JP2021196239A - ひずみ測定装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラム - Google Patents

ひずみ測定装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】測定者に左右されることなく、正確性、信頼性の高い測定値を得る。【解決手段】ひずみ測定装置1は、レイリー後方散乱光に基づくひずみであって、光情報に含まれたレイリーひずみ値を算出するレイリー算出部33と、ブリルアン後方散乱光に基づくひずみであって、光情報に含まれたブリルアンひずみ値を算出するブリルアン算出部34と、光情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づき、レイリーひずみ値を評価するレイリー評価部35と、レイリー評価部35の評価に基づいて、光ファイバケーブル10に生じたひずみの大きさを示す値としてレイリーひずみ値又はブリルアンひずみ値を採用する判定部36と、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、ひずみ測定装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムに関する。
光ファイバケーブルを用いて測定対象物のひずみを測定する技術が知られている。ひずみが生じた光ファイバケーブルに測定光を入射すると、ひずみが生じた位置において散乱光が生じる。散乱光には、いくつかの態様がある。散乱光のひとつに、ブリルアン後方散乱光がある。特許文献1及び特許文献2は、ブリルアン後方散乱光を利用して光ファイバケーブルに生じたひずみを測定する技術を開示する。
特開2018−28443号公報 特開2017−120210号公報
光ファイバケーブルの内部で生じる散乱光には、上記のブリルアン後方散乱光の他に、レイリー後方散乱光がある。ひずみを測定する場面では、実際に生じたひずみの大きさを示す値として、ブリルアン後方散乱光を利用する方が正確である場合もあるし、レイリー後方散乱光を利用する方が正確である場合もある。測定の場面に応じていずれを選択すればよいかは、実際の手法として確立されていない。そうすると、測定者によって、選択にばらつきが生じることが予想される。その結果、光ファイバケーブルを利用したひずみ測定の正確性、信頼性を失することになる。
そこで、本発明は、測定者に左右されることなく、正確性、信頼性の高い測定値を得ることが可能なひずみ測定装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムを提供する。
本発明の一形態は、測定対象物に設けられる光ファイバケーブルと、光ファイバケーブルに測定光を入射する光源部と、光源部が入射した測定光に応じた後方散乱光に関する光情報を得る受光部と、を備えるひずみを測定するひずみ測定装置であって、レイリー後方散乱光に基づくひずみであって、光情報に含まれたレイリーひずみ値を算出するレイリー算出部と、ブリルアン後方散乱光に基づくひずみであって、光情報に含まれたブリルアンひずみ値を算出するブリルアン算出部と、光情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づき、レイリーひずみ値を評価するレイリー評価部と、レイリー評価部の評価に基づいて、光ファイバケーブルに生じたひずみの大きさを示す値としてレイリーひずみ値又はブリルアンひずみ値を採用する判定部と、を備える。
このひずみ測定装置は、測定光の入射に応じて光ファイバケーブルに発生するレイリー後方散乱光又はブリルアン後方散乱光のいずれか一方を利用して、光ファイバケーブルに発生したひずみを得る。ここで、ひずみ測定装置は、レイリー後方散乱光に基づき、レイリーひずみ値を評価する。そして、評価の結果を用いて、レイリーひずみ値又はブリルアンひずみ値を選択する。そうすると、ひずみの選択の結果が、測定者に左右されることがない。その結果、正確性、信頼性の高い測定値を得ることができる。
一形態において、光情報は、光ファイバケーブルの互いに異なる複数の位置ごとに取得され、レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、複数の位置ごとにレイリー評価値を算出し、判定部は、複数の位置ごとにレイリーひずみ値を採用するか否かを判定してもよい。この構成によれば、光ファイバケーブルの全体においてひずみ値を得ることができる。
一形態において、レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、レイリーひずみ値とブリルアンひずみ値との差分をレイリー評価値として算出してもよい。この構成によっても、レイリーひずみ値を好適に評価することができる。
一形態において、レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、レイリーひずみ値とブリルアンひずみ値と、の相関係数をレイリー評価値として算出してもよい。この構成によっても、レイリーひずみ値を好適に評価することができる。
一形態において、レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、レイリーひずみ値の絶対値をレイリー評価値として算出してもよい。この構成によれば、レイリーひずみ値を好適に評価することができる。
一形態において、レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、第1のタイミングに対応するレイリーひずみ値と、第1のタイミングとは異なる第2のタイミングに対応するレイリーひずみ値と、の差分をレイリー評価値として算出してもよい。この構成によっても、レイリーひずみ値を好適に評価することができる。
一形態において、光情報は、第3のタイミングで取得された第3の光情報と、第3のタイミングとは異なる第4のタイミングで取得された第4の光情報と、を含み、第3の光情報及び第4の光情報は、後方散乱光における周波数成分ごとの光強度を示し、レイリー評価部は、レイリー評価値を得るものであって、第3の光情報が示す光強度の分布と、第4の光情報が示す光強度の分布と、の相関係数をレイリー評価値として算出してもよい。この構成によっても、レイリーひずみ値を好適に評価することができる。
本発明の別の形態は、測定対象物に設けられる光ファイバケーブルと、光ファイバケーブルに測定光を入射する光源部と、光源部が入射した測定光に応じた後方散乱光に関する光情報を得る受光部と、を備えるひずみ測定装置を利用してひずみを測定するひずみ測定方法であって、レイリー後方散乱光に基づくひずみであって、光情報に含まれたレイリーひずみ値を算出する工程と、ブリルアン後方散乱光に基づくひずみであって、光情報に含まれたブリルアンひずみ値を算出する工程と、光情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づき、レイリーひずみ値を評価する工程と、レイリーひずみ値を評価する工程の評価に基づいて、光ファイバケーブルに生じたひずみの大きさを示す値としてレイリーひずみ値又はブリルアンひずみ値を採用する工程と、を有する。
本発明のさらに別の形態は、測定対象物に設けられる光ファイバケーブルと、光ファイバケーブルに測定光を入射する光源部と、光源部が入射した測定光に応じた後方散乱光に関する光情報を得る受光部と、を備えるひずみ測定装置を利用してひずみを測定するひずみ測定プログラムであって、コンピュータを、レイリー後方散乱光に基づくひずみであって、光情報に含まれたレイリーひずみ値を算出するレイリー算出部と、ブリルアン後方散乱光に基づくひずみであって、光情報に含まれたブリルアンひずみ値を算出するブリルアン算出部と、光情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づき、レイリーひずみ値を評価するレイリー評価部と、レイリー評価部の評価に基づいて、光ファイバケーブルに生じたひずみの大きさを示す値としてレイリーひずみ値又はブリルアンひずみ値を採用する判定部と、して機能させる。
上記のひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムは、ひずみ測定装置と同様に、レイリー評価値を用いて、レイリーひずみ値又はブリルアンひずみ値を選択する。従って、ひずみの選択において、測定者に左右されることがない。その結果、正確性、信頼性の高い測定値を得ることができる。
本発明によれば、測定者に左右されることなく、正確性、信頼性の高い測定値を得ることが可能なひずみ測定装置、ひずみ測定方法、ひずみ測定プログラムが提供される。
図1は、実施形態に係るひずみ測定装置が適用される様子を概略的に示す図である。 図2は、図1に示すひずみ測定装置の構成を示す図である。 図3は、レイリー後方散乱光及びブリルアン後方散乱光を含む後方散乱光を説明するためのグラフである。 図4は、コンピュータによって処理される光情報を説明するための模式図である。 図5は、コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。 図6は、ひずみ測定装置によって実行されるひずみ測定方法の処理フローを概略的に示す図である。 図7は、ひずみ測定装置によって実行されるひずみ測定方法の処理フローを詳細に示す図である。 図8は、実施形態に係るひずみ測定プログラムの構成を示す図である。 図9は、実施例1において例示するひずみ情報を示すグラフである。 図10は、実施例2において例示するひずみ情報を示すグラフである。 図11は、変形例1のひずみ測定装置によって実行されるひずみ測定方法の処理フローを示す図である。 図12は、変形例2のひずみ測定装置によって実行されるひずみ測定方法の処理フローを示す図である。 図13(a)、図13(b)及び図13(c)は、変形例2のひずみ測定方法の一工程を詳細に説明するための図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
<ひずみ算出装置>
図1に示すように、ひずみ測定装置1は、測定対象物200のひずみを測定する。測定対象物200は、例えば、建物の基礎杭といった固定構造物などが挙げられるが、主に、インフラストラクチャ(infrastructure)である。例えば、道路や鉄道、上下水道、発電所・電力網、通信網、港湾、空港、灌漑・治水施設などの公共的・公益的な設備や施設、構造物であり、主に、コンクリート構造物である。コンクリート構造物には、鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造を含む。そして、ひずみ測定装置1は、測定対象物200に恒常的に配置されて、測定対象物200に生じるひずみを継続的に得るものであってもよい。また、ひずみ測定装置1は、測定のタイミングごとに測定対象物200に一時的に取り付けられて、測定後に取り外されるものであってもよい。
ひずみ測定装置1は、光ファイバケーブル10を有する。所定長の光ファイバケーブル10は、測定対象物200に取り付けられている。そうすると、測定対象物200にひずみが発生したとき、光ファイバケーブル10にも測定対象物200のひずみに対応するひずみが発生する。ひずみ測定装置1は、この光ファイバケーブル10に発生したひずみを測定する。つまり、ひずみ測定装置1は、光ファイバケーブル10のひずみを得ることにより、測定対象物200に発生したひずみを得る。
図2に示すように、ひずみ測定装置1は、光ファイバケーブル10と、光処理ユニット20と、ひずみ算出装置30と、を有する。光処理ユニット20は、光ファイバケーブル10に測定光を入射する。さらに、光処理ユニット20は、光ファイバケーブル10から出射される後方散乱光の光強度を得る。ひずみ算出装置30は、光処理ユニット20が得た後方散乱光の光強度を利用して、ひずみに関する情報を得る。ひずみに関する情報は、ひずみが生じた位置と、ひずみの大きさと、を含む。以下の説明において、ひずみに関する情報は、単に「ひずみ情報」と称する。また、ひずみが生じた位置は、単に「ひずみ位置」と称する。同様に、ひずみの大きさは、単に「ひずみ値」と称する。
光処理ユニット20は、光源部21と、光サーキュレータ22と、受光部23と、を有する。
光源部21は、ひずみを測定するための測定光を発生し、当該測定光を光ファイバケーブル10に入射する。測定光の発生源として、例えば、レーザダイオードを利用してもよい。測定光は、例えばパルス光である。光源部21は、当該パルス光を所定の周期で繰り返し入射する。光源部21は、ひずみ算出装置30から提供される制御信号に基づいて動作する。つまり、光源部21は、外部から提供される制御信号に応じて単にパルス光を発生させるだけの構成であってもよい。なお、光源部21は、測定光を発生させる構成に加えて、外部から提供される制御信号を必要とすることなく、制御ユニット(後述する光源制御部31)を備える構成であってもよい。
光サーキュレータ22は、光源部21、光ファイバケーブル10及び受光部23にそれぞれ接続されている。光サーキュレータ22は、光源部21が発生した測定光を光ファイバケーブル10に入射する。また、光サーキュレータ22は、光ファイバケーブル10から出射された後方散乱光を受光部23に出力する。
受光部23は、光サーキュレータ22が出射した後方散乱光を受光する。具体的には、受光部23は、ある時間における後方散乱光について、周波数ごとの強度(スペクトル)を得る。このような強度が得られる構成であれば、受光部23の具体的な構成は特に限定されない。例えば、後方散乱光を分光器によって分光し、分光された光成分ごとに光強度を得てもよい。また、受光感度の周波数帯域が異なる複数のフォトダイオードによって、光強度を得てもよい。受光部23が出力する情報は、さらに、経時的な要素も含む。具体的には、光ファイバケーブル10に測定光が入射された後に、受光部23が受ける後方散乱光の周波数成分について、経時的な変化を得る。
ここで、図3を参照しながら、後方散乱光、レイリー散乱に基づく光(以下、「レイリー後方散乱光」と称する)及びブリルアン散乱に基づく光(以下、「ブリルアン後方散乱光」と称する)について説明する。後方散乱光は、互いに周波数が異なる光成分を含む。これらの光成分は、周波数ごとに光強度が異なる。図3において、横軸は光の周波数を示す。縦軸は、光強度を示す。グラフG3aは、測定光が有する光強度を示す。グラフG3bは、あるタイミングで取得された光情報の一例である。グラフG3cは、グラフG3bとは別のタイミングで取得された光情報の一例である。
光ファイバケーブル10に測定光を入射したとき、光ファイバケーブル10において種々の散乱光が生じる。散乱光のひとつに、レイリー後方散乱光がある。レイリー後方散乱光は、光の波長よりも短い大きさを有する粒子に起因して生じる。レイリー後方散乱光は、透明な液体や固体中でも生じる。基本的にレイリー後方散乱光の周波数(RF)は、測定光の周波数(MF)と同じであるが、圧力、温度、ひずみなどに応じて周波数が変化することもある。レイリー後方散乱光の光強度は、測定光の光強度より低くなる。従って、この光強度の変化を利用すれば、光ファイバケーブル10に生じたひずみの大きさを得ることができる。レイリー後方散乱光の光強度は、後述するブリルアン後方散乱光の光強度よりも強い。従って、レイリー後方散乱光を用いた測定は、精度がよく、光のロスに強い。一方、観測量や固有の屈折率に応じた光強度のパターンは、ひずみや温度とは直接の関係性を持たない。
また、別の散乱光として、ブリルアン後方散乱光がある。ブリルアン後方散乱光は、測定光に応じて生じた音響フォノンが発生させる屈折率の周期的変調(回折格子)に起因する。回折格子は、音速で移動する。グラフG3bにおいて、ピークBPa、BPbは、ブリルアン後方散乱光に対応する光強度と周波数(BFa、BFb)と、を示す。反射時にドップラーシフト(周波数変化)が発生する。この周波数のシフト量は、圧力、温度、ひずみなどに応じて変化する。つまり、ブリルアン後方散乱光の周波数は、測定光の周波数(MF)と一致しない。例えば、周波数のシフト量は、測定光の周波数(MF)とブリルアン周波数との周波数差として扱ってよい。ブリルアン後方散乱光の周波数は、光ファイバケーブル10の状態(例えば、ひずみ)に応じて、高くなったり低くなったりする。従って、ブリルアン後方散乱光の周波数を利用すれば、光ファイバケーブル10に生じたひずみの大きさを得ることができる。ブリルアン後方散乱光の光強度は、レイリー後方散乱光の光強度よりも弱い。従って、ブリルアン後方散乱光を用いた測定の精度は、レイリー後方散乱光を用いた測定の精度より低くなり、光のロスに弱い。一方、観測量(例えば、強度ピークの周波数)は、ひずみや温度と直接の関係性を有する。
図4は、受光部23が得る情報を概略的に示す。光源部21がひとつの測定光を光ファイバケーブル10に入射したとき、図4に示すような情報が得られる。第1の軸A1は、後方散乱光の周波数を示す。第2の軸A2は、後方散乱光の周波数成分ごとの光強度を示す。この第1の軸A1及び第2の軸A2によって示される情報は、光情報である。第3の軸A3は、光ファイバケーブル10に測定光を入射したタイミングを基準とした経過時間を示す。後方散乱光は、光ファイバケーブル10における所定の位置で生じた散乱光である。例えば、測定光が入射された光ファイバケーブル10の端部の近傍で生じた散乱光は、光ファイバケーブル10に測定光を入射してから短い時間で受光される(グラフG4a参照)。一方、測定光が入射された光ファイバケーブル10の端部から遠い位置で生じた散乱光は、光ファイバケーブル10に測定光を入射してから長い時間の経過後に受光される(グラフG4d参照)。つまり、第3の軸A3は、経過時間を示すと同時に、光ファイバケーブル10における位置である。そうすると、グラフG4aは、光ファイバケーブル10の位置10aで生じた後方散乱光の光強度を示す。同様に、グラフG4bは光ファイバケーブル10の位置10bで生じた後方散乱光の光強度を示すものであり、グラフG4cは光ファイバケーブル10の位置10cで生じた後方散乱光の光強度を示すものであり、グラフG4dは光ファイバケーブル10の位置10dで生じた後方散乱光の光強度を示す。
ひずみ算出装置30は、受光部23から出力される後方散乱光の強度に関するデータを用いて、ひずみ情報を得る。ここで本実施形態のひずみ算出装置30は、光ファイバケーブル10の場所ごとにひずみの大きさを示したグラフを出力する(図9、図10参照)。
ひずみ算出装置30は、あるひずみ位置において、第1の測定手法によって第1のひずみ値を算出する。さらに、ひずみ算出装置30は、同じひずみ位置において、第1の測定手法とは異なる第2の測定手法によって第2のひずみ値を算出する。そして、ひずみ算出装置30は、第1のひずみ値と第2のひずみ値のうち、より適切であると判断されるひずみ値を選択し、当該した値を、あるひずみ位置におけるひずみ値であると決定する。ひずみ算出装置30の具体的な動作については、後に詳細に説明する。
ひずみ算出装置30は、光処理ユニット20の制御と、光情報からひずみ情報を算出する処理と、を実行するコンピュータである。
ひずみ算出装置30の一般的なハードウェア構成を図5に示す。ひずみ算出装置30は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行するCPU(プロセッサ)101と、ROM及びRAMで構成される主記憶部102と、ハードディスクやフラッシュメモリなどで構成される補助記憶部103と、ネットワークカードあるいは無線通信モジュールで構成される通信制御部104と、キーボードやマウスなどの入力装置105と、ディスプレイやプリンタなどの出力装置106とを備える。
後述するひずみ算出装置30の各機能要素は、CPU101又は主記憶部102の上に所定のソフトウェア(後述するひずみ測定プログラムP1)を読み込ませ、CPU101の制御の下で通信制御部104や入力装置105、出力装置106などを動作させ、主記憶部102又は補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。処理に必要なデータやデータベースは主記憶部102又は補助記憶部103内に格納される。
再び図2を参照しながら、ひずみ算出装置30についてさらに詳細に説明する。ひずみ算出装置30は、機能的構成要素として、光源制御部31と、位置算出部32と、レイリー算出部33と、ブリルアン算出部34と、レイリー評価部35と、判定部36と、ひずみ情報生成部37と、処理制御部38と、ひずみ情報表示部51と、を有する。ひずみ算出装置30は、さらに、記憶装置39を有する。
<光源制御部>
光源制御部31は、光源部21に提供する制御信号を生成する。制御信号は、例えば、測定光のパルス周期、測定光を光ファイバケーブル10へ入射するタイミングなどの情報を含む。また、これらの制御信号は、ひずみ算出装置30を構成するその他の要素にも提供される。
ひずみ算出装置30は、記憶装置39の情報を利用して、ひずみ情報を算出する。この処理は、位置算出部32と、レイリー評価部35と、レイリー算出部33と、ブリルアン算出部34と、判定部36と、ひずみ情報生成部37と、処理制御部38と、により実現される。ひずみ情報の出力先は何ら限定されない。例えば、ひずみ算出装置30は算出結果を画像、図形、又はテキストでモニタのようなひずみ情報表示部51に表示してもよいし、メモリやデータベースなどの記憶装置に格納してもよいし、通信ネットワーク経由で他のコンピュータシステムに送信してもよい。
<位置算出部>
位置算出部32は、光情報が光ファイバケーブル10におけるどの位置の情報であるかを特定する。この処理には、測定光が入射された時間と光情報に関連付けられている時間を利用する。測定光が入射された時間と光情報に関連付けられている時間との時間差を算出する。そして、この時間差と光の速度とを用いることにより、光情報に関連付けられている時間が位置情報に換算される。そして、位置算出部32は、光情報と位置情報とを関連付けて、記憶装置39に記憶させる。
<レイリー算出部>
レイリー算出部33は、光情報を利用してひずみ値の候補であるレイリーひずみ値を算出する。ひずみ値の変化は、基本的にレイリー後方散乱光の周波数には影響を及ぼさないが、レイリー後方散乱光の光強度に影響を及ぼす。光強度の変化は、例えば、光情報に示すグラフ形状の変化として現れる。
例えば、測定光と同じ周波数における強度ピークの値が小さくなる。そして、このひずみ値の変化とレイリー後方散乱光の強度変化との関係は、相対的である。例えば、光ファイバケーブル10のある位置における、ある時間の光情報が得られたとする。この場合に、光情報から測定光と同じ周波数における強度ピークの値を得ることができる。しかし、このひとつの強度ピークの値から、ひずみ値を算出することはできない。
そこで、レイリー算出部33は、光情報の相対値を用いてひずみ値を算出する。例えば、レイリー算出部33は、n回目の測定において、n−1回目の測定で得た光情報(以下「光情報(n−1)」と示す)と、n回目の測定で得た光情報(以下「光情報(n)」と示す)と、の相対的な関係を評価する。相対的な関係とは、光情報(n−1)が示すグラフ形状が、n回目の測定においてどの程度変化したかを示すとしてよい。グラフ形状の変化の評価は、例えば、光情報においてレイリー後方散乱光に起因する強度ピークの変化量(差分)としてもよい。また、グラフ形状の変化の評価は、例えば、光情報(n−1)のグラフ形状と、光情報(n)のグラフ形状と、の相関係数としてもよい。例えば、光情報(n−1)のグラフ形状を基準として、光情報(n)のグラフ形状をX軸(周波数)に沿って移動させ、その都度相関係数を算出する。そうすると複数の相関係数が算出される。そして、複数の相関係数において、最大の相関係数を採用してよい。レイリー算出部33は、これらの強度ピークの差分や相関係数を用いて、ひずみ値を算出する。
なお、レイリー算出部33が行う処理は、上記の処理内容に限定されない。光情報からひずみ値が算出できる手法であれば、適宜利用することが可能である。
<ブリルアン算出部>
ブリルアン算出部34は、光情報を利用してひずみ値の候補であるブリルアンひずみ値を算出する。光情報は、周波数ごとの光強度を示す。ブリルアン後方散乱光の周波数は、測定光の周波数から相対的に変化しているので、測定光の周波数より高い周波数と、低い周波数とに、ブリルアン後方散乱光に起因するピークが現れる。
まず、ブリルアン算出部34は、測定光の周波数(以下「測定光周波数」と称する)を得る。この測定光周波数は、光源制御部31の制御信号から得てもよい。また、測定光周波数は、予め記憶装置39に記憶されている所定値を用いてもよい。例えば、測定光周波数は、光源部21に用いられているレーザダイオードの仕様に基づいてもよい。また、測定光周波数は、光情報から得てもよい。光情報において、もっとも高い強度ピークを示す周波数を測定光周波数としてもよい。そして、ブリルアン算出部34は、ブリルアン後方散乱光に基づいて生じた強度ピークを探索し、当該強度ピークを示す周波数をブリルアン後方散乱光の周波数(以下「ブリルアン周波数」と称する)を得る。そして、ブリルアン算出部34は、この測定光周波数とブリルアン周波数との差分を算出し、当該差分をひずみ値に換算する。
なお、ブリルアン算出部34が行う処理は、上記の処理内容に限定されない。光情報からひずみ値が算出できる手法であれば、適宜利用することが可能である。例えば、ひずみ値とブリルアン周波数との関係は、所定の関係を有する。つまり、ブリルアン周波数が既知であればひずみ値を算出することができる。ひずみ値とレイリー後方散乱光の強度とが相対的な関係であったのに対し、ひずみ値とブリルアン周波数とは絶対的な関係である。つまり、あるブリルアン周波数を得ることができれば、当該ブリルアン周波数をひずみ値に変換することも可能である。
<レイリー評価部>
レイリー評価部35は、レイリーひずみ値を評価するためのレイリー評価値を算出する。すでに述べたように、ひずみ算出装置30は、光ファイバケーブル10のひずみ値として、レイリーひずみ値及びブリルアンひずみ値のいずれか一方を採用する。レイリーひずみ値の精度がブリルアンひずみ値の精度より高いので、基本的には光ファイバケーブル10のひずみ値として、レイリーひずみ値を採用する。しかし、レイリーひずみ値は、光情報が示すグラフ形状の相対的な関係に基づいている。そうすると、グラフ形状の相対的な関係が適切に評価できない場合(例えば、相関係数が小さい場合)には、レイリーひずみ値の信頼性が低くなる。この場合には、光ファイバケーブル10のひずみ値として、レイリーひずみ値よりもブリルアンひずみ値を採用する方が好ましい。そこで、レイリーひずみ値を採用してよいか否かを評価する基準として、レイリー評価値を用いる。つまり、レイリーひずみ値を評価するとは、光ファイバケーブル10のひずみ値として、レイリーひずみ値を採用してよいか否かという評価である。
レイリー後方散乱光は、ブリルアン後方散乱光と比較すると光強度が強い。従って、レイリー後方散乱光に基づくひずみ値は、ブリルアン後方散乱光に基づくひずみ値よりもノイズ耐性に強い。しかし、上述したようにレイリー算出部33では、光情報が示すグラフ形状の変化に基づいてひずみ値を算出する。ひずみ値(n−1)からひずみ値(n)への変化量が大きい場合には、光情報(n−1)のグラフ形状から光情報(n)のグラフ形状への形状変化も大きくなる。そうすると、グラフ形状の変化の評価精度が低下する場合がある。評価精度の低下は、例えば、相関係数の低下によって知ることができる。
一方、上述したようにブリルアン算出部34では、光情報が示すブリルアン周波数に基づいてひずみ値を算出する。このブリルアン周波数は、ひずみ値と所定の関係を有しており、ひずみ値の変化量が大きくなってもその関係は変わらない。
特に、測定対象物200が、コンクリート構造物であり、主に、インフラストラクチャ(infrastructure)である場合は、測定対象物200に発生するひずみの大きさは一般の弾性体等のひずみ量と比較して小さい、又は時間経過に伴うひずみ量の変化も小さい。このような場合には、レイリーひずみ値のほうが、実際のひずみ量に対して正確である場合が多い。本実施形態のひずみ算出装置30は、ひずみ値の程度に応じて、レイリー後方散乱光に基づくひずみ値とブリルアン後方散乱光に基づくひずみ値とのいずれか一方を、選択することを前提として、レイリー評価値として、レイリーひずみ値の絶対値を採用する。実際のひずみ値が小さい場合には、グラフ形状の相関が高くなる傾向にあるためである。
なお、このレイリー評価値は、レイリーひずみ値の絶対値に限定されない。例えば、n−1回目の測定で算出したレイリーひずみ値と、n回目の測定で算出したレイリーひずみ値と、の時間経過に伴う変化の大きさ、つまり単位時間当たりの変化量をレイリー評価値としてもよい。また、その他の例については、後述する変形例にて詳細に説明する。
<判定部>
判定部36は、光ファイバケーブル10のある位置におけるひずみ値として、レイリー算出部33によるひずみ値と、ブリルアン算出部34によるひずみ値と、のいずれを採用するかを判定する。判定部36は、基本的にレイリー後方散乱光に基づくひずみ値を採用するものとし、レイリー後方散乱光に基づくひずみ値が採用できないと判定される場合にはブリルアン後方散乱光に基づくひずみ値を採用する。つまり、判定部36は、レイリー後方散乱光に基づくひずみ値を採用できるか否かを判定する。「ひずみ値を採用する」には、レイリー後方散乱光に基づき算出されたレイリーひずみ値、ブリルアン後方散乱光に基づき算出されたブリルアンひずみ値のいずれかの一方をひずみ情報表示部51に表示する場合や、両方のひずみ値をひずみ情報表示部51に表示した上でいずれかのひずみ値に注釈(例えば、アスタリスク)を付記する場合等を含む。
例えば、判定部36は、レイリーひずみ値が、閾値(例:400×10−6)以下である場合には、レイリー算出部33が算出したひずみ値を採用してよいと判定する。一方、判定部36は、レイリーひずみ値が、閾値(例:400×10−6)より大きい場合には、レイリーひずみ値を採用できないと判定する。この場合には、判定部36は、ブリルアンひずみ値を採用する。
<ひずみ情報生成部>
ひずみ情報生成部37は、位置算出部32から得られたひずみ位置と、判定部36が算出したひずみ値と、を関連付けてひずみ情報(図9、図10参照)を生成する。ひずみ情報は、図9、図10に示すようなグラフとしてディスプレイに表示されてもよいし、記憶装置39に保存してもよい。
<ひずみ情報表示部>
出力装置106であるひずみ情報表示部51は、ひずみの位置、ひずみ値を表示する。ひずみ情報表示部51は、測定者に対してひずみに関する情報を提示する。例えば、ひずみ情報表示部51は、ディスプレイにひずみの位置、ひずみ値を表示するものであってもよい。また、ひずみ情報表示部51は、プリンタであってひずみの位置、ひずみ値を印刷するものであってもよい。測定者は、ひずみ情報表示部51に表示される値によりひずみの測定値を得る。
<処理制御部>
処理制御部38は、上述した各機能的構成要素の動作を制御する。
<記憶装置>
記憶装置39は、光情報と当該光情報が取得された時間と関連付けて、保存する。
<ひずみ測定方法>
以下、図6及び図7を参照しながら、本実施形態に係るひずみ測定方法について説明する。ひずみ測定方法は、上述したひずみ算出装置30によって実行される。図6は、実施形態のひずみ測定方法の基本的な処理フローを示す。図7は、さらに詳細な実施形態のひずみ測定方法の基本的な処理フローを示す。
まず、初期の参照データとする光情報を得る測定を行う(工程S10)。この工程S10は、光源制御部31、光処理ユニット20及び記憶装置39によって実行される。光源制御部31は、光源部21に対して制御信号を出力する。光処理ユニット20の光源部21は、制御信号に応じた測定光(パルス光)を光ファイバケーブル10に入射する。光処理ユニット20の受光部23は、測定光に起因して光ファイバケーブル10の内部で発生した後方散乱光を光サーキュレータ22を介して受ける。
次に、参照データを更新する(工程S20)。この工程S20は、受光部23及び記憶装置39によって実行される。この参照データとは、レイリー評価値を算出する場合に利用する。例えば、参照データとは、n回目の測定における光情報(n−1)である。記憶装置39は、受光部23から出力される光情報(n−1)を取得された時間に関連付けて保存する。
次に、第n回目の測定を行う(工程S30)。この工程S30は、工程S10と同様に、光源制御部31、光処理ユニット20及び記憶装置39によって実行される。この工程S30において記憶装置39は、工程S10で得た光情報(n−1)とは別の情報として、光情報(n)として保存する。
次に、第n回目の測定結果を処理する(工程S40)。この工程S40は、光ファイバケーブル10の所定の位置ごとに得た光情報の数だけ繰り返し行う。例えば、第n回目の測定結果として、光ファイバケーブル10おけるP箇所の光情報(n)を得た場合には、工程S40は、P回実行される。工程S40は、レイリー算出部33、ブリルアン算出部34、判定部36及びひずみ情報生成部37によって実行される。
具体的には、まず、レイリー評価値を算出する(工程S41)。この工程S41は、レイリー評価部35によって実行される。レイリー評価値の一例は、レイリー後方散乱光の光強度を用いて算出したレイリーひずみ値である。レイリー評価部35は、n回目の測定によって得た複数の光情報(n)のうち、位置(p)と関連付けられた光情報(n、p)を記憶装置39から読み出す。そして、光情報(n、p)と光情報(n−1、p)とを用いてレイリーひずみ値を算出する。
次に、レイリー評価値が閾値以下であるか否かを判定する(工程S42)。この工程S42は、判定部36によって実行される。判定部36は、工程S41で算出したレイリーひずみ値と閾値とを比較する。閾値は、例えば400×10−6以下であるとしてよい。
工程S42の結果、レイリー評価値が400×10−6以下である場合(工程S42:YES)である場合には、次に、レイリーひずみ値を算出する(工程S43)。この工程S43は、レイリー算出部33によって実行される。なお、本実施形態では、レイリー評価値としてレイリーひずみ値を用いたので、この工程S43は、省略することもできる。例えば、レイリー評価値として相関係数といったひずみ値とは異なる指標を用いた場合には、この工程S43において、レイリーひずみ値を算出する。
次に、参照データを更新する(工程S44)。この工程S44は、記憶装置39によって実行される。n回目の測定では、光情報(n−1)を参照データとして用いた。次に実行されるn+1回目の測定では、光情報(n)を参照データとして用いる。そこで、工程S44において、参照データとして、光情報(n−1)を光情報(n)に置き換える。
なお、この工程S44は、n回目の測定を行ったタイミング(工程S30)より後であれば、所望のタイミングで実施してよい。例えば、工程S44は、n回目の測定の直後に実施してもよい。工程S44の後に、すべての位置においてひずみ値を算出したか否かの判定を行う(工程S48)。
工程S42の結果、レイリー評価値が400×10−6より大きい場合(工程S42:NO)である場合には、次に、ブリルアン周波数を得る(工程S45)。まず、複数の光情報(n)のうち、位置(p)と関連付けられた光情報(n、p)を記憶装置39から読み出す。そして、光情報(n、p)からブリルアン周波数を得る。
次に、ブリルアンひずみ値を算出する(工程S46)。この工程S46は、ブリルアン算出部34によって実行される。ブリルアン算出部34は、工程S45において得たブリルアン周波数をひずみ値(p)に換算する。
次に、参照データを更新する(工程S47)。工程S42の結果がNOである場合には、参照データを更新する工程(工程S44)が実行されることなく工程S48に移行している。そこで、このタイミングにおいて、工程S44と同様に参照データを更新する処理を実行する。
次に、ひずみ情報を生成する(工程S48)。この工程S48は、ひずみ情報生成部37によって実行される。ひずみ情報生成部37は、ひずみ値(p)を光ファイバケーブル10におけるひずみ位置(p)とを関連付けて、記憶装置39に保存させる。ひずみ情報生成部37は、工程S42がYESである場合には工程S43で算出したレイリーひずみ値(p)をひずみ位置(p)と関連付けて、記憶装置39に保存させる。一方、ひずみ情報生成部37は、レイリー評価値が閾値より大きい場合には工程S46で算出したブリルアンひずみ値(p)をひずみ位置(p)と関連付けて、記憶装置39に保存させる。
以上の工程S41〜工程S48(工程S40)によれば、ひずみ位置(p)におけるひずみ値(p)が算出される。この工程S40を繰り返すごとに、ひずみ位置(p)におけるひずみ値(p)として、レイリーひずみ値と、ブリルアンひずみ値と、のいずれか一方が選択される。つまり、ひずみ測定方法では、ひずみ位置(p)ごとに、レイリーひずみ値と、ブリルアンひずみ値と、のいずれか一方を選択する。
次に、すべてのひずみ位置においてひずみ値を算出したか否かを判定する(工程S49)。この工程S49は、処理制御部38によって実行される。工程S49においてレイリー評価値が閾値より大きい場合には、再び工程S41から順に実行し、次のひずみ位置(p+1)におけるひずみ値(p+1)を得る。一方、工程S49においてレイリー評価値が閾値以下である場合には、n回目の測定とその処理とを終了する。そして、再び工程S30から順に実行し、次のn+1回目の測定とその処理を行う。
<ひずみ測定プログラム>
図8を用いて、ひずみ算出装置30を実現するためのひずみ測定プログラムP1を説明する。
ひずみ測定プログラムP1は、メインモジュールP10と、位置算出モジュールP20と、レイリー算出モジュールP30と、ブリルアン算出モジュールP40と、レイリー評価モジュールP50と、判定モジュールP60と、ひずみ情報生成モジュールP70と、を有する。
メインモジュールP10は、ひずみ測定機能を統括的に制御する処理制御部38に対応する。レイリー評価モジュールP50、レイリー算出モジュールP30、ブリルアン算出モジュールP40、判定モジュールP60及びひずみ情報生成モジュールP70を実行することにより実現される機能は、それぞれ上記のレイリー評価部35、レイリー算出部33、ブリルアン算出部34、判定部36及びひずみ情報生成部37の機能と同じである。
<作用効果>
ひずみ算出装置30、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムP1は、光ファイバケーブル10への測定光の入射に応じて光ファイバケーブル10に発生するレイリー後方散乱光又はブリルアン後方散乱光のいずれか一方を利用して、光ファイバケーブル10に発生したひずみ値を算出することができる。ここで、ひずみ算出装置30、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムP1は、レイリー後方散乱光に基づき、レイリーひずみ値の信頼性を評価するレイリー評価値を算出する。そして、当該レイリー評価値を用いて、レイリーひずみ値を採用し得るか否かを判定する。そうすると、ひずみ値の選択において、測定者の経験や技量などに左右されることがない。その結果、測定者に左右されることなく、正確性、信頼性の高い測定値を得ることができる。
<実施例1>
図9を参照しながら、実施例1について説明する。実施例1では、コンクリート構造物のようにひずみ量が小さいあるいはひずみ量の変化が小さいものを測定対象とし、当該測定対象にひずみ測定装置1を設置した。そして、予め閾値を設定した。実施例1では、レイリー評価値としてレイリーひずみ値を採用し、閾値を400×10−6とした。
次に、各ひずみ値を算出した。図9(a)は、光ファイバケーブル10におけるひずみの分布を示す。図9(a)においてグラフG9aは、レイリーひずみ値を示す。図9(a)においてグラフG9bは、ブリルアンひずみ値を示す。つまり、横軸の一目盛りごとに光情報を算出すると共に、レイリーひずみ値とブリルアンひずみ値とを算出した。その結果、レイリーひずみ値(グラフG9a)は、全ての位置においてゼロであった。一方、ブリルアンひずみ値(グラフG9b)は、光情報を得た領域の全体において、ゼロを中央値としてプラス側又はマイナス側への変動が確認できた。この違いは、レイリーひずみ値のノイズ耐性がブリルアンひずみ値のノイズ耐性より良好であることを示している。
そして、閾値を用いて各ひずみ値を評価した。具体的には、光情報を得た位置ごとに、レイリーひずみ値の絶対値が400×10−6以下であるか否かを判定した。その結果、実施例1では、光情報を得た位置のすべてにおいて、レイリーひずみ値が400×10−6以下であった。その結果、光情報を得た位置のすべてにおいて、ひずみ値としてレイリーひずみ値が採用され、図9(b)のグラフG9cに示すひずみ情報が得られた。
<実施例2>
図10を参照しながら、実施例2について説明する。まず、予め閾値を設定した実施例2では、実施例1と同様にレイリー評価値としてレイリーひずみ値を採用し、閾値を400×10−6とした。次に、実施例2では、光ファイバケーブル10に引っ張り力を加えた。そして、この引っ張り力を加えた状態で、ひずみ値を測定した。図10(a)においてグラフG10aは、レイリーひずみ値を示す。図10(a)においてグラフG10bは、ブリルアンひずみ値を示す。
そして、閾値を用いて各ひずみ値を評価した。実施例1と同様に、光情報を得た位置ごとに、レイリーひずみ値の絶対値が400×10−6以下であるか否かを判定した。例えば、グラフG10aを参照すると、2つの測定位置(p1、p2)において、レイリーひずみ値の絶対値が400×10−6以下を満たさなかった。そこで、図10(b)のグラフG10cに示すように、測定位置(p1、p2)のひずみ値としては、レイリーひずみ値ではなく、ブリルアンひずみ値を採用した。そのほかの位置は、レイリーひずみ値の絶対値が400×10−6以下であるので、レイリーひずみ値を採用した。
つまり、400×10−6を超えるひずみが生じた位置において、大きなひずみの変動に対して良好な追従性を示すブリルアンひずみ値を採用した。従って、レイリーひずみ値において特異な値(例えば、位置p2のようにマイナスに振り切れた値)に左右されることなく、妥当なひずみ情報を得ることができた。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では、レイリー評価値としてひずみ値の絶対値を用いた。しかし、レイリー評価値としては、変形例1及び変形例2に示すようにひずみ値の絶対値とは異なる指標を用いることが可能である。
<変形例1>
変形例1のひずみ算出装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムでは、図11に示すような処理フローを実行する。変形例1では、レイリー評価値として、レイリーひずみ値の差分を採用する。具体的には、レイリーひずみ値の差分とは、n−1回目の測定に対応するレイリーひずみ値の絶対値と、n回目の測定に対応するレイリーひずみ値の絶対値と、の差である。つまり、n−1回目の測定に対応するレイリーひずみ値からn回目の測定に対応するレイリーひずみ値への時間的な変化量である。
まず、初期の参照データとする光情報(n−1)を得る(工程S10)。続いて、n回目の測定を行うことにより光情報(n)を得る(工程S30)。次に、レイリーひずみ値を算出する(工程S61)と共に、ブリルアンひずみ値を算出する(工程S62)。そして、レイリーひずみ値(n−1)とレイリーひずみ値(n)の差分を算出する(工程S63)。この差分は、時間差分である。次に、当該差分の値が閾値以下であるか否かを判定する(工程S64)。工程S64において差分が閾値以下である場合(工程S64:YES)には、レイリーひずみ値を採用する(工程S65)。一方、工程S64において差分が閾値より大きい場合(工程S64:NO)には、ブリルアンひずみ値を採用する(工程S66)。そして、選択したひずみ値を出力する(工程S50)。
このような変形例1のひずみ算出装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムによっても、実施形態のひずみ算出装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムと同様に、測定者に左右されることなく、正確性、信頼性の高い測定値を得ることができる。
<変形例2>
変形例2のひずみ算出装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムでは、図12に示すような処理フローを実行する。変形例2では、レイリー評価値として、相関係数を採用する。具体的には、相関係数とは、例えば、光情報(n−1)のグラフ形状を基準として、光情報(n)のグラフ形状を対比して複数の周波数ごと(X軸の複数の周波数に対応した)の相関係数を算出する。そうすると複数の相関係数が算出される。そして、複数の相関係数において、最大の相関係数をレイリー評価値として採用する。
例えば、図13(a)に示すように、n−1回目の測定のある位置においてグラフG13aに示す光情報(n−1)を得たとする。そして、n回目の測定の同じ位置においてグラフG13bに示す光情報(n)を得たとする。まず、図13(a)に示すグラフG13a、G13bの相関係数を得る。その結果、相関係数が例えば0.7であったとする。次に、図13(b)に示すグラフG13a、G13b’の相関係数を得る。このグラフG13b’は、グラフG13bの全体を左側にわずかにシフトさせたものである。その結果、相関係数が例えば0.8であったとする。次に、図13(c)に示すグラフG13a、G13b’’の相関係数を得る。このグラフG13b’’は、グラフG13bの全体を右側にわずかにシフトさせたものである。その結果、相関係数が例えば0.6であったとする。その結果、複数の相関係数として0.6、0.7、0.8が得られた。そして、複数の相関係数(0.6、0.7、0.8)のうち、最大の相関係数(0.8)をレイリー評価値として採用する。
まず、初期の参照データとする光情報を得る(工程S10)。続いて、n回目の測定を行うことにより光情報(n)を得る(工程S30)。次に、レイリーひずみ値を算出する(工程S71)と共に、ブリルアンひずみ値を算出する(工程S72)。そして、次の工程S73において、相関係数を算出する。ここで言う相関係数は、2つの変数の関係を示す値であり、正の分布を有する2つの確率変数によって規定される共分散及び標準偏差によって表現される期待値を含む相関関数によって示される。つまり、本実施形態で言う相関係数は、数学で一般に用いられる意味を有している。相関関数によって算出される相関係数は、2つの確率変数の相関の強さを示す指標である。相関係数が正である場合には、2つの確率変数の間には正の相関があること示す。相関係数が負である場合には、2つの確率変数の間には負の相関があることを示す。なお、相関係数がゼロである場合には、2つの確率変数は無相関であるという。具体的には、工程S73によって算出される相関係数は、−1.0以上1.0以下である。そして、絶対値が1に近いほど強い相関があることを示す。次に、算出された当該相関係数の値が閾値以上(相関が大きい)であるか否かを判定する(工程S74)。工程S74において相関係数が閾値以上である場合(工程S74:YES)には、レイリーひずみ値を採用する(工程S75)。一方、工程S74において相関係数が閾値より小さい場合(工程S74:NO)、ブリルアンひずみ値を採用する(工程S76)。そして、選択したひずみ値を出力する(工程S50)。
このような変形例2のひずみ算出装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムによっても、実施形態のひずみ算出装置、ひずみ測定方法及びひずみ測定プログラムと同様に、測定者に左右されることなく、正確性、信頼性の高い測定値を得ることができる。
実施形態では、レイリー評価値としてレイリーひずみ値の絶対値を採用した。これは、レイリーひずみ値が小さい場合には相関係数が大きい傾向にあり、レイリーひずみ値が大きい場合には相関係数が小さい傾向にある、という前提に基づいていた。しかし、レイリーひずみ値が大きい場合には、必ずしも相関係数が小さくなるわけではない。レイリーひずみ値が大きい場合でも、相関係数が大きくなることもあり得る。そこで、レイリーひずみ値を採用し得るか否かの評価を、相関係数により行うこととしてよい。このような評価によれば、比較的精度のよいレイリーひずみ値を効果的に採用することができる。
なお、レイリー評価値は、実施形態のようなレイリーひずみ値の絶対値、変形例1のようなレイリーひずみ値の変化量、変形例2のような相関係数に限定されない。例えば、同じ光情報から算出されたレイリーひずみ値とブリルアンひずみ値との差分をレイリー評価値として採用してもよい。また、光ファイバケーブル10の互いに異なる複数の位置ごとにレイリーひずみ値とブリルアンひずみ値とを算出して、互いの相関を示す相関係数をレイリー評価値としてもよい。
本実施形態では、光ファイバケーブル10を用いて測定対象物200のひずみ値を測定する測定装置、測定方法、及び測定プログラムについて説明したが、光ファイバケーブル10を用いて測定対象物200の温度を測定することも可能である。
1…ひずみ測定装置、10…光ファイバケーブル、20…光処理ユニット、30…ひずみ算出装置、21…光源部、22…光サーキュレータ、23…受光部、31…光源制御部、32…位置算出部、33…レイリー算出部、34…ブリルアン算出部、35…レイリー評価部、36…判定部、37…ひずみ情報生成部、38…処理制御部、39…記憶装置、51…ひずみ情報表示部、101…CPU、102…主記憶部、103…補助記憶部、104…通信制御部、105…入力装置、106…出力装置、200…測定対象物、P1…ひずみ測定プログラム、P10…メインモジュール、P20…位置算出モジュール、P30…レイリー算出モジュール、P40…ブリルアン算出モジュール、P50…レイリー評価モジュール、P60…判定モジュール、P70…情報生成モジュール。

Claims (9)

  1. 測定対象物に設けられる光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルに測定光を入射する光源部と、前記光源部が入射した測定光に応じた後方散乱光に関する光情報を得る受光部と、を備える、ひずみを測定するひずみ測定装置であって、
    レイリー後方散乱光に基づくひずみであって、前記光情報に含まれたレイリーひずみ値を算出するレイリー算出部と、
    ブリルアン後方散乱光に基づくひずみであって、前記光情報に含まれたブリルアンひずみ値を算出するブリルアン算出部と、
    前記光情報に含まれた前記レイリー後方散乱光に基づき、前記レイリーひずみ値を評価するレイリー評価部と、
    前記レイリー評価部の評価に基づいて、前記光ファイバケーブルに生じたひずみの大きさを示す値として前記レイリーひずみ値又は前記ブリルアンひずみ値を採用する判定部と、を備える、ひずみ測定装置。
  2. 前記光情報は、前記光ファイバケーブルの互いに異なる複数の位置ごとに取得され、
    前記レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、複数の位置ごとに前記レイリー評価値を算出し、
    前記判定部は、複数の位置ごとに前記レイリーひずみ値を採用するか否かを判定する、請求項1に記載のひずみ測定装置。
  3. 前記レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、前記レイリーひずみ値と前記ブリルアンひずみ値との差分を前記レイリー評価値として算出する、請求項1又は2に記載のひずみ測定装置。
  4. 前記レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、前記レイリーひずみ値と前記ブリルアンひずみ値と、の相関係数を前記レイリー評価値として算出する、請求項1又は2に記載のひずみ測定装置。
  5. 前記レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、前記レイリーひずみ値の絶対値を前記レイリー評価値として算出する、請求項1又は2に記載のひずみ測定装置。
  6. 前記レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、第1のタイミングに対応する前記レイリーひずみ値と、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングに対応する前記レイリーひずみ値と、の差分を前記レイリー評価値として算出する、請求項1又は2に記載のひずみ測定装置。
  7. 前記光情報は、第3のタイミングで取得された第3の光情報と、前記第3のタイミングとは異なる第4のタイミングで取得された第4の光情報と、を含み、
    前記第3の光情報及び前記第4の光情報は、前記後方散乱光における周波数成分ごとの光強度を示し、
    前記レイリー評価部は、レイリー評価値を算出するものであって、前記第3の光情報が示す光強度の分布と、前記第4の光情報が示す光強度の分布と、の相関係数を前記レイリー評価値として算出する、請求項1又は2に記載のひずみ測定装置。
  8. 測定対象物に設けられる光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルに測定光を入射する光源部と、前記光源部が入射した測定光に応じた後方散乱光に関する光情報を得る受光部と、を備える、ひずみ測定装置を利用してひずみを測定するひずみ測定方法であって、
    レイリー後方散乱光に基づくひずみであって、前記光情報に含まれたレイリーひずみ値を算出する工程と、
    ブリルアン後方散乱光に基づくひずみであって、前記光情報に含まれたブリルアンひずみ値を算出する工程と、
    前記光情報に含まれた前記レイリー後方散乱光に基づき、前記レイリーひずみ値を評価する工程と、
    前記レイリーひずみ値を評価する工程の評価に基づいて、前記光ファイバケーブルに生じたひずみの大きさを示す値として前記レイリーひずみ値又は前記ブリルアンひずみ値を採用する工程と、を有する、ひずみ測定方法。
  9. 測定対象物に設けられる光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルに測定光を入射する光源部と、前記光源部が入射した測定光に応じた後方散乱光に関する光情報を得る受光部と、を備える、ひずみ測定装置を利用してひずみを測定するひずみ測定プログラムであって、
    コンピュータを、
    レイリー後方散乱光に基づくひずみであって、前記光情報に含まれたレイリーひずみ値を算出するレイリー算出部と、
    ブリルアン後方散乱光に基づくひずみであって、前記光情報に含まれたブリルアンひずみ値を算出するブリルアン算出部と、
    前記光情報に含まれた前記レイリー後方散乱光に基づき、前記レイリーひずみ値を評価するレイリー評価部と、
    前記レイリー評価部の評価に基づいて、前記光ファイバケーブルに生じたひずみの大きさを示す値として前記レイリーひずみ値又は前記ブリルアンひずみ値を採用する判定部と、して機能させるための、ひずみ測定プログラム。
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