JP2021186636A - イオン導入式歯根膜麻酔器 - Google Patents

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Abstract

【課題】より低侵襲で、ほぼ無痛で効率よく麻酔できる、極小電極と麻酔薬注入器を一体化した無針で麻酔をかけることができる歯肉溝(歯周ポケット)用イオン導入式歯根膜麻酔器を提供する。【解決手段】本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100は、麻酔薬カートリッジを収納でき、歯肉溝に麻酔薬を注入する先端注入ノズル11を有する薬液注入器10と、薬液注入器10に対して、所定の量の麻酔薬を先端注入ノズル11から排出可能に形成された電動注入装置20と、先端注入ノズル11にイオンを発生させるイオン導入装置30と、口内に設置される対極電極板40と、を備え、イオン導入装置30のプラス電極は、先端注入ノズル11に接続され、マイナス電極は対極電極板40に接続されてなり、先端注入ノズル11の先端は扁平に形成されていることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、イオン導入式歯根膜麻酔器に関する。
歯科医院で施術される麻酔は、局所麻酔の一種で麻酔させたい箇所に近い歯ぐきから注射によって麻酔薬を注入するものであり、最も多く使用される麻酔法は、図3を例に説明すると、歯を支えている骨、つまり歯槽骨3に麻酔薬を滲み込ませて歯の神経4に到達させて効果を発揮させる浸潤麻酔と呼ばれるものである。歯槽骨3は表面に皮質骨という密度が高く硬い骨があり、その内部に海綿骨と呼ばれる粗い軽石のような骨を有するという構造になっている。そのため、麻酔薬を注射して数分経過すると歯槽骨3を通過した後、歯の神経4に到達し、注射を打った歯の周囲の歯2〜3本を麻痺させることになる。そのため、この麻酔方法は、抜歯や虫歯治療などの通常の歯科治療に必要不可欠な方法として採用されている。
しかしながら、このような麻酔方法は、以上のような高い有用性を有するにもかかわらず、一般的に患者にとってはあまり歓迎されていないのが実情である。なぜなら、実際の処置においては、注射針による針先が目の近くに迫ってくる恐怖感や、麻酔薬が注入されるときに発生するズキンとする鈍い痛みや違和感があり、患者にとっては不快に感じることが多いからである。
こうした麻酔時の痛みを少しでも軽減するために、歯科治療時における麻酔用の電動注射器が提案されている。例えば、麻酔薬が封入されたカートリッジのゴム栓を、押子が押圧移動させて歯科用注射針へ麻酔薬を流入させ、針先から麻酔薬を吐出させる電動注射器において、注入当初は麻酔薬の注入量が微量となるように小さい速度から開始し、そして一定変化率で注入速度を増加させ、所定期間経過後は一定の注入速度となるように、移動量を制御するものが提案されている(特許文献1)。
かかる電動注射器によれば、注入速度を最初は小さくすることによって、注射当初に感じる痛みを低減させて、患者にとって安心感を抱かせるものとすることができる。
しかしながら、注射針によって注射をするという点では、従来と変わりなく、痛みが軽減されているものの、痛みがまったくないわけではなく、また、注射針による針先が目の近くに迫ってくる恐怖感を取り除くことができるものではなかった。
特開2004−130005号公報
そこで、本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、より低侵襲で、ほぼ無痛で効率よく麻酔できる、極小電極と麻酔薬注入器を一体化した無針で麻酔をかけることができる歯肉溝用のイオン導入式歯根膜麻酔器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器は、以下の手段を採用した。
本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器は、
麻酔薬カートリッジを収納でき、歯肉溝に麻酔薬を注入する先端注入ノズルを有する薬液注入器と、
前記薬液注入器に対して、所定の量の麻酔薬を先端注入ノズルから排出可能に形成された電動排出器と、
前記先端注入ノズルにイオンを発生させるイオン導入装置と、
口内に設置される対極電極板と、
を備え、
前記イオン導入装置のプラス電極は、前記先端注入ノズルに接続され、マイナス電極は前記対極電極板に接続されてなり、
前記先端注入ノズルの先端は扁平に形成されていることを特徴とする。
本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器は、歯肉溝に麻酔薬を満たしながら、先端注入ノズルからプラスイオン導入が麻酔薬注入と同時に開始する。歯肉溝内に満たされた麻酔液は、プラスの電荷を帯びているので、そこに電極としての先端ノズルに、プラスの微弱電極を流すと、反発しあい、離れようとして麻酔薬は容易に歯根膜内に押し込まれる。そして、対局電極としてマイナスの電荷を帯びている歯根膜、及び神経繊維に届けられることになる。このように、本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器によれば、歯肉に注射針を指すことなく、歯肉溝に麻酔薬を満たすことで麻酔をかけるので、患者に対して、麻酔薬の注入時の痛みや違和感を与えることになく麻酔をかけることができ、また、注射針を有していないので、患者に注射を打つ恐怖感を与えることもないものとすることができる。
また、本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器において、前記先端注入ノズルは、前記先端注入ノズルから立設された電極用立設部を備えており、前記電極用立設部をICクリップで着脱可能に薬液注入器に取り付けられていることを特徴とするものであってもよい。
かかる構成を採用することによって、先端注入ノズルを容易に交換することが可能となり、衛生に優れたイオン導入式歯根膜麻酔器とすることができる。
さらに、本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器において、前記先端注入ノズルは、麻酔薬が排出される先端部及びICクリップに挟持される挟持部を除いて、絶縁体で被覆されていることを特徴とするものであってもよい。
かかる構成を採用することによって、患者に対して、歯肉溝以外の部位(例えば、舌、頬又は口唇)に誤って触れることを防止することができ、電気による疼痛を与える可能性を低減することができる。
さらに、本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器において、前記対極電極板は、口唇に引っ掛けることが可能な略S字状引掛部に取り付けられていることを特徴とするものであってもよい。
かかる構成を採用することによって、対極電極板を容易に患者に取り付けることができるだけでなく、電流の刺激に敏感な心臓部位から離れることによって、安全性も向上させることができる。
図1は、実施形態にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100の概念図である。 図2は、実施形態にかかる歯周ポケット薬液注入器100の使用状態を示す概念図である。 図3は、実施形態にかかる歯周ポケット薬液注入器100の使用状態を示す概念図である。
以下、図面を用いて、本発明の実施形態にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100は、図1に示すように、主として、歯肉溝1(歯牙と歯ぐきの境目の溝 図3参照)に薬液を注入する先端注入ノズル11を有する薬液注入器10と、この薬液注入器10に接続され、所定の量を所定間隔で先端注入ノズル11から注入させる電動注入装置20と、イオンを発生させるイオン導入装置30と、口内に取り付けられる対極電極板40と、これらを電気的に接続する電線60と、を備えている。
薬液注入器10は、麻酔薬が充填された薬液カートリッジ12が取り付けられるカートリッジ取付部13と、このカートリッジ取付部13の先端に設けられ、麻酔薬を歯肉溝1に滴下する先端注入ノズル11と、この先端注入ノズルを保持固定するとともに、イオン導入装置30からの電流を伝達するICクリップ14と、を備えている。カートリッジ取付部13は、麻酔薬が予め封入されたカートリッジを取り付ける部分である。麻酔薬としては、例えば、リドカイン等が使用される。なぜなら、リドカインは局所麻酔剤では最もイオン化しやすい麻酔剤だからである。使用されるリドカイン濃度は、2%以上〜4%以下のアドレナリン配合のものが使用される(高濃度リドカインであり、麻酔深達度が優れている。)。また、イオン導入式歯根膜麻酔器においては、麻酔薬を歯肉溝に滴下すると、歯肉溝の溝幅は極めて狭いので、歯肉溝から溢れ出てしまいやすく、慎重に行わなければならない。しかしながら、水のように流れやすい麻酔薬にゼリー状成分を添加することで、多少の粘度を有するようにとろみを付け加えることによって、歯肉溝からはみ出しにくく、また、はみ出しても容易に口腔内に落下することを防止することができる。具体的には、従来のアドレナリン添加のリドカインに、尿道麻酔や気管内挿管時に用いられるキシロカインゼンリーを混合して使用するとよい。好ましくは、アドレナリン添加の4%リドカインにキシロカインゼリー2%を配合し、現在4%リドカインとキシロカインゼリー2%を2対1〜1対2で使用するとよい。より好ましくは、1対1である。先端注入ノズル11は、先端が薬液注入機能とイオン電極の主電極を兼ねるため、金属製の中空の筒状に形成されており、図1のA拡大図に示すように、先端が歯肉溝1に挿入しやすいように扁平に形成されている。好ましくは、銅合金と錫を加工して作製するとよい。この先端注入ノズル11の先端の金属部分がイオン導入の主電極となるように、そしてその他の金属部分は不要な接触を避けるため、電気的絶縁処理をした。先端注入ノズル11には、電流を先端注入ノズル11の先端に伝達するための端子15として機能する金属片が立設されており、この端子15をICクリップ14によって挟持することで、このICクリップ14を介してイオンが先端に電荷される。ICクリップ14には、通電していることを視認することができるように、ICクリップ14とイオン導入装置30との間にパイロットランプを設けても良い。これにより、パイロットランプが点灯することによって、先端注入ノズル11に電力が供給されており、主電極となっていることがわかる。先端注入ノズル11は、ICクリップ14によって挟持されているのみであるので、使用に応じてその都度、先端注入ノズル11を容易に交換することが可能であり、衛生面に優れた先端注入ノズル11とすることができる。先端注入ノズル11は、麻酔薬が注入される先端部及びICクリップによって挟持される部分以外は、絶縁体によって被覆されている。これにより、不用意に先端注入ノズル11が歯肉溝1以外の場所に接触する可能性を低減することができる。
電動注入装置20は、薬液カートリッジ12に充填されている麻酔薬を一定量、所定間隔で排出可能なものであればよく、特にその構成は限定するものではない。
イオン導入装置30は、麻酔薬に対し、微弱なプラスの電気を流すためのものであり、プラス電極は、先端注入ノズル11にICクリップ14を介して接続されており、マイナス電極は、電線60で対極電極板に接続されている。
対極電極板40は、治療時に口内に取り付けられるものであり、カーボン電極で作製されている。好ましくは、口内に設置しやすいように、図1に示すように、略S字状引掛部80に取り付けておくと良い。このように作製することで、クリップを口唇口角部に引っ掛けるだけで対極電極板40を口内に取り付けることができる。
以上のように作製されたイオン導入式歯根膜麻酔器100は、以下のように使用される。まず、図2に示すように、先端注入ノズル11を歯肉溝1に挿入する。一方、対極電極板40をS字金具を利用して口唇口角部に取り付け、マイナス電極を歯列の頬側面と頬の間に挟み込むように取り付ける。本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100は、通電ループを小さくすることで、荷電粒子の電気泳動を起こりやすくするとともに、治療時に患者に把持電極を持たせる必要がない。この状態で、電動注入装置20のスイッチをオンにして歯肉溝1に麻酔薬を満たす。麻酔薬の注入をペングリップタイプの電動注入装置とすることで、手振れが少なく、かつ疲労感を感じることも少ないため、目標とする歯牙に対して無理なく容易に麻酔薬を注入することができる。この状態でイオン導入装置30のスイッチをオンにする。この際に出力電流値を調整し、疼痛を感じない範囲に設定する。薬剤運搬量は電流量に比例するので、出力電流値は、好ましくは500μA〜1000μAで調整するとよく、麻酔する歯が大臼歯の場合には、1000〜1500μAの間で調整するのが好ましい。先端注入ノズル11を接触させておく時間は、電気的影響を避けるため、一箇所約20秒〜40秒程度であり、歯牙1本につき、2〜4ヶ所行う。すなわち、麻酔薬の導入時間は、歯牙一本につき、基本的には2〜3分程度であるが、歯根部面積の大小や炎症の有無により多少の増減は可能である。そして、所定時間経過後、麻酔が効いていることをエアーによるコールドペインテストや、電気針等で確認した後、治療を施す。
このように、本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100による麻酔は、歯牙そのものへの麻酔ではなく、ターゲットを歯根膜とした歯根膜麻酔である。イオン導入(イオントフォレーシス)による歯根膜麻酔は、イオン化したリドカインを歯根の外側に沿って連続する細い洗浄のX線透過像の部分、つまり歯根膜腔を利用し、イオン浸透させ短時間で麻酔する方法である。歯根膜腔とは、歯根の外側に沿って連続する細い線状の0.2〜0.4mm程度の黒いX線透過像で、歯根靭帯とも呼ばれているが、そのうち、歯根膜繊維が占める割合は、4〜50%で、その他は、毛細血管や脂肪、各種の神経終末からなる新陳代謝が盛んな軟組織である。歯肉溝1に麻酔薬を満たしながら、先端注入ノズル11の先端からプラスイオン導入が麻酔薬注入と同時に開始する。歯肉溝1内に満たされた麻酔液は、プラスの電荷を帯びているので、そこに微弱電流を流すと、先端注入ノズル11の先端と麻酔薬は反発し、対局電極としてマイナスの電荷を帯びている歯根膜2及び神経繊維に届けられることになる。なお、治療対象となる歯牙の歯肉溝1内に、先端注入ノズル11から麻酔薬が注入されると同時に通電されプラスイオン導入が開始されるが、通電中は、歯肉溝1以外の部位(例えば、舌、頬又は口唇)に触れると電気による疼痛を感じる可能性がある。本発明は、先端注入ノズル11の先端以外は、絶縁部材で被覆されているので、このような不用意に歯肉溝1以外の部位に接触する可能性を低減することができる。なお、歯肉溝1とは、歯と歯ぐきの境目の溝をいう。歯と歯ぐきの間にはわずかな隙間があり、この部位に麻酔薬を注入塗布するのであるが、歯周組織は解剖的には歯肉溝1につづいて、歯根膜2が根尖部、神経4まで連続してつながっており、この部位には、歯を包み込むように歯と歯槽骨3をつないでいる靭帯としての歯根膜2が歯根の周りを取り巻いている。この歯根膜は、歯を歯槽骨につなぎとめている懸架組織であり、歯周靭帯とも呼ばれている。この歯周靭帯は歯骨膜繊維の集合体からなり、歯骨膜繊維が占める割合は、40%〜50%であり、その他の部分は、歯根膜腔と呼ばれる空隙で形成されている。歯根膜腔は歯根の外側に沿って連続する、細い線状の黒く見えるX線透過像で、毛細血管や各種の神経終末がある新陳代謝が盛んな軟組織である。そのため、麻酔薬の滲み込みを阻む組織が少ないため、イオン導入において荷電粒子の移動が容易に起こりやすく、注入された麻酔薬は歯根膜2を伝って浸透し、短時間に効果を発揮することができる。
本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100は、歯肉溝1内に麻酔薬を簡便に塗布注入するだけでなく、歯肉溝1内に麻酔薬を満たしながら同時に麻酔薬のイオン導入を開始する。従って、麻酔薬を簡便、かつ効率的に歯根膜繊維に浸透させることが可能となり、そして、歯根膜2を通過し、根尖部神経4に麻酔薬を作用させる。この間における麻酔薬の注入及びイオン導入において、患者に疼痛や違和感なく、ほぼ無痛の状態で推移させることができる。「イオン導入」とは、皮膚粘膜に微弱な電流を流すことで、水溶性の麻酔薬を無痛で体内に浸透させるものであり、局所的に十分な薬液濃度を保持しつつ、通常の塗布注入に比べて、30〜70倍の浸透力を発揮する。人体は、電流を流すとあらゆる部分で電極と電極の間に組織を通る電界が生じる。この電界の中では、陽イオン分子は陰極に、陰イオン分子は陽極に引き寄せられ、電界に影響された組織内で荷電粒子の移動が発生する(電気泳動)。通電量(電流かける通電時間)が十分であれば、荷電粒子が組織内を移動し、荷電粒子が麻酔薬であれば、直流電流は導入のための担体となる。治療の対象となる歯牙の歯肉溝1内に満たした麻酔薬リドカイン(pH3.0〜pH4.5)は、プラスの電荷を帯びるので、そこに先端注入ノズル11からプラスの微弱電流を流すと反発しあい、歯肉溝1を通過し歯根膜2の内部に浸透していく。先端注入ノズル11の先端から麻酔薬の供給が適切に行われることにより、プラス電極としてイオン導入(イオン電気泳動)が不断に行われる。これにより、確実に麻酔効果が発揮することになる。なお、麻酔薬(2〜4%)リドカイン、アドレナリンにおいては、濃度が4%に近いほど、麻酔の深達度や疼痛閾値の上昇が見られる。通常イオン導入(イオントフォレーシス)による麻酔は、深達度の高い4%リドカインを用いても、3分程度の通電では、皮膚粘膜において、6mm前後の深さまでしか麻酔の効果は得られないと報告されている。しかしながら、本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100によれば、歯根の形状と深さからほぼその倍の12mm前後の深さまで麻酔効果を発揮することができる。その原因としては、歯根膜を取り巻く特殊な、解剖的形態によるものと思われる。歯根膜は歯牙歯根と歯槽骨の2つの硬組織に囲まれた部位に存在する軟組織であり、歯根膜腔とも呼ばれ、過電流油脂のイオン浸透が効率よく進むものと思われる。なお、生体は一様な導体ではなく通電時の電流は電気抵抗の小さい組織を流れやすく、硬組織は軟組織に比較してイオン導入効果が弱く時間がかかる。なお、歯肉溝1内部には、常在する微生物の集合体としてのバイオフィルムがある。バイオフィルムは菌体外多糖かあらなり、歯根表面にフィルム状に付着している。このバイオフィルムは、細菌の集合体であり、その細菌表面特性は、通常マイナスに荷電している。そのため、今回のようにプラスの微弱電流を流すと、イオン導入ではなく、イオン導出として作用し、内部に浸透するのではなく、プラス電極部位にマイナスの成分として作用し引き寄せられることになる。そのため、歯根膜2部位にはバイオフィルム成分が浸透することはない。
イオン導入式歯根膜麻酔器100による麻酔は、注射麻酔におけるいわゆる歯根膜麻酔と言われるものであり、通常、浸潤麻酔が効きづらいときによく用いられる方法で、歯と骨をつなぐ靭帯である歯根膜2に注射針を刺して、その歯根膜2のある隙間(歯根膜腔)に麻酔薬を注入し麻痺させる麻酔である。この歯根膜麻酔は、一旦注入すると、滲み込みを阻む組織がないので迅速に効果が発生し、麻酔の薬液量が少なくてすみ、かつ麻痺感が殆どない等の安全性やメリットが多いが、麻酔薬を注入する際にかなりの加圧注入が必要となるため、それに伴う痛み、違和感を有するという問題があった。
しかしながら、イオン導入式歯根膜麻酔器100によれば、歯根膜2に対して電気的な環境を強制的に加えて、電流を流すことで荷電した麻酔薬を能動的に移動させて浸透させるため、注射麻酔を使用するときのような、歯根膜2への麻酔薬の加圧注入による痛みやそれに伴い違和感を生じることを防止することができるという効果を有する。
また、イオン導入式歯根膜麻酔器100は、ペングリップ把持形式にしたため、麻酔薬の注入やイオン導入において、疲労感を感じることが少なく、かつ手振れが少なく、目標とする歯牙に対して、歯肉溝内2〜4箇所、一箇所20秒〜40秒で麻酔薬注入とイオン導入が無理なく行うことができる。実際の麻酔効果は、通常の湿潤麻酔と大きく違って独特の麻酔範囲と効力が出現する、すなわち、通常の湿潤麻酔においては、通常は、麻酔した歯の部位に加えて、近傍の2〜3の歯が同時に麻酔にかかるものであるが、本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100による麻酔によれば、目標とする歯牙のみ、つまりターゲットとした歯のみに麻酔効果を与えることができる。例えば、第一小臼歯に麻酔、つまり歯肉溝1にイオン導入麻酔をした場合、近接した犬歯や第二小臼歯に対しての麻酔の影響が全く見られない。加えて、浸潤麻酔のときのように、頬側部や舌側部への麻酔効果が発生することも防止することができる。また、通常の歯科麻酔と違い、麻酔範囲が限定されることから、治療直後の食事や会話ができるなど、歯科治療に伴う不自由を、減少させ治療時のクオリティ・オブ・ライフの向上に役立てることができる。本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100による麻酔では、まず、イオン導入した歯の温度感覚及び痛覚の消失(自立神経遮断)が起こり、その後、麻酔注入した歯肉溝1の周縁数ミリ程度で触覚消失が起こり、歯根周囲の骨組織及び骨格筋への弛緩は確認されない。従って、本発明にかかるイオン導入式歯根膜麻酔器100による麻酔は、治療範囲は、一般的な保存処置、つまり、各種充填、インレイ形成及び歯冠修復などに効果的である。また、歯冠修復においては、マージンの設定が歯肉縁下でも十分可能であり問題はない。一方、抜歯処置及び抜髄処置においては、保存処置と異なり、歯肉溝1へのイオン導入式の歯根膜麻酔のみでは不十分であると思われる。抜歯処置及び抜髄処置における麻酔量は、保存処置と比べてかなり多く必要で、その上深い麻酔深度も要求されると思われるからである。よって追加麻酔として麻酔注射による歯根膜麻酔が必要となる。しかしながら、この場合も歯根膜には十分麻酔が効いているので、麻酔注射による不快感や違和感を与えることがなく、十分な麻酔結果を与えることができる。
上述した実施の形態で示すように、歯科治療の治療具として産業上利用することができる。
1…歯肉溝、2…歯根膜、3…歯槽骨、4…神経、10…薬液注入器、11…先端注入ノズル、12…薬液カートリッジ、13…カートリッジ取付部、14…ICクリップ、15…端子、20…電動注入装置、30…イオン導入装置、40…対極電極板、60…電線、80…略S字状引掛部、100…イオン導入式歯根膜麻酔器


Claims (4)

  1. 麻酔薬カートリッジを収納でき、歯肉溝に麻酔薬を注入する先端注入ノズルを有する薬液注入器と、
    前記薬液注入器に対して、所定の量の麻酔薬を先端注入ノズルから排出可能に形成された電動注入器と、
    前記先端注入ノズルにイオンを発生させるイオン導入装置と、
    口内に設置される対極電極板と、
    を備え、
    前記イオン導入装置のプラス電極は、前記先端注入ノズルに接続され、マイナス電極は前記対極電極板に接続されてなり、
    前記先端注入ノズルの先端は扁平に形成されていることを特徴とするイオン導入式歯根膜麻酔器。
  2. 前記先端注入ノズルは、前記先端注入ノズルから立設された電極用立設部を備えており、前記電極用立設部をICクリップで着脱可能に薬液注入器に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のイオン導入式歯根膜麻酔器。
  3. 前記先端注入ノズルは、麻酔薬が排出される先端部及びICクリップに挟持される挟持部を除いて、絶縁体で被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン導入式歯根膜麻酔器。
  4. 前記対極電極板は、口唇に引っ掛けることが可能な略S字状引掛部に取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のイオン導入式歯根膜麻酔器。

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