JP2021188752A - 真菌増殖抑制方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】室内環境及び空調システムにおいて真菌増殖を防ぐことを目的する。【解決手段】植物工場内の栽培室や病室などの室内及びこれに付随する空調システムにて真菌増殖を抑制する方法に含まれる真菌抑制モードS7Aでは、空調システムの除湿運転を行って室内を低湿度状態に維持する室内除湿工程S11と、空調システムへも減菌が必要かどうかを確認する同時減菌確認工程S13とを含む。同時減菌確認工程S13で肯定的な判定であれば、空調システムを除湿運転から送風運転に切り替えて、空調システム内の経路に室内の乾燥空気を導入し、空調システムと室内との間を循環させるシステム減菌工程S15Aを含み、第2減菌期間の経過後に真菌抑制モードS7Aを完了することを特徴とする。本発明を植物工場に適用する場合は、真空抑制モードS7Aの開始判定に栽培効率や植物の食味悪化防止の面を踏まえた追加条件の確認工程を含むことが好ましい。【選択図】図3

Description

本発明は、空調システム内で真菌増殖を抑制する方法に関し、例えば、人工光型植物工場において、植物の栽培効率を維持しながら、栽培環境内及び空調システム内の真菌増殖を抑制する方法に関するものである。
(空調システム内の真菌増殖)
空調システムは、住居、病院や食品工場の大型施設の他、後述の人工光型植物工場等の環境を所望の条件に整えるために設置される。しかしながら、空調システム内の熱交換器表面に真菌が発生・増殖することで、人の健康や食品及び植物の品質に悪影響を及ぼすことが問題となっている。
(問題1:熱交換器表面での真菌の増殖、空調環境への胞子混入)
具体的には、冷房運転又は除湿運転中の空調システム内において、温度操作用熱交換器の表面は常に高相対湿度である。風下側に加熱源を設け、環境空気を低相対湿度に抑えることができたとしても、前述の熱交換器表面を暖めるには至らず(もし温められてしまったら、除湿機能を果たさない)、熱交換器の表面は絶えず高相対湿度のままである。この結果、該熱交換器表面は真菌増殖の温床(図7参照)となり、環境中への胞子混入を促進してしまう。なお、加熱・送風運転の場合、熱交換器表面での水分凝縮は起きず、相対湿度は上昇しないため、真菌増殖や胞子混入も起きない。
(問題2:熱交換器表面への殺菌処理上の問題)
ここで、空調システム内に乾燥空気を導入して熱交換器表面に対して殺菌処理を行う事を考えてみる。導入する乾燥空気はどのような方法で用意しても構わないが、空調対象室の環境空気を導入するのが一番簡単である。しかしながら、乾燥空気として環境空気を採用する場合は、空調システムを(冷房運転ではなく)送風運転に切り替える必要があろう。
何故ならば、空調システム自体の持つ送風機をそのまま活用するのが合理的であるし、熱交換器の表面温度を露点温度以上に保ちつつ環境空気を乾燥させるためには、冷房運転を停止させなければならないからである。従って、殺菌処理を行う期間中は、同空調システムでは環境の温度調節を実施できないことになる(空調対象室の温度調整機能の停止)。
(先行技術の説明)
空調システム内の真菌増殖を抑制するための先行技術としては、例えば、特許文献1がある。この特許文献1では温度及び湿度を検出してカビ等発生評価値を求め、この値が基準値を超えると、空調システムを送風運転に切り替えて所定時間だけ実施する。その後、オゾン発生器を作動させて殺菌処理を行うものである。ここで、オゾンの強い酸化作用は有用であり、工業的には浄化・殺菌、脱色、有機物除去等、様々な用途に応用されている。特許文献1では、オゾンを用いることで、酸化力に応じた短い時間で殺菌できると考えられ、空調停止期間を短く抑えることに成功している。
(オゾン利用の弊害)
しかし、オゾンの強すぎる酸化力は、取扱いの困難さも招く。具体的には、オゾンが触れる部分や接触可能性のある材料には耐腐食性の付与を考慮しなければならない。さらにオゾンによる生体への悪影響も明らかにされている。ヒト(人間)は、0.01〜0.02ppm程度で臭気の知覚、0.1ppm程度から鼻や喉への刺激、0.2〜0.5ppmで視力の低下、1〜2ppm程度で疲労感、頭痛や呼吸機能の変化、5〜10ppmで呼吸困難、脈拍増加、50ppm以上で生命の危険が生ずるとされる。このように生活環境と密接に関わる空調システムには、短時間で殺菌処理可能でかつより安全な殺菌技術が求められる。
安全性の観点に着目すると、空調システムの殺菌技術に関しては、例えば、特許文献2のような先行技術がある。この特許文献2では、冷房運転又は除湿運転の後に水切り運転を行って空調システム内部の水分の大半を除去してから、暖房運転(乾燥運転)を行うことが開示されている。
(冷房運転から暖房運転への切替えによる温熱環境の悪化)
しかしながら、本来、冷房運転を要求している環境に対し、短時間であっても暖房運転を行うことは温熱環境の悪化につながる。暖房運転ではなく送風運転による乾燥効果のみに期待した場合でさえも、送風機圧縮による空気加熱や電動機排熱による昇温は起こるし、冷房負荷未処理期間の長さによっても、温熱環境が悪化し得る。
ここまで述べてきた問題点を整理すると、空調システムの殺菌処理には、以下の2つの要望の同時達成が求められる。
(1) 真菌殺菌用の媒体は、金属に対する腐食性が低く、かつ、人体に安全であること
(2) 空調対象室の温熱環境を悪化させず、短時間の送風運転で処理可能であること
(環境内の商品への悪影響)
ところで、人工光型植物工場の空調システムは、基本的に常時冷房運転している。温度操作用熱交換器の表面は、常に相対湿度が高く、真菌は増殖し、空調システム内に生じた胞子が継続的に植物栽培環境内に混入し、該環境を汚染する。さらに都合の悪いことに、植物の蒸散作用や工場環境内部を循環する栽培用培養液の蒸発により、空調システムだけでなく工場内までも常に高相対湿度に維持される。真菌は高相対湿度の環境を好むため、空調システム内では飽き足らず工場内でもその増殖や環境汚染が進んでしまう。
また、チャタテムシ類などの微小昆虫は主に真菌を餌としているため、真菌の増殖は工場内への虫の侵入や増加を招き、ひいては商品への虫混入リスクとなる。同様の問題は、植物工場だけでなく、食品加工工場でも起こり得る。
このような問題は、単純に工場内の相対湿度を低下させることで解決できそうである。しかしながら、植物工場に適用する場合、今度は、植物の栽培効率低下や食味悪化が問題になる。
(植物の栽培効率低下)
乾燥空気中の植物は、成長率が悪化する。例えば光合成を行う明期の場合、体内の水分を保持するために気孔を閉じる。気孔が閉じられると、空気中の二酸化炭素を取り込みにくくなり、植物の光合成反応を阻害する。明期における植物工場の低湿度環境は植物の光合成反応を阻害し、そして成長率を悪化させてしまう。一方、暗期の低湿度環境ではこれとは異なる機構で成長率を悪化させる。具体的には、暗期に低湿度となると葉表面のクチクラ層からの蒸散量が増え、呼吸作用等の基礎代謝量が大きくなり、結果として、葉・茎の伸長量が減るのである。
(植物の食味悪化)
また、植物の食味の内、苦味やえぐみは、硝酸態窒素の濃度により決まり、この濃度が低ければ、苦味・えぐみが薄れ、相対的に甘く感じることができると言われている。そして、低相対湿度の環境で光合成を阻害された植物の体内では、硝酸態窒素濃度が上昇し、苦みやえぐみの強い植物が出来ることがわかっている。また、高い硝酸態窒素濃度は人体への悪影響も指摘されている。
(低硝酸態窒素野菜の栽培に関する先行技術)
因みに、低硝酸態窒素野菜の栽培技術として特許文献3が既知である。これは、光合成により硝酸態窒素を消費すると同時に、肥料としての硝酸態窒素の供給を停止するという技術である。培養液により野菜を成育して一定期間栽培後、その収穫に先立って培養液の供給を停止、回収し、これに代えて水を供給する。ここで光合成を行わせると植物体内に蓄積された硝酸態窒素が消費され、硝酸態窒素濃度が下がる。この方法には、培養液と水の2つの液利用システムが必要である。このシステム構築には、難易度や複雑さ、コスト等を念頭におくと問題があると言わざるを得ず、より簡易な別の方法で硝酸態窒素濃度を低く抑える必要がある。
以上のように、人工光型植物工場では、安全性や経営的な観点から、真菌増殖リスクや虫混入リスクを低下させるために環境内の相対湿度を低く保ちたい。しかし、相対湿度を安易に下げると、商品となる植物の栽培効率の低下、食味の悪化、ひいては、商品を摂取する人間の健康に対する懸念まで生じるという相反問題を抱えている。
特許第5180489号公報 特開平11−211184号公報 特開2008−061570号公報 特許第2710903号公報 特許第3510309号公報
(本発明の目的)
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、空調対象室の温熱環境を著しく悪化させず、安全に、空調システム内の熱交換器表面の真菌増殖を抑制する方法を提供することを目的とする。
また、本発明の別の目的は、植物工場において、植物を効率よく育成しつつ、工場内の真菌増殖を防ぐことである。
また、本発明のもう一つの目的は、植物工場において、食味の悪化を防止しつつ、工場内の真菌増殖を防ぐことである。
本発明者らは、鋭意検討の末、上述の問題点を見事に解決する装置及び方法を見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
空調システムが設置された室内の真菌増殖を抑制する方法であって、
前記室内の温度及び湿度を計測する室内計測工程と、
計測された前記温度及び前記湿度、並びに、予め取得しておいた真菌の生育速度と前記温度及び前記湿度との相関関係から真菌増殖指数を算出する指数算出工程と、
前記真菌増殖指数が予め定めた閾値を超えたことを確認する指数確認工程と、
前記指数確認工程で前記閾値を超えたことを確認した後に真菌抑制モードを開始するモード開始判定工程と、
を含み、
前記真菌抑制モードでは、
前記空調システムの除湿運転を行い、前記室内を低湿度状態に維持する室内除湿工程と、
前記空調システムへも減菌が必要かどうかを確認する同時減菌確認工程と、
を含み、かつ、
前記同時減菌確認工程で否定的な判定であれば、第1減菌期間の経過後に前記真菌抑制モードを完了し、
前記同時減菌確認工程で肯定的な判定であれば、前記空調システムを前記除湿運転から送風運転に切り替えて、該空調システム内の経路に前記室内の乾燥空気を導入し、該空調システムと前記室内との間を循環させるシステム減菌工程を含み、かつ、第1減菌期間以上長い期間である第2減菌期間の経過後に前記真菌抑制モードを完了すること
を特徴とする真菌増殖抑制方法。
(態様2)
前記システム減菌工程は、前記空調システム内の熱交換器付近に設置された紫外線照射装置から前記熱交換器に向けて紫外線を照射する照射工程と、
をさらに含むこと
を特徴とする態様1に記載の真菌増殖抑制方法。
(態様3)
前記室内に対して前記空調システムを複数設置しておき、
前記同時減菌確認工程で肯定的な判定であれば、前記空調システムを、前記システム減菌工程を先に実行するものと、後に実行するものと、に割り当て、
前記先の空調システムが前記システム減菌工程を実行する間、前記後の空調システムは、前記除湿運転を維持或いは増強して前記室内の前記低湿度状態を維持し、
前記先の空調システムへの前記システム減菌工程を実行した後、前記先の空調システムでは前記送風運転から元の除湿運転に戻し、前記後の空調システムでは前記システム減菌工程を開始すること
を特徴とする態様1又は態様2に記載の真菌増殖抑制方法。
(態様4)
前記室内が人工光型植物工場内で植物を栽培するための栽培室内であり、
前記栽培室内の環境に合わせて予め定めた胞子発芽期間が経過したことを確認する発芽確認工程と、
前記植物に適した栽培効率維持期間が経過したことを確認する第1追加確認工程と、
をさらに含み、
前記モード開始判定工程では、前記指数確認工程の他に、前記発芽確認工程と、第1追加確認工程と、の全てで肯定的な結果を得られた後に前記真菌抑制モードを開始すること
を特徴とする態様1〜3のいずれかに記載の真菌増殖抑制方法。
(態様5)
前記栽培室内が暗期にあるかどうか、かつ、該暗期であった場合に前記真菌抑制モードを実行するには十分な期間が残っているかどうかを確認する第2追加確認工程と、
をさらに含み、
前記モード開始判定工程では、前記指数確認工程の他に、前記発芽確認工程と、第1追加確認工程と、第2追加確認工程と、の全てで肯定的な結果を得られた後に前記真菌抑制モードを開始すること
を含むことを特徴とする態様4に記載の真菌増殖抑制方法。
ここで、本発明で言う「湿度」としては、相対湿度が好ましいが、これに限らず、絶対湿度、飽差、水蒸気分圧など、空気中に含まれる水分量を差し示すあらゆる公知の指標を用いることができる。更に、この「湿度」には、公知の指標の他にも、空気中の水分量を利用して導出可能な温熱環境指標や、新しく定めた指標なども含まれる。
本発明の真菌増殖抑制方法における上述の真菌抑制モードは、植物工場での真菌増殖の抑制に好適に使用可能であるが、これ以外にも食品工場の加工室や病院の病室、これらに付随する空調システム内での真菌増殖の抑制に使用可能である。
また、本発明の方法によれば、空調システム内の殺菌処理の媒体には、栽培室内の乾燥空気か、乾燥空気以外ではLEDやランプ等の光源から照射される紫外線を利用するだけであり、金属に対する腐食性が低く、かつ、人体に安全である。また、本発明を実行する間は、室内環境を管理する空調システムを除湿運転と送風運転とに切り替えるだけであり、空調対象室の温熱環境を悪化させず、短時間の運転で処理可能である。
本発明の方法によれば、上述の真菌抑制モードを含み、かつ、このモードの開始条件を真菌増殖指数の他、植物栽培に係るパラメータも踏まえながら判定しているため、植物工場において、植物栽培効率を維持しつつ、栽培室内及び空調システム内の減菌(真菌抑制)を実現することが可能となる。
本発明の好適な態様によれば、暗期にのみ上述の真菌抑制モードを実行させているため、これによって栽培される植物の苦みや食味悪化を軽減することができる。
(a)複数又は(b)単数の空調システムが組み込まれた人工光型植物工場の概略図を示す。 本発明の真菌抑制方法の工程全体を説明したフローチャートを示す。 本発明の第1真菌抑制モードの各工程を説明したフローチャートを示す。 本発明の第2真菌抑制モードの各工程を説明したフローチャートを示す。 低湿度環境を暗期又は明期にあててレタスを栽培した場合のレタス内の硝酸態窒素量を比較した図である。 自然界における相対湿度の経時的変化と、本発明の方法を実施した植物工場内の相対湿度の経時的変化とを示したグラフである。 真菌が増殖した熱交換器表面を示した画像である。
以下、添付の図面を参照しながら下記の具体的な実施形態に基づき本発明の技術的内容を説明するが、本発明はこれらの実施形態に何等限定されるものではない。
(人工光型植物工場)
植物生産システムは、一般に、開放型システム(田畑等)と、半閉鎖型システム(園芸施設等)と、閉鎖型システム(人工光型植物工場等)とに大別できる。このうち最も収量が高いのは、閉鎖型の人工光型植物工場である。
人工光型植物工場は、その名の通り人工光により植物を栽培する。人工光によって明期(すなわち、植物に光を照射し、光合成を促す期間)と、暗期(すなわち、消灯し、植物は呼吸する期間)とを周期的に作り出すことが一般的である。なお、明期と暗期との周期を24時間とする必要は無いと考えられており、電気料金などを念頭に明暗タイミングの最適化が実施される。
人工光を作り出す照明具は工場内部で発熱源になる。このため、閉鎖型の人工光型植物工場では、年間を通じて、室内環境への強制冷却が必要である。内部の温度コントロールは、通常、空調システムによって実施する。
図1に、空調システムが組み込まれた人工光型植物工場1(1A,1B)(以下、単に「植物工場」と呼ぶ。)の概略図を示す。ここで、図1(a)に示す植物工場1Aでは、一つの栽培室2に対し複数(図では4つ)の空調システム11,12,13,14が組み込まれている。一方、図1(b)に示す植物工場1Bでは単数(1台)の空調システム11のみが組み込まれている。
栽培室2には、養液栽培装置3が設置されている。植物4の育成に必要な肥料を水に溶かした液(培養液)31が容器32に蓄積されており、この培養液31はポンプPにより供給管33に送出される。
植物4を栽培する栽培棚35は、通常、栽培室2の空間を有効利用するため、高さ方向に複数段、積層される。各栽培棚35には、多数の植物4が通常、水平方向に直列に置かれるため、一側に設置された供給管33から導入された培養液31が栽培棚35内を長手方向に流れる際に各植物4に付与される。なお、常に新鮮な培養液31が植物4に供給されるよう、栽培棚35の他側に排出管34を設置して培養液31を元の容器32に戻す方式(すなわち、循環式)の構造を採用してもよい。
また、栽培棚35の上部にはLEDやランプなどの人工光を植物4に照射するための光源36が栽培棚35の長手方向(水平方向)に直列に設置される。この光源36を一定時間、点灯と消灯を繰り返すよう制御することで、栽培室2内に植物4を育成するための明期と暗期とが定期的に作りだされる。
(本発明の真菌増殖抑制方法)
次に、図1〜図4を参照しながら、本発明の真菌増殖抑制方法について詳しく説明する。この方法では、真菌抑制モード(以下、単に「抑制モード」とも呼ぶ。)と、植物栽培モード(以下、単に「栽培モード」とも呼ぶ。)と、に分け、植物工場1の環境条件を随時監視しながら各モードの切替えが行われる。
(室内の温度及び湿度の実測)
先ず、栽培室2の温度及び湿度(例えば、相対湿度)の計測を開始する(工程S1、室内計測工程)。なお、この時点では、後述する比較的低湿度の真菌抑制モードでは無く、比較的高湿度の植物栽培モードに設定されていることに留意されたい。
(真菌増殖指数の算出)
工程S1から実測された値を基に、真菌増殖の危険度を示す指数(以下、「真菌増殖指数」と呼ぶ。)Iを算出する(工程S2、指数算出工程)。なお、真菌増殖指数Iを算出する方法としては、例えば、特許文献4に開示されているように、真菌の生育速度と、温度及び湿度との相関関係を調査して得られたデータベース(テンプレート)を利用しても良いし、又は、特許文献5に示すように数式化したものや同様の方法で独自調査して得られた結果を用いても良い。
また、上述の工程S1,S2は、基本的に、本発明の方法が終了するまで、絶えず定期的に(例えば、1分毎に)実行(実測及び算出)し続けることにも留意されたい。
(胞子発芽期間の経過確認)
次に、胞子発芽期間を経過しているかどうかを判定する(工程S3、発芽確認工程)。未経過であれば、高相対湿度の状態(栽培モード)を維持したまま待機する(工程S1〜S3のループを繰り返す)。これは、未発芽状態の真菌胞子は低湿度であっても死滅しないため、先ずは真菌胞子を発芽させておく必要があるからである。このように、本発明では、栽培室2を通常の栽培環境(高相対湿度)のままに維持し、胞子の発芽を促す期間(胞子発芽期間)を確保する。なお、胞子発芽期間は対象環境の状況(例えば、カビが生息・繁茂しやすい湿度状況)により変えるべきだが、例えば、7〜10日間に設定すればよい。
(抑制モードへの判定ルーチン)
一方、胞子発芽期間の経過が確認できれば、次に、抑制モードへ入るべきかどうかの判定に移る。本発明の好適な態様(植物工場1への適用)においては、抑制モードに入ることを許可するには、後述の複数の連続した条件を満足(クリア)しなければならないことが特徴的である。
(条件1:真菌増殖指数が閾値を超えたか)
先ず、この判定ルーチンの一条件として、上述の真菌増殖指数Iについて閾値(例えば、5)を設定しておき、上述の指数Iがこの閾値を超えたか(真菌増殖レベルが危険域に達したか)どうかの判定を行う(工程S4、指数確認工程)。閾値を超えなければ、栽培モードを維持する(つまり、工程S1に戻り、工程S1〜S4のループを繰り返す)。
一方、上述の指数Iが閾値を超えたと判定されれば、次の段階に移る。ただし、この判定のみで、真菌増殖レベルが危険度に達したと判断して直ぐに抑制モードに移行してしまうと、上述のとおり、相対湿度が下がることで栽培室2内の減菌が促されるものの、商品となる植物4の栽培効率の低下や食味の悪化を招いてしまう虞がある。
(条件2:栽培効率維持期間を経過したか)
そこで、本発明では、抑制モードへの移行に、更に別の条件(条件2)を満足するかどうかについても判定を行っている。具体的には、生育環境のより厳しい抑制モードに入ってからでも植物4が育ち続け、充分な食味や糖度が得られるよう、抑制モードに入る前にある程度の大きさや熟度を持つまで植物4が育つのに必要な期間(「栽培効率維持期間」と呼ぶ。)を栽培対象毎に予め決めておく(例えば、レタスの場合9〜12日間)。
そして、工程S4の後に、条件2として、上述の栽培効率維持期間を経過しているかどうかを判定する(工程S5、第1追加確認工程)。栽培効率維持期間を経過していれば、次の段階に移る。一方、未経過であれば、高相対湿度の状態(栽培モード)を維持したまま待機する(つまり、工程S1に戻り、工程S1〜S5を繰り返す)。
(条件3:暗期に入っているか)
加えて、本発明では、更に別の条件(条件3)も追加的に判定しておくことが好ましい。具体的には、植物工場1が暗期に入っているかどうか、かつ、この暗期の終了までに後述の抑制モードを行うのに十分な残り時間があるかどうかを判定する(工程S6、第2追加確認工程)。なお、植物工場1の運用方法によっては、1回あたりの暗期期間を1時間など短期に設定しているものや、あるいはそもそも暗期期間を設けていない場合もある。この様な場合には、本方法で食味悪化を防ぐことはできないため、暗期に入っているかどうかの条件判断を設ける必要は無い。
この工程S6の操作によって、植物4の光合成が活発な明期を栽培モードにあて、光合成が不活発な暗期を真菌抑制モードに確実にあてられれば、植物4の食味の悪化を最低限に抑えつつ、環境内の真菌増殖も抑制可能となる。言い換えれば、明期の間に真菌抑制モード(低湿度環境)に入ると、その光合成を阻害された状態で植物4が育成され、植物4の体内では、硝酸態窒素濃度が上昇し、苦みやえぐみの強い植物が出来やすい。従って、植物工場1の環境では、明期ではなく暗期の間に、本発明の真菌抑制モード(低湿度環境)を持ってくるのが良いと言える。
(真菌抑制モードへの移行)
本発明の方法では、上述の工程S3〜S6の全てで肯定的な判定結果が得られた場合に、ようやく後述の真菌抑制モードが開始される(工程S7、モード開始判定工程)。一方、否定的な判定結果が得られた場合は、次の暗期の開始時点まで待機する(工程S1〜S6を繰り返す)。
(第1真菌抑制モード:植物工場に空調システムが2台以上設置されている場合)
一例として、植物工場1(1A)に、図1(a)に示すように、複数の空調システムが設置されている場合の真菌増殖抑制方法(第1真菌抑制モード)S7Aについて説明する。説明の便宜上、設置総数がN個の場合、第1・第2・第3・第4…第Nの空調システム11,12,13,14(図1(a)では4個)と呼ぶことにする。図3に、複数の空調システム11,12,13,14が存在する場合の第1真菌抑制モードS7Aのフローチャートを示す。
上述の工程S6の判定後にようやく第1真菌抑制モードS7Aに入ると、先ず、空調システム11,12,13,14において相対温度目標値を低湿度の値(例えば、40〜60%RH)に設定して栽培室2内を低湿度状態に変更する(工程S11、室内除湿工程)。つまり、空調システム11〜14を除湿運転にする。これにより、植物4が載置された栽培室2内にて真菌を死滅させたり、真菌の発育を防いだりすることができる。
次に、工程S11の後、栽培室2内の温度や湿度が目標値に達したかどうか判定する(工程S12)。ここで、肯定的な判定結果が得られれば、栽培室2内には充分に乾燥した空気Aが生成できたと判断される。
(空調システム内への真菌抑制(同時減菌処理)の有無)
そして、栽培空間である栽培室2内環境だけでなく、空調システム11,12,13,14内の空気流通経路11a〜11d,12a〜12d,13a〜13d,14a〜14d(特に、熱交換器11d,12d,13d,14dの表面)に対しても真菌抑制(減菌)処理が必要かどうかを判断する(工程S13、同時減菌確認工程)。例えば、図示しないオペレータからの希望の有無を入力することで判断しても良いし、空調システム11,12,13,14の累積使用時間や前回の減菌処理からの経過時間、熱交換器11d,12d,13d,14dの表面に付着した真菌の量(例えば、図示しないカメラ等にて観察した結果)などのパラメータに基づいて、その必要性の有無を判断しても良い。
ここで、図1(a)中、符号11a,12a,13a,14a、符号11b,12b,13b,14b、及び、符号11c,12c,13c,14cは、夫々、各システム11〜14における空気吸い込み用風導管、空気吐き出し用風導管、及び、本体内の空気流通空間を示す。
(減菌処理が不要な場合)
なお、工程S13にて、空調システム11,12,13,14内への減菌処理が不要であると判断された場合は、所定期間(第1減菌期間)だけ、栽培室2が上記低湿度環境に保持される(工程S14)。ここで、第1減菌期間としては、1回あたり10〜12時間程度とすることが好ましい。第1減菌期間を経過したと判定されれば、第1真菌抑制モード(工程S7A)は完了する。その後、植物4の生育度が充分であるかどうかを判定する(工程S8、育成度確認工程、図2を参照)。肯定的な結果であれば本発明の方法は完了する。一方、否定的な結果であれば再度、栽培モード(つまり、工程S1)に戻る。
(減菌処理が必要な場合)
これに対し、栽培室2のみならず空調システム11,12,13,14へも同時に減菌処理を行う方法について、以下に詳述する。空調システム11,12,13,14への減菌は、栽培室2内の乾燥空気Aを経路に導入するのが合理的である。例えば、図1(a)に示すように、空調システム11,12,13,14が複数存在する場合、そのうちの1つの空調システム(例えば、11)を除湿運転から送風運転に変更し、該システム11の経路(例えば、11a)に乾燥空気Aを導入して、熱交換器11dを通過して栽培室2内に戻るように循環させる(工程S15A、システム減菌工程)。その間、残りの空調システム(例えば、12,13,14)だけで、栽培室2内の低湿度環境(第1真菌抑制モードS7A)が保たれるように除湿運転を継続・強化する。
(別の空調システムへの減菌処理)
第1の空調システム11への減菌処理が完了した(例えば、導入時間が所定期間(第1の送風期間)を経過した)と判断された場合(工程S15B)には、第1の空調システム11の運転を送風運転から元の除湿運転に戻すとともに、別の第2の空調システム12を除湿運転から送風運転に切り替えて第1空調システム11へ既に行った減菌処理と同様の処理を施すことが好ましい(工程S15C、システム減菌工程)。そして、第2の送風期間経過まで工程S15Cを実行する(工程S15D)。ここで、第2の送風期間を十分に確保できない場合(確保することで合計の減菌期間が長くなり過ぎて、植物4の栽培効率を低下させてしまう場合など)は、後述する紫外線照射も併せて実行することにより各システムへの減菌期間を短く抑えるか、又は、空調システムの一部又は全部へのシステム減菌工程の実施を次のタイミングに先送りしたりする、といった工夫が必要であろう。
もし、植物工場1に、図1(a)に示すように空調システムが3つ以上設置されている場合には、第2の空調システム12を送風運転から元の除湿運転に戻した後、第3の空調システム13にも同様の減菌処理を施すのが好ましい(工程S15E,S15F)。なお、図3には示さないが、引き続き、第4(第N)の空調システム14にも同様の減菌処理を行うことが可能である。
また、植物工場1(1A)全体の減菌処理時間の節約のため、同時に複数の空調システムへの減菌を行うことも可能である。例えば、第1・第3の空調システム11,13を同時に送風運転に切り替えて、これらのシステム11,13の各経路に乾燥空気A(図1(a)中の実線矢印を参照)を導入して減菌処理を行いつつ(工程S15A、システム減菌工程)、第2・第4の空調システム12,14は除湿運転を維持又は強化して栽培室2の抑制モードを確保するようにしてもよい。そして、第1・第3の空調システム11,13の経路11a〜11d,13a〜13dへの減菌処理が完了したら各システム11,13の運転モードを元に戻し、第2・第4の空調システム12,14の方へ同様の減菌処理(除湿運転→送風運転)を実施するようにしてもよい(工程S15C、システム減菌工程、図1(a)中の一点鎖線矢印を参照))。
(第1真菌抑制モードの完了)
以上のように、栽培室2とともに第1〜第4(第N)の空調システム11〜14への減菌処理(工程S15A〜S15F)が行われるが、この処理が予め決められた第2減菌期間を経過したと判定されれば、第1真菌抑制モードS7Aは完了する(工程S16)。第2減菌期間は、少なくとも第1減菌期間以上の期間を確保する。その後、植物4の生育度が充分であるかどうかを判定する(工程S8、図2を参照)。これが肯定的な結果であれば本発明の方法は完了する。一方、否定的な結果であれば再度、栽培モード(つまり、工程S1)に戻る。
(第2真菌抑制モード:植物工場に空調システムが1台のみ設置されている場合)
別の例として、植物工場1に、図1(b)に示すように空調システム11が1台のみ設置されている場合の真菌抑制方法(第2真菌抑制モードS7B)について説明する。図4に、第1空調システム11が1台のみ存在する場合の抑制モードS7Bのフローチャートを示す。
上述の工程S6の判定後に第2真菌抑制モードS7Bに入ると、上述の第1真菌抑制モードS7Aでの処理と同様に、第1空調システム11を用いて栽培室2内を低湿度状態に変更し(工程S21、室内除湿工程)、栽培室2内の温度や湿度が目標値に達したかどうか判定する(工程S22)。そして、好ましくは、栽培空間である栽培室2内だけでなく、第1空調システム11内の空気流通経路11a〜11d(特に、熱交換器11dの表面)に対しても真菌抑制(減菌)処理が必要かどうかを判断する(工程S23、同時減菌確認工程)。予め決められた所定期間(第1減菌期間)だけ、栽培室2が上記低湿度環境に保持される(工程S24)。
そして、工程S23において第1空調システム11への減菌が不要と判定された場合には、第1減菌期間が経過するまで、第2真菌抑制モードS7Bが維持され(工程S24)、その後、直ぐに第2真菌抑制モードS7Bは完了する。
一方、工程S23において第1空調システム11への減菌が必要と判定された場合には、第1空調システム11を除湿運転から送風運転に切り替え、栽培室2内の乾燥空気Aをその経路11a〜11d(特に、熱交換器11dの表面)に導入し、栽培室2と第1空調システム11との間で乾燥空気Aを循環させる(工程S25A、システム減菌工程、図1(b)中の実線矢印を参照)。
ただし、第2真菌抑制モードS7Bでは、工程S25Aの送風運転の間、栽培室2内の低湿度環境を保持するため別の空調システムが存在しないため、第1空調システム11への減菌を極めて短期間で効率的に行う工夫が求められる。そこで、図1(b)に示すように、第1空調システム11の経路11a〜11d内に紫外線照射装置11eを予め設けておき、送風運転の間に、乾燥空気Aが流れる熱交換器11dの表面に紫外線Uを更に照射する(工程S26)ことが好ましい。ここで、照射する紫外線Uは、260nmを中心とした波長域とし、照射面では3500J/m程度の積算線量を確保する必要がある。この紫外線照射装置11eに一般的な公知の照射装置を用いた場合は、少なくとも5分程度以上の照射期間を設ける必要がある。
上記処理(工程S25A,S26)を第1の送風期間が経過するまで第1空調システム11への減菌処理を行い(工程S25B)、栽培室2及び第1空調システム11に対する減菌処理(S21〜S26)の合計時間が第2減菌期間になるまで処理を継続する(工程S27)。
上述の工程S24(又は、条件によって工程S27)が終了すれば、第2真菌抑制モードS7Bは完了する。その後、植物4の生育度が充分であるかどうかを判定する(工程S8、育成度確認工程、図2を参照)。肯定的な結果であれば本発明の方法は完了する。一方、否定的な結果であれば再度、栽培モード(つまり、工程S1)に戻る。
(フリルレタスを使った実証試験)
実際に本発明の真菌抑制方法を用いてフリルレタスを栽培し、後述の比較例も検討し、その効果を比較検証してみた(実施例2)。比較例の栽培実験では、環境要因の影響を極力排除するため、後述のように、相対湿度以外の環境条件を実施例2に極力一致させた。なお、栽培室2への空調システム11は1台のみ利用した。
光源36として、LEDタイプの照明具を用い、LED素子としては光合成に必要な波長成分である赤色と青色の出力をそれぞれ自在に設定できるタイプを用いた。赤色と青色の比率をR/B=4とし、床面光合成有効光量子束密度は150μmol/(sec・m)に調整した。明期及び暗期は、1日当たり16時間、8時間に設定した。実施例2及び比較例とも、同じ栽培室2内を用いて栽培とすることでCO濃度も一致させた。
栽培室2の温度は25±0.3℃であり、相対湿度は通常(つまり、栽培モード)で75%、真菌抑制モードS7Bに入った場合には、50%又は60%を目標に制御した。これに対し、比較例では常に75%に設定した(つまり、真菌抑制モードS7Bに入れない設定にした)。なお、相対湿度の制御幅は±0.4%である。培養液31の条件も一致させ、同じ容器32を利用した。なお、実験期間の培養液管理はpHと電気伝導度ECの調整により実施した。それぞれの制御範囲は、pH=6.4±0.4及びEC=1.00±0.02mS/cmである。
上述の試験条件の下でフリルレタスの栽培を行った。なお、フリルレタスの定植から収穫に至るまでの期間は約24日である。この実証実験の結果を以下の表1に示す。
Figure 2021188752
(植物栽培効率の維持と真菌抑制の両立)
この表1から、実施例2(真菌抑制モードS7B実装下で)のレタスの成長率は、どの相対湿度の場合でも、比較例と比べほぼ同等かむしろ向上しているのに対し、真菌胞子については発芽させた上で菌糸の伸長を停止させることに成功したことを確認できた。一方、比較例では真菌胞子は発芽後も持続的に伸長していることを確認した。これらの比較検討結果から、本発明の方法によれば、植物の栽培効率維持と真菌抑制との両立を実現できることが判った。
(明期・暗期の比較実験)
また、本発明者らは、本発明の抑制モード(低相対湿度環境)を暗期にあてた場合(実施例3)と、明期にあてた場合(比較例)でのレタス体内での硝酸態窒素量を測定した。この測定結果を図5に示す。図5より、比較例(明期)に比べて実施例3の場合の方が、レタス体内での硝酸態窒素量が有意に低くなっていることが判った。
この現象は以下のように考察できる。すなわち、比較例のように明期に低相対湿度環境にすると、暗期と同様に蒸散量が増える(但し、蒸散量が増える機構は異なる)。しかし、明期の場合は蒸散量が増えすぎると、植物は水分量を保持するために気孔を閉じようとする。気孔を閉じると二酸化炭素を吸収しにくくなり、光合成反応を阻害する。そして光合成反応が阻害されると植物体内で硝酸態窒素(苦味・えぐみの成分)を消費できなくなる。逆に言えば、実施例3のように、明期の相対湿度を高く保つ一方で暗期にのみ相対湿度を低くすることで、収穫物の苦味・えぐみを抑制できる。上述の背景技術で説明したように、硝酸態窒素量を低く抑えることができれば、消費者の健康維持の観点からも有用と考えられる。
なお、本発明の好適な態様(実施例3)のように暗期に相対湿度を下げる操作は、自然界で一般的に起きる現象の「逆」であることに留意されたい。自然界では、通常、図6(a)に示すように日中、気温の上昇と共に相対湿度が低下し、夜間は気温の低下と共に相対湿度が上昇する。これに対し、図6(b)に示すように、低湿度期間を暗期に限定するという本発明の操作は、これとは逆に光合成が行われない暗期に敢えて相対湿度を低下させる発想である。自然界の現象を模倣するのが一般的な手法だが、本発明者らは逆転の発想で上述の利点を見出したのである。
(変形例:植物工場以外の環境への用途)
上述の実施例1〜3では植物工場内の栽培室及びこれに付随する空調システムに対して真菌増殖を抑制しながら植物を栽培する方法について説明したが、必ずしも上記用途に限定されない。
例えば、植物を栽培しない食品工場内の加工室や病院の病室などの室及びこれらに付随する空調システムに対しても本発明の真菌増殖抑制方法を適用できる。但し、この場合、実施例1で説明した植物栽培モードは、通常の空調モード(室内への冷房運転や暖房運転)であり、真空抑制モード(工程S7)へ入る判定条件には、真菌増殖指数Iの判定工程S4は含まれるものの、植物工場特有又は植物栽培特有の追加的な判定工程(工程S3,S5,S6)は含まれないことに留意されたい。言い換えれば、上述した真菌抑制モード(工程S7A,S7B)の内容自体(例えば、乾燥空気を用いた室内及び空調システムへの同時殺菌処理)は、植物工場以外の室内環境への減菌処理にも適用可能である。
本発明の方法によれば、植物工場において、植物栽培効率の維持を保ちつつ、栽培室内及び空調システム内の減菌(真菌抑制)を実現することが可能となる。
また、本発明の方法は、金属に対する腐食性が低く、かつ、人体に安全であり、空調対象室の温熱環境を悪化させず、短時間の運転で処理可能である。
また、本発明の好適な態様によれば、暗期にのみ上述の真菌抑制モードを実行させているため、これによって栽培される植物の苦みや食味悪化を軽減することができる。
このように、本発明の真菌抑制方法は、産業上の利用可能性及び利用価値が非常に高い。
1,1A,1B 植物工場
2 栽培室
3 養液栽培装置
4 植物
11,12,13,14 空調システム
11a,12a,13a,14a 空気吸い込み用風導管
11b,12b,13b,14b 空気吐き出し用風導管
11c,12c,13c,14c 空調システムの本体内の空気流通空間
11d,12d,13d,14d 熱交換器
11e 紫外線照射装置
31 培養液
32 容器
33 供給管
34 排出管
35 栽培棚
36 光源
A 乾燥空気
I 真菌増殖指数
P ポンプ
U 紫外線
S1 室内計測工程
S2 指数算出工程
S3 発芽確認工程
S4 指数確認工程
S5 第1追加確認工程
S6 第2追加確認工程
S7 モード開始判定工程
S7A,S7B 第1真菌抑制モード,第2真菌抑制モード
S8 育成度確認工程
S11,S21 室内除湿工程
S13,S23 同時減菌確認工程
S15A,S15C,S15E,S25A システム減菌工程
S26 紫外線照射工程
すなわち本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
空調システムが設置された室内の真菌増殖を抑制する方法であって、
前記室内の温度及び湿度を計測する室内計測工程と、
計測された前記温度及び前記湿度、並びに、予め取得しておいた真菌の生育速度と前記温度及び前記湿度との相関関係から真菌増殖指数を算出する指数算出工程と、
前記真菌増殖指数が予め定めた閾値を超えたことを確認する指数確認工程と、
前記指数確認工程で前記閾値を超えたことを確認した後に真菌抑制モードを開始するモード開始判定工程と、
を含み、
前記真菌抑制モードでは、
前記空調システムの除湿運転を行い、前記室内を低湿度状態に維持する室内除湿工程と、
前記空調システムへも減菌が必要かどうかを確認する同時減菌確認工程と、
を含み、かつ、
前記同時減菌確認工程で否定的な判定であれば、第1減菌期間の経過後に前記真菌抑制モードを完了し、
前記同時減菌確認工程で肯定的な判定であれば、前記空調システムを前記除湿運転から送風運転に切り替えて、該空調システム内の経路に前記室内の乾燥空気を導入し、該空調システムと前記室内との間を循環させるシステム減菌工程を含み、かつ、第1減菌期間以上長い期間である第2減菌期間の経過後に前記真菌抑制モードを完了し、かつ、
前記室内が人工光型植物工場内で植物を栽培するための栽培室内であり、
前記栽培室内の環境に合わせて予め定めた胞子発芽期間が経過したことを確認する発芽確認工程と、
前記植物に適した栽培効率維持期間が経過したことを確認する第1追加確認工程と、
をさらに含み、
前記モード開始判定工程では、前記指数確認工程の他に、前記発芽確認工程と、第1追加確認工程と、の全てで肯定的な結果を得られた後に前記真菌抑制モードを開始すること
を特徴とする真菌増殖抑制方法。
(態様2)
前記栽培室内が暗期にあるかどうか、かつ、該暗期であった場合に前記真菌抑制モードを実行するには十分な期間が残っているかどうかを確認する第2追加確認工程と、
をさらに含み、
前記モード開始判定工程では、前記指数確認工程の他に、前記発芽確認工程と、第1追加確認工程と、第2追加確認工程と、の全てで肯定的な結果を得られた後に前記真菌抑制モードを開始すること
を含むことを特徴とする態様に記載の真菌増殖抑制方法。
(態様3)
前記システム減菌工程は、前記空調システム内の熱交換器付近に設置された紫外線照射装置から前記熱交換器に向けて紫外線を照射する照射工程と、
をさらに含むこと
を特徴とする態様1又は態様2に記載の真菌増殖抑制方法。
(態様4)
前記室内に対して前記空調システムを複数設置しておき、
前記同時減菌確認工程で肯定的な判定であれば、前記空調システムを、前記システム減菌工程を先に実行するものと、後に実行するものと、に割り当て、
前記先の空調システムが前記システム減菌工程を実行する間、前記後の空調システムは、前記除湿運転を維持或いは増強して前記室内の前記低湿度状態を維持し、
前記先の空調システムへの前記システム減菌工程を実行した後、前記先の空調システムでは前記送風運転から元の除湿運転に戻し、前記後の空調システムでは前記システム減菌工程を開始すること
を特徴とする態様1〜3のいずれかに記載の真菌増殖抑制方法。

Claims (5)

  1. 空調システムが設置された室内の真菌増殖を抑制する方法であって、
    前記室内の温度及び湿度を計測する室内計測工程と、
    計測された前記温度及び前記湿度、並びに、予め取得しておいた真菌の生育速度と前記温度及び前記湿度との相関関係から真菌増殖指数を算出する指数算出工程と、
    前記真菌増殖指数が予め定めた閾値を超えたことを確認する指数確認工程と、
    前記指数確認工程で前記閾値を超えたことを確認した後に真菌抑制モードを開始するモード開始判定工程と、
    を含み、
    前記真菌抑制モードでは、
    前記空調システムの除湿運転を行い、前記室内を低湿度状態に維持する室内除湿工程と、
    前記空調システムへも減菌が必要かどうかを確認する同時減菌確認工程と、
    を含み、かつ、
    前記同時減菌確認工程で否定的な判定であれば、第1減菌期間の経過後に前記真菌抑制モードを完了し、
    前記同時減菌確認工程で肯定的な判定であれば、前記空調システムを前記除湿運転から送風運転に切り替えて、該空調システム内の経路に前記室内の乾燥空気を導入し、該空調システムと前記室内との間を循環させるシステム減菌工程を含み、かつ、第1減菌期間以上長い期間である第2減菌期間の経過後に前記真菌抑制モードを完了すること
    を特徴とする真菌増殖抑制方法。
  2. 前記システム減菌工程は、前記空調システム内の熱交換器付近に設置された紫外線照射装置から前記熱交換器に向けて紫外線を照射する照射工程と、
    をさらに含むこと
    を特徴とする請求項1に記載の真菌増殖抑制方法。
  3. 前記室内に対して前記空調システムを複数設置しておき、
    前記同時減菌確認工程で肯定的な判定であれば、前記空調システムを、前記システム減菌工程を先に実行するものと、後に実行するものと、に割り当て、
    前記先の空調システムが前記システム減菌工程を実行する間、前記後の空調システムは、前記除湿運転を維持或いは増強して前記室内の前記低湿度状態を維持し、
    前記先の空調システムへの前記システム減菌工程を実行した後、前記先の空調システムでは前記送風運転から元の除湿運転に戻し、前記後の空調システムでは前記システム減菌工程を開始すること
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の真菌増殖抑制方法。
  4. 前記室内が人工光型植物工場内で植物を栽培するための栽培室内であり、
    前記栽培室内の環境に合わせて予め定めた胞子発芽期間が経過したことを確認する発芽確認工程と、
    前記植物に適した栽培効率維持期間が経過したことを確認する第1追加確認工程と、
    をさらに含み、
    前記モード開始判定工程では、前記指数確認工程の他に、前記発芽確認工程と、第1追加確認工程と、の全てで肯定的な結果を得られた後に前記真菌抑制モードを開始すること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の真菌増殖抑制方法。
  5. 前記栽培室内が暗期にあるかどうか、かつ、該暗期であった場合に前記真菌抑制モードを実行するには十分な期間が残っているかどうかを確認する第2追加確認工程と、
    をさらに含み、
    前記モード開始判定工程では、前記指数確認工程の他に、前記発芽確認工程と、第1追加確認工程と、第2追加確認工程と、の全てで肯定的な結果を得られた後に前記真菌抑制モードを開始すること
    を含むことを特徴とする請求項4に記載の真菌増殖抑制方法。
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