本出願は、完全長抗体、または重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗原結合断片に融合した2つ以上の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む新規の多重特異性抗原結合タンパク質(「MABP」)を提供する。各sdAbは、異なる標的(例えば、異なるエピトープまたは抗原)に特異的に結合し、sdAbの標的は、完全長抗体または抗原結合断片によって認識される標的とも異なる。本明細書に記載の多重特異性抗原結合タンパク質フォーマットは、異なる標的抗原の多価共連結を可能にし、抗体などのホモ二量体タンパク質の折り畳み及び精製を容易にする新規のホモ二量体化変異体も提供する。
本出願のいくつかの実施形態は、免疫チェックポイント分子、細胞表面抗原(例えば、腫瘍抗原)、血管新生因子、または炎症促進性分子の組み合わせを含む、種々の疾患関連エピトープ及び/または抗原の組み合わせを標的にするように適用することができる三重特異性抗原結合タンパク質(「TABP」)を提供する。本明細書に記載のTABPは、種々の疾患及び条件、例えば、がん、炎症、及び自己免疫疾患の治療に有用な薬剤を提供する。
したがって、本出願の一態様は、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体を含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の免疫チェックポイント分子(例えば、PD−1)に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の免疫チェックポイント分子(例えば、TIGIT)に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体を含む、第2の抗原結合部分、(c)第3の免疫チェックポイント分子(例えば、LAG−3)に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の腫瘍抗原(例えば、HER−2)に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)免疫エフェクター細胞(例えば、CD−3)に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体を含む、第2の抗原結合部分、(c)第3の腫瘍抗原(例えば、EGFR)に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質(TABP)が提供される。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の炎症促進性分子(例えば、TNF−α)に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の炎症促進性分子(例えば、IL−17A)に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体を含む、第2の抗原結合部分、(c)第3の炎症促進性分子(例えば、IL−17F)に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質(TABP)が提供される。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の血管新生因子(例えば、Ang2)に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の血管新生因子(例えば、VEGF)に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体を含む、第2の抗原結合部分、(c)第3の血管新生因子(例えば、DLL4)に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質(TABP)が提供される。
多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質を含む医薬組成物、キット及び製造品、ならびに本明細書に記載の多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質を用いた疾患の治療方法も提供される。
I.定義
本発明の実施において、具体的な反対の指示がない限り、当該技術分野の範囲内のウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学、DNA組み換え技術における従来の方法が採用され、その多くを例示の目的で以下に記載する。このような技術は、文献で詳細に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular BiologyまたはCurrent Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.(2009);Ausubel et al,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons,1995;Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Maniatis et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)及びその他類似の参考文献を参照されたい。
「多重特異性抗原結合タンパク質」及び「MABP」という用語は、本明細書で交換可能に使用される。「三重特異性抗原結合タンパク質」及び「TABP」という用語は、本明細書で交換可能に使用される。
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、臨床病理的過程で治療される個体または細胞の自然経過を変更するように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、疾患進行率の低下、疾患状態の寛解または緩和、及び寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、治療される疾患または状態(例えば、がん、炎症性疾患または自己免疫疾患)に関連する1つ以上の症状が緩和または除去された場合、本出願のMABPにより個体は成功裏に「治療」される。
本明細書で使用する場合、「有効量」は、対象における疾患または状態を治療するのに有効な薬剤または薬物の量を指す。がんの場合、本出願の有効量のMABPは、がん細胞数の減少、腫瘍の大きさの縮小、周辺臓器へのがん細胞の浸潤抑制(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止する)、腫瘍転移の抑制(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止する)、腫瘍の増殖のある程度の抑制、及び/または、がんに伴う1つ以上の症状のある程度の緩和をすることができる。臨床的に理解されるように、有効量の薬物、化合物、または医薬組成物は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と併用して実現しても、実現しなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療薬を投与するという観点で考慮されてよく、単剤は、1つ以上の他の薬剤と併用され、所望の結果が実現する、または実現し得る場合、有効量で投与されたとみなされ得る。
本明細書で使用する場合、「個体」または「対象」は、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類または霊長類を含むが、これらに限定されない、哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長4本鎖抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性または三重特異性抗体)、ダイアボディ、及び一本鎖分子、ならびに抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、及びFv)を含む。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書では「抗体」と互換的に使用される。本明細書で企図される抗体は、重鎖のみ抗体及び単一ドメイン抗体を含む。
基本的な4本鎖抗体単位は、2つの同一な軽(L)鎖及び2つの同一な重(H)鎖で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる付加的ポリペプチドを伴った5つの基本へテロ四量体単位からなり、10の抗原結合部位を含有するが、一方、IgA抗体は、2〜5つの基本的な4鎖単位からなり、これは重合して、J鎖と組み合わせて多価集合体を形成し得る。IgGの場合、4鎖単位は、一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によりH鎖と連結されるが、一方、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに依存して、1つ以上のジスルフィド結合により互いに連結される。H及びL鎖は、各々、規則的な間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)と、その後にα及びγ鎖の各々では3つの定常ドメイン(CH)ならびにμ及びεアイソタイプでは4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)と、その後にその他端に定常ドメインを有する。VLは、VHとともに整列され、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列される。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる。VH及びVLの対合は一緒になって、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性に関しては、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Daniel P.Sties,Abba I.Terr and Tristram G.Parsolw (eds),Appleton & Lange,Norwalk,CT,1994,page 71and Chapter 6を参照されたい。任意の脊椎動物種からのL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明白に異なる型のうちの1つに割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列によって、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる重鎖を有する5つのクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがある。γ及びμクラスは、CH配列及び機能の相対的に小さな差に基づいてさらにサブクラスに分けられ、例えば、ヒトは、以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2。
「単離された」抗体(または構築物)は、その作製(例えば、天然または組み換え)環境の成分から特定、単離され、及び/または回収されたものである。単離されたポリペプチドは、その作製環境からの他の全ての成分と関連しないのが好ましい。その作製環境の混入汚染成分、例えば、組み換えトランスフェクト細胞から生じるものは、典型的には、抗体の研究、診断、または治療への使用を妨げる物質であり、それらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質が含まれ得る。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えば、Lowry法で測定した場合に、抗体の95重量%を超えるまで、いくつかの実施形態では、99重量%を超えるまで、(1)スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いた非還元条件または還元条件下でのSDS−PAGEによって均一になるまで精製される。単離された抗体には、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分は存在しないことになるため、組み換え細胞内にインサイチュ抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチド、抗体、または構築物は、少なくとも1つの精製ステップにより調製されることになる。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」及び「VL」と呼ばれ得る。これらのドメインは、一般的に、(同じクラスの他の抗体に対して)抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を含有している。ラクダ科の種に由来する重鎖のみ抗体は、「VHH」と呼ばれる単一重鎖可変領域を有する。従って、VHHは、特殊型のVHである。
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが抗体の間の配列で広範囲に異なる、という事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定抗体の、その特定抗原に関する特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの全スパンを通して均一に分布しない。代わりに、可変性は、軽鎖及び重鎖の両可変ドメイン内の超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインの、より高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。自然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、4つのFR(大部分はβシート立体配置をとり、3つのHVRにより連結される)を含み、これは、βシート構造を連結し、いくつかの場合には、その一部を構成するループを形成する。各鎖中のHVRは、FR領域により密に接近して一緒に保持され、他の鎖からのHVRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、抗体依存的細胞性細胞傷害性の関与といったような種々のエフェクター機能を示す。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然に生じる突然変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に向けられる。典型的に異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に対して向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが、他の免疫グロブリンによって夾雑されないハイブリドーマ培養により合成されるという点で有益である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を指し、任意の特定の方法による抗体作製が必要であると解釈されるべきではない。例えば、本出願に従って使用するモノクローナル抗体は、種々の技術で作製されてよく、例えば、ハイブリドーマ方法(例えば、Kohler and Milstein.,Nature 256:495−497(1975);Hongo et al.,Hybridoma14(3):253−260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981))、組み換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージ提示技術(例えば、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)を参照されたい);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 101(34):12467−12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)、ならびに、ヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリンの座位もしくは遺伝子の一部または全部を有する、ヒトまたはヒト様抗体を動物に産生させる技術(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,661,016号;Marks et al.,Bio/Technology10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995を参照されたい)が挙げられる。
「完全長抗体」、「無傷抗体」、または「全抗体」」という用語は、交換可能に使用され、抗体断片とは対照的に、その実質的に無傷な形態の抗体を指す。具体的には、完全長4本鎖抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を伴うものを含む。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であり得る。場合によっては、無傷抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
「抗体断片」は、無傷抗体の一部、好ましくは、無傷抗体の抗原結合及び/または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057−1062(1995)を参照されたい);抗体断片から形成される一本鎖抗体分子;単一ドメイン抗体、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、ならびに残余「Fc」断片(この名称は容易に結晶化する能力を反映している)を産生した。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を伴う完全L鎖からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、それは単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一大型F(ab’)2断片を生じるが、これは、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片におおよそ対応し、依然として抗原に架橋し得る。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含めてCH1ドメインのカルボキシ末端に2〜3の付加的残基を有することでFab断片と異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’に関する本明細書中での呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
Fc断片は、ジスルフィドにより一緒にまとめられた両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域(特定の細胞型で見い出されるFc受容体(FcR)によっても認識される領域)中の配列により決定される。
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、堅く、非共有的に会合した1つの重鎖及び1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これら2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(各々H及びL鎖からの3つのループ)を生じる。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、完全結合部位より低い親和性ではあるが、抗原を認識し、結合する能力を有する。
「一本鎖Fv」(「sFv」または「scFv」とも略される)は、単一ポリペプチド鎖に連結されるVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはさらに、VH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを含み、これは、抗原結合のために望ましい構造をsFvに形成させる。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
本明細書に記載の抗体の「機能的断片」は、無傷抗体の部分を含み、一般的に、無傷抗体の抗原結合領域もしくは可変領域、または修飾されたFcR結合能を保持するまたは有する抗体のFc領域を含む。抗体断片の例としては、線状抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
「ダイアボディ」という用語は、鎖内対合ではなくVドメインの鎖間対合が達成され、それにより二価断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片を生じるよう、VH及びVLドメイン間に短いリンカー(約5〜10残基)を有するsFv断片(前段落を参照)を構築することにより調製される小抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)により詳細に記載されている。
本明細書のモノクローナル抗体としては具体的には「キメラ」抗体(免疫グロブリン)が挙げられ、これにおいて、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における、対応する配列と同一または相同であり、一方、当該鎖(複数可)の残りの部分は、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における、対応する配列と同一または相同であり、そのような抗体の断片についても、それらが所望の生物学的活性を示す限り、抗体の場合と同様である(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851−6855(1984))。本明細書の目的のキメラ抗体には、PRIMATTZFD(登録商標)抗体が含まれ、抗体の抗原結合領域は、例えば、目的の抗原でマカクサルを免疫化することによって産生される抗体由来である。本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ここで、レシピエントのHVR(以下に定義される)に由来する残基は、所望の特異性、親和性、及び/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、ラクダ、ラマ、アルカパ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRに由来する残基で置換される。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基は、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでよい。これらの修飾を、抗体性能(例えば、結合親和性)をさらに洗練させるために作製してもよい。一般的に、ヒト化抗体は、実質的に全てまたは少なくとも1つ、及び典型的に2つの可変ドメインを含み、それにおいて超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものであるが、FR領域は、抗体性能(例えば、結合親和性、異性化、免疫原性など)を改善する1つ以上の個々のFR残基の置換を含み得る。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的には、H鎖におけるわずか6つ、及びL鎖におけるわずか3つである。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分、典型的にヒト免疫グロブリンのものも含む。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105−115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号を参照されたい。
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有し、及び/または、本明細書で開示するヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義では、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が除外される。ヒト抗体を、当該技術分野において公知の種々の技術(ファージ提示ライブラリーを含む)を使用して産生することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。また、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能な方法が、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86−95(1991)に記載される。また、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368−74(2001)を参照されたい。ヒト抗体は、抗原攻撃に応答してそのような抗体を産生するように修飾されているが、しかしながら、その内因性遺伝子座が無能になっているトランスジェニック動物(例えば、免疫化ゼノマウス)に対して抗原を投与することにより調製することができる(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体に関しては、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562(2006)を参照されたい。
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、本明細書で使用する場合、配列が超可変である、及び/または構造的に定義されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、4本鎖抗体は、6つのHVR;VH(H1、H2、H3)中に3つ(H1、H2、H3)、及びVL中に3つ(L1、L2、L3)を含む。単一ドメイン抗体は、3つのHVR:VHH(H1、H2、H3)中に3つ(H1、H2、H3)を含む。天然4本鎖抗体では、H3及びL3は、6つのHVRの最大の多様性を示し、H3は特に、抗体に細かい特異性を付与するのにユニークな役割を果たすと考えられる。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37−45(2000);Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1−25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際、重鎖のみからなる天然のラクダ科抗体は、軽鎖の非存在下で機能的かつ安定である。例えば、Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−8(1993);Sheriff et al.,Nature Struct. Biol. 3:733−736(1996)を参照されたい。
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、Kabatシステムで定義されるように、超可変領域を指すように使用される。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい。
多くのHVR描写が本明細書において使用され、包含される。Kabatの相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づき、最も共通して使用される(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。Chothiaは、代わりに、構造的ループの位置を指す(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。AbM HVRは、KabatのHVRとChothiaの構造的ループの間での妥協を表わし、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々からの残基を以下の表1に指摘する。
HVRは以下の通りの「伸長HVR」:VL内に、24〜36または24〜34(L1)、46〜56または50〜56(L2)、及び89〜97または89〜96(L3)、ならびに、VH内に、26〜35(H1)、50〜65または49〜65(H2)、及び93〜102、94〜102、もしくは95〜102(H3)を含み得る。可変ドメイン残基を、Kabat et al.,supraに従って、これらの定義の各々について番号付けする。
「Kabatにおける可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにおけるアミノ酸位置番号付け」という表現、ならびにそのバリエーションは、Kabat et al.,supraにおいて抗体の編集での重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについて使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用し、実際の直鎖アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮、またはその中への挿入に対応するより少ないまたは追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後の単一アミノ酸挿入(Kabatに従った残基52a)及び重鎖FR残基82の後の挿入残基(例えば、Kabatに従った残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、「標準的な」Kabat番号付け配列を伴う抗体の配列の相同性の領域でのアライメントにより所与の抗体について決定することができる。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」または「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も共通して生じるアミノ酸残基を表わすフレームワークである。一般的に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般的に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)におけるサブグループである。例は、VLについて、サブグループは、Kabat et al.,supraにおけるサブグループカッパI、カッパII、カッパIII、またはカッパIVであり得る。さらに、VHについて、サブグループは、Kabat et al.,supraにおけるサブグループI、サブグループII、サブグループIIIであり得る。あるいは、ヒトコンセンサスフレームワークは、上に由来し得るが、それにおいて特定の残基、例えば、ヒトフレームワーク残基が、ドナーフレームワーク配列を種々のヒトフレームワーク配列のコレクションと整列化することにより、ドナーフレームワークとのその相同性に基づいて選択される場合などである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得る、またはそれは、既存のアミノ酸配列変化を含み得る。いくつかの実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は、10またはそれ以下、9またはそれ以下、8またはそれ以下、7またはそれ以下、6またはそれ以下、5またはそれ以下、4またはそれ以下、3またはそれ以下、あるいは2またはそれ以下である。
(例えば、Fc領域の)特定の位置における「アミノ酸修飾」という用語は、指定された残基の置換もしくは欠失、または指定された残基に隣接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を指す。指定された残基に「隣接する」挿入は、その1〜2の残基の範囲内への挿入を意味する。挿入は、指定された残基に対してN末端またはC末端でもよい。本明細書の好ましいアミノ酸修飾は、置換である。
「親和性成熟した」抗体は、その1つ以上のHVRにおいて1つ以上の変化を有する抗体であり、それらの変化(複数可)を持たない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善がもたらされる抗体である。一実施形態では、親和性成熟した抗体は、標的抗原に対してナノモル、さらにはピコモルの親和性を有する。親和性成熟した抗体は、当該技術分野で公知の手順により作製される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology10:779−783(1992)には、VHドメインとVLドメインのシャッフリングによる親和性成熟が記載されている。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発は、例えば、:Barbas et al.,Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813(1994);Schier et al.,Gene 169:147−155(1995);Yelton et al.,J.Immunol.155:1994−2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310−3319(1995);及びHawkins et al.,J.Mol.Biol.226:889−896(1992)に記載されている。
本明細書で使用する場合、「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、測定可能で再現性のある相互作用、例えば、標的と抗体の間での結合を指し、それは、生物学的分子を含む分子の異種集団の存在において標的の存在を決定可能である。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、より大きな親和性、アビディティを伴い、より容易に、及び/またはそれが他の標的に結合するよりも大きな持続時間を伴いこの標的に結合する抗体である。一実施形態では、無関係な標的への抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される通り、標的への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗体は、異なる種からのタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的な結合を含み得るが、それを要求しない。
「特異性」という用語は、抗原の特定のエピトープに対する抗原結合タンパク質または抗体の選択的認識を指す。天然抗体は、例えば、単一特異性である。「多重特異性」という用語は、本明細書で使用する場合、抗原結合タンパク質または抗体が、そのうちの少なくとも2つが異なる抗原もしくは同じ抗原の異なるエピトープに結合する2つ以上の抗原結合部位を有することを指す。「三重特異性」は、本明細書で使用する場合、抗原結合タンパク質または抗体が3つの異なる抗原結合特異性を有することを指す。「単一特異性」という用語は、本明細書で使用する場合、各々が同じ抗原の同じエピトープに結合する1つ以上の結合部位を有する抗体を指す。
「価」という用語は、本明細書で使用する場合、抗原結合タンパク質または抗体分子における特定の数の結合部位の存在を指す。例えば、天然抗体または完全長抗体は、2つの結合部位を有し、二価である。このように、「三価」、「四価」、「五価」、及び「六価」という用語は、抗原結合タンパク質または抗体分子における2つの結合部位、3つの結合部位、4つの結合部位、5つの結合部位、及び6つの結合部位の存在をそれぞれ指す。
「ブロッキング」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を阻害する、または低減させるものである。いくつかの実施形態では、ブロッキング抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を実質的に、または完全に阻害する。
「アゴニスト」または活性化抗体は、それが結合する抗原によるシグナリングを増強する、または開始させるものである。いくつかの実施形態では、アゴニスト抗体は、天然リガンドの存在なしにシグナリングを引き起こす、または活性化する。
「抗体エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因するそれらの生物学的活性を指し、抗体アイソタイプに伴い変動する。抗体エフェクター機能の例としては、以下:C1q結合及び補体依存的細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存的細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が挙げられる。「低下または最小化」抗体エフェクター機能は、野生型または非改変抗体から少なくとも50%(あるいは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)だけ低下されるものを意味する。抗体エフェクター機能の決定は、当業者により容易に決定可能かつ測定可能である。好ましい実施形態では、補体結合の抗体エフェクター機能、補体依存的細胞傷害、及び抗体依存的細胞傷害が影響を受ける。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、グルコシル化を除去する定常領域中の突然変異(例えば、「エフェクターなし突然変異」)を通じて除去される。一態様では、エフェクターなし突然変異は、CH2領域中のN297AまたはDANA突然変異(D265A+N297A)である。Shields et al.,J.Biol.Chem.276(9):6591−6604(2001)。あるいは、低下または除去されたエフェクター機能をもたらす追加の突然変異は、K322A及びL234A/L235A(LALA)を含む。あるいは、エフェクター機能は、産生技術、例えば、グリコシル化しない宿主細胞(例えば、E.coli)またはそれにおいてエフェクター機能を促進する際に無効または効果が低い変化したグリコシル化パターンをもたらす宿主細胞における発現などを通じて低下または除去することができる(例えば、Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278(5):3466−3473(2003))。
「抗体依存的細胞媒介性細胞傷害」またはADCCは、細胞傷害の形態を指し、それにおいて特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合した分泌Igによって、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原を持つ標的に特異的に結合し、続いて細胞毒素を用いて標的細胞を殺すことが可能になる。抗体は細胞傷害性細胞を「武装」し、この機構による標的細胞の死滅のために必要とされる。ADCC、NK細胞を媒介するための一次細胞は、FcγRIIIだけを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFc発現が、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991)の464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するために、インビトロADCCアッセイ(例えば、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるものなど)を実施してもよい。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核球細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性を、インビボで(例えば、動物モデル、例えば、Clynes et al.,PNAS USA 95:652−656(1998)に開示されるものなど)評価してもよい。
本明細書で別段の指定がない限り、免疫グロブリン重鎖における残基の番号付けは、Kabat et al.,supraと同様のEUインデックスのものである。「Kabatと同様のEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
本明細書において「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域(天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む)を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、位置Cys226のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシ末端まで伸展すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによる残基447)を、抗体の産生もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸の組み換え操作により除去してもよい。したがって、無傷抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を伴う及び伴わない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。本明細書に記載の使用のための適当な天然配列Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3、及びIgG4を含む。
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載する。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合し、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラス(これらの受容体の対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング形態を含む)を含み、FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、それらは、主に細胞質ドメインにおいて異なる、類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインにおいて免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインにおいて免疫受容体チロシンに基づく阻害モチーフ(ITIM)を含む(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)を参照されたい)。FcRsは、以下において概説される:Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994);及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)。他のFcR(今後、同定されるであろうものを含む)が、本明細書中の「FcR」という用語により包含される。
「Fc受容体」または「FcR」は、また、新生児受容体FcRnを含み、それは、胎児への母親のIgGの転移に関与する。Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)and Kim et al.,J.Immunol.24:249(1994)。FcRnへの結合を測定する方法が公知である(例えば、Ghetie and Ward,Immunol.Today 18:(12):592−8(1997);Ghetie et al.,Nature Biotechnology 15(7):637−40(1997);Hinton et al.,J.Biol.Chem.279(8):6213−6(2004);WO2004/92219(Hinton et al.)を参照されたい)。インビボでのFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清中半減期を、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスまたはトランスフェクションされたヒト細胞株において、または変異体Fc領域を有するポリペプチドを投与された霊長類において評価することができる。WO2004/42072(Presta)には、FcRへの結合を改善または減弱させた抗体変異体が記載される。また、Shields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照されたい。
「エフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を行う白血球である。一態様では、エフェクター細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を行う。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、天然源、例えば、血液から単離されてよい。エフェクター細胞は、一般的に、エフェクター相に関与し、サイトカインを産生するように機能し(ヘルパーT細胞)、病原体に感染した細胞を殺滅し(細胞傷害性T細胞)、または抗体を分泌する(分化したB細胞)リンパ球である。
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在における標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、その同種抗原に結合した(適切なサブクラスの)抗体への補体系(C1q)の第1成分の結合により開始される。補体活性化を評価するために、CDCアッセイ(例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載される)を実施してもよい。変化したFc領域アミノ酸配列及び増加または減少したC1q結合能を伴う抗体変異体が、米国特許第6,194,551B1号及びWO99/51642に記載されている。それらの特許公報の内容は、具体的に、参照することによって本明細書に組み込まれる。また、Idusogie et al.J.Immunol.164:4178−4184(2000)を参照されたい。
「重鎖のみ抗体」または「HCAb」という用語は、重鎖を含むが通常抗体にある軽鎖を欠く、機能性抗体を指す。ラクダ科動物(例えば、ラクダ、ラマ、またはアルパカ)は、HCAbを産生することで知られている。
「単一ドメイン抗体」または「sdAb」という用語は、3つの相補的決定領域(CDR)を有する単一抗原結合ポリペプチドを指す。sdAbは単独で、対応するCDR含有ポリペプチドと対形成することなく抗原に結合することができる。場合によっては、sdAbは、ラクダ科のHCAbから遺伝子操作を受けており、本明細書ではそれらの重鎖可変ドメインを「VHH」と称する。ラクダ科sdAbは、最少の既知の抗原結合抗体断片のうちの1種である(例えば、Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−8(1993);Greenberg et al.,Nature 374:168−73(1995);Hassanzadeh−Ghassabeh et al.,Nanomedicine(Lond),8:1013−26(2013)を参照されたい)。
「結合親和性」は、一般的に、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)の間での非共有性相互作用の強度の総和を指す。別段の指定がない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体及び抗原)のメンバーの間での1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般的に、解離定数(Kd)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において既知の一般的な方法により測定することができる。低親和性の抗体は一般的に、抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向がある一方、高親和性の抗体は一般的に、抗原により早く結合し、より長く結合したままになる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法は、当該技術分野において既知であり、任意のものを本出願の目的で使用することができる。結合親和性を測定するための特定例かつ代表的な実施形態を、以下に記載する。
本明細書で使用する場合、「Kd」または「Kd値」は、一実施形態では、抗体のFab部及び抗原分子を用いて行われる放射線標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定され、このアッセイは以下に説明されており、一連の滴定用非標識抗原の存在下で、Fabを最小限の濃度の(125I)標識抗原と平衡化した後、抗Fab抗体をコーティングしたプレートを用いて結合した抗原を捕捉することによって、抗原に対するFab溶液の結合親和性を測定するものである(Chen,et al.,(1999)J.Mol.Biol 293:865−881)。アッセイ条件を確立するため、マイクロタイタープレート(Dynex)を、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mLの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)を用いて一晩コーティングし、続いて、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンを用いて、室温(約23℃)にて2〜5時間ブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc #269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、連続希釈した対象とするFabと混合する(Presta et al.,(1997)Cancer Res.57:4593−4599での抗VEGF抗体であるFab−12の評価と同じ)。次いで、対象とするFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをさらに長時間(例えば、65時間)継続し、平衡に達するのを確実にすることもできる。その後、混合物を捕捉プレートに移し、室温で1時間インキュベートする。続いて、溶液を除去し、プレートをPBS中の0.1% Tween(登録商標)−20で8回洗浄する。プレートが乾燥した場合、150μL/ウェルのシンチラント(MicroSchint−20;Packard)を添加し、プレートを、Topcountガンマカウンター(Packard)で10分間カウントする。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を、競合的結合アッセイで用いるために選択する。
別の実施形態によれば、Kdは、BIOACORE(登録商標)−T200またはBIOACORE(登録商標)−3000装置(BIAcore,Inc.(Piscataway,N.J.))を、約10応答単位(RU)の固定化抗原CM5チップと共に25℃で用いる、表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって測定される。簡潔に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/mL(約0.2μM)まで希釈した後、5μL/分の流速で注入し、およそ10応答単位(RU)の結合タンパク質を得る。抗原の注入後、1Mエタノールアミンを注入し、未反応基をブロックする。速度論的測定には、2倍に連続希釈したFab(0.78nM〜500nM)を、0.05% TWEEN(登録商標) 20界面活性剤を含むPBS(PBST)中に、25℃にて、およそ25μL/分の流速で注入する。結合速度(kon)及び解離速度(koff)を、結合解離センサーグラムに同時にフィットさせることによる、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて計算する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして算出する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるon速度が106M−1s−1を超えた場合は、分光計、例えば、流れ停止装置付き分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベット付き8000シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)で測定するとき、濃度増加する抗原の存在下において、PBS(pH7.2)中20nMの抗抗原抗体(Fab型)の、25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域通過)の増減を測定する蛍光消光法を用いて、on速度を決定できる。
ペプチド、ポリペプチド、または抗体配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」及び「相同性」は、配列を整列させ、ギャップを導入し(必要な場合)、最高パーセント配列同一性を達成した後(任意の保存的置換を配列同一性の部分として考えず)、特定のペプチドまたはポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、当該技術分野内にある種々の方法で、例えば、公的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどを使用して達成することができる。当業者は、アライメントを測定するための適切なパラメーター(比較されている配列の全長にわたる最高アライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む)を決定することができる。
本明細書に記載のMABPをコードする「単離」核酸分子は、それが産生された環境において通常会合している少なくとも1つの混入核酸分子から同定及び分離される核酸分子である。好ましくは、単離核酸は、産生環境に関連する全ての成分との会合がない。本明細書に記載のポリペプチド及び抗体をコードする単離核酸分子は、それが天然で見出される形態または設定以外の形態である。単離核酸分子は、従って、細胞中に天然に生じる本明細書に記載のポリペプチド及び抗体をコードする核酸から区別される。
「制御配列」という用語は、特定の宿主生物において作動可能に連結されたコード配列の発現のために必要なDNA配列を指す。原核生物のために適した制御配列は、例えば、プロモーター、場合により、オペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが公知である。
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係におかれた場合に「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列または分泌リーダー用のDNAを、それが、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチド用のDNAに作動可能に連結し;プロモーターまたはエンハンサーを、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結し;または、リボソーム結合部位を、それが翻訳を促進するように位置付けられる場合、コード配列に作動可能に連結する。一般的に、「作動可能に連結された」は、連結されたDNA配列が近接しており、及び、分泌リーダーの場合では、近接し、リーディング段階にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、近接する必要はない。連結は、便利な制限部位での連結により達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを従来の実行に従って使用する。
「担体」は、本明細書で使用する場合、用いられる用量及び濃度でそれらに曝露される細胞または哺乳動物に対して非毒性的である薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤を含む。生理学的に許容可能な担体担体は、水性pH緩衝化溶液であることが多い。生理学的に許容可能な担体担体の例としては、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンズアルコニウムクロリド;ベンズエトニウムクロリド;フェノール;ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、亜鉛−タンパク質錯体)及び/またはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、PLURONICS(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
本発明の対象とする「希釈剤」は、医薬的に許容可能であり(ヒトへの投与の安全であり毒性がない)、凍結乾燥後再溶解製剤などの液体製剤の調製に有用なものである。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水)、無菌食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が挙げられる。代替的な実施形態では、希釈剤には、塩及び/または緩衝剤の水溶液が含まれ得る。
「保存剤」は、本明細書において製剤に添加し、細菌活性を低下することができる化合物である。保存剤の添加により、例えば、複数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易にできる。可能性がある保存剤の例としては、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、及び塩化ベンゼニウムが挙げられる。他の種類の保存剤としては、フェノール、ブチル、及びベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾールが挙げられる。本明細書において最も好ましい防腐剤は、ベンジルアルコールである。
「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効となるような形態であり、製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性である追加成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は、滅菌性である。「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生きている微生物及びそれらの胞子を含まない。
「安定」製剤は、含まれるタンパク質が、保管によりその物理学的及び化学的安定性ならびに完全性を実質的に保持しているものである。タンパク質の安定性を測定する様々な分析技術が、当該技術分野において入手可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)で論説されている。安定性は、選択された期間にわたって選択された温度で測定することができる。迅速スクリーニングのため、製剤を40℃で2週間〜1ヶ月間保管し、その期間での安定性を測定してもよい。製剤が2〜8℃で保管される場合、一般的に、30℃または40℃で少なくとも1ヶ月間安定であり、及び/または、2〜8℃で少なくとも2年間安定でなければならない。製剤が30℃で保管される場合、一般的に、30℃で少なくとも2年間安定であり、及び/または、40℃で少なくとも6ヶ月間安定でなければならない。例えば、保管中の凝集の程度は、タンパク質安定性の指標として使用することができる。したがって、「安定」製剤は、約10%未満、好ましくは約5%未満のタンパク質が、製剤中の凝集体として存在するものであってよい。他の実施形態では、製剤の保管中に凝集体形成のなんらかの増加を判定してもよい。
「再溶解」製剤は、タンパク質が全体に分散するように、凍結乾燥したタンパク質または抗体製剤を希釈剤中に溶解することによって調製されているものである。再溶解製剤は、対象とするタンパク質を用いて治療される患者への投与(例えば、皮下投与)に適しており、ある特定の実施形態では、非経口的または静脈内投与に適したものであってよい。
「等張性」製剤は、ヒト血液と実質的に同じ浸透圧を有するものである。等張性製剤は、一般に約250〜350mOsmの浸透圧を有することになる。「低張性」という用語は、ヒト血液よりも低い浸透圧を有する製剤を説明する。同様に、「高張性」という用語は、ヒト血液よりも高い浸透圧を有する製剤を説明するのに使用される。等張性は、例えば、蒸気圧式または氷点式浸透圧計を用いて測定することができる。本出願の製剤は、塩及び/または緩衝剤の添加の結果として高張性であってよい。
「免疫チェックポイント分子」は、シグナルを増強するかシグナルを低下するかのいずれかである、免疫系の分子を指す。「刺激性免疫チェックポイント分子」または「共刺激分子」は、免疫系のシグナルを増強する免疫チェックポイント分子である。「抑制性免疫チェックポイント分子」は、免疫系のシグナルを低下する免疫チェックポイント分子である。
本明細書に記載の実施形態は、実施形態「からなる」こと、及び/または実施形態「から本質的になる」を含むことを理解されたい。
「約」に関して、本明細書における値またはパラメーターは、その値またはパラメーターそれ自体を対象とする変化量を含む(記載されている)。例えば、「約X」という記述は、「X」の記述を含む。
本明細書で使用する場合、ある値またはパラメーター「ではない」という言及は、一般にある値またはパラメーター「以外」を意味し、記載する。例えば、方法は、タイプXのがんを治療するために使用されないということは、この方法は、X以外のタイプのがんを治療するために使用されることを意味する。
本明細書で使用される「約X〜Y」という用語は、「約X〜約Y」と同じ意味を有する。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形の「ある」、「または」、及び「その」は、文脈が別段に決定することが明らかでない限り、複数の指示を包含する。
II.多重特異性抗原結合タンパク質(MABP)
本出願の一態様は、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質(MABP)を提供する。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の免疫チェックポイント分子(例えば、PD−1、配列番号12)由来であり、第2のエピトープは、第2の免疫チェックポイント分子(例えば、TIGIT、配列番号13)由来であり、及び第3のエピトープは、第3の免疫チェックポイント分子(例えば、LAG−3、配列番号14)由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは、第2の腫瘍抗原由来であり、及び第3のエピトープは、第3の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の腫瘍抗原(例えば、HER−2)由来であり、第2のエピトープは、免疫エフェクター細胞(例えば、CD3)上の細胞表面分子由来であり、及び第3のエピトープは、第2の腫瘍抗原(例えば、EGFR)由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の炎症促進性分子(例えば、TNF−α)由来であり、第2のエピトープは、第2の炎症促進性分子(例えば、IL−17A)由来であり、及び第3のエピトープは、第3の炎症促進性分子(例えば、IL−17F)由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の血管新生因子(例えば、Ang2)由来であり、第2のエピトープは、第2の血管新生因子(例えば、VEGF)由来であり、及び第3のエピトープは、第3の血管新生因子(例えば、DLL4)由来である。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 FcまたはIgG4 Fcを含む。
本出願のMABPは、少なくとも3つの異なるエピトープに特異的に結合することができる少なくとも3つの抗原結合部分を有する。MABPは、対称または非対称であり得る。例えば、MABPは、第1の抗原結合部分の1または2つのコピー、第2の抗原結合部分の1〜8つのコピー、及び第3の抗原結合部分の1〜8つのコピーを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、二重特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、単一特異性完全長抗体、またはその抗原結合断片、例えば、Fabである。
いくつかの実施形態では、MABPは、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上の異なる抗原結合部分のいずれか1つを含み、各々は、sdAbを含む。各sdAbは、第1の抗原結合部分に直接融合され得、または別のsdAbに融合され得、融合したsdAbは、第1の抗原結合部分にさらに融合される。
MABPは、エピトープごとの任意の適当な数の価数、及び任意の適当な数の特異性を有し得る。いくつかの実施形態では、MABPは、二価、三価、四価、五価、六価、またはそれよりも高い価数の第1のエピトープである。いくつかの実施形態では、MABPは、二価、三価、四価、五価、六価、またはそれよりも高い価数の第2のエピトープである。いくつかの実施形態では、MABPは、二価、三価、四価、五価、六価、またはそれよりも高い価数の第3のエピトープである。いくつかの実施形態では、MABPは、三重特異性である。いくつかの実施形態では、MABPは、四重特異性である。いくつかの実施形態では、MABPは、4つ以上の特異性である。例示的な三重特異性抗原結合タンパク質(「TABP」)を図1〜10に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分の1つ以上のコピー(例えば、1または2)、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分の1つ以上のコピー(例えば、2)、(c)第3のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第3の抗原結合部分の1つ以上のコピー(例えば、2)を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。
第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分は、任意の適当な形態で互いに融合され得る。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分の各々は、単一ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、1つ以上(例えば、2)の重鎖及び1つ以上(例えば、2)の軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの重鎖のN末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のC末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの軽鎖のN末端に融合される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端は、第3の抗原結合部分のN末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のC末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの重鎖のN末端に融合される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端は、第3の抗原結合部分のN末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のC末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの軽鎖のN末端に融合される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの軽鎖のN末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のN末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの軽鎖のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの重鎖のN末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のN末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの軽鎖のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの重鎖のN末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のN末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの重鎖のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの軽鎖のN末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のN末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの重鎖のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの重鎖のC末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のN末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの軽鎖のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、第3の抗原結合部分のC末端は、第2の抗原結合部分のN末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のN末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの軽鎖のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、第3の抗原結合部分のC末端は、第2の抗原結合部分のN末端に融合され、及び第3の抗原結合部分のN末端が、第1の抗原結合部分の少なくとも1つの重鎖のC末端に融合される。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、第1のsdAbのC末端が、第1の抗原結合部分のVHのN末端に融合され、及び(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第2のsdAbのC末端が、第1の抗原結合部分のVLのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VHH1−VH−CH1−CH2−CH3を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VHH2−VL−CLを各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図1に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1のsdAbのC末端が、第2のsdAbのN末端に融合され、及び第2のsdAbのC末端が、第1の抗原結合部分のVHのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VHH1−VHH2−VH−CH1−CH2−CH3を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VL−CLを各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図2に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1のsdAbのC末端が、第2のsdAbのN末端に融合され、及び第2のsdAbのC末端が、第1の抗原結合部分のVLのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VH−CH1−CH2−CH3を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VHH1−VHH2−VL−CLを各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図3に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH1)を含む重鎖、及び軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1のsdAbのC末端が、第1の抗原結合部分のVLのN末端に融合され、及びCLのC末端が、第2のsdAbのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VH−CH1−CH2−CH3を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VHH1−VL−CL−VHH2を各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図4に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH1)を含む重鎖、及び軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1のsdAbのC末端が、第1の抗原結合部分のVHのN末端に融合され、及び第1の抗原結合部分のCLのC末端が、第2のsdAbのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VHH1−VH−CH1−CH2−CH3を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VL−CL−VHH2を各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図5に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域CH1、CH2及びCH3を含む重鎖、及び軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1のsdAbのC末端が、第1の抗原結合部分のVHのN末端に融合され、及び第1の抗原結合部分のCH3のC末端が、第2のsdAbのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VHH1−VH−CH1−CH2−CH3−VHH2を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VL−CLを各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図6に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域CH1、CH2及びCH3を含む重鎖、及び軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1のsdAbのC末端が、第1の抗原結合部分のVLのN末端に融合され、及び第1の抗原結合部分のCH3のC末端が、第2のsdAbのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VH−CH1−CH2−CH3−VHH2を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VHH1−VL−CLを各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図7に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域CH1、CH2及びCH3を含む重鎖、及び軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1のsdAbのN末端が、第1の抗原結合部分のCH3のC末端に融合され、及び第1の抗原結合部分のCLのC末端が、第2のsdAbのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VH−CH1−CH2−CH3−VHH1を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VL−CL−VHH2を各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図8に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH1)を含む重鎖、及び軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第2のsdAbのN末端が、第1の抗原結合部分のCLのC末端に融合され、及び第2のsdAbのC末端が、第1のsdAbのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VH−CH1−CH2−CH3を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VL−CL−VHH2−VHH1を各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図9に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域CH1、CH2及びCH3を含む重鎖、及び軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第2のsdAbのN末端が、第1の抗原結合部分のCH3のC末端に融合され、及び第2のsdAbのC末端が、第1のsdAbのN末端に融合される、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、TABPは、(a)N末端からC末端において、VH−CH1−CH2−CH3−VHH2−VHH1を各々が含む、第1のポリペプチドの2本鎖、及び(b)N末端からC末端において、VL−CLを各々が含む、第2のポリペプチドの2本鎖を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、VHH1は、第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbであり、及びVHH2は、第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbである。一例を図10に示す。
エピトープ及び抗原
本明細書に記載のMABPのいずれかは、少なくとも3つの異なるエピトープに特異的に結合することができる。認識される少なくとも3つの異なるエピトープは、同一の抗原上に、または異なる抗原上に位置することができる。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞表面分子である。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞外分子である。
いくつかの実施形態では、第1のエピトープ、第2のエピトープ、及び/または第3のエピトープは、免疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、刺激性免疫チェックポイント分子である。例示的な刺激性免疫チェックポイント分子としては、CD28、OX40、ICOS、GITR、4−1BB、CD27、CD40、CD3、HVEM、及びTCR(例えば、MHCクラスIまたはII分子)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、阻害性免疫チェックポイント分子である。例示的な阻害性免疫チェックポイント分子としては、CTLA−4、TIM−3、A2a受容体、LAG−3、TIGIT、BTLA、KIR、PD−1、IDO、CD47、及びそれらのリガンド、例えば、B7.1、B7.2、PD−L1、PD−L2、HVEM、B7−H4、NKTR−218、及びSIRP−α受容体が挙げられるが、これらに限定されない。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の免疫チェックポイント分子に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の免疫チェックポイント分子に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3の免疫チェックポイント分子に特異的に結合するsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1の免疫チェックポイント分子、第2の免疫チェックポイント分子、及び/または第3の免疫チェックポイント分子は、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA−4、B7−H3、TIM−3、LAG−3、TIGIT、VISTA、ICOS、4−1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、PD−1に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)TIGITに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)LAG−3に特異的に結合するsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体、例えば、ペンブロリズマブである。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、第1のエピトープ、第2のエピトープ及び/または第3のエピトープは、細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、T細胞(例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞など)、B細胞、マクロファージ、及びナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫エフェクター細胞上の抗原である。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、CD3などのT細胞表面抗原である。
いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、腫瘍抗原である。腫瘍抗原は、免疫応答、特に、T細胞媒介性免疫応答を誘発することができる、腫瘍細胞により産生されるタンパク質である。本明細書に記載の標的抗原の選択は、治療されるがんの特定の種類に依存する。例示的な腫瘍抗原としては、例えば、神経膠腫関連抗原、がん胎児性抗原(CEA)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、αフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE−1、MN−CAIX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70−2、M−CSF、前立腺、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY−ESO−1、LAGE−1a、p53、prostein、PSMA、HER2/neu、サバイビン及びテロメラーゼ、前立腺がん腫瘍抗原−1(PCTA−1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF)−I、IGF−II、IGF−I受容体及びメソセリンが挙げられる。
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、悪性腫瘍と関連する1つ以上の抗原性がんエピトープを含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃の標的抗原となり得る多くのタンパク質を発現する。これらの分子としては、組織特異的抗原、例えば、黒色腫のMART−1、チロシナーゼ及びgp100、ならびに、前立腺がんの前立腺酸ホスファターゼ(PAP)及び前立腺特異的抗原(PSA)が挙げられるが、これらに限定されない。他の標的分子は、がん遺伝子HER2/Neu/ErbB−2などの形質転換関連分子の種類に属する。標的抗原のさらに別の種類は、がん胎児性抗原(CEA)などのがん胎児抗原である。B細胞リンパ腫では、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンは、個々の腫瘍に特有の完全に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原を構成する。CD19、CD20、及びCD37などのB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における他の標的抗原候補である。
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、腫瘍特異抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)である。TSAは、腫瘍細胞特有であり、体内の他の細胞で発生しない。TAA関連抗原は、腫瘍細胞特有ではなく、その代わり、抗原に対する免疫寛容状態を誘発できない条件下で正常細胞にも発現している。腫瘍上の抗原発現は、免疫系を抗原に応答できるようにする条件下で起こり得る。TAAは、胎児発生中、免疫系が未熟で応答できないときに正常細胞上に発現する抗原であり、または、正常細胞上で極めて低いレベルで通常存在している抗原であるが、腫瘍細胞上でははるかに高いレベルで発現する。
TSAまたはTAA抗原の非限定例としては、分化抗原、例えば、MART−1/MelanA(MART−I)、gp 100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、及び、腫瘍特異的多系列抗原、例えば、MAGE−1、MAGE−3、BAGE、GAGE−1、GAGE−2、pl5;過剰発現胚抗原、例えば、CEA;過剰発現がん遺伝子及び変異腫瘍抑制遺伝子、例えば、p53、Ras、HER2/neu;染色体転座に起因する固有腫瘍抗原、例えば、BCR−ABL、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR;ならびに、ウイルス抗原、例えば、エプスタイン・バーウイルス抗原EBVA、及びヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7が挙げられる。他の大型のタンパク質系抗原としては、TSP−180、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6、RAGE、NY−ESO、pl85erbB2、pl80erbB−3、C−met、nm−23HI、PSA、TAG−72、CA19−9、CA72−4、CAM17.1、NuMa、K−ras、β−カテニン、CDK4、Mum−1、p15、p16、43−9F、5T4、791Tgp72、α−フェトプロテイン、β−HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15−3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA−50、CAM43、CD68\P1、CO−029、FGF−5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、MOV18、NB/70K、NY−CO−1、RCAS 1、SDCCAG16、TA−90\Mac−2結合タンパク質\シクロフィリンC−関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、及びTPSが挙げられる。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の腫瘍抗原に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)第3の腫瘍抗原に特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1の腫瘍抗原、第2の腫瘍抗原及び/または第3の腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)上の細胞表面抗原に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)第2の腫瘍抗原に特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1の腫瘍抗原及び/または第2の腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 FcまたはIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、HER−2に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)CD3に特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)EGFRに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体、例えば、トラスツズマブである。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 FcまたはIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、第1のエピトープ、第2のエピトープ、及び/または第3のエピトープは、炎症促進性分子である。「炎症促進性分子」は、炎症性反応を上方制御する免疫細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、白血球など)によって産生され、または発現される任意の分子を指す。いくつかの実施形態では、炎症促進性分子は、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン、またはインターロイキンなどの炎症促進性サイトカインである。例示的な炎症促進性分子としては、IL−1β、TNF−α、IL−6、IL−6R、IL−5、IL−17A、IL−17F、IL−23、IL−22、IL−21、IL−12、及びエオタキシン−1(すなわち、CCL11)が挙げられるが、これらに限定されない。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の炎症促進性分子に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の炎症促進性分子に特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)第3の炎症促進性分子に特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1の炎症促進性分子、第2の炎症促進性分子及び/または第3の炎症促進性分子は、IL−1β、TNF−α、IL−6、IL−6R、IL−5、IL−17A、IL−17F、IL−23、IL−22、IL−21、IL−12、及びエオタキシン−1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、TNF−αに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)IL−17Aに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)IL−17Fに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体、例えば、アダリムマブである。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、第1のエピトープ、第2のエピトープ及び/または第3のエピトープは、Ang2、VEGF、及びDLL4などの血管新生因子である。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の血管新生因子に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の血管新生因子に特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)第3の血管新生因子に特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、Ang−2に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)VEGFに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)DLL4に特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体、例えば、LC10である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 Fcを含む。
融合ポリペプチド
MABPの第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分は、互いに直接的に、または間接的に融合(すなわち、共有結合)されてよい。したがって、本出願のMABPは、1つ以上の融合ポリペプチドを含む。各融合ポリペプチドは、第2の抗原結合部分及び/または第3の抗原結合部分、及び第1の抗原結合部分由来のポリペプチドを含んでよい。
種々の抗原結合部分は、単一の化学的結合(ペプチド結合など)によって、またはペプチドリンカーを介して化学的に融合することができる。第2の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分は、第1の抗原結合部分のいずれか一方(それぞれを含む)のポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかで融合してよい。第2の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分は、互いに直接的に融合してもよく、融合したsdAbは、第1の抗原結合部分のいずれか一方(それぞれを含む)のポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかで融合してよい。融合ポリペプチドは、組み換え的または化学的のいずれかで得ることができる。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖及び2本の軽鎖からなり、第1のエピトープを特異的に認識する、完全長抗体;(b)第2のエピトープを特異的に認識する、第1のsdAb;及び(c)第3のエピトープを特異的に認識する、第2のsdAbを含み、完全長抗体、第1のsdAb、及び第2のsdAbが互いに融合している、MABP(例えば、TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、完全長抗体は、2つの同一な重鎖及び2つの同一な軽鎖からなる完全長モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG4 FcまたはIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1のsdAb、適宜ペプチドリンカー、及び第1の抗原結合部分の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、第2のsdAb、適宜ペプチドリンカー、及び第1の抗原結合部分の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。例えば、図1を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1のsdAb、適宜ペプチドリンカー、第2のsdAb、適宜ペプチドリンカー及び第1の抗原結合部分の重鎖を含む、第1のポリペプチド、及び(2)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。例えば、図2を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、第1のsdAb、適宜ペプチドリンカー、第2のsdAb、適宜ペプチドリンカー、及び第1の抗原結合部分の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。。例えば、図3を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の重鎖、適宜ペプチドリンカー、及び第1のsdAbを含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の軽鎖、適宜ペプチドリンカー、及び第2のsdAbを含む、第2のポリペプチドを含む。例えば、図4を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1のsdAb、適宜ペプチドリンカー、第1の抗原結合部分の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の軽鎖、適宜ペプチドリンカー、及び第2のsdAbを含む、第2のポリペプチドを含む。例えば、図5を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1のsdAb、適宜ペプチドリンカー、第1の抗原結合部分の重鎖、適宜ペプチドリンカー、第2のsdAbを含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。例えば、図6を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の重鎖、適宜ペプチドリンカー、第1のsdAbを含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、第2のsdAb、適宜ペプチドリンカー、第1の抗原結合部分の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。例えば、図7を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の重鎖、適宜ペプチドリンカー、第1のsdAbを含む、第1のポリペプチド、及び(2)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の軽鎖、適宜ペプチドリンカー、及び第2のsdAbを含む、第2のポリペプチドを含む。例えば、図8を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の軽鎖、適宜ペプチドリンカー、第2のsdAb、適宜ペプチドリンカー、及び第1のsdAbを含む、第2のポリペプチドを含む。例えば、図9を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABP(例えば、TABP)は、(1)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の重鎖、適宜ペプチドリンカー、第2のsdAb、適宜ペプチドリンカー、及び第1のsdAbを含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、第1の抗原結合部分の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。例えば、図10を参照されたい。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、MABPは、第1のポリペプチドの2本鎖及び第2のポリペプチドの2本鎖を含む。
本明細書に記載のMABPは、種々の抗原結合部分の間に位置する1つ以上のペプチドリンカーを含み得る。いくつかの実施形態では、種々の抗原結合部分は、これらの間に配置されるペプチドリンカーを用いずに互いに直接融合している。
異なる抗原結合部分を連結するペプチドリンカーは、同一であっても異なっていてもよい。各ペプチドリンカーは、独立して最適化することができる。ペプチドリンカーは、任意の好適な長さを有してよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50またはそれ以上のうちいずれかのアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5またはそれ以下のうちいずれかのアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーの長さは、約1個のアミノ酸〜約10個のアミノ酸、約1個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸、約1個のアミノ酸〜約30個のアミノ酸、約5個のアミノ酸〜約15個のアミノ酸、約10個のアミノ酸〜約25個のアミノ酸、約5個のアミノ酸〜約30個のアミノ酸、約10個のアミノ酸〜約30個のアミノ酸長、約30個のアミノ酸〜約50個のアミノ酸、または約1個のアミノ酸〜約50個のアミノ酸のうちいずれかである。
ペプチドリンカーは、天然配列または非天然配列を有してよい。例えば、重鎖のみ抗体のヒンジ領域由来の配列をリンカーとして使用してよい。例えば、WO1996/34103を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、可動性リンカーである。例示的な可動性リンカーとしては、グリシンポリマー(G)n、グリシン−セリンポリマー(例えば、(GS)n(配列番号4)、(GSGGS)n(配列番号5)及び(GGGS)n(配列番号6)、このとき、nは、少なくとも1の整数である)、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー、及び当該技術分野において既知の他の可動性リンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGS(配列番号1)を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号2)を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、IgGのヒンジ領域、例えば、ヒトIgG1のヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号7)を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、IgGのヒンジ領域、例えば、ヒトIgG1のヒンジ領域由来の修飾配列を含む。例えば、IgGのヒンジ領域中の1つ以上のシステインは、セリンに置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列EPKSSDKTHTSPPSP(配列番号3)を含む。
いくつかの実施形態では、種々の抗原結合部分は、化学的に互いに融合している。例えば、抗原結合部分は、連結基を介して1つ以上の反応部位を用いて結合されてよい。化学的結合に有用なポリペプチド中の反応部位は、当該技術分野において周知であり、アミノ酸残基上に存在する第一級アミノ基、例えば、リジンのεアミノ基及びN末端アミノ酸のαアミノ基、システイン残基中のチオール基、C末端アミノ酸のカルボキシ基、ならびにグリコシル化抗体中の炭水化物基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、反応部位は、部位特異的突然変異誘発、セレノシステインまたは非天然型アミノ酸の取り込み、二官能性リンカー(ビスアルキル化試薬など)の取り込み、及び/または糖鎖工学によって、第2の抗原結合部分または第1の抗原結合部分内に導入される。いくつかの実施形態では、チオール反応性ポリペプチドへの結合のため、ポリペプチドの1つ以上の第一級アミノ基を、チオール含有基(例えば、システインまたはホモシステイン残基由来)、マレイミド基などの求電子性不飽和基、またはブロモアセチル基などのハロゲン化基に変換することができる。当該技術分野において既知である任意の連結基及び結合方法を用いて、第2の抗原結合部分を第1の抗原結合部分に化学的に融合することができる。いくつかの実施形態では、結合は、例えば、スクシンイミドエステル(例えば、サクシニミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、またはN−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS))、グルタルアルデヒド、カルボジイミド(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI))、ベンジジン(BDB)、過ヨウ素酸塩、またはイソチオシアネート(例えば、N−アセチルホモシステインチオラクトン(NAHT))を用いることによって達成することができる。
例示的な三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、PD−1に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)TIGITに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)LAG−3に特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)が提供される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、配列番号31のアミノ酸配列のCDR1、CDR2、及びCDR3を含むVHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、配列番号32のアミノ酸配列のCDR1、CDR2、及びCDR3を含むVHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、配列番号31のアミノ酸配列のVHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、配列番号32のアミノ酸配列のVHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、配列番号31のアミノ酸配列のVHHを含む。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、配列番号32のアミノ酸配列のVHHを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、PD−1に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)TIGITに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)LAG−3に特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含む、第1の抗原結合部分が、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、第1のsdAbが、配列番号31のアミノ酸配列のVHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含み、第2のsdAbが、配列番号32のアミノ酸配列のVHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含み;第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)が提供される。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、PD−1に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)TIGITに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)LAG−3に特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分が、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、第1のsdAbが、配列番号31のアミノ酸配列のVHHを含み、第2のsdAbが、配列番号32のアミノ酸配列のVHHを含み;第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)が提供される。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)配列番号16、18、20、23、25、26、28のいずれか1つのアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;及び(2)配列番号15、17、19、21、22、24、27のいずれか1つのアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)配列番号16、18、20、23、25、26または28のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;及び(2)配列番号15、17、19、21、22、24または27のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号16のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号15のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号16のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号15のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−11」と呼ぶ)。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号18のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号17のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号18のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号17のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−12」と呼ぶ)。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号20のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号19のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号20のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号19のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−13」と呼ぶ)。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端に配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHHを含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号20のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号21のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号20のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号21のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−14」と呼ぶ)。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHHを含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号16のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号22のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号16のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号22のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−15」と呼ぶ)。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHHを含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号23のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号17のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号23のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号17のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−16」と呼ぶ)。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHHを含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号25のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号24のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号25のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号24のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−17」と呼ぶ)。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHHを含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHHを含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー及び抗TIGIT VHHを含み、かつ、配列番号26のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号22のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー及び抗TIGIT VHHを含み、かつ、配列番号26のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含み、かつ、配列番号22のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−18」と呼ぶ)。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHHを含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号20のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー及び抗TIGIT VHHを含み、かつ、配列番号27のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖を含み、かつ、配列番号20のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー及び抗TIGIT VHHを含み、かつ、配列番号27のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−19」と呼ぶ)。
いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体、配列番号1〜7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHH、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、配列番号8のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の重鎖、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、配列番号32のアミノ酸配列を含む抗LAG−3 VHH、配列番号1〜3または7のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドリンカー、及び配列番号31のアミノ酸配列を含む抗TIGIT VHHを含む、第1のポリペプチド;及び(2)N末端からC末端において、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗PD−1抗体の軽鎖を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー及び抗TIGIT VHHを含み、かつ、配列番号28のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号17のアミノ酸配列、または最大で約5つ(例えば、約1、2、3、4、または5のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含む、第2のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)は、(1)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー及び抗TIGIT VHHを含み、かつ、配列番号28のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド;(2)N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖を含み、かつ、配列番号17のアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチドを含む(本明細書では以後、「TPTL−20」と呼ぶ)。
単一ドメイン抗体を含む抗原結合部分
本出願のMABPは、各々がsdAbを含む少なくとも2つの抗原結合部分を含む。例示的なsdAbとしては、重鎖のみ抗体由来の重鎖可変ドメイン(例えば、VHHまたはVNAR)、天然に軽鎖を欠く結合分子、従来の4本鎖抗体由来の単一ドメイン(例えば、VHまたはVL)、ヒト化重鎖のみ抗体、ヒト重鎖セグメントを発現するトランスジェニックマウスまたはラットによって産生されたヒトsdAb、ならびに、抗体由来のもの以外の遺伝子操作を受けたドメイン及び単一ドメインスキャフォールドが挙げられるが、これらに限定されない。当該技術分野において既知であるか、または本発明者らが開発した任意のsdAbを用いて、本出願のMABPを構築することができる。sdAbは、マウス、ラット、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤツメウナギ、魚類、サメ、ヤギ、ウサギ、及びウシが挙げられるが、これらに限定されない、任意の種由来であってよい。本明細書において想定される単一ドメイン抗体としては、ラクダ科及びサメ以外の種由来の天然に存在するsdAb分子も挙げられる。
いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、軽鎖を欠く重鎖抗体(本明細書において「重鎖のみ抗体」とも称される)として既知である、天然に存在する単一ドメイン抗原結合分子由来である。このような単一ドメイン分子は、例えば、WO94/04678及びHamers−Casterman,C.et al.(1993)Nature 363:446−448に開示されている。明確性目的のため、従来の4本鎖免疫グロブリンのVHと区別するために、天然に軽鎖を欠く重鎖分子由来の可変ドメインは、本明細書においてVHHとして既知である。このようなVHH分子は、ラクダ科、例えば、ラクダ、ラマ、ビクーニャ、ヒトコブラクダ、アルパカ及びグアナコで生じる抗体由来であってよい。ラクダ科以外の他の種は、天然に軽鎖を欠く重鎖分子を産生でき、このようなVHHは、本出願の範囲内にある。
ラクダ科由来のVHH分子は、IgG分子より約10倍小さい。これらは単一のポリペプチドであり、非常に安定であって、極端なpH及び温度条件に耐えることができる。また、従来の抗体では見られない、プロテアーゼの作用に抵抗することができる。さらに、VHHのインビトロ発現により、適切に折り畳まれた機能性VHHが高収率で産生される。また、ラクダ科で産生された抗体は、抗体ライブラリーの使用によってインビトロで、またはラクダ科以外の哺乳類の免疫化を介して産生された抗体が認識するもの以外のエピトープを認識することができる(例えば、WO9749805を参照されたい)。このように、VHHドメインを含むMABPは、従来の抗体よりもより効率的に標的と相互作用できる。VHHは空洞部や溝部などの「通常ではない」エピトープ内に結合することが知られているため、かかるVHHを含むMABPの親和性は、従来の多重特異性ポリペプチドよりも治療的処置に好適であり得る。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のVHHドメインを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のVHHドメインを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、三重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 FcまたはIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、軟骨魚類に存在する免疫グロブリンの可変領域由来である。例えば、sdAbは、サメの血清中に存在する新規の抗原受容体(NAR)として知られている免疫グロブリンアイソタイプ由来であってよい。NAR(「IgNAR」)の可変領域由来の単一ドメイン分子の生成法は、WO03/014161号及びStreltsov(2005)Protein Sci.14:2901−2909に記載されている。
いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、組み換え体、CDRグラフト化、ヒト化、ラクダ化、脱免疫化、及び/またはインビトロ産生させたもの(例えば、ファージディスプレイによって選択される)である。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ヒト重鎖セグメントを発現するトランスジェニックマウスまたはラットによって産生されるヒトsdAbである。例えば、US20090307787A1、米国特許第8,754,287号、US20150289489A1、US20100122358A1、及びWO2004049794を参照されたい。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、親和性成熟している。
VHHドメインを含むsdAbは、ヒト化してヒト様配列を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるVHHドメインのFR領域は、ヒトVHフレームワーク領域に対して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のうちのいずれか1つであるアミノ酸配列相同性を含む。1つの典型的な種類のヒト化VHHドメインは、VHHが、Kabatナンバリングによる45番目の位置において、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、スレオニン、アスパラギン、またはグルタミンからなる群由来のアミノ酸、例えば、L45と103番目の位置におけるトリプトファンを有することを特徴とする。このように、この種類に属するポリペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域に対して高いアミノ酸配列相同性を示し、前記ポリペプチドは、それによる望まれない免疫応答が予想されず、さらなるヒト化の負担なく直接ヒトに投与することができる。
別の例示の種類のヒト化ラクダ科sdAbは、WO03/035694に記載されており、ヒト由来または他の種の従来の抗体に典型的に見られる疎水性FR2残基を含むが、二重鎖抗体由来のVHに存在する保存されたトリプトファン残基を置換している、103番目の位置の荷電アルギニン残基による親水性の損失を代償している。このように、これら2つの種類に属するペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域に対して高いアミノ酸配列相同性を示し、前記ペプチドは、それによる望まれない免疫応答が予想されず、さらなるヒト化の負担なく直接ヒトに投与することができる。
いくつかの実施形態では、MABPは、天然に産生されたsdAbまたはその誘導体、例えば、ラクダ科sdAb、またはラクダ科sdAb由来のヒト化sdAbを含む。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラマから得られる。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbをさらに遺伝子操作し、ヒト抗体に通常は見られない配列(例えば、CDR領域またはCDR−FR接合部)を除去する。
MABPの第1のsdAb及び第2のsdAbは、それらのエピトープに好適な親和性を有する。例えば、各sdAbの親和性は、全体的親和性と、MABPの標的細胞または組織への結合活性に影響を与える場合があり、それがさらにMABPの効力に影響を与え得る。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、高い親和性でそのエピトープに結合する。高親和性sdAbは、低いナノモル(10−9M)範囲の解離定数(Kd)、例えば、約5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.2nM、0.1nM、0.05nM、0.02nM、0.01nM、5pM、2pM、1pM、またはそれ以下のうち任意でそのエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、低い親和性でそのエピトープに結合する。低親和性sdAbは、低いマイクロモル(10−6M)範囲以上のKdで、例えば、約1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、またはそれ以上のうち任意でそのエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、中程度の親和性でそのエピトープに結合する。中程度の親和性のsdAbは、低親和性sdAbよりも低いが、高親和性sdAbよりも高いKdでそのエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、中程度の親和性のsdAbは、約1nM〜約10nM、約10nM〜約100nM、約100nM〜約500nM、約500nM〜約1μm、約1nM〜約100nM、または約10nM〜約500nM、または約1nM〜約1μmのうち任意の1つのKdで、そのエピトープに結合する。
いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VH及びVLを含む抗原結合部分よりも、そのエピトープに対する強い親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VH及びVLを含む抗原結合部分よりも、そのエピトープに対する弱い親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbとそのエピトープと、VH及びVLを含む抗原結合部分とそのエピトープとの間の親和性間の差は、少なくとも約2×、5×、10×、100×、1000×、またはそれ以上のうちいずれかである。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbとそのエピトープとの間の親和性は、VH及びVLを含む抗原結合部分とそのエピトープとの間のそれに匹敵する。
いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、刺激性免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、阻害性免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA−4、B7−H3、TIM−3、LAG−3、TIGIT、VISTA、ICOS、4−1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される、免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、免疫チェックポイント分子に対するアゴニストである。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、免疫チェックポイント分子に対するアンタゴニストである。
いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、TIGITに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、TIGITに高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、TIGITに中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、TIGITに低い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、LAG−3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、LAG−3に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、LAG−3に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、LAG−3に低い親和性で結合する。
いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、配列番号31のアミノ酸配列、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含むTIGITに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、配列番号31のアミノ酸配列を含むTIGITに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、配列番号32のアミノ酸配列、または最大で約3つ(例えば、約1、2、または3のいずれか)のアミノ酸置換を含むその変異体を含むLAG−3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、配列番号32のアミノ酸配列を含むLAG−3に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞上の細胞表面抗原に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、CD3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、CD3に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、CD3に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、CD3に低い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、EGFRに結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、EGFR抗原に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、EGFRに中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第2のsdAbは、EGFRに低い親和性で結合する。
いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、細胞外タンパク質、例えば、分泌タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、TNF−α、IL−17A、IL−17F、IL−1β、TNF−α、IL−5、IL−6、IL−6R、またはエオタキシン−1などの炎症促進性分子に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VEGF、Ang2、またはDLL4などの血管新生因子に特異的に結合する。
VH及びVLを含む抗原結合部分
本出願のMABPは、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、少なくとも1つの抗原結合部分を含む。このような抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる従来の完全長抗体、またはそれら由来の抗原結合断片であってよい。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHドメインを含む重鎖、及びVLドメインを含む及び軽鎖を含む抗原結合断片である。本明細書で想定される例示的な抗原結合断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ:線状抗体;単鎖抗体分子(scFvなど);ならびに、抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、ヒトFc領域を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、IgG分子、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラスのうち任意の1つ由来である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)及び/またはCDC(補体依存性細胞傷害)などの抗体エフェクター機能を媒介することができる。例えば、野生型Fc配列を有するIgG1、IgG2、IgG3サブクラスの抗体は、通常、CIq及びC3結合を含む補体活性化を示す一方、IgG4は、補体系を活性化せず、CIq及び/またはC3に結合しない。いくつかの実施形態では、Fc領域は、Fc領域のFc受容体への結合親和性を低下させる修飾を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、IgG1 Fcである。いくつかの実施形態では、IgG1 Fcは、233〜236番目の位置に、例えば、L234A及び/またはL235Aなどの1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、IgG4 Fcである。いくつかの実施形態では、IgG4 Fcは、327、330及び/または331番目の位置に突然変異を含む。例えば、Armour KL et al.,Eur J.Immunol.1999;29:2613;及びShields RL et al.,J.Biol.Chem.2001;276:6591を参照されたい。いくつかの実施形態では、Fc領域は、P329G突然変異を含む。
いくつかの実施形態では、Fc領域は、2つの同一ではない重鎖のヘテロ二量体形成を促進する修飾を含む。このような修飾されたFc領域は、非対称性設計を有する本明細書に記載のMABPに対して特に興味深いものであり得る。いくつかの実施形態では、前記修飾は、重鎖または重鎖融合ポリペプチドの一方へのノブ修飾と、重鎖または重鎖融合ポリペプチドの他方へのホール修飾を含む、knob−into−hole修飾である。一実施形態では、Fc領域は、CH3ドメイン中の2本の重鎖間の境界部内に修飾を含み、このとき、i)一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基を側鎖がより大きいアミノ酸残基に置換することによって、一方の重鎖のCH3ドメイン中の境界部内に、他方の重鎖のCH3ドメイン中の境界部内の空洞部(「ホール」)中に配置できる突出部(「ノブ」)が作製されており、ii)他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基を側鎖がより小さいアミノ酸残基に置換することによって、第1のCH3ドメイン中の境界部内の突出部(「ノブ」)を内部に配置できる空洞部(「ホール」)が、第2のCH3ドメイン中の境界部内に作製されている。knob−into−hole修飾の例は、例えば、US2011/0287009、US2007/0178552、WO96/027011、WO98/050431、及びZhu et al.,1997,Protein Science 6:781−788に記載されている。ヘテロ二量体形成を促進する別のFc領域への修飾も本明細書において想定される。例えば、静電的操作効果をFc領域内に遺伝子操作によって含め、Fc−ヘテロ二量体分子を提供することができる(例えば、US4676980及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、Fc領域は、Fabアーム交換を阻害する修飾を含む。例えば、IgG4 Fc中のS228P突然変異は、Fabアーム交換を阻害する。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、κ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、λ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなるモノクローナル抗体(本明細書では「4本鎖抗体」とも称される)を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる多重特異性(例えば、三重特異性)完全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒトIgG1サブクラス、または突然変異L234A及びL235Aを有するヒトIgG1サブクラスである、完全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒトIgG2サブクラスである完全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒトIgG3サブクラスである完全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒトIgG4サブクラス、または追加の突然変異S228Pを有するヒトIgG4サブクラスである、完全長抗体を含む。
当該技術分野において既知である任意の完全長4本鎖抗体またはそれら由来の抗原結合断片を、本出願のMABPにおける第1の抗原結合部分として使用することができる。臨床的に効力、安全性、及び薬物動態プロファイルが証明されている抗体または抗体断片が特に興味深い。いくつかの実施形態では、当該技術分野において既知の抗体または抗体断片をさらに遺伝子操作し、例えば、ヒト化または変異誘発し、好適な親和性を有する変異体を選択した後、第2の抗原結合部分と融合してMABPを提供する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、当該技術分野において既知のモノクローナル抗体または抗体断片のVH及びVLドメイン、及び修飾重鎖定常領域及び/または軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、当該技術分野において既知のモノクローナル抗体、及び修飾Fc領域、例えば、S228P突然変異を有するIgG4 Fcを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒト、ヒト化、またはキメラ型の完全長抗体または抗体断片を含む。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、承認されている(例えば、FDA及び/またはEMAによって)または開発中のモノクローナル抗体または抗体断片(例えば、Fab)由来である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、承認されている(例えば、FDA及び/またはEMAによって)または開発中のモノクローナル抗体または抗体断片(例えば、Fab)である。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、阻害性免疫チェックポイントタンパク質に特異的に結合する、完全長抗体(例えば、アンタゴニスト抗体)またはそれ由来の抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、刺激性免疫チェックポイント分子に特異的に結合する、完全長抗体(例えば、アゴニスト抗体)またはそれ由来の抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA−4、B7−H3、TIM−3、LAG−3、TIGIT、VISTA、ICOS、4−1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗PD−1抗体は、ペンブロリズマブ及びニボルマブからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗PD−L1抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗LAG−3抗体またはその抗原結合断片である。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ペンブロリズマブ由来である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ペンブロリズマブまたはその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、IgG4 Fcを含む。
ペンブロリズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標))は、がん免疫療法で使用されるヒト化抗体である。これは、プログラム細胞死1(PD−1)受容体を標的とする。この薬物は、転移性黒色腫の治療において最初に使用された。2014年9月4日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDAのファストトラック開発プログラム下でKEYTRUDA(登録商標)を承認した。進行性黒色腫における使用が承認されている。2015年10月2日に、米国FDAは、KEYTRUDA(登録商標)を、その腫瘍がPD−L1を発現しており、別の化学療法剤による治療に失敗した患者における転移性非小細胞肺がんの治療に対して承認した。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗HER2抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、トラスツズマブ由来である。
最も良く売れている5大治療用抗体の1つであるトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))は、HER2陽性乳がん患者の生存率を有意に増加させている、ヒト化抗HER2受容体モノクローナル抗体である。HER受容体は、細胞膜に埋め込まれており、細胞外由来の分子シグナル(EGFと称される分子)を細胞内に伝え、遺伝子のオンオフを行うタンパク質である。HERタンパク質、ヒト上皮成長因子受容体は、ヒト上皮成長因子に結合し、細胞増殖を刺激する。一部のがん、特にある種の乳がんでは、HER2が過剰発現しており、がん細胞の無制限な複製の原因となる。しかしながら、乳がん患者のうち、15〜20%のみがヒト上皮成長因子受容体2(HER2)を増幅かつ過剰発現を呈しており、ほとんどのHER2患者は、トラスツズマブに反応しない。また、HER2+患者の一部は、初期治療後にトラスツズマブに対する抵抗性を生じる。上皮成長因子であるRTKファミリーは4つのメンバー、EGFR、HER2、HER3及びHER4からなるため、これらの抗原のうち2つを標的とするためにいくつかの多重特異性抗体が開発されており、従来の単一特異性抗体に対する利点を示している。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、血管新生因子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗Ang2抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、LC10由来である。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、炎症促進性分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、炎症促進性分子は、VEGF、IL−1β、TNF−α、IL−5、IL−6、IL−6R、及びエオタキシン−1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗TNF−α抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、アダリムマブ由来である。
MABPの特性
本明細書に記載のMABPは、生物学的医薬品としての製造及び開発に適している。いくつかの実施形態では、MABPは、高発現レベルで組み換え的に産生することができる。いくつかの実施形態では、MABPは、工業的製造に十分なレベルで組み換え的に産生することができる。いくつかの実施形態では、MABPは、哺乳類細胞において一過性に発現することができる。いくつかの実施形態では、組み換え発現により産生されたMABPは、サイズ排除クロマトグラフィーによって均質または実質的に均質になるまで精製することができる。いくつかの実施形態では、精製MABP中の単分散性分子(例えば、4本のポリペプチド鎖からなる二量体タンパク質などの、単量体MABP分子として)の割合は、例えば、クロマトグラフィーによって測定されるとき、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上のうちいずれか1つである。組成物中のMABPの均質性は、当該技術分野において既知の方法、例えば、SDS−PAGE分析、動的光散乱(DLS)、またはHPLCもしくはFPLCを用いる分析によって測定することができる。いくつかの実施形態では、精製によるMABPの収率は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上のうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、精製によるMABPの収率は、約70%〜約95%である。
本明細書に記載のMABPは、生物学的医薬品としての使用に適する様々な生物物理学的特性、例えば、高い溶解性、高い長期安定性、及び熱安定性などをさらに有する。MABPの安定性は、粒径に基づいて溶解している異なる分子集団を特徴付ける、動的光散乱(DSL)などの当該技術分野において既知の方法を用いて測定することができる。いくつかの実施形態では、組成物中のMABPの少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、またはそれ以上は、非凝集体構造、すなわち、単一の単量体MABP分子、例えば、4本のポリペプチド鎖からなる二量体タンパク質である。いくつかの実施形態では、組成物中の凝集レベル、すなわち、複数のMABP分子が複合体として会合しているレベルは、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、またはそれより高い割合以下のうち、いずれか1つである。いくつかの実施形態では、組成物中のMABPの少なくとも約5%が凝集体を形成するまでの期間は、約4℃において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、またはそれ以上のうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、組成物中のMABPの少なくとも約5%が凝集体を形成するまでの期間は、室温付近、例えば、25℃において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、またはそれ以上のうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、組成物中のMABPの少なくとも約10%が凝集体を形成するまでの期間は、生理的温度、例えば、37℃において、少なくとも約1日、2日、3日、4日、6日、7日、10日、2週間、またはそれ以上のうちいずれか1つである。
いくつかの実施形態では、MABPは、親4本鎖抗体またはその抗原結合断片に匹敵する熱安定性を有する。いくつかの実施形態では、MABPは、親4本鎖抗体またはその抗原結合断片よりも高い熱安定性を有する。熱安定性は、当該技術分野において既知の方法、例えば、キャピラリー示差走査熱量測定(DSC)及び段階的加熱を組み合わせたDLSを用いて測定することができる。いくつかの実施形態では、MABPは、少なくとも約55℃、例えば、少なくとも56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、またはそれ以上のうちいずれか1つの凝集開始温度(Tagg)を有する。いくつかの実施形態では、MABPは、約55℃〜約70℃の凝集開始温度(Tagg)を有する。
いくつかの実施形態では、MABPは、高い長期安定性を有する。いくつかの実施形態では、MABPは、約4℃において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、またはそれ以上のうちいずれか1つの期間安定である。いくつかの実施形態では、MABPは、高温で高い長期安定性を有する。いくつかの実施形態では、MABPは、室温、例えば、約25℃以上において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、またはそれ以上のうちいずれか1つの期間安定である。いくつかの実施形態では、MABPは、生理的温度、例えば、約37℃以上において、少なくとも約1日、2日、3日、4日、6日、7日、10日、2週間、またはそれ以上のうちいずれか1つの期間安定である。いくつかの実施形態では、MABPの安定性を、加速安定性評価法、例えば、約40℃、50℃、60℃、70℃、またはそれ以上のうちいずれか1つにおいて試験し、より低温でのMABPの安定性を導き出す。いくつかの実施形態では、MABPは、高濃度、例えば、少なくとも約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mL、またはそれ以上のうちいずれか1つにおいて高い長期安定性を有する。本明細書で使用する場合、「安定」な組成物は、沈殿物及び/または凝集体を実質的に含まない(例えば、約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または以下のうちいずれか未満)。いくつかの実施形態では、MABPは、約4℃において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、またはそれ以上のうちいずれか1つの期間、ヒト血清中で高い長期安定性を有する。いくつかの実施形態では、MABPは、生理的温度、例えば、約37℃において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、またはそれ以上のうちいずれか1つの期間、ヒト血清中で高い長期安定性を有する。沈殿物は、光学分光法によって検出することができる。凝集体は、例えば、DLSによって検出することができる。
いくつかの実施形態では、MABPは、凍結融解サイクルにおいて高い安定性を有する。いくつかの実施形態では、MABPを含む組成物は、MABPの構造的完全性(例えば、凝集体形成)及び/または活性を失うことなく、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上のうちいずれか1つ、凍結融解することができる。いくつかの実施形態では、MABPを含む組成物は、高濃度、例えば、少なくとも約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mL、またはそれ以上のうちいずれか1つにおいて凍結融解することができる。
III.医薬組成物
本出願によって、MABPのうち任意の1つ、及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物がさらに提供される。医薬組成物は、所望の程度の純度を有するMABPを、任意の医薬的に許容可能な担体、賦形剤または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合し、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製することができる。
インビボ投与に使用される医薬組成物のためには、それらは無菌でなければならない。医薬組成物は、無菌濾過膜を通す濾過によって無菌化されてよい。本明細書の医薬組成物は、一般的に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈輸液バッグまたはバイアル内に入れられる。
投与経路は、好適な方法、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、動脈内もしくは関節内経路による注射もしくは注入、局所投与、吸入、または、持続放出もしくは長期間放出手段において、長期間にわたる単回または複数回のボーラスまたは持続など、既知の許容される方法に従う。
また、本明細書の医薬組成物は、治療される特定の適応に対して必要な、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する2種類以上の活性化合物も含有してよい。あるいは、または追加的に、組成物は、細胞傷害性剤、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、または成長阻害剤を含んでよい。このような分子は、適応とする目的に有効な量の組み合わせで好適に存在する。
また活性成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)またはマクロエマルションで閉じ込められてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th editionに開示されている。
IV.使用方法
本明細書に記載のMABP(例えば、TABP)、及びその組成物(例えば、医薬組成物)は、診断、分子アッセイ、及び治療などの様々な用途に有用である。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質、及び医薬的に許容可能な担体を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、疾患または状態の治療を必要とする個体におけるその治療方法があり、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の免疫チェックポイント分子(例えば、PD−1、配列番号12)由来であり、第2のエピトープは、第2の免疫チェックポイント分子(例えば、TIGIT、配列番号13)由来であり、及び第3のエピトープは、第3の免疫チェックポイント分子(例えば、LAG−3、配列番号14)由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは、第2の腫瘍抗原由来であり、及び第3のエピトープは、第3の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の腫瘍抗原(例えば、HER−2)由来であり、第2のエピトープは、免疫エフェクター細胞(例えば、CD3)上の細胞表面分子由来であり、及び第3のエピトープは、第2の腫瘍抗原(例えば、EGFR)由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の炎症促進性分子(例えば、TNF−α)由来であり、第2のエピトープは、第2の炎症促進性分子(例えば、IL−17A)由来であり、及び第3のエピトープは、第3の炎症促進性分子(例えば、IL−17F)由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第1の血管新生因子(例えば、Ang2)由来であり、第2のエピトープは、第2の血管新生因子(例えば、VEGF)由来であり、及び第3のエピトープは、第3の血管新生因子(例えば、DLL4)由来である。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 FcまたはIgG4 Fcを含む。
がんの治療方法
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質、及び医薬的に許容可能な担体を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、がんの治療を必要とする個体における治療方法であって、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、腎がん、黒色腫、肺がん、膠芽腫、頭頚部がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、及びリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 FcまたはIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質、及び医薬的に許容可能な担体を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、がんの治療を必要とする個体における治療方法であって、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の免疫チェックポイント分子(例えば、PD−1)に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の免疫チェックポイント分子(例えば、TIGIT)に特異的に結合する第1のsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分、及び(c)第3の免疫チェックポイント阻害剤(例えば、LAG−3)に特異的に結合する第2のsdAb(例えば、VHH)を含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、腎がん、黒色腫、肺がん、膠芽腫、頭頚部がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、及びリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、ペンブロリズマブ由来である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質、及び医薬的に許容可能な担体を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、がんの治療を必要とする個体における治療方法であって、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の腫瘍抗原(例えば、HER−2)に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)免疫エフェクター細胞(例えば、CD3)の細胞表面抗原に特異的に結合する第1のsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分、及び(c)第2の腫瘍抗原(例えば、EGFR)に特異的に結合する第2のsdAb(例えば、VHH)を含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、腎がん、黒色腫、肺がん、膠芽腫、頭頚部がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、及びリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、トラスツズマブ由来である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質、及び医薬的に許容可能な担体を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、がんの治療を必要とする個体における治療方法であって、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の血管新生因子(例えば、Ang2)に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の血管新生因子(例えば、VEGF)に特異的に結合する第1のsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分、及び(c)第3の血管新生因子(例えば、DLL4)に特異的に結合する第2のsdAb(例えば、VHH)を含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、腎がん、黒色腫、肺がん、膠芽腫、頭頚部がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、及びリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、LC10由来である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 Fcを含む。
本明細書に記載の方法は、固形がん及び液性がんの両方を含む様々ながんの治療に好適である。この方法は、初期、進行期及び転移性がんなどの、全ての段階のがんに適用可能である。本明細書に記載の方法を、アジュバント療法またはネオアジュバント療法中の、第1の療法、第2の療法、第3の療法、または、当該技術分野において既知である他の種類のがん療法、例えば、化学療法、手術、放射線、遺伝子治療、免疫療法、骨髄移植、幹細胞移植、標的療法、低温療法、超音波療法、光線力学的療法、高周波アブレーションなどとの併用療法として用いることができる。
炎症性疾患または自己免疫疾患の治療方法
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質、及び医薬的に許容可能な担体を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療を必要とする個体における治療方法であって、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2のエピトープに特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、炎症性または自己免疫疾患は、関節炎(例えば、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び関節炎潰瘍性大腸炎)、大腸炎、乾癬、重症喘息、及び中等度から重度のクローン病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 FcまたはIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、三重特異性)抗原結合タンパク質及び医薬的に許容可能な担体を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療を必要とする個体における治療方法であって、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の炎症促進性分子(例えば、TNF−α)に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成する、第1の抗原結合部分、(b)第2の炎症促進性分子(例えば、IL−17A)に特異的に結合する第1のsdAbを含む、第2の抗原結合部分、及び(c)第3の炎症促進性分子(例えば、IL−17F)に特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分が互いに融合している、治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、炎症性または自己免疫疾患は、関節炎(例えば、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び関節炎潰瘍性大腸炎)、大腸炎、乾癬、重症喘息、及び中等度から重度のクローン病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、VHHである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖及びVLを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、アダリムマブ由来である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、ペプチドリンカーを介して一緒に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約30以下(例えば、約25、20、または15以下のいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えば、IgG1 Fcを含む。
投与量及び投与経路
本出願の医薬組成物の投与量及び所望の薬物濃度は、想定される特定用途に応じて変わり得る。適切な投与量または投与経路の決定は、当業者の能力の十分に範囲内である。動物実験は、ヒトの治療に対する有効量の決定において、信頼性のあるガイダンスを提供する。有効量の外挿は、Mordenti,J.and Chappell,W.「The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics」,In Toxicokinetics and New Drug Development,Yacobi et al.,Eds,Pergamon Press,New York 1989,pp.42−46に著される原則に従って実施することができる。
本明細書に記載のMABPのインビボでの投与を使用する場合、通常の投与量は、哺乳類の体重1日あたり約10ng/kg〜約100mg/kg以上で可変であってよく、投与経路によって、好ましくは約1mg/kg/日〜10mg/kg/日である。異なる製剤が異なる治療及び異なる疾患に有効であり、特定の器官または組織の治療に意図された投与が、別の器官または組織とは異なる方法での送達を必要とし得ることは、本出願の範囲内である。さらに、投与量を、1回または複数回の別々の投与によって、または持続的注入によって投与してもよい。数日以上にわたる繰り返し投与において、その状態に応じて、疾患症状の所望される抑制が生じるまで、治療を継続する。しかしながら、他の投与計画が有用であってよい。治療の進行は、従来技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単回投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回(例えば、2、3、4、5、6、またはそれ以上の回数のいずれか)投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、または1年に1回、投与される。いくつかの実施形態では、投与間隔は、約1週間〜2週間、2週間〜1ヶ月、2週間〜2ヶ月、1ヶ月〜2ヶ月、1ヶ月〜3ヶ月、3ヶ月〜6ヶ月、または6ヶ月〜1年のうち、いずれか1つである。特定の患者に対する最適な投与量及び治療計画は、疾患の兆候について患者をモニタリングし、それに応じて治療を調整することによって、医療分野における当業者によって容易に決定できる。
再溶解製剤または液体製剤などが挙げられるが、これらに限定されない本出願の医薬組成物は、MABPによる治療を必要とする個体、好ましくはヒトに、既知の方法、例えば、単回または一定時間にわたる持続的注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、局所、または吸入経路によって投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下(すなわち、皮膚の下)投与により個体に投与される。そのような目的のために、医薬組成物は、シリンジを使用して注射してもよい。しかしながら、医薬組成物の投与のための他のデバイス、例えば、注射デバイス;インジェクターペン;オートインジェクターデバイス、無針デバイス;及び皮下パッチ送達システムが利用可能である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、個体の静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、点滴静注などの注入によって個体に投与される。免疫療法に対する注入技術は、当該技術分野で公知である(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676(1988)を参照されたい)。
V.調製方法
本出願は、MABPをコードする単離された核酸、かかる単離された核酸を含むベクター及び宿主細胞、ならびに、MABP産生のための組み換え法も提供する。
MABPの組み換え産生では、完全長抗体または第1の抗原結合部分の抗原結合断片、第1のsdAb及び第2のsdAbをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。いくつかの実施形態では、完全長抗体または第1の抗原結合部分の抗原結合断片をコードする核酸は、ペプチドリンカーをコードする核酸を任意に介して、第1または第2のsdAbをコードする核酸に、互いに対して全てが翻訳に対してインフレームで組み換え的に融合され、MABPをコードする核酸を提供する。MABPまたはその成分をコードするDNAは、従来の手順を用いて容易に単離され、配列決定される(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブの使用による)。多くのベクターが利用可能である。ベクターの選択は、使用する宿主細胞に一部依存する。一般的に、好ましい宿主細胞は、原核生物または真核生物(通常は哺乳類)由来のいずれかである。
あるいは、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分は、それぞれ第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分をコードする核酸を含む原核生物または真核生物の宿主細胞を用いて、それぞれ組み換え的に調製される。その後、発現された第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分を化学的に結合し、精製して、MABPを提供する。
1.原核細胞におけるタンパク質産生
a)ベクター構築
本出願のMABPのポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組み換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列は、抗体産生細胞、例えば、ハイブリドーマ細胞から単離し、配列決定してもよい。あるいは、ポリヌクレオチドをヌクレオチドシンセサイザーまたはPCR技術を使用して合成することができる。一旦得られると、ポリペプチドをコードする配列を、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製及び発現することができる組み換えベクター中に挿入する。当該技術分野において利用可能で公知の多くのベクターを、本出願の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、ベクター中に挿入される核酸のサイズ及びそのベクターを用いて形質転換される特定の宿主細胞に主に依存するであろう。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅または発現、あるいは両方)及びそれが存在する特定の宿主細胞とのその適合性に依存して、種々の成分を含む。ベクター成分は、一般的に、限定はされないが、以下:複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボゾーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート、及び転写終結配列を含む。
一般的に、宿主細胞と適合する種に由来するレプリコン配列及び制御配列を含むプラスミドベクターを、これらの宿主に関連して使用する。ベクターは、通常、複製部位、ならびに形質転換細胞において表現型選択を提供することができる標識配列を持つ。例えば、E.coliは、典型的には、pBR322(E.coli種に由来するプラスミド)を使用して形質転換する。pBR322は、アンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含み、このように形質転換細胞を同定するための簡単な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージは、また、内因性タンパク質の発現のために微生物により使用されることができるプロモーターを含んでもよい、または含むように修飾してもよい。特定の抗体の発現のために使用されるpBR322誘導体の例が、Carter et al.,米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
また、宿主微生物と適合するレプリコン配列及び制御配列を含むファージベクターを、これらの宿主に関連して形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、バクテリオファージ(例えば、GEM(商標)−11など)を、感受性宿主細胞(例えば、E.coli LE392など)を形質転換するために使用することができる組み換えベクターを作製する際に利用してもよい。
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2つ以上のプロモーター−シストロン対を含み得る。プロモーターは、その発現を調節するシストロンの上流(5’)に位置付けられる非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、2つのクラス(誘導的及び恒常的)に分類される。誘導的プロモーターは、培養条件における変化(例えば、栄養分の存在もしくは非存在または温度における変化)に応答したその制御下での増加レベルのシストロンの転写を開始するプロモーターである。
種々の潜在的な宿主細胞により認識される多数のプロモーターが、周知である。選択されたプロモーターを、制限酵素消化を介した供給源DNAからプロモーターを除去し、単離したプロモーター配列を本発明のベクター中に挿入することにより、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに機能的に連結することができる。天然プロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両方を使用し、標的遺伝子の増幅及び/または発現に向けてもよい。いくつかの実施形態では、異種プロモーターを利用する。なぜなら、それらは、一般的に、天然標的ポリペプチドプロモーターと比較して、発現された標的遺伝子のより大きな転写及びより高い産出を許すからである。
原核生物宿主との使用のために適したプロモーターは、PhoAプロモーター、ガラクタマーゼ及びラクトースプロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、及びハイブリッドプロモーター(例えば、tacまたはtrcプロモーターなど)を含む。しかしながら、細菌において機能的である他のプロモーター(例えば、他の公知の細菌またはファージのプロモーターなど)も適している。それらのヌクレオチド配列が発表されており、それにより当業者が、それらを、標的軽鎖及び重鎖をコードするシストロン(Siebenlist et al.(1980)Cell 20:269)に、任意の要求される制限部位を供給するためのリンカーまたはアダプターを使用して機能的に連結することが可能になる。
一態様では、組み換えベクター内の各シストロンは、発現されたポリペプチドの膜を横断する直接的な転位に向ける分泌シグナル配列成分を含む。一般的に、シグナル配列は、ベクターの成分であり得る、または、それは、ベクター中に挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本出願の目的のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞により認識され、処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドに対して天然であるシグナル配列を認識し、処理しない原核生物宿主細胞について、シグナル配列が、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、及びMBPからなる群より選択される原核生物シグナル配列により置換される。いくつかの実施形態では、発現系の両シストロンにおいて使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはその変異体である。
いくつかの実施形態では、MABPの産生は、宿主細胞の細胞質中で起こり得るが、従って、各シストロン内に分泌シグナル配列の存在を必要としない。いくつかの実施形態では、ポリペプチド成分は、発現され、折り畳まれ、組み立てられて、細胞質内に機能的なMABPが形成される。ある特定の宿主株(例えば、E.coli trxB−株)は、ジスルフィド結合形成に好ましい細胞質状態を提供し、それにより発現されたタンパク質サブユニットの適切な折り畳み及び組み立てを許す。Proba and Pluckthun Gene,159:203(1995)。
本出願は、発現されるポリペプチド成分の定量的比率を、分泌されて適切に組み立てられる本出願のMABPの産出を最大限にするために調節することができる発現系を提供する。そのような調節は、少なくとも部分的に、ポリペプチド成分についての翻訳強度を同時に調節することにより達成される。翻訳強度を調節するための1つの技術が、Simmons et al.,米国特許第5,840,523号に開示される。それは、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)の変異体を利用する。所与のTIRについて、一連のアミノ酸または核酸配列変異体を、翻訳強度の範囲を用いて作製することができ、それにより特定の鎖の所望の発現レベルについてこの因子を調整するための便利な手段を提供する。TIR変異体を、アミノ酸配列を変化させることができるコドン変化をもたらす従来の突然変異誘発技術により生成することができるが、ヌクレオチド配列におけるサイレントな変化が好ましい。TIRにおける変化は、例えば、Shine−Dalgarno配列の数または間隔における変化を、シグナル配列における変化と共に含むことができる。突然変異シグナル配列を生成するための1つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)コード配列の開始での「コドンバンク」の生成である。これは、各コドンの3番目のヌクレオチド位置を変化させることにより達成することができる;加えて、いくつかのアミノ酸、例えば、ロイシン、セリン、及びアルギニンなどは、バンクを作製する際に複雑度を加えることができる複数の1番目及び2番目の位置を有する。突然変異誘発のこの方法は、Yansura et al.(1992)METHODS:A Companion to Methods in Enzymol.4:151−158に詳細に記載される。
好ましくは、一連のベクターは、その中の各シストロンについてのTIR強度の範囲を用いて生成する。この限定されたセットは、各鎖の発現レベルの比較ならびに種々のTIR強度の組み合わせ下の所望のMABP生成物の産出を提供する。TIR強度を、Simmons et al.,米国特許第5,840,523号に詳細に記載されるレポーター遺伝子の発現レベルを定量化することにより決定することができる。翻訳強度比較に基づき、所望の個々のTIRを選択し、本出願の発現ベクター構築物において組み合わせる。
b)原核生物宿主細胞
本出願のMABPを発現させるために適した原核生物宿主細胞は、古細菌と真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物などを含む。有用な細菌の例としては、エシェリキア属(例えば、E.coli)、バシラス属(例えば、B.subtilis)、腸内細菌、シュードモナス属(例えば、P.aeruginosa)、サルモネラ・チフィリウム、セラチア・マルセッセンス、クレブシエラ属、プロテウス属、シゲラ属、根粒菌、ビトレオシラ属、またはパラコッカス属が挙げられる。一実施形態では、グラム陰性細胞を使用する。一実施形態では、E.coli細胞を宿主として使用する。E.coli株の例としては、W3110株(Bachmann,Cellular and Molecular Biology,vol.2(Washington,D.C.:American Society for Microbiology,1987),pp.1190−1219;ATCC Deposit No.27,325)及びその誘導体が挙げられ、遺伝子型W3110 AfhuA (AtonA)ptr3 lac Iq lacL8 AompT A(nmpc−fepE)degP41 kanR(米国特許第5,639,635号)を有する33D3株を含む。他の株及びその誘導体、例えば、E.coli 294(ATCC31,446)、E.coli B、E.coli 1776(ATCC31,537)及びE.coli RV308(ATCC31,608)なども適する。これらの例は、限定的よりも、むしろ説明的である。定義された遺伝子型を有する上記の細菌のいずれかの誘導体を構築するための方法が、当該技術分野において公知であり、例えば、Bass et al.,Proteins,8:309−314(1990)に記載される。一般的に、細菌の細胞におけるレプリコンの複製能を考慮に入れて適切な細菌を選択することが必要である。例えば、E.coli、セラチア属、またはサルモネラ属が、周知のプラスミド(例えば、pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410など)を、レプリコンを供給するために使用する場合、宿主として使用するのに適し得る。
典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきであり、追加のプロテアーゼ阻害剤が望ましくは細胞培養に取り込まれ得る。
c)タンパク質産生
宿主細胞を上記の発現ベクターを用いて形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜修飾された従来の栄養培地中で培養する。形質転換は、DNAを原核生物宿主中に導入し、DNAが、染色体外エレメントとしてまたは染色体組み込み体のいずれかとして複製可能であることを意味する。使用する宿主細胞に依存して、形質転換は、そのような細胞に適切である標準的な技術を使用して行う。塩化カルシウムを用いたカルシウム処理は、実質的な細胞壁バリアを含む細菌細胞のために一般的に使用される。形質転換のための別の方法では、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用されるさらに別の技術は、エレクトロポレーションである。
本出願のMABPを産生するために使用される原核細胞は、当該技術分野において公知の、選択された宿主細胞の培養に適した培地中で増殖される。適した培地の例としては、Luria培地(LB)+必要な栄養分補給が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地はまた、発現ベクターの構築に基づき選択された選択剤を含み、発現ベクターを含む原核細胞の増殖を選択的に許す。例えば、アンピシリンを、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖用の培地に加える。
任意の必要な補給剤(炭素、窒素、及び無機リン酸供給源の他)も、単独でまたは別の補給剤を伴う混合物もしくは培地(例えば、複雑な窒素供給源など)として導入された適切な濃度で含んでもよい。場合により、培養液は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリスリトール、及びジチオスレイトールからなる群より選択される1つ以上の還元剤を含んでもよい。
原核生物宿主細胞を適した温度で培養する。E.coli増殖について、例えば、好ましい温度は、約20℃〜約39℃、より好ましくは25℃〜約37℃の範囲、さらにより好ましくは30℃である。培地のpHは、主に宿主生物に依存して、約5〜約9の範囲の任意のpHであり得る。E.coliについて、pHは、好ましくは約6.8〜約7.4、より好ましくは約7.0である。
誘導性プロモーターを発現ベクター中で使用する場合、タンパク質発現を、プロモーターの活性化のために適した条件下で誘導する。いくつかの実施形態では、PhoAプロモーターをポリペプチドの転写を制御するために使用する。したがって、形質転換された宿主細胞を、誘導用のリン酸制限培地中で培養する。好ましくは、リン酸制限培地は、C.R.A.P培地である(例えば、Simmons et al.,J.Immunol.Methods(2002),263:133−147を参照されたい)。種々の他の誘導因子を、用いられるベクター構築物に応じて、当該技術分野において公知の通りに使用してもよい。
本出願の発現されたMABPは、宿主細胞のペリプラズム中に分泌され、そこから回収される。タンパク質の回収は、典型的には、微生物の破壊(一般的に、浸透圧ショック、超音波処理、または溶解などの手段による)を含む。一旦、細胞が破壊されると、細胞片または全細胞を遠心分離またはろ過により除去してもよい。タンパク質を、さらに、例えば、親和性樹脂クロマトグラフィーにより精製してもよい。あるいは、タンパク質を培養液中に輸送し、その中で単離することができる。細胞を培養物から除去してもよく、培養上清を、産生されたタンパク質のさらなる精製のためにろ過及び濃縮する。発現されたポリペプチドを、さらに、一般的に公知の方法(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロットアッセイなど)を使用して単離及び同定することができる。
あるいは、タンパク質産生は、発酵プロセスにより大量に行われる。種々の大規模流加発酵手順を、組み換えタンパク質の産生のために利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの能力、好ましくは約1,000〜100,000リットルの能力を有する。これらの発酵槽ではアジテーターインペラを使用し、酸素及び栄養分、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー供給源)を分布させる。小規模発酵は、一般的に、わずか約100リットルの容積である、約1リットル〜約100リットルの範囲であり得る発酵槽中での発酵を指す。
発酵プロセスの間に、タンパク質発現の誘導は、典型的には、細胞が適した条件下で所望の密度(例えば、OD550が約180〜220)まで増殖させた後に開始され、その段階で細胞は初期の静止期にある。種々の誘導因子を、用いられるベクター構築物に応じて、当該技術分野において公知であり、上に記載する通りに使用してもよい。細胞を、誘導前に短い期間にわたり増殖させてもよい。細胞を、通常、約12〜50時間にわたり誘導するが、より長いまたはより短い誘導時間を使用してもよい。
本出願のMABPの産出及び質を改善するために、種々の発酵プロセスを修飾することができる。例えば、分泌されたポリペプチドの適切な組み立て及び折り畳みを改善するために、シャペロンタンパク質、例えば、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、及び/またはDsbG)またはFkpA(シャペロン活性を伴うペプチジルプロリルシス、トランスイソメラーゼ)などを過剰発現する追加のベクターを使用して、宿主原核細胞を同時形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞において産生される異種タンパク質の適切な折り畳み及び溶解性を促進することが実証されている。Chen et al.(1999)J Bio Chem 274:19601−19605;Georgiou et al.,米国特許第6,083,715号;Georgiou et al.,米国特許第6,027,888号;Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100−17105;Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106−17113;Arie et al.(2001)Mol.Microbiol.39:199−210。
発現された異種タンパク質(特に、タンパク分解に感受性であるもの)のタンパク質分解を最小限にするために、タンパク質分解酵素が欠損したある特定の宿主株を本発明のために使用することができる。例えば、宿主細胞株を修飾し、公知の細菌プロテアーゼ(例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、及びその組み合わせなど)をコードする遺伝子における遺伝的突然変異(複数可)に効果を及ぼしてもよい。一部のE.coliプロテアーゼ欠損株を利用可能であり、例えば、Joly et al.(1998),supra;Georgiou et al.,米国特許第5,264,365号;Georgiou et al.,米国特許第5,508,192号;Hara et al.,Microbial Drug Resistance,2:63−72(1996)に記載される。
タンパク質分解酵素が欠損し、1つ以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドを用いて形質転換されたE.coli株を、本出願のMABPをコードする発現系において宿主細胞として使用してもよい。
d)タンパク質精製
本明細書において産生されるMABPをさらに精製し、さらなるアッセイ及び使用のための実質的に均質である調製物を得る。当該技術分野において公知の標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の手順:免疫親和性カラムまたはイオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上または陽イオン交換樹脂(例えば、DEAEなど)上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫安塩析、及びゲルろ過(例えば、Sephadex G−75を使用)は、適した精製手順の例示である。
いくつかの実施形態では、固相に固定化されるプロテインAは、本明細書に記載のFc領域を含むMABPの免疫親和性精製のために使用される。プロテインAは、黄色ブドウ球菌からの411(D細胞壁タンパク質であり、高親和性を伴い抗体のFc領域に結合する。Lindmark et al(1983)J.Immunol.Meth.62:1−13。プロテインAが固定化される固相は、好ましくは、ガラスまたはシリカ表面を含むカラム、より好ましくは制御された細孔ガラスカラムまたはケイ酸カラムである。一部の適用において、カラムを、混入物の非特異的付着を予防するために、試薬(例えば、グリセロールなど)を用いて被覆している。固相を次に洗浄し、固相に非特異的に結合した混入物を除去する。最後に、目的のMABPを、溶出により固相から回収する。
2.真核細胞におけるタンパク質産生
真核生物での発現のために、ベクター成分は、一般的に、限定はされないが、以下:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、ならびにエンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列の1つ以上を含む。
a)シグナル配列成分
真核生物宿主における使用のためのベクターはまた、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特定の切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドをコードするインサートを含んでもよい。選択される異種シグナル配列は、宿主細胞により認識され、処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものである。哺乳動物細胞での発現において、哺乳動物シグナル配列ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルを利用可能である。
そのような前駆体領域のためのDNAを、リーディングフレーム中で、本出願のMABPをコードするDNAに連結する。
b)複製起点
一般的に、複製起点成分は、哺乳動物発現ベクターのために必要とされない(SV40起点を典型的に使用してもよい。なぜなら、ただ、それは初期プロモーターを含むからである)。
c)選択遺伝子成分
発現ベクター及びクローニングベクターは、選択遺伝子(選択可能マーカーとも称される)を含んでもよい。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリン)に対して耐性を付与する、(b)栄養要求性欠損を補完する、または(c)複雑な培地から利用可能ではない決定的な栄養分を供給するタンパク質をコードする(例えば、バシラス属についてのDアラニンラセマーゼをコードする遺伝子)。
選択計画の1例では、宿主細胞の増殖を停止させるための薬物を利用する。異種遺伝子を用いて成功裏に形質転換されるそれらの細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、このように選択計画中に生存する。そのような優性選択の例では、薬物(ネオマイシン、ミコフェノール酸、及びハイグロマイシン)を使用する。
哺乳動物細胞のための適した選択マーカーの別の例は、本出願のMABPをコードする核酸を取り込む能力がある細胞の同定を可能にするものである(例えば、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは霊長類のメタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなど)。
例えば、DHFR選択遺伝子を用いて形質転換された細胞は、最初に、メトトレキサート(Mtx)(DHFRの競合的アンタゴニスト)を含む培養液中で形質転換体の全てを培養することにより同定される。野生型DHFRを用いた場合での適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCCCRL−9096)である。
あるいは、ポリペプチドをコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及び別の選択マーカー、例えば、アミノグリコシド3’ホスホトランスフェラーゼ(APH)などを用いて形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含む野生型宿主)を、選択マーカー用の選択薬剤(例えば、アミノグリコシド抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418など)を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
d)プロモーター成分
発現ベクター及びクローニングベクターは、通常、宿主生物により認識され、所望のポリペプチド配列をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーターを含む。事実上、全ての真核生物遺伝子が、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置付けられるATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始から70〜80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域であり、そこでNは任意のヌクレオチドであり得る。大半の真核生物の3’末端は、AATAAA配列であり、それはコード配列の3’末端へのポリAテールの付加のためのシグナルであり得る。これらの配列の全てを、真核生物発現ベクター中に挿入してもよい。
原核生物宿主との使用のために適した他のプロモーターは、phoAプロモーター、ラクタマーゼ及びラクトースプロモーターシステム、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、及びハイブリッドプロモーター(例えば、tacプロモーターなど)を含む。しかしながら、他の公知の細菌プロモーターが適する。細菌システムにおける使用のためのプロモーターはまた、MABPをコードするDNAに機能的に連結されたShine−Dalgarno(S.D.)配列を含み得る。
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの抗体ポリペプチド転写は、例えば、以下のウイルスのゲノムから得られるプロモーターにより制御される:例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくははサルウイルス40(SV40)、異種哺乳動物プロモーターから、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターから(そのようなプロモーターが宿主細胞系に適合するという条件で)。
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含むSV40制限断片として便利に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として便利に得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して哺乳動物宿主においてDNAを発現させるためのシステムが、米国特許第4,419,446号に開示されている。このシステムの修飾が、米国特許第4,601,978号に記載されている。また、マウス細胞における単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのヒトインターフェロンcDNAの発現に関するReyes et al.,Nature 297:598−601(1982)を参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列をプロモーターとして使用することができる。
e)エンハンサーエレメント成分
より高い真核生物による本出願のMABPをコードするDNAの転写は、しばしば、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することにより増加される。多くのエンハンサー配列が、現在、哺乳動物遺伝子から公知である(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、及びインスリン)。典型的には、しかしながら、真核細胞ウイルスからのエンハンサーが使用され得る。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(100〜270bp)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。また、真核生物プロモーターの活性化のための増強エレメントに関するYaniv,Nature 297:17−18(1982)を参照されたい。エンハンサーは、抗体コード配列に対する位置5’または3’でベクター中にスプライシングされ得るが、しかし、好ましくはプロモーターから部位5’に位置付けられる。
f)転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物からの有核細胞)において使用される発現ベクターは、転写の終結のために及びmRNAを安定化させるために必要な配列も含み得る。そのような配列は、一般的に、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’及び、時には3’の非翻訳領域から利用可能である。これらの領域は、ポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分におけるポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026及びその中で開示される発現ベクターを参照されたい。
g)宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書におけるベクター中でDNAをクローン化または発現するための適した宿主細胞は、本明細書に記載のより高い真核細胞(脊椎動物宿主細胞を含む)を含む。培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖は、通常の手順になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、以下:SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7,ATCCCRL 1651);ヒト胚腎臓株(293細胞または浮遊培養中での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));仔ハムスター腎細胞(BHK,ATCCCCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCCCCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCCCRL−1587);ヒト子宮頚がん細胞(HELA,ATCCCCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCCCCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCCCRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCCCCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳がん(MMT 060562,ATCCCCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞がん株(Hep G2)である。
宿主細胞を、MABP産生のための上記の発現またはクローニングベクターを用いて形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜修飾された従来の栄養培地中で培養する。
h)宿主細胞の培養
本出願のMABPを産生するために使用される宿主細胞を、種々の培地中で培養してもよい。商業的に利用可能な培地、例えば、Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、及びダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)などが、宿主細胞を培養するために適する。また、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;または同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国特許Re.30,985に記載される培地のいずれかを宿主細胞用の培養液として使用してもよい。これらの培地のいずれかに、必要に応じて、以下を補給してもよい:ホルモン及び/または他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子など)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸など)、緩衝剤(例えば、HEPESなど)、ヌクレオチド(例えば、アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬物など)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物と定義される)、及びグルコースまたは等価のエネルギー供給源。任意の他の必要な補給剤を、また、当業者に公知であり得る適切な濃度で含めてもよい。培養条件、例えば、温度、pHなどは、発現のために選択された宿主細胞と共に以前に使用されたものであり、当業者に明らかであろう。
i)タンパク質精製
組み換え技術を使用する場合、MABPは、細胞内に、ペリプラズム間隙中に産生され得る、または培地中に直接的に分泌され得る。MABPが細胞内に産生される場合、最初の工程として、微粒子細片、宿主細胞または溶解断片のいずれかを、例えば、遠心分離または限外ろ過により除去する。Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992)には、E.coliのペリプラズム間隙に分泌される抗体を単離するための手順が記載される。簡単に説明すると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在において約30分にわたり溶解させる。細胞片を遠心分離により除去することができる。MABPが培地中に分泌される場合、そのような発現系からの上清を、一般的に、商業的に利用可能なタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外ろ過ユニットを使用して最初に濃縮する。プロテアーゼ阻害剤、例えば、PMSFなどを、先の工程のいずれかに含め、タンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含め、外来性混入菌の増殖を予防してもよい。
細胞から調製されたタンパク質組成物を、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、MABP中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種類及びアイソタイプに依存する。プロテインAを使用し、1、2、または4の重鎖を含むヒト免疫グロブリンに基づくMABPを精製することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1−13(1983))。プロテインGが全てのマウスアイソタイプについて及びヒト3について推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが付着するマトリクスは、最もしばしばアガロースであるが、しかしながら、他のマトリクスを利用可能である。機械的に安定なマトリクス、例えば、制御された細孔ガラスまたはポリ(スチレン−ジビニル)ベンゼンによって、アガロースを用いて達成することができるよりも速い流速及び短い処理時間が可能になる。MABPがCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)が精製のために有用である。タンパク質精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラムなど)上でのヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫安塩析も、回収されるMABPに依存して利用可能である。
任意の予備精製工程(複数可)に続き、目的のMABP及び混入物を含む混合物を、pHが約2.5〜4.5の溶出緩衝液を使用し、好ましくは低塩濃度(例えば、約0〜0.25M塩)で実施される、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供してもよい。
3.抗体の製造
MABPの成分、例えば、従来の4本鎖抗体、抗原結合断片、及びsdAbは、以下に記載する方法を含む、当該技術分野において公知の任意の方法を用いて製造することができる。
sdAb(例えば、VHH)は、当該技術分野において公知の方法を用いて、例えば、ラクダ科種(例えば、ラクダまたはラマ)を免疫化し、そこからハイブリドーマを得ることによって、または、当該技術分野において公知の分子生物学的技術を用いてsdAbのライブラリーをクローニングし、未選択ライブラリーの個々のクローンを用いるELISAにより、またはファージディスプレイにより引き続き選択することによって得ることができる。
1)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体を実質的に均質な抗体の集団から得る、すなわち、その集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る、天然に生じる突然変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。従って、修飾語「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物ではないとして抗体の特徴を示す。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ方法を使用して作製してもよく、または組み換えDNA方法により作製してもよい(米国特許第4,816,567号)。
ハイブリドーマ方法では、マウスまたは他の適切な宿主動物(例えば、ハムスターまたはラマなど)を本明細書で上に記載する通りに免疫化し、免疫化のために使用されるタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化してもよい。リンパ球を、次に、ミエローマ細胞と、適した融合剤(例えば、ポリエチレングリコールなど)を使用して融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
免疫化薬剤は、典型的には、抗原性タンパク質またはその融合変異体を含み得る。一般的に、末梢血リンパ球(「PBL」)が、ヒト由来細胞が所望である場合に使用され、または、脾細胞またはリンパ節細胞が、非ヒト哺乳動物の供給源が所望である場合に使用される。リンパ球を、次に、不死化細胞株と、適した融合剤(例えば、ポリエチレングリコールなど)を使用して融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する。Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press(1986),pp.59−103。
不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシ、及びヒトに由来するミエローマ細胞である。通常、ラットまたはマウスミエローマ細胞株を用いる。このように調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは非融合親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含む適した培養液中に播種し、増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)(HGPRT欠損細胞の増殖を予防する物質である)を含み得る。
好ましい不死化ミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベル産生を支持し、培地(例えば、HAT培地など)に感受性であるものである。これらの内、マウスミエローマ株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.USAから利用可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍に由来するもの、及びAmerican Type Culture Collection,Manassas,Va.USAから利用可能なSP−2細胞(及びその誘導体、例えば、X63−Ag8−653)などが好ましい。ヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株もヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、抗原に対して向けられたモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降によりまたはインビトロ結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)など)により決定する。
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、所望の抗原に対して向けられたモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、モノクローナル抗体の結合親和性及び特異性を、免疫沈降によりまたはインビトロ結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)など)により決定することができる。そのような技術及びアッセイは、当該技術分野において公知である。例えば、結合親和性を、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャチャード分析により決定してもよい。
所望の特異性、親和性、及び/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈手順によりサブクローン化し、標準的な方法(Goding,supra)により増殖してもよい。この目的のための適した培養液は、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地を含む。また、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物において腫瘍としてインビボで増殖し得る。
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、培養培地、腹水、または血清から、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA−Sepharose、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィーなどにより適切に分離される。
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されるもの、及び上記のような、組み換えDNA方法によって作製することもできる。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来手順を用いて容易に単離され、配列決定される(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブの使用による)。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源としての役割を果たす。一旦、単離されると、DNAを発現ベクター中に置いてもよく、それを次に、本来なら免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエローマ細胞などにトランスフェクションする(そのような組み換え宿主細胞においてモノクローナル抗体を合成するために)。抗体をコードするDNAの細菌における組み換え発現に関する概説文献は、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256−262(1993)及びPluckthun,Immunol.Revs.130:151−188(1992)が挙げられる。
さらなる実施形態では、抗体を、McCafferty et al.,Nature,348:552−554(1990)に記載される技術を用いて作製された、抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)には、ファージライブラリーを用いる、それぞれネズミ及びヒト抗体の単離について記載されている。後続の文献は、チェインシャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992))、ならびに、巨大ファージライブラリー構築戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組み換え(Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.,21:2265−2266(1993))について記載している。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離に対する従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替手段である。
また、DNAを、例えば、相同的なネズミ配列の代わりに、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置き換えることによって(米国特許第4,816,567号;Morrison,et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、または、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部もしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって修飾してもよい。典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、または、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換され、ある抗原への特異性を有する1つの抗原結合部位と、別の抗原への特異性を有する別の抗原結合部位と、を含む、キメラ二価抗体が形成される。
本明細書に記載のモノクローナル抗体は一価であってよく、その調製は、当該技術分野において周知である。例えば、1つの方法として、免疫グロブリン軽鎖及び修飾重鎖の組み換え発現が挙げられる。重鎖は、重鎖の架橋を防止するため、Fc領域中の任意の点において一般的に切断される。あるいは、架橋を防止するため、適切なシステイン残基を別のアミノ酸に置換し、または、欠失させてもよい。一価抗体の調製には、インビトロ方法も適している。抗体の断片、特に、Fab断片を産生するための消化は、当該技術分野において公知の常用技術を用いて達成することができる。
キメラまたはハイブリッド抗体も、架橋剤を含むものなどの合成タンパク質化学における公知の方法を用いて、インビトロで調製することができる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築することができる。この目的のために好適な試薬の例としては、イミノチオラート及びメチル−4−メルカプトブチリミダートが挙げられる。
2)ヒト化抗体
抗体は、ヒト化またはヒト抗体をさらに含んでよい。非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合サブ配列)である。ヒト化抗体としては、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基で置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基で置換される。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体または移入されたCDRもしくはフレームワーク配列においても見られない、残基も含んでよい。一般的に、ヒト化抗体は、実質的に全ての少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを含み、全てまたは実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのものと一致し、全てまたは実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むだろう。Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)及びPresta,Curr.Opin.Struct.Biol.2:593−596(1992)。
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野において周知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には「移入」可変ドメインから取り込まれた「移入」残基と呼ばれることが多い。ヒト化は、Winter及び共著者、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534−1536(1988)の方法に従って、つまり、げっ歯類CDRまたはヒト抗体の配列に対応するCDR配列を置き換えることによって、本質的に実施することができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、実質的に完全ではないヒト可変ドメインが、非ヒト種の対応する配列により置換されている。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基及び場合によりいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体の類似部位由来の残基で置換された、ヒト抗体である。
ヒト化抗体の作製に使用される、ヒト可変ドメイン(軽鎖及び重鎖の両方)の選択は、抗原性の低減に非常に重要である。いわゆる「最適フィット」法に従って、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列について、公知のヒト可変ドメイン配列の完全ライブラリーをスクリーニングする。続いて、このげっ歯類に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として認める。Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987)。別の方法は、全ヒト抗体の軽鎖及び重鎖の特定のサブグループのコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体に使用することができる。Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)。
抗体が、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持したままヒト化されることがさらに重要である。この目的を達成するため、好ましい方法に従って、親及びヒト化配列の三次元モデルを用いる親配列及び様々な概念的ヒト化生成物の解析プロセスによって、ヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択した候補免疫グロブリン配列の推定される三次元立体配座構造を示して表示する、コンピュータープログラムが利用することができる。これらの表示を精査すると、候補免疫グロブリン配列の機能におけるその残基の考えられる役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンの抗原結合能に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、標的抗原(複数可)に対する親和性が増大するなど所望の抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接的に、かつ最も実質的に関与する。
種々の形態のヒト化抗体が意図される。例えば、ヒト化抗体は、免疫複合体を生成するために1つ以上の細胞傷害性剤(複数可)と任意に結合する、Fabなどの抗体断片であってよい。あるいは、ヒト化抗体は、無傷IgG1抗体などの無傷抗体であってよい。
いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、抗原に対するドメインの従来の親和性を低下させることなく、かつ異種種に対するその免疫原性を減少させて、修飾、例えば、ヒト化される。例えば、ラマ抗体の抗体可変ドメイン(VHH)のアミノ酸残基を決定してよく、例えば、フレームワーク領域内の1つ以上のラクダ科アミノ酸を、そのポリペプチドが典型的な特性を失うことなく、すなわち、ヒト化が得られるポリペプチドの抗原結合能に顕著な影響を及ぼさずに、ヒトコンセンサス配列中に見られるヒト対応アミノ酸で置き換える。ラクダ科sdAbのヒト化は、単一ポリペプチド鎖中の限られた量のアミノ酸の導入及び突然変異誘発を必要とする。これは、2本鎖、軽鎖と重鎖のアミノ酸変化の導入と、両鎖の集合の保存を必要とする、scFv、Fab’、(Fab’)2及びIgGのヒト化とは対照的である。
3)ヒト抗体
ヒト化の代替として、ヒト抗体を生成することができる。例えば、今では、免疫化によって、内因性免疫グロブリンを産生せずにヒト抗体の完全なレパートリーを産生可能な、トランスジェニック動物(例えば、マウス)の作製が可能である。例えば、キメラ及び生殖系変異マウスの抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ結合型欠失により、内因性抗体産生の完全阻害をもたらすことが記載されている。ヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイをこのような生殖系変異マウスに導入すると、抗原誘発によってヒト抗体が産生する。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993);米国特許第5,591,669号及びWO97/17852を参照されたい。完全ヒトsdAb産生能があるトランスジェニックマウスまたはラットは、当該技術分野において公知である。例えば、US20090307787A1、米国特許第8,754,287号、US20150289489A1、US20100122358A1、及びWO2004049794を参照されたい。
あるいは、ファージディスプレイ技術を用いて、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体及び抗体断片をインビトロで製造することができる。McCafferty et al.,Nature 348:552−553(1990);Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)。この技術によると、抗体Vドメイン遺伝子を、繊維状バクテリオファージ、例えば、M13またはfdのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかに、インフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面上の機能性抗体断片として提示する。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むため、抗体の機能性に基づく選択によって、その特性を提示する抗体をコードする遺伝子も選択する。これにより、ファージは、B細胞の一部の特性を模倣する。ファージディスプレイは、例えば、Johnson,Kevin S,and Chiswell,David J.,Curr.Opin Struct.Biol.3:564−571(1993)に論評されるように、様々な形態で実施することができる。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージディスプレイに使用することができる。Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)は、免疫化マウスの脾臓由来のV遺伝子の小さいランダムコンビナトリアルライブラリーから、多種多様な抗オキサゾロン抗体を単離した。非免疫化ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーを構築でき、多種多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)またはGriffith et al.,EMBO J.12:725−734(1993)に記載される方法に本質的には従って単離することができる。米国特許第5,565,332号及び同第5,573,905号も参照されたい。
Cole et al.,及びBoerner et al.,の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)及びBoerner et al.,J.Immunol.147(1):86−95(1991)。同様に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されている、トランスジェニック動物、例えば、マウスに導入することによって、ヒト抗体を作製することができる。誘発時、遺伝子再配列、集合、及び抗体レパートリーなどの全ての点において、ヒトで見られるものとよく似たヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、ならびに、次の科学文献、すなわち、Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−13(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845−51(1996)、Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996)及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)に記載されている。
最終的に、ヒト抗体を、活性化B細胞によってインビトロで産生することもできる(米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照されたい)。
4)抗体断片
ある特定の実施形態では、全抗体よりも抗体断片、例えば、抗原結合断片を用いることが有利である。小さいサイズの断片は、迅速なクリアランスを可能にし、固形腫瘍へのアクセスを向上につながり得る。
抗体断片の産生のために、様々な技術が開発されている。従来は、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解によって得られた(例えば、Morimoto et al.,J Biochem Biophys.Method.24:107−117(1992);及びBrennan et al.,Science 229:81(1985)を参照されたい)。しかしながら、これらの断片は、今では、組み換え宿主細胞によって直接産生することができる。Fab、Fv及びscFv抗体断片は、全て、E.coli中で発現し、そこから分泌され得るので、大量のこれらの断片を容易に製造することができる。抗体断片は、上記の抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’−SH断片をE.coliから直接回収し、化学的に連結して、F(ab’)2断片を形成することができる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。別のアプローチによれば、F(ab’)2断片を、組み換え宿主細胞培養から直接単離することができる。インビボ半減期が延長したFab及びF(ab’)2は、米国特許第5,869,046号に記載されている。他の実施形態では、選択される抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるような「線状抗体」であってもよい。このような線状抗体断片は、単一特異性または二重特異性であってもよい。
5)多重特異性抗体
第1の抗原結合部分は、二重特異性抗体などの多重特異性抗体を含み得る。二重特異性抗体(BsAb)は、同じまたは別のタンパク質上のものなど、少なくとも2つの異なるエピトープへの結合特異性を有する抗体である。あるいは、標的抗原発現細胞に対する細胞防御機構を集中させ、局在化するために、一方のアームは標的抗原に結合でき、別のアームは、T細胞受容体分子(例えば、CD3)などの白血球上のトリガー分子、または、IgGのFc受容体(FcγR)、例えば、FcγR1(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わせることができる。このような抗体は、完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)由来であってよい。
また、二重特異性抗体は、標的抗原を発現する細胞に細胞傷害性剤を局所化するためにも使用することができる。このような抗体は、所望の抗原に結合する一方のアームと、細胞傷害性剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン−α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサートまたは放射性同位元素ハプテン)に結合する別のアームとを有する。公知の二重特異性抗体の例としては、抗ErbB2/抗FcgRIII(WO96/16673)、抗ErbB2/抗FcgRI(米国特許第5,837,234号)、抗ErbB2/抗CD3(米国特許第5,821,337号)が挙げられる。
二重特異性抗体を作製する方法は、当該技術分野において公知である。完全長二重特異性抗体の従来の製造は、2本の免疫グロブリン重鎖/軽鎖対(この2本鎖は異なる特異性を有する)の共発現に基づくものである。Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の任意の組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種類の異なる抗体分子を含む可能性がある混合物を生成し、これらのうち1種類のみが、正しい二重特異性構造を有する。通常は親和性クロマトグラフィー工程によって行われるが、正しい分子の精製はやや煩雑であり、生成物の収率は低い。類似の手順が、WO93/08829及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655−3659(1991)に開示されている。
異なるアプローチによると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。融合体は、好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリンの重鎖定常ドメインとである。融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む、第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、及び所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、好適な宿主生物に同時トランスフェクトされる。これにより、構築物に使用される3本のポリペプチド鎖の比率が異なると最適な収率が得られる実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に、高い自由度を与える。しかしながら、少なくとも2本のポリペプチド鎖が同じ比率で発現すると高い収率が得られるとき、または、比率が重要ではないときに、2本または3本全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
このアプローチの好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームに、第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームに、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)と、から構成される。この非対称構造によって、二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することで簡便な分離方法を提供するため、不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから所望の二重特異性化合物を分離することを促進することが発見された。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成にさらなる詳細は、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照されたい。
WO96/27011または米国特許第5,731,168号に記載の他の方法によると、一対の抗体分子間の境界部を遺伝子操作し、組み換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大化することができる。好ましい境界部は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の境界部の1つ以上の小型アミノ酸側鎖を、より大型の側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)に置換する。第2の抗体分子の境界部上に、大型アミノ酸側鎖をより小さいもの(例えば、アラニンまたはスレオニン)と置換することによって、大側鎖(複数可)と同一または類似の大きさの補完「空洞部」が形成される。これは、ホモ二量体などの別の不要な最終生成物よりも、ヘテロ二量体の収率を増加させる仕組みを提供する。
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術は、文献に記載されている。例えば、化学的結合を用いて二重特異性抗体を調製することができる。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、無傷抗体がタンパク質分解を受けて切断され、F(ab’)2断片を生じる手順について記載している。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ素ナトリウムの存在下で還元され、近接したジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防止する。次に、生成されたFab’断片をチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換する。その後、Fab’−TNB誘導体の1つをFab’−TNB誘導体に再変換して、二重特異性抗体を形成する。作製された二重特異性抗体を、酵素の選択的固定の薬剤として使用することができる。
Fab’断片は、大腸菌から直接回収でき、化学的に結合させて、二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby et al.,J.Exp.Med.175:217−225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の作製について記載している。各Fab’断片を、E.coliから別々に分泌させ、インビトロで化学的結合させて、二重特異性抗体を形成した。このように形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合することができると共に、ヒトの乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解作用を引き起こすことができた。
二価抗体断片を、組み換え細胞培養から直接作製し、単離する様々な技術についても説明されている。例えば、二価のヘテロ二量体は、ロイシンジッパーを用いて産生されている。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJunタンパク質のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結した。抗体のホモ二量体を、ヒンジ領域で還元して単量体を形成し、その後再酸化して、抗体のヘテロ二量体を形成した。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)によって説明される「ダイアボディ」技術は、二重特異性/二価抗体断片の作製の別の仕組みを提供している。この断片は、同一鎖上で2つのドメイン間に対形成させるには短すぎるリンカーによって、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、一方の断片のVH及びVLドメインが、別の断片の相補的なVL及びVHドメインと対形成させられることによって、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(scFv)二量体を使用することによって、二重特異性/二価抗体断片を作製する別の戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい。
3価以上の抗体が意図される。例えば、三重特異性抗体を調製してよい。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。
例示的な二重特異性抗体は、所与の分子上の2の異なるエピトープに結合し得る。あるいは、特定のタンパク質を発現している細胞に細胞防御機構を集中させるために、抗タンパク質アームは、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28またはB7)などの白血球上のトリガー分子、または、IgGのFc受容体(FcγR)、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)に結合するアームと結合することができる。また、二重特異性抗体は、特定のタンパク質を発現する細胞に細胞傷害性剤を局所化するためにも使用することができる。このような抗体は、タンパク質結合アームと、細胞傷害性剤や放射性核種キレート剤、例えば、EOTUBE、DPTA、DOTAまたはTETAに結合するアームと、を有する。別の目的の二重特異性抗体は、目的のタンパク質に結合し、組織因子(TF)にさらに結合する。
6)多価抗体
第1の抗原結合部分は、多価抗体を含み得る。多価抗体は、その抗体が結合する抗原を発現する細胞によって、二価抗体よりも速く内部移行(及び/または分解)され得る。本出願のMABPにおいて第1の抗原結合部分として使用される抗体は、3つ以上の抗原結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外)(例えば、四価抗体)であってよく、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組み換え発現によって容易に製造することができる。多価抗体は、二量体化ドメイン及び3つ以上の抗原結合部位を含んでよい。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む(またはからなる)。この状況では、抗体は、Fc領域と、Fc領域のアミノ末端にある3つ以上の抗原結合部位とを含む。本明細書の好ましい多価抗体は、3〜約8つ、ただし好ましくは4つの抗原結合部位を含む(またはからなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、このときポリペプチド鎖(複数可)は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VD1−(X1)n−VD2−(X2)n−Fcを含んでよく、このときVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1及びX2はアミノ酸またはポリペプチドを表し、nは0または1である。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VH−CH1−可動性リンカー−VH−CH1−Fc領域鎖、または、VH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含んでよい。本明細書の多価抗体は、好ましくは、少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに含む。本明細書の多価抗体は、例えば、約2〜約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含んでよい。本明細書で意図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、所望により、CLドメインをさらに含む。
7)ヘテロ共役抗体
ヘテロ共役抗体を、本出願のMABPの第1の抗原結合部分として用いることもできる。ヘテロ共役抗体は、共有結合した2つの抗体からなる。例えば、ヘテロ共役体中の一方の抗体をアビジンに、もう一方をビオチンに結合することができる。このような抗体は、例えば、HIV感染を治療するため、不要な細胞に対する免疫系細胞を標的化のために提案されている(米国特許第4,676,980号)。WO91/00360、WO92/200373、及びEP0308936。抗体が、架橋剤を含むものなどの合成タンパク質化学における既知の方法を用いて、インビトロで調製することができることが意図される。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築することができる。この目的のための好適な試薬の例としては、イミノチオオレート及びメチル−4−メルカプトブチルイミド、及び、例えば、米国特許第4,676,980号に開示されるものが挙げられる。ヘテロ共役抗体は、任意の適当な架橋法を用いて作製することができる。好適な架橋剤は、当該技術分野において周知であり、多くの架橋技術と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
8)エフェクター機能操作
本出願のMABPを、Fcエフェクター機能に関して修飾する、例えば、抗体の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)を変更する(例えば、増強または排除する)ことが望ましい場合がある。好ましい実施形態では、MABPのFcエフェクター機能を低減または排除する。これは、抗体のFc領域に1つ以上のアミノ酸置換を導入することによって達成され得る。あるいはまたはさらに、システイン残基(複数可)をFc領域に導入することにより、この領域での鎖間ジスルフィド結合形成を可能にすることができる。このように生成されたホモ二量体MABPは、内部移行能が向上している、及び/または、補体媒介性細胞殺滅及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)が増加していることがある。Caron et al.,J.Exp Med.176:1191−1195(1992)及びShopes,B.J.Immunol.148:2918−2922(1992)を参照されたい。向上した抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体は、Wolff et al.,Cancer Research 53:2560−2565(1993)に記載されるヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製することもできる。あるいは、二重Fc領域を有し、それによって補体溶解及びADCC能が増強された抗体を操作することができる。Stevenson et al.,Anti−Cancer Drug Design 3:219−230(1989)を参照されたい。
抗体の血清半減期を増加させるに、例えば、米国特許第5,739,277号に記載されるように、MABP内にサルベージ受容体結合エピトープを組み込むことができる。本明細書で使用する場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープであって、IgG分子のインビボ血清半減期に延長に貢献するものを指す。
9)他のアミノ酸配列修飾
本明細書に記載のMABPの単鎖抗体または抗体成分などの、抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/またはその他生物学的特性を改善するのに望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体核酸内に適切なヌクレオチド変化を導入することにより、またはペプチド合成により調製される。このような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の、欠失及び/または挿入及び/または置換が挙げられる。最終構築物が所望の特性を有することを条件として、欠失、挿入、及び置換のいずれかの組み合わせを施して最終構築物に到達させる。アミノ酸変化により、グリコシル化部位の数や位置の変更など、抗体の翻訳後工程も変更することができる。
突然変異誘発に好ましい位置として抗体の特定の残基または領域を同定する有用な方法は、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれ、Cunningham and Wells Science,244:1081−1085(1989)に記載されている。ここでは、標的残基の1つまたは群の残基が同定され(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、及びグルタミン酸などの荷電残基)、中性または負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)で置換されて、アミノ酸抗原の相互作用に影響を及ぼす。その後、置換に対する機能感受性を呈するアミノ酸位置は、置換部位に、またはそれに対してさらなるまたは別の変異を導入することによって洗練される。そのため、アミノ酸配列変異を導入する部位が予め定められる一方で、突然変異自体の性質を予め定める必要がない。例えば、ある部位における突然変異の性能を分析するため、アラニンスキャニングまたはランダム突然変異誘発を標的コドンまたは領域にて実施し、発現した抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入としては、1つの残基から100以上の残基を含むポリペプチドまで長さに幅がある、アミノ及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに、単一もしくは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端がメチオニル残基である抗体、または、細胞傷害性ポリペプチドに融合した抗体が挙げられる。抗体分子のその他の挿入変異体としては、酵素に対する抗体のN−またはC末端への融合(例えば、ADEPT向け)または、抗体の血清半減期を延長するポリペプチドが挙げられる。
別の種類の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子内に、異なる残基によって置換された少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換型突然変異誘発に最も所望される部位として超可変領域が挙げられるが、FR変化も想定される。保存的置換を、「好ましい置換」という見出しで以下の表2に示す。このような置換が生物活性の変化をもたらす場合、表2に「例示的な置換」と示されているか、またはアミノ酸分類に関して以下にさらに記載されているように、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングすることができる。
抗体の生物学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくはらせん構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または、(c)側鎖の大きさ、を維持することについて、その効果が顕著に異なる置換を選択することによって達成される。自然に存在する残基を、共通する側鎖特性に基づいて分類する。
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン
(2)中性親水性:システイン、セリン、スレオニン
(3)酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸
(4)塩基性:アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、アルギニン
(5)鎖の向きに影響を与える残基:グリシン、プロリン、及び
(6)芳香族:トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン。
非保存的置換は、これらの分類のうち1つを別の分類のものに交換することを伴う。
抗体の正しい立体配座の維持に関与していない任意のシステイン残基を、一般的にはセリンと置換し、分子の酸化安定性を向上し、異常な架橋を防ぐこともできる。反対に、システイン結合(複数可)を抗体に加え、その安定性を向上することもできる(特に、抗体がFv断片などの抗体断片のとき)。
特に好ましい置換変異体の種類は、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般的に、結果として得られ、さらなる開発のために選択された変異体(複数可)は、元になった親抗体に対して改善された生物学的特性を有するであろう。このような置換変異体を生成するための簡便な方法は、ファージディスプレイを用いる親和性成熟を含む。簡潔に言うと、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7部位)を変異させ、各部位において可能な全てのアミノ置換を生じさせる。このようにして生成された抗体変異体を、各粒子内にパッケージングされたM13のgene III生成物への融合体として、繊維状ファージ粒子から一価でディスプレイする。次に、このファージディスプレイ変異体を、本明細書に開示されるように、生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。変異に関する超可変領域部位の候補を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発を行い、抗原結合に大きく寄与する超可変領域の残基を同定することができる。あるいは、または追加的に、抗原とその標的(例えば、PD−L1、B7.1)との間の接点を特定するため、抗原抗体複合体の結晶構造分析が有用な場合がある。このような接触残基及び隣接する残基は、本明細書に詳述される技術による置換の候補である。このような変異体が生成されると、一連の変異体を本明細書に記載のスクリーニングにかけ、1つ以上の関連アッセイで優れた特性を有する抗体を、さらなる開発のために選択することができる。
抗体の別の種類のアミノ酸変異体は、抗体の従来のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、抗体内にある1つ以上の炭水化物部分の欠損、及び/または、その抗体に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。
抗体のグリコシル化は、典型的には、N−結合またはO−結合のいずれかである。N−結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付加を意味する。アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニンのトリペプチド配列(このとき、Xはプロリン以外のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付加のための認識配列である。そのため、ポリペプチド中にこれらトリペプチド配列のいずれかが存在することで、潜在的グリコシル化部位をもたらす。O−結合型グリコシル化は、糖であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうち1つへの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンの付加を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンが用いられる場合もある。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、上記トリペプチド配列のうちの1つ以上を含むように、アミノ酸配列を変更することにより簡便に達成される(N−結合型グリコシル化部位)。変更は、元の抗体の配列に1つ以上のセリンまたはスレオニン残基を付加、またはこれで置換することによっても達成することができる(O−結合型グリコシル化部位)。
本出願のMABPに対するアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該技術分野において既知の様々な方法によって調製される。これらの方法としては、天然源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)、または、先に調製された変異体もしくは非変異体のオリゴヌクレオチド媒介性(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、もしくはカセット突然変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
10)他の修飾
本出願のMABPをさらに修飾し、当該技術分野において既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含有することができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適した部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロ−ル)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水中安定性から、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であってよく、分枝型または非分枝型であってよい。抗体に付加されたポリマー数は可変であってよく、2種類以上のポリマーが付加されている場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善する抗体の特定の性質または機能が挙げられるが、これらに限定されない点、抗体誘導体を特定の条件下での治療に使用するか、などに基づいて決定することができる。かかる技術及び他の好適な処方は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Alfonso Gennaro,Ed.,Philadelphia College of Pharmacy and Science(2000)に開示されている。
VI.キット及び製造品
本明細書に記載のMABPのうちいずれかを含む、キット、単位用量製品、及び製造品がさらに提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物のうち任意の1つを含み、好ましくは使用説明書を提供するキットが提供される。
本出願のキットは、適当に包装されている。適当な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、可動性包装(例えば、密封マイラーまたはビニール袋)などがあるが、これらに限定されない。キットは、例えば、緩衝剤及び解説情報などの追加の成分を適宜提供する。従って、本出願は、バイアル(例えば、密封バイアル)、ボトル、ジャー、可動性包装などを含む製造品も提供する。
製造品は、容器、及び容器上のまたは容器に付随するラベルまたは添付文書を含み得る。適当な容器には、例えば、瓶、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど種々の材料で形成され得る。一般的に、容器は、本明細書に記載の疾患または疾病(例えば、がん)を治療するのに有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ、または皮下注射針で突き刺すことができる栓を有するバイアルであってよい)。ラベルまたは添付文書は、その組成物が個体における特定の状態の治療に使用されることを示す。ラベルまたは添付文書は、組成物を個体に投与するための説明書をさらに含むであろう。ラベルは、再構成及び/または使用のための指示を示し得る。医薬組成物を保持する容器は、再構成製剤の反復投与(例えば、2〜6回投与)を可能にする複数回使用バイアルであり得る。添付文書は、そのような治療用製品の使用に関する適応、用途、投与量、投与、禁忌及び/または警告についての情報を含む、治療用製品の市販包装に通例含まれる指示書を指す。さらに、製造品は、静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液などの医薬的に許容可能な緩衝剤を含む、第2の容器をさらに含み得る。商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料、例えば、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針及びシリンジをさらに含み得る。
キットまたは製造品は、複数単位用量の医薬組成物及び使用説明書を含んでもよく、薬局、例えば、病院薬局及び調剤薬局で貯蔵及び使用するために十分な量で包装されている。
以下の実施例は、完全に本発明の例であることを意図しており、したがって決して本発明を限定すると考えられるべきではない。以下の実施例及び詳細な説明は、限定としてではなく例証として提供される。
実施例1:PD−1/TIGIT/LAG−3三重特異性抗原結合タンパク質の構築及び発現
この実施例では、例示のPD−1/TIGIT/LAG−3三重特異性抗原結合タンパク質(TABP)の構築及び発現について説明する。それぞれ2本のポリペプチド鎖を以下のように含む、10類の構築物(TPTL11〜TPTL20)を設計して発現させた。抗PD−1抗体は、ペンブロリズマブ由来である。抗TIGIT VHHは、AS19584VH28(配列番号31)由来である。抗LAG−3 VHHは、VHH2(配列番号32)由来である。
TPTL11:第1のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の重鎖を含み;及び第2のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の軽鎖を含む。図1を参照されたい。
TPTL12:第1のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の重鎖を含み;及び第2のポリペプチドは、抗PD−1抗体の軽鎖を含む。図2を参照されたい。
TPTL13:第1のポリペプチドは、抗PD−1抗体の重鎖を含み;及び第2のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の軽鎖を含む。図3を参照されたい。
TPTL14:第1のポリペプチドは、抗PD−1抗体の重鎖を含み;及び第2のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー、及び抗LAG−3 VHHを含む。図4を参照されたい。
TPTL15:第1のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の重鎖を含み;及び第2のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー、及び抗LAG−3 VHHを含む。図5を参照されたい。
TPTL16:第1のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー、及び抗LAG−3 VHHを含み;及び第2のポリペプチドは、抗PD−1抗体の軽鎖を含む。図6を参照されたい。
TPTL17:第1のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー、及び抗LAG−3 VHHを含み;及び第2のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗TIGIT VHH、ペプチドリンカー、及び抗PD−1抗体の軽鎖を含む。図7を参照されたい。
TPTL18:第1のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー、及び抗TIGIT VHHを含み;及び第2のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー及び抗LAG−3 VHHを含む。図8を参照されたい。
TPTL19:第1のポリペプチドは、抗PD−1抗体の重鎖を含み;及び第2のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗PD−1抗体の軽鎖、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー及び抗TIGIT VHHを含む。図9を参照されたい。
TPTL20:第1のポリペプチドは、N末端からC末端において、抗PD−1抗体の重鎖、ペプチドリンカー、抗LAG−3 VHH、ペプチドリンカー、及び抗TIGIT VHHを含み;及び第2のポリペプチドは、抗PD−1抗体の軽鎖を含む。図10を参照されたい。
各TABPは、第1のポリペプチドの2本鎖及び第2のポリペプチドの2本鎖からなる。S228P突然変異をIgG4 Fc領域に導入して、Fabアーム交換を阻害した。さらに、TABPのFc領域は、異なるアイソタイプ、例えば、IgG1アイソタイプのIgG Fcと交換してもよい。IgG4アイソタイプのFc領域は、FcγRへの結合親和性が低いため、PD−1、TIGIT、またはLAG−3陽性細胞のADCC介在性の枯渇を避けるために、いくつかの実施形態ではIgG1アイソタイプより好ましい。
10個のPD−1/TIGIT/LAG−3 TABP構築物を発現するCHO−K1細胞の各々を生成した。CHO−K1細胞を使用して、TABPを発現させて、プロテインAアガロース樹脂を含有するカラムに続くサイズ排除カラムを通じたクロマトグラフィーによって精製した。10個のTABP(TPTL11〜TPTL20)の産生に関するデータを図11にまとめる。例示のTABPのアミノ酸配列を表3に提供する。
実施例2:PD−1/TIGIT/LAG−3 TABPの結合親和性
精製後、TABPの結合親和性パラメーターを測定し、対応する単一特異性抗体(例えば、抗PD−1抗体ペンブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))、抗TIGIT AS19584VH28 HCAb(配列番号29)、または抗LAG−3 VHH2 HCAb(配列番号30))と比較した。
簡単に言えば、PD−1への結合親和性を決定するため、各TABPまたはペンブロリズマブを、抗ヒトFc抗体を介して、BIACORE(登録商標)チップ上に捕捉し、His標識PD−1タンパク質を、5、10、20、40、80、160、320、及び640nMのそれぞれの濃度で、被験物質としてチップ上に流した。異なる被検物質濃度での結合曲線を使用して、動態パラメーターkon、koff、及びKdを算出した(図12A〜12K)。
TIGITへの結合親和性を決定するため、各TABPまたはAS19584VH28 HCAbを、抗ヒトFc抗体を介して、BIACORE(登録商標)チップ上に捕捉し、His標識TIGITタンパク質を、1.25、2.5、5、10、20、40、80、及び160nMのそれぞれの濃度で、被験物質としてチップ上に流した。異なる被検物質濃度での結合曲線を使用して、動態パラメーターkon、koff、及びKdを算出した(図13A〜13K)。
LAG−3への結合親和性を決定するため、各TABPまたはVHH2 HCAbをBIACORE(登録商標)チップ上に固定化し、His標識LAG−3タンパク質を、1.56、3.125、6.25、12.5、25及び50nMのそれぞれの濃度で、被験物質としてチップ上に流した。異なる被検物質濃度での結合曲線を使用して、動態パラメーターkon、koff、及びKdを算出した(図14A〜14K)。親和性として示す算出したKdを図15に記載した。親抗体と比較して、TPTL−11〜TPTL−17は、キイトルーダに匹敵する親和性を有した一方、ほとんどのTABPのTIGIT及びLAG−3への親和性は、4倍以内である。
実施例3:PD−1/TIGIT/LAG−3 TABPのFACSに基づく特徴付け
実施例1で調製したPD−1/TIGIT/LAG−3 TABPを、以下に記載のFACS系アッセイで試験し、PD−1、TIGIT及びLAG−3に対するそれらの標的結合能力を評価した。
標的結合
CHO細胞に発現したヒトPD−1へのPD−1/TIGIT/LAG−3 TABP(TPTL11〜TPTL20)の結合を、FACS系アッセイを用いて測定した。ヒトPD−1を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、96ウェルプレートで、様々な濃度の各TABP、ペンブロリズマブ(陽性対照としてキイトルーダ(登録商標))、またはヒトIgG(陰性対照として)と混合した。混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次いで、二次抗体として使用されるFITC共役抗ヒトFc抗体(Jackson ImmunoResearch)を加え、混合物を室温で15分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で再度洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software,San Diego,CA)で解析し、EC50値を算出した。図15に示すように、FACS結合アッセイにより、TPTL11〜TPTL20が、ペンブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))に匹敵するPD−1結合能力を呈したことが示され、EC50値は、4倍以内であった。
CHO細胞に発現したヒトTIGITへのPD−1/TIGIT/LAG−3 TABP(TPTL11〜TPTL20)の結合を、FACS系アッセイを用いて測定した。ヒトTIGITを発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、96ウェルプレートで、様々な濃度の各TABP、AS19584VH28 HCAb(陽性対照として)、またはヒトIgG(陰性対照として)と混合した。混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次いで、二次抗体として使用されるFITC共役抗ヒトFc抗体(Jackson ImmunoResearch)を加え、混合物を室温で15分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で再度洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software,San Diego,CA)で解析し、EC50値を算出した。図15に示すように、FACS結合アッセイにより、TPTL11〜TPTL20が、AS19584VH28 HCAbに匹敵するTIGIT結合能力を呈したことが示され、EC50値は、2倍以内であった。
CHO細胞に発現したヒトLAG−3へのPD−1/TIGIT/LAG−3 TABP(TPTL11〜TPTL20)の結合を、FACS系アッセイを用いて測定した。ヒトLAG−3を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、96ウェルプレートで、様々な濃度の各TABP、VHH2 HCAb(陽性対照として)、またはヒトIgG(陰性対照として)と混合した。混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次いで、二次抗体として使用されるFITC共役抗ヒトFc抗体(Jackson ImmunoResearch)を加え、室温で15分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で再度洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software,San Diego,CA)で解析し、EC50値を算出した。図15に示すように、FACS結合アッセイにより、ほとんどのTABP(TPTL11〜TPTL13、TPTL15〜TPTL18、及びTPTL20)が、VHH2 HCAbに匹敵するLAG−3結合能力を呈したことが示され、EC50値は、4倍以内であった。LAG−3へのTPTL14及びTPTL19の結合親和性は、VHH2 HCAbよりも5倍弱かった。
リガンド結合の阻害
また、TABPによるリガンド結合の阻害をFACSアッセイによって評価した。TABP(TPTL11〜TPTL20)によるPD−1へのPD−L1及びPD−L2結合の阻害を評価するため、ヒトPD−1を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、様々な濃度の各TABP、及びビオチン標識を有する定常濃度のhPD−L1 FcまたはPD−L2 Fc融合タンパク質と混合した。各混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次いで、PE/Cy5ストレプトアビジン二次抗体を各混合物に加え、室温で15分間インキュベートした。その後、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software,San Diego,CA)で解析し、IC50値を算出した。図15に示すように、競合アッセイにより、PD−1/PD−L1及びPD−1/PD−L2相互作用に対する、低濃度(1〜10μg/mL)でのTABPの効率的阻害能が示された。10個全てのTABPは、同程度のリガンド遮断活性を有し、IC50値は、3倍以内であった。
TABP(TPTL11〜TPTL20)によるTIGITへのCD155結合の阻害を評価するため、ヒトTIGIT細胞を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、様々な濃度の各TABP、及びビオチン標識を有する定常濃度のhCD155 Fc融合タンパク質と混合した。各混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次いで、PE/Cy5ストレプトアビジン二次抗体を各混合物に加え、室温で15分間インキュベートした。その後、細胞をFACS緩衝液で再度洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software,San Diego,CA)で解析し、IC50値を算出した。図15に示すように、競合アッセイにより、TIGIT−CD155相互作用に対する、低濃度(1〜10μg/mL)でのTABPの効率的阻害能が示された。10個全てのTABPは、同程度のリガンド遮断活性を有し、IC50値は、3倍以内であった。TPTL11〜TPTL17は、TPTL18〜TPTL20よりも強い阻害活性を呈し、抗PD−1抗体の重鎖のC末端への融合が、抗TIGIT sdAbのその標的への結合を阻害し得ることを示唆する。
TABP(TPTL11〜TPTL20)によるLAG−3リガンド結合の阻害を評価するため、ヒトTIGITリガンド(MHCクラスII)を発現しているA375細胞を、接着培養フラスコから剥がし、様々な濃度の各TABP、及びビオチン標識を有する定常濃度のLAG−3 Fc融合タンパク質と混合した。各混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次いで、PE/Cy5ストレプトアビジン二次抗体を各混合物に加え、室温で15分間インキュベートした。その後、細胞をFACS緩衝液で再度洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software,San Diego,CA)で解析し、IC50値を算出した。図15に示すように、競合アッセイにより、LAG−3−MHC II相互作用に対する、低濃度(1〜10μg/mL)でのTABPの効率的阻害能が示された。TPTL12、TPTL17、及びTPTL18は、LAG−3リガンド結合に対する阻害活性の低下を示した。
実施例4:PD−1/TIGIT/LAG−3 TABPの発展性
実施例1で調製したPD−1/TIGIT/LAG−3 TABPを、以下に記載する発展性アッセイで試験して、それらの安定性を評価した。
開始凝集温度(Tagg)
5mg/mLの試料について、約0.75℃の温度間隔で25℃〜80℃の温度勾配を、DynaPro NanoStar(Wyatt,Santa Barbara,California)を用いて行った。20μLの各タンパク質試料を、Wyatt使い捨てキュベットに加え、その後、蒸発を防ぐために試料を10μLの鉱物油(Sigma 8410)でカバーした。測定は3回行い(各測定当たり5回取得)、各タンパク質試料を平均した。
選択された温度間隔での実験中、熱走査速度は、1.5℃/分と算出された。目標温度である80℃に達するまで熱を連続的に加えながら(約40分)、各試料を測定した。凝集温度(Tagg)を、DYNAMICS 7.6.0.48ソフトウェア(Wyatt,Santa Barbara,California)におけるオンセット分析法を用いて分析した。
図16に示すように、TPTL11、TPTL19、及びTPTL20のTaggは、残りのTABPよりもそれぞれ低く、これら3つのTABPが他のものよりも不安定であることを示唆している。
凍結融解プロセス(5回の凍結融解サイクル)
PD−1/TIGIT/LAG−3 TABP(TPTL11〜TPTL20)を、5回反復の凍結融解サイクルで試験した。特殊緩衝液(pH6.0、4%スクロース、50mMヒスチジン、50mMアルギニン)で、各試料を50mg/mlに濃縮した後、試料を2部で調製し、一方を対照として−80℃で凍結し、他方を5回の凍結融解サイクルで試験し;凍結融解サイクルのラウンドごとに、凍結を−80℃で少なくとも3時間実施した後、室温で少なくとも2時間融解し、−80℃に再凍結した;
5回の凍結融解サイクル後、試料をSEC−HPLCで評価した。凍結融解サイクルを施した試料の主ピーク高さを、対照1に対して算出し、得られた比は回収率であった。90%を上回る回収率は、凍結融解サイクル基準を通過したと考えた。図17に示すように、TPTL18、TPTL19、及びTPTL20の回収率は、90%未満であった。TPTL11〜TPTL17の回収率は、90%より大きかった。
ヒト血清安定性
TPTL11〜TPTL17 TABPを選択して、ヒト血清安定性評価を行った。試験される抗体を、50%ヒト血清中で0.5mg/mlの濃度に調製した。その後、溶液を等分して、0日目、1日目、7日目及び14日目にそれぞれ37℃でインキュベートし、インキュベーションが完了すると、各アリコートを−20℃で保管した。
全試料が100%活性対照として0日目試料で準備できた際に、各試料の結合活性(EC50値)をElisaによって測定した。この実験では、ヒトTIGIT、ヒトLAG−3及びヒトPD−1に対するTABP11〜TABP17 TABPの結合活性を決定した。ヒトTIGIT、ヒトLAG−3、及びヒトPD−1の抗原タンパク質を、96ウェルプレート上に2μg/mlで一晩被覆した。遮断後、連続濃度のTPTL11〜TPTL17 TABPを、被覆ウェルに加えた。濃度は、3倍希釈で5μg/mlから開始した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software,San Diego,CA)で解析し、EC50値を算出した。0日目の全試料のEC50値を100%として設定した。1日目、7日目、及び14日目のEC50値の変化は、(1/7/14日目のEC50−0日目のEC50)/0日目のEC50によって決定した。図18Aは、TABP11〜TABP17 TABPのヒトTIGITへの結合活性を示す。図18Bは、TABP11〜TABP17 TABPのヒトLAG−3への結合活性を示す。図18Cは、TABP11〜TABP17 TABPのヒトPD−1への結合活性を示す。図に示すように、TPTL−12、TPTL−15、及びTPTL−16は、陽性対照抗体AS19584VH28 HCAbに匹敵する、ヒトTIGITへの結合を有する。TPTL−14、TPTL−15、及びTPTL−17は、陽性対照抗体 VHH2 HCAbに匹敵する、ヒトLAG−3への結合を有する。TPTL−13、TPTL−14、TPTL−15、TPTL−16、及びTPTL−17は、陽性対照抗体キイトルーダバイオシミラーに匹敵する、ヒトPD−1への結合を有する。
本開示全体の全ての引用文献は、参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。
配列表
配列番号1 GGGGSGGGS
配列番号2 GGGGSGGGGSGGGGS
配列番号3 EPKSSDKTHTSPPSP
配列番号4 (GS)
n
配列番号5 (GSGGS)
n
配列番号6 (GGGS)
n
配列番号7 EPKSCDKTHTCPPCP
配列番号8 キイトルーダ重鎖
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
配列番号9 キイトルーダ軽鎖
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLESGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号10 キイトルーダVHドメイン
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYWGQGTTVTVSS
配列番号11 キイトルーダVLドメイン
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLESGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKR
配列番号12 ヒトPD−1
PGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLVVGVVGGLLGSLVLLVWVLAVICSRAARGTIGARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPVPCVPEQTEYATIVFPSGMGTSSPARRGSADGPRSAQPLRPEDGHCSWPL
配列番号13 ヒトTIGIT
MMTGTIETTGNISAEKGGSIILQCHLSSTTAQVTQVNWEQQDQLLAICNADLGWHISPSFKDRVAPGPGLGLTLQSLTVNDTGEYFCIYHTYPDGTYTGRIFLEVLESSVAEHGARFQIPLLGAMAATLVVICTAVIVVVALTRKKKALRIHSVEGDLRRKSAGQEEWSPSAPSPPGSCVQAEAAPAGLCGEQRGEDCAELHDYFNVLSYRSLGNCSFFTETG
配列番号14 ヒトLAG−3
VPVVWAQEGAPAQLPCSPTIPLQDLSLLRRAGVTWQHQPDSGPPAAAPGHPLAPGPHPAAPSSWGPRPRRYTVLSVGPGGLRSGRLPLQPRVQLDERGRQRGDFSLWLRPARRADAGEYRAAVHLRDRALSCRLRLRLGQASMTASPPGSLRASDWVILNCSFSRPDRPASVHWFRNRGQGRVPVRESPHHHLAESFLFLPQVSPMDSGPWGCILTYRDGFNVSIMYNLTVLGLEPPTPLTVYAGAGSRVGLPCRLPAGVGTRSFLTAKWTPPGGGPDLLVTGDNGDFTLRLEDVSQAQAGTYTCHIHLQEQQLNATVTLAIITVTPKSFGSPGSLGKLLCEVTPVSGQERFVWSSLDTPSQRSFSGPWLEAQEAQLLSQPWQCQLYQGERLLGAAVYFTELSSPGAQRSGRAPGALPAGHLLLFLILGVLSLLLLVTGAFGFHLWRRQWRPRRFSALEQGIHPPQAQSKIEELEQEPEPEPEPEPEPEPEPEPEQL
配列番号29 AS19584VH28 HCAb
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYKYGVYSMGWFRQAPGKGLEGVSAICSGGRTTYSDSVKGRFTISRDNSNQILYLQMNSLRAEDTAVYYCAARPLWTGDCDLSSSWYKTWGQGTLVTVSSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
配列番号30 VHH2 HCAb
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTVSSYCMGWFRQAPGKGREGVSAIDSDGSVSYADSVKGRFTISKDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYFCAADLCWVDQDQGEYNTWGQGTLVTVSSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
配列番号31 AS19584VH28 sdAb
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYKYGVYSMGWFRQAPGKGLEGVSAICSGGRTTYSDSVKGRFTISRDNSNQILYLQMNSLRAEDTAVYYCAARPLWTGDCDLSSSWYKTWGQGTLVTVSS
配列番号32 VHH2 sdAb
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTVSSYCMGWFRQAPGKGREGVSAIDSDGSVSYADSVKGRFTISKDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYFCAADLCWVDQDQGEYNTWGQGTLVTVSS