JP2021184456A - 窒化物半導体レーザダイオード - Google Patents

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素顕 岩谷
Motoaki Iwatani
智也 大森
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歩武 薮谷
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【課題】不要な発光を抑制し、発光効率の高いレーザダイオードを提供する。【解決手段】窒化物半導体レーザダイオードは、Al組成比が0.3より大きいAlGaNで形成された活性層と、活性層よりも上方に形成され、活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成された領域を含む組成傾斜領域と、組成傾斜領域よりも上方に形成され、p型のAlGaNで形成されたp型半導体層と、を備える。組成傾斜領域は、AlGaNで形成された上部ガイド層と、上部ガイド層の上方に形成され、活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成された組成傾斜層とを含み、上部ガイド層は、上部ガイド層の厚さ方向の全領域において活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加する又は上部ガイド層の厚さ方向の全領域においてAl組成比が一定のAlGaNで形成されていることが好ましい。【選択図】図1

Description

本開示は、窒化物半導体レーザダイオードに関する。
窒化物半導体レーザダイオードにおいては、電流密度を増加させるために電極面積を小さくすることがあり、発光ダイオード(LED)等と比較してより高い電流密度での駆動に耐えうる素子が必要となる。そこで、例えばAl組成が厚さ方向に減少するAlGaNで形成されたp型クラッド層を有する窒化物半導体レーザダイオードが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、p型AlGaNクラッド層のAl組成を組成傾斜することによって、レーザ発振する閾値電流密度及び閾値電圧が低くなることが開示されている。
しかしながら、このような構造の窒化物半導体レーザダイオードでは、上部ガイド層と接する上層のAl組成を高くする必要がある。このため、上部ガイド層とその上層の接面に生じるエネルギーの井戸からの不要な発光が得られてしまい、レーザ発振に必要な井戸層からの発光出力が低下する場合がある(例えば、非特許文献1)。また、不要な発光によりレーザ発光の波長純度が低下する問題がある。
本開示は、上述した不要な発光を抑制し、発光効率の高いレーザダイオードを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る窒化物半導体レーザダイオードは、Al組成比が0.3より大きいAlGaNで形成された活性層と、活性層よりも上方に形成され、活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成された領域を含む組成傾斜領域と、組成傾斜領域よりも上方に形成され、p型のAlGaNで形成されたp型半導体層と、を備えることを特徴とする。
本開示の一態様によれば、不要な発光を抑制し、発光効率の高いレーザダイオードを提供することができる。
本開示の第一実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの一構成例を示す斜視図である。 本開示の第一実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの一部におけるAl組成比を示すグラフである。 従来構造の窒化物半導体レーザダイオードにおける伝導帯及び価電子帯のポテンシャルエネルギー並びに電子及びホールの濃度を模式的に示す図である。 従来構造の窒化物半導体レーザダイオードにおける伝導帯及び価電子帯のポテンシャルエネルギー並びに電子及びホールの濃度を模式的に示す図である。 本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードにおける伝導帯及び価電子帯のポテンシャルエネルギー並びに電子及びホールの濃度を模式的に示す図である。 本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードにおける伝導帯及び価電子帯のポテンシャルエネルギー並びに電子及びホールの濃度を模式的に示す図である。 上部ガイドにおけるAl組成比とp型半導体層におけるAl組成比との組成差と、上部ガイド及びp型半導体層の間に形成されるエネルギーポケットの深さとの関係を示すグラフである。 本開示の第二実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの一構成例を示す断面図である。 本開示の第二実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの組成傾斜領域の一構成例を示す断面図である。 本開示の第三実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの一構成例を示す斜視図である。 本開示の第三実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの一部におけるAl組成比を示すグラフである。 本開示の第一実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの発光スペクトルを示すグラフである。 本開示の第一実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの発光スペクトルを示すグラフを示すグラフである。 本開示の第三実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの変形例を示す斜視図である。 本開示の第三実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードの変形例におけるAl組成比を示すグラフである。 窒化物半導体レーザダイオードの基本モデルにおける伝導帯及び価電子帯のポテンシャルエネルギーを示す図である。 窒化物半導体レーザダイオードの基本モデルにおける伝導帯及び価電子帯のポテンシャルエネルギーを示す図である。 実施例1のエネルギーポテンシャル及び内部量子効率(IQE)の評価結果を示すグラフである。 実施例1のエネルギーポテンシャル及び内部量子効率(IQE)の評価結果を示すグラフである。 実施例1の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。 実施例2のエネルギーポテンシャル及び内部量子効率(IQE)の評価結果を示すグラフである。 実施例2の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。 実施例3のエネルギーポテンシャル及び内部量子効率(IQE)の評価結果を示すグラフである。 実施例3の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。 組成傾斜層の厚さと駆動電圧の加算量との関係を示すグラフである。 実施例4のエネルギーポテンシャル及び内部量子効率(IQE)の評価結果を示すグラフである。 実施例4の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。 実施例5のエネルギーポテンシャル及び内部量子効率(IQE)の評価結果を示すグラフである。 実施例5の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。
以下、実施形態を通じて本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードを説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
1.本開示に係る窒化物半導体レーザダイオードの構成
本開示に係る窒化物半導体レーザダイオードは、Al組成比が0.3より大きいAlGaNで形成された活性層を備えている。また、本開示に係る窒化物半導体レーザダイオードは、活性層よりも上方に形成され、活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成された領域を含む組成傾斜領域と、組成傾斜領域よりも上方に形成され、p型のAlGaNで形成されたp型半導体層と、を備えている。
組成傾斜領域は、例えばAlGaNで形成された上部ガイド層と、上部ガイド層の活性層と反対側に形成された組成傾斜層とを含んでいる。組成傾斜層は、活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成されている。
本開示に係る窒化物半導体レーザダイオードは、Al組成比が0.3より大きいAlGaNで形成された活性層を備える場合に特に生じやすい発光部以外の層における発光(すなわち、所望の波長以外の波長を有する光の発光)を抑制することができる。
2.第一実施形態
以下、本開示の第一実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオード1について、図1から図4を参照して説明する。
窒化物半導体レーザダイオード1は、紫外光を発光可能なレーザダイオードである。窒化物半導体レーザダイオード1は、電流注入によって紫外光をレーザ発振することが可能である。窒化物半導体レーザダイオード1は、例えば、波長が280nmから320nmのUVB領域の発光を得ることができる。
(2.1)窒化物半導体レーザダイオードの全体構成
図1から図4を参照して、窒化物半導体レーザダイオード1の構成について説明する。
図1に示すように、窒化物半導体レーザダイオード1は、基板11の上層に設けられた窒化物半導体活性層(活性層の一例)352と、窒化物半導体活性層352よりも上方に形成され、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成された領域を含む組成傾斜領域と、を備えている。また、窒化物半導体レーザダイオード1は、組成傾斜領域よりも上方に形成されたp型半導体層32を備えている。第一実施形態では、上部ガイド層353と組成傾斜層34とによって組成傾斜領域が構成されている。
図2に示すように、窒化物半導体レーザダイオード1では、上部ガイド層353の窒化物半導体活性層352と反対側に形成された組成傾斜層34が、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成されている。また、窒化物半導体レーザダイオード1では、上部ガイド層353が、上部ガイド層353の厚さ方向の全領域において窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が一定であるAlGaNで形成されている。ここで、上部ガイド層353において「Al組成比が一定」とは、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が厳密に同じである必要はない。例えば、Al組成比の膜厚方向に対する傾斜率が0.001%/nm以下である場合には、Al組成比は一定である。なお、層内の組成が一般的な成膜法における範囲内での不均一性を有する場合には、層に垂直な面の平均組成に対してAl組成比が傾斜しているか否かでAl組成比が一定か否かを判断する。
より具体的に、窒化物半導体レーザダイオード1は、基板11の上方に、AlN層(下地層の一例)30と、第一窒化物半導体層31と、発光部35と、組成傾斜層34と、p型半導体層32と、第二窒化物半導体層33とがこの順に積層された構成とされている。また、窒化物半導体レーザダイオード1は、第二窒化物半導体層33に接触して設けられた第一電極14と、第一窒化物半導体層31の一部に接触して設けられた第二電極15と、を備えている。
ここで、図1に示すように、上述した窒化物半導体活性層352及び上部ガイド層353は、下部ガイド層351とともに発光部35に含まれている。窒化物半導体活性層352は、例えば井戸層と障壁層(図1中不図示)で構成されている。
以下、窒化物半導体レーザダイオード1を構成する各部について詳細に説明する。
<組成傾斜層>
組成傾斜層34は、発光部35の上部ガイド層353とp型半導体層32との間に設けられている。
組成傾斜層34は、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成されている。これにより、電子とホールとが、上部ガイド層353と第二AlGaNが直接接することで出来るエネルギーの溝(エネルギーポケット、詳しくは後述する)で消費されて上部ガイド層353のバンドギャップエネルギーに相当する発光が生じることを抑制し、窒化物半導体活性層352の井戸層へ電子と正孔を注入するキャリア注入効率の低下を抑制することができる。
図3A及び図3Bは、従来構造の窒化物半導体レーザダイオードにおける伝導帯及び価電子帯のエネルギー並びに電子及びホールの濃度を薄膜シミュレータソフトSiLENSe(STR Japan株式会社製)を用いて計算した図である。薄膜シミュレーションソフトへ入力した従来構造は以下の通りである。なお、以下に示す組成におけるAlx→yとの記載は、層内の下層側から上層側に向けてAlの組成がxからyに徐々に変化した構成を示す。
p型半導体側から以下の積層構造を形成している。図3Aは電流密度6A/cm、電位差5.6Vでのバンド図、図3Bは電流密度20kA/cm、電位差5.84Vでのバンド図を示している。
(従来構造)
第二窒化物半導体層(図3A、図3B中不図示):GaN、10nm、Mgドープ
p型半導体層
第二AlGaN領域:AlGaN、Al組成比45%→0%、厚さ75nm、Mgドープ
第一AlGaN領域:AlGaN、Al組成比90%→45%、厚さ260nm、Mgドープ
電子ブロック層:AlGaN、Al組成比90%、厚さ30nm、アンドープ
発光部
上部ガイド層:AlGaN、Al組成比45%、厚さ158nm、アンドープ
井戸層:AlGaN、Al組成比35%、厚さ4nm、アンドープ
障壁層:AlGaN、Al組成比45%、厚さ8nm、アンドープ
井戸層:AlGaN、Al組成比35%、厚さ4nm、アンドープ
下部ガイド層:AlGaN、Al組成比45%、厚さ158nm、アンドープ
第一窒化物半導体層:AlGaN、Al組成比55%、厚さ1000nm、Siドープ
図3Aは、低電流密度(6A/cm)の場合の模式図であり、図3Bは、高電流密度(20kA/cm)の場合の模式図である。図3A及び図3Bに示すように、従来構造の窒化物半導体レーザダイオードでは、電子ブロック層と発光部(上部ガイド層)との境界部分において、伝導帯のポテンシャルエネルギー(eV)が局所的に低くなる丸点線で囲ったエネルギーの溝(エネルギーポケット)が生じる。このようなエネルギーポケットには、電子及びホールが捕捉されて上部ガイド層で発光が生じる場合がある。高電流密度下では、ホールがこのエネルギーポケットに全ては補足されきれず、井戸層まで拡散して井戸層での発光が得られやすいが、低電流密度下ではエネルギーポケットに大多数のホールが補足される。このため、上部ガイド層での発光は、低電流密度下において特に生じやすい。
一方、図4A及び図4Bは、本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオード1における伝導帯及び価電子帯のポテンシャルエネルギー並びに電子及びホールの濃度を薄膜シミュレータソフトSiLENSeを用いて計算した図である。薄膜シミュレーションソフトへ入力した本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオード1の積層構造は以下の通りである。なお、以下の窒化物半導体レーザダイオード1の構造は、組成傾斜層34のAl組成比が傾斜している点で従来構造と相違している。
(構造)
第二窒化物半導体層33:GaN、10nm、Mgドープ
p型半導体層32
第二AlGaN領域322:AlGaN、Al組成比45%→0%、厚さ75nm、Mgドープ
第一AlGaN領域321:AlGaN、Al組成比90%→45%、厚さ260nm、Mgドープ
組成傾斜層34:AlGaN、Al組成比45%→90%、厚さ30nm、アンドープ
発光部35
上部ガイド層353:AlGaN、Al組成比45%、厚さ158nm、アンドープ
井戸層:AlGaN、Al組成比35%、厚さ4nm、アンドープ
障壁層:AlGaN、Al組成比45%、厚さ8nm、アンドープ
井戸層:AlGaN、Al組成比35%、厚さ4nm、アンドープ
下部ガイド層351:AlGaN、Al組成比45%、厚さ158nm、アンドープ
第一窒化物半導体層31:AlGaN、Al組成比55%、厚さ1000nm、Siドープ
図4Aは、低電流密度(6A/cm)の場合の模式図であり、図4Bは、高電流密度(20kA/cm)の場合の模式図である。図4A及び図4Bに示すように、窒化物半導体レーザダイオード1では、組成傾斜層34におけるAl組成比の調整により、エネルギーポケットがほとんど生じない。このため、低電流密度下及び高電流密度下のいずれにおいても、電子及びホールがエネルギーポケットに捕捉されて上部ガイド層353で発光が生じることを抑制し、井戸層での発光が得られやすくなる。つまり、キャリア注入効率が向上し、発光効率が向上する。
組成傾斜層34におけるAl組成比の膜厚に対する傾斜率は、図14に示すように1%/nmより大きく15%/nmより小さいことが好ましい。これにより、組成傾斜層34と上部ガイド層353との境界に形成されるエネルギーポケットが浅くなり、ホールが組成傾斜層34と上部ガイド層353との境界のエネルギーポケットに捕捉されて上部ガイド層353で発光が生じることを抑制することができる。かつ、組成傾斜層34におけるAl組成の傾斜率がこの範囲内となることにより、内部量子効率(IQE:Internal Quantum Efficiency)及び光閉じ込め効率係数Γが向上する。したがって、窒化物半導体レーザダイオード1の発光性能が全体的に向上する。
組成傾斜層34におけるAl組成の傾斜率は、内部量子効率IQEの向上を重視する場合には、10%/nmより大きく15%/nmより小さいことがより好ましい。また、組成傾斜層34におけるAl組成の傾斜率は、上部ガイド層353における発光の抑制を重視する場合には、1%/nmより大きく10%/nmより小さいことが好ましい。さらに光閉じ込め効率係数Γを高くするためには、傾斜率は1%/nmより大きいことが好ましい。
より具体的に、組成傾斜層34は、Alx4Ga(1−x4)Nで形成されている。組成傾斜層34におけるAl組成比x4の平均は、上部ガイド層353におけるAl組成x9の平均よりも大きいことが好ましい。これにより、内部量子効率IQEが高くなる。このとき、当該界面における、上部ガイド層353のAl組成比x9と組成傾斜層34のAl組成比x4との差は、0より大きく1より小さいことが好ましい。表4に示すように、組成傾斜層34とp型半導体層との接面におけるAl組成比の差が0より大きい場合、窒化物半導体レーザダイオード1の内部量子効率IQEが向上する。特に、Al組成比の差が0超0.2以下、より好ましくは0超0.1以下の範囲では、上述したエネルギーポケットが浅くなり、キャリア注入効率(CIE:Carrier Implantation Efficiency)が向上するとともに、上部ガイド層353で発光が生じることを抑制することができる。
組成傾斜層34は、不純物ドーパントを混入していないことが好ましいが、混入していても良い。不純物が混入している場合には、Mgが注入されていることが好ましい。Mgは、例えば1×1018cm−3の不純物濃度で組成傾斜層34に注入されている。これにより、組成傾斜層34は、p型化されてp型半導体に構成される。組成傾斜層34にMgが添加されていない場合、組成傾斜層34の導電性は低下するが、特にレーザダイオードにおいては吸収による内部ロスの増加を抑制することができるため、閾値電流密度Jthを下げることが可能である。
組成傾斜層34は、電子をブロックする観点からはできるだけバリア高さが高いことが要求される。しかしながら、バリア高さを高くしすぎると、素子抵抗が高くなり、窒化物半導体レーザダイオード1の駆動電圧の増加、窒化物半導体レーザダイオード1を破壊しない範囲で到達し得る最大電流密度の低下を引き起こす。このため、組成傾斜層34のAl組成比は、上部ガイド層353のAl組成比よりも0.3以上0.55未満高いことが好ましい。組成傾斜層34のAl組成比が上部ガイド層353のAl組成比よりも0.3以上高い場合、電子がp型半導体側へ電流リークする電子オーバーフローを抑制することが出来るため好適である。また組成傾斜層34のAl組成比が窒化物半導体活性層352のAl組成比よりも0.55未満高い場合、素子抵抗の増加が抑制される。
組成傾斜層34の厚さは、3nm超50nm未満であることが好ましく、3nm超30nm未満であることがより好ましく、5nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。組成傾斜層34の厚さが3nm以上である場合、組成傾斜層34と上部ガイド層353との境界のエネルギーポケットが浅くなり、ホールがエネルギーポケットに捕捉されにくくなる。このため、窒化物半導体レーザダイオード1において、上部ガイド層353で発光が生じることを抑制することができる。
また、組成傾斜層34の厚さが50nm以下の場合、窒化物半導体活性層352での光閉じ込め効率が向上する。また、組成傾斜層34が厚い場合、電子が上部ガイド層353に発生し続けてキャリアが捕捉されるが、組成傾斜層34が薄い場合、トンネル効果によりホールを窒化物半導体活性層352の井戸層まで運ぶことができるため、キャリアの捕捉を抑制することができるため好ましい。組成傾斜層34が50nmより厚い場合、後述する図20に示すように駆動電圧が増加する。例えば報告されているUVBレーザダイオードやUVCレーザダイオードの駆動電圧を考慮すると、20V以下での駆動が好ましいため、膜厚は125nm以下が好ましいが、実用化を想定すると10V以下での駆動がより好ましいため膜厚は50nm以下が更に好ましい。
<p型半導体層>
p型半導体層32は、AlGaNで形成されている。p型半導体層32は、厚さ方向においてAl組成比が一定のAlGaNで形成されていても良く、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が減少するAlGaNで形成されていてもよい。
このようなp型半導体層32を有する窒化物半導体レーザダイオード1は、例えば紫外線B波を発光する紫外線レーザダイオードである。
より具体的に、p型半導体層32は、AlGa(1−x)Nで形成されており、p型半導体層32におけるAl組成比xの平均は、組成傾斜層34におけるAl組成比x4の平均よりも大きく、x>x4であることが好ましい。また、p型半導体層32のAl組成比xは、例えば0<x≦0.9であることが好ましい。すなわち、p型半導体層32のAl組成比xは、厚さ方向において0以上0.9以下の範囲で略一定であってもよく、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かって0.9からほぼ0まで変化してもよい。
Al組成比xが傾斜している場合、Al組成比xは、p型半導体層32の厚さ方向全域において傾斜していてもよく、組成傾斜層34との境界付近はAl組成比が一定で、その上層部分からAl組成比が減少する構成であっても良い。また、Al組成比xは、p型半導体層32の厚さ方向の途中において一旦Al組成比xが一定となる領域を有することでAl組成比xが多段階で変化する構成であっても良い。
p型半導体層32は、組成傾斜層34との界面におけるp型半導体層32のAl組成比と組成傾斜層34のAl組成比との差が0より大きく1より小さいAl組成比のAlGaNによって形成されることが好ましい。これにより、エネルギーポケットを浅く抑えつつ、かつ内部量子効率IQEを高く維持することが可能である。
また、p型半導体層32は、第二窒化物半導体層33側の面に突出部を備えていてもよい。この場合、p型半導体層32の組成傾斜層34側から突出部の先端に向けてAl組成比xが傾斜していてもよい。
さらに、p型半導体層32は、Al組成比の異なる複数の領域が積層された構成であっても良い。例えば、p型半導体層32は、上部ガイド層353上に形成された第一AlGaN領域321と、第一AlGaN領域321よりも窒化物半導体活性層352から離れた第二AlGaN領域322とを有していても良い。第一AlGaN領域321と第二AlGaN領域322とは、例えば平均のAl組成比やAl組成比の変化率が互いに異なる領域である。
ここで、p型半導体層32におけるAlGaNのAlの組成比が0.2以上(すなわち20%以上)である場合、Mgを不純物としてドープしたp型半導体では、活性化エネルギーが大きくなるためp型化が困難である。例えば、p−Al0.2Ga0.8NにMgを2×1020cm−3ドープする場合、生成する正孔密度は4×1017cm−3と見積もられる。p−Al0.4Ga0.6NにMgをドープする場合、生成する正孔密度は9×1016cm−3と見積もられる。一般的に、AlGaNを用いた縦型電動窒化物半導体素子(発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)など)の駆動には、導電性半導体のキャリア密度が最低でも1×1017cm−3必要である。このため、Al組成比が0.4以上のAlGaNを用いた縦型電動窒化物半導体素子は、Mgを不純物としてドープしてもp型半導体を形成しにくく駆動が困難となる場合がある。
本開示に係る窒化物半導体レーザダイオード1では、p型半導体層32におけるAl組成比が0.3より大きい場合、Al組成を厚さ方向に傾斜させることで正孔を生成する分極ドーピングによってp型化しやすくなる。
一方、Al組成比0.2以下の領域では、Mgを不純物としてドープすることで導電性のp型半導体を形成できるので、Al組成を傾斜させることによる分極ドーピングによってp型化させる効果が非常に小さい。
以上のように、p型半導体層32では、Al組成を傾斜させることで正孔を生成する分極ドーピングによるp型化の方法が好ましい。
この場合、分極ドーピングによる正孔の生成量を多くするために、p型半導体層32のAl組成比(電子ブロック層を有する場合には電子ブロック層のAl組成比も同様に)を、上部ガイド層353より少なくとも0.3以上高くする必要が生じる。
また、窒化物半導体レーザダイオード1は、波長320nm未満の紫外線を発光する素子であるため、窒化物半導体活性層352として用いるAlGaNのAl組成比を0.3より大きくする必要が生じる。ここで、光を発光部35に閉じ込めるためにp型半導体層32のAl組成比を上部ガイド層353のAl組成比より高く形成する必要が生じる。そのため、AlGaNで形成されたp型半導体層32では、Al組成比が0.3より大きいAl組成で組成を傾斜させる必要が生じる。
ここで、薄膜成長装置を用いて、Al組成比の高いAlGaNからAl組成比の低いAlGaNへ連続的に組成が傾斜するp型半導体層32を形成する場合、III族原料の比率以外の成長装置のパラメータ(温度、圧力、III/V原料比率)を変化させながらp型半導体層32を形成することは好ましくない。特に、Mgの取り込み量は成長装置のパラメータに大きく依存するため、好ましくないパラメータを変化させた場合にはp型半導体層32中のMg取り込み量を制御することが極めて困難になる。そのため、この成長パラメータを一定に保ったままp型半導体層32を形成するためには、p型半導体層32の上部ガイド層353と反対側のAl組成比を0.3より大きくする必要がある。この場合、上部ガイド層353と接する側のAl組成を必然的に上部ガイド層353のAl組成より高くする必要がある。この観点から、正孔を多く生成するためには、上部ガイド層353とp型半導体層32とのAl組成差を0.3より高くすることが好ましい。
例えばp型半導体層32のAl組成比が0.3より大きく、かつp型半導体層32のAl組成比の最大値が0.6以上の場合、III族原料の比率以外の成長条件を変化させることなくAl組成変化率が一定のp型半導体層32を形成することが可能となる。
一方、p型半導体層32のAl組成比が0.3より大きく、かつp型半導体層32のAl組成比の最大値が0.6未満の場合、Al組成の傾斜率が小さくなることから正孔の生成量が少なくなり、レーザダイオードとして十分な導電性が得られない場合がある。この場合、レーザダイオードの駆動電圧が高くなったり、あるいは電子オーバーフローが促進されてレーザ発光効率が低下する問題が生じる。
本実施形態では、p型半導体層32がAl組成比が異なる第一AlGaN領域321と第二AlGaN領域322とを備え、第二AlGaN領域322の上面に突出部が設けられた構成について説明する。
以下、各層について詳細に説明する。
(第一AlGaN領域)
第一AlGaN領域321は、AlGaNで形成されている。また、第一AlGaN領域321は、厚さ方向において一定のAl組成比を有するAlGaNで形成されていても良く、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が減少するAlGaNで形成されていても良い。
より具体的に、第一AlGaN領域321は、Alx1Ga(1−x1)Nで形成されている。第一AlGaN領域321におけるAlの組成比x1は、例えば0.45≦x1≦0.9であることが好ましい。第一AlGaN領域321のAl組成比x1は、厚さ方向において0.45以上0.9以下の範囲で略一定であってもよく、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かって0.9から0.45まで変化してもよい。
本実施形態においては、Al組成比が窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かって0.9から0.45まで減少する第一AlGaN領域321について説明する。
また、第一AlGaN領域321は、Mgを含んでいてもよい。
第一AlGaN領域321は、0nm超400nm未満の厚さを有していることが好ましい。第一AlGaN領域321が400nm未満の場合、第一AlGaN領域321の抵抗が低くなり、駆動電圧の増加による発熱量の増加を抑制して、窒化物半導体レーザダイオード1の破壊が生じにくくなる。
第一AlGaN領域321は、150nm以上400nm未満の厚さであることが好ましく、200nm以上400nm未満であることがさらに好ましい。第一AlGaN領域321の厚さは、例えば260nmである。
(第二AlGaN領域)
第二AlGaN領域322は、第一AlGaN領域321よりも窒化物半導体活性層352から離れた領域であって、AlGaNで形成されている。また、第二AlGaN領域322は、窒化物半導体活性層352とは反対側の表面に突出部を有していてもよい。
第二AlGaN領域322は、厚さ方向においてAl組成比が一定のAlGaNで形成されていても良く、突出部の先端に向かってAl組成比が減少する構成となっていてもよい。
より具体的に、第二AlGaN領域322は、Alx2Ga(1−x2)Nで形成されている。第二AlGaN領域322におけるAlの組成比x2は、例えば0<x2≦0.45であることが好ましい。すなわち、第二AlGaN領域322のAl組成比x2は、厚さ方向において0超0.45以下の範囲で略一定であってもよく、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かって0.45からほぼ0まで変化してもよい。第二AlGaN領域322が突出部の先端に向かってAl組成比が減少するAlGaNで形成された場合、第二窒化物半導体層33を構成するAlGaNとの障壁を顕著に低下させることができる。このため、第二AlGaN領域322と第二窒化物半導体層33との間の抵抗をより低下させるとともに、ショットキー障壁が低減し、キャリア注入効率がより向上する。
本実施形態においては、Al組成比が窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かって0.45からほぼ0まで減少する第二AlGaN領域322について説明する。
第二AlGaN領域322では、第一AlGaN領域321よりも平均のAl組成比が低くなるように形成されることが好ましい。これにより、p型半導体層32におけるキャリアの導電性、具体的には第一電極14から第二窒化物半導体層33、第二AlGaN領域322、第一AlGaN領域321を介して発光部35へキャリア(電子・ホール)を運搬する効率が向上し、発光効率の高いレーザダイオードを実現できる。
第二AlGaN領域322では、突出部の先端に向かう方向のAl組成比x2の変化率が、第一AlGaN領域321におけるAl組成比x1の変化率よりも大きくなっていることが好ましい。これにより、第二AlGaN領域322から第一AlGaN領域321へ効率的に電流を流すことが可能となる。第二AlGaN領域322が複数層で形成されている場合には、第二AlGaN領域322の複数層のうち一層のAl組成比x2の変化率が第一AlGaN領域321におけるAl組成比x1の変化率よりも大きくなっていればよい。
第二AlGaN領域322は、領域の厚さ方向において連続的にAl組成比x2が変化していることが好ましい。このとき、Al組成比x2の傾斜率(すなわち変化率)は一定であっても良く、連続的に変化していても良い。
なお、第一AlGaN領域321及び第二AlGaN領域322の双方で連続的にAl組成比が変化することがより好ましい。ここで、第一AlGaN領域321及び第二AlGaN領域322の双方でAl組成が連続的に変化とは、第一AlGaN領域321及び第二AlGaN領域322が接触する界面のAl組成比が一致していることをいう。また、第一AlGaN領域321及び第二AlGaN領域322が接触する界面のAl組成比は、第一AlGaN領域321のAl組成比x1の膜厚に対するグラフの回帰直線と、第二AlGaN領域322のAl組成比x2の膜厚に対するグラフの回帰直線との交点におけるAl組成比をいう。
第二AlGaN領域322を構成するAlGaNは、P、As又はSbといったN以外のV族元素、In又はBといったIII族元素、又はC、H、F、O、Si、Cd、ZnもしくはBe等の不純物が含まれていてもよい。
また、第二AlGaN領域322を構成するAlGaNは、n型半導体のドーパントとしてSi、p型半導体のドーパントとしてMgを含んでいても良い。第二AlGaN領域322は、連続的にAl組成比x2が減少する領域であり、+c面成長の際には分極により第二AlGaN領域322中に正孔が発生する。この場合、第二AlGaN領域322は、ドーパントとしてMgを含んでいても良い。また、第二AlGaN領域322は、−c面成長の際には分極により第二AlGaN領域322中に電子が発生する。この場合、第二AlGaN領域322は、ドーパントとしてSiを含んでいても良い。
第二AlGaN領域は、ドーパントとしてのSi、Mgを含まないアンドープ層であっても良い。第二AlGaN領域322をアンドープ層とすることにより、不純物起因の光の吸収を抑制することができ、レーザダイオードにおいて内部損失を低減することが可能である。第二AlGaN領域322は、第一AlGaN領域321と直接接していてもよい。また、第一AlGaN領域321と第二AlGaN領域322との間に例えば組成が一定のAlNとGaNの混晶であるAlGaN層を含んでいても良い。
第二AlGaN領域322が突出部を有することにより、電流密度を向上させる効果がある。また、第二AlGaN領域322が突出部を有することにより、ショットキー成分の低減や、キャリア注入効率の向上を図ることができる。
例えば第二窒化物半導体層33がGaNで形成されている場合等、被覆層である第二窒化物半導体層33からp型半導体層32(第二AlGaN領域322)へのホール注入が難しい場合がある。しかしながら、第二AlGaN領域322が突出部を有していることにより、第二AlGaN領域322と第二窒化物半導体層33との接触面積を大きくすることができ、直列抵抗及び疑似エネルギー障壁を低減させることができる。このため、ショットキー成分の低減や、キャリア注入効率の向上を図ることができる。
特に、突出部の高さが高くなると、突出部側面と第二窒化物半導体層33との接触が大きくなる。このため、突出部の側面において、Al組成の局所的なムラが大きくなる。つまり、第二AlGaN領域322の上面や突出部の側面から電流が流れやすい点ができやすくなる。このため、第二窒化物半導体層33と第二AlGaN領域322との間で電流が流れやすくなる。突出部が設けられていない第二AlGaN領域では、第二窒化物半導体層33側の面が均一となりAl組成のムラが小さくなるため、電流が流れやすいミクロな局所点が少なくなる。
また、第二AlGaN領域322が突出部を有していることにより、歪みが緩和し、第二AlGaN領域322におけるクラックの発生が抑制される。
また、突出部は、錐台形状であることが好ましい。突出部を構成する窒化物は六方晶であることから、第二AlGaN領域322上に結晶成長にて突出部を形成する際、平面形状が略六角形状の結晶が成長する。突出部は、例えば六角錐台形状等の錐台形状となっていることにより、突出部先端において電流が集中することを抑制できる。このため、突出部の頂部に電流が集中することによる突出部の破壊が生じにくくなる。このため、例えば、錐形状の突出部を有する場合に生じる、突出部の頂点に電流が集中し、突出部の頂点が破壊されやすくなることを抑制することができる。
突出部は、7nm以上の高さを有することが好ましく、50nm以上の高さを有することがより好ましい。突出部の高さが7nm以上の場合、紫外光を発光するレーザダイオードの発振に要する十分な電流密度が得られるとともに、電流密度が高くなるためである。
第二AlGaN領域322は、0nm超130nm未満の厚さを有している。ここで、本開示において、第二AlGaN領域322の厚さは、第二AlGaN領域322と第一AlGaN領域321との境界から、突出部を除いた第二AlGaN領域322の上面までの厚さをいう。第二AlGaN領域322の厚さが130nm未満の場合、窒化物半導体レーザダイオード1が好適に発振するため好ましい。第二AlGaN領域322は、例えば30nmの厚さに形成される。
第一AlGaN領域321及び第二AlGaN領域322は、例えば、有機気相成長装置(MOVPE装置)を用いて、薄膜成長により形成する。p型半導体層32は、原料ガスであるTMG(トリメチルガリウム)の流量を連続的に増加させ、TMA(トリメチルアルミニウム)の流量を連続的に減少させながら、アンモニアガスを同時に流してAlGaNを成長させる。これにより、AlGaNのAl組成比が変化したp型半導体層32を作製することができる。この際、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)をアンモニアガスと同時に流すことで、不純物としてAlGaN中にMgを添加することができる。
<発光部>
発光部35は、窒化物半導体活性層352と、窒化物半導体活性層352の一方の面に設けられた下部ガイド層351と、窒化物半導体活性層352の他方の面に設けられた上部ガイド層353とを備えている。下部ガイド層351は、第一窒化物半導体層31と窒化物半導体活性層352との間に設けられている。上部ガイド層353は、窒化物半導体活性層352とp型半導体層32との間に設けられている。
(下部ガイド層)
下部ガイド層351は、第一窒化物半導体層31の第二積層部312の上に形成されている。下部ガイド層351は、窒化物半導体活性層352で発光した光を発光部35に閉じ込めるために、第二積層部312と屈折率差を設けている。下部ガイド層351は、例えばAlN、GaNの混晶により形成されている。下部ガイド層351は、具体的には、Alx7Ga(1−x7)N(0<x7<1)により形成される。
また、下部ガイド層351を形成する材料には、P、As又はSbといったN以外のV族元素や、In又はBといったIII族元素、C、H、F、O、Si、Cd、Zn又はBe等の不純物が含まれていてもよい。
下部ガイド層351のAl組成比x7は、断面構造のエネルギー分散型X線解析(ED
X)により特定することが出来る。Al組成比x7は、AlとGaのモル数の和に対するAlのモル数の比率と定義でき、具体的にはEDXから分析及び定量されたAl、Gaのモル数の値を用いて定義することができる。下部ガイド層351のAl組成比x7は、第二積層部312のAl組成比x6よりも小さくてもよい。これにより、下部ガイド層351は、第二積層部312よりも屈折率が大きくなり、窒化物半導体活性層352で発光した光を発光部35に閉じ込めることが可能となる。
下部ガイド層351はn型半導体であり、AlGaNに対してドーパントであるSiが1×1019cm−3の濃度でドープされることで、下部ガイド層351がn型化する。下部ガイド層351は、ドーパントとしてのSiを含まないアンドープ層でもよい。
(窒化物半導体活性層)
窒化物半導体活性層352は、窒化物半導体レーザダイオード1の発光が得られる発光層である。
窒化物半導体活性層352は、例えばAlN、GaN、及びその混晶により形成される。より具体的に、窒化物半導体活性層352は、例えばAlx8Ga(1−x8)N(0.3<x8≦1)で形成される。これは、窒化物半導体活性層352におけるAlGaNのAl組成比x8が0.3より大きい場合、窒化物半導体活性層352以外の層(上部ガイド層353)で不要な発光が生じやすくなるという、本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオード1特有の課題を有することに起因する。すなわち、短波長(UVB領域)の光を発光する窒化物半導体レーザダイオード1では、このような特有の課題を有するAl組成を有する構成において、組成傾斜層によりこの不要な発光が抑制できる効果が向上する。
UVB領域の発光を得ることができる一般的な窒化物半導体レーザダイオードでは、活性層、上部ガイド層およびp型半導体層や、電子ブロック層を有する場合には電子ブロック層にもAlGaNを用いている。一方、可視領域の発光を得ることができるレーザダイオードでは、例えば活性層と上部ガイド層にGaInNを用い、電子ブロック層あるいはp型半導体層や、電子ブロック層を有する場合には電子ブロック層にもGaN又はAlGaNを用いている。このような場合、図5に示すように、いずれのレーザダイオードにおいても、上部ガイドにおけるAl組成比とp型半導体層におけるAl組成比との組成差が大きくなるほど、上部ガイドとp型半導体層との間に形成されるエネルギーポケットの深さが深くなる。
ここで、図5では、AlGaN材料を用いた際のエネルギーポケットの深さを「○」、AlGaIn可視領域の発光を得ることができるレーザダイオードのエネルギーポケットの深さを「△」で示している。図5に示すように、同じAl組成差の場合、UVB領域の発光を得ることができるAlGaNの窒化物半導体レーザダイオードでは、可視光を発光するAlGaInのレーザダイオードと比較してエネルギーポケットの深さが深くなる傾向にある。また、UVB領域の発光を得ることができる窒化物半導体レーザダイオードでは、p型半導体として活性層から離れる方向に向かってAl組成比が小さくなるAlGaN層を用いることがある。この層により、上部ガイドにおけるAl組成比とp型半導体層におけるAl組成比との組成差が大きくなりやすい(例えば組成差が0.3より大きい)傾向にある。
このため、UVB領域の発光を得ることができる窒化物半導体レーザダイオードでは、上部ガイド層とp型半導体層との間に形成されるエネルギーポケットが深くなり、この溝にキャリアが補足されやすくなっていると考えられる。
つまり、窒化物半導体レーザダイオード1では、窒化物半導体活性層352においてAlGaNのAl組成比x8を0.3より大きくすることによって、UVB領域の発光を得る場合が多いものの、UVB領域の発光を得るために窒化物半導体活性層352のAl組成比を0.3より大きくした場合は特に窒化物半導体活性層352へのキャリア注入効率が低下しやすい傾向にある。しかしながら、本実施形態で説明する組成傾斜層(上部ガイド層353及び組成傾斜層34)を備えることにより、窒化物半導体活性層352のAl組成比を0.3より大きい場合であっても窒化物半導体レーザダイオード1の発光効率の維持効果が顕著に高くなる。窒化物半導体活性層352におけるAl組成比x8は、下部ガイド層351のAl組成比x7よりも小さいことが好ましい。これにより、第一電極14及び第二電極15から注入したキャリアを効率よく発光部35に閉じ込めることができる。
窒化物半導体活性層352は、P、As又はSbといったN以外のV族元素や、In又はBといったIII族元素、C、H、F、O、Si、Cd、Zn又はBe等の不純物が含まれていてもよい。
窒化物半導体活性層352がn型半導体である場合、AlGaNに対してドーパントであるSiが1×1019cm−3の濃度でドープされることで、窒化物半導体活性層352がn型化する。窒化物半導体活性層352がp型半導体である場合、AlGaNに対してドーパントであるMgが3×1019cm−3の濃度でドープされることで、窒化物半導体活性層352がp型化する。窒化物半導体活性層352は、ドーパントとしてのSi、Mgを含まないアンドープ層でもよい。
窒化物半導体活性層352は、井戸層と、井戸層に隣接して設けられた障壁層とを有する(図3参照)。窒化物半導体活性層352は、井戸層と障壁層とが1つずつ交互に積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有していてもよい。窒化物半導体レーザダイオード1は、単一井戸構造の窒化物半導体活性層352を有することにより、1つの井戸層内のキャリア密度を増加させることができる。一方、窒化物半導体活性層352は、例えば「井戸層/障壁層/井戸層」という二重量子井戸構造、又は三重以上の量子井戸構造を有していても良い。窒化物半導体レーザダイオード1は、多重量子井戸構造の窒化物半導体活性層352を有することにより、窒化物半導体活性層352の発光効率や発光強度の向上を図ることができる。二重量子井戸構造の場合、井戸層の厚さは例えば4nmであってよく、障壁層の厚さは例えば8nmであってよく、窒化物半導体活性層352の厚さは16nmであってもよい。
井戸層のAl組成比は、下部ガイド層351及び上部ガイド層353のそれぞれのAl組成比よりも小さい。また、井戸層のAl組成比は、障壁層のAl組成比よりも小さい。また、障壁層のAl組成比は、下部ガイド層351及び上部ガイド層353のそれぞれのAl組成比と同一であってもよく、異なっていても良い。なお、井戸層及び障壁層の平均のAl組成比が窒化物半導体活性層352全体のAl組成比となる。
井戸層及び障壁層のAl組成比は断面構造のエネルギー分散型X線解析(EDX)により特定することが出来る。Al組成比は、AlとGaのモル数の和に対するAlのモル数の比率と定義でき、具体的にはEDXから分析及び定量されたAl、Gaのモル数の値を用いて定義することができる。
(上部ガイド層)
上部ガイド層353は、窒化物半導体活性層352の上に形成されている。上部ガイド層353は、窒化物半導体活性層352で発光した光を発光部35に閉じ込めるために、第二窒化物半導体層33と屈折率差を設けている。上部ガイド層353は、例えばAlN、GaN、及びその混晶により形成されている。上部ガイド層353は、具体的には、Alx9Ga(1−x9)N(0≦x9≦1)により形成される。
また、上部ガイド層353を形成する材料には、P、As又はSbといったN以外のV族元素や、In又はBといったIII族元素、C、H、F、O、Si、Cd、Zn又はBe等の不純物が含まれていてもよい。
上部ガイド層353のAl組成比x9は、断面構造のエネルギー分散型X線解析(EDX)により特定することができる。Al組成比x9は、AlとGaのモル数の和に対するAlのモル数の比率と定義でき、具体的にはEDXから分析及び定量されたAl、Gaのモル数の値を用いて定義することができる。上部ガイド層353のAl組成比x9は、井戸層のAl組成比よりも大きくてもよい。これにより、窒化物半導体活性層352へキャリアを閉じ込めることが可能となる。
上部ガイド層353は、n型半導体又はp型半導体のいずれであってもよい。上部ガイド層353がn型半導体である場合、AlGaNに対して例えばSiが1×1019cm−3の濃度でドープされることで、上部ガイド層353がn型化する。上部ガイド層353がp型半導体である場合、AlGaNに対して例えばMgが3×1019cm−3の濃度でドープされることで、上部ガイド層353がp型化する。上部ガイド層353は、アンドープ層でもよい。
上部ガイド層353の厚さは、10nmより大きく500nmより小さいことが好ましい。上部ガイド層353をこの厚さ範囲で形成することにより、光閉じ込め効率係数を向上させて、より発振閾値の低いレーザダイオードを実現することができる。
<リッジ部半導体層>
リッジ部半導体層17は、p型半導体層32の一部を含んで形成されている。リッジ部半導体層17は、第一AlGaN領域321に形成された突出領域321aと、突出部を含む第二AlGaN領域322と、第二窒化物半導体層33とを有している。リッジ部半導体層17が第一AlGaN領域321の一部に形成されることにより、第一電極14から注入されるキャリア(正孔)がリッジ部半導体層17中で基板11の水平方向に拡散することが抑制される。これにより、窒化物半導体活性層352での発光が、リッジ部半導体層17の下方に位置する領域(すなわち第一AlGaN領域321の突出領域321aの下方に位置する領域)に制御される。その結果、窒化物半導体レーザダイオード1は、高電流密度を実現し、レーザ発振の閾値を低減させることが可能になる。
リッジ部半導体層17の役割は、上述したように、電流の集中と基板11の水平方向の光の閉じ込めである。このため、リッジ部半導体層17は、必ずしも第一AlGaN領域321の一部のみに形成される必要はない。リッジ部半導体層17は、発光部35を含んでいてもよく、第一AlGaN領域321全体を含んでいてもよい。さらに、リッジ部半導体層17が存在しなくても良い。なお、リッジ部半導体層17が存在しない場合には、第二AlGaN領域322は、第一AlGaN領域321と同じ面積で形成される。また、第一電極14(詳細は後述)は、電流注入量を抑制するために、幅と長さを適切な大きさに設計すれば良い。
上述したように、リッジ部半導体層17は、第二電極15側に偏らせて配置されていている。リッジ部半導体層17が第二電極15に近付くことによって、窒化物半導体レーザダイオード1中を流れる電流経路が短くなるので、窒化物半導体レーザダイオード1中に形成される電流経路の抵抗値を下げることができる。これにより、窒化物半導体レーザダイオード1の駆動電圧を低くすることができる。しかしながら、突出領域321a及びリッジ部半導体層17は、リソグラフィの再現性の観点から1μm以上メサ端(第一AlGaN領域321の突出領域321aを除く領域の端部)より離れていることが好ましい。突出領域321a及びリッジ部半導体層17は、中央に配置されている側に片寄らせて形成されていてもよい。
<基板>
基板11は、例えばSi、SiC、MgO、Ga、Al、ZnO、GaN、InN、AlN、あるいはこれらの混晶等が挙げられる。基板11は、上層薄膜を支持し、結晶性を向上させ、さらに外部へ放熱する機能を有する。そのため、基板11としては、AlGaNを高品質で成長させることができ、熱伝導率の高いAlN基板を用いることが好ましい。基板の成長面は一般的に用いられる+c面AlNが低コストなため良いが、−c面AlNであっても、半極性面基板であっても、非極性面基板であっても良い。分極ドーピングの効果を大きくする観点からは、+c面AlNが好ましい。
基板11は、薄板の四角形状を有していることが組立上好ましいが、このような構成に限らない。また、基板11のオフ角は高品質の結晶を成長させる観点から0度より大きく2度より小さいことが好ましい。
基板11の厚さは、上層にAlGaN層を積層させる目的であるならば特に制限されないが、50μm以上1μm以下であることが好ましい。また、基板11の結晶品質には特に制限はないが、貫通転位密度が1×10cm−2以下であることが好ましく、1×10cm−2以下であることがより好ましい。これにより、基板11の上方に、高い発光効率を有する薄膜素子を形成することができる。
<AlN層>
AlN層30は、第一窒化物半導体層31よりも窒化物半導体活性層352から離れて、基板11の全面に形成されている。本開示において、窒化物半導体レーザダイオード1がAlN層30を有することにより、p型半導体層32の第二AlGaN領域322の上面に突出部が形成されやすくなる。すなわち、AlN層30は、第二AlGaN領域322の上面に突出部を形成するための下地層としても機能する。
AlN層30は、第一窒化物半導体層31との間の格子定数差及び熱膨張係数差が小さく欠陥の少ない窒化物半導体層をAlN層30上に成長させることができる。また、AlN層30は、圧縮応力下で第一窒化物半導体層31を成長させることができ、第一窒化物半導体層31にクラックの発生を抑制することができる。このため、基板11がAlN又はAlGaN等の窒化物半導体で形成されている場合でも、欠陥の少ない窒化物半導体層をAlN層30を介して基板11の上方に成長できる。
AlN層30には、C、Si、Fe、Mg等の不純物が混入されていてもよい。
基板11の形成材料としてAlNを用いた場合、AlN層30と基板11とが同一材料で形成されることから、AlN層30と基板11との境界が不明確となる。本実施形態では、基板11がAlNで形成されている場合には、基板11が基板11とAlN層30とを構成しているものと見做す。
AlN層30は、例えば数μm(例えば1.6μm)の厚さを有しているが、この値には限らない。具体的には、AlN層30の厚さは、10nmより厚く10μmより薄いことが好ましい。AlN層30の厚さが10nmより厚い場合、AlNの結晶性が高くなる。また、AlN層30の厚さが10μmより薄い場合、ウェハ全面に結晶成長により形成されたAlN層30にクラックが発生しにくくなる。また、AlN層30は、50nmより厚く5μmより薄いことがより好ましい。AlN層30の厚さが50nmより厚い場合、結晶性の高いAlNを再現良く作製することができる。また、AlN層30の厚さが5μmより薄い場合、AlN層30のクラックがより発生しにくくなる。
AlN層30は、第一窒化物半導体層31よりも薄く形成されているが、これに限らない。AlN層30が第一窒化物半導体層31よりも薄い場合、クラックが生じない範囲で第一窒化物半導体層31を厚くすることができる。この場合、第一窒化物半導体層31の薄膜積層の水平方向の抵抗が低減され、低電圧駆動の窒化物半導体レーザダイオード1を実現することができる。窒化物半導体レーザダイオード1の低電圧駆動が実現すると、発熱による高電流密度駆動下での破壊をより抑制することが可能となる。
なお、AlN層30は必ずしも設けられていなくても良い。例えば、基板11上に第一窒化物半導体層31、発光部35、組成傾斜層34及びp型半導体層32を順に形成しても、p型半導体層32に突出部を形成することができる。
<第一窒化物半導体層>
第一窒化物半導体層31は、窒化物半導体活性層352を含む発光部35のp型半導体層32とは反対側の面に設けられた層である。第一窒化物半導体層31は、基板11の上方に配置された第一積層部311と、第一積層部311上に積層された第二積層部312とを有している。第二積層部312は、第二積層部312表面の一部に形成された突出領域312aを有している。第二積層部312は、第一積層部311の上面311aの一部に配置されている。このため、第一積層部311の上面311aには、第二積層部312が形成されていない領域と、第二積層部312が形成されている領域とが存在する。第一積層部311の上面311aのうち、第二積層部312が形成されていない領域には、第一積層部311と接続する第二電極15が設けられている。
なお、第二積層部312は、第一積層部311の上面311aの全面に積層されていてもよい。
第一積層部311及び第二積層部312は、いずれもAlGaNで形成されている。第一積層部311及び第二積層部312のそれぞれのAl組成比は、同一であっても良く、異なっていても良い。第一窒化物半導体層31のAl組成比は、断面構造のエネルギー分散型X線解析(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)により特定することができる。第一窒化物半導体層31の断面は、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置を用いてAlGaNのa面に沿う断面を露出させることで、観察することができる。断面の観察方法としては、透過型電子顕微鏡を用いる。観察する倍率は、測定する層の厚さに応じて変化させ、異なる厚さの第一窒化物半導体層31のスケールバーが互いに同程度となるように倍率を設定することが好ましい。例えば、厚さ100nmの第一窒化物半導体層31を観察する場合の倍率は、100000倍程度とすることが好ましい。また、厚さ100nmの第一窒化物半導体層31を観察する際の倍率を100000倍程度とした場合、厚さ1μmの第一窒化物半導体層31は、倍率10000倍程度で観察することが好ましい。これにより、異なる厚さの第一窒化物半導体層31を同程度のスケールで観察することができる。
Al組成比は、AlとGaのモル数の和に対するAlのモル数の比率と定義でき、具体的にはEDXから分析及び定量されたAl、Gaのモル数の値を用いて定義することができる。
第一積層部311は、例えばAlx5Ga(1−x5)N(0<x5<1)で形成され
ている。第一積層部311は、AlGaNに、III族元素としてAl、Ga以外の例えばBやInを含んでいてもよいが、BやInを含む箇所において欠陥の形成や耐久性の変化が生じるため、Al、Ga以外のIII族元素を含まないことが好ましい。
また、第一積層部311は、AlGaNとともに、P、As又はSbといったN以外のV族元素や、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が含まれていてもよい。
第二積層部312は、例えばAlx6Ga(1−x6)N(0≦x6≦1)で形成されている。第二積層部312を形成するAlGaNのAl組成比x6は、第一積層部311の上面311aにおけるAl組成比x5と同じであってもよく、小さくてもよい。これにより、第一積層部311と第二積層部312との積層界面での欠陥の発生を抑制することが可能となる。
また、第二積層部312は、AlGaNとともに、P、As、SbといったN以外のV族元素、In又はBといったIII族元素、又はC、H、F、O、Si、Cd、ZnもしくはBe等の不純物が含まれていてもよい。
本開示において、第一積層部311及び第二積層部312はn型半導体である。第一積層部311及び第二積層部312は、AlGaNに対して例えばSiが1×1019cm−3の濃度でドープされることで、第一積層部311及び第二積層部312がn型化する。不純物濃度は、層全体で一様であっても、不均一であっても良く、また厚さ方向にのみ不均一でも、基板水平方向にのみ不均一であっても良い。
第一積層部311と第二電極15の間は直接接触していても、トンネル接合のように異なる層を介して接続していても良い。n型半導体で構成された第一窒化物半導体層31が第二電極15とトンネル接合されている場合、第一窒化物半導体層31と第二電極15との間にはp型半導体が設けられる。このため、第二電極15は、p型半導体とオーミック接合可能な材料で形成されることが好ましい。第二電極15は、例えばNiとAuの積層電極あるいは合金化した金属で形成された電極であることが好ましい。
第二積層部312は、後述するp型半導体層32とPNダイオードを作製する観点から、n型半導体となる。p型半導体層32は、p型半導体層32の厚さ方向でAl組成比xが減少するAlGaNを用いる。このため、例えば基板11として+c面サファイアを用いる場合、p型半導体層32は分極によりp型半導体となる。
第一積層部311の厚さは、特に制限されないが、例えば、100nm以上10μm以下であることが好ましい。第一積層部311の厚さが100nmである場合、第一積層部311の抵抗が低減する。第一積層部311の厚さが10μm以下である場合、第一積層部311の形成時のクラックの発生が抑制される。
第二積層部312の厚さは、特に制限されないが、例えば、100nm以上10μm以下であることが好ましい。第二積層部312の厚さが100nm以上である場合、第二積層部312の抵抗が低減する。第二積層部312の厚さが10μm以下である場合、第二積層部312の形成時のクラックの発生が抑制される。
<第二窒化物半導体層>
第二窒化物半導体層33は、第二AlGaN領域322よりも窒化物半導体活性層352から離れた領域であって、第二AlGaN領域322の全面を被覆する被覆層である。第二窒化物半導体層33は、第二AlGaN領域322よりもAl組成比が低いAlGaN又はGaNで形成されていることが好ましい。すなわち、第二窒化物半導体層33は、Alx3Ga(1−x3)N(0≦x3<x2)で形成されている。
第二窒化物半導体層33の最上層がp型のGaN(p−GaN)である場合、第二窒化物半導体層33の上に配置される第一電極14とのコンタクト抵抗を下げることができるとともに、窒化物半導体レーザダイオード1が対応可能な紫外光の波長範囲が広くなる。これは、第二窒化物半導体層33としてp−GaNを用いると、第二AlGaN領域322のAlGaNのAl組成比を広く設計できるためである。
第二窒化物半導体層33は、複数の層を積層した構成であってもよい。この場合、上述した第二窒化物半導体層33のAl組成比は、最表層、すなわち第一電極14に接する表面での組成比を示す。
第二窒化物半導体層33はp型半導体であり、AlGaN又はGaNに対して例えばMgが3×1019cm−3の濃度でドープされることで、第二窒化物半導体層33がp型化する。
ドーパントの濃度は、基板11の垂直方向に一定であっても、不均一であっても良い。基板11の面内方向に一定であっても、不均一であっても良い。
第二窒化物半導体層33は、AlGaNのAl組成比を傾斜させた構造を有していてもよい。例えば、第二窒化物半導体層33は、AlGaNのAl組成比が、p型半導体層32におけるAl組成比の最小値から連続的又は階段状に減少する層構造を有していてもよい。第二窒化物半導体層33が層構造を有する場合、第二窒化物半導体層33はアンドープ層であっても良い。
第二窒化物半導体層33は、最上層にドーピング濃度が高い層を更に有している積層構造であっても良い。第二窒化物半導体層33は、二層以上の積層構造であっても良い。その場合、キャリアを窒化物半導体活性層352へ効率よく運搬する目的で、Al組成比は上層に向かうほど小さくなることが好ましい。
第二窒化物半導体層33は、0nmよりも厚く100nm未満の膜厚であることが好ましい。また、p型半導体層32(第二AlGaN領域322)が表面に突出部を有する場合、突出部の影響を低減して第二窒化物半導体層33表面の凹凸を小さくする程度の厚さを有することが好ましい。例えば、第二窒化物半導体層33は、突出部の高さを数nm程度超える厚さであることが好ましい。具体的に、第二窒化物半導体層33は、10nm超10μm未満の厚さを有することが好ましく、200nm以上10μm未満であることがより好ましく、500nm以上5μm以下であることがさらに好ましい。第二窒化物半導体層33の厚さが10nm超である場合、突出部によって生じた第二AlGaN領域322表面の凸の高さが低くなり、p型半導体層32と、p型半導体層32の上面に設けられた第二窒化物半導体層33との密着性が向上する。具体的には、p型半導体層32と第二窒化物半導体層33との界面において、突出部同士の間に空隙ができることを抑制することができる。このため、電流密度を向上させることができる。また、第一電極14から正孔が注入される際に突出部先端に電流が集中することを抑制し、第二AlGaN領域322の上面(第二窒化物半導体層33と対向する面)から均一に電流を注入することができる。また、第二窒化物半導体層33の厚さが0nm超の場合、p型半導体層32と第一電極14とが第二窒化物半導体層33を介して低抵抗で接続される。
また、第二窒化物半導体層33の厚さが10μm未満である場合、p型半導体層32形成時にクラックが生じにくくなるため好ましい。
さらに、第二窒化物半導体層33の厚さがこの範囲内にある場合、第二窒化物半導体層33の成長中の格子緩和による3次元成長を抑制し、第二窒化物半導体層33の表面を平坦化することが可能となる。このため、第二窒化物半導体層33と第一電極14との接触性が安定し、再現性の高い駆動電圧の低い窒化物半導体レーザダイオード1を実現できる。
<第一電極>
第一電極14は、リッジ部半導体層17上、すなわちリッジ部半導体層17の最上層である第二窒化物半導体層33上に形成されている。
第一電極14がn型電極の場合、第一電極14は、リッジ部半導体層17に電子を注入する目的で用いられるのであれば、一般的な窒化物半導体発光レーザダイオードのn型電極材料により形成される。例えば、第一電極14は、Ti、Al、Ni、Au、Cr、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W又はその合金、又はITO等により形成される。
第一電極14がp型電極の場合、第一電極14は、第一電極14が窒化物半導体発光レーザダイオードに正孔(ホール)を注入する目的で用いられるのであれば、一般的な窒化物半導体発光レーザダイオードのp型電極材料により形成される。例えば、第一電極14は、Ni、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Cu又はその合金、又はITO等により形成され、特にNi、Au若しくはこれらの合金、又はITOであることが好ましい。第一電極14とリッジ部半導体層17とのコンタクト抵抗が小さくなるためである。
本実施形態では、第一電極14は、p型電極となるように形成されている。
第一電極14は、第一電極14の全域に電流を均等に拡散させる目的で、上方にパッド電極(第一パッド電極)を有していてもよい。パッド電極は、例えばAu、Al、Cu、Ag又はW等により形成され、導電性の観点からAuで形成されることが好ましい。また、第一電極14は、例えばNi及びAuの合金で形成された第一コンタクト電極をリッジ部半導体層17上に形成し、Auで形成された第一パッド電極を第二コンタクト電極上に形成した構成であっても良い。
第一電極14は、例えば240nmの厚さに形成されている。
第一電極14は、レーザダイオードの場合には短辺の長さが10μm未満であり長辺の長さが1000μm以下の長方形状を有し、第二窒化物半導体層33に積層されているとよい。発光ダイオードの場合には、様々な形状が想定されるが、例えば50μm×200μmの長方形の形状等が想定される。第一電極14のリッジ部半導体層17側の面は、ほぼ同じ形状を有している。第一電極14とリッジ部半導体層17との接触面が互いに同じ形状を有することにより、第一電極14から注入されるキャリア(正孔)がリッジ部半導体層17中で基板11の水平方向に拡散することが抑制され、窒化物半導体活性層352での発光を制御することができる。
<第二電極>
第二電極15は、第一窒化物半導体層31の第二積層部312上に形成されている。
第二電極15がn型電極の場合、第二電極15は、第二電極15が第一窒化物半導体層31に電子を注入する目的で用いられるのであれば、一般的な窒化物半導体発光レーザダイオードのn型電極材料により形成される。例えば、第二電極15は、Ti、Al、Ni、Au、Cr、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W若しくはその合金、又はITO等により形成される。
第二電極15がp型電極の場合、第二電極15は、第二電極15が窒化物半導体発光レーザダイオードに正孔(ホール)を注入する目的で用いられるのであれば、一般的な窒化物半導体発光レーザダイオードのp型電極材料により形成される。例えば、第二電極15は、Ni、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Cu若しくはその合金、又はITO等により形成され、特にNi、Au若しくはこれらの合金、又はITOであることが好ましい。第二電極15と第一窒化物半導体層31の第二積層部312とのコンタクト抵抗が小さくなるためである。
本実施形態では、第二電極15は、n型電極となるように形成されている。
第二電極15は、第二電極15の全域に電流を均等に拡散させる目的で、上方にパッド電極(第二パッド電極)を有していてもよい。パッド電極は、第一電極14のパッド電極と同様の材料、構成とすることができる。
第二電極15は、例えば60nmの厚さに形成されている。本開示では、第二電極15は、第一電極14と異なる厚さに形成されているが、第一電極14と同じ厚さに形成されていてもよい。
<共振器面>
窒化物半導体レーザダイオード1がレーザダイオードに適用される場合、共振器面の形成が必要である。共振器面16aは、第一窒化物半導体層31の第二積層部312、発光部35、組成傾斜層34、p型半導体層32及び第二窒化物半導体層33のそれぞれの側面によって形成される同一平面で構成されている。共振器面16aは、図1において輪郭が太線によって図示されている面である。
また、裏側共振器面16bは、共振器面16aに対向する側面であって、第一窒化物半導体層31の第二積層部312、発光部35、組成傾斜層34、p型半導体層32及び第二窒化物半導体層33のそれぞれの側面によって形成される同一平面で構成されている。裏側共振器面16bは、図1において輪郭の一部が太線によって図示されている面である。
共振器面16a及び裏側共振器面16bは、発光部35の発光を反射させることを目的として設けられている。共振器面16a及び裏側共振器面16bで反射した光を発光部35に閉じ込めるために、共振器面16a及び裏側共振器面16bは、対を成して備えられている。共振器面16aは、例えば窒化物半導体レーザダイオード1の光の出射側となる。共振器面16a及び裏側共振器面16bにおいて、発光部35からの発光を反射させるために、共振器面16a及び裏側共振器面16bは、発光部35と上部ガイド層353との接触面に対して垂直かつ平坦であってもよい。しかしながら、共振器面16a及び裏側共振器面16bは、全体にあるいは部分的に傾斜部あるいは凹凸部を有していてもよい。
共振器面16a及び裏側共振器面16bの表面には、誘電体多層膜等の絶縁保護膜及び反射膜が形成されていてもよい。具体的には、絶縁保護膜は、SiOで形成されていてよく、その他にAl、SiN、SnO、ZrO又はHfO等で形成されていてもよい。また、絶縁保護膜は、これらの材料が積層された構造を有していてもよい。絶縁保護膜は、窒化物半導体レーザダイオード1の光の出射側となる共振器面16aと、光の出射側にならない反射側の裏側共振器面16bの両方の表面に形成されていてもよい。光の出射側の共振器面16aに形成された絶縁保護膜と、光の反射側の裏側共振器面16bに形成された絶縁保護膜は、同じ構造を有していてもよいし、異なる構造を有していてもよい。
(2.2)製造方法
組成傾斜層34及びp型半導体層32は、次のようにして作製することができる。例えば、有機気相成長装置(MOVPE装置)を用いて、原料ガスである、TMG(トリメチルガリウム)の流量を連続的に増加させて、TMA(トリメチルアルミニウム)の流量を連続的に減少させながらアンモニアガスを同時に流してAlGaNを成長させる。このとき、AlGaNの成長時間を調整することで、組成傾斜層34及びp型半導体層32の厚さを調整することができる。
これにより、AlGaNのAl組成比が変化した組成変化層を作製することができる。この際、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)をアンモニアガスと同時に流すことで、不純物としてAlGaN中にMgを添加することができる。
(2.3)測定方法
本実施形成における材料特定及び組成は、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)で実施する。各層の積層方向と垂直な断面を分割及び研磨あるいは集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)加工し、その断面を透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて観察することで各層の配置を明確化し、点分析が可能なエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray Spectrometry)で同定する。また、半導体薄膜の膜厚は、薄膜積層方向と垂直な断面を分割及び研磨あるいは集束イオンビーム加工し、その断面を透過電子顕微鏡観察することによって測長する。
(2.4)第一実施形態の効果
第一実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードは、以下の効果を有する。
(1)本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードでは、上部ガイド層上面に形成される組成傾斜層が、窒化物半導体活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成されている。
これにより、組成傾斜層と上部ガイド層との境界部分において、伝導帯のポテンシャルエネルギーが局所的に低くなるエネルギーポケットが生じにくくなる。このため、ホールがエネルギーポケットに捕捉されて上部ガイド層で発光が生じることを抑制し、井戸層での発光が得られやすくなる。
(2)本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードでは、組成傾斜層におけるAl組成の傾斜率が1%/nmより大きく15%/nmより小さいことが好ましい。
これにより、組成傾斜層と上部ガイド層との境界に形成されるエネルギーポケットが浅くなり、ホールがエネルギーポケットに捕捉されて上部ガイド層で発光が生じることをより抑制することができる。また、内部量子効率IQE及び光閉じ込め効率係数Γが向上するため、レーザダイオードの発光性能(発振閾値電流密度、発光出力など)が全体的に向上する。
(3)本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードでは、組成傾斜層におけるAl組成比x4の平均が、上部ガイド層におけるAl組成の平均よりも大きく、Al組成比の差が0より大きく1より小さいことが好ましい。
これにより、窒化物半導体レーザダイオードの内部量子効率IQEが向上する。また、Al組成比の差が小さい程エネルギーポケットが浅くなり、キャリア注入効率(CIE)が向上するとともに、上部ガイド層で発光が生じることを抑制することができる。
(4)本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードでは、組成傾斜層の厚さが3nm超50nm未満であることが好ましい。
これにより、エネルギーポケットが浅くなり、電子によるホールの捕捉を抑制することができ、上部ガイド層の発光を抑制できる。
3.第二実施形態
以下、第二実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオード2について、図5を用いて説明する。窒化物半導体レーザダイオード2は、窒化物半導体レーザダイオード1と同様の紫外光を発光可能なレーザダイオードである。
(3.1)窒化物半導体レーザダイオードの全体構成
窒化物半導体レーザダイオード2は、基板11と、AlN層30と、第一窒化物半導体層31と、発光部35と、組成傾斜層34と、p型半導体層132と、第二窒化物半導体層33とがこの順に積層されている。また、p型半導体層132は、高Al組成領域132Aと、低Al組成領域132Bとが積層されて形成されている。窒化物半導体レーザダイオード2は、組成傾斜層34と、p型半導体層132とを繰り返す構造となっている。すなわち、窒化物半導体レーザダイオード2は、p型半導体層32に替えて、高Al組成領域132Aと、低Al組成領域132Bとが積層されたp型半導体層132を備え、かつ組成傾斜層34と、p型半導体層132とを繰り返す構造を有する点で、第一実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオード1と相違する。
以下、p型半導体層132及び組成傾斜層34とp型半導体層132とを繰り返す構造について説明する。なお、p型半導体層132以外の基板11、AlN層30、第一窒化物半導体層31、組成傾斜層34、発光部35及び第二窒化物半導体層33については、第一実施形態で説明した各部の構成と同様であるため説明を省略する。
<p型半導体層>
p型半導体層132は、第一AlGaN領域321に相当する高Al組成領域132Aと、第二AlGaN領域322に相当する低Al組成領域132Bとが積層された構成とされている。
(高Al組成領域)
高Al組成領域132Aは、Alx10Ga(1−x10)Nで形成されている。高Al組成領域132AにおけるAl組成比x10は、組成傾斜層34におけるAl組成比x4と同じかそれ以上、すなわちx4≦x10であることが好ましく、例えば0.45≦x1≦1であることが好ましい。すなわち、高Al組成領域132Aは、AlGaN又はGaNで形成されている。
高Al組成領域132Aは、一定のAl組成比を有していてもよく、傾斜したAl組成比を有していても良いが、一定のAl組成比を有していることが好ましい。
(低Al組成領域)
低Al組成領域132Bは、Alx11Ga(1−x11)Nで形成されている。低Al組成領域132BにおけるAl組成比x11は、組成傾斜層34におけるAl組成比x4と同じかそれ以下、すなわちx12≦x4であることが好ましい。
低Al組成領域132Bは、一定のAl組成比を有していてもよく、傾斜したAl組成比を有していても良いが、一定のAl組成比を有していることが好ましい。
(積層構造)
図6Aは、組成傾斜層34及びp型半導体層132の積層構造の一構成例であり、図6Bは、図6Aに示す積層構造のAl組成比を示す模式図である。図6Aに示すように、窒化物半導体レーザダイオード2は、例えば組成傾斜層34、高Al組成領域132A及び低Al組成領域132Bを複数繰り返す構造を有している。
このとき、組成傾斜層34は、窒化物半導体活性層352から離れる程薄く形成されていることが好ましい。例えば、図6Bに示すように、複数の組成傾斜層34におけるAl組成の傾斜率がそれぞれ同じである場合、組成傾斜層34の厚さが薄くなる程、組成傾斜層34内でのAl組成の変化が小さくなる。これにより、積層構造をp型半導体として用いても、高Al組成領域132Aと低Al組成領域132Bとの間にエネルギーポケットが形成されることを抑制することが出来るため、電子が不必要に界面に蓄積し不要光を発することを抑制する。また、表面に近づくほど電子のオーバーフローにより井戸層側から運搬される電子の量は減少する。このため、組成傾斜層34を有することによる効果が薄れていく。その場合、構造を用いた場合にMgを活性化させてp型半導体とする技術の効果をより高めるために、組成傾斜層34は薄く
形成されることが好ましい。
さらに、窒化物半導体レーザダイオード2は、例えばAl組成比が傾斜した組成傾斜層34を有さず、高Al組成領域132Aと低Al組成領域132Bとが繰り返された構成であっても良い。
上述した各構成は、組み合わせて用いられてもよい。
(3.2)第二実施形態の効果
第二実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードは、第一実施形態と同様の効果を有している。
4.第三実施形態
以下、第三実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオード3について、図7から図10を用いて説明する。窒化物半導体レーザダイオード3は、窒化物半導体レーザダイオード1と同様の紫外光を発光可能なレーザダイオードである。
(4.1)窒化物半導体レーザダイオードの全体構成
図7に示すように、窒化物半導体レーザダイオード3は、基板11と、AlN層30と、第一窒化物半導体層31と、発光部135と、組成傾斜層34と、p型半導体層32と、第二窒化物半導体層33とがこの順に積層されている。また、発光部135は、下部ガイド層351と、窒化物半導体活性層352と、上部ガイド層354とを備えている。すなわち、窒化物半導体レーザダイオード2は、上部ガイド層353に替えて、上部ガイド層354を備える点で、第一実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオード1と相違する。
以下、図7とともに図8を参照して上部ガイド層354について説明する。ここで、図8は、窒化物半導体レーザダイオード3の上部ガイド層354、組成傾斜層34及びp型半導体層32におけるAl組成比を示すグラフである。
なお、上部ガイド層354を含む発光部135以外の基板11、AlN層30、第一窒化物半導体層31、組成傾斜層34及び第二窒化物半導体層33については、第一実施形態で説明した各部の構成と同様であるため説明を省略する。また、発光部135の下部ガイド層351及び窒化物半導体活性層352についても、第一実施形態で説明した各部の構成と同様であるため説明を省略する。
上部ガイド層354は、窒化物半導体活性層352の井戸層及び井戸層に隣接して設けられた障壁層のうち、井戸層の上端に接して形成されている。上部ガイド層354は、井戸層の上端から、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成されていることが好ましい。これにより、窒化物半導体活性層352以外の層(上部ガイド層353)での不要な発光をより抑制することができる。
このとき、上部ガイド層354の一部には、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が一定となる領域が存在しても良い。
また、上部ガイド層354は、図8に示すように、上部ガイド層354の厚さ方向の全領域において窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成されていてもよい。上部ガイド層354での不要な発光をより抑制するためには、上部ガイド層354の厚さ方向の全領域においてAl組成比が変化するAlGaNで上部ガイド層354が形成されていることが好ましい。
これは、上部ガイド層354と組成傾斜層34とによって構成される組成傾斜層においてエネルギーポケットが生じている場合、上部ガイド層354において膜厚方向にAl組成比が一定の領域がない方がキャリア注入効率の低下をさらに抑制することができるためである。さらに、上部ガイド層内部に例えば欠陥や、組成の局所ムラに起因するキャリ再結合が発生する場合にも、組成を傾斜させることで上部ガイド層内での再結合を抑制し、キャリアを活性層に注入することが出来る。これにより、キャリア注入効率を向上できる。
図9は、上部ガイド層354を備える窒化物半導体レーザダイオード3から発光される光の発光スペクトルを示すグラフである。また、図10は、Al組成比が膜厚方向に一定の上部ガイド層(すなわち、上部ガイド層353)を備える第一実施形態にかかる窒化物半導体レーザダイオード1から発光される光の発光スペクトルを示すグラフである。
図10に示すように、上部ガイド層354を備える窒化物半導体レーザダイオード3から発光される光は、窒化物半導体活性層352以外の層から発光される光がほとんどなく、窒化物半導体活性層352から発光される中心波長294nmのピークが1つのみ生じている。このため、窒化物半導体レーザダイオード3では、窒化物半導体活性層352以外の層から不要な光が発生せず、キャリアが窒化物半導体活性層352に落ち込んで発光効率が向上する。
一方、図9に示すように、上部ガイド層353を備える窒化物半導体レーザダイオード1から発光される光は、窒化物半導体活性層352から発光される中心波長299nmのピークが生じている。そして、図9に示すように、窒化物半導体レーザダイオード1からは、窒化物半導体活性層352以外の層から発光される波長278nmのサブピークも生じている。この窒化物半導体活性層352以外の層から発光される光は、中心波長の強度と比較して十分に小さい強度の光であるが、電流密度が高くなると窒化物半導体活性層352からの光強度とともに強度が大きくなる。
本実施形態で説明する上部ガイド層354は、窒化物半導体活性層352から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成されている。このため、組成傾斜層の全領域においてエネルギーポケットにキャリアが補足されたとしても、キャリアが井戸層に落ち込みやすくなり、エネルギーポケットにキャリアが補足されにくくなるためであると考えられる。このため、上部ガイド層354には、膜厚方向にAl組成比が一定の領域が存在しない方が好ましい。
(4.2)変形例
図11に示すように、窒化物半導体レーザダイオード1は、組成傾斜層34とp型半導体層32との間に設けられた電子ブロック層36を備えた窒化物半導体レーザダイオード1Aであってもよい。
以下、電子ブロック層36について説明する。
<電子ブロック層>
電子ブロック層36は、窒化物半導体活性層352よりもバンドギャップエネルギーが大きくなるように設計される。例えば窒化物半導体活性層352がAlGaNの場合、電子ブロック層36には、AlNの混晶比率が高いAlGaNを用いることが出来る。
電子ブロック層36は、基板11の水平方向に略平坦であることが望ましい。電子ブロック層36が略平坦であることで、p型半導体層32で局所的に集中した第二電極15から注入されたキャリア(電子)を、電子ブロック層36の水平面内に拡散させる役割がある。これは、電子ブロック層36のバンドギャップエネルギーが大きいために電子ブロック層36がキャリアの拡散の障壁となっているためである。
電子ブロック層36は、材料組成が膜厚方向に一定であっても、組成が変化していても良いが、電子を効率良くブロックし、さらに上述したキャリアを効率良く電子ブロック層36の水平面内に拡散するために組成が一定であることが好ましい(図12参照)。
(4.3)第三実施形態の効果
第三実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードは、第一実施形態と同様の効果に加えて、以下の効果を有している。
(5)本実施形態に係る窒化物半導体レーザダイオードでは、上部ガイド層が、上部ガイド層の厚さ方向の全領域において窒化物半導体活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成されていている。
これにより、窒化物半導体レーザダイオード3では、窒化物半導体活性層352以外の層から不要な光が発生せず、キャリアが窒化物半導体活性層352に落ち込んで発光効率が向上する。
以下、本開示に係る窒化物半導体レーザダイオードについて、実施例を挙げて説明する。
実施例では、第一実施形態で説明した構成の窒化物半導体レーザダイオードに対してシミュレーションによる評価を行った。このシミュレーションでは、上述した薄膜シミュレータソフトSiLENSeを用いて評価を行った。
各実施例における窒化物半導体レーザダイオード(図1参照)の基本モデルの構成を以下に示す。ここで、本実施例では、組成傾斜層がエネルギーポケットを2つ有する二層構成としている。このシミュレーションでは、窒化物半導体レーザダイオードが波長が280nmから320nmのUVB領域の光を発光するレーザダイオードであることを想定している。
なお、例えば以下に示す組成におけるAlx→yとの記載は、層内の下層側から上層側に向けてAlの組成がxからyに徐々に変化した構成を示す。
(基本モデルの構成)
・第一窒化物半導体層:組成 n−Al0.55Ga0.45N、厚さ 1μm
・下部ガイド層及び上部ガイド層:組成 u−Al0.45Ga0.55N、厚さ 各158nm
・窒化物半導体活性層(二重量子井戸構造)
井戸層:組成 Al0.35Ga0.65N、厚さ 4nm
障壁層:組成 Al0.45Ga0.55N、厚さ 8nm
・組成傾斜層(二層構造)
第一層:組成 u−Al0.55→0.65Ga0.45→0.35N、厚さ 20nm
第二層:組成 u−Al0.65→0.75Ga0.35→0.25N、厚さ 10nm
・p型半導体層
第一組成変化領域:組成 p−Al0.9→0.45Ga0.1→0.55N、厚さ
260nm
第二組成変化領域:組成 p−Al0.45→0Ga0.55→1N、厚さ 75nm
・第二窒化半導体層:組成 p−GaN、厚さ10nm
図13A及び図13Bに、このような窒化物半導体レーザダイオードの基本モデルの導電帯及び価電子帯のポテンシャルエネルギーを示す。図13Bは、図13Aのグラフのうち、所定位置からの距離が1300nm以上1400nm以下の範囲(図13A中、点線で示す部分)を拡大して示すグラフである。図13Bに示すように、実施例1の窒化物半導体レーザダイオードでは、上部ガイド層と組成傾斜層との境界に生じるエネルギーポケット(第一ポケット)と、組成傾斜層とp型半導体層の境界に生じるエネルギーポケット(第二ポケット)とが生じた。ここで、各エネルギーポケットでのエネルギーの深さはそれぞれ隣接する上部ガイド層、p型半導体層との隣接点近傍でのエネルギー差を示す。深さを表記するために、便宜上隣接するガイド層、あるいはp型半導体層の隣接点近傍のエネルギーを基準(0eV)と想定してエネルギー深さを表記する。
[実施例1]
実施例1では、組成傾斜層におけるAl組成比の傾斜率の変化に応じた窒化物半導体レーザダイオードの性能をシミュレーションソフトSiLENSeを用いて計算及び評価した。構造は基本モデルのうち、組成傾斜層を厚さ30nm、一層構造のu−Al0.45→0.9Ga0.45→0.1Nで形成して、その膜厚を変化させた場合の傾向をグラフ化した。
以下の表1に示すように、上述した基本モデルの組成傾斜層におけるAl組成比の傾斜率[Al%/nm]を変化させたサンプル1−1〜サンプル1−13の窒化物半導体レーザダイオードを構成した。
<評価>
サンプル1−1〜サンプル1−13の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャル、内部量子効率(IQE)及び光閉じ込め効率係数Γのシミュレーション結果を表1に示す。また、これらの評価結果を図14A、図14B及び図15に示す。ここで、図14Aは、サンプル1−3〜サンプル1−13の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャルと、内部量子効率(IQE)とを示すグラフである。図14Bは、図14AにおいてAl組成比の傾斜率が10Al%/nm以下の範囲を拡大して示すグラフである。図15は、サンプル1−1〜サンプル1−8の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。
Figure 2021184456
表1示すように、組成傾斜層のAl組成傾斜率が1より大きく15より小さいサンプル1−4〜サンプル1−11の窒化物半導体レーザダイオードでは、エネルギーポケットが−0.5eVより大きく浅くなっており、内部量子効率IQEが0.01以上と大きく、かつ光閉じ込め効率係数Γが3.4%以上と高くなった。発明者らの検討により、本エネルギーポケットは−0.5eVより高いとガイド層からのサブピーク発光が少ないことが分かっており、この値より高いことでキャリア注入効率の高いレーザダイオードが作製可能である。さらに、良好な特性を有するレーザダイオードを得るためには、内部量子効率IQEは少なくとも1%より高い必要がある。また、光閉じ込め効率係数Γが高いほどレーザダイオードの閾値電流密度が低くなり、より高効率でより省電力なレーザダイオードを実現できる。
[実施例2]
実施例2では、上部ガイド層の厚さの変化に応じた窒化物半導体レーザダイオードの性能を評価した。
構造は、基本モデルのうち、組成傾斜層を厚さ30nmのu−Al0.55→0.84Ga0.45→0.16Nで形成して、上部ガイド層の膜厚を変化させた場合の傾向をグラフ化した。
以下の表2に示すように、上述した基本モデルの上部ガイド層の厚さを変化させたサンプル2−1〜サンプル2−9の窒化物半導体レーザダイオードを構成した。
<評価>
サンプル2−1〜サンプル2−9の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャル、内部量子効率(IQE)及び光閉じ込め効率係数Γのシミュレーション結果を表2に示す。また、これらの評価結果を図16及び図17に示す。ここで、図16は、サンプル2−1〜サンプル2−6の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャルと、内部量子効率(IQE)とを示すグラフである。図17は、サンプル2−1〜2−9の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。
Figure 2021184456
表2示すように、上部ガイド層の厚さが10nm以上300nmであるサンプル2−2〜サンプル2−9の窒化物半導体レーザダイオードでは、光閉じ込め効率係数Γが0.02%以上と高く、より発振閾値電流密度の低いレーザダイオードを実現できることが確認された。また、上部ガイド層の厚さを10nm以上とした場合、組成傾斜層の初端組成を設計した組成比に制御しやすいためより好ましい。
[実施例3]
実施例3では、組成傾斜層の厚さの変化に応じた窒化物半導体レーザダイオードの性能を評価した。構造は、実施例1と同じ構造で、組成傾斜層の膜厚を変化させた場合の傾向をグラフ化した。
以下の表3に示すように、上述した基本モデルの組成傾斜層の厚さを変化させたサンプル3−1〜サンプル3−11の窒化物半導体レーザダイオードを構成した。
<評価>
サンプル3−1〜サンプル3−11の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャル、内部量子効率(IQE)及び光閉じ込め効率係数Γのシミュレーション結果を表3に示す。また、これらの評価結果を図18及び図19に示す。ここで、図18は、サンプル3−1〜サンプル3−11の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャルと、内部量子効率(IQE)とを示すグラフである。図19は、サンプル3−1〜3−11の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。
また、図20は、組成傾斜層の厚さと駆動電圧の加算量との関係を示すグラフで
ある。
Figure 2021184456
従来、UVB領域の発光を得ることができるレーザダイオードの組成傾斜層の膜厚に対する抵抗値rは、3.24e−2ohm/nmであることが知られている(Appl. Phys. Express 13、 031004(2020) 参照)。図20はこの抵抗値が仮に全て第一AlGaNで生じていると仮定したレーザダイオードにおいて、1350μmの面積で形成されている構造を想定した場合の駆動電圧(V)の増加量を示したグラフである。報告されているAlGaN LD例の電圧は高く、素子破壊無く駆動させるためには20V以下での駆動が好ましい。その場合、図20に示すように、組成傾斜層を120nm以下とする必要がある。
また、表3示すように、組成傾斜層の厚さが3nm以上50nmであるサンプル3−3〜サンプル3−10の窒化物半導体レーザダイオードでは、エネルギーポケットが−0.5eVより大きく、すなわち浅くなるためより好ましいことが分かった。また、組成傾斜層の厚さが3nm以上10nmであるサンプル3−3〜サンプル3−6の窒化物半導体レーザダイオードでは、内部量子効率IQEが0.20以上と大きいためさらに好ましい。
[実施例4]
実施例4では、組成傾斜層とp型半導体層との接面における組成傾斜層のAl組成比とp型半導体層のAl組成比との差の変化に応じた窒化物半導体レーザダイオードの性能を評価した。
構造は、基本モデルの内、組成傾斜層にu−AlGaN30nmを用いて、この第一AlGaNの初端組成を45%、終端組成を50%から80%で変化させた場合の傾向をグラフ化した。
以下の表4に示すように、上述した基本モデルの組成傾斜層のp型半導体層側端面のAl組成(終端組成)を調整して接面におけるAl組成比を変化させたサンプル4−1〜サンプル4−6の窒化物半導体レーザダイオードを構成した。
<評価>
サンプル4−1〜サンプル4−6の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャル、内部量子効率(IQE)及び光閉じ込め効率係数Γのシミュレーション結果を表4に示す。また、これらの評価結果を図21及び図22に示す。ここで、図21は、サンプル4−2、サンプル4−3、サンプル4−5、サンプル4−6の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャルと、内部量子効率(IQE)とを示すグラフである。図22は、サンプル4−1〜4−6の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。
なお、p型半導体層の組成傾斜層側端面のAl組成は0.9(90%)とした。
Figure 2021184456
表4示すように、組成傾斜層とp型半導体層との接面におけるAl組成比の差が0より大きい(組成傾斜層のAl終端組成が90%未満の)サンプル4−1からサンプル4−5の窒化物半導体レーザダイオードでは、内部量子効率IQEが0.20以上と大きくなることが分かった。特に、組成差が0超0.2以下(組成傾斜層のAl終端組成が70%以上90%未満)の範囲では、第二ポケットが浅く、キャリア注入効率(CIE)が高くなることが分かった。さらに、組成差が0超0.1以下(組成傾斜層のAl終端組成が80%以上90%未満)の範囲では、第二ポケットがさらに浅く、キャリア注入効率(CIE)がより高くなることが分かった。
[実施例5]
実施例5では、組成傾斜層とp型半導体層との接面における組成傾斜層のAl組成比とp型半導体層のAl組成比との差の変化に応じた窒化物半導体レーザダイオードの性能を評価した。構造は、基本モデルの内、組成傾斜層にu−AlGaN30nmを用いて、この第一AlGaNの初端組成を55%から90%に変化させて、終端組成を90%とした場合の傾向をグラフ化した。
以下の表5に示すように、上述した基本モデルの組成傾斜層のp型半導体層側端面のAl組成(終端組成)を調整して接面におけるAl組成比を変化させたサンプル5−1〜サンプル5−6の窒化物半導体レーザダイオードを構成した。
<評価>
サンプル5−1〜サンプル5−6の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャル、内部量子効率(IQE)及び光閉じ込め効率係数Γのシミュレーション結果を表5に示す。また、これらの評価結果を図23及び図24に示す。ここで、図23は、サンプル5−1〜サンプル5−6の各窒化物半導体レーザダイオードにおける、第一ポケット及び第二ポケットのエネルギーポテンシャルと、内部量子効率(IQE)とを示すグラフである。図24は、サンプル5−1〜サンプル5−6の光閉じ込め効率係数Γの評価結果を示すグラフである。
なお、組成傾斜層のp型半導体層側端面のAl組成は0.45(45%)とした。
Figure 2021184456
表5に示すように、組成傾斜層とp型半導体層との接面におけるAl組成比の差が0より大きい(組成傾斜層のAl終端組成が45%より大きい)サンプル5−2からサンプル5−6の窒化物半導体レーザダイオードでは、第二ポケットが浅く、キャリア注入効率(CIE)が高くなることが分かった。特に、組成差が0超0.2以下(p型半導体層のAl終端組成が45%超65%以下)の範囲では、第一ポケットも浅く、キャリア注入効率(CIE)が高くなることが分かった。さらに、組成差が0超0.1以下(p型半導体層のAl終端組成が45%超55%以下)の範囲では、第一ポケットがさらに浅く、キャリア注入効率(CIE)がより高くなることが分かった。
本開示の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
1,2 窒化物半導体レーザダイオード
14 第一電極
15 第二電極
16a 共振器面
16b 裏側共振器面
17 リッジ部半導体層
30 AlN層
31 第一窒化物半導体層
311 第一積層部
311a 上面
312 第二積層部
312a 突出領域
32 p型半導体層
321 第一AlGaN領域
321a 突出領域
322 第二AlGaN領域
33 第二窒化物半導体層
34 組成傾斜層
35 発光部
351 下部ガイド層
352 窒化物半導体活性層
353 上部ガイド層
36 電子ブロック層
132 p型半導体層
132A 高Al組成領域
132B 低Al組成領域

Claims (16)

  1. Al組成比が0.3より大きいAlGaNで形成された活性層と、
    前記活性層よりも上方に形成され、前記活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成された領域を含む組成傾斜領域と、
    前記組成傾斜領域よりも上方に形成され、p型のAlGaNで形成されたp型半導体層と、
    を備える
    窒化物半導体レーザダイオード。
  2. 前記組成傾斜領域は、AlGaNで形成された上部ガイド層と、前記上部ガイド層の前記活性層と反対側に形成され、前記活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成された組成傾斜層とを含む
    請求項1に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  3. 前記活性層は、井戸層と、前記井戸層に隣接して設けられた障壁層とを有し、
    前記上部ガイド層は、前記井戸層の上端に接して形成されており、
    前記上部ガイド層を構成するAlGaNのAl組成比は、前記井戸層の上端から前記活性層から離れる方向に向かって連続的に増加する
    請求項2に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  4. 前記上部ガイド層は、該上部ガイド層の厚さ方向の全領域において前記活性層から離れる方向に向かってAl組成比が連続的に増加するAlGaNで形成されている
    請求項2又は3に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  5. 前記上部ガイド層は、該上部ガイド層の厚さ方向の全領域においてAl組成比が一定であるAlGaNで形成されている
    請求項2に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  6. 前記組成傾斜領域のAl組成比が連続的に増加する領域におけるAl組成比の膜厚に対する傾斜率は、1%/nmより大きく15%/nmより小さい
    請求項2から5のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  7. 前記p型半導体層における平均のAl組成比は、前記組成傾斜層における平均のAl組成比よりも大きく、
    前記組成傾斜層における平均のAl組成比は、前記上部ガイド層におけるAl組成よりも大きい
    請求項2から6のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  8. 前記上部ガイド層の厚さは、10nmより大きく500nmより小さい
    請求項2から7のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  9. 前記組成傾斜層の厚さは、3nmより大きく50nmより小さい
    請求項2から8のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  10. 前記p型半導体層と前記組成傾斜層との界面における、前記p型半導体層のAl組成比と前記組成傾斜層のAl組成比との差は、0より大きく1より小さい
    請求項2から9のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  11. 前記上部ガイド層と前記組成傾斜層との界面における、前記上部ガイド層のAl組成比と前記組成傾斜層のAl組成比との差は、0より大きく1より小さい
    請求項2から10のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  12. 前記p型半導体層は、前記組成傾斜層から離れるに従ってAl組成比が減少する前記AlGaNで形成されている
    請求項2から11のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  13. 前記組成傾斜層と前記p型半導体層との間に設けられた電子ブロック層を備える
    請求項2から12のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  14. 前記p型半導体層は、高Al組成領域と、低Al組成領域とが積層されて形成されており、
    前記組成傾斜層と前記p型半導体層とを繰り返す構造を有する
    請求項2から13のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  15. 前記組成傾斜層は、前記活性層から離れる程薄く形成されている
    請求項14に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
  16. 複数の前記組成傾斜層におけるAl組成の傾斜率は、前記活性層から離れる程大きくなる
    請求項14又は15に記載の窒化物半導体レーザダイオード。
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