環状オレフィンコポリマー、又はこれらの材料のいくつかのバリアントである。
第2のコンポーネント699は、コンポーネント698の側面上に取り付けられたマイクロ流体デバイスであり、コンポーネント698並びに追加の流体処理、たとえば、限定されるものではないが電気的ライシス、逆転写及びPCR(RT−PCR)のために任意選択的に含まれるコンポーネントのチャンバーに接続する流体路及びバルブを含む。第2のコンポーネント699は、ホール、チャネル、及びチャンバーが形成されたいくつかの層から構成されるラミネートである。
層は、必要なフィーチャーを形成するために機械加工、パンチ加工、エンボス加工、又は成形加工されうる。各層は、接着ボンディング、熱ボンディング、超音波ボンディング、又は当業者に公知の他の方法のどれかによりラミネートされるサブ層の機能に基づいて各々先に列挙された異なる材料又は同一材料のどちらかの単一又は複数のサブ層のどちらかで構成されうる。提示された層及びサブ層は、考察される実施形態の理解を容易にする目的でのみグループ化される。分子処理を含む本実現形態例では、材料は、流体に適合可能とすべきであり、分子増幅が実施される場合には、材料は、かかる増幅(たとえばRT−PCR)を阻害したり又は標的微生物の検出を妨害したりする物質を導入するべきでなく、且つ非標的アナライト(たとえば非標的微生物細胞)又は核酸で汚染されないようにすべきである。材料はまた、プロセスを妨害する程度まで標的分子、反応剤、及び試薬成分を吸着しないようにすべきである。プラスチック材料及びプラスチックフィルム材料の例としては、限定されるものではないが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PET、及び環状オレフィンが挙げられる。
チャンバー開口710(図3Bに示される)は、洗浄緩衝剤及びプレ処理流体をそれぞれ希釈剤チャンバー及びマクロ流体遠心分離チャンバーにディスペンスした後、膜シール、箔シール、又はキャップ697(図3Cに示される)でシールしうる。シール又はキャップは、熱シーリング、接着ボンディング、超音波ボンディングに適合可能な方法及び材料を用いて接合されうる。代替的に、チャンバーは、これらの液体をディスペンスする前にシールされうる。また、これらの液体をディスペンスする目的で代替ポートを提供しうるとともに、ディスペンス操作後にこれらのポートをシールしうる。キャップ697は、成形加工、エンボス加工、機械加工、又は迅速プロトタイプ加工されうるとともに、その形態及び機能に適切なポリカーボネート、ポリスチレン、PETポリエステル、又は他の材料から構築されうる。
国際特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットには、遠心分離前に血液成分の消化に利用しうるいくつかの異なる血液ライシス試薬組成物が開示されている。以上に述べたように、血液ライシス試薬の存在は、血液細胞の選択的ライシスを引き起こす。国際特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットにより教示される一実現形態例では、血液ライシス試薬は、サポニンとポリアネトールスルホン酸ナトリウム(ポリアネトールスルホン酸のナトリウム塩であり、SPSとして知られる)とを含む水性液体でありうるとともに、かかる組成を有する血液ライシス試薬は、これ以降ではタイプ1血液ライシス試薬と呼ばれる。血液ライシス試薬はまた、ポリ(プロピレングリコール)(PPG、たとえば、おおよそ2000の分子量を有するもの)などの消泡剤を含みうる。国際特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットには、全血と血液ライシス試薬との混合時のタイプ1血液ライシス試薬に対するサポニン及びSPSの濃度範囲例がそれぞれおおよそ1.5〜80mg/mL及び0.5〜20mg/mLであると教示されている。
国際特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットに教示されるように、SPSは、抗凝固剤及び抗食作用剤であり、抗微生物剤を阻害することが知られる(Sullivan,N.M.,Sutter,V.L.,& Finegold,S.M.(1975).Practical aerobic membrane filtration blood culture technique:development of procedure.Journal of clinical microbiology,1(1),30−36)。SPSが血液細胞ライシスを支援する機序は、十分に理解されていない。理論により限定することを意図するものではないが、SPSは、血液細胞ライシス時の微生物に対するいくらかの保護レベル、細胞デブリへの細菌閉込め発生の低減、及び/又は沈降物中に他の形で存在しうる凝固成分の量の低減を呈すると考える。
国際特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットにより教示される血液ライシス試薬組成物の他の一実現形態例では、血液ライシス試薬は、9〜11の範囲内のpHを有する緩衝剤中にTriton X−100とSPSとを含む水性液体でありうるとともに、かかる組成を有する血液ライシス試薬は、これ以降ではタイプ2血液ライシス試薬と呼ばれる。血液ライシス試薬はまた、ポリ(プロピレングリコール)(PPG、たとえば、おおよそ2000の分子量を有するもの)などの消泡剤を含みうる。国際特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットには、全血と血液ライシス試薬との混合時のタイプ2血液ライシス試薬に対するTriton X−100及びSPSの濃度範囲例がそれぞれおおよそ0.5〜1.5%w/v及び5〜10mg/mLであると教示されている。
以上に述べたように、以上に記載のタイプ1血液ライシス試薬組成物は、国際特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットの教示により、全血からの微生物細胞の手動及び半自動の分離及び濃縮に好適であることが見いだされた。しかしながら、国際特許出願PCT/CA2015/050449号パンフレットの自動化方法により国際特許出願PCT/CA2013/000992号パンフレットに開示される試薬配合物を全血からの微生物細胞の自動分離及び濃縮並びに後続同定に適合させたとき、タイプ1血液ライシス試薬組成物は、全血の量がおおよそ1ml未満である場合に最も好適であることを、本発明者らは見いだした。
これは図5Aで実証される。この図は、タイプ1血液ライシス試薬を用いてさまざまな体積の全血サンプルの溶血を実施した後の遠心分離機チューブの遠心分離後画像を示す。SPS抗凝固剤を有するバキュテナーに全血サンプルを採取し、全血の1ml〜5mlアリコートをそれぞれ15mL遠心分離機チューブに分配した。混合時、サポニン及びSPSの濃度が血液量にかかわらずそれぞれ37.5mg/mL及び7.5mg/mLになるように、全血サンプルと各種体積のタイプ1血液ライシス試薬とを混合した。得られた混合物を2回の洗浄サイクルに付した。1mlの全血の十分な溶血が観測されたが、より高いサンプル体積の場合には不十分な溶血が観測された。たとえば、3mlの全血の溶血時、血液デブリが沈降し、洗浄サイクルによりサンプル純度を増加させることができなかった。図5Aに示されるように、1mlを超える全血体積では、遠心分離後、有意な残留血液デブリが存在する。血液デブリの不十分な消化は、遠心分離機チューブの下側領域に見られる暗色残渣により明らかであり、それは全血体積の増加に伴って増加することが分かる。血液デブリは、遠心分離時又は濾過時にケークを形成するので、かかる残渣は、サンプル調製工程の自動化を複雑にする可能性がある。
有意なデブリを発生することなくより大きな体積の全血の自動処理を促進するために、タイプ2血液ライシス試薬組成を有する血液ライシス試薬を利用可能であることを、本発明者らは見いだした。これは図5Bで実証される。この図は、タイプ2血液ライシス試薬を用いてさまざまな体積の全血サンプルの溶血を実施した後の遠心分離機チューブの遠心分離後画像を示す。1ml〜5mlの全血サンプルと、TritonX−100とSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有する各種体積のタイプ2血液ライシス試薬と、を混合した。200mMの緩衝剤濃度と10のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlの濃度のSPSと3%w/vのTriton X−100とを有する10mlの溶液と、を組み合わせて、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、9.9のpHと、を有する試薬溶液を得ることにより、試薬溶液を調製した。全血サンプルとそれぞれ等体積の試薬溶液とを混合した後、SPSの濃度は7.5mg/ml、Triton X−100の濃度は0.75%w/v、pHは血液体積にかかわらず9.1、且つ有効緩衝剤濃度は血液体積にかかわらず50mMであった。得られた混合物を2回の洗浄サイクルに付した。図5Bに示されるように、全血体積のいずれにも残留血液デブリは見られない。タイプ2血液ライシス試薬により提供される有意に改善された消化は、高pH環境によると考えられる。
有意な遠心分離後デブリを回避しつつ血液成分の消化を実施する際のタイプ2血液ライシス試薬の成功にもかかわらず、タイプ2血液ライシス試薬は、多くのタイプの微生物細胞の分離及び濃縮に好適であるが、タイプ2血液ライシス試薬の使用は、いくつかの微生物細胞種では、遠心分離処理後にリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT−PCR)を実施したとき、シグナル損失をもたらすことが見いだされることを、本発明者らは発見した。たとえば、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)を含有する全血サンプルの処理にタイプ2血液ライシス試薬を使用したとき、血液ライシス試薬は、微生物細胞のインタクト性への影響が現れて、遠心分離処理時にrRNAの損失をもたらし、リアルタイムRT−PCR検出時に所要のサイクル数の増加をもたらすことを、本発明者らは見いだした。
本発明者らは、以下の通り細胞インタクト性に及ぼすタイプ2血液ライシス試薬の影響を実験的に調べた。実験は、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有する3mlの体積のスパイク全血サンプルと、タイプ2血液ライシス試薬と、を接触させることにより実施された。試薬溶液は、20mlの体積と、20mg/mlのSPS濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、9.9のpHと、を有する試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度と10のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、40mg/mlの濃度のSPSと3%w/vのTriton X−100とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mLの試薬と3mLの全血サンプルとを混合した後、SPSの濃度は12.5mg/ml、Triton X−100の濃度は0.94%、w/v、pHは9.1、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。サンプルのプレ処理及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照用のスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例6及び7に提供される方法に従って実施された。閾値サイクル値(CT値、すなわち、アッセイシグナルがノイズ閾値を超えて増加し始めるときのPCRサイクル数)を測定し、スパイク全血CT値とスパイク対照CT値との差に基づいてCT値の差ΔCTを決定した。
図6に示されるように、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)のΔCT値は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)よりも有意に高かったことから、これらの微生物細胞種は、タイプ2血液ライシス試薬との接触により悪影響が現れることが示唆される。理論により限定することを意図するものではないが、タイプ2血液ライシス試薬への全血サンプルの暴露及び遠心分離処理に続いて観測されるRT−PCRアッセイの性能劣化は、次の原因:(i)遠心分離ベース細胞分離を利用した場合に標的細胞含有率の損失又は沈降係数の低下を引き起こす可能性がある、血液ライシス試薬に起因する微生物細胞損傷、(ii)遠心分離処理(たとえば、初期遠心分離及び任意選択的な追加の遠心分離細胞洗浄サイクル)時の血液デブリを伴う微生物細胞の除去、及び/又は(iii)最終細胞サスペンジョンへの高レベルの血液デブリの移送による、逆転写(RT)及び/又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の反応阻害、の1つ以上の結果でありうると考えられる。これらのうち、最初の2つの原因は、アナライトの損失に関連するので、初期サンプル中の微生物細胞の数が不足している場合、たとえば、微生物細胞の数が典型的には10CFU/mL未満である血流感染の場合、最初の2つの原因は、より深刻であると予想される。これとは対照的に、アッセイ阻害剤に起因する性能劣化(ΔCT)(以上に列挙された第3の原因)は、典型的には標的定量確度の犠牲を払って追加の増幅サイクルを実施することにより補償可能である。
図6に示される結果を考慮して、単一CFU/mlレベルで感度良く広範にわたる微生物細胞種の後続(下流)分子増幅を実施する能力を維持しつつ、自動システムで高体積(>1ml)の全血を処理するときの血液成分の好適な消化を達成するには、新たなタイプの試薬配合物が必要とされると、本発明者らは判断した。それゆえ、本発明者らは、後続分子増幅を促進するために、広範にわたる微生物細胞タイプ(たとえば種)のインタクト性を保存しつつ、自動システムで高体積(>1ml)の全血を処理可能な新たなライシス試薬配合物を開発しようと試みた。
改善された血液ライシス試薬の検索の初期工程として、本発明者らは、細胞インタクト性に及ぼすタイプ1及びタイプ2血液ライシス試薬組成物のさまざまな成分の影響を実験的に調べた。
微生物細胞インタクト性に及ぼすTriton X−100の影響の実験研究
Triton X−100の影響、の1つ、タイプ2血液ライシス試薬の成分、微生物細胞インタクト性上で、実験的に高pH環境(たとえば、炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤の不在下での)の不在下で研究された。実験は、各種サンプル中のTriton X−100の最終濃度が0、0.188、0.375、0.55、及び0.75%w/v、並びにSPS濃度が15mg/mLになるように、以下の実施例3に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと、Triton X−100とSPSとを含有する溶液と、を接触させることにより実施された。サンプル調製及びリアルタイムRT−PCRは、以下の実施例5に提供される方法に従って実施された。以下の実施例3の方法に従って調製されたスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルはまた、スパイク対照用にも調製され、以下の実施例4の方法に従ってリアルタイムRT−PCRに付された。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルCT値とスパイク対照CT値との差に基づいて決定されるΔCT値は、Triton X−100への暴露後の微生物細胞インタクト性の代わりに利用された。
図7に提示される得られたΔC値、すなわち、C(スパイクリン酸塩緩衝剤サンプル)−C(スパイク対照)は、すべての細胞型(とりわけ、グラム陰性シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM))でΔC≦2を示すことから、サンプルのプレ処理持続時間の間のTriton X−100への暴露は、rRNA含有量の評価可能なリークレベルまでの細菌細胞の有意な損傷を生じないことが示唆される。言い換えると、Triton X−100の存在は、遠心分離プロセス時のrRNA量の評価可能な損失を引き起こさず、低CFU/mlサンプルの検出を促進した。
微生物細胞インタクト性に及ぼす高pH環境の実験研究
微生物細胞インタクト性に及ぼすタイプ2血液ライシス試薬の性質の1つである高pH環境の影響を実験的に調べた。この場合、高pHは、タイプ2血液ライシス試薬の炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤成分に基づく。実験は、以下の実施例3に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと、炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とSPSとを含有する試薬溶液と、を接触させることにより実施された。試薬溶液は、2mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、それぞれ10.3、10.3、10.3、10.3、及び10.2のpH値と、それぞれ9、28、45、50、及び110mMの緩衝剤濃度と、を有する試薬溶液が得られるように、各々がそれぞれ18、56、90、100、及び220mMの緩衝剤濃度で調製された各々がそれぞれ10.4、10.4、10.3、10.3、及び10.2のpHを有する1mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlの濃度のSPSを有する1mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。1mlの試薬溶液と1mlのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルとを混合した後、SPS濃度は7.5mg/mL、pH値は9.5〜10の範囲内、及び緩衝剤濃度はそれぞれ4.5、14、22.5、25、及び55mMであった。サンプル調製及びリアルタイムRT−PCRは、以下の実施例5に提供される方法に従って実施された。以下の実施例3の方法に従って調製されたスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルはまた、スパイク対照用にも調製され、以下の実施例4の方法に従ってリアルタイムRT−PCRに付された。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルCT値とスパイク対照CT値との差に基づいて決定されるΔCT値は、微生物細胞インタクト性の代わりに利用された。
図8に提示される得られたΔC値は、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)の両方でΔCの有意な増加を示すことから、サンプルのプレ処理時の高pH環境への暴露は、これらの種ではrRNA含有量の評価可能なリークレベルまで細菌細胞を有意に損傷しうることが示唆される。比較的低濃度を有する炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤で調製された試薬でさえも(混合時にさらに希釈された)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)で評価可能なΔCT損失をもたらしたことに留意されたい。
サポニンとアルカリpHとを有するタイプ3血液ライシス試薬
以上の例は、タイプ2血液ライシス試薬の場合に図6で観測されたシグナル損失が、この試薬タイプに関連付けられる高pH環境の存在に起因して現れたことを例示する。タイプ2血液ライシス試薬のこの制約の克服さらにはタイプ1血液ライシス試薬の上述した制約の克服を試みるために、本発明者らは、タイプ1及びタイプ2血液ライシス試薬の成分の機序を考慮した。
サポニンの溶血活性がコレステロールとの相互作用に基づき、真核細胞膜では存在するが原核(微生物)細胞膜では不在であることを理解したうえで、界面活性剤としてのサポニンは、微生物細胞に損傷を引き起こすことなく微生物細胞を覆う層を形成しうると、本発明者らは仮定した。理論により限定することを意図するものではないが、サポニンと高pHとの両方を有する試薬を提供すれば、サポニンにより生成される界面活性剤層は保護層として作用し、それがないときの高pH環境の有害作用から微生物細胞を保護しうると、本発明者らはさらに仮定した。言い換えると、微生物細胞は、サポニンと高pHとの両方を有する試薬に接触したときサポニンにより被覆され、試薬中のアルカリ性緩衝剤の産物による攻撃から効果的に保護されうると、本発明者らは推測した。
この仮説を試験するために、微生物細胞インタクト性に及ぼすサポニンと高pH環境との組合せの影響をスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルで実験的に調べた。実験は、以下の実施例3に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有する試薬溶液と、を接触させることにより実施された。試薬溶液は、各々2mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、それぞれ7.2、9.2、9.7、9.9、及び10のpH値と、それぞれ9、28、45、50、及び110mMの緩衝剤濃度と、を有する試薬溶液が得られるように、各々がそれぞれ18、56、90、100、及び220mMの緩衝剤濃度で調製された各々がそれぞれ10.4、10.3、10.3、10.3、及び10.2のpHを有する1mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlの濃度のSPSと60mg/mlの濃度のサポニンとを有する1mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。1mlの試薬溶液と1mlのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルとを混合した後、SPS濃度は7.5mg/mL、サポニン濃度は15mg/ml、pH値は7〜10、及び緩衝剤濃度はそれぞれ4.5、14、22.5、25、及び55mMであった。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、以下の実施例5に提供される方法に従って実施された。以下の実施例3の方法に従って調製されたスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルはまた、スパイク対照用にも調製され、以下の実施例4の方法に従ってリアルタイムRT−PCRに付された。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルCT値とスパイク対照CT値との差に基づいて決定されるΔCT値は、微生物細胞インタクト性の代わりに利用された。
サポニンの存在は、試験された3つの異なる細菌種の各々でサンプルのプレ処理時の高pH環境への暴露から微生物細胞をセーフガードするものとして現れることが、図9Aに提示される得られたΔCT値により実証される。サポニンとSPSとアルカリpH(たとえば、炭酸塩緩衝剤の存在を介する)と任意選択的にTriton X−100などの非イオン性界面活性剤とを含有する、血液細胞の選択的ライシス用の新たな血液ライシス試薬配合物(これ以降ではタイプ3血液ライシス試薬という)は、多種多様な微生物種のインタクト性を維持しつつ溶血を実施するのに有効でありうると、本発明者らは結論付けた。
次いで、本発明者らは、全血サンプルで細胞インタクト性に及ぼすタイプ3血液ライシス試薬の影響を実験的に調べた。実験は、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有する3mlの体積のスパイク全血サンプルと、タイプ3血液ライシス試薬と、を接触させることにより実施された。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、10.0のpHと、を有する試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度と10.1のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPSと60mg/mLのサポニンと3%w/vのTriton X−100との濃度を有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlのタイプ3血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとを混合した後、SPS濃度は9.375mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0.94%w/v、pH値は9.2、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例6及び7に提供される方法に従って実施された。閾値サイクル値(CT値、すなわち、アッセイシグナルがノイズ閾値を超えて増加し始めるときのPCRサイクル数)を測定し、スパイク全血CT値とスパイク対照CT値との差に基づいてCT値の差ΔCTを決定した。
図9Bに示されるように、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)のΔCT値はすべて、タイプ2血液ライシス試薬を用いて得られたもの(図9Cは、図6に最初に示されるようにタイプ2血液ライシス試薬で全血サンプルを処理することにより得られた結果を再度示す)よりも有意に小さいことから、全血サンプルの処理のためのタイプ3型血液ライシス試薬の成功を実証する。さらに、タイプ3血液ライシス試薬は、広範にわたる濃度の全血で可視残渣を伴うことなく(すなわち、可視血液デブリを伴うことなく)溶血を実施することに成功し、それにより、(i)核酸を有するインタクト微生物細胞の回収及び(ii)遠心分離後でさえも可視血液デブリを伴わない残留血液成分の消化の両方を達成した。
本発明者らは、以下で説明されるように、微生物細胞でスパイクされた全血サンプルを処理するときの試薬の性能に及ぼす新たなタイプ3血液ライシス試薬の各種成分のさまざまな濃度の影響を調べる一連の実験を実施した。
全血サンプルの処理のためのサポニン濃度へのタイプ3血液ライシス試薬性能の依存性の実験研究
実験は、微生物細胞でスパイクされた全血サンプルの処理のためのタイプ3血液ライシス試薬の性能のサポニン濃度への依存性を調べるために実施された。実験は、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有する3mlの体積のスパイク全血サンプルと、タイプ3血液ライシス試薬と、を接触させることにより実施された。各種タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、0〜40mg/mlの範囲内のサポニン濃度と、1.5%のTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度と10.1のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と0〜80mg/mlの範囲内のサポニン濃度と3%w/vのTriton X−100とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlのタイプ3血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとを混合した後、SPS濃度は9.375mg/mL、サポニン濃度は6.25〜25mg/mLの範囲内、Triton X−100濃度は0.94%w/v、pH値はおおよそ9.2、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照用のスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例6及び7に提供される方法に従って実施された。閾値サイクル値(CT値、すなわち、アッセイシグナルがノイズ閾値を超えて増加し始めるときのPCRサイクル数)を測定し、スパイク全血CT値とスパイク対照CT値との差に基づいてCT値の差ΔCTを決定した。
図10に示されるように、3つのすべての微生物種のΔCT値は、12.5mg/ml以上のサポニン濃度で5未満であった。すべての微生物種に対するサポニンの保護効果は、18.75mg/ml以上のサポニン濃度で十分に実現されるように思われた。
全血サンプルの処理のためのTriton X−100濃度へのタイプ3血液ライシス試薬性能の依存性の実験研究
実験は、微生物細胞でスパイクされた全血サンプルの処理のためのタイプ3血液ライシス試薬の性能のTriton X−100濃度への依存性を調べるために実施された。実験は、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有する3mlの体積のスパイク全血サンプルと、タイプ3血液ライシス試薬と、を接触させることにより実施された。20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、0〜1.12%w/vの範囲内のTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、各種タイプ3血液ライシス試薬溶液は、200mMの緩衝剤濃度と10.1のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mLのサポニン濃度と0〜2.25%w/vの範囲内のTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlのタイプ3血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとを混合した後、SPS濃度は9.375mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0〜0.7%w/vの範囲内、pH値は9.2、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例6及び7に提供される方法に従って実施された。閾値サイクル値(CT値、すなわち、アッセイシグナルがノイズ閾値を超えて増加し始めるときのPCRサイクル数)を測定し、スパイク全血CT値とスパイク対照CT値との差に基づいてCT値の差ΔCTを決定した。
図11Aに示されるように、3つのすべての微生物種のΔCT値は、0.23%w/v以上のTriton X−100濃度で5未満でありTriton X−100濃度に実質的に依存しなかった。
全血サンプルの処理のためのさまざまな非イオン性界面活性剤へのタイプ3血液ライシス試薬性能の依存性の実験研究
実験は、非イオン性界面活性剤としてのTween 20の好適性を実証するために実施された。実験は、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有する3mlの体積を有するスパイク全血サンプルと、タイプ3血液ライシス試薬と、を接触させることにより実施された。2つの異なるタイプ3血液ライシス試薬溶液を調製した。一方の血液ライシス試薬は、200mMの緩衝剤濃度と10.1のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mLのサポニン濃度と3%のTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。他方の血液ライシス試薬は、200mMの緩衝剤濃度と10.1のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mLのサポニン濃度と3%のTween−20濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。得られた血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%のTriton X−100又はTween−20濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、ほぼ10のpH値と、を有していた。5mlのタイプ3血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとを混合した後、SPS濃度は9.375mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100又はTween−20濃度は0.94%w/v、pH値は9.2、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例6及び7に提供される方法に従って実施された。閾値サイクル値(CT値、すなわち、アッセイシグナルがノイズ閾値を超えて増加し始めるときのPCRサイクル数)を測定し、スパイク全血CT値とスパイク対照CT値との差に基づいてCT値の差ΔCTを決定した。図11Bに提示されるΔCT値は、3つのすべての微生物種のΔCT値がTween 20及びTriton X−100の場合に非常に類似していたことを例示する。
全血サンプルの処理のための初期炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度へのタイプ3血液ライシス試薬性能の依存性の実験研究
実験は、微生物細胞でスパイクされた全血サンプルの処理のためのタイプ3血液ライシス試薬の性能の初期炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度への依存性を調べるために実施された。実験は、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有する3mlの体積のスパイク全血サンプルと、タイプ3血液ライシス試薬と、を接触させることにより実施された。各種タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%のTriton X−100濃度と、それぞれ4.7、7.0、9.8、9.9、及び10.0のpH値と、0、10、50、100、及び200mMの緩衝剤濃度と、を有する試薬溶液が得られるように、0、20、100、200、及び400mMの緩衝剤濃度と9.5〜10の範囲内のpH値とで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mlのサポニン濃度と3%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlのタイプ3血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとを混合した後、SPS濃度は9.375mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0.94%w/v、pH値は7.2、9.2、9.7、9.9、及び10.0、有効緩衝剤濃度は0、6.25、31.25、62.5、及び125mMであった。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例6及び7に提供される方法に従って実施された。閾値サイクル値(CT値、すなわち、アッセイシグナルがノイズ閾値を超えて増加し始めるときのPCRサイクル数)を測定し、スパイク全血CT値とスパイク対照CT値との差に基づいてCT値の差ΔCTを決定した。
図12Aに示されるように、3つのすべての微生物種のΔCT値は、50mM〜200mMの範囲内の初期炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度で5未満であった。10mM以下の初期炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度では、ΔCT値は10超であることが分かった。理論により限定することを意図するものではないが、この影響は、血液ライシス試薬の緩衝能が不十分であるため、試薬と血液との混合後、混合物pHが約7.4の血液pH値に向かって低下することにあると考えられる。そのため、培地は塩基性が十分ではないため、血液細胞デブリの十分な消化ができない。ΔCT値はまた、200mMの初期炭酸塩−重炭酸塩濃度で上昇することが分かった。この原因は、試薬の緩衝能が増加するため、混合物pHが血液ライシス試薬の初期pH値近くに維持されることにある。このpHは、おそらく浸透圧ストレスの上昇により、いくつかの細菌細胞とくにグラム陰性細菌を損傷可能であった。さらに、炭酸塩濃度を高くすると血液ライシス試薬の密度ひいてはライシス血液の密度が増加する。この結果、沈降時間が長くなるとともに最初の洗浄サイクル前に試薬の有害作用への暴露が長くなる。たとえば、100、250、及び500mMの初期炭酸塩−重炭酸塩濃度を有する血液ライシス試薬の密度は、それぞれ、1.01、1.025、及び1.05g/mLである。1.06g/mLの平均密度を有する全血に5:3の比でこれらの試薬を添加すると、それぞれ、1.029、1.038、及び1.054g/mLの密度を有する最終混合物を生じるであろう。そのため、1.10の密度を有する細菌細胞は、約50%長い沈降時間を必要とするであろう。
図12Bに示されるように、混合前(すなわち、全血サンプルと他のタイプ3血液ライシス試薬成分との混合前)の炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤の初期pHはほぼ10であったが、タイプ3血液ライシス試薬と全血との混合後に得られる混合物のpHは、試薬の限られた緩衝能に起因して10未満に低下し、最終pH値は、初期炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度に依存する(すなわち、緩衝能に依存する)。0mM及び200mMの初期炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度に対応する最終混合後pH値は、それぞれ、7.4及び9.6と測定された。この態様は、以下に記載の一連の追加実験でさらに調べられた。
全血及びリン酸塩緩衝剤サンプルの処理のためのpHへのタイプ3血液ライシス試薬性能の依存性の実験研究
実験は、スパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルの処理に基づいてタイプ3血液ライシス試薬で微生物細胞のインタクト性に及ぼすpHの影響を研究するために実施された。最初の実験セットは、以下の実施例3に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと、各種タイプ3血液ライシス試薬と、を接触させることにより実施された。各種タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%のTriton X−100濃度と、それぞれ9.6、10.0、及び10.3のpH値と、100mMの緩衝剤濃度と、を有する試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度とそれぞれ9.5、10、及び10.5のpH値とで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度とサポニン濃度60mg/mLのサポニンと3%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。1mlのタイプ3血液ライシス試薬と1mlのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルとを混合した後、SPS濃度は7.5mg/mL、サポニン濃度は15mg/mL、Triton X−100濃度は0.75%w/v、pH値は9.5〜10の範囲内、及び有効緩衝剤濃度は50mMであった。類似の条件下で、ただし0.375%w/vの混合後Triton X−100濃度を用いて、追加の実験を実施した。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、以下の実施例5に提供される方法に従って実施された。以下の実施例3の方法に従って調製されたスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルはまた、スパイク対照用にも調製され、以下の実施例4の方法に従ってリアルタイムRT−PCRに付された。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルCT値とスパイク対照CT値との差に基づいて決定されるΔCT値は、微生物細胞インタクト性の代わりに利用された。
スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルを含む本実験で得られたΔC値は、図13A及び13Bに提示され、図13Aは、0.75%w/vの混合後Triton X−100濃度に関し、図13Bは、0.375%w/vの混合後Triton X−100濃度に関し、水平軸表示は、試薬の他の成分との組合せ前の元の炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤のpHを意味する。血液ライシス試薬を調製するために利用された初期炭酸塩−重炭酸塩pHが試験された両方のTriton X−100濃度で10.5未満のpHを有するとき、試験されたすべての種で低減されたΔC値が得られるが、より高濃度のTriton X−100ではより低いΔC値が得られたことが、結果から示される。サンプルのプレ処理時に高pH環境に暴露されると、血液ライシス試薬中にサポニンが存在するときでさえも、シグナル損失をもたらす可能性があり、サポニンは、より低い試薬pH値でより良好な保護効果を有すると思われることが、これらの結果から示唆される。
本開示のこの態様は以下でさらに調べられる。
第2の実験セットは、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイク全血サンプル(図13A及び13Bのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと対比される)と、各種タイプ3血液ライシス試薬と、を接触させることにより実施された。各種タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%のTriton X−100濃度と、それぞれ9.6、10.0、及び10.3のpH値と、100mMの緩衝剤濃度と、を有する試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度とそれぞれ9.5、10、及び10.5のpH値とで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mLのサポニンと3%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。1mlのタイプ3血液ライシス試薬と1mlの全血サンプルとを混合した後、SPS濃度は7.5mg/mL、サポニン濃度は15mg/mL、Triton X−100濃度は0.75%w/v、pH値は9.0、9.2、及び9.7、並びに有効緩衝剤濃度は50mMであった。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例5及び8に提供される方法に従って実施された。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルCT値とスパイク対照CT値との差に基づいて決定されるΔCT値は、微生物細胞インタクト性の代わりに利用された。
全血サンプルを含む本実験で得られたΔC値は、図14Aに提示され、この場合も、初期血液ライシス試薬が10.5未満のpHを有するとき、すべての試験された種で低減されたΔC値が得られることが実証される。
血液の緩衝能に起因して、タイプ3血液ライシス試薬の最終pH値及び初期緩衝剤濃度は、非依存パラメーターではないことに留意されたい。実際に、図12Bに示されるように、タイプ3血液ライシス試薬と全血との混合後、混合物のpH値は、血液ライシス試薬を調製するために利用されたpH値の初期レベルから低下することが観測される。
炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤の初期pHから全血との混合物の最終pHへのpH低下量は、血液ライシス試薬を調製するために利用された初期緩衝剤濃度に依存することが観測された。これをさらに調べるために、さまざまな初期pH及び緩衝剤濃度値を有する各種タイプ3血液ライシス試薬を調製して全血と混合し、血液ライシス試薬と全血との混合の前及び後でpH測定を行った。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%のTriton X−100濃度と、ほぼ9.6、10、及び10.3のpH値と、それぞれ50、75、及び100mMの緩衝剤濃度と、を有する試薬溶液が得られるように、各々100、150、及び200mMの3つの緩衝剤濃度で調製されたそれぞれ9.5、10、及び10.5のpH値で調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mLのサポニンと3%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。1mlの血液ライシス試薬と1mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は7.5mg/mL、サポニン濃度は15mg/mL、Triton X−100濃度は0.75%w/v、pH値は9.0〜9.2、9.2〜9.5、及び9.7〜9.9、並びに有効緩衝剤濃度はそれぞれ25、37.5、及び50mMであった。
図14Bは、初期炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤のpHのさまざまな値(9.5、10、及び10.5)で、タイプ3血液ライシス試薬を調製するために利用された初期炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度の関数として最終混合物(タイプ3血液ライシス試薬+全血)のpHをプロットする。図で観測可能なように、pH値は、血液ライシス試薬と全血との混合後、血液ライシス試薬の緩衝系と血中HCO −1/HCO緩衝剤との間の酸−塩基反応の結果として低下する。しかしながら、最も高い緩衝能及び最も高いpHを有する血液ライシス試薬は、全血との混合時、pHの減少に対する耐性がより大きかった。全体として、全血との混合時に37.5〜50mMの範囲に希釈された緩衝剤濃度を有する10〜10.5の出発pHは、全血中でおおよそ9及び9.5の最終pHをもたらすと思われる。
以上の実験は、微生物細胞回収に及ぼす血液ライシス試薬/全血混合物の最終pHの影響を例示する。この最終pHは、血液ライシス試薬の炭酸塩緩衝剤能及び血液ライシス試薬への添加前の緩衝剤の初期pHに依存する。9〜9.5の目標pH範囲は、低出発pHの高濃度の炭酸塩緩衝剤を用いるか又は高出発pHの低濃度の緩衝剤を用いるかのどちらかにより達成可能であることが、前の実施例から示唆される。この例では、全血で同一pH値を達成するために、血液ライシス試薬の緩衝剤能及び初期pHの両方を調整した。次いで、炭酸塩緩衝剤濃度の影響を決定するために、これらの混合物を細胞回収実験で試験した。
他の一実験では、全血との混合時におおよそ9.5の最終pH値が達成されるように、さまざまなpH値及び緩衝剤濃度で血液ライシス試薬セットを調製した。図14Cは、炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤系を用いた好適な血液ライシス試薬の調製を例示する表である。表は、緩衝剤を最初に試薬成分と混合してタイプ3血液ライシス試薬を形成し続いて全血と混合した場合のpH値及び元の緩衝剤濃度の希釈を追跡する。炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムとを特定の比で混合することにより、9.5及び10.5のpH値の1M炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤のストック溶液を調製した。タイプ3血液ライシス試薬を形成するように混合し、次いで全血と混合した後、最終pHが類似するように(おおよそ9.5)、緩衝剤の希釈を行った。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%のTriton X−100濃度と、9.65、9.97、及び10.23のpH値と、200、100、及び60mMの緩衝剤濃度と、を有する試薬溶液が得られるように、各々がそれぞれ400、200、及び120mMの緩衝剤濃度で調製されたそれぞれ9.66、10.19、及び10.78のpH値で調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mLのサポニンと3%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとの混合後、9.45、9.52、9.56のほぼ類似のpH値を有して、SPS濃度は9.375mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0.94%w/v、有効緩衝剤濃度はそれぞれ125、62.5、及び37.5mMであった。
たとえば、最低pHから出発する緩衝剤は最大濃度で調製され、一方、最低濃度の緩衝剤は最高pHから出発した。緩衝剤が希釈されるにつれて、血液ライシス試薬中の酸性サポニン及び血中のHCO −1/HCO緩衝剤系との反応に起因して、pH変化が起こるであろう。また、予想通り、最低濃度の炭酸塩緩衝剤(全血への添加前60mM、全血との混合後37.5mMの有効緩衝剤濃度)は、その最も弱い緩衝能に起因して各段階で最大pH変化を受け、これに対して、最大濃度の緩衝剤は、pH変化に対する耐性がより大きかった。
追加の実験セットは、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイク全血サンプルと、図14Cに示される表に記載のタイプ3血液ライシス試薬(すなわち、それぞれ9.65、9、97、10.23、及び200mM、100mM及び60mMの血液ライシス試薬pH値及び炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度を有する)と、を接触させることにより実施された。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例5及び8に提供される方法に従って実施された。スパイク全血サンプルCT値とスパイク対照CT値との差に基づいて決定されたΔCT値は、微生物細胞インタクト性の代わりに利用された。
全血サンプルを含む本実験で得られたΔC値は、図14Dに提示され、この場合も、初期血液ライシス試薬が10.5未満のpHを有するとき、すべての試験された種で低減されたΔC値が得られることが実証される。
本明細書に提供される実施形態例の多くで利用される炭酸塩緩衝剤系例は、単に例示的な例として利用されるにすぎず、代替的に他の緩衝剤系を利用しうることが理解されよう。他の好適なアルカリ性緩衝剤の例としては、限定されるものではないが、ホウ酸塩、炭酸塩、CAPS(N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸)、CAPSO(3−(シクロヘキシルアミノ)−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸)、CHES(2−(N−シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、ピロリン酸、AMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)、及びエタノールアミンが挙げられる。
代替緩衝剤系例の操作性を実証するために、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイク全血サンプルと、Triton X−100とサポニンとSPSと3つの異なる緩衝剤系とを含有する各種タイプ3血液ライシス試薬と、を接触させることにより、実験を実施した。各種タイプ3血液ライシス試薬溶液は、各々に対して20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%のTriton X−100濃度と、それぞれ9.43、9.47、及び9.55のpH値と、100mMの緩衝剤濃度と、を有するタイプ3血液ライシス試薬溶液が得られるように、各々に対して200mMの緩衝剤濃度と10のpH値とで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩、CAPS、及びCHES緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mLのサポニンと3%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlのタイプ3血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとの混合後、3つの異なる緩衝剤系例でそれぞれ9.29、9.10、9.06のほぼ類似のpH値を有して、SPS濃度は9.375mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0.94%w/v、有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例6及び7に提供される方法に従って実施された。スパイク全血サンプルCT値とスパイク対照CT値との差に基づいて決定されたΔCT値は、微生物細胞インタクト性の代わりに利用された。
図15Aは、さまざまな緩衝剤を用いてさまざまなタイプ3血液ライシス試薬配合物で観測されたΔCT値をプロットする。リアルタイムRT−PCRアッセイとの関連で回収に関して3つの緩衝剤系間に有意差は存在しないことが、結果から示唆される。
図15Bは、タイプ3血液ライシス試薬と全血との混合の前及び後のpHを提示する表である。これらのpH値はほぼ類似しており、類似の溶血性能及び微生物細胞インタクト性を有してタイプ3血液ライシス試薬で類似のpH値及びイオン強度を有するさまざまな緩衝剤系を利用しうることを実証する。
全血サンプル処理のためのSPSへのタイプ3血液ライシス試薬性能の依存性の実験研究
本発明者らはまた、血液デブリの排除におけるSPSの役割を実験的に調べた。以上に説明したように、かかるデブリの存在は、微生物細胞の閉込め及び損失をもたら可能性があり、さらにケーク(ケーキング)の存在に伴う問題に起因して自動遠心分離及び/又は濾過を妨害する可能性がある。そのほか、デブリは、遠心洗浄時に沈降して最終細胞サスペンジョンに移送されるおそれがある。このため、微生物細胞又はそのライセートの下流アッセイが阻害されるおそれがある。血液デブリの排除におけるタイプ3血液ライシス試薬のさまざまな成分の役割を調べるために、さまざまな混合後SPS濃度で一連の4つの実験を実施した。以下で説明されるように、SPSの存在は、血液ライシス及び遠心分離の後の血液デブリの低減又は排除に重要な役割を果たすと思われることが分かった。これらの実験の目的は、血液ライシス後の血液デブリの形成を観測して調べることであったので、微生物細胞でスパイクされていない全血サンプルを用いて4つの実験を実施した。
第1の実験は、混合後、最終サポニン濃度が18.75mg/ml且つSPS濃度が0〜20mg/mlの範囲内になるように、Triton X−100及び炭酸塩緩衝剤の不在下で、3mlの非スパイク全血サンプルと、サポニンとSPSとを含有する5mlの各種血液ライシス試薬成分と、を実施例9に記載の方法に従って混合することにより実施された。図16Aは、4つのサンプルの遠心分離機チューブの写真を示す。炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤により促進される高pH環境の不在下では、サポニン及びSPSは、血液成分の十分な消化を達成できず、有意な血液デブリが観測されることが容易に分かる。
第2の実験は、混合後、最終サポニン濃度が18.75mg/ml、最終Triton X−100濃度が0.75%w/v、且つSPS濃度が0〜20mg/mlの範囲内になるように、炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤の不在下で、3mlの非スパイク全血サンプルと、サポニンとSPSとTriton X−100とを含有する5mlの各種ライシス試薬成分と、を実施例9に記載の方法に従って混合することにより実施された。図16Bは、4つのサンプルの遠心分離機チューブの写真を示す。10mg/mlのSPS濃度ではごく少量の血液デブリが存在するにすぎず、20mg/mlのSPS濃度では血液デブリが完全に排除されると思われることが、写真から示される。
第3の実験は、Triton X−100の不在下で、3mLの非スパイク全血サンプルと、サポニンとSPSと炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを含有する5mLの各種ライシス試薬成分と、を実施例9に記載の方法に従って混合することにより実施された。ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、30mg/mlのサポニン濃度と、0〜20mg/mlの範囲内のSPS濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、を有する試薬溶液が得られるように、9.5〜10の範囲内のpH値と200mMの緩衝剤濃度とで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、0〜40mg/mlの範囲内のSPS濃度と60mg/mLのサポニンとを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は0〜12.5mg/mLの範囲内、サポニン濃度は18.75mg/mL、有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。図16Cは、4つのサンプルの遠心分離機チューブの写真を示す。0〜10mg/mlの範囲内のSPS濃度では中程度の量の血液デブリが存在し、20mg/mlのSPS濃度では血液デブリが完全に排除されると思われることが、写真から示される。
第4の実験は、3mLの非スパイク全血サンプルと、サポニンとSPSとTriton X−100と炭酸塩緩衝剤とを含有する5mLのタイプ3血液ライシス試薬と、を実施例9に記載の方法に従って混合することにより実施された。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、0〜20mg/mlの範囲内のSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%のTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、を有する試薬溶液が得られるように、9.5〜10の範囲内のpH値と200mMの緩衝剤濃度とで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、0〜40mg/mLの濃度範囲のSPSと60mg/mLのサポニンと3%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は0〜12.5mg/mLの範囲内、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0.94%w/v、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。図16Dは、4つのサンプルの遠心分離機チューブの写真を示す。SPSの不在下では少量の血液デブリが存在し、5〜20mg/mlのSPS濃度では血液デブリが完全に排除されると思われることが、写真から示される。しかしながら、5mg/mlを超えるSPS濃度では、図16Dで血液デブリ(ケーキング)の存在が観測不能であるとはいえ、それにもかかわらず5mg/mlのサンプルでは、下流の分子アッセイの性能に影響を及ぼすのに十分でありうる少量の血液デブリが存在することに留意されたい。したがって、以下に記載のように、後続分子アッセイを含む実施形態では、10mg/mL〜30mg/mlのSPS濃度が好ましいであろう。しかしながら、SPSはいくつかのPCR酵素の阻害剤であるので、50mg/ml超の濃度は、ケーキングを低減するとはいえ、いくつかの用途では高すぎるおそれがある。
SPSは、血液成分の消化並びに血液デブリの低減及び/又は排除に有意な役割を果たすと思われることが、4つ先行実験から視覚的に実証される。このことは、遠心分離、濾過、又は他の方法、たとえば、免疫磁気及びマイクロ流体ベース分離を含む自動サンプル調製方法に重要でありうる。実際に、SPSの存在は、(i)タイプ3血液ライシス試薬及び(ii)タイプ3血液ライシス試薬の成分のサブセットを含有する他の血液ライシス試薬で、残留血液デブリの低減に相関することが観測された。
微生物細胞でスパイクされた全血サンプルの処理のためのタイプ3血液ライシス試薬の性能のSPS濃度への依存性を調べるために、さらなる実験を実施した。実験は、以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有する3mlの体積を有するスパイク全血サンプルと、サポニンと炭酸塩緩衝剤とTriton X−100とSPSとを含有する各種タイプ3血液ライシス試薬と、を接触させることにより実施された。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、0〜40mg/mlの範囲内のSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、を有するタイプ3血液ライシス試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度と9.5〜10の範囲内のpH値とで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、0〜80mg/mlの範囲内の濃度のSPSと60mg/mlのサポニン濃度と3%w/vのTriton X−100とを有する10mlの試薬溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの各血液ライシス試薬と3mlの全血とを混合した後、SPS濃度は0〜25mg/mLの範囲内、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0.94%w/v、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、実施例3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRは、それぞれ、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルで以下の実施例6及び7に提供される方法に従って実施された。閾値サイクル値(CT値、すなわち、アッセイシグナルがノイズ閾値を超えて増加し始めるときのPCRサイクル数)を測定し、スパイク全血CT値とスパイク対照CT値との差に基づいてCT値の差ΔCTを決定した。
図16Eに示されるように、3つのすべての微生物種のΔCT値は、3.125mg/ml以上の最終(混合後)SPS濃度で5未満であった。検出可能シグナルは、SPSの不在下で血液ライシス試薬に接触させたサンプルでは得られなかった。したがって、SPSの不在下では、おそらく以上に記載のケーキング現象に起因して、リアルタイムRT−PCRを介するrRNAの検出が損なわれることが、これら結果から示される。
本明細書に記載の実施形態例の多くは、非イオン性界面活性剤としてTriton X−100(たとえば、ポリエチレングリコールp−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル、オクチルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリエトキシル化4−オクチルフェノール、及びt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノールとして知られる)を利用するが、血液成分のライシス及びインタクト微生物細胞の保存に好適なタイプ3血液ライシス試薬は、広範にわたる非イオン性界面活性剤を含みうることが理解されよう。好適な非イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、アルキルグリコシド、Brij35(C12E23ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル)(15,7)、Brij58(Cl6E20ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル)(16)、Genapol(13〜19)、アルキルN−メチルグルカミド、たとえば、MEGA−8、−9、−10、オクチルグルコシド(12,6)、PluronicF127、Triton X−100(C14H22O(C2H4O),,)(13,4)、Triton X−114(C24H4206)(12,4)、Tween20(ポリソルベート20)(16,7)及びTween80(ポリソルベート80)(15)、Nonidet P40、ナトリウムデオキシコレート、還元Triton X−100、及び又はIgepal CA630が挙げられる。
タイプ3血液ライシス試薬配合物は、消泡剤の不在下の各種混合及び貯蔵条件下で起泡しやすい可能性があることが、本発明者らにより観測された。それゆえ、いくつかの実施形態例では、タイプ3血液ライシス試薬は、消泡剤をさらに含みうる。消泡剤は、好ましくは起泡性培地に不溶であり、表面を横切って展延できるように低表面張力を有し、泡空気−液体界面を透過してそれを不安定化し崩潰を引き起こすことが可能である。さらに、カートリッジ内の流体送達を含む自動用途では、消泡剤は、泡生成を完全に排除するか又は実質的に低減するかのどちらかであるべきである。そのほか、血液ライシスプロセス時、理想的消泡剤は、微生物細胞に対する親和性が最小限であるか又はまったくなく、液体中でエマルジョンとして懸濁状態を維持する。分離(たとえば、遠心分離又は濾過)時、消泡剤には微生物細胞を捕集して閉じ込めるリスクがあるため、消泡剤と血液ライシス試薬の残りの部分との間で相分離を生じないようにすべきである。
本発明者らは、Sigma Aldrich製の2種の市販の消泡配合物:Organic Antifoam204(製品番号A8311)及びSilicone Antifoam SE−15(製品番号A8582)を実験的に調べた。Antifoam204(「AF204」)は、非シリコーンポリプロピレン系ポリエーテルディスパージョンの混合物からなる100%活性成分を含有する。AF204は、単独で及び4000Daの平均分子量を有するポリプロピレングリコール(「PPG4000」)との組合せで調べられた。消泡剤SE−15は、活性シリコーンポリマーと非イオン性乳化剤との10%エマルジョンw/vである。
以下の例では、3つの基準:1)激しいシェーキング後の泡高さ、2)微生物細胞回収に及ぼす影響(rRNA検出及び増幅に基づく)、及び3)中期的安定性に従って、消泡剤が添加された各種タイプ3血液ライシス試薬を評価した。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、各々0.05〜0.2%w/vの濃度を有するAF204、SE−15、PPG4000又はそれらの混合物と、を有するタイプ3血液ライシス試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度と9.5〜10のpH値とで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mlのサポニン濃度と3%w/vのTriton X−100と各々0.1〜0.4%(v/w)の濃度を有するAF204、SE−15、PPG4000又はそれらの混合物とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。
1mLの血液ライシス試薬を15mlコニカルチューブに分配し、90°アークで激しく10秒間シェイクし、次いでチューブラックに置き、そこで液体表面からの泡高さの観測及び測定が可能である(図17A参照)。いずれの消泡剤も用いない場合、ライシング試薬は、以上に記載したようにシェイクしたきにおおよそ25mmの高さの泡の生成が観測された。
非シリコーン系消泡剤を使用した場合、泡高さは、AF204とPPG4000とを理想的には10:1の比で組み合わせたときにより効果的に減少した。しかしながら、連続してシェイクすると消泡剤混合物の効果は減少し、泡高さは1回目のシェイク後の3.5mmから後続シェイク後の10mmに増加した。シリコーン系エマルジョンSE−15は、1mLの以上に記載のタイプ3血液ライシス試薬で0.05〜0.2%(v/w)の濃度で単独で使用された。泡高さは、未処理サンプルの25mmから0.05%(v/w)SE−15の2.5mmに低下し、0.2%(v/w)SE−15では実質上まったく泡がなくなった。
消泡剤SE−15の効果は、血液ライシス試薬の後続アジテーション時に持続して観測された。SE−15の消泡性能をさらに例示するために、0.05%(v/w)SE−15を有する上述した各5mLのタイプ3血液ライシス試薬(図17Bの右側)及び消泡試薬不在のタイプ3血液ライシス試薬(図17Bの左側)をそれぞれ15mL遠心分離機チューブに入れて標準的ベンチトップ実験室ボルテクサーにより最大スピードで1分間ボルテックスした。これらの実験の結果を図17B及び17Cにまとめる。ボルテクシング直後、SE−15を有する血液ライシス試薬(図17Bの右側及び図17CのHR5)は、未処理血液ライシス試薬と比較して泡高さがほぼ1/5になった。20秒間以内に泡はほとんど全部崩潰したが、未処理の血液ライシス試薬(図17Bの左側及び図17CのHR3)では泡は不変の状態を維持した。
細胞回収に及ぼす消泡剤の影響を評価するために、以下の実施例3に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル(例外として、100CFU/mlの代わりに200CFU/mlの濃度で微生物細胞にスパイクした)と、消泡剤を含有する各種タイプ3血液ライシス試薬と、を混合した(図17A)。1mlの血液ライシス試薬と1mlのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルとを混合した後、SPS濃度は7.5mg/mL、サポニン濃度は15mg/mL、Triton X−100濃度は0.75%w/v、緩衝剤濃度は50mM、消泡剤(AF204、SE−15、PPG4000又はそれらの混合物)の濃度は0.0025〜0.1%(w/v)の範囲内であった。続いて、実施例5に提供される方法に従って遠心分離及びリアルタイムRT−PCRを実施した。消泡剤ありのタイプ3血液ライシス試薬を用いた実験で測定されたCT値から、消泡剤なしのタイプ3血液ライシス試薬を用いた実験で得られたCT値を減算することにより、ΔCT値を決定した。
図17Aに示される細胞インタクト性の実験の結果は、シリコーン系及び非シリコーン系消泡剤の両方で、消泡剤の不在下の3型試薬と比較して、CT値の有意な増加は観測されなかったことを実証する。実際に、両方の消泡剤で、血液ライシス試薬で消泡剤により生成されたエマルジョンは、観測可能な相分離を伴うことなく、血液ライシスプロセス全体を通して均一な状態を維持した。さらに、SE−15の場合には、遠心分離プロセス例の最終洗浄時に残留するいずれのエマルジョン粒子も微視的評価で観測されなかったことから、作用剤は効果的に除去され、したがって、下流のアッセイを妨害しえないことが示唆される。
細胞回収に及ぼすタイプ3血液ライシス試薬の短期的安定性を評価するために、以下の実施例3に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル(例外として、100CFU/mlの代わりに200CFU/mlの濃度で微生物細胞にスパイクした)と、SE−15あり(HR5)及びなし(HR3)で調製された各種タイプ3血液ライシス試薬と、を図17Dに示されるように混合した。20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、0.05%のSE−15(w/v)あり又はなしと、を有するタイプ3血液ライシス試薬溶液を調製した。1mlの血液ライシス試薬と1mlのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルとを混合した後、SPS濃度は7.5mg/mL、サポニン濃度は15mg/mL、Triton X−100濃度は0.75%w/v、緩衝剤濃度は50mM、及びSE−15の濃度は0.0025%(w/v)であった。サンプル調製及びリアルタイムRT−PCRは、以下の実施例5に提供される方法に従って実施された。以下の実施例3の方法に従って調製されたスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルはまた、スパイク対照用にも調製され、以下の実施例4の方法に従ってリアルタイムRT−PCRに付された。スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルCT値とスパイク対照CT値との差に基づいて決定されるΔCT値は、微生物細胞インタクト性の代わりに利用された。消泡剤の存在下で調製されたタイプ3血液ライシス試薬の短期的安定性は、細胞回収及び消泡の性質の劣化をなんら示さなかった。
上述したように、消泡剤SE−15は、10%ケイ素ポリマーと5%非イオン性乳化剤とからなる市販のエマルジョンである。ケイ素ポリマーは、ポリジメチルシロキサン(一般化学式:(HC)[Si(CHO]Si(CH、CAS番号:63148−62−9)であり、乳化剤は、ポリソルベート65(CAS番号:9005−71−4)であり、そして希釈剤は水である。一般的には、血液ライシス試薬に適合可能な消泡剤のクラスは、8〜15の全親水性親油性バランス(HLB)値を有する水中油型乳化剤又は乳化剤の混合物の存在下の水中10〜30%の濃度のポリジメチルシロキサンの混合物からなる。これらの乳化剤のいくつかの例としては、限定されるものではないが、ポリオキシエチレンエーテル及びソルビタン誘導体系界面活性剤、たとえば、限定されるものではないが、ポリソルベート85、ポリソルベート60、ポリソルベート60、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリエチレングリコールオクタデシルエーテル、及びポリオキシエチレンステアリルエーテルが挙げられる。
上述した実験研究は、全血サンプルの効果的分離、精製、及び濃縮が、全血サンプルと、限定されるものではないがサポニンとSPSと非イオン性界面活性剤とアルカリ性緩衝剤と任意選択的消泡剤とを含むタイプ3血液ライシス試薬(血液及び/又は他の真核細胞の選択的ライシス用)と、を混合することにより達成されうることを実証する。以上に記載したように、本発明者らは、界面活性剤としてのサポニンが、微生物細胞に損傷を引き起こすことなく微生物細胞を覆う層を形成しうるとともに、サポニンにより生成された界面活性剤層が、アルカリ性環境で保護層として作用し、それがないときの高pH環境の有害作用から微生物細胞を保護しうると仮定した。それにもかかわらず、この概念は、高pH環境とサポニンとの不適合性が予想されるため、この試薬の組合せでの成功の期待値は低いと考える本発明者らによる初期抵抗に遭遇した。具体的には、本発明者らは、サポニンの溶血的役割及び以上に記載のサポニンの潜在的保護的役割が、アルカリ性環境に起因するサポニンの分解により有害な影響を受ける可能性があると推測した。
サポニンは、典型的には、南アメリカのキラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja saponaria Molina)の木から抽出物として得られ、共通のトリテルペノイド骨格に装着される多糖の性質が異なる30種を超える構造的に多様なグリコシドの複合混合物で構成される。主要なサポニンQS−7、QS−17、QS−18、及びQS−21は、全サポニン含有量の90重量%までを占め、その化学構造、毒性、及び溶血活性に関して最もよく特徴付けられている。単離時、QS−17、QS−18、及びQS−21はすべて、おおよそ同一の用量(7〜25μg/mL)で溶血を引き起こす。
サポニンは弱酸性であり、20重量%の濃度で水に溶解させたとき、その純度に依存して4〜5のpHを呈するであろう。8超のpHでは、主要なサポニン化合物QS−7、QS−17、QS−18、及びQS−21は、アルカリ加水分解を受けて「脱アセチル化サポニン」DS−1及びDS−2を生成する。こうした脱アセチル化サポニンは、その親サポニンのおおよそ1/10の溶血活性を呈する(D.J.Pillion,J.A.Amsden,C.R.Kensil,J. Recchia“Structure−function relationship among Quillaja saponins serving as excipients for nasal and ocular delivery of insulin.”J of Pharmaceutical Sciences,Vol 85,No.5 1996,pages 518−524)。かかる高pHレベルでは、サポニン混合物の臨界ミセル濃度もまた、pH6.5の200mg/LからpH10の2000mg/Lへ10倍に増加するであろう(W−J Chen,L−C Hsiao,K K−Y Chen“Metal desorption from copper(II)/nickel(II)−spiked kaolin as a soil component using plant−derived saponin biosurfactant.”Process Biochemistry,Vol.43,No5 2008,pages 488−498)。アルカリ性環境でのサポニンのこの既知の分解及び関連する溶血活性の低減を考慮して、本発明者らは、タイプ3血液ライシス試薬の有効性が直ちに劣化しなかったので、タイプ3血液ライシス試薬の成功に驚かされた。
タイプ3試薬のアルカリ性環境の存在下でサポニンの分解をさらに調べるために、本発明者らは、安定性実験セットを実施した。以下に説明したように、これら実験では、(i)溶血能力及び(ii)rRNA増幅を介して決定される微生物細胞インタクト性の2つの観点からタイプ3血液ライシス試薬の安定性を調べた。
溶血能力の観点からアルカリ性環境でのサポニンの安定性を調べるために設計された第1の実験では、Desert King International (Saponin−Ultra)製のサポニンをタンジェンシャルフロー濾過によりさらに精製し、少量のポリフェノール<1.5%(w/w)及び多糖<5%(w/w)の不純物を含む(HPLC)サポニン含有率が>80%w/wの全サポニン197mg/mLを有する溶液を与えた。3つの異なる緩衝剤:(1)非緩衝(最終pH約4.3で水に溶解させた)、(2)60mM酢酸ナトリウム緩衝剤(最終pH約4.9)、及び(3)100mM炭酸ナトリウム緩衝剤(最終pH約9.8)で溶液を30mg/mlの濃度に希釈した。シールバイアル中に室温でサポニンサンプルを貯蔵し、次いで次の手順を用いて溶血活性を試験した。0.9%w/v NaClの1mMリン酸塩緩衝剤(pH7.4)(PBS)でサポニン溶液を4mg/mLの濃度に希釈した。個別の2mLポリプロピレンチューブ中に、PBS中1280μg/mL〜5μg/mLの各サポニン溶液の200μLの段階希釈液を調製した。陽性対照は、200μLのPBS中1%w/v Triton X−100であり、一方、陰性対照は、200μLのPBS単独であった。各サンプル及び対照に200μLのPBS中4%v/vヒツジ赤血球(Innovative Research IC100−0210)を添加した。ポリプロピレンチューブにキャップをし、次いでローティッセリシェーカー上で室温で2時間インキュベートした。チューブを3000RPMで5分間遠心分離し、次いで各上清からの50μLを96ウェルアッセイプレート内で150μLのPBSで希釈した。
溶血は、UV/可視マイクロプレートリーダーで540nmの各サンプルの吸光度を測定することにより調べられた。各種希釈にわたり吸光度値から用量−反応曲線を作成し、各サポニンサンプルのHC50値(50%完了溶血に達するサポニン濃度)を計算した。溶血試験は、サポニンをさまざまな緩衝剤で希釈した直後に1回、サポニンの短期的安定性を調べるために室温で23日間貯蔵した後に再度実施された。
図18A及び18Bは、それぞれ、0日目及び23日目に採取された各サポニン溶液の用量反応曲線を示し、図18Cは、曲線から導出されたHC50計算値を提示する。初日後、低pH値及び高pH値での各サポニンの溶血活性は、ほとんど同一である(おおよそ36μg/mLのHC50値)。23日間後、酸性緩衝剤(pH <5)で貯蔵されたサポニンは、それらの用量−反応及びHC50値(39〜38μg/mL)に有意な変化を示さないが、アルカリ性緩衝剤(pH約10)でのサポニンは、同一期間(89μg/mL)にわたり溶血活性の2倍損失を示す。
この溶血活性の損失は、より低活性の「脱アセチル化サポニン」DS−1及びDS−2に対して高活性サポニンQS−7、QS−17、QS−18、及びQS−21の緩徐なアルカリ加水分解に起因する。しかしながら、より高pHでは、サポニンは、0日目の溶血活性により示唆されるように、少なくとも血液ライシス試薬によるライシスを行う典型的時間(たとえば、おおよそ5分間)内でほぼインタクトであると思われる。
以上の考察は、溶血効率に関して高pH培地でのサポニンの不安定性を例示する。微生物細胞インタクト性を保持するサポニンの能力に及ぼすアルカリpH及び非イオン性界面活性剤の影響を調べるために、第2の実験セットを実施した。先行実験例のいくつかと同様に、微生物細胞の血液ライシス及び分離の後の細胞インタクト性の代わりに、ΔCTにより定量されるインタクト性を用いるrRNA増幅を利用した。炭酸塩緩衝剤を血液ライシス試薬の成分の残りの部分と個別又は一緒のどちらかで保持して、経時的にΔCT値をモニターすることにより実験を実施した。2つのタイプ3血液ライシス試薬を用いて実験を実施した。
第1のタイプ3血液ライシス試薬は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、0.05%w/vのSE−15濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、を有するタイプ3血液ライシス試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度と10のpH値とで調製された20mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlの濃度を有するSPSと60mg/mlのサポニン濃度と3%w/vのTriton X−100と0.1%w/vのSE−15の濃度とを有する10mlの試薬溶液と、を組み合わせることにより調製された。第2の試薬は、タイプ3血液ライシス試薬がこの試薬と炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤とを使用前に組み合わせて得られるように、これにより、貯蔵時のサポニンの分解が回避されるように、緩衝剤の添加なしにタイプ3血液ライシス試薬に基づいて調製された。この第2の試薬は、30mg/mlのSPS濃度と、60mg/mlのサポニン濃度と、3%w/vのTriton X−100濃度と、0.1%w/vのSE−15濃度と、を有していた。
第1の試薬(貯蔵前にプレ混合されたすべての試薬成分を有する)及び第2の試薬(炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤の不在下で貯蔵される)を室温で1週間貯蔵した後、第2の試薬と、等体積の200mM炭酸塩緩衝剤(pH10)と、を混合し、それにより、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、0.05%w/vのSE−15濃度と、を有するポスト混合タイプ3血液ライシス試薬を提供した。次いで、プレ混合及びポスト混合タイプ3血液ライシス試薬と、(i)以下の実施例2に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有する3mlの体積を有するスパイク全血サンプル、並びに(ii)以下の実施例3に従って調製されたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(PM)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)を含有するスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルと、を接触させた。5mlの各血液ライシス試薬と、3mlのスパイクリン酸塩緩衝剤又はスパイク全血と、をそれぞれ合した後、サポニン濃度は18.75mg/mL、SPS濃度は9.375mg/mL、Triton X−100濃度は0.94%w/v、SE−15の濃度は0.03%w/v、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。続いて、スパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルの両方で、遠心分離及びリアルタイムRT−PCRを以下の実施例7に提供される方法に従って実施した。以下の実施例3の方法に従って調製されたスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルはまた、スパイク対照用にも調製され、以下の実施例6の方法に従ってリアルタイムRT−PCRに付された。
閾値サイクル値(CT値、すなわち、アッセイシグナルがノイズ閾値を超えて増加し始めるときのPCRサイクル数)を測定し、スパイクリン酸塩緩衝剤CT値(図19A)又はスパイク全血CT値(図19B)とスパイク対照CT値との差に基づいてCT値の差ΔCTを決定した。安定性の参照を提供するために、第1の試薬の新たに調製されたものを用いて個別の実験セットを作製した。
結果は、スパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルに対してそれぞれ図19A及び19Bに提示される。観測されるように、サポニンと緩衝剤系とをプレ混合して高pHで貯蔵したタイプ3血液ライシス試薬の性能は、1週間にわたり劣化し、ΔC値は3〜8サイクル増加する。サポニンは、高pH環境で貯蔵すると、スパイク弱リン酸塩緩衝剤を用いた場合、おおよそ1週間の時間スケールで、選択的ライシス時のその保護的役割の有意な劣化が現れ、この劣化は、血液ライシス試薬と血液とを混合した場合、有意な影響として現れないことが(すなわち、ΔCのより小さな増加が観測された)、これらの実験結果から示される。
サポニンの保護有効性は、全血サンプルとの混合直後又はその後しばらくは損なわれず(たとえば、混合後1日まで)、アルカリ性緩衝剤の塩基性成分からサポニン成分を分離して長期的貯蔵(たとえば、何日間か、何週間か、又は何ヵ月かにわたる貯蔵)を実施することにより、改善された試薬性能を達成可能であることが、以上に提示される実験結果から実証される。たとえば、1つ以上の追加の試薬成分との混合時にアルカリ性pHに変換される中性又は酸性環境にサポニンを含有するように、タイプ3血液ライシス試薬の1つの成分を配合しうる。これらの試薬成分は、液状形態、乾燥形態、又は液状形態と乾燥形態との組合せで貯蔵されうる(1つ以上の試薬成分は液状形態され、1つ以上の他の試薬成分は乾燥形態で貯蔵される)。これらの試薬成分は、血液サンプルの血液ライシスを実施する前に混合されうる。たとえば、試薬成分は、血液サンプルとの接触直前(たとえば、血液サンプルと接触の何秒間か以内又は何分間か以内)にタイプ3血液ライシス試薬を形成するように混合されうるか、又は代替的に、試薬成分は、血液サンプルに接触させる前に好適な遅延(たとえば、何時間か)を設けてタイプ3血液ライシス試薬を形成するように混合されうるとともに、遅延は、血液ライシスプロセス時に微生物細胞の十分なインタクト性を維持するように決定される(たとえば、遅延への微生物細胞インタクト性の依存性を評価する一連の実験を介して)。
試薬成分の分離を含む一実現形態例では、アルカリ塩(たとえば、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム)を含む第1の試薬は、サポニンを含有するpH3.5〜5.5に緩衝された(たとえば、酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、又はリンゴ酸塩緩衝剤を用いて)第2の試薬から分離して貯蔵可能である。第1の試薬は、第2の試薬との混合時に可溶化されるように、乾燥形態で貯蔵可能である。第2の試薬により第1の試薬が十分に溶解されたら(たとえば、混合を介して)、得られた血液ライシス試薬は、血液サンプルに接触可能である。
上述した例に係るタイプ3血液ライシス試薬のアルカリ性成分の分離は、第1の試薬の成分とくにサポニンが適切な酸性pH緩衝剤の存在下の弱酸性条件下で室温で長期間安定である限り、達成することが可能である。さらに、第1及び第2の試薬は、酸性緩衝剤に対して適正割合の固形アルカリを溶解可能であるように、その結果、混合タイプ3血液ライシス試薬の最終アルカリ性pHレベルさらには所望の有効緩衝剤濃度を達成可能であるように構成されるべきである。また、十分に迅速な時間スケールで溶解するように、流体フローを妨害しないように(たとえば、自動プロセスで利用する場合、他の場合にはチャネル又はバルブをブロック可能である)、しかもインタクト微生物細胞の回収を損なう可能性のある非溶解微粒子として存在し続けることがないように、アルカリ性塩を選択することが有益である。
選択される実現形態例では、限定されるものではないが、好適な第1の試薬の形成に使用可能なアルカリ性塩例としては、水への溶解性が相対的に高いことから炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムが挙げられ(それぞれ、25℃で31g/100mL及び111g/100mL)、これらは第2の試薬の存在下で容易に溶解する。かかる塩は、高濃縮水性溶液として調製可能であり、これはアルカリ性試薬を液体としてディスペンス可能にしうるとともに、次いで、乾燥させて固形試薬を残存可能である(本実現形態例では第1の試薬)。他の一実現形態例では、第1の試薬は、第2の(液状相)試薬と組み合わせたときに迅速に破壊され溶解しうる小さな固形ペレット(たとえば、直径2〜4mm)に形成(たとえばプレス)可能である。第1の試薬及び第2の試薬は、混合時にタイプ3血液ライシス試薬の目標pHが得られるように及び/又は最大pH(及び/又は緩衝剤濃度)を超えないように、それぞれの組成で形成可能である。
以下の例は、貯蔵時のサポニン活性を維持するために、分離して貯蔵し続いて混合してタイプ3血液ライシス試薬を得ることが可能な2つの試薬を生成する方法例を提供する。第1の試薬は、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性溶液を提供するように構成され、溶血前は第2の試薬から分離して保持され、且つ液体として又は後続的に第2の試薬との混合時に溶解可能な固体として提供されうる。本実現形態例では、限定されるものではないが、第1の試薬は、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムを含み、固形相で貯蔵される。第2の(液状相)試薬は、サポニンを含み、中性又は酸性pH、たとえば、3.5〜6.5、3.5〜8、又は4〜5の範囲内のpHで緩衝される。
2つの試薬の混合後に所望のpHが得られるように第1の試薬及び第2の試薬の好適な相対量を決定するために、弱酸性緩衝剤で第2の試薬を調製し、次いで、炭酸ナトリウム溶液である第1の試薬で滴定する。酸性緩衝剤及び炭酸ナトリウム滴定剤の添加前、第2の試薬(4.5mL)は、1.67体積%の濃度のTriton X−100と、22.2mg/mLの濃度のSPSと、33.3mg/mLの濃度のサポニンと、0.056%(v/w)の濃度の消泡剤SE−15と、を含んでいた。次いで、さまざまな量の酢酸ナトリウム(pH5)又はクエン酸ナトリウム(pH4.5及びpH5)のどちらかで第2の試薬を緩衝した。
図20A及び20Bは、それぞれさまざまな量のクエン酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムを含有する第2の試薬を炭酸ナトリウムの溶液(1モル)として提供された第1の試薬で滴定したときに測定されたpH変化をプロットする。いずれの場合も、9.5〜10.0のpHを目標とし、炭酸ナトリウムを含む酢酸塩/クエン酸塩の全濃度が80〜100mMになるようにした。図に示されるように、試薬混合物は、炭酸ナトリウム溶液の最初の2、3回の添加ではより低いpHレベルに弱く緩衝されたまま維持されるが、pH7〜9では、炭酸塩が新たな緩衝系で優位になるので、pHの急上昇が起こる。
クエン酸塩緩衝剤(図20Aに示される)の場合には、pH9に達するのに必要な炭酸ナトリウムの量は、第2の試薬の初期pH及びクエン酸塩の濃度に依存する。たとえば、pH4.5の40mMクエン酸塩では、9超のpHに増加させるには少なくとも27mgの炭酸ナトリウム(ほぼ50mMの緩衝剤濃度に等価)が必要とされるが、30mMクエン酸塩では、同一pHレベルに達するのに21mgの炭酸ナトリウム(又はおおよそ40mMの緩衝剤濃度)で十分である。しかしながら、40mMクエン酸ナトリウム(pH4.5)と27mg炭酸ナトリウムとの組合せは、血液への暴露に起因するpH変化に対する耐性がより大きいと予想されるより高い緩衝濃度を提供する。
酢酸塩緩衝剤(図20Bに示される)の場合には、初期酢酸塩濃度への依存性は、クエン酸塩緩衝剤よりも明白ではなく、pHに影響を及ぼすことなくより容易に所望の緩衝剤能を目標としうる。
図20A及び20Bに示される滴定曲線例は、所望のpHレベルに達するように第1の試薬で必要とされる固体炭酸ナトリウムの量を決定するために利用可能である。たとえば、pH4.5の40mMクエン酸塩緩衝剤を使用する場合、おおよそpH9.6〜9.7で全緩衝剤濃度100mMを得るために、第1の試薬で32mgの炭酸ナトリウム粉末が必要とされるであろう。
微生物細胞のインタクト性を保存しつつ且つ残留血液デブリの発生を回避しつつ、選択的血液細胞ライシスを達成するタイプ3血液ライシス試薬の有効性は、血液ライシス試薬がどれくらい完全にサンプルと混合されるかに依存することを、本発明者らは見いだした。限定されるものではないが、有効混合方法の例としては、ボルテクシング、撹拌、磁気ビーズベース混合、及び相互接続チャンバー間輸送が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な混合度及び好適な混合時間は、混合パラメーター及び持続時間を変化させることにより、及び微生物細胞インタクト性を調べる実験(たとえば、rRNA増幅などのプロキシアッセイを介して)及び/又は残留血液デブリを調べる実験を実施して十分な細胞インタクト性及び/又は残留血液デブリの低減又は排除を達成する混合パラメーターを選択することにより、実験的に決定可能である。血液細胞のライシスの事例では、十分な混合が実施される限り、ライシスは混合操作時に行われることを、本発明者らは見いだした。たとえば、ボルテクシング又は流体チャンバー間輸送により混合を実施する場合、好適な混合時間は30秒間〜2分間の範囲内である。
本明細書に記載の実施形態例の多くは、微生物細胞分離を達成するために遠心分離を利用するが、本血液ライシス試薬組成物及び関連方法は、他の微生物細胞分離方法、たとえば、限定されるものではないが、濾過、免疫磁気分離、及び他の分離技術、たとえば、マイクロ流体ベース分離との組合せで血液成分及び/又は他の真核細胞の選択的ライシスを実施するために利用しうることが理解されよう。
さらに、本明細書に記載の血液ライシス試薬は、血液サンプル中の血液細胞の選択的ライシスに有効であることが示されるが、本明細書に記載の血液ライシス試薬及びその変化形態は、多種多様なサンプルタイプに適用されうるとともに、血液細胞以外の追加のタイプの真核細胞の選択的ライシスに有効でありうることが理解されよう。たとえば、本明細書に開示される細胞ライシス試薬(いくつかの実施形態例では「真核細胞ライシス試薬」ということがある)は、サンプル、たとえば、限定されるものではないが、リンパ液、脳脊髄液、痰、唾液、及びホモジナイズ組織サスペンジョン中の真核細胞(血液細胞又は他の真核細胞)のライシス(たとえば、真核生物から得られる体液又は他のサンプルに存在する非微生物内因性細胞のライシス)に利用されうる。
以上に述べたように、いくつかの実施形態例で「血液サンプル」の定義内に血液培養サンプルが含まれることにより、タイプ3血液ライシス試薬は、陽性血液培養サンプルや中間培養血液培養サンプルなどの血液培養サンプルからのインタクト微生物細胞の抽出に利用されうる。タイプ1血液ライシス試薬は、インタクト微生物細胞の抽出に最も適切な血液ライシス試薬選択であろうと推測されることもある。たとえば、サポニンとSPSとの組合せは一般に細菌細胞を損傷しないので、タイプ1血液ライシス試薬が好ましいと思われることもある。さらに、血液培養ボトル中の血液内容物は、典型的にはすでに少なくとも4倍希釈されており、この希釈の結果として、タイプ1血液ライシス試薬への暴露後の陽性血液培養サンプル中の血液細胞デブリの相対量は、タイプ1血液ライシス試薬への暴露後の類似の体積を有する全血サンプル中に存在する血液細胞デブリのおおよそ1/4であると予想される。したがって、血液細胞デブリのこうした低減を考慮して、タイプ1試薬は、血液培養サンプルの処理に好適でありうると判断されることもある。
しかしながら、以下に示されるように、本発明者らにより行われた実験観測では、血液培養サンプルの希釈を高めても、必ずしも血液細胞デブリの除去が容易になるとは限らず、タイプ3血液ライシス試薬が血液培養サンプルの処理に好ましいことが示唆される。
陽性血液培養サンプルでの遠心分離後残渣に及ぼす血液ライシス試薬タイプの影響の実験研究
本実験研究は、陽性血液培養サンプルへの暴露後に存在する残留デブリに及ぼす異なるタイプの血液ライシス試薬組成物の影響を調べるために実施された。エシェリキア・コリ(Escherichia coli)が接種された陽性血液培養サンプルは、実施例10の方法を用いて調製された。1ml〜5mLの範囲内の体積を有するサンプルは、タイプ1又はタイプ3血液ライシス試薬のどちらかを用いて実施例11の方法に従って処理された。タイプ1血液ライシス試薬の場合には、タイプ1血液ライシス試薬と陽性血液培養サンプルとの混合後、サポニン及びSPSの濃度は、サンプル体積にかかわらず、それぞれ37.5mg/mL及び7.5mg/mLであった。タイプ3血液ライシス試薬の場合には、タイプ3血液ライシス試薬と陽性血液培養サンプルとの混合後、サポニン、SPS、炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤(pH10)の濃度は、サンプル体積にかかわらず、それぞれ17.5mg/mL、7.5mg/mL、25mM(有効緩衝剤濃度)であった。
図21A及び21Bは、1ml〜5mlの範囲内の陽性血液培養サンプル体積に対して、それぞれ、タイプ1及びタイプ3試薬での陽性血液培養サンプルの溶血の実施後の遠心分離機チューブの画像を示す。
図21Aに示されるように、陽性血液培養サンプルとタイプ1血液ライシス試薬との接触後、タイプ1血液ライシス試薬により十分に消化されない血液デブリは、遠心分離時に微生物細胞と一緒の沈降し、複合ネットワークで微生物細胞と血液細胞デブリとの両方を含む粘性ケークを形成する。この細胞−デブリケークは、自動遠心洗浄サイクル時に容易に破壊されず、洗浄微生物細胞を再懸濁したときに大量の血液細胞デブリが残留し、下流プロセス(たとえばアッセイ)の性能に影響を与えるおそれがある。
きわめて対照的に、図21Bに示されるように、陽性血液培養サンプルとタイプ3血液ライシス試薬との接触後、血液デブリは、上昇pHの存在下で消化され、遠心分離後に得られた生成沈殿は、ほとんど全部が微生物細胞で構成される。クリーン微生物細胞沈殿物は、図21Bで容易に分かり、タイプ1血液ライシス試薬を用いて形成された粘性且つ暗色のケークとは有意に異なる白色沈澱物を示す。また、沈殿物の量は、血液細胞デブリの不在に起因して、タイプ3血液ライシス試薬の場合には有意に低減されることが容易に分かる。タイプ3血液ライシス試薬による処理で得られる容易に再懸濁可能な高純度微生物細胞沈殿物は、他の状況で残留血液細胞デブリにより引き起こされる可能性のある妨害作用が不在であるため、改善された性能を有する下流アッセイが促進されると予想される。
以上の例は、血液培養サンプルを遠心分離処理して実質的に血液細胞デブリフリーの微生物細胞沈殿物を得るタイプ3血液ライシス試薬に基づく利益を実証するが、血液培養サンプルの処理にタイプ3血液ライシス試薬を使用することは、濾過などの他の分離モダリティーにも有益であると予想されることに留意されたい。さらに、タイプ3血液ライシス試薬を介して処理されたサンプルの消化及び粘度の改善により、流体カートリッジでの自動輸送ベース混合が促進されると予想される。こうした混合は、一方の流体チャネル又は流体チャンバーから他方の流体チャネル又はチャンバーに及びその逆に液体を流動させることにより、任意選択的に、このプロセスを1回以上繰り返すことにより達成する。
タイプ3血液ライシス試薬を用いた陽性血液培養物からの直接MALDIを実証する実験研究
以上に述べたように、タイプ3血液ライシス試薬で陽性血液培養サンプルを処理した後に得られたクリーン微生物細胞沈殿物は、追加のサンプル調製工程の不在又は低減を伴って、同定アッセイなどの後続アッセイ工程の実施を促進可能である。本発明者らは、継代培養工程を必要とすることなく、タイプ3血液ライシス試薬を用いた初期血液細胞ライシス工程の後に陽性血液培養サンプルの分離及び精製を実施することにより得られる微生物細胞でMALDIを直接実施する能力を実証するために次の実験を実施した。1mLの陽性血液培養サンプルと等体積のタイプ3血液ライシス試薬とを混合した後、個別成分の濃度が以下の通りになるように、各々異なる組成例を有する3つのタイプ3試薬例を調製した。
タイプ3血液ライシス試薬例1:
血液ライシス試薬と陽性血液培養サンプルとを混合した後、サポニン、SPS、Triton X−100の濃度、及び炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤(pH10)の有効濃度は、それぞれ、17.5mg/mL、10mg/mL、0.75%、及び50mMであった。
タイプ3血液ライシス試薬例2:
血液ライシス試薬と陽性血液培養サンプルとを混合した後、サポニン、SPS、Triton X−100の濃度、及び炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤(pH10)の有効濃度は、それぞれ、17.5mg/mL、10mg/mL、0%、及び50mMであった。
タイプ3血液ライシス試薬例3:
血液ライシス試薬と陽性血液培養サンプルとを混合した後、サポニン、SPS、Triton X−100の濃度、及び炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤(pH10)の有効濃度は、それぞれ、17.5mg/mL、10mg/mL、0%、及び25mMであった。
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、又はシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)を含有する陽性血液培養サンプルは、実施例10の方法に従って調製された。続いて、遠心分離は、4回の洗浄サイクルを利用して、実施例12に提供される方法に従って実施された。続いて、サスペンジョンで得られた細菌細胞は、実施例16の手順に従って同定するためにMALDI(VITEK(登録商標)MS機器)により試験された。
図21Cは、タイプ3血液ライシス試薬の組成への陽性培養血液サンプルからのスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、又はシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)のMALDI(VITEK−MS−ID)による同定の測定依存性を例示する。3つの細菌種はすべて、すべてのタイプ3血液ライシス試薬組成物例の場合で適正に同定された。MALDIを介する血液培養サンプルからの正確且つ直接的な同定のために、タイプ3血液ライシス試薬の成分の広範にわたる組成を利用しうることが、結果から例示される。
本実験的実証では、細胞分離時に4回の洗浄サイクルを利用した。4回の洗浄サイクルの使用は、一般に必要なことではなく、より多くの回数又はより少ない回数の洗浄サイクルを利用しうることが理解されよう。たとえば、より少ない回数の洗浄サイクルでも、MALDIにより高性能同定を行うのに十分なサンプル純度が提供されることを例示するために、他の一実験を実施した。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、50mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、10のpHの100mMの緩衝剤濃度で調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と60mg/mlのサポニン濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。1mlの血液ライシス試薬と1mlの陽性血液培養サンプルとを混合した後、SPS濃度は7.5mg/mL、サポニン濃度は15mg/mL、pH値は9.2〜9.6の範囲内、有効緩衝剤濃度は25mMであった。クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)を含有する陽性血液培養サンプルは、実施例10の方法に従って調製された。続いて、遠心分離は、さまざまな回数の洗浄サイクルを利用して陽性血液培養サンプルに対して以下の実施例12に提供される方法に従って実施された。サスペンジョンの細菌細胞は、実施例16の手順に従って同定するためにMALDI(VITEK(登録商標)MS機器)により試験された。結果は図21Dに提示される。
観測されるように、細胞サスペンジョンの使用結果は、少なくとも2回の洗浄サイクルを利用したときに高信頼レベルの同定を提供した。所与の処理条件セット(たとえば、1回の洗浄当たりの具体的希釈因子例、タイプ3血液ライシス試薬の具体的組成例、具体的血液培養ボトル配合物例、陽性血液培養サンプルの具体的体積例、タイプ3血液ライシス試薬による陽性血液培養サンプルの具体的希釈例、及び質量分析データに基づいて同定を実施するための具体的分析方法例)では、MALDIを介して同定を実施するために少なくとも2回の洗浄工程が必要であることが、これらの結果から実証される。しかしながら、他の場合には洗浄工程の所要の回数は異なりうるとともに2回超又は未満でありうることが理解されよう。さらに、以上に述べたように、本方法例は、遠心ベース分離及び他の分離モダリティーに限定することが意図されるものではなく、たとえば、代替的に、濾過、免疫磁気分離、及びマイクロ流体ベース分離が利用されうる。
以上に例示されるように、タイプ3血液ライシス試薬は、十分に血液細胞を消化し、且つタイプ1血液ライシス試薬を使用したときに他の状況で得られる粘性ネットワークの形成を防止することが示されている。したがって、本開示のいくつかの実施形態例によれば、タイプ3血液ライシス試薬は、後続処理でインタクト微生物細胞を抽出するために陽性血液培養サンプルなどの血液培養サンプルの処理に利用されうる。
本明細書に提供される例を考慮して、血液ライシス試薬の多種多様な組成例並びに血液細胞及び/又は他の真核細胞の選択的ライシスを実施する方法が次に開示される。一実施形態例では、サンプル中の1つ以上の微生物細胞のインタクト性を保存しつつ、サンプル中の血液細胞及び/又は他の真核細胞の選択的ライシスを実施する方法は、サンプルと、サポニンとSPSとアルカリ性緩衝剤と非イオン性界面活性剤とを含有する血液ライシス試薬と、を接触させることと、サンプルと血液ライシス試薬とを混合することと、サンプル中の血液及び/又は真核細胞のライシスを達成する十分な時間にわたり混合物をインキュベートすることと、微生物細胞を分離することと、により、実施されうる。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後のサポニン濃度が3〜60mg/mlにあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中のサポニン濃度は、10〜30mg/mlの範囲内でありうる。サポニンの好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びにサンプルのタイプ及びサンプルの量に依存して変化しうることが理解されよう。好適なサポニン濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼすサポニン濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後のSPS濃度が1.5〜50mg/mlにあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中のSPS濃度は、5〜20mg/mlの範囲内でありうる。SPSの好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びにサンプルのタイプ及びサンプルの量に依存して変化しうることが理解されよう。好適なSPS濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼすSPS濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後の非イオン性界面活性剤濃度が0〜3%w/vにあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中の非イオン性界面活性剤の濃度は、0.5〜2%の範囲内でありうる。非イオン性界面活性剤の好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、サンプルのタイプ及びサンプルの量に依存して変化しうることが理解されよう。好適な非イオン性界面活性剤濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼす非イオン性界面活性剤濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後のpHが7.8〜10の範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物のpHは、8.2〜9.5の範囲内でありうる。他の実施形態例では、最終混合物のpHは、10、9.9、9.8、9.7、9.6、又は9.5の上限pH値により境界付けられる、且つ8.0、8.2、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、及び9.0の下限pH値により境界付けられる、範囲内にありうる。いくつかの実施形態例では、緩衝剤濃度は、有効緩衝剤濃度が10〜300mMの範囲内にあるように選択されうる。他の実施形態例では、緩衝剤濃度は、有効緩衝剤濃度が30〜100mMの範囲内にあるように選択されうる。
好適なpHは、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物の有効緩衝剤濃度、サンプルとの混合前の血液ライシス試薬の初期pH、サンプルのタイプ及びサンプルの量に依存して変化しうることが理解されよう。
いくつかの実施形態例では、血液ライシス試薬は、9〜11(又はたとえば9.5〜10.5)のpHを有しうるとともに、緩衝剤濃度(又は緩衝剤能)は、血液ライシス試薬とサンプルとの混合後のpHが、10未満、9.9未満、9.8未満、9.7未満、9.6未満、又は9.5未満、且つ8.2超、8.4超、8.5超、8.6超、8.7超、8.8超、8.9超、又は9.0超の最終pHに減少するように選択されうる。理論により限定することを意図するものではないが、9〜11の範囲内の初期pHは、血液細胞の効率的消化を実施するのに有益でありうるとはいえ、かかる高pHが血液細胞のライシス後に維持されると、得られる高pHは、いくつかの微生物細胞(たとえば、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)など)のインタクト性に悪影響を及ぼす可能性があると、本発明者らは推測する。
好適な最終pH及び/又は有効緩衝剤濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼすpH及び/又は緩衝剤濃度範囲の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、水中油型乳化剤として適切な非イオン性界面活性剤を含有するポリジメチルシロキサンのエマルジョンを含む消泡剤をさらに含みうるとともに、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後の消泡剤エマルジョンの濃度が0.005〜1%(v/w)の範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中の消泡剤エマルジョンの濃度は、0.01〜0.05%の範囲内でありうる。消泡剤の好適な濃度は、限定されるものではないが、血液ライシス試薬の他の成分の濃度、サンプルのタイプ、サンプルの量などの1つ以上の因子に依存して変化しうることが理解されよう。好適な消泡剤の組成及び濃度は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、混合及び/又は分離プロセスを含む自動操作時に発生する泡の量並びに流体の送達に必要な圧力に及ぼす消泡剤の濃度及び組成の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の条件セットに対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、サンプル中の1つ以上の微生物細胞のインタクト性を保存しつつ、サンプル中の血液細胞及び/又は他の真核細胞の選択的ライシスを実施する方法は、サンプルと、サポニンとSPSとアルカリ性緩衝剤とを含有する血液ライシス試薬と、を接触させることと(たとえば、濃度例及びpH例は、以上の範囲例に従う)、サンプルと血液ライシス試薬とを混合することと、微生物細胞を分離することと、により実施されうる。非イオン性界面活性剤が含まれることは多くの用途に有益であるが、残留デブリの存在の影響を受けにくい用途や下流の分子増幅を含まない用途などのいくつかの用途では、選択的ライシスを達成するのに必要ではない。
一実施形態例では、サンプル中の1つ以上の微生物細胞のインタクト性を保存しつつ、サンプル中の血液細胞及び/又は他の真核細胞の選択的ライシスを実施する方法は、サンプルと、サポニンとアルカリ性緩衝剤とを含有する血液ライシス試薬と、を接触させることと(たとえば、濃度例及びpH例は、以上の範囲例に従う)、サンプルと血液ライシス試薬とを混合することと、微生物細胞を分離することと、により実施されうる。非イオン性界面活性剤及びSPSが含まれることは多くの用途に有益であるが、これらの成分は、残留デブリの存在の影響を受けにくい用途や下流の分子増幅を含まない用途などのいくつかの用途では、選択的ライシスを達成するのに必要ではない。
以上に開示される方法例の多くは、血液ライシス試薬とサンプルとの混合物の形成後、微生物細胞の分離を含むが、他の実施形態例では、混合物から微生物細胞を分離することなく、混合物を用いて核酸抽出を実施しうることが理解されよう。たとえば、混合物は、混合物から哺乳動物核酸を除去するために、抽出に好適な固形相、たとえば、シリカで被覆された磁気ビーズや陰イオン交換樹脂などに接触されうるとともに、次いで、得られた混合物は、微生物細胞がライシスされるように、ライシス工程(たとえば、化学的、機械的、電気的、又は超音波)に付されうる。次いで、得られたライセートは、微生物細胞により放出された核酸の抽出に好適な固形相に接触されうる。
以上に説明したように、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬のサポニン成分が、血液ライシス試薬のアルカリ性成分から分離された酸性環境に貯蔵されるように、個別貯蔵及び使用前混合が可能な2つ以上の試薬として提供されうる。一実現形態例では、最終血液ライシス試薬を形成するために混合される試薬の1つ以上は、固形相で貯蔵されうる。
以上の例は、血液細胞及び/又は他の真核細胞のライシスと、それに続く微生物細胞の分離と、逆転写rRNA増幅を介する微生物細胞の後続検出及び/又は同定と、を実施するための本タイプ3血液ライシス試薬の有用性を開示しているが、これは本明細書で企図される試薬組成物及び方法の一用途例にすぎないことが理解されよう。微生物細胞の後続(下流)検出を含む用途では、核酸の検出、たとえば、限定されるものではないが、DNA、rRNA、mRNA、及びtmRNAの検出は、増幅法(たとえば、限定されるものではないが、PCR、逆転写PCR、及び等温増幅法)、又は非増幅法(たとえば、ハイブリダイゼーションアッセイ及びシーケンシング)、又はそれらの組合せを介して実施されうることが理解されよう。他の方法例では、検出は、微生物細胞表面との親和性反応、質量分析、赤外分光法、顕微鏡法、フローサイトメトリーを介して、及び/又は微生物細胞に関連付けられる揮発性有機物の検出(わずかではあるが代替検出モダリティーの例を挙げると)を介して、実施されうる。
以上に記載の実施形態例の多くは、全血サンプルの処理を含む。たとえば、以上に記載したように、血液ライシス試薬の組成は、微生物細胞のインタクト性を保存しつつ、且つ全血サンプルと血液ライシス試薬との混合物の遠心分離時又は濾過時に血液デブリの可視形成を回避しつつ、1mlを超えるさらには5mlを超える全血体積を処理できるように、続いて後続洗浄工程を行えるように、選択可能である。しかしながら、本明細書に記載の方法は、多種多様なサンプルタイプ、たとえば、限定されるものではないが、リンパ液、脳脊髄液、尿、痰、唾液、並びにホモジナイズサスペンジョンたとえば糞便及びホモジナイズ組織サンプルに適合化されうることが理解されよう。
次に、陽性血液培養サンプルや中間培養サンプルなどの血液培養サンプルの処理に対して、例及び限定されるものではないが組成範囲を以下に提供する。以下の濃度範囲例は、後続MALDI遂行を促進するうえでの好適性に基づいて決定されているが、以下に提供される濃度範囲及びその変化形態は、他の下流アッセイ又は下流プロセスを実施するときに血液細胞ライシスを実施するために利用されうることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後のサポニン濃度が0.75〜60mg/mlにあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中のサポニン濃度は、2.5〜30mg/mlの範囲内でありうる。サポニンの好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びに血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度に依存して変化しうることが理解されよう。好適なサポニン濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼすサポニン濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後のSPSの濃度が0.35〜50mg/mlの間にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中のSPS濃度は、1.25〜20mg/mlの範囲内でありうる。SPSの好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びに血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度に依存して変化しうることが理解されよう。好適なSPS濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼすSPS濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後の非イオン性界面活性剤の濃度が0〜3%w/vの範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中の非イオン性界面活性剤の濃度は、0.16〜2%の範囲内でありうる。非イオン性界面活性剤の好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びに血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度に依存して変化しうることが理解されよう。好適な非イオン性界面活性剤濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼす非イオン性界面活性剤濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後のpHが7.8〜10の範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物のpHは、8.2〜9.5の範囲内でありうる。他の実施形態例では、最終混合物のpHは、10、9.9、9.8、9.7、9.6、又は9.5の上限pH値により境界付けられる、且つ8.0、8.2、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、及び9.0の下限pH値により境界付けられる、範囲内にありうる。いくつかの実施形態例では、緩衝剤濃度は、有効緩衝剤濃度が2.5〜500mMの範囲内にあるように選択されうる。他の実施形態例では、緩衝剤濃度は、有効緩衝剤濃度が5〜250mMの範囲内にあるように選択されうる。
好適なpHは、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物の有効緩衝剤濃度、血液培養サンプルとの混合前の血液ライシス試薬の初期pH、血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度に依存して変化しうることが理解されよう。
いくつかの実施形態例では、血液ライシス試薬は、9〜11(又はたとえば9.5〜10.5)のpHを有しうるとともに、緩衝剤濃度(又は緩衝剤能)は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとの混合後のpHが、10未満、9.9未満、9.8未満、9.7未満、9.6未満、又は9.5未満、且つ8.2超、8.4超、8.5超、8.6超、8.7超、8.8超、8.9超の、又は9.0超の最終pHに減少するように選択されうる。理論により限定することを意図するものではないが、9〜11の範囲内の初期pHは、血液細胞の効率的消化を実施するのに有益でありうるとはいえ、かかる高pHが血液細胞のライシス後に維持されると、得られる高pHは、いくつかの微生物細胞(たとえば、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)など)のインタクト性に悪影響を及ぼす可能性があると、本発明者らは推測する。
好適な最終pH及び/又は有効緩衝剤濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼすpH及び/又は緩衝剤濃度範囲の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、水中油型乳化剤として適切な非イオン性界面活性剤を含有するポリジメチルシロキサンのエマルジョンを含む消泡剤をさらに含みうるとともに、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後の消泡剤エマルジョンの濃度が0.005〜1%(v/w)又はたとえば0.05〜0.2%(v/w)の範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中の消泡剤エマルジョンの濃度は、0.01〜0.05%の範囲内でありうる。消泡剤の好適な濃度は、限定されるものではないが、血液ライシス試薬の他の成分の濃度、血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度などの1つ以上の因子に依存して変化しうることが理解されよう。好適な消泡剤の組成及び濃度は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、混合及び/又は分離プロセスを含む自動操作時に発生する泡の量並びに流体の送達に必要な圧力に及ぼす消泡剤の濃度及び組成の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の条件セットに対して決定可能であることが理解されよう。
タイプ3血液ライシス試薬を用いた生存微生物細胞の回収
サンプル中の血液細胞の有効ライシスを促進しインタクト微生物細胞の自動分離をサポートするタイプ3血液ライシス試薬の上述した成功を考慮して、本発明者らは、タイプ3ライシス試薬との接触後に分離された微生物細胞の生存能を調べた。微生物細胞同定のための核酸検出やMALDIなどを含む用途は、インタクト核酸又はタンパク質を有する分離微生物細胞を分離することを必要としうるにすぎないが、他の用途、たとえば、分離微生物細胞の後続成長を含む用途(たとえば、抗微生物剤感受性試験又は従来の成長ベース同定法)は、分離微生物細胞が生存可能(すなわち細胞分裂可能)であることを必要とする。
本発明者らは、最初に、血液細胞を含有するサンプルからの生存微生物細胞の分離にタイプ1血液ライシス試薬を使用する実現可能性を検討した。タイプ1血液ライシス試薬は、サポニンとSPSとを利用する。サポニンは、微生物細胞生存能を保持することが知られているが、図5Aに示されてある、サポニンとSPSとを含むが、非イオン性界面活性剤やアルカリ性pH緩衝剤を含まないタイプ1血液ライシス試薬組成物は、おおよそ1mL超の体積を有する全血サンプルでライシス血液細胞を十分に消化することができず、自動分離(たとえば、遠心分離及び濾過)時に問題を起こす可能性のある血液細胞デブリの存在をもたらす。こうした理由から、タイプ1血液ライシス試薬は、生存微生物細胞の自動血液細胞ライシス及び自動分離を含む用途には無効であるとみなされた。
次いで、本発明者らは、生存微生物細胞の自動血液細胞ライシス及び自動分離を含む用途でのタイプ2血液ライシス試薬の実現可能性を検討した。タイプ2血液ライシス試薬は、広範にわたる全血体積で血液残渣を消化可能であることが示されているが(たとえば、図5Bを参照されたい)、かかる試薬は、サポニンの保護寄与の不在下で、広範にわたる微生物細胞種で生存能の損失をもたらす。
したがって、本発明者らは、タイプ3血液ライシス試薬が血液細胞の自動ライシス及び生存微生物細胞の後続自動分離に最も好適であると結論付けた。全血サンプルを処理したときのグラム陽性菌種及びグラム陰性菌種の生存能に及ぼすタイプ3血液ライシス試薬の各種成分の影響を調べるために、一連の実験を実施した。また、タイプ3血液ライシス試薬を用いた血液培養サンプルからの生存微生物細胞の抽出を実証するために、追加の実験を実施した。これらの実験を以下に詳細に記載し、生存微生物細胞の自動分離に対するタイプ3血液ライシス試薬の好適性を実証する。
全血中のスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の生存能に及ぼすタイプ2及びタイプ3血液ライシス試薬暴露の影響の実験研究
第1の実験では、タイプ2及びタイプ3血液ライシス試薬への細胞の暴露後のスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)細胞の回収を評価した。このグラム陽性細菌は、Triton X−100及びアルカリ性pHにより与えられより過酷な条件に耐えて生きると予想される。そのため、本実験では、タイプ2及びタイプ3の両方の試薬を評価した。
タイプ3血液ライシス試薬溶液例は、20mlの体積と、20mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度と10のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、40mg/mlのSPS濃度と60mg/mlのサポニン濃度と3%w/vのTriton X−100とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は12.5mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0.94%w/v、pH値はおおよそで9.5、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。
タイプ2血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、20mg/mlのSPS濃度と、1.5%w/vのTriton X−100濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、200mMの緩衝剤濃度と10のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、40mg/mlのSPS濃度と3%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された、あった。5mlの血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は12.5mg/mL、Triton X−100濃度は0.94%w/v、pH値は9.2〜9.5の範囲内、及び有効緩衝剤濃度は62.5mMであった。
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を含有するスパイク全血サンプル又はスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、それぞれ、実施例2及び3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離は、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプル(タイプ3及びタイプ2の両方の血液ライシス試薬を用いて)に対して、それぞれ、以下の実施例13及び14に提供される方法に従って実施された。細胞サスペンジョンは、5%ヒツジ血液を含むトリプシン大豆寒天上にプレーティングされ、37℃で一晩インキュベートされた。
図22Aに提示される結果は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)細胞の生存能がタイプ2血液ライシス試薬により損なわれることを明確に実証する。一方、タイプ3血液ライシス試薬中のサポニンの存在は、回収スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)細胞の生存能を保持する。
全血中の選択されたグラム陰性菌微生物細胞の生存能に及ぼすタイプ3血液ライシス試薬暴露の影響の実験研究
以上の例のグラム陽性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)細菌細胞とは対照的に、グラム陰性細菌細胞は、タイプ3血液ライシス試薬中のTriton X−100及びアルカリ性pHの存在に対する耐性が低いと予想される。それゆえ、実験は、タイプ3血液ライシス試薬のみを用いて実施された。実験は、タイプ3血液ライシス試薬に対するグラム陰性微生物細胞の生存能に及ぼすさまざまな濃度の炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤及びTriton X−100の影響を調べるために実施された。
タイプ3血液ライシス試薬溶液例は、20mlの体積と、20mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、0又は0.75%w/vのTriton X−100濃度と、50mM又は100mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、100mM又は200mMの緩衝剤濃度と10のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、40mg/mlのSPS濃度と60mg/mlのサポニン濃度と0%又は1.5%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は12.5mg/mLだった。サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0%又は0.47%w/v、pH値は9.2〜9.5の範囲内、及び有効緩衝剤濃度は31.25又は62.5mMであった。
プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)を含有するスパイク全血サンプル又はスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、それぞれ、実施例2及び3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離は、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルでそれぞれ以下の実施例13及び14に提供される方法に従って実施された。細胞サスペンジョンは、5%ヒツジ血液を含むトリプシン大豆寒天上にプレーティングされ、37℃で一晩インキュベートされた。
図22Bに提示される結果は、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)細胞の生存能がTriton X−100及び/又はアルカリ性緩衝剤の濃度に依存しうることを示唆する。実際に、図に示されるように、最高プレートカウント(つまり最高生存能)は、最低有効緩衝剤濃度(50mM)及び最低Triton X−100濃度(0%)の場合に観測された。
他の一実験は、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)細胞の生存能に及ぼすさまざまな濃度の炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤及びTriton X−100の影響を調べるために実施された。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、20mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、0又は0.375%w/vのTriton X−100濃度と、50mM、75mM、又は100mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、100mM、150mM、又は200mMの緩衝剤濃度と10のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、40mg/mlのSPS濃度と60mg/mlのサポニン濃度と0%又は0.75%w/vのTriton X−100とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は12.5mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、Triton X−100濃度は0%又は0.23%w/v、pH値は9.2〜9.5の範囲内、及び有効緩衝剤濃度は31.25mM、47mM、又は62.5mMであった。
シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)を含有するスパイク全血サンプル又はスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、それぞれ、実施例2及び3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離は、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルでそれぞれ以下の実施例13及び14に提供される方法に従って実施された。細胞サスペンジョンは、5%ヒツジ血液を含むトリプシン大豆寒天上にプレーティングされ、37℃で一晩インキュベートされた。
シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)細胞の生存能もまた、Triton X−100の濃度に依存するとともに、アルカリ性緩衝剤の濃度にも依存すると思われることが、図22Cに提示される結果から示唆される。微生物細胞の分離後生存能は、選択されたグラム陰性微生物細胞ではタイプ3ライシス試薬の非イオン性界面活性剤濃度及び緩衝剤濃度に逆相関すると思われることが、先行実験から示唆される。実際に、改善された分離後生存能は、有効アルカリ性濃度及び非イオン性界面活性剤濃度が十分に低いときに得られうることが、結果から示唆される。アルカリ性緩衝剤及び/又は非イオン性界面活性剤の濃度を低下させて分離後微生物細胞生存能に及ぼすタイプ3ライシス試薬組成物の影響をさらに調べるために、以下の実験を設計した。
生存微生物細胞の回収に及ぼすタイプ3血液ライシス試薬中の非イオン性界面活性剤不在の影響の実験研究
3mlの体積の全血サンプルの処理で回収微生物細胞の生存能に及ぼすタイプ3ライシス試薬中の非イオン性界面活性剤不在の影響を調べるために、実験を実施した。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、20mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、50mM又は25mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する血液ライシス試薬溶液が得られるように、100mM又は50mMの緩衝剤濃度と10のpHとで調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、40mg/mlのSPS濃度と60mg/mlのサポニン濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとを混合した後、SPS濃度は12.5mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、pH値は9.2〜9.5の範囲内、及び有効緩衝剤濃度は31.25mM又は15.6mMであった。シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の細胞を含有するスパイク全血サンプル及びスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルは、それぞれ、実施例2及び3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離は、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル及びスパイク全血サンプルでそれぞれ実施例13及び14に提供される方法に従って実施された。細胞サスペンジョンは、5%ヒツジ血液を含むトリプシン大豆寒天上にプレーティングされ、37℃で一晩インキュベートされた。
混合後有効緩衝剤濃度が25mM及び50mMのとき、非イオン性界面活性剤の不在のライシス試薬で、すべての微生物細胞種の微生物細胞の生存回収は、それぞれ80%超及び60%超であったことが、図22Dに提示される結果から示される。したがって、この実験研究で図22B及び22Cに示される結果が確認されたことから、生存微生物細胞を抽出する目的で中程度(たとえば3ml)の体積を有する全血サンプルの血液成分のライシスにタイプ3ライシス試薬を使用するとき、非イオン性界面活性剤の不在下(又は低濃度の存在下)でライシス緩衝液を調製することにより、好適な生存細胞回収値を得ることが可能であり、グラム陽性種及びグラム陰性種での回収は、有効緩衝剤濃度が低いほど増加することが示唆される。
生存グラム陰性微生物細胞の回収に及ぼすタイプ3血液ライシス試薬中のより低い緩衝剤濃度の影響の実験研究
生存微生物細胞の回収は、多くの場合、ライシス試薬の有効緩衝剤濃度を減少させたときに増加することが、先行研究から実証された。サンプル−試薬混合物の粘度は、有効緩衝剤濃度を減少させるにつれて増加することが、その本発明者らにより観測された。本研究は、生存細菌細胞の回収に及ぼすより低い(<50mM)有効緩衝剤濃度の影響を調べるために実施された。
タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、20mg/mlのSPS濃度と、30mg/mlのサポニン濃度と、50mM、25mM、又は10mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、100mM、50mM、又は20mMの緩衝剤濃度と10のpHとで調製された10mLの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、40mg/mlのSPS濃度と60mg/mlのサポニン濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの血液ライシス試薬と3mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は12.5mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、pH値は9.2〜9.5の範囲内、有効緩衝剤濃度は31.25mM又は15.6mM又は6.25mMであった。プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)細胞を含有する全血サンプル及びスパイク対照は、それぞれ、実施例2及び3の方法に従って調製された。続いて、遠心分離は、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルでは実施例13に提供される方法に従って実施された。血液ライシス試薬及びスパイク全血サンプルは、対流混合により混合され、続いて遠心分離は、以下の実施例15に提供される方法に従って実施された。細胞サスペンジョンは、5%ヒツジ血液を含むトリプシン大豆寒天上にプレーティングされ、37℃で一晩インキュベートされた。
プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)細胞は、6.25mMに低下させた有効炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度で十分に回収されたことが、図23Aに提示される結果から示される。
この低い有効炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤濃度がスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)細胞の回収に依然として適切であることを例示するために、6.25mM、15.5mM、及び31.25mMの有効緩衝剤濃度でスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)細胞を用いて以上の実験を繰り返した。結果は図23Bに提示される。観測されるように、有効緩衝剤濃度を減少させるにつれて、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)細胞の回収のわずかな低下が見られる。理論により限定することを意図するものではないが、より低い有効緩衝剤濃度から生じる生成血液−試薬混合物の粘度増加は、沈降速度の低減に起因して微生物細胞の遠心分離の有効性を損ないうる。したがって、有効緩衝剤濃度の減少により微生物細胞の生存能は影響を受けないかもしれないが、遠心分離時の沈降速度が低くなると、いくらかの生存微生物細胞が上清に残留して洗浄操作時に偶発的に除去されるので、生存微生物細胞の回収の低減をもたらしうる。
タイプ3血液ライシス試薬での生存微生物細胞の回収に及ぼす高全血体積(>3ml)の影響の実験研究
本実験は、タイプ3ライシス試薬への暴露後の微生物細胞の回収に及ぼすより大きな(たとえば、>3ml、5ml)全血体積の影響を調べるために実施された。大きなサンプル体積の場合によく遭遇する溶血血液のより高い粘度は、高回収を達成する能力に影響を及ぼしうるという仮説が立てられた。タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、20mg/mlのSPS濃度と、35mg/mlのサポニン濃度と、0.15%又は0%w/vのTriton X−100濃度と、50mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、pH10、100mMの緩衝剤濃度で調製された炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、10mL、40mg/mlのSPS濃度と70mg/mlのサポニン濃度と0.3%又は0%w/vのTriton X−100濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。5mlの血液ライシス試薬と5mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は10mg/mL、サポニン濃度は17.5mg/mL、Triton濃度は0.075%又は0%w/v、pH値は9.2〜9.5の範囲内、及び有効緩衝剤濃度は25mMであった。
プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、又はスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の細胞を含有するスパイク全血サンプル及びスパイクリン酸塩緩衝剤サンプル並びにスパイク対照は、それぞれ、実施例2及び3の方法に従って調製された。続いて、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルで実施例13に提供される方法に従って遠心分離が実施されたが、例外として5mLの体積のサンプルが使用され、9.9mLの上清が除去された。血液ライシス試薬及びスパイク全血サンプルは、対流混合により混合され、続いて、以下の実施例15に提供される方法に従って遠心分離が実施されたが、例外として5mLの体積のサンプルが使用された。細胞サスペンジョンは、5%ヒツジ血液を含むトリプシン大豆寒天上にプレーティングされ、37℃で一晩インキュベートされた。結果は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、及びシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)に対して、それぞれ、図23C、23D、及び23Eに提示される。
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)を含有する5ml全血サンプルを処理する場合、分離後生存微生物細胞の回収は、試験された0〜0.15%w/vの低濃度範囲のTriton X−100の濃度に有意に依存しないと思われることが、図23C及び23Dにより実証される。
しかしながら、図23Eに観測されるように、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)細胞の回収は、0%Triton X−100の場合に低かった。この観測は、臨床単離物から得られたシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)細胞のさまざまな株を用いて実験を繰り返すことにより検証された。図23Fに提示される結果は、図23Eのように、少量のTriton X−100の存在が生存細胞の回収を改善することを示唆する。理論により限定することを意図するものではないが、この低回収は、こうした大きな(5mL)全血サンプルサイズでの溶血血液の高い観測粘度から生じると考えられる。特定的には、微生物細胞の生存能は、Triton X−100が不在のときにライシス試薬との接触により有意に損なわれることはないが、得られる血液−試薬混合物の高粘度は、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)細胞の有効遠心分離を妨害するので、本実験で調べられた他の細菌種よりも無効遠心分離を受けやすいのではないかと考えられる。それにもかかわらず、たとえ低濃度(0.15%w/v)のTriton X−100(すなわち、図22Cで観測される回収損失を回避するのに十分な程度に低い濃度)の添加であっても、粘度を有意に低減しシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)の高生存細胞回収を可能にするのに十分であることが、図23Eに示される結果から実証される。
高体積の全血を含む他の一例では、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)細胞の回収に及ぼす遠心分離時間の影響が調べられた。5mLの体積のタイプ3血液ライシス試薬及び5mLの全血サンプルは、実施例15の方法を用いて対流混合された。得られた混合物は、17.5mg/mLのサポニン濃度と、10mg/mLのSPS濃度と、0.075%のTriton X−100濃度と、9.2〜9.5の範囲内のpH値と、25mMの有効緩衝剤濃度と、を有していた(最終混合物で)。第1の沈降工程時、5、10、及び15分間の3つの異なる遠心分離時間が利用された。しかしながら、後続洗浄操作時の遠心分離時間は、2分間に維持された。シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)細胞を含有するスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルもまた、実施例3の方法に従って調製された。続いて、スパイク対照としてのスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルで実施例13に提供される方法に従って遠心分離が実施されたが、例外として5mLの体積のサンプルが使用され、9.9mLの上清が除去された。回収サスペンジョンをプレーティングした後の寒天プレートの写真は、図23Gに提示される。3つの遠心分離時間に対応する回収は、それぞれ、39%、83%、及び88%であった。図23E(及び図23F)に見られる生存能の見掛けの低減は、粘度の増加がひいては沈降速度の減少を引き起こすことに起因する遠心分離時の回収損失が主な原因でありうるという仮説は、これらの結果から支持される。図23Gに示される結果によれば、全血サンプルとタイプ3血液ライシス緩衝剤との接触後の遠心分離を介する生存シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)細胞の回収は、遠心分離時間の増加により(及び/又は遠心力の増加により、たとえば、回転速度及び/又はラジアル分離の増加を介して)増加させうる。
以上に提示される結果を考慮して、タイプ3ライシス試薬への暴露後の生存微生物細胞の自動分離を含むいくつかの用途では、とくにおおよそ5ml以上の体積を有する全血の処理の場合には、多種多様な微生物種で生存微生物細胞の自動分離を促進するために、微生物細胞生存能(タイプ3血液ライシス試薬への暴露後)と、残留デブリの十分な消化と、粘度と、のバランスのとれたタイプ3ライシス試薬組成物が選択されうる。
分離微生物細胞の後続成長を介して形成されるコロニーは、下流診断試験に使用されうることに留意されたい。たとえば、図23C、23D、及び23Eに示されるコロニーは、実施例16に記載の方法に従ってマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)により試験された。3つのすべての種の細菌細胞は、99.9%の信頼レベルでMALDIを介して同定された。
先行結果は、全血サンプルからの生存微生物細胞の抽出の成功を実証したが、タイプ3血液ライシス試薬を含む本明細書に記載の方法例及び組成物例は、多種多様なサンプルタイプに拡張されうることが理解されよう。たとえば、タイプ3血液ライシス試薬は、陽性血液培養サンプルなどの血液培養サンプルからの生存微生物細胞の抽出に利用されうる。それゆえ、タイプ3血液ライシス試薬は、継代培養を必要とすることなく血液培養サンプルからの表現型抗微生物剤感受性試験の直接実施を促進するために利用可能である。
生存微生物細胞抽出並びに後続の微生物同定及び抗微生物剤感受性試験のためのタイプ3血液ライシス試薬による陽性血液培養サンプル処理の実験実証
陽性血液培養サンプルの処理により得られる細胞サスペンジョンは、微生物細胞のアイデンティティー及び抗微生物剤感受性の一方又は両方の決定に好適な試験などの下流(後続)試験に付されうる。限定されるものではないが、血液培養サンプルから分離された生存微生物細胞で後続試験(アッセイ)を実施する例を例示するために、タイプ3血液ライシス試薬との接触を介して陽性血液培養サンプルを処理し、続いて遠心分離を実施し、そして成長ベース微生物同定(ID)、抗微生物剤感受性(AST)、又はVITEK(登録商標)MS機器によるMALDI−TOF同定のために、得られた生存微生物細胞サスペンジョンをVITEK(登録商標)2により試験した。
タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、37.5mg/mlのサポニン濃度と、100mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、pH10、200mMの緩衝剤濃度で調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と75mg/mlのサポニン濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。1mlの血液ライシス試薬と1mlの陽性血液培養サンプルとを混合した後、SPS濃度は7.5mg/mL、サポニン濃度は18.75mg/mL、pH値は9.2〜9.5の範囲内、及び有効緩衝剤濃度は50mMであった。
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、及びクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)でスパイクされた陽性血液培養サンプルは、実施例10の方法に従って調製された。続いて、遠心分離は、陽性血液培養サンプルで以下の実施例12に提供される方法に従って実施された。サスペンジョン中の微生物細胞は、実施例16に記載の方法としてMALDI(VITEK−MS−ID)と、実施例17に記載の方法として代謝ベース同定(VITEK2−ID)及びブロスマイクロ希釈ベース抗生物質感受性試験(VITEK2−AST)と、により、微生物細胞同定のために試験された。いずれの場合も、参照陽性対照もまた、実施例12に記載されるように陽性血液培養物の直接プレーティングから得られるコロニー成長を用いて実施例16及び17により試験された。
結果は、図24A〜24Dに提示されており、遠心分離微生物細胞の直接処理に基づいて得られた結果と陽性対照コロニーを用いて得られた結果との間の非常に高い一致を実証する。4つすべての微生物細胞のMALDI同定結果は、4つすべての微生物細胞種にわたり100%適正ID及び99.4%超の同定信頼度で非常に高い一致であった。同様に、4つすべての微生物細胞のVITEK2システムの代謝同定結果は、4つすべての微生物細胞種にわたり100%適正ID及び95%超の同定確率で非常に高い一致であった。VITEK2システム(継代培養の不在下での陽性血液培養物からの直接ASTに基づく)を用いたAST結果もまた、4つすべての微生物細胞種にわたり少なくとも94%S/I/Rカテゴリー一致で陽性対照コロニーを用いて得られた結果との優れた一致を実証した。したがって、これらの結果は、陽性血液培養物からのID及びASTでこうした直接法例と従来のコロニーベース法例との間の強い臨床的同等性を示唆する。
生存微生物細胞回収並びに後続の微生物同定及び抗微生物剤感受性試験のためのタイプ3血液ライシス試薬による全血サンプル処理の実験実証
全血から回収され続いて固相成長培地上でコロニー形成された生存細胞は、微生物細胞のアイデンティティー及び抗微生物剤感受性の決定の一方又は両方に好適な試験などの下流(後続)試験に付されうる。限定されるものではないが、全血サンプルから回収された生存微生物細胞で後続試験(アッセイ)を実施する例を例示するために、(i)8種のグラム陽性細菌、(ii)8種のグラム陰性細菌、及び(iii)4種の真菌の各々を3株ずつ(2つのATCC株及び1つの臨床単離物)用いて多種多様な細菌種及び真菌種の低濃度スパイク全血サンプルを調製した。スパイク全血サンプルとタイプ3血液ライシス試薬とを混合し、サスペンジョン状態で生存細胞を回収するために遠心分離を実施した。回収細胞サスペンジョンを固相成長培地上に接種し、コロニー成長形成のためにインキュベートした。成長ベース微生物同定(ID)及び抗微生物剤感受性(AST)又はVITEK(登録商標)MS機器によるMALDI−TOF同定のために、得られたコロニーをVITEK(登録商標)2により試験した。
タイプ3血液ライシス試薬溶液は、20mlの体積と、15mg/mlのSPS濃度と、75mg/mlのサポニン濃度と、50mMの緩衝剤濃度と、9.5〜10の範囲内のpH値と、を有する試薬溶液が得られるように、pH10、100mMの緩衝剤濃度で調製された10mlの炭酸塩−重炭酸塩緩衝剤溶液と、30mg/mlのSPS濃度と150mg/mlのサポニン濃度とを有する10mlの溶液と、を組み合わせることにより調製された。4mlの血液ライシス試薬と4mlの全血サンプルとの混合後、SPS濃度は7.5mg/mL、サポニン濃度は37.5mg/mL、pH値は9.2〜95の範囲内、及び有効緩衝剤濃度は25mMであった。
微生物細胞のそれぞれの株を含有する4mlの体積のスパイク全血サンプルは、10CFU/mLの公称濃度で以下の実施例2に従って調製された。続いて、遠心分離は、実施例14に提供される方法に従って実施されたが、例外として4mLの体積のスパイク全血サンプル及び血液ライシス試薬が使用された。細胞サスペンジョンは、5%ヒツジ血液を含むトリプシン大豆寒天上にプレーティングされ、それぞれの種で実施例14に記載のようにインキュベートされた。スパイク対照として、スパイク全血サンプルで使用したのと同一の濃度及び体積の細胞アリコートが、5%ヒツジ血液を含むトリプシン大豆寒天上に直接接種され、実施例14に記載のようにインキュベートされた。可視コロニーが形成されたら、コロニー数がカウントされ、スパイク全血回収対スパイク対照のコロニー数を比較することにより生存細胞回収のパーセントが計算された。スパイク全血サンプルから得られたコロニーは、実施例16に記載の方法に従ってMALDIによる微生物細胞同定(VITEK−MS−ID)並びに実施例17に記載の方法に従って代謝ベース同定(VITEK2−ID)及びブロスマイクロ希釈ベース抗生物質感受性試験(VITEK2−AST)で試験された。いずれの場合も、参照陽性対照もまた、それぞれのスパイク対照から得られたコロニー成長を用いて実施例16及び17により試験された。
生存細胞回収並びにID及びASTアッセイの結果は、それぞれ、24株のグラム陽性細菌、24株のグラム陰性細菌、及び12株の真菌に対して図25にまとめられる。回収結果は、低(<10CFU/ml)接種ですべての病原体型にわたり非常に高い平均生存病原体回収(>90%)を実証する。MALDI同定アッセイは、すべての病原体型にわたり100%適正同定を達成した。VITEK2同定(代謝)アッセイもまた、すべての病原体型にわたり100%適正同定を達成した。ASTアッセイは、すべての病原体型にわたり>97%S/I/Rカテゴリー一致を達成した。これらの結果は、低(臨床関連)力価で全血から生存微生物細胞の効率的回収を行うためのタイプ3血液ライシス試薬の実現可能性と、血液培養から分離された生存微生物細胞に基づいて同定及び抗微生物剤感受性アッセイを実施するためのタイプ3血液ライシス試薬の好適性と、を実証する。
以上に提供された例を考慮して、分離の際に微生物細胞の生存能を保持する血液ライシス試薬の多種多様な組成例と、血液細胞及び/又は他の真核細胞の選択的ライシス並びに生存微生物細胞の抽出を実施する方法と、が以下に開示される。一実施形態例では、サンプル中の1つ以上の微生物細胞の生存能を保存しつつ、全血サンプルなどのサンプル中の血液細胞及び/又は他の真核細胞の選択的ライシスを実施する方法は、サンプルと、サポニンとSPSとアルカリ性緩衝剤と非イオン性界面活性剤とを含有する血液ライシス試薬と、を接触させることと、サンプルと血液ライシス試薬とを混合することと、サンプル中の血液及び/又は真核細胞のライシスを達成する十分な時間にわたり混合物をインキュベートすることと、生存微生物細胞を分離することと、により、実施されうる。
いくつかのグラム陰性細菌種、たとえば、限定されるものではないが、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、及びアシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)の傷害に起因する回収損失を許容可能なとき、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後、サポニン濃度が100mg/mlまで可能、SPSの濃度が50mg/mlまで可能、非イオン性界面活性剤の濃度が3%w/vまで、有効緩衝剤濃度が300mMまで可能、且つ最終混合物のpHが10.5まで可能であるような組成を有しうる。しかしながら、グラム陰性細菌細胞は、より高濃度の非イオン性界面活性剤、より高い緩衝剤濃度、及び最終混合物pHに対して感受性を有しうる。いくつかの実現形態では、混合物の粘度が高すぎて及び血液細胞デブリからの残渣が多すぎて沈降プロセスに悪影響を及ぼしたり流体カートリッジの流体チャネル中の中間流体のフローを妨害したりしないという制約の下で、これらの量を明記された上限範囲未満に維持することが有益でありうる。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後のサポニン濃度が3〜60mg/mlにあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中のサポニン濃度は、10〜30mg/mlの範囲内でありうる。サポニンの好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時に生存能の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びにサンプルのタイプ及びサンプルの量に依存して変化しうることが理解されよう。好適なサポニン濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞生存能に及ぼすサポニン濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後のSPS濃度が1.5〜50mg/mlにあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中のSPS濃度は、5〜20mg/mlの範囲内でありうる。SPSの好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時に生存能の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びにサンプルのタイプ及びサンプルの量に依存して変化しうることが理解されよう。好適なSPS濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞生存能に及ぼすSPS濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後の非イオン性界面活性剤濃度が0〜3%w/vにあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中の非イオン性界面活性剤の濃度は、0.5〜2%の範囲内でありうる。非イオン性界面活性剤の好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時に生存能の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、サンプルのタイプ及びサンプルの量に依存して変化しうることが理解されよう。好適な非イオン性界面活性剤濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞生存能に及ぼす非イオン性界面活性剤濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後のpHが7.8〜10の範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物のpHは、8.2〜9.5の範囲内でありうる。他の実施形態例では、最終混合物のpHは、10、9.9、9.8、9.7、9.6、又は9.5の上限pH値により境界付けられる、且つ8.0、8.2、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、及び9.0の下限pH値により境界付けられる、範囲内にありうる。いくつかの実施形態例では、緩衝剤濃度は、有効緩衝剤濃度が10〜300mMの範囲内にあるように選択されうる。他の実施形態例では、緩衝剤濃度は、有効緩衝剤濃度が30〜100mMの範囲内にあるように選択されうる。
好適なpHは、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時に生存能の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物の有効緩衝剤濃度、サンプルとの混合前の血液ライシス試薬の初期pH、サンプルのタイプ及びサンプルの量に依存して変化しうることが理解されよう。
いくつかの実施形態例では、血液ライシス試薬は、9〜11(又はたとえば9.5〜10.5)のpHを有しうるとともに、緩衝剤濃度(又は緩衝剤能)は、血液ライシス試薬とサンプルとの混合後のpHが、10未満、9.9未満、9.8未満、9.7未満、9.6未満、又は9.5未満、且つ8.2超、8.4超、8.5超、8.6超、8.7超、8.8超、8.9超、又は9.0超の最終pHに減少するように選択されうる。理論により限定することを意図するものではないが、9〜11の範囲内の初期pHは、血液細胞の効率的消化を実施するのに有益でありうるとはいえ、かかる高pHが血液細胞のライシス後に維持されると、得られる高pHは、いくつかの微生物細胞(たとえば、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)など)の生存能に悪影響を及ぼす可能性があると、本発明者らは推測する。
好適な最終pH及び/又は有効緩衝剤濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞生存能に及ぼすpH及び/又は緩衝剤濃度範囲の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、水中油型乳化剤として適切な非イオン性界面活性剤を含有するポリジメチルシロキサンのエマルジョンを含む消泡剤をさらに含みうるとともに、血液ライシス試薬とサンプルとを混合した後の消泡剤エマルジョンの濃度が0.005〜0.5%(v/w)の範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中の消泡剤エマルジョンの濃度は、0.01〜0.05%の範囲内でありうる。消泡剤の好適な濃度は、限定されるものではないが、血液ライシス試薬の他の成分の濃度、サンプルのタイプ、サンプルの量などの1つ以上の因子に依存して変化しうることが理解されよう。好適な消泡剤の組成及び濃度は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、混合及び/又は分離プロセスを含む自動操作時に発生する泡の量並びに流体の送達に必要な圧力に及ぼす消泡剤の濃度及び組成の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の条件セットに対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、サンプル中の1つ以上の微生物細胞の生存能を保存しつつ、サンプル中の血液細胞及び/又は他の真核細胞の選択的ライシスを実施する方法は、サンプルと、サポニンとSPSとアルカリ性緩衝剤とを含有する血液ライシス試薬と、を接触させることと(たとえば、濃度例及びpH例は、以上の範囲例に従う)、サンプルと血液ライシス試薬とを混合することと、微生物細胞を分離することと、により実施されうる。非イオン性界面活性剤が含まれることは多くの用途に有益であるが、残留デブリの存在の影響を受けにくい用途や下流の分子増幅を含まない用途などのいくつかの用途では、選択的ライシスを達成するのに必要ではない。
一実施形態例では、サンプル中の1つ以上の微生物細胞の生存能を保存しつつ、サンプル中の血液細胞及び/又は他の真核細胞の選択的ライシスを実施する方法は、サンプルと、サポニンとアルカリ性緩衝剤とを含有する血液ライシス試薬と、を接触させることと(たとえば、濃度例及びpH例は、以上の範囲例に従う)、サンプルと血液ライシス試薬とを混合することと、微生物細胞を分離することと、により実施されうる。非イオン性界面活性剤及びSPSが含まれることは多くの用途に有益であるが、これらの成分は、残留デブリの存在の影響を受けにくい用途や下流の分子増幅を含まない用途などのいくつかの用途では、選択的ライシスを達成するのに必要ではない。
次に、生存微生物細胞の抽出のために、陽性血液培養サンプルや中間培養サンプルなどの血液培養サンプルの処理に対して、例及び限定されるものではないが組成範囲を以下に提供する。以下の濃度範囲例は、固相成長培地上でのコロニー成長、ブロスマイクロ希釈ベース抗微生物剤感受性試験を促進するうえでの好適性に基づいて決定されたが、以下に提供される濃度範囲及びその変化形態は、生存微生物細胞を利用する他のプロセスを実施するときに血液細胞ライシスを実施するために利用されうることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後のサポニン濃度が0.75〜60mg/mlにあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中のサポニン濃度は、2.5〜30mg/mlの範囲内でありうる。サポニンの好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びに血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度に依存して変化しうることが理解されよう。好適なサポニン濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼすサポニン濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後のSPSの濃度が0.35〜50mg/mlの間にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中のSPS濃度は、1.25〜20mg/mlの範囲内でありうる。SPSの好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びに血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度に依存して変化しうることが理解されよう。好適なSPS濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼすSPS濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後の非イオン性界面活性剤の濃度が0〜3%w/vの範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中の非イオン性界面活性剤の濃度は、0〜2%の範囲内でありうる。非イオン性界面活性剤の好適な濃度は、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物のpH及び/又は有効緩衝剤濃度、並びに血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度に依存して変化しうることが理解されよう。好適な非イオン性界面活性剤濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼす非イオン性界面活性剤濃度の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後のpHが7.8〜10の範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物のpHは、8.2〜9.5の範囲内でありうる。他の実施形態例では、最終混合物のpHは、10、9.9、9.8、9.7、9.6、又は9.5の上限pH値により境界付けられる、且つ8.0、8.2、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、及び9.0の下限pH値により境界付けられる、範囲内にありうる。いくつかの実施形態例では、緩衝剤濃度は、有効緩衝剤濃度が2.5〜300mMの範囲内にあるように選択されうる。他の実施形態例では、緩衝剤濃度は、有効緩衝剤濃度が5〜100mMの範囲内にあるように選択されうる。
好適なpHは、1つ以上の因子、たとえば、限定されるものではないが、分離時にインタクト性の保存が望まれる微生物細胞のタイプ、最終混合物の有効緩衝剤濃度、血液培養サンプルとの混合前の血液ライシス試薬の初期pH、血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度に依存して変化しうることが理解されよう。
いくつかの実施形態例では、血液ライシス試薬は、9〜11(又はたとえば9.5〜10.5)のpHを有しうるとともに、緩衝剤濃度(又は緩衝剤能)は、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとの混合後のpHが、10未満、9.9未満、9.8未満、9.7未満、9.6未満、又は9.5未満、且つ8.2超、8.4超、8.5超、8.6超、8.7超、8.8超、8.9超の、又は9.0超の最終pHに減少するように選択されうる。理論により限定することを意図するものではないが、9〜11の範囲内の初期pHは、血液細胞の効率的消化を実施するのに有益でありうるとはいえ、かかる高pHが血液細胞のライシス後に維持されると、得られる高pHは、いくつかの微生物細胞(たとえば、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)など)のインタクト性に悪影響を及ぼす可能性があると、本発明者らは推測する。
好適な最終pH及び/又は有効緩衝剤濃度範囲は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、血液ライシス効率、残留血液細胞デブリの量、及び微生物細胞インタクト性に及ぼすpH及び/又は緩衝剤濃度範囲の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の設定条件に対して決定可能であることが理解されよう。
一実施形態例では、血液ライシス試薬は、水中油型乳化剤として適切な非イオン性界面活性剤を含有するポリジメチルシロキサンのエマルジョンを含む消泡剤をさらに含みうるとともに、血液ライシス試薬と血液培養サンプルとを混合した後の消泡剤エマルジョンの濃度が0.005〜0.5%(v/w)の範囲内にあるような組成を有しうる。他の実施形態例では、最終混合物中の消泡剤エマルジョンの濃度は、0.01〜0.05%の範囲内でありうる。消泡剤の好適な濃度は、限定されるものではないが、血液ライシス試薬の他の成分の濃度、血液培養サンプル中の微生物細胞の濃度などの1つ以上の因子に依存して変化しうることが理解されよう。好適な消泡剤の組成及び濃度は、1つ以上の性能メトリック、たとえば、限定されるものではないが、混合及び/又は分離プロセスを含む自動操作時に発生する泡の量並びに流体の送達に必要な圧力に及ぼす消泡剤の濃度及び組成の影響を調べるために、本明細書に記載の実験方法に従って、所与の条件セットに対して決定可能であることが理解されよう。
生存及び/又はインタクト微生物細胞の分離を含むタイプ3ライシス試薬の適用例
以上の実施形態例は、血液細胞の選択的ライシスのためにサンプル(たとえば、全血サンプルや血液培養サンプルなどの血液サンプル)とタイプ3血液ライシス試薬とを接触させることと、分離方法、たとえば、限定されるものではないが、遠心分離、濾過、免疫磁気分離、及びマイクロ流体分離を用いた微生物細胞の後続分離と、により生存及び/又はインタクト微生物細胞のサスペンジョンを得た後のタイプ3ライシス試薬の使用のいくつか適用例を例示した。分離微生物細胞の後続処理に関して以上に記載した適用例は、分子増幅アッセイ(微生物細胞のライシスを実施した後)と、生存分離細胞で実施される代謝同定アッセイと、分離生存及び/又はインタクト微生物細胞でのMALDIアッセイと、生存分離細胞で実施される表現型成長ベース抗微生物剤感受性試験アッセイと、を含む。これらの適用例は、アルカリ性溶液中にサポニンとSPSとを含むタイプ3血液ライシス試薬による血液細胞のライシス後の分離微生物細胞の処理を含む可能な用途のサブセットを例示するために提供されることが理解されよう。
本明細書に記載の適用例は、手動法、半自動法、又は全自動法に従って実施されうることが理解されよう。各種用途向けの半自動及び自動のシステム、デバイス、及び方法の具体例が以下に提供される。
いくつかの実施形態例では、全自動且つ閉環境で微生物細胞分離及び後続処理を実施するためにインテグレートカートリッジが利用されうる。たとえば、図3A〜3C又はその変化形態に例示されるように、サンプルとタイプ3血液ライシス試薬との接触と、精製細胞サスペンジョンを得るための微生物細胞の分離と、後続のサンプル調製及びアッセイ工程(たとえば、電気的ライシス及び逆転写PCR)の実施と、を含むサンプルの全自動処理のためにインテグレートカートリッジが利用されうる。
他の一実現形態例では、サンプルからの微生物細胞の自動分離及び濃縮を実施して、分離微生物細胞の外部移送後の後続アッセイ、たとえば、限定されるものではないが、分子同定アッセイ、MALDI同定アッセイ、及び成長ベースアッセイたとえば表現型抗微生物剤感受性試験に好適に利用可能な精製微生物細胞サスペンジョンを生成するために、図3A〜3C(又はその変化形態)に示されるカートリッジなどのカートリッジが利用されうる。
たとえば、図3A〜3Cを参照すると、マイクロ流体デバイス699内に位置決めされた抽出チャンバーに流体連通するシールポートは、マイクロ流体デバイス699に組み込まれうる。抽出チャンバーは、チャネル516及びバルブ519を介して遠心分離チャンバー501に流体連通しうる。バルブ519を開けた後、分離細胞サスペンジョンは、抽出チャンバーに移送されうるとともに、そこでシールを破壊した後、手動又はロボットにより抜き取られうる(たとえば、ピペッター又はシリンジを介して)。他の一実現形態例では、遠心分離チャンバー502の上方に取外し可能キャップを形成して後続処理のために微生物細胞サスペンジョンのロボット又は手動取出しを可能にしうる。図3A〜3Cに示されるインテグレートカートリッジ例は、分離を実施するために自動遠心分離を利用するが、かかるインテグレートカートリッジは、代替分離モダリティー、たとえば、限定されるものではないが、濾過、免疫磁気分離、及びマイクロ流体ベース分離を含むように改造されうることが理解されよう。
いくつかの実施形態例では、初期サンプルと比べて精製された微生物細胞のサスペンジョンを得た後、得られた微生物細胞のサスペンジョンは、分離微生物細胞を培養するために成長培地(たとえば、固相又は液相)に接触可能である。かかる方法は、初期サンプル中に存在しうる抗生物質濃度の低減に有益でありうるので、有意に低減された(たとえば、1/10、1/10、1/10、1/10、又はそれ以下に低減された)抗生物質濃度で分離微生物細胞の後続培養が可能となり、分離なしで達成可能と思われるものと比べて改善された成長速度及び/又は陽性率を達成できる可能性がある。
一実現形態例では、分離生存微生物細胞を得た後、分離生存微生物細胞は、固相成長培地に接触され(たとえば、その上に又はそれを覆うように分散され)、微生物細胞成長の促進に好適な環境でインキュベートされうる。固相成長培地の例としては、限定されるものではないが、従来の寒天、ゼラチン、グアーガム、キサンタンガムが挙げられる。いくつかの実現形態例では、固相成長培地は、微生物細胞のタイプに応じた色素原性でありうる。いくつかの実施形態では、たとえば、欧州特許出願公開第1088896A2号明細書に記載されているように、コロニーの特異的染色又は非特異的染色により微生物を同定するために、色素原性基質又はフルオロゲン基質が寒天培地に添加されうる。
分離微生物細胞からのコロニーの直接形成を含む本実施形態例は、手動法、半自動法、又は全自動法で実施されうることが理解されよう。たとえば、いくつかの実現形態例では、微生物細胞は、図3A〜3C又はその変化形態に示されるカートリッジなどの自動インテグレートカートリッジ内で分離され、続いて手動又はロボットにより移送され、固相成長培地に接触されうる。代替実現形態例では、プロセスは、閉インテグレートカートリッジ内で全自動化されうるとともに、このことは、固相成長培地に分離微生物細胞を移送するときに汚染物の導入を回避するうえで有益でありうる。
以下の実施例は、当業者が本開示の実施形態を理解して実践できるようにするために提供される。それらは、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、単にその例示及び代表であるにすぎない。
実施例1: 微生物細胞培養物の調製
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)及びストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)を除くグラム陽性細菌の細胞培養物は、以下のように調製された。
1. 30μLのそれぞれの細菌種及び株のグリセロールストックを3mLのトリプシンダイズブロス(TSB)に接種し、150rpmでシェイクしながら37℃で一晩インキュベートした。
2. TSB中10倍希釈培養物を37℃で1時間(エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Entercoccus faecium)、及びストレプトコッカス・アガラクティア(Streptococcus agalactia))又は2時間(スタフィロコッカス・エピデルミディス(Straphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ヘモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)、及びストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes))インキュベートした。
シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)を除くグラム陰性細菌の細胞培養物は、以下のように調製された。
1. 30μLのそれぞれの細菌種及び株のグリセロールストックを3mLのTSBに接種し、150rpmでシェイクしながら37℃で一晩インキュベートした。
2. TSB中10倍希釈培養物を37℃で1時間(アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)、エンテロバクター・クロアケ(Enterobacter cloacae)複合体、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis))又は2時間(セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens))インキュベートした。
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)細胞培養物は、以下のように調製された。
30μLのそれぞれの株グリセロールストックを3mLのTSBに接種し、150rpmでシェイクしながら37℃で3時間インキュベートした。
ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)細胞培養物は、以下のように調製された。
30μLのそれぞれの種又は株のグリセロールストックを3mLのTSBに接種し、CO発生パウチの存在下、80rpmでシェイクしながら37℃で3時間インキュベートした。
シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa):
1. 5%ヒツジ血液を含むトリプシンダイズ寒天(TSA)プレート上に6μLのシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)株グリセロールストックをストリークし、37℃で一晩インキュベートした(P1)。
2. 寒天プレート上に細菌コロニーをもう1回継代培養した(P2)。
3. プレートからの1つのコロニーを3mlのTSBに接種し、150rpmでシェイクしながらで37℃で3時間インキュベートした。
真菌細胞培養物は以下のように調製された。
1. 30μLのそれぞれの真菌種及び株のグリセロールストックを3mLのTSBに接種し、150rpmでシェイクしながら30℃で一晩インキュベートした。
2. TSB中10倍希釈培養物を30℃で2時間インキュベートした(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))。
OD測定に基づいて、それぞれの細菌の段階希釈物を10CFU/mLの公称濃度でTSBで調製した。
実施例2: スパイク全血サンプルの調製
5〜8mLの体積の血液サンプルを健常者からBD Vacutainer(登録商標)SPSチューブ中に吸引した。細菌細胞でスパイクする前に平均4時間にわたりチューブを室温で保持した。次いで、約10CFUのそれぞれの細菌細胞を有する50μLの細菌細胞サスペンジョンストックを5mLの血液に添加し、穏やかなボルテクシングにより混合した。そのため、微生物細胞の濃度は、公称で約10CFU/mLである。
実施例3: スパイクリン酸塩緩衝剤サンプルの調製
約10CFUのそれぞれの細菌細胞を有する50μLの細菌細胞サスペンジョンストックを5mLの1mMリン酸塩緩衝剤(PB)に添加し、穏やかなボルテクシングにより混合した。そのため、微生物細胞の濃度は、公称で約10CFU/mLである。
実施例4: リアルタイムRT−PCRアッセイスパイク対照用の血液ライシス試薬不在下の1mLスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルのサンプル調製
サンプル調製は、以下のようにリアルタイムRT−PCRスパイク対照用に実施された。
1. 15ml遠心分離機チューブ中で1mlのスパイクリン酸塩緩衝剤と1mlのPBとを混合した。
2. 遠心分離機チューブを1分間ボルテックスした。
3. 遠心分離機チューブを4000rpmで3分間遠心分離した。
4. 1.9mlの上清を除去した。
5. 4回の洗浄サイクルを実施し、各洗浄サイクル時、0.9mlのPB(洗浄緩衝剤)を添加し、穏やかなボルテクシングにより溶液を10秒間混合し、遠心分離を4000rpmで3分間実施し、100μlの残留液体が保持されるように0.9mlの上清を抜き取って廃棄した。
6. 得られた細胞サスペンジョンを95℃で10分間熱ライシスに付した。
7. 1μlの熱ライセートと3μlのリアルタイムRT−PCRマスターミックスと1μlの標的特異的プライマーセットとを混合することによりRT−PCR反応の準備を行い、Illumina Real−Time Ecoシステムサーマルサイクラー上でリアルタイムRT−PCR検出アッセイに付した。
実施例5: リアルタイムRT−PCRアッセイのための血液ライシス試薬成分に接触させた1mLスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルのサンプル調製
サンプル調製は、以下のようにスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルで実施された。
1. 15ml遠心分離機チューブ中で1mlのスパイクリン酸塩緩衝剤と1mlの血液ライシス試薬(又は血液ライシス試薬成分のサブセット)とを混合した。
2. 遠心分離機チューブを1分間ボルテックスした。
3. 遠心分離機チューブを4000rpmで3分間遠心分離した。
4. 1.9mlの上清を除去した。
5. 4回の洗浄サイクルを実施し、各洗浄サイクル時、0.9mlの洗浄緩衝剤を添加し、穏やかなボルテクシングにより溶液を10秒間混合し、遠心分離を4000rpmで3分間実施し、100μlの残留液体が保持されるように0.9mlの上清を抜き取って廃棄した。
6. 得られた細胞サスペンジョンを95℃で10分間熱ライシスに付した。
7. 1μlの熱ライセートと3μlのリアルタイムRT−PCRマスターミックスと1μlの標的特異的プライマーセットとを混合することによりRT−PCR反応の準備を行い、Illumina Real−Time Ecoシステムサーマルサイクラー上でリアルタイムRT−PCR検出アッセイに付した。
実施例6: リアルタイムRT−PCRアッセイスパイク対照用の血液ライシス試薬不在下の3mLスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルのサンプル調製
サンプル調製は、以下のようにリアルタイムRT−PCRスパイク対照用に実施された。
1. 15ml遠心分離機チューブ中で3mlのスパイクリン酸塩緩衝剤と5mlのPBとを混合した。
2. 最高スピードのボルテクサーで1分間ボルテックスすることにより遠心分離機チューブを混合した。
3. 遠心分離機チューブを4000rpmで8分間遠心分離した。
4. 7.9mlの上清を除去した。
5. 4回の洗浄サイクルを実施し、各洗浄サイクル時、0.9mlの洗浄緩衝剤を添加し、穏やかにボルテックスすることにより溶液を混合し、遠心分離を4000rpmで3分間実施し、100μlの残留液体が保持されるように0.9mlの上清を抜き取って廃棄した。
6. 得られた細胞サスペンジョンを95℃で10分間熱ライシスに付した。
7. 1μlの熱ライセートと3μlのリアルタイムRT−PCRマスターミックスと1μlの標的特異的プライマーセットとを混合することによりRT−PCR反応の準備を行い、Illumina Real−Time Ecoシステムサーマルサイクラー上でリアルタイムRT−PCR検出アッセイに付した。
実施例7: リアルタイムRT−PCRアッセイのための3mLスパイク全血サンプルのサンプル調製
サンプル調製は、以下のようにスパイク全血サンプル用に実施された。
1. 15mL遠心分離機チューブ中で5mlの血液ライシス試薬を3mlのサンプルに添加した。
2. 最高スピードのボルテクサーで1分間ボルテックスすることにより遠心分離機チューブを混合した。
3. 遠心分離機チューブを4000rpmで8分間遠心分離した。
4. 7.9mlの上清を除去した。
5. 4回の洗浄サイクルを実施し、各洗浄サイクル時、0.9mlの洗浄緩衝剤を添加し、穏やかにボルテックスすることにより溶液を混合し、遠心分離を4000rpmで3分間実施し、100μlの残留液体が保持されるように0.9mlの上清を抜き取って廃棄した。
6. 得られた細胞サスペンジョンを95℃で10分間熱ライシスに付した。
7. 1μlの熱ライセートと3μlのリアルタイムRT−PCRマスターミックスと1μlの標的特異的プライマーセットとを混合することによりRT−PCR反応の準備を行い、Illumina Real−Time Ecoシステムサーマルサイクラー上でリアルタイムRT−PCR検出アッセイに付した。
実施例8: リアルタイムRT−PCRアッセイのための1mLスパイク全血サンプルのサンプル調製
サンプル調製は、以下のようにスパイク全血サンプル用に実施された。
1. 15mL遠心分離機チューブ中で1mlの血液ライシス試薬を1mlのサンプルに添加した。
2. 最高スピードのボルテクサーで1分間ボルテックスすることにより遠心分離機チューブを混合した。
3. 遠心分離機チューブを4000rpmで3分間遠心分離した。
4. 1.9mlの上清を除去した。
5. 4回の洗浄サイクルを実施し、各洗浄サイクル時、0.9mlの洗浄緩衝剤を添加し、穏やかにボルテックスすることにより溶液を混合し、遠心分離を4000rpmで3分間実施し、100μlの残留液体が保持されるように0.9mlの上清を抜き取って廃棄した。
6. 得られた細胞サスペンジョンを95℃で10分間熱ライシスに付した。
7. 1μlの熱ライセートと3μlのリアルタイムRT−PCRマスターミックスと1μlの標的特異的プライマーセットとを混合することによりRT−PCR反応の準備を行い、Illumina Real−Time Ecoシステムサーマルサイクラー上でリアルタイムRT−PCR検出アッセイに付した。
実施例9: 血液デブリの形成に関する実験研究のための3mL全血サンプルのサンプル調製
非スパイク全血サンプルのサンプル調製は、以下のように実施された。
1. 15mL遠心分離機チューブ中で5mlの血液ライシス試薬を3mlのサンプルに添加した。
2. 最高スピードのボルテクサーで1分間ボルテックスすることにより遠心分離機チューブを混合した。
3. 混合物を4000rpmで7分間遠心分離した。
4. 上清を除去し、100μLの残渣をチューブボトムに残存させた。
5. 2回の洗浄サイクルを実施し、各洗浄サイクル時、0.9mlの洗浄緩衝剤を添加し、遠心分離を4000rpmで3分間実施し、最初の洗浄サイクル時、0.9mlの上清を抜き取って廃棄した。
6. 血液デブリの存在を調べるために、得られたチューブの写真を撮った。
実施例10: 陽性血液培養サンプルの調製
陽性血液培養サンプルは、以下のように調製された。
1. 5〜10CFU/mlの公称濃度で細菌を10mLの全血サンプルにスパイクした。
2. FA Plus好気性血液培養ボトルに10mLのスパイク全血を接種し、培養物が陽性になるまで37℃でインキュベートした。
実施例11: サンプルと血液ライシス試薬との対流混合による陽性血液培養サンプルの処理
陽性血液培養物の処理に利用された対流ミキサーは、図26A及び26Bに示される。それは直径15.9mmの2つの10mLシリンジ(S1及びS2)を含み、ID=0.91mm及び長さ10cmのチューブTにより接続される。サンプル調製は、以下のように実施された。
1. 図26Aに示されるように、一方のシリンジ(S1)に1mLの血液を吸引する。
2. 図26Aに示されるように、他方のシリンジ(S2)に1mLの血液ライシス試薬を吸引する。
3. 図26Bに示されるように、90mL/minの流量でS2からS1に1mLの血液ライシス試薬を吸引する。
4. 2mLの血液+血液ライシス試薬混合物をS2に吸引する。(図示せず)
5. 混合物を吸引してS1に戻す。(図示せず)
6. 工程4及び5を5回繰り返す。
7. 溶血サンプルを15mL遠心分離機チューブに移送した。
8. 混合物を4000rpmで3分間遠心分離した。
9. 上清を除去し、100μLの残留液体をチューブボトムに残存させた。
10. 2回の洗浄サイクルを実施し、各洗浄サイクル時、0.9mlの洗浄緩衝剤を添加し、遠心分離を4000rpmで3分間実施し、最初の洗浄サイクル時、0.9mlの上清を抜き取って廃棄した。
11. 血液デブリの存在を調べるために、得られたチューブの写真を撮った。
実施例12: 細胞サスペンジョン回収のための陽性血液培養サンプルの処理
陽性血液培養サンプルのサンプル調製は、以下の通りであった。
1. 15mL遠心分離機チューブ中で1mLの体積の陽性血液培養サンプルと1mLの血液ライシス試薬とを混合した。
2. 最高スピードのボルテクサーで1分間ボルテックスすることにより遠心分離機チューブを混合した。
3. 混合物を4000rpmで3分間遠心分離した。
4. 1.9mLの上清を除去し、100μLの残留液体をチューブボトムに残存させた。
5. 4回の洗浄サイクルを実施し、各洗浄サイクル時、0.9mlの洗浄緩衝剤を添加し、穏やかにボルテックスすることにより溶液を混合し、遠心分離を4000rpmで3分間実施し、100μlの残留液体が保持されるように0.9mlの上清を抜き取って廃棄した。
6. 洗浄サイクルの終了時、上清0.9を除去し、100μLの残留液体を再懸濁させ、回収細胞サスペンジョンとして採取した。
7. 陽性対照参照として、5%ヒツジ血液を含むトリプシンダイズ寒天(TSA)プレート上に陽性血液培養物を接種し、37℃で18〜24時間インキュベートした。
実施例13: 生存細胞寒天プレーティングスパイク対照用の血液ライシス試薬不在下の3mLスパイクリン酸塩緩衝剤サンプルのサンプル調製
サンプル調製は、以下のように生存細胞寒天プレーティングスパイク対照用に実施された。
1. 15ml遠心分離機チューブ中で3mlのスパイクリン酸塩緩衝剤と5mlのPBとを混合した。
2. 最高スピードのボルテクサーで1分間ボルテックスすることにより遠心分離機チューブを混合した。
3. 遠心分離機チューブを4000rpmで8分間遠心分離した。
4. 7.9mlの上清を除去した。
5. 得られた細胞サスペンジョンを寒天プレート上に接種し、細菌コロニー成長のために37℃で18〜24時間又は真菌コロニー成長のために30℃で24〜72時間インキュベートした。ストレプトコッカス属(Streptococcus)種の寒天プレートは、CO発生パウチの存在下、37℃で18〜24時間インキュベートされた。
実施例14: 生存細胞回収寒天プレーティング実験のためのボルテックス混合による3mLスパイク全血サンプルのサンプル調製
ボルテックス混合によるサンプル調製は、以下のようにスパイク全血サンプルからの生存微生物細胞回収のために実施された。
1. 15mL遠心分離機チューブ中で5mlの血液ライシス試薬を3mlのサンプルに添加した。
2. 最高スピードのボルテクサーで1分間ボルテックスすることにより遠心分離機チューブを混合した。
3. 遠心分離機チューブを4000rpmで8分間遠心分離した。
4. 7.9mlの上清を除去した。
5. 4回の洗浄サイクルを実施し、各洗浄サイクル時、0.9mlの洗浄緩衝剤を添加し、穏やかにボルテックスすることにより溶液を混合し、遠心分離を4000rpmで3分間実施し、100μlの残留液体が保持されるように0.9mlの上清を抜き取って廃棄した。
6. 得られた細胞サスペンジョンを寒天プレート上に接種し、細菌コロニー成長のために37℃で18〜24時間又は真菌コロニー成長のために30℃で24〜72時間インキュベートした。ストレプトコッカス属(Streptococcus)種の寒天プレートは、CO発生パウチの存在下、37℃で18〜24時間インキュベートされた。
実施例15: 生存細胞回収のための対流混合による3mLスパイク全血サンプルの処理
全血サンプル調製に使用された対流ミキサーは、図26A及び26Bに示される。それは直径15.9mmの2つの10mLシリンジを含み、ID=0.91mm及び長さ10cmのチューブTにより接続される。サンプル調製は、以下のように実施された。
1. 一方のシリンジ(S1)に3mLの血液を吸引する
2. 他方のシリンジ(S2)に5mLの血液ライシス試薬を吸引する
3. 90mL/minの流量でS2からS1に5mLの血液ライシス試薬を吸引する
4. 8mLの血液+血液ライシス試薬混合物をS2に吸引する
5. 混合物を吸引してS1に戻す
6. 工程4及び5を5回繰り返す
7. 混合チャンバーの内容物を15mL遠心分離機チューブに排出する
8. 4000RPMで10分間遠心分離する
9. 上清を除去して100μLをチューブボトムに残存させる
10. 900μLの洗浄緩衝剤を添加してボルテクシングにより混合する
11. 4000RPMで2分間遠心分離する
12. 工程9〜11を3回繰り返す
13. 上清を除去して100μLをチューブボトムに残存させる
14. 得られた細胞サスペンジョンを寒天プレート上にプレーティングしてコロニー成長のために37℃でインキュベートする。
実施例16: VITEK−MS(登録商標)による微生物細胞同定
VITEK−MS−IDのために実施例12で陽性血液培養物から回収された細胞サスペンジョン及び参照対照コロニー並びに実施例14で全血から回収された生存細胞コロニーの調製は、以下の通りであった。
1. 1μLの細菌細胞サスペンジョンをVITEK MS−DS標的スライドの1つのサンプル領域上にスポットし、続いて1μLのVITEK MS−CHCA(α−シアノ−4−ヒドロキシ−ケイ皮酸)を添加し、そして乾燥させた。
2. 無菌1μL接種ループを用いて細菌コロニーサンプルをVITEK MS−DS標的スライドの1つのサンプル領域上の適用し、続いて1μLのVITEK MS−CHCAを添加し、そして乾燥させた。
3. 無菌1μL接種ループを用いて真菌コロニーサンプルをVITEK MS−DS標的スライドの1つのサンプル領域上に適用し、続いて1μLのVITEK−MS−FA(ギ酸)をサンプル上に添加し、そして空気乾燥させた。1μLのVITEK MS−CHCAを乾燥サンプル上に添加し、そして乾燥させた。
4. マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間(MALDI−TOF)を用いてbioMerieux製VITEK(登録商標)MS質量分析計システムによりスパイク微生物種を同定した。
実施例17: VITEK(登録商標)2による微生物細胞同定及び抗微生物剤感受性試験
VITEK(登録商標)2のために実施例12で陽性血液培養物から回収された細胞サスペンジョン及び参照対照コロニー並びに実施例14で全血から回収された生存細胞コロニーの調製は、以下の通りであった。
1. ある体積の回収細菌細胞サスペンジョンを提供試験チューブ中の3.0mLの0.45%無菌生理食塩水に添加して、DensiChek Plus濁度計を用いたVITEK(登録商標)2のための標準細胞サスペンジョンを調製した。サスペンジョンの濁度は、0.5〜0.63マクファーランド濁度単位に調整された。
2. 以上に記載のように細菌コロニーサンプルを0.45%無菌生理食塩水に接種して、0.5〜0.63マクファーランド濁度単位の細胞サスペンジョンを調製した。
3. 以上に記載のように真菌コロニーサンプルを0.45%無菌生理食塩水に接種して、1.8〜2マクファーランド濁度単位の細胞サスペンジョンを調製した。
4. bioMerieux VITEK(登録商標)2 60/XLを用いて微生物同定及び抗微生物剤感受性試験を実施した。グラム陽性細菌に対しては、GP TEST KIT VTK2(bioMerieux #21342)、AST−GP67(bioMerieux #22226)、及びAST−ST03(bioMerieux #421040)を使用した。グラム陰性細菌に対しては、GN TEST KIT VTK2(bioMerieux #21341)及びAST−N216(bioMerieux #413066)を使用した。酵母に対しては、YST TEST KIT VTK2(bioMerieux #21343)及びAST−YS08(bioMerieux #420739)を使用した。
以上に記載の具体的実施形態は、例として示されており、これらの実施形態は、各種の変更形態及び代替形態が許容されうることが理解されるべきである。特許請求の範囲は、開示された特定形態に限定されることが意図されるのではなく、本開示の趣旨及び範囲に包含されるすべての変更形態、等価形態、及び代替形態をカバーするように意図されることがさらに理解されるべきである。

Claims (39)

  1. サンプルから微生物細胞を分離する方法であって、
    0.75〜60mg/mlのサポニン濃度と、0.35〜50mg/mlのポリアネトールスルホン酸ナトリウム濃度と、7.8〜10のpHと、を有する混合物が得られるように、血液サンプルと、サポニンとポリアネトールスルホン酸ナトリウムとアルカリ性緩衝剤とを含む血液ライシス試薬である血液ライシス試薬と、を混合することと、
    前記混合物から微生物細胞を分離することと、
    を含む、方法。
  2. 前記血液ライシス試薬が9.0〜11の範囲内のpHを有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記血液ライシス試薬が9.5〜10.5の範囲内のpHを有する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記混合物のpHが8.0〜10.0の範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記混合物のpHが8.5〜9.5の範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記混合物のpHが9.0〜9.5の範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記混合物のpHが8.8〜9.8の範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記混合物の有効緩衝剤濃度が2.5〜500mMの範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記混合物の有効緩衝剤濃度が5〜250mMの範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記混合物のサポニン濃度が3〜60mg/mlの範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記混合物のサポニン濃度が10〜30mg/mlの範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記混合物のポリアネトールスルホン酸ナトリウム濃度が3〜60mg/mlの範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記混合物のポリアネトールスルホン酸ナトリウム濃度が1.5〜50mg/mlの範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記混合物のポリアネトールスルホン酸ナトリウム濃度が5〜20mg/mlの範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記サポニンが前記アルカリ性緩衝剤の塩基性成分から分離して貯蔵されるように、少なくとも2つの試薬が分離して貯蔵され、且つ前記血液ライシス試薬と前記血液サンプルとの混合前に後続的に混合されて前記血液ライシス試薬を形成する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記サポニンが3.5〜8のpHを有する水性媒体中に貯蔵される、請求項15に記載の方法。
  17. 前記サポニンが4〜5のpHを有する水性媒体中に貯蔵される、請求項15に記載の方法。
  18. 前記アルカリ性緩衝剤の前記塩基性成分が乾燥形態で貯蔵される、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記サポニンが溶液中に貯蔵される、請求項18に記載の方法。
  20. 前記血液ライシス試薬が非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記混合物の非イオン性界面活性剤濃度が0〜3%w/vの範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項20に記載の方法。
  22. 前記混合物の非イオン性界面活性剤濃度が0.5〜2.0%w/vの範囲内にあるように前記血液ライシス試薬が構成される、請求項20に記載の方法。
  23. 前記血液ライシス試薬が消泡剤をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記消泡剤が、ポリジメチルシロキサンと水中油型乳化剤として非イオン性界面活性剤とを含むエマルジョンを含む、請求項23に記載の方法。
  25. 前記混合物の消泡剤濃度が0.005〜1%w/vの範囲内にあるように前記消泡剤が提供される、請求項24に記載の方法。
  26. 前記混合物の消泡剤濃度が0.01〜0.05%w/vの範囲内にあるように前記消泡剤が提供される、請求項24に記載の方法。
  27. 前記血液サンプルが全血サンプルである、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記全血サンプルが1mlを超える体積を有する、請求項27に記載の方法。
  29. 前記全血サンプルが5mlを超える体積を有する、請求項27に記載の方法。
  30. 前記混合物の遠心分離後又は濾過後の血液デブリの可視存在が回避されるような組成で前記血液ライシス試薬が提供される、請求項28又は29に記載の方法。
  31. 前記サンプルが血液培養サンプルである、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
  32. 前記血液培養サンプルが微生物細胞の存在が陽性であるとまだみなされていない、請求項31に記載の方法。
  33. 前記微生物細胞が遠心分離を介して分離される、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
  34. 前記微生物細胞が、濾過、免疫磁気分離、及びマイクロ流体分離からなる群から選択される分離方法を介して分離される、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
  35. 前記分離された微生物細胞の少なくとも1つの微生物細胞のタイプを同定するために同定アッセイを実施すること、
    をさらに含む、請求項1〜34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 前記同定アッセイがMALDIアッセイである、請求項35に記載の方法。
  37. 前記分離された微生物細胞を成長培地の存在下でインキュベートすることをさらに含む、請求項1〜34のいずれか一項に記載の方法。
  38. サンプルから微生物細胞を分離する方法であって、
    7.8〜10のpHと、サンプル中の血液細胞のライシスを行うのに好適なサポニン濃度と、を有する混合物が得られるように、サンプルと、サポニンとアルカリ性緩衝剤とを含む血液ライシス試薬である血液ライシス試薬と、を混合することと、
    前記混合物から微生物細胞を分離することと、
    を含む、方法。
  39. 前記血液ライシス試薬がポリアネトールスルホン酸ナトリウムをさらに含む、請求項38に記載の方法。
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