JP2021187771A - 歯科用接着性組成物及び歯科用接着性組成物包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】汎用的なコンポジットレジン等の光硬化型歯科用充填材料に適用可能な歯科用接着性組成物であって、充填材料の充填前の段階での光照射が不要な1液型の歯科用接着性組成物を提供する。【解決手段】1質量部〜40質量部の(a1)酸性基含有重合性単量体、を含む100質量部の(A)重合性単量体と、0.05質量部〜2質量部の(B)二価の銅化合物と、0.1質量部〜10質量部の(c1)有機過酸化物を含む(C)過酸化物と、0.1質量部〜10質量部の(D)鉄アレーン錯体と、1質量部〜50質量部の(E)水と、10質量部〜300質量部の(F)有機溶媒と、を含有し、かつ還元剤を含有しない、1液型の歯科用接着性組成物を、芳香族アミンを含有する光硬化型の充填材料に対して使用する。【選択図】なし

Description

本発明は、充填材料を歯質に接着するための歯科用接着性組成物及び歯科用接着性組成物包装体に関する。
齲蝕等により損傷を受けた歯牙の修復には、コンポジットレジンと呼ばれる硬化性の充填材料が用いられている。このような充填材料は、歯牙を構成する歯質に対する接着性がほとんど無い。このため、充填材料は、通常、接着材を介して歯質に接着される。一般的な接着材は、高い接着力を得るために、修復対象となる歯牙に塗布された接着材層上に充填された充填材料を硬化させる前に接着材層を予め或る程度硬化させる必要がある。
コンポジットレジンのような充填材料を歯質に接着するための接着材としては、一般に光照射によって硬化可能な光重合型のボンディング材が使用されることが多く(例えば、特許文献1参照。)、このような光硬化型接着材を使用する場合には、接着材塗布後、充填材充填する前に患者口腔内に光照射器を挿入して数秒から数十秒間光照射して接着材層の硬化を行う必要がある。
ところが、患者によっては上記操作を負担と感じる場合があり、さらに、上記操作中に塗布面を患者の唾液や血液などで汚染させてしまう危険性もある。このような理由から、光照射作業を要さない化学重合型接着材に対する要望もあり、化学重合型のボンディング材も開発されている。
たとえば特許文献2には、「互いに分包された第1剤および第2剤を有し、(A)酸性基含有重合性単量体、(B)硫黄原子含有重合性単量体、(C)シランカップリング剤、(D)ボレート化合物、および、(E)水からなる5成分を少なくとも含み、前記第1剤には、前記5成分のうち、前記(A)酸性基含有重合性単量体および前記(B)硫黄原子含有重合性単量体のみが含まれ、前記第2剤には、前記5成分のうち、前記(C)シランカップリング剤、前記(D)ボレート化合物および前記(E)水のみが含まれることを特徴とする2液型歯科用接着性組成物」からなるボンディング材が記載されている。
また、特許文献3には、特定の修復材専用の1液型の接着材(前処理剤)が開示されている。すなわち、特許文献3には、「(A)a)酸性基含有ラジカル重合性単量体、b)第4周期の遷移金属化合物、及びc)水を含み、且つアミン化合物を含んでいない前処理剤と、(B)d)酸性基を有さないラジカル重合性単量体、e)有機過酸化物、f)光重合開始剤、及びg)シリカ系無機フィラーからなり、該g)シリカ系無機フィラーの含有量がd)酸性基を有さないラジカル重合性単量体100質量部に対して30〜900質量部であり、且つアリールボレート化合物を含んでいない充填修復材とからなることを特徴とする歯科用充填修復キット」が記載されている。
特開2009−137960号公報 特開2018−027913号公報 特開2009−167132号公報
特許文献2に開示されるボンディング材は、2液型歯科用接着性組成物からなるものであり、第1剤と第2剤とを治療中に混合する必要があるため、手間及び時間がかかり、操作性の観点からは必ずしも満足のゆくものではない。
一方、特許文献3に開示される前処理剤は、ボンディング材に相当するものであり、1液型であるため操作性の点では改善がなされているものの、その接着対象は、特定の組成を有する充填修復材に限定されている。
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、汎用的な充填材料に適用可能な歯科用接着性組成物であって、充填材料の充填前の段階での光照射による硬化が不要な1液型の歯科用接着性組成物及び歯科用接着性組成物包装体を提供することにある。
上記目的を達成するため、汎用的な充填材料である光硬化型の充填材料に着目し、当該充填材料に適用可能で且つ充填材料の充填前の段階での光照射による硬化が不要な1液型の歯科用接着性組成物を開発すべく鋭意検討を行った。具体的には、殆どの光硬化型の充填材料には芳香族アミン化合物が配合されているという事実に鑑み、充填材料に含有される芳香族アミン化合物を利用して1液型の化学重合型歯科用接着性組成物とすることを着想し、検討を行った。その結果、芳香族アミン化合物を利用した化学重合開始剤系のみでは十分な硬度を得ることが困難であったものの、特定の光重合開始剤を更に配合して、充填材料硬化時に照射される光の透過光(充填材料層を透過した光)を利用した光重合が起こるようにした場合には、高強度の(歯科用接着性組成物の硬化体からなる)接着層が得られ、高い接着力が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の形態は、芳香族アミンを含有する光硬化型の充填材料を歯質に接着するための1液型の歯科用接着性組成物であって、
1質量部〜40質量部の(a1)酸性基含有重合性単量体、を含む100質量部の(A)重合性単量体と、0.05質量部〜2質量部の(B)二価の銅化合物と、0.1質量部〜10質量部の(c1)有機過酸化物を含む(C)過酸化物と、0.1質量部〜10質量部の(D)鉄アレーン錯体と、1質量部〜50質量部の(E)水と、10質量部〜300質量部の(F)有機溶媒と、を含有し、かつ“(B)二価の銅化合物及び(C)過酸化物との反応によって(A)重合性単量体の重合を開始させる還元剤”を含有しない歯科用接着性組成物である。
本発明の第一の形態である上記接着性組成物(以下、「本発明の接着性組成物」ともいう。)においては、上記(D)鉄アレーン錯体が、下記式(1)
Figure 2021187771
{式中、ベンゼン環を構成する6個の炭素原子に夫々結合する6個のRは、夫々独立に水素原子又は置換基を有していても良い1価の炭化水素基であり、1価の炭化水素基であるRが複数隣接する場合、相互に隣接するRは互いに結合して前記ベンゼン環と共に縮合芳香族炭化水素環を形成してもよく、Xは、ハロゲン化物イオン、スルホン酸イオン、BF 、PF 、AsF 、SbF 、B(C 、又はGa(C から選ばれるアニオンである。}
で表される鉄アレーン錯体であることが好ましい。
また、前記本発明の接着性組成物においては、前記(a1)酸性基含有重合性単量体1molに対して0.01mol〜1molの(G)多価金属化合物を更に含有するか、又は10質量部〜30質量部の平均一次粒子径が1nm〜20nmのヒュームドシリカを更に含有することが好ましく、更に前記(c1)有機過酸化物がパーオキシエステル類を含むことが好ましい。
また、前記本発明の接着性組成物は、α−ジケトンを更に含有する前記光硬化型の充填材料を歯質に接着するための1液型の歯科用接着性組成物であることが好ましい。
本発明の第二の形態は、前記本発明の接着性組成物と、当該歯科用接着性組成物を収容する単一の遮光性容器と、を具備する歯科用接着性組成物包装体である。
本発明の第三の形態は、前記本発明の接着性組成物と、芳香族アミンを含有する光硬化型の充填材料と、の組み合わせからなる歯牙修復用キットである。
本発明の歯科用接着性組成物を用いることにより、汎用的な充填材料である芳香族アミンを含有する光硬化型の充填材料を用いて歯牙の修復を行うに際し、患者への負担を少なくしつつ、簡便な操作で確実な修復を行うことが可能となる。すなわち、本発明の歯科用接着性組成物を歯牙に使用した後、充填材料の充填前の段階での光照射器を用いた光硬化作業が不要となるので、従来の光硬化型歯科用接着性組成物を用いた場合と比べて患者への負担が少なく、且つ光照射作業時における塗布面の汚染を防止することができる。さらに、本発明の歯科用接着性組成物1液の状態で安定に保存できるため、2剤に分けて保管する必要がなく、治療時における混合作業を省略することができる。
また、上記したように、本発明の歯科用接着性組成物は、1液型の構成において高い保存安定性が得られるため、予め調製された歯科用接着性組成物を単一の遮光性容器に充填した接着性組成物包装体を商品形態とすることができる。
本発明の一実施形態に係る接着性組成物を用いて充填材料を歯牙に接着する過程を模式的に示す部分断面図である。 上記接着性組成物と上記充填材料との間の界面付近を模式的に示す部分断面図である。
以下、本発明の実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、「X〜Y」との数値範囲にはX及びYが含まれるものとし、つまり「X〜Y」は「X以上Y以下を意味するものとする。
<全体構成>
本発明の一実施形態に係る歯科用接着性組成物(以下、単に接着性組成物と呼称することもある。)は、齲蝕等により損傷を受けた歯牙を修復するために利用可能である。より詳細に、接着性組成物は、歯牙の損傷部に充填される歯科用充填材料(以下、単に充填材料と呼称する。)を、当該損傷部の表面を構成する歯質に接着するために利用可能である。
多くの一般的な光硬化型の充填材料には、光重合開始剤としてα−ジケトンが含まれ、重合促進剤として芳香族アミンが含まれる。本実施形態に係る接着性組成物を適用可能な接着性組成物は、特殊な構成の充填材料ではなく、このような一般的な光硬化型の充填材料に広く適用可能である。
本実施形態に係る接着性組成物は、1液型として構成され、1質量部〜40質量部の(a1)酸性基含有重合性単量体、を含む100質量部の(A)重合性単量体と、0.05質量部〜2質量部の(B)二価の銅化合物と、0.1質量部〜10質量部の(c1)有機過酸化物を含む(C)過酸化物と、0.1質量部〜10質量部の(D)鉄アレーン錯体と、1質量部〜50質量部の(E)水と、10質量部〜300質量部の(F)有機溶媒と、を含有し、(B)二価の銅化合物及び(C)過酸化物との反応によって(A)重合性単量体の重合を開始させる還元剤を含有しない。
上記(B)二価の銅化合物と上記(C)過酸化物は、使用時において光硬化型の充填材料から拡散等によって供給される芳香族アミンと共に化学重合開始剤を構成するものであり、上記接着性組成物が塗布された歯牙表面(塗布面)上に上記光硬化型の充填材料が配置されると重合硬化が始まるので、充填材料の充填前の段階での光照射を行う必要はない。一方で、本実施形態に係る接着性組成物自体は、還元剤として機能する芳香族アミンを含めて「(B)二価の銅化合物及び(C)過酸化物との反応によって(A)重合性単量体の重合を開始させる還元剤」を含有しないため、全ての成分が混合された状態で保管されても、(A)重合性単量体の化学重合型の硬化が開始することなく、長期間にわたって一定の品質が保持される。つまり、この接着性組成物は、1液型の構成において長期間の高い保存安定性が得られる。
さらに、前記(D)鉄アレーン錯体は、前記(C)過酸化物として含まれる(c1)有機過酸化物の作用によって少量の光によっても十分な硬化を起こすことができる高活性光重合開始剤として機能するようになり、充填された光硬化型の充填材料を硬化させる際の光、より詳しくは充填材料層を透過した透過光によって光重合型の硬化を実現し、前記化学重合型の硬化を補完して接着性組成物を充分に硬化させることで、高い接着強度の接着層を形成することができる。したがって、このような歯科用接着性組成物では、充填材料の充填前の段階での光照射が不要な1液型の構成を実現することができる。
このような作用機構を、図面を用いて説明すると、図1に示されるように、本実施形態に係る接着性組成物が塗布された歯牙の凹状の損傷部に、接着性組成物を硬化させることなく充填材料が充填される。歯牙の損傷部に接着性組成物を介して充填材料が充填された状態を模式的に示す部分断面図である図1に示す状態では、未硬化の接着性組成物と未硬化の充填材料とが直接接触している。
図2A,2Bは、図1に示す状態における接着性組成物と充填材料との間の界面付近を模式的に示す部分断面図である。充填材料が接着性組成物に接触すると、図2Aに示すように充填材料に重合促進剤として含まれる芳香族アミンが接着性組成物に供給される。接着性組成物に供給される芳香族アミンは還元性を有する。
このため、接着性組成物では、(C)過酸化物を酸化剤とし、芳香族アミンを還元剤とする酸化還元反応が発生する。つまり、この接着性組成物では、芳香族アミンが(C)過酸化物とともに重合開始剤(レドックス開始剤)として機能する。これにより、接着性組成物では、(A)重合性単量体の化学重合型の硬化が進行する。
また、図1に示す状態から充填材料の硬化のために光照射が行われると、図2Bに示すように、充填材料を透過した照射光の一部が接着性組成物に入射する。これにより、接着性組成物では、(D)鉄アレーン錯体と(c1)有機過酸化物とによって構成される光重合開始剤の作用によって(A)重合性単量体の光重合型の硬化が進行する。
このように、本実施形態に係る接着性組成物では、(A)重合性単量体の化学重合型の硬化と光重合型の硬化とを同時に進行させることができる。したがって、この接着性組成物では、(A)重合性単量体を迅速かつ充分に硬化させることができるため、患者への負担を抑えつつ高い接着強度の接着層が得られる。
<詳細構成>
[(A)重合性単量体]
本実施形態に係る接着性組成物は、必須成分として重合性単量体(モノマー)、すなわち分子内に少なくとも1つの重合性不飽和基を有する化合物を含む。重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基等の(メタ)アクリロイル系基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を挙げることができるが、重合性及び生体への安全性の観点から特に(メタ)アクリロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系のラジカル重合性単量体を使用することが好適である。モノマー成分は1種類のモノマーのみからなっていても複数種類のモノマーの混合物からなっていても良い。
本実施形態に係る接着性組成物におけるモノマーは、歯質脱灰性を有するようにするために(a1)酸性基含有重合性単量体(酸性モノマー)を含む必要がある。また、(a2)酸性基非含有重合性単量体(以下、「非酸性モノマー」ともいう。)を含むことが好ましい。以下に、酸性モノマー及び非酸性モノマーについて詳しく説明する。
(a1)酸性基含有重合性単量体(酸性モノマー)
酸性モノマーとは、分子内に、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}、酸無水物基{−C(=O)−O−C(=O)−}、酸ハロゲン化物基{−C(=O)X、但しXはハロゲン原子を表す。}等の酸性基を有する重合性単量体であり、歯質、卑金属材料及び金属酸化物材料に対する接着性を高める機能を有する。酸性モノマーは、水を含む場合の水に対する安定性が高く、歯面のスメアー層の溶解や歯牙脱灰を緩やかに実施できると言う理由から酸性基としてカルボキシル基(−COOH)、酸無水物基{−C(=O)−O−C(=O)−}、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}及びホスホノ基{−P(=O)(OH)}からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性単量体からなることが好ましい。効果の観点から、酸性モノマーは、リン酸二水素モノエステル系{基:−O−P(=O)(OH)}を有する。}、リン酸水素ジエステル系{基:(−O−)P(=O)OHを有する。}又はカルボン酸系(基:−COOHを有する。)、の(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
好適に使用できる酸性モノマーを具体的に例示すれは、リン酸二水素モノエステル系及びリン酸水素ジエステル系のもとして、2−(メタ)アクリロキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等を、カルボン酸系のものとして、アクリル酸、メタクリル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、11−(メタ)アクリロキシ1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等を挙げることができる。
また、本実施形態に係る接着性組成物においては、(A)重合性単量体を100質量部としたとき、(a1)酸性基含有重合性単量体の配合割合を1質量部〜40質量部とし、5質量部〜30質量部とすることが好ましく、10質量部〜20質量部とすることがより好ましい。これにより、接着性組成物では、歯質に対する十分な接着強度、及び高い接着耐久性が得られやすくなる。
(a2)酸性基非含有重合性単量体(非酸性モノマー)
非酸性モノマーは、接着層の構成成分となるばかりでなく、多官能重合性の非酸性モノマーによってコンポジットレジン等のラジカル重合性単量体を含む歯科材料との接着性を高めると共に接着層内に架橋構造を導入して強度を高め、延いては耐久接着性をより高める機能を有する。非酸性モノマーは、酸性モノマー以外のモノマーであれば特に限定されず、従来の歯科用接着性組成物で使用される非酸性モノマーが特に制限なく使用できる。
好適に使用できる非酸性モノマーを例示すれば、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート等を挙げことができる。
非酸性モノマーは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。非酸性モノマー含有量は、酸性モノマーの含有量の残部であり、酸性モノマーの含有量に応じて自動的に決定される。
[(B)二価の銅化合物]
(B)二価の銅化合物は、(C)過酸化物と充填材料に含まれる芳香族アミンとのレドックス反応を促進する作用を有する。別言すれば、前記3成分で構成されるレドックス型の化学重合開始剤の一成分である。したがって、接着性組成物では、(B)二価の銅化合物を必須の構成要素として含むことにより、化学重合型の硬化が促進されるため、充分な硬化が得られやすくなる。
(B)二価の銅化合物は、水和物であっても無水物であってもよい。好適に使用できる二価の銅化合物を例示すれば、塩化銅(II)、硫酸銅(II)五水和物、硝酸銅(II)、トリフルオロメタン硫酸銅(II)、酢酸銅(II)一水和物、アセチルアセトン銅(II)、ナフテン酸銅(II)、サリチル酸銅(II)、安息香酸銅(II)、メタクリル酸銅(II)、フタル酸ブチル銅(II)、グルコン酸銅(II)、ジクロロ(1,10−フェナントロリン)銅(II)、エチレンジアミン四酢酸銅(II)二ナトリウム四水和物、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、ジエチルチオカルバミン酸銅(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナト銅(II)、ビス(1,3−プロパンジアミン)銅(II)ジクロリド、ビス(8−キノリノラト)銅(II)、等を挙げることができる。これら二価の銅化合物は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)二価の銅化合物の配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、0.05質量部〜2質量部とし、0.1質量部〜1質量部とすることが好ましい。配合割合が0.05質量部以上では、特に高い接着性が得られる。配合割合が2質量部以下では、優れた保存安定性が得られやすくなる。
[(C)過酸化物]
本実施形態に係る接着性組成物に含まれる過酸化物(C)は、(c1)有機過酸化物を含む必要がある。また、当該過酸化物(C)は、必要に応じ、(c2)無機過酸化物を更に含んでいてもよい。(c1)有機過酸化物及び/又は(c2)無機過酸化物は前記3成分得構成されるレドックス型の化学重合開始剤の酸化剤成分として機能し、(c1)有機過酸化物は、(D)鉄アレーン錯体との組み合わせにより光重合開始剤として機能する。
(c1)有機過酸化物
有機過酸化物の配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部とし、0.5質量部〜5質量部とすることが好ましい。この範囲を満足することにより、高い重合活性と、高い保存安定性を発揮することができる。有機過酸化物としては公知の化合物が制限なく使用できるが、代表的には、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリールパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートを挙げることができる。上記の有機過酸化物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
ケトンパーオキサイド類としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル 4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
ハイドロパーオキサイド類としては、P−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、スクシニックアシッドパーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシジカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジー2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
パーオキシエステル類としては、α,α−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等が挙げられる。
なお、これら以外にもt−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が好適に使用できる。(c1)有機過酸化物としては、これら有機過酸化物を、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、保存安定性の点からパーオキシエステル類を使用するのが特に好ましい。
(c2)無機過酸化物
)無機過酸化物としては公知の化合物が制限なく使用できるが、代表的には、過炭酸塩、ペルオキソ二硫酸化合物、過リン酸塩、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムを挙げることができる。中でも、水分を多く含む環境下での重合活性の高さの観点から、ペルオキソ二硫酸化合物が好ましい。具体的には、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのペルオキソ二硫酸化合物などが挙げられ、特に、水溶性が高いことからペルオキソ二硫酸ナトリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウムが好ましく、入手の容易性も考慮するとペルオキソ二硫酸ナトリウムが最適である。これら無機過酸化物は、単独で又は2種以上を混合して用いてもかまわない。
本実施形態に係る接着性組成物が(c2)無機過酸化物を含む場合における、当該無機過酸化物の配合量は、通常(A)重合性単量体100質量部に対して通常0.01質量部〜5質量部であり、好ましくは0.05質量部〜2質量部である。
[(D)鉄アレーン錯体]
(D)鉄アレーン錯体は、前記(c1)有機過酸化物と共に光重合開始剤を構成する。すなわち、(D)鉄アレーン錯体は、光照射によって光を吸収し、鉄原子上の配位子が、(c1)有機過酸化物と交換することで該有機化酸化物が活性化され、重合開始種が発生する。
(D)鉄アレーン錯体は、光を吸収し、配位子が交換するものであれば公知の鉄アレーン錯体が特に制限無く利用できるが、配位子交換能が高く、前記(c1)有機過酸化物と併用したときの光重合活性が高いと言う理由から、下記一般式(1)で示される鉄アレーン錯体を使用することが好ましい。このような鉄アレーン錯体を用いることにより光重合型の硬化が促進され、延いては接着強度が向上する。
Figure 2021187771
上記一般式(1)式中において、ベンゼン環を構成する6個の炭素原子に夫々結合する6個のRは、夫々独立に水素原子又は置換基を有していても良い1価の炭化水素基を表す。なお、ベンゼン環に1価の炭化水素基であるRが複数隣接して結合する場合、相互に隣接するRは互いに結合して前記ベンゼン環と共に縮合芳香族炭化水素環を形成してもよい。また、上記式中のアニオンを表すXは、ハロゲン化物イオン、スルホン酸イオン、BF 、PF 、AsF 、SbF 、B(C 、又はGa(C である。
前記Rが、互い結合して縮環構造を形成しない場合の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜20、特に炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜20、特に炭素数1〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20、特に炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜20、特に炭素数2〜8のアルキニル基、芳香環を構成する炭素数が6〜18、特に6〜14のアリール基等を挙げる事ができる。これら基のうち、好適な基を具体的に例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、1−メチルプロピル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、2−メチルビニル基、ブタジエン−1−イル基、ブタジエン−2−イル基、シクロヘキセン−3−イル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピン−1−イル基、1−ブチン−1−イル基等のアルキニル基;フェニル基、ナフタレン−1−イル基、ナフタレン−2−イル基、アントラセン−9−イル基等のアリール基を挙げることができる。
なお、上記1価の炭化水素基及び相互に隣接するRは互いに結合して前記ベンゼン環と共に縮合芳香族炭化水素環を形成する場合における縮合環は、置換基を有していても良い。好適な置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基;プロピオニル基等のアシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等を挙げることができる。また、置換基を有する場合の置換基の数は、1〜6であり、特に1又は2であることが好ましい。
また、重合性単量体中への溶解度の観点から、上記式(1)中のXは、BF 、PF 、AsF 、SbF 、B(C 、又はGa(C であることが好ましい。
以下に、特に好適に使用される(D)鉄アレーン錯体を示す。
Figure 2021187771
上記に示す通り、カチオン部としては、(η−ベンゼン)(η−シクロペンタジエン−1−イル)鉄(II)」カチオン、(η−トルエン)(η−シクロペンタジエン−1−イル)鉄(II)」カチオン、(η−クメン)(η−シクロペンタジエン−1−イル)鉄(II)」カチオン、(η−アントラセン)(η−シクロペンタジエン−1−イル)鉄(II)」カチオン、(η−ナフタレン)(η−シクロペンタジエン−1−イル)鉄(II)」カチオン、(η−フェナントレン)(η−シクロペンタジエン−1−イル)鉄(II)」カチオン、(η−ピレン)(η−シクロペンタジエン−1−イル)鉄(II)」カチオンであることが好ましい。
これらの中でも(c1)有機過酸化物と共存してもより安定に保存でき、硬化後の着色も少ないと言う理由から、下記式で示される(η−クメン)(η−シクロペンタジエン−1−イル)鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェートを使用することが最も好ましい。
Figure 2021187771
(D)鉄アレーン錯体の配合量は、(A)重合性単量体100質量部に対して0.1〜10質量部とし、より好ましくは0.5〜8質量部とすることが好ましい。この範囲を満足することにより、高い重合活性、接着性を発揮することができる。また、これら鉄アレーン錯体は2種以上のものを併用しても良い。
[(E)水]
(E)水としては、貯蔵安定性、生体適合性及び接着性の観点で有害な不純物を実質的に含まない事が好ましく、例としては脱イオン水、蒸留水等が利用できる。(E)水の配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、1質量部〜50質量部とし、2質量部〜30質量部とすることが好ましく、5質量部〜20質量部とすることが特に好ましい。
[(F)有機溶媒]
(F)有機溶媒としては、公知の有機溶媒であればいずれも制限無く用いることができるが、通常は、沸点が100℃未満の揮発性の高い有機溶媒を用いることが好ましい。(F)有機溶媒の配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、10質量部〜300質量部とし、30質量部〜200質量部とすることが好ましい。
具体的に、(F)有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、蟻酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のハイドロカーボン系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒;トリフルオロエタノール等のフッ素系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、溶解性及び保存安定性等の理由で、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール等が特に好ましく使用される。(F)有機溶媒としては、1種又は2種以上の有機溶媒を組み合わせて使用することもできる。
[還元剤]
本実施形態に係る接着性組成物は、“(B)二価の銅化合物及び(C)過酸化物との反応によって(A)重合性単量体の重合を開始させる還元剤”を含有しない。このような還元剤を含む場合には、1液型としたときに十分な保存安定性を得ることができない。なお、ここで「含まない」とは積極的に配合しないという意味であり、前記した各必須成分が還元剤となる物質を不純物や微量添加剤として含む等の理由により、不可避的に混入することは許容される。但し、この場合においても還元剤の(総)含有量は(A)重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部以下である必要があり、0.01質量部以下、特に0.001質量部以下とすることが好ましい。
本実施形態に係る接着性組成物に含まれない上記還元剤としては、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチル−p−トルイジン等の芳香族アミン化合物;テトラフェニルホウ素のトリエタノールアミン塩等のアリールボレート化合物;p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸化合物;ベンゾイルチオ尿素等のチオ尿素化合物;ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)等の(B)二価の銅化合物及び(D)鉄アレーン錯体以外の第4周期遷移金属化合物等を挙げることができる。
[その他の成分]
本実施形態に係る接着性組成物は、必要に応じて、上記の成分以外の各種添加剤などの成分を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、(G)前記(D)以外の光重合開始剤(その他光重合開始剤)、(H)多価金属化合物、(I)フィラー、着色剤、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエンなどの重合禁止剤などが挙げられる。
(G)その他の光重合開始剤
前記(D)以外のその他の光重合開始剤としては、例えば、カンファーキノンなどのα−ジケトン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドなどのビスアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
ただし、還元剤として酸化剤と反応する芳香族アミン類、アリールボレート化合物類等は保存安定性の観点から含まない。
(H)多価金属化合物
接着性組成物では、(H)多価金属化合物を配合するのが、接着性及び保存安定性の観点から好ましい。(H)多価金属化合物が(a1)酸性基含有重合性単量体と架橋することによって、より高い接着強度の接着層が得られる。また、接着性組成物では、(H)多価金属化合物を予め(a1)酸性基含有重合性単量体と架橋させることで、保管時に(a1)酸性基含有重合性単量体と(B)二価の銅化合物との架橋が生じにくくなる。したがって、接着性組成物では、(a1)酸性基含有重合性単量体と(B)二価の銅化合物との架橋により生成される銅化合物の析出が抑えられる。これにより、この接着性組成物では、保管時における銅化合物の析出による接着強度の低下を抑制することができる。(H)多価金属化合物の配合割合は、(a1)酸性基含有重合性単量体1molに対して、0.01mol〜1molとすることが好ましい。
(H)多価金属化合物としては、第4周期の遷移金属以外の、(a1)酸性基含有重合性単量体と架橋可能な2価以上の金属化合物のことであり、代表的なものを例示すれば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、ランタン、ランタノイド等の金属化合物である。(B)二価の銅化合物及び(D)鉄アレーン錯体以外の第4周期の遷移金属は、(C)過酸化物と酸化還元反応が生じる可能性があるため含まない。また、(H)多価金属化合物は、多価金属アルコキシド、多価金属フッ化物、多価金属炭酸塩、多価金属水酸化物、多価金属水素化物、及びアルキル多価金属から選択される少なくとも1種類の化合物である。
(H)多価金属化合物としては、保存安定性が高く、より接着強度に優れることから、上記の中でも特に多価金属アルコキシドが含まれること好ましい。
多価金属アルコキシドにおける有機基としては、特に制限はなく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、オクチル等が挙げられ、中でも、炭素数4以下のアルキル基が好ましい。
多価金属アルコキシドの具体的な化合物としては、例えば、マグネシウムジエトキシド、カルシウムジイソプロポキシド、バリウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、ランタントリイソプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド等が挙げられ、前記多価金属フッ化物の具体的な化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化アルミニウム、フッ化ジルコニウム等が挙げられ、前記多価金属炭酸塩の具体的な化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸アルミニウム、炭酸ジルコニウム等が挙げられ、前記多価金属水素化物の具体的な化合物としては、例えば、水素化カルシウム、水素化アルミニウム、水素化ジルコニウム等が挙げられ、前記アルキル多価金属の具体的な化合物としては、例えば、ジエチルマグネシウム、トリメチルアルミニウム等が挙げられる。
上記のアルキル多価金属におけるアルキル基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。
なお、上記の多価金属化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、(B)多価金属化合物を構成する金属元素としては、第4周期の遷移金属以外であれば、特に制限はなく、周期律表の第2族〜第13族の金属元素が挙げられるが、接着性、保存安定性に優れることから、中でも、カルシウムが特に好ましい。
(I)フィラー
(I)フィラーは、接着性組成物を硬化して得られる接着層における機械的強度や操作性を向上させるために配合される。(I)フィラーとしては、特に制限はなく、公知の無機フィラー、有機フィラー、無機−有機複合フィラーを用いることができる。
接着性組成物は、無機フィラーとしてヒュームドシリカを含むことが好ましい。これにより、硬化後に高い接着強度の接着層が得られる。ヒュームドシリカの平均一次粒子径は1nm〜20nmであることが好ましい。このように、接着性組成物では、平均一次粒子径が小さいヒュームドシリカを用いることにより、添加量を多くしてもヒュームドシリカが沈降しにくくなる。したがって、接着性組成物では、ヒュームドシリカの添加量を多くすることによって、更に接着強度の高い接着層を形成することが可能となる。ヒュームドシリカの配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、10質量部〜30質量部とすることが好ましい。
この他、接着性組成物は、有機フィラーとして、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合体等の非架橋性ポリマー、又は、メチル(メタ)アクリレート・エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとブタジエン系単量体との共重合体等の(メタ)アクリレート重合体などを含んでいてもよい。
無機フィラーとしては、例えば、石英、無定形シリカ、シリカジルコニア、クレー、酸化アルミニウム、タルク、雲母、カオリン、ガラス、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等が挙げられる。
更に、これら無機フィラーは、表面処理することが好ましい。これにより、重合性単量体とのなじみをよくし、機械的強度や耐水性を向上させることが容易になる。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、表面処理剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
(I)フィラーとしては、上記で挙げた物質を、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
[適用対象物となる充填材料]
本実施形態に係る接着性組成物は、前記したように接着対象物となる光硬化型充填材料中に含まれる芳香族アミンを利用して硬化する。汎用的な光硬化型充填材料は、通常、芳香族アミンを含有しているため、本実施形態に係る接着性組成物は、汎用的な光硬化型充填材料に対して適用可能なものとなっている。なお、このような光硬化型充填材料は、通常、重合性単量体成及び光重合触媒を必須成分として含み、更に、光重合開始剤の成分等として芳香族アミンを含んでいる。例えば、市販されている光硬化型のコンポジットレジンの多くがこのような充填材に該当し、本実施形態に係る接着性組成物は、このような光硬化型充填材料に対して使用でき、前記したような効果を発揮する。
なお、前記光硬化型充填材料中に含まれる重合性単量体成分としては、組成が若干異なる点を除いて含有される具体的な重合性単量体は前記(A)重合性単量体と同様である。また、光硬化型充填材料中に含まれる芳香族アミンとしては、芳香族第三級アミンとしては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン等のトルイジン系芳香族第三級アミン類;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン等のアニリン系芳香族第三級アミン類;p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル等の芳香族環にカルボニル基が結合した芳香族第三級アミン類;、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン等を挙げることができる。
また、光硬化型充填材料中に含まれる芳香族アミンの量は特に制限されず、芳香族アミンを光重合開始剤の成分として含む光硬化型充填材料に通常含まれる量と特に変わる点は無く、通常は、重合性単量体成分100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲である。
本実施形態に係る接着性組成物を適用する充填材料は、光重合開始剤としてα−ジケトンを更に含有していることが好ましい。α−ジケトンは、本実施形態に係る接着性組成物に含まれる(D)鉄アレーン錯体と光の吸収波長が若干ずれている。このため、α−ジケトンを含有する充填材料では、照射光のうち(D)鉄アレーン錯体の吸収波長の光がα−ジケトンに吸収されずに透過されやすくなる。これにより、接着性組成物では、光重合型の硬化が促進される。
[歯科用接着性組成物包装体]
本実施形態に係る歯科用接着性組成物包装体(以下、単に接着性組成物包装体と呼称する。)は、本実施形態に係る接着性組成物包装体の商品形態であり、歯科用接着性組成物と、当該歯科用接着性組成物を収容する単一の遮光性容器と、を有する。上記のとおり、歯科用接着性組成物は、1液型の構成において高い保存安定性が得られる。このため、予め調製された当該歯科用接着性組成物を単一の遮光容器に充填した接着性組成物包装体を商品形態とすることができる。
このような接着性組成物包装体は、必要に応じて箱詰め等の二次的な包装を行った上で、流通過程を製造場所から歯科医院等の最終的なユーザーサイドまで輸送され、使用時まで保管しても内部の歯科用接着性組成物を安定に保つことができる。接着性組成物包装体に用いる遮光容器としては、歯科用接着性組成物に含まれる光重合開始剤を活性化する光を遮蔽できるものであれば特に限定されないが、使用感、気密性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の合成樹脂で形成された容器であることが好ましい。
以下に本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものでは無い。
1.物質の略称
まず、以下に、実施例及び比較例において使用した物質の略称について説明する。
1−1.(A)重合性単量体
・(a1)酸性基含有重合性単量体
MDP:10−メタクリルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
SPM:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート及びビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートをモル比1:1の割合で混合した混合物
・(a2)酸性基非含有重合性単量体
BisGMA:2.2’ ―ビス[4―(2―ヒドロキシ―3―メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2―ヒドロキシエチルメタクリレート。
1−2.(B)二価の銅化合物
CuA:酢酸銅(II)一水和物
CuAA:アセチルアセトン銅(II)。
1−3.(C)過酸化物
・(c1)有機過酸化物
BPT:t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート
BPB:t−ブチルパーオキシベンゾエート
BPE:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート
TMBHP:1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
・(c2)無機過酸化物
NPS;ペルオキソ二硫酸ナトリウム。
1−4.(D)鉄アレーン錯体
CFeP:(η−クメン)(η−シクロペンタジエン−1−イル)鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェート。CFePの構造を以下に示す。
Figure 2021187771
1−4.(G)その他の光重合開始剤
CQ:カンファーキノン。
1−5.(H)多価金属化合物
AlPO:アルミニウムトリイソプロポキシド
CaPO:カルシウムジイソプロポキシド。
1−5.(I)フィラー
・ヒュームドシリカ
DM−30:平均一次粒子径7nm、表面処理剤:ジメチルジクロロシラン(株式会杜トクヤマ製)
DM−20:平均一次粒子径12nm、表面処理剤:ジメチルジクロロシラン(株式会杜トクヤマ製)。
1−5.上記以外の成分
BMOV:オキソバナジウム(IV)ビス(マルトラート)
DMBE:4−ジメチルアミノ安息香酸エチル
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン。
<実施例1〜24、比較例1〜9>
(接着性組成物の作製)
実施例1〜24及び比較例1〜9に係る接着性組成物を作製した。各接着性組成物の成分及び配合割合は、下記の表1及び2に示すとおりである。表1には実施例1〜24について示し、表2には比較例1〜9について示している。なお、下記の表1及び2における括弧内の数値は、(A)重合性単量体100質量部に対する各成分の質量部を示している。
次に、得られた接着性組成物を以下に示す「接着強度評価」に従い接着性を評価した。
また、以下に示す「長期保管後の外観評価」に従い保存安定性を評価した。
(接着強度評価)
抜去した牛前歯を、注水下、耐水研磨紙P600で研磨し、象質平面を削り出した被着体を準備した。
その後、被着体の研磨面に、直径3mmの穴を開けた両面テープを貼り付けた。続いて、研磨面のうち両面テープの穴から露出している接着面に各実施例、及び各比較例の接着性組成物をそれぞれマイクロブラシで塗布し、接着面に塗布された接着性組成物を5秒間エアブローすることにより乾燥させた。
直径8mmの穴が設けられた厚み0.5mmのパラフィンワックスを、パラフィンワックスの穴と、両面テープの穴とが同心円となるように接着性組成物が塗布された接着面に貼り付けて模擬窩洞を作製した。この模擬窩洞に歯科用コンポジットレジン(エステライトΣクイック、トクヤマデンタル社製)を充填してポリエステルフィルムで軽く圧接した後、可視光線照射器(エリパーLED光重合器、3M ESPE社製)を用い、光照射10秒による光硬化を行った。その後、あらかじめ研磨したSUS304製丸棒(直径8mm、高さ18mm)をレジンセメント(ビスタイトII、トクヤマデンタル社製)で接着した。最後に、37℃の水中にて24時間浸漬することで接着強度測定用のサンプルを得た。なお、使用したコンポジットレジン(エステライトΣクイック)は、カンファーキノン及び芳香族アミン化合物を含む光重合性の組成物である。
これら接着強度測定用のサンプルについて、島津製作所製オートグラフ(クロスヘッドスピード2mm/分)を用いて引張接着強度を測定した。各実施例及び比較例について、4個のサンプルの測定値を平均し、測定結果とした。
接着面に対して調製直後の接着性組成物を塗布することにより得られたサンプル(初期の接着強度測定用サンプル)の接着強度(初期の接着強度)の測定結果、接着面に対して調製後に更に50℃の恒温槽中で3週間保管した後の接着性組成物を塗布することにより得られたサンプル(保管後の接着強度接着強度測定用サンプル)の接着強度(保管後の接着強度)の測定結果を下記の表3及び4に示す。
なお、後述する長期保管後の外観評価においてゲル化していた場合は、接着面への接着性組成物の塗布が困難となったため、長期保管後接着強度の評価は省略した。
(長期保管後の外観評価)
表1及び2に示す各実施例及び各比較例の接着性組成物を調製した後に容器内に密封し、更に50℃の恒温槽中で3週間保管した。続いて、恒温槽から取り出した接着性組成物の外観を目視観察し、保管前後における変化の有無やゲル化などの変性について評価した。結果を下記の表3及び表4に示す。










Figure 2021187771















Figure 2021187771
Figure 2021187771
Figure 2021187771
(表3,4に示す評価結果ついて)
表3に示す実施例1〜24は1液型基本歯科用接着性組成物を用いたものである。いずれの場合においても、接着試験結果は初期、保管後共に良好であった。また、保管後の外観変化においても大きな変化は確認されなかった。
一方、表4に示す比較例1〜5の接着性組成物はそれぞれ(a1)酸性基含有重合性単量体、(B)二価の銅化合物、(c1)有機過酸化物、(D)鉄アレーン錯体、(E)水を含まないため、十分な接着強度は得られなかったと考えられる。また、比較例6及び7は(B)二価の銅化合物または、(D)鉄アレーン錯体の添加量が少ないため、添加の効果が十分に生じず、良好な接着強度は得られなかったと考えられる。
比較例8は過酸化物と酸化還元反応する芳香族アミンが含まれるため、保管後ゲル化が生じた。また、初期接着評価においても、光重合開始剤として機能する、(D)鉄アレーン錯体を含まず、(G)その他の光重合開始剤のみであるため、十分な接着強度は得られなかったと考えられる。比較例9は過酸化物と酸化還元反応する第4周期の遷移金属化合物が含まれるため、保存安定性が悪く、接着性組成物調製中にゲル化が生じたため、接着評価を実施できなかった。

Claims (8)

  1. 芳香族アミンを含有する光硬化型の充填材料を歯質に接着するための1液型の歯科用接着性組成物であって、
    1質量部〜40質量部の(a1)酸性基含有重合性単量体、を含む100質量部の(A)重合性単量体と、
    0.05質量部〜2質量部の(B)二価の銅化合物と、
    0.1質量部〜10質量部の(c1)有機過酸化物を含む(C)過酸化物と、
    0.1質量部〜10質量部の(D)鉄アレーン錯体と、
    1質量部〜50質量部の(E)水と、
    10質量部〜300質量部の(F)有機溶媒と、
    を含有し、かつ
    “(B)二価の銅化合物及び(C)過酸化物との反応によって(A)重合性単量体の重合を開始させる還元剤”を含有しない、
    歯科用接着性組成物。
  2. 前記(D)鉄アレーン錯体が、下記式(1)
    Figure 2021187771
    {式中、ベンゼン環を構成する6個の炭素原子に夫々結合する6個のRは、夫々独立に水素原子又は置換基を有していても良い1価の炭化水素基であり、1価の炭化水素基であるRが複数隣接する場合、相互に隣接するRは互いに結合して前記ベンゼン環と共に縮合芳香族炭化水素環を形成してもよく、Xは、ハロゲン化物イオン、スルホン酸イオン、BF 、PF 、AsF 、SbF 、B(C 、又はGa(C から選ばれるアニオンである。}
    で表される鉄アレーン錯体である、請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  3. 前記(a1)酸性基含有重合性単量体1molに対して0.01mol〜1molの(H)多価金属化合物を更に含有する、
    請求項1又は2に記載の歯科用接着性組成物。
  4. 10質量部〜30質量部の平均一次粒子径が1nm〜20nmのヒュームドシリカを更に含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  5. 前記(c1)有機過酸化物がパーオキシエステル類を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  6. α−ジケトンを更に含有する前記光硬化型の充填材料を歯質に接着するための1液型の歯科用接着性組成物である、請求項1から5のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項に記載の歯科用接着性組成物と、当該歯科用接着性組成物を収容する単一の遮光性容器と、を具備する歯科用接着性組成物包装体。
  8. 請求項1から5のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物と、芳香族アミンを含有する光硬化型の充填材料と、の組み合わせからなる歯牙修復用キット。
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