JP2021512947A - Ttpの初回エピソードを免疫グロブリン単一可変ドメインで処置する方法 - Google Patents

Ttpの初回エピソードを免疫グロブリン単一可変ドメインで処置する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)エピソードの初回エピソードを有するヒト患者に投与すると、血小板数応答までの時間の短縮、処置期間中に死亡するか、再発するか、または重度の血栓塞栓性事象(TE)がある患者の割合の低下、再発率の低下、および不応状態の防止を含むアウトカムの改善がもたらされるという発見に基づく。本発明は、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置することに使用するための、vWFに対する2つのISVDを含むポリペプチドを提供する。本発明はさらに、TTPを処置するための、単位剤形、キット、および医学的使用に関する。

Description

1.発明の分野
本発明は、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)エピソード、例えばTTPの初回エピソードおよび/または再発エピソードを有するヒト患者に投与すると、血小板数応答までの時間の短縮、処置期間中に死亡するか、再発するか、または重度の血栓塞栓性事象(TE)がある患者の割合の低下、再発率の低下、および不応状態の防止を含むアウトカムの改善がもたらされるという発見に基づく。本発明は、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置することに使用するための、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドを提供する。本発明はさらに、TTPを処置するための、単位剤形、キット、および医学的使用に関する。
2.発明の背景
2.1 血小板凝集におけるvWFの役割
多量体の血漿タンパク質であるvWFは、血管傷害の際に損傷した血管壁へ循環血小板を動員するために必要不可欠である。この動員は、vWF A1−ドメインと血小板受容体糖タンパク質GPIb−IX−Vの結合によって媒介される。
内皮細胞により発現すると、vWFは、超大型多量体または超大型vWF(ULvWF:ultra−large vWF)として循環に分泌される。これらの多量体は、ディスインテグリン様ドメインおよびトロンボスポンジンリピートを有するメタロプロテアーゼ13(ADAMTS13:disintegrin−like and metalloprotease with thrombospondin repeats 13)による酵素的切断を介して、より小さな通常サイズの多量体へとプロセシングされる。こうしたvWFの通常サイズの多量体において、A1ドメイン内のGPIb−IX−V血小板受容体結合部位は隠れており、血小板と自発的に反応しない。A1ドメインにおけるGPIb−IX−V血小板受容体結合部位の立体構造の活性化が、固定化により、またはせん断応力の条件下で誘発され、血小板粘着および後の血栓形成をもたらす。
2.2 TTPの病態生理におけるvWFおよびvWFプロセシングの役割
TTPは、血液凝固系の稀で生命を脅かす疾患であり、ULvWF多量体の蓄積が関係するとされ、過剰な血小板凝集に起因する小血管における血栓形成のリスク上昇をもたらす。この病態は、多くの臓器において変動性の(fluctuating)虚血をもたらす、微小循環における全身性の血小板凝集を特徴とする。これが持続すれば、深刻な血小板減少症および赤血球断片化に関連する組織梗塞の原因となりうる。
ULvWF多量体は、血小板受容体GPIb−IX−Vと自発的に相互作用する天然の能力を有する。後天性特発性TTP(aTTP)のみならず、遺伝性TTPにおいても、ADAMTS13活性が著しく欠乏していることが見出された。TTP患者の大多数は、ULvWF多量体のプロセシング障害をもたらす、ADAMTS13に対する自己抗体を有する。結果として、ULvWFのA1ドメインは構成的に活性であり、GPIb−IX−V血小板受容体と容易に相互作用する。これは最終的に、TTP患者集団に見出される特徴的な血餅の形成をもたらす。
血漿交換(本明細書では「PE」または「PEX」と略す)および輸血を用いるTTPの現行療法は、ADAMTS13の補充を行い、この酵素に対する抗体を除去することにより、徐々にULvWFプロセシングの正常化をもたらす。しかしながら、この処置は、何日にもわたる複数回の交換および輸血を必要とし、その間、ULvWFにより媒介される血小板凝集の活動プロセスが直接的に薬理学的標的となることはない。
PEおよび輸血の導入は過去30年間にわたってTTPによる死亡率を大幅に低減させたが、この病態は依然として、死亡および罹患の重大なリスクを有する。現行療法の管理下にある患者において、急性特発性TTPの急性エピソードによる死亡率は、およそ10%から30%を推移する(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。続発性TTPの場合、PEおよび輸血の有効性は比較的低いと認識されており、死亡率は大幅に高い。疾患が妊娠に続発する症例では(この場合、PEは適度に有効であると考えられる)、TTPの急性エピソードによる死亡率はおよそ25%であり、妊娠高血圧腎症を併発している症例では40%超に上昇する(非特許文献4)。しかしながら、例えば根底にある悪性腫瘍または骨髄移植に続発する症例では、かかる処置レジメンの使用にもかかわらず、死亡率は40%から60%で推移する(非特許文献3;非特許文献5;非特許文献6)。
依然としてTTPによる死亡率のレベルが相当のものであり、PEおよび輸血の合併症が観察されることを考慮すると、現在の処置方法を補完するか、またはその必要性を低減させる可能性がある、さらなる治療アプローチの開発が明らかに必要とされている。
過去30年間に実施されたTTPの研究は、この疾患の病態生理についての理解を向上させ、根底にある疾患プロセスを標的とする新たな薬剤の開発の可能性をもたらしている。
vWFに対する/vWFに結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、および特許文献6に記載されている。
Ablynx名義の特許文献7は、とりわけ、vWFに結合する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドをヒトTTP患者に投与することにより、150,000/μL以上の血小板回復によって客観化される、応答までの時間の減少がもたらされるという、予想外の発見を記載している。このことは、2.2のハザード比(または血小板数正常化比)に反映されており、これは、カプラシズマブで処置された対象では、いかなる時点においても血小板数応答を達成する尤度が2.2倍高かったことを意味する。これにより、この疾患に特徴的な血小板−vWF複合体によって開始される血栓プロセスが減少する。よって、本発明のポリペプチドの概念実証は、血小板応答確認までの時間における、統計的に有意であり臨床的に意義のある低減によってなされた。さらに、プラセボアームにおける11から、処置アームにおける3へと、増悪の回数が低減した。プラセボアームにおける2件の死亡と比較して、処置アームでの死亡はなかった。実際、TTP患者の処置において、vWFに対するISVD(例えばALX0081)が効果的かつ安全であることが、第II相(TITAN)試験および第III相(HERCULES)試験において示されている。
しかしながら、特許文献7ならびにTITANおよびHERCULESの結果に関する情報は、aTTPの初回エピソードを有する患者については言及していない。
処置しなければ、TTPの死亡率は90%であるが、この死亡率は、血漿交換を速やかに行えば低減しうる。それにもかかわらず、早期死亡は依然として発生する:英国の地域登録における死亡のおよそ半数は、主に女性において、症状発現から24時間以内に発生した(非特許文献7)。よって、aTTPエピソードの正確な診断を下すことは極めて重要である(非特許文献8を参照のこと)。しかしながら、溶血性尿毒症症候群(HUS)、自己免疫疾患、および妊娠に関連する一連の問題との臨床的重複が存在するため、診断は困難である場合がある(非特許文献9;非特許文献10、非特許文献11を参照のこと)。実際、TTP(および関連する微小血管症)を診断するためのガイドラインは、血小板減少症、MAHA(微小血管症性溶血性貧血)、動揺性神経学的兆候、腎機能障害、および発熱(潜行性発症の場合が多い)の5大症状(pentad)を用いる、臨床歴、患者の診察、および血液塗抹標本に基づく診断(非特許文献9)から、(i)孤立性MAHAT(微小血管症性溶血性貧血および血小板減少症)、(ii)原因不明のMAHATを伴う、新しい限局的な神経学的症状、けいれん、または心筋梗塞(MI)、および(iii)TTPの既往歴を含む診断(非特許文献11)へと、近年において数回変化している。ADAMTS13アッセイは、診断を確認し、疾患の経過をモニタリングし、さらには、さらなる処置選択の方向を決定するのに役立つ。
集団におけるTTPの発生頻度が低いことにより、ほとんどの医師が症状に精通していないため、対象がTTPの初回エピソードを呈する場合は特に、正確な診断は複雑である。実際、TTPの初回エピソードは、再発エピソードの後に診断されることが多い。後者の場合、患者および医療スタッフは病歴を承知しており、症状をより容易に認識する。結果として、TTPの初回エピソードを有する患者は、診療所を訪れる際、疾患再発患者よりも症状発現が遅く、疾患の重症度が高い。
WO2004/015425 WO2004/062551 WO2006/074947 WO2006/122825 WO2009/115614 WO2011/067160 WO2015/193326
Veselyら、Blood 2003年;102巻:60〜68頁 Allfordら、Br.J.Haematol.2003年;120巻:556〜573頁 Sadlerら、Hematology.Am.Soc.Hematol.Educ.Program.2004年;407〜423頁 Martinら、Am.J.Obstet.Gynecol.2008年;199巻:98〜104頁 Elliottら、Mayo Clin.Proc.2003年;78巻:421〜430頁 Kremer HovingaおよびMeyer Curr.Opin.Hematol.2008年;15巻:445〜450頁 Scullyら、2008年、BJH 142巻:819〜826頁 Bindiら、2010年、Transf Aph Sci 43巻:167〜170頁 Scullyら、2012年、BJH 158巻:323〜335頁 GeorgeおよびAl−Nouri、2012年、Hematology 604〜609頁 Scullyら、2017年、J Thromb Haem 15巻:312〜322頁
したがって、vWFに対する少なくとも1つのISVDを有するポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aが、TTPの初回エピソードを有する患者において有益であるかどうか、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aが、好ましい効果を有するかどうか、そして、有効な処置および用量レジメンがどのようなものであるかは、未だ解明されていない。
TTP患者のための、特に患者がTTPの初回エピソードを呈する場合の、改善された療法が必要とされている。
3.発明の概要
本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドを、ヒトTTP患者に投与すると、疾患再発患者(すなわちTTPの再発エピソードを有する患者)よりも症状発現が遅く、ベースラインにおける疾患の重症度が高い、TTPの初回エピソードを有する患者のアウトカムが改善するという、予想外の発見に基づく(実施例7.11を参照のこと)。
さらに、本発明は、本発明のポリペプチド(例えばALX0081またはALX0081−A)が、血小板数正常化までの時間の短縮をもたらし、増悪を防止し、処置に対して患者が不応性になるのを防止したことも実証する。このことは、とりわけ、血漿交換パラメータ、入院日数、および集中治療室(ICU)在室日数の低減に反映された(実施例7.12を参照のこと)。
さらに、本発明は、本発明のポリペプチド(例えばALX0081またはALX0081−A)を用いる非盲検(OL)治療が、aTTPの増悪を経験した患者において効果的であったことを示す(実施例7.13を参照のこと)。
したがって、現在入手可能なデータは、PEおよび輸血ならびにそれらに関連する合併症の低減が、重大な有害事象を伴わずに、本発明のポリペプチドの使用自体から達成されることを実証する。これは、TTP患者の処置において本発明のポリペプチドを使用することの明らかな安全上の利点となる。
よって、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドをヒトTTP患者に投与すると、TTPのエピソード、例えばTTPの初回エピソードおよび/または再発エピソードを有する患者において、応答までの時間の予想外の減少、効果の持続および延長、増悪の低減、ICU在室を含む入院の低減、罹患率の低減、死亡数の低減、および/またはPE数の低減がもたらされる。
投薬レジメンの裏付けとするため、広範なメカニズムに基づく薬物動態−薬力学(PKPD)モデリングに基づき、様々なシナリオを練った。このモデルは、aTTP患者における疾患進行およびPE処置に左右される効果を含め、薬物−vWF複合体の経時的な相互作用を十分に説明した。このモデルは、標的集団におけるカプラシズマブとvWFとの間のPKPD相互関係の理解を容易にするために首尾よく適用され、シミュレーションの使用により、成人患者および小児患者の両方における投薬の理論的根拠を裏付け、日本人aTTP患者へのブリッジングを可能にした(実施例7.18を参照のこと)。aTTP患者における母集団薬物動態分析は、年齢、性別、人種、および血液型が、カプラシズマブの薬物動態に影響を及ぼさなかったことを示した。体重、およびクレアチニンクリアランス(CrCL)によって表される腎機能は、薬物動態に対して統計的に有意な効果を及ぼし、体重およびCrCLの低い患者において予想曝露量が高かった。しかしながら、これらの共変数が極端な値をとる患者集団では、予想曝露量範囲の大部分が重複しており、特定の用量調節は必要ないとみなされた。ベースラインのvWFレベルは、薬物曝露に対して統計的に有意な効果を及ぼしたが、vWFが増えた患者に対する薬物曝露の増加は、異なる薬力学効果をもたらさず、個別の用量調節は必要ないとみなされた(実施例7.16.5を参照のこと)。
カプラシズマブの臨床治験に登録した小児患者はいなかったため、このPKPDモデルを青年および小児における推奨用量にも使用した。上記に依らず、12〜18歳で体重40kg以上の青年において推奨される用量は10mgであり、40kg未満の場合は5mgである。年齢差に基づいたvWF:Ag抑制の差は予想されなかったため、2〜12歳の小児にも、同じ推奨用量:体重が40kg以上であれば10mg、40kg未満であれば5mgが適用される(実施例7.19を参照のこと)。
PEおよび輸血を用いるTTPの現行療法は、ADAMTS13の補充を行い、この酵素に対する抗体を除去することにより、徐々にULvWFプロセシングの正常化をもたらす。しかしながら、この処置は、何日にもわたる複数回の交換および輸血を必要とし、その間、ULvWFにより媒介される血小板凝集の活動プロセスが直接的に薬理学的標的となることはない。
aTTP患者における臨床治験中、カプラシズマブをPE前に10mgの静脈内(i.v.)ボーラスとして投与し、続いて、連日PE期間中およびその後少なくとも30日間にわたり、1日10mgの皮下(s.c.)用量を投与した。第1の静脈内ボーラスとその後のPEとの間の異なる時間間隔の潜在的効果、および異なるPEスケジュールの効果も調査した。驚くべきことに、カプラシズマブの第1の静脈内投薬から最長で5時間後にPEを開始するまで、有効な薬物レベルが予想される。より長い遅延のためには、PE前にさらに10mgまたは11mgの皮下投薬を想定してもよい。1日2回(bid)のPEを7日間行う場合、カプラシズマブの皮下投与スケジュールを、各PE処置後の1日2回のカプラシズマブで調節してもよい(実施例7.17を参照のこと)。
マネージドアクセスプログラム(MAP:managed access program)の間、患者は、フロントライン療法として、または不応性の経過をたどるaTTPの処置のために、カプラシズマブを受けた。任意の安全性報告は、新しい安全性シグナルを伴わず、臨床試験で観察された安全性プロファイルと一致していた。aTTP患者においてカプラシズマブを用いた第1の実臨床エビデンスは、臨床治験において観察された、特にフロントライン療法として開始した場合のカプラシズマブの重要な利点を裏付ける。
本発明のポリペプチドは、血漿輸血によって補充される酵素に干渉しない。本発明のポリペプチド(例えばALX0081またはALX0081−A)を、PEおよび輸血と組み合わせて用いると、微小血管系における継続的な小さな血栓の形成および血小板消費を直接的に阻害することができる。このため、根底にある血栓プロセスおよび付随する血小板消費をより迅速に制御することができ、虚血性合併症および出血性合併症の程度が低減する利点がある。これはまた、より短い期間ならびに少ない回数のPEおよび輸血で、臨床的回復の迅速化および罹患率の減少をもたらす。実際、特異的であり臨床的に関連する臓器損傷バイオマーカーのLDH、トロポニンTまたはI、およびクレアチニンに関する分析は、微小血管組織の虚血をより迅速に抑えることに臨床的有用性があることを示唆した。さらに、本発明のポリペプチド(例えばALX0081またはALX0081−A)によって示された、ULvWFにより媒介される血小板の相互作用の阻害、および観察された抗血栓性効果は、TTPの急性エピソード、例えばTTPの初回エピソードおよび/または再発エピソードから患者が回復した後に、本発明のポリペプチドをより長期間使用すると、疾患の再発および/または増悪が防止されるという好ましい効果を示す。急性TTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードの頻度の低減は、TTPに関連する死亡率および罹患率が低減し、患者の生涯にわたるPEおよび輸血の必要性がさらに低減する可能性があるという大きな利点となる。
TTPからの回復の迅速化ならびに増悪および再発の低減は、処置の効能という観点から明らかな臨床的有用性であるが、PEおよび輸血の持続時間および頻度の低減も、患者安全性という観点からさらなる利点をもたらす。PEおよび輸血は現在、TTPの管理における標準的処置と考えられているが(Scullyら、Br.J.Haem.2012年;158巻:323〜335頁)、これらの手技は、重大な合併症のリスクを伴う。PE手技は、高い液量および流速を要求し、中心静脈ダブルルーメン血液透析カテーテルの使用を必要とする。この手技による合併症としては、カテーテル挿入による出血、敗血症、カテーテル関連血栓、気胸症、水分過負荷、低酸素症、および低血圧が挙げられる(Fontanaら、Semin.Hematol.2004年;41巻:48〜59頁;George J.Intensive Care Med.2007年;22巻:82〜91頁;Howardら、Transfusion 2006年;46巻:154〜156頁;Rizviら、Transfusion 2000年;40巻:896〜901頁;Nguyenら、Transfusion 2009年;49巻:392〜394頁)。アナフィラキシー様反応が手技の0.25%から0.5%で併発する(Allfordら、2003年、上記参照;George 2007年、上記参照)。さらに、血液製剤を含む血漿の輸注は、非感染性の輸血関連急性肺傷害(TRALI)を引き起こしうる。この病態は、輸血関連死の最多原因のうちの1つとして認識されており、発生率は血漿含有単位当たり0.02%から0.05%と推定される。血漿単位の一日平均を17とすると、一日のリスクは0.34%から0.85%の範囲と計算することができる。ほとんどのTTP患者は、複数回のPEおよび輸血を必要とする。急性特発性TTP患者は連日の処置を必要とし、寛解を達成するには、平均およそ16回の処置が必要とされる(Allfordら、2003年、上記参照)。不応性の症例では、処置の頻度は1日2回に増加しうる(Allfordら、2003年、上記参照)。家族性TTP患者の場合、2から3週間間隔での定期的な予防的血漿輸注が推奨される(Lammleら、J.Thromb.Haemost.2005年;3号:1663〜1675頁)。したがって、このようなPEおよび輸血の頻度および規則性が処置に必要であるTTP患者にとって、アナフィラキシーおよびTRALIは明らかなリスクとなる。このリスクは、溶媒/界面活性剤(S/D)で処理された血漿を新鮮凍結血漿の代わりに使用する場合には低下しうると考えられているが、大量のS/D血漿の使用は、静脈血栓塞栓症のリスク増加に関連しうる(Allfordら、2003年、上記参照;Fontanaら、2004年、上記参照)。全体的に見て、患者のおよそ30%から40%がPEおよび輸血から有害事象を経験し、こうした手技による死亡率は、およそ2%から3%であると推定されている(Georgeら、Semin.Hematol.2004年;41号:60〜67頁;George 2007年、上記参照;GeorgeおよびAl−Nouri 2012年、上記参照)。よって、PEおよび輸血の持続時間および頻度の低減は、患者安全性という観点からもさらなる利点をもたらす。
TTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードから回復した後、多くの患者は、長年にわたって認知異常があると述べ、記憶、集中、活力の低下、および疲労に関する厄介な問題を報告する。このような症状は、患者の日常生活の質に悪影響を及ぼす。さらに、こうした生活の質の低下は、病因および重症度にかかわらず、TTPを有するすべての患者に起こりうる(Lewisら、Transfusion 2009年;49巻:118〜124頁)。これらの症状は、組織虚血の残留効果を反映するものでありうると考えられている。これに基づけば、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aがもたらす、TTPからの回復の迅速化、および微小血管系内の血栓形成の制限により、結果として患者の生活の質という観点から患者の長期アウトカムが改善すると、合理的に提唱することができる。
驚くべきことに、様々なインビトロ実験、比較の核磁気共鳴(NMR)、および表面プラズモン共鳴(SPR)試験において、C末端伸長型カプラシズマブが有する先在抗体結合性は比較的低かったものの、カプラシズマブおよびC末端伸長型カプラシズマブが同様の特徴を有し、標的vWFに対する同様の結合プロファイルを有したことが示された。カプラシズマブとC末端伸長型カプラシズマブとの間で同様の特徴およびプロファイルを考慮すると、こうしたC末端伸長型カプラシズマブ化合物は、カプラシズマブと同様に、aTTPの処置および/または防止にも使用することができると予想される(実施例7.21を参照のこと)。
したがって、本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドを対象に投与することにより、対象におけるTTPのようなvWF関連疾患を処置または緩和するための方法を提供し、ここで、投与されるポリペプチドの量は、応答までの時間の低減、増悪の低減、再発の低減、ICU在室を含む入院の低減、虚血の低減、死亡者数の低減、および/または必要なPEの回数の低減のために有効である。本発明は、TTPのようなvWF関連疾患に対するこうした有益な効果のうちの1つまたはそれ以上をもたらす、本発明のポリペプチドの特定の用量範囲および投薬スケジュールを提供する。特に、本発明は、現在使用されているおよび/または当該分野で公知である薬剤、組成物、方法、および/または投薬スケジュールと比較して、PEを行う必要頻度が比較的低いことを含め、ある特定の有利な点を有する、薬理学的に活性な薬剤、組成物、方法、および/または投薬スケジュールを提供する。これらの有利な点は、下記のさらなる説明から明らかになるであろう。
好ましい一態様において、本発明は、2つの抗ヒトvWF免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、ヒトが40kg以上の体重を有する場合は前記ポリペプチド10mgまたは11mg、前記体重が40kg未満であれば5mgの用量をヒトに投与することにより、前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTP(の症状)を処置することに使用するための、ポリペプチドに関する。
一態様において、本発明は、2つの抗ヒトフォンウィルブランド因子(vWF)免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチド1〜80mg、好ましくは5〜40mg、さらにより好ましくは10mgまたは11mgの用量をヒトに投与することにより、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、ポリペプチドに関する。
一態様において、本発明は、2つの抗ヒトフォンウィルブランド因子(vWF)免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチド1〜80mg、好ましくは5〜40mg、さらにより好ましくは10mgまたは11mgの用量をヒトに投与することによる、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPのフロントライン処置に使用するための、ポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはさらにはそれ以上のような30日より長い期間(処置期間)にわたって繰り返される、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記処置は、血小板数応答までの時間の短縮、処置期間中に死亡するか、再発するか、もしくは重度のTE事象がある患者の割合の低下、再発率の低下、および/または不応状態の防止をもたらす、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、ヒトvWF(配列番号20)に結合する少なくとも1つのISVDを含む、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも90%同一であり、C末端伸長部(X)nを含み、式中、nは、1から10、好ましくは1から5、例えば1、2、3、4、または5(好ましくは1または2、例えば1)であり;各Xは、独立して選択される、好ましくはアラニン(A)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、またはイソロイシン(I)からなる群から独立して選択される、(好ましくは天然に存在する)アミノ酸残基;さらにより好ましくはアラニンである、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTP(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、少なくとも1つのISVDは、配列番号19(12A02H1)によって表される、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも90%同一である、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、ALX0081(配列番号1)またはALX0081−A(配列番号24)である、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記用量は、1日1回または1日2回投与される、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおける血小板数が少なくとも150,000/μlになるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおける血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、前記ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程は、前記血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになった後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは30日より長いかまたはそれ以上の期間にわたって繰り返される、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記2回の連続した測定は、少なくとも3日の間隔のような、少なくとも24時間、より好ましくは48時間の間隔、またはさらには4日、5日、6日、もしくはさらには7日のようなそれ以上の間隔、好ましくは1週間の間隔をおく、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおけるADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、またはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおける、LDHレベル、トロポニンTレベル、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような臓器損傷マーカーのレベルが、正常レベルの少なくとも40%、またはさらには、60%、70%、80%、90%、もしくはさらには100%のような、少なくとも50%の割合に戻るまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、血漿交換を行うことを含む、ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記vWF関連疾患は、急性冠症候群(ACS)、一過性脳虚血発作、不安定狭心症もしくは安定狭心症、卒中、心筋梗塞、または血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、好ましくはTTPから選択される、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
一態様において、本発明は、2つの抗ヒトフォンウィルブランド因子(vWF)免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチド1〜80mg、好ましくは5〜40mg、さらにより好ましくは10mgまたは11mgの用量をヒトに投与することを含む、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、ポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはさらにはそれ以上のような30日より長い期間(処置期間)にわたって繰り返される、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記処置は、血小板数応答までの時間の短縮、処置期間中に死亡するか、再発するか、もしくは重度のTE事象がある患者の割合の低下、再発率の低下、および/または不応状態の防止をもたらす、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、配列番号20に結合する少なくとも1つのISVDを含む、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、少なくとも1つのISVDは、配列番号19(12A02H1)によって表される、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも90%同一である、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、ALX0081(配列番号1)またはALX0081−A(配列番号24)である、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記用量は、1日1回または1日2回投与される、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおける血小板数が少なくとも150,000/μlになるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、処置を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおける血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、処置を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程は、前記血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになった後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは30日より長いかまたはそれ以上の期間にわたって繰り返される、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記2回の連続した測定は、少なくとも3日の間隔のような、少なくとも24時間、より好ましくは48時間の間隔、またはさらには4日、5日、6日、もしくはさらには7日のようなそれ以上の間隔、好ましくは1週間の間隔をおく、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおけるADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、またはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、処置を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおける、LDHレベル、トロポニンTレベル、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような臓器損傷マーカーのレベルが、正常レベルの少なくとも40%、またはさらには、60%、70%、80%、90%、もしくはさらには100%のような、少なくとも50%の割合に戻るまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、処置を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、血漿交換を行うことを含む、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患の急性エピソードの処置中の入院日数および/または集中治療室(ICU)在室日数を低減させることに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、ここで、前記vWF関連疾患は、急性冠症候群(ACS)、一過性脳虚血発作、不安定狭心症もしくは安定狭心症、卒中、心筋梗塞、または血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、好ましくはTTPから選択される。
一態様において、本発明は、2つの抗ヒトフォンウィルブランド因子(vWF)免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチド1〜80mg、好ましくは5〜40mg、さらにより好ましくは10mgまたは11mgの用量をヒトに投与することを含む、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、ポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはさらにはそれ以上のような30日より長い期間(処置期間)にわたって繰り返される、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記処置は、血小板数応答までの時間の短縮、処置期間中に死亡するか、再発するか、もしくは重度のTE事象がある患者の割合の低下、再発率の低下、および/または不応状態の防止をもたらす、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、配列番号20に結合する少なくとも1つのISVDを含む、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、少なくとも1つのISVDは、配列番号19(12A02H1)によって表される、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも90%同一である、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記ポリペプチドは、ALX0081(配列番号1)またはALX0081−A(配列番号24)である、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記用量は、1日1回または1日2回投与される、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおける血小板数が少なくとも150,000/μlになるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、処置を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおける血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、処置を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程は、前記血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになった後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは30日より長いかまたはそれ以上の期間にわたって繰り返される、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、前記2回の連続した測定は、少なくとも3日の間隔のような、少なくとも24時間、より好ましくは48時間の間隔、またはさらには4日、5日、6日、もしくはさらには7日のようなそれ以上の間隔、好ましくは1週間の間隔をおく、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおけるADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、またはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、処置を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、ヒトにおける、LDHレベル、トロポニンTレベル、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような臓器損傷マーカーのレベルが、正常レベルの少なくとも40%、またはさらには、60%、70%、80%、90%、もしくはさらには100%のような、少なくとも50%の割合に戻るまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、処置を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、血漿交換を行うことを含む、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPの急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
さらなる一態様において、本発明は、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患の急性エピソード、例えば初回エピソードおよび/または再発エピソードの処置に対して患者が不応性になるのを防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、ここで、前記vWF関連疾患は、急性冠症候群(ACS)、一過性脳虚血発作、不安定狭心症もしくは安定狭心症、卒中、心筋梗塞、または血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、好ましくはTTPから選択される。
したがって、本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVD、好ましくは2つのISVDを含むポリペプチド、さらにより好ましくはALX0081またはALX0081−Aであって、前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの第1の用量をヒトに投与することを含む、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、ポリペプチドを提供する。
本発明は、前記ポリペプチドの前記投与の後には、5分から8時間以内に第1のPEを行うことが続く、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記第1の用量の前記投与の前には、好ましくは前記第1のPEから36時間以内、例えば32時間以内、30時間以内、28時間以内、26時間以内、24時間以内、22時間以内、20時間以内、18時間以内、16時間以内、14時間以内、12時間以内、10時間以内、8時間以内、例えば7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、またはさらには5分以内に、先行PEを行うことが先行する、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記第1のPEの後には、前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの第2の用量を、好ましくは皮下注射により、好ましくは前記第1のPEから1〜60分以内、より好ましくは30分以内に投与することが続く、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記先行PEは、前記第1のPEから36時間以内、好ましくは32、30、28、26、24、22、20、18、または16時間以内、好ましくは約24時間以内に行われる、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記ポリペプチドは、非経口投与され、好ましくは皮下、腹腔内、静脈内、または筋肉内注射によって、好ましくは静脈内(i.v.)ボーラスプッシュ注射によって投与される、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記ポリペプチドの投与の後には、5分から8時間以内、例えば10分から6時間または15分から4時間以内、例えば8時間以内、7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、またはさらには5分以内、好ましくは5時間より短い時間以内にPEを行うことが続く、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用される、本明細書に記載のポリペプチドであって、ここで、処置を必要とするヒトにおけるTTPのようなvWF関連疾患、好ましくはTTPの前記処置は:
(i)PEを行うことと;(これに続いて)
(ii)前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mgの用量を、工程(i)の前記PEから5分から4時間後に投与することと;
(iii)場合により、前記患者の血小板数および/またはADAMTS13活性を測定することと
をさらに含み、
ここで、工程(i)および工程(ii)は、1日1回、好ましくは、前記患者の血小板数が150000/μl以上になるまで、および/または前記ADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、またはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで繰り返される、ポリペプチドを提供する。
本発明は、前記患者の血小板数が初めて150,000/μl以上になった後、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、90、またはさらには120日間にわたり、前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を1日1回投与することをさらに含む、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を、ヒトが寛解に入るまで1日1回投与することをさらに含む、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、ADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、またはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで、前記ポリペプチドを投与することを含む、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記用量が、前記ポリペプチド約1〜80mg、または5〜40mg、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、60、70、または80mg、好ましくは約10mgまたは11mgである、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記ヒトは、TTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソード、TTPの増悪、および/またはTTPの再発を患う、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
好ましい一態様において、本発明は、本明細書に記載される、処置を必要とするヒトにおけるTTPのようなvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置することに使用するための、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドであって、該処置は、
(1)場合により、先行するPEを行うことと;
(2)前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの第1の用量を前記ヒトに投与することであり、工程(1)が行われた場合、好ましくは工程(1)(の終了)から36時間以内、例えば32時間以内、30時間以内、28時間以内、26時間以内、24時間以内、22時間以内、20時間以内、18時間以内、16時間以内、14時間以内、12時間以内、10時間以内、8時間以内、例えば7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、またはさらには5分以内に投与することと;
(3)場合により工程(2)から5分〜8時間以内、例えば10分〜6時間または15分〜4時間以内、例えば8時間以内、7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、またはさらには5分以内に、PEを行うことと;
(4)前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgのさらなる用量を、好ましくは工程(3)(の終了)から5分から8時間以内、例えば10分から6時間または15分から4時間以内、例えば8時間以内、7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、またはさらには5分以内に投与することと;
(5)工程(3)および工程(4)を1日1回繰り返すことであり;場合により、前記患者の血小板数が150000/μl以上になるまで、および/または前記ADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、またはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで繰り返すことと、
(6)場合により、前記患者の血小板数が初めて150,000/μl以上になった後、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、90、もしくはさらには120日間にわたり、またはADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、もしくはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで、前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を1日1回投与することと
を含む、ポリペプチドを提供する。
工程(3)が工程(2)の5時間後に行われる場合、前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgのさらなる用量を投与する。
別の好ましい一態様において、本発明は、本明細書に記載される、処置を必要とするヒトにおけるTTPのようなvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置することに使用するための、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドであって、前記処置は、
(1)PEを1日2回行うことと;
(2)工程(1)の各PEの後に、前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を前記ヒトに投与することと
を含む、ポリペプチドを提供する。
さらに、本発明は、2つの抗ヒトvWF ISVDを含むポリペプチドであって、前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量をヒトに投与することにより、ヒトのvWF関連疾患の再発(の症状)を防止することに使用するための、ポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対する前記ISVDが、配列番号20に結合する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対する前記ISVDが、従来型の4本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン、または重鎖抗体もしくはNanobodyに由来する重鎖可変ドメインを含む、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記NanobodyがVHHである、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対する前記ISVDが、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1からFR4)および3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1からCDR3)から本質的になり、ここで:
a)CDR1は:
− アミノ酸配列YNPMG;または
− アミノ酸配列YNPMGとのアミノ酸の差異を2つもしくは1つだけ有するアミノ酸配列
を含むか、またはそれから本質的になり;
b)CDR2は:
− アミノ酸配列AISRTGGSTYYPDSVEG;または
− アミノ酸配列AISRTGGSTYYPDSVEGと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または
− アミノ酸配列AISRTGGSTYYPDSVEGとのアミノ酸の差異を2つもしくは1つだけ有するアミノ酸配列
を含むか、またはそれから本質的になり;
c)CDR3は:
− アミノ酸配列AGVRAEDGRVRTLPSEYTF;または
− アミノ酸配列AGVRAEDGRVRTLPSEYTFと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または
− アミノ酸配列AGVRAEDGRVRTLPSEYTFとのアミノ酸の差異を2つもしくは1つだけ有するアミノ酸配列
を含むか、またはそれから本質的になる、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドであって:
a)CDR1は、YNPMG(配列番号21)であり;
b)CDR2は、AISRTGGSTYYPDSVEG(配列番号22)であり;
c)CDR3は、AGVRAEDGRVRTLPSEYTF(配列番号23)である、
ポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対するISVDは、配列番号19(12A02H1)によって表される、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対する少なくとも2つのISVDを含むか、またはそれらからなる、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対する前記少なくとも2つのISVDの各ISVDが、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1からFR4)および3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1からCDR3)から本質的になり、ここで:
a)CDR1は:
− アミノ酸配列YNPMG;または
− アミノ酸配列YNPMGとのアミノ酸の差異を2つもしくは1つだけ有するアミノ酸配列
を含むか、またはそれから本質的になり;
b)CDR2は:
− アミノ酸配列AISRTGGSTYYPDSVEG;または
− アミノ酸配列AISRTGGSTYYPDSVEGと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または
− アミノ酸配列AISRTGGSTYYPDSVEGとのアミノ酸の差異を2つもしくは1つだけ有するアミノ酸配列
を含むか、またはそれから本質的になり;
c)CDR3は:
− アミノ酸配列AGVRAEDGRVRTLPSEYTF;または
− アミノ酸配列AGVRAEDGRVRTLPSEYTFと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または
− アミノ酸配列AGVRAEDGRVRTLPSEYTFとのアミノ酸の差異を2つもしくは1つだけ有するアミノ酸配列
を含むか、またはそれから本質的になる、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明、vWFに対する各ISVDが、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1からFR4)および3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1からCDR3)から本質的になり、ここで:
a)CDR1は、YNPMG(配列番号21)であり;
b)CDR2は、AISRTGGSTYYPDSVEG(配列番号22)であり;
c)CDR3は、AGVRAEDGRVRTLPSEYTF(配列番号23)である、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、配列番号1〜18もしくは24、好ましくは配列番号1もしくは24を含むか、またはそれからなる、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対する前記ISVDが、1つまたはそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む一本鎖ポリペプチドである、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対する前記ISVDが、一価または多価である、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対する前記ISVDが、単一特異性または多特異性である、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、1つまたはそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが、CDRグラフト化されているか、ヒト化されているか、ラクダ化されているか、脱免疫化されているか、またはファージディスプレイによって選択されている、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、vWFに対する前記ISVDが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、2つの抗ヒトvWF免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)および抗ヒト血清アルブミン(HSA)ISVDを含む、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、薬学的に許容される製剤中に配合された、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記製剤が、5.0から7.5の範囲内のpHを有するクエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液を含む、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記製剤が、非経口投与、例えば、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、または腹腔内注射から選択される1つまたはそれ以上に好適である、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、前記製剤が、液体形態、凍結乾燥形態、噴霧乾燥形態、再構成凍結乾燥形態、または凍結形態にある、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドまたは本明細書に記載の製剤を含む容器と、使用説明書とを含む、キットまたは製品を提供する。
本発明は、製剤がバイアルまたは注射用シリンジ内に存在する、本明細書に記載のキットまたは製品を提供する。
本発明は、製剤が充填済み注射用シリンジ内に存在する、本明細書に記載のキットまたは製品を提供する。
本発明は、シリンジまたはバイアルが、ガラス、プラスチック、または環状オレフィンポリマーもしくはコポリマーから選択されるポリマー材料からできている、本明細書に記載のキットまたは製品を提供する。
本発明は、製剤であって:
(a)約0.1mg/mLから約80mg/mLの濃度の本明細書に記載のポリペプチドと;
(b)約1%から約15%(w/v)の濃度の、スクロース、グリシン、マンニトール、トレハロース、またはNaClから選択される賦形剤と;
(c)約0.001%から0.5%(v/v)の濃度のTween−80と;
(d)製剤のpHが約6.0から7.0になるような、約5mMから約200mMの濃度のクエン酸緩衝液、および、製剤のpHが約6.5から7.5になるような、約10mMから約50mMの濃度のリン酸緩衝液から選択される、緩衝液と
を含み、
前記ポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg用量、好ましくは10mgまたは11mgをヒトに投与することにより、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、好ましくはTTPを処置することに使用するための製剤であって、前記用量の後には、場合により、5分から8時間以内、例えば15分から4時間以内に、第1の血漿交換(PE)が続く、製剤を提供する。
本発明は、患者、好ましくはヒト患者への非経口投与に好適な、本明細書に記載のポリペプチドまたは本明細書に記載の製剤を含む医薬単位剤形を提供する。
本発明は、前記vWF関連疾患は、急性冠症候群(ACS)、一過性脳虚血発作、不安定狭心症もしくは安定狭心症、卒中、心筋梗塞、または(後天性および/または先天性)血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、好ましくはTTPから選択される、本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
本発明は、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを有効量でヒト患者に投与することを含む、TTPのようなvWF関連疾患にかかりやすいか、またはそうと診断されたヒト患者を処置するための方法を提供する。
本発明は、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量をヒトに投与することにより、vWF関連疾患に関連する1つまたはそれ以上の症状を低減させることを含む、TTPのようなvWF関連疾患を処置または防止する方法を提供する。
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドの該投与の後に、5分から8時間以内、例えば15分から4時間以内に、第1の血漿交換(PE)を行うことが続く、本明細書に記載の処置を提供する。
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドの前記投与の前に、前記第1のPEから36時間以内、好ましくは32、30、28、26、24、22、20、18、または16時間以内、好ましくは約24時間以内に、先行血漿交換(PE)を行うことが先行する、本明細書に記載の処置を提供する。
本発明は、前記第1のPEの後に、本明細書に記載のポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの第2の用量を、5分から8時間以内、例えば10分から6時間または15分から4時間以内、例えば8時間以内、7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、またはさらには5分以内に投与することが続く(例えば、前記第2の用量の前記ポリペプチドが、前記第1のPEから1〜60分以内、例えば30分以内に、好ましくは皮下注射によって投与される)、本明細書に記載の処置を提供する。
本発明は、
(i)PEを行うことと;(これに続いて)
(ii)本明細書に記載のポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を、工程(i)の前記PEから15分から4時間後に投与することと;
(iii)場合により、前記患者の血小板数および/またはADAMTS13活性を測定することと
をさらに含み、
ここで、工程(i)および工程(ii)は、1日1回、場合により、前記患者の血小板数が150000/μl以上になるまで、および/またはADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、またはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで繰り返される、本明細書に記載の処置を提供する。
本発明はまた、前記患者の血小板数が150,000/μl以上になった後、少なくとも5、10、15、20、25、またはさらには30日間にわたり、本明細書に記載のポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を1日1回投与することをさらに含む、本明細書に記載の処置を提供する。
本発明は、本明細書に記載のポリペプチド1〜80mg、例えば5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を、前記ヒトが寛解に入るまで1日1回投与することをさらに含む、本明細書に記載の処置を提供する。
本発明は、ADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、またはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで、前記ポリペプチドを投与することを含む、本明細書に記載の処置を提供する。
一実施形態において、本発明は、リスクの低減および/またはその防止を必要とするヒトにおける、TTPのエピソードのようなvWF関連疾患の急性エピソード、例えばTTPの初回エピソードおよび/または再発エピソードのリスクを低減させ、および/またはそれを防止するための方法に関し、前記方法は:(i)フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチド5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を前記ヒトに投与することを含み、または投与することからなり;ここで、前記ポリペプチドの投与は、TTPのエピソードのようなvWF関連疾患の急性エピソード、例えばTTPの初回エピソードおよび/または再発エピソードのリスクを低減させ、および/またはそれを防止する。好ましくは、前記リスクは、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.75、1.8、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減する。好ましくは、前記リスクは、10%またはさらにはそれ以上、例えば20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上、例えば80%、またはさらには100%だけ低減する。
一実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程(i)が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回、またはさらには20回のような10回超の回数、好ましくは30回超またはさらにはそれ以上の回数繰り返される、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程(i)が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはさらにはそれ以上のような30日より長い期間にわたって繰り返される、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、前記用量が、1日1回または1日2回(bid)投与される、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載の方法であって、
(ii)場合により、前記患者のADAMTS13活性を測定することと;
(iii)場合により、前記患者のADAMTS13活性を基準ADAMTS13活性と比較することと;
(iv)前記ADAMTS13活性が前記基準ADAMTS13活性の30%未満、例えば20%、15%または10%であれば、本発明のポリペプチドを投与する前記工程(i)を繰り返すことと
をさらに含む、方法に関する。
一実施形態において、本発明は、前記患者の前記ADAMTS13活性が、毎日、または2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日毎、好ましくは少なくとも1週間に1回測定される、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、前記ADAMTS13活性が、前記基準ADAMTS13活性の少なくとも10%、15%、例えば20%、またはさらには30%もしくはそれ以上になるまで、本発明のポリペプチドを投与する前記工程が繰り返される、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、前記ADAMTS13活性が、少なくとも2回の連続した測定で前記基準ADAMTS13活性の少なくとも10%、15%、例えば20%または30%になるまで、工程(i)が繰り返される、本明細書に記載の方法に関する。好ましくは、前記2回の連続した測定は、少なくとも3日の間隔のような、少なくとも24時間、より好ましくは48時間の間隔、またはさらには4日、5日、6日、もしくはさらには7日のようなそれ以上の間隔、好ましくは1週間の間隔をおく。
一実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程(i)が、前記ADAMTS13活性が少なくとも2回の連続した測定で前記基準活性の少なくとも10%または15%、例えば20%または30%になった後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは30日より長いかまたはさらにはそれ以上の期間にわたって繰り返される、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載の方法であって、
− 場合により、前記患者のADAMTS13活性を測定することと;
− 場合により、前記患者のADAMTS13活性を基準ADAMTS13活性と比較することと;
− 前記ADAMTS13活性が、前記基準ADAMTS13活性の10%以上、例えば15%超、または20%もしくは30%超であれば、本発明のポリペプチドを投与する前記工程(i)を、最長30日間、例えば最長20日間、またはさらには15、10、9、8、7、6、5、4、3、2日間、またはさらには1日間にわたって繰り返すことと
をさらに含む、方法に関する。
一実施形態において、本発明は、リスクの低減および/またはその防止を必要とするヒトにおける、TTPのエピソードのようなvWF関連疾患の急性エピソード、例えばTTPの初回エピソードおよび/または再発エピソードのリスクを低減させ、および/またはそれを防止するための方法に関し、前記方法は、少なくとも次の工程:
(i)前記患者のADAMTS13活性を測定することと;
(ii)前記ADAMTS13活性を基準ADAMTS13活性と比較することと;
(iii)前記ADAMTS13活性が、前記基準活性の30%、20%、15%、または10%未満であれば、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチド5〜40mg、例えば10mgまたは11mgの用量を前記ヒトに投与することと;
を含む。
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載の方法であって、
− 臓器損傷、虚血性損傷、および/または微小血栓形成のリスクが、10%、20%、30%だけ、好ましくは少なくとも40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減し;
− 臓器損傷、虚血性損傷、および/または微小血栓形成のリスクが、1.2、1.3、1.4、1.5、1.75、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減し;
− 臓器損傷、虚血性損傷、および/または微小血栓形成が、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減し;
− 臓器損傷、虚血性損傷、および/または微小血栓形成が、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減し;
− LDHレベル、トロポニンT、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような臓器損傷マーカーが、正常レベルの少なくとも40%、またはさらには、60%、70%、80%、90%、もしくはさらには100%のような、少なくとも50%の割合に戻り;
− LDHレベル、トロポニンT、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような臓器損傷マーカーが、正常レベルの少なくとも20%、例えば30%、またはさらには40%のようなそれ以上の、またはさらには、60%、70%、80%、90%、もしくはさらには100%のような、少なくとも50%の割合だけ向上し(好ましくは、LDHレベル、トロポニンT、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような、前記臓器損傷のマーカーは、処置から30日未満、好ましくは、処置から20日未満、例えば15、10、9、8、7、6、5、4、3、2日未満、またはさらには1日以内に向上する)、
− 血小板の数が、150000/μl以上に保たれ、
− 増悪のリスクが、少なくとも10%、20%、30%、40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減し;
− 増悪のリスクが、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減し;
− 前記vWF関連疾患に起因する死亡率が、10%、20%、30%だけ、好ましくは少なくとも40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減し;
− 前記vWF関連疾患に起因する死亡率が、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.75、1.8、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減し;
− 不応状態が、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減し;および/または
− 不応状態が、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減する、
方法に関する。
一実施形態において、本発明は、血小板数を測定することと;前記血小板数が150,000/μl未満であれば、本発明のポリペプチドを投与する前記工程を繰り返すこととをさらに含む、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、前記患者の前記血小板数が毎日、または2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日毎、好ましくは少なくとも毎週測定される、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、前記血小板数が少なくとも150,000/μlになるまで、本発明のポリペプチドを投与する前記工程が繰り返される、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、前記血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになるまで、本発明のポリペプチドを投与する該工程が繰り返される、本明細書に記載の方法に関する。好ましくは、該2回の連続した測定は、少なくとも3日の間隔のような、少なくとも24時間、より好ましくは48時間の間隔、またはさらには4日、5日、6日、もしくはさらには7日のようなそれ以上の間隔、好ましくは1週間の間隔をおく。
一実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する前記工程が、前記血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになった後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは30日より長いかまたはさらにはそれ以上の期間にわたって繰り返される、本明細書に記載の方法に関する。好ましくは、前記2回の連続した測定は、少なくとも3日の間隔のような、少なくとも24時間、より好ましくは48時間の間隔、またはさらには4日、5日、6日、もしくはさらには7日のようなそれ以上の間隔、好ましくは1週間の間隔をおく。
一実施形態において、本発明は、前記患者の血小板数を測定することと;前記血小板数が150,000/μl以上であれば、本発明のポリペプチドを投与する前記工程(i)を、最長30日間、例えば最長20日間、またはさらには15、10、9、8、7、6、5、4、3、2日間、またはさらには1日間にわたって繰り返すこととをさらに含む、本明細書に記載の方法に関する。
一実施形態において、本発明は、リスクの低減および/またはその防止を必要とするヒトにおける、TTPのエピソードのようなvWF関連疾患の急性エピソード、例えばTTP(好ましくはTTP)の初回エピソードおよび/または再発エピソードのリスクを低減させ、および/またはそれを防止するための方法に関し、該方法は、少なくとも次の工程:
(i)前記患者の血小板数を測定することと;
(ii)前記血小板数が150,000/μl未満であれば、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチド5〜40mg、例えば10mgまたは11mgの用量を前記ヒトに投与することと;
を含み、
ここで、前記ポリペプチドの投与は、TTPのエピソードのようなvWF関連疾患の急性エピソード、例えばTTP(好ましくはTTP)の初回エピソードおよび/または再発エピソードのリスクを低減させ、および/またはそれを防止する。
一実施形態において、本発明は、処置を必要とするヒトのTTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソード、好ましくはTTPを処置するための方法に関し、該方法は、少なくとも次の工程;
(i)フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチド5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの第1の用量を前記ヒトに投与することと、
(ii)第1の血漿交換(PE)を、好ましくは工程(i)から5分から8時間以内、好ましくは5時間以内に行うことと
を含む。
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載される、処置を必要とするヒトのTTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソード、好ましくはTTPを処置するための方法に関し、ここで、工程(i)、すなわち本発明のポリペプチドを前記ヒトに投与することの前には、好ましくは工程(ii)、すなわち第1のPEを行うことから24時間以内に、先行するPEを行うことが先行する。
一実施形態において、本発明は、処置を必要とするヒトのTTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソード、好ましくはTTPを処置するための方法に関し、該方法は、少なくとも次の工程:(i)血漿交換(PE)を行うことと;(ii)フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチド5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を前記ヒトに投与することとを含む。好ましくは、前記工程(i)、すなわちPEを行うこと、および前記工程(ii)、すなわち本発明の前記ポリペプチドを前記ヒトに投与することは、1日1回または2回、最長1、2、3、4、5、6、または7日間にわたって繰り返される。
一実施形態において、本発明は、本発明に記載される、処置を必要とするヒトのTTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードを処置するための方法に関し、ここで、工程(ii)、すなわち本発明の前記ポリペプチドを前記ヒトに投与することは、工程(i)、すなわちPEを行うことから15分から4時間以内に行われる。
一実施形態において、本発明は、本発明に記載される、処置を必要とするヒトのTTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードを処置するための方法に関し、該方法は、前記ヒトの血小板数を、好ましくは工程(ii)、すなわち本発明の該ポリペプチドを前記ヒトに投与することの後に測定することと;前記血小板数が150,000/μl未満であれば、前記工程(i)、すなわちPEを行うこと、および前記工程(ii)、すなわち前記ポリペプチドを前記ヒトに投与することを繰り返すこととをさらに含む。
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載される、処置を必要とするヒトのTTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードを処置するための方法に関し、該方法は、前記ヒトの血小板数を[好ましくは工程(ii)、すなわち本発明の前記ポリペプチドを前記ヒトに投与することの後に]測定することと;前記血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになるまで、工程(i)、すなわちPEを行うこと、および工程(ii)、すなわち前記ポリペプチドを前記ヒトに投与することを[1日1回/2回]繰り返すこととをさらに含む。好ましくは、前記2回の連続した測定は、少なくとも3日の間隔のような、少なくとも24時間、より好ましくは48時間の間隔、またはさらには4日、5日、6日、もしくはさらには7日のようなそれ以上の間隔、好ましくは1週間の間隔をおく。
一実施形態において、本発明は、本発明に記載される、処置を必要とするヒトのTTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードを処置するための方法に関し、該方法は、前記ヒトの血小板数が初めて150.000/μl以上になった後、少なくとも1〜30日間にわたり、前記ポリペプチド5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を1日1回投与することをさらに含む。
一実施形態において、本発明は、本発明に記載される、処置を必要とするヒトのTTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードを処置するための方法に関し、該方法は、前記ヒトのADAMTS13活性を、好ましくは工程(ii)、すなわち前記ポリペプチドを前記ヒトに投与することの後に測定することをさらに含む。
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載される、処置を必要とするヒトのTTPエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードを処置するための方法に関し、ここで、工程(i)、すなわちPEを行うこと、および工程(ii)、すなわち本発明の前記ポリペプチドを前記ヒトに投与することは、ADAMTS13活性が[初めて]基準ADAMTS13活性の15%、または20%、またはさらには30%超になるまで繰り返される。
一実施形態において、本発明は、リスクの低減および/またはその防止を必要とするヒトにおける、[TTPのようなvWF関連疾患、TTPのエピソード、例えばTTPの初回エピソードおよび/または再発エピソードによって引き起こされる]虚血性損傷、臓器損傷、不応状態、および/または微小血栓形成のリスクを低減させ、および/またはそれを防止するための方法に関し、該方法は、少なくとも次の工程:(i)vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド5〜40mg/日、好ましくは10mg/日または11mg/日の用量を前記ヒトに投与することを含み;ここで、前記ポリペプチドの投与は、虚血性損傷、臓器損傷、不応状態、および/または微小血栓形成のリスクを、10%、20%、30%だけ、好ましくは少なくとも40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減させ、および/またはそれを防止する。好ましくは、前記ポリペプチドの投与は、虚血性損傷、臓器損傷、不応状態、および/または微小血栓形成のリスクを、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.75、1.8、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減させ、および/またはそれを防止する。
一実施形態において、本発明は、前記ポリペプチドを投与する前記工程が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7日間、またはさらには1週間、2週間、3週間のようなそれより長い期間、またはさらには1か月、もしくはさらには2か月のようなそれより長い期間にわたって繰り返される方法に関する。
一実施形態において、本発明は、前記患者のADAMTS13活性を、好ましくは1週間に1回測定することをさらに含む方法に関する。
一実施形態において、本発明は、ADAMTS13活性が[初めて]基準ADAMTS13活性の10%以上、例えば15%超、またはさらには20%超になったとき、前記ポリペプチドを投与する前記工程が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7日間、またはさらには1週間、2週間、3週間のようなそれより長い期間、またはさらには1か月、もしくはさらには2か月のようなそれより長い期間にわたって繰り返される方法に関する。
一実施形態において、本発明は、TTPのようなvWF関連疾患を患うヒトの該疾患の症状を処置する方法であって、前記疾患を患うヒトのvWF関連疾患の症状を処置するのに有効な量で、本発明のポリペプチドを対象に投与することを含む、方法に関する。
一実施形態において、本発明は、ヒトにおけるTTPのようなvWF関連疾患の発症または進行を阻害する方法に関し、この阻害は、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドがvWFに結合することによってもたらされ、該方法は、阻害有効量の前記ポリペプチドを所定の間隔でヒトに投与することを含み、ここで、ポリペプチドの各投与は、ヒトにおける疾患の発症または進行を阻害するように、ヒトの体重1kg当たり0.1mgから25mg、好ましくは、前記ヒトが40kg以上の体重を有する場合は前記ポリペプチド10mgまたは11mg、前記体重が40kg未満であれば5mgをヒトに送達する。
一実施形態において、本発明は、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを所定の用量でヒトに投与することを含む、ヒトがvWF関連疾患による虚血性臓器損傷を被る尤度を低減させる方法に関し、ここで、抗体の各投与は、ヒトが虚血性臓器損傷を被る尤度を低減させるように、ヒトの体重1kg当たり0.1mgから25mg、好ましくは、前記ヒトが40kg以上の体重を有する場合は前記ポリペプチド10mgまたは11mg、前記体重が40kg未満であれば5mgをヒトに送達する。
4.詳細な説明
別段の指示がない限り、詳しく明確に記載されていない方法、工程、技術、および操作はすべて、当業者には明らかであるように、本質的に公知の様式で行うことができ、そのように行われた。例えば、本明細書で言及する標準的なハンドブックおよび一般的な背景技術、ならびにそれらに引用されるさらなる参考資料が再び参照され;そのほか、例えば次の総説、Scullyら、2017年、上記参照、ならびにPresta、Adv.Drug Deliv.Rev.2006年、58巻(5〜6号):640〜56頁;LevinおよびWeiss、Mol.Biosyst.2006年、2巻(1号):49〜57頁;Irvingら、J.Immunol.Methods、2001年、248巻(1〜2号)、31〜45頁;Schmitzら、Placenta、2000年、21巻付録A、S106〜12頁、Gonzalesら、Tumour Biol.、2005年、26巻(1号)、31〜43頁が参照され、これらは、親和性成熟のようなタンパク質工学操作のための技術、ならびに免疫グロブリンのようなタンパク質の特異性および他の所望の特性を向上させるための他の技術について記載している。別段の指示がない限り、本明細書において詳しく明確に定義されていない用語はすべて、関連分野において公知であり、当業者には明らかであろう;そのほか、例えばScullyら(2017年、上記参照)は、TTPおよび関連する血栓性微小血管症における用語法の標準化に関するコンセンサスについて説明している。
本明細書において使用する場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈上特に明記されていない限り、複数の参照対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「試薬(a reagent)」への言及には、かかる様々な試薬のうちの1つまたはそれ以上が含まれ、「方法(the method)」への言及には、本明細書に記載の方法に合わせて改変または代替することができる当業者に公知である等価の工程および方法への言及が含まれる。
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、その一連におけるすべての要素を指すものと理解されたい。当業者であれば、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、またはルーチン実験を使用するだけでそうした等価物を確かめることができるであろう。このような等価物は、本発明に包含されることが意図される。
本明細書で使用される「および/または」という用語には必ず、「および」、「または」、および「前記用語によって接続された要素のすべてまたは任意の他の組み合わせ」の意味が含まれる。
本明細書で使用される「約」または「およそ」という用語は、与えられた値または範囲の20%以内、好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内を意味する。
本明細書および続く特許請求の範囲の随所において、文脈上別段の解釈を必要としない限り、「含む(comprise)」という語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」のような変化形は、挙げられた整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の包含を暗示するが、いかなる他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の除外も暗示しないと理解される。本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語は、「含む(containing)」もしくは「含む(including)」という用語に置き換えられる場合もあれば、または本明細書で使用されるとき、場合によっては「有する(having)」という用語に置き換えられる場合もある。
TTP設定における、本発明のポリペプチド、特にALX0081の治療可能性を、第III相(Hercules)試験においてさらに評価および実証した。
初回aTTPエピソードを有する患者は、疾患再発エピソードを有する患者よりも症状発現が遅く、ベースラインにおける疾患の重症度が高いことが実証された。こうした比較的深刻な疾患の設定においてでさえ、カプラシズマブでの処置によりアウトカムが改善したことが示された(実施例7.11)。特に、本発明のポリペプチド、例えばALX0081およびALX0081−Aが、プラセボと比較して、血小板数応答までの時間の短縮、処置期間中に死亡するか、再発するか、または重度のTE事象がある患者の割合の低下、全処置期間中の再発率の低下、および不応状態の防止を含め、アウトカムを改善したことが実証された。
TTPは、再発性の発作(bouts)または突発、すなわち各エピソード毎に即時の処置を必要とする個々の再発性疾患事象を伴う急性疾患である。本明細書で使用する場合、「TTPの初回エピソード」(「初回TTPエピソード」とも示される)とは、対象が初めてTTPの発作または突発を呈するときである。本明細書で使用する場合、「TTPの再発エピソード」(「再発TTPエピソード」とも示される)とは、初回TTPエピソード後のあらゆるTTP発作である。
本発明はまた、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−AによってvWF媒介性血小板粘着を迅速に阻止することにより、aTTPの新たな処置選択肢が提供されるという発見に、少なくとも部分的に基づく。特に、カプラシズマブでの処置は、PE日数、入院期間およびICU在室日数を含め、医療資源の利用における意義のある低減に反映された、処置アウトカムの改善をもたらした(実施例7.12)。
さらに、vWFに結合する少なくとも1つのISVDを含む本発明に係るポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aの投与が、aTTPの増悪を経験した患者において効果的であったことが実証された(実施例7.13)。
さらに、vWFに結合する少なくとも1つのISVDを含む本発明に係るポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aの投与が、患者の不応状態を低減させることに効果的であったことが実証された。
PEおよび輸血を用いるTTPの現行療法は、TTPによる死亡率を大幅に低減させてきたものの、vWFに結合する少なくとも1つのISVDを含む本発明に係るポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを投与するフロントライン療法は、格別に有利であったことが示された。例えば、カプラシズマブをフロントライン療法として使用すると、貴重な時間を得ることができる。
よって、本発明は、初回TTPエピソードの重症度が比較的高い疾患設定においてでさえ、効果の予想外の持続および延長、増悪の低減、入院の低減、罹患率の低減、必要なPEの回数の低減、虚血の低減、不応状態の低減、臓器損傷の低減、および/または死亡者数の低減をもたらす。
したがって、本発明は、血小板回復の促進によって実証される、応答までの時間における予想外に大きな減少により、患者におけるTTPのようなvWF関連疾患を処置または寛解させるための、本発明のポリペプチドの使用に関する。本発明はまた、予想外に長期間においてヒト患者の血小板回復を維持しつつ、PEの頻度の低下をもたらす。したがって、本発明のポリペプチドを患者に投与することにより、ヒト患者における応答までの時間を減少させるための方法が提供され、ここで、投与されるポリペプチドの量は、TTPの1つまたはそれ以上の疾患マーカー、例えば血小板の数、血小板減少症、神経認知機能、ADAMTS13レベルおよび抗ADAMTS13抗体力価、ADAMTS13活性レベル、心臓マーカー(トロポニンT(TnTもしくはcTnT)またはトロポニンI(TnIもしくはcTnI))、BNP(脳ナトリウム利尿ペプチド)またはN末端プロ脳ナトリウム利尿ペプチド(NT proBNP)、ならびに脳損傷マーカー(例えばNSE(神経特異的エノラーゼ)およびSβ100(S100ベータ))、優先的には血小板の数の増加を変化させるのに有効である。
さらに、本発明のポリペプチドは、ヒトTTP患者に投与したとき、RICO、vWFおよびFVIII色素原のような安全性検査マーカーによって検査した場合に安全であった。出血リスク増加の可能性はあったものの、これは全面的に管理可能であった。
これらのマーカーは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA;別称エンザイムイムノアッセイ(EIA))、ラジオイムノアッセイ、または免疫酵素アッセイを含む、免疫学に基づく様々なアッセイのような、当業者に公知であり当業者に使用されている標準的方法を使用して測定することができる。好適であれば、化学、比色分析、および酵素に基づくアッセイを使用することもできる。
したがって、本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、好ましくはALX0081またはALX0081−Aであって、前記ポリペプチド5〜40mg用量をヒトに繰り返し投与することにより、処置を必要とするヒトのvWF関連疾患、例えばTTPを処置することに使用するための、ポリペプチドであって、ここで、前記用量の後には、15分から4時間以内に第1のPEが続く、ポリペプチドを提供する。
本発明のポリペプチドは、PE手技に対して特定の時間で、補助的処置として、vWF関連疾患、例えばTTPを処置または防止する(例えば、それに関連する1つまたはそれ以上の症状を低減または寛解させる)ために投与した。
「処置する」(処置する、処置)という用語は、統計的に有意な程度または当業者に検出可能な程度のいずれかまで、疾患に関連する病態、症状、もしくはパラメータを改善するため、または疾患の進行を防止するために有効な量、様式、および/または方式において治療薬を投与することを指す。治療的使用の場合、処置は、対象の疾患もしくは病態を改善するか、治癒するか、維持するか、またはその持続時間を減少させうる。治療的使用において、対象の症状は、部分的に出現していてもよいし、または完全に出現していてもよい。典型的な事例では、処置は、対象の疾患もしくは病態を医師によって検出可能な程度まで改善するか、または疾患もしくは病態の悪化を防止する。例えば、表1に示すような、またはTTP処置ガイドライン(Scullyら、2012年、上記参照)に提示されているような、TTPの急性エピソードにおける臨床的特徴および兆候が改善する。例えば、いずれも当該分野で公知であり、および/または本明細書においてさらに詳述されているように(下記を参照のこと)、処置に起因して、血小板数が正常化し、ADAMTS13自己抗体力価が減少し、および/またはADAMTS13活性が増加する。有効な量、様式、または方式は、対象に応じて異なってよく、対象に合わせて調整してもよい。
「処置期間」という用語は、PE、および/または、本発明のポリペプチド、および場合により例えばステロイドまたはリツキシマブのような他の薬物の投与を含みうる、患者が処置される時間の間隔を指す。好ましい一実施形態において、処置期間は、投与を必要とする患者に本発明のポリペプチドを投与することを指し、ここで、前記投与は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはさらにはそれ以上のような30日より長い期間にわたって繰り返される。
本明細書で使用する場合、「防止する」という用語は、言及される障害の症状を軽減することを意味する。特に、前記用語は、vWF関連障害、例えばTTP、およびその症状の低減、緩和、および緩解を含め、本発明のポリペプチドを対象に投与することの治療上好ましい効果の全範囲を包含する。「防止」という用語には、疾患の発生の防止もしくは先送り、症状の発生の防止もしくは先送り、および/または発生するであろう症状もしくは発生すると予想される症状の重症度の低減が含まれる。これらは、既存の症状を寛解させること、さらなる症状を防止すること、および症状の根底にある原因を寛解または防止することをさらに含む。
本明細書で使用する場合、「対象」および「患者」という用語は交換可能に使用される。本明細書で使用する場合、「対象(単数)」および「対象(複数)」という用語は、動物、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ネコ、イヌ、モルモット、ラット、マウス、ヒツジ)および霊長類(例えば、カニクイザルのようなサル、ゴリラ、チンパンジー、およびヒト)を含む哺乳動物を指す。「患者」は、好ましくはヒトを指す。前記患者は、任意の年齢の高齢者、成人、青年、および小児、例えば2歳から12歳未満の範囲の小児、12歳から18歳未満の範囲の青年、18歳から65歳未満の範囲の成人、および65歳以上の高齢者を含みうる。
処置することができるvWF関連疾患の非限定的な例としては、例えば急性冠症候群(ACS)、一過性脳虚血発作、不安定狭心症または安定狭心症、卒中、心筋梗塞、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、およびアップショー・シュールマン症候群、好ましくはTTPが挙げられるが、これらに限定されない。
例えばTTPのようなvWF関連疾患を処置または防止するためのPE手技は、TTPおよび他の血栓性微小血管症の診断および管理に関するコンセンサスおよびガイドラインにおいて説明されており(Scullyら、2017年、上記参照)、これを参照によって本明細書に明示的に組み入れる。完全寛解は、正常な血小板数、すなわち150,000/μl以上、および場合により、増悪がないこととして定義される(Scullyら、2012年、2017年、上記参照のこと)。
本明細書で使用する場合、「応答までの時間」とは、TTPの急性エピソード、例えばTTPの初回エピソードおよび/または再発エピソードを有する患者の第1の処置と、150,000/μl以上の血小板数との間の時間であり、ここで、第1の処置は、PEもしくは本発明のポリペプチドの投与、またはこれら両方のうち、いずれか早い方である。
本明細書で使用する場合、「不応状態」または「不応性」という用語は、5回のPEおよびステロイド処置にもかかわらず、持続性の血小板減少症、持続的な血小板数の増大がないこと、または5010−1未満の血小板数、および持続的に高いLDHレベル(>1.5ULN)を指し、寛解を達成できない対象、または血小板数およびLDHレベルは向上するが継続的な処置にもかかわらず悪化する対象を含む。
「血漿交換」(「PE」または「PEX」)という用語は、血漿のバルク除去、すなわち大量の血漿(通常は1〜1.5の血漿量)を除去し、補液で補充する手技(Winters、2012年、Hematology ASH Education Book 1巻:7〜12頁)により、TTPを含む様々な疾患を処置するために使用される治療手技を指す。血漿のバルク除去および補充を通じて、PEは、ADAMTS13およびULvWFに対する自己抗体のような病的物質を除去するが、いくらかの血小板も除去する。血漿は、TTPを処置する際にADAMTS13を補充するための補液として使用される(McLeod Best Pract Res Clin Haematol.2006年;19巻:157〜167頁)。血漿のバルク除去および補充は臨床検査にも影響し、患者の検査を複雑にする。
PEは血漿のバルク除去を伴うため、血漿中を循環するものはすべて除去される。よって、この手技は非選択的であり、正常な血漿成分および病的な血漿成分の両方を除去するだけでなく、PE前に投与されたTTPを処置するためのあらゆる薬物も除去する。
TTPの処置におけるPEの利点にもかかわらず、本発明では、カプラシズマブがフロントライン療法として開始した場合に有益であることが示された。「フロントライン」療法(またはフロントライン処置)という用語は、疾患、例えばTTPに対して与えられる第1の処置(別称「一次」処置)を指す。フロントライン療法の次に、PEおよび補助的な免疫抑制処置(例えば、(メチル)−プレドニゾロンもしくは(メチル)−プレドニゾンのようなコルチコステロイド;またはリツキシマブ)、抗血小板剤(例えばアスピリン)、赤血球輸血もしくは葉酸補充を用いる支持療法、ビンクリスチンもしくはシクロスポリン、抗自己ADAMTS13抗体、またはADAMTS13を用いる処置のような、さらなる処置を加えてもよいし、または代わりに使用してもよい。
当業者は、血小板の数の判定に精通している。血小板計数は、血球計数器を使用した手作業、または自動分析計を用いた方法、例えば電子計数のような、当該分野で公知である任意の方法によって行うことができる。計数は、血液塗抹検査中に推定することもできる。この微視的方法では、位相差顕微鏡を使用して血球計数器スライド上の血液を見る。血小板の電子計数が最も一般的な方法である。電子計数には、電圧パルス計数システムおよび電気光学的計数システムの2種類がある。例えば、ADVIA(登録商標)血液分析器を使用して、血小板数を得て、この得られた計数を、Wright染色した血液塗抹標本における計数を推定することによって検証することができる。ADVIAは、光散乱の原理に基づいたフローサイトメトリーによって血小板を測定する。例えば、血小板は、それらのサイズ(<30FL、低角度光散乱)および屈折率(n=1.35からn=1.40、または高角度光散乱)によって識別される。
TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードの後の様々な患者において、前記患者がPE(「先行するPE」;本発明のポリペプチドの第1の用量の投与に先行するPE)を受けた後に、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含む本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを投与した。
したがって、本発明は、PEを必要とする患者、例えば、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードを有する患者にPE(先行PE)を行い、その後、前記先行PEから24時間以内に次のPEを行い、前記次のPEの開始の約8時間前、7時間前、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、3時間前、1時間前、45分前、30分前、20分前、15分前、10分前、またはさらには5分前、例えば前記次のPE(「第1のPE」)の開始の6時間から15分前に、本発明のポリペプチド(「第1の用量」)を投与することに関する。本発明において、「第1の用量」という用語は、例えばTTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードの後の、投与を必要とする患者への本発明のポリペプチドの第1の投与を意味する。
一実施形態において、患者への本発明のポリペプチドの投与、好ましくは第1の用量の後には、5分から8時間以内、例えば10分から6時間または15分から4時間以内、例えば8時間以内、7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、3時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、またはさらには5分以内に、PEが続く。
本発明において、「第1のPE」という用語は、本発明のポリペプチドの第1の用量を患者に投与した後(または場合によってはそれと同時に)行われる第1のPEを意味する。
本発明のポリペプチドは、溶液(例えば、注射液および輸注液)の形態で投与するか、または溶液形態での投与のために使用することができる。このような組成物は、非経口方式(例えば、皮下、腹腔内、もしくは筋肉内注射)、または吸入によって投与することができる。本明細書で使用する「非経口投与」および「非経口投与される」という表現は、経腸投与および局所投与以外の投与方式で、通常は注射によるものを意味し、皮下(s.c.)または筋肉内投与のほか、静脈内(i.v.)、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、表皮下、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射ならびに輸注を含む。好ましくは、本明細書に記載の本発明のポリペプチドの第2またはさらなる用量は、皮下投与される。
好ましくは、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードの後の、本発明のポリペプチドの第1の用量の投与は、1分間または2分間にわたり一度に投与される、例えば静脈ラインを通じてポリペプチドを送達する、静脈内ボーラス注射である。さらにより好ましくは、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードの後の、本発明のポリペプチドの第1の用量の投与は、約30秒未満の時間で一度に投与される、例えば静脈ラインを通じてポリペプチドを送達する、静脈内プッシュ注射である。
本発明者らは、健康なボランティアでの先行研究およびTTP患者での本試験において実証されたように本発明のポリペプチドが安全に使用できること(実施例を参照のこと)、TTPは特に初回TTPエピソードにおいて診断し難い場合があること、ならびに、処置開始前に時間を損失すると困難な状況に陥ることを考慮して、この発見には、本発明のポリペプチドでの処置をタイムリーに、患者が病院に入る前でも、例えば救急車の中ですぐに開始することができるという利点があると結論付けた。好ましくは、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aは、静脈内プッシュ注射によって投与されるが、それは、静脈内プッシュ注射が病院外で容易に行うことができ、したがって貴重な時間を節約できるからである。
したがって、本発明は、例えば、TTPの急性エピソード(急性発作)、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードを有する患者のような、投与を必要とする患者に、PEの開始の約8時間前、7時間前、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、3時間前、1時間前、45分前、30分前、20分前、15分前、10分前、またはさらには5分前、例えば6時間から15分前に、本発明のポリペプチドを投与すること(「第1の用量」)に関する。
一実施形態において、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードの後の、本発明のポリペプチドの第1の用量の投与の後には、PE(「第1のPE」)が続く。この第1のPEには、先行PEが先行するか否かを問わず、本発明のポリペプチドの第2またはさらなる用量(「第2の用量」または「さらなる用量」)の投与が続く。好ましくは、第2の用量またはさらなる用量は、第1のPE後、120、90、または60分以内、例えば1〜60分以内、例えば50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、またはさらには1分以内に投与される。場合によっては、第2またはさらなる用量を補液、例えばPEの血漿と一緒に、または同時に投与することが有利でありうる。
さらなる実施形態において、本発明のポリペプチドの第1の用量、第2の用量、またはさらなる用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、または40、50、60、70または80mg、好ましくは5〜40mg、さらにより好ましくは10mgまたは11mgであり、この量は、投与を必要とする患者に、好ましくは1日に投与することができる。例えば小児および青年のような若年患者への投与の場合、この用量を患者の体重に合わせて調節してもよい。特定の実施形態において、この用量は、約0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.12、0.14、0.15、0.16、1.08、0.2、0.22、0.24または0.25mg/kg、好ましくは0.143mg/kgであり、これは、70kgの成人で10mgの用量に相当する。他の実施形態では、前記小児または青年の体重が40kg未満の場合、この用量は、約5mgである。
一実施形態において、本発明は、PE手技、例えば第1のPE、第2のPE、またはさらなるPE後1〜60分以内の、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−A約5から40mg、好ましくは10mgまたは11mgの投与に関する。
一実施形態において、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aは、投与を必要とするTTP患者、好ましくは、血小板数が血漿1μl当たり100,000未満の患者、および/またはADAMTS13活性が10%以下、例えば5%以下の患者に、1日1回または1日2回投与される。
さらなる一実施形態において、処置を必要とするTTP患者は、(i)PE;および(ii)工程(i)の前記PEから60分から1分後の、前記ポリペプチド5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量で処置され、ここで、工程(i)および工程(ii)は、前記患者の血小板数が血漿1μl当たり少なくとも50,000、例えば血漿1μl当たり75,000、100,000、125,000、またはさらには150,000になるまで、1日1回または2回繰り返される。
場合によっては、完全寛解(血漿1μl当たり150,000以上の血小板数)の後に工程(i)および工程(ii)を最低でも2日間繰り返すことが有利でありうる。
一実施形態において、本発明のポリペプチド5〜40mgは、前記患者の血小板数が血漿1μl当たり150.000以上になった後、特に、前記患者のADAMTS13活性が10%以下、例えば5%以下になった後、または最後のPEの後、少なくとも5、10、15、20、25、30、60、90、またはさらには120日間にわたり、1日1回または1日2回投与される。
よって、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソード後のヒトTTP患者に投与すると、前記ポリペプチドの投与および前記PEの順序に関係なく、例えば、PEが本発明のポリペプチドの第1の用量の投与の前に行われようと、または後に行われようと、応答までの時間における予想外の減少がもたらされる。
驚くべきことに、二重盲検(DB)処置期間中に、初回の処置割り当てに対する盲検性を維持しながら、連日血漿交換(PEX)の再開および免疫抑制と併せて、患者を非盲検(「OL」)カプラシズマブに切り替えたとき、増悪の回数が減少したことがさらに見出された(実施例7.13を参照のこと)。
本明細書で使用する「増悪」という用語は、血小板応答確認の後に起こり、連日PEの最終回から1日以上30日以下が経ってから連日PE処置の再開を必要とする、再発性血小板減少症を指す。
これが示すのは、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aが、TTP(の症状)の処置および/または緩和の唯一の原因でありうるということである。
したがって、本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aであって、ヒトが40kg以上の体重を有する場合は前記ポリペプチド1〜80mgまたは5〜40mg、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、60、70または80mg、好ましくは10mgまたは11mg、前記体重が40kg未満であれば5mgの用量をヒトに投与することにより、処置を必要とする前記ヒトにおけるTTPのようなvWF関連疾患を処置することに使用するための、ポリペプチドに関する。
本明細書における驚くべき観察に基づき、本発明者らは、CAP(カプラシズマブ)アームでは、プラセボアームと比較して、血小板応答確認時間の分布が短く、右(より長い応答までの時間)への歪みおよびバイアスがないという考えに本質的に基づく、さらなる最適化された処置プロトコールを設計した。このさらなる最適化された処置プロトコールでは、3日間または4日間または5日間のような3〜5日間、好ましくは3日間に設定した一定のPE処置期間で、すべての対象を処置した。この場合、PE処置期間は、血小板の回復(150,000/μl以上)とは無関係でありうる。さらなる最適化された処置プロトコールでは、患者の負担およびコストが減少する。
したがって、本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aであって:(i)PEを行うことと;(ii)本発明のポリペプチド5〜40mg、例えば10mgまたは11mgの用量を、工程(i)の前記PEから15分から4時間後に投与することとを含み(ここで、工程(i)および工程(ii)は、3日間、4日間、または5日間のような3〜5日間、好ましくは3日間にわたって1日1回繰り返される);続いて、前記ポリペプチド5〜40mg、例えば10mgまたは11mgの用量を、少なくとも10日間、例えば少なくとも20日間もしくは少なくとも30日間にわたり、および/または、前記患者の血小板数が初めて150.000/μl以上になった後、少なくとも10日間、例えば少なくとも20日間もしくは少なくとも30日間にわたり、1日1回投与することをさらに含む、
処置を必要とするヒトのvWF関連疾患を処置することに使用するための、ポリペプチドに関する。
本試験では、最長1年間にわたり、TTP患者を寛解について経過観察した。本明細書で使用する「寛解」という用語は、血小板応答確認および増悪がないことを指す。本明細書で使用する「血小板応答確認」という用語は、150,000/μL以上の血小板の回復として定義される処置応答までの時間を指し、この応答は、150,000/μL以上の血小板の新規測定値、および好ましくは2×ULN以下のLDHにより、150,000/μL超の血小板回復が初めて報告されてから48時間後に確認されなければならない。
上述のように、血小板数は、寛解を評価するための主要な手段である。古典的TTPの病歴がある患者におけるADAMTS13活性の測定は重要であるが、これは、低いレベルが再発を予測することが示されているためである。しかしながら、ADAMTS13に対する阻害性抗体の力価が重要であるかどうか、すなわち、高い力価の抗ADAMTS13抗体を有する個体が再発する可能性が、低い力価を有するものよりも高いかどうかに関しては、現時点では不明である(そしてデータには矛盾がある)。当業者には、ADAMTS13の現行試験が静的条件下で行われており、インビボで生じる生理的変化を必ずしも正確に反映するわけではないことが理解される(http://practical−haemostasis.com/Miscellaneous/Miscellaneous%20Tests/adamts13_assays.html)。
寛解は、処置(例えば、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aの第1の用量の投与)開始時に、ベースラインADAMTS13活性が低い(すなわち10%未満、例えば5%未満の)対象の部分群において、より顕著であるようである。
したがって、本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドであって、ヒトの血小板数が150000/μl以上になるまで、前記ポリペプチド1〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの第1の用量を前記ヒトに投与することにより、処置を必要とする前記ヒトのvWF関連疾患を処置することに使用するための、ポリペプチドに関する。好ましい一態様において、前記ヒトは、前記ポリペプチドを投与するとき、5%未満のような、10%未満のADAMTS13活性を有する。
本明細書で使用する「再発」という用語は、連日PEの最終回から30日後よりも後に起こるTTPの新規事象を指す。
ADAMTS13活性は、TTPの再発およびその処置を決定する可能性に関する予測マーカーである。ADAMTS13活性は、カプラシズマブ処置の停止後まもなく起こる再発を予測することができる。こうした再発は、症候性TTPエピソードの再発(絶えず低いADAMTS13活性に基づく、未解消の疾患活性)とみなされる。30日にわたるカプラシズマブでの処置期間(PE後)は、増悪の回数に重大な影響を及ぼすことが実証されている。よって、再発のリスクがある患者(すなわち、ADAMTS13活性に基づく基礎疾患活性を有する患者)のカプラシズマブ処置期間を延長すれば、基礎疾患が適切に処置され解決されるまで、カプラシズマブの保護効果が維持される。反対に、カプラシズマブを用いた予防処置は、TTPの(新しい)急性エピソードのリスクを低減させる。
よって、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aでの処置は、高いADAMTS13活性を有する患者と比較して長い期間にわたって継続すべきである。本発明のポリペプチドは、ADAMTS13活性が、正常活性または基準活性と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、またはさらには50%になるまで、再発のリスクを低減させ、および/または再発の機会を防止するために、TTP患者に投与されるべきである。
したがって、本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドであって、工程(i):前記ポリペプチド5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を前記ヒトに投与することを含む、リスクの低減および/またはその防止を必要とするヒトにおける、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードのリスクを低減させ、および/またはそれを防止することに使用するための、ポリペプチドに関する。好ましくは、前記リスクは、少なくとも1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.75、1.8、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減する。好ましくは、前記リスクは、10%またはさらにはそれ以上、例えば20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上、例えば80%、またはさらには100%だけ低減する。
したがって、本発明は、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患を処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドを前記ヒトに投与する前記工程は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回、またはさらには20回のような10回超の回数、好ましくは30回超またはさらにはそれ以上の回数繰り返される。
したがって、本発明は、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患を処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドを前記ヒトに投与する前記工程は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはさらにはそれ以上のような30日より長い期間にわたって繰り返される。
したがって、本発明は、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患を処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、ここで、前記用量は、1日1回または1日2回投与される。
したがって、本発明は、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患を処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、該処置および/または防止は、
(ii)ADAMTS13活性を基準ADAMTS13活性と比較することと;
(iii)前記ADAMTS13活性が前記基準ADAMTS13活性の30%未満、例えば20%、15%、10%、または5%であれば、前記ポリペプチドを前記ヒトに投与する前記工程(i)を繰り返すことと
をさらに含む。
したがって、本発明は、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患を処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、ここで、前記患者の前記ADAMTS13活性は、毎日、または2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日毎、好ましくは少なくとも1週間に1回測定および/または比較される。
したがって、本発明は、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患を処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、ここで、本発明のポリペプチドを前記ヒトに投与する工程は、前記ADAMTS13活性が、前記基準ADAMTS13活性の少なくとも5%、10%、15%、例えば20%、またはさらには30%もしくはそれ以上になるまで繰り返される。
したがって、本発明は、2つの抗ヒトフォンウィルブランド因子(vWF)免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチド1〜80mg、好ましくは5〜40mg、さらにより好ましくは10mgまたは11mgの用量を、ADAMTS13活性が基準ADAMTS13活性の10%超になるまで、1日1回または1日2回、ヒトに投与することと;場合により、少なくとも2日、例えば少なくとも5日、7日、またはさらにはそれ以上、例えば14日、21日、またはさらには少なくとも1か月の期間にわたり、前記ADAMTS13活性が基準ADAMTS13活性の10%超になるまで、前記投与工程を繰り返すこととを含む、前記ヒトのvWF関連疾患の増悪(の症状)を処置することに使用するための、ポリペプチドに関する。
したがって、本発明は、2つの抗ヒトフォンウィルブランド因子(vWF)免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチド1〜80mg、好ましくは5〜40mg、さらにより好ましくは10mgまたは11mgの用量を、ADAMTS13活性が基準ADAMTS13活性の10%超になるまで、1日1回または1日2回、ヒトに投与することと;場合により、少なくとも2日、例えば少なくとも5日、7日、またはさらにはそれ以上、例えば14日、21日、またはさらには少なくとも1か月の期間にわたり、前記ADAMTS13活性が基準ADAMTS13活性の10%超になるまで、前記投与工程を繰り返すこととを含む、前記ヒトのvWF関連疾患の再発(の症状)を処置することに使用するための、ポリペプチドに関する。
したがって、本発明は、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患を処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドを前記ヒトに投与する工程は、前記ADAMTS13活性が、少なくとも2回の連続した測定で前記基準ADAMTS13活性の少なくとも5%、10%、15%、例えば20%または30%になるまで繰り返される。好ましくは、前記2回の連続した測定は、少なくとも3日の間隔のような、少なくとも24時間、より好ましくは48時間の間隔、またはさらには4日、5日、6日、もしくはさらには7日のようなそれ以上の間隔、好ましくは1週間の間隔をおく。
したがって、本発明は、本明細書に記載の処置および/または防止を必要とするヒトのvWF関連疾患を処置および/または防止することに使用するための、本明細書に記載のポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドを前記ヒトに投与する前記工程は、前記ADAMTS13活性が少なくとも2回の連続した測定で前記基準活性の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、例えば20%または少なくとも30%になった後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは30日より長いかまたはさらにはそれ以上の期間にわたって繰り返される。
したがって、本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドであって、工程(i):前記ポリペプチド5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量をヒトに投与することを含む、リスクの低減および/またはその防止を必要とする前記ヒトにおける、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードのリスクを低減させ、および/またはそれを防止することに使用するための、ポリペプチドに関し、該低減および/または防止は、
− 前記患者のADAMTS13活性を測定することと;
− 前記ADAMTS13活性を基準ADAMTS13活性と比較することと;
− 前記ADAMTS13活性が、前記基準ADAMTS13活性の5%以上、例えば10%以上、またはさらには15%以上、または20%もしくは30%超であれば、該工程(i)を、最長30日間、例えば最長20日間、またはさらには15、10、9、8、7、6、5、4、3、2日間、またはさらには1日間にわたって繰り返すことと
をさらに含む。
したがって、本発明は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドであって、少なくとも次の工程:
(i)場合により、前記患者のADAMTS13活性を測定することと;
(ii)場合により、前記ADAMTS13活性を基準ADAMTS13活性と比較することと;
(iii)前記ADAMTS13活性が、前記基準活性の30%、20%、15%、10%、または5%未満であれば、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含む前記ポリペプチド5〜40mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量を前記ヒトに投与することと
を含む、リスクの低減および/またはその防止を必要とするヒトにおける、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードのリスクを低減させ、および/またはそれを防止することに使用するための、ポリペプチドに関する。
本明細書で使用する場合、リスクまたは発生率の低減は、ある対象の、関連性のある(例えば未処置の)対照集団、または本発明に係る処置前の同じ対象との比較における、TTPのようなvWF関連疾患の徴候、症状、もしくは結果の確率または発生率の減少を含む。
本明細書で使用する、TTPのようなvWF関連疾患の徴候、症状、または結果には、臓器損傷、虚血性損傷、微小血栓形成、増悪、死亡率、再発、不応状態、TTPのようなvWF関連疾患の1つまたはそれ以上の疾患マーカー、例えば血小板の数、血小板減少症、神経認知機能、ADAMTS13レベルおよび抗ADAMTS13抗体力価、ADAMTS13活性レベル、心臓マーカー(トロポニンTもしくはトロポニンI)、BNP(脳ナトリウム利尿ペプチド)またはN末端プロ脳ナトリウム利尿ペプチド(NT proBNP)、クレアチニン、ならびに脳損傷マーカー(例えばNSE(神経特異的エノラーゼ)およびSβ100(S100ベータ))、優先的にはLDHレベル、トロポニンTおよび/またはトロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような臓器損傷マーカーのうちのいずれか1つが含まれる。
リスクまたは発生率の低減は、TTPのようなvWF関連疾患の徴候、症状、もしくは結果の発生の遅延または防止を含みうる。リスクまたは発生率は、TTPのようなvWF関連疾患の徴候、症状、または結果の重症度が、臨床的関連性のないようなレベルまで低減した場合にも、低減したとすることができる。つまり、TTPのようなvWF関連疾患の徴候、症状、または結果は存在しうるが、対象の生命、活動、および/または健康状態を危険にさらさないレベルである。いくつかの状況において、TTPのようなvWF関連疾患の発生は、対象が処置期間の間および/またはその後にTTPのようなvWF関連疾患のいかなる兆候をも呈さない程度まで低減する。
処置が提供されれば、かかる処置を行わない場合にTTPのようなvWF関連疾患の徴候、症状、もしくは結果が生じたかどうか、または比較的早く生じたかどうかについて断言できなくなるため、個体のリスクが低減した実際の証拠が得られないことは理解されよう。したがって、リスクの概念、およびリスクの増加または低減は、統計値への言及に過ぎない。さらに、TTPのようなvWF関連疾患の徴候、症状、もしくは結果のリスクの低減は、TTPのようなvWF関連疾患の徴候、症状、もしくは結果の重症度の低減、ならびにTTPのようなvWF関連疾患の徴候、症状、もしくは結果の観察がないこと、またはその観察の遅延に反映される場合がある。
本発明のポリペプチドが、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードのリスクを低減させ、および/またはそれを防止することは理解されよう。よって、TTPの急性エピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードの徴候、症状、または結果も低減する。ULvWFストリングが微小血栓の形成において血小板を消費する後天性TTPの病態生理を考慮して、血小板数の回復が、さらなる微小血栓形成の防止の間接的な尺度であると判断した。後天性TTPに関連する罹患率および急性死亡率は、こうした微小血栓の結果である。
実際、この推論は、臓器損傷マーカーの正常化によって裏付けられる。特に、結果は、トロポニンIおよびT、LDHならびにクレアチニンのような臓器損傷マーカーが正常レベルに戻るのが、プラセボを受ける対象よりも、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを受ける対象において速かったことを示している(実施例を参照のこと)。
よって、結果は、これらの臓器損傷マーカーの正常化速度の上昇が、臨床アウトカムの改善、すなわち、微小血栓によって引き起こされる臓器虚血に起因する臓器損傷のリスクおよび程度の低減、ならびに不応状態の低減に関係すると示唆している。
したがって、本発明は、本明細書に記載の方法であって、
− 臓器損傷、虚血性損傷、および/または微小血栓形成のリスクが、10%、20%、30%、好ましくは少なくとも40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%、またはさらには100%(例えば、vWF関連疾患に起因する臓器損傷、虚血性損傷、および/または微小血栓形成がない状態まで)低減し;
− 臓器損傷、虚血性損傷、および/または微小血栓形成のリスクが、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.75、1.8、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減し;
− 臓器損傷、虚血性損傷、および/または微小血栓形成が、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減し;
− 臓器損傷、虚血性損傷、および/または微小血栓形成が、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.75、1.8、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減し;
− LDHレベル、トロポニンT、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような臓器損傷マーカーが、正常レベルの少なくとも40%、またはさらには、60%、70%、80%、90%、もしくはさらには100%のような、少なくとも50%の割合に戻り;
− LDHレベル、トロポニンT、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような臓器損傷マーカーが、正常レベルの少なくとも20%、例えば30%、またはさらには40%のようなそれ以上の、またはさらには、60%、70%、80%、90%、もしくはさらには100%のような、少なくとも50%の割合だけ向上し(好ましくは、LDHレベル、トロポニンT、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような、前記臓器損傷のマーカーは、処置から30日未満、好ましくは、処置から20日未満、例えば15、10、9、8、7、6、5、4、3、2日未満、またはさらには1日以内に向上する)、
− 血小板の数が、150000/μl以上に保たれ、
− 血小板正常化(150000/μl超)までの時間が、少なくとも10%、20%、30%、35%、39%だけ、好ましくは少なくとも40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%だけ低減し、
− 増悪のリスクが、少なくとも10%、20%、30%、40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減し;
− 増悪のリスクが、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減し;
− 前記vWF関連疾患に起因する死亡率が、10%、20%、30%だけ、好ましくは少なくとも40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減し;
− 前記vWF関連疾患に起因する死亡率が、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減し;
− 寛解が、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.75、1.8、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ増加し、不応状態が、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで低減し;および/または
− 不応状態が、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減する、
方法に関する。
本明細書で使用する「基準活性」という用語は、行われたアッセイにおける5名の健康な対象の平均ADAMTS13活性で、100%に設定されるものを指す。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)−vWF73アッセイでは、正常なヒト血漿プールを使用して較正曲線を生成するが、ここで、回帰曲線の傾きを各較正サンプルについて計算し、これを使用して較正曲線を生成する(傾向線:y=ax+b;式中、x=ADAMTS13(%)であり、y=デルタRFU/デルタ時間である)。次いで、Kokameら(Br J Haematol.2005年、129巻:93〜100頁)によって説明されているように、サンプルのADAMTS13活性(%)を次のように計算する:(y−b)×1/a。実際、再発した患者は概して、再発しなかった患者よりも低いADAMTS13活性を有した。
したがって、本発明は、リスクの低減および/またはその防止を必要とするヒトにおける、例えば、TTPのようなvWF関連疾患、TTPのエピソード、例えば初回TTPエピソードおよび/または再発TTPエピソードによって引き起こされる、虚血性損傷、臓器損傷および/または微小血栓形成のリスクを低減させ、および/またはそれを防止するためのポリペプチドに関し、該低減および/または防止は、少なくとも次の、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチド5〜40mg/日、好ましくは10mg/日または11mg/日の用量を前記ヒトに投与する工程(i)を含み;ここで、前記ポリペプチドの投与は、少なくとも10%、20%、30%だけ、好ましくは少なくとも40%、またはさらには少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%まで、虚血性損傷、臓器損傷および/または微小血栓形成のリスクを低減させ、および/またはそれを防止する。好ましくは、前記ポリペプチドの投与は、虚血性損傷、臓器損傷、不応状態、および/または微小血栓形成のリスクを、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.75、1.8、2またはそれ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10、またはさらにはそれ以上、例えば20、50、またはさらには100の倍数だけ低減させ、および/またはそれを防止する。
したがって、本発明は、本明細書に記載される虚血性損傷、臓器損傷、不応状態および/または微小血栓形成のリスクを低減させ、および/またはそれを防止するためのポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドを投与する前記工程は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7日間、またはさらには1週間、2週間、3週間のようなそれより長い期間、またはさらには1か月、もしくはさらには2か月のようなそれより長い期間にわたって繰り返される。
したがって、本発明は、前記患者のADAMTS13活性を、好ましくは1週間に1回測定することをさらに含む、本明細書に記載される虚血性損傷、臓器損傷、不応状態、および/または微小血栓形成のリスクを低減させ、および/またはそれを防止するためのポリペプチドに関する。
したがって、本発明は、本明細書に記載される虚血性損傷、臓器損傷、不応状態、および/または微小血栓形成のリスクを低減させ、および/またはそれを防止するためのポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドを投与する前記工程(i)は、ADAMTS13活性が[初めて]基準ADAMTS13活性の5%以上、例えば10%以上、またはさらには15%以上になったとき、少なくとも1、2、3、4、5、6、7日間、またはさらには1週間、2週間、3週間のようなそれより長い期間、またはさらには1か月、もしくはさらには2か月のようなそれより長い期間にわたって繰り返される。
したがって、本発明は、本明細書に記載されるTTPのようなvWF関連疾患を患うヒトの前記疾患の症状を処置するための本発明のポリペプチドに関し、該処置は、前記疾患を患うヒトのvWF関連疾患の症状を処置するのに有効な量で、本発明のポリペプチドを対象に投与することを含む。
したがって、本発明は、本明細書に記載される、ヒトにおけるTTPのようなvWF関連疾患の発症または進行を阻害するための本発明のポリペプチドに関し、この阻害は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドがvWFに結合することによってもたらされ、該阻害は、阻害有効量の前記ポリペプチドを所定の間隔でヒトに投与することを含み、ここで、抗体の各投与は、ヒトにおける疾患の発症または進行を阻害するように、ヒトの体重1kg当たり0.1mgから25mg、好ましくは、前記ヒトが40kg以上の体重を有する場合は前記ポリペプチド10mgまたは11mg、前記体重が40kg未満であれば5mgをヒトに送達する。
したがって、本発明は、本明細書に記載される、フォンウィルブランド因子(vWF)に対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを所定の用量でヒトに投与することを含む、ヒトがvWF関連疾患による虚血性臓器損傷を被る尤度を低減させるためのポリペプチドに関し、ここで、抗体の各投与は、ヒトが虚血性臓器損傷を被る尤度を低減させるように、ヒトの体重1kg当たり0.1mgから25mg、好ましくは、前記ヒトが40kg以上の体重を有する場合は前記ポリペプチド10mgまたは11mg、前記体重が40kg未満であれば5mgをヒトに送達する。
これらの結果に基づくモデリングは、本発明のポリペプチドの投与を長期間にわたって維持することが、急性エピソードの防止に効果的であることを示す。この有利なプロファイルは、健康被害の減少をもたらす。よって、本発明のポリペプチドは再発を予防すると結論付けることができる。
したがって、本発明は、好ましくはTTPの急性エピソードを防止するうえで、本発明のポリペプチドを、5〜40mgのような1〜80mgの範囲の用量で、1、2、3、4、5、6、7日、またはさらには2、4、6、もしくは8週毎に投与することに関する。特定の効果的な用量は、10〜20mgである。特定の実施形態において、この用量は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、60、70または80mg、好ましくは10mgまたは11mgを含む。小児および青年のような、体重が40kg未満のヒトにおける特定の効果的な用量は、2〜10mgである。特定の実施形態において、この用量は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを約2、3、4、5、6、7、8、9または10mg、好ましくは5mg含む。
一実施形態において、本発明は、TTP患者における再発を防止する方法であって、
(1)場合により、TTP患者から、直接的アッセイまたは間接的アッセイのようなアッセイによって、ADAMTS13活性を測定することと;
(2)場合により、TTP患者のADAMTS13活性を基準値(正常値)と比較することと;
(3)TTP患者のADAMTS13活性が、基準値の15%未満、例えば10%未満および5%未満であれば本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを投与することと;
を含み、これにより再発を防止する方法に関する。
予備的結果は、第1のPE前に本発明のポリペプチドの第1の用量を投与するだけで、血小板の数の増加がもたらされることを示唆している。
したがって、本発明は、本発明のポリペプチドを必要とする患者、例えば、TTPの急性エピソード、例えばTTPの初回および/または再発エピソードを経験している患者に、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドを、例えばALX0081またはALX0081−A約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、60、70または80mg、好ましくは10mgまたは11mgの用量で投与することに関する。
vWFに対する少なくとも1つのISVDを含む本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aは、vWF関連疾患、例えばTTPを処置または防止する(例えば、該疾患に関連する1つまたはそれ以上の症状を低減または寛解させる)ために、対象(例えば、ヒト対象)に、単独で投与してもよいし、または第2の薬剤、例えば、治療的もしくは薬理学的に活性な第2の薬剤と組み合わせて投与してもよい。
治療的もしくは薬理学的に活性な第2の薬剤として使用することができる、またはvWFに対する少なくとも1つのISVDを含む本発明のポリペプチド、例えばALX0081もしくはALX0081−Aと合剤化することができる薬剤の非限定的な例としては、例えば、補助的な免疫抑制処置(例えば、(メチル)プレドニゾロンもしくは(メチル)−プレドニゾンのようなコルチコステロイド;またはリツキシマブ)、抗血小板剤(例えばアスピリン)、赤血球輸血もしくは葉酸補充を用いる支持療法、ビンクリスチンもしくはシクロスポリン、抗自己ADAMTS13抗体、またはADAMTS13を用いる処置が挙げられる。このような併用療法は、有利なことには、投与する治療剤をより低い投与量で利用することにより、様々な単独療法に関連する毒性または合併症の可能性を回避することができる。
一実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドを、免疫抑制処置、特にリツキシマブと合わせた、TTP患者における再発を効率的に防止する併用療法に関する。好ましくは、併用療法は、ADAMTS13活性が、正常な活性の少なくとも5%以上、例えば10%以上、15%超、20%超、25%、30%、35%、40%、45%、またはさらには50%以上のような正常化した割合になるまで提供される。
TTPの診断は依然として、臨床歴、患者の診察、および血液塗抹標本に基づいている。ADAMTS13アッセイは、診断を確認し、疾患の経過、およびさらなる処置が必要な可能性をモニタリングするのに役立つ。TTPの急性エピソードは、表1、および例えばScullyら(2012年、2017年、上記参照)のガイドラインに従って診断することができる。
Figure 2021512947
特定の本発明のポリペプチドまたは投薬レジメンの効能はいずれも、当業者に利用可能な方法によって判定することができる。簡潔に述べると、臨床治験中、医療関係者によって患者を観察し、任意の組み合わせの判断基準によって疾患の状態を評価する。こうした判断基準に基づき、患者の病状の改善を多数の時点で判定し、患者集団におけるこうした判定事項の組み合わせをプロットして、処置の効能を評価する。
例示的な実施形態において、効能の評価は、以下に示す判断基準のうちのいずれかまたはすべてによって測定することができる:
・150,000/μL以上の血小板の回復によって定義される、処置応答までの時間。この応答は、150,000/μL以上の血小板の新規測定値、および好ましくは2×ULN以下のLDHにより、150,000/μL超の血小板回復が初めて報告されてから48時間後に確認されなければならない。
・完全寛解した対象の数
・TTPの増悪(増悪した対象)の数およびTTPの第1の増悪までの時間。増悪は、応答の後に起こり、連日PEの最終回から1日以上30日以下が経ってから連日PE処置の再開を必要とする、再発性血小板減少症と定義される。
・最長1年にわたってTTPの再発(連日PEの最終回から30日後よりも後に起こるTTPの新規事象と定義される)がある対象の数、およびTTPの第1の再発までの時間
・連日PE処置に関連する重篤有害事象(SAE)を含む、連日PEのデータ
・完全寛解時および1年間の経過観察における神経認知試験バッテリーによって測定される神経認知機能。この試験の前には、グラスゴー昏睡スコアによって対象の意識の状態を測定することが先行する
・臓器機能不全の改善ならびにTTPに関連する兆候および症状の改善
・連日PE処置期間中および後の試験薬処置期間中(テーパリングを含む)の全死亡率
・ディスインテグリン様ドメインおよびトロンボスポンジンリピートを有するメタロプロテアーゼ13(ADAMTS13)のレベルならびに抗ADAMTS13抗体力価を含むがこれらに限定されない、TTPのバイオマーカーの判定
当業者は、効能の判定に精通している。
例えば、ADAMTS13活性は、vWF多量体の電気泳動を使用して、プロテアーゼによって切断されない超大型多量体を検出することによって評価することができる(Moakeら(1982年)、The New England journal of medicine 307巻、1432〜1435頁;Furlanら(1997年)、Blood 89巻、3097〜3103頁7、8)。ADAMTS13活性は、ADAMTS13によって切断されると蛍光を発するように化学修飾されたvWFの断片である、FRETS−vWF73を用いて試験してもよい。このアッセイでは、FRETS−vWF73を患者の血漿サンプルに加え、蛍光の変化を経時的に測定して、ADAMTS13活性を判定する。阻害物質が存在する場合、これは、ELISAによって測定することができる、ADAMTS13に対する中和IgG抗体であることが多い(Kokameら(2005年)、British journal of haematology 129巻、93〜100頁)。代替的に、またはさらに、ADAMTS13活性は、例えば、Veselyら(2003年、上記参照)、Fontanaら(2004年、上記参照)、またはRemuzziら(Blood 2002年;100巻:778〜7852002頁)に記載されているように判定することができる。例えば、間接的なADAMTS13活性アッセイは、完全長VWF分子か、またはVWFのA2ドメイン内にあるADAMTS13切断部位を包含するVWF断片のいずれかである生成物の切断を検出することを含む。(1)コラーゲン結合アッセイ。VWFを変性させるBaClおよび1.5M尿素の存在下で、正常血漿または精製されたVWFを、試験血漿サンプルとともにインキュベートする。ADAMTS13によってVWFを切断させ、残留するVWFを、そのIII型コラーゲンへの結合によって測定する。結合したVWFを、コンジュゲートされた抗VWF抗体を用いるELISAアッセイを使用して定量化する。(2)リストセチン誘導性凝集。これは、上記のコラーゲン結合アッセイに似ているが、残留するVWFは、血小板凝集計を使用して、リストセチンによって誘導される血小板凝集によって測定される。(3)機能的ELISAアッセイ。このアッセイでは、VWF上のタグに対する抗体を使用して、組換えVWF断片をELISAプレート上に固定化する。VWF断片は、A2ドメイン、およびTyr1605−Met1606におけるADAMTS13切断部位をコードし、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ[GST]−ヒスチジンでタグ付けされている[GST−VWF73−His]。固定化されたGST−VWF73−His断片に血漿を加えると、固定化断片の切断がADAMTS13切断部位で起こる。切断されたVWF断片のみを認識し、インタクトな断片を認識しない第2のモノクローナル抗体を使用することにより、残留する切断されたVWF断片を測定する。したがって、ADAMTS13活性は、残留基質濃度に反比例する。この方法は、TECHNOZYM(登録商標)ADAMTS13 Activity ELISAの基礎を形成するものである。
当業者は、ADAMTS13に対する自己抗体の判定に精通しており、例えば、抗ADAMTS13自己抗体を、TECHNOZYM(登録商標)ADAMTS13 INH ELISA(Technoclone)のようなELISAによって判定することができる。
当業者は、ヒトサンプルにおけるリストセチン補因子活性の判定に精通しており、例えば、リストセチン補因子を、凝集計であるPAP−8E analyzer(Bio/Data corp.)において、Bio/Data corpのvW Select(登録商標)によって判定することができる。
当業者は、例えば、STA−R evolution analyzer(Diagnostica Stago)において、Coamatic Factor VIII(Chromogenix)を使用して、ヒトサンプルにおける第VIII因子を判定することに精通している。
当業者は、例えば、STA−R evolution analyzer(Diagnostica Stago)において、免疫比濁法アッセイを使用して(例えば、STA Lia test vWF:Agを使用して)、ヒトサンプルにおけるフォンウィルブランド因子抗原を判定することに精通している。
当業者は、LDHレベルの判定に精通している。ほとんどの方法は、分光光度計での乳酸デヒドロゲナーゼに基づく酵素的分析に基づく。簡便な総説は、Medboら(2000年)、「Examination of four different instruments for measuring blood lactate concentration」.Scand J Clin Lab Invest 60巻:367〜380頁に提示されている。様々な企業が、乳酸およびピルビン酸の相互変換のLDHによる触媒作用を測定するAbnova(カタログ番号KA1653)、すなわち、NADH結合酵素反応において、テトラゾリウム塩MTTが、565nmで吸収極大を呈する還元型のMTTに還元されることに基づく、非放射性比色LDHアッセイのようなアッセイを提供している。生じる紫色の強度は、酵素活性に正比例する。同様に、Sigma Aldrichキット(MAK066−1KT)では、LDHがNADをNADHに還元させ、これを比色(450nm)アッセイによって特異的に検出する。正常レベルを以下の表1.1に提示する。
当業者は、トロポニンIおよびTの判定に精通している。概して、トロポニンTおよびIはイムノアッセイ方法によって測定され、イムノアッセイ方法は、多くの様々なイムノアッセイプラットフォーム、例えばDPC Immulite、Abbott AxSYM、Bayer ACS:Centaur、Ortho Vitros、Roche Elecsys(第3世代)において利用可能である。簡便な総説は、Wuら(1999年)National Academy of Clinical Biochemistry Standards of Laboratory Practice:recommendations for the use of cardiac markers in coronary artery diseases.Clin Chem.1999年7月;45巻(7号):1104〜21頁に提示されている。正常レベルを以下の表1.1に提示する。
当業者は、クレアチニンの判定に精通している。簡便な総説は、PeakeおよびWhiting「Measurement of Serum Creatinine−Current Status and Future Goals」Clin Biochem Rev.2006年11月;27巻(4号):173〜184頁に提示されている。例えば、クレアチニンレベルは、AbcamのCreatinine Assay Kit(ab65340)またはBioVisionのCreatinine Assay Kitによって判定することができる。このアッセイでは、クレアチニンをクレアチニナーゼによってクレアチンに変換させ、クレアチンをサルコシンに変換させ、これを特異的に酸化させて、プローブと反応して赤色(λmax=570nm)および蛍光(Ex/Em=538/587nm)を生じる生成物を生成する。正常レベルを以下の表1.1に提示する。血液中のクレアチニンの量は筋肉量とともに増加するため、男性は通常、女性より高いクレアチニンレベルを有する。
Figure 2021512947
表1.1に提示した正常レベルが、実験室毎に、男性と女性の間で、そして年齢によって異なりうることは理解されよう。とはいえ、当業者であれば、使用されるアッセイに応じて、メーカーによって提示される正常レベルを、または代替的には、特定の設定において臨床医によって評価される正常レベルを、通常は基準として使用できることを考慮するであろう。
本発明のポリペプチドは、典型的には、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含む。本発明のISVDは、vWFに結合し、および/またはvWFへの(「vWFに対する」)親和性を有する。本発明の範囲において、「vWF」は、カニクイザル、ヒヒ、ブタ、モルモット、マウス、および/またはヒトのvWFを含むがこれらに限定されず、最も好ましくはヒトvWF、すなわち配列番号20またはGenBankエントリー:NP_000543である。
好ましくは、vWFに対するISVDは、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1からFR4)および3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1からCDR3)から本質的になり、ここで:
a)CDR1は:
− アミノ酸配列YNPMG;または
− アミノ酸配列YNPMGとのアミノ酸の差異を2つもしくは1つだけ有するアミノ酸配列
を含むか、またはそれから本質的になり;
b)CDR2は:
− アミノ酸配列AISRTGGSTYYPDSVEG;または
− アミノ酸配列AISRTGGSTYYPDSVEGと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または
− アミノ酸配列AISRTGGSTYYPDSVEGとのアミノ酸の差異を2つもしくは1つだけ有するアミノ酸配列
を含むか、またはそれから本質的になり;
c)CDR3は:
− アミノ酸配列AGVRAEDGRVRTLPSEYTF;または
− アミノ酸配列AGVRAEDGRVRTLPSEYTFと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または
− アミノ酸配列AGVRAEDGRVRTLPSEYTFとのアミノ酸の差異を2つもしくは1つだけ有するアミノ酸配列
を含むか、またはそれから本質的になる。
さらにより好ましくは、vWFに対するISVDは、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1からFR4)および3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1からCDR3)から本質的になり、ここで:
a)CDR1は、YNPMG(配列番号21)であり;
b)CDR2は、AISRTGGSTYYPDSVEG(配列番号22)であり;
c)CDR3は、AGVRAEDGRVRTLPSEYTF(配列番号23)である。
さらにより好ましくは、vWFに対するISVDは、配列番号19(12A02H1)によって表される。
好ましくは、本発明のポリペプチドは、vWFに対する少なくとも2つのISVDを含むか、またはそれらからなる。
さらにより好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号1〜18もしくは24、最も好ましくは配列番号1(ALX0081;INN「カプラシズマブ」)もしくは配列番号24によって定義される、vWFに対する2つのISVDを含むか、またはそれらからなる。ALX0081は、vWFを標的とする2つの同一の一価構成要素からなる、二価のNanobodyである。ALX0081−Aは、C末端アラニンを含むALX0081である。
vWFに対する少なくとも1つのISVD、例えば配列番号1〜19または24を含むポリペプチドは、vWF関連疾患、特に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の処置に使用することができる。
「ポリペプチド」および「アミノ酸配列」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
したがって、例えば、本発明で使用される好適なポリペプチドは、表A−1中の化合物、例えば配列番号1〜19もしくは24、または、表A−1中の配列番号1〜19もしくは24のうちのいずれかによって定義される化合物と、80%もしくはそれ以上、より好ましくは85%もしくはそれ以上、最も好ましくは90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有する化合物を含みうる(「配列同一性」については定義のセクションを参照されたい)。
好ましくは、本発明のポリペプチドに使用される、vWFに対するISVDは、12A02H1様化合物である。本説明の目的において、12A02H1様化合物とは、12A02H1(すなわち配列番号19)を含む化合物か、または、12A02H1(配列番号19)と、80%もしくはそれ以上、より好ましくは85%もしくはそれ以上、最も好ましくは90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有する化合物である。vWFに対する2つのISVDを含むポリペプチドで特に好ましいのは、ALX0081(配列番号1)またはALX0081−A(配列番号24)である。
ラクダ類のVHHドメイン、ラクダ化VHドメイン、またはヒト化VHHドメインのような免疫グロブリン単一可変ドメインは、急速に成長している治療薬のクラスである。例えば、vWFに対する免疫グロブリン単一可変ドメインは、WO2004/015425、WO2004/062551、WO2006/074947、WO2006/122825、WO2009/115614、およびWO2011/067160に記載されている。本発明のポリペプチドに使用される、さらなる好ましい免疫グロブリン単一可変ドメインは、WO06/122825に記載されている改善されたNanobodiesを含む。
別段の指示がない限り、「免疫グロブリン配列」という用語は、本明細書において、重鎖抗体を指すために使用されるか、または従来の4本鎖抗体を指すために使用されるかを問わず、フルサイズの抗体、その個々の鎖だけでなく、そのすべての部分、ドメイン、または断片を含む(それぞれ、抗原結合性ドメインまたはVHHドメインもしくはVH/VLドメインのような断片を含むが、これらに限定されない)一般的用語として使用される。さらに、本明細書で(例えば、「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「可変ドメイン配列」、「VHH配列」、または「タンパク質配列」などの用語において)使用する「配列」という用語は、文脈上より限定された解釈を必要としない限り、概して、関連性のあるアミノ酸配列だけでなく、これをコードする核酸またはヌクレオチド配列の両方を含むものと理解されるべきである。
「単一可変ドメイン」と交換可能に使用される、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(「ISVD」)という用語は、抗原結合部位が単一の免疫グロブリンドメインに存在し、それによって形成されている分子を定義する。これは、2つの免疫グロブリンドメイン(特に2つの可変ドメイン)が相互作用して抗原結合部位を形成する「従来の」免疫グロブリンまたはそれらの断片から、免疫グロブリン単一可変ドメインを区別するものである。典型的に、従来の免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)が相互作用して、抗原結合部位を形成する。この場合、VHおよびVLの両方の相補性決定領域(CDR)が、抗原結合部位に寄与する。すなわち、合計6つのCDRが抗原結合部位の形成に関与する。
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一のVHまたはVLドメインによって形成されている。よって、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位は、3つ以下のCDRによって形成される。
よって、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、抗原結合部位の形成のために少なくとも2つの可変ドメインの相互作用を必要とする従来の免疫グロブリンまたはそれらの断片を含まない。これは、免疫グロブリン単一可変ドメインを「含む(comprise)」または「含む(contain)」本発明の実施形態にも当てはまる。本発明の範囲において、このような実施形態は、従来の免疫グロブリンまたはそれらの断片を除外する。したがって、免疫グロブリン単一可変ドメインを「含む(comprises)」または「含む(contains)」ポリペプチドまたは組成物は、例えば、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む構築物に関しうる。代替的に、免疫グロブリン単一可変ドメイン以外のさらなる構成要素、例えば、様々な種類の助剤、タンパク質タグ、着色剤、染料などが存在してもよい。しかしながら、これらの用語には、抗原結合部位が単一可変ドメインによって形成されている従来の免疫グロブリンの断片が含まれる。
概して、単一可変ドメインは、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1からFR4)および3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1からCDR3)から本質的になるアミノ酸配列である。このような単一可変ドメインおよび断片は、最も好ましくは、免疫グロブリンフォールドを含むか、または好適な条件下で免疫グロブリンフォールドを形成することができるようなものである。したがって、単一可変ドメインは、例えば、軽鎖可変ドメイン配列(例えばVL配列)もしくはその好適な断片;または重鎖可変ドメイン配列(例えばVH配列もしくはVHH配列)もしくはその好適な断片を含みうる;ただし、該ドメインが、単一抗原結合ユニット(すなわち、例えば、機能的抗原結合性ドメインを形成するために別の可変ドメインと(例えばVH/VL相互作用によって)相互作用する必要がある従来の抗体およびscFv断片(一本鎖可変断片)に存在する可変ドメインの場合に例えば当てはまるように、単一抗原結合性ドメインが機能的抗原結合ユニットを形成するために別の可変ドメインと相互作用する必要がないような、単一可変ドメインから本質的になる機能的抗原結合ユニット)を形成することができる場合に限る。
本発明の一実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインは、軽鎖可変ドメイン配列(例えばVL配列)、または重鎖可変ドメイン配列(例えばVH配列)である;より特定すると、免疫グロブリン単一可変ドメインは、従来の4本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列、または重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列(例えばVHH)とすることができる。
重鎖抗体およびその可変ドメインの概説については、とりわけ、本明細書で引用する先行技術、ならびにWO08/020079の59頁で言及される先行技術、および国際出願WO06/040153の41〜43頁で言及される参考資料のリストが参照される。これらの先行技術および参考資料は、参照によって本明細書に組み入れる。これらの参考資料に記載されるように、Nanobodies(特に、VHH配列、および部分的にヒト化されたNanobodies)は、特に、フレームワーク配列のうちの1つまたはそれ以上における1つまたはそれ以上の「ホールマーク残基」の存在によって特徴付けることができる。Nanobodiesのヒト化および/またはラクダ化、ならびに他の改変形態、部分または断片、誘導体または「Nanobody融合物」、多価構築物(リンカー配列のいくつかの非限定的な例を含む)、ならびにNanobodiesおよびそれらの製造物の半減期を増加させる様々な改変形態を含む、Nanobodiesのさらなる説明は、例えば、WO08/101985およびWO08/142164に見出すことができる。
例えば、単一可変ドメインまたは免疫グロブリン単一可変ドメイン(または免疫グロブリン単一可変ドメインとして使用するのに好適なアミノ酸配列)は、(単一)ドメイン抗体(または(単一)ドメイン抗体として使用するのに好適なアミノ酸配列)、「dAb」もしくはdAb(またはdAbとして使用するのに好適なアミノ酸配列)もしくはNanobody(本明細書で定義するとおり、VHH配列を含むがこれに限定されない);他の単一可変ドメイン、またはこれらのいずれか1つの任意の好適な断片であってもよい。(単一)ドメイン抗体の概説については、本明細書で引用する先行技術のほか、EP0368684も参照される。「dAb」という用語については、例えば、Wardら、1989年(Nature 341巻(6242号):544〜6頁)、Holtら、2003年(Trends Biotechnol.21巻(11号):484〜490頁);ならびに、例えばWO04/068820、WO06/030220、WO06/003388、およびDomantis Ltdの他の公開済み特許出願が参照される。また、哺乳動物起源でないため本発明の範囲においてはあまり好ましくないが、単一可変ドメインは、ある特定の種のサメに由来してもよいことに留意されたい(例えば、いわゆる「IgNARドメイン」、例えばWO05/18629を参照されたい)。
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、Nanobody(登録商標)(本明細書で定義するとおり)またはその好適な断片であってもよい。[注:Nanobody(登録商標)、Nanobodies(登録商標)、およびNanoclone(登録商標)は、Ablynx N.V.の登録商標である。]Nanobodiesの概説については、以下のさらなる説明のほか、例えばWO08/020079(16頁)に記載されているような本明細書で引用する先行技術が参照される。
免疫グロブリン配列、特に免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列および構造は、当該分野および本明細書においてそれぞれ「フレームワーク領域1」または「FR1」;「フレームワーク領域2」または「FR2」;「フレームワーク領域3」または「FR3」;および「フレームワーク領域4」または「FR4」という、4つのフレームワーク領域または「FR」からなり;これらのフレームワーク領域は、当該分野でそれぞれ「相補性決定領域1」または「CDR1」;「相補性決定領域2」または「CDR2」;および「相補性決定領域3」または「CDR3」という、3つの相補性決定領域または「CDR」によって中断されているものとみなすことができる(しかしながらこれに限定されるものではない)。
免疫グロブリン単一可変ドメイン内のアミノ酸残基の総数は、110〜120の領域内とすることができ、好ましくは112〜115であり、最も好ましくは113である。しかしながら、免疫グロブリン単一可変ドメインの部分、断片、類似体、または誘導体は、かかる部分、断片、類似体、または誘導体が本明細書に略述するさらなる要件を満たし、また好ましくは、本明細書に記載される目的に好適である限り、それらの長さおよび/またはサイズに関して特に限定されないことに留意されたい。
したがって、本発明の意味において、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」または「単一可変ドメイン」という用語は、非ヒト源、好ましくはラクダ類、好ましくはラクダ重鎖抗体に由来するペプチドを含む。これらは、これまでに例えばWO08/101985およびWO08/142164に記載されているように、ヒト化されている場合がある。さらに、この用語は、これまでに例えばWO08/101985およびWO08/142164に記載されているように、「ラクダ化」されている、非ラクダ類源、例えばマウスまたはヒトに由来するポリペプチドを含む。
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト、およびラクダ類の免疫グロブリン配列を含む、様々な起源の免疫グロブリン配列を包含する。完全ヒト免疫グロブリン配列、ヒト化免疫グロブリン配列、またはキメラ免疫グロブリン配列も含まれる。例えば、ラクダ類免疫グロブリン配列およびヒト化されたラクダ類免疫グロブリン配列、またはラクダ化された免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば、Wardらによって説明された(例えばWO94/04678ならびにDaviesおよびRiechmann 1994年、Febs Lett.339巻:285頁および1996年、Protein Engineering 9巻:531頁を参照されたい)、ラクダ化されたdAbが含まれる。
上記に言及したすべてのvWFに対するISVD(またはvWF結合剤)は、文献から周知である。これには、その製作が含まれる(特に、例えばWO2006/122825、またWO2004/062551も参照されたい)。例えば、ALX0081またはALX0081−Aは、例えばWO2006/122825またはWO2009/115614に記載されているように製造される。
本発明によって提供される免疫グロブリン単一可変ドメインは、好ましくは、単離された形態もしくは本質的に単離された形態にあるか、または本発明のタンパク質もしくはポリペプチドの一部を形成し、これは、1つまたはそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、またはそれらから本質的になってもよく、場合により、1つまたはそれ以上のさらなるアミノ酸配列(すべて、場合により、1つまたはそれ以上の好適なリンカーを介して結合している)をさらに含んでもよい。例えば、限定されるものではないが、かかるタンパク質またはポリペプチドにおいて、1つまたはそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを結合単位として使用してもよく、これは、それぞれ一価、多価、または多特異性の本発明のポリペプチド(すべて本明細書に記載するとおり)をもたらすように、結合単位としての機能を果たしうる(すなわち、細胞関連抗原以外の1つまたはそれ以上の標的に対する)1つまたはそれ以上のさらなるアミノ酸配列を場合により含んでもよい。かかるタンパク質またはポリペプチドは、単離された形態または本質的に単離された形態にあってもよい。したがって、本発明によれば、免疫グロブリン単一可変ドメインは、上記に略述したように、2つまたはそれ以上の抗原結合ユニットを単一ドメインの形態で含む構築物を含む。例えば、同じまたは異なる抗原特異性を有する2つ(またはそれ以上)の免疫グロブリン単一可変ドメインを結合させて、例えば二価、三価、または多価の構築物を形成することができる。2種またはそれ以上の特異性の免疫グロブリン単一可変ドメインを組み合わせることにより、二重特異性、三重特異性などの構築物を形成することができる。例えば、本発明に係るポリペプチドは、Aに対して二価、Bに対して一価になるように、標的Aに対する2つの免疫グロブリン単一可変ドメインと、標的Bに対する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインとを含んでもよい。このような構築物、および当業者であれば容易に想定することができるその改変形態は、すべて本発明に包含される。特定の実施形態において、本発明は、同じ標的抗原内の異なるエピトープに対する少なくとも2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む二パラトープ性構築物に関する。
こうした分子もすべて、本発明の「免疫グロブリン配列」または「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同義である「本発明のポリペプチド」という。
さらに、本明細書で(例えば、「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「可変ドメイン配列」、「VHH配列」、または「タンパク質配列」などの用語において)使用する「配列」という用語は、文脈上より限定された解釈を必要としない限り、概して、関連性のあるアミノ酸配列だけでなく、これをコードする核酸配列またはヌクレオチド配列の両方を含むものと理解されるべきである。
本発明の非限定的な一実施形態によると、免疫グロブリン配列、Nanobody(登録商標)、または本発明のポリペプチドは、グリコシル化されている。本発明の別の非限定的な実施形態によると、免疫グロブリン配列、Nanobody(登録商標)、または本発明のポリペプチドは、グリコシル化されていない。
上記に言及したように、本発明は、vWFに対するISVD、すなわち、本明細書で定義するような抗原、例えばフォンウィルブランド因子(vWF)、好ましくはヒトvWF(配列番号20)に結合し、および/またはそれへの親和性を有するISVDを、典型的には少なくとも1つ、例えば2つまたはそれ以上含むポリペプチドに関する。
本発明の範囲において、ある特定の抗原「に結合し、および/またはそれへの親和性を有する」とは、当該分野において、例えば、抗体およびそれらのそれぞれの抗原という文脈で理解されるような通常の意味を有する。
本発明の特定の実施形態において、「に結合し、および/またはそれへの親和性を有する」という用語は、免疫グロブリン配列がある抗原と特異的に相互作用することを意味し、前記抗原「に対する」免疫グロブリン配列と交換可能に使用される。
「特異性」という用語は、特定の免疫グロブリン配列、抗原結合性分子、または抗原結合性タンパク質(例えばNanobody(登録商標)または本発明のポリペプチド)が結合しうる異なるタイプの抗原または抗原決定基の数を指す。抗原結合性タンパク質の特異性は、親和性および/または結合活性に基づいて判定することができる。抗原と抗原結合性タンパク質の解離の平衡定数(KD)によって表される親和性は、抗原決定基と抗原結合性タンパク質上の抗原結合部位との間の結合強度の尺度である:KDの値が低ければ低いほど、抗原決定基と抗原結合性分子との間の結合強度は高くなる(代替的に、親和性は、1/KDである親和性定数(KA)として表すこともできる)。当業者には明らかであるように(例えば、本明細書におけるさらなる開示内容に基づいて)、親和性は、目的の特定の抗原に応じて、本質的に公知の様式において判定することができる。結合活性は、抗原結合性分子(例えばNanobody(登録商標)または本発明のポリペプチド)と適切な抗原との間の結合の強度の尺度である。結合活性は、抗原決定基と抗原結合性分子上のその抗原結合部位との間の親和性、および抗原結合性分子上に存在する適切な結合部位の数の両方に関する。
典型的に、本発明の免疫グロブリン配列(例えば、本発明のアミノ酸配列、Nanobodies(登録商標)、および/またはポリペプチド)は、10−5から10−12モル/リットルもしくはそれ以下、好ましくは10−7から10−12モル/リットルもしくはそれ以下、より好ましくは10−8から10−12モル/リットルの解離定数(KD)で(すなわち、10から1012リットル/モルもしくはそれ以上、好ましくは10から1012リットル/モルもしくはそれ以上、より好ましくは10から1012リットル/モルの会合定数(KA)で)、それらの抗原に結合し、および/または、10−1−1から約10−1−1の間、好ましくは10−1−1から10−1−1の間、より好ましくは10−1−1から10−1−1の間、例えば10−1−1から10−1−1の間のkon速度で、本明細書で定義する細胞関連抗原に結合し;および/または、1s−1(t1/2=0.69s)から10−6−1の間(複数日のt1/2でほぼ不可逆的な複合体をもたらす)、好ましくは10−2−1から10−6−1の間、より好ましくは10−3−1から10−6−1の間、例えば10−4−1から10−6−1の間のkoff速度で、本明細書で定義する細胞関連抗原に結合する。
10−4M超のいずれのKD値(または10−1未満のいずれのKA値)も、概して、非特異的結合を示すとみなされる。
好ましくは、本発明の一価免疫グロブリン配列は、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば500pM未満の親和性で所望の抗原に結合する。
抗原または抗原決定基への抗原結合性タンパク質の特異的結合は、例えば、Scatchard分析および/または、ラジオイムノアッセイ(RIA)、エンザイムイムノアッセイ(EIA)およびサンドイッチ競合アッセイのような競合結合アッセイ、ならびに当該分野で本質的に公知であるこれらの異なる変化形;ならびに本明細書で言及する他の技術を含む、本質的に公知である任意の好適な様式において判定することができる。
解離定数(KD)は、当業者には明らかであるように、実際の解離定数であっても見かけの解離定数であってもよい。解離定数を判定するための方法は、当業者には明らかであり、例えば、本明細書で言及する技術を含む。この点において、10−4モル/リットルまたは10−3モル/リットル超の(例えば、10−2モル/リットルの)解離定数を測定することが不可能でありうることも明らかであろう。これも当業者には明らかであろうが、場合により、(実際または見かけの)解離定数は、(実際または見かけの)会合定数(KA)に基づき、次の関係式[KD=1/KA]を用いて計算することができる。
親和性は、分子相互作用の強度または安定性を表す。親和性は、一般的に、モル/リットル(またはM)を単位とするKDすなわち解離定数として与えられる。親和性は、会合定数、KAとして表すこともでき、これは1/KDに等しく、(モル/リットル)−1(またはM−1)を単位とする。本明細書において、2つの分子(例えば、本発明のアミノ酸配列、免疫グロブリン配列、Nanobody(登録商標)、またはポリペプチドと、その意図する標的)の間の相互作用の安定性は、主にそれらの相互作用のKD値という観点から表される;関係式KA=1/KDを考慮すれば、分子相互作用の強度をそのKD値によって特定することが、対応するKA値を計算するためにも使用できるということは、当業者には明らかである。KD値は、周知の関係式DG=RT.ln(KD)(同等にDG=−RT.ln(KA))(式中、Rは、気体定数に等しく、Tは、絶対温度に等しく、lnは、自然対数を表す)により、結合の自由エネルギー(DG)に関連付けられるため、分子相互作用の強度を熱力学的な意味でも特徴付ける。
意義がある(例えば特異的である)とみなされる、本明細書で定義する細胞関連抗原に対する本発明の免疫グロブリン配列の結合のような、生物学的相互作用に関するKDは、典型的には、10−10M(0.1nM)から10−5M(10000nM)の範囲内である。相互作用が強ければ強いほど、そのKDは低くなる。
KDは、koffとして表される複合体の解離速度定数の、konと表されるその会合速度に対する比としても表すことができる(したがって、KD=koff/konであり、KA=kon/koffである)。オフ速度koffは、s−1を単位とする(ここで、sは、秒のSI単位表記である)。オン速度konは、M−1−1を単位とする。
本発明の免疫グロブリン配列に関して、オン速度は、10−1−1から約10−1−1の間で変動して、二分子相互作用の拡散律速会合速度定数に近づきうる。オフ速度は、関係式t1/2=ln(2)/koffにより、所与の分子相互作用の半減期に関連付けられる。本発明の免疫グロブリン配列のオフ速度は、10−6−1(複数日のt1/2でほぼ不可逆的な複合体)から、1s−1(t1/2=0.69s)の間で変動しうる。
2つの分子間の分子相互作用の親和性は、一方の分子をバイオセンサチップ上に固定化し、他方の分子を流動条件下で固定化された分子の上を通過させ、kon、koff測定値、ひいてはKD(またはKA)値を得る、周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサ技術(例えば、Oberら、Intern.Immunology、13巻、1551〜1559頁、2001年を参照されたい)のような、本質的に公知の様々な技術によって測定することができる。これは、例えば周知のBiacore機器を使用して行うことができる。
また、測定プロセスが何らかのかたちで、例えば1つの分子のバイオセンサ上のコーティングに関連する人工産物により、暗示される分子の固有の結合親和性に影響を及ぼす場合、測定されたKDが見かけのKDに対応しうることは、当業者には明らかであろう。また、一方の分子が、他方の分子に対する2つ以上の認識部位を含む場合にも、見かけのKDが測定される場合がある。そのような状況では、測定される親和性は、2つの分子による相互作用の結合活性による影響を受ける場合がある。
親和性を評価するために使用することができる別のアプローチは、Friguetら(J.Immunol.Methods、77巻、305〜19頁、1985年)の2ステップELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)手順である。この方法は、溶液相結合平衡測定を確立し、プラスチックのような支持体上の分子のうちの1つの吸着に関連する可能性のある人工産物を回避する。
しかしながら、KDの正確な測定はかなりの労力を要することが多く、結果として、2つの分子の結合強度を評価するために見かけのKD値が求められることが多い。すべての測定が一貫した方法で(例えばアッセイ条件を変化させずに)行われる限り、見かけのKD測定値を真のKDの近似値として使用することができ、したがって本文書では、KDおよび見かけのKDが等しい重要性または関連性をもって扱われるべきであることに留意されたい。
最後に、多くの状況において、経験豊富な科学者は、何らかの基準分子に対して相対的に結合親和性を判定することが簡便であると判断しうることに留意されたい。例えば、分子AとBとの間の結合強度を評価するためには、例えば、Bに結合することが公知であり、ELISAもしくはFACS(蛍光標識細胞分取)または他のフォーマットにおける検出を容易にするためのフルオロフォアもしくは発色団基、またはビオチンのような他の化学的部分(蛍光検出のためのフルオロフォア、光吸収検出のための発色団、ストレプトアビジンによって媒介されるELISA検出のためのビオチン)で好適に標識されている、基準分子Cを使用することができる。典型的には、基準分子Cは一定の濃度に保たれ、Aの濃度は、Bの所与の濃度または量に対して様々である。結果として、Aの非存在下におけるCに対して測定されるシグナルが半減するAの濃度に対応するIC50値が得られる。基準分子のKDであるKD ref、ならびに基準分子の全濃度であるcrefが既知であることを条件として、A−B間の相互作用に関する見かけのKDは、次式:KD=IC50/(1+cref/KD ref)から得ることができる。cref<<KD refであれば、KD≒IC50であることに留意されたい。比較される結合剤について、IC50の測定が一貫した方法で(例えばcrefを固定して)行われることを条件として、本文章の全体において、分子相互作用の強度または安定性は、IC50によって評価することができ、この測定値は、KDまたは見かけのKDと等価であると判断される。
本発明は、WO2004/015425、WO2004/062551、WO2006/074947、WO2006/122825、WO2009/115614、もしくはWO2011/067160(すべて本出願者名義)に記載される、またはこれらにおいて開示される方法によって得ることができる、免疫グロブリン単一可変ドメインに関する。
本発明は、これらのアミノ酸配列の最適化されたバリアントも包含する。概して、本発明に係るアミノ酸配列の「最適化されたバリアント」とは、i)「ヒト化」の程度、ii)化学的安定性、および/またはiii)発現のレベルを高める置換のような、有益な置換を1つまたはそれ以上含み;依然として、効力(例えばWO2006/122825の実施例部分に記載される効力アッセイによって測定される)が、野生型12A02(WO2006/122825で定義されるとおり)と同等(すなわち偏差10%以内)であるか、またはバリアント12A02H1(配列番号19)(これもWO2006/122825で定義されるとおり)と同等である、バリアントである。好ましくは、本発明のアミノ酸配列は、12A02の野生型配列と比較して、少なくとも1個のかかる置換、好ましくは少なくとも2個のかかる置換と、好ましくは少なくとも3個のヒト化置換、好ましくは少なくとも10個のかかるヒト化置換とを含む。
特定の一態様において、本発明のアミノ酸配列は、野生型配列12A02と比較して、合計で1個から15個の間、好ましくは2個から14個の間、例えば9個から13個の間、例えば10個、11個、または12個のアミノ酸置換を含む。言及したように、こうした差異は、好ましくは、1個、好ましくは少なくとも2個、例えば3個、4個または5個、または10個のヒト化置換を少なくとも含み、場合により、1つまたはそれ以上のさらなる置換(例えば、本明細書で言及するさらなる置換(a)から(c)のうちのいずれか1つ、またはいずれか2つもしくはそれ以上の任意の好適な組み合わせ)を含んでもよい。重ねて、当業者であれば、本明細書における開示内容に基づき、また場合によりある程度の試行錯誤の末、1つまたはそれ以上のかかる好適なヒト化置換および/またはさらなる置換(の好適な組み合わせ)を選択することができよう。
本発明は、本明細書において提示する特定例のうちのいずれか、または上記の参考資料によって定義される特定例のうちのいずれかとの類似性が高いポリペプチド配列を包含する。類似性が高いとは、少なくとも90%、例えば95、97、98、または99%のアミノ酸同一性を意味する。ALX0081に由来するALX0081−Aのような、類似性が高いポリペプチド配列は、それらが由来する配列と同じ機能を有し、すなわち、vWFに結合し、より特定すると、vWFに結合し、vWFと血小板との間の相互作用を阻害する。
特定の一実施形態において、本発明は、配列番号1〜19または24のうちのいずれか1つ、特に配列番号1との類似性が高い配列に関する。しかしながら、本発明が、本明細書で定義する製剤中で安定なバリアントまたは類似性が高い配列を特に言及するように、各バリアント配列について、本明細書で定義する製剤中の安定性を評価する必要がある。
本発明のポリペプチド配列を生成する方法は広く公知であり、例えば、組換え発現または合成を含む。当業者は、好適な発現技術、例えば好適な組換えベクター、および宿主細胞、例えば細菌または酵母の宿主細胞について熟知している。当業者は、好適な精製技術およびプロトコールについても熟知している。
本発明はまた、安定であり、好ましくは薬物の製造を含む薬学的使用に好適な、vWFに対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aの製剤(「本発明の医薬製剤」または「本発明の製剤」とも呼ばれる)を提供する。
特定の実施形態において、本製剤は、配列番号1〜19または24から選択される1つまたはそれ以上のポリペプチド、好ましくは配列番号1を含む。
「医薬製剤」という用語は、活性成分(本発明のポリペプチド)の生物学的活性が有効となることを可能にするような形態にあり、製剤を投与しようとする対象にとって許容できないほど毒性が高いさらなる成分を含まない製造物を指す。このような製剤は無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)とは、用いられる活性成分を有効量でもたらすように対象の哺乳動物に合理的に投与することができるものである。
本明細書で使用する「賦形剤」という用語は、有益な物理特性を製剤に付与する化合物のための希釈剤、ビヒクル、保存剤、リオプロテクタント、界面活性物質、結合剤、担体、または安定化剤として一般的に使用されている不活性物質を指す。当業者は、製剤においてリオプロテクション、安定化、保存のような特定の機能を有しうる、薬学的目的に好適な賦形剤に精通している。
「滅菌」製剤は、無菌性であるか、またはあらゆる生きた微生物およびそれらの胞子を含まないか、もしくは本質的に含まない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
「安定な」製剤とは、その中のタンパク質が、貯蔵時にその物理性安定性および/または化学的安定性、および/または生物学的活性を本質的に保持するものである。好ましくは、製剤は、貯蔵時にその物理的安定性および化学的安定性、ならびにその生物学的活性を本質的に保持する。貯蔵期間は、概して、製剤の意図される有効期限に基づいて選択される。当該分野では、タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery、247〜301頁、Vincent Lee編、Marcel Dekker,Inc.(New York、N.Y.)出版(1991年)、およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10巻:29〜90頁(1993年)において総説されている。安定性は、選択された温度で、選択された時間にわたって測定することができる。ある特定の実施形態では、本製剤は、約40℃で、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、またはそれ以上にわたって安定である。さらに、本製剤は、好ましくは、製剤の凍結(例えば、−20℃または−70℃まで)および解凍の後、例えば1、2、3、4、または5サイクルの凍結および解凍の後に安定である。安定性は、当業者に公知の様々な異なる方法で、定性的および/または定量的に評価することができる。安定性試験は、ALX0081またはALX0081−Aが−20℃で少なくとも3年間にわたって安定であることを示した。
本製剤は、水性担体を含む。水性担体は、特定すると緩衝液である。
本明細書で使用する場合、「緩衝液」とは、その酸−塩基コンジュゲート成分の作用によりpHの変化に抵抗する緩衝された溶液を指す。本発明の製剤は、クエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液のうちの少なくとも1つから選択される緩衝液、好ましくはクエン酸緩衝液を含む。これまでに判定されたとおり、これらの緩衝液は、vWF結合剤の安定性を向上させる。
本発明に係る製剤は、5〜200mM、好ましくは7.5〜80mM、さらにより好ましくは10〜50の範囲内、例えば10、15、20、25または30mM、最も好ましくは20mMの濃度でクエン酸緩衝液を含み、ここで、各値は、±5mMの範囲を場合により包含すると理解される。代替的に、本発明に係る製剤は、5〜200mM、好ましくは5〜80mM、より好ましくは7.5〜60mM、さらにより好ましくは10〜40の範囲内、例えば10、15、20、25または30mM、最も好ましくは10mMの濃度でリン酸緩衝液を含んでもよく、ここで、各値は、±5mMの範囲を場合により包含すると理解される。比較的低い濃度の緩衝液は、最終的な重量オスモル濃度に影響し、それに応じて、加える必要がありうるさらなる溶質にも影響すると理解される。
本発明の製剤のpHは、5.0から7.5の範囲内であり、ここで、各値は、±0.2の範囲を包含すると理解される。最も有利なpHは、製剤に含まれる緩衝液に左右される。よって、本発明は、6.5から7.5の範囲内、好ましくは6.9、7.0、7.1、例えば7.1のpHを好ましくは有する、リン酸緩衝液を含む製剤に特に関する。クエン酸緩衝液を含む製剤は、貯蔵および使用に著しく好適であることが示された。よって、本発明は、6.0から7.0の間、より好ましくは6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8または6.9、例えば6.5のpHを好ましくは有する、クエン酸緩衝液を含む製剤に関し、ここで、各値は、±0.2の範囲を場合により包含すると理解される。
本発明の製剤は、患者に使用する前に希釈するためのストック溶液中で使用される濃度を含め、臨床目的に好適な濃度で、本発明のポリペプチド、特に、免疫グロブリン単一可変ドメイン、またはvWFに対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを含む。安定化の改善のほかに、本発明の製剤は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aの高い濃度を可能にする。
本発明の製剤における活性薬剤、例えばvWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aの典型的な濃度は、0.1から150mg/mL、例えば1〜100mg/mL、5〜80mg/mL、または10〜40mg/mLの範囲内、好ましくは10mg/mLまたは11mg/mlの濃度の非限定的な例を含み、ここで、各値は、±20%の範囲を場合により包含する(例えば、10の値は、8から12mg/mLの範囲を場合により包含する)と理解される。
本発明のさらなる一実施形態において、本発明のいずれかの態様に係る製剤は、界面活性剤または界面活性物質をさらに含んでもよい。
本明細書において、「界面活性物質」とは、界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性物質を指す。本明細書における界面活性物質の例としては、ポリソルベート;ポロクサマー(例えばポロクサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−、またはステアリル−スルホベタイン;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−またはステアリル−サルコシン;リノレイル−、ミリスチル−、またはセチル−ベタイン;ラウロアミドプロピル−、コカミドプロピル−、リノレアミドプロピル−、ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、またはイソステアラミドプロピル−ベタイン(例えばラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、またはイソステアラミドプロピル−ジメチルアミン;メチルココイルタウレートナトリウム、またはメチルオレイルタウレート二ナトリウム;およびMONAQUAT(登録商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.、Paterson、N.J.);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、ならびにエチレンおよびプロピレングリコールのコポリマー(例えばPluronics、PF68など);などが挙げられる。一実施形態において、本明細書における界面活性物質は、ポリソルベート80である。本発明で使用される好ましい好適な界面活性剤または界面活性物質としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばポリソルベート−20、−40、−60、−65、−80または−85が挙げられるが、これらに限定されない。ポリソルベートの一般的な商品名としては、Alkest、Canarcel、およびTweenが挙げられる。当業者には、例えばWO2010/077422に列記されているもののような、界面活性剤のさらなる非限定的な例が公知である。好ましい一実施形態において、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。より特定すると、界面活性剤は、以降Tween−80とも称されるポリソルベート−80である。当業者であれば、本発明の製剤のための界面活性剤の好適な濃度を容易に判定することができる。典型的には、この濃度は、界面活性剤の有益な効果、例えば、配合された本発明のポリペプチドの凝集を低減させる、せん断応力の条件、例えば撹拌下での安定化効果を維持しながら、可能な限り低いものである。例示的で非限定的な実施形態において、界面活性剤の濃度は、0.001から0.5%の範囲内、例えば0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%または0.5%、好ましくは0.01から0.05%の間、より好ましくは0.01から0.02%の間、例えば0.01%(v/v)の濃度でありうる。
本発明の製剤は、保存剤のような賦形剤をさらに含んでもよい。
「保存剤」とは、製剤中の細菌作用を本質的に低減させることにより、例えば多目的製剤の生成を容易にするために、製剤中に場合により含めてもよい化合物である。考えられる保存剤の例としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの混合物)、および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。他のタイプの保存剤としては、フェノールアルコール、ブチルアルコール、およびベンジルアルコールのような芳香族アルコール類、メチルパラベンまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン類、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、ならびにm−クレゾールが挙げられる。一実施形態において、本明細書における保存剤は、ベンジルアルコールである。
本発明の製剤は、ポリオール類のような安定化剤をさらに含んでもよい。
「ポリオール」とは、複数のヒドロキシル基を有する物質であり、糖(還元糖および非還元糖)、糖アルコール、および糖酸を含む。ポリオールは、例えば安定性を向上させるために、製剤中に場合により含めてもよい。ある特定の実施形態では、本明細書におけるポリオール類は、約600kD未満(例えば約120から約400kDの範囲内)の分子量を有する。「還元糖」とは、金属イオンを還元させるか、またはタンパク質中のリジンおよび他のアミノ基と共有結合性反応することができる、ヘミアセタール基を含むものであり、「非還元糖」とは、還元糖のこうした特性を有しないものである。還元糖の例は、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、およびグルコースである。非還元糖としては、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレチトース、およびラフィノースが挙げられる。マンニトール、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ソルビトール、およびグリセリンは、糖アルコール類の例である。糖酸に関しては、これらには、L−グルコン酸およびその金属塩が含まれる。製剤が凍結解凍安定であることが所望される場合、ポリオールは、好ましくは、製剤中の抗体を不安定化するような凍結温度(例えば−20℃)で結晶化しないものである。ある特定の実施形態では、スクロースおよびトレハロースのような非還元糖は、ポリオール類の例であり、ここでは、トレハロースの溶液安定性にかかわらず、スクロースが好ましい。
本発明に従って使用される本発明の治療用化合物は、所望の純度を有するポリペプチドを、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences第16版、Osol,A編[1980年])と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で貯蔵されるよう製造される。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投与量および濃度でレシピエントに対して無毒である。したがって、本発明に係る製剤は、場合により、1つまたはそれ以上の賦形剤を含んでもよい。
一般的に使用されている安定剤および保存剤は、当業者に周知である(例えばWO2010/077422を参照されたい)。こうした組成物に使用することができる薬学的に許容される担体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えばプロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ゼラチン、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;保存剤;低分子量(残基数約10未満の)ポリペプチド;タンパク質;ならびにグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンのようなアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。有利な実施形態において、賦形剤は、NaCl、トレハロース、スクロース、マンニトール、またはグリシンからなるリストから選択される1つまたはそれ以上でありうる。
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術もしくは界面重合によって製造されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)に、またはマクロエマルションに封入することもできる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences第16版、Osol,A編(1980年)に開示されている。
本発明のポリペプチドは、任意の薬学的に許容される製剤に配合することができる。本製剤は、液体であっても乾性であってもよい。本製剤は、混合、乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、または医薬組成物を配合するための任意の公知の方法によって生成することができる。
本発明の好ましい製剤は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを、リン酸緩衝溶液(pH7.1)中に含む。さらにより好ましくは、本発明の製剤は、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを、リン酸緩衝溶液(pH7.1)、グリシン(0.2M)、およびポリソルベート80(0.02%v/v)中に含む。
本発明のポリペプチドはさらに、WO2014/184352に記載されているように配合してもよい。
特に好ましい製剤は:
(a)約0.1mg/mLから約80mg/mL、好ましくは5mgまたは10mgまたは11mgの濃度の、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aと;
(b)約1%から約15%(w/v)の濃度の、スクロース、グリシン、マンニトール、トレハロース、またはNaClから選択される賦形剤と;
(c)約0.001%から0.5%(v/v)の濃度のTween−80と;
(d)製剤のpHが約6.0から7.0になるような、約5mMから約200mMの濃度のクエン酸緩衝液と
を含む。
さらに好ましい本発明の製剤は、好ましくは5mg/ml、10mg/mlまたは11mg/mlの濃度の、vWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aと、20mMの濃度(pH6.5)のクエン酸緩衝液とを含み、7%スクロース(w/v)、および0.01%(v/v)の濃度のTween−80をさらに含む。
いくつかの実施形態では、製剤は、液体として貯蔵される。他の実施形態では、製剤は、液体として製造されてから、貯蔵前に、例えば凍結乾燥または噴霧乾燥によって乾燥される。乾燥した製剤は、乾燥化合物として、例えばエアロゾルもしくは粉末として使用してもよいし、または、例えば水、緩衝液、もしくは他の適切な液体を使用して、その元の濃度もしくは別の濃度まで再構成してもよい。
本発明は、カプラシズマブ12.5mgおよび注射液のための賦形剤を含む凍結乾燥物が充填されたバイアルにも関する。賦形剤(再構成された溶液1mL当たり):バイアル1つ当たり、クエン酸0.21mg、クエン酸三ナトリウム二水和物5.58mg、スクロース70mg、ポリソルベート−80 0.11mg(pH6.5+/−0.5)。注射用水(WFI)1mLで再構成した後、強度はカプラシズマブ12.5mg/mL(10mgまたは11mgの名目投与量について)である。
本発明は、凍結、凍結乾燥、または噴霧乾燥された生成物のような、液体製剤のさらなるプロセシングによって得ることができる生成物も包含する。再構成すると、これらの固体生成物は、本明細書に記載される(しかしこれに限定されない)液体製剤になることができる。したがって、「製剤」という用語は、その最も広義の意味において、液体製剤と固体製剤との両方を包含する。しかしながら、固体製剤は、液体製剤から(例えば、凍結、フリーズドライ、または噴霧乾燥によって)誘導できるため、本明細書における液体製剤について記述された特色によって定義される様々な特徴を有するものと理解される。本発明は、組成物が、例えば凍結乾燥または噴霧乾燥前の元の組成から逸脱することにつながる再構成を除外しない。したがって、凍結乾燥製剤は、元のフリーズドライされた液体の体積に対する、凍結乾燥体に加えられる水または希釈剤の量に応じて、元の濃度(すなわち、凍結乾燥前)とは異なる濃度を有する製剤をもたらすように再構成してもよい。好適な製剤は、抗体の完全性の1つまたはそれ以上のパラメータをアッセイすることによって識別することができる。
好ましい一実施形態において、本発明に係る製剤は、ヒトの血液に関して等張である。等張液は、血液の血漿と同じ浸透圧力を有し、したがって、対象の血液の血漿の浸透圧力を変化させることなく対象の静脈内に注入することができる。浸透圧は、重量オスモル濃度という観点から表すことができ、重量オスモル濃度は、理論的な重量オスモル濃度であってもよいし、または好ましくは実験で判定された重量オスモル濃度であってもよい。典型的には、重量オスモル濃度は、290±60mOsm/kg、好ましくは290±20mOsm/kgの範囲内である。
本発明の製剤は、フリーズドライ中に本発明のポリペプチドを保護するのに特に有用である化合物を含んでもよい。このような化合物は、リオプロテクタントとしても公知であり、当業者に周知である。特定例としては、スクロース、ソルビトールまたはトレハロースのような糖;グルタミン酸、特にグルタミン酸ナトリウム、またはヒスチジンのようなアミノ酸;ベタイン、硫酸マグネシウム、糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、本発明を理解することにより、液体形態にあるときおよび凍結乾燥が行われるときの製剤の安定性を考慮して、加えられるこのような化合物の必要量を容易に決定することができる。フリーズドライに特に好適な製剤は、さらに増量剤を含んでもよい。好適な薬剤は、当業者には広く公知である。スクロースを含む製剤は、vWF結合剤の例えば貯蔵および凍結融解中の物理的安定性を維持するのに特に適していただけではなく、リオプロテクタントとしても特に適していたことが示されている。
略述したように、上記の製剤のいずれも、例えば凍結乾燥、噴霧乾燥、または凍結、例えばバルク凍結により、さらにプロセシングすることができる。結果として得られるプロセシングされた生成物は、上記に定義したように、液体の出発製剤に由来する特徴を有する。必要であれば、例えばリオプロテクタントなどのような、さらなる薬剤を、さらなるプロセシングのために含めてもよい。
本発明の製剤は、本発明のポリペプチド、特にALX0081またはALX0081−Aの化学的および物理的な完全性を維持するという凍結乾燥後の効果を有する。すなわち、長期貯蔵(例えば−70℃から+40℃の間の温度で上記に定義した持続時間)の後でさえ、生成物の純度/不純物プロファイルは本質的に変化していない。例えば、凍結乾燥後の長期貯蔵は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)、または毛管等電点電気泳動(cIEF)のプロファイルに、有意な影響を及ぼさなかった。
本発明のポリペプチドは、任意の一般的に使用されている方法によって生成することができる。典型的な例としては、好適な宿主系、例えば細菌または酵母における組換え発現が挙げられる。本発明のポリペプチドは、本発明に従って配合される前に、好適な精製レジメンにかけられる。
概して、本発明のポリペプチドは、本ポリペプチドを生成するように遺伝子工学操作されている生きた宿主細胞によって生成される。細胞を遺伝子工学操作してタンパク質を生成する方法は、当該分野で周知である。例えば、Ausubelら編(1990年)、Current Protocols in Molecular Biology(Wiley、New York)を参照されたい。このような方法には、ポリペプチドをコードし、その発現を可能にする核酸を、生きた宿主細胞に導入することが含まれる。これらの宿主細胞は、培養下で増殖した、細菌細胞、真菌細胞、または動物細胞であってもよい。細菌性宿主細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)細胞が挙げられるが、これに限定されない。好適な大腸菌株の例としては:HB101、DH5a、GM2929、JM109、KW251、NM538、NM539、および外来DNAを切断できない任意の大腸菌株が挙げられる。使用することができる真菌宿主細胞としては、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、およびアスペルギルス(Aspergillus)細胞が挙げられるが、これらに限定されない。使用することができる動物細胞株のいくつかの例は、CHO、VERO、BHK、HeLa、Cos、MDCK、293、3T3、およびWI38である。新しい動物細胞株は、当業者に周知の方法を使用して(例えば、形質転換、ウイルス感染、および/または選択により)確立することができる。場合により、宿主細胞によって培地中にポリペプチドを分泌させてもよい。
いくつかの実施形態では、細菌細胞、例えば、大腸菌細胞内でポリペプチドを生成することができる。例えば、ディスプレイ実体とバクテリオファージタンパク質(またはその断片)との間に抑制可能な終止コドンを含むファージディスプレイベクター内の配列によってポリペプチドがコードされる場合、終止コドンを抑制することができない細菌細胞に、このベクター核酸を移入してもよい。この場合、ポリペプチドは遺伝子IIIタンパク質に融合せず、周辺質および/または培地に分泌される。
ポリペプチドを真核細胞内で生成することもできる。一実施形態において、ポリペプチドは、ピキア(Pichia)(例えば、Powersら、2001年、J Immunol Methods 251巻:123〜35頁を参照されたい)、ハンゼヌラ(Hansenula)、またはサッカロマイセス(Saccharomyces)のような酵母細菌内で発現される。
一実施形態において、ポリペプチドは、哺乳動物細胞内で生成される。クローン抗体またはその抗原結合性断片を発現させるための典型的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、KaufmanおよびSharp、1982年、Mol.Biol.159巻:601〜621頁に記載されているDHFR選択マーカーとともに使用される、UrlaubおよびChasin、1980年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77巻:4216〜4220頁に記載されているdhfr−CHO細胞を含む)、リンパ球細胞株、例えば、NS0骨髄腫細胞およびSP2細胞、COS細胞、ならびにトランスジェニック動物、例えばトランスジェニック哺乳動物由来の細胞が挙げられる。例えば、細胞は、乳腺上皮細胞である。
組換え発現ベクターは、ポリペプチドをコードする核酸配列に加えて、宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば、複製起点)のようなさらなる配列、および選択マーカー遺伝子を保有してもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号;同第4,634,665号;および同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的に、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートのような薬物に対する抵抗性を与える。
標準的な分子生物学技術を使用して、組換え発現ベクターを製造し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、抗体分子を培養培地から回収することができる。例えば、本発明のポリペプチドは、親和性クロマトグラフィーによって単離することができる。
一実施形態において、本発明のポリペプチドは、WO10/056550に記載されているように精製される。例示的な一実施形態において、ポリペプチドは:ポリペプチドと混入物との混合物を、プロテインAベースの支持体および/またはイオン交換支持体に、ポリペプチドが支持体に結合または吸着することを可能にする条件下で接触させることと;ポリペプチドが支持体に結合した状態を保つ条件下で結合後の支持体を洗浄することにより、1つまたはそれ以上の混入物を除去することと、吸着したポリペプチド分子を溶出緩衝液で溶出させることにより、ポリペプチドを支持体から選択的に溶出させることとによって、1つまたはそれ以上の混入物から精製される。
本発明のポリペプチドは、トランスジェニック動物によって生成することもできる。例えば、米国特許第5,849,992号は、トランスジェニック哺乳動物の乳腺において抗体を発現させる方法を記載している。乳特異的プロモーターならびに抗体分子および分泌のためのシグナル配列をコードする核酸を含む導入遺伝子が構築される。このようなトランスジェニック哺乳動物の雌によって生成される乳には、その中に分泌された目的の単一ドメインが含まれる。抗体分子は、この乳から精製される場合もあれば、いくつかの用途では、直接使用される場合もある。
本発明は、本明細書で定義する製剤を生成する方法を包含する。
精製および配合の工程は、例えば、本発明に係る緩衝液を使用して本発明のポリペプチドをカラムから溶出させる場合、同時に行ってもよい。代替的に、本発明の製剤は、任意の好適な手段、例えば透析、限外濾過などのような当該分野で広く使用されている手段により、緩衝液を交換することによって製造してもよい。
いくつかの実施形態では、本発明の製剤を生成する方法は、例えば、水または好適な緩衝液(これは、さらなる賦形剤を場合により含んでもよい)の添加による、凍結乾燥または噴霧乾燥された製剤の再構成にも関しうる。
本発明に係る製剤を製造するための方法は、封止された容器のような臨床用途に好適なバイアルに該製剤を充填すること、および/または該製剤を単位剤形に調合することのような、さらなる工程を包含してもよい。これらの方法は、噴霧乾燥、凍結乾燥、または凍結、例えばバルク凍結のようなさらなる工程を含んでもよい。本発明は、本明細書において列挙する方法のいずれかによって得ることができる容器、単位剤形、または他の生成物も包含する。
本発明の製剤は、本明細書で定義するように、本発明のポリペプチド、例えばvWFに対する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aを貯蔵するために使用することができる。したがって、本発明は、本明細書で定義する製剤の使用によって特徴付けられる、本明細書で使用する本発明のポリペプチドの貯蔵方法を包含する。より特定すると、本発明は、例えば、本明細書に記載される製剤の製造を含む、貯蔵のために本発明のポリペプチドを安定化させるための方法を包含する。貯蔵は、場合により−70℃、−20℃、+5℃、+25℃または+40℃のような−70℃から+40℃の間の温度、好ましくは−70℃から+25℃の間の温度、より好ましくは−20℃から+5℃の間の温度において、1、1.5、3、6、9、12、18、24、30または36か月、例えば少なくとも12か月のような、1〜36か月の期間でありうる。したがって、貯蔵は、凍結、フリーズドライ(凍結乾燥)、および/または噴霧乾燥を包含しうる。貯蔵方法は、本明細書で定義するように、vWF結合剤の物理的および化学的な完全性の評価をさらに含んでもよい。
本発明は、本明細書で定義するvWF結合剤のうちの少なくとも1つを含む製剤を分析するための方法にも関する。本明細書で定義するvWF結合剤の化学的または物理的な不安定性の兆候があるかについて、製剤を分析することができる。例えば、分解生成物、例えばタンパク質分解性断片のような低分子量誘導体;および/または化学的誘導体、例えばピログルタミン酸バリアント;および/または凝集物、凝集体などのような高分子量誘導体の存在について、製剤を評価することができる。全タンパク質含有量および/または効力について製剤を評価してもよい。本明細書において言及される様々なアッセイ方法の各々は、本発明の分析方法で使用することができる。
したがって、本発明は、例えば製作、貯蔵、および使用のうちの1つまたはそれ以上の間、製剤の質および/または安定性をモニタリングおよび/または評価するための方法にも関する。本発明は、製剤の品質管理、例えば、本明細書においてさらに説明する生成物の仕様を製剤が満たすことを評価するための方法にも関する。これらの態様のうちのいずれかにおいて、本発明は、1つまたはそれ以上の基準サンプルとの比較、バッチ間変動の分析、および生成プロセスの継続的なモニタリングから選択される1つまたはそれ以上を含む。
本発明は、一切限定されることなく、例えば本発明の製剤を含むことによって、またはその生成もしくは調合に必要であることによって本発明の製剤に関連する、あらゆる生成物に関する。
例えば、本発明は、製品、例えば、本発明に係る製剤のうちの1つまたはそれ以上を含む封止された容器に関する。
本発明は、本明細書に記載されるいずれかの実施形態による製剤のうちの1つまたはそれ以上を含む、医薬単位剤形、例えば、患者、好ましくはヒト患者への非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、および皮下)に好適な剤形にも関する。
単位剤形は、例えば充填済みシリンジ、アンプル、カートリッジ、またはバイアルのフォーマットであってよい。
また、本発明の製剤と、例えばヘルスケア関係者による使用説明書とを含む、キットまたは製品も提供される。本キットまたは製品は、本明細書に記載される本発明の製剤を含むバイアルまたはシリンジを含みうる。
バイアルまたはシリンジは、ガラス、プラスチック、または環状オレフィンポリマーもしくはコポリマーから選択されるポリマー材料からできているのが好ましい。シリンジ、アンプル、カートリッジ、またはバイアルは、ガラスまたはプラスチックのような任意の好適な材料で製作することができ、バイアルのためのゴム栓ならびにシリンジおよびカートリッジのためのゴムプランジャーおよびゴム封止具のようなゴム材料を含みうる。本発明は、本発明に係る製剤のうちの1つまたはそれ以上を含むキットにも関する。本キットは、使用説明書および/または臨床上の能書をさらに含みうる。本明細書で定義する生成物のいずれの実施形態においても、本発明は、例えば規制面から必要とされる、包装材料、使用説明書、および/または臨床上の能書の存在も包含する。
2つまたはそれ以上のアミノ酸配列を比較する目的において、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間の「配列同一性」(本明細書では「アミノ酸同一性」ともいう)のパーセンテージは、[第1のアミノ酸配列において、第2のアミノ酸配列内の対応する位置にあるアミノ酸残基と同一であるアミノ酸残基の数]を、[第1のアミノ酸配列内のアミノ酸残基の総数]で割り、[100%]を掛けることによって計算することができ、ここで、第2のアミノ酸配列における(第1のアミノ酸配列と比較した)アミノ酸残基の各欠失、挿入、置換、または付加は、単一のアミノ酸残基(位置)における差異、すなわち、本明細書で定義する「アミノ酸の差異」とみなされる。
代替的に、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度は、この場合もやはり標準的な設定を使用して、ヌクレオチド配列の配列同一性の程度を判定するための、上記に言及したもののような公知のコンピュータアルゴリズムを使用して計算してもよい。
通常、上記に略述した計算方法に従って2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」のパーセンテージを判定する目的においては、アミノ酸残基の数が最も多いアミノ酸配列を「第1の」アミノ酸配列とし、他方のアミノ酸配列を「第2の」アミノ酸配列とする。
また、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度を判定するに当たり、当業者は、いわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮してもよく、保存的アミノ酸置換は、一般的には、あるアミノ酸残基が、同様の化学構造をもつ別のアミノ酸残基に置き換えられ、ポリペプチドの機能、活性、もしくは他の生物学的特性にほとんどまたは本質的に影響しないアミノ酸置換として説明することができる。このような保存的アミノ酸置換は、例えばWO04/037999、GB−A−3357768、WO98/49185、WO00/46383、およびWO01/09300から当該分野で周知であり;このような置換の(好ましい)タイプおよび/または組み合わせは、WO04/037999およびWO98/49185ならびにそれらに引用されるさらなる参考資料における適切な教示に基づいて選択することができる。このような保存的置換は、好ましくは、次の群(a)〜(e)における1つのアミノ酸が同じ群内の別のアミノ酸残基で置換されている置換である:(a)小さな脂肪族の非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;(b)極性の負電荷をもつ残基、およびそれらの(無電荷)アミド:Asp、Asn、Glu、およびGln;(c)極性の正電荷をもつ残基:His、Arg、およびLys;(d)大きな脂肪族の非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、およびCys;ならびに(e)芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrp。特に好ましい保存的置換は、次のとおりである:AlaからGlyもしくはSer;ArgからLys;AsnからGlnもしくはHis;AspからGlu;CysからSer;GlnからAsn;GluからAsp;GlyからAlaもしくはPro;HisからAsnもしくはGln;IleからLeuもしくはVal;LeuからIleもしくはVal;LysからArg、GlnもしくはGlu;MetからLeu、TyrもしくはIle;PheからMet、LeuもしくはTyr;SerからThr;ThrからSer;TrpからTyr;TyrからTrp;および/またはPheからVal、IleもしくはLeu。本明細書に記載されるポリペプチドに適用される任意のアミノ酸置換は、Schulzら、Principles of Protein Structure、Springer−Verlag、1978年によって開発された、異なる種の相同タンパク質間のアミノ酸差異の頻度の分析や、ChouおよびFasman、Biochemistry 13巻:211頁、1974年、ならびにAdv.Enzymol.、47巻:45〜149頁、1978年によって開発された、構造形成能の分析や、Eisenbergら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81巻:140〜144頁、1984年;Kyte&Doolittle;J Molec.Biol.157巻:105〜132頁、1981年、およびGoldmanら、Ann.Rev.Biophys.Chem.15巻:321〜353頁、1986年によって開発された、タンパク質における疎水性パターンの分析に基づいてもよい(これらの文献はすべて、その全体を参照によって本明細書に組み入れる)。Nanobodies(登録商標)の一次構造、二次構造、および三次構造に関する情報は、本明細書における説明、および上記で引用した一般的な背景技術において提示される。また、この目的において、ラマ由来のVHHドメインの結晶構造は、例えば、Desmyterら、Nature Structural Biology、3巻、9号、803頁(1996年);Spinelliら、Natural Structural Biology(1996年);3巻、752〜757頁;およびDecanniereら、Structure、7巻、4号、361頁(1999年)に提示されている。従来のVドメインにおいてV/V界面を形成するアミノ酸残基、およびこれらの位置における考えられるラクダ化置換の一部に関するさらなる情報は、上記で引用した先行技術に見出すことができる。
本発明は、例えば急性冠症候群(ACS)、一過性脳虚血発作、不安定狭心症もしくは安定狭心症、卒中、心筋梗塞、または血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)のようなvWF関連疾患を処置または防止する方法にも関し;前記方法は、本発明の製剤を含む医薬組成物を対象に投与することにより、前記vWF関連疾患に関連する1つまたはそれ以上の症状を低減させることを含む。特に、前記vWF関連疾患は、TTPである。
本発明の別の実施形態では、上述のような疾患の処置に有用な材料を含む製品が提供される。本製品は、容器、ラベル、および添付文書を含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックのような様々な材料からできていてよい。容器には、病態を処置するのに有効な組成物が入っており、滅菌アクセスポートがあってもよい(例えば、容器は、静注溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1種の活性薬剤は、本発明のポリペプチド、例えばALX0081またはALX0081−Aである。容器に付いた、または関連付けられたラベルは、組成物が特定の病態を処置するために使用されることを示す。本製品は、本明細書に記載されるリン酸緩衝食塩水またはクエン酸緩衝食塩水のような薬学的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含んでもよい。本製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、使用者または商業の見地から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドまたは本明細書に記載の製剤を含む容器と、使用説明書とを含む、キットまたは製品を提供する。
本発明は、製剤がバイアルまたは注射用シリンジ内に存在する、本明細書に記載のキットまたは製品を提供する。
本発明は、製剤が充填済み注射用シリンジ内に存在する、本明細書に記載のキットまたは製品を提供する。
本発明は、シリンジまたはバイアルが、ガラス、プラスチック、または環状オレフィンポリマーもしくはコポリマーから選択されるポリマー材料からできている、本明細書に記載のキットまたは製品を提供する。
本明細書において例示および詳解される実施形態は、本発明者らが知る限り最も良好な本発明の作製方法および使用方法を当業者に教示することのみを意図している。上記の教示を踏まえて当業者には理解されるように、本発明から逸脱することなく、上述の本発明の実施形態の改変および変更が可能である。したがって、特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内であれば、明確に記載された以外のかたちで本発明を実施してもよいものと理解される。
これより、下記の非限定的な好ましい態様、実施例、および図面を用い、本発明についてさらに説明する。
本明細書の随所で引用される参考資料のすべて(参考文献、交付済み特許、公開済み特許出願、および同時係属特許出願を含む)の全内容を、特に上記で参照した教示について、参照によって本明細書に明示的に組み入れる。
5.略語
本明細書における一般的に使用される略語に関する説明の一覧を表5に提示する。
治療意図集団における血小板数の正常化確認までの時間。カットオフ点までの二重盲検連日血漿交換期間から得たデータを、主要エンドポイントの分析に使用した。データカットオフ点は:試験薬の開始から45日間の連日血漿交換、連日血漿交換の停止、または試験薬処置の停止;のうち、いずれか早い時点によって定義した。 再発によるADAMTS13活性。パネルAおよびBは、それぞれ、連日血漿交換の終了から翌週、および試験薬処置の終了時における、個々の患者のADAMTS13活性のカテゴリーを示す。各パネルには、異なる処置群における患者についてのADAMTS13カテゴリー(抑制≦10%、または正常化>10%)が提示されている。各パネルの左部分は、再発がなかった患者についてのデータを示し、各パネルの右部分は、再発があった患者、および連日PEの終了または処置の終了に対していつ再発が起こったかを示す。 健康なボランティアにおけるカプラシズマブ10mgの7日間にわたる連日反復皮下投与中(上パネル)、およびaTTP患者におけるカプラシズマブ10mgの連日反復皮下投与中(下パネル)の時間プロファイルに対する平均vWF:Agレベル。aTTP:後天性血栓性血小板減少性紫斑病;PE:血漿交換;FU:経過観察;vWF:フォンウィルブランド因子。 第II相ALX−0681−2.1/10(「TITAN」、上パネル)および第III相ALX0681−C301(「HERCULES」、下パネル)における平均(±SD)RICO活性。20%未満のRICO値は、カプラシズマブの薬理学的活性の閾値を表す;このグラフの目的において、15%の定量下限より低い値は15%に設定し、120%の定量上限を超える値は120%に設定した。グラフは、平均値±平均値の標準誤差を示す。PE:血漿交換;FU:経過観察;RICO:リストセチン補因子;SD:標準偏差;vWF:フォンウィルブランド因子。 健康なボランティアにおける、単回漸増皮下用量の投与後(A)、ならびに10mgの一日皮下用量の単回投与および7日間にわたる反復投与後(B)の時間プロファイルに対する、カプラシズマブの血漿濃度。
7.実施例
7.1 適用される規制
実施例のセクションで使用したすべてのヒトサンプルは、商業的供給源またはヒトボランティア(すべての必要な同意および承認が得られた後)のいずれかから得たものであり、適用される法律上および規制上の要件(医療上の秘密および患者のプライバシーに関するものを含む)に従って使用した。
臨床治験は、適用される法律および規制(ヘルシンキ宣言ならびに医療上の秘密および患者のプライバシー保護の原則を含む)に従い、すべての必要な承認(関連する倫理委員会による承認を含む)および同意(関与する対象のインフォームドコンセントを含む)が得られた後に行った。
この臨床試験の目的および内容ならびにその結果は機密として扱い、第三者にはアクセスできないようにしている。試験に参加した従業員は守秘義務を課された。未使用の薬物はすべて、本出願者に返却されたか、または破棄された。
7.2 適格性判断基準
第III相試験において、患者が試験登録に適格となるには、以下の判断基準のすべてを満たす必要があった:
組み入れ判断基準
1.インフォームドコンセント用紙(ICF)への署名時に18歳以上の成人男性または女性
2.血小板減少症および赤血球断片化(例えば、分裂赤血球)の微視的証拠を含む、後天性TTPの臨床診断
3.連日PE処置の開始が必要であり、ランダム化の前に1回のPE処置を受けていること
除外判断基準
・100×10/L以上の血小板数
・血小板数が30×10/L超である場合は200μmol/L超の血清クレアチニンレベル(非典型溶血性尿毒症症候群[非典型HUS]の可能性がある事例を除外するため)
・以下を含むがこれらに限定されない血小板減少症の既知の他の原因:
− 大腸菌0157または関連する生物による腸管感染の臨床エビデンス−非典型HUS
− 造血幹細胞、骨髄、または臓器の移植に関連する血栓性微小血管症
− 敗血症の既往歴または疑い
− 播種性血管内凝固の診断
・先天性TTP(試験エントリー時に既知)
・妊娠または授乳中
・臨床的に有意な活動性の出血または出血の高リスク(血小板減少症を除く)
・以下を含むがこれらに限定されない、安全に停止(中断)することのできない抗凝固薬処置による既知の慢性処置:
− ビタミンK拮抗薬
− ヘパリンまたは低分子量ヘパリン(LMWH)
− 非アセチルサリチル酸非ステロイド性抗炎症性分子
・悪性動脈性高血圧
・末期悪性腫瘍のような、平均余命6か月未満の、TTPに関連するもの以外の臨床状態
・過去にカプラシズマブの臨床試験に登録してカプラシズマブを受けたことがある対象、または割り当てられた処置アームが不明である対象。
7.3 試験設計
本試験は、後天性TTPの急性エピソードを有する対象における標準治療処置に加えて投与されたカプラシズマブによる処置の効能および安全性を評価するための第III相二重盲検プラセボ対照ランダム化試験として設計した(Hercules)。この試験では、試験薬処置中の、正常な血小板数の回復の迅速化におけるカプラシズマブの効能、ならびに、TTP関連死亡率、症候性TTPエピソードの再発防止、および重度の血栓塞栓性事象(TE)の防止の複合エンドポイントに対してカプラシズマブでの処置が及ぼす効果を評価した。試験参加への適格性(実施例7.2を参照のこと)を確認し、PE処置を開始した後、標準治療療法に加えて1:1の比でカプラシズマブまたはプラセボのいずれかを受けるように対象をランダム化した。ランダム化は、神経学的症状の重症度(グラスゴー昏睡尺度[GCS])によって層別化した。
対象毎の試験期間はおよそ2か月から、連日PE後30日期間中の処置延長および増悪または処置延長中の再発があった場合は最長およそ6か月であった。
本試験中、次の様々な段階で患者を追跡した:
− スクリーニング期間:インフォームドコンセント用紙(ICF)への署名からランダム化まで;
− 試験薬処置期間:連日PE期間(可変期間)および連日PE後30日期間をカバーする;
− 処置延長期間:7日毎の延長で最長28日、すなわち、4×7日;
− 非盲検:30日の処置期間中の増悪または処置延長期間中の再発が起こった場合(第1の増悪または再発)、対象は、連日PEの再開および最適化された免疫抑制処置と併せて、非盲検(OL)カプラシズマブを受けた。カプラシズマブ処置スケジュールおよび来院スケジュールは、初回の試験薬処置期間(連日PE[可変期間]および連日PE後30日期間をカバーする)および可能性のある処置延長期間と同じであった;
− 4週間の経過観察(FU)期間:第1のFU来院は、試験薬投与の最終日から7日後であり、最終のFU来院は、28日後である。
患者には、各施設の治験責任医師により、またTTPの処置に関するガイドラインに従って適切と判断された、最適な医療および処置を行った。
試験薬は、PE手技に対して特定の時間で、補助的処置として投与した。試験薬は、1日1回または2回、10mgのカプラシズマブ(「処置群」もしくは「CAPLA」)またはプラセボ(「プラセボ群」)からなった。
7.4 Hercules試験における試験薬の処置:
・静脈内負荷用量:対象は、ランダム化の後に行われる第1のPEの6時間から15分前に、試験薬10mgの単回負荷用量を静脈内ボーラス注射によって受けた;第1の増悪または再発の処置のために行われる第1のPEの前には、10mgの静脈内ボーラスも与えられた。
・連日皮下(s.c.)用量:連日PEの各回を完了した後、PE処置の持続時間全体にわたり、試験薬10mgの皮下注射を連日投与した。
・試験薬10mgの連日皮下投与を、連日PEの停止後30日間にわたって継続した。PEのテーパリングのためにこの期間の調節を行うことはなかった。
・この30日間を超える試験薬処置の延長は、ADAMTS13活性プロファイルならびに継続的な基礎疾患活性の他の兆候および症状を含め、症候性TTPエピソードの再発に関するリスク因子の数を指針とした。
・症候性TTPエピソードの第1の増悪があった場合、対象は、連日PEと併せて非盲検カプラシズマブを受けた。
・対象が処置延長期間中に依然として試験薬を受けている間に第1のTTP再発を起こした場合、適切な免疫抑制処置と併せて、標準治療処置の一環として連日PEを開始した。
・対象が試験薬処置を完了した後(すなわち、FU期間中)に第1または後続のTTP再発を起こした場合、連日PEおよび適切な免疫抑制処置の標準治療処置を施設の慣習に従って開始した。
7.5 エンドポイント
この第III相試験の主要エンドポイントは、5日後以内に連日PEが停止される、150×10/L以上の初期血小板数と定義される血小板数応答までの時間であった。主な二次エンドポイントを以下に列記する:
1.試験薬処置期間中(延長を含む)に、TTP関連死、TTPの再発、または処置下で発現した少なくとも1つの重度の血栓塞栓性事象(例えば、心筋梗塞、脳血管障害、肺塞栓、または深部静脈血栓症[DVT])があった対象の割合。
2.全試験期間(4週間のFU期間を含む)においてTTPの再発があった対象の割合。
3.本試験では、4日間の標準処置後に血小板数が倍加せず、LDH>ULNと定義される、不応性TTPを有する対象の割合。
4.次の臓器損傷マーカーレベルの3つすべての正常化までの時間:LDH≦1×正常上限(ULN)、およびcTnI≦1×ULN、および血清クレアチニン≦1×ULNまでの時間
5.他のエンドポイントは、血漿交換の持続時間および量、入院および集中治療室在室の持続時間、死亡率、薬力学および薬物動態パラメータ、ならびに免疫原性を含んだ。
6.試験薬処置および経過観察の期間中に安全性評価を行い、これは、バイタルサイン、身体検査、臨床検査、および12誘導心電図を含んだ。報告された有害事象は、Medical Dictionary for Regulatory Activities、バージョン20.0から好ましい用語を使用してコードした。
7.6 統計分析
Hercules試験では、有意水準5%で両側ログランク検定を使用し、ドロップアウト率10%と仮定して、カプラシズマブによる血小板数正常化までの時間の中央値における40%の低減を検出する力が80%となるように、患者132名の予定サンプル数を指定した。また、対象132名のサンプルサイズは、大きなサンプル近似および有意水準5%を用いる両側カイ二乗検定を使用して、第1の主な二次エンドポイントにおける20%の低減を検出する力が83%となるように設定した。すべての効能分析を治療意図集団(ランダム化した全患者からなる)に行い、安全性および免疫原性分析は、安全性集団(少なくとも1回用量の試験薬を受けた全患者からなる)に行った。神経学的関与の重大性を層別化因子として用い、Kaplan−Meier分析に基づく両側層別化ログランク検定を実施することによって、カプラシズマブ群およびプラセボ群における血小板数応答までの時間を比較した。
主な二次エンドポイントの分析には、固定配列アプローチを適用した。TTP関連死、重度の血栓塞栓性事象、およびTTP再発(増悪)は、神経学的関与の重大性を調節し、Cochran−Mantel−Haenszel検定を使用して分析し、第4の、臓器損傷マーカーの正常化までの時間は、神経学的関与およびLDHのベースラインにおける重大性を調節し、Kaplan−Meier分析に基づく層別化ログランク検定を使用して分析した。
7.7 ADAMTS13活性の判定
FRETS−VWF73基質を使用した蛍光発生的アッセイ(Kokameら、2005年、Br J Haematol 129巻(1号):93〜100頁;Kremer Hovingaら、2006年、J Thromb Haemost 4巻(5号):1146〜8頁)により、ADAMTS13活性および機能阻害物質活性を測定した。
簡潔に述べると、FRETS−VWF73アッセイは、本質的に説明されているように行ったが(Kokameら、2005年、上記参照)、次の変更を加えた:Pefabloc SC(Boehringer、Mannheim、Germany)を、アッセイ緩衝液(5mmol L−1のビス−トリス、25mmol L−1のCaCl2、0.005%のTween−20、pH6.0)に、1mmol L−1の最終濃度で加えた。アッセイ緩衝液中1:25(100%)に希釈した正常ヒト血漿プール(NHP;Swiss Red Cross Blood Services、Bern、Switzerland)を使用し、アッセイの較正を得た。NHPを、熱失活したNHP中で3:4(75%)、1:2(50%)、1:4(25%)、1:10(10%)、1:20(5%)、1:50(2%)、および1:100(1%)に段階的に前希釈することにより、さらなる較正サンプルを得、56℃で30分間インキュベートし、その後、15分間15000×gで遠心分離することにより、標準曲線の低活性範囲内の血漿マトリックス効果を補正した。その後、こうした標準サンプル、ならびに熱失活したNHP(ADAMTS13活性0%)、および全試験サンプルのすべてを、アッセイ緩衝液中で1:25に希釈した。次に、希釈した標準サンプルまたは患者サンプル各25μLを、384ウェル白色プレート(NUNC、Roskilde、Denmark)にて37℃でインキュベートした。10分後、アッセイ緩衝液に溶解した4μmol L−1のFRETS−VWF73ペプチド基質25μlを各ウェルに加え、340nm励起フィルター(帯域幅35nm)および450nm発光フィルター(帯域幅25nm)を備えた蛍光マイクロプレートリーダー(GENios、Tecan、Zurich、Switzerland)にて、蛍光の放出を37℃で記録した。蛍光放出は、経時的に測定した(5分毎で42サイクル)。5分(サイクル2)から60分(サイクル13)までの経時的な蛍光放出の線形回帰分析(Passing−Bablok)により、反応速度を計算した。回帰曲線の傾きを各較正サンプルについて計算し、これを使用して較正曲線を生成した(傾向線:y=ax+b;式中、x=ADAMTS13(%)であり、y=デルタRFU/デルタ時間である)。次いで、サンプルのADAMTS13活性(%)を次のように計算した:(y−b)×1/a。
ADAMTS13機能阻害物質の活性は、同じ蛍光発生的FRETS−VWF73方法により、熱失活した患者の血漿(56℃で30分間)とともに37℃で2時間にわたって1:1(v:v)でインキュベーションした後の正常なヒト血漿に残留するADAMTS13活性を判定することによって測定した。
各分析バッチにつき、アッセイ緩衝液中1:25(100%)に希釈した正常ヒト血漿プール(NHP;Swiss Red Cross Blood Services、Bern、Switzerland)を使用し、較正曲線を生成した。NHPを、熱失活したNHP中で1:2(50%)、1:4(25%)、1:10(10%)、1:20(5%)、1:50(2%)、および1:100(1%)に段階的に前希釈することにより、さらなる較正サンプルを得た。すべての較正点は、単一検体(singlicate)に適用した。受け入れ判断基準:(1)標準曲線の最終的な回帰の傾きは6.0超でなければならず;(2)最終的なプロットの回帰のRは0.98超(またはR>0.9899)でなければならない。さもなければ、アッセイを棄却した。
7.8 試験集団
本Hercules試験では、145名の患者を、カプラシズマブ(n=72)またはプラセボ(n=73)を受けるようにランダムに割り当てた。カプラシズマブ群における、第1の投薬前に同意を撤回した1名の患者を除き、すべての患者が試験薬を受けた。全体としては、108名の患者が試験を完了した(すなわち、予定された処置のための来院をすべて完了し、各自の最終的な経過観察の来院を行った)が、37名の患者は試験を打ち切った(カプラシズマブ群中14名、プラセボ群中23名)。試験打ち切りの最多理由は、有害事象、同意の撤回、および医師による決定であった。
人口統計学的特徴およびベースライン疾患特徴は、過去のTTPエピソードおよびADAMTS13活性を除けば、2つの試験群において概して同様であった(表7.8)。合計で97%(140/145)の患者がグルココルチコイドを受け、このうち24%(35/145)では、リツキシマブでの処置を連日血漿交換中に開始した(カプラシズマブ群では17%すなわち12/72、プラセボ群では32%すなわち23/73)。
Figure 2021512947
7.9 主要エンドポイントおよび主な二次エンドポイント
Kaplan Meier分析および層別化ログランク検定に基づけば、カプラシズマブ群における血小板数応答までの時間には大幅な低減があった(図1)。いかなる時点においても、カプラシズマブを受けた患者では、プラセボで処置した患者と比較して血小板数応答を達成する尤度が1.55倍高かった(血小板数正常化比、1.55;95% CI、1.09から2.19;P=0.01)。試験薬処置期間中、カプラシズマブでの処置は、TTP関連死、TTPの再発、または重度の血栓塞栓性事象があった対象の数における74%の低減をもたらした(P<0.0001、表7.9)。28日間の無処置経過観察期間を含む全試験期間において、プラセボ群では28名の患者が再発を経験したが、これに対してカプラシズマブ群では9名であり、67%低減したことになる(P<0.001、表7.9)。カプラシズマブ群において経過観察期間中にTTPの再発(すなわち、連日血漿交換の終了から30日超が経ってからの再発)を経験した6名の患者すべてにおいて、ADAMTS13活性レベルは、試験薬処置の終了時で10%未満であり、試験薬を停止した時点で基礎疾患が依然として活性であったことを示唆している。カプラシズマブで処置した患者には、療法に対して不応性であったものはいなかったが、プラセボ群中3名の患者は不応性であった(P=0.057)。カプラシズマブでの処置は、3つの臓器損傷マーカー:LDH、cTnI、および血清クレアチニンの正常化が迅速化する傾向にも関連していた。
Figure 2021512947
7.10 再発との関連におけるADAMTS13活性
増悪:本Hercules試験においてランダム化された145名の患者のうち、129名は血小板数応答を達成し、連日血漿交換期間を完了した(カプラシズマブアームで65名、プラセボアームで64名)。連日血漿交換が終了した翌週、ADAMTS13活性は、42%(54/129)の患者で10%超に戻っていたが、他の58%(75/129)では10%未満に抑制されたままであった。合計で31名の患者が増悪を経験し、このうち2名は正常化したADAMTS13活性を有し、29名は、10%未満のADAMTS13活性レベルによって明示されるように、未解消の基礎疾患を有した(図2、パネルA)。
再発:試験薬処置の終了時におけるADAMTS13活性レベルは、120名の患者について入手可能であった(二重盲検カプラシズマブ処置の終了時に60名、二重盲検プラセボ処置の終了時に34名、非盲検カプラシズマブ処置の終了時に26名)。これらの患者のうち、74%(89/120)は、処置の停止時までに正常化したADAMTS13活性レベルを有した。これらの患者のうち、試験薬処置の終了後の28日間の経過観察中に再発を患ったものはいなかった。他の26%(31/120)の患者は、試験薬処置の停止時に依然として抑制されたADAMTS13活性を有した。これら31名の患者のうち合計9名は、後続の28日間に再発を患い、この9名中6名は、二重盲検カプラシズマブ処置の終了後であり、9名中3名は、非盲検カプラシズマブ処置の終了後であった(図2、パネルB)(実施例7.13を参照のこと)。
7.11 初回疾患または再発性疾患を有するaTTP患者の特徴付けおよびアウトカム
背景:後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)は、生命を脅かす自己免疫性の凝血障害である。患者は、各エピソード毎に重大な罹患率および死のリスクにさらされる。aTTP患者におけるカプラシズマブを用いた第III相Hercules試験において、効能および安全性データが得られた(Scullyら、Blood 2017年130巻:LBA−1)。
狙い:初回または再発性のaTTPエピソードを有するHERCULES試験登録患者における疾患症状発現の特徴付けおよび処置アウトカムの評価。
方法:記述的要約を使用し、両方の部分群について、人口統計学的特徴、ベースライン疾患特徴、および処置アウトカム(血小板数応答までの時間、死亡率、再発、重度の血栓塞栓性事象(TE)、および不応状態)を評価した。標準的方法に従い(詳細な説明を参照のこと)、血小板数、LDHレベル、および心筋トロポニンIレベルを判定した。
結果:初回aTTPエピソードを有する82名、および疾患が再発した63名との、計145名の患者をランダム化した。人口統計学的特徴は、群間で概してバランスが取れていたが、ベースライン疾患特徴は、初回エピソードにおいて再発エピソードよりも重症度が高かった:平均血小板数(28.8×10/L対44.4×10/L)、平均LDH(598U/L対523U/L)、および心筋トロポニンI中央値(0.119μg/L対0.036μg/L)。第1の症状から診断までの時間も、再発患者(3.9日)に対して初回エピソードを経験する者(6.5日)において長かった。第1のaTTPエピソードを有した患者は、プラセボ群(46.6%)と比べてカプラシズマブ群(66.7%)において多かった。カプラシズマブでの処置は、両方の部分群において、プラセボと比較してアウトカムを改善した[すなわち、血小板数応答までの時間の短縮、処置期間中に死亡するか、再発するか、もしくは重度のTE事象がある患者の割合の低下、全試験期間における再発率の低下、および不応状態の防止](詳細な結果については、表7.11を参照されたい)。
結論:初回aTTPエピソードを有する患者は、疾患再発患者よりも症状発現が遅く、ベースラインにおける疾患の重症度が高い。カプラシズマブでの処置は、両方の部分群においてアウトカムを改善する。
Figure 2021512947
7.12 抗vWF Nanobodyによる後天性TTPの処置は、医療資源の利用を大幅に低減させる
背景:後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)の処置のための抗フォンウィルブランド因子(vWF)Nanobodyである、カプラシズマブの効能および安全性が評価された(Scullyら、Blood 2017年130巻:LBA−1)。
狙い:カプラシズマブでの処置が、医療資源の利用:血漿交換(PE)パラメータ、入院日数および集中治療室(ICU)在室日数に与える効果を調査すること。
方法:PEの量および日数、入院日数、ならびにICU在室日数をまとめ、Wilcoxon順位和検定に正規近似を使用して、試験薬処置期間の全体にわたり、カプラシズマブアームとプラセボアームとの間で比較した。
結果:Hercules試験では145名の患者をランダム化し、73名をプラセボ、72名をカプラシズマブに割り当てた。カプラシズマブでの処置は、血小板数の正常化を迅速化し、増悪を防止し、処置に対して患者が不応性になるのを防止した。このことは、カプラシズマブ(n=71)対プラセボ群(n=73)のPE平均日数(±SE)における38%の低減に反映された:5.8(±0.51)日対9.4(±0.81)日(p<0.001)。交換された血漿の総量の平均(±SE)も同様に41%低減した:21.3(±1.6)L対35.9(±4.2)L(p<0.001)。入院の平均期間(±SE)は、カプラシズマブ(n=71)において、プラセボ群(n=73)に対して31%減少した:9.9(±0.7)日対14.4(±0.7)日(p=0.0025)。
患者の3分の1は、ICUに搬送された(カプラシズマブ群における28名の患者、およびプラセボ群における27名の患者)。カプラシズマブ群では、ICU在室の平均日数(±SE)が65%低減した:3.4(±0.4)日対9.7(±2.1)日(p=0.0098)。
結論:カプラシズマブは、vWF媒介性血小板粘着を迅速に阻止することにより、aTTPの新たな処置となる。カプラシズマブでの処置は、医療資源の利用における意義のある低減に反映された、アウトカムの改善をもたらす。
7.13 aTTPの増悪がある患者における非盲検カプラシズマブの効能および安全性
背景:後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)患者におけるカプラシズマブの効能および安全性は、単盲検の第2相試験において実証され(Peyvandiら、2016年、N Engl J Med 374巻:511〜522頁)、二重盲検の第3相試験において確認されている(Scullyら、Blood 2017年130巻:LBA−1)。
狙い:ここでは、非盲検(OL)カプラシズマブを受けた患者の効能および安全性結果を提示する。
方法:二重盲検(DB)処置期間中に再発が起きた場合、初回の処置割り当てに対する盲検性を維持しながら、連日血漿交換(PEX)の再開および免疫抑制と併せて、患者をOLカプラシズマブに切り替えた。標準的方法に従い(詳細な説明を参照のこと)、血小板数を判定した。ADAMTS13活性は、実施例7.7に記載したように判定した。
結果:DB期間中、プラセボ群で28名、カプラシズマブ群で3名と、計31名の患者が増悪を経験した。そのうち28名は、カプラシズマブでのOL処置に切り替えた(28名中26名のプラセボ処置患者、および3名中2名のカプラシズマブ処置患者)。6日目までに、OLカプラシズマブを受けた患者の81%が血小板数応答の確認(すなわち、5日以内の連日PEの停止によって確認される150×10/L以上の血小板数)を達成した。死亡者はいなかった。OL処置期間中、1名の患者(3.6%)はTTP増悪を経験し、1名の患者(3.6%)は重度の血栓塞栓性事象(大静脈血栓症)を経験した。OL処置の終了後、3名の患者はTTPを再発し、3名全員が処置停止時に10%未満のADAMTS13活性を有した。OLカプラシズマブ群における安全性プロファイルは、DBカプラシズマブ群において観察されたものと一致していた。合計で25名の患者(89.3%)については、処置下で発現した少なくとも1つの有害事象が報告された。
結論:カプラシズマブでの非盲検治療は、aTTPの増悪を経験した患者において効果的であった。安全性プロファイルは、二重盲検期間中に観察されたものと一致していた(実施例7.14を参照のこと)。
7.14 全試験期間:安全性および免疫原性。
Hercules試験の設計(二重盲検試験薬の投与中にTTPが再発した場合に非盲検カプラシズマブでの処置に切り替えることを含んだ)、およびほぼすべての再発がプラセボ群で起きたこと(実施例7.13を参照のこと)を理由に、曝露の持続時間中央値は、カプラシズマブ群においてプラセボ群よりも長かった:35日(1から65日の範囲)対23日(2から66日の範囲)。
全試験期間中、カプラシズマブ群における69名の患者(97.2%)、およびプラセボ群における71名の患者(97.3%)が、少なくとも1つの有害事象を報告した。有害事象は、治験責任医師により、カプラシズマブ群の41名の患者(57.7%)およびプラセボ群の32名の患者(43.8%)において、試験薬に関連する可能性が少なくともあるとみなされた。
試験中、カプラシズマブ群で1名(1.4%)(無処置経過観察期間中、治験責任医師は試験薬に関連しないものとみなした)、プラセボ群で3名(4.1%)(すべて試験薬処置期間中)の、計4名の患者が死につながる有害事象を有した。
全試験期間中、カプラシズマブ群における28名の患者(39.4%)、およびプラセボ群における39名の患者(53.4%)について、重篤有害事象が報告された。プロトコールに従い、再発は重篤有害事象として報告する必要があり、数値的にはプラセボ群におけるメインドライバーであった。重篤有害事象は、治験責任医師により、カプラシズマブ群の10名の患者(14.1%)およびプラセボ群の4名の患者(5.5%)において、試験薬に関連する可能性が少なくともあるとみなされた。
カプラシズマブ群における5名の患者およびプラセボ群における9名の対象については、試験薬の中止につながる有害事象が報告された。
カプラシズマブ群における46名の患者(64.8%)およびプラセボ群における35名の患者(47.9%)で、出血関連有害事象が報告された。最も頻度が高かったのは、鼻出血および歯肉出血であった;これらはすべて、ほとんどは介入なしで解消した。これらの事象は、患者の大多数において軽度または中等度であり、カプラシズマブ群中3名の患者およびプラセボ群中1名の患者では重度であった。カプラシズマブ群中8名の患者(11.3%)およびプラセボ群中1名の患者(1.4%)では、出血の重篤有害事象が報告された。最も高い頻度で報告された出血の重篤有害事象は、カプラシズマブ群の4名の患者における鼻出血であった。
カプラシズマブで処置された患者の3.1%において、薬物誘導性の抗薬物抗体が発生した。これらの患者において、臨床的効能に対する影響は観察されず、重篤有害事象も報告されなかった(実施例7.21を参照のこと)。
7.15:カプラシズマブの薬力学
カプラシズマブとvWFの相互作用は高度に特異的であり、vWF A1ドメインへのカプラシズマブの結合は、vWFが担体機能を有する凝固第VIII因子(FVIII)と相互作用するvWFの能力に影響を及ぼさない。同様に、カプラシズマブの選択的結合は、線維性コラーゲン、VI型コラーゲンまたはADAMTS13と相互作用するvWFの能力に影響を及ぼさない。さらに、カプラシズマブは、赤血球または血小板と交差反応しない。この高い特異性のため、オフターゲット効果は予想されず、前臨床試験および臨床治験において観察されていない。
単回漸増静脈内投与または皮下投与、および複数回の10mgの連日皮下投与を受けた後の健康なボランティアと、初回10mgの静脈内ボーラスまたはプラセボの後に複数回の10mgの1日1回皮下投与またはプラセボを受けたaTTP患者とにおいて、全(遊離+薬物複合体)vWFのレベル、リストセチン補因子活性(RICO)、およびFVIIIレベルを測定した。
7.15.1 vWF抗原(vWF:Ag)
ベースラインにおけるvWF:Agレベルは、健康な対象よりもaTTP患者において高かった。カプラシズマブを用いて実施した臨床試験において、平均(±標準偏差[SD])血漿vWF:Agレベルは、健康な対象では38.5±10.9nMであり、aTTP患者では70.5±30.0nMであった。カプラシズマブ処置は、vWFの体内動態に影響を与え、全循環vWF:Agレベルの一過的な低減をもたらした。平均すると、この効果は、健康なボランティアおよびaTTP患者において最終用量投与から2から7日以内に元に戻った(図3)。
全vWF:Agレベルの一過的な低下は、遊離型の標的と比較して薬物−標的複合体の消失が速いことに起因すると考えられた。
7.15.2 RIPA/RICO
リストセチン血小板凝集(RIPA)およびRICOアッセイは、血液中に存在するvWFの血小板結合能を評価するためのインビトロアッセイである。RIPAおよびRICOアッセイの方法論は、血小板の存在下で血漿にリストセチンを加えると、血小板の凝集が起こることに基づく。抗生物質であるリストセチンは、高せん断血流条件と同様の程度までvWFを活性化させ、結果として、血小板受容体GP1bに対するvWFの結合をモジュレートする。カプラシズマブとvWFの相互作用によってインビトロの血小板凝集を阻止できることから、処置中のカプラシズマブの活性を評価するために、これらの方法を選択した。RIPAまたはRICO活性がそれぞれ10%または20%未満に減少したことにより、vWF媒介性血小板粘着がカプラシズマブによって完全に阻害されたことが示された。健康なボランティアでは、少なくとも24時間にわたる完全かつ安定な標的の阻害が、10mg以上の単回皮下投与の後に観察された。この連日投与される10mgの皮下用量は、全処置期間にわたるaTTP患者のvWF媒介性血小板粘着の完全な阻害も誘発した(図4)。すべての臨床試験において、RICO活性は、試験薬の中止から7日以内にベースライン値に戻った。
7.15.3 FVIII
vWFは、FVIIIの担体として作用する。カプラシズマブによる全vWFレベルのモジュレーションは、FVIIIレベルの一過的な低減ももたらし、vWFに関しては、健康なボランティアおよびaTTP患者において、最終用量の投与から2から7日以内に、FVIIIの正常範囲への回復が観察された。
7.15.4 QT/QTc試験
心血管への影響は、非臨床試験では観察されなかった。完了されたヒト試験において、臨床的に関連する心電図(ECG)の発見に関するエビデンスはなかった(実施例7.13を参照のこと)。
カプラシズマブの分子構造およびサイズ、その標的特異性、ならびにインビボでの心血管の易罹病性の欠如を考慮すると、カプラシズマブがQTの間隔を延長させることは予想されなかった。
これは観察されていない。
7.16 カプラシズマブの薬物動態
全(遊離+標的結合)カプラシズマブ濃度のレベルを、健康なボランティアおよびaTTP患者の血漿中で測定した。単回漸増静脈内輸注、ならびに単回および反復性の皮下用量投与後の健康な対象では、完全な薬物動態プロファイルが得られた(図5)。第II相および第III相治験におけるaTTP患者では、まばらな血漿サンプルが得られた。カプラシズマブの薬物動態プロファイルは、健康なボランティアにおける標準的なノンコンパートメント分析(NCA)によって、また、健康なボランティアおよびaTTP患者における母集団薬物動態分析において調査されている。
10mgの連日反復皮下投与の後、第2の薬物投与の時点で定常状態が急速に達成され、標的vWF:Agの発現に応じて、カプラシズマブの蓄積は限定されていた。
7.16.1 吸収
健康なボランティアにおいて単回投与後に標準的なノンコンパートメント方法によって推定した、またはaTTP患者において定常状態でモデル予測した、主な曝露パラメータを、表7.16.1Aおよび7.16.1Bに報告する。単回用量投与後、曝露範囲(曲線下面積;AUC)および曝露率(最大濃度;Cmax)は、投与された用量とともに増加したが、比例的ではなかった。10mgの皮下投与後、カプラシズマブのCmaxは投与4時間後に達成された。母集団薬物動態分析において判定された絶対的なバイオアベイラビリティは、aTTP患者では90%、健康なボランティアでは100%近くと推定された。
Figure 2021512947
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7.16.2 分布および代謝
カプラシズマブの薬物動態は、二相性の血漿プロファイルを呈した。母集団薬物動態モデルにより、健康なボランティアおよびaTTP患者において、それぞれ5.35および6.33Lの中心コンパートメントの分布容積が推定され、末梢コンパートメントの分布容積は27Lと推定された。
カニクイザルにおける前臨床試験は、体循環中でカプラシズマブが結合し、そのvWF活性を5分以内に中和することを示した。循環中のカプラシズマブの主要形態であるカプラシズマブ−vWF複合体は、肝臓に、また同様に未結合のvWFに分布し、網内系によって急速に異化された。前臨床試験は、過剰な未結合のカプラシズマブが、他の十分に灌流された臓器/組織に分布し、ここで大容量の非特異的な異化作用によって分解されたことを示唆した。28KDaのMWをもつ遊離型のカプラシズマブは、自由にというわけではないが、糸球体で濾過される。小さなタンパク質の全体的消失に対する腎臓の寄与は、他の身体領域におけるタンパク質分解活性に依存した。カプラシズマブについて、投与された用量のうち尿中で回収された割合は、無視できるものであった(<0.5%)。
7.16.3 消失
カプラシズマブの見かけのクリアランスは、投与された用量とともに変化した。健康なボランティアにおける10mgの単回静脈内投与後、モデル依存方法の使用により、769±343mL/時間の平均クリアランスおよび19.2±7.5時間の平均終末相半減期が推定された。皮下投薬後のカプラシズマブの薬物動態は、吸収が制御されているようである。健康なボランティアにおいて、10mgの単回皮下投与後、見かけのクリアランスの平均値は386±160mL/時間であり、平均終末相半減期は38.5±22.2時間であった。
7.16.4 用量比例性
健康な対象において、2から16mgの漸増するカプラシズマブ皮下用量を用いた場合、CmaxおよびAUCにおける増加は、用量に比例するとはいえないものであった。1.0:2.0:4.0:5.0:8.0の用量増加比において、平均Cmax比は1.0:1.8:2.0:2.4:2.8であり、平均AUCは、1.0:3.9:4.1:5.3:6.1の比で増加した。
カプラシズマブの全クリアランスは、薬物および標的のレベルに依存し、線形(異化)クリアランスと非線形(標的媒介性)クリアランスとの和であった。カプラシズマブの終末相半減期もまた、薬物および標的のレベルに依存した。健康なボランティアにおいて、見かけの終末相半減期の平均値は、単回静脈内用量(0.5から12mg)後では13時間から40時間に、単回皮下投与(2から16mg)後では11時間から53時間に増加した。
7.16.5 人口統計学的因子および身体サイズの効果
aTTP患者における母集団薬物動態分析は、年齢、性別、人種、および血液型が、カプラシズマブの薬物動態に影響を及ぼさなかったことを示した。体重、およびクレアチニンクリアランス(CrCL)によって表される腎機能は、薬物動態に対して統計的に有意な効果を及ぼし、体重およびCrCLの低い患者において予想曝露量が高かった。
しかしながら、表7.16.5に示すように、これらの共変数が極端な値をとる患者集団では、予想曝露量範囲の大部分が重複しており、特定の用量調節は必要ないとみなされた。ベースラインのvWFレベルは、薬物曝露に対して統計的に有意な効果を及ぼすが、vWFが増えた患者に対する薬物曝露の増加は、異なる薬力学効果(ベースラインvWFレベルからの変化)をもたらさず、個別の用量調節は必要ないとみなされた(実施例7.16.6および7.18も参照のこと)。
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7.16.6 特殊集団における薬物動態
重度の急性または慢性肝障害を有する患者において、カプラシズマブを用いた正式な試験は実施されておらず、これらの集団におけるカプラシズマブの使用に関するデータは入手できなかった。軽度および中等度の肝障害患者におけるカプラシズマブの使用に関連するリスクは、全体的な患者集団におけるリスクと同様であると考えられたが、これは、カプラシズマブ−vWF複合体が、損傷した肝細胞実質によってではなく、活性化されたクッパー細胞によって排除されると予想されるからである。しかしながら、出血の高いリスクを呈する重度肝障害患者においては、カプラシズマブを慎重に使用すべきである。
腎機能障害がカプラシズマブの薬物動態に及ぼす効果に関する正式な試験は実施されていない。母集団薬物動態/薬力学モデルにおいて、腎機能(ベースラインCrCL、範囲:11.9から120mL/分超)は統計的に有意な効果を有し、重度腎機能障害における予想曝露量(AUCss)の限定的な増加をもたらした。aTTP患者の臨床試験において、腎機能が低下した者は、有害事象のさらなるリスクを示さなかった。
7.16.7 薬物間相互作用
Nanobodiesは、単一可変ドメイン抗体断片として、遍在するタンパク質分解酵素によって異化されると予想され、チトクロムP450アイソフォームまたは他の代謝酵素もしくは輸送体と直接的に相互作用しないため、カプラシズマブに関するインビトロ薬物間相互作用試験は実施しなかった。サイトカインのモジュレーションは、NanobodiesがCYP発現を変化させうる間接的メカニズムでありうるが、サイトカインによって媒介されるCYPに関連する薬物間相互作用は、カプラシズマブについては起こりそうにない:Nanobody(登録商標)はvWFを選択的に標的とするため、免疫調節特性を有するものとは予想されない。
aTTPの処置は、コルチコステロイドおよびリツキシマブの使用を伴うことが多く、場合によっては、アスピリンおよび低分子量ヘパリンが血栓予防として使用される。より頻度は低いが、ビンクリスチン、シクロホスファミド、またはシクロスポリンが不応性疾患に使用されている。これらの化合物のうちリツキシマブを除くすべてが、肝臓によりCYP媒介性経路を通じて広く排除されることが公知であるが、腎臓のクリアランス経路はマイナーな経路に過ぎず、これらの処置をカプラシズマブと組み合わせて開始した場合、薬物とNanobodyとの間の相互作用は期待されない。他のモノクローナル抗体については、リツキシマブの分解は、非特異的な大容量のタンパク質分解によって起こり、薬物間相互作用の可能性は予想されない。
カプラシズマブは、vWFのA1ドメインを選択的かつ特異的に阻害する。インビトロでは、カプラシズマブは、vWFに対するヘパリンの結合と部分的にしか競合しなかった。インビボでは、共投与されたヘパリンとカプラシズマブとの間の薬力学相互作用は、臨床的に意義のあるものとは予想されなかったが、これは、ヘパリンの主な標的効果が、酵素阻害物質であるアンチトロンビンIIIへの結合によって媒介されるためである。
7.16.8 用量−応答関係
単回漸増静脈内投与ならびに単回および反復性の皮下用量投与後の健康なボランティアにおける試験により、カプラシズマブの予想される薬理学的応答および安全性が確認された。
7.17 カプラシズマブの薬物動態および薬力学にPEが与える効果
背景:後天性血栓性血小板減少性紫斑病を有する患者における臨床治験中、カプラシズマブを血漿交換(PE)前に10mgの静脈内(i.v.)ボーラスとして投与し、続いて、連日PE期間中およびその後少なくとも30日間にわたり、1日10mgの皮下(s.c.)用量を投与した。
狙い:第1の静脈内ボーラスとその後のPEとの間の異なる時間間隔の潜在的効果、および異なるPEスケジュールの効果を調査した。
方法:非線形混合効果モデリングを使用して、カプラシズマブとvWFとの間の相互作用を説明するために、統合された薬物動態(PK)/薬力学(PD)モデルを開発し、これを使用して、次の異なる既定のシナリオについてもたらされるPKおよびPDをシミュレートした:
(1)カプラシズマブ10mgの静脈内ボーラスから3、5、11、23時間後にPEを開始
(2)PEスケジュール:初日または7日間の間に1日1回および1日2回(bid)
結果:臨床治験からのデータは、カプラシズマブ血漿濃度500ng/mL以上でvWF活性の完全な中和を示した。シミュレーションは、カプラシズマブの静脈内ボーラスから5時間後までにPEを開始すれば、カプラシズマブ血漿レベルの中央値がこの閾値を超えた状態を保つことを示唆した。より長い遅延のためには、カプラシズマブ血漿レベルの中央値が500ng/mLを下回ってもよく、PE前にさらに10mgを皮下投与することで、有効な薬物曝露を維持することができる。
1日2回のPEを7日間行う効果のシミュレーションでは、PE期間中のカプラシズマブの皮下投薬スケジュールを、1日2回のPE処置の間、各PE処置後にカプラシズマブ10mgを1日2回皮下投薬するように調節してもよいことが示唆された。
結論:カプラシズマブの第1の静脈内投薬から5時間後までにPEを開始すれば、有効な薬物レベルが予想される。より長い遅延のためには、PE前にさらに10mgの皮下投薬を想定してもよい。
1日2回のPEを7日間行う場合、カプラシズマブの皮下投与スケジュールを、各PE処置後の1日2回のカプラシズマブで調節してもよい。
7.18 メカニズムに基づくPKPDモデリングにより裏付けられたaTTP患者におけるカプラシズマブ投薬の理論的根拠
目的:様々な成人集団における処置後の、カプラシズマブの濃度と、その標的であるフォンウィルブランド因子抗原(vWF:Ag)との間の相互関係を説明すること。開発されたモデルは、投薬レジメンを裏付けるため、仮定のシナリオのシミュレーションのために利用されるべきである。
方法:この分析は、健康なボランティア(n=100)、経皮的冠動脈形成術を受けた患者(PCI)(n=225)、および後天性血栓性血小板減少性紫斑病を有する患者(n=216)における、カプラシズマブに関する第I相から第III相の10種の試験1−10から得た、合計3629個のPK観察値および6295個のPD観察値を含むデータに基づいた。aTTP患者の大多数は、標準治療として血漿交換(PE)および免疫抑制剤処置を受けた。このデータには、広範な用量レベル、処置およびPEスケジュールが表されていた。静脈内投与後および皮下投与後の両方のデータが含まれた。
母集団PKPD分析は、NONMEM、バージョン7.3.0を使用した非線形混合効果モデリングによって実施した。このモデルは、段階的に開発された。初めに、健康なボランティアおよびPCI患者に関するデータを含むデータセットのサブセットを、モデル開発のために使用した。その後、aTTP患者を含むデータセットのサブセットにおける、aTTPの病状および標準治療のPEに関連する特定の特徴を説明するように、モデルを更新した。年齢、性別、人種、血液型、体重、クレアチニンクリアランス、および併用処置の効果を、NONMEMにおける層別化予測補正された視覚的予測チェックおよび単変量評価を用いたグラフの評価に基づいて評価した。
aTTP患者について最終的なモデルを使用したシミュレーションを行い、用量、患者の体重、小児患者における用量調節の必要性における変化の効果を評価した。
結果:カプラシズマブとvWF:Agとの間の相互作用は、完全な標的媒介性の薬物体内動態モデルによって十分に説明された。このモデルは、遊離薬物の遅いものと速いものとが並行した一次吸収過程および一次線形消失をもつ2コンパートメント薬物体内動態モデルを含んだ。このモデルにより、二量体および三量体の両方を形成する能力を有する薬物−vWF複合体の形成が説明された。vWFの生成および成熟は、内皮におけるバイベル・パラーデ小体中の貯蔵、ならびにその後の遊離vWFの急速な放出および消失を模倣する、トランジットコンパートメント、およびプールコンパートメントにおけるvWFの貯蔵によって説明された。遊離vWFの半減期は、文献値の16時間に固定された(Lentingら、2015年、Blood 26巻:2019〜2028頁;Favaloroら、2007年、Thromb Haemost 97巻:922〜930頁;Dobrkovskaら、1998年、Haemophilia 4巻:33〜39頁;Goudemandら、2005年、J Thromb Haemost 3巻:2219〜2227頁)。vWFが対象のベースラインレベル未満に減少した場合、プールからのvWFの生成速度および放出を刺激する、二重フィードバックメカニズムが含まれた。
aTTP患者については、疾患進行は、経時的なvWF:Agにおける一過的な増加として捕捉され、PEの効果は、遊離vWF、遊離薬物、および薬物−vWF複合体の並行した除去によって説明された。PE下における集団の典型的な全消失速度は、遊離薬物では3.7倍高く、遊離vWFでは3.5倍高く、薬物−vWF複合体では1.7倍高いと推定された。
体重はモデルに非比例的に含まれ(固定指数)、クレアチニンクリアランスは、aTTP患者におけるCRCL中央値(100ml/分)未満のCRCLを有する患者に関するクリアランスがわずかに低減したことから、統計的に有意な共変数と識別された。
このモデルは、投薬レジメン、特殊集団における投薬、および投薬欠落の扱い方の裏付けとするための仮定のシナリオをシミュレートするために首尾よく適用された。また、小児患者における投薬レジメンに関する情報を得るためと、身体サイズの差異に基づいて日本人aTTP患者におけるPKPD挙動を予測するためにも、シミュレーションを行った。また、ベースラインvWF:Ag濃度の影響、ならびにタイミング、強度、および持続時間という観点でのPEスケジュールの効果に関する知識を深めるためにも、シミュレーションを行った。
結論:カプラシズマブとvWFとの間の相互作用を(vWF:Agの観察に基づいて)説明するために、セミメカニスティックな母集団PKPDモデルを開発した。このモデルは、aTTP患者における疾患進行およびPE処置に左右される効果を含め、薬物−vWF複合体の経時的な相互作用を十分に説明した。このモデルは、標的集団におけるカプラシズマブとvWFとの間のPKPD相互関係の理解を深めるために首尾よく適用され、シミュレーションの使用により、成人患者および小児患者の両方における投薬の理論的根拠を裏付け、日本人aTTP患者へのブリッジングを可能にしている。
7.19 後天性血栓性血小板減少性紫斑病を有する小児患者におけるカプラシズマブのモデルに基づく推奨用量
背景:後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)は、稀で生命を脅かす自己免疫性の血液凝固障害であり、小児における発生率は、成人と比較して大幅に低い。カプラシズマブは、成人aTTP患者における第2相および第3相のランダム化臨床治験において評価されている。
狙い:カプラシズマブの臨床治験に登録した小児患者はいなかったため、この集団については、モデルに基づくシミュレーションを使用して推奨用量を策定した。
方法:非線形混合効果モデリングを使用して、様々な成人集団における、様々な用量レベルでのカプラシズマブの静脈内および皮下投与後の、カプラシズマブとフォンウィルブランド因子抗原(vWF:Ag)との間の相互作用を説明する、セミメカニスティックな薬物動態−薬力学(PKPD)母集団モデルを開発した。非比例的にスケーリングされたPKPDモデルに基づくシミュレーションを行って、青年および2歳を超える小児における好適な投薬レジメンを確立した。各カテゴリーに1000名の個体を含む8つの年齢カテゴリーを定義し、National Health and Nutrition Examination Surveyデータベースから対応する個体の体重をサンプリングした。異なる年齢カテゴリーにおけるカプラシズマブの曝露レベルのシミュレーションを、成人において予測されるものと比較した。
結果:曝露のシミュレーションは、一律10mgの連日投与が、体重の低い小児、主に10歳未満の小児において比較的高い曝露をもたらすことを示す。体重40kg未満の小児に対して1日用量を5mgに調節すると、年齢群および体重群間で平均して同様の曝露がもたらされることになる。体重によって調節した投薬は、異なる年齢群間で類似性が高いvWF:Agの抑制をもたらすとも予測される。
結論:12〜18歳で体重40kg以上の青年において推奨される用量は10mgであり、40kg未満の場合は5mgである。年齢差に基づいたvWF:Ag抑制の差は予想されないため、2〜12歳の小児にも、同じ推奨用量:体重が40kg以上であれば10mg、40kg未満であれば5mgが適用される。
7.20 マネージドアクセスプログラムによってカプラシズマブで処置されたaTTP患者における実臨床での経験
背景:後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)は、生命を脅かす免疫介在性の血栓性微小血管症(TMA)である。aTTP患者におけるカプラシズマブの効能および安全性は、ランダム化臨床治験において示されている。
狙い:マネージドアクセスプログラム(MAP)においてaTTP患者にカプラシズマブを用いた初めての実臨床での経験を記述的に報告する。
方法:MAPのための適格性判断基準は、以下のとおりであった:(i)aTTPのエピソードを有する患者で、(ii)承認されている療法では満足に処置されなかったこと;(iii)患者が活性物質または賦形剤のうちのいずれに対しても既知の過敏性を有しなかったこと、および(iv)妊娠中でないこと。カプラシズマブの利用は、同生成物が要請された国において有効な法律および規制に従って許可された。安全性関連事象は、該当国のすべての医薬品安全性監視法に従って、依頼医によって報告するものとした。
結果:2018年5月14日から2019年1月22日まで、118件のMAP要請があり、このうち75件は承認され、7件は却下され、35件は要請側からの追求/撤回がなく、1件は審査中であった。承認された要請のうち、67名の患者はカプラシズマブでの処置を受け、8名は最終的に療法を開始しなかった。患者は、フロントライン療法として、または不応性の経過をたどるaTTPの処置のために、カプラシズマブを受けた。療法は、37名の患者で首尾よく完了し、13名の患者で継続中であり、17名の患者で打ち切られた(そのうち5名は死亡した)。死亡はすべて、重度の不応性過程のためにカプラシズマブが後期に開始された患者において起こり、いずれもカプラシズマブに関連するものとはみなされなかった。任意の安全性報告は、新しい安全性シグナルを伴わず、臨床試験で観察された安全性プロファイルと一致していた。
結論:aTTP患者においてカプラシズマブを用いた第1の実臨床エビデンスは、臨床治験において観察された、特にフロントライン療法として開始した場合のカプラシズマブの重要な利点を裏付ける。
7.21 新しいフォーマット
薬物により誘導された処置下で発現したADAを検出するために、改変抗薬物抗体(mADA)アッセイを使用した。mADAは、架橋フォーマットにおける検出試薬として、改変されたカプラシズマブ分子、すなわちカプラシズマブ−ALAバリアント(配列番号24)を用いる。C末端アラニン伸長型カプラシズマブは、いかなる先在抗体にも結合しなかった。
様々なインビトロ実験において、カプラシズマブおよびC末端アラニン伸長型カプラシズマブは、同等の挙動を示した。
12A2H1(カプラシズマブの構成要素;配列番号19)の比較の核磁気共鳴(NMR)分析を用いて、C末端伸長部(アラニン)がNanobodyの全体的な立体構造に影響を及ぼさなかったことが実証された。
さらに、表面プラズモン共鳴(SPR)において、カプラシズマブとC末端アラニン伸長型カプラシズマブとで同様の、標的(vWF)への結合プロファイルが実証された。
カプラシズマブとC末端伸長型カプラシズマブとの間で同様の特徴およびプロファイルを考慮すると、こうしたC末端伸長型カプラシズマブ化合物は、カプラシズマブと同様に、aTTPの処置および/または防止にも使用することができると予想される。
7.22 結論。
過去20年間にわたり、aTTPの病態生理に関する理解が深まり、比較的新しい免疫抑制剤が使用されているにもかかわらず、罹患率は高く、報告される死亡率は20%に達するなど、処置アウトカムは変化していない(Jolyら、2017年、Blood 129巻:2836〜2846頁)。vWFのA1ドメインに対するNanobodyであるカプラシズマブは、vWFと血小板の粘着および凝集を阻止し、重度血小板減少症ならびにaTTPにおける組織および臓器の損傷を引き起こす微小血栓における血小板のさらなる消費を防止する。
aTTPの臨床診断は依然として、患者の病歴、身体検査、および末梢血塗抹標本の検査に基づいている。実際、初回aTTPエピソードを有する患者は、疾患再発エピソードを有する患者よりも症状発現が遅く、ベースラインにおける疾患の重症度が高い。
本試験では、aTTPの臨床診断を受けた患者を登録適格とし、確認のためのADAMTS13活性検査をランダム化時に行った。臨床診断は、ランダム化された者の86%において、10%未満のADAMTS13活性によって確認された。さらに、ベースラインにおけるADAMTS13活性が10%超であった20名の患者のうち13名については、TTPの病歴または試験中の他の時点における抑制されたADAMTS13活性のような、TTP診断の根拠があった。
第2相TITAN試験において、カプラシズマブでの処置は、血小板数の正常化を迅速化させ、増悪を防止した。しかしながら、未解消の基礎疾患活性を有する患者のサブセットでは、早期再発が起こった。したがって、本試験では、持続的な自己免疫活性のエビデンスがある患者において、免疫抑制の最適化と併せて盲検の試験薬処置を延長するよう、治験責任医師に促した。
第3相HERCULES試験の結果は、カプラシズマブでの処置が、微小血栓における血小板の消費を停止させることにより、血小板数応答までの時間を低減させるという仮説を裏付けた。この結果は、試験薬処置中のTTP関連死、TTP再発、または重度の血栓塞栓性事象、および全体的な再発に対する、カプラシズマブの臨床的に意義の大きい影響も実証した。未解消の基礎疾患のエビデンスがある患者において試験薬処置を延長し、免疫抑制を最適化するアプローチの妥当性は、試験薬処置後の再発の数が、第2相試験で観察されたものと比較して少ないことによって実証されるように、本試験の結果によって立証された。実際、試験薬の中止後に観察された再発はすべて、10%未満のADAMTS13活性を有する患者におけるものであった。実臨床設定において、このような患者をaTTPの再発から守るためには、基礎疾患が解消されるまでカプラシズマブでの処置を延長すべきである。
初回aTTPエピソードを経験する患者の比較的深刻な疾患の設定においてでさえ、カプラシズマブでの処置により、プラセボと比較して、血小板数応答までの時間の短縮、処置期間中に死亡するか、再発するか、または重度のTE事象がある患者の割合の低下、全処置期間中の再発率の低下、および不応状態の防止を含め、アウトカムが改善したことが示された。
第2相および第3相の両試験において、カプラシズマブでの処置中に報告された死亡はなく、これは死亡の防止に関して好ましいアウトカムである。さらに、カプラシズマブで処置された患者において、血漿交換に対して不応性の者はいなかった。このことは、カプラシズマブが、不応性疾患およびこの分集団において報告されたより悪いアウトカムを防止する可能性を有することを示唆する。カプラシズマブで処置された患者においては、臓器損傷に関連するマーカーの正常化が迅速化する傾向もあった。
カプラシズマブでの処置が血小板数応答までの時間および再発の防止に与えた影響は、医療資源の大幅な削減に関連した。
カプラシズマブは、止血における主要なタンパク質であるvWFに干渉し、この薬理的効果に基づき、フォンウィルブランド病において観察されるものと同様の皮膚粘膜出血の高いリスクに関連付けられる(Leebeek&Eikenboom、2016年、N Engl J Med 375巻:2067〜2080頁)。安全性結果は、これまでに報告されているものと一致していた。
ADAMTS13活性は、再発リスクの予測マーカーであるため、aTTPの管理における関連性を高めている(Westwoodら、2013年、J Thromb Haemost 11巻:481〜490頁;Peyvandiら、2008年、Haematologica 93巻:232〜239頁;Lammleら、2008年、Haematologica 93巻:172〜177頁;Knovichら、2012年、Eur J Haematol 88巻:518〜525頁;Kremer Hovingaら、2010年、Blood 115巻:1500〜1511頁;クイズ662;Bresinら、2009年、Thromb Haemost 101巻:233〜238頁;Catalandら、2009年、Eur J Haematol 83巻:559〜564頁;Goyalら、2013年、J Clin Apher 28巻:390〜394頁)。本試験において、ほぼすべての再発患者が抑制されたADAMTS13活性を有したことから、その価値が確認された。この群では、患者の50%超が血漿交換期間の終了時にADAMTS13活性の正常化を未だ達成しておらず、血漿交換の終了から最長25日後に増悪が起こり、血小板数応答が達成された後に少なくとも30日間にわたってカプラシズマブでの処置を継続する必要性を裏付けている。
カプラシズマブは、vWF媒介性血小板粘着を迅速に阻止することにより、aTTP患者の処置手段一式に対する重要な追加要素となる。
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Claims (17)

  1. 2つの抗ヒトフォンウィルブランド因子(vWF)免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチド1〜80mg、好ましくは5〜40mg、さらにより好ましくは10mgまたは11mgの用量をヒトに投与することにより、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、前記ポリペプチド。
  2. 本発明のポリペプチドを投与する前記工程は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはさらにはそれ以上のような30日より長い期間(処置期間)にわたって繰り返される、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 前記処置は、血小板数応答までの時間の短縮、処置期間中に死亡するか、再発するか、もしくは重度のTE事象がある患者の割合の低下、再発率の低下、および/または不応状態の防止をもたらす、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項2に記載のポリペプチド。
  4. 前記ポリペプチドは、配列番号20に結合する少なくとも1つのISVDを含む、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  5. 少なくとも1つのISVDは、配列番号19(12A02H1)によって表される、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  6. 前記ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも90%同一である、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  7. 前記ポリペプチドは、ALX0081(配列番号1)またはALX0081−A(配列番号24)である、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  8. 前記用量は、1日1回または1日2回投与される、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  9. ヒトにおける血小板数が少なくとも150,000/μlになるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、前記ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  10. ヒトにおける血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、前記ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項9に記載のポリペプチド。
  11. 本発明のポリペプチドを投与する前記工程は、前記血小板数が少なくとも2回の連続した測定で少なくとも150,000/μlになった後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはさらには、20日のような10日より長い期間、好ましくは30日より長いかまたはそれ以上の期間にわたって繰り返される、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項10に記載のポリペプチド。
  12. 前記2回の連続した測定は、少なくとも3日の間隔のような、少なくとも24時間、より好ましくは48時間の間隔、またはさらには4日、5日、6日、もしくはさらには7日のようなそれ以上の間隔、好ましくは1週間の間隔をおく、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項10または11に記載のポリペプチド。
  13. ヒトにおけるADAMTS13活性が、ADAMTS13基準活性の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、45%、またはさらには50%のような、少なくとも10%の割合になるまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、前記ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  14. ヒトにおける、LDHレベル、トロポニンTレベル、トロポニンIレベル、および/またはクレアチニンレベルのような臓器損傷マーカーのレベルが、正常レベルの少なくとも40%、またはさらには、60%、70%、80%、90%、もしくはさらには100%のような、少なくとも50%の割合に戻るまで、前記ポリペプチドの投与を繰り返すことを含む、前記ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  15. 血漿交換を行うことを含む、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  16. 前記vWF関連疾患は、急性冠症候群(ACS)、一過性脳虚血発作、不安定狭心症もしくは安定狭心症、卒中、心筋梗塞、または血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、好ましくはTTPから選択される、ヒトのvWF関連疾患の初回エピソード(の症状)を処置することに使用するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む容器と、使用説明書とを含む、キットまたは製品。
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