JP2021183958A - 上皮系マーカー陰性の腫瘍細胞を検出する方法 - Google Patents

上皮系マーカー陰性の腫瘍細胞を検出する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 試料中の上皮系マーカー陰性の腫瘍細胞を特異的かつ網羅的に検出可能な方法を提供すること。【解決手段】 試料中の上皮系マーカー陰性かつTM4SF1(Transmembrane 4 superfamily member 1)陽性の細胞を検出することにより、前記課題を解決する。【選択図】 図7

Description

本発明は、上皮系マーカー陰性の腫瘍細胞の検出法に関する。
腫瘍細胞は、原発巣から離脱すると、血管内またはリンパ管内へと浸透し、血液中またはリンパ液中を循環した後、最終的に他臓器や組織に侵入することで、転移巣を形成する。ここで、血液中を循環する腫瘍細胞は循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell;CTC)とも呼ばれ、多くの臨床試験や研究がなされている。例えば、癌患者から採取した血液中に含まれるCTCの数を測定すること(特許文献1)、または前記CTCにおけるタンパク質の発現または遺伝子の突然変異もしくは転座を調べることにより、前記患者の予後予測や癌再発予測に関する情報を提供できる。
CTCの検出には、一般的には、サイトケラチンやEpCAM(Epithelial
cell adhesion molecule)などの上皮系マーカーが用いられている。すなわち、CTCは、上皮系マーカー陽性の細胞として検出されている。
一方、非特許文献1において、上皮系細胞が多くを占める腫瘍組織の中に、上皮間葉転換(Epithelial to mesenchymal transition;EMT)を起こした、上皮系マーカーの発現が低い間葉系細胞が存在し、当該間葉系細胞が癌の転移に関わっていることが報告されている。すなわち、上皮間葉転換を起こした、上皮系マーカー陰性のCTCの方が、上皮系マーカー陽性のCTCよりも、悪性度が高く重要だと考えることができる。一例として、特許文献2において、上皮系マーカー陰性のCTCが、癌患者の予後予測に有用であることが報告されている。
ここで、上皮系マーカーのみを指標として上皮系マーカー陰性のCTCを特異的かつ網羅的に検出するのは難しい場合がある。上皮系マーカー陰性のCTCを検出する方法としては、例えば、ビメンチン(Vimentin)や神経カドヘリン(N−Cadherin)等の間葉系マーカー(特許文献3および4)や、TROP2(特許文献5)を用いた方法が報告されている。しかしながら、ビメンチンは血液中の白血球でも高発現しているため、上皮系マーカー陰性のCTCの特異的検出には向かない。また、神経カドヘリンおよびTROP2は上皮間葉転換を起こしたCTCの一部のみでしか発現していないため、上皮系マーカー陰性のCTCの網羅的検出には不十分である。そのため、上皮系マーカー陰性のCTCを特異的かつ網羅的に検出するのにより有用なマーカーが求められている。
また、TM4SF1(Transmembrane 4 superfamily member 1)は、腫瘍細胞で高発現していることが報告されている(特許文献6)。
特表2008−533487号公報 特開2017−129584号公報 特表2014−533828号公報 特表2016−512197号公報 特表2018−517888号公報 WO2019/172030
Simon, A. Joosse.et al.,CANCER RESEARCH,73,8−11(2013)
本発明の課題は、上皮系マーカー陰性の腫瘍細胞を特異的かつ網羅的に検出可能な方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、TM4SF1(Transmembrane 4 superfamily member 1)が上皮系マーカー陰性CTCにおいて高発現していることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は以下の通り例示できる。
[1]
試料中の標的細胞を検出する方法であって、
試料中の少なくとも1つの上皮系マーカーが陰性かつTM4SF1(Transmembrane 4 superfamily member 1)が陽性の細胞を標的細胞として検出する工程
を含み、
前記標的細胞が、腫瘍細胞である、方法。
[2]
前記上皮系マーカーが、EpCAM(Epithelial cell adhesion molecule)および/またはサイトケラチンである、前記方法。
[3]
前記標的細胞が、循環腫瘍細胞である、前記方法。
[4]
前記標的細胞が、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞である、前記方法。
[5]
前記標的細胞が、骨転移に関係する前立腺癌由来腫瘍細胞である、前記方法。
[6]
前記試料が、被験体から得られた試料である、前記方法。
[7]
前記被験体が、癌被験体である、前記方法。
[8]
前記被験体が、ヒトである、前記方法。
[9]
前記試料が、血液由来試料である、前記方法。
[10]
前記検出により、前記試料中の前記標的細胞の個数が測定される、前記方法。
[11]
前記試料が、被験体から得られた試料であり、
前記被験体が、癌被験体であり、
前記検出により、前記試料中の前記標的細胞の個数が測定される、
前記方法。
[12]
被験体の予後を予測する方法であって、
前記方法により前記試料中の前記標的細胞の個数を測定する工程、および
前記個数と前記被験体の予後とを関連付ける工程
を含む、方法。
本発明によれば、上皮系マーカー陰性の腫瘍細胞を特異的かつ網羅的に検出できる。
前立腺癌患者血液試料から検出したCTC各サンプルのEpCAM遺伝子発現を示す図である。 前立腺癌患者血液試料から検出したCTC各サンプルのKRT8(サイトケラチン8)遺伝子発現を示す図である。 前立腺癌患者血液試料から検出したCTC各サンプルのTM4SF1(Transmembrane 4 superfamily member 1)遺伝子発現を示す図である。 前立腺癌患者血液試料から検出したCTC各サンプルのビメンチン(Vimentin、VIM)遺伝子発現を示す図である。 前立腺癌患者血液試料から検出したCTC各サンプルのBMP4(Bone morphogenetic protein 4)遺伝子発現を示す図である。 前立腺癌細胞株VCaP細胞およびPC3細胞の染色結果を示す図(写真)である。パネル(a)は明視野像であり、パネル(b)はHoechst 33342染色像であり、パネル(c)は抗TM4SF1蛍光標識抗体染色像であり、パネル(d)は抗EpCAM蛍光標識抗体染色像である。また白矢印はVCaP細胞(上皮系マーカー高発現細胞)であり、黒矢印はPC3細胞(上皮系マーカー低発現細胞)である。 前立腺癌細胞株VCaP細胞およびPC3細胞を健常者血液に添加し調製した血液試料から回収したVCaP細胞およびPC3細胞の染色結果を示す図(写真)である。パネル(a)は明視野像であり、パネル(b)はHoechst 33342染色像であり、パネル(c)は抗TM4SF1蛍光標識抗体および抗EpCAM蛍光標識抗体染色像であり、パネル(d)は抗EpCAM蛍光標識抗体染色像であり、パネル(e)は抗CD45蛍光標識抗体染色像である。また白矢印はVCaP細胞(上皮系マーカー高発現細胞)であり、黒矢印はPC3細胞(上皮系マーカー低発現細胞)である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>検出方法
本発明の検出方法は、試料中の標的細胞を検出する方法である。
本発明の検出方法は、試料中の上皮系マーカー陰性かつTM4SF1(Transmembrane 4 superfamily member 1)陽性の細胞を検出する工程を含む。同工程を「検出工程」ともいう。検出工程において検出される細胞が標的細胞である。すなわち、検出工程は、具体的には、上皮系マーカー陰性かつTM4SF1陽性の細胞を標的細胞として検出する工程であってよい。
試料は、標的細胞を含有し得るものであれば、特に制限されない。試料は、例えば、被験体より得られた試料であってよい。試料としては、血液(全血)、希釈血液、血清、血漿、髄液、臍帯血、成分採血液等の血液試料;尿、唾液、精液、糞便、痰、羊水、腹水等の血液成分を含有し得る試料;肝臓、肺、脾臓、腎臓、皮膚、腫瘍、リンパ節等の組織の断片の懸濁液(組織懸濁液);それらの分画物が挙げられる。組織懸濁液は、例えば、組織の断片を液体媒体で懸濁することにより取得できる。液体媒体としては、水や水性緩衝液が挙げられる。分画物としては、上記のような試料に由来する、細胞を含有する画分が挙げられる。分画物として、具体的には、上記のような試料を密度勾配遠心等の遠心分離に供することで得られる、細胞を含有する画分が挙げられる。試料としては、特に、血液
試料、血液成分を含有し得る試料、およびそれらの分画物(以下、総称して「血液由来試料」ともいう)が挙げられる。血液由来試料は、被験体からの採取が比較的容易であり得る。試料は、例えば、そのまま、あるいは適宜、希釈または濃縮等の操作に供してから、検出工程に用いてよい。試料は、例えば、懸濁液の形態で検出工程に用いてよい。
試料には、例えば、添加剤が添加されていてよい。添加剤は、特に、血液由来試料に添加されてよい。添加剤としては、抗凝固剤、抗血小板剤、ホルムアルデヒドドナー化合物(加水分解を受けることでホルムアルデヒドを放出可能な化合物)、ポリエチレングリコールが挙げられる。抗凝固剤としては、クエン酸やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤が挙げられる。これらの添加剤は、例えば、標的細胞の安定化に寄与し得る。添加剤としては、1種の添加剤を用いてもよく、2種またはそれ以上の添加剤を組み合わせて用いてもよい。添加剤は、例えば、被験体からの試料の採取時に添加されてもよく、被験体からの試料の採取後に添加されてもよい。2種またはそれ以上の添加剤を用いる場合、それらの添加剤は、同時に試料に添加してもよく、そうでなくてもよい。例えば、2種またはそれ以上の添加剤を含有する溶液を試料に添加してもよく、それらの添加剤のそれぞれを含有する溶液を個別に試料に添加してもよい。ホルムアルデヒドドナー化合物、抗血小板剤、および抗凝固剤を添加した血液由来試料(保存処理した血液由来試料)は、試料が凍らない低温から室温(例えば0℃から30℃)で少なくとも7日間は安定に保存可能であり得る。
試料は、例えば、細胞の固定処理や膜透過処理等の処理に供してから検出工程に用いてもよい。固定処理剤としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドドナー化合物、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類、メタノール、エタノール等のアルコール類、重金属を含有する溶液が挙げられる。膜透過処理剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール類や、サポニン等の界面活性剤が挙げられる。
被験体は、特に制限されない。被験体は、例えば、癌被験体であってよい。「癌被験体」とは、癌に罹患していたか、癌に罹患している被験体を意味する。被験体は、癌の治療前の被験体であってもよく、癌の治療中の被験体であってもよく、癌の治療後の被験体であってもよい。被験体は、特に、癌の治療後の被験体であってよい。被験体は、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル、チンパンジー、鳥が挙げられる。被験体は、特に、ヒトであってよい。
癌の種類は、特に制限されない。癌は、原発癌でもよく、転移癌であってもよい。癌としては、造血細胞悪性腫瘍、頭頚部癌、脳腫瘍、乳癌、子宮体癌、子宮頚癌、卵巣癌、食道癌、胃癌、虫垂癌、大腸癌、肝癌、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、腎癌、副腎癌、消化管間質腫瘍、中皮腫、甲状腺癌、肺癌、骨肉腫、骨癌、前立腺癌、精巣腫瘍、膀胱癌、皮膚癌、肛門癌が挙げられる。造血細胞悪性腫瘍としては、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫が挙げられる。リンパ腫としては、ホジキンリンパ腫や非ホジキンリンパ腫が挙げられる。頭頚部癌としては、口腔底癌、歯肉癌、舌癌、頬粘膜癌、唾液腺癌、副鼻腔癌が挙げられる。癌としては、特に、前立腺癌が挙げられる。
標的細胞は、上皮系マーカー陰性かつTM4SF1陽性の細胞である。上皮系マーカー陰性かつTM4SF1陽性の細胞は、腫瘍細胞とみなすものとする。すなわち、標的細胞は、腫瘍細胞であり、具体的には、上皮系マーカー陰性かつTM4SF1陽性の腫瘍細胞である。腫瘍細胞としては、循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell;CTC)が挙げられる。CTCは、特に、血液由来試料に含有され得る。血液由来試料中の腫瘍細胞は、典型的には、CTCとみなしてよい。標的細胞は、上皮系マーカー陰性であることから、悪性度が高い腫瘍細胞であることが示唆される。悪性度が高い腫瘍
細胞としては、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞や骨転移に関係する腫瘍細胞が挙げられる。上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞としては、ビメンチン(Vimentin)や神経カドヘリン(N−Cadherin)等の間葉系マーカー陽性の腫瘍細胞が挙げられる。骨転移に関係する腫瘍細胞としては、骨転移に関係する前立腺癌由来腫瘍細胞が挙げられる。骨転移に関係する前立腺癌由来腫瘍細胞としては、BMP4(Bone morphogenetic protein 4)等の骨形成因子陽性の腫瘍細胞が挙げられる。「骨転移に関係する」とは、例えば、癌の骨転移の原因となることを意味してよい。標的細胞は、例えば、単一細胞として存在していてもよく、細胞クラスタ(細胞集塊)を形成していてもよい。細胞クラスタは、標的細胞を1個またはそれ以上含んでいてよい。細胞クラスタは、標的細胞に加えて、標的細胞以外の細胞を含んでいてもよく、いなくてもよい。
上皮系マーカーとしては、EpCAM(Epithelial cell adhesion molecule)やサイトケラチン(CK)が挙げられる。CKとしては、CK1からCK20(すなわち、CK1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)が挙げられる。CKとしては、特に、サイトケラチン8(CK8;KRT8ともいう)が挙げられる。上皮系マーカーとしては、1つの上皮系マーカーを用いてもよく、2つまたはそれ以上の上皮系マーカーの組み合わせを用いてもよい。「上皮系マーカー陰性」とは、少なくとも1つの上皮系マーカーが陰性であることを意味してよい。すなわち、2つまたはそれ以上の上皮系マーカーの組み合わせを用いる場合、標的細胞においては、少なくとも1つの上皮系マーカーが陰性であればよい。2つまたはそれ以上の上皮系マーカーの組み合わせを用いる場合、標的細胞においては、2つまたはそれ以上の上皮系マーカーが陰性であってもよい。
標的細胞は、試料中の細胞の上皮系マーカーおよびTM4SF1を測定することにより、検出できる。すなわち、検出工程は、試料中の細胞の上皮系マーカーおよびTM4SF1を測定し、上皮系マーカー陰性かつTM4SF1陽性の細胞を検出する工程であってもよい。また、検出工程は、具体的には、試料中の細胞の上皮系マーカーおよびTM4SF1を測定し、上皮系マーカー陰性かつTM4SF1陽性の細胞を標的細胞として検出する工程であってもよい。
標的細胞の検出は、例えば、定性的な検出(例えば、試料中の標的細胞の有無の検出)であってもよく、定量的な検出(例えば、試料中の標的細胞の存在量の検出)であってもよい。標的細胞の存在量としては、標的細胞の個数が挙げられる。すなわち、検出工程においては、例えば、標的細胞の個数が測定されてよい。すなわち、検出工程は、試料中の細胞の上皮系マーカーおよびTM4SF1を測定し、上皮系マーカー陰性かつTM4SF1陽性の細胞の個数(すなわち標的細胞の個数)を測定する工程であってもよい。試料中の標的細胞の個数は、試料中の標的細胞を検出してその個数をカウントすることにより、測定できる。標的細胞の個数は、例えば、単位量(例えば、単位重量または単位体積)の試料当たりの標的細胞の個数として算出されてよい。
上皮系マーカーやTM4SF1等のマーカーを測定する方法は、特に制限されない。「マーカーの測定」とは、マーカーの発現の測定を意味してよい。マーカーの発現の測定は、例えば、定性的な測定(例えば、マーカーの発現の有無の測定)であってもよく、定量的な測定(例えば、マーカーの発現の程度の測定)であってもよい。マーカーの発現の測定は、例えば、マーカーの発現産物を測定することにより、実施できる。マーカーの発現産物としては、マーカーの転写産物(すなわち、マーカータンパク質をコードするmRNA)やマーカーの翻訳産物(すなわち、マーカータンパク質)が挙げられる。マーカーの発現産物としては、特に、マーカータンパク質が挙げられる。マーカーの発現産物の測定は、例えば、定性的な測定(例えば、発現産物の有無の測定)であってもよく、定量的な
測定(例えば、発現産物の存在量の測定)であってもよい。測定を「検出」ともいう。
標的細胞は、通常、標的細胞が保持するマーカーの発現産物を測定することにより、直接的に検出されてよい。また、マーカーの発現産物の分泌等により標的細胞外にマーカーの発現産物が存在する場合、標的細胞は、標的細胞外に存在するマーカーの発現産物を測定することにより、間接的に検出されてもよい。
マーカーの発現産物を測定する方法は、特に制限されない。マーカーの発現産物は、発現産物の種類に応じた適切な手法により測定することができる。マーカーの発現産物は、例えば、mRNAまたはタンパク質を定量する公知の手法により測定することができる。
マーカータンパク質は、例えば、マーカータンパク質に対する抗体、マーカータンパク質に対するアプタマー、またはマーカータンパク質に特異的に染色可能な色素(例えば化学発光色素や蛍光色素)を利用して検出することができる。マーカータンパク質は、特に、マーカータンパク質に対する抗体を利用して検出してよい。マーカータンパク質に対する抗体を利用することにより、例えば、マーカータンパク質を簡便、高感度、かつ特異的に検出でき得る。抗体やアプタマーは、いずれも、適宜、標識物質で修飾されていてよい。標識物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、Alexa Fluor(商品名)等の蛍光物質や、アルカリホスファターゼやホースラディッシュペルオキシダーゼ等の酵素、放射性物質が挙げられる。抗体またはアプタマーと標識物質との結合態様は、特に制限されない。抗体またはアプタマーは標識物質と直接結合していてもよく、そうでなくてもよい。例えば、抗体は、標識物質と化学結合等により直接結合していてもよく、標識物質と結合した二次抗体(標識二次抗体)と結合することによって間接的に標識物質と結合していてもよい。マーカータンパク質は、具体的には、例えば、マーカータンパク質に対する抗体を利用した、EIA(Enzyme Immunoassay)法またはウェスタンブロット法により、検出することができる。EIA法としては、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)法、CLEIA(Chemiluminescent Enzyme Immunoassay)法、FEIA(Fluorescence Enzyme Immunoassay)法が挙げられる。マーカータンパク質は、手動で検出してもよく、測定装置を用いて自動的に検出してもよい。測定装置としては、AIA−900(東ソー)などのエンザイムイムノアッセイ装置やAIA−CL2400(東ソー)などの化学発光酵素免疫測定装置が挙げられる。
マーカータンパク質をコードするmRNAは、例えば、同mRNAに特異的にハイブリダイズするプローブを利用したハイブリダイゼーション法により検出することができる。また、マーカータンパク質をコードするmRNAは、同mRNAを特異的に増幅できるプライマーセットを利用した、PCR法、RT−PCR法、TRC(Transcription Reverse transcription Concerted)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)法、またはTMA(Transcription−Mediated Amplification)法等により増幅して検出することもできる。マーカータンパク質をコードするmRNAは、試料を直接塩基配列解析に供して検出することもできる。
標識した標的細胞の検出および計数は、具体的には、例えば、顕微鏡、光学検出器、またはフローサイトメーターを用いて実施してよい。顕微鏡としては、蛍光顕微鏡が挙げられる。
標識した標的細胞は、例えば、染色像(例えば蛍光像)に基づいて検出および計数してよい。染色像(例えば蛍光像)に基づく標的細胞の検出および計数は、例えば、手動で実
施してもよく、標的細胞を自動で読み取るソフトウェアを用いて自動で実施してもよい。なお、標識した標的細胞の検出および計数の際には、例えば、染色像(例えば蛍光像)に加えて、明視野像による観察結果を参考にしてもよい。
複数のマーカーを測定する場合、それらのマーカーは、例えば、それぞれ別個に測定してもよく、まとめて同時に測定してもよい。上皮系マーカーおよびTM4SF1をそれぞれ別個に測定する場合、例えば、標的細胞の網羅的検出のため、先にTM4SF1陽性である細胞を検出し、次いで上皮系マーカー陰性であることを確認してよい。
マーカーの測定は、例えば、複数個の細胞を含有する試料に対して実施してもよいし、試料から分離した単一細胞に対して実施してもよい。
マーカーの陰性/陽性の判断基準は、所望の程度に標的細胞を検出できる限り、特に制限されない。陰性/陽性の判断基準は、例えば、標的細胞の検出の目的等の諸条件に応じて適宜設定できる。
例えば、マーカーの発現が全く認められない場合(例えば、マーカーの検出シグナルが全く認められない場合)に当該マーカーが陰性であると判断してよい。また、例えば、マーカーの発現レベルが所定の閾値未満である場合(例えば、マーカーの検出シグナルの強度が所定の閾値未満の場合)に当該マーカーが陰性であると判断してもよい。また、例えば、マーカーの発現レベルが陰性対照細胞におけるマーカーの発現レベルと同等以下である場合(例えば、マーカーの検出シグナルの強度が陰性対照細胞におけるマーカーの検出シグナルと同等以下である場合)に当該マーカーが陰性であると判断してもよい。また、例えば、マーカーの発現レベルが陽性対照細胞におけるマーカーの発現レベルの半分未満、1/3未満、1/5未満、または1/10未満である場合(例えば、マーカーの検出シグナルの強度が陽性対照細胞におけるマーカーの検出シグナルの半分未満、1/3未満、1/5未満、または1/10未満である場合)に当該マーカーが陰性であると判断してもよい。
例えば、マーカーの発現が少しでも認められる場合(例えば、マーカーの検出シグナルが少しでも認められる場合)に当該マーカーが陽性である判断してよい。また、例えば、マーカーの発現レベルが所定の閾値以上である場合(例えば、マーカーの検出シグナルの強度が所定の閾値以上の場合)に当該マーカーが陽性であると判断してもよい。また、例えば、マーカーの発現レベルが陽性対照細胞におけるマーカーの発現レベルと同等以上である場合(例えば、マーカーの検出シグナルの強度が陽性対照細胞におけるマーカーの検出シグナルと同等以上である場合)に当該マーカーが陽性であると判断してもよい。また、例えば、マーカーの発現レベルが陰性対照細胞におけるマーカーの発現レベルよりも有意に高い場合(例えば、マーカーの検出シグナルの強度が陰性対照細胞におけるマーカーの検出シグナルよりも一定の値以上高い、またはマーカーの検出シグナルの強度が陰性対照細胞におけるマーカーの検出シグナルの平均値+2SD以上、平均値+3SD以上、または平均値+4SD以上である場合)に当該マーカーが陽性であると判断してもよい。
「陰性対照細胞」とは、マーカーが陰性である細胞を意味する。「陽性対照細胞」とは、マーカーが陽性である細胞を意味する。上皮系マーカーについての陰性対照細胞としては、血管内皮細胞や間葉系幹細胞が挙げられる。上皮系マーカーについての陽性対照細胞としては、上皮細胞が挙げられる。TM4SF1についての陰性対照細胞としては、白血球が挙げられる。
<2>予測方法
試料が被験体より得られた試料であり、且つ、該被験体が癌被験体である場合、検出工
程の結果に基づいて被験体の予後を予測することができる。すなわち、本発明の予測方法は、被験体の予後を予測する方法である。
被験体の予後は、例えば、被験体より得られた試料中の標的細胞の個数に基づいて予測できる。被験体の予後は、具体的には、例えば、被験体より得られた試料中の標的細胞の個数と被験体の予後とを関連付けることにより、予測できる。すなわち、本発明の予測方法は、被験体より得られた試料中の標的細胞の個数を測定する工程、および前記個数と被験体の予後とを関連付ける工程を含んでいてよい。前者の工程を「測定工程」、後者の工程を「関連付け工程」ともいう。測定工程は、検出工程の一例である。すなわち、測定工程は、本発明の検出方法の実施により、具体的には、検出工程の実施により、実施できる。関連付け工程は、具体的には、被験体より得られた試料中の標的細胞の個数と被験体の予後とを関連付けることにより被験体の予後を予測する工程であってよい。
関連付けは、被験体より得られた試料中の標的細胞の個数と被験体の予後との相関を示すデータ(以下、「相関データ」ともいう)に基づいて実施することができる。相関データは、例えば、癌個体群より得られた試料中の標的細胞の個数を測定し、それら癌個体群の予後を追跡調査し、標的細胞の個数と予後との相関を解析することで作成できる。相関データを作成するための個体については、被験体についての記載を準用できる。例えば、「癌個体」とは、癌に罹患していたか、癌に罹患している個体を意味する。相関データを作成するための個体数は、特に制限されないが、例えば、2個体以上、5個体以上、10個体以上、20個体以上、50個体以上、または100個体以上であってよい。相関データは、例えば、識別表やグラフ等の、扱いやすい形態で関連付けに使用されてよい。
例えば、被験体より得られた試料中の標的細胞の個数が少ないほど、予後が良いと予測してよい。また、例えば、被験体より得られた試料中の標的細胞の個数が所定の閾値と比較して少ない場合に、予後が良いと予測してよい。また、例えば、被験体において試料中の標的細胞の個数の減少が認められた場合に、予後が良いと予測してよい。また、例えば、被験体において、試料中の標的細胞の個数の減少の程度が大きい程、または試料中の標的細胞の個数の増加の程度が小さい程、予後が良いと予測してよい。
また、例えば、被験体より得られた試料中の標的細胞の個数が多いほど、予後が悪いと予測してよい。また、例えば、被験体より得られた試料中の標的細胞の個数が所定の閾値と比較して多い場合に、予後が悪いと予測してよい。また、例えば、被験体において試料中の標的細胞の個数の増加が認められた場合に、予後が悪いと予測してよい。また、例えば、被験体において、試料中の標的細胞の個数の減少の程度が小さい程、または試料中の標的細胞の個数の増加の程度が大きい程、予後が悪いと予測してよい。
予後の予測は、例えば、定性的な予測(例えば、予後が良または不良となるかどうかの予測)であってもよく、定量的な予測(例えば、予後が良または不良となる可能性の程度の予測や、予後が良または不良となる場合の良または不良の程度の予測)であってもよい。例えば、予後が良いと予測することとしては、予後が良となると予測すること、予後が良となる可能性が高いと予測すること、予後が良となる場合の良の程度が大きいと予測することが挙げられる。また、例えば、予後が悪いと予測することとしては、予後が不良となると予測すること、予後が不良となる可能性が高いと予測すること、予後が不良となる場合の不良の程度大きいと予測することが挙げられる。
予後は、癌に関連するものであれば、特に制限されない。予後としては、生存期間、生存率、癌の悪化の有無や可能性、癌の改善の有無や可能性、癌の再発の有無や可能性、癌の転移の有無や可能性が挙げられる。予後の予測の際には、標的細胞の個数に加えて、他のパラメータを考慮してもよい。他のパラメータとしては、根治群/再発群/要治療群等
の治療状態、ステージI/II/III/IV等の進行度、1年/3年/5年/10年生存率等の生存率、グリーソンスコア(Gleason score)等の悪性度が挙げられる。すなわち、予後として、具体的には、根治群/再発群/要治療群等の治療状態に基づく予後、ステージI/II/III/IV等の進行度に基づく予後、1年/3年/5年/10年生存率等の生存率に基づく予後、グリーソンスコア(Gleason score)等の悪性度に基づく予後も挙げられる。グリーソンスコアは、例えば、前立腺癌の悪性度の判定に用いられる。治療状態、進行度、生存率、悪性度等のパラメータと標的細胞の個数を組み合わせて評価することにより、正確に予後を予測することができると期待される。予後は、特に、治療予後であってよい。すなわち、例えば、癌の治療後の被験体に対して本発明の予測方法を実施することにより、治療予後を予測することができる。
関連付け工程は、例えば、医師が実施してもよく、医師以外の者が実施してもよい。関連付け工程は、例えば、医療補助者等の、医師以外の医療関係者が実施してもよい。また、関連付け工程は、コンピュータ(具体的には、例えば、測定装置やプログラム)により自動で実施してもよい。本発明の予測方法による予測結果は、例えば、医師等の医療関係者が被験体の予後を診断するために利用することができる。したがって、本発明の予測方法は、被験体の予後を診断するための予備的方法とみなしてもよい。
本発明の予測方法によれば、治療方針の決定や治療効果のモニタリングにおいて精度よい情報を提供できる。本発明の予測方法によれば、被験体が抱える病状における危険性や生存の確率に関する情報を医師に与えることで、最適な治療方法を選択できるため、不必要な治療を被験体に行なうリスクの低減に繋がる。そのため、本発明の予測方法によれば、不必要な治療に対する費用の節約だけでなく、最適な治療選択による被験体の予後改善に寄与できる。例えば、本発明の予測方法によって要治療群または低い生存率と予測された被験体には、さらに、抗癌剤投与、放射線療法、外科手術等の適切な医療行為を実施してよい。また、本発明の予測方法は、被験体の予後診断だけでなく、例えば、被験体における腫瘍の早期発見や転移診断にも展開可能であり、また、健常者に対する癌診断のスクリーニングにも展開できる。
<3>本発明のプログラム
本発明は、本発明の方法に含まれる工程をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。同プログラムを、「本発明のプログラム」ともいう。「本発明の方法」とは、本発明の検出方法および本発明の予測方法を総称してよい。
すなわち、本発明においては、本発明の方法に含まれる工程をコンピュータが実行してもよい。コンピュータは、本発明の方法に含まれる工程の一部または全部を実行してよい。コンピュータは、例えば、検出工程および/または予測工程を実行してよい。
具体的には、例えば、医療関係者は、被験体から血液由来試料等の試料を取得し、必要により前処理を行ない、測定装置にセットすることができる。コンピュータは、測定装置に試料中の細胞の上皮系マーカーやTM4SF1等のマーカーを測定させ、標的細胞を検出することができる。コンピュータは、さらに、標的細胞の検出結果に基づいて被験体の予後を予測することができる。コンピュータは、さらに、そのようにして得られた予測結果を出力することができ、以て医療関係者は予測結果を取得して被験体の予後の診断に利用することができる。
本発明のプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録され、提供されてよい。「コンピュータが読み取り可能な記録媒体」とは、データやプログラム等の情報が電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用等により蓄積され、さらに蓄積された情報をコンピュータから読み取ることのできる記録媒体をいう。そのような記録媒体
としては、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R/W、DVD−ROM、DVD−R/W、DVD−RAM、DAT、8mmテープ、メモリカード、ハードディスク、ROM(リードオンリーメモリ)、SSDが挙げられる。また、本発明のプログラムは、コンピュータにより実行される各ステップが別個のプログラムとして記録されていてもよい。
以下、非限定的な実施例を参照して本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1 血中循環腫瘍細胞(CTC)の遺伝子発現解析
以下の方法により、前立腺癌患者由来血液試料中に含まれるCTCの遺伝子発現解析を行なった。
(1)前立腺癌患者より血液試料として全血を採取し、当該採取量に対し10倍量の1×BD Pharm Lyse(Becton Dickinson)を加え、室温で10分間インキュベート後、0.5%(w/v)BSAと2mM EDTAとを含むD−PBS(−)(Dulbecco’s Phosphate−Buffered Saline、Mg2+およびCa2+不含)(以下、単に「バッファ」と表記)で前記血液試料中に含まれる細胞を洗浄し、バッファに懸濁させた。
(2)(1)の細胞懸濁液50μLにFcR Blocking Reagentを50μL(Miltenyi Biotec)加え混和した。その後、PE(フィコエリスリン)標識抗TM4SF1(Transmembrane 4 superfamily
member 1)抗体溶液50μL(PE−anti−human TM4SF1 Antibody、R&D systems)、PE標識抗TNFRSF12A(Tumor necrosis factor receptor superfamily member 12A)抗体溶液2.5μL(PE−anti−human TNFRSF12A Antibody、Biolegend)、PE標識抗EpCAM(Epithelial cell adhesion molecule)抗体溶液10μL(PE−anti−human EpCAM Antibody、Miltenyi Biotec)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識抗CD45抗体溶液10μL(CD45−BB515、Becton Dickinson)、および細胞核染色試薬として1mg/mL Hoechst 33342 solution 1.1μL(同仁化学研究所)を加え混和した。冷蔵で10分間インキュベート後、バッファで細胞を洗浄し、バッファに懸濁させた。
(3)(2)の細胞懸濁液80μLに、Anti−PE Microbeads UltraPure(Miltenyi Biotec)20μLを加え、冷蔵で15分間インキュベート後、バッファで細胞を洗浄し、バッファに懸濁させた。
(4)MSカラム(Miltenyi Biotec)を、MACS Separator(Miltenyi Biotec)に設置し、バッファで洗浄後、(3)の細胞懸濁液500μLを添加し、バッファ500μLで3回洗浄した。
(5)洗浄後のカラムをMACS Separatorから外し、バッファ1mLをカラムに添加後、当該カラムにプランジャーを押し入れることで細胞を回収した。
(6)回収した細胞をスライドガラス上に播種して蛍光顕微鏡下で観察し、PEのシグナルを有する細胞(すなわち、少なくともTM4SF1、TNFRSF12A、またはEpCAMが陽性の細胞)をCTCとして検出した。検出したCTCは、いずれも、CD4
5陰性で、且つ細胞核を有していた。検出したCTCはマイクロピックシステム(ネッパジーン)を用いて回収した。
(7)回収したCTC(計31サンプル)について、SMART−Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(Clontech)によりcDNAの合成および増幅を行なった。
(8)(7)で得られたcDNA 1ng分を使用して、Nextera XT DNA Library Preparation Kit(Illumina)およびNextera XT v2 Index Kit Set A(Illumina)によるライブラリー調製を行ない、Next−seq500(Illumina)を用いてリード長150bp、paired end readの条件でシーケンス解析を行なうことで、一試料あたり1000万リード以上の配列を解読した。
(9)(8)で解読したヌクレオチド配列(シーケンスデータ)をTopHat2(JOHNS HOPKINS大学)およびBowtie2(JOHNS HOPKINS大学)を用いて、ヒトゲノム配列にマップした。なおヒトゲノム配列およびヒト遺伝子情報はNCBI(National Center for Biological Information)より公開されているBUILD GRCh38を使用した。マップしたヌクレオチド配列は、Cufflinks(Washington大学)により、解読した各遺伝子のリード数から、FPKM(Fragments Per Kilobase of exon per Million reads mapped)を単位とする遺伝子ごとの発現値を求めた。
従来よりCTC検出に用いられる上皮系マーカーである、EpCAM遺伝子は31サンプル中10サンプルで(図1)、サイトケラチンの一つであるKRT8(サイトケラチン8)遺伝子は31サンプル中8サンプルで(図2)、それぞれ発現が認められなかった。したがって、これらサンプルは上皮系マーカー陰性のCTCといえる。なお、EpCAM遺伝子の発現が認められなかった10サンプルのうち、2サンプル(70_5および72_2)はKRT8遺伝子の発現がわずかなサンプルであり、残り8サンプル(47_5、47_6、57_5、58_1、58_3、70_1、70_2および70_3)はKRT8遺伝子の発現が認められなかったサンプルである(図1および図2)。
一方、上皮系マーカー陰性のCTC10サンプル(47_5、47_6、57_5、58_1、58_3、70_1、70_2、70_3、70_5および72_2)全てでTM4SF1遺伝子を高発現していた(図3)。このことから、上皮系マーカー陰性のCTCをTM4SF1遺伝子の発現に基づき網羅的に検出できることが明らかとなった。すなわち、上皮系マーカーとTM4SF1を組み合わせて測定することにより、上皮系マーカー陰性のCTCを特異的かつ網羅的に検出できることが明らかとなった。
また、上皮系マーカー陰性のCTC10サンプル全てで間葉系マーカーであるビメンチン(Vimentin、VIM)遺伝子を高発現していた(図4)。よって前記サンプルに含まれるCTCは上皮間葉転換を起こしたCTCといえる。さらに、上皮系マーカー陰性CTCの10サンプルのうち47_5を除く9サンプルでBMP4(Bone morphogenetic protein 4)遺伝子を発現していた(図5)。BMP4は骨転移した前立腺癌において発現が見られる骨形成因子であることから、前記サンプルに含まれるCTCの多くは骨転移と関係したCTCであることを示唆している。
以上をまとめると、癌に罹患していた、または癌に罹患している患者から採取した血液試料中にEpCAMやサイトケラチンなど上皮系マーカー陰性かつTM4SF1陽性のC
TCが含まれていると、上皮間葉転換や骨転移を起こしている可能性があり、全生存予後が悪化していると予測できる。
実施例2 上皮系マーカー陰性癌細胞のTM4SF1による検出
以下の方法により、前立腺癌細胞の蛍光標識抗体法による検出を行なった。
(1)上皮系マーカー高発現のヒト前立腺癌細胞株としてVCaPを、上皮系マーカー低発現のヒト前立腺癌細胞株としてPC3をそれぞれ選択し、以下に示す培地を用いて、5%CO環境下37℃で培養した。培養後、TrypLE Express(Thermo Fisher Scientific)を用いて培養皿から細胞を剥離することで、癌細胞を回収した。
VCaP:10%(v/v)FBS(ウシ胎児血清)を含むDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)培地
PC3:10%(v/v)FBSを含むHam’s F−12K培地
(2)VCaP細胞とPC3細胞とを細胞数1:1で混合し、バッファ100μLに懸濁した。
(3)細胞懸濁液100μLに、FcR Blocking Reagent(Miltenyi Biotec)50μL、1mg/mL Hoechst 33342 solution(同仁化学研究所)2.5μL、抗TM4SF1抗体(PE−anti−human TM4SF1 Antibody、R&D systems)50μLおよび抗EpCAM抗体(Alexa Fluor 647 Anti−human CD326(EpCAM) Antibody、BioLegend)10μLを加え、冷蔵で10分間インキュベートした。
(4)細胞をバッファで洗浄後、細胞をバッファ100μLに懸濁した。
(5)細胞をスライドガラス上に播種し、顕微鏡下で観察を行なった
染色結果を図6に示す。明視野像(図6のパネル(a))およびHoechst 33342染色像(図6のパネル(b))から、図6に示す観察範囲中に5つの細胞(図6のパネル(a)および(b)の矢印)が存在していることがわかる。当該5つの細胞のうち、VCaP(上皮系マーカー高発現細胞)に相当する、白矢印で示した2細胞は、従来よりCTC検出に用いられる上皮系マーカーであるEpCAMに対する蛍光標識抗体では染色されている(図6のパネル(c))が、TM4SF1に対する蛍光標識抗体では染色されていない(図6のパネル(d))。一方、PC3(上皮系マーカー低発現細胞)に相当する、黒矢印で示した3細胞は、EpCAMに対する蛍光標識抗体で染色されていない(図6のパネル(c))が、TM4SF1に対する蛍光標識抗体で染色されている(図6のパネル(d))。以上の結果から、上皮系マーカーでの結果とTM4SF1での結果とを組み合わせることで、上皮系マーカー低発現(陰性)の腫瘍細胞を特異的に検出できることがわかる。
実施例3 血液試料中に含まれる癌細胞の識別
以下の方法により、血液試料中に含まれる前立腺癌細胞の回収、および蛍光標識抗体法による検出を行なった。
(1)上皮系マーカー高発現のヒト前立腺癌細胞株としてVCaPを、上皮系マーカー低発現のヒト前立腺癌細胞株としてPC3をそれぞれ選択し、以下に示す培地を用いて、5%CO環境下37℃で培養した。培養後、TrypLE Expressを用いて培
養皿から細胞を剥離することで、癌細胞を回収した。
VCaP:10%(v/v)FBSを含むDMEM培地
PC3:10%(v/v)FBSを含むHam’s F−12K培地
(2)VCaP細胞とPC3細胞とを細胞数1:1で混合し、健常者より採取した全血に添加することで血液試料を調製した。
(3)(2)で調製した血液試料に対し、10倍量の1×BD Pharm Lyse(Becton Dickinson)を加え、室温で10分間インキュベート後、バッファで前記血液試料中に含まれる細胞を洗浄し、バッファに懸濁させた。
(4)(3)の細胞懸濁液50μLにFcR Blocking Reagentを50μL(Miltenyi Biotec)加え混和した。その後、PE標識抗TM4SF1抗体溶液50μL(PE−anti−human TM4SF1 Antibody、R&D systems)、PE標識抗EpCAM抗体溶液10μL(PE−anti−human EpCAM Antibody、Miltenyi Biotec)、APC(アロフィコシアニン)標識抗EpCAM抗体溶液6μL(APC−anti−human EpCAM Antibody、Miltenyi Biotec)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識抗CD45抗体溶液10μL(CD45−BB515、Becton Dickinson)、および細胞核染色試薬として1mg/mL Hoechst 33342 solution 2.5μL(同仁化学研究所)を加え混和した。冷蔵で10分間インキュベート後、バッファで細胞を洗浄し、バッファに懸濁させた。
(5)実施例1(3)から(5)と同様な方法で、(4)の細胞懸濁液80μLから細胞を回収した。
(6)回収した細胞をスライドガラス上に播種して蛍光顕微鏡下で観察を行なった。
染色結果を図7に示す。明視野像(図7のパネル(a))、Hoechst 33342染色像(図7のパネル(b))、PE標識された抗体(TM4SF1に対する抗体およびEpCAMに対する抗体)による染色像(図7のパネル(c))およびCD45に対する抗体による染色像(図7のパネル(e))から、図7に示す観察範囲中に核が染色され、PE標識された抗体で染色され、かつ、CD45に対する抗体で染色されていない4つの癌細胞(図7のパネル(a)、(b)および(c)の矢印)が存在していることがわかる。当該4つの細胞のうち、VCaP(上皮系マーカー高発現細胞)に相当する、白矢印で示した2細胞は、従来よりCTC検出に用いられる上皮系マーカーであるEpCAMに対する蛍光標識抗体で染色されている(図7のパネル(d))。一方、PC3(上皮系マーカー低発現細胞)に相当する、黒矢印で示した2細胞は、EpCAMに対する蛍光標識抗体で染色されていないことから(図7のパネル(d))、PE標識ではTM4SF1に対する抗体で染色されていることがわかる(図7のパネル(c))。
以上の結果から、TM4SF1に対する抗体とEpCAMに対する抗体とを組み合わせることで、上皮系マーカー低発現(陰性)の癌細胞および上皮系マーカー高発現(陽性)の癌細胞のどちらも血液中から回収できることがわかる。さらに、上皮系マーカー低発現の癌細胞と上皮系マーカー高発現の癌細胞とを識別して検出できることもわかる。

Claims (12)

  1. 試料中の標的細胞を検出する方法であって、
    試料中の少なくとも1つの上皮系マーカーが陰性かつTM4SF1(Transmembrane 4 superfamily member 1)が陽性の細胞を標的細胞として検出する工程
    を含み、
    前記標的細胞が、腫瘍細胞である、方法。
  2. 前記上皮系マーカーが、EpCAM(Epithelial cell adhesion molecule)および/またはサイトケラチンである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記標的細胞が、循環腫瘍細胞である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記標的細胞が、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記標的細胞が、骨転移に関係する前立腺癌由来腫瘍細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記試料が、被験体から得られた試料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記被験体が、癌被験体である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記被験体が、ヒトである、請求項6または7に記載の方法。
  9. 前記試料が、血液由来試料である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記検出により、前記試料中の前記標的細胞の個数が測定される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記試料が、被験体から得られた試料であり、
    前記被験体が、癌被験体であり、
    前記検出により、前記試料中の前記標的細胞の個数が測定される、
    請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 被験体の予後を予測する方法であって、
    請求項11に記載の方法により前記試料中の前記標的細胞の個数を測定する工程、および
    前記個数と前記被験体の予後とを関連付ける工程
    を含む、方法。
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